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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168323
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】放電加工装置
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/28 20060101AFI20241128BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B26F1/28
E04G23/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084884
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】594141495
【氏名又は名称】株式会社神戸工業試験場
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋一
(72)【発明者】
【氏名】鶴井 昌徹
【テーマコード(参考)】
2E176
3C060
【Fターム(参考)】
2E176AA07
2E176BB17
3C060AA16
3C060CA05
(57)【要約】
【課題】金属部品の補修において高い加工精度で安定して孔を形成すること。
【解決手段】放電加工装置100は、金属部品500に放電を発生させ、金属部品500に孔を形成する電極11であって、電極11は、第1軸線x1に沿って直進移動され、第1軸線x1に垂直な電極11の断面は、第1軸線x1に垂直な方向に長手方向を有し、長手方向の中央部における電極11の幅は、長手方向の両端部における電極11の幅よりも狭い、電極11と、電極11を支持し、電極11を第1軸線x1に沿って直進移動させる加工ヘッド13と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部品に放電を発生させ、前記金属部品に孔を形成する電極であって、当該電極は、第1軸線に沿って直進移動され、前記第1軸線に垂直な当該電極の断面は、前記第1軸線に垂直な方向に長手方向を有し、前記長手方向の中央部における当該電極の幅は、前記長手方向の両端部における当該電極の幅よりも狭い、電極と、
前記電極を支持し、前記電極を前記第1軸線に沿って直進移動させる加工ヘッドと、
を備える、放電加工装置。
【請求項2】
前記加工ヘッドを支持し、前記金属部品または他の金属オブジェクトに取り付け可能な第1マグネットスタンドを備える、請求項1に記載の放電加工装置。
【請求項3】
前記第1マグネットスタンドを取り外し可能に支持する強磁性体製の補助プレートと、
前記補助プレートを支持し、前記金属部品または他の金属オブジェクトに取り付け可能な第2マグネットスタンドと、
を含む、補助ユニットを備える、請求項2に記載の放電加工装置。
【請求項4】
前記補助ユニットは、前記補助プレートを支持する圧縮可能なロッドと、前記ロッドに設けられ、前記ロッドの圧縮に対する反発力を生じる弾性体と、を含む、脚部を含む、請求項3に記載の放電加工装置。
【請求項5】
前記加工ヘッドのアクチュエータと、
前記アクチュエータに接続され、前記電極の直進移動を制御する制御装置と、
を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の放電加工装置。
【請求項6】
前記第1軸線に垂直な第2軸線を中心とする回転方向に、前記加工ヘッドの姿勢を調整可能である、回転台を備える、請求項1から4のいずれかに記載の放電加工装置。
【請求項7】
前記第1軸線に垂直な第2軸線を中心とする回転方向に、前記加工ヘッドの姿勢を調整可能である、回転台を備える、請求項5に記載の放電加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放電加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁等の構造物で使用される金属部品には、き裂が発生する場合がある。このようなき裂を補修するための様々な方法が開示されている(例えば、特許文献1から3)。これらの方法では、き裂を有する金属部品に対して孔が形成される。孔は、き裂に交差するように形成される。孔に対して、孔と同様な形状を有する補修部材が挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-199846号公報
【特許文献2】特開2019-020309号公報
【特許文献3】特開2019-218793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
き裂は、固定構造物に発生する場合があり、これらの多くの場合には、作業員が手作業で孔を形成する。手作業によって形成された孔のサイズおよび形状の精度を保証することは、困難である。したがって、孔と補修部材との間の隙間、および、き裂と孔(補修部材)との間の位置関係が設計通りに設定されるように、孔を安定して形成することが望まれる。
【0005】
本開示は、金属部品の補修において高い加工精度で安定して孔を形成することができる、放電加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る放電加工装置は、金属部品に放電を発生させ、金属部品に孔を形成する電極であって、当該電極は、第1軸線に沿って直進移動され、第1軸線に垂直な当該電極の断面は、第1軸線に垂直な方向に長手方向を有し、長手方向の中央部における当該電極の幅は、長手方向の両端部における当該電極の幅よりも狭い、電極と、電極を支持し、電極を第1軸線に沿って直進移動させる加工ヘッドと、を備える。
【0007】
放電加工装置は、加工ヘッドを支持し、金属部品または他の金属オブジェクトに取り付け可能な第1マグネットスタンドを備えてもよい。
【0008】
放電加工装置は、第1マグネットスタンドを取り外し可能に支持する強磁性体製の補助プレートと、補助プレートを支持し、金属部品または他の金属オブジェクトに取り付け可能な第2マグネットスタンドと、を含む、補助ユニットを備えてもよい。
【0009】
補助ユニットは、補助プレートを支持する圧縮可能なロッドと、ロッドに設けられ、ロッドの圧縮に対する反発力を生じる弾性体と、を含む、脚部を含んでもよい。
【0010】
放電加工装置は、加工ヘッドのアクチュエータと、アクチュエータに接続され、電極の直進移動を制御する制御装置と、を備えてもよい。
【0011】
放電加工装置は、第1軸線に垂直な第2軸線を中心とする回転方向に、加工ヘッドの姿勢を調整可能である、回転台を備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、金属部品の補修において高い加工精度で安定して孔を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態に係る放電加工装置を示す概略的な正面図である。
図2図2は、金属部品の例を示す。
図3図3は、図1の放電加工装置を示す概略的な側面図である。
図4図4は、第2実施形態に係る放電加工装置を示す概略的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料および数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、第1実施形態に係る放電加工装置100を示す概略的な正面図である。本開示において、放電加工装置100は、単に「装置100」とも称され得る。例えば、装置100は、橋梁のUリブ等の金属部品500の補修に使用される。金属部品500はこれに限定されず、Uリブ以外の橋梁の他の金属部品であってもよい。また、例えば、金属部品500は、橋梁以外の他のインフラストラクチャ、または、機械構造物等で使用される他の金属部品であってもよい。
【0016】
図2は、金属部品500の例を示す。装置100(図2では不図示)は、金属部品500に孔Hを形成するように構成される。孔Hは、金属部品500に生じたき裂501に交差するように形成される。孔Hには、孔と同様な形状を有する補修部材400が挿入される。このような構成によれば、き裂501の伸展が抑制される。孔Hは、概ねひょうたん形状を有する。具体的には、孔Hは、き裂501と交差する方向に長手方向を有する。長手方向の中央部における孔Hの幅は、長手方向の両端部における孔Hの幅よりも狭い。長手方向における孔Hの端部5a,5bの外面7a,7bの各々は、連続する曲面として形成される。外面7a,7bの曲面は、一定の曲率を有してもよい。これは端部5a,5bにおける応力集中を低減することができる。また、端部5a,5bの間でくびれる中央部分6の両側の外面8a,8bの各々は、連続する曲面として形成される。これによって、中央部分6の幅が長手方向に沿って連続的に変化し、外面8a,8bにおける応力集中を低減することができる。端部5a,5bと中央部分6との間の狭くなる部分の各々は、係止部sと定義される。複数の係止部sは、き裂501を挟んで両側に形成される。孔Hに補修部材400を挿入した状態では、端部5a,5bが係止部sによって係止され、金属部品500に作用するき裂501を開く方向の荷重を補修部材400に伝えることができる。このため、き裂501の開く方向への変形は、孔Hに取り付けられる補修部材400によって拘束できる。
【0017】
図1を参照して、装置100は、メインユニット10と、補助ユニット20と、ノズル30と、制御装置40と、を備える。装置100は、他の構成要素をさらに備えてもよい。
【0018】
メインユニット10は、電極11と、延長バー(第1延長バー)12と、加工ヘッド13と、回転台14と、ベースプレート15と、複数の第1マグネットスタンド16と、を含む。メインユニット10は、他の構成要素をさらに含んでもよい。また、他の実施形態では、メインユニット10は、上記の構成要素のうちの少なくとも1つを含まなくてもよい。
【0019】
電極11は、電極11および金属部品500の間に放電を発生させる。電極11を金属部品500に近付け、電極11を金属部品500に向けて意図された第1軸線x1に沿って直線移動させることで、放電によって孔が形成される。電極11は、金属部品500に形成する上記の孔Hと同様な輪郭を有する。したがって、第1軸線x1に垂直な電極11の断面は、概ねひょうたん形状を有する。具体的には、電極11の断面は、第1軸線x1に垂直な方向(すなわち、き裂501と交差する方向)に長手方向を有する。長手方向の中央部における電極11の幅は、長手方向の両端部における電極11の幅よりも狭い。電極11には、制御装置40からの一方の導電線が接続される(不図示)。電極11は、例えば真鍮、銅、グラファイト、タングステン、または、これらの材料の少なくとも1つを含む合金等の導電性を有する材料によって作成される。
【0020】
延長バー12は、電極11を支持する。延長バー12は、第1軸線x1に交差する方向、本実施形態では、第1軸線x1に垂直な方向に延在する。延長バー12は、電極11から電気的に絶縁される。
【0021】
加工ヘッド13は、電極11を支持し、金属部品500に対して電極11を第1軸線x1に沿って直進移動させる。本実施形態では、加工ヘッド13は、延長バー12を介して電極11を支持する。加工ヘッド13は、シャフト13aを含む。シャフト13aは、延長バー12に接続される。シャフト13aは、第1軸線x1と平行な方向に沿って延在する。加工ヘッド13は、シャフト13aを第1軸線x1に平行な方向に沿って移動させるためのアクチュエータ13bを含む。例えば、アクチュエータ13bは、モータ、空圧シリンダまたはソレノイド等の当業者に知られたものを含んでもよい。アクチュエータ13bは、有線でまたは無線で制御装置40と通信可能に接続される。制御装置40は、アクチュエータ13bを制御することによって、電極11の直進移動を制御する。
【0022】
図3は、第1実施形態に係る放電加工装置100を示す概略的な側面図であり、図1の放電加工装置100を右側から見る。なお、より良い理解のために、図3では、図1の右側の金属部品500は示されていない。
【0023】
図3を参照して、回転台14は、加工ヘッド13の姿勢を調整するように構成される。加工ヘッド13の姿勢は、第1軸線x1に垂直な第2軸線x2を中心とした回転方向rに調整可能である。すなわち、第2軸線x2は、回転台14に対して相対的に固定されており、第1軸線x1は、回転台14に対して相対的に回転可能である。なお、図1では、第2軸線x2は、紙面に垂直な方向に延在する。
【0024】
図1を参照して、例えば、加工ヘッド13は、所定の直径を有する円形の貫通溝13cを含む、プレート13dを含んでもよい。回転台14は、第2軸線x2(図1において不図示)を中心に、貫通溝13cの直径と同一の直径を有する円に沿って配列される、複数のねじ孔(不図示)を含んでもよい。例えば、加工ヘッド13は、1つまたは複数のボルトBを貫通孔14aおよびねじ孔に挿入して、ボルトBをねじ孔に締め付けることによって、回転台14に固定されてもよい。回転台14に対する加工ヘッド13の回転位置を変えることによって、加工ヘッド13の姿勢を調整することができる。なお、加工ヘッド13の姿勢を調整する機構はこれに限定されず、例えばモータ等を含む様々な機構が使用されてもよい。
【0025】
ベースプレート15は、回転台14を支持する。回転台14は、ベースプレート15に固定される。
【0026】
第1マグネットスタンド16は、加工ヘッド13を支持し、磁力によって金属部品500または他の金属オブジェクトに取り付けられるように構成される。本開示において、「他の金属オブジェクト」とは、孔Hが形成される予定の金属部品500を除く、他の金属製の部材を意味する。本実施形態では、第1マグネットスタンド16は、ベースプレート15および回転台14を介して加工ヘッド13を支持する。本実施形態では、メインユニット10は、2つの第1マグネットスタンド16を含む。第1マグネットスタンド16の数はこれに限定されず、メインユニット10は、例えば1つまたは3つ以上の第1マグネットスタンド16を含んでもよい。
【0027】
例えば、第1マグネットスタンド16は、マグネットホルダ16aと、シャフト16bと、を含む。第1マグネットスタンド16は、他の構成要素をさらに含んでもよい。マグネットホルダ16aは、不図示の磁石を内蔵する。マグネットホルダ16aは、磁力をオンおよびオフに切り替えることができる。シャフト16bは、マグネットホルダ16aから延在する。シャフト16bは、ベースプレート15に固定される。例えば、第1マグネットスタンド16は、商業的に入手可能な様々なマグネットスタンドであってもよい。
【0028】
補助ユニット20は、メインユニット10を支持するように構成される。例えば、補助ユニット20は、補助プレート21と、複数の第2マグネットスタンド22と、複数の脚部23と、を含む。補助ユニット20は、他の構成要素をさらに含んでもよい。
【0029】
補助プレート21は、平坦形状を有する。補助プレート21は、強磁性体製である。したがって、第1マグネットスタンド16を磁力によって補助プレート21に取り外し可能に固定することができる。例えば、補助プレート21は、加工ヘッド13の姿勢に拘わらず、平面視においてメインユニット10全体よりも大きい面積を有することができる。このような構成によれば、例えば、電極11が補助プレート21の下方にいる作業員に接触することが防止される。
【0030】
第2マグネットスタンド22は、補助プレート21を支持し、磁力によって金属部品500または他の金属オブジェクトに取り付けられるように構成される。本実施形態では、補助ユニット20は、4つの第2マグネットスタンド22を含む。第2マグネットスタンド22の数はこれに限定されず、補助ユニット20は、例えば1つ、2つ、3つまたは5つ以上の第2マグネットスタンド22を含んでもよい。
【0031】
例えば、第2マグネットスタンド22は、マグネットホルダ22aと、シャフト22bと、を含む。第2マグネットスタンド22は、他の構成要素をさらに含んでもよい。マグネットホルダ22aは、不図示の磁石を内蔵する。マグネットホルダ22aは、磁力をオンおよびオフに切り替えることができる。シャフト22bは、マグネットホルダ22aから延在する。シャフト22bは、補助プレート21に固定される。例えば、複数のシャフト22bは、平面視において、複数のシャフト22bの間にメインユニット10全体が収まるように、互いに離間して補助プレート21に固定されてもよい。このような構成によれば、複数の第2マグネットスタンド22は、複数の第1マグネットスタンド16が配置される範囲よりも広範囲に配置されるので、装置100を固定することができる領域を拡大することができる。例えば、第2マグネットスタンド22は、商業的に入手可能な様々なマグネットスタンドであってもよい。
【0032】
脚部23は、第2マグネットスタンド22に加えて、補助プレート21をさらに支持するように構成される。本実施形態では、補助ユニット20は、2つの脚部23を含む。脚部23の数はこれに限定されず、補助ユニット20は、1つまたは3つ以上の脚部23を含んでもよい。例えば、脚部23は、ロッド23aと、弾性体23bと、を含む。脚部23は、他の構成要素をさらに含んでもよい。
【0033】
ロッド23aは、長尺形状を有する。例えば、ロッド23aは、足場または地面等の床F上に立つように構成され、補助プレート21を床Fから支持する。ロッド23aは、その軸線方向に沿って圧縮可能に構成される。例えば、ロッド23aは、複数の筒を含むテレスコピック構造を有してもよい。
【0034】
弾性体23bは、ロッド23aに設けられ、ロッド23aの圧縮に対する反発力を生じるように構成される。例えば、ロッド23aは、シャフト23cと、第1筒23dと、第2筒23eと、を含んでもよい。シャフト23cの一方の端部はフランジ23fを含み、他方の端部は第1筒23dに挿入される。第1筒23dの一方の端部はフランジ23gを含み、他方の端部は第2筒23eに固定される。第2筒23eからの第1筒23dの突出し長さは、調節可能であってもよい。例えば、弾性体23bは、コイルスプリングであってもよい。シャフト23cは弾性体23bに挿入され、弾性体23bはフランジ23fおよびフランジ23gによって挟まれる。
【0035】
例えば、ロッド23aの長さを、床Fと補助プレート21との間の高さよりも若干長めに調整し、弾性体23bに抗してシャフト23cを第1筒23d内に押込みながら、床Fと補助プレート21との間に脚部23を配置することができる。これによって、補助プレート21は、脚部23によって支持される。
【0036】
以上のようなメインユニット10および補助ユニット20は軽量であり、1人または複数人の作業員によって、金属部品500の周りに人力で据え付け可能である。
【0037】
例えば、マグネットホルダ16aの磁力をオンに切り替えて、メインユニット10を補助プレート21上に固定する。
【0038】
続いて、1人の作業員が、メインユニット10が固定された補助プレート21を持ち上げて、他の作業員が、マグネットホルダ22aの磁力をオンに切り替えて、第2マグネットスタンド22を金属部品500に固定する。
【0039】
続いて、上記のように、床Fと補助プレート21との間に脚部23を配置することによって、メインユニット10および補助ユニット20の据え付けが完了する。
【0040】
ノズル30は、金属部品500に対して加工液を噴射するように構成される。ノズル30は、チューブによって給水源と流体的に連通する。例えば、加工液は、純粋または水道水であってもよい。例えば、ノズル30は、マグネットホルダ31によって金属部品500に取り付けられる。マグネットホルダ31は、磁力をオンおよびオフに切り替えることができる。
【0041】
制御装置40は、装置100の全体または一部を制御する。例えば、制御装置40は、プロセッサ40a、記憶装置40b、タッチパネル40cおよびコネクタ40d等の構成要素を含み、これらの構成要素はバスを介して互いに接続される。制御装置40は、他の構成要素を更に含んでもよい。例えば、プロセッサ40aは、CPU(Central Processing Unit)等を含む。例えば、記憶装置40bは、ハードディスク、プログラム等が格納されるROM、および、ワークエリアとしてのRAM等を含む。制御装置40は、タッチパネル40cを介して作業員からの指令を受ける。制御装置40は、コネクタ40dを介して装置100の各構成要素と有線でまたは無線で通信可能に接続される。
【0042】
制御装置40は、不図示の2本の導電線を含む。一方の導電線は電極11に接続され、他方の導電線は金属部品500に接続される。また、制御装置40は、加工ヘッド13のアクチュエータ13bと接続される。
【0043】
例えば、制御装置40は、電極11の放電出力のパラメータを制御する。他の実施形態では、制御装置40は、ノズル30からの加工液の噴射量を制御してもよい。
【0044】
続いて、装置100の動作について説明する。
【0045】
例えば、メインユニット10、補助ユニット20およびノズル30の据え付けの後に、作業員は、電極11が金属部品500の意図された領域に対向するように、回転台14に対する加工ヘッド13の姿勢を調整する。
【0046】
また、作業員は、金属部品500の材質および厚み等のファクターに応じて、電極11の放電出力のパラメータをタッチパネル40cを介して制御装置40に入力する。
【0047】
続いて、作業員は、タッチパネル40c上のスタートボタンを押し、放電および電極11の移動を開始する。また、加工液をノズル30から金属部品500の加工部位に向けて噴射する。これによって、金属部品500に孔Hが形成される(図2を参照)。なお、現場において加工液の飛散を確実に防止するために、加工液噴射位置および加工液の飛散範囲をビニールシートにより養生する。さらに、ビニールシートにより加工液の流路を設置し、バケツまたはポリタンクで加工液を保管する。
【0048】
以上のような装置100は、金属部品500に放電を発生させ、金属部品500に孔Hを形成する電極11であって、電極11は、第1軸線x1に沿って直進移動され、第1軸線x1に垂直な電極11の断面は、第1軸線x1に垂直な方向に長手方向を有し、長手方向の中央部における電極11の幅は、長手方向の両端部における電極11の幅よりも狭い、電極11と、電極11を支持し、電極11を第1軸線x1に沿って直進移動させる加工ヘッド13と、を備える。具体的には、電極11の断面は、第1軸線x1に垂直な方向に長手方向を有し、かつ、当該長手方向は、き裂501と交差する。このような構成によれば、電極11は加工ヘッド13によって直進移動されるので、作業員は、電極11を手動で正確に移動する必要が無い。したがって、金属部品500の補修において高い加工精度で安定して孔Hを形成することができる。
【0049】
また、装置100は、加工ヘッド13を支持し、金属部品500または他の金属オブジェクトに取り付け可能な第1マグネットスタンド16を備える。このような構成によれば、装置100を金属部品500の周囲に容易に据え付けることができる。したがって、作業員の負担を低減することができる。
【0050】
また、装置100は、第1マグネットスタンド16を取り外し可能に支持する強磁性体製の補助プレート21と、補助プレート21を支持し、金属部品500または他の金属オブジェクトに取り付け可能な第2マグネットスタンド22と、を含む、補助ユニット20を備える。このような構成によれば、装置100を据え付けるためのバリエーションを増やすことができる。したがって、作業員の負担をさらに低減することができる。
【0051】
また、装置100では、補助ユニット20は、補助プレート21を支持する圧縮可能なロッド23aと、ロッド23aに設けられ、ロッド23aの圧縮に対する反発力を生じる弾性体23bと、を含む、脚部23を備える。このような構成によれば、装置100をより強固に固定することができる。したがって、安全性が向上される。さらに、現場において振動を軽減することができ,加工精度の安定性が向上される。
【0052】
また、装置100は、加工ヘッド13のアクチュエータ13bと、アクチュエータ13bに接続され、電極11の直進移動を制御する制御装置40と、を備える。このような構成によれば、電極11は、制御装置40によって自動で制御される。したがって、加工精度の安定性をさらに向上させることができる。
【0053】
また、装置100は、第1軸線x1に垂直な第2軸線x2を中心とする回転方向に、加工ヘッド13の姿勢を調整可能である、回転台14を備える。このような構成によれば、金属部品500に対して、装置100を様々な姿勢で据え付けることができる。したがって、加工精度の安定性をさらに向上させることができる。
【0054】
続いて、他の実施形態について説明する。
【0055】
図4は、第2実施形態に係る放電加工装置200を示す概略的な正面図である。装置200は、装置200が補助ユニット20を備えない点、ならびに、メインユニット10が第2延長バー17および第3延長バー18をさらに含む点において、第1実施形態に係る装置100と異なる。他の構成については、装置200は、装置100と同じであってもよい。
【0056】
本実施形態では、メインユニット10は、図1と比較して上下逆さに配置されており、補助ユニット20無しに、第1マグネットスタンド16のマグネットホルダ16aが、金属部品500に直接的に固定される。例えば、金属部品500および床Fの間の高さが低い場合には、補助ユニット20は必要でないかもしれない。
【0057】
本実施形態では、第1延長バー12と電極11との間に、第2延長バー17および第3延長バー18が設けられる。例えば、第2延長バー17は、第1延長バー12に連結される。例えば、第2延長バー17は、第1延長バー12に対して直角に、または、第1軸線x1に対して平行に延在する。例えば、第3延長バー18は、第2延長バー17に連結される。例えば、第3延長バー18は、第1延長バー12に対して平行に、または、第1軸線x1に対して垂直に延在する。第3延長バー18は、電極11を支持する。第3延長バー18は、電極11から電気的に絶縁される。
【0058】
以上のようなメインユニット10は、第1実施形態と同様に、1人または複数人の作業員によって、金属部品500の周りに人力で据え付け可能である。
【0059】
例えば、1人の作業員が、メインユニット10を持ち上げて、他の作業員が、マグネットホルダ16aの磁力をオンに切り替えて、第1マグネットスタンド16を金属部品500に直接的に固定することができる。これによって、メインユニット10の据え付けが完了する。
【0060】
以上のような装置200は、第1実施形態に係る装置100と同様に、金属部品500の補修において作業員の負担を低減することができる。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0062】
例えば、第1実施形態に係る装置100では、補助ユニット20は、補助プレート21、第2マグネットスタンド22、および、脚部23を含む。しかしながら、他の実施形態では、補助ユニット20は、補助プレート21および第2マグネットスタンド22を含み、脚部23を含まなくてもよい。
【0063】
本開示は、既存のインフラストラクチャのより良い補修を促進することができるので、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「つくる責任、つかう責任」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
11 電極
13 加工ヘッド
13b アクチュエータ
14 回転台
16 第1マグネットスタンド
20 補助ユニット
21 補助プレート
22 第2マグネットスタンド
23 脚部
23a ロッド
23b 弾性体
40 制御装置
100 放電加工装置
200 放電加工装置
500 金属部品
H 孔
x1 第1軸線
x2 第2軸線
図1
図2
図3
図4