(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168334
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】画像形成システム
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20241128BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20241128BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G15/16
G03G21/00 318
G03G15/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084903
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】山浦 正彰
(72)【発明者】
【氏名】三橋 利彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 万里子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 晃宏
【テーマコード(参考)】
2H134
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H134GA01
2H134GA06
2H134GB01
2H134HD01
2H134HD17
2H134HD18
2H134KA15
2H134KA40
2H134KB13
2H134KB20
2H134KG07
2H134KH16
2H134LA01
2H134LA02
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA42
2H200GB12
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2H200JA02
2H200JC03
2H200JC12
2H200JC20
2H200LB02
2H200LB09
2H200LB13
2H200LB39
2H200LB40
2H200PA10
2H200PA22
2H200PB39
2H270LA99
2H270LD03
2H270LD08
2H270MA28
2H270MA31
2H270MA40
2H270MA41
2H270MB25
2H270MB32
2H270MB39
2H270MB43
2H270RA11
2H270RA14
2H270RB03
2H270RC02
2H270RC04
2H270RC10
2H270RC11
2H270RC14
2H270RC17
2H270RC18
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC06
2H270ZC08
(57)【要約】
【課題】像保持手段に微粒子を塗布可能とする態様につき、作像材料を無駄に消費することなく、板状の清掃手段に対する保守処理を実現する。
【解決手段】像保持手段1に保持された画像Gを媒体Sに転写させる転写手段3と、所定方向に傾斜した状態で像保持手段1に先端部が接触するように配置され、転写手段3による転写動作後の像保持手段1上に残留する残留物を清掃する板状の清掃手段4と、作像手段2を用いて像保持手段1の非作像領域NRに作像材料による帯状の保守用画像Gmを形成し、転写手段3による転写動作を実施しない状態で清掃手段4に対して定期的又は不定期的に保守用画像Gmを供給する保守手段5と、像保持手段1に定期的又は不定期的に潤滑性のある微粒子pを塗布する微粒子塗布手段6と、像保持手段1上の微粒子pの塗布状態に依存して保守手段5による保守用画像量を制御する保守制御手段7と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられて画像を保持する像保持手段と、
前記像保持手段上に少なくとも外添剤が含まれる作像材料を用いて前記画像を形成する作像手段と、
前記像保持手段に保持された前記画像を媒体に転写させる転写手段と、
前記像保持手段の回転方向に対向する方向に傾斜した状態で前記像保持手段に先端部が接触するように配置され、前記転写手段による転写動作後の像保持手段上に残留する残留物を清掃する弾性を有する板状の清掃手段と、
前記作像手段を用いて前記像保持手段の非作像領域に前記作像材料による帯状の保守用画像を形成し、前記転写手段による転写動作を実施しない状態で前記清掃手段に対して定期的又は不定期的に前記保守用画像を供給する保守手段と、
前記像保持手段に定期的又は不定期的に潤滑性のある微粒子を塗布する微粒子塗布手段と、
前記像保持手段上の前記微粒子の塗布状態に依存して前記保守手段による保守用画像量を制御する保守制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成システムにおいて、
前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されていない条件での前記保守手段による前記保守用画像量を上限とし、前記微粒子が塗布されている条件と、前記微粒子が塗布されていない条件とで前記保守手段による前記保守用画像量を異なるように制御することを特徴とする画像形成システム。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成システムにおいて、
前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されている条件では、前記微粒子が塗布されていない条件に比べて、前記保守用画像量を少なくするように制御することを特徴とする画像形成システム。
【請求項4】
請求項2に記載の画像形成システムにおいて、
前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されている条件では、前記保守用画像を供給しないように制御することを特徴とする画像形成システム。
【請求項5】
請求項1に記載の画像形成システムにおいて、
前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されていない条件での前記保守手段による前記保守用画像量を上限とし、前記微粒子が塗布されている条件では、前記微粒子の塗布量に依存して前記保守用画像量を異なるように制御することを特徴とする画像形成システム。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成システムにおいて、
前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されている条件では、前記微粒子の塗布量が多いほど前記保守用画像量を少なくするように制御することを特徴とする画像形成システム。
【請求項7】
請求項5に記載の画像形成システムにおいて、
前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されている条件では、前記微粒子の塗布量が少ないほど前記保守用画像量を多くするように制御することを特徴とする画像形成システム。
【請求項8】
請求項1に記載の画像形成システムにおいて、
前記保守制御手段は、前記微粒子の塗布状態が検出可能な検出手段を有し、前記検出手段の検出結果に基づいて前記保守用画像量を制御することを特徴とする画像形成システム。
【請求項9】
請求項8に記載の画像形成システムにおいて、
前記検出手段は、前記微粒子の塗布層に対向して配置される反射型の光学式センサで構成されていることを特徴とする画像形成システム。
【請求項10】
請求項1に記載の画像形成システムにおいて、
前記微粒子塗布手段は、表面粗さRzが1.5以下又はマイクログロスが93以上の前記像保持手段に対し、粒径が30乃至150nmの範囲にある前記微粒子を塗布することを特徴とする画像形成システム。
【請求項11】
請求項10に記載の画像形成システムにおいて、
前記微粒子塗布手段は、前記像保持手段上に前記微粒子を被覆率10乃至50%の範囲で塗布することを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の画像形成システムとしては例えば特許文献1乃至3に記載のものが既に知られている。
特許文献1には、表面にトナー像が形成される像担持体と、該像担持体からトナー像の転写を受けて次に転写するための中間転写体と、該中間転写体の表面に微粒子を付着させる微粒子付着装置とを有し、該微粒子付着装置は、回転ブラシと、該回転ブラシの毛先が接触し且つ該回転ブラシに対して平行となるように支持された、過剰な微粒子を払い落とすための棒状部材とを有する画像形成装置が開示されている。
特許文献2の
図1には、像担持体1K,1Yに接触する中間転写体5aと、像担持体1M,1Cに接触する中間転写体5bと、中間転写体5a,5bに接触する中間転写体6と、中間転写体5a,5b,6の表面に平均粒径が一次粒子の平均粒径の3倍以下の微粒子を付着させる微粒子付着器20a,20b,20cと、を備えた画像記録装置が開示されている。
特許文献3には、記録用紙の供給方向に対する幅が所定の判断基準幅よりも狭いとき、中間転写ベルトの転写可能領域のうち少なくとも記録用紙と対面しない領域であってその記録用紙の供給方向の側端部より外側となる特定領域内にその領域を横切るトナーバンド(帯状のトナー像)を形成すべき制御を実行する制御手段を設けた画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-313377号公報(発明を実施するための最良の形態,
図2)
【特許文献2】特開2000-259011号公報(発明の実施の形態,
図3)
【特許文献3】特開2001-175090号公報(発明の実施の形態,
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、像保持手段に微粒子を塗布可能とする態様につき、作像材料を無駄に消費することなく、板状の清掃手段に対する保守処理を実現する画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の技術的特徴は、回転可能に設けられて画像を保持する像保持手段と、前記像保持手段上に少なくとも外添剤が含まれる作像材料を用いて前記画像を形成する作像手段と、前記像保持手段に保持された前記画像を媒体に転写させる転写手段と、前記像保持手段の回転方向に対向する方向に傾斜した状態で前記像保持手段に先端部が接触するように配置され、前記転写手段による転写動作後の像保持手段上に残留する残留物を清掃する弾性を有する板状の清掃手段と、前記作像手段を用いて前記像保持手段の非作像領域に前記作像材料による帯状の保守用画像を形成し、前記転写手段による転写動作を実施しない状態で前記清掃手段に対して定期的又は不定期的に前記保守用画像を供給する保守手段と、前記像保持手段に定期的又は不定期的に潤滑性のある微粒子を塗布する微粒子塗布手段と、前記像保持手段上の前記微粒子の塗布状態に依存して前記保守手段による保守用画像量を制御する保守制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成システムである。
【0006】
本発明の第2の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されていない条件での前記保守手段による前記保守用画像量を上限とし、前記微粒子が塗布されている条件と、前記微粒子が塗布されていない条件とで前記保守手段による前記保守用画像量を異なるように制御することを特徴とする画像形成システムである。
本発明の第3の技術的特徴は、第2の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されている条件では、前記微粒子が塗布されていない条件に比べて、前記保守用画像量を少なくするように制御することを特徴とする画像形成システムである。
本発明の第4の技術的特徴は、第2の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されている条件では、前記保守用画像を供給しないように制御することを特徴とする画像形成システムである。
本発明の第5の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されていない条件での前記保守手段による前記保守用画像量を上限とし、前記微粒子が塗布されている条件では、前記微粒子の塗布量に依存して前記保守用画像量を異なるように制御することを特徴とする画像形成システムである。
本発明の第6の技術的特徴は、第5の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されている条件では、前記微粒子の塗布量が多いほど前記保守用画像量を少なくするように制御することを特徴とする画像形成システムである。
本発明の第7の技術的特徴は、第5の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されている条件では、前記微粒子の塗布量が少ないほど前記保守用画像量を多くするように制御することを特徴とする画像形成システムである。
【0007】
本発明の第8の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記保守制御手段は、前記微粒子の塗布状態が検出可能な検出手段を有し、前記検出手段の検出結果に基づいて前記保守用画像量を制御することを特徴とする画像形成システムである。
本発明の第9の技術的特徴は、第8の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記検出手段は、前記微粒子の塗布層に対向して配置される反射型の光学式センサで構成されていることを特徴とする画像形成システムである。
本発明の第10の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記微粒子塗布手段は、表面粗さRzが1.5以下又はマイクログロスが93以上の前記像保持手段に対し、粒径が30乃至150nmの範囲にある前記微粒子を塗布することを特徴とする画像形成システムである。
本発明の第11の技術的特徴は、第10の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記微粒子塗布手段は、前記像保持手段上に前記微粒子を被覆率10乃至50%の範囲で塗布することを特徴とする画像形成システムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の技術的特徴によれば、像保持手段に微粒子を塗布可能とする態様につき、作像材料を無駄に消費することなく、板状の清掃手段に対する保守処理を実現することができる。
本発明の第2の技術的特徴によれば、像保持手段に対する微粒子の塗布の有無に拘わらず、保守用画像を定量供給する場合に比べて、保守用画像量を抑えた状態で、保守手段による保守処理を効率的に実現することができる。
本発明の第3の技術的特徴によれば、微粒子が塗布されている条件では、保守用画像量を少なくしても保守手段による保守処理を有効に実現することができる。
本発明の第4の技術的特徴によれば、微粒子が塗布されている条件では、微粒子の塗布層を保守用画像の代用として有効に利用することができる。
本発明の第5の技術的特徴によれば、微粒子が塗布されている条件で、保守用画像を定量供給する場合に比べて、保守用画像量をより抑えた状態で、保守手段による保守処理を適切に実現することができる。
本発明の第6の技術的特徴によれば、微粒子が塗布されている条件では、微粒子の塗布量を多くすれば保守用画像量を少なくしても、保守手段による保守処理を適切に実現することができる。
本発明の第7の技術的特徴によれば、微粒子が塗布されている条件では、微粒子の塗布量を少なくすれば保守用画像量を多くすることで、保守手段による保守処理を適切に実現することができる。
本発明の第8の技術的特徴によれば、微粒子の塗布状態を容易に把握でき、保守手段による保守処理を容易に実現することができる。
本発明の第9の技術的特徴によれば、既存の反射型の光学式センサを利用することで、微粒子の塗布状態を簡単に検出することができる。
本発明の第10の技術的特徴によれば、像保持手段及び微粒子を適切に選定することで、微粒子の塗布層による転写手段の画像転写性を良好に保つことができる。
本発明の第11の技術的特徴によれば、微粒子の被覆率を適切に選定することで、微粒子の消費量を抑えながら、微粒子の塗布層による転写手段の画像転写性を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明が適用された画像形成システムの実施の形態の概要を示す説明図である。
【
図2】(a)は像保持手段上に形成される画像及び保守用画像の一例を示す説明図、(b)は通常の媒体を使用したときの転写域における像保持手段の表面及び画像の状態を示す説明図、(c)はエンボス媒体を使用したときの転写域における像保持手段の表面及び画像の状態を示す説明図、(d)は像保持手段上に微粒子が塗布されないときの清掃領域における保守用画像例を示す説明図、(e)は像保持手段上に微粒子が塗布されたときの清掃領域における保守用画像例を示す説明図である。
【
図3】実施の形態1に係る画像形成システムの全体構成を示す説明図である。
【
図4】(a)は
図3の画像形成部の詳細を示す説明図、(b)は
図3の中間転写体清掃装置の詳細を示す説明図である。
【
図5】(a)は中間転写体清掃装置の清掃部材の要部を示す説明図、(b)は(a)中Bに示す同清掃部材の好ましい状態を示す説明図、(c)は同清掃部材の保守処理を要する状態を示す説明図である。
【
図6】(a)は転写装置の詳細を示す説明図、(b)は(a)中Bに示す通常の作像モードにおける転写動作を模式的に示す説明図、(c)は特例の作像モードにおける転写動作を模式的に示す説明図である。
【
図7】(a)は実施の形態1で用いられる微粒子塗布装置の一例を示す説明図、(b)は画像形成動作終了時の微粒子塗布装置の状態を示す説明図、(c)は微粒子塗布装置の微粒子供給開始時の状態を示す説明図である。
【
図8】(a)は微粒子塗布装置による中間転写体への微粒子の塗布動作を概念的に示す説明図、(b)は(a)に示す塗布ロールによる中間転写体への微粒子の塗布原理を模式的に示す説明図である。
【
図9】(a)は中間転写体上の微粒子の塗布状態を検出する光学式センサの配置例を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図、(c)は中間転写体上に微粒子を塗布しない状況での光学式センサの検出状態を示す説明図、(d)は中間転写体上に微粒子を塗布した状況での光学式センサの検出状態を示す説明図、(e)は中間転写体上の微粒子被覆率と光学式センサの出力との関係の一例を示す説明図である。
【
図10】(a)は中間転写体への微粒子被覆率とトナー付着力との関係を示すグラフ図、(b)は中間転写体への微粒子塗布量とトナー付着量との関係を模式的に示す説明図、(c)は微粒子塗布の有無による転写バイアスと画質の良否との関係を示す説明図である。
【
図11】実施の形態1に係る画像形成システムの制御系を示す説明図である。
【
図12】実施の形態1で用いられる微粒子塗布制御過程の一例を示すフローチャートである。
【
図13】実施の形態1で用いられる清掃装置の保守制御過程の一例を示すフローチャートである。
【
図14】(a)は通常の作像モードの一例を模式的に示す説明図、(b)は(a)中B-B線断面説明図、(c)は特例の作像モードの一例を模式的に示す説明図、(d)は(c)中D-D線断面説明図である。
【
図15】(a)は通常の保守モード(保守モードI)の一例を模式的に示す説明図、(b)は(a)中B-B線断面説明図、(c)は特例の保守モード(保守モードII)の他の例を模式的に示す説明図、(d)は(c)中D-D線断面説明図、(e)は保守モードIIの他の例を示す説明図である。
【
図16】(a)は保守モードIにおける保守動作を模式的に示す説明図、(b)は保守モードIIにおける保守動作を模式的に示す説明図である。
【
図17】実施の形態1で用いられた微粒子塗布装置の変形の形態1-1を示す説明図である。
【
図18】実施の形態1で用いられた微粒子塗布装置の変形の形態1-2を示す説明図である。
【
図19】実施の形態2に係る画像形成システムで用いられる微粒子塗布制御過程の一例を示すフローチャートである。
【
図20】実施の形態2で用いられる中間転写体清掃装置の保守制御過程の一例を示すフローチャートである。
【
図21】実施の形態2で用いられる中間転写体清掃装置の保守動作例を示す説明図である。
【
図22】実施の形態3に係る画像形成システムの要部を示す説明図である。
【
図23】中間転写体清掃装置の清掃性を評価する上で、保守用画像と微粒子の塗布状態との関係を調べたものである。
【
図24】微粒子塗布層の微粒子の粒径とトナーの中間転写体への付着力との関係を調べたものである。
【
図25】中間転写体に対するトナー付着力と転写性グレードとの関係を調べたものである。
【
図26】中間転写体清掃装置の清掃性を評価する上で、保守用画像と微粒子塗布層の微粒子の粒径との関係を調べたものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
図1は本発明が適用された画像形成システムの実施の形態の概要を示す。
同図において、画像形成システムは、回転可能に設けられて画像Gを保持する像保持手段1と、像保持手段1上に少なくとも外添剤が含まれる作像材料を用いて画像Gを形成する作像手段2と、像保持手段1に保持された画像Gを媒体Sに転写させる転写手段3と、像保持手段1の回転方向に対向する方向に傾斜した状態で像保持手段1に先端部が接触するように配置され、転写手段3による転写動作後の像保持手段1上に残留する残留物を清掃する弾性を有する板状の清掃手段4と、作像手段2を用いて像保持手段1の非作像領域NR(
図2(a)参照)に作像材料による帯状の保守用画像Gmを形成し、転写手段3による転写動作を実施しない状態で清掃手段4に対して定期的又は不定期的に保守用画像Gmを供給する保守手段5と、像保持手段1に定期的又は不定期的に潤滑性のある微粒子pを塗布する微粒子塗布手段6と、像保持手段1上の微粒子pの塗布状態に依存して保守手段5による保守用画像量を制御する保守制御手段7と、を備えたものである。
【0011】
このような技術的手段において、本願の「画像形成システム」は、単一の装置によって構成されたものに限らず、複数の装置によって構成されたものも含む。
そして、像保持手段1は、像形成手段で形成された画像Gを保持するものであればよく、画像Gを直接形成して保持する感光体、誘電体等の像形成保持手段であってもよいし、像形成保持手段にて形成された画像Gを媒体Sに転写する前に中間的に保持する中間転写手段であってもよい。
また、作像手段2としては少なくとも外添剤が含まれる作像材料を用いて画像形成する方式のものであれば、電子写真方式に限らず、イオン流を用いた静電記録方式などの各種方式のものを含む。
更に、転写手段3としては、像保持手段1に保持された画像Gを媒体Sに転写するものであれば適宜選定して差し支えなく、転写電界を用いて加圧転写する態様が代表的である。
更にまた、清掃手段4としては、弾性を有する板状部材で構成され、像保持手段1の回転方向に対向する方向に傾斜した状態で先端が接触する態様(所謂ブレードクリーニング方式)であれば適宜選定して差し支えない。
【0012】
また、保守手段5の「帯状の保守用画像Gm」は像保持手段1の作像領域(画像形成領域に相当)GR(
図2(a)参照)の幅方向(像保持手段1の回転方向に交差する交差方向に相当)に沿って連続的に延びる一若しくは複数の帯状画像でもよいし、あるいは、不連続的に延びる帯状画像でもよい。保守手段5の実施タイミングについては、清掃手段4の先端部の捲れや磨耗を防止するという観点から、定期的あるいは作像手段2による作像条件等から保守時期を判別して不定期的に実施するようにしてもよい。
更に、媒体Sとしては各種物性のものを適宜選定して差し支えない。例えば媒体Sとして普通紙のような通常の媒体Saを使用する場合には、
図2(b)に示すように、通常の媒体Saの表面は略平滑であるため、転写域TRでは、像保持手段1上の画像Gは転写電界によって通常の媒体Sa上に転写し易く、転写不良が生じ難い。これに対し、例えば媒体Sとしてエンボス媒体Sbを使用する場合に、
図2(c)に示すように、エンボス媒体Sbの表面凹凸(エンボス)eの影響で像保持手段1上の画像Gの転写性が低下する傾向にある。これは、エンボス媒体Sbの表面凹凸eの凹部の方が凸部に比べて画像Gが転写し難いことによる。本例では、微粒子塗布手段6は、これを回避するために、エンボス媒体Sbを使用する場合には、像保持手段1上に潤滑性を有する微粒子pを塗布し、画像Gの転写性を向上させるものである。ここでいう「微粒子p」は潤滑性を具備するものであれば適宜選定して差し支えなく、作像手段2の作像材料に含まれる外添剤が潤滑性を具備するものであれば、当該外添剤と同様のものを使用することは可能であり、外添剤と別のものを使用してもよい。
【0013】
更にまた、保守制御手段7は、微粒子塗布手段6による微粒子pの塗布状態(微粒子pの塗布の有無、あるいは、微粒子pの塗布量)を見て、保守手段5の保守動作を制御するものである。
例えば像保持手段1に微粒子pが塗布されていない場合には、
図2(d)に示すように、保守用画像Gmとして通常量の作像材料を用いて通常の保守用画像Gm(0)を作製し、清掃手段4の先端部の清掃域CRに保守用画像Gm(0)を供給するようにすればよい。これに対し、例えば像保持手段1に微粒子pが塗布される場合には、
図2(e)に示すように、塗布された微粒子p層が保守用画像Gmの一部として機能することに着目し、保守用画像Gmとして通常の保守用画像Gm(0)よりも少ない量の特例の保守用画像Gm(1)を作製し、清掃手段4の先端部の清掃域CRに微粒子p層と共に特例の保守用画像Gm(1)を供給するようにすればよい。
【0014】
次に、本実施の形態に係る画像形成システムの代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、保守制御手段7の代表的態様としては、微粒子pが塗布されていない条件での保守手段5による保守用画像量(保守用画像Gmの作製に要する作像材料使用量)を上限とし、微粒子pが塗布されている条件と、微粒子pが塗布されていない条件とで保守手段5による保守用画像量を異なるように制御する態様が挙げられる。本態様は、微粒子pの塗布の有無に依存して保守用画像量を異ならせるものである。
ここで、「微粒子pが塗布されていない条件での保守手段5による保守用画像量を上限」としたのは、微粒子p塗布時に、微粒子p非塗布時に比べて保守用画像量が多くなる態様を除外することを明確にしたものである。
本態様の具体例としては、微粒子pが塗布されている条件では、微粒子pが塗布されていない条件に比べて、保守用画像量を少なくするように制御する態様がある。また、微粒子pの塗布量が十分多い場合には、微粒子pが塗布されている条件では、特例の保守用画像Gm(1)を供給しないように制御することも可能である。
【0015】
また、保守制御手段7の別の代表的態様としては、微粒子pが塗布されていない条件での保守手段5による保守用画像量を上限とし、微粒子pが塗布されている条件では、微粒子pの塗布量に依存して保守用画像量を異なるように制御する態様が挙げられる。本態様は、微粒子pの塗布量に依存して保守用画像量を異ならせるものである。
本態様の具体例としては、微粒子pが塗布されている条件では、微粒子pの塗布量が多いほど保守用画像量を少なくするように制御する態様、別の見方をすれば、微粒子pが塗布されている条件では、微粒子pの塗布量が少ないほど保守用画像量を多くするように制御する態様がある。
【0016】
また、保守制御手段7の好ましい態様としては、微粒子pの塗布状態が検出可能な図示外の検出手段を有し、検出手段の検出結果に基づいて保守用画像量を制御する態様が挙げられる。本態様は、微粒子pの塗布状態を検出手段で検出し、微粒子pの塗布状態に適した保守用画像量を選定するものである。
本例において、検出手段としては、微粒子pの塗布層に対向して配置される反射型の光学式センサで構成されているものが挙げられる。
【0017】
また、微粒子塗布手段6の好ましい態様としては、表面粗さRzが1.5以下又はマイクログロスが93以上の像保持手段1に対し、粒径が30乃至150nmの範囲にある微粒子pを塗布する態様が挙げられる。本態様は、エンボス媒体Sbを使用する場合に、像保持手段1上の画像Gの付着力を低減させるという観点から、像保持手段1の表面性及び微粒子pの粒径について適切な範囲を選定したものである。
本例においては、微粒子塗布手段6は、像保持手段1上に微粒子pを被覆率10乃至50%の範囲で塗布するようにすればよい。本態様は、像保持手段1上の微粒子pを被覆率50%を超えた状態で塗布したとしても、被覆率50%以下の場合に比べて、像保持手段1上の画像Gの付着力が大きく低減するものではないことを踏まえ、微粒子pの好ましい被覆率を選定したものである。
【0018】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
-画像形成システムの全体構成-
図3は実施の形態1に係る画像形成システムの全体構成を示す。
同図において、画像形成システム20は、図示外の装置筐体内に搭載され、複数の色成分(本実施の形態ではイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の四色)画像を作製する作像エンジン21と、この作像エンジン21で作製された各色成分画像を媒体Sに転写する転写装置50と、転写装置50の転写域TRにて転写された各色成分画像を媒体S上に定着させる定着装置70と、転写装置50による転写域TRに媒体Sを搬送する媒体搬送系80と、を備えている。
【0019】
-作像エンジンの構成例-
本例では、作像エンジン21は、複数の色成分画像を形成する画像形成部22(具体的には22a~22d)と、各画像形成部22にて形成された各色成分の画像Gを順次転写(一次転写)して保持し、媒体Sへの転写部位まで搬送するベルト状の中間転写体30と、を備えたものである。
【0020】
<画像形成部>
本実施の形態において、各画像形成部22(22a~22d)は、
図3及び
図4に示すように、例えば電子写真方式を採用したものであって、夫々ドラム状の感光体23を有している。そして、各感光体23の周囲には、感光体23を帯電する帯電装置24、帯電された感光体23上に静電潜像を書き込む光書込装置25、感光体23上に書き込まれた静電潜像を各色成分トナーにて現像する現像装置26、及び、中間転写体30への画像転写後に感光体23上に残留するトナーを清掃する感光体清掃装置27が夫々配設されている。
ここで、帯電装置24としては本例では例えば帯電ロールが用いられるが、コロトロンやスコロトロン等適宜選定して差し支えない。また、光書込装置25としては本例ではLEDアレイが用いられるが、レーザ走査装置等適宜選定して差し支えない。
【0021】
更に、現像装置26としては作像材料として現像剤を用いるものであれば適宜選定して差し支えなく、本例では、二成分現像方式を採用した態様として構成されている。この現像装置26は、感光体23に対向して開口する現像筐体261を有し、この現像筐体261の開口に面して現像ロール262を配設すると共に、現像筐体261内にはトナー(外添剤を含む)及びキャリアが含まれる二成分現像剤を収容し、一組の撹拌搬送部材263にて現像剤を撹拌搬送してトナーを帯電させながら、現像ロール262に現像剤を保持させ、感光体23上の静電潜像をトナー現像するようにしたものである。尚、符号264は現像ロール262から落下した現像剤を撹拌搬送部材263側へ戻す回収部材である。
【0022】
また、本例において、感光体清掃装置27は、感光体23に対向して開口する清掃筐体271を有し、この清掃筐体271の開口縁に支持ブラケット273を介して弾性を有する板状の清掃部材272を設けるようにしたものである。ここで、清掃部材272は、感光体23の回転方向に対向する方向に傾斜した状態で感光体23に先端部が接触するように配置され、感光体23上に残留する残留物を掻き取り清掃するようになっている。また、清掃筐体271の底部には均し搬送部材274が設けられ、清掃筐体271内に収容された残留物を均すと共に、廃棄時には図示外の回収容器に向けて残留物を清掃筐体271外に搬送するものである。尚、符号275は清掃部材272で掻き落とされた残留物を均し搬送部材274側へ案内する案内部材である。
【0023】
<中間転写体>
また、中間転写体30は複数の張架ロール31~34に掛け渡されており、例えば張架ロール31が図示外の駆動モータにて駆動される駆動ロールとして用いられ、当該駆動ロールにて循環移動するようになっている。
本例では、各画像形成部22の感光体23が張架ロール31,32間に位置する中間転写体30の表面に対向して配置されており、各感光体23に対向する中間転写体30の裏面には感光体23上に形成された画像Gを中間転写体30側に静電転写する転写ロール等の一次転写装置35が配設されている。
【0024】
<中間転写体清掃装置>
更に、張架ロール31,34間に位置する中間転写体30の表面には媒体Sヘの画像転写後の中間転写体30上の残留トナーや紙粉等の残留物を除去するための中間転写体清掃装置36が設けられている。
本例では、中間転写体清掃装置36は、
図3及び
図4(b)に示すように、中間転写体30のうち転写装置50の転写域TR(張架ロール34位置に相当)よりも回転方向下流側で張架ロール31寄りの箇所に配設されている。この中間転写体清掃装置36は、中間転写体30の表面に対向して開口する清掃筐体361を有し、清掃筐体361の開口縁に支持ブラケット363を介して弾性を有する板状の清掃部材362を設けると共に、清掃部材362に対向する中間転写体30の裏面に対向ロール364を設けたものである。ここで、清掃部材362は、中間転写体30の回転方向に対向する方向に傾斜した状態で中間転写体30に先端部が接触するように配置され、中間転写体30上に残留する残留物を掻き取り清掃するようになっている。更に、清掃筐体361内には収容された残留物を均して搬送する均し搬送部材365が設けられると共に、清掃部材362で掻き落とされた残留物を均し搬送部材365側に案内する案内部材366が設けられている。尚、板状の清掃部材362以外の清掃ブラシ等の他の清掃部材を設けるようにしてもよいことは勿論である。
【0025】
<保守処理の必要性>
本例において、感光体清掃装置27及び中間転写体清掃装置36はいずれも板状の清掃部材272,362を有している。
ここで、中間転写体清掃装置36を例に挙げると、清掃部材362は、
図5(a)(b)に示すように、支持ブラケット363に片持ち支持され、中間転写体30の移動方向(回転方向に相当)に対向する方向に傾斜した状態で配置されている。このため、清掃部材362の自由端側の先端角部は、中間転写体30の移動方向に追従して弾性変形した状態で接触する。
このとき、中間転写体30上に残留したトナー等の残留物が清掃部材362による清掃域で掻き取られる。
【0026】
しかしながら、トナーTNは、ポリエステル等の樹脂バインダに着色剤を混練粉砕したトナー粒子の周囲に外添剤gが使用されていることが多い。ここでいう外添剤gとしては、トナー流動性の向上、摩擦帯電量の調整、清掃性向上などを目的として、コロイダルシリカ等のシリカ(SiO
2)や、酸化チタン、アルミナ、脂肪酸金属塩などの微粒子が用いられている。
この場合、中間転写体30上にトナー等の残留物がある程度残留している状況であれば、
図5(b)に示すように、清掃部材362の先端角部にはある程度の残留物が到達し、清掃部材362の接触部CNと中間転写体30との隙間部分Hを外添剤gによるダムDMで埋め、当該外添剤gによるダムDMによって残留するトナーTNをせき止めて掻き取ることが可能である。
【0027】
これに対し、例えば印字率の少ない画像を連続的に印刷する等の場合に中間転写体30上に残留するトナーTNが極端に少なくなると、
図5(c)に示すように、清掃部材362の接触部CNと中間転写体30との隙間部分Hに外添剤gによるダムが生成されず、清掃部材362の接触部CNが潤滑不良状態に至り、残留するトナーTNが清掃部材362の接触部CNを通り抜けてしまう懸念がある。この場合、清掃部材362の接触部CNが磨耗したり、清掃部材362による清掃性が損なわれたりする不具合が生ずる。
このため、本例では、清掃部材362の磨耗や、清掃部材362による清掃不良を抑制するために、清掃部材362の接触部CNに対し、定期的又は不定期的に外添剤gを補充して清掃部材362を保守する保守処理が必要である。
このような不具合は感光体清掃装置27の清掃部材272についても同様に起こり、前述した保守装置は感光体清掃装置27の清掃部材272についても保守処理を実施する。
尚、保守処理を実施する保守装置については後述する。
【0028】
-転写装置-
更に、転写装置50は、
図3及び
図6(a)に示すように、中間転写体30上に一次転写された画像Gを媒体Sに二次転写するものである。本例では、転写装置50は、複数の張架ロール52(具体的には52a,52b)に転写搬送ベルト53が張架されたベルト転写モジュール51を中間転写体30の表面に接触するように配置したものである。ここで、転写搬送ベルト53はクロロプレン等の材料を用いた体積抵抗率10
6~10
12ル・cmの半導電性ベルトである。一方の張架ロール52aは弾性転写ロール55として構成され、この弾性転写ロール55は、転写搬送ベルト53を介して中間転写体30の転写域TRに圧接配置され、また、中間転写体30の張架ロール34は弾性転写ロール55の対向電極をなす対向ロール56として対向配置されている。更に、転写搬送ベルト53は、一方の張架ロール52a位置から他方の張架ロール52b位置に向けて媒体Sの搬送経路を形成するものである。尚、
図3中、符号57は転写搬送ベルト53を清掃する転写清掃装置である。
【0029】
そして、本例では、弾性転写ロール55は金属製シャフトの周囲に発泡ウレタンゴムやEPDMにカーボンブラック等が配合された弾性層を被覆した構成になっている。更に、対向ロール56(本例では張架ロール34を兼用)には導電性の給電ロール58を介して転写用電源59からの転写バイアスVtが印加されている。この転写用電源59は可変電源部59aと可変電源部59aをオンオフするスイッチ部59bとを有している。一方、弾性転写ロール55(一方の張架ロール52a)は図示外の金属製シャフトを介して接地されており、
図6(b)に示すように、弾性転写ロール55及び対向ロール56間に所定の転写電界Etが形成され、中間転写体30上の画像Gが媒体Sに転写されるようになっている。
尚、他方の張架ロール52bも接地されており、転写搬送ベルト53への帯電を防止するようになっている。また、転写搬送ベルト53の下流端での媒体Sの剥離性を考慮すると、下流側の張架ロール52bは剥離ロールとしても機能するため、上流側の張架ロール52aよりも小径にすることが有効である。
【0030】
-定着装置-
定着装置70は、媒体Sの画像保持面側に接触して配置される駆動回転可能な加熱定着ロール71と、当該加熱定着ロール71に対向して圧接配置され、加熱定着ロール71に追従して回転する加圧定着ロール72とを有し、両定着ロール71,72間の圧接領域に媒体S上に保持された画像を通過させ、当該画像を加熱加圧定着するものである。
尚、定着装置70の定着方式については実施の形態で示した態様に限られるものではなく、非接触、レーザ光を利用した定着方式など適宜選定して差し支えない。
【0031】
-媒体搬送系-
更に、媒体搬送系80は、媒体Sが供給可能な例えば一つの媒体供給容器81を有し、媒体供給容器81から供給される媒体Sを略鉛直方向に延びる鉛直搬送路82から略水平方向に延びる水平搬送路83を経て転写域TRへと至り、その後、転写された画像が保持された媒体Sを、搬送ベルト84を経由して定着装置70による定着域に至り、図示外の装置筐体の側方に設けられた図示外の媒体排出受けに排出するものである。また、媒体搬送系80には媒体Sの位置を整合して転写域TRに供給する位置整合ロール86のほか、各搬送路82,83には適宜数の搬送ロール87が設けられている。
尚、本例では、媒体Sは一つの媒体供給容器81から鉛直搬送路82、水平搬送路83を経由して図示外の媒体排出受けに排出されるようになっているが、これに限られるものではなく、媒体搬送系80は作像エンジン21の仕様に応じて適宜設計変更してよいことは勿論である。ここで、媒体搬送系80の変更例としては、複数の媒体供給容器81を用いるようにした態様、水平搬送路83のうち定着装置70の媒体搬送方向下流側に位置する部位に下方に向けて分岐する分岐搬送路を設け、この分岐搬送路の途中に媒体反転機構を設けることで、媒体排出受けに媒体Sを反転させて排出するようにした態様、あるいは、前述した媒体反転機構で反転された媒体Sを図示外の戻し搬送路を経由して再び鉛直搬送路82から水平搬送路83へと戻し、転写域TRにて媒体Sの裏面に画像を転写する態様などが挙げられる。
【0032】
-微粒子塗布装置-
<微粒子塗布装置の用途>
本例では、中間転写体30には、
図3に示すように、中間転写体30の表面に潤滑性に優れた微粒子を塗布する微粒子塗布装置100が設けられている。
この微粒子塗布装置100は、例えば中間転写体30のうち張架ロール31に掛け渡された箇所に配設され、予め決められた微粒子塗布条件を満たす場合に、中間転写体30上に微粒子を塗布し、微粒子塗布層上に画像Gを保持するようにしたものである。
ここで、微粒子塗布条件としては、例えば使用する媒体Sが表面に凹凸(エンボス)を有するエンボス紙等のエンボス媒体であることが挙げられる。
本例において、媒体Sがエンボス媒体である場合には、エンボス媒体の表面の凹凸の影響で、中間転写体30上に保持された画像Gがエンボス媒体に転写し難くなり、転写不良が生じ易いという懸念がある。本例は、このような事態を解消するために、媒体Sとしてエンボス媒体を使用するような作像条件では、中間転写体30上に微粒子を適量塗布し、微粒子塗布層上に画像Gを保持させ、中間転写体30に対する画像Gの付着力を低減させ、エンボス媒体への画像Gの転写性を向上させることを企図したものである。
【0033】
-微粒子-
本例において、微粒子pとしては、潤滑性に優れたものであれば適宜選定して差し支えないが、本例では、トナーの外添剤として既に利用されているもの(例えばシリカ)と同様のものが用いられている。
このように、微粒子pとして、トナーの外添剤と同様なものを用いた理由は、トナーの外添剤として従来から使用されており信頼性が高いことと、外添剤として併用することによりトナーから遊離したものが中間転写体30に供給され、微粒子の効果をより安定して維持できることが挙げられる。
微粒子pの材料としては、シリカの他に、酸化チタン、アルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化クロム、ベンガラなどの無機微粉末や、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどの有機微粉末を用いることができる。環境安定性を考慮すると微粒子の吸湿性は低いことが望ましく、酸化チタン、アルミナ、シリカなどの吸湿性を有する無機微粉末の場合は、疎水化処理を施したものを用いることが望ましい。これら無機微粉末の疎水化処理は、ヘキサメチルジシラザンの他、例えば、ジメチルジクロロシラン、デシルシラン、ジアルキルジハロゲン化シラン、トリアルキルハロゲン化シラン、アルキルトリハロゲン化シランなどのシランカップリング剤やジメチルシリコンオイルなどの疎水化処理剤と上記微粉末とを高温度下で反応させることにより行うことができる。
また、微粒子pの粒径については、塗布対象である中間転写体30の表面性に合わせて適宜選定して差し支えないが、本例では、表面粗さRzが1.5以下又はマイクログロスが93以上の中間転写体30に対し、粒径が30乃至150nmの範囲の微粒子pが選定されている。
この微粒子pの選定については後述する実施例の結果に基づく。
【0034】
-微粒子塗布装置の構成例-
本例において、微粒子塗布装置100は、
図7(a)に示すように、中間転写体30のうち張架ロール31に掛け渡された部分に対向して開口する塗布容器101と、この塗布容器101の開口に面して配置され、中間転写体30に接触して微粒子pを塗布する塗布ロール110と、中間転写体30に塗布された微粒子塗布層pmの塗布量を均す板状の均し部材120と、を備えている。
ここで、塗布容器101は、塗布ロール110の上方に設けられ、粉状の微粒子pが収容されると共に、下部開口から塗布ロール110に微粒子pが供給される収容部102と、塗布ロール110の下方に容器空間を仕切るように設けられる板状の仕切り部103と、収容部102と仕切り部103との間に設けられ、塗布ロール110の中間転写体30との接触部の反対側に接触して配置される板状の規制部104とを有している。
尚、
図7(a)において、収容部102の下部開口の縁部には塗布ロール110に弾性的に接触するシール部材102aが設けられ、また、仕切り部103の中間転写体30側の端部には中間転写体30に弾性的に接触するシール部材103aが設けられている。
【0035】
<塗布容器>
そして、本例では、塗布ロール110と規制部104との間には楔状隙間105が形成されているため、収容部102の一部には楔状隙間105に微粒子pを充填させるための充填機構106が設けられている。本例において、収容部102は、規制部104に連なる収容側板107を水平方向に対し45度以上の角度θをもって滑り台状に傾斜して配置したものである。そして、充填機構106は、規制部104に対し収容側板107を例えばヒンジ108を介して揺動可能に支持すると共に、収容側板107のヒンジ108から離れた箇所に揺動手段としての回転パドル109を接触して配置し、この回転パドル109を介して傾斜配置された滑り台状の収容側板107を予め決められた角度α(例えば10度~15度)で揺動させ、楔状隙間105に微粒子pを充填させるようになっている。
【0036】
ここで、充填機構106の駆動タイミングとしては、例えば微粒子塗布装置100を駆動するときに塗布ロール110の回転時に同期して駆動するようにすればよいが、微粒子塗布装置100の駆動を開始する際に、楔状隙間105に微粒子pが充填される状態を維持するようにしておくことが好ましい。この場合、例えば
図7(b)に示すように、画像形成システム20の画像形成動作が終了すると、充填機構106は、
図7(c)に示すように、収容側板107に一定時間振動力を与え、楔状隙間105に微粒子pを充填させるようにすればよい。
尚、充填機構106としては、回転パドル109に限られるものではなく、収容側板107の外側に図示外の振動モータを直接又は間接的に接触させて振動を伝搬する態様、あるいは、収容側板107の外側を偏心した図示外の片持ちバーで押し上げ、この片持ちバーを回転させることで収容側板107の外側に片持ちバーの先端部の接触、離間を繰り返し、収容側板107を振動させる態様など適宜設計変更して差し支えない。
【0037】
<塗布ロール>
塗布ロール110は、
図7(a)及び
図8(a)に示すように、表面に半球凹状の多数のセル113を有する弾性体ロールであり、例えば金属製のロール本体111の周囲に例えば発泡ウレタン等の弾性層112を積層し、この弾性層112の表面に多数のセル113をエンボス加工するようにしたものである。
本例において、塗布ロール110のセル113は微粒子pを内部に保持することを要することから、微粒子pの粒径よりも十分に大きい径、例えば100乃至200μmに形成されていればよい。
また、本例では、塗布ロール110は塗布容器101の規制部104に弾性的に接触して配置されている。そして、塗布ロール110及び規制部104の接触部と収容側板107の揺動点(ヒンジ108の回転支点に相当)との間の距離dは約5~10mm程度に選定されている。
更に、塗布ロール110は、図示外の駆動モータからの駆動力を受け、中間転写体30との対向部において中間転写体30の移動方向と同方向になるように回転するものである。ここで、塗布ロール110の回転速度をvr、中間転写体30の回転速度をvbとすると、少なくともvr≠vbであることを必要とする。
【0038】
以下、塗布ロール110の動作過程を模式的に示す。
本例において、塗布ロール110は、
図7(a)及び
図8(a)に示すように、楔状隙間105に微粒子pが充填した状態で回転すると、塗布ロール110と規制部104との接触部では、規制部104に塗布ロール110が弾性的に押し付けられているため、規制部104は、塗布ロール110のセル113に微粒子pを摺り切りで詰め込むという作用を奏する。この結果、
図8(b)<保持>に示すように、規制部104を通過した塗布ロール110のセル113には多数の微粒子pが充填した状態で保持される。
次いで、塗布ロール110のうち微粒子pを保持したセル113が中間転写体30との接触部に到達すると、
図8(b)<接触>に示すように、セル113内の微粒子p群の入口に面した箇所の微粒子p1群が中間転写体30の表面に接触する。
【0039】
この状態において、塗布ロール110の回転速度vrと中間転写体30の回転速度vbとは速度差があるため、
図8(b)<押付け/せん断>に示すように、セル113内の微粒子p群が中間転写体30に押付けられ、セル113内の微粒子p群のうち入口に面した箇所の微粒子p1群が中間転写体30の表面に付着しようとする。このため、セル113内の入口に面した箇所の微粒子p1群と他の微粒子p2群との境界には速度差に伴うせん断力Fsが働き、この境界でセル113内の微粒子p群が二分される。
しかる後、塗布ロール110の微粒子p群を保持したセル113が中間転写体30との接触部を通過すると、
図8(b)<離間>に示すように、当該セル113は中間転写体30の表面から離れた位置に移動する。このとき、セル113の入口に面した箇所の微粒子p1群はその付着力により中間転写体30の表面側に塗布され、セル113内の他の微粒子p2群はセル113内に保持されたまま残る。
【0040】
<均し部材>
本例において、均し部材120は、
図7(a)及び
図8(a)に示すように、支持ブラケット121を介して塗布容器101の一部に固定されている。この均し部材120は弾性を有する板状部材にて構成されており、中間転写体30の移動方向に対向する方向に傾斜した状態で中間転写体30に先端部が接触するように配置されている。このとき、均し部材120は、中間転写体30上に塗布された微粒子塗布層pmを略均一な状態に均す必要があるため、中間転写体30の移動面に対する均し部材120の傾斜角度βが例えば5~20度の範囲で適切に選定されている。尚、傾斜角度βは例えば中間転写体清掃装置36の清掃部材362よりも寝かせ目の設定にし、塗布した微粒子pを除去し過ぎる事態を回避するようにしている。
このように、本例では、塗布ロール110で中間転写体30上に塗布された微粒子塗布層pmは、均し部材120によって略均一に均される。
【0041】
-微粒子の塗布状態の検出法-
本例では、中間転写体30上の微粒子pの塗布状態を検出する検出手段として光学式センサ130が設けられている。この光学式センサ130は、中間転写体30の表面に対向して配置されていればよく、例えば
図9(a)(b)に示すように、中間転写体30のうち張架ロール32,33間に位置する領域で中間転写体30の回転方向に交差する交差方向の端部寄りに配置されている。
ここで、光学式センサ130は、
図9(c)に示すように、例えばセンサ筐体131内に発光素子132及び受光素子133を有するもので、発光素子132から中間転写体30の表面に光を照射し、中間転写体30からの反射光を受光素子133で検出するものである。
【0042】
本例においては、光学式センサ130は、中間転写体30上に微粒子pが塗布されていない状態では、
図9(c)に示すように、中間転写体30からの反射光を受光素子133で検出する。一方、光学式センサ130は、中間転写体30上に微粒子pが塗布されている状態では、
図9(d)に示すように、中間転写体30上の微粒子塗布層pmからの反射光を受光素子133で検出する。
ここで、中間転写体30上の微粒子被覆率Bc(%)と、光学式センサ130出力(V)との関係を調べたところ、以下のような傾向が見られた。但し、光学式センサ130として波長940nmのものを用い、微粒子として粒径115nmのSiO
2を用いた。
この場合、光学式センサ130出力は、
図9(e)に示すように、微粒子pが塗布されていない状態のときを最大値とし、微粒子被覆率Bcが大きくなるに従って次第に低減する傾向になっている。このとき、微粒子被覆率Bcが10%以上である場合には、光学式センサ130の出力は、微粒子pが塗布されていない場合の約2/3以下に低減することから、微粒子pが塗布されている状態であることを明確に判別することが可能である。
但し、本例では、微粒子被覆率Bcが50%を超えると、光学式センサ130の出力の低減率は極めて少なくなり、光学式センサ130の出力は微粒子被覆率Bcが50%の場合と略同程度の値になっている。これは、微粒子被覆率Bcが高くなると、微粒子による乱反射や光閉じ込め効果により、反射出力が低減することによるものと推測される。
尚、本例では、光学式センサ130の出力は受光素子133の出力に相当し、また、微粒子被覆率Bcは、中間転写体30上に塗布された微粒子塗布層pmにつき、予め決められた基準領域内での微粒子pの占有率を意味する。
従って、本例では、微粒子pが塗布されている状態の光学式センサ130の出力は、微粒子pが塗布されていない状態の光学式センサ130の出力より低いことから、光学式センサ130の出力をチェックすることで、中間転写体30上に微粒子pが塗布されているか否かを判別することが可能である。
特に、光学式センサ130の出力特性を考慮すると、微粒子塗布層pmを形成する場合には、微粒子被覆率Bcが10乃至50%の範囲で選定することが好ましい。
【0043】
-微粒子被覆率とトナー付着力との関係-
本例において、微粒子被覆率Bcとトナー付着力Fとの関係を調べたところ、トナー付着力Fは、
図10(a)に示すように、微粒子未塗布時が最も大きく、微粒子被覆率Bcが一定以上に至るまでは増加に伴って次第に減少する傾向が見られた。しかしながら、微粒子被覆率Bcが一定以上になると、トナー付着力Fは再度増加する傾向が見られる。これは、微粒子被覆率Bcが一定以上になると、
図10(b)の塗布量過多の場合に示すように、微粒子pとトナーTNとの接点が増え、ファンデルワールス力の増加に伴ってトナー付着力Fも増加するものと想定される。
このため、本例では、
図10(a)に示すように、トナー付着力Fが最も低くなる極小値付近の微粒子被覆率Bcを選定し、微粒子の塗布量の最適化を図るようにした。尚、微粒子被覆率Bcの選定に当たっては、本例とは異なるものに選定してもよいことは勿論である。
【0044】
-微粒子塗布の有無と転写バイアスとの関係-
更に、本例では、微粒子塗布時と微粒子未塗布時とでは、トナー付着力Fが異なることから、転写装置50の転写バイアスVtは微粒子塗布の有無によって異なるように選定されている。
例えば微粒子未塗布時の場合に、
図6(b)に示すように、中間転写体30上にトナーTNからなる画像Gが保持されている。ここで、転写バイアスを変化させて画質の良否を調べたところ、
図10(c)に示すように、転写バイアスVtがVt0のときに画質が最も良好で、これよりも高く設定しても、低く設定しても画質は悪化する傾向が見られた。
また、予め決められた微粒子被覆率Bcで微粒子pを塗布した場合には、
図6(c)に示すように、中間転写体30上に微粒子塗布層pmを介してトナーTNからなる画像Gが保持されている。ここで、転写バイアスを変化させて画質の良否を調べたところ、転写バイアスVtがVt1(<Vt0)のときに画質が最も良好で、これよりも高く設定しても、低く設定しても画質は悪化する傾向が見られた。但し、微粒子塗布時に、微粒子未塗布時の転写バイアスVt0を選定したとしても、微粒子未塗布時の画質よりも良好であることが確認された。
従って、微粒子塗布時の転写バイアスVtについては、微粒子未塗布時の転写バイアスVt0と同様の値に選定しても差し支えないが、微粒子塗布時に画質が最も良好な転写バイアスVt1を選定することとした。
【0045】
-制御系-
本実施の形態においては、画像形成システム20の制御系は、
図11に示すように、各種プロセッサを含むマイクロコンピュータにて構成される制御装置140を有する。ここでいう「プロセッサ」とは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0046】
この制御装置140には画像形成システム20の操作パネル150及び光学式センサ130が接続されている。また、制御装置140と各制御対象(各画像形成部22、中間転写体30、転写装置50の転写用電源59、微粒子塗布装置100等)との間が夫々接続されている。
更に、操作パネル150には、画像形成システム20による作像処理を開始するためのスタートスイッチ(
図11では「スタートSW」と表記)151、各種作像モード(片面・両面印刷モード、標準・高画質印刷モードなど)を選択するモード選択部152及び媒体Sの種類(抵抗、厚み、坪量、サイズ、エンボスの有無等)を指示する媒体種指示部153が設けられている。尚、媒体Sの種類については、例えば媒体供給容器81や搬送路中に媒体Sの種類(抵抗、厚み、サイズ、エンボスの有無等)を検出する検出器を設置し、当該検出器にて媒体Sの種類を取得するようにしてもよいことは勿論である。
【0047】
-画像形成システムの作像処理-
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の作像処理過程を説明する。
先ず、
図11に示すように、スタートスイッチ151をオン操作すると、画像形成システム20はモード選択部152で選択された作像モードに基づく印刷ジョブを開始する。この状態において、媒体供給容器81から媒体Sが供給され、一方、画像形成部22では媒体Sに転写する各色成分画像の作像処理が行われ、作製された色成分画像が中間転写体30を介して転写域TRへと移動する。
この後、媒体Sは水平搬送路83を経て転写域TRへと搬送され、転写装置50による転写動作が行われ、しかる後、各色成分画像が転写された媒体Sは定着装置70を通過して媒体S上に画像が定着される。
【0048】
-微粒子の塗布制御処理-
本例においては、制御装置140は、
図12に示す微粒子塗布制御プログラムを実行し、中間転写体30上への微粒子pの塗布動作を制御する。
同図において、制御装置140は、先ず、媒体種指示部153からの指示情報に基づいて媒体Sがエンボス媒体であるか否かを判別する。そして、媒体Sがエンボス媒体である場合には、微粒子塗布量を設定し、微粒子塗布装置100による微粒子pの塗布処理を実施する。ここで、微粒子塗布量の設定については適宜選定して差し支えないが、本例では、
図10(a)(b)に示すように、トナー付着力Fが最も低くなる極小値付近の微粒子被覆率Bcに選定されている。
また、媒体Sがエンボス媒体ではない場合には、微粒子塗布の他の条件の有無を見て、微粒子塗布の他の条件がある場合には、微粒子塗布量を設定の上、微粒子pの塗布処理を実施し、一方、微粒子塗布の他の条件がない場合には、微粒子pの塗布処理を不実施とすればよい。
ここで、微粒子塗布の他の条件としては、例えば用紙繊維の表出量が多いラフ紙等を使用する条件が挙げられる。本例のラフ紙は、エンボス加工による凹凸(30μm程度以上)は無いが、例えば電子写真用用紙よりも粗い紙(10~30μm程度の凹凸を具備)を指す。
【0049】
-清掃装置の保守制御処理-
制御装置140は、
図12に示す清掃装置保守制御プログラムを実行し、感光体清掃装置27及び中間転写体清掃装置36に対し保守処理を実施し、清掃部材272,362の磨耗や清掃部材272,362による清掃不良を抑制する。
同図において、制御装置140は、印刷枚数の計数情報や画像密度の累積情報を参照し、保守処理が必要な条件であるか否かを判別する。
このとき、保守処理が必要な条件である場合には、保守処理実施を決定し、逆に、保守処理が不要な条件である場合には、保守処理不実施を決定する。
そして、保守処理実施を決定した場合には、保守対象が中間転写体清掃装置(
図13ではITB清掃装置と表記)36であるか否かを判別し、中間転写体清掃装置36でない場合には、保守対象である感光体清掃装置27に対して通常の保守モードを実施する。
一方、保守対象が中間転写体清掃装置36である場合には、光学式センサ130の出力から中間転写体30の表面に微粒子pが塗布されているか否かを判別し、微粒子pが塗布されていない場合には、中間転写体清掃装置36に対して通常の保守モード(
図15(a)(b)参照)を実施し、微粒子pが塗布されている場合には、中間転写体清掃装置36に対して特例の保守モードを実施する(
図15(c)~(e)参照)。
【0050】
-画像形成システムの作動-
<通常の作像モード(作像モードI)>
本例において、画像形成システム20は、中間転写体30に微粒子pが塗布されない条件では通常の作像モード(作像モードI)を実施する。
通常の作像モード(作像モードI)では、
図11及び
図14(a)(b)に示すように、各画像形成部22(22a~22d)で作製された各色成分の画像G(具体的にはGa~Gd)は、中間転写体30上の各作像領域GRに順次一次転写され、転写域TRにて媒体Sに二次転写される。尚、
図14(a)中、各作像領域GRは非作像領域NRを介して間欠的に配置されている。また、各色成分の画像Gは各色成分の画像要素をラダーパターン状に繰り返して表記したものであるが、これは各色成分の画像要素を含む画像を模式的に示したものである。
図14(c)、
図15(a)(c)も同様である。
【0051】
<特例の作像モード(作像モードII)>
本例において、画像形成システム20は、中間転写体30に微粒子pが塗布される条件では、通常の作像モードに微粒子pの塗布処理が加わった特例の作像モード(作像モードII)を実施する。
特例の作像モード(作像モードII)では、
図11及び
図14(c)(d)に示すように、微粒子塗布装置100は、中間転写体30上の各作像領域GR及び非作像領域NRを含む全域に微粒子pを予め決められた微粒子被覆率Bcに則って塗布し、しかる後、各画像形成部22(22a~22d)は中間転写体30の各作像領域GRに各色成分の画像Gを順次一時転写する。このため、各画像形成部22で作製された各色成分の画像Gは中間転写体30上の微粒子塗布層pm上に保持され、転写域TRにて媒体S(本例ではエンボス媒体Sb)に二次転写される。
このとき、中間転写体30上の各色成分の画像Gは微粒子塗布層pmを介して保持されているため、エンボス媒体Sb(S)に転写し易くなっており、各色成分の画像Gはエンボス媒体Sbの凹凸に影響されずに適切に転写される。
特に、本例では、転写装置50で使用される転写バイアスVtは通常の作像モード時の転写バイアスVt0に代えて、微粒子塗布時の転写条件に最適なVt1に変更して選定されているため、転写バイアスVt0を使用した場合よりも高画質の画像転写性を得ることが可能である。
【0052】
本例においては、制御装置140が保守手段としての保守装置として働く。
<通常の保守モード(保守モードI)>
中間転写体30上に微粒子pが塗布されない条件では、制御装置140は、
図11、
図14及び
図15(a)(b)に示すように、通常の保守モード(保守モードI)を実施する。
本例において、制御装置140は、予め決められた清掃部材272,362を保守処理する必要がある条件に至った場合に、各画像形成部22の必要なデバイス(帯電装置24、光書込装置25及び現像装置26)を利用し、各感光体23の全部又は一部に保守用画像Gmを作製し、保守対象となる清掃部材272,362に保守用画像Gmを供給するようにしたものである。
【0053】
ここで、保守処理が必要な条件としては、清掃部材272,362による清掃動作が損なわれる程度に、感光体23又は中間転写体30上に残留するトナーが少なくなる条件が挙げられる。この条件は、印刷ジョブの作像条件や印刷枚数条件を累積し、予め決められた閾値に到達したか否かを判別するようにすればよい。
また、保守用画像Gmは、通常の画像Gとは別に作製され、清掃部材272,362を保守処理に必要な量を踏まえて供給されるものであるが、各現像装置26の現像剤を利用することから、現像剤を無駄に消費しないような形状パターンを有している。本例では、保守用画像Gmは、感光体23又は中間転写体30の回転方向に交差する交差方向(例えば幅方向)に沿って連続的に延びる一若しくは複数の帯状画像(所謂トナーバンドに相当)TBとして形成されている。帯状画像TBの厚さ、幅寸法、画像濃度Cin及び本数等は適宜選定して差し支えない。例えば厚さは通常のトナー画像の厚さと同等(例えば6~10μm)、幅寸法は1~3mm程度、画像濃度Cinは50乃至100%程度、本数は一本の帯状画像TBの構成を踏まえて適宜選定するようにすればよい。
尚、中間転写体30上に保持される保守用画像Gmについては、
図15(a)(b)では各画像形成部22(22a~22d)の全ての色成分の帯状画像TBを備えたものが例示されているが、必ずしも全ての色成分の帯状画像TBを備えている必要はなく、一部の色成分の帯状画像TBを備えてもよい。
【0054】
更に、保守用画像Gmは、感光体23又は中間転写体30の作像領域GRの幅方向全域に及んで形成されていればよい。尚、保守用画像Gmは、作像領域GRの幅方向全域に及んで連続的に形成されている態様に限らず、作像領域GRの幅方向全域に及ぶように複数に分割された帯状画像を不連続的に形成してもよい。
更にまた、本例では、画像形成システム20は、作像モードと並行して保守モードを実施可能とする態様であるため、保守用画像Gmは原則として作像領域GR以外の非作像領域NRに形成される。感光体清掃装置27に対する保守処理では、感光体23上の非作像領域(図示せず)の保守用画像Gmは中間転写体30に転写させずに感光体清掃装置27に供給される。一方、中間転写体清掃装置36に対する保守処理では、感光体23上に作製された保守用画像Gmは中間転写体30上の非作像領域NRに転写された後、媒体Sに転写させずに中間転写体清掃装置36に供給される。
【0055】
このように、通常の保守モード(保守モードI)では、
図16(a)に示すように、保守用画像Gmが清掃部材272,362の接触部に強制的に供給されるため、保守用画像Gmに含まれている外添剤gが清掃部材272,362の接触部に多く補充され、ダムDMとして堆積する。これにより、清掃部材272,362の接触部と感光体23、中間転写体30との接触状態は良好に保たれ、清掃部材272,362に対する保守処理が終了する。
【0056】
<特例の保守モード(保守モードII)>
中間転写体30上に微粒子pが塗布される条件では、制御装置140は、
図11、
図14及び
図15(c)(d)に示すように、中間転写体清掃装置36に対し、特例の保守モード(保守モードII)を実施する。尚、本例では、感光体清掃装置27については通常の保守モードIのみが実施される。
特例の保守モード(保守モードII)では、制御装置140は、通常の保守モード(保守モードI)と同様に、保守用画像Gmを作製するが、保守用画像Gmとしての帯状画像TBの幅寸法w2が通常の保守モードIの幅寸法w1よりも狭く設定される。このため、保守用画像Gmに使用されるトナー消費量が少なく抑えられる。
【0057】
このため、本例では、
図16(b)に示すように、中間転写体30上に微粒子塗布層pmが塗布された上に保守用画像Gmが保持されているため、保守用画像Gm及び微粒子塗布層pmが清掃部材362の接触部に強制的に供給される。このとき、保守用画像Gmを構成するトナー消費量は通常の保守モードよりも少ないため、保守用画像Gmに含まれる外添剤gの量も少ないが、微粒子塗布層pmに含まれる微粒子pが外添剤gの量を補填する。よって、外添剤g及び外添剤gと同等な微粒子pが清掃部材362の接触部に多く補充され、ダムDMとして堆積する。これにより、清掃部材362の接触部と中間転写体30との接触状態は良好に保たれ、清掃部材362に対する保守処理が終了する。
【0058】
<特例の保守モード(保守モードII)の別の例>
また、特例の保守モード(保守モードII)の別の例としては、
図15(e)に示すように、中間転写体清掃装置36に対する保守処理に際し、保守用画像Gmを作製することなく、微粒子塗布層pmのみを保守用画像として代用するようにすることも可能である。このとき、特例の作像モード(作像モードII)を実施している場合には、中間転写体30上に既に微粒子塗布層pmが形成されているため、これを保守用画像として代用するようにすればよい。また、通常の作像モード(作像モードI)を実施している場合には、中間転写体30上に微粒子塗布層pmが形成されていないので、特例の保守モードを実施する場合に、微粒子塗布装置100を作動させ、中間転写体30上の非作像領域NRのみに対し微粒子塗布層pmを形成し、これを保守用画像として代用するようにすればよい。
【0059】
-微粒子塗布装置の他の構成例-
本実施の形態において、例えば微粒子塗布装置100は実施の形態1で開示された態様に限られるものではなく、例えば変形の形態1-1又は変形の形態1-2に示す態様のように適宜設計変更してもよいことは勿論である。
◎変形の形態1-1
図17は変形の形態1-1に係る微粒子塗布装置を示す。
同図において、微粒子塗布装置100は、実施の形態1とは異なる構成を有するほか、中間転写体清掃装置36に一体的に組み込まれている。
本例において、中間転写体清掃装置36は、中間転写体30の張架ロール31付近のうち張架ロール31よりも回転方向上流側に設けられている。この中間転写体清掃装置36は、中間転写体30の表面に対向して開口する清掃筐体361を有し、清掃筐体361の開口縁に支持ブラケット363を介して弾性を有する板状の清掃部材362を設けると共に、清掃部材362に対向する中間転写体30の裏面に対向ロール364を設けたものである。更に、本例では、清掃筐体361内の下部には収容された残留物を均して搬送する一対の均し搬送部材365が設けられると共に、板状の清掃部材362よりも中間転写体30の回転方向上流側にはブラシ状の第2の清掃部材367が設けられ、この第2の清掃部材367に対向する中間転写体30の裏面に対向ロール368が設けられている。
【0060】
また、微粒子塗布装置100は、中間転写体清掃装置36の清掃筐体361の上部に組み込まれている。
本例において、微粒子塗布装置100は、実施の形態1と同様に、中間転写体30のうち張架ロール31に掛け渡された部分に対向して開口する塗布容器101と、この塗布容器101の開口に面して配置され、中間転写体30に接触して微粒子pを塗布する塗布ロール110と、中間転写体30に塗布された微粒子塗布層pmの塗布量を均す板状の均し部材120と、塗布ロール110の表面に微粒子pを付着させる微粒子付着機構170と、を備えている。
本例において、塗布容器101は、実施の形態1と異なり、清掃筐体361の上部に一体的に形成されており、塗布ロール110と清掃部材362との間に仕切り部材160を有している。また、塗布ロール110は実施の形態1と略同様に構成されている。更に、均し部材120は、塗布容器101の開口上縁部に支持ブラケット121を介して支持され、実施の形態1と略同様に構成されている。
【0061】
特に、本例では、微粒子付着機構170は、多数の微粒子を圧縮成型して作製したブロック状の微粒子固形塊171を、塗布ロール110の中間転写体30との接触部とは反対側に接触させ、押圧手段としての押圧バネ172によって塗布ロール110の表面に押付けるようにしたものである。この微粒子付着機構170によれば、塗布ロール110の回転に伴って塗布ロール110と微粒子固形塊171との接触部で微粒子固形塊171から微粒子pが削り出され、塗布ロール110の凹状のセル(図示せず)に擦り切りで詰め込まれ、塗布ロール110の表面に付着されるようになっている。
この結果、塗布ロール110は表面に微粒子pを保持した状態で中間転写体30との接触部に至り、中間転写体30の表面に微粒子pを塗布した後に、均し部材120にて所定の塗布量に均される。尚、本例では、微粒子固形塊171と塗布ロール110との接触部から削られた微粒子pが一部落下したとしても、仕切り部材160で仕切られた空間に堆積するようになっている。
【0062】
また、本例では、微粒子塗布装置100は、実施の形態1に示す塗布容器101(粉状の微粒子を収容する収容部102、塗布ロール110と規制部104との間に形成される楔状隙間105、充填機構106)を備えていないが、実施の形態1に示す塗布容器101を利用し、収容部102には粉状の微粒子pに代えて微粒子固形塊171(
図17参照)を塗布ロール110又は塗布ロール110とは別に設けられた図示外の削りロールに接触するように配置し、塗布ロール110又は削りロールで微粒子固形塊171から微粒子pを削り出し、削り出された粉状の微粒子pを楔状隙間105に充填するようにしてもよい。
【0063】
◎変形の形態1-2
図18は、変形の形態1-2に係る微粒子塗布装置を示す。
同図において、微粒子塗布装置100は、実施の形態1と同様に、粉状の微粒子pを収容する塗布容器101、中間転写体30に微粒子pを塗布する塗布ロール110及び中間転写体30に塗布された微粒子塗布層pmを均す均し部材120とを備えているが、塗布ロール110、均し部材120のレイアウト並びに塗布ロール110への微粒子pの付着手法が実施の形態1と異なる。
本例においては、塗布ロール110、均し部材120は、中間転写体30のうち張架ロール31に掛け渡された部分の上方に配置されている。
また、塗布容器101は、塗布ロール110の図中右半面を覆うように開口し、粉状の微粒子pを収容する収容部102を有し、この収容部102内のうち塗布ロール110の下部付近に当該塗布ロール110に接触する規制部104を設け、この規制部104と塗布ロール110との間に楔状隙間105を形成したものである。そして、この収容部102のうち楔状隙間105の上方には堆積した微粒子pを撹拌する撹拌部材としてのアジテータ165が設けられている。尚、塗布容器101の収容部102の開口上縁には塗布ロール110の上部に弾性的に接触してシールする上側シール部材166が設けられ、収容部102の開口下縁には中間転写体30の表面に弾性的に接触してシールする下側シール部材167が設けられている。
【0064】
このように、本例によれば、中間転写体30に微粒子pを塗布する場合には、中間転写体30の回転に伴って塗布ロール110及びアジテータ165を回転させるようにすればよい。このとき、塗布容器101の収容部102ではアジテータ165の回転によって収容部102内の微粒子pが楔状隙間105側に充填され、この状態で、塗布ロール110が回転すると、塗布ロール110と規制部104との接触部では、規制部104は塗布ロール110のセル(図示せず)に微粒子pを摺り切りで詰め込む。この結果、塗布ロール110は表面に微粒子pを保持した状態で中間転写体30との接触部に至り、中間転写体30の表面に微粒子pを塗布した後に、均し部材120にて所定の塗布量に均される。
【0065】
◎実施の形態2
実施の形態2に係る画像形成システム20は、中間転写体30に塗布する微粒子塗布量を複数段階に変化させた態様に本発明を適用したものであり、基本的には、実施の形態1と同様な構成を備えているが、中間転写体30への微粒子塗布制御及び中間転写体清掃装置36の保守制御が実施の形態1と異なる。
-微粒子の塗布制御処理-
本例において、制御装置140(
図11参照)は、
図19に示す微粒子塗布制御プログラムを実行し、中間転写体30上への微粒子pの塗布動作を制御する。
同図において、制御装置140は、先ず、媒体種指示部153(
図11参照)からの指示情報に基づいて媒体Sがエンボス媒体であるか否かを判別する。このとき、エンボス媒体の種類がエンボスの深さや大きさ等に依存して複数存在する場合には、夫々の種類(例えばSb1,Sb2,Sb3)を判別する。
そして、媒体Sがエンボス媒体である場合には、エンボス媒体の種類(Sb1,Sb2,Sb3)に応じて微粒子塗布量MS(MS1,MS2,MS3)を設定し、微粒子塗布装置100による微粒子pの塗布処理を実施する。ここで、微粒子塗布量MSの設定については適宜選定して差し支えないが、本例では、
図21に示すように、中間転写体30上の微粒子被覆率Bcに基づいて設定し、MS1<MS2<MS3の関係を満たすようにした。
このとき、微粒子塗布量MSを変更する場合には、例えば中間転写体30の回転速度vbに対する塗布ロール110の回転速度vrを変え、速度差を変更することで中間転写体30に対する塗布ロール110の塗布量を変えるようにすればよい。
また、媒体Sがエンボス媒体ではない場合には、微粒子塗布の他の条件の有無を見て、微粒子塗布の他の条件がある場合には、微粒子塗布量を設定の上、微粒子pの塗布処理を実施し、一方、微粒子塗布の他の条件がない場合には、微粒子pの塗布処理を不実施とすればよい。
【0066】
-中間転写体清掃装置の保守制御処理-
制御装置140(
図11参照)は、
図20に示す中間転写体清掃装置の保守制御プログラムを実行し、中間転写体清掃装置36に対し保守処理を実施し、清掃部材362の磨耗や清掃部材362による清掃不良を抑制する。尚、感光体清掃装置27の保守処理については実施の形態1と略同様に通常の保守モードによる保守処理が実施される。
同図において、制御装置140は、印刷枚数の計数情報や画像密度の累積情報を参照し、保守処理が必要な条件であるか否かを判別する。このとき、保守処理が必要な条件に至った場合には、保守処理実施を決定する。
そして、保守処理実施を決定した場合には、光学式センサ130(
図9参照)の出力から中間転写体30の表面に微粒子pが塗布されているか否かを判別し、微粒子pが塗布されていない場合には、中間転写体清掃装置36に対して通常の保守モード(
図15(a)(b)参照)を実施する。尚、本例では、光学式センサ130の出力が微粒子塗布量MS1に対応する閾値TH1未満である場合には、微粒子pが塗布されていないものと同様に扱うことにした。
【0067】
一方、微粒子pが塗布されている場合には、中間転写体清掃装置36に対して特例の保守モードを実施する(
図15(c)~(e)参照)。
ここで、光学式センサ130の出力が微粒子塗布量MS1,MS2,MS3に対応する閾値をTH1,TH2,TH3とすると、本例では、
図20及び
図21に示すように、光学式センサ130の出力が閾値TH1以上閾値TH2未満である場合には、保守用画像Gmとして微粒子塗布量MS1に合う帯状画像TB1を選定する。また、光学式センサ130の出力が閾値TH2以上閾値TH3未満である場合には、保守用画像Gmとして微粒子塗布量MS2に合う帯状画像TB2を選定する。更に、光学式センサ130の出力が閾値TH3以上である場合には、保守用画像Gmとして微粒子塗布量MS3に合う帯状画像TB3を選定する。
ここで、微粒子非塗布時における帯状画像をTB0とすると、保守用画像Gmの供給量の大小は、
図21に示すように、TB0>TB1>TB2>TB3の関係を満たすようになっている。
【0068】
このように、本実施の形態では、特例の保守モードは、微粒子が塗布されていない条件での通常の保守モード時の保守用画像量を上限とし、微粒子が塗布されている条件では、微粒子の塗布量に依存して保守用画像量を異なるように制御する。
より具体的には、特例の保守モードは、微粒子が塗布されている条件では、微粒子の塗布量が多いほど保守用画像量を少なくするように制御する。言い換えれば、特例の保守モードは、微粒子が塗布されている条件では、微粒子の塗布量が少ないほど保守用画像量を多くするように制御する。
よって、本実施の形態では、中間転写体30上の微粒子の塗布量が変化する態様において、中間転写体清掃装置36を保守処理するに際し、微粒子の塗布量が一律に決められている場合に比べて、中間転写体30に塗布された微粒子塗布層pmを有効に利用し、保守用画像量を極力制限して使用することが可能である。
尚、本実施の形態では、微粒子塗布量MSを段階的に変化させているが、例えば
図21に示すように、微粒子被覆率の変化曲線に則って微粒子塗布量を連続的に変化させ、これに併せて、特例の保守モードでの保守用画像量を選定するようにしてもよいことは勿論である。
【0069】
◎実施の形態3
図22は実施の形態3に係る画像形成システムの要部を示す。
同図において、画像形成システム20は、実施の形態1,2と異なり、例えばブラックトナーによる単色画像を形成するものである。
同図において、画像形成システム20は、例えば電子写真方式を採用したものであって、ドラム状の感光体223を有しており、この感光体223の周囲には、感光体223が帯電される帯電装置224、帯電された感光体223上に静電潜像が書き込まれる光書込装置225、感光体223上に書き込まれた静電潜像が各色成分トナーにて現像される現像装置226、感光体223上に形成されたトナー画像が媒体Sに転写される転写装置227及び感光体223上に残留するトナーTNが清掃される清掃装置228(板状の清掃部材228aを具備)を配設したものである。
【0070】
そして、本例では、感光体223の周囲のうち、光書込装置225と現像装置226との間に微粒子塗布装置100が設けられ、例えば媒体Sがエンボス媒体であるような場合には、感光体223上に微粒子が塗布されるようになっている。
本例において、制御装置240には操作パネル250が接続され、この操作パネル250には媒体種指示部253等が接続されている。そして、制御装置240は、通常の作像制御処理に加えて、感光体223への微粒子塗布制御処理、清掃装置228に対する保守制御処理等を実施し、感光体223及び感光体223周りの各デバイスを適宜制御するようになっている。
尚、符号229は転写装置227の転写用電源を示す。
本例においては、制御装置240は、感光体223に対して微粒子の塗布制御を実施し、この微粒子の塗布状態に依存して清掃装置228に対する保守処理(通常の保守処理、特例の保守処理)を実施する。ここでいう通常の保守処理、特例の保守処理については、実施の形態1,2で開示したものと略同様に実施される。
また、本例は、単色画像を形成する画像形成システムであるが、例えば媒体Sを搬送する媒体搬送ベルトに対向して各色成分の画像形成部22(22a~22d;
図3参照)を配列した画像形成システムにおいて、本例の画像形成システム20を適用することも可能である。
【実施例0071】
本実施例は、富士フイルムビジネスイノベーション社製 Revoria Press PC1120をベースとした装置を用いた。評価環境は22℃/55%、プロセススピードは524mm/sである。トナーは、YMCが比重1.1、粒径4.7μm、Kが比重1.2、粒径4.7μmである。単位面積当たりのトナー量TMA(Toner Mass per Area)は、YMCを3.3g/m2、Kを3.7g/m2に設定した。一次転写装置35はφ28の弾性ロールであり、体積抵抗は7.7logΩ、アスカC硬度30°のものを用いた。一次転写電流は54μAに設定した。中間転写体30としてはポリイミドにカーボンを分散した体積抵抗率が12.5logΩcmの中間転写ベルトを用いた。中間転写体清掃装置36は、厚さ2mmのウレタンゴムからなる板状の清掃部材としての清掃ブレードをセッティング角度22°、線圧2.3gf/mmで中間転写ベルト表面に当接させたものである。
【0072】
転写装置50は、体積抵抗6.3logΩのφ28の弾性転写ロール55に、転写搬送ベルト53として厚さ450μm、体積抵抗が9.2logΩのφ40のゴムベルトを被せ、φ20の剥離ロールとの間に張架したベルト転写モジュール51を用い、対向ロール56は、中間転写体30を介し、アスカC硬度53°、表面抵抗7.3logΩ/□のφ28の弾性ロールを用いた。
また、微粒子は粒径115nmのSiO2を用い、塗布ロール110はφ28のアスカC硬度15°のウレタンスポンジロールを用いた。そして、ウレタンスポンジロールに微粒子を保持させたものを、食込み量0.5mmで中間転写体30に当接させ、中間転写体30に対して周速比1.5で回転させることにより、中間転写体30の表面に微粒子を塗布した。中間転写体30への微粒子の塗布量は、ウレタンスポンジロールの微粒子の保持量で調整した。
【0073】
-微粒子の塗布量と保守用画像量との関係-
媒体としては富士フイルムビジネスイノベーション社製のJ紙(非コート紙、82gsm)を用い、このJ紙に対して、例えば
図15(a)(b)に示す画像/非画像チャートを1kpv出力した時の、中間転写体の清掃不良について、微粒子の塗布量と保守用画像の帯状画像としてのトナーバンド量とを振って確認を行なった。
具体的には、微粒子の塗布量は、「微粒子未塗布0%」、「微粒子塗布被覆率10%」、「微粒子塗布被覆率40%」に分け、トナーバンド量は、「バンド無し」、「バンド1%」、「バンド4%」、「バンド10%」に分けた。
ここで、トナーバンド量(重量%)は、1色当りであり、A4全面に単色ベタを描画したケースを100%として、換算した値である。
結果を
図23に示す。
図23によれば、微粒子の塗布量が多いほど、トナーバンド量が少なくても、清掃不良を抑制できることが示唆される。
【0074】
-微粒子の粒径、トナー付着力及び画像転写性の関係-
本実施例の中間転写体30上に微粒子が塗布されると、微粒子塗布層の表面凹凸は微粒子の粒径に依存して変化する。
ここで、微粒子未塗布の中間転写体30の表面性を計測したところ、表面粗さRzが1.5以下又はマイクログロスが93以上の中間転写ベルトを使用した。
そして、微粒子塗布層の表面凹凸(微粒子の粒径に相当)[nm]と、中間転写体30の表面に対するトナー付着力(以下トナー付着力という)[kPa]との関係について調べたところ、
図24に示す結果が得られた。ここで、トナー付着力は、ガラスノズルから圧縮空気を圧を上げながら中間転写体30の表面上のトナー層に吹き付け、トナー層が剥離した時点の空気圧を付着力(代用特性)として表記したものである。
【0075】
更に、
図24に示す結果を踏まえ、トナー付着力[kPa]と転写性グレードとの関係を調べたところ、
図25に示す結果が得られた。ここで、転写性グレードは、中間転写ベルトにトナー付着力に対応する微粒子塗布層を形成し、微粒子塗布層上に予め決められた画像/非画像チャートを保持させ、これをエンボス媒体としてのエンボス紙に転写したときの画質を目視で評価したものである。この転写性グレードは数値が小さい程エンボス媒体に対する転写性が良好であることを示す。
【0076】
図25によれば、トナー付着力が予め決められた閾値L(本例では10kPaを選定)以下である場合に、エンボス媒体に対する転写性グレードが良好であることが理解される。
ここで、
図24において、トナー付着力が閾値L(10kPa)以下にある微粒子の粒径範囲を調べたところ、粒径30乃至115nmの範囲が好適であることが理解される。
これにより、微粒子塗布の主効果は、トナーと中間転写体30表面との間の付着力を低減させ、画像転写性を良好にすることが把握される。
但し、微粒子の粒径は30乃至115nmの適切な範囲に選定することが好ましい。
この適切な範囲内の微粒子は、中間転写体清掃装置36の清掃部材362の接触部と中間転写体30との隙間部分H(
図5(b)参照)に入り込むサイズであるので、清掃不良を防止する効果がある。一方、微粒子の粒径が大きくなると、清掃部材362の接触部と中間転写体30との間の隙間部分Hに入り込まず、清掃不良を防止する効果は見られない。尚、微粒子の粒径が30nm未満に小さくなると、隙間部分Hに入り込んだ微粒子pが接触部をすり抜け易くなり、接触部でのすり抜け量が多くなるため、接触状態が不安定になり、トナーTNのすり抜けも発生してしまう点で好ましくない。
【0077】
-微粒子の粒径と保守用画像量との関係-
また、上記と同じく、J紙(非コート紙、82gsm)に対して、画像/非画像チャートを1kpv出力した時の、中間転写体の清掃不良について、微粒子の粒径と保守用画像の帯状画像としてのトナーバンド量を振って確認を行なった。
具体的には、微粒子の粒径は、「微粒子未塗布」、「500nmSiO
2塗布」、「100nmSiO
2塗布」、「37nmSiO
2塗布」に分け、トナーバンド量は、「バンド無し」、「バンド1%」、「バンド4%」、「バンド10%」に分けた。
結果を
図26に示す。
転写性グレードが良好な粒径30~115nmの範囲の微粒子SiO
2を用いた場合は、未塗布ケースに対してトナーバンド量を低減する効果が見られるが、粒径サイズが大きくなるとその効果は見られなくなることが示唆される。
【0078】
(付記)
(((1)))
回転可能に設けられて画像を保持する像保持手段と、
前記像保持手段上に少なくとも外添剤が含まれる作像材料を用いて前記画像を形成する作像手段と、
前記像保持手段に保持された前記画像を媒体に転写させる転写手段と、
前記像保持手段の回転方向に対向する方向に傾斜した状態で前記像保持手段に先端部が接触するように配置され、前記転写手段による転写動作後の像保持手段上に残留する残留物を清掃する弾性を有する板状の清掃手段と、
前記作像手段を用いて前記像保持手段の非作像領域に前記作像材料による帯状の保守用画像を形成し、前記転写手段による転写動作を実施しない状態で前記清掃手段に対して定期的又は不定期的に前記保守用画像を供給する保守手段と、
前記像保持手段に定期的又は不定期的に潤滑性のある微粒子を塗布する微粒子塗布手段と、
前記像保持手段上の前記微粒子の塗布状態に依存して前記保守手段による保守用画像量を制御する保守制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成システム。
(((2)))
(((1)))に記載の画像形成システムにおいて、
前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されていない条件での前記保守手段による前記保守用画像量を上限とし、前記微粒子が塗布されている条件と、前記微粒子が塗布されていない条件とで前記保守手段による前記保守用画像量を異なるように制御することを特徴とする画像形成システム。
(((3)))
(((2)))に記載の画像形成システムにおいて、
前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されている条件では、前記微粒子が塗布されていない条件に比べて、前記保守用画像量を少なくするように制御することを特徴とする画像形成システム。
(((4)))
(((2)))又は(((3)))に記載の画像形成システムにおいて、
前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されている条件では、前記保守用画像を供給しないように制御することを特徴とする画像形成システム。
(((5)))
(((1)))に記載の画像形成システムにおいて、
前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されていない条件での前記保守手段による前記保守用画像量を上限とし、前記微粒子が塗布されている条件では、前記微粒子の塗布量に依存して前記保守用画像量を異なるように制御することを特徴とする画像形成システム。
(((6)))
(((5)))に記載の画像形成システムにおいて、
前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されている条件では、前記微粒子の塗布量が多いほど前記保守用画像量を少なくするように制御することを特徴とする画像形成システム。
(((7)))
(((5)))に記載の画像形成システムにおいて、
前記保守制御手段は、前記微粒子が塗布されている条件では、前記微粒子の塗布量が少ないほど前記保守用画像量を多くするように制御することを特徴とする画像形成システム。
(((8)))
(((1)))乃至(((7)))のいずれかに記載の画像形成システムにおいて、
前記保守制御手段は、前記微粒子の塗布状態が検出可能な検出手段を有し、前記検出手段の検出結果に基づいて前記保守用画像量を制御することを特徴とする画像形成システム。
(((9)))
(((8)))に記載の画像形成システムにおいて、
前記検出手段は、前記微粒子の塗布層に対向して配置される反射型の光学式センサで構成されていることを特徴とする画像形成システム。
(((10)))
(((1)))乃至(((9)))のいずれかに記載の画像形成システムにおいて、
前記微粒子塗布手段は、表面粗さRzが1.5以下又はマイクログロスが93以上の前記像保持手段に対し、粒径が30乃至150nmの範囲にある前記微粒子を塗布することを特徴とする画像形成システム。
(((11)))
(((10)))に記載の画像形成システムにおいて、
前記微粒子塗布手段は、前記像保持手段上に前記微粒子を被覆率10乃至50%の範囲で塗布することを特徴とする画像形成システム。
【0079】
(((1)))に係る画像形成システムによれば、像保持手段に微粒子を塗布可能とする態様につき、作像材料を無駄に消費することなく、板状の清掃手段に対する保守処理を実現することができる。
(((2)))に係る画像形成システムによれば、像保持手段に対する微粒子の塗布の有無に拘わらず、保守用画像を定量供給する場合に比べて、保守用画像量を抑えた状態で、保守手段による保守処理を効率的に実現することができる。
(((3)))に係る画像形成システムによれば、微粒子が塗布されている条件では、保守用画像量を少なくしても保守手段による保守処理を有効に実現することができる。
(((4)))に係る画像形成システムによれば、微粒子が塗布されている条件では、微粒子の塗布層を保守用画像の代用として有効に利用することができる。
(((5)))に係る画像形成システムによれば、微粒子が塗布されている条件で、保守用画像を定量供給する場合に比べて、保守用画像量をより抑えた状態で、保守手段による保守処理を適切に実現することができる。
(((6)))に係る画像形成システムによれば、微粒子が塗布されている条件では、微粒子の塗布量を多くすれば保守用画像量を少なくしても、保守手段による保守処理を適切に実現することができる。
(((7)))に係る画像形成システムによれば、微粒子が塗布されている条件では、微粒子の塗布量を少なくすれば保守用画像量を多くすることで、保守手段による保守処理を適切に実現することができる。
(((8)))に係る画像形成システムによれば、微粒子の塗布状態を容易に把握でき、保守手段による保守処理を容易に実現することができる。
(((9)))に係る画像形成システムによれば、既存の反射型の光学式センサを利用することで、微粒子の塗布状態を簡単に検出することができる。
(((10)))に係る画像形成システムによれば、像保持手段及び微粒子を適切に選定することで、微粒子の塗布層による転写手段の画像転写性を良好に保つことができる。
(((11)))に係る画像形成システムによれば、微粒子の被覆率を適切に選定することで、微粒子の消費量を抑えながら、微粒子の塗布層による転写手段の画像転写性を良好に保つことができる。
1…像保持手段,2…作像手段,3…転写手段,4…清掃手段,5…保守手段,6…微粒子塗布手段,7…保守制御手段,G…画像,Gm…保守用画像,S(Sa,Sb)…媒体,e…凹凸,CR…清掃域,TR…転写域,p…微粒子,GR…作像領域,NR…非作像領域