(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168337
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】二軸配向ポリプロピレンフィルム
(51)【国際特許分類】
B29C 55/12 20060101AFI20241128BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20241128BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20241128BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241128BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20241128BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
B29C55/12
C08L23/10
C08K5/00
C08J5/18 CES
B29K23:00
B29L9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084907
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 徹
(72)【発明者】
【氏名】種木 健介
(72)【発明者】
【氏名】玉利 昇
【テーマコード(参考)】
4F071
4F210
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA15X
4F071AA20
4F071AA20X
4F071AA21X
4F071AA81
4F071AA84
4F071AA88
4F071AC12
4F071AE22
4F071AF04
4F071AF11
4F071AF15Y
4F071AF28
4F071AF30Y
4F071AF56
4F071AF59Y
4F071AF61Y
4F071AG17
4F071AG28
4F071AH04
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4F210AA11
4F210AB14
4F210AG01
4F210AG03
4F210AH54
4F210AR01
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4F210AR20
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4F210QD25
4F210QG01
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4F210QL16
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4F210QW15
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4F210QW36
4J002BB121
4J002BB141
4J002CH022
4J002EH056
4J002EN026
4J002EP016
4J002FD206
4J002FD312
4J002FD316
4J002GF00
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】剛性及び耐熱性も優れた二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂組成物からなる二軸配向ポリプロピレンフィルムであって、下記(1)~(3)を満足する二軸配向ポリプロピレンフィルム。
(1)23℃における5%伸長時応力が長手方向で35MPa以上であり、幅方向で130MPa以上である。
(2)120℃における熱収縮率が長手方向で2.0%以下であり、幅方向で1.5%以下である。
(3)130℃におけるヒートシール強度が4.0N/15mm以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂組成物からなる二軸配向ポリプロピレンフィルムであって、下記(1)~(3)を満足する二軸配向ポリプロピレンフィルム。
(1)23℃における5%伸長時応力が長手方向で35MPa以上であり、幅方向で130MPa以上である。
(2)120℃における熱収縮率が長手方向で2.0%以下であり、幅方向で1.5%以下である。
(3)130℃におけるヒートシール強度が4.0N/15mm以上である。
【請求項2】
前記二軸配向ポリプロピレンフィルムのヘイズが7.0%以下である請求項1に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
前記二軸配向ポリプロピレンフィルムが、防曇剤を0.2質量%以上1.0質量%以下含む、請求項1又は2に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
前記二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚さが、10μm以上50μm以下である請求項1又は2に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、包装用に使用するヒートシール性フィルムとして、ポリプロピレン系樹脂フィルムが広く用いられている。ヒートシール性を有するポリプロピレン系樹脂フィルムの一例として、無延伸ポリエチレン系樹脂フィルム又は無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムと延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムとをラミネートした積層ポリプロピレン系樹脂フィルムが挙げられる。しかし、上記積層ポリプロピレン系樹脂フィルムは、十分なシール強度を有するものの、有機溶剤等を使用するラミネート工程が必要であり、コスト面からも地球環境に与える影響の面からも好ましくない。
【0003】
ヒートシール性を有するポリプロピレン系樹脂フィルムの別の例として、高融点のポリプロピレン系樹脂からなる層と低融点でのポリオレフィン系樹脂からなる層との積層シートを延伸して得られた積層ポリプロピレン系樹脂フィルムが挙げられる。このような積層ポリプロピレン系樹脂フィルムとして、例えば、特許文献1及び2には、ポリプロピレン系樹脂からなる基材層と低融点のポリオレフィン系樹脂からなるシール層とを中間層を介して積層することでヒートシール強度を改善した積層ポリプロピレン系樹脂フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/118680号
【特許文献2】国際公開第2018/181011号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、環境への配慮から、包材の減容化が求められており、これに伴い、フィルムの薄膜化が求められている。しかし、フィルムを薄膜化すると加工性を担う剛性が低下してしまうため、より高い剛性が求められている。また、製袋加工性の改良も求められており、さらなる改善が必要であった。
【0006】
本発明は、ヒートシール性に優れ、かつ、剛性及び耐熱性に優れた二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂組成物の組成を調整し、かつ、フィルムの製膜条件を制御することによって、上記課題を解決することができた。すなわち、本発明は、以下の発明を含む。
[1]ポリプロピレン系樹脂組成物からなる二軸配向ポリプロピレンフィルムであって、下記(1)~(3)を満足する二軸配向ポリプロピレンフィルム。
(1)23℃における5%伸長時応力が長手方向で35MPa以上であり、幅方向で130MPa以上である。
(2)120℃における熱収縮率が長手方向で2.0%以下であり、幅方向で1.5%以下である。
(3)130℃におけるヒートシール強度が4.0N/15mm以上である。
[2]前記二軸配向ポリプロピレンフィルムのヘイズが7.0%以下である上記[1]に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
[3]前記二軸配向ポリプロピレンフィルムが、防曇剤を0.2質量%以上1.0質量%以下含む、上記[1]又は[2]に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
[4]前記二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚さが、10μm以上50μm以下である上記[1]~[3]のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリプロピレンフィルムは、剛性及び耐熱性に優れているため、包装袋としたときに袋形状を保持しやすい。また、本発明のポリプロピレンフィルムは、ヒートシール性に優れているため、シーラントフィルムをラミネートすることなく、高い剛性が必要とされる用途にも好適に用いることができ、フィルムの厚みを薄くしても強度を維持することができる。また、ヒートシールしたときにシール部のシワが少なく、袋形状としたときの外観に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムについて説明する。
【0010】
[二軸配向ポリプロピレンフィルムの層構成]
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムはポリプロピレン系樹脂組成物からなる。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの層構成は特に限定されないが、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる基材層A及びポリプロピレン系樹脂組成物からなるシール層Cを有し、前記基材層Aと前記シール層Cとの間にポリプロピレン系樹脂組成物からなる中間層Bを有することが好ましい。さらに、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、機能層Dを有していてもよい。
以下に基材層A、中間層B、シール層C、及び機能層Dについて、詳しく説明する。
【0011】
[基材層A]
ポリプロピレン系樹脂組成物からなる基材層Aは、ポリプロピレン単独重合体を主成分とするポリプロピレン系樹脂組成物からなることが好ましい。なお、「主成分」とは、基材層A全体の80質量%以上がポリプロピレン単独重合体であることを意味し、基材層A全体の90質量%以上がポリプロピレン単独重合体であることがより好ましく、基材層A全体の95質量%以上がポリプロピレン単独重合体であることがさらに好ましく、基材層A全体の97質量%以上がポリプロピレン単独重合体であることが特に好ましく、基材層A全体の99質量%以上がポリプロピレン単独重合体であることが最も好ましい。
【0012】
(ポリプロピレン単独重合体)
基材層Aに用いられるポリプロピレン単独重合体は、実質的にプロピレン以外のα-オレフィン成分を含まないポリプロピレン重合体であり、具体的には1モル%以下のプロピレン以外のα-オレフィン成分と99モル%以上のプロピレンとを構成単位とするポリプロピレン(共)重合体である。プロピレン以外のα-オレフィン成分を含む場合であっても、プロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量(エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとの合計量)は上述のとおり1モル%以下であり、好ましくは0.3モル%以下であり、より好ましくは0.2モル%以下であり、さらに好ましくは0.1モル%以下である。上記範囲内であると結晶性が向上しやすい。
【0013】
炭素数4以上のα-オレフィン成分として、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、5-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
【0014】
ポリプロピレン単独重合体は、異なる2種以上のポリプロピレン単独重合体を用いることもでき、その場合、合計の含有量が上記範囲内であることが好ましい。なお、基材層Aに用いられるポリプロピレン単独重合体については、プロピレン以外のα-オレフィン成分を全く含まないポリプロピレン単独重合体のみならず、1モル%以下のプロピレン以外のα-オレフィン成分と99モル%以上のプロピレンとを構成単位とするポリプロピレン共重合体もポリプロピレン単独重合体に含むものとする。
【0015】
以下にポリプロピレン単独重合体の好適な各種物性について記載する。なお、異なる2種以上のポリプロピレン単独重合体を用いる場合、物性値は各ポリプロピレン単独重合体の物性を質量平均した値とする。
【0016】
基材層Aに用いられるポリプロピレン単独重合体は、融点が160℃以上170℃以下であることが好ましく、161℃以上169℃以下であることがより好ましく、162℃以上168℃以下であることがさらに好ましく、162℃以上167℃以下であることが特に好ましく、162℃以上166℃以下であることが最も好ましい。融点が160℃以上であれば、剛性と高温での耐熱性が得られやすい。融点が170℃以下であると、ポリプロピレン製造でのコストアップを抑制しやすく、また製膜時に破断しにくくなる。前述のポリプロピレン樹脂に結晶核剤を配合することによって、融点をより上げることもできる。
融点は、ポリプロピレン単独重合体5mgをアルミパンに詰めて示差走査熱量計(DSC)にセットし、窒素雰囲気下で昇温速度20℃/分で30℃から230℃まで昇温し230℃で5分間保持することでポリプロピレン単独重合体を融解し、その後、降温速度-10℃/分で30℃まで降温し30℃で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で昇温した際に観察される、融解にともなう吸熱ピークの主たるピーク温度である。
【0017】
基材層Aに用いられるポリプロピレン単独重合体は、立体規則性の指標であるメソペンタッド分率([mmmm]%)が97.0~99.9%であることが好ましく、97.5~99.7%であることがより好ましく、98.0~99.5%であることがさらに好ましい。97.0%以上であると、ポリプロピレン樹脂の結晶性が高まり、基材層Aにおける結晶の融点、結晶化度、結晶配向度が向上し、剛性と高温での耐熱性が得られやすい。99.9%以下であるとポリプロピレン製造でのコストを抑えやすく、製膜時に破断しにくくなる。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(所謂NMR法)で測定される。ポリプロピレン単独重合体のメソペンタッド分率を上述の範囲内とするためには、得られたポリプロピレン重合体のパウダーをn-ヘプタンなどの溶媒で洗浄する方法、触媒および/または助触媒の選定、ポリプロピレン系樹脂組成物の成分の選定を適宜行う方法などが好ましく採用される。
【0018】
基材層Aに用いられるポリプロピレン単独重合体のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210(1995)の条件M(230℃、2.16kgf)に準拠して測定した場合において、5.0~30g/10分であることが好ましく、5.5~25g/10分であるとより好ましく、6.0~22g/10分であるとさらに好ましく、6.3~20g/10分であると特に好ましく、6.5~10g/10分であると最も好ましい。
ポリプロピレン樹脂のMFRが5.0g/10分以上であると、基材層Aを構成するポリプロピレン樹脂の低分子量成分が多くなるため、後述するフィルム製膜工程での幅方向延伸工程を採用することにより、ポリプロピレン樹脂の配向結晶化がより促進されること、基材層Aにおける結晶化度がより高まりやすくなることに加えて、非晶部分のポリプロピレン分子鎖同士の絡み合いがより少なくなることから、耐熱性をより高めやすい。また、ポリプロピレン樹脂のMFRが30g/10分以下であると、フィルムの製膜性を維持しやすい。ポリプロピレン単独重合体のMFRを上記の範囲内とするためには、ポリプロピレン単独重合体の分子量や分子量分布を制御する方法などを採用するのが好ましい。
【0019】
基材層Aに用いられるポリプロピレン単独重合体は、分子量分布の指標であるMw/Mnの下限が好ましくは3.5であり、より好ましくは4.0であり、さらに好ましくは4.5であり、特に好ましくは5.0である。Mw/Mnの上限は、好ましくは30であり、より好ましくは25であり、さらに好ましくは23であり、特に好ましくは21であり、最も好ましくは20である。
Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて得ることができる。Mw/Mnが上記範囲内であると、分子量10万以下の成分の量を多くすることが容易である。
【0020】
なお、ポリプロピレン重合体の分子量分布は、異なる分子量の成分を多段階に一連のプラントで重合したり、異なる分子量の成分をオフラインで混練機にてブレンドしたり、異なる性能をもつ触媒をブレンドして重合したり、所望の分子量分布を実現できる触媒を用いたりすることで調整することが可能である。GPCで得られる分子量分布の形状としては、横軸に分子量(M)の対数(logM)、縦軸に微分分布値(logMあたりの質量分率)をとったGPCチャートにおいて、単一ピークを有するなだらかな分子量分布であってもよく、複数のピークやショルダーを有する分子量分布であってよい。
【0021】
基材層Aを構成するプロピレン系樹脂組成物のGPC積算カーブにおける分子量10万以下の成分の量は38質量%以上であることが好ましく、38~65質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることがさらに好ましく、41~55質量%であることが特に好ましく、42~50質量%であることが最も好ましい。分子量10万以下の成分の量を38質量%以上とすることにより耐熱性を高めやすい。分子量10万以下の成分の量が65質量%以下であるとフィルム強度が低下しにくい。このとき、緩和時間の長い高分子量成分や長鎖分岐成分を含むと、全体の粘度を大きく変えずに、ポリプロピレン樹脂に含まれる分子量10万以下の成分の量を調整しやすくなるので、剛性や耐熱性にあまり影響を与えずに製膜性を改善しやすい。
【0022】
(防曇剤)
基材層Aを構成するポリプロピレン系樹脂組成物に防曇剤を含むことが好ましい。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは包装袋に加工して用いることができるが、特に包装袋に青果物を入れた場合、青果物は収穫後も生理作用を持続するため、防曇剤を添加することにより包装袋に生じる曇りを防止できる。
【0023】
防曇剤としては、例えば、脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミドのエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物と脂肪酸とのエステル、多価アルコ-ルの脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、脂肪酸アミドなどの公知の防曇剤を用いることができる。中でも、脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物及び脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物と脂肪酸とのエステルからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物及び脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物と脂肪酸とのエステルを含むことがより好ましい。
脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物と脂肪酸とのエステルは、ステアリルジエタノールアミンモノエステル及びステアリルジエタノールアミンジエステルからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、包装袋は冷凍保存よりもむしろ室温雰囲気で保存されることが多く、流通過程で長期的に優れた防曇性を持続させるためには、保存、流通時の気温変化を考慮して、5℃以上30℃以下の間で温度変化を繰り返す経過中、継続して防曇性を示すような防曇剤とすることが好ましいが、上記好適な態様に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。防曇剤は1種のみでもよく、2種以上併用してもよい。
【0024】
ステアリルジエタノールアミンモノエステルとしては、ステアリルジエタノールアミンモノラウレート、ステアリルジエタノールアミンモノミリステート、ステアリルジエタノールアミンモノパルミテート、ステアリルジエタノールアミンモノステアレート、ステアリルジエタノールアミンモノオレート等が挙げられ、中でもステアリルジエタノールアミンモノステアレートであることが好ましい。
ステアリルジエタノールアミンジエステルとしては、ステアリルジエタノールアミンジラウレート、ステアリルジエタノールアミンジミリステート、ステアリルジエタノールアミンジパルミテート、ステアリルジエタノールアミンジステアレート、ステアリルジエタノールアミンジオレート等が挙げられ、中でもステアリルジエタノールアミンジステアレートであることが好ましい。
脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物は、例えば、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン等が挙げられ、ステアリルジエタノールアミンであることが好ましい。脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物は1種のみでもよく、2種以上併用してもよい。
【0025】
基材層Aを構成するプロピレン系樹脂組成物中における防曇剤の存在量は0.2~1.0質量%であることが好ましく、0.3~0.8質量%であることがより好ましく、0.35~0.6質量%であることがさらに好ましい。ただし、後述のように、製膜工程において、基材層Aから中間層B等の他の層に防曇剤が移動することがある。
【0026】
(その他)
本発明の効果を損なわない範囲であれば、基材層Aを構成するポリプロピレン系樹脂組成物にはポリプロピレン単独重合体以外の樹脂や公知の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、粘着剤、難燃剤、無機または有機の充填剤等の添加剤を含有させてもよい。
しかし、これらの添加は少量であることが好ましく、基材層Aを構成するポリプロピレン系樹脂組成物中、ポリプロピレン単独重合体以外の樹脂は20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以下であることが特に好ましく、1質量%以下であることが最も好ましい。また、基材層Aを構成するポリプロピレン系樹脂組成物中、樹脂以外の添加剤は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
ポリプロピレン単独重合体以外の樹脂としては、基材層Aで用いられるポリプロピレン単独重合体以外のポリオレフィン樹脂や、各種エラストマー等が挙げられる。これらは、多段の反応器を用いて逐次重合するか、ポリプロピレン樹脂とヘンシェルミキサーでブレンドするか、事前に溶融混錬機を用いて作製したマスターペレットを所定の濃度になるようにポリプロピレンで希釈するか、予め全量を溶融混練して使用してもよい。基材層Aで用いられるポリプロピレン単独重合体単体であると表面抵抗値が大きすぎる場合には界面活性剤を添加して表面抵抗値を小さくしてもよい。
【0027】
[中間層B]
ポリプロピレン系樹脂組成物からなる中間層Bは、プロピレン以外のα-オレフィンを含むポリプロピレン共重合体を有していることが好ましい。すなわち、中間層Bを構成するポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン以外のα-オレフィンを含むポリプロピレン共重合体を有することが好ましい。中間層Bを設けることでヒートシール強度を向上させることができる。なお、中間層Bに関する説明では、単に「(中間層Bに含まれる)ポリプロピレン共重合体」と記載した場合であっても、プロピレン以外のα-オレフィンを含むポリプロピレン共重合体を指す。中間層Bはポリプロピレン共重合体を70質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することがさらに好ましく、95質量%以上含有することが特に好ましい。なお、中間層Bに含まれるポリプロピレン共重合体としては、異なる2種以上のポリプロピレン共重合体を用いることもでき、合計の含有量が上記範囲内であることが好ましい。ポリプロピレン共重合体を70質量%以上とすることにより、中間層Bとシール層Cとの層間密着性や基材層Aと中間層Bとの層間密着性を高めやすく、二軸配向ポリプロピレンフィルムのヒートシール強度をより高めることができる。
中間層Bに含まれるポリプロピレン共重合体におけるプロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量(エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとの合計量)は4.0モル%以上である(4.0モル%以上のプロピレン以外のα-オレフィン成分と96モル%以下のプロピレンとを構成単位とするポリプロピレン共重合体)ことが好ましく、より好ましくは4.0~12モル%であり、さらに好ましくは5.0~11モル%であり、特に好ましくは6.0~10モル%である。
炭素数4以上のα-オレフィン成分として、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、5-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
プロピレン以外のα-オレフィン成分は、炭素数が2~20であるプロピレン以外のα-オレフィン成分であることが好ましく、炭素数が2~10であるプロピレン以外のα-オレフィン成分であることがより好ましく、炭素数が2~6であるプロピレン以外のα-オレフィン成分であることがさらに好ましく、炭素数が2~4であるプロピレン以外のα-オレフィン成分であることが特に好ましい。
【0028】
以下、ポリプロピレン系樹脂組成物の好適な各種物性について記載する。なお、異なる2種以上のポリプロピレン共重合体を用いる場合、物性値は各ポリプロピレン共重合体の物性を質量平均した値とする(後述のシール層C、機能層Dも同様とする)。
【0029】
中間層Bを構成するポリプロピレン系樹脂組成物の融点は150℃以下であることが好ましく、145℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。融点を上記範囲内とすることにより、ヒートシール強度を高めることができる。中間層Bを構成するポリプロピレン系樹脂組成物の融点の下限は特に限定されず、例えば、120℃以上である。また、ヒートシール強度を高める観点から、中間層Bを構成するポリプロピレン系樹脂組成物の融点は、シール層Cを構成するポリプロピレン系樹脂組成物の融点より高いことが好ましい。
【0030】
中間層Bを構成するポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR;230℃、2.16kgf)は、3.0g/10分以上6.0g/10分以下であることが好ましい。3.5g/10分以上5.5g/10分以下であることがよりさらに好ましく、4.0g/10分以上5.0g/10分以下であることがさらに好ましく、4.3g/10分以上4.8g/10分以下であることが特に好ましい。また、ヒートシール強度を高める観点から、中間層Bを構成するポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートは、シール層Cを構成するポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートより小さいことが好ましい。
【0031】
中間層Bに含まれるポリプロピレン共重合体としては、例えばプロピレン・ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体、及びプロピレン・エチレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体を含むことがより好ましい。
【0032】
(プロピレン・エチレン・ブテン共重合体)
プロピレン・エチレン・ブテン共重合体におけるプロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量は4モル%以上であるのが好ましい。プロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量が4モル%以上であると中間層Bとシール層Cとの層間密着性が向上しやすく、その結果、ヒートシール強度や密封性が向上しやすい。プロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量は5モル%以上であるのがより好ましく、6モル%以上であるのがさらに好ましい。プロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量は特に限定されず、例えば、25モル%以下である。なお、プロピレン以外のα-オレフィン成分が2種以上である場合、合計量をプロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量とする。
エチレン含有量は1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましい。エチレン含有量の上限は特に限定されないが、エチレン含有量が多すぎると結晶化が抑制されすぎて、プロピレン単独重合体に比べて結晶性が低く、結果としてフィルムの腰感を低下させるおそれがあるため、例えば、10モル%以下である。
ブテン含有量は1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましい。ブテン含有量の上限は特に限定されないが、ブテン含有量が多すぎると結晶化が抑制されすぎて、プロピレン単独重合体に比べて結晶性が低く、結果としてフィルムの腰感を低下させるおそれがあるため、例えば、16モル%以下である。
プロピレン以外のα-オレフィン成分の合計含有量が4モル%以上であるプロピレン・エチレン・ブテン共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、住友化学社製FSX66E8などが挙げられる。
【0033】
(プロピレン・ブテン共重合体)
プロピレン・ブテン共重合体におけるブテン含有量は4モル%以上であるのが好ましい。ブテン含有量が4モル%以上であると中間層Bとシール層Cとの層間密着力が向上しやすく、その結果、ヒートシール強度や密封性が向上しやすい。ブテン含有量は5モル%以上であるのがより好ましく、6モル%以上であるのがさらに好ましい。ブテン含有量の上限は特に限定されないが、ブテン含有量が多すぎると結晶化が抑制されすぎて、プロピレン単独重合体に比べて結晶性が低く、結果としてフィルムの腰感を低下させるおそれがあるため、例えば、16モル%以下であり、好ましくは12モル%以下である。ブテン含有量が4モル%以上であるプロピレン・ブテン共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、住友化学社製SP7843、住友化学社製SPX78J1、三井化学社製XR110Hなどを例示することができる。
【0034】
(プロピレン・エチレン共重合体)
プロピレン・エチレン共重合体におけるエチレン含有量は4モル%以上であるのが好ましい。エチレン含有量が4モル%以上であると中間層Bとシール層Cとの層間密着力が向上しやすく、その結果、ヒートシール強度や密封性が向上しやすい。エチレン含有量は5モル%以上であるのがより好ましく、6モル%以上であるのがさらに好ましい。エチレン含有量の上限は特に限定されないが、エチレン含有量が多すぎると結晶化が抑制されすぎて、プロピレン単独重合体に比べて結晶性が低く、結果としてフィルムの腰感を低下させるおそれがあるため、例えば、12モル%以下である。エチレン含有量が4モル%以上であるプロピレン・エチレン共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、サンアロマー社製PC540R、三井化学社製VM3588FLなどが挙げられる。
【0035】
中間層Bを構成するポリプロピレン系樹脂組成物中には防曇剤を含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。防曇剤としては、基材層Aに記載した防曇剤を用いることができる。なお、中間層Bを構成するポリプロピレン系樹脂組成物中には防曇剤を含まない場合であっても、製膜工程において、基材層Aから中間層Bに防曇剤が移動してくる場合があり、得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムにおいては中間層Bに防曇剤が含まれる場合がある。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、中間層Bを構成するポリプロピレン系樹脂組成物には、ポリプロピレン共重合体以外の樹脂、上述の防曇剤、公知の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、粘着剤、難燃剤、無機または有機の充填剤等の添加剤が添加されていてもよい。ポリプロピレン共重合体以外の樹脂としては、中間層Bで用いられるポリプロピレン共重合体以外のポリオレフィン樹脂や、各種エラストマー等が挙げられる。しかし、これらの添加は少量であることが好ましく、中間層Bを構成するポリプロピレン系樹脂組成物中、ポリプロピレン共重合体以外の樹脂は30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。また、中間層Bを構成するポリプロピレン系樹脂組成物中、樹脂以外の添加剤は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0036】
[シール層C]
ポリプロピレン系樹脂組成物からなるシール層Cは、プロピレン以外のα-オレフィンを含むポリプロピレン共重合体を有していることが好ましい。すなわち、シール層Cを構成するポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン以外のα-オレフィンを含むポリプロピレン共重合体を有することが好ましい。なお、シール層Cに関する説明では、単に「(シール層Cに含まれる)ポリプロピレン共重合体」と記載した場合であっても、プロピレン以外のα-オレフィンを含むポリプロピレン共重合体を指す。シール層Cはポリプロピレン共重合体を70質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することがさらに好ましく、95質量%以上含有することが特に好ましい。なお、シール層Cに含まれるポリプロピレン共重合体としては、異なる2種以上のポリプロピレン共重合体を用いることもでき、合計の含有量が上記範囲内であることが好ましい。ポリプロピレン共重合体を70質量%以上とすることにより、シール層Cと中間層Bとの層間密着性を高めやすく、二軸配向ポリプロピレンフィルムのヒートシール強度をより高めることができる。
シール層Cに含まれるポリプロピレン共重合体におけるプロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量(エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとの合計量)は4.0モル%以上である(4.0モル%以上のプロピレン以外のα-オレフィン成分と96モル%以下のプロピレンとを構成単位とするポリプロピレン共重合体)ことが好ましく、より好ましくは5.0~15モル%であり、さらに好ましくは6.0~12モル%であり、特に好ましくは7.0~10モル%である。
炭素数4以上のα-オレフィン成分として、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、5-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
プロピレン以外のα-オレフィン成分は、炭素数が2~20であるプロピレン以外のα-オレフィン成分であることが好ましく、炭素数が2~10であるプロピレン以外のα-オレフィン成分であることがより好ましく、炭素数が2~6であるプロピレン以外のα-オレフィン成分であることがさらに好ましく、炭素数が2~4であるプロピレン以外のα-オレフィン成分であることが特に好ましい。
【0037】
シール層Cを構成するポリプロピレン系樹脂組成物の融点は150℃以下であることが好ましく、145℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましく、135℃以下であることが特に好ましく、130℃以下であることが最も好ましい。融点を上記範囲内とすることにより、ヒートシール立上がり温度を低くしやすい上にヒートシール強度を高めることができる。シール層Cを構成するポリプロピレン系樹脂組成物の融点の下限は特に限定されず、例えば、110℃以上である。また、ヒートシール強度を高める観点から、シール層Cを構成するポリプロピレン系樹脂組成物の融点は中間層Bを構成するポリプロピレン系樹脂組成物の融点より低いことが好ましい。
【0038】
シール層Cを構成するポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR;230℃、2.16kgf)は、5.0g/10分以上8.0g/10分以下であることが好ましい。5.5g/10分以上7.5g/10分以下であることがよりさらに好ましく、6.0g/10分以上7.0g/10分以下であることがさらに好ましく、6.3g/10分以上6.8g/10分以下であることが特に好ましい。また、ヒートシール強度を高める観点から、シール層Cを構成するポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートは、中間層Bを構成するポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートより大きいことが好ましい。
【0039】
シール層Cに含まれるポリプロピレン共重合体としては、例えばプロピレン・ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体、及びプロピレン・エチレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、プロピレン・ブテン共重合体を含むことがより好ましい。
【0040】
(プロピレン・エチレン・ブテン共重合体)
プロピレン・エチレン・ブテン共重合体におけるプロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量は4モル%以上であるのが好ましい。プロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量が4モル%以上であると中間層Bとシール層Cとの層間密着性が向上しやすく、その結果、ヒートシール強度や密封性が向上しやすい。プロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量は5モル%以上であるのがより好ましく、6モル%以上であるのがさらに好ましい。プロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量は特に限定されず、例えば、25モル%以下である。なお、プロピレン以外のα-オレフィン成分が2種以上である場合、合計量をプロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量とする。
エチレン含有量は1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましい。エチレン含有量の上限は特に限定されないが、エチレン含有量が多すぎるとフィルム表面がべたつき、滑り性や耐ブロッキング性が低下するおそれがあるため、例えば、12モル%以下である。
ブテン含有量は1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましい。ブテン含有量の上限は特に限定されないが、ブテン含有量が多すぎるとフィルム表面がべたつき、滑り性や耐ブロッキング性が低下するおそれがあるため、例えば、16モル%以下である。
プロピレン以外のα-オレフィン成分の合計含有量が4モル%以上であるプロピレン・エチレン・ブテン共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、住友化学社製FSX66E8などが挙げられる。
【0041】
(プロピレン・ブテン共重合体)
プロピレン・ブテン共重合体におけるブテン含有量は4モル%以上であるのが好ましい。ブテン含有量が4モル%以上であると中間層Bとシール層Cとの層間密着力が向上しやすく、その結果、ヒートシール強度や密封性が向上しやすい。ブテン含有量は5モル%以上であるのがより好ましく、6モル%以上であるのがさらに好ましい。ブテン含有量の上限は特に限定されないが、ブテン含有量が多すぎるとフィルム表面がべたつき、滑り性や耐ブロッキング性が低下するおそれがあるため、例えば、16モル%以下であり、好ましくは12モル%以下である。ブテン含有量が4モル%以上であるプロピレン・ブテン共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、住友化学社製SP7843、住友化学社製SPX78J1、三井化学社製XR110Hなどを例示することができる。
【0042】
(プロピレン・エチレン共重合体)
プロピレン・エチレン共重合体におけるエチレン含有量は4モル%以上であるのが好ましい。エチレン含有量が4モル%以上であると中間層Bとシール層Cとの層間密着力が向上しやすく、その結果、ヒートシール強度や密封性が向上しやすい。ブテン含有量は5モル%以上であるのがより好ましく、6モル%以上であるのがさらに好ましい。エチレン含有量の上限は特に限定されないが、エチレン含有量が多すぎるとフィルム表面がべたつき、滑り性や耐ブロッキング性が低下するおそれがあるため、例えば、12モル%以下である。エチレン含有量が4モル%以上であるプロピレン・エチレン共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、サンアロマー社製PC540R、三井化学社製VM3588FLなどが挙げられる。
【0043】
シール層Cを構成するポリプロピレン系樹脂組成物中には防曇剤を含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。防曇剤としては、基材層Aに記載した防曇剤を用いることができる。なお、シール層Cを構成するポリプロピレン系樹脂組成物中には防曇剤を含まない場合であっても、製膜工程において、基材層Aからシール層Cに防曇剤が移動してくる場合があり、得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムにおいてはシール層Cに防曇剤が含まれる場合がある。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、シール層Cを構成するポリプロピレン系樹脂組成物には、ポリプロピレン共重合体以外の樹脂、上述の防曇剤、公知の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、粘着剤、難燃剤、無機または有機の充填剤等の添加剤が添加されていてもよい。ポリプロピレン共重合体以外の樹脂としては、シール層Cで用いられるポリプロピレン共重合体以外のポリオレフィン樹脂や、各種エラストマー等が挙げられる。しかし、これらの添加は少量であることが好ましく、シール層Cを構成するポリプロピレン系樹脂組成物中、ポリプロピレン共重合体以外の樹脂は30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。また、シール層Cを構成するポリプロピレン系樹脂組成物中、樹脂以外の添加剤は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0044】
[機能層D]
機能層Dは基材層Aのシール層Cが設けられていない側の面に設けることが好ましい。機能層Dは、特に限定されず、中間層Bと同じ組成の層であってもよいし、フィルム同士の易滑性やフィルムと加工器具との易滑性や帯電防止性などのシール層Cにはない機能を機能層Dに付与するために、機能層Dを構成するポリプロピレン系樹脂組成物にアンチブロッキング剤、ワックス、金属石鹸などの潤滑剤、可塑剤、加工助剤、帯電防止剤などを配合してもよい。
【0045】
機能層Dは、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる層であることが好ましく、プロピレン以外のα-オレフィンを含むポリプロピレン共重合体を有していることがより好ましい。すなわち、機能層Dを構成するポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン以外のα-オレフィンを含むポリプロピレン共重合体を有することがより好ましい。なお、機能層Dに関する説明では、単に「(機能層Dに含まれる)ポリプロピレン共重合体」と記載した場合であっても、プロピレン以外のα-オレフィンを含むポリプロピレン共重合体を指す。機能層Dはポリプロピレン共重合体を70質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することがさらに好ましく、95質量%以上含有することが特に好ましい。なお、機能層Dに含まれるポリプロピレン共重合体としては、異なる2種以上のポリプロピレン共重合体を用いることもでき、合計の含有量が上記範囲内であることが好ましい。ポリプロピレン共重合体を70質量%以上とすることにより、機能層Dと機能層Dと隣接する層との層間密着性を高めやすく、二軸配向ポリプロピレンフィルムのヒートシール強度をより高めることができる。
機能層Dに含まれるポリプロピレン共重合体におけるプロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量(エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとの合計量)は4.0モル%以上である(4.0モル%以上のプロピレン以外のα-オレフィン成分と96モル%以下のプロピレンとを構成単位とするポリプロピレン共重合体)ことが好ましく、より好ましくは4.0~12モル%であり、さらに好ましくは5.0~11モル%であり、特に好ましくは6.0~10モル%である。
炭素数4以上のα-オレフィン成分として、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、5-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
プロピレン以外のα-オレフィン成分は、炭素数が2~20であるプロピレン以外のα-オレフィン成分であることが好ましく、炭素数が2~10であるプロピレン以外のα-オレフィン成分であることがより好ましく、炭素数が2~6であるプロピレン以外のα-オレフィン成分であることがさらに好ましく、炭素数が2~4であるプロピレン以外のα-オレフィン成分であることが特に好ましい。
【0046】
機能層Dを構成するポリプロピレン系樹脂組成物の融点は150℃以下であることが好ましく、145℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。融点を上記範囲内とすることにより、ヒートシール強度を高めることができる。機能層Dを構成するポリプロピレン系樹脂組成物の融点の下限は特に限定されず、例えば、120℃以上である。
【0047】
機能層Dを構成するポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR;230℃、2.16kgf)は、3.0g/10分以上6.0g/10分以下であることが好ましい。3.5g/10分以上5.5g/10分以下であることがよりさらに好ましく、4.0g/10分以上5.0g/10分以下であることがさらに好ましく、4.3g/10分以上4.8g/10分以下であることが特に好ましい。
【0048】
機能層Dに含まれるポリプロピレン共重合体としては、例えばプロピレン・ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体、及びプロピレン・エチレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体を含むことがより好ましい。
【0049】
(プロピレン・エチレン・ブテン共重合体)
プロピレン・エチレン・ブテン共重合体におけるプロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量は4モル%以上であるのが好ましい。プロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量が4モル%以上であると機能層Dと機能層Dと隣接する層との層間密着性が向上しやすく、その結果、ヒートシール強度や密封性が向上しやすい。プロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量は5モル%以上であるのがより好ましく、6モル%以上であるのがさらに好ましい。プロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量は特に限定されず、例えば、25モル%以下である。なお、プロピレン以外のα-オレフィン成分が2種以上である場合、合計量をプロピレン以外のα-オレフィン成分の含有量とする。
エチレン含有量は1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましい。エチレン含有量の上限は特に限定されないが、エチレン含有量が多すぎるとフィルム表面がべたつき、滑り性や耐ブロッキング性が低下するおそれがあるため、例えば、10モル%以下である。
ブテン含有量は1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましい。ブテン含有量の上限は特に限定されないが、ブテン含有量が多すぎるとフィルム表面がべたつき、滑り性や耐ブロッキング性が低下するおそれがあるため、例えば、16モル%以下である。
プロピレン以外のα-オレフィン成分の合計含有量が4モル%以上であるプロピレン・エチレン・ブテン共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、住友化学社製FSX66E8などが挙げられる。
【0050】
(プロピレン・ブテン共重合体)
プロピレン・ブテン共重合体におけるブテン含有量は4モル%以上であるのが好ましい。ブテン含有量が4モル%以上であると機能層Dと機能層Dと隣接する層との層間密着力が向上しやすく、その結果、ヒートシール強度や密封性が向上しやすい。ブテン含有量は5モル%以上であるのがより好ましく、6モル%以上であるのがさらに好ましい。ブテン含有量の上限は特に限定されないが、ブテン含有量が多すぎるとフィルム表面がべたつき、滑り性や耐ブロッキング性が低下するおそれがあるため、例えば、16モル%以下であり、好ましくは12モル%以下である。ブテン含有量が4モル%以上であるプロピレン・ブテン共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、住友化学社製SP7843、住友化学社製SPX78J1、三井化学社製XR110Hなどを例示することができる。
【0051】
(プロピレン・エチレン共重合体)
プロピレン・エチレン共重合体におけるエチレン含有量は4モル%以上であるのが好ましい。エチレン含有量が4モル%以上であると機能層Dと機能層Dと隣接する層との層間密着力が向上しやすく、その結果、ヒートシール強度や密封性が向上しやすい。エチレン含有量は5モル%以上であるのがより好ましく、6モル%以上であるのがさらに好ましい。エチレン含有量の上限は特に限定されないが、エチレン含有量が多すぎるとフィルム表面がべたつき、滑り性や耐ブロッキング性が低下するおそれがあるため、例えば、12モル%以下である。エチレン含有量が4モル%以上であるプロピレン・エチレン共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、サンアロマー社製PC540R、三井化学社製VM3588FLなどが挙げられる。
【0052】
機能層Dを構成するポリプロピレン系樹脂組成物中には防曇剤を含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。防曇剤としては、基材層Aに記載した防曇剤を用いることができる。なお、機能層Dを構成するポリプロピレン系樹脂組成物中には防曇剤を含まない場合であっても、製膜工程において、基材層Aから機能層Dに防曇剤が移動してくる場合があり、得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムにおいては機能層Dに防曇剤が含まれる場合がある。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、機能層Dを構成するポリプロピレン系樹脂組成物には、ポリプロピレン共重合体以外の樹脂、上述の防曇剤、公知の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、粘着剤、難燃剤、無機または有機の充填剤等の添加剤が添加されていてもよい。ポリプロピレン共重合体以外の樹脂としては、機能層Dで用いられるポリプロピレン共重合体以外のポリオレフィン樹脂や、各種エラストマー等が挙げられる。しかし、これらの添加は少量であることが好ましく、機能層Dを構成するポリプロピレン系樹脂組成物中、ポリプロピレン共重合体以外の樹脂は30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。また、機能層Dを構成するポリプロピレン系樹脂組成物中、樹脂以外の添加剤は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0053】
[フィルム中における防曇剤の含有量]
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルム中における防曇剤の含有量は0.1~10質量%であることが好ましく、0.15~5質量%であることがより好ましく、0.2~2質量%であることがさらに好ましく、0.25~1.0質量%であることが特に好ましく、0.3~0.5質量%であることが最も好ましい。基材層Aを構成するポリプロピレン系樹脂組成物のみに防曇剤を添加した場合であっても、フィルム製膜時及びフィルム製膜後の保管時に、防曇剤が基材層Aから他の層へと移動し、防曇剤が最表面であるシール層Cへと移動すると、シール層Cの表面に防曇剤が存在するようになり、防曇性を有する状態になる。
【0054】
[二軸配向ポリプロピレンフィルムの層構成及び厚み構成]
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの層構成は特に限定されないが、基材層A及びシール層Cを有し、基材層Aとシール層Cとの間に中間層Bを有することが好ましい。換言すると、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの層構成は、基材層A、中間層B、シール層Cをこの順で有していることが好ましい。また、シール層Cを有する場合、シール層Cを最表面に有していることが好ましい。さらに、基材層Aと中間層Bとの間に他の層を有していてもよく、中間層Bが基材層Aに直接積層されていてもよい。また、中間層Bとシール層Cとの間に他の層を有していてもよく、シール層Cが中間層Bに直接積層されていてもよい。基材層A、中間層B、シール層Cを有する二軸配向ポリプロピレンフィルムとして、例えば、基材層A/中間層B/シール層Cの3層構造、シール層C1/基材層A/中間層B/シール層C2の4層構造、シール層C1/中間層B1/基材層A/中間層B2/シール層C2の5層構造、シール層C1/基材層A1/中間層B1/基材層A2/中間層B2/シール層Cの6層構造が挙げられる。このとき基材層A1と基材層A2はお互い異なるポリプロピレン系樹脂組成物からなるものであってもよく、同じであってもよく、中間層B1と中間層B2はお互い異なるポリプロピレン系樹脂組成物からなるものであってもよく、同じであってもよく、シール層C1とシール層C2はお互い異なるポリプロピレン系樹脂組成物からなるものであってもよく、同じであってもよい。
【0055】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムが機能層Dを有する場合、基材層Aの表面に機能層Dが直接積層されていてもよく、基材層Aと機能層Dとの間に中間層Bを介していてもよい。また、機能層Dは、基材層Aと中間層Bとの間に有していてもよく、中間層Bとシール層Cとの間に有していてもよい。機能層Dを有する場合も、基材層A、中間層B、シール層Cをこの順で有しており、シール層Cを最表面に有してさえいれば、特に限定されず、例えば、基材層A/中間層B/シール層Cの構成にさらに機能層Dを有した機能層D/基材層A/中間層B/シール層Cの4層構造、中間層B/基材層A/中間層B/シール層Cの構成にさらに機能層Dを有した機能層D/中間層B/基材層A/中間層B/シール層Cの5層構造などが挙げられる。
【0056】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルム全体の厚みは、その用途や使用方法によって異なるが、フィルム強度、若しくは密封性又は水蒸気バリア性の観点から、5~100μmであることが好ましく、10~80μmであることがより好ましく、18~50μmであることがさらに好ましい。鮮度保持用包材として使用する場合、厚みは33μm以下が好ましく、28μm以下がより好ましく、23μm以下がさらに好ましく、18μm以下が特に好ましい。
【0057】
基材層Aを有する場合、基材層Aの厚みは、その用途や使用方法によって異なるが、5~90μmであることが好ましく、10~50μmであることがより好ましく、15~30μmであることがさらに好ましい。厚みを5μm以上とすることでフィルム強度や密封性又は水蒸気バリア性を高めることができる。また、厚みを90μm以下とすることで減容化による環境負荷低減を行うことができる。
【0058】
中間層Bを有する場合、中間層Bの厚みは、その用途や使用方法によって異なるが、0.5~4μmであることが好ましく、1~3μmであることがより好ましい。厚みを0.5μm以上とすることで基材層Aとシール層Cとの密着性を高くしてシール強度を高めることができる。また、厚みを4μm以下とすることで減容化による環境負荷低減を行うことができる。
【0059】
シール層Cを有する場合、シール層Cの厚みは、その用途や使用方法によって異なるが、0.3~2μmであることが好ましく、0.5~1.5μmであることがより好ましい。厚みを0.3μm以上とすることでヒートシール強度を高めることができる。また、厚みを2μm以下とすることで減容化による環境負荷低減を行うことができる。
【0060】
機能層Dを有する場合、機能層Dの厚みは、その用途や使用方法によって異なるが、0.3~2μmであることが好ましく、0.5~1.5μmであることがより好ましい。厚みを0.3μm以上とすることでヒートシール強度を高めることができる。また、厚みを2μm以下とすることで減容化による環境負荷低減を行うことができる。
【0061】
[二軸配向ポリプロピレンフィルムの製膜方法]
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの製膜方法は特に限定されないが、例えば、積層数に見合う押出し機を用いてTダイ法又はインフレーション法等で溶融積層した後、冷却ロール法、水冷法又は空冷法で冷却して得た未延伸の積層フィルムを、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法、チューブ延伸法等で延伸する方法を例示することができる。
【0062】
以下、機能層D/基材層A/中間層B/シール層Cの構成からなる二軸配向ポリプロピレンフィルムを逐次二軸延伸法で製膜する製膜方法を例示する。基材層A、中間層B、シール層Cのそれぞれを構成するポリプロピレン樹脂組成物は前述のとおりである。また、基材層A、中間層B、シール層Cに添加する防曇剤の量はフィルムの製膜工程で高温に晒される際に大気中に蒸散する防曇剤を考慮して調整するのが好ましい。
【0063】
機能層D、基材層A、中間層B、シール層Cの各層を構成するポリプロピレン系樹脂組成物を1台又は複数台の押出機により溶融押出しし、押し出された多層シートを冷却ロールで冷却して、未延伸シートを形成する。次に、得られた未延伸シートを長手方向(MD)に延伸する。続いて、延伸後のシートに予熱を加えた後、幅方向(TD)に延伸し、最後に熱固定処理することによって本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ることができる。なお、必要に応じて、二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に表面処理を施した後、ワインダーで巻取ることによりフィルムロールを得ることができる。
以下、押出工程、冷却工程、延伸工程、熱処理工程、及び表面処理工程について詳しく説明する。なお、以下では、基材層Aに用いられるポリプロピレン樹脂の融点をTma(℃)と表わし、シール層Cに用いられるポリプロピレン樹脂の融点をTmc(℃)と表わす。
【0064】
<押出工程>
機能層D、基材層A、中間層B、シール層Cのそれぞれを構成するポリプロピレン樹脂組成物を各々200℃~260℃で溶融し、4台の押出機を用いて異なる流路から溶融されたポリプロピレン系樹脂組成物を送り出す。送り出された各ポリプロピレン系樹脂組成物を多層フィードブロックやスタティックミキサー、多層マルチマニホールドダイ等を用いて多層に積層し、機能層D/基材層A/中間層B/シール層Cの順に積層された多層シート(溶融されたポリプロピレン系樹脂組成物)をTダイから押出す。なお、1台の押出機のみを用いて、押出機からT型ダイまでのメルトラインに多層化装置を導入して多層シートを得ることも可能である。また、背圧の安定化および厚み変動の抑制の観点からポリマー流路にギヤポンプを設置する方法が好ましい。
【0065】
多層シートの厚みは3500μm以下とするのが、冷却効率を高める観点から好ましく、3000μm以下とするのがより好ましいが、逐次二軸延伸後のフィルム厚みに応じて、適宜調整できる。未延伸シートの厚みはポリプロピレン樹脂組成物の押出し速度及びTダイのリップ幅等で調整できる。
【0066】
<冷却工程>
Tダイからシート状に共押出した多層シートを金属製冷却ロール上に接触させて冷却固化する。このとき、シール層C側を冷却ロール上に接地させるのが好ましい。また、固化を促進する目的で、冷却ロールで冷却した多層シートを水槽に浸漬するなどして、さらに冷却することが好ましい。
冷却ロールの温度は、10℃以上ポリプロピレン樹脂組成物の結晶化温度以下であることが好ましく、フィルムの透明性を上げたい場合は、10~50℃の冷却ロールで冷却固化するのが好ましい。冷却ロールの温度を50℃以下にすると未延伸シートの透明性が高まりやすく、より好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは30℃以下である。逐次二軸延伸後の結晶配向度を増大させるには冷却温度を40℃以上とするのが好ましい場合もあるが、上述のようにメソペンタッド分率が97.0%以上のプロピレン単独重合体を用いる場合は、次工程の延伸を容易に行い、また厚み斑を低減する観点から、冷却ロールの温度を40℃以下とするのが好ましく、30℃以下とするのがより好ましい。水槽を用いる場合、水槽の温度も上記と同様の理由により、10~50℃であることが好ましく、より好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは30℃以下である。
【0067】
<延伸工程>
上記冷却を行った未延伸シートを延伸に適した温度まで加熱した後、延伸ロール間の速度差を利用して未延伸シートを流れ方向(MD方向)に延伸する。引き続き、一軸延伸したシートを予熱後、テンター延伸機でシート端部を把持しながら、所定の温度で幅方向(TD方向)に延伸を行い、二軸延伸フィルムを得る。以下では、長手方向延伸工程、予熱工程、幅方向延伸工程について詳しく説明する。
【0068】
(長手方向延伸工程)
長手方向の延伸倍率は、23℃における長手方向の5%伸長時応力を35MPa以上とし、延伸のムラがなく安定して製膜することを考えると4.0~6.0倍であることが好ましく、4.2~5.0倍であることがより好ましい。長手方向延伸温度は、Tmc-10℃~Tmc+20℃であることが好ましく、Tmc℃~Tmc+15℃であることがより好ましい。上記範囲内であるとフィルムの剛性を高めやすく、熱収縮率を小さくしやすい。また、延伸ロールにフィルムが付着して延伸しにくくなったり、表面の粗さが大きくなることにより品位が低下することも少ない。
なお、長手方向の延伸は3対以上の延伸ロールを使用して、2段階以上の多段階に分けて延伸してもよい。
【0069】
(予熱工程)
幅方向延伸工程の前に、長手方向延伸後の一軸延伸フィルムをTma~Tma+15℃で加熱して(予熱温度をTma~Tma+15℃として)、ポリプロピレン樹脂組成物を軟化させる必要がある。なお、予熱工程での最高温度を予熱温度とする。予熱温度をTma℃以上とすることにより、軟化が進み、幅方向の延伸が容易になる。予熱温度をTma+15℃以下とすることで、幅方向への延伸時に配向が進み、剛性が発現しやすくなる。予熱温度は、より好ましくはTma+1~Tma+10℃であり、さらに好ましくはTma+2~Tma+5℃である。
【0070】
(幅方向延伸工程)
予熱工程後の幅方向に延伸を行う。幅方向の延伸温度はTma-2℃~Tma+13℃であることが好ましく、Tma-1℃~Tma+5℃であることがより好ましい。
23℃における長手方向及び幅方向の5%伸長時応力を高めるために、幅方向延伸工程において基材層Aの剛性をできる限り大きくすることが重要であるため、長手方向の延伸倍率は12倍以上の高倍率とすることが好ましく、13倍以上がより好ましく、13.5倍以上がさらに好ましい。また、120℃熱収縮率を抑制する観点から15倍以下とすることが好ましい。これはヒートシール強度を向上させるためにシール層Cを設けていることと、次の工程の熱処理工程において、シール層Cの配向を小さくし、120℃熱収縮率を抑制すると同時に引張破断伸度を高めたり、防曇剤を含む場合は防曇性を高めるために、熱処理及び緩和工程を行うことも考慮している。
【0071】
(熱処理工程)
120℃熱収縮率を抑制するために、長手方向に延伸したフィルムの両耳部をテンタークリップで把持したまま、Tma+7℃~Tma+13℃で熱処理するのが好ましく、Tma+8~Tma+12℃で熱処理するのがより好ましい。
熱処理と同時に、両耳部をテンタークリップで把持したまま、フィルムの幅方向に3~8%で緩和することが耐熱性を向上させる上で好ましく、5~7%で緩和することがより好ましい。上記緩和を行うことでフィルムの幅方向の熱収縮率を低くすることができる。
【0072】
このように、立体規則性が高く、高融点である結晶性の高いポリプロピレン樹脂を用い、上述の幅方向延伸工程を採用することにより、基材層Aのポリプロピレン樹脂の分子が高度に主配向方向に(上述した幅方向延伸工程では幅方向が該当する。)に整列するため、得られる二軸配向フィルム中の結晶配向が非常に強く、融点も高い結晶が生成しやすい。
また、結晶間の非晶部の配向も主配向方向(上述した幅方向延伸工程では幅方向が該当する)に高まり、非晶部の周りに融点の高い結晶が多く存在するため、結晶の融点より低い温度では非晶部の伸長したポリプロピレン分子は緩和しにくく、その緊張した状態を保ちやすい。そのため、高温においても二軸配向フィルム全体が高い剛性を維持することができる。
着目すべきことは、このような工程を採用することにより、120℃という高温での熱収縮率も低下しやすいことである。その理由は、基材層Aにおいて、非晶部の周りに融点の高い結晶が多く存在するため、結晶の融点より低い温度では非晶部における伸長したポリプロピレン樹脂分子は緩和しにくく、しかも分子同士の絡み合いが少ないところにある。
しかも、防曇剤がある場合は最終的に得られた二軸配向フィルムの防曇性も向上しやすいという効果も得られる。
一方、シール層Cの配向は弱くできるため、120℃の高温での熱収縮率も低くすることができるにもかかわらず、引張破断伸度が向上しやすく、ヒートシール強度も高まりやすい。
【0073】
<表面処理工程>
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、印刷性、ラミネート性等を向上させるためにシール層C及びシール層Cとは反対側の表面層の少なくとも一方を表面処理することが好ましく、シール層Cの表面張力を高める観点からシール層Cを表面処理することがより好ましい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等が例示でき、特に制限はないが、連続処理が可能であり、このフィルムの製膜過程の巻き取り工程前に容易に実施できるという観点から、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理のいずれかを行うのが好ましく、防曇性を高める観点からコロナ放電処理を行うことがより好ましい。
【0074】
[本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの各種特性]
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、下記特性を有することが好ましい。ここで本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおける「長手方向(MD方向)」とは、フィルム製膜工程における流れ方向に対応する方向であり、「幅方向(TD方向)」とは、前記のフィルム製膜工程における流れ方向と直交する方向であり、以下も同様である。
【0075】
(23℃での5%伸長時応力)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向の5%伸長時の応力(F5)は35MPa以上であり、35~70MPaであることが好ましく、38~65MPaであることがより好ましく、40~50MPaであることがさらに好ましい。35MPa以上では、剛性が高いため、包装袋としたときに袋形状を保持しやすく、印刷など加工時にフィルムの変形が起こりにくい。また、F5を大きくすることで、防曇剤がある場合に防曇性も向上することがわかった。この理由として、基材層Aの結晶化度が大きくなり、シール層Cへの防曇剤の移行が促進されるためと推定している。70MPa以下であると現実的な製造が容易である。
【0076】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での幅方向のF5は130MPa以上であり、130~200MPaであることが好ましく、132~180MPaであることがより好ましく、134~170MPaであることがさらに好ましく、140~160MPaであることが特に好ましい。130MPa以上では、剛性が高いため、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、印刷など加工時にフィルムの変形が起こりにくい。また、防曇剤が存在する場合に防曇性も向上することがわかったが、この理由として、基材層Aの結晶化度が大きくなり、シール層Cへの防曇剤の移行が促進されるためと推定している。200MPa以下であると現実的な製造が容易である。
長手方向及び幅方向のF5は、上述の各層の原料組成(特に基材層Aの原料組成)、製膜時の延伸倍率、リラックス率、各製膜工程での温度等を調整することで上記範囲内とすることが出来る。
【0077】
(120℃での熱収縮率)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの120℃での長手方向の熱収縮率は、2.0%以下であり、1.9%以下であることが好ましく、1.8%以下であることがより好ましい。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの120℃での長手方向の熱収縮率は0.1%を下限としてもよい。2.0%以下であると、印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなる。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの120℃での幅方向の熱収縮率は、1.5%以下であり、1.3%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの120℃での幅方向の熱収縮率は0.1%を下限としてもよい。1.5%以下であると、ヒートシール時のシワが生じにくい。
120℃での長手方向及び幅方向の熱収縮率は、上述の各層の原料組成(特に基材層Aの原料組成)、製膜時の延伸倍率、リラックス率、各製膜工程での温度等を調整することで上記範囲内とすることが出来る。
【0078】
(ヘイズ)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムのヘイズは、7.0%以下が好ましく、5.0%以下がより好ましい。7.0%以下であると透明性が要求される用途で使いやすい。ヘイズの下限は、0%が好ましく、現実的値としては0.1%である。ヘイズは、冷却ロール温度、長手方向の延伸温度、テンター幅方向延伸前予熱温度、幅方向延伸温度、又は熱固定温度、若しくはポリプロピレン樹脂の分子量が10万以下の成分の量を調整することで上記範囲内とすることが出来る。ヘイズは、ブロッキング防止剤の添加やシール層Cの組成次第で大きくなることがある。
【0079】
(引張弾性率)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向の引張弾性率は、2.0GPa以上が好ましく、2.1GPa以上がより好ましく、2.2GPa以上がさらに好ましい。上限は特に限定されず、例えば、6.0GPa以下である。2.0GPa以上であると、剛性が高いため、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、印刷など加工時にフィルムの変形が起こりにくく、防曇性も向上させることができる。6.0GPa以下であると現実的な製造が容易であったり、長手方向-幅方向の特性のバランスが良化しやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での幅方向の引張弾性率は、5.0GPa以上であることが好ましく、5.2GPa以上であることがより好ましく、5.6GPa以上であることがさらに好ましい。上限は特に限定されず、例えば、10GPa以下である。5.0GPa以上であると、剛性が高いため、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、印刷など加工時にフィルムの変形が起こりにくく、防曇性も向上させることができる。10.0GPa以下であると現実的な製造が容易であったり、長手方向-幅方向の特性のバランスが良化しやすい。
長手方向及び幅方向の引張弾性率は延伸倍率、リラックス率、製膜時の温度等を調整することで上記範囲内とすることが出来る。
【0080】
(引張破断強度)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向の引張破断強度は、80~200MPaであることが好ましく、90~150MPaであることがより好ましく、100~130MPaであることがさらに好ましい。80MPa以上であると印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなり、包装袋の耐久性にも優れやすい。200MPa以下であるとフィルムの破断や包装袋の破袋が少なくなりやすい。
【0081】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での幅方向の引張破断強度は、320~500MPaであることが好ましく、340~480MPaであることがより好ましく、360~460MPaであることがさらに好ましく、380~440MPaであることがさらに好ましい。320MPa以上であると印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなり、包装袋の耐久性にも優れやすい。500MPa以下であるとフィルムの破断や包装袋の破袋が少なくなりやすい。
長手方向及び幅方向の引張破断強度は、上述の各層の原料組成(特に基材層Aの原料組成)、製膜時の延伸倍率、リラックス率、各製膜工程の温度等を調整することで範囲内とすることが出来る。
【0082】
(引張破断伸度)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向の引張破断伸度は、220~270%であることが好ましく、223~260%であることがより好ましく、228~250%であることがさらに好ましい。220%以上であるとフィルムの破断や包装袋の破袋が起こりにくい。また、270%以下であると印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなり、包装袋の耐久性も高くすることができる。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での幅方向の引張破断伸度は、25~80%であることが好ましく、28~70%であることがより好ましく、30~60%であることがさらに好ましい。25%以上であるとフィルムの破断や包装袋の破袋が起こりにくい。また、80%以下であると印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなり、包装袋の耐久性も高くすることができる。
長手方向及び幅方向の引張破断伸度は、上述の各層の原料組成(特に基材層Aの原料組成)、製膜時の延伸倍率、リラックス率、各製膜工程の温度等を調整することで範囲内とすることが出来る。
【0083】
(ヒートシール強度)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、内容物の脱落を防止するためには、後述する測定方法で得られたシール層C側の130℃でのヒートシール強度が、4.0N/15mm以上であり、好ましくは4.8N/15mm以上であり、より好ましくは5.0N/15mm以上であり、さらに好ましくは5.5N/15mm以上であり、特に好ましくは6.0N/15mm以上である。上限値は、8.0N/15mm程度である。それ以上大きい必要性が少なく、大きすぎると袋が開封しにくくなる場合がある。
また、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの一方の表面をシール層C、他方の表面を機能層Dとする場合、例えばゼット包装のように包装形態を維持するために、製袋加工後のヒートシール部を折り曲げて、機能層D同士を接着させているが、手で容易に袋を開封できるように機能層D側の130℃でのヒートシール強度はシール層C側の130℃でのヒートシール強度よりも低いヒートシール強度であることが好ましく、例えば、3.5N/15mm以下であり、2.0N/15mm以下であることが好ましく、1.0N/15mm以下であることがより好ましい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、両面のうちヒートシール強度の大きい方の面のヒートシール強度が、4.0N/15mm以上であり、好ましくは4.8N/15mm以上であり、より好ましくは5.0N/15mm以上であり、さらに好ましくは5.5N/15mm以上であり、特に好ましくは6.0N/15mm以上である。上限値は、8.0N/15mm程度である。
【0084】
(ヒートシール立上がり温度)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムのシール層Cのヒートシール立上がり温度は、90~130℃であることが好ましく、100~125℃であることがより好ましく、110~120℃であることがさらに好ましい。シール層Cのヒートシール立上がり温度が130℃以下であると、130℃程度の比較的低温で高いヒートシール強度を発現できるため、ヒートシール時の加工器具の温度を比較的低温とすることができ、自動包装する際に高速で運転することができる。また、比較的低温でヒートシール加工ができるためフィルム全体が収縮しにくく、シール部にしわが生じにくい。また、シール層Cのヒートシール立上がり温度を90℃以上とすることにより、フィルム製膜装置にフィルムが融着しにくくすることができる。
ヒートシール立上がり温度は、上述の各層の原料組成(特に基材層Aの原料組成)、製膜時の延伸倍率、リラックス率、各製膜工程の温度等を調整することで範囲内とすることが出来る。
【0085】
(動摩擦係数)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの動摩擦係数は両面(シール層C及びシール層Cとは反対側の表面層)共に0.50以下であることが好ましく、0.48以下であるのがより好ましく、0.45以下であることがさらに好ましい。動摩擦係数が両面共に0.50以下であるとロールフィルムからのフィルムの巻き出しがスムーズに行え、印刷加工しやすい。動摩擦係数の下限は特に限定されないが、例えば0.10以上である。
【0086】
(濡れ張力)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムのシール層Cの表面の濡れ張力が35mN/m以上であることが好ましく、37mN/m以上であることがより好ましい。濡れ張力が35mN/m以上であるとシール層Cとは反対側の表面層との密着性を高めることができる。また、濡れ張力が35mN/m以上であるとフィルムの防曇性を高めることができる。濡れ張力を35mN/m以上とするには、コロナ処理、火炎処理などの物理化学的な表面処理を行うことが好ましい。コロナ処理では、予熱ロール、処理ロールを用い、空中で放電を行うことが好ましい。濡れ張力は高すぎても効果が飽和するため、43mN/m以下であることが好ましい。
【0087】
(防曇性)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムのシール層Cの表面の防曇性は、後述する評価方法で得られる評価が1~3級であることが好ましく、1~2級であることがより好ましく、1級であることがさらに好ましい。
【0088】
[包装用材料]
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは単独で用いてもよく、印刷層を設けて用いてもよい。また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた包装用材料の例を、以下の(i)から(ix)に示すが、以下の例に限定されない。
(i)二軸延伸ポリプロピレンフィルム/印刷層/接着剤層/直鎖状低密度ポリエチレンフィルムシーラント層。
(ii)二軸延伸ポリプロピレンフィルム/印刷層/接着剤層/無延伸ポリプロピレンフィルムシーラント層。
(iii)二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/印刷層/接着剤層/二軸延伸ポリプロピレンフィルム/接着剤層/無延伸ポリプロピレンフィルムシーラント層。
(iv)二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/印刷層/接着剤層/二軸延伸ポリプロピレンフィルム/接着剤層/直鎖状低密度ポリエチレンフィルムシーラント層。
(v)二軸延伸ポリプロピレンフィルム/アンカーコート層/無機薄膜層/無機薄膜保護層/印刷層/接着剤層/直鎖状低密度ポリエチレンフィルムシーラント層。
(vi)直鎖状低密度ポリエチレンフィルムシーラント層/接着剤層/二軸延伸ポリプロピレンフィルム/アンカーコート層/無機薄膜層/接着剤層/直鎖状低密度ポリエチレンフィルムシーラント層。
(vii)直鎖状低密度ポリエチレンフィルム層/接着剤層/二軸延伸ポリプロピレンフィルム/アンカーコート層/無機薄膜層/接着剤層/直鎖状低密度ポリエチレンフィルム層/低密度ポリエチレンフィルム/紙/低密度ポリエチレンフィルム/直鎖状低密度ポリエチレンフィルムシーラント層。
(viii)二軸延伸ポリプロピレンフィルム/アンカーコート層/無機薄膜層/無機薄膜保護層/印刷層/接着剤層/無延伸ポリプロピレンフィルムシーラント層。
(ix)二軸延伸PETフィルム/無機薄膜層/無機薄膜保護層/印刷層/ポリウレタン系接着剤層/二軸延伸ポリプロピレンフィルム/接着剤層/イージーピールタイプ無延伸ポリプロピレンフィルムシーラント層。
【0089】
上記のような包装用材料を使用して三方シールタイプ、ピロータイプ及びガゼットタイプの包装袋を作製し、シール強度及びシール部の外観が良好な包装袋を作製できる。
例えば、上記(i)の積層体を作成するには、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、用途に応じて、凸版印刷・平版印刷・凹版印刷、孔版印刷、転写印刷を行う。その上に、接着剤溶液を塗布し、また、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリエステルからなる未延伸シート、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムをシーラントフィルムとして貼り合せて、乾燥させる(ドライラミネーション法)。あるいは、溶融した接着樹脂を押出しながら、シール層Cを貼り合わせる(ホットメルトラミネーション法)。
さらにガスバリア性や耐熱性を高めたいときはアルミニウム箔やポリ塩化ビニリデン、ナイロン、エチレンービニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールからなる未延伸シート、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを備えた包装袋としてもよいし、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにシリカ、アルミナ等の無機酸化物を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング法等の公知の方法で蒸着加工してもよい。
【実施例0090】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はもとよりこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各実施例および比較例において用いた評価方法は以下の通りである。また、「シール層Cとは反対側の表面(層)」とは、実施例3及び4では基材層Aのことを指し、実施例1、2、及び比較例1~4では機能層Dのことを指す。
【0091】
(1)ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート
メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgfで測定した。
【0092】
(2)ポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率
ポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率([mmmm]%)の測定は、13C-NMRを用いて行った。メソペンタッド分率は、Zambelliら、Macromolecules、第6巻、925頁(1973)に記載の方法に従って算出した。13C-NMR測定は、BRUKER社製AVANCE500を用い、試料200mgをo-ジクロロベンゼンと重ベンゼンの8:2の混合液に135℃で溶解し、110℃で行った。
【0093】
(3)融点
ティー・エイ・インスツルメント社製Q1000示差走査熱量計を用いて、窒素雰囲気下で熱測定を行った。ポリプロピレン樹脂のペレットから約5mgを切り出して測定用のアルミパンに封入した。230℃まで昇温し5分間保持した後、-10℃/分の速度で30℃まで冷却しそのまま、30℃で5分間保持し、10℃/分で230℃まで昇温し、主たる吸熱ピーク温度を融点とした。
機能層D、基材層A、中間層B、及びシール層Cを構成するポリプロピレン系樹脂組成物の融点も同様にして測定した。
【0094】
(4)フィルム厚み
セイコー・イーエム社製ミリトロン1202Dを用いて、フィルムの全厚みを計測した。なお、各層の厚みは、上記で測定した全厚みと各層の押出し機の吐出量の割合から計算した。
【0095】
(5)ヘイズ
日本電色工業社製NDH5000を用い、23℃にて、JIS K7105に従って測定した。
【0096】
(6)5%伸長時の応力(F5)、引張弾性率、引張破断強度、引張破断伸度
JIS K7127に準拠してフィルムの長手方向および幅方向の引張試験時の各種物性を23℃にて測定した。測定する方向が200mm、これに垂直な方向が15mmとなるようにフィルムを切り取り、チャック幅は100mmで、引張試験機(インストロンジャパンカンパニイリミテッド社製デュアルコラム卓上型試験機インストロン5965)にセットした。引張速度200mm/分にて引張試験を行った。得られた歪み-応力カーブより、伸長初期の直線部分の傾きから引張弾性率を求め、5%伸長時の応力をF5とした。引張破断強度及び引張破断伸度は、それぞれ、サンプルが破断した時点での強度及び伸度とした。
【0097】
(7)熱収縮率
JIS Z1712に準拠してフィルムの長手方向および幅方向の熱収縮率を以下の方法で測定した。測定する方向が200mm、これに垂直な方向が20mmとなるようにフィルムを切り取り、120℃の熱風オーブン中に吊るして5分間加熱した。加熱後の長さを測定し、元の長さに対する収縮した長さの割合で熱収縮率を求めた。
【0098】
(8)濡れ張力(mN/m)
フィルムを長手方向に297mm、幅方向に210mmのサイズで切り出し、温度23℃、相対湿度50%で24時間エージング後、サンプルのシール層C側の面の濡れ張力をJIS K 6768に準拠して下記手順で測定した。なお、濡れ張力の測定時の雰囲気はJIS K7100に準拠し、温度23℃、相対湿度50%の試験室雰囲気で行った。
サンプルを平面基板の上に置き、サンプルのシール層Cの上に濡れ張力標準液(JIS K 6768に記載の試験用混合液)を数滴滴下して、濡れ張力標準液を綿棒によりシール層Cの表面に6cm2以上の面積となるように塗り広げ、塗布から3秒経過した時点の液膜の状態を明るいところで目視した。液膜の形成から3秒経過した時点で塗布されたときの状態を保っている(液膜破れを生じない)場合、濡れていることを意味するため、液膜の形成に用いた濡れ張力標準液より表面張力が一段階高い濡れ張力標準液を用いて液膜形成を行った。一方、3秒未満で液膜が破れる場合は、液膜の形成に用いた濡れ張力標準液より表面張力が一段階低い濡れ張力標準液を用いて液膜形成を行った。なお、液膜の形成毎に新しい綿棒を使用した。
上記液膜形成を繰り返し、シール層Cの表面を3秒間で濡らすことができる濡れ張力標準液の中で最大の数値の濡れ張力標準液の値を濡れ張力とした。なお、最大の数値の濡れ張力標準液を用いて3回液膜の形成を行って、3秒経過した時点で塗布されたときの状態を保っていることを確認した。
また、シール層Cとは反対側の表面層についても、上記と同様の測定方法及び算出方法で濡れ張力を測定した。
【0099】
(9)防曇性
フィルムを用いて、シール層C側のフィルム表面の防曇性とシール層Cとは反対側のフィルム表面の防曇性を下記の手順で評価した。
1)500ccの上部開口容器に50℃の温水を300cc入れた。
2)フィルムの防曇性を測定する側のフィルム表面を内側にして、フィルムで容器開口部を密閉した。
3)5℃の冷室中に30分間放置し、その後、防曇性を測定する側のフィルム表面の露付着状況を以下の5段階で評価した。
評価1級:全面露なし(付着面積0)
評価2級:面のわずかな部分に露付着(付着面積0超1/4以下)
評価3級:面の半分弱に露付着(付着面積1/4超2/4以下)
評価4級:面のほとんどに露付着(付着面積2/4超3/4以下)
評価5級:ほぼ全面に露付着(付着面積3/4超)
【0100】
(10)ヒートシール立上がり温度
フィルムから長手方向が20cm、幅方向が5cmであるサンプルを2枚切り出した。切り出した2枚のサンプルのシール層C同士を向かい合わせて重ねた後、東洋精機社製熱傾斜試験機を用いてヒートシールを行い、サンプルの幅方向の中央部に一列、かつ、サンプルの長手方向と平行になるように矩形状のヒートシール面5個を設置した。ヒートシール面はサンプルの長手方向に1cm、サンプルの幅方向に3cmとなるように、隣り合うヒートシール面同士の間隔が1.5cmとなるように設置された。ヒートシール温度はヒートシール面ごとに異なり、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃とした。ヒートシール圧力は1kg/cm2、時間は1秒とした。
その後、5つのヒートシール面が含まれるようにサンプルの長手方向19cm、幅方向の中央部1.5cmをカットした。なお、長手方向については、サンプルの長手方向とカットしたサンプルの長手方向が平行になるようにサンプルをカットし、長手方向の中央部に90℃でヒートシールしたヒートシール面が位置するようにした。カットしたサンプルを引張試験機(インストロン社製5965デュアルコラム卓上型試験機)の上下チャックに取付け、引張速度200mm/minで引っ張った際のヒートシール強度をヒートシール面毎に測定した(単位はN/15mm)。
また、切り出した2枚のサンプルを新たに準備し、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃でヒートシールした以外は上記と同様の方法で5つの測定用サンプルを準備しヒートシール強度の測定を行った。
横軸を温度、縦軸をヒートシール強度とする線形グラフを描き、ヒートシール強度が1N/15mmとなる温度をヒートシール立上がり温度とした。別のサンプルを準備して80~125℃でのヒートシール強度の測定をさらに2回行いヒートシール立上がり温度を求めた後、算出した3つの値の平均値をフィルムのヒートシール立上がり温度とした。
シール層Cとは反対側の表面層についても、シール層Cとは反対側の表面層同士を向かい合わせて重ねた以上は上記と同様の測定方法及び算出方法でフィルムのヒートシール立上がり温度を求めた。
【0101】
(11)ヒートシール強度
フィルムから長手方向が29.7cm、幅方向が21.0cmであるサンプルを2枚切り出した。切出した2枚のサンプルのシール層C同士を向かい合わせて重ねた後、東洋精機社製熱傾斜試験機を用いて130℃でヒートシールを行い、サンプルの幅方向の中央部に、サンプルの長手方向と平行になるように矩形状のヒートシール面を設置した。ヒートシール面はサンプルの長手方向に1.5cm、サンプルの幅方向に3cmとなるように設置された。その後、サンプルの長手方向9.5cm、幅方向の中央部1.5cmをカットした。なお、長手方向については、サンプルの長手方向とカットしたサンプルの長手方向が平行になるようにサンプルをカットし、長手方向の中央部にヒートシール面が位置するようにした。カットしたサンプルを引張試験機(インストロン社製5965デュアルコラム卓上型試験機)の上下チャックに取付け、引張速度200mm/minで引っ張った際のヒートシール強度を測定した(単位はN/15mm)。別のサンプルを2個準備してヒートシール強度の測定を行った後、算出した3つの値の平均値をフィルムのヒートシール強度とした。
また、切出した2枚のサンプルのシール層Cとは反対側の表面層同士を向かい合わせて重ねた以外は上記と同様の測定方法及び算出方法でフィルムのヒートシール強度を求めた。
さらに、ヒートシール温度を140℃とした以外は上記と同様の測定方法及び算出方法でシール層Cのヒートシール強度及びシール層Cとは反対側の表面層のヒートシール強度を求めた。
【0102】
(12)動摩擦係数
フィルムから長手方向400mm、幅方向100mmのサンプルを切り出した。これを23℃、65%RHの雰囲気下で12時間エージングし、上記サンプルを試験テーブル用として長手方向300mm×幅方向100mmの試験テーブル用サンプルと滑り片用に長手方向100mm×幅方向100mmの滑り片用サンプルとに分けた。
試験テーブル用サンプルを試験テーブルにセットし、滑り片用サンプルは、金属製の荷重が1.5kgの滑り片の底面(面積の大きさが39.7mm2、正方形)に、シール層C同士が接するように貼りつけた。
JIS K-7125に準拠し、引張試験機(A&D社製テンシロンRTG-1210)を用い、試験片の滑り速度を200mm/分、23℃、65%RH条件下でシール層C面の動摩擦係数を測定し、3回の測定の平均を用いた。
また、シール層Cとは反対側の表面同士が接するように貼り付ける以外は上記と同様の方法でシール層Cとは反対側の表面の動摩擦係数も求めた。
【0103】
(使用した原料)
下記実施及び比較例のフィルムの各層を構成するポリプロピレン系樹脂は次の通りである。
PP-1:プロピレン単独重合体(住友化学社製FLX80H5、メソペンタッド分率:98.9%、融点:163℃、MFR:7.5g/10分、分子量1万以下の成分量:4.0質量%、分子量10万以下の成分量:40.5質量%)
PP-2:プロピレン単独重合体(住友化学社製EL80F5、メソペンタッド分率:98.8%、融点:162℃、MFR:11g/10分、分子量1万以下の成分量:6.9質量%、分子量10万以下の成分量:53.1質量%)
PP-3:プロピレン単独重合体(住友化学社製FS8051、メソペンタッド分率:98.9%、融点:163℃、MFR:7.5g/10分、分子量1万以下の成分量:4.0質量%、分子量10万以下の成分量:40.5質量%、防曇剤としてステアリルジエタノールアミンモノステアレート、ステアリルジエタノールアミンジステアレート、ステアリルジエタノールアミンを合計で2.0質量%含む)
PP-4:プロピレン・エチレン・ブテン共重合体(住友化学社製FSX66E8、融点:138℃、MFR:4.5g/10分、エチレン含有量:3.3モル%、ブテン含有量:2.9モル%)
PP-5:プロピレン・ブテン共重合体(住友化学社製SP7843、融点:128℃、MFR:6.5g/10分、ブテン含有量:8.2モル%)
【0104】
(実施例1)
(基材層A)
プロピレン単独重合体PP-1を60質量%、プロピレン単独重合体PP-2を20質量%、プロピレン単独重合体PP-3を20質量%配合したポリプロピレン系樹脂組成物を原料とした。各ポリプロピレン単独重合体の物性を質量平均すると、基材層Aを構成するポリプロピレン系樹脂組成物のメソペンタッド分率は98.88%、融点は162.8℃、MFRは8.2g/10分、分子量1万以下の成分量は4.58質量%、分子量10万以下の成分量は43.02質量%となる。
(中間層B)
プロピレン・エチレン・ブテン共重合体PP-4を原料とした。
(シール層C)
プロピレン・ブテン共重合体PP-5を原料とした。
(機能層D)
プロピレン・エチレン・ブテン共重合体PP-4を原料とした。
(フィルムの製膜)
まず、機能層D/基材層A/中間層B/シール層Cのそれぞれを構成するポリプロピレン系樹脂組成物を多層フィードブロックを用い、押出機でそれぞれ250℃、250℃、250℃、210℃で加熱溶融させ、250℃でTダイから溶融ポリプロピレン系樹脂組成物を積層しながら厚みが1.8mmの積層溶融シートを機能層D/基材層A/中間層B/シール層Cのそれぞれの厚みの割合が1/16/2/1となるように共押出した。
溶融シートの機能層D側を20℃の冷却ロールに接触させ、そのまま20℃の水槽に投入した。引き続き、138℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、クリップに把持した状態で予熱部温度は168℃、延伸部温度は163℃で幅方向に13倍の延伸を行った。幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま100℃で冷却し、その後、172℃で幅方向に6%緩和させながら熱処理を行った。
得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムのシール層C側のフィルム表面にソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値が0.75A、印加電圧1.8kWの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取ったものを本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムとした。得られたフィルムの厚みは20μmであった。得られたフィルムにおいて、機能層D/基材層A/中間層B/シール層Cの各層の厚みは1μm/16μm/2μm/1μmであった。
各層の原料組成及びフィルムの製膜条件を表1に示し、フィルムの各種物性を表2に示した。実施例1の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、剛性が高いにもかかわらず、高温での熱収縮率が低く、シール強度が高く、かつ、防曇性に優れていた。
【0105】
(実施例2)
基材層A、中間層B、シール層C、及び機能層Dを構成するポリプロピレン系樹脂組成物は実施例1と同じであった。
(フィルムの製膜)
まず、機能層D/基材層A/中間層B/シール層Cのそれぞれを構成するポリプロピレン系樹脂組成物を多層フィードブロックを用い、押出機でそれぞれ250℃、250℃、250℃、210℃で加熱溶融させ、250℃でTダイから溶融ポリプロピレン系樹脂組成物を積層しながら厚みが1mmの積層溶融シートを機能層D/基材層A/中間層B/シール層Cのそれぞれの厚みの割合が1/12/2/1となるように共押出した。
溶融シートの機能層D側を20℃の冷却ロールに接触させ、そのまま20℃の水槽に投入した。引き続き、133℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、クリップに把持した状態で予熱部温度は165℃、延伸部温度は162℃で幅方向に13倍の延伸を行った。幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま100℃で冷却し、その後、172℃で幅方向に6%緩和させながら熱処理を行った。
得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムのシール層C側のフィルム表面にソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値が0.75A、印加電圧1.8KWの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取ったものを実施例1の二軸配向ポリプロピレンフィルムとした。得られたフィルムの厚みは16μmであった。得られたフィルムにおいて、機能層D/基材層A/中間層B/シール層Cの各層の厚みは1μm/12μm/2μm/1μmであった。
各層の原料組成及びフィルムの製膜条件を表1に示し、フィルムの各種物性を表2に示した。実施例2の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、剛性が高いにもかかわらず、高温での熱収縮率が低く、シール強度が高く、かつ、防曇性に優れていた。
【0106】
(実施例3)
基材層A、中間層B、及びシール層Cを構成するポリプロピレン系樹脂組成物は実施例1と同じであった。なお、実施例3で得られる二軸配向ポリプロピレンフィルムは機能層Dを備えていない。
(フィルムの製膜)
まず、基材層A/中間層B/シール層Cのそれぞれを構成するポリプロピレン系樹脂組成物を多層フィードブロックを用い、押出機でそれぞれ250℃、250℃、210℃で加熱溶融させ、250℃でTダイから溶融ポリプロピレン系樹脂組成物を積層しながら厚みが1mmの積層溶融シートを基材層A/中間層B/シール層Cのそれぞれの厚みの割合が1/12/2/1となるように共押出した。
溶融シートの基材層A側を20℃の冷却ロールに接触させ、そのまま20℃の水槽に投入した。引き続き、133℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、クリップに把持した状態で予熱部温度は165℃、延伸部温度は162℃で幅方向に13倍の延伸を行った。幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま100℃で冷却し、その後、172℃で幅方向に6%緩和させながら熱処理を行った。
得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムのシール層C側のフィルム表面にソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値が0.75A、印加電圧1.8KWの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取ったものを実施例2の二軸配向ポリプロピレンフィルムとした。得られたフィルムの厚みは16μmであった。得られたフィルムにおいて、基材層A/中間層B/シール層Cの各層の厚みは13μm/2μm/1μmであった。
各層の原料組成及びフィルムの製膜条件を表1に示し、フィルムの各種物性を表2に示した。実施例3の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、剛性が高いにもかかわらず、高温での熱収縮率が低く、シール強度が高く、かつ、防曇性に優れていた。
【0107】
(実施例4)
幅方向の延伸倍率を14倍、緩和率を3%にした点以外は実施例3と同様の製膜方法で、実施例4の二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚みは16μmであり、基材層A/中間層B/シール層Cの各層の厚みは13μm/2μm/1μmであった。各層の原料組成及びフィルムの製膜条件を表1に示し、フィルムの各種物性を表2に示した。
実施例4の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、剛性が高いにもかかわらず、高温での熱収縮率が低く、シール強度が高く、かつ、防曇性に優れていた。
【0108】
(比較例1)
Tダイから共押出する積層溶融シートの厚みを0.7mmに変更し、幅方向の延伸倍率を10倍に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1のフィルムを得た。得られたフィルムにおいて、機能層D/基材層A/中間層B/シール層Cの各層の厚みは1μm/16μm/2μm/1μmであった。
各層の原料組成及びフィルムの製膜条件を表1に示し、フィルムの各種物性を表2に示した。比較例1の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、剛性が低く、包装袋としたときに袋形状を保持しにくかった。
【0109】
(比較例2)
172℃で幅方向に6%緩和させながら熱処理を行うのに代えて、幅方向に緩和させずに172℃で熱処理を行った以外は実施例1と同様にして、比較例2のフィルムを得た。得られたフィルムにおいて、機能層D/基材層A/中間層B/シール層Cの各層の厚みは1μm/16μm/2μm/1μmであった。
各層の原料組成及びフィルムの製膜条件を表1に示し、フィルムの各種物性を表2に示した。比較例2の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、熱収縮率が大きく、ヒートシール時にシワが生じやすかった。
【0110】
(比較例3)
幅方向延伸後の熱処理温度を172℃から158℃へと変更した以外は実施例1と同様にして、比較例3のフィルムを得た。得られたフィルムにおいて、機能層D/基材層A/中間層B/シール層Cの各層の厚みは1μm/16μm/2μm/1μmであった。
各層の原料組成及びフィルムの製膜条件を表1に示し、フィルムの各種物性を表2に示した。比較例3の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、熱収縮率が大きく、ヒートシール時にシワが生じやすかった。
【0111】
(比較例4)
基材層A用のポリプロピレン系樹脂組成物を以下の原料とした以外は実施例1と同様にして、比較例4のフィルムを得た。得られたフィルムにおいて、機能層D/基材層A/中間層B/シール層Cの各層の厚みは1μm/16μm/2μm/1μmであった。
各層の原料組成及びフィルムの製膜条件を表1に示し、フィルムの各種物性を表2に示した。比較例4の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、剛性が低く、包装袋としたときに袋形状を保持しにくい上に熱収縮率が大きく、ヒートシール時にシワが生じやすかった。
【0112】
(基材層A)
PP-6(プロピレン単独重合体:日本ポリプロ社製「FY6H」、MFR:1.9g/10分、融点:163℃、メソペンタッド分率:98.9%)を43質量%、PP-7(100質量%の上記PP-1に対して、グリセリンモノステアレート(松本油脂製薬社製TB-123)を0.16質量%、ポリオキシエチレン(2)ステアリルアミン(松本油脂製薬社製TB-12)を0.2質量%、ポリオキシエチレン(2)ステアリルアミンモノステアレート(松本油脂製薬社製エレックス334)を0.6質量%添加した組成物)を57質量%配合したポリプロピレン系樹脂組成物を原料とした。
【0113】
【0114】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、剛性及び耐熱性に優れているため、製袋加工性に優れており、包装袋としたときの袋形状を保持しやすい。そのため、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは包装袋に用いることができ、特に防曇剤を添加した包装袋は、青果物の包装に好適である。また、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、ヒートシール性に優れているため、シーラントフィルムをラミネートすることなく、高い剛性が必要とされる用途にも好適に用いることができ、フィルムの厚みを薄くしても強度を維持することができるため、環境への負荷を少なくすることができる。