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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168361
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20241128BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L21/306 S
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084941
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日野出 大輝
(72)【発明者】
【氏名】石津 岳明
【テーマコード(参考)】
5F004
5F043
【Fターム(参考)】
5F004BB18
5F004BB20
5F004BB24
5F004DA20
5F004DB01
5F004DB02
5F004DB03
5F004DB07
5F004EA37
5F004FA08
5F043AA31
5F043AA35
5F043DD07
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE10
5F043EE12
5F043EE22
5F043EE24
5F043EE25
5F043FF01
(57)【要約】
【課題】被覆層を形成しなくても凹部の幅のばらつきを減らすことができる基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、底に近づくにしたがって幅WDが減少した凹部104が表面に設けられた基板Wを準備する基板準備工程と、凹部104の側面105をエッチングするエッチング液を凹部104の中に供給するエッチング液供給工程と、凹部104がエッチング液で満たされた状態で基板Wの表面とは反対の基板Wの裏面側から基板Wを加熱することにより、凹部104の側面105の温度を凹部104の底に近づくにしたがって増加させる裏面加熱工程とを含む。
【選択図】図7A-C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底に近づくにしたがって幅が減少した凹部が表面に設けられた基板を準備する基板準備工程と、
前記凹部の側面をエッチングするエッチング液を前記凹部の中に供給するエッチング液供給工程と、
前記凹部が前記エッチング液で満たされた状態で前記基板の前記表面とは反対の前記基板の裏面側から前記基板を加熱することにより、前記凹部の前記側面の温度を前記凹部の前記底に近づくにしたがって増加させる裏面加熱工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記基板準備工程は、前記底に近づくにしたがって前記幅が減少した前記凹部を前記基板の前記表面に形成するドライエッチング工程を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板準備工程は、三次元NAND型フラッシュメモリーのメモリーセルアレイを構成する積層膜と、前記積層膜によって形成されており、前記底に近づくにしたがって前記幅が減少した前記凹部と、を含む前記基板を準備する工程である、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記裏面加熱工程は、前記基板の前記表面および裏面の温度を安定させる工程を含む、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記エッチング液供給工程は、エッチング液タンクから供給された前記エッチング液を前記凹部の中に供給する工程を含み、
前記裏面加熱工程は、前記エッチング液タンクから供給された前記エッチング液を、前記基板の前記表面に供給される前記エッチング液の温度よりも高い温度に加熱し、加熱された前記エッチング液を前記基板の前記裏面に供給する工程を含む、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記裏面加熱工程は、前記凹部が前記エッチング液で満たされた状態を維持しながら、前記基板の前記裏面を前記エッチング液の沸点以上の温度に加熱する工程を含む、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記基板処理方法は、前記基板への前記エッチング液の供給時間、および前記基板の前記表面に供給される前記エッチング液の温度を表す液温と前記基板を加熱する温度を表す加熱温度との組み合わせ、のうちの少なくとも1つが異なる複数のレシピのいずれか1つを選択するレシピ選択工程をさらに含み、
前記エッチング液供給工程は、選択された前記レシピに指定されている前記液温の前記エッチング液を、選択された前記レシピに指定されている前記供給時間だけ前記凹部の中に供給し、
前記裏面加熱工程は、選択された前記レシピに指定されている前記加熱温度で前記基板を前記基板の前記裏面側から加熱する、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記基板処理方法は、前記基板に供給される前の前記エッチング液の温度を測定する液温測定工程をさらに含み、
前記裏面加熱工程は、前記液温測定工程で測定された前記エッチング液の温度に応じて前記基板を前記基板の前記裏面側から加熱する温度を変更することにより、前記液温測定工程で測定された前記エッチング液の温度と前記基板の前記裏面の温度との差の変動を減少させる工程を含む、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項9】
底に近づくにしたがって幅が減少した凹部が表面に設けられた基板を保持する基板ホルダーと、
前記凹部の側面をエッチングするエッチング液を、前記基板ホルダーに保持されている前記基板の前記凹部の中に供給するエッチング液ノズルと、
前記基板ホルダーが前記基板を保持しており前記凹部が前記エッチング液で満たされた状態で前記基板の前記表面とは反対の前記基板の裏面側から前記基板を加熱することにより、前記凹部の前記側面の温度を前記凹部の前記底に近づくにしたがって増加させる基板加熱ヒーターと、を含む、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。基板には、例えば、半導体ウエハ、液晶表示装置や有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、底に近づくにしたがって径が減少したリセスをドライエッチングによって形成し、その後、リセスの表面側部分を被覆層で被覆しながら、リセスの深部を薬液でエッチングすることを開示している。リセスの表面側部分を被覆する被覆層は、リセスを充填する充填層が形成された後に形成される。特許文献1の段落0170、段落0225、図11、および図17は、基板の上面上の処理液から充填層を形成するために、基板の下側から基板を加熱する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-099686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、リセスの深部を薬液でエッチングする前に、リセスの表面側部分を被覆層で被覆する必要がある。
【0005】
本発明の目的の1つは、被覆層を形成しなくても凹部の幅のばらつきを減らすことができる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、底に近づくにしたがって幅が減少した凹部が表面に設けられた基板を準備する基板準備工程と、前記凹部の側面をエッチングするエッチング液を前記凹部の中に供給するエッチング液供給工程と、前記凹部が前記エッチング液で満たされた状態で前記基板の前記表面とは反対の前記基板の裏面側から前記基板を加熱することにより、前記凹部の前記側面の温度を前記凹部の前記底に近づくにしたがって増加させる裏面加熱工程と、を含む、基板処理方法を提供する。
【0007】
前記実施形態において、以下の特徴の少なくとも1つを、前記基板処理方法に加えてもよい。
【0008】
前記基板準備工程は、前記底に近づくにしたがって前記幅が減少した前記凹部を前記基板の前記表面に形成するドライエッチング工程を含む。
【0009】
前記基板準備工程は、三次元NAND型フラッシュメモリーのメモリーセルアレイを構成する積層膜と、前記積層膜によって形成されており、前記底に近づくにしたがって前記幅が減少した前記凹部と、を含む前記基板を準備する工程である。
【0010】
前記裏面加熱工程は、前記基板の前記表面および裏面の温度を安定させる工程を含む。
【0011】
前記エッチング液供給工程は、エッチング液タンクから供給された前記エッチング液を前記凹部の中に供給する工程を含み、前記裏面加熱工程は、前記エッチング液タンクから供給された前記エッチング液を、前記基板の前記表面に供給される前記エッチング液の温度よりも高い温度に加熱し、加熱された前記エッチング液を前記基板の前記裏面に供給する工程を含む。
【0012】
前記裏面加熱工程は、前記凹部が前記エッチング液で満たされた状態を維持しながら、前記基板の前記裏面を前記エッチング液の沸点以上の温度に加熱する工程を含む。
【0013】
前記基板処理方法は、前記基板への前記エッチング液の供給時間、および前記基板の前記表面に供給される前記エッチング液の温度を表す液温と前記基板を加熱する温度を表す加熱温度との組み合わせ、のうちの少なくとも1つが異なる複数のレシピのいずれか1つを選択するレシピ選択工程をさらに含み、前記エッチング液供給工程は、選択された前記レシピに指定されている前記液温の前記エッチング液を、選択された前記レシピに指定されている前記供給時間だけ前記凹部の中に供給し、前記裏面加熱工程は、選択された前記レシピに指定されている前記加熱温度で前記基板を前記基板の前記裏面側から加熱する。
【0014】
前記基板処理方法は、前記基板に供給される前の前記エッチング液の温度を測定する液温測定工程をさらに含み、前記裏面加熱工程は、前記液温測定工程で測定された前記エッチング液の温度に応じて前記基板を前記基板の前記裏面側から加熱する温度を変更することにより、前記液温測定工程で測定された前記エッチング液の温度と前記基板の前記裏面の温度との差の変動を減少させる工程を含む。
【0015】
本発明の他の実施形態は、底に近づくにしたがって幅が減少した凹部が表面に設けられた基板を保持する基板ホルダーと、前記凹部の側面をエッチングするエッチング液を、前記基板ホルダーに保持されている前記基板の前記凹部の中に供給するエッチング液ノズルと、前記基板ホルダーが前記基板を保持しており前記凹部が前記エッチング液で満たされた状態で前記基板の前記表面とは反対の前記基板の裏面側から前記基板を加熱することにより、前記凹部の前記側面の温度を前記凹部の前記底に近づくにしたがって増加させる基板加熱ヒーターと、を含む、基板処理装置を提供する。この装置によれば、前述の基板処理方法と同様の効果を奏することができる。基板処理方法に関する前述の特徴の少なくとも1つを前記基板処理装置に加えてもよい。
【0016】
前記基板加熱ヒーターは、前記基板に接触しながら前記基板を加熱してもよいし、前記基板に接触せずに前記基板を加熱してもよい。前記基板加熱ヒーターは、熱伝導、対流、および熱放射のいずれかによって前記基板を加熱してもよいし、これらのうちの2つ以上によって前記基板を加熱してもよい。前記基板加熱ヒーターは、加熱液や加熱ガスなどの加熱流体を基板の裏面に接触させることにより、前記基板加熱ヒーターが発した熱を前記基板に伝達してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】本発明の一実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す概略平面図である。
図1B】基板処理装置の概略側面図である。
図2】処理ユニットの内部を水平に見た概略図である。
図3】基板処理装置の処理液供給システムを示す概略図である。
図4図2に示す処理ユニットとは異なる処理ユニットの内部を水平に見た概略図である。
図5図4に示す処理ユニットに設けられたスピンチャックおよびホットプレートを上から見た概略図である。
図6】基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
図7A-C】基板処理装置で処理される前後の基板の断面の一例を示す概略図である。
図8】基板処理装置によって行われるウェットエッチングの一例について説明するための工程図である。
図9】基板の表面にエッチング液を供給しながら基板の裏面側から基板を加熱するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1Aは、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1のレイアウトを示す概略平面図である。図1Bは、基板処理装置1の概略側面図である。
【0020】
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板Wを収容するキャリアCAを保持するロードポートLPと、ロードポートLP上のキャリアCAから搬送された基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体で処理する複数の処理ユニット2と、ロードポートLP上のキャリアCAと複数の処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送システムTSと、基板処理装置1を制御する制御装置3とを備えている。
【0021】
複数の処理ユニット2は、複数のタワーTWを形成している。図1Aは、4つのタワーTWが形成された例を示している。図1Bに示すように、1つのタワーTWに含まれる複数の処理ユニット2は、上下に積層されている。図1Aに示すように、複数のタワーTWは、平面視で基板処理装置1の奥行方向に並んだ2つの列を形成している。平面視において2つの列は搬送路TPを介して互いに向かい合っている。
【0022】
搬送システムTSは、ロードポートLP上のキャリアCAと複数の処理ユニット2との間で基板Wを搬送するインデクサロボットIRと、インデクサロボットIRと複数の処理ユニット2との間で基板Wを搬送するセンターロボットCRとを含む。インデクサロボットIRは、平面視でロードポートLPとセンターロボットCRとの間に配置されている。センターロボットCRは、搬送路TPに配置されている。
【0023】
インデクサロボットIRは、基板Wを水平に支持する1つ以上のハンドHiを含む。ハンドHiは、水平方向および鉛直方向のいずれにも平行に移動可能である。ハンドHiは、鉛直な直線まわりに回転可能である。ハンドHiは、いずれのロードポートLP上のキャリアCAに対しても基板Wの搬入および搬出を行うことができ、センターロボットCRと基板Wの受け渡しをすることができる。
【0024】
センターロボットCRは、基板Wを水平に支持する1つ以上のハンドHcを含む。ハンドHcは、水平方向および鉛直方向のいずれにも平行に移動可能である。ハンドHcは、鉛直な直線まわりに回転可能である。ハンドHcは、インデクサロボットIRと基板Wの受け渡しをすることができ、いずれの処理ユニット2に対しても基板Wの搬入および搬出を行うことができる。
【0025】
次に、処理ユニット2について説明する。
【0026】
図2は、処理ユニット2の内部を水平に見た概略図である。処理ユニット2は、内部空間を有する箱型のチャンバー4と、チャンバー4内で1枚の基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック10と、回転軸線A1まわりにスピンチャック10を取り囲む筒状の処理カップ21とを含む。
【0027】
チャンバー4は、基板Wが通過する搬入搬出口5bが設けられた箱型の隔壁5と、搬入搬出口5bを開閉するシャッター7とを含む。FFU6(ファン・フィルター・ユニット)は、隔壁5の上部に設けられた送風口5aの上に配置されている。FFU6は、クリーンエアー(フィルターによってろ過された空気)を送風口5aからチャンバー4内に常時供給する。チャンバー4内の気体は、処理カップ21の底部に接続された排気ダクト8を通じてチャンバー4から排出される。これにより、クリーンエアーのダウンフローがチャンバー4内に常時形成される。排気ダクト8に排出される排気の流量は、排気ダクト8内に配置された排気バルブ9の開度に応じて変更される。
【0028】
スピンチャック10は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース12と、スピンベース12の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン11と、スピンベース12の中央部から下方に延びるスピン軸13と、スピン軸13を回転させることによりスピンベース12および複数のチャックピン11を回転させるスピンモーター14とを含む。複数のチャックピン11は、基板ホルダーの一例である。スピンチャック10は、複数のチャックピン11を基板Wの外周面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース12の上面12uに吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。この場合、スピンベース12が基板ホルダーに相当する。
【0029】
処理カップ21は、基板Wから外方に排出された処理液を受け止める複数のガード24と、複数のガード24によって下方に案内された処理液を受け止める複数のカップ23と、複数のガード24および複数のカップ23を取り囲む円筒状の外壁部材22とを含む。図2は、4つのガード24と3つのカップ23とが設けられており、最も外側のカップ23が上から3番目のガード24と一体である例を示している。
【0030】
ガード24は、スピンチャック10を取り囲む円筒部25と、円筒部25の上端部から回転軸線A1に向かって斜め上に延びる円環状の天井部26とを含む。複数の天井部26は、上下に重なっており、複数の円筒部25は、同心円状に配置されている。天井部26の円環状の上端は、平面視で基板Wおよびスピンベース12を取り囲むガード24の上端24uに相当する。複数のカップ23は、それぞれ、複数の円筒部25の下方に配置されている。カップ23は、ガード24によって下方に案内された処理液を受け止める環状の液受溝を形成している。
【0031】
処理ユニット2は、複数のガード24を個別に昇降させるガード昇降ユニット27を含む。ガード昇降ユニット27は、上位置から下位置までの任意の位置にガード24を位置させる。図2は、2つのガード24が上位置に配置されており、残り2つのガード24が下位置に配置された状態を示している。上位置は、ガード24の上端24uがスピンチャック10に保持されている基板Wが配置される保持位置よりも上方に配置される位置である。下位置は、ガード24の上端24uが保持位置よりも下方に配置される位置である。
【0032】
回転している基板Wに処理液を供給するときは、少なくとも1つのガード24が上位置に配置される。この状態で、処理液が基板Wに供給されると、処理液は、基板Wから外方に振り切られる。振り切られた処理液は、基板Wに水平に対向するガード24の内面に衝突し、このガード24に対応するカップ23に案内される。これにより、基板Wから排出された処理液がカップ23に集められる。
【0033】
処理ユニット2は、スピンチャック10に保持されている基板Wに向けて処理液や処理ガスなどの処理流体を吐出する複数のノズルを含む。複数のノズルは、基板Wの上面に向けてエッチング液を吐出するエッチング液ノズル31aと、基板Wの上面に向けて薬液を吐出する薬液ノズル31bと、基板Wの上面に向けてリンス液を吐出するリンス液ノズル35とを含む。複数のノズルは、さらに、基板Wの上面に向けて有機溶剤の液体(以下では、単に「有機溶剤」という。)を吐出する有機溶剤ノズル39とを含む。
【0034】
図2は、エッチング液がフッ酸であり、薬液がSC1であり、リンス液がDIWであり、有機溶剤がIPAである例を示している。HFは、フッ酸(フッ化水素酸)を表している。SC1は、水酸化アンモニウムと過酸化水素と水とを含む液体を表している。DIWは、純水(脱イオン水(DIW(deionized water)))を表している。IPAは、イソプロピルアルコールを表している。エッチング液は、フッ酸以外の液体であってもよい。薬液、リンス液、および有機溶剤についても同様である。
【0035】
エッチング液は、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(例えばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(例えば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤の少なくとも1つを含む液であってもよいし、これ以外の液体であってもよい。薬液についても同様である。リンス液は、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、希釈濃度(例えば、10~100ppm程度)の塩酸水、および希釈濃度(例えば、10~100ppm程度)のアンモニア水のいずれかであってもよい。有機溶剤は、IPA以外のアルコールであってもよいし、HFE(ハイドロフルオロエーテル)などのアルコール以外の有機溶剤であってもよい。
【0036】
エッチング液ノズル31aは、チャンバー4内で水平に移動可能なスキャンノズルであってもよいし、チャンバー4の隔壁5に対して固定された固定ノズルであってもよい。薬液ノズル31b、リンス液ノズル35、および有機溶剤ノズル39についても同様である。図2は、エッチング液ノズル31a、薬液ノズル31b、リンス液ノズル35、および有機溶剤ノズル39が、スキャンノズルであり、これら4つのノズルにそれぞれ対応する4つのノズル移動ユニットが設けられた例を示している。
【0037】
エッチング液ノズル31aは、エッチング液ノズル31aにエッチング液を案内するエッチング液配管32aに接続されている。エッチング液配管32aに介装されたエッチング液バルブ33aが開かれると、エッチング液が、エッチング液ノズル31aの吐出口から下方に連続的に吐出される。エッチング液ノズル31aは、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方にエッチング液ノズル31aを移動させるノズル移動ユニット34aに接続されている。ノズル移動ユニット34aは、エッチング液ノズル31aから吐出されたエッチング液が基板Wの上面に供給される処理位置と、エッチング液ノズル31aが平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間でエッチング液ノズル31aを水平に移動させる。
【0038】
図示はしないが、エッチング液バルブ33aは、エッチング液が通過する環状の弁座が設けられたバルブボディと、弁座に対して移動可能な弁体と、弁体が弁座に接触する閉位置と弁体が弁座から離れた開位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他のバルブについても同様である。アクチュエータは、空圧アクチュエータまたは電動アクチュエータであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。制御装置3は、アクチュエータを制御することにより、エッチング液バルブ33aを開閉させる。
【0039】
薬液ノズル31bは、薬液ノズル31bに薬液を案内する薬液配管32bに接続されている。薬液配管32bに介装された薬液バルブ33bが開かれると、薬液が、薬液ノズル31bの吐出口から下方に連続的に吐出される。薬液ノズル31bは、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に薬液ノズル31bを移動させるノズル移動ユニット34bに接続されている。ノズル移動ユニット34bは、薬液ノズル31bから吐出された薬液が基板Wの上面に供給される処理位置と、薬液ノズル31bが平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間で薬液ノズル31bを水平に移動させる。
【0040】
リンス液ノズル35は、リンス液ノズル35にリンス液を案内するリンス液配管36に接続されている。リンス液配管36に介装されたリンス液バルブ37が開かれると、リンス液が、リンス液ノズル35の吐出口から下方に連続的に吐出される。リンス液ノズル35は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方にリンス液ノズル35を移動させるノズル移動ユニット38に接続されている。ノズル移動ユニット38は、リンス液ノズル35から吐出されたリンス液が基板Wの上面に供給される処理位置と、リンス液ノズル35が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間でリンス液ノズル35を水平に移動させる。
【0041】
有機溶剤ノズル39は、有機溶剤ノズル39に有機溶剤を案内する有機溶剤配管40に接続されている。有機溶剤配管40に介装された有機溶剤バルブ41が開かれると、有機溶剤が、有機溶剤ノズル39の吐出口から下方に連続的に吐出される。有機溶剤ノズル39は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に有機溶剤ノズル39を移動させるノズル移動ユニット42に接続されている。ノズル移動ユニット42は、有機溶剤ノズル39から吐出された有機溶剤が基板Wの上面に供給される処理位置と、有機溶剤ノズル39が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間で有機溶剤ノズル39を水平に移動させる。
【0042】
複数のノズルは、エッチング液ノズル31a等に加えて、基板Wの下面の中央部に向けて処理流体を吐出する下面ノズル71を含む。図2は、エッチング液の一例であるフッ酸を下面ノズル71が吐出する例を示している。下面ノズル71から吐出される処理流体は、フッ酸以外の液体または気体であってもよい。下面ノズル71は、スピンベース12の上面12uと基板Wの下面との間に配置されている。基板Wがスピンチャック10に保持されているとき、下面ノズル71の吐出口は、基板Wの下面の中央部に上下に対向する。
【0043】
図2に示す例では、下面ノズル71は、室温(例えば、20~30℃)よりも高温の加熱流体を下面ノズル71に案内する加熱流体配管72aと、リンス液を下面ノズル71に案内するリンス液配管72bとに接続されている。加熱流体は、加熱流体配管72aに介装された基板加熱ヒーター74によって加熱され、下面ノズル71に供給される。加熱流体配管72aに介装された加熱流体バルブ73aが開かれると、基板加熱ヒーター74によって加熱された加熱流体が、下面ノズル71の吐出口から上方に連続的に吐出される。リンス液配管72bに介装されたリンス液バルブ73bが開かれると、リンス液の一例である純水が、下面ノズル71の吐出口から上方に連続的に吐出される。
【0044】
図2は、下面ノズル71に設けられた吐出口の数が1つである例を示している。下面ノズル71は、基板Wの回転軸線A1からの距離が異なる複数の位置にそれぞれ配置された複数の吐出口を備えていてもよい。複数の吐出口は、基板Wの回転軸線A1に直交する1つの直線上に配置された2つ以上の吐出口を含んでいてもよいし、このような吐出口を含んでいなくてもよい。つまり、後者の場合、各吐出口は、他の1つ以上の吐出口に対して基板Wの径方向だけでなく基板Wの周方向にもずれていてもよい。複数の吐出口が下面ノズル71に設けられる場合、下面ノズル71は、基板Wの回転軸線A1に直交する方向に延びる水平な長方形状であってもよいし、スピンチャック10に保持されている基板Wと同心で、基板Wの直径よりも小さい水平な円板状であってもよい。
【0045】
次に、図2に示す処理ユニット2に処理液を供給する処理液供給システムについて説明する。
【0046】
図3は、基板処理装置1の処理液供給システムを示す概略図である。基板処理装置1は、エッチング液ノズル31aにエッチング液を供給する処理液供給システムを備えている。処理液供給システムは、エッチング液ノズル31aに供給すべきエッチング液を貯留するエッチング液タンク75と、エッチング液タンク75から供給されたエッチング液を循環させる循環配管76と、エッチング液タンク75内のエッチング液を循環配管76に送る循環ポンプ77とを含む。処理液供給システムは、さらに、循環配管76内を流れるエッチング液を加熱する循環ヒーター78と、循環配管76内を流れるエッチング液から異物を除去する循環フィルター79とを含む。
【0047】
循環配管76の上流端および下流端は、エッチング液タンク75に接続されている。エッチング液は、エッチング液タンク75から循環配管76の上流端に送られ、循環配管76の下流端からエッチング液タンク75に戻る。これにより、エッチング液タンク75および循環配管76によって形成された環状の循環路をエッチング液が循環する。エッチング液が循環路を循環している間に、エッチング液が循環ヒーター78によって加熱され、エッチング液に含まれる異物が循環フィルター79によって除去される。これにより、エッチング液タンク75内のエッチング液が室温よりも高い一定の温度に維持される。
【0048】
エッチング液タンク75内のエッチング液は、1つのタワーTWに含まれる複数の処理ユニット2に供給される。処理液供給システムは、循環配管76内のエッチング液を1つのタワーTWに含まれる複数の処理ユニット2に向けて案内する共通配管80を含む。複数のエッチング液ノズル31aは、複数のエッチング液配管32aを介して共通配管80に接続されている。複数の下面ノズル71は、複数の加熱流体配管72aを介して共通配管80に接続されている。エッチング液タンク75内のエッチング液は、循環ヒーター78および基板加熱ヒーター74によって加熱された後に下面ノズル71に供給される。したがって、下面ノズル71は、基板Wの上面に供給されるエッチング液よりも高温のエッチング液を基板Wの下面に供給する。
【0049】
基板処理装置1は、基板Wに供給される前のエッチング液の温度を測定する複数の液温センサー81を備えていてもよい。複数の液温センサー81は、1つのエッチング液ノズル31aごとに1つずつ設けられている。液温センサー81は、チャンバー4内でエッチング液の温度を測定してもよいし、チャンバー4の外でエッチング液の温度を測定してもよい。
【0050】
図3に示すように、エッチング液タンク75からエッチング液ノズル31aまでの距離がエッチング液ノズル31aごとに異なるので、エッチング液ノズル31aから吐出されたときのエッチング液の温度は、エッチング液ノズル31aごとに異なる可能性がある。これに対して、基板加熱ヒーター74から下面ノズル71までの距離のばらつきが小さいので、下面ノズル71から吐出されたときのエッチング液の温度のばらつきは小さいと予想される。
【0051】
制御装置3は、液温センサー81の検出値に基づいて基板加熱ヒーター74の温度を変更することにより、エッチング液ノズル31aから吐出されるエッチング液の温度と下面ノズル71から吐出されるエッチング液の温度との差を一定値に維持してもよい。このようにすれば、基板Wの表面に供給されるエッチング液の温度と基板Wの裏面に供給されるエッチング液の温度との差を複数の処理ユニット2の間で一定またはほぼ一定に維持することができる。
【0052】
処理液供給システムは、1つのタワーTWに含まれる複数の処理ユニット2で基板Wに供給された処理液を排出する排液配管と、同処理液を回収する回収配管とを含む。排液配管は、1つの処理ユニット2ごとに1つずつ設けられた複数の個別排液配管82iと、複数の個別排液配管82iによって案内された処理液を案内する共通排液配管82cとを含む。回収配管は、1つの処理ユニット2ごとに1つずつ設けられた複数の個別回収配管83iと、複数の個別回収配管83iによって案内された処理液を案内する共通回収配管83cとを含む。
【0053】
個別排液配管82iおよび個別回収配管83iは、カップ23に接続されている。個別排液配管82iに介装された排液バルブ82vが開かれると、カップ23内のエッチング液が、個別排液配管82iを介して共通排液配管82cに排出される。個別回収配管83iに介装された回収バルブ83vが開かれると、カップ23内のエッチング液が、個別回収配管83iを介して共通回収配管83cに排出される。共通回収配管83cの下流端は、エッチング液タンク75に接続されている。共通回収配管83c内のエッチング液は、エッチング液タンク75内に流れる。これにより、基板Wに供給されたエッチング液がエッチング液タンク75に回収される。
【0054】
次に、図2に示す処理ユニット2とは異なる処理ユニット2について説明する。
【0055】
図4は、図2に示す処理ユニット2とは異なる処理ユニット2の内部を水平に見た概略図である。図5は、図4に示す処理ユニット2に設けられたスピンチャック10およびホットプレート92を上から見た概略図である。図2に示された構成と同等の構成については、図2と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図4および図5に示す処理ユニット2の図2に示す処理ユニット2に対する主要な相違点は、下面ノズル71の代わりにホットプレート92が設けられていることである。ホットプレート92は、電力の供給に応じて発熱する電気機器の一例である。図4に示すように、ホットプレート92は、基板Wとスピンベース12との間に配置される。
【0057】
ホットプレート92は、通電によりジュール熱を発生する基板加熱ヒーター93と、基板加熱ヒーター93を収容するアウターケース94とを含む。基板加熱ヒーター93およびアウターケース94は、基板Wの下方に配置される。基板加熱ヒーター93は、基板加熱ヒーター93に電力を供給する配線(図示せず)に接続されている。基板加熱ヒーター93の温度は、制御装置3によって変更される。制御装置3が基板加熱ヒーター93を発熱させると、基板Wの全体が均一に加熱される。
【0058】
ホットプレート92のアウターケース94は、基板Wの下方に配置される円板状のベース部95と、ベース部95の上面から上方に突出する複数の半球状の突出部96とを含む。ベース部95の上面は、基板Wの下面と平行であり、基板Wの直径より小さい外径を有している。複数の突出部96は、ベース部95の上面から上方に離れた位置で基板Wの下面に接触する。複数の突出部96は、基板Wが水平に支持されるように、ベース部95の上面内の複数の位置に配置されている。基板Wは、基板Wの下面がベース部95の上面から上方に離れた状態で水平に支持される。
【0059】
図5に示すように、複数のチャックピン11は、ホットプレート92のまわりに配置されている。ホットプレート92の中心線は、基板Wの回転軸線A1上に配置されている。スピンチャック10が回転しても、ホットプレート92は回転しない。ホットプレート92の外径は、基板Wの直径よりも小さい。ホットプレート92の外径と基板Wの直径との差は、チャックピン11の高さ(図4参照。スピンベース12の上面12uからチャックピン11の上端までの上下方向の長さ)よりも小さい。
【0060】
図4に示すように、ホットプレート92は、ホットプレート92の中央部から下方に延びる支軸97によって水平に支持されている。ホットプレート92は、スピンベース12に対して上下に移動可能である。ホットプレート92は、支軸97を介してプレート昇降ユニット98に接続されている。プレート昇降ユニット98は、上位置(図4において実線で示す位置)と下位置(図4において二点鎖線で示す位置)との間でホットプレート92を鉛直に昇降させる。上位置は、ホットプレート92が基板Wの下面に接触する接触位置である。下位置は、ホットプレート92が基板Wから離れた状態で基板Wの下面とスピンベース12の上面12uとの間に配置される近接位置である。
【0061】
プレート昇降ユニット98は、上位置から下位置までの任意の位置にホットプレート92を位置させる。基板Wが複数のチャックピン11に支持されており、基板Wの把持が解除されている状態で、ホットプレート92が上位置まで上昇すると、ホットプレート92の複数の突出部96が基板Wに下面に接触し、基板Wがホットプレート92に支持される。その後、基板Wは、ホットプレート92によって持ち上げられ、複数のチャックピン11から上方に離れる。この状態で、ホットプレート92が下位置まで下降すると、ホットプレート92上の基板Wが複数のチャックピン11の上に置かれ、ホットプレート92が基板Wから下方に離れる。このようにして、基板Wは、複数のチャックピン11とホットプレート92との間で受け渡される。
【0062】
次に、基板処理装置1の電気的構成について説明する。
【0063】
図6は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。制御装置3は、少なくとも1つのコンピューターを含む。コンピューターは、コンピューター本体3aと、コンピューター本体3aに接続された周辺装置3dとを含む。コンピューター本体3aは、各種の命令を実行するCPU3b(central processing unit:中央処理装置)と、情報を記憶するメモリー3cとを含む。周辺装置3dは、プログラムP等の情報を記憶するストレージ3eと、リムーバブルメディアRMから情報を読み取るリーダー3fと、ホストコンピューター等の他の装置と通信する通信装置3gとを含む。
【0064】
制御装置3は、入力装置および表示装置に接続されている。入力装置は、ユーザーやメンテナンス担当者などの操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置の画面に表示される。入力装置は、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置および表示装置を兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられてもよい。
【0065】
CPU3bは、ストレージ3eに記憶されたプログラムPを実行する。ストレージ3e内のプログラムPは、制御装置3に予めインストールされたものであってもよいし、リーダー3fを通じてリムーバブルメディアRMからストレージ3eに送られたものであってもよいし、ホストコンピューターなどの外部装置から通信装置3gを通じてストレージ3eに送られたものであってもよい。
【0066】
ストレージ3eおよびリムーバブルメディアRMは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリーである。ストレージ3eは、例えば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。リムーバブルメディアRMは、例えば、コンパクトディスクなどの光ディスクまたはメモリーカードなどの半導体メモリーである。リムーバブルメディアRMは、プログラムPが記録されたコンピューター読取可能な記録媒体の一例である。リムーバブルメディアRMは、一時的ではない有形の記録媒体(non-transitory tangible media)である。
【0067】
ストレージ3eは、複数のレシピを記憶している。レシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順を規定する情報である。複数のレシピは、基板Wへのエッチング液の供給時間(エッチング液バルブ33aを開いてからエッチング液バルブ33aを閉じるまでの時間)、基板Wの表面に供給されるエッチング液の温度を表す液温と基板Wを加熱する温度を表す加熱温度との組み合わせ、のうちの少なくとも1つが異なる。基板Wの裏面をホットプレート92で加熱するのではなく、加熱液や加熱ガスなどの加熱流体を基板Wの裏面に向けて吐出することにより基板Wの裏面を加熱する場合、加熱温度は、加熱流体の温度を表す。
【0068】
制御装置3は、ホストコンピューターによって指定されたレシピにしたがって基板Wが処理されるように基板処理装置1を制御する。具体的には、制御装置3は、ホストコンピューターによって指定されたレシピをストレージ3e内の複数のレシピの中から選択し、選択したレシピにしたがって基板処理装置1を動作させる。これにより、ホストコンピューターによって指定されたレシピにしたがって基板Wが処理される。制御装置3は、後述する各工程を実行するようにプログラムされている。
【0069】
次に、基板処理装置1で処理される前後の基板Wの断面の一例について説明する。
【0070】
図7A図7Cは、基板Wの表面に対して垂直な平面で切断した基板Wの断面の一例を示す概略図である。図7Aおよび図7Bは、基板処理装置1で処理される前の基板Wの断面の一例を示しており、図7Cは、基板処理装置1で処理された後の基板Wの断面の一例を示している。図7Aは、ドライエッチングが行われる前の基板Wの断面の一例を示している。図7Bは、ドライエッチングが行われた後であってウェットエッチングが行われる前の基板Wの断面の一例を示している。図7Cは、ウェットエッチングが行われた後の基板Wの断面の一例を示している。
【0071】
基板Wは、互いに平行な円形の表面および裏面と、表面および裏面の外縁同士を接続する環状の端面とを含む。基板Wの表面および裏面は、互いに平行な平坦面である。基板Wの表面は、トランジスタなどの半導体デバイスが形成されるデバイス形成面である。基板Wの裏面は、半導体デバイスが形成されない非デバイス形成面である。基板Wの表面および裏面の両方がデバイス形成面であってもよい。
【0072】
図7Aに示すように、基板Wは、シリコンウエハなどの円板状の基材101と、基材101上に形成された積層膜102とを含む。積層膜102の表面103は、基板Wの表面に相当する。基材101の裏面は、基板Wの裏面に相当する。基材101は、シリコンの単結晶などの半導体で作製されている。基材101は、半導体以外の物質で作製されていてもよい。
【0073】
積層膜102は、三次元NAND型フラッシュメモリーのメモリーセルアレイを構成する部分である。メモリーセルアレイは、直交する3つの方向に立体的に配列された複数のメモリーセルを含む部分である。積層膜102の全部または一部は、三次元NAND型フラッシュメモリーを製造するための全ての工程が行われた三次元NAND型フラッシュメモリーの最終製品の一部である。積層膜102は、最終製品に残らない部分を含んでいてもよい。つまり、積層膜102の一部は、製造途中の三次元NAND型フラッシュメモリーだけに存在する部分であってもよい。
【0074】
積層膜102は、酸化ケイ素の薄膜である酸化ケイ素膜O1と窒化ケイ素の薄膜である窒化ケイ素膜N1とが交互に入れ替わるように基板Wの厚み方向Dtに積層された複数の酸化ケイ素膜O1および複数の窒化ケイ素膜N1を含む。酸化ケイ素膜O1は、第1膜の一例である。窒化ケイ素膜N1は、第2膜の一例である。第1膜および第2膜の組み合わせは、酸化ケイ素膜O1および窒化ケイ素膜N1以外の組み合わせであってもよい。例えば、第2膜は、窒化ケイ素膜N1ではなく、ポリシリコンの薄膜であるポリシリコン膜であってもよい。
【0075】
図7Bに示すように、基板Wは、積層膜102の表面103から基板Wの厚み方向Dtに凹んだメモリーホールを含む。メモリーホールは、反応性イオンエッチングなどのドライエッチングによって形成されている。メモリーホールは、基板Wの表面から基板Wの裏面の方に延びる凹部104の一例である。メモリーホールの内周面は、凹部104の側面105に相当する。メモリーホールの底面は、凹部104の底面に相当する。メモリーホールの直径は、凹部104の幅WDに相当する。凹部104の幅WDは、基板Wの厚み方向Dtに直交する方向への凹部104の側面105から凹部104の側面105までの距離である。
【0076】
凹部104は、基板Wの表面から基板Wの厚み方向Dtに凹んでいる。凹部104の深さ方向は、基板Wの厚み方向Dtに相当する。凹部104は、基板Wの厚み方向Dtに延びる穴であってもよいし、基板Wの厚み方向Dtおよび面方向(面方向は、厚み方向Dtに直交する方向)に延びる溝であってもよい。凹部104が穴である場合、凹部104の側面105は、凹部104の全周にわたって連続した筒状の内周面に相当する。凹部104が溝である場合、凹部104の側面105は、基板Wの面方向に間隔を空けて向かい合う一対の平面に相当する。
【0077】
メモリーホールは、複数の酸化ケイ素膜O1および複数の窒化ケイ素膜N1を基板Wの厚み方向Dtに貫通している。メモリーホールの内周面の少なくとも一部は、酸化ケイ素膜O1の内周面と窒化ケイ素膜N1の内周面とが交互に入れ替わるように基板Wの厚み方向Dtに連続した複数の酸化ケイ素膜O1の内周面および複数の窒化ケイ素膜N1の内周面によって構成されている。図7Bは、凹部104の幅WDに相当するメモリーホールの直径が基板Wの表面からメモリーホールの底までメモリーホールの底に近づくにしたがって連続的に減少した例を示している。メモリーホールの横断面、つまり、基板Wの厚み方向Dtに対して直交する平面に沿うメモリーホールの断面は、円形である。
【0078】
基板処理装置1は、凹部104の側面105の一例であるメモリーホールの内周面をエッチング液でエッチングするウェットエッチングを行う。エッチング液は、凹部104の側面105をエッチングする液体である。図7Cは、エッチング液によってエッチングされる前のメモリーホールの内周面の断面を二点鎖線で示しており、エッチング液によってエッチングされた後のメモリーホールの内周面の断面を実線で示している。
【0079】
凹部104の側面105は、全体が同一の物質で形成されていてもよいし、複数の物質で形成されていてもよい。図7Bおよび図7Cは、後者の例を示している。エッチング液は、凹部104の側面105の全体をエッチングする液体であってもよいし、凹部104の側面105の一部をエッチングし、凹部104の残りの部分をエッチングしないまたは殆どエッチングしない液体であってもよい。
【0080】
図7Bおよび図7Cに示すように、第1膜と第2膜とが交互に入れ替わるように基板Wの厚み方向Dtに積層された複数の第1膜および複数の第2膜を含む積層膜102に凹部104が形成されている場合、エッチング液は、第1膜および第2膜の両方をエッチングする液体であってもよいし、第2膜をエッチングせずにまたは殆どエッチングせずに第1膜を選択的にエッチングする液体であってもよい。後者の場合、第1膜のエッチングレート(単位時間当たりのエッチング量)は、第2膜のエッチングレートよりも大きい。
【0081】
図7Bおよび図7Cに示すように、第1膜が酸化ケイ素膜O1であり、第2膜が窒化ケイ素膜N1である場合、エッチング液は、酸化ケイ素膜O1のエッチングレートと等しいまたはほぼ等しいエッチングレートで窒化ケイ素膜N1をエッチングする濃度のフッ酸であってもよい。フッ酸の濃度は、40~60%であってもよい。エッチング液が酸化ケイ素膜O1よび窒化ケイ素膜N1の両方をエッチングする液体である場合、エッチング液は、フッ酸以外の液体であってもよい。例えば、エッチング液は、フッ化物を含むリン酸(厳密には、フッ化物を含むリン酸水溶液)であってもよい。
【0082】
エッチング液がフッ化物を含むリン酸である場合、フッ化物は、フッ化アンモニウム(NHF)または二フッ化アンモニウム(NHHF)であってもよい。フッ化物がフッ化アンモニウムである場合、フッ化物含有リン酸におけるフッ化物の濃度は、0.15~1.5wt%(質量パーセント濃度)であってもよい。フッ化物を加える前のリン酸の濃度(リン酸水溶液におけるリン酸の濃度)は、85%であってもよい。
【0083】
以下では、基板処理装置1によって行われるウェットエッチングの一例について説明する。
【0084】
最初に、図2に示す処理ユニット2によって行われるウェットエッチングの一例について説明する。図8は、基板処理装置1によって行われるウェットエッチングの一例について説明するための工程図である。以下では、図2および図8を参照する。
【0085】
基板処理装置1によって基板Wを処理するときは、チャンバー4内に基板Wを搬入する搬入工程(図8のステップS1)を行う。
【0086】
具体的には、全てのガード24が下位置に位置しており、全てのスキャンノズルが待機位置に位置している状態で、センターロボットCRが、基板WをハンドHcで水平に支持しながら、ハンドHcをチャンバー4内に進入させる。その後、センターロボットCRは、基板Wの表面が上に向けられた状態でハンドHc上の基板Wを複数のチャックピン11の上に置く。その後、センターロボットCRは、ハンドHcをチャンバー4の内部から退避させる。
【0087】
基板Wが複数のチャックピン11の上に置かれた後は、複数のチャックピン11が基板Wの外周面に押し付けられ、基板Wが把持される。その後、スピンモーター14が駆動され、基板Wの回転が開始される(図8のステップS2)。これにより、基板Wが薬液供給速度で回転する。ガード昇降ユニット27は、基板Wの回転が開始される前または後に、少なくとも1つのガード24を下位置から上位置に上昇させる。
【0088】
次に、薬液の一例であるSC1を基板Wの上面に供給して、基板Wの上面の全域を覆うSC1の液膜を形成する薬液供給工程(図8のステップS3)を行う。
【0089】
具体的には、少なくとも1つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット34bが薬液ノズル31bを待機位置から処理位置に移動させる。その後、薬液バルブ33bが開かれ、薬液ノズル31bがSC1の吐出を開始する。薬液バルブ33bが開かれてから所定時間が経過すると、薬液バルブ33bが閉じられ、SC1の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット34bが、薬液ノズル31bを待機位置に移動させる。
【0090】
薬液ノズル31bから吐出されたSC1は、薬液供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、SC1が基板Wの上面の全域に供給され、基板Wの上面の全域を覆うSC1の液膜が形成される。薬液ノズル31bがSC1を吐出しているとき、ノズル移動ユニット34bは、基板Wの上面の中央部および外周部にSC1が衝突するように基板Wの上面に対するSC1の衝突位置を移動させてもよいし、中央部で衝突位置を静止させてもよい。衝突位置を移動させるか否かは、SC1の後に基板Wの上面に供給される処理液についても同様である。
【0091】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面に供給して、薬液を洗い流す第1リンス液供給工程(図8のステップS4)を行う。
【0092】
具体的には、少なくとも1つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット38がリンス液ノズル35を待機位置から処理位置に移動させる。その後、リンス液バルブ37が開かれ、リンス液ノズル35が純水の吐出を開始する。純水の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも1つのガード24を鉛直に移動させてもよい。
【0093】
リンス液ノズル35から吐出された純水は、第1リンス液供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上のSC1は、リンス液ノズル35から吐出された純水に置換される。これにより、基板Wの上面の全域を覆う純水の液膜が形成される。リンス液バルブ37が開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ37が閉じられ、純水の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット38が、リンス液ノズル35を待機位置に移動させる。
【0094】
次に、エッチング液の一例であるフッ酸を基板Wの上面に供給して、基板Wの上面の全域を覆うフッ酸の液膜を形成するエッチング液供給工程(図8のステップS5)と、基板Wの裏面に相当する基板Wの下面側から基板Wを加熱する裏面加熱工程(図8のステップS5)とを行う。
【0095】
エッチング液供給工程については、少なくとも1つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット34aがエッチング液ノズル31aを待機位置から処理位置に移動させる。その後、エッチング液バルブ33aが開かれ、エッチング液ノズル31aがフッ酸の吐出を開始する。エッチング液バルブ33aが開かれてから所定時間が経過すると、エッチング液バルブ33aが閉じられ、フッ酸の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット34aが、エッチング液ノズル31aを待機位置に移動させる。
【0096】
エッチング液ノズル31aから吐出されたフッ酸は、エッチング液供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の純水は、エッチング液ノズル31aから吐出されたフッ酸に置換される。これにより、基板Wの上面の全域を覆うフッ酸の液膜が形成される。エッチング液バルブ33aが開かれてから所定時間が経過すると、エッチング液バルブ33aが閉じられ、フッ酸の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット34aが、エッチング液ノズル31aを待機位置に移動させる。
【0097】
裏面加熱工程については、加熱流体バルブ73aが開かれ、下面ノズル71が、基板加熱ヒーター74によって加熱されたフッ酸の吐出を開始する。下面ノズル71から吐出されたフッ酸は、エッチング液供給速度で回転している基板Wの下面に衝突した後、基板Wの下面に沿って外方に流れる。これにより、基板Wの下面の全域にフッ酸が供給される。加熱流体バルブ73aが開かれてから所定時間が経過すると、加熱流体バルブ73aが閉じられ、フッ酸の吐出が停止される。
【0098】
エッチング液ノズル31aがフッ酸を吐出しているときに下面ノズル71がフッ酸を吐出するのであれば、下面ノズル71は、エッチング液ノズル31aがフッ酸の吐出を開始するのと同時にフッ酸の吐出を開始してもよいし、エッチング液ノズル31aがフッ酸の吐出を開始する前または後にフッ酸の吐出を開始してもよい。同様に、エッチング液ノズル31aがフッ酸を吐出しているときに下面ノズル71がフッ酸を吐出するのであれば、下面ノズル71は、エッチング液ノズル31aがフッ酸の吐出を停止するのと同時にフッ酸の吐出を停止してもよいし、エッチング液ノズル31aがフッ酸の吐出を停止する前または後にフッ酸の吐出を停止してもよい。
【0099】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面および下面に供給して、エッチング液を洗い流す第2リンス液供給工程(図8のステップS6)を行う。
【0100】
具体的には、少なくとも1つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット38がリンス液ノズル35を待機位置から処理位置に移動させる。その後、リンス液バルブ37が開かれ、リンス液ノズル35が純水の吐出を開始する。純水の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも1つのガード24を鉛直に移動させてもよい。
【0101】
リンス液ノズル35から吐出された純水は、第2リンス液供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上のSC1は、リンス液ノズル35から吐出された純水に置換される。これにより、基板Wの上面の全域を覆う純水の液膜が形成される。リンス液バルブ37が開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ37が閉じられ、純水の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット38が、リンス液ノズル35を待機位置に移動させる。
【0102】
その一方で、リンス液ノズル35が純水の吐出を開始するのと同時にまたはリンス液ノズル35が純水の吐出を開始する前または後に、リンス液バルブ73bが開かれ、下面ノズル71が、純水の吐出を開始する。下面ノズル71から吐出された純水は、第2リンス液供給速度で回転している基板Wの下面に衝突した後、基板Wの下面に沿って外方に流れる。これにより、基板Wの下面の全域に純水が供給される。その後、リンス液ノズル35が純水の吐出を停止するのと同時にまたはリンス液ノズル35が純水の吐出を停止する前または後に、リンス液バルブ73bが閉じられ、純水の吐出が停止される。
【0103】
次に、有機溶剤の一例であるIPAを基板Wの上面に供給して、基板W上の純水をIPAに置換する有機溶剤供給工程(図8のステップS7)を行う。
【0104】
具体的には、少なくとも1つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット42が有機溶剤ノズル39を待機位置から処理位置に移動させる。その後、有機溶剤バルブ41が開かれ、有機溶剤ノズル39がIPAの吐出を開始する。IPAの吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも1つのガード24を鉛直に移動させてもよい。
【0105】
有機溶剤ノズル39から吐出されたIPAは、有機溶剤供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の純水は、有機溶剤ノズル39から吐出されたIPAに置換される。これにより、基板Wの上面の全域を覆うIPAの液膜が形成される。有機溶剤バルブ41が開かれてから所定時間が経過すると、有機溶剤バルブ41が閉じられ、IPAの吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット42が、有機溶剤ノズル39を待機位置に移動させる。
【0106】
次に、IPAを基板Wの上面から除去して、基板Wを乾燥させる乾燥工程(図8のステップS8)を行う。
【0107】
具体的には、スピンモーター14が基板Wを回転方向に加速させ、薬液供給工程から有機溶剤供給工程までの基板Wの回転速度よりも大きい高回転速度(例えば数千rpm)で基板Wを回転させる。スピンモーター14が基板Wの高速回転を開始すると、IPAが基板Wから外方に飛散し、基板Wの上面から除去される。これにより、基板Wが乾燥する。基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、スピンモーター14が回転を停止する。これにより、基板Wの回転が停止される(図8のステップS9)。
【0108】
次に、基板Wをチャンバー4から搬出する搬出工程(図8のステップS10)を行う。
【0109】
具体的には、ガード昇降ユニット27が、全てのガード24を下位置まで下降させる。その後、センターロボットCRが、ハンドHcをチャンバー4内に進入させる。センターロボットCRは、複数のチャックピン11が基板Wの把持を解除した後、スピンチャック10上の基板WをハンドHcで支持する。その後、センターロボットCRは、基板WをハンドHcで水平に支持しながら、ハンドHcをチャンバー4の内部から退避させる。これにより、処理済みの基板Wがチャンバー4から搬出される。
【0110】
次に、図4および図5に示す処理ユニット2によって行われるウェットエッチングの一例について説明する。以下では、図4図5、および図8を参照する。
【0111】
図4および図5に示す処理ユニット2によって行われるウェットエッチングは、裏面加熱工程(図8のステップS5)を除き、図2に示す処理ユニット2によって行われるウェットエッチングと同様である。したがって、以下では、図4および図5に示す処理ユニット2によって行われる裏面加熱工程(図8のステップS5)について説明する。
【0112】
具体的には、少なくとも1つのガード24が上位置に位置しており、エッチング液供給速度で回転している基板Wの上面に向けてエッチング液ノズル31aがフッ酸を吐出しており、ホットプレート92が基板Wの下面から離れた状態で、ホットプレート92が発熱を開始する。これにより、ホットプレート92の熱が基板Wに伝達され、基板Wの全域が基板Wの裏面側から均一に加熱される。ホットプレート92が発熱を開始してから所定時間が経過すると、ホットプレート92は発熱を停止する。この後、図2に示す処理ユニット2によって行われるウェットエッチングと同様に、第2リンス液供給工程(図8のステップS6)以降の工程が行われる。ただし、第2リンス液供給工程(図8のステップS6)では下面ノズル71から基板Wの下面への純水の供給が行われない。
【0113】
エッチング液ノズル31aがフッ酸を吐出しているときにホットプレート92が発熱するのであれば、ホットプレート92は、エッチング液ノズル31aがフッ酸の吐出を開始するのと同時に発熱を開始してもよいし、エッチング液ノズル31aがフッ酸の吐出を開始する前または後に発熱を開始してもよい。同様に、エッチング液ノズル31aがフッ酸を吐出しているときに下面ノズル71がフッ酸を吐出するのであれば、ホットプレート92は、エッチング液ノズル31aがフッ酸の吐出を停止するのと同時に発熱を停止してもよいし、エッチング液ノズル31aがフッ酸の吐出を停止する前または後に発熱を停止してもよい。
【0114】
裏面加熱工程(図8のステップS5)においてホットプレート92が基板Wの下面から離れた状態で基板Wを加熱するのではなく、ホットプレート92が基板Wの下面に接した状態で基板Wを加熱してもよい。
【0115】
具体的には、基板Wの上面の全域がフッ酸の液膜で覆われており、基板Wの回転が停止されている状態で、複数のチャックピン11に基板Wの把持を解除させ、その後、ホットプレート92を下位置から上位置に移動させてもよい。このようにすれば、基板Wは、ホットプレート92によって持ち上げられ、複数のチャックピン11から上方に離れる。このとき、ホットプレート92は、基板Wに接する前に発熱を開始してもよいし、基板Wに接した後に発熱を開始してもよい。
【0116】
基板Wがホットプレート92によって持ち上げられた後は、基板Wの上面の全域がフッ酸の液膜で覆われており、基板Wの回転が停止されている状態で、ホットプレート92を下位置まで下降させ、ホットプレート92上の基板Wを複数のチャックピン11の上に置く。これにより、基板Wがホットプレート92から離れる。ホットプレート92は、基板Wから離れた後に発熱を停止してもよいし、基板Wから離れた後も発熱を継続してもよい。
【0117】
ホットプレート92から複数のチャックピン11に基板Wが渡されると、複数のチャックピン11が基板Wを把持し、スピンモーター14が基板Wを回転させる。この後は、図2に示す処理ユニット2によって行われるウェットエッチングと同様に、第2リンス液供給工程(図8のステップS6)以降の工程が行われる。
【0118】
次に、エッチング液供給工程および裏面加熱工程(図8のステップS5)における基板Wの温度について説明する。
【0119】
図9は、基板Wの表面にエッチング液を供給しながら基板Wの裏面側から基板Wを加熱するタイムチャートである。図9は、時刻T1でエッチング液の吐出と基板Wの加熱とが開始され、時刻T2でエッチング液の吐出と基板Wの加熱とが停止される例を示している。
【0120】
図9において、エッチング液の吐出のONは、エッチング液ノズル31aが基板Wの表面に向けてエッチング液を吐出していることを表しており、エッチング液の吐出のOFFは、エッチング液ノズル31aが基板Wの表面に向けてエッチング液を吐出していないことを表している。言い換えると、エッチング液の吐出のONおよびOFFは、エッチング液バルブ33aが開いているか否かを表している。
【0121】
図9において、基板Wの加熱のONは、下面ノズル71が基板Wの裏面に向けて加熱流体を吐出していることを表しており、基板Wの加熱のOFFは、下面ノズル71が基板Wの裏面に向けて加熱流体を吐出していないことを表している。下面ノズル71の代わりにホットプレート92が設けられている場合、図9において、基板Wの加熱のONは、ホットプレート92が基板Wに接した位置または近接した位置で発熱していることを表しており、基板Wの加熱のOFFは、ホットプレート92が基板Wに接した位置または近接した位置で発熱していないことを表している。
【0122】
エッチング液供給工程(図8のステップS5)では基板Wの表面にエッチング液を供給する。エッチング液を供給する前の基板Wの温度は、室温であってもよいし、室温よりも高いまたは低くてもよい。エッチング液を供給する前の基板Wの温度は、エッチング液の温度と等しくてもよいし、エッチング液の温度よりも高いまたは低くてもよい。図9は、エッチング液を供給する前の基板Wの温度が室温であり、エッチング液が室温よりも高温である例を示している。
【0123】
裏面加熱工程(図8のステップS5)で下面ノズル71から吐出される加熱流体の温度またはホットプレート92の温度は、エッチング液供給工程(図8のステップS5)で基板Wの表面に供給されるエッチング液の温度よりも高い。基板Wの表面に供給されるエッチング液の温度よりも高ければ、下面ノズル71から吐出される加熱流体の温度は、室温であってもよいし、室温よりも高いまたは低くてもよい。加熱流体の温度は、エッチング液の沸点であってもよいし、同沸点よりも高いまたは低くてもよい。ホットプレート92で基板Wを加熱するときのホットプレート92の温度についても同様である。
【0124】
基板Wとは異なる温度のエッチング液の供給を開始すると、図9に示すように、基板Wの表面の温度は、エッチング液の温度に等しいまたは概ね等しい表面設定温度に連続的に近づき、表面設定温度で安定する。同様に、基板Wの裏面側からの基板Wの加熱を開始すると、基板Wの裏面の温度は、下面ノズル71から吐出される加熱流体の温度またはホットプレート92の温度に等しいまたは概ね等しい裏面設定温度に連続的に近づき、裏面設定温度で安定する。表面設定温度は裏面設定温度よりも低い。したがって、基板Wの表面へのエッチング液の供給と基板Wの加熱とを行っているとき、基板Wの温度は、基板Wの厚み方向Dtに基板Wの裏面に近づくにしたがって連続的に増加する。
【0125】
基板Wの表面へのエッチング液の供給と基板Wの加熱とを行っているとき、凹部104の側面105(図7B参照)の温度は、凹部104の底に近づくにしたがって連続的に増加する。基板Wに供給されたエッチング液の一部は、凹部104の中に入る。凹部104内のエッチング液は、凹部104の側面105によって加熱される。エッチング液ノズル31aがエッチング液の吐出を続けている間、凹部104内のエッチング液は、後続のエッチング液や基板Wの表面から凹部104内に移動したエッチング液によって置換される。凹部104内のエッチング液は、凹部104の底に近づくにしたがって置換され難くなる。その反面、エッチング液が凹部104の側面105によって加熱される時間は、凹部104の底に近づくにしたがって増加する。
【0126】
凹部104の側面105の温度が凹部104の底に近づくにしたがって連続的に増加しているので、凹部104内のエッチング液の温度は、凹部104の底に近づくにしたがって連続的に増加する。エッチング液は、凹部104の側面105に対して温度依存性を有する物質を含む液体である。つまり、エッチング液の温度が増加すると、凹部104の側面105のエッチングレートも増加する。そのため、凹部104の側面105のエッチングレートは、凹部104の底に近づくにしたがって連続的に増加する。凹部104内のエッチング液の最高温度および最低温度の差は、凹部104の側面105の最高温度および最低温度の差よりも大きいまたは小さくてもよいし、当該差と等しくてもよい。
【0127】
ウェットエッチングが終了したときの凹部104の側面105の総エッチング量(エッチングレートの積算値)は、凹部104の底に近づくにしたがって連続的に増加する。図7Cは、エッチング液によってエッチングされる前の凹部104の側面105の断面を二点鎖線で示しており、エッチング液によってエッチングされた後の凹部104の側面105の断面を実線で示している。二点鎖線および実線によって描かれた凹部104の側面105の形状を比較すると分かるように、凹部104の側面105は、凹部104の底に近づくにしたがって総エッチング量が連続的に増加するようにエッチング液によってエッチングされる。これにより、凹部104の幅WDのばらつきを減らすことができる。
【0128】
厚み(仮想基板の表面から仮想基板の裏面までの距離)が789μmの仮想基板を加熱して、仮想基板の表面を50℃で、仮想基板の裏面を95℃で安定させると、仮想基板の表面と仮想基板の表面から14μmの位置との間で1℃弱の連続した温度分布が生じるシミュレーション結果が得られた。仮想基板の表面を50℃で、仮想基板の裏面を180℃で安定させると、仮想基板の表面と仮想基板の表面から14μmの位置との間で2℃強の連続した温度分布が生じるシミュレーション結果が得られた。仮想基板の表面を50℃で、仮想基板の裏面を300℃で安定させると、仮想基板の表面と仮想基板の表面から14μmの位置との間で4℃強の連続した温度分布が生じるシミュレーション結果が得られた。
【0129】
仮想基板の表面を50℃で、仮想基板の裏面を300℃で安定させたときのシミュレーション結果によると、凹部104の深さが14μmであるとき、凹部104の底ではエッチング液が54℃程度であると予想される。エッチング液が低濃度のフッ酸(希フッ酸)である場合、エッチング液の沸点は100℃程度である。したがって、エッチング液は、凹部104の底で沸騰せず、液体に維持されると予想される。この予想は、仮想基板の裏面を300℃未満で安定させたときも同様である。
【0130】
フッ酸で窒化ケイ素をエッチングした実験結果によると、フッ酸が50℃のときの窒化ケイ素のエッチングレートは、2nm強であり、フッ酸が60℃のときの窒化ケイ素のエッチングレートは、5nm弱であった。この実験結果によると、フッ酸の温度が50~60℃の範囲では、フッ酸の温度が1℃上がると、窒化ケイ素のエッチングレートが0.25nm程度増加すると予想される。
【0131】
基板Wの厚みが789μm、凹部104の深さが14μmであり、凹部104の入口から凹部104の底までの範囲で凹部104の幅WDが100nmから80nmに一定の割合で減少する基板Wをエッチング液の一例であるフッ酸でエッチングする場合について検討する。
【0132】
前述のシミュレーション結果によると、仮想基板の表面を50℃で、仮想基板の裏面を300℃で安定させると、仮想基板の表面と仮想基板の表面から14μmの位置との間で4℃強の連続した温度分布が生じる。この場合、凹部104の入口付近では、フッ酸の温度が50℃程度、エッチングレートが2nm程度であり、凹部104の底付近では、フッ酸の温度が54℃程度、エッチングレートが3nm程度であると予想される。このような条件で50℃のフッ酸を基板Wに10分間供給すると、凹部104の幅WDが凹部104の入口から凹部104の底までのいずれの位置でも140nm程度に増加し、凹部104の幅WDのばらつきが減少すると予想される。
【0133】
表面設定温度および裏面設定温度の組み合わせが50℃および95℃、50℃および180℃の場合も、50℃および300℃の場合と同様に、凹部104の側面105のエッチングレートが凹部104の底に近づくにしたがって増加するので、凹部104の幅WDのばらつきが減少すると予想される。裏面設定温度が表面設定温度よりも高ければ、表面設定温度および裏面設定温度の組み合わせがこれら以外も同様である。表面設定温度および裏面設定温度の組み合わせは、エッチング前後の凹部104の幅WDの最大値の差と、エッチング前の凹部104の幅WDの最大値および最小値の差と、を含む複数の条件にしたがって定めればよい。
【0134】
次に、本実施形態に係る効果について説明する。
【0135】
本実施形態では、凹部104の中にエッチング液を供給しながら基板Wの表面とは反対の基板Wの裏面側から基板Wを加熱することにより、凹部104の側面105の温度を凹部104の底に近づくにしたがって増加させる。凹部104内のエッチング液は、凹部104の側面105によって加熱される。凹部104内のエッチング液の温度は、凹部104の底に近づくにしたがって増加し、凹部104の側面105のエッチングレートも、凹部104の底に近づくにしたがって増加する。エッチング液によるウェットエッチングが終了したときの凹部104の側面105の総エッチング量は、凹部104の底に近づくに増加する。エッチング液を供給する前の凹部104の幅WDは、凹部104の底に近づくにしたがって減少している。したがって、前記のようにウェットエッチングを行うことにより、凹部104の幅WDの最大値および最小値の差を減少させることができ、凹部104の幅WDのばらつきを減らすことができる。
【0136】
本実施形態では、反応性イオンエッチングなどのドライエッチングによって凹部104を基板Wの表面に形成する。ドライエッチングは、一方向だけにエッチングが進み易い異方性エッチングなので、凹部104の幅WDが均一になり易い。しかしながら、凹部104の幅WDに対する凹部104の深さの比を表すアスペクト比(凹部104の深さ/凹部104の幅WD)が高いと、ドライエッチングで凹部104を形成しても、凹部104の底に近づくにしたがって凹部104の幅WDが減少する傾向にある。言い換えると、凹部104の底に近づくにしたがって凹部104の幅WDが減少していることは、凹部104のアスペクト比が高いことを表す。
【0137】
エッチング液を基板Wの表面に供給し続けると、凹部104内のエッチング液は、凹部104外のエッチング液によって置換される。凹部104内のエッチング液の置換効率は、凹部104の底に近づくにしたがって低下する。凹部104のアスペクト比が増加すると、凹部104の入口と凹部104の底での置換効率の差も増加する。したがって、従来のウェットエッチングでは、凹部104の底に近づくにしたがって凹部104の側面105のエッチングレートが減少する。これに対して、凹部104の中にエッチング液を供給しながら基板Wの裏面側から基板Wを加熱すれば、凹部104の側面105のエッチングレートを凹部104の底に近づくにしたがって増加させることができる。これにより、ウェットエッチングの前に生じた凹部104の幅WDのばらつきをウェットエッチングで軽減できる。
【0138】
本実施形態では、三次元NAND型フラッシュメモリーのメモリーセルアレイを構成する積層膜102によって形成された凹部104の中にエッチング液を供給しながら、基板Wの裏面側から基板Wを加熱する。三次元NAND型フラッシュメモリーの製造工程では、反応性イオンエッチングなどのドライエッチングによって積層膜102をエッチングすることにより凹部104が積層膜102に形成される。このような凹部104は、アスペクト比が高い(例えば50以上)。したがって、従来のウェットエッチングを行うと、凹部104の幅WDの最大値および最小値の差が増加してしまう。凹部104の中にエッチング液を供給しながら基板Wの裏面側から基板Wを加熱すれば、凹部104の側面105のエッチングレートを凹部104の底に近づくにしたがって増加させることができ、凹部104の幅WDのばらつきを減らすことができる。
【0139】
本実施形態では、基板Wの裏面の温度が基板Wの表面の温度よりも高い状態を瞬間的に発生させるのではなく、このような状態を維持する。基板Wの表面および裏面の温度が安定すると、凹部104の側面105の温度勾配も安定する。凹部104の側面105の温度が変わると、凹部104内のエッチング液の温度も変わり、凹部104の側面105のエッチングレートが増加または減少する。したがって、凹部104の側面105の温度を安定させながら凹部104の側面105をエッチングすることにより、エッチング液が供給された後の凹部104の形状をより高い精度でコントロールすることができる。
【0140】
本実施形態では、基板Wの表面および裏面にエッチング液を供給する。基板Wの裏面に供給されるエッチング液は、基板Wの表面に供給されるエッチング液よりも温度が高い。これにより、凹部104の底に近づくにしたがって温度が増加する温度分布を凹部104の側面105に発生させることができる。さらに、エッチング液以外の液体が基板Wの裏面から基板Wの表面に回り込むと、基板Wの表面に接するエッチング液の濃度が低下するものの、エッチング液が基板Wの表面に回り込んでも、このような濃度の低下は発生しないまたは小さい。加えて、1つのエッチング液タンク75から供給されたエッチング液を基板Wの表面および裏面に供給するので、基板Wの表面用のエッチング液タンク75と基板Wの裏面用のエッチング液タンク75とを設ける場合に比べて、エッチング液タンク75の数を減らすことができる。
【0141】
本実施形態では、基板Wの裏面をエッチング液の沸点以上の温度に加熱する。これにより、基板Wの表面および裏面の温度差を増加させることができ、凹部104内のエッチング液の温度差を増加させることができる。その結果、凹部104の幅WDの最大値および最小値の差が減少する速度を増加させることができる。さらに、基板Wの裏面を加熱する温度は、凹部104がエッチング液で満たされた状態を維持する温度なので、凹部104内で発生したエッチング液の蒸気で凹部104の側面105のエッチングが阻害されることを抑制または防止しながら、凹部104の側面105をエッチング液でエッチングすることができる。
【0142】
本実施形態では、選択されたレシピに指定されている液温のエッチング液を、同レシピに指定されている供給時間だけ凹部104の中に供給する。さらに、同レシピに指定されている加熱温度で基板Wを基板Wの裏面側から加熱する。複数のレシピは、基板Wへのエッチング液の供給時間、および基板Wの表面に供給されるエッチング液の温度を表す液温と基板Wを加熱する温度を表す加熱温度との組み合わせ、のうちの少なくとも1つが異なる。液温と加熱温度との組み合わせが同じであれば、エッチング液の供給時間が変わると、凹部104の側面105の総エッチング量が変化する。液温と加熱温度との差が変わると、凹部104の深さ方向における凹部104の側面105のエッチングレートの分布が変化する。液温と加熱温度との差が変わるか否かにかかわらず、両者の少なくとも一方が変わったときも、凹部104の深さ方向における凹部104の側面105のエッチングレートの分布が変化する。したがって、選択するレシピを変更することにより、エッチング後の凹部104の側面105の形状を変更することができる。
【0143】
本実施形態では、基板Wに接する前のエッチング液の温度を測定する。エッチング液の温度が減少すると、基板Wを加熱する温度を減少させる。エッチング液の温度が増加すると、基板Wを加熱する温度を増加させる。これにより、基板Wの表面および裏面の温度差を一定またはほぼ一定に維持することができ、凹部104の側面105の最高温度および最低温度の差を一定またはほぼ一定に維持することができる。
【0144】
次に、他の実施形態について説明する。
【0145】
基板W上に形成する半導体デバイスは、三次元NAND型フラッシュメモリー以外のメモリーであってもよいし、メモリー以外であってもよい。
【0146】
基板Wの表面を下に向けた状態で、エッチング液を基板Wの表面に供給しながら基板Wの裏面側から基板Wを加熱してもよい。この場合、エッチング液ノズル31aなどの基板Wの上面に向けて処理流体を吐出するノズルに、下面ノズル71から吐出されるエッチング液よりも高温の加熱流体を吐出させればよい。基板Wの上面に向けて高温の加熱流体をノズルに吐出させることに代えてまたは加えて、ホットプレート92やランプなどのヒーターを基板Wの上方に配置してもよい。
【0147】
エッチング液を供給する前にウェットエッチングによって凹部104を形成してもよいし、エッチング液を供給する前にドライエッチングおよびウェットエッチングの両方によって凹部104を形成してもよい。後者の場合、凹部104の深さ方向における凹部104の一部をドライエッチングおよびウェットエッチングの一方によって形成し、凹部104の深さ方向における凹部104の残りの部分をドライエッチングおよびウェットエッチングの他方によって形成してもよい。
【0148】
エッチング液を供給する前の凹部104の幅WDは、凹部104の入口から凹部104の底まで凹部104の底に近づくにしたがって段階的に減少していてもよいし、凹部104の入口から凹部104の底までの範囲の一部だけで段階的または連続的に減少していてもよい。後者の場合、凹部104は、凹部104の底に近づくにしたがって幅WDが減少した部分に加えて、凹部104の底に近づいても幅WDが変化しない部分と、凹部104の底に近づくにしたがって幅WDが増加した部分と、のうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0149】
エッチング液を供給する前の凹部104の幅WDが凹部104の入口から凹部104の底まで凹部104の底に近づくにしたがって段階的または連続的に減少している場合、凹部104は、凹部104の底に近づくにしたがって幅WDが段階的に減少した部分と、凹部104の底に近づくにしたがって幅WDが連続的に減少した部分とを含んでいてもよい。もしくは、凹部104は、凹部104の底に近づくにしたがって幅WDが減少した第1減少部と、第1減少部に対して凹部104の底とは反対側に配置されており、凹部104の底に近づくにしたがって第1減少部の幅の最大値よりも小さな値まで幅WDが減少した第2減少部と、を含んでいてもよい。
【0150】
凹部104の入口から凹部104の底までのいずれの位置でも凹部104の側面105をエッチングするのではなく、凹部104の深さ方向における凹部104の側面105の一部の領域だけをエッチングしてもよい。例えば、凹部104の深さ方向における凹部104の側面105の一部の領域にエッチング液を供給する前に、凹部104の側面105の残りの領域をエッチング液から保護する保護膜を凹部104の側面105に形成してもよい。
【0151】
基板処理装置1は、円板状の基板Wを処理する装置に限らず、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
【0152】
前述の全ての構成の2つ以上を組み合わせてもよい。前述の全ての工程の2つ以上を組み合わせてもよい。
【0153】
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の精神および範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0154】
1:基板処理装置、2:処理ユニット、3:制御装置、3a:コンピューター本体、3b:CPU、3c:メモリー、3d:周辺装置、3e:ストレージ、3f:リーダー、3g:通信装置、4:チャンバー、5:隔壁、5a:送風口、5b:搬入搬出口、7:シャッター、8:排気ダクト、9:排気バルブ、10:スピンチャック、11:チャックピン、12:スピンベース、12u:上面、13:スピン軸、14:スピンモーター、21:処理カップ、22:外壁部材、23:カップ、24:ガード、24u:上端、25:円筒部、26:天井部、27:ガード昇降ユニット、31a:エッチング液ノズル、31b:薬液ノズル、32a:エッチング液配管、32b:薬液配管、33a:エッチング液バルブ、33b:薬液バルブ、34a:ノズル移動ユニット、34b:ノズル移動ユニット、35:リンス液ノズル、36:リンス液配管、37:リンス液バルブ、38:ノズル移動ユニット、39:有機溶剤ノズル、40:有機溶剤配管、41:有機溶剤バルブ、42:ノズル移動ユニット、71:下面ノズル、72a:加熱流体配管、72b:リンス液配管、73a:加熱流体バルブ、73b:リンス液バルブ、74:基板加熱ヒーター、75:エッチング液タンク、76:循環配管、77:循環ポンプ、78:循環ヒーター、79:循環フィルター、80:共通配管、81:液温センサー、82c:共通排液配管、82i:個別排液配管、82v:排液バルブ、83c:共通回収配管、83i:個別回収配管、83v:回収バルブ、92:ホットプレート、93:基板加熱ヒーター、94:アウターケース、95:ベース部、96:突出部、97:支軸、98:プレート昇降ユニット、101:基材、102:積層膜、103:表面、104:凹部、105:側面、A1:回転軸線、CA:キャリア、CR:センターロボット、Dt:厚み方向、Hc:ハンド、Hi:ハンド、IR:インデクサロボット、LP:ロードポート、N1:窒化ケイ素膜、O1:酸化ケイ素膜、P:プログラム、RM:リムーバブルメディア、S1~S10:ステップ、TP:搬送路、TS:搬送システム、TW:タワー、W:基板
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A-C】
図8
図9