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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168367
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】散水システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/30 20110101AFI20241128BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20241128BHJP
   F24F 11/87 20180101ALI20241128BHJP
【FI】
F24F1/30
F24F11/46
F24F11/87
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084968
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】森 豊
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅之
【テーマコード(参考)】
3L054
3L260
【Fターム(参考)】
3L054BA05
3L260AB02
3L260BA41
3L260CA33
3L260CB90
3L260EA07
3L260FC40
(57)【要約】
【課題】室外機の劣化を抑制しつつ、空調装置の電力消費を削減可能な散水システムを提供する。
【解決手段】空調装置の室外機1に間接的に散水を行う散水システムであって、供給されてきた水を噴霧口111から所定の噴霧方向へ噴霧可能な可動ノズル110(ノズル)を具備し、噴霧口111は、室外機1の吸気口4と対向するように離間した位置において、鉛直方向を基準として室外機1に対して反対側に傾斜する方向を噴霧方向とし、吸気口4への吸気を、噴霧した水滴により気化冷却させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置の室外機に間接的に散水を行う散水システムであって、
供給されてきた水を噴霧口から所定の噴霧方向へ噴霧可能なノズルを具備し、
前記噴霧口は、前記室外機の吸気口と対向するように離間した位置において、鉛直方向を基準として前記室外機に対して反対側に傾斜する方向または鉛直方向を前記噴霧方向とし、
前記吸気口への吸気を、噴霧した水滴により気化冷却させる、
散水システム。
【請求項2】
前記噴霧口は、鉛直方向を基準として前記室外機に対して反対側に傾斜する斜め上方を前記噴霧方向とする、
請求項1に記載の散水システム。
【請求項3】
前記噴霧口は、噴霧態様を変更可能に構成され、
前記吸気口の吸気の相対湿度に関する所定の条件に応じて前記噴霧口を制御し、前記噴霧態様を変更する制御部を具備する、
請求項1に記載の散水システム。
【請求項4】
前記噴霧態様には、鉛直方向と前記噴霧方向とがなす角度である噴霧角度が含まれ、
前記制御部は、
前記相対湿度が第1の閾値よりも低い場合、前記噴霧角度を小さくし、
前記相対湿度が前記第1の閾値よりも高い第2の閾値よりも高い場合、前記噴霧角度を大きくする、
請求項3に記載の散水システム。
【請求項5】
前記噴霧態様には、前記噴霧口からの噴霧量が含まれ、
前記制御部は、
前記相対湿度が第1の閾値よりも低い場合、前記噴霧量を多くし、
前記相対湿度が前記第1の閾値よりも高い第2の閾値よりも高い場合、前記噴霧量を少なくする、
請求項3に記載の散水システム。
【請求項6】
前記噴霧態様には、鉛直方向と前記噴霧方向とがなす角度である噴霧角度と、前記噴霧口からの噴霧量と、が含まれ、
前記制御部は、
前記相対湿度が第1の閾値よりも低い場合、前記噴霧角度を小さくし、前記噴霧角度が下限値であると、前記噴霧量を多くし、
前記相対湿度が前記第1の閾値よりも高い第2の閾値よりも高い場合、前記噴霧量を少なくし、前記噴霧量が下限値であると、前記噴霧角度を大きくする、
請求項3に記載の散水システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記相対湿度を、前記空調装置の排気の温度及び絶対湿度に基づいて算出する、
請求項3から請求項6までの何れか一項に記載の散水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置の室外機に散水する散水システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調装置の室外機に散水する散水システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の冷却システムは、室外機に設けられた熱交換器に対して散水可能な散水機構を具備している。特許文献1に記載の冷却システムは、熱交換器に対して散水を行うことで、熱交換器中を流通する冷媒の冷却を促進することができ、ひいては空調装置の運転コスト(電力消費)の削減を図ることができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、室外機(熱交換器)に直接水が付着するように散水が行われるため、室外機の腐食やスケールの付着が生じ、室外機の劣化を招くおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-193763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、室外機の劣化を抑制しつつ、空調装置の電力消費を削減可能な散水システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、空調装置の室外機に間接的に散水を行う散水システムであって、供給されてきた水を噴霧口から所定の噴霧方向へ噴霧可能なノズルを具備し、前記噴霧口は、前記室外機の吸気口と対向するように離間した位置において、鉛直方向を基準として前記室外機に対して反対側に傾斜する方向または鉛直方向を前記噴霧方向とし、前記吸気口への吸気を、噴霧した水滴により気化冷却させるものである。
【0009】
請求項2においては、前記噴霧口は、鉛直方向を基準として前記室外機に対して反対側に傾斜する斜め上方を前記噴霧方向とするものである。
【0010】
請求項3においては、前記噴霧口は、噴霧態様を変更可能に構成され、前記吸気口の吸気の相対湿度に関する所定の条件に応じて前記噴霧口を制御し、前記噴霧態様を変更する制御部を具備するものである。
【0011】
請求項4においては、前記噴霧態様には、鉛直方向と前記噴霧方向とがなす角度である噴霧角度が含まれ、前記制御部は、前記相対湿度が第1の閾値よりも低い場合、前記噴霧角度を小さくし、前記相対湿度が前記第1の閾値よりも高い第2の閾値よりも高い場合、前記噴霧角度を大きくするものである。
【0012】
請求項5においては、前記噴霧態様には、前記噴霧口からの噴霧量が含まれ、前記制御部は、前記相対湿度が第1の閾値よりも低い場合、前記噴霧量を多くし、前記相対湿度が前記第1の閾値よりも高い第2の閾値よりも高い場合、前記噴霧量を少なくするものである。
【0013】
請求項6においては、前記噴霧態様には、鉛直方向と前記噴霧方向とがなす角度である噴霧角度と、前記噴霧口からの噴霧量と、が含まれ、前記制御部は、前記相対湿度が第1の閾値よりも低い場合、前記噴霧角度を小さくし、前記噴霧角度が下限値であると、前記噴霧量を多くし、前記相対湿度が前記第1の閾値よりも高い第2の閾値よりも高い場合、前記噴霧量を少なくし、前記噴霧量が下限値であると、前記噴霧角度を大きくするものである。
【0014】
請求項7においては、前記制御部は、前記相対湿度を、前記空調装置の排気の温度及び絶対湿度に基づいて算出するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
本発明においては、室外機の劣化を抑制しつつ、空調装置の電力消費を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)室外機、及び、本発明の一実施形態に係る散水システムを示した斜視模式図。(b)同じく、側面模式図。
図2】本発明の一実施形態に係る散水システムを示したブロック図。
図3】(a)吸気口における風速の違いの一例を示した背面模式図。(b)吸気口における風速の違いと噴霧角度との関係を示した側面模式図。
図4】(a)噴霧角度が小さい場合の冷却を行う態様を示した側面模式図。(b)噴霧角度が大きい場合の冷却を行う態様を示した側面模式図。
図5】噴霧角度と電力消費削減率との関係の一例を示した図。
図6】制御部による処理を示したフローチャート。
図7】(a)室外機、及び、本発明の別実施形態に係る散水システムを示した側面模式図。(b)本発明の別実施形態に係る散水システムにおいて冷却を行う態様を示した側面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明においては、図中に記した矢印に従って、上下方向、前後方向、及び左右方向をそれぞれ定義する。
【0019】
以下では、本発明の一実施形態に係る散水システム100について説明する。
【0020】
まず、図1を用いて、本実施形態で例示する室外機1について簡単に説明する。
【0021】
本実施形態に係る室外機1は、オフィスや店舗等に設置された業務用マルチエアコン等に用いられる大型の室外機である。室外機1は、室内機(不図示)と共に、室内の空調を行うための空調装置を構成している。室外機1は、冷媒を介して室内機(不図示)と熱をやり取りすることができる。また室外機1は、外気との間で熱をやり取りすることができる。例えば室内の冷房を行う場合、室内機において室内の空気から取り除かれた熱は、冷媒を介して室外機1へと案内され、室外機1から大気中へと排出される。
【0022】
本実施形態では、室外機1は箱状の筐体2を具備し、筐体2の内部の上側部分に配置されたファン等の送風機3によって、筐体2の背面に形成された吸気口4から空気(外気)を吸気し、筐体2の上面に形成された排気口5から空気を排気する。この際、筐体2の内部において、外気と冷媒との間で熱交換を行うことができる。
【0023】
ここで、室内の冷房を行う場合、室外機1を冷却することで冷媒の冷却を促進することができ、ひいては空調装置の電力消費の低減(省エネ化)を図ることができる。そこで本実施形態では、散水システム100を用いて室外機1を冷却可能としている。以下、散水システム100について説明する。
【0024】
図1から図3に示す散水システム100は、空調装置の室外機1に散水を行うことにより、空調装置の省エネ化(消費電力の低減)を図るものである。ここで、室外機1(熱交換器)に直接水が付着すると、室外機1の腐食やスケールの付着が生じ、室外機1の劣化を招くおそれがある。そこで、本実施形態に係る散水システム100は、空調装置の室外機1に間接的に(極力、熱交換機に水が付着しないように)散水を行うことにより、室外機1の劣化を抑制しつつ、空調装置の電力消費の削減を図っている。散水システム100は、主として可動ノズル110、給水管120、電磁弁130、センサ部140及び制御部150を具備する。
【0025】
可動ノズル110は、後述する給水管120から供給されてきた水を噴霧可能な噴霧口111を有するものである。可動ノズル110は、給水管120に支持され、室外機1の筐体2から後方へ離間した位置に設けられる。可動ノズル110は、筐体2の吸気口4と前後方向において対向するように設けられる。
【0026】
噴霧口111は、供給されてきた水を霧状にして所定の噴霧方向へ噴出(噴霧)可能に構成される。図1(b)に示すように、噴霧口111は、当該噴霧口111が向く方向(噴霧方向)が、後上方へ向くように設けられる。こうして、噴霧口111から噴霧が行われると、噴霧された水滴により吸気口4へ吸引される空気が気化冷却される。すなわち、室外機1に直接散水することなく、冷却した空気により、効率よく熱交換を行うことができる。なお噴霧口111は、吸気口4のできるだけ下部に対向するように設けられることが望ましい。これによれば、気化冷却をより効果的に行うことができる。
【0027】
また、噴霧口111は、後述する制御部150の制御(具体的には、開口の向きや開口形状等を変更する動作)により、噴霧態様を変更可能に構成される。本実施形態において前記噴霧態様には、噴霧形状、噴霧量及び噴霧角度等が含まれる。
【0028】
ここで、前記噴霧形状とは、噴霧口111から噴霧された霧状の部分がなす形状である。本実施形態では、図1(a)に示すように、噴霧形状として、噴霧口111から離間するに従って左右方向の幅が大きくなり、且つ、前後方向の幅が略一定である略扇形状が採用されている。噴霧形状の変更としては、例えば左右方向の幅を変更できる。また略扇形状ではなく、例えば噴霧口111を中心として、背面視で略円形状や四角形状とすることもできる。なお噴霧形状とは、噴霧口111から、ある程度認識できる程度に維持された形状を指すものであり、厳密な形状を指すものではない。
【0029】
また前記噴霧量とは、噴霧口111から噴霧される単位時間あたりの水の量である。なお噴霧量の変更についての詳細な説明は後述する。
【0030】
また前記噴霧角度とは、鉛直方向と噴霧方向とがなす角度である。なお噴霧角度の変更についての詳細な説明は後述する。ここで、本実施形態において、可動ノズル110の噴霧口111は、鉛直方向を基準として室外機1に対して必ず反対側に傾斜するように設定される。このように、本実施形態においては、噴霧角度が変更されたとしても、噴霧口111からの噴霧は、必ず室外機1から離れる方向または鉛直上方(本実施形態では、後上方)へ向いた範囲内で行われる。
【0031】
このような噴霧角度の設定によれば、室外機1の吸気口4が空気を吸引した場合において、噴霧された水滴が室外機1側へと引き込まれ、空調機の熱交換機等に直接付着するのを抑制できる。特に本実施形態に係る散水システム100が設けられた大型の室外機では、送風機3が筐体2の内部の上側部分に配置されているため、吸気口4に吸引される空気の速さは、当該吸気口4の上側が下側よりも速くなる。
【0032】
例えば、図3(a)に示す一例においては、吸気口4の最も上側部分では風速3.7m/sであり、上下中途部では風速2.1m/sでり、最も下側部分では風速1.3m/sとなっている。これに対して、噴霧口111は噴霧角度の設定により噴霧方向が後上方へ向くように設けられているため、図3(b)に示すように、風速が速い部分に対しては、吸気口4から離れた位置へ噴霧を行うことができ、風速が遅い部分に対しては、吸気口4に近い位置へ噴霧を行うことができる。こうして、噴霧された水滴が吸引されるのを抑制しつつ、気化冷却を効果的に行うことができる。
【0033】
給水管120は、可動ノズル110を支持すると共に、水道等から可動ノズル110へと水を供給(給水)するものである。図1においては、給水管120のうち一部(下流側部分)が図示される。給水管120は、筐体2の左方から右方(筐体2の背面側)へ延びるように形成される。給水管120は、下流側部分の端部において可動ノズル110と接続される。給水管120の上流側部分は、水道等の水供給源に接続される(不図示)。
【0034】
電磁弁130は、開閉動作を制御可能に構成されるものである。電磁弁130は、水の供給経路上の任意の場所に設けられる。例えば、電磁弁130は、給水管120に設けてもよく、あるいは可動ノズル110に設けてもよい。電磁弁130の開閉状態の制御により、任意のタイミングで可動ノズル110から水を噴霧できる。
【0035】
センサ部140は、空気の状態を検出するものである。センサ部140は、排気センサ部141及び吸気センサ部142を具備する。
【0036】
排気センサ部141は、室外機1の排気口5に設けられる。排気センサ部141は、排気口5から排出される空気(排気)の温度及び湿度(相対湿度)を検出可能に構成される。すなわち、排気センサ部141は、室外機1において、吸気口4から吸引され、冷媒との間で熱交換された後の空気の温度及び湿度を検出する。なお以下では、排気センサ部141により検出された温度を「排気温度」と称し、湿度を「排気湿度」と称する場合がある。
【0037】
吸気センサ部142は、室外機1の周囲(室外機1の熱の影響を受けない程度に離間した位置)に設けられる。吸気センサ部142は、室外機1の周囲の温度を検出可能に構成される。本実施形態では、室外機1の吸気口4から吸引される空気(吸気)の温度として、吸気センサ部142により検出された空気の温度を採用する場合がある。なお以下では、吸気センサ部142により検出された温度を「周囲温度」と称する場合がある。
【0038】
なお吸気センサ部142が設けられる場所は、室外機1の周囲に限定されない。例えば吸気センサ部142は、室外機1の吸気口4や筐体2の内部(熱交換機よりも空気の流通方向における上流側)に設けられてもよい。
【0039】
制御部150は、散水システム100の動作を制御するものである。制御部150は、主としてCPU等の演算処理装置、RAMやROM等の記憶装置等により構成される。制御部150の記憶装置には、散水システム100の動作を制御するために必要な情報や各種プログラムが記憶されている。
【0040】
また制御部150は、センサ部140(排気センサ部141及び吸気センサ部142)と電気的に接続される。制御部150は、排気センサ部141からの電気信号に基づいて、排気センサ部141が検出した排気温度及び排気湿度を取得できる。また制御部150は、吸気センサ部142からの電気信号に基づいて、吸気センサ部142が検出した周囲温度を取得できる。
【0041】
また制御部150は、電磁弁130と電気的に接続される。制御部150は、電磁弁130の動作(開閉状態)を制御することにより、可動ノズル110の噴霧口111から水の噴霧を行うことができる。
【0042】
また制御部150は、可動ノズル110と電気的に接続される。制御部150は、可動ノズル110の噴霧口111を制御することにより、噴霧口111の噴霧態様(噴霧形状や、噴霧量、噴霧角度等)を変更できる。
【0043】
以下では、図4及び図5を用いて、上述の如く構成された散水システム100において、室外機1の冷却を行う態様について詳細に説明する。
【0044】
本実施形態に係る散水システム100は、室外機1の冷却を行う場合、所定の条件に応じて噴霧口111からの噴霧態様(本実施形態では、噴霧角度及び噴霧量)を変更する。
【0045】
具体的には、室外機1の冷却を行う場合、噴霧口111からの噴霧角度は、予め設定された2種類の噴霧角度のうち一方の噴霧角度に設定される。ここで、本実施形態においては、噴霧口111の鉛直上方向に対して後方(室外機1の反対方向)へ傾斜させた角度を正の角度と定義する。本実施形態では、2種類の噴霧角度として、15°及び25°の噴霧角度が採用されている。このように、15°の噴霧角度は、本実施形態において噴霧角度の下限である。
【0046】
図4(a)に示すように、15°の噴霧角度が設定された(噴霧角度が小さい)場合、比較的鉛直方向に近い方向へ水が噴霧される。このような場合、後上方へ噴霧された水滴が自重により落下する場合、当該水滴は噴霧口111に比較的近い場所を通って後下方へ移動する。すなわち、噴霧口111の近傍においては、水滴の密度が比較的高い状態となる。このような状態において、室外機1の吸気口4が空気を吸引すると、当該空気と水滴との接触が多くなり、噴霧量あたりの気化量の増大(ひいては、電力消費の削減)を図ることができる。
【0047】
これに対して、図4(b)に示すように、25°の噴霧角度が設定された(噴霧角度が大きい)場合、比較的鉛直方向から遠い方向へ水が噴霧される。このような場合、後上方へ噴霧された水滴が自重により落下する場合、当該水滴は噴霧口111から比較的遠い場所を通って後下方へ移動する。すなわち、噴霧口111の近傍においては、水滴の密度が比較的低い状態となる。このような状態において、室外機1の吸気口4が空気を吸引すると、当該空気と水滴との接触がそれほど多くなく、上述の如く15°の噴霧角度が設定された場合と比較して効率が下がるものの、噴霧量あたりの気化量の増大を図ることができる。
【0048】
ここで、図5は、噴霧角度と電力消費削減率との関係の一例を示している。なお図5においては、上述の如き噴霧方向が後上方である状態を「上方噴霧」と記載し、後述するように噴霧方向が後下方である状態を「下方噴霧」と記載している。
【0049】
図5に示すように、噴霧角度が0°から15°までの間においては、室外機1の吸気口4が空気を吸引した場合、噴霧された水滴が室外機1側へと引き込まれ、熱交換機等に直接付着する(すなわち、直接的な散水となる)ことが分かる。
【0050】
これに対して、噴霧角度が15°から25°までの間においては、噴霧角度が大きくなるに従って電力消費削減率が徐々に低くなっている。このことから、噴霧角度が15°である場合に、噴霧量あたりの気化量が最も増大し、室外機1の電力消費削減率が最も高いことが分かる。また噴霧角度が15°から大きくなるに従って、噴霧量あたりの気化量が徐々に減少していき、室外機1の電力消費削減率が低下していくことが分かる。
【0051】
このように、本実施形態に係る2種類の噴霧角度は、噴霧された水滴が熱交換機等に直接付着することを抑制しつつ、電力消費削減率(すなわち、電力消費の削減効果)を互いに異ならせるような角度として設定されている。
【0052】
また室外機1の冷却を行う場合、噴霧口111からの噴霧量は、予め設定された2種類の噴霧量のうち一方の噴霧量に設定される。つまり、本実施形態では、噴霧量として、比較的多い噴霧量(以下では「第1噴霧量」と称する場合がある)及び比較的少ない噴霧量(以下では「第2噴霧量」と称する場合がある)の一方が設定される。このように、第2噴霧量は、本実施形態においては噴霧量の下限である。前記噴霧量の下限としては、例えば、duty比1%を採用できる。
【0053】
第1噴霧量が設定された場合、噴霧口111の近傍においては、水滴の密度が比較的高い状態となる。このような状態において、室外機1の吸気口4が空気を吸引すると、当該空気と水滴との接触が多くなり、気化量の増大(ひいては、電力消費の削減)を図ることができる。
【0054】
これに対して、第2噴霧量が設定された場合、噴霧口111の近傍においては、水滴の密度が比較的低い状態となる。このような状態において、室外機1の吸気口4が空気を吸引すると、当該空気と水滴との接触がそれほど多くなく、上述の如く第1噴霧量が設定された場合と比較して少ない量で、気化量の増大を図ることができる。
【0055】
上述の如く噴霧口111からの噴霧態様は、制御部150の制御により実行される。そこで以下では、上述の如く構成された散水システム100の制御態様について説明する。制御部150は、図6に示すフローチャートの処理を繰り返すことで、室外機1の冷却を行う場合に、噴霧口111からの噴霧態様の最適化を図っている。以下、順に説明する。
【0056】
ステップS101において、制御部150は、排気温度が周囲温度+αよりも高いか否かを判定する。ここで、冷房が行われている場合、室外機1の排気は、冷媒との間の熱交換により、吸気よりも温度が高くなる。そこで制御部150は、排気温度が周囲温度+αよりも高い場合、冷房が行われている(すなわち、室外機1が稼動している)と判断する。前記αは、センサ部140(排気センサ部141及び吸気センサ部142)による検出結果の誤差に基づく誤判定を抑制するための閾値である。前記αとしては、例えば3℃が採用される。
【0057】
制御部150は、排気温度が周囲温度+αよりも高い場合、ステップS102に移行する。一方、制御部150は、排気温度が周囲温度+αよりも高くない場合、ステップS120に移行する。
【0058】
ステップS120において、制御部150は、噴霧が行われている場合には、噴霧を停止する。また制御部150は、噴霧が行われていない場合には、そのまま待機する。制御部150は、ステップS120の処理を行った後、本制御フローを終了する。
【0059】
ステップS102において、制御部150は、噴霧を行う。具体的には、制御部150は、電磁弁130を閉状態から開状態へと開閉動作させ、給水管120を介して可動ノズル110へ水を供給する。これにより、可動ノズル110は、噴霧口111から水を噴霧する。制御部150は、ステップS102の処理を行った後、ステップS103に移行する。
【0060】
ステップS103において、制御部150は、排気の絶対湿度(排気絶対湿度)を算出すると共に、算出した排気絶対湿度に基づいて吸気の相対湿度(吸気相対湿度)を算出する。
【0061】
具体的には、まず制御部150は、排気センサ部141により検出された排気の温度及び湿度(相対湿度)に基づいて、排気絶対湿度を算出する。こうして、まず制御部150は、排気中に含まれる所定単位あたりの水蒸気量を算出する。なお前記水蒸気量は、気化冷却後の空気(吸気)中の水蒸気量に相当する。次に制御部150は、算出された排気絶対湿度、及び、吸気センサ部142により検出された空気の温度に基づいて、吸気相対湿度を算出する。制御部150は、ステップS103の処理を行った後、ステップS104に移行する。
【0062】
ステップS104において、制御部150は、吸気相対湿度がβ1よりも低いか否かを判定する。ここで、前記β1は、吸気の気化量が少ない(気化量の増加を図るための噴霧態様が過小である)か否かを判定するための閾値である。前記β1としては、例えば60%が採用される。制御部150は、吸気相対湿度がβ1よりも低い(気化量の増加を図るための噴霧態様が過小である)と判定した場合、ステップS105に移行する。一方、制御部150は、吸気相対湿度がβ1よりも低くない(気化量の増加を図るための噴霧態様が過小ではない)と判定した場合、ステップS110に移行する。
【0063】
ステップS105において、制御部150は、噴霧角度が下限であるか否かを判定する。制御部150は、噴霧角度が下限(すなわち、噴霧角度が15°)ではないと判定した場合、ステップS106に移行する。一方、制御部150は、噴霧角度が下限であると判定した場合、ステップS107に移行する。
【0064】
ステップS106において、制御部150は、噴霧角度を低減させる。すなわち、制御部150は、噴霧角度が下限ではない場合、噴霧口111を制御し、噴霧角度を25°から15°へ変更する。これにより、吸気の気化量を増加させ、室外機1の効率を向上できる。制御部150は、ステップS106の処理を行った後、本制御フローを終了する。
【0065】
ステップS107において、制御部150は、噴霧量を増加させる。すなわち、制御部150は、噴霧角度が下限である場合、噴霧口111を制御し、噴霧量を第2噴霧量から第1噴霧量へ変更する。これにより、吸気の気化量を増加させ、室外機1の効率を向上できる。制御部150は、ステップS107の処理を行った後、本制御フローを終了する。
【0066】
このように、気化量の増加を図るための噴霧態様が過小である場合、噴霧口111からの噴霧態様を変更することにより気化量を増加させる。またこの場合、噴霧態様の変更として、優先的にまず噴霧角度を変更し、噴霧角度が変更できない(下限である)場合に、噴霧量を変更する。これによれば、使用する水の量をできるだけ抑制しつつ、気化量の増加を図ることができる。
【0067】
また吸気相対湿度がβ1よりも低くない(気化量の増加を図るための噴霧態様が過小ではない)場合(ステップS104でNO)、ステップS110において、制御部150は、吸気相対湿度がβ2よりも大きいか否かを判定する。ここで、前記β2は、吸気の気化量が多い(気化量の増加を図るための噴霧態様が過剰である)か否かを判定するための閾値である。前記β2としては、例えば80%が採用される。制御部150は、吸気相対湿度がβ2よりも高い(気化量の増加を図るための噴霧態様が過剰である)と判定した場合、ステップS111に移行する。一方、制御部150は、吸気相対湿度がβ2よりも高くない(気化量の増加を図るための噴霧態様が過剰ではない)と判定した場合、本制御フローを終了する。
【0068】
ステップS111において、制御部150は、噴霧量が下限であるか否かを判定する。制御部150は、噴霧量が下限(すなわち、第2噴霧量)ではないと判定した場合、ステップS112に移行する。一方、制御部150は、噴霧量が下限であると判定した場合、ステップS113に移行する。
【0069】
ステップS112において、制御部150は、噴霧量を低減させる。すなわち、制御部150は、噴霧量が下限ではない場合、噴霧口111を制御し、噴霧量を第1噴霧量から第2噴霧量へ変更する。これにより、吸気の気化量をできるだけ維持しつつ、使用する水の量をできるだけ抑制する。制御部150は、ステップS112の処理を行った後、本制御フローを終了する。
【0070】
ステップS113において、制御部150は、噴霧角度を増加させる。すなわち、制御部150は、噴霧量が下限である場合、噴霧口111を制御し、噴霧角度を15°から25°へ変更する。これにより、吸気の気化量をできるだけ維持しつつ、噴霧された水滴が吸引されるのをできるだけ抑制する。制御部150は、ステップS113の処理を行った後、本制御フローを終了する。
【0071】
このように、気化量の増加を図るための噴霧態様が過剰である場合、噴霧口111からの噴霧態様を変更する。またこの場合、噴霧態様の変更として、優先的にまず噴霧量を変更し、噴霧量が変更できない(下限である)場合に、噴霧角度を変更する。これによれば、吸気の気化量をできるだけ維持しつつ、使用する水の量をできるだけ抑制し、さらに噴霧された水滴が吸引されるのをできるだけ抑制できる。
【0072】
こうして、制御部150の制御により、室外機1の冷却を行う場合に、噴霧口111からの噴霧態様の最適化を図ることができる。すなわち、散水効果の最大化を図ると共に、散水量(使用する水の量)の低減を図ることができる。
【0073】
以上の如く、本実施形態に係る散水システム100は、
空調装置の室外機1に間接的に散水を行う散水システムであって、
供給されてきた水を噴霧口111から所定の噴霧方向へ噴霧可能な可動ノズル110(ノズル)を具備し、
前記噴霧口111は、前記室外機1の吸気口4と対向するように離間した位置において、鉛直方向を基準として前記室外機1に対して反対側に傾斜する方向を前記噴霧方向とし、
前記吸気口4への吸気を、噴霧した水滴により気化冷却させるものである。
【0074】
このような構成により、室外機1の劣化を抑制しつつ、空調装置の電力消費の削減を図ることができる。
すなわち、室外機1に直接散水することなく、冷却した空気により、効率よく熱交換を行うことができる。
【0075】
また本実施形態に係る散水システム100において、
前記噴霧口111は、鉛直方向を基準として前記室外機1に対して反対側に傾斜する斜め上方を前記噴霧方向とするものである。
【0076】
このような構成により、噴霧された水滴が吸引されるのを抑制しつつ、気化冷却を効果的に行うことができる。
【0077】
また本実施形態に係る散水システム100において、
前記噴霧口111は、噴霧態様を変更可能に構成され、
前記吸気口4の吸気の相対湿度に関する所定の条件に応じて前記噴霧口111を制御し、前記噴霧態様を変更する制御部150を具備するものである。
【0078】
このような構成により、噴霧口111からの噴霧態様を変更することにより、室外機1の劣化を抑制しつつ、空調装置の電力消費の削減を図ることができる。
【0079】
また本実施形態に係る散水システム100において、
前記噴霧態様には、鉛直方向と前記噴霧方向とがなす角度である噴霧角度が含まれ、
前記制御部150は、
前記相対湿度がβ1(第1の閾値)よりも低い場合、前記噴霧角度を小さくし、
前記相対湿度が前記β1(第1の閾値)よりも高いβ2(第2の閾値)よりも高い場合、前記噴霧角度を大きくするものである。
【0080】
このような構成により、噴霧口111からの噴霧角度を変更することにより、室外機1の劣化を抑制しつつ、空調装置の電力消費の削減を図ることができる。
【0081】
また本実施形態に係る散水システム100において、
前記噴霧態様には、前記噴霧口111からの噴霧量が含まれ、
前記制御部150は、
前記相対湿度がβ1(第1の閾値)よりも低い場合、前記噴霧量を多くし、
前記相対湿度が前記β1(第1の閾値)よりも高いβ2(第2の閾値)よりも高い場合、前記噴霧量を少なくするものである。
【0082】
このような構成により、噴霧口111からの噴霧量を変更することにより、室外機1の劣化を抑制しつつ、空調装置の電力消費の削減を図ることができる。
【0083】
また本実施形態に係る散水システム100において、
前記噴霧態様には、鉛直方向と前記噴霧方向とがなす角度である噴霧角度と、前記噴霧口111からの噴霧量と、が含まれ、
前記制御部150は、
前記相対湿度がβ1(第1の閾値)よりも低い場合、前記噴霧角度を小さくし、前記噴霧角度が下限値であると、前記噴霧量を多くし、
前記相対湿度が前記β1(第1の閾値)よりも高いβ2(第2の閾値)よりも高い場合、前記噴霧量を少なくし、前記噴霧量が下限値であると、前記噴霧角度を大きくするものである。
【0084】
このような構成により、噴霧口111からの噴霧角度及び噴霧量を変更することにより、室外機1の劣化を抑制しつつ、空調装置の電力消費の削減を図ることができる。
【0085】
また本実施形態に係る散水システム100において、
前記制御部150は、
前記相対湿度を、前記空調装置の排気の温度及び絶対湿度に基づいて算出するものである。
【0086】
このような構成により、精度よく吸気の相対湿度を算出することができ、ひいては効果的に室外機1の劣化を抑制しつつ、空調装置の電力消費の削減を図ることができる。
【0087】
なお、本実施形態に係る可動ノズル110は、本発明に係るノズルの実施の一形態である。
また、本実施形態に係るβ1は、本発明に係る第1の閾値の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るβ2は、本発明に係る第2の閾値の実施の一形態である。
【0088】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0089】
例えば、本実施形態では背面に吸気口4が形成された室外機1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず種々の形状を有する室外機1に適用することが可能である。
【0090】
また噴霧態様の変更は、噴霧口111の構成により実行されるものに限定されない。例えば、噴霧角度の変更は、可動ノズル110を支持する給水管120を軸回りに回転させることにより実行してもよい。このように、噴霧態様の変更は、種々の構成により実行できる。
【0091】
また本実施形態において、説明に用いられた数値は適宜変更することができる。また制御部150による制御の内容は、適宜変更することができる。例えば、ステップS103において、制御部150は、吸気センサ部142により検出された空気の温度等に基づいて、吸気相対湿度を算出するが、吸気センサ部142としては、室外機1の周囲の温度を取得するものではなく、室外機1の吸気口4や筐体2の内部の温度(すなわち、冷却された後の空気の温度)を取得してもよい。
【0092】
また本実施形態においては、制御部150の制御により噴霧態様の変更として、噴霧角度及び噴霧量を変更するものとしたがこれに限定されない。すなわち、制御部150の制御により噴霧形状や噴霧位置(対向する吸気口4に対する相対的な位置)を変更してもよい。また本実施形態においては、噴霧態様の変更として、2種類の噴霧角度及び噴霧量の何れかが選択されるものとしたが、これに限定されない。すなわち、噴霧態様の変更としては、3種類以上設けてもよく、無段階としてもよい。
【0093】
また本実施形態においては、噴霧口111は、当該噴霧口111が向く方向(噴霧方向)が、後上方へ向くように設けられたが、これに限定されない。すなわち、図7(a)に示すように、噴霧口111が吸気口4の上部に対向する位置に設けられ、噴霧方向が後下方へ向くように設けられてもよい。図5及び図7(b)に示すように、このように構成された場合であっても、室外機1に直接散水することなく、冷却した空気により、効率よく熱交換を行うことができる。すなわち、室外機1の劣化を抑制しつつ、空調装置の電力消費の削減を図ることができる。
【符号の説明】
【0094】
1 室外機
4 吸気口
110 可動ノズル
111 噴霧口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7