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特開2024-168369カーシェアリング管理サーバおよびコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168369
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】カーシェアリング管理サーバおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241128BHJP
   G06Q 50/40 20240101ALI20241128BHJP
   G08G 1/123 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q50/30
G08G1/123 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084971
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】591069086
【氏名又は名称】パーク二四株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113804
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100101384
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 成夫
(72)【発明者】
【氏名】安藤 瞭
(72)【発明者】
【氏名】飯野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 章
【テーマコード(参考)】
5H181
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181KK01
5H181KK08
5H181MA44
5H181MA48
5L049CC13
5L049CC42
5L050CC13
5L050CC42
(57)【要約】
【課題】 カーシェアリング事業において、会員ユーザがどのようなタイミングでカーシェアステーションに到来しても、シェアカーの提供が円滑に実施可能とする。
【解決手段】 会員ユーザの属性データを会員IDに紐付けて蓄積する会員データベースと、カーシェアリングの予約内容データを蓄積する予約データベースと、カーシェアリングに利用されるシェアカーの管理データを蓄積するシェアカー管理データベースと、予約内容データを会員ユーザの携帯端末へ送信する予約内容送信手段と、利用開始の際に当該シェアカーを特定するための車両特定データを会員に係る携帯端末から受信する利用開始データ受信手段と、車両特定データとシェアカー管理データベースとを用いて利用開始に係るシェアカーを特定するセットアップ判断手段と、特定したシェアカーの車載機へ予約内容データを送信する予約データ送信手段と、を備えたカーシェアリング管理サーバとする。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーシェアリング利用に関して予め会員登録をした会員ユーザに係る属性データを会員IDに紐付けて蓄積する会員データベースと、
カーシェアリングの予約内容データを会員IDに紐付けて蓄積する予約データベースと、
カーシェアリングに利用されるシェアカーの管理データを各車両の特定に用いる車両IDに紐付けて蓄積するシェアカー管理データベースと、
前記の予約内容データを当該予約内容データに係る会員ユーザの携帯端末へ送信する予約内容送信手段と、
前記の予約内容データに対応したシェアカーを利用開始の際に当該シェアカーを特定するための車両特定データを当該予約内容データに係る会員IDとともに当該会員に係る携帯端末から受信する利用開始データ受信手段と、
その利用開始データ受信手段が受信した車両特定データと前記のシェアカー管理データベースとを用いて利用開始に係るシェアカーを特定するセットアップ判断手段と、
そのセットアップ判断手段が特定したシェアカーの車載機へ当該予約内容データを送信する予約データ送信手段と、
を備えたカーシェアリング管理サーバ。
【請求項2】
前記の予約内容送信手段は、前記の車両特定データに係るシェアカーを解錠するための解錠データを、前記の車両特定データに係るシェアカーの車載機へ送信することとした
請求項1に記載のカーシェアリング管理サーバ。
【請求項3】
前記の予約内容送信手段は、前記の車両特定データに係るシェアカーを解錠するための解錠データを、前記の予約内容データに係る会員ユーザの携帯端末へ送信することとした
請求項1または請求項2のいずれかに記載のカーシェアリング管理サーバ。
【請求項4】
シェアカーの車載器から当該車両の位置データである車両位置データを車両IDとともに受信する車両位置データ受信手段と、
前記のセットアップ判断手段が特定したシェアカーの管理を担当する営業所に係る営業所端末へ前記の車両位置データを車両IDとともに送信する車両位置データ送信手段と、
を備えた請求項1に記載のカーシェアリング管理サーバ。
【請求項5】
前記の車両位置データ受信手段は、シェアカーが施錠された旨を示す施錠データをも受信することとした
請求項4に記載のカーシェアリング管理サーバ。
【請求項6】
会員ユーザに係る携帯端末の位置データである端末位置データを会員IDとともに受信する端末位置データ受信手段と、
前記の端末位置データが会員IDに係る予約内容データにおける利用開始ステーションの位置データと所定の距離以下である場合に、当該会員ユーザが利用しようとするシェアカーに係る車両特定データを送信するように督促するための督促データを前記の携帯端末へ送信する督促データ送信手段と、
を備えた請求項1に記載のカーシェアリング管理サーバ。
【請求項7】
カーシェアリング管理サーバを制御するコンピュータプログラムであって、
前記のカーシェアリング管理サーバには、カーシェアリング利用に関して予め会員登録をした会員ユーザに係る属性データを会員IDに紐付けて蓄積する会員データベースと、
カーシェアリングの予約内容データを会員IDに紐付けて蓄積する予約データベースと、
カーシェアリングに利用されるシェアカーの管理データを各車両の特定に用いる車両IDに紐付けて蓄積するシェアカー管理データベースと、
を備えており、
前記のコンピュータプログラムは、
前記の予約内容データを当該予約内容データに係る会員ユーザの携帯端末へ送信する予約内容送信手順と、
前記の予約内容データに対応したシェアカーを利用開始の際に当該シェアカーを特定するための車両特定データを当該予約内容データに係る会員IDとともに当該会員に係る携帯端末から受信する利用開始データ受信手順と、
その利用開始データ受信手順にて受信した車両特定データと前記のシェアカー管理データベースとを用いて利用開始に係るシェアカーを特定するセットアップ判断手順と、
そのセットアップ判断手順にて特定したシェアカーの車載機へ当該予約内容データを送信する予約データ送信手順と、
を前記のカーシェアリング管理サーバに実行させることとしたコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記の予約内容送信手順においては、前記の車両特定データに係るシェアカーを解錠するための解錠データを、前記の車両特定データに係るシェアカーの車載機へ送信することとした
請求項7に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記の予約内容送信手順においては、前記の車両特定データに係るシェアカーを解錠するための解錠データを、前記の予約内容データに係る会員ユーザの携帯端末へ送信することとした
請求項7または請求項8に記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
シェアカーの車載器から当該車両の位置データである車両位置データを車両IDとともに受信する車両位置データ受信手順と、
前記のセットアップ判断手順にて特定したシェアカーの管理を担当する営業所に係る営業所端末へ前記の車両位置データを車両IDとともに送信する車両位置データ送信手順と、
を前記のカーシェアリング管理サーバに実行させることとした
請求項7に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記の車両位置データ受信手順においては、シェアカーが施錠された旨を示す施錠データをも受信することとした
請求項10に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
会員ユーザに係る携帯端末の位置データである端末位置データを会員IDとともに受信する端末位置データ受信手順と、
前記の端末位置データが会員IDに係る予約内容データにおける利用開始ステーションの位置データと所定の距離以下である場合に、当該会員ユーザが利用しようとするシェアカーに係る車両特定データを送信するように督促するための督促データを前記の携帯端末へ送信する督促データ送信手順と、
を前記のカーシェアリング管理サーバに実行させることとした
請求項6に記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】
カーシェアリング利用に関して予め会員登録をして会員IDを取得した会員ユーザに係る携帯端末において実行されるコンピュータプログラムであって、
カーシェアリング利用の予約を完了した場合にその予約内容データを受信する予約データ受信手順と、
前記の予約内容データに係る利用開始する際に利用する車両を特定するための車両特定データを取得する車両特定データ取得手順と、
その車両特定データ取得手順にて取得した車両特定データをカーシェアリング管理サーバへ送信する車両特定データ送信手順と、
前記の車両特定データを受信した前記のカーシェアリング管理サーバから送信された前記の車両の使用許諾データを受信する使用許諾データ受信手順と、
を前記の携帯端末に実行させることとしたコンピュータプログラム。
【請求項14】
前記の携帯端末の位置データを取得して前記のカーシェアリング管理サーバへ送信する端末位置データ送信手順と、
前記の位置データ送信手順による端末位置データが前記の予約内容データに係る利用開始ステーションの近傍である旨を前記のカーシェアリング管理サーバが把握した場合に、前記の車両特定データ取得手順による車両特定データの取得を会員ユーザに促す出力が前記の携帯端末にてなされるような督促データを受信する車両特定データ督促手順と、
を前記の携帯端末に実行させることとした
請求項13に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーシェアリング事業において、一つの駐車スペースで複数のカーシェア車両(シェアカー)を貸し出せるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カーシェアリングサービスを提供する事業者は、事前に会員登録がなされた会員に対して、会員を識別するICカードたる会員カードや、会員が保有する携帯情報端末に会員であることを保証する会員IDを含んだ電子データを提供する。ICカードや携帯情報端末に格納された会員IDを用いて、事業者の提供する車両の予約を実行して利用することとなる(図1参照、手順の詳細は割愛する)。
【0003】
会員登録を予め済ませた会員ユーザは自らの会員IDを用いて、利用を開始したい場所であるカーシェアステーション、利用を開始したい日時、利用を終了して返却する予定時刻、希望する車種(クラス)を入力して検索する。
【0004】
上記の「カーシェアステーション」は、複数の車両が駐車できる駐車場において、一部の車室をシェアカーの出し入れ専用の車室として運営することが多い。たとえば、図2に示す駐車場は、8つの車室を備えており、月極契約の車室が3室、EV(電気自動車)用車室が1室、時間貸し車室が2室、カーシェア用車室が2室となっている。
【0005】
一方、都市部を中心に、歩道のスペースを一部切り欠いて車両の駐停車を可能とする「路上駐車スペース」(図3参照)が設置されることがある。
この「路上駐車スペース」は、タクシーの乗降スペース、一般車両の駐停車スペース、時間貸しの駐車場(いわゆるコインパーキング)としての活用、など様々な活用がなされている。
【0006】
特許情報プラットフォームにおいて、本願に関わりそうな先行特許を検索したところ、以下の特許文献を抽出したので、それを検証した。
【0007】
特許文献1には、縦列駐車されたシェアリングカーを合理的に管理する技術が開示されている。
【0008】
特許文献2には、無人化により鍵と車両が一体的に管理でき、且つ都市部における駐車場の確保を可能としたレンタカー自動システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5748262号公報
【特許文献2】特開2005-25630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
カーシェアリングの需要が多いカーシェアステーションでは、一つの車室に対して一台のシェアカーを割り当てていては、需要を捌ききれないほどのニーズがある。そのため、一つの車室からシェアカーが貸し出されたら、その車室へ近傍のシェアカープール地(営業所)からシェアカーを補充して貸し出す、という運用も開始された。これをカーシェアリングにおける「一車室多車両(のサービス形態)」とする。
【0011】
ところで、カーシェアサービスの場合、会員ユーザの予約開始時刻と、会員ユーザが実際にシェアカーの貸し出し場所に来る時刻とがずれていることが多い。たとえば、ある会員ユーザが利用開始時刻を過ぎても現れず、車両が貸し出せないうちに、次の会員ユーザの予約開始時刻が到来する事態も生じ得る。このような場合、特に一車室多車両のサービス形態であると、それぞれの会員ユーザに対して具体的にどのシェアカーを貸し出すべきか、複雑な対応が必要になる。
【0012】
一車室多車両のサービス形態を合理的に運用するためには、会員ユーザによる車両返却のタイミングに合わせたシェアカーの回収や補充を円滑に実施すべきという課題がある。しかし、前述した特許文献1、2では、前記の課題を解決するには至らない。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、カーシェアリング事業において、会員ユーザがどのようなタイミングで駐車場に到来しても、シェアカーの提供が円滑に実施可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した課題を解決するため、カーシェアリング管理サーバに係る第一の発明、第一に係るカーシェアリング管理サーバを制御するコンピュータプログラムに係る第二の発明、および第一の発明に係るカーシェアリング管理サーバと通信する通信端末上で実行されるコンピュータプログラムに係る第三の発明を提供する。
【0015】
(第一の発明)
第一の発明は、 カーシェアリング利用に関して予め会員登録をした会員ユーザに係る属性データを会員IDに紐付けて蓄積する会員データベースと、
カーシェアリングの予約内容データを会員IDに紐付けて蓄積する予約データベースと、
カーシェアリングに利用されるシェアカーの管理データを各車両の特定に用いる車両IDに紐付けて蓄積するシェアカー管理データベースと、
前記の予約内容データを当該予約内容データに係る会員ユーザの携帯端末へ送信する予約内容送信手段と、
前記の予約内容データに対応したシェアカーを利用開始の際に当該シェアカーを特定するための車両特定データを当該予約内容データに係る会員IDとともに当該会員ユーザに係る携帯端末から受信する利用開始データ受信手段と、
その利用開始データ受信手段が受信した車両特定データと前記のシェアカー管理データベースとを用いて利用開始に係るシェアカーを特定するセットアップ判断手段と、
そのセットアップ判断手段が特定したシェアカーの車載機へ当該予約内容データを送信する予約データ送信手段と、
を備えたカーシェアリング管理サーバに係る(図6参照)。
【0016】
(用語説明)
「車両特定データ」とは、カーシェアリングの会員ユーザがカーシェアに利用する車両を選択した際に、その車両を特定するためのデータである。典型的には、ナンバープレートに表示されている「車両ナンバー」である。これ以外にも、シェアカーに搭載されている機器のID(シェアカーと、機器のIDとが1対1で対応付けられている場合)、シェアカーに搭載されている機器に格納されている車両IDなど、様々な態様が考えられる。カーシェアリングの会員ユーザがカーシェアに利用する所定の車両を選択した際に、この車両特定データを会員ユーザに係る携帯端末が取得してカーシェアリング管理サーバへ送信する。あるいは、車両自体が車両特定データをカーシェアリング管理サーバへ送信する。
「シェアカー管理データ」とは、たとえば、シェアカー毎に、現在どこにある、使用中ならばどのような状態にある、過去にどのような使われ方をした、といったデータである。
【0017】
「予約内容データ」は、予約に係る会員ID、利用開始ステーション、利用開始日時および時刻、利用終了日時および時刻、利用する車両のクラスなどである。予約内容データを唯一無二とするために予約IDを付与して管理することが一般的である。
「シェアカーの車載機」は、GPS機能にて車両の位置データを取得したり、その位置データをカーシェアリング管理サーバに送信したり、シェアカーのエンジン(EVの場合なら動力モータ)に関するデータ(エンジンのオンオフ等)を取得してカーシェアリング管理サーバに送信したりする。
【0018】
(作用)
カーシェアリング利用に関して予め会員登録をした会員ユーザに係る属性データは、会員IDに紐付けて会員データベースへ蓄積される。 カーシェアリングの予約内容データは、会員IDに紐付けて予約データベースへ蓄積される。 カーシェアリングに利用されるシェアカーの管理データは、各車両の特定に用いる車両IDに紐付けてシェアカー管理データベースへ蓄積される。
予約内容データは、当該予約内容データに係る会員ユーザの携帯端末へ予約内容送信手段が送信する。その予約内容データに対応したシェアカーを利用開始の際には、当該シェアカーを特定するための車両特定データと会員IDとが、利用開始データ受信手段によりが受信される。
【0019】
受信した車両特定データと前記のシェアカー管理データベースとを用いて利用開始に係るシェアカーを、セットアップ判断手段が特定する。そして、そのセットアップ判断手段が特定したシェアカーの車載機へ、該当する予約内容データを予約データ送信手段が送信する。予約データ送信手段が送信する車両IDは、予約内容データにおいて予約されたクラスに相当する複数のシェアカーから会員ユーザによって解錠された一台のシェアカーに係る車載器へ送信されることとなる。
【0020】
カーシェアリング管理サーバは、予約内容データに係る会員ユーザから車両特定データを受信するまで、予約内容データに合致するシェアカーを特定する必要がない。そのため、管理対象となっているシェアカーを柔軟に運用することに寄与する。
【0021】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、前記の予約内容送信手段は、前記の車両特定データに係るシェアカーを解錠するための解錠データを、前記の車両特定データに係るシェアカーの車載機へ送信することとするのである(図6参照)。
【0022】
(作用)
予約内容データに合致するシェアカーが会員ユーザの到着したカーシェアステーションに複数存在していても、所定の一台のみを利用できる。
換言すれば、カーシェアリング管理サーバとしては、複数台のシェアカーをカーシェアステーションに用意しておき、会員ユーザが利用を開始することとした車両のみに解錠データを送信することとなる。その結果、シェアカーの管理運営が柔軟に行えることとなる。
【0023】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、 前記の予約内容送信手段は、前記の車両特定データに係るシェアカーを解錠するための解錠データを、前記の予約内容データに係る会員ユーザの携帯端末へ送信することとするのである。
【0024】
バリエーション2は、会員ユーザに係る携帯端末に格納された解錠データを車両特定データに係るシェアカーへ送信することで解錠する場合に対応したものである。
換言すれば、第一のバリエーションでは、会員ユーザは携帯端末ではなく、会員IDカードなど会員IDが格納された媒体を用いてシェアカーの解錠(施錠も)を実施できる場合に対応している。
【0025】
(第一の発明のバリエーション3)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、シェアカーの車載器から当該車両の位置データである車両位置データを車両IDとともに受信する車両位置データ受信手段と、
前記のセットアップ判断手段が特定したシェアカーの管理を担当する営業所に係る営業所端末へ前記の車両位置データを車両IDとともに送信する車両位置データ送信手段と、
を備えることとするのである(図6参照)。
【0026】
(用語説明)
「営業所端末」とは、近傍のカーシェアステーションへシェアカーを供給したり、引き上げたりするシェアカープール地に係るシェアカーの管理や当該シェアカープール地に勤務するスタッフの管理などをするための端末である。
【0027】
(作用)
営業所端末が置かれた営業所においては、会員ユーザによって利用が開始されたシェアカー車両を特定することができる。その後の予約状況などを勘案することで、シェアカーの補充や回収など、その後の対応を決定する情報として活用できる。
【0028】
(第一の発明のバリエーション4)
第一の発明における前述のバリエーション3は、以下のように形成することができる。
すなわち、前記の車両位置データ受信手段は、シェアカーが施錠された旨を示す施錠データをも受信することとするのである(図20参照)。
【0029】
(用語説明)
「施錠データ」は、カーシェアリングの利用者が利用を終了する際に、シェアカーのドアをロックした旨のデータである。
【0030】
(作用)
営業所端末が置かれた営業所においては、会員ユーザによる利用終了したシェアカー車両を特定することができる。その後の予約状況などを勘案することで、シェアカーの補充や回収など、その後の対応を決定する情報として活用できる。
【0031】
(第一の発明のバリエーション5)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、会員ユーザに係る携帯端末の位置データである端末位置データを会員IDとともに受信する端末位置データ受信手段と、
前記の端末位置データが会員IDに係る予約内容データにおける利用開始ステーションの位置データと所定の距離以下である場合に、当該会員ユーザが利用しようとするシェアカーに係る車両特定データを送信するように督促するための督促データを前記の携帯端末へ送信する督促データ送信手段と、
を備えるのである(図8,13参照)。
【0032】
会員ユーザが、本願に係るカーシェアリング管理サーバとのデータ送受信を円滑に実施するための専用アプリケーションソフトウェア(以下、「専用アプリ」)を、携帯端末に予めダウンロードしているとする。その場合、会員ユーザに係る携帯端末において、当該専用アプリが起動し、利用しようとするシェアカーに係る車両特定データを送信するように督促がなされる。
【0033】
(作用)
端末位置データ受信手段は、会員ユーザに係る携帯端末の位置データである端末位置データを会員IDとともに受信する。端末位置データが会員IDに係る予約内容データにおける利用開始ステーションの位置データと所定の距離以下である場合に、当該会員ユーザが利用しようとするシェアカーに係る車両特定データを送信するように督促するための督促データを、督促データ送信手段が会員ユーザの携帯端末へ送信する。
【0034】
督促データを携帯端末にて受信した会員ユーザが、利用しようとするシェアカーに係る車両特定データを遅滞なく送信してくれれば、カーシェアリングの運用が円滑化する。
【0035】
(第二の発明)
第二の発明は、第一の発明に係るカーシェアリング管理サーバを制御するコンピュータプログラムに係る(図6参照)。
すなわち、前記のカーシェアリング管理サーバには、カーシェアリング利用に関して予め会員登録をした会員ユーザに係る属性データを会員IDに紐付けて蓄積する会員データベースと、
カーシェアリングの予約内容データを会員IDに紐付けて蓄積する予約データベースと、
カーシェアリングに利用されるシェアカーの管理データを各車両の特定に用いる車両IDに紐付けて蓄積するシェアカー管理データベースと、
を備える。
前記のコンピュータプログラムは、
前記の予約内容データを当該予約内容データに係る会員ユーザの携帯端末へ送信する予約内容送信手順と、
前記の予約内容データに対応したシェアカーを利用開始の際に当該シェアカーを特定するための車両特定データを当該予約内容データに係る会員IDとともに当該会員に係る携帯端末から受信する利用開始データ受信手順と、
その利用開始データ受信手順にて受信した車両特定データと前記のシェアカー管理データベースとを用いて利用開始に係るシェアカーを特定するセットアップ判断手順と、
そのセットアップ判断手順にて特定したシェアカーの車載機へ該当する予約内容データを送信する予約データ送信手順と、
を前記のカーシェアリング管理サーバに実行させることとしたコンピュータプログラムである。
【0036】
(用語説明)
「カーシェアリング管理サーバ」は、コンピュータであるので、他の端末とのデータ送受信を実行する入力手段および出力手段、入力手段から入力されたデータを蓄積したり会員データベースや予約データベースを備えたりするための記憶手段、入力手段からの入力データや記憶手段に蓄積された記憶データを用いて演算する演算手段、その演算手段が演算時に用いるランダムアクセスメモリなどを備えている。
【0037】
(第二の発明のバリエーション1)
第二の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、前記の予約内容送信手順においては、前記の車両特定データに係るシェアカーを解錠するための解錠データを、前記の車両特定データに係るシェアカーの車載機へ送信することとするのである。
【0038】
(第二の発明のバリエーション2)
第二の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、前記の予約内容送信手順においては、前記の車両特定データに係るシェアカーを解錠するための解錠データを、前記の予約内容データに係る会員ユーザの携帯端末へ送信することとするのである。
【0039】
(第二の発明のバリエーション3)
第二の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、シェアカーの車載器から当該車両の位置データである車両位置データを車両IDとともに受信する車両位置データ受信手順と、
前記のセットアップ判断手順にて特定したシェアカーの管理を担当する営業所に係る営業所端末へ前記の車両位置データを車両IDとともに送信する車両位置データ送信手順と、
を前記のカーシェアリング管理サーバに実行させることとしたコンピュータプログラムである。
【0040】
(第二の発明のバリエーション4)
第二の発明における前述のバリエーション3は、以下のように形成することができる。
すなわち、前記の車両位置データ受信手順においては、シェアカーが施錠された旨を示す施錠データをも受信することとするのである。
【0041】
(第二の発明のバリエーション5)
第二の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、会員ユーザに係る携帯端末の位置データである端末位置データを会員IDとともに受信する端末位置データ受信手順と、
前記の端末位置データが会員IDに係る予約内容データにおける利用開始ステーションの位置データと所定の距離以下である場合に、当該会員ユーザが利用しようとするシェアカーに係る車両特定データを送信するように督促するための督促データを前記の携帯端末へ送信する督促データ送信手順と、
を前記のカーシェアリング管理サーバに実行させることとしたコンピュータプログラムである。
【0042】
(第三の発明)
第三の発明は、第一の発明に係るカーシェアリング管理サーバとの通信を実行する会員ユーザに係る携帯端末で実行されるアプリケーションプログラムに係る発明である。
すなわち、そのアプリケーションプログラムは、
カーシェアリング利用に関して予め会員登録をして会員IDを取得した会員ユーザに係る携帯端末において実行されるコンピュータプログラムであって、
カーシェアリング利用の予約を完了した場合にその予約内容データを受信する予約データ受信手順と、
前記の予約内容データに係る利用開始する際に利用する車両を特定するための車両特定データを取得する車両特定データ取得手順と、
その車両特定データ取得手順にて取得した車両特定データをカーシェアリング管理サーバへ送信する車両特定データ送信手順と、
前記の車両特定データを受信した前記のカーシェアリング管理サーバから送信された前記の車両の使用許諾データを受信する使用許諾データ受信手順と、
を前記の携帯端末に実行させることとしたコンピュータプログラムである(図6参照)。
【0043】
(用語説明)
「携帯端末」は、コンピュータであるので、他の端末とのデータ送受信を実行する入力手段および出力手段、入力手段から入力したデータなどを蓄積するための記憶手段、入力手段からの入力データや記憶手段に蓄積された記憶データを用いて演算する演算手段、その演算手段が演算時に用いるランダムアクセスメモリなどを備えている。
「アプリケーションプログラム」は、携帯端末に予めインストールして実行する場合の他、所定のウェブサイトとの双方向通信によって一時的に実行される場合を含む。
【0044】
(第三の発明のバリエーション)
第三の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の携帯端末の位置データを取得して前記のカーシェアリング管理サーバへ送信する端末位置データ送信手順と、
前記の位置データ送信手順による端末位置データが前記の予約内容データに係る利用開始ステーションの近傍である旨を前記のカーシェアリング管理サーバが把握した場合に、前記の車両特定データ取得手順による車両特定データの取得を会員ユーザに促す出力が前記の携帯端末にてなされるような督促データを受信する車両特定データ督促手順と、
を前記の携帯端末に実行させることとするのである(図8,13参照)。
【0045】
第二および第三の発明に係るコンピュータプログラムを、記録媒体へ記憶させて提供することもできる。
ここで、「記録媒体」とは、それ自身では空間を占有し得ないプログラムを担持することができる媒体である。例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、DVD-R、フラッシュメモリなどである。
また、この発明に係るプログラムを格納したコンピュータまたは管理サーバの制御コンピュータから、通信回線を通じて管理サーバの制御コンピュータへ伝送することも可能である。
【0046】
(カーシェアリングサービスの予約に関する補足)
一室一車両の原則にて運用しているステーションの場合には、車両が車室に紐付いているため、予約の際に車両の個体指定までが可能である。そのため、予約時に「クラス指定」ではなく、車番指定をすることが多い。
しかし、一室多車両で運用しているステーションの場合には、車番指定ではなく、「クラス指定」としている。この「クラス指定」とは、カーシェアリング事業者が保有して提供する車両に関する車種の全てを、ベーシック、ミドル、スペシャルなどの複数クラスに分け、ユーザは車種ではなくクラスを指定することである。なお、車種を指定して予約をしたいユーザに対しては、オプションでの車種指定を可能とすることで、ユーザニーズに対応することとしている。
【0047】
「クラス」とは、たとえば、4~5人乗りの5ナンバーによるベーシッククラス、5~7人乗りの3ナンバーによるミドルクラス、特殊用途や稀少モデルなどの車種を含んだスペシャルクラスなど、利用料金によって複数の区分を備えている。
【発明の効果】
【0048】
第一の発明によれば、カーシェアリング事業において、会員ユーザがどのようなタイミングでカーシェアステーションに到来しても、シェアカーの提供が円滑に実施可能なカーシェアリング管理サーバを提供することができる。
第二の発明によれば、カーシェアリング事業において、シェアカーの提供を円滑に実施可能なカーシェアリング管理サーバの制御プログラムを提供することができる。
第三の発明によれば、カーシェアリング事業において、シェアカーの提供を円滑に実施可能な、会員ユーザに係る携帯端末で実行されるアプリケーションプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】シェアカーを利用する際(本願以外)の予約手順を示すブロック図である。
図2】カーシェアリングサービスを実行するための駐車場に関して典型例を示す概略図である。
図3】本発明を実施する場合に、特に活用される路上駐車スペースを示す概略平面図である。
図4】予約した車両のある路上駐車スペースの最寄り駅へ到着した会員Aがなすべきことと、その後の情報処理手順を示す概念図である。
図5】ストック型のカーシェアステーションが準備されている場合の予約から利用までの流れを示すフローチャートである。
図6】本願発明の概要を示すブロック図である。
図7】予約したステーションに出向いている会員ユーザの携帯端末の画面推移を示す概要図である。
図8】予約した車両のある路上駐車スペースの最寄り駅へ会員Aが到着し、利用を開始する際の動作を示す概念図である。
図9】会員Aが車両Kの利用を開始する際の情報処理を示す概念図である。カーシェアリングの利用予約から、車両の回送までの手順を示すフローチャートである。
図10】会員Aが路上駐車スペースから車両を出発させ、会員Bが最寄り駅Rへ到着した場合の情報処理手順を示す概念図である。
図11】届け回送の際に、どのように車両を停車させるのか、を説明するための概念図である。
図12】会員Bが予約した車両のある路上駐車スペースへ到着し、利用を開始する際の動作を示す概念図である。
図13】会員ユーザの携帯端末における予約遂行の直前の流れを示すフローチャートである。
図14】会員Aが車両Kを返却する場合の情報処理を示す概念図である。
図15】会員Bが車両を返却する場合に、回収回送が必要となる場合を示す概念図である。
図16】回収回送の手順を示すフローチャートである。
図17】出発するステーションと返却するステーションとが異なる場合における回送の手順を示す概念図である。
図18】出発するステーションと返却するステーションとが異なる場合におけるシェアカーの返却手順等を示すフローチャートである。
図19】シェアカーの返却から回送までを示すフローチャートである。
図20】返却ステーションにおけるカーシェアリング管理サーバ、会員の携帯端末などの情報処理を示す概念図である。
図21】返却される車両を多機能カーナビゲーション装置で誘導する様子を示す概念図である。
図22】路上駐車スペースに用意された複数台のシェアカーが連続して出発する場合を示す概念図である。
図23】予約した車両のある路上駐車スペースの最寄り駅へ会員Aが到着し、利用を開始する際の動作およびカーシェアリング管理サーバのバリエーションを示す概念図である。
図24図6に示した本願発明の概要におけるバリエーションを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施形態について、図面(図3から図24)を参照して説明する。必要に応じて、図1および図2も参照する。
本発明は、実施形態に限定されるものではなく、以下の説明は本発明を解釈するための実施形態である。なお、図4以降において、実線の矢印は有線通信を、二点破線の矢印は無線通信をそれぞれ意味する。
【0051】
図3
図3は、本発明を実施する場合に、特に活用される路上駐車スペースを示す概略平面図である。ここで示す路上駐車スペースは、複数台の車両を縦列に駐車可能である。この路上駐車スペースをカーシェアステーションとし、利用頻度の高いクラス(利用料金がリーズナブルなノーマルタイプなど)のシェアカーを準備しておく。そして、利用状況に応じて最寄りの営業所(車両プール地)から車両を適宜補充したり、回収したりして活用する。
【0052】
図4
図4は、シェアカーを会員ユーザが車両を使いたいと感じてすぐに予約し、すぐに使い始めるといった使い方を想定した予約手順を示す。
会員ユーザに係る端末は、図では携帯端末(スマートフォン)を示しているが、予約段階では携帯端末でなくても良い。ただし、本願発明は、予約手続きをしてから予約遂行までの時間が短い場合にも対応できるのが特徴である。よって、会員ユーザは、外出先でカーシェアリング利用を予約してそのまま使用する場面が多いと想定されるので、携帯端末であることが多い。
【0053】
予め会員登録をしている会員ユーザは、会員登録に伴って与えられた会員IDと、予約日時、出発場所(ステーション)、希望する車種クラスなどを含む予約データを、自らに係る会員端末からカーシェアリング管理サーバへ送信する。
送信された予約データは、カーシェアリング管理サーバの予約データ受信手段が受信する。そして、予約データに含まれる会員IDおよびパスワード等によって会員登録の有無や未払い金が無いか等を会員データベースに蓄積されたデータを用いて、予約可否判断手段がチェックする。
【0054】
予約データにおける予約日時や出発場所などの希望について、予約可能か否かについては、カーシェア管理データベースを用いて、予約可否判断手段がチェックする。
予約が可能であると、予約可否判断手段が判断した場合には、予約承認の旨を、予約承認送信手段が会員端末へ送信する。
【0055】
その後、会員ユーザが予約車両のあるカーシェアステーションに出向き、利用を開始使用とする車両を特定するデータ(後述)などを取得して、利用開始データを準備する。そして、その利用開始データをカーシェアリング管理サーバへ送信する。
【0056】
一般のカーシェアリングであれば、ある予約に対しては、その予約IDとシェアカーを一対一で特定し、そのシェアカーに対して予約ID、予約に係る会員IDなどを予め送信してしまう。そうすることで、会員ユーザとしては、予約に係る車両が特定されているので、カーシェアステーションに出向いたら、事前に取得した予約承認データの中にある車両を会員IDで解錠して利用を開始すれば良い。カーシェアリング管理サーバにおいては、シェアカーの車両位置データを車両IDとともに取得すれば、車両の管理が可能である。
【0057】
一方の本願においては、会員ユーザが利用可能なシェアカーを一つのカーシェアステーションに対して複数台用意してあるが、予約内容データを事前にシェアカー車載機へ送信していない。柔軟な運用を可能とするためである。
そのため、会員ユーザが利用することを決めたシェアカーを特定するデータを取得しないと、そのシェアカーへ予約内容データなどを送信することができない。よって、会員ユーザによって利用する車両を特定するデータをカーシェアリング管理サーバへ送信してもらい、そのシェアカーへ予約内容データなどを送信することとしている。
【0058】
この車両を特定するデータの受信に伴って、カーシェアリング管理サーバは、予約内容データを当該シェアカーの車載機へ送信し、予約内容データと紐付けられる予約IDを会員ユーザの携帯端末へ送信する。また、携帯端末を用いてシェアカーのロックや解除をするシステムの場合には、ロック解除キーとなる電子データも送信する。
【0059】
予約データ送信手段は、予約データに係るステーションへのシェアカー補給を担当する営業所に係る営業所端末へも、予約内容データを送信する。その予約内容データは、営業所端末の予約データ受信手段が受信する。営業所端末が受信する予約データには、予約に係る会員ID、予約ID、予約日時、出発場所などのデータが含まれる。そして、それらのデータは、シェアカー管理データベースに蓄積される。
【0060】
図5
図5は、会員ユーザがカーシェアリングを予約してから利用を開始し、営業所の担当者がシェアカーを補充回送するまでをフローチャートで示している。
【0061】
会員ユーザは、予約日時、出発ステーション、希望する車両のクラスなどを指定し、カーシェアリングを予約する(S0)。そして、その予約に係る出発ステーションへ会員ユーザが出向く(S1)。そのカーシェアステーションにカーシェアリング用のシェアカーが複数停められている場合、利用したい車両を選定し、解錠を試みる(S2)。「選定」とは、車両特定データをカーシェアリング管理サーバへ送信することであるが、これについては図6等を用いて後述する。
【0062】
カーシェアリング管理サーバにおいて、会員ユーザの選定した車両が利用できる条件を満たしているか否かを検証する(S3)。満たしていない場合には、その車両の解錠ができないので、会員ユーザは別の車両に対する選定を実施する(S2)。
【0063】
条件を満たしている場合、カーシェアリング管理サーバがそのシェアカーの車載機に対して、会員ユーザの会員IDとの照合によって解錠できるように,必要なデータを送信する(図6)。それによって、会員ユーザはそのシェアカーのドアを解錠することができ、そのシェアカーに乗車し、出発することができる(S4)。
【0064】
このカーシェアステーションの管理を担当する営業所に係る営業所端末には、カーシェアリング管理サーバから前記のシェアカーが出発した旨のデータが届く。よって、営業所のスタッフは会員が出発したことを営業所端末にて感知することができる。営業所は、必要に応じて営業所にプールしてある車両を、そのカーシェアステーションへ回送(ストック)する(S5)。
【0065】
回送担当者が回送車両をカーシェアステーションへ運転して運ぶ(S6)。そして、既に停められているストック車両と回送してきた車両との位置を確認する(S7)。駐車状態が適正であるか否かを確認し、適正ではない場合には車両の位置を調整する(S8)。適正であれば、回送担当者は営業所へ戻る(S9)。場合によっては、回収すべき車両を回収して営業所に戻ることもある。
【0066】
図6
図6は、会員ユーザの情報端末、カーシェアリング管理サーバ、シェアカー車載機、および営業所端末における情報処理手順を示している。
【0067】
カーシェアリング管理サーバには、会員登録をした会員ユーザに関する氏名、サービス利用料金の決済方法、利用履歴などの会員データを格納する会員データベースと、カーシェアリングサービス全体の管理データを格納するカーシェア管理データベース(図中では「シェアカー管理DB」と表記)とを備えている。また、カーシェア管理データベースの中には、予約内容やその予約内容に紐付けた予約IDなどを格納する予約データベースが備えられている。図中では、カーシェア管理データベースとは別のデータベースとして図示している。
【0068】
営業所端末は、カーシェアリング管理サーバにおける予約データベースの中で、担当するカーシェアステーションに関する予約データを格納する予約データベースと、担当するカーシェアステーションにて用いられるシェアカーの管理データを格納するシェアカー管理データベースとを備えている。
予約に係るシェアカーやカーシェアステーションを担当する営業所に係る営業所端末は、カーシェアリング管理サーバとのデータ送受信を実施する。すなわち、営業所端末は、会員の携帯端末から送信されるデータを、カーシェアリング管理サーバを介して受信する。
【0069】
会員の携帯端末は、カーシェアリング管理サーバとのデータ送受信を実施するが、ここでは、予約を遂行する際に、カーシェアステーションに停められていたシェアカーの中から,利用を開始使用とする車両を選ぶ点を取り上げて図示している。以下の手順は、図中に示した括弧書きの番号とともに説明する。
【0070】
利用しようとする車両を特定したら、カメラを起動させてその車両のナンバーを撮影し、車両特定データとして取得する(1)。そして、その車両特定データを利用開始データ送信手段からカーシェアリング管理サーバに送信するのである。この一連の動作は、専用のアプリケーションソフトウェアにしたがって実行することが一般的である。車両特定データの送信は、会員ID、予約内容データを示す予約ID、端末位置データとともに送信される(2)。
【0071】
利用しようとする車両の特定について別の例は、まず利用しようとする車両に近づき、その車両に搭載されたセンサ(図示せず)に対し、会員ユーザが自身の携帯端末をかざす。そして携帯端末を操作し、何らかの近接通信により選択した車両と通信する。具体的には、携帯端末に予めインストールされた専用アプリケーションソフトウェア(専用アプリ)によって所定の画面表示がなされ、会員ユーザがこの表示に応じてボタン押下などの操作をすることにより、携帯端末から車両に対して、車両特定データを要求する。
車両は、前記の要求に応じて車両特定データ、すなわち車両に搭載されている機器のID(シェアカーと、機器のIDとが1対1で対応付けられている場合)、あるいはシェアカーに搭載されている機器に格納されている車両IDを携帯端末に与える。この操作および通信により、車両特定データが携帯端末により取得される(1)。このとき、携帯端末と車両との間は近接通信であるので、他の車両に対して影響を及ぼさない(他の車両からIDを取得してしまうような事態は起きない)。
そして、その車両特定データを利用開始データ送信手段からカーシェアリング管理サーバに送信するのである。この一連の動作は、専用のアプリケーションソフトウェアにしたがって実行することが一般的である。車両特定データの送信は、会員ID、予約内容データを示す予約ID、端末位置データとともに送信される(2)。この車両特定データは、車両特定データを要求された車両自体がカーシェアリング管理サーバへ送信するようにしてもよい。
【0072】
会員ユーザに係る携帯端末で取得した車両特定データは、カーシェアリング管理サーバにおける利用開始データ受信手段が受信する(2)。カメラで撮影された画像データを画像データとして送信する(カーシェアリング管理サーバ側でテキスト変換する)場合の他、携帯端末内でテキスト変換をしてから送信することとしても良い。
カーシェアステーションに停められているシェアカーの車載機からは、車両IDと車両位置データを車両位置データ受信手段が受信している(3)。
【0073】
利用開始データや車両位置データを、会員データベース、予約データベース、カーシェア管理データベースなどのデータと照合し(4,5)、車両特定データ(車両ID)に係るシェアカーを会員ユーザが利用できるか否か、セットアップ判断手段が判断する。利用できる車両であると判断できた場合には、予約データ送信手段が当該シェアカーの車載機に対して予約内容データと解錠データを送信する(6)。
【0074】
会員ユーザによるシェアカーの解錠を携帯端末から実施する場合には、まず会員ユーザに係る携帯端末が解錠データをカーシェアリング管理サーバの予約データ送信手段から受信する(6’)。そして、シェアカー車載機にて受信した解錠データと、会員ユーザに係る携帯端末からの解錠データと照合し、シェアカーを解錠する(7,8)。カーシェアリング管理サーバの予約データ送信手段が、そのシェアカーの解錠データを送信する場合には、会員ユーザによる解錠操作がなくても解錠される(図7では、その事例を説明している)。
会員ユーザは、解錠されたシェアカーに乗車し、運転してカーシェアステーションから出ていく。この後の車両位置データは、カーシェアリング管理サーバにて定期的に受信する(9)。
なお、営業所端末に対しては、車両位置データは、会員ユーザの利用前も利用開始後も、定期的に受信している(5,10)。
【0075】
営業所端末では、担当するカーシェアステーションにおけるシェアカーが、そのカーシェアステーションに停車したままなのか、利用されている最中なのか、などを車両位置データ受信手段が車両IDとともに車両位置データを受信している。よって、必要に応じて、回送担当者の端末へ回送(届け回送および回収回送がある)の必要性について連絡する。
図中では、届け回送が必要となった(路上駐車スペースに空きが生じた)として、車両Nを回送する旨を図示している。
【0076】
図7
図7では、図6に示した利用車両特定手段を中心とした専用のアプリケーションソフトウェアが予めインストールされた会員ユーザの携帯端末の画面推移を示している。
【0077】
会員ユーザが、予約したカーシェアステーション(出発ステーション)に出向き、携帯端末において専用アプリケーションソフトウェアを起動させる(a)。すると、携帯端末の画面の上部に予約情報が表示される。
そして、画面の下側にある「利用するクルマを選ぶ」というボタンをタップする。
【0078】
ボタンをタップすると、携帯端末のカメラが起動するので、会員ユーザは、そのカメラ機能によって、利用するクルマの車両ナンバーを撮影する(b)。撮影すると、画面の上側に車両ナンバーが表示される。そして、その車両で良いかどうかの確認ボタンが画面の下に表示される(c)。
【0079】
(c)に示した確認ボタンを会員ユーザがタップすると、車両特定データがカーシェアリング管理サーバに送信される。そして、図6に示したセットアップ判断手段による判断がなされ、予約データの一部として解錠データがシェアカー車載機に送信される。その結果、そのシェアカーのドアロックが解除される。その旨をカーシェアリング管理サーバから受信した携帯端末では、「車両のロックが解除されました。乗車してエンジンを掛け、出発して下さい」と表示される(d)。
【0080】
図8
図8は、予約した車両のある路上駐車スペースの最寄り駅へ到着した会員Aがなすべきことと、その後の情報処理手順を示している。
会員Aは、会員IDを用いて予約データ(希望する条件による検索データ)を送信し(1)、カーシェアリング管理サーバからはその予約が承認された旨を受信しているとする(2)。予約の確定などについては省略する。
【0081】
会員Aが予約したのは、「トリガースポット」たる最寄り駅Rとなる路上駐車スペースであり、三台のシェアカーを縦列駐車することができる。最前に駐車されているのが、会員Aの指定したクラスに該当する車両Kであるとする。会員Aの携帯端末DAには、「R駅に到着」というボタンが表示されるように、カーシェアリング管理サーバから予め予約IDとともにデータが送り込まれている。携帯電話のGPS機能にてR駅に到着すると、「R駅に到着」というボタンが会員Aの携帯端末DAに表示される。
【0082】
「R駅に到着」というボタンを会員Aがタップすると、携帯端末DAは、会員IDと最寄り駅Rへの到着というデータをカーシェアリング管理サーバに送信する。そして、カーシェアリング管理サーバがそのデータを受信したら、(図示は省略しているが)最寄り駅がRとなる路上駐車スペースの管理を担当する営業所Qの営業所端末へ送信される。
【0083】
駐車スペースに3台の車両K,L,Mが停まっており、これらの車両は全て同じクラスに属するものとして説明する。したがって、これらの車両に相当するクラスにて予約を実行し、駐車スペースに到来した会員Aは、クラスという観点では車両K,L,Mの何れを利用しても同じである。よって会員Aは、これらの車両のうち任意の一台を選んで利用することができる。換言すれば、任意の一台を選ばなければ(車両特定データをカーシェアリング管理サーバへ送信しなければ)、利用を開始できない。車両の運転の都合からは、先頭に停まっている車両Kを選ぶことが最も簡単なので、会員Aは車両Kを選択することとして以下を説明する。
【0084】
ここで会員Aは、携帯端末DAを用いて、図7に示したような手順にて車両特定データをカーシェアリング管理サーバへ送信する(3)。また、車両特定データにて特定された車両Kの車載機からは、車両位置データおよび車両IDを受信する(4)。そして、図6に示したセットアップ判断手段による判断がなされ、車両Kは解錠される(5)。
【0085】
会員Aが車両Kの利用を開始すると、車両Kはこの路上駐車スペースからは離れていく。そして、車両Kの車両位置データは、定期的にカーシェアリング管理サーバが受信するので、車両Kの利用が開始された旨は、営業所端末へも車両ID、会員ID、予約IDとともにカーシェアリング管理サーバが送信する(6)。すなわち、車室が一つ空くことになる。車室が空いているのはスペースが無駄であり、このような空き車室には早急に次の車両を配置することが望ましい。
【0086】
営業所Qでは、事前にカーシェアリング管理サーバから受信している予約データベースを参照し、車両K,L,Mに続く予約IDに係る車両Nを路上駐車スペースまで回送するように、回送担当者端末へ指示を出す。前述のように、車室が空いているのはスペース的に無駄なので、早急に回送を終了することが望ましい。このように、できるだけ短い時間で届け回送を終了できる位置にトリガースポットを設定する必要がある。
【0087】
回送担当者は、営業所Qに停めてあった車両Nに自転車を搭載し、路上駐車スペースまで運転する。自転車を搭載するのは、回送後に営業所へ戻る際に使うためであり、路上駐車スペースに車両Nを停車させたら自転車を下ろして使うこととなる。
【0088】
なお、営業所Qは、図示した路上駐車スペース以外にも、複数のカーシェアステーションに対する車両の供給(届け回送)や引き取り(回収回送)を担当していることが普通である。単純化のために路上駐車スペースから利用開始される車両が一台であるとして説明しているが、営業所Qにおける実際のオペレーションは、この文書中で説明しているよりも複雑となる。
【0089】
路上駐車スペースに複数のシェアカーを停めておき、且つ営業所からの届け回送や回収回送を円滑に行える前述してきたシステムを前提とすることで、会員ユーザは、カーシェアリングの予約を入れるタイミングと希望する利用開始のタイミングが近くても、利用することができる機会を増やすことが可能となる。
【0090】
図9
図9は、会員Aが予約した車両のある路上駐車スペースへ到着し、利用を開始する際の動作を示している。既に説明している内容と重なる部分もあるが、車両特定データの取得や、会員IDカードによる車両の解錠などについて、補足している。
【0091】
最寄り駅Rから徒歩で路上駐車スペースに到着した会員Aは、路上駐車スペースに停められたシェアカーである車両K,L,Mのいずれか一台を選ぶ。車両Kを選んだら、車両Kの車両ナンバーを車両特定データとして取得(撮影)し、カーシェアリング管理サーバへ送信する(1)。この際、会員IDも同時に送信される。
【0092】
カーシェアリング管理サーバでは、セットアップ判断手段にて各種のデータ照合がなされる。携帯端末DAにおいては、予約IDとともに解錠データである電子キーを受信し(2)、それを用いて車両Kを解錠し、カーシェアリングの利用を開始する。解錠された旨は、車両IDとともにカーシェアリング管理サーバに送信される(3)。
【0093】
一般のカーシェアリングシステムでは、会員ユーザによる予約が確定したら、その予約に対応したシェアカーも特定され、予約遂行前までに当該シェアカーへ当該予約内容データが送信されている。すなわち、予約遂行前には、予約IDや会員IDと車両IDとは紐付けられていることとなる。
一方、本実施形態に示すカーシェアリングシステムにおいては、会員Aが車両特定データを送信し、その車両特定データに基づいて、その予約とシェアカーとの関係が確定することとなる。
【0094】
カーシェアリング管理サーバからは、『会員Aさんは、車両Kの利用を開始しました。路上駐車スペースの車両は、LとMです。』といった出力がなされる。また、図示は省略するが、路上駐車スペースからのシェアカー利用を会員Aの次に予約していた会員Bに係るタイマーデータが、営業所Qの営業所端末へ送信される。営業所端末は、たとえば、『会員Bさんの使用開始予定時刻まであと15分です。路上駐車スペースに、Bさんが予約したクラスの車両はありますか?』といった音声出力、画面表示を実施し、営業所Qにいる職員に報知する。
【0095】
前記のタイマーデータは、カーシェアリング管理サーバがタイムリーに送信する必要はなく、予約IDとともに送信しておくこととしても良い。営業所端末は、予め受信していたタイマーデータの時刻になったことを内蔵している時計が検知したら、音声出力、画面表示を実施するのである。
【0096】
図10
図10は、会員Aが路上駐車スペースから車両を出発させ、会員Bが最寄り駅Rへ到着した場合の情報処理手順を示している。
【0097】
会員Aが車両Kを路上駐車スペースから出発させると、車両Kの車載機器が車両位置データを定期的にカーシェアリング管理サーバに送信する。車両位置データが路上駐車スペースと不一致となったことで、カーシェアリング管理サーバは、車両Kが利用され、どこへ向かっているか、などの情報を得ることとなる。そして、車両Kが出発した旨は、営業所Qの営業所端末へ送信する。営業所Qにおいては、車両Kが出発し、路上駐車スペースがひとつ空いたこと旨を知ることとなる。
【0098】
一方、会員Bが最寄り駅Rに到達したとすると、会員Bに係る携帯端末D-Bから端末位置データをカーシェアリング管理サーバに送信する。カーシェアリング管理サーバは、携帯端末D-Bから端末位置データ、つまり会員Bが最寄り駅Rに到着した旨を営業所端末へ送信する。営業所Qにおいては、会員Bが最寄り駅Rに到着した旨を知ることとなる。
【0099】
営業所Qにおいては、会員Bに係る予約IDを確認し、会員Bが予約したクラスの車両が路上駐車スペースへ既に駐車している旨を確認する。本実施形態においては、車両K,L,Mが停まっていた状態から会員Aが車両Kを選んで出発したので、路上駐車スペースには車両L,Mが停まっていることになる。会員Bも、路上駐車スペースに停められている車両L,Mに相当するクラスを予約しているのであれば、会員Bが予約したクラスの車両が路上駐車スペースへ既に駐車しているということになる。
【0100】
図11
図11は、車両Kが利用開始されたことで、車両Nを路上駐車スペースに補充する場合を示している。上述したように、路上駐車スペースには車両L,Mが停まっている。このような状況で車両Nを路上駐車スペースに補充する意義は、会員Bが車両L,Mに相当するクラスとは異なるクラスの車両を予約していた場合である。あるいは路上駐車スペースに停まっている車両が、会員Bによって予約されたクラスの車両であるとしても、車両Kが出発したので路上駐車スペースに空きが生じ、この空きを埋めようとする場合である。
【0101】
営業所Qの回送担当者は、予約に係る車両Nに自転車を搭載して、路上駐車スペースへ運転する。そして、路上駐車スペースに、その車両Nを駐車させる。自転車を搭載するのは、営業所Qへ戻る時間を節約するためである。
【0102】
路上駐車スペースが、縦列駐車をする余裕のあるサイズである場合、車両Nは、車両Kが発車したことで空いた車室(車両Lの前方)に駐車させる。
路上駐車スペースが、縦列駐車をする余裕はないサイズである場合、車両Kが発車したことで空いた車室に車両Lを移動させ、車両Lが駐車していた車室へ車両Mを移動させ、車両Mが駐車していた車室へ車両Nを駐車させることとなる。
【0103】
図12
図12は、会員Bが予約した車両Lのある路上駐車スペースへ到着し、利用を開始する際の動作を示す。
【0104】
会員Bが路上駐車スペースに着いた際には、路上駐車スペースには車両L,Mに加え、回送されて補充された車両Nが駐車している。会員Bも会員Aと同様、停まっている車両L,M,Nのうち自らが予約したクラスに相当するいずれかを選んで解錠し、出発する。
【0105】
最寄り駅Rから徒歩で路上駐車スペースに到着した会員Bは、路上駐車スペースに停められたシェアカーである車両Lに対して、会員Aと同様の手順にて解錠し、カーシェアリングの利用を開始する。
【0106】
会員Bが到着する前に、車両Nを運転して路上駐車スペースへ到着し、車両L,Mの駐車位置を繰り上げる作業を終えていた回送担当者は、車両Nに搭載してきた自転車を下ろし、営業所Qに戻る。
【0107】
以上説明したように、会員は予約時点でシェアカーのクラスを指定し、路上駐車スペースにも該当のクラスの車両を配置しておくが、予約の時点では、会員IDとシェアカーの車両IDとは関連付けない。したがって、路上駐車スペースに来た会員は、停められているシェアカーのうち、自らが予約したクラスに該当する車両の何れかを選んで利用することができる。
【0108】
カーシェアリング事業者としては、ここに示す路上駐車スペースにおいては、会員が予約できるクラスを一種類に限定し、路上駐車スペースには全て同じクラスの車両のみを停める、というような運用に限定してもよい。その場合には、この路上駐車スペースにおける車両管理を担当する営業所Qのオペレーションが単純化できる。たとえば、同じクラスのシェアカーを複数、路上駐車スペースに停めておくことにより、一の会員がシェアカーを選んで出発したとしても、次の会員が予約しているクラスの車両が路上駐車スペースに存在していれば、回送の必要性が発生しなくなる。
【0109】
もちろん、会員が予約できるクラスを複数設定し、路上駐車スペースには該当する複数のクラスの車両のみを停めるようにしてもよい。
【0110】
図13
図13は、会員ユーザの情報端末において、予約遂行の直前における携帯端末での操作手順を示している。たとえば、シェアカーを利用したいカーシェアステーションの近くで予約し、すぐに利用する場合である。
【0111】
希望する予約条件に合致した場合に予約を確定させ、予約確定データを受信する(S11)。この際、予約に係るカーシェアステーションに関するトリガースポットの位置データ(図8等であれば、最寄り駅R)も受信する。
【0112】
予約遂行の時刻が近づいたら、会員ユーザがトリガースポットに到着したか否か、携帯端末の位置データとトリガースポットの位置データとを比較することで検証する(S12)。もし、適切なトリガースポットが存在しない場合などは、予約に係る利用開始時刻までの所定時間前となったか否か、を携帯端末の内蔵時計にて検証することとしても良い。
【0113】
トリガースポットへ到着したら、専用アプリケーションソフトウェアにおける到着ボタン(図8参照)が起動する(S13)。そして、その携帯端末の位置データをカーシェアリング管理サーバが取得する(S14)。到着結果をカーシェアリング管理サーバから受信する(S15)。ここにおいて、カーシェアリング管理サーバは、予約に係るシェアカーの一台がもうすぐ利用開始される旨を把握できる。その後、フローチャートには示していないが、この予約に係るシェアカー管理を担当する営業所端末へ送信し、情報共有する。
【0114】
以下、会員ユーザは、図9に示すような動作をしてシェアカーの利用を開始することとなる。予約をしてから予約遂行までの時間が短い、という運用に向いている本実施形態は、会員ユーザにとっては思い立ったらすぐに利用できる、というサービスが提供されたこととなり、利便性が向上する。
【0115】
図14
図14は、車両(K)を返却する際のカーシェアリング管理サーバ、シェアカー車載器、および営業所端末における情報処理手順を示している。
【0116】
会員Aが利用していたシェアカー(車両K)が、返却地である路上駐車スペースに戻ってきて、路上駐車スペースの先頭部分へ停車させたとする。車両の位置データは、定期的にカーシェアリング管理サーバに対して送信されている。また、シェアカーの車載機器はエンジンのデータをも定期的にカーシェアリング管理サーバに対して送信しているので、エンジンが停止した旨のデータもカーシェアリング管理サーバにおいては取得している。
【0117】
カーシェアリング管理サーバは、シェアカーから取得したデータについて、返却地である路上駐車スペースの管理を実施している営業所Qの営業所端末DQに対して、管理上必要なデータを送信する。
【0118】
図15
図15は、路上駐車スペースに対してシェアカーの回収回送が必要となる場面を示している。
【0119】
営業所Qが管理を担当している路上駐車スペースには、車両Kが停められている。一方、車両Lを利用した会員Bが返却地である路上駐車スペースに向かっているとする。車両Lの位置データは、カーシェアリング管理サーバにおいて定期的に取得されている。したがって、車両Lが返却されようとしていることが、カーシェアリング管理サーバにおいて予想されることとなる。
【0120】
一方、営業所端末DQにおいては、路上駐車スペースに停められている車両K,M,Nに相当するクラスの車両は、車両Lが返却される時刻まで、利用の予約が入っていないということを管理上、把握している。となると、会員Bが車両Lを返却する車室が存在しないこととなる。
【0121】
こうした場合、営業所Qにいる回収回送の担当者の携帯端末に、車両K,M,Nのいずれかを回収回送してくるように、命令データを送信する。回収回送の担当者は、車両K,M,Nのいずれかに積載可能な自転車にて、車両K,M,Nのある路上駐車スペースに向かうのである。
【0122】
図16
図16では、車両の返却予定と回収回送の関係をフローチャートにて示している
【0123】
カーシェアリング管理サーバは、貸し出されたシェアカーの位置データ(車両位置データ)を取得する(S21)。そして、その車両位置データが返却地まで所定の距離内であるか否かを検証する(S22)。もし、所定距離内ではない場合には、車両位置データの取得を繰り返す。
【0124】
所定距離内となった場合には、車両が返却に向かっていると判断できる。そのため、次のステップとして、返却されることが予定されているカーシェアステーション(または路上駐車スペース)に、その車両が返却する車室があるのか否か、を検証する(S23)。返却できる車室がある場合には、返却に向かっている車両に関して取るべきアクションはないので、終了する。
【0125】
その車両が返却する車室がない場合、回送担当者がそのカーシェアステーションに出向いて、予約開始時刻まで所定時間が空いている車両を回収回送する(S24)。
【0126】
図17
図17は、出発するステーションと返却するステーションとが異なる場合における回送の手順を示している。すなわち、出発専用ステーションが駅Rの西口から徒歩10分の場所に、返却専用ステーションが駅Rの東口から徒歩12分の場所に、それぞれ2台ずつの路上駐車スペースにて設けられているとしている。
【0127】
会員ユーザがシェアカーを返却専用ステーションへ停車させ、車両を降りて施錠すると、シェアカーの車載機から施錠完了データが送信される(1)。車両位置データやエンジン停止データなども送信されるが、それらのデータによって、カーシェアリング管理サーバは返却が終了した旨とする。そして、当該シェアカーおよび前記の返却ステーションを管理している営業所Qに係る営業所端末DQへ、当該シェアカーが返却された旨を送信する(2)。
【0128】
さて、この返却がなされた時点で、出発専用ステーションには、貸し出せる車両が1台しかないと営業所端末DQにて管理データが出力されていたとする。この場合、回送担当者は、返却専用ステーションへ回収のために移動する(3)。そして、返却された車両(図示はしていないが、既に返却されている別の車両がある場合にはその車両)を運転し、出発専用ステーションへ届け回送を実施する(4)。この回送が実施されれば、返却専用ステーションにある2つの車室は両方とも空室となる。
【0129】
なお、返却専用ステーションへ移動する回送担当者が自転車を使った場合、届け回送する車両へその自転車を搭載して回送を実施し、回送が済んだら、その自転車を下ろして営業所Qへ戻ることとなる。
【0130】
図18
図18もまた、出発するステーションと返却するステーションとが異なる場合における回送の手順を示している。図17との相違点は、出発専用ステーションの車室に空きがないため、営業所Qへの回収回送となる点である(4)。図17において説明した(1)~(3)は同じであるので、説明を省略する。
【0131】
こちらの場合、返却専用ステーションへ移動する回送担当者が自転車を使った場合、回収回送する車両へその自転車を搭載して、営業所Qへ自転車とともに戻ることとなる。
【0132】
図17および図18で示したような出発専用ステーションと返却専用ステーションをセットできた場合、会員ユーザに対しては、予約の段階で出発専用ステーションと返却専用ステーションとが異なる旨を示し、予約遂行時にも「返却ステーションが出発ステーションと異なる旨」を充分に告知する。具体的には、会員ユーザに係る携帯端末へその旨を告知送信したり、シェアカーに搭載された多機能カーナビゲーション装置によって、返却地をナビゲートしたりするのである。
【0133】
図19
図19は、出発するステーションと返却するステーションとが異なる場合におけるシェアカーの返却手順等をフローチャートで示している。
【0134】
まず、会員ユーザが利用したシェアカーを返却専用ステーションへ駐車させる(S30)。そして、シェアカーを降車し、ドアを施錠する。この施錠は、アプリケーションプログラムもしくは会員に配布されたICカードで実施する(S31)。
【0135】
シェアカーの車載機は、シェアカーの位置データと施錠データとを、このステーションを管理している営業所に係る営業所端末へ(カーシェアリング管理サーバを介して)送信する(S32)。
【0136】
一方、専用システムにて返却専用ステーションの車室状態(各車室の満空)を確認する(S33)。前述の「専用システム」とは、(カーシェアリング管理サーバを介さずに)営業所端末において、管理対象となっているシェアカーの位置データをタイムリーに把握することができるシステムである。
【0137】
前述の「専用システム」を用いて、出発専用ステーションに車室の空きがあるか否かを検証する(S34)。空きが無い場合には、回収担当者が返却専用ステーションへ出向いて回収回送をするように、前記の回収担当者に係る携帯端末へ命令を出力する(S35)。
【0138】
空きがある場合には、回送担当者に係る携帯端末に対しては、出発専用ステーションへ車両を回送するように命令を出力する(S36)。
【0139】
出発専用ステーションへ届け回送に出向いた回送担当者は、既に出発専用ステーションに停められているストック車両との位置を調整する(S37)。そして、駐車場位置が適正でなければ修正する(S38)。駐車位置が適正であれば、営業所へ戻る(S39)。
【0140】
図20
図20は、返却専用ステーションでの車両返却がなされる際の、会員の携帯端末、カーシェアリング管理サーバ、および営業所端末の間でどのような情報処理がなされるかを示している。
【0141】
返却専用ステーションへシェアカーを運転してきた会員ユーザは、シェアカーを降車し、シェアカーを施錠する。施錠は、携帯端末による電子データを短距離通信させる方法や、会員IDカードを使う方法がある。携帯端末の端末位置データ送信手段にて、端末位置データ、会員IDをカーシェアリング管理サーバへ送信する。
【0142】
カーシェアリング管理サーバにおいては、端末位置データ受信手段にて前記のデータを受信する。一方、前記の会員が利用を終えたシェアカーに搭載されたシェアカー車載機からは、車両ID、施錠データを伴った車両位置データを車両位置データ受信手段が受信する。
【0143】
車両位置データおよび端末位置データを照合して一致しているか否かを、施錠判断手段が判断する。判断結果として、会員ユーザがシェアカーの利用を終了した旨を確認できる。その場合、施錠結果送信手段が、シェアカー車載機および会員に係る携帯端末に対して施錠完了データを送信する。それによって、会員ユーザは車両のロックが解除されたことを知る。そして、会員ユーザはそのシェアカーの利用終了を確認できる。
【0144】
車両IDを伴った車両位置データは、カーシェアリング管理サーバを解して定期的に送信されており、営業所端末にも送信される。したがって、シェアカーの利用終了の旨は、営業所においても把握できる
たとえば、次の予約データに基づく回送が必要な状態が発生したことを、シェアカー管理データベースのデータなどから把握できた場合には、回送データ送信手段が、回送担当者端末へ、次の回送が必要な車両IDを送信する。
【0145】
図21
図21は、返却車両が使う車室へ多機能カーナビゲーションにて誘導する様子を示している。
【0146】
一車室多車両のサービス形態を運用していると、会員ユーザが利用を開始した車室とは異なる車室へ返却してもらう必要がある、という場面が出てくる。また、図17図18等で示したように、出発専用ステーションや返却専用ステーションを設定する場合もある。そうした場合に備えて、カーシェアリング管理サーバは、会員ユーザが利用している車両を、どの車室に返却すべきかについてのデータを該当するシェアカーの車載機器へ送信する。
【0147】
車載機器にて前記のデータを受信したら、そのシェアカーでは、搭載している多機能カーナビゲーションへ、前記のデータを出力させる。たとえば、「3番車室に返却して下さい」といったメッセージを画面に出力し、音声でも案内するのである。
【0148】
図22
図22は、路上駐車スペースにストックされていたシェアカーが連続して会員に借りられる状況を示している。
会員ユーザが利用しやすい路上駐車スペースにおいて、利用の多い時間帯では、こうした連続した利用シーンとなったとしても、会員ユーザが円滑に利用を開始できる。
【0149】
図23
図23は、予約段階では車両IDと会員IDとを対応づけないことによって、スピーディーな予約遂行を実現する方法として、図6図8に示したような会員ユーザに使う車両を特定させる方法とは異なる方法を示している。
【0150】
すなわち、予約内容データに該当する車両全てに予約ID、会員IDを送信しておき、会員がエンジンを掛けた車両以外の予約ID、会員IDをキャンセルする、という方法である。以下、詳細に説明する。
【0151】
会員ユーザが会員IDを用いて予約データを送信し(1)、予約の確認を受信する(2)までは同じである。続いて、カーシェアリング管理サーバは、予約が遂行可能な車両(図中では、車両K、Lの2台が該当するとする)の全てに会員IDと予約IDとを予め送信しておく(3)。
【0152】
会員Aが車両Kに対して解錠データを送信して解錠し(4)、エンジンを掛けたとする。このエンジンを掛けた旨のエンジンONデータは、車両Kの車載機からカーシェアリング管理サーバに送信される(5)。そのエンジンONデータを受信したカーシェアリング管理サーバは、エンジンの掛からなかった車両Lに送信していた予約IDをキャンセルする命令を発するのである(6)。
解錠された旨のデータをカーシェアリング管理サーバが受信し、車両Lに送信していた予約IDをキャンセルする命令を発することとしてもよい。
【0153】
この方法は、会員ユーザが車両特定データを取得して送信する、という手間が省けるので、ユーザの使い勝手は良い。
一方、この方法のデメリットは、複数の会員ユーザが連続して同じカーシェアステーションに到着した場合、同じ車両に対して複数の解錠データが送信されたり、予め送信していた予約IDのキャンセルが錯綜したりする虞がある点である。
【0154】
図24
図24は、図6に示した実施形態のバリエーションである。
図6に示した実施形態との相違点は、営業所端末とシェアカー車載機とのデータ送受信を、カーシェアリング管理サーバを介さずに実行するようにした点である。
【0155】
図6に示した実施形態では、カーシェアリング管理サーバにおいて、シェアカーに関するデータ、会員ユーザに関するデータ、予約に関するデータが一元化されていることが特徴であった。図24に示した実施形態では、営業所が管理を担当するシェアカーに関しては、シェアカー車載機との直接通信をしている、という点で管理が分散していることが特徴である。
【0156】
以上、図3から図24までを用いて、様々な実施形態について説明してきたが、本願発明は、これらの実施形態に限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明は、駐車場などの駐車スペースおよび貸し出し用車両を利用したカーシェアリング事業やレンタカー事業、駐車場の設備製造業、駐車場の管理業、駐車場管理用データの通信機器の製造業、データ通信におけるデータ管理業、駐車場の制御ユニットや駐車場管理サーバにおけるアプリケーションソフトウェアの開発業、などにおいて利用可能性を有する。
特にカーシェアリング事業に適用する場合については、道路外の駐車場の敷地内でシェアカーの受け渡しをする形態、また道路上で車両の待避スペースを作り、そのスペースでシェアカーの受け渡しをする形態のいずれについても本発明を適用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24