(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168370
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電線ラッピングマシン及びこれを用いた電線のラッピング方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20241128BHJP
B65H 57/14 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H02G1/02
B65H57/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084972
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000212739
【氏名又は名称】株式会社シーテック
(71)【出願人】
【識別番号】000139702
【氏名又は名称】株式会社安田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】田原 孝志
(72)【発明者】
【氏名】古山 慎也
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 玲朗
【テーマコード(参考)】
3F110
5G352
【Fターム(参考)】
3F110BA02
3F110DA09
3F110DB11
5G352AA14
5G352AH01
5G352AH09
(57)【要約】
【課題】撤去時の前に電線の外周を粘着テープで包み込むラッピングにおいて粘着テープの突出物を押さえ込み、風によるギャロッピングや横ブレを押さえることができ、容易且つ安全に撤去作業ができる。
【解決手段】電線に粘着テープを巻き付けて電線を包むラッピングマシンにおいて、第1粘着テープ10を電線Bの上下方向から張り付ける複数組の上下ローラを設けた上下テープ貼り付け装置部1と、これに続き、前記電線Bが貫通する内筒20の外周に回転自在に設けた外筒21が当該電線ラッピングマシンAの前進にしたがって回転し、当該回転する外筒21から導出されるワイヤー44を電線Bにらせん状に巻き付け、かつ、当該外筒21から導出される第2粘着テープ34を電線Bにらせん状に巻き付けるラッシング本体部3と、当該ラッシング本体部3の後方に一体に設け、前記電線Bを挟持する1組の後部ローラ39,40から成る後部枠体部4から構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に粘着テープを巻き付けて電線を包むラッピングマシンにおいて、
第1粘着テープを電線の上下方向から張り付ける複数組の上下ローラを設けた上下テープ貼り付け装置部と、
これに続き、前記電線が貫通する内筒の外周に回転自在に設けた外筒が当該電線ラッピングマシンの前進にしたがって回転し、当該回転する外筒から導出されるワイヤーを電線にらせん状に巻き付け、かつ、当該外筒から導出される第2粘着テープを電線にらせん状に巻き付けるラッシング本体部と、
当該ラッシング本体部の後方に一体に設け、前記電線を挟持する1組の後部ローラから成る後部枠体部から構成されていることを特徴とする、電線ラッピングマシン。
【請求項2】
前記上下テープ貼り付け装置部には前記複数組のローラを回転自在に支持する水平フレームと当該水平フレームに支持された垂直フレームの上部、下部に前記第1粘着テープを巻き付けた第1ボビンが夫々回転自在に支持され、
前記ラッシング本体部は前記内筒の端部が鍔状に突出してその一側面に第1傘歯車が設けられ、前記外筒の外周に立設した突出軸に回転自在に設けた第2傘歯車が前記第1傘歯車と歯合し、当該第2傘歯車と一体に回転するフリクションローラを前記突出軸に設け、さらに、当該突出軸にガイドアームの一端部を固定して設け、前記外筒に第2ボビンが設けられ、当該第2ボビンに巻きつけた前記ワイヤーの一端を前記フリクションローラに巻き付けその後前記ガイドアームの後端から導出させ、前記ガイドアームに前記第2粘着テープを巻き付けた第3ボビンが設けられたことを特徴とする、請求項1記載の電線ラッピングマシン。
【請求項3】
前記上下テープ貼り付け装置部とラッシング本体部の内筒端部との間に、前記電線をくぐらせた環状の頭部を設け、当該頭部からカウンターウエイトを吊り下げたことを特徴とする、請求項2に記載の電線ラッピングマシン。
【請求項4】
前記上下テープ貼り付け装置部の上下ローラを支持する水平フレーム、前頭部、後部支持枠部は電線が挿入自在な開閉機構を有しており、前記ラッシング本体部の内筒及び外筒は筒体の一側に一端から他端まで開口した開口部を有することを特徴とする、請求項2に記載の電線ラッピングマシン。
【請求項5】
前記ラッシング本体部の第2ボビン及び第3ボビンは相対向する位置に夫々2組設けられたことを特徴とする、請求項2に記載の電線ラッピングマシン。
【請求項6】
前記請求項2のラッピングマシンを電線に装着し、第1ボビンから繰り出した第1粘着テープの先端を電線の上下から貼り合わせ、また、第2ボビンから繰り出したワイヤーの端部及び第3ボビンから繰り出した第2粘着テープの端部を電線に固定し、ラッピングマシンを前進させることにより複数組の上下ローラが上下の第1粘着テープを電線に押し付け、この上から前記ラッシング本体部から繰り出されたワイヤーがらせん状に巻き付き、さらにその後方で第3ボビンから繰り出された第2粘着テープがらせん状に巻き付くことを特徴とする、電線ラッピング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送電線等の架空線の撤去作業時において当該架空線を粘着テープで包み込む電線ラッピングマシン及び当該ラッピングマシンを用いた電線のラッピング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送電線の撤去作業時において、防食電線(アスベスト含有を含む)及び塩害により腐食生成物(錆び・塩)を有する電線は、金車・吊り金車の通過時における振動や衝撃により、粉状又は液状となった飛散物が多量に発生し、その付近に飛散物が降り注ぐこととなり、環境への懸念、地域への対策が必要となっている。
【0003】
そこで、特許文献1に示すように、撤去する架空線の粉状・液状の飛散物をなくすため、事前に電線を粘着テープで包み込んでラッピングした状態で撤去する工法が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すものは、電線を上下又は左右から2枚の粘着テープで挟んで貼着するため、電線の両側に粘着テープの耳又はヒレが突出し、そのため風による電線のギャロッピング及び横ブレが生じやすく、撤去作業に支障をきたす欠点がある。
【0006】
そこで、この発明はこれらの問題点に着目して発明されたもので、撤去時の前に電線の外周を粘着テープで包み込み、当該テープの耳又はヒレをワイヤー及びテープを巻き付けて押さえ込むことにより風によるギャロッピングや横ブレを押さえ込むことができ、容易且つ安全に撤去作業ができる、電線ラッピングマシン及びこれを用いた電線ラッピング方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、電線に粘着テープを巻き付けて電線を包むラッピングマシンにおいて、第1粘着テープを電線の上下方向から張り付ける複数組の上下ローラを設けた上下テープ貼り付け装置部と、これに続き、前記電線が貫通する内筒の外周に回転自在に設けた外筒が当該電線ラッピングマシンの前進にしたがって回転し、当該回転する外筒から導出されるワイヤーを電線にらせん状に巻き付け、かつ、当該外筒から導出される第2粘着テープを電線にらせん状に巻き付けるラッシング本体部と、当該ラッシング本体部の後方に一体に設け、前記電線を挟持する1組の後部ローラから成る後部枠体部から構成されている、電線ラッピングマシンとした。
【0008】
また、請求項2の発明は、前記上下テープ貼り付け装置部には前記複数組の上下ローラを回転自在に支持する水平フレームと当該水平フレームに支持された垂直フレームの上部、下部に前記第1粘着テープを巻き付けた第1ボビンが夫々回転自在に支持され、前記ラッシング本体部は前記内筒の端部が鍔状に突出してその一側面に第1傘歯車が設けられ、前記外筒の外周に立設した突出軸に回転自在に設けた第2傘歯車が前記第1傘歯車と歯合し、当該第2傘歯車と一体に回転するフリクションローラを前記突出軸に設け、さらに、当該突出軸にガイドアームの基部を固定して設け、前記外筒に第2ボビンが設けられ、当該第2ボビンに巻きつけた前記ワイヤーの一端を前記フリクションローラに巻き付けその後前記ガイドアームの後端から導出させ、前記ガイドアームに前記第2粘着テープを巻き付けた第3ボビンが設けられた、請求項1記載の電線ラッピングマシンとした。
【0009】
また、請求項3の発明は、前記上下テープ貼り付け装置部とラッシング本体部の内筒端部との間に、前記電線をくぐらせた環状の前頭部を設け、当該前頭部からカウンターウエイトを吊り下げた、請求項2に記載の電線ラッピングマシンとした。
【0010】
また、請求項4の発明は、前記上下テープ貼り付け装置部の上下ローラを支持する水平フレーム、前頭部、後部支持枠部は電線が挿入自在な開閉機構を有しており、前記ラッシング本体部の内筒及び外筒は筒体の一側に一端から他端まで開口した開口部を有する、請求項2に記載の電線ラッピングマシンとした。
【0011】
また、請求項5の発明は、前記ラッシング本体部の第2ボビン及び第3ボビンは相対向する位置に夫々2組設けられた、請求項2に記載の電線ラッピングマシンとした。
【0012】
また、請求項6の発明は、前記請求項2の電線ラッピングマシンを電線に装着し、第1ボビンから繰り出した第1粘着テープの先端を電線の上下から貼り合わせ、また、第2ボビンから繰り出したワイヤーの端部及び第3ボビンから繰り出した第2粘着テープの端部を電線に固定し、電線ラッピングマシンを前進させることにより複数組の上下ローラが上下の第1粘着テープを電線に押し付け、この上から前記ラッシング本体部から繰り出されたワイヤーがらせん状に巻き付き、さらにその後方で第3ボビンから繰り出された第2粘着テープがらせん状に巻き付く、電線ラッピング方法とした。
【発明の効果】
【0013】
請求項1~6の発明によれば、送電線等の撤去時などに電線に粘着テープを容易にラッピングでき、送電線撤去時の錆や腐食による粉末や液状の飛散物が発生せず、環境への悪影響がない。しかも、従来の2つの粘着テープの張り合わせで電線を包むものは粘着テープの両側にヒレや耳ができるが、本発明ではこれらのヒレや耳を上からワイヤー及び粘着テープをらせん状に巻き付けて、押さえ込むため、表面が丸くなり、風による電線のギャロッピングや横ブレを押さえることが出来、電線の撤去作業が迅速かつ安全に行える。
【0014】
また、請求項3によれば、当該電線ラッピングマシンにカウンターウエイトを設けているため、マシンは常に適正な姿勢(垂直な状態)を維持でき、操作が容易となる。
【0015】
また、請求項4の発明によれば、前記上下テープ貼り付け装置部の上下ローラを支持する水平フレーム、前頭部、後部枠体部は電線が挿入自在な開閉機構を有しており、また、前記ラッシング本体部の内筒及び外筒は筒体の一側に一端から他端まで開口した開口部を有するため、当該マシンを電線に被冠する際、前記開閉機構や開口部により電線の横から挿入でき、作業を容易に行えることができる。
【0016】
また、請求項5の発明によれば、前記ラッシング本体部の第2ボビン及び第3ボビンは相対向する位置に夫々2組設けられているため、ワイヤーや第2粘着テープをらせん状に巻き付ける際、外筒の少ない回転でこれらの2組のワイヤーや第2粘着テープにより電線にこれらを密に巻き付けることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンの電線に取り付けた状態における正面図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンの上下テープ貼り付け装置部の正面図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンの上下テープ貼り付け装置部の平面図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンの上下テープ貼り付け装置部の側面図である。
【
図5】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンの前頭部正面図である。
【
図6】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンの前頭部側面図である。
【
図7】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンのラッシング本体部の正面図である。
【
図8】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンのラッシング本体部の平面図である。
【
図9】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンのラッシング本体部の一部断面正面である。
【
図10】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンのラッシング本体部の側面断面図である。
【
図11】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンのラシング本体部に取り付けるガイドアームの正面図である。
【
図12】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンのラシング本体部に取り付けるガイドアームの右側面端面図である。
【
図13】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンのラシング本体部に取り付けるガイドアームの左側面端面図である。
【
図14】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンのラシング本体部に取り付けるガイドアームに装着する第3ボビンの平面図である。
【
図15】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンのラシング本体部に取り付けるガイドアームに装着する第3ボビンの外面端面図である。
【
図16】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンの後部枠体部の正面図である。
【
図17】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンの後部枠体部の左側面図である。
【
図18】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンの後部枠体部の、
図16のX-X線断面図である。
【
図19】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンの上下テープ貼り付け装置部の第1上下ローラの側面図である。
【
図20】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンの上下テープ貼り付け装置部の第2上下ローラの側面図である。
【
図21】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンの上下テープ貼り付け装置部が通過した後の電線の状態を示す断面図である。
【
図22】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンの第2ボビンから引き出されたワイヤーの経路を示す説明正面図である。
【
図23】この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンによる粘着テープ及びワイヤーの巻き付け状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態例1)
この発明の実施の形態例1の電線ラッピングマシンAを
図1~
図23に基づいて説明する。なお、
図1は電線ラッピングマシンAを電線Bに装着した状態を示し、
図2~
図10及び
図16~
図18は各部材の上下逆の状態で示しており、電線Bには180度回転させて装着する。
【0019】
この実施の形態例1の電線ラッピングマシンAは、
図1に示すように、第1粘着テープを電線Bの上下方向から張り付ける複数組のローラを設けた上下テープ貼り付け装置部1と、これに続き、電線Bを貫通させる管状の前頭部2と,前記電線Bを貫通させる内筒の外周に回転自在に設けた外筒が当該電線ラッピングマシンAの前進にしたがって回転し、当該回転する外筒から導出されるワイヤーを電線Bにらせん状に巻き付け、かつ、当該外筒から導出される第2粘着テープを電線Bにらせん状に巻き付けるラシング本体部3と、当該ラッシング本体部の後方に一体に設け、前記電線Bを挟持する1組のローラから成る後部枠体部4から構成されている。
【0020】
前記上下テープ貼り付け装置部1は、
図2~
図4に示すように、電線Bを挟持する第1上下ローラ5及び第2上下ローラ6を支持する上下2本の水平フレーム7、8を第1上下ローラ5及び第2上下ローラ6の両側に設け、これらの両側の水平フレーム7、8の中央部で夫々垂直フレーム9、9aに接続されている。また、前記垂直フレーム9、9aのうち、
図2における後側の垂直フレーム9aは上下に延長され、上下端部に、大きい幅、例えば、100mm幅の前記第1粘着テープ10、10が夫々巻かれた第1ボビン11、11が回転自在に支持されている。また、前記垂直フレーム9、9aに前記前頭部2と接続される水平支持アーム12、12の先端部が固定されている。
【0021】
また、前記垂直フレーム9、9aの一側に切り欠き13、13が設けられ、前記水平フレーム8、8から外方に突出する各アイボルト14が前記各切り欠き13に係止されている。従って、当該各アイボルト14を緩めると、上部と下部から成る水平フレーム8及び当該水平フレームに軸支されたローラ5、6の下部側を上部側から切り離すことができ、これらの上部と下部のローラ5及び6の間に電線Bを入れて、電線Bを挟持させることができる。また、前記水平フレーム7、8の前端部には、牽引ロープ係止用のフック15が設けられている。
【0022】
また、前記前頭部2は、
図5及び
図6に示すうように、電線Bが通る環状枠体2aから成り、当該環状枠体2aの上部(
図5、6では下部)が切断され、当該開口部を塞ぐ開閉扉16が設けられ、当該開閉扉16の自由端につまみ17が設けられ、常時は開閉扉16は閉まっているが、当該つまみ17をバネに抗して引っ張った状態で開閉扉16を開けることができる。また、前記開閉扉16及び両側部の三方にガイドローラ18、18、18が設けられ、内部を通過する電線Bを保護している。
【0023】
前記前頭部2は前記上下テープ貼り付け装置部1、前記ラッシング本体部3及び後部枠体部4と一体に連結されており、前記前頭部2が当該電線ラッピングマシンA全体の電線Bからの脱落を阻止する役割を担っている。
【0024】
また、前記ラッシング本体部3は、
図7~
図10に示すように、内筒20及び内筒20の外周に回転自在に被冠した外筒21とから成る。これらの内筒20及び外筒21は円筒形状で、
図10に示すように、一側面に開口部20a、21aが設けられている。そして、このラッシング本体部3は内筒20の前端部で前記前頭部2と、内筒20の後端部で前記後部枠体部4と夫々一体に連結されている。
【0025】
また、外筒21に設けたノブ22の操作により内筒20上で外筒21の位置を固定したり、回転フリーにすることができる。また、外筒21の外周には取っ手23が設けられている。また、この取っ手23の両脇に、ワイヤーを巻き付ける第2ボビン24、24が相対向して設けられている。
【0026】
また、内筒20の後端部は鍔状に突出してその一側面に第1傘歯車25が設けられ、前記外筒21の外周に立設した突出軸26に回転自在に設けた第2傘歯車27が前記第1傘歯車25と歯合し、当該第2傘歯車27と一体に回転するフリクションローラ28を前記突出軸26に設け、さらに、当該突出軸26の先端にガイドアーム29の一端部の基部29aが固定されている。
【0027】
また、前記ガイドアーム29は、
図11~
図13に示すように、前記基部29aから下方に折れ曲がり、その端部に補助ローラ30を設け、前記基部29aの反対側はまっすぐ伸びてその端部でガイドローラ31を設けている。また、当該ガイドアーム29の前記基部29aの脇にボビン軸支持体32が設けられ、当該ボビン軸支持体32に、
図14及び
図15に示す第3ボビン33が装着される。当該第3ボビン33には、細幅、例えば50mm幅の第2粘着テープ34が装着される。
【0028】
また、前記ラッシング本体部3の内筒20の後端に前記後部枠体部4が固定されている。当該後部枠体部4には、
図16~
図18に示すように環状の基板35が設けられ、この基板35は上下片に分かれ、これらの上下片の一端でヒンジにより軸支され、他端で係止鉤36により係止自在となっている。従って、係止鉤36を開けると基板35の上下片は前記ヒンジを中心に回転して開く。この基板35の上下片に夫々軸受け37、38が設けられ、これらの軸受け37及び38に後部ローラ39、40が夫々回転自在に設けられ、これらの後部ローラ39、40で電線Bを挟持するものである。
【0029】
また、
図1に示すように、前記前頭部2にカウンターウエイト41を吊り下げる。このカウンターウエイト41により当該電線ラッピングマシンAが電線Bを走行中であっても常に正常位置を安定して保持させることができる。
【0030】
また、前記上下テープ貼り付け装置部1の、電線Bを挟持する第1上下ローラ5、第2上下ローラ6に第1粘着テープ10が入ってきた際の構成を
図19及び
図20に示す。
【0031】
図19に示すように、第1上下ローラ5はローラの中央部に、電線Bの湾曲に対応した湾曲溝42を有するもので、第1粘着テープ10が入ってくると当該湾曲溝42と電線Bとで第1粘着テープ10の中央部を挟持し、第1粘着テープ10の中央部が電線Bの上部に沿って張り付く。そして、
図20に示すように、第2上下ローラ6はV溝43が切られているため、当該箇所に電線ラッピングマシンAがくると第2上下ローラ6に押されて前記第1粘着テープ10の中央部は電線Bの湾曲に沿ってさらに湾曲し、また、両側部は第2上下ローラ6の水平部に挟み付けられて上下の第1粘着テープ10が貼り合わさる。
【0032】
この様にして、電線Bの上下から供給された第1粘着テープ10、10は夫々中央部で電線Bに巻き付いて貼りつき、
図21に示すように、各第1粘着テープ10の両側がヒレ状態になり、電線Bの両側に突出する。
【0033】
また、前記ラッシング本体部3の第2ボビン24に巻き付けられたワイヤー44は、
図22に示すように、前記第2ボビン24から繰り出され、ガイドアーム29の一端の補助ローラ30に掛かけてからフリクションローラ28に巻き付けて一周してガイドアーム29の他端(後端)のガイドローラ31に掛けて電線Bにらせん状に巻付く構成となっている。
【0034】
このワイヤー44は予めその先端を電線Bに固定しているため、当該電線ラッピングマシンAが牽引等により引っ張られて前進すると、前記第2ボビン24から引き出され、フリクションローラ28を回す。このフリクションローラ28の回転によりこれと一体な第2傘歯車27が回転し、内筒3後端の第1傘歯車25に沿って回転し、外筒31が内筒30の外周を回転する。そのためガイドアーム29の後端のガイドローラ31も電線Bの外周を回転するため繰り出されたワイヤー44は電線Bに対してらせん状に巻付く。
【0035】
また、ガイドアーム29に設けた第3ボビン33も電線Bの回りを回転する。そして、当該第3ボビン33に巻き付けた第2粘着テープ34の一端を予め電線Bに固定すると前記ワイヤー44と同じように電線Bにらせん状に巻付く。
【0036】
以上の構成から成る電線ラッピングマシンAを電線Bに装着するには、まず、上下テープ貼り付け装置部1の両側のアイボルト14を緩めて各切り欠き13から外し、上部と下部から成る水平フレーム8及び当該水平フレーム8に軸支されたローラ5、6の下部側を上部側から切り離し、これらの上部と下部のローラ5及び6の間に電線Bを入れて、電線Bを挟持させる。
【0037】
また、前記前頭部2の開閉扉16のつまみ17をバネの力に抗して引張り、開閉扉16を開けて環状枠体2a内に電線Bを入れ、また、ラッシング本体部3のノブ22を操作して外筒21と内筒20を回転フリーの状態にして各開口部20aと21aを合わせ、当該開口部20a、21aから電線Bを内筒20内に入れ、更に前記後部枠体部4の係止鉤36を開けて上下の後部ローラ39と40の間に電線Bを入れて再度係止鉤36を閉める。
【0038】
この状態で当該電線ラッピングマシンAを電線Bに対して180度回転させる。これにより
図1の状態となり、その後に前記前頭部2にカウンターウエイト41を取り付ける。そして上下テープ貼り付け装置部1の上下の第1ボビン11から第1粘着テープ10を引き出し、当該上下の第1粘着テープ10、10の先端を上下テープ貼り付け装置部1前の電線Bに張り付け、また、第2ボビン24から引き出したワイヤー44をガイドアーム29の補助ローラ30、フリクションローラ28、ガイドローラ31に掛けてその先端を電線Bに固定し、また、前記ガイドアーム29に設けた第3ボビン33に巻き付けた第2粘着テープ34を引き出してその先端をワイヤー44より後方の電線Bに固定する。
【0039】
この状態で、当該電線ラッピングマシンAを牽引し前方(
図1では右側)に移動させると、第1粘着テープ10が電線Bの上下に貼りつき、その上からワイヤー44がらせん状に巻付き、さらに、第2粘着テープ34がらせん状に巻き付く。この様子は
図23で示した状態となる。
【0040】
そして、
図23の下部の(a)、(b)、(c)は電線Bに巻き付けられた粘着テープ10、34及びワイヤー44によるラッピング状況を示すものである。
【0041】
この様にして当該電線ラッピングマシンAは電線Bをラッピングすることができ、かつ、粘着テープのヒレがなく、電線Bの外周に突出物がなく、断面円形となるようにラッピングすることができる。
【0042】
前記実施の形態例1のではカウンターウエイト41を吊り下げているが、カウンターウエイト41を設けず、マシン全体が正常位置を保つような重心となる設計や構成とすることもできる。また、上記実施の形態例1では、第2ボビン24及び第3ボビン33を夫々相対向して2個設けているが、各1個づつ設けても同様にワイヤー44及び第2粘着テープ34を電線Bにらせん状に巻き付けることができる。
【符号の説明】
【0043】
A 電線ラッピングマシン
B 電線
1 上下テープ貼り付け装置部 2 前頭部
2a 環状枠体
3 ラッシング本体部 4 後部枠体部
5 第1上下ローラ 6 第2上下ローラ
7 水平フレーム 8 水平フレーム
9 垂直フレーム 9a 垂直フレーム
10 第1粘着テープ 11 第1ボビン
12 水平支持アーム 13 切り欠き
14 アイボルト 15 フック
16 開閉扉 17 つまみ
18 ガイドローラ 20 内筒
20a 開口部 21 外筒
21a 開口部 22 ノブ
23 取っ手 24 第2ボビン
25 第1傘歯車 26 突出軸
27 第2傘歯車 28 フリクションローラ
29 ガイドアーム 29a 基部
30 補助ローラ 31 ガイドローラ
32 ボビン軸支持体 33 第3ボビン
34 第2粘着テープ 35 基板
36 係止鉤 37 軸受け
38 軸受け 39 後部ローラ
40 後部ローラ 41 カウンターウエイト
42 湾曲溝 43 V溝
44 ワイヤー