(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016839
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】撮像装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240131BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20240131BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N21/64 E
G02B21/06
G02B21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023120997
(22)【出願日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】22186898
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ファルク シュラウドラフ
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043DA06
2G043EA01
2G043FA02
2G043FA06
2G043HA09
2G043KA09
2G043LA03
2H052AA09
2H052AC14
2H052AF14
2H052AF25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高速でかつ試料に対して引き起こされるストレスを少なくするような試料の蛍光撮像を可能にする撮像装置および試料を撮像するための方法を提供する。
【解決手段】試料102を撮像するための撮像装置100は、試料の第1の特徴104および試料の第2の特徴106に付着した蛍光体を励起するための励起光111を発光するように構成された励起ユニット110を含む。撮像装置は、励起された蛍光体からの蛍光120を受光し、受光された蛍光から蛍光画像を生成するように構成された検出ユニット112と、コントローラ122と、をさらに含む。コントローラは、画像分割に基づいて、第1の特徴に対応する蛍光画像の第1の画像領域104’と、第2の特徴に対応する蛍光画像の第2の画像領域106’と、を決定し、第1の画像領域と第2の画像領域とを含む合成画像128を生成するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(102)を撮像するための撮像装置(100)であって、前記撮像装置(100)は、
前記試料(102)の第1の特徴(104)および前記試料(102)の少なくとも1つの第2の特徴(106)に付着した蛍光体を励起するための励起光(111)を発光するように構成された励起ユニット(110)と、
励起された蛍光体からの蛍光(120)を受光し、受光された前記蛍光(120)から少なくとも1つの蛍光画像を生成するように構成された検出ユニット(112)と、
コントローラ(122)と、
を含み、
前記コントローラ(122)は、画像分割に基づいて、前記第1の特徴(104)に対応する蛍光画像の第1の画像領域(104’)と、前記第2の特徴(106)に対応する蛍光画像の第2の画像領域(106’)と、を決定し、前記第1の画像領域(104’)に基づいて第1の画像(400)を生成し、前記第2の画像領域(106’)に基づいて第2の画像(500)を生成し、かつ/または、少なくとも前記第1の画像領域(104’)と前記第2の画像領域(106’)とを含む合成画像(128,700)を生成するように構成されている、
撮像装置(100)。
【請求項2】
前記コントローラ(122)は、前記第1の特徴(104)および/または前記第2の特徴(106)の事前知識に基づいて前記画像分割を実行するように構成されている、
請求項1記載の撮像装置(100)。
【請求項3】
前記検出ユニット(112)は、受光された前記蛍光(120)から複数の蛍光発光信号を検出するように構成され、
前記コントローラ(122)は、前記蛍光発光信号の各々を、前記第1の特徴(104)に関連付けられた前記第1の画像領域(104’)または前記第2の特徴(106)に関連付けられた前記第2の画像領域(106’)に選択的に割り当てることによって、前記画像分割を実行するように構成されている、
請求項1または2記載の撮像装置(100)。
【請求項4】
前記蛍光画像は、複数の画素を含み、各前記画素は、前記蛍光発光信号の1つまたは複数に対応し、前記コントローラ(122)は、前記画像分割に基づいて、前記第1の画像領域(104’)に対応する前記蛍光画像の画素と、前記第2の画像領域(106’)に対応する前記蛍光画像の画素と、を決定するように構成されている、
請求項3記載の撮像装置(100)。
【請求項5】
前記第1の画像(400)および前記第2の画像(500)は、偽色画像であり、前記第1の画像(400)は、第1の色を有し、前記第2の画像(500)は、第2の色を有し、前記第2の色は、前記第1の色とは異なっている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の撮像装置(100)。
【請求項6】
前記合成画像(128,700)は、偽色画像であり、前記合成画像(128,700)内の前記第1の画像領域(104’)は、第1の色を有し、前記合成画像(128,700)内の前記第2の画像領域(106’)は、第2の色を有する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の撮像装置(100)。
【請求項7】
前記励起ユニット(110)は、前記試料(102)の第3の特徴(108)に付着した第2の蛍光体を励起するための第2の励起光(111)を発光するように構成され、
前記検出ユニット(112)は、受光された前記蛍光(120)を少なくとも2つのスペクトルチャネル、すなわち第1の蛍光体の発光スペクトルの少なくとも一部を含む第1の波長帯域に対応する第1のスペクトルチャネルと、第2の蛍光体の発光スペクトルの少なくとも一部を含む第2の波長帯域に対応する第2のスペクトルチャネルと、に分離し、前記第1のスペクトルチャネルにおいて受光された前記蛍光(120)に基づいて第1の蛍光画像(300)を生成し、前記第2のスペクトルチャネルにおいて受光された前記蛍光(120)に基づいて第2の蛍光画像(600)を生成するように構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の撮像装置(100)。
【請求項8】
光学的検出ユニット(112)は、
少なくとも2つの検出器素子と、
前記第1の波長帯域内の波長を有する受光された蛍光(120)を第1の検出器素子(118a)に配向し、前記第2の波長帯域内の波長を有する受光された光を第2の検出器素子(118b)に配向するように構成されたビームスプリッタ(116)と、
を含んでいる、
請求項7記載の撮像装置(100)。
【請求項9】
前記コントローラ(122)は、少なくとも前記第1の画像領域(104’)および前記第2の画像領域(106’)を含みかつ前記第2の蛍光画像(600)に基づいた前記合成画像(128,700)を生成するように構成され、前記第1の画像領域(104’)は、第1の色を有し、前記第2の画像領域(106’)は、第2の色を有し、前記第2の蛍光画像(600)は、第3の色を有し、前記第3の色は、前記第1の色および前記第2の色とは異なっている、
請求項7または8記載の撮像装置(100)。
【請求項10】
前記コントローラ(122)は、少なくとも前記第1の画像領域(104’)および前記第2の画像領域(106’)に基づいて前記蛍光画像の背景領域を決定し、前記第1の画像(400)、前記第2の画像(500)、前記合成画像(128,700)、前記第1の蛍光画像(300)および/または前記第2の蛍光画像(600)から前記背景領域を除去するように構成されている、
請求項1から9までのいずれか1項記載の撮像装置(100)。
【請求項11】
前記撮像装置(100)は、顕微鏡である、
請求項1から10までのいずれか1項記載の撮像装置(100)。
【請求項12】
試料(102)を撮像するための方法であって、前記方法は、以下のステップ、すなわち、
前記試料(102)の第1の特徴(104)および前記試料(102)の少なくとも1つの第2の特徴(106)に付着した蛍光体を励起するステップと、
励起された前記蛍光体からの蛍光(120)を受光し、受光された前記蛍光(120)から少なくとも1つの蛍光画像を生成するステップと、
画像分割に基づいて、前記第1の特徴(104)に対応する前記蛍光画像の第1の画像領域(104’)と、前記第2の特徴(106)に対応する前記蛍光画像の第2の画像領域(106’)と、を決定するステップと、
前記第1の画像領域(104’)に基づいて第1の画像(400)を生成し、前記第2の画像領域(106’)に基づいて第2の画像(500)を生成し、かつ/または、少なくとも前記第1の画像領域(104’)と前記第2の画像領域(106’)とを含む合成画像(128,700)を生成するステップと、
を含んでいる方法。
【請求項13】
前記方法は、以下の付加的なステップ、すなわち、
前記第1の特徴(104)および前記第2の特徴(106)を第1の蛍光体で染色し、第3の特徴(108)を第2の蛍光体で染色するステップと、
受光された前記蛍光(120)を少なくとも2つのスペクトルチャネル、すなわち前記第1の蛍光体の発光スペクトルの少なくとも一部を含む第1の波長帯域に対応する第1のスペクトルチャネルと、前記第2の蛍光体の発光スペクトルの少なくとも一部を含む第2の波長帯域に対応する第2のスペクトルチャネルと、に分離するステップと、
前記第1のスペクトルチャネルにおいて受光された前記蛍光(120)に基づいて第1の蛍光画像(300)を生成し、前記第2のスペクトルチャネルにおいて受光された前記蛍光(120)に基づいて第2の蛍光画像(600)を生成するステップと、
を含む、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、実験の一部であり、前記第1の特徴(104)および前記第2の特徴(106)における可能性のある変化は、前記第3の特徴(108)における変化よりも前記実験との関連性が低い、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
コンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムがプロセッサ上で実行されるときに、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法を実行するように構成されたプログラムコードを含んでいる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。さらに、本発明は、試料を撮像するための方法およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光顕微鏡では、例えば細胞壁や細胞核などの試料の特徴をマークするために蛍光体が使用される。蛍光体は、蛍光を発光するために、励起光、典型的には特定の波長の光によって励起することができる。この蛍光は、試料の画像を生成するために使用されてよい。試料内の特徴を蛍光体でマーキングすることにより、この特徴が蛍光撮像のために可視化される。典型的には、試料の各特徴は、それらを区別するために異なる蛍光体でマークされる。例えば、試料内のすべての細胞壁は、1つの蛍光体でマークされ、すべての細胞核は、異なる蛍光体でマークされる。異なる蛍光体は、異なる発光特性を有し、それによって蛍光体、ひいては蛍光体が付着している特徴を識別することができる。
【0003】
典型的には、異なる蛍光体は、順次撮像される。これは、異なる蛍光体の各々が、別個の撮像ステップにおいて個別に励起され、撮像されることを意味する。しかしながら、順次撮像には時間がかかり、繰り返される露光のために試料に対するストレスが引き起こされる。また、異なる蛍光体を区別する別のやり方として、試料によって発光された蛍光を異なるスペクトルチャネルに分離する方法があり、ここでの各スペクトルチャネルは、異なる波長帯域を含んでいる。しかしながら、この方法では試料に対するストレスは軽減されない。なぜなら、異なる蛍光体の各々はまだ個別に励起する必要があるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、より高速でかつ試料に対して引き起こされるストレスを少なくするような試料の蛍光撮像を可能にする撮像装置および試料を撮像するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の課題は、独立請求項の対象によって達成される。好適な実施形態は、従属請求項および以下の説明で定義される。
【0006】
試料を撮像するための提案された撮像装置は、試料の第1の特徴および試料の少なくとも1つの第2の特徴に付着した蛍光体を励起するための励起光を発光するように構成された励起ユニットを含む。撮像装置の検出ユニットは、励起された蛍光体からの蛍光を受光し、受光された蛍光から少なくとも1つの蛍光画像を生成するように構成されている。撮像装置は、コントローラをさらに含む。このコントローラは、画像分割に基づいて、第1の特徴に対応する蛍光画像の第1の画像領域と、第2の特徴に対応する蛍光画像の第2の画像領域と、を決定し、第1の画像領域に基づいて第1の画像を生成し、第2の画像領域に基づいて第2の画像を生成し、かつ/または少なくとも第1の画像領域と第2の画像領域とを含む合成画像を生成するように構成されている。
【0007】
撮像装置は、蛍光撮像を用いて第1の特徴および第2の特徴を撮像するように構成されている。第1の特徴および第2の特徴を撮像するために、第1の特徴および第2の特徴は、最初に同じ蛍光体でマークされる。次いで、蛍光体は、蛍光を発光するために励起光で励起される。蛍光は検出ユニットによって受光され、検出ユニットは、蛍光画像を生成する。蛍光画像は、第1の特徴および第2の特徴の両方を含んでいる。第1の特徴と第2の特徴とを区別するために、画像分割が実行される。この画像分割に基づいて、コントローラは、第1の特徴に対応する第1の画像領域と、第2の特徴に対応する第2の画像領域と、を決定する。次いで、コントローラは、第1の特徴を含んだ第1の画像と、第2の特徴を含んだ第2の画像と、を生成する。代替的または付加的に、コントローラは、第1の特徴および第2の特徴の両方を含んだ合成画像を生成する。提案された撮像装置では、第1の特徴および第2の特徴が、単一の撮像ステップにおいて撮像される。これは、第1の特徴および第2の特徴を連続して撮像するよりもかなり高速である。さらに、試料は、励起光で一度だけ照明され、結果として、露光が少なくなり、試料に対するストレスも少なくなる。
【0008】
撮像装置は、試料の付加的な特徴を撮像するように構成されてよい。付加的な特徴のいくつかは、第1の特徴および第2の特徴と同じ蛍光体でマークされてもよい。同じ蛍光体でマークされた付加的な各特徴について、コントローラは、画像分割に基づいて、付加的な特徴に対応する付加的な画像領域を決定するように構成されている。
【0009】
一実施形態によれば、コントローラは、第1の特徴および/または第2の特徴の事前知識に基づいて画像分割を実行するように構成されている。この実施形態では、試料の特徴は既知の特性によって識別される。例えば、これらの特徴は、それらの形状、サイズおよび/または構造によって識別されてよい。これらの特徴は、発光された蛍光の強度によって識別されてもよい。なぜなら、いくつかの生物学的構造は、蛍光体の発光特性に影響を与えるからである。特に、コントローラは、少なくとも第1の特徴および第2の特徴の既知の特性を含むデータベースを使用して画像分割を実行するように構成されている。好適には、コントローラは、機械学習を使用することなく画像分割を実行するように構成されている。既知の特性に基づいて画像分割を実行することは、画像分割の他の方法よりもかなり高速であり、計算労力も少なくてすむ。
【0010】
別の実施形態によれば、検出ユニットは、受光された蛍光から複数の蛍光発光信号を検出するように構成されている。コントローラは、蛍光発光信号の各々を、第1の特徴に関連付けられた第1の画像領域または第2の特徴に関連付けられた第2の画像領域に選択的に割り当てることによって、画像分割を実行するように構成されてよい。蛍光発光信号の各々は、試料の同じ近傍に由来する受光された蛍光の複数の光子に対応する。蛍光画像は、蛍光発光信号を組み合わせることによって生成されてよい。この実施形態では、第1の画像領域および第2の画像領域の各々は、複数の蛍光発光信号の一部を含む。画像分割は、どの蛍光発光信号が第1の構造部から発光された蛍光に対応し、どの蛍光発光信号が第2の構造部から発光された蛍光に対応するかを識別することによって実行される。この識別は、特に、隣接する蛍光発光信号がどの画像領域に対応するかに基づいていてよい。この識別は、蛍光の発光特性、例えば強度に基づいていてもよい。
【0011】
別の実施形態によれば、蛍光画像は複数の画素を含む。各画素は、蛍光発光信号の1つまたは複数に対応することができる。コントローラは、画像分割に基づいて、第1の画像領域に対応する蛍光画像の画素と、第2の画像領域に対応する蛍光画像の画素と、を決定するように構成されてよい。この実施形態では、第1の画像領域および第2の画像領域の各々は、蛍光画像の画素の集まりを含む。各画素は、2以上の蛍光発光信号に対応する可能性があるため、画素のいくつかは、第1の画像領域および第2の画像領域両方の一部であってよい。そのような場合、コントローラは、問題の画素が、第1の画像領域または第2の画像領域のいずれかに割り当てられていることを決定することができる。割り当ては、例えば、蛍光発光信号の強度または光子数に基づいていてよい。割り当ては、隣接する画素がどの画像領域に対応するかに基づいていてもよい。複数の画素は、画像データを容易に検索可能な手法で記憶する簡単なやり方である。しかしながら代替的な手段も存在する。例えば、蛍光画像は、ボクセルまたは点群を含むボリューム画像であってもよく、ここで、各ボクセルまたは点群の各点は、1つまたは複数の蛍光発光信号に対応する。
【0012】
別の実施形態によれば、第1の画像および第2の画像は偽色画像である。第1の画像は第1の色を有し、第2の画像は第2の色を有し、第2の色は第1の色とは異なっている。この実施形態では、第1の画像と第2の画像とが異なる色で提供される。このことは、ユーザーにとって第1の特徴と第2の特徴とを区別するための支援となり、それによって、撮像装置の使用を容易にさせる。
【0013】
別の実施形態によれば、合成画像は偽色画像である。合成画像内の第1の画像領域は第1の色を有し、合成画像内の第2の画像領域は第2の色を有する。第1の特徴は合成画像内で第1の色を有し、それに対して、第2の特徴は合成画像内で第2の色を有する。このことは、ユーザーにとって合成画像内の第1の特徴と第2の特徴とを区別するための支援となり、それによって、撮像装置の使用を容易にさせる。
【0014】
別の実施形態によれば、励起ユニットは、試料の第3の特徴に付着した第2の蛍光体を励起するための第2の励起光を発光するように構成されている。検出ユニットは、受光された蛍光を少なくとも2つのスペクトルチャネル、すなわち第1の蛍光体の発光スペクトルの少なくとも一部を含む第1の波長帯域に対応する第1のスペクトルチャネルと、第2の蛍光体の発光スペクトルの少なくとも一部を含む第2の波長帯域に対応する第2のスペクトルチャネルと、に分離するように構成されている。検出ユニットは、第1のスペクトルチャネルにおいて受光された蛍光に基づいて第1の蛍光画像を生成し、第2のスペクトルチャネルにおいて受光された蛍光に基づいて第2の蛍光画像を生成するようにさらに構成されている。好適には、第1の波長帯域と第2の波長帯域とは重ならない。
【0015】
この実施形態では、撮像装置は、蛍光撮像を用いて第3の特徴も撮像するように構成されている。第1の特徴および第2の特徴が同じ第1の蛍光体でマークされる一方で、第3の特徴は、第1の蛍光体とは異なる第2の蛍光体でマークされる。次いで、2つの蛍光体は、蛍光を発光するために励起ユニットによって励起される。蛍光は、検出ユニットによって受光され、第1のスペクトルチャネルと第2のスペクトルチャネルとに分離される。第1の蛍光画像は、第1のスペクトルチャネルに基づいて生成され、第1の特徴と第2の特徴とを含んでいる。第2の蛍光画像は、第2のスペクトルチャネルに基づいて生成され、第3の特徴を含んでいる。第1の蛍光画像からは、画像分割に基づいて、第1の画像領域と第2の画像領域とが決定される。このことは、たとえそれらが同じスペクトルチャネルで撮像されていても、第1の特徴と第2の特徴との区別を可能にする。好適には、画像分割は、第2のチャネルについては実行されない。第1の画像領域および第2の画像領域は、いわば2つの仮想スペクトルチャネルを形成する。これにより、撮像装置は、利用可能なスペクトルチャネルを最適に使用する。試料は2回照明されるにもかかわらず、露光される光は、第1の特徴と第2の特徴とが異なる蛍光体でマークされていた場合よりもまだ少ない。なぜなら、2つの異なる蛍光体は、異なる励起光によって励起されなければならないからである。
【0016】
本実施形態による撮像装置は、特に、第1の特徴および第2の特徴を背景として使用して第2のスペクトルチャネルにおける第3の特徴を観察するために使用されてよい。例えば、ユーザーが試料を観察しているとき、試料の多くの特徴、例えば細胞壁、細胞核および所定のオルガネラなどはすでに既知であり、関心が薄い。しかしながら、これらの既知の特徴、すなわち第1の特徴および第2の特徴は、関心のある特徴、すなわち観察されるかもしれない第3の特徴に対する背景として役立たせることができる。このことは、関心のある特徴を、試料内で容易に位置特定可能にさせる。
【0017】
別の実施形態によれば、光学的検出ユニットは、少なくとも2つの検出器素子と、第1の波長帯域内の波長を有する受光された蛍光を第1の検出器素子に配向し、第2の波長帯域内の波長を有する受光された光を第2の検出器素子に配向するように構成されたビームスプリッタと、を含んでいる。この実施形態では、ビームスプリッタ、第1の検出器素子および第2の検出器素子は、第1のスペクトルチャネルおよび第2のスペクトルチャネルを生成するための手段として使用される。第1および第2のスペクトルチャネルを生成するための他の手段と比較して、ビーム分割素子ならびに第1および第2の検出器素子を使用することは、実装が容易であり、費用対効果が高く、さらに信頼性も高い。
【0018】
別の実施形態によれば、コントローラは、少なくとも第1の画像領域、第2の画像領域を含みかつ第2の蛍光画像に基づいた合成画像を生成するように構成されている。第1の画像領域は第1の色を有し、第2の画像領域は第2の色を有し、第2の蛍光画像は第3の色を有し、第3の色は第1の色および第2の色とは異なる。これらの特徴の各々は、合成画像内の異なる色で存在する。このことは、ユーザーにとって合成画像内の異なる特徴を区別するための支援となり、それによって、撮像装置の使用を容易にさせる。
【0019】
別の実施形態によれば、コントローラは、少なくとも第1の画像領域および第2の画像領域に基づいて蛍光画像の背景領域を決定し、第1の画像、第2の画像、合成画像、第1の蛍光画像および/または第2の蛍光画像からこの背景領域を除去するように構成されている。この背景領域は、ユーザーにとって関心の少ない試料の領域であってよい。また、この背景領域は、第1の蛍光画像および/または第2の蛍光画像において多分にノイズを含んだ領域であってもよい。この実施形態では、背景領域は、第1の特徴および第2の特徴に基づいて除去される。特に、コントローラは、第1の特徴または第2の特徴のいずれにも対応しないすべての蛍光発光信号または画素を除去する。例えば、試料をマウント装着するための基板として使用される所定のポリマーは、所定の蛍光体と同じ波長領域で蛍光を発光する。例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)フォイルは、レーザー顕微解剖用の基板として使用されている。しかしながら、PENは、365nmの波長を有する照明光を使用した場合、DAPIと同じ波長領域の蛍光を発光する。DAPIで染色された第1の特徴および第2の特徴を第1の蛍光画像において識別し、背景を除去することにより、第1の蛍光画像に対するPEN基板の自己蛍光の寄与が除去される。これにより、撮像装置は、蛍光撮像において所定のポリマー基板の使用を可能にし、自身をさらに汎用性の高いものにする。全体として、背景領域を除去することにより、結果として乱雑さの少ないより鮮明な画像が生じる。
【0020】
別の実施形態によれば、撮像装置は顕微鏡である。好適には、光学的検出ユニットは、目標領域に配向され、試料からの蛍光を受光するように構成された少なくとも1つの顕微鏡対物レンズを含む。顕微鏡は、ユーザーにとって裸眼では視認不能な試料の詳細を見ることができるような倍率を提供する。しかしながら、撮像装置は、顕微鏡に限定されるものでもない。例えば、撮像装置は、スライドスキャナー、ライトシートシステム、フローサイトメーター、または蛍光撮像に適した任意の他の撮像装置であってもよい。
【0021】
本発明は、試料を撮像するための方法にも関している。この方法は、以下のステップ:試料の第1の特徴および試料の少なくとも1つの第2の特徴に付着した蛍光体を励起するステップ、励起された蛍光体からの蛍光を受光し、受光された蛍光から少なくとも1つの蛍光画像を生成するステップ、画像分割に基づいて、第1の特徴に対応する蛍光画像の第1の画像領域と、第2の特徴に対応する蛍光画像の第2の画像領域と、を決定するステップ、第1の画像領域に基づいて第1の画像を生成し、第2の画像領域に基づいて第2の画像を生成し、かつ/または少なくとも第1の画像領域と第2の画像領域とを含む合成画像を生成するステップを含んでいる。
【0022】
本方法は、上述した撮像装置と同じ利点を有し、撮像装置に向けられた従属請求項の特徴を使用して補足することができる。
【0023】
一実施形態によれば、本方法は、以下の付加的ステップ:
第1の特徴および第2の特徴を第1の蛍光体で染色し、第3の特徴を第2の蛍光体で染色するステップ、受光された蛍光を少なくとも2つのスペクトルチャネル、すなわち第1の蛍光体の発光スペクトルの少なくとも一部を含む第1の波長帯域に対応する第1のスペクトルチャネルと、第2の蛍光体の発光スペクトルの少なくとも一部を含む第2の波長帯域に対応する第2のスペクトルチャネルと、に分離するステップ、第1のスペクトルチャネルにおいて受光された蛍光に基づいて第1の蛍光画像を生成し、第2のスペクトルチャネルにおいて受光された蛍光に基づいて第2の蛍光画像を生成するステップを含む。好適には、画像分割は、第2のチャネルについては実行されない。第1の画像領域と第2の画像領域とは、2つの仮想スペクトルチャネルを形成し、これにより、利用可能なスペクトルチャネルの数が増加する。この実施形態では、利用可能なスペクトルチャネルの最適な使用が行われる。
【0024】
別の実施形態によれば、本方法は、実験の一部であり、ここで、第1の特徴および第2の特徴における可能性のある変化は、第3の特徴における変化よりも実験との関連性が低い。この実施形態では、第3の特徴は、第1の特徴および第2の特徴を背景として使用して第2のスペクトルチャネルにおいて観察される。例えば、第1の特徴および第2の特徴は、すでに既知であり、かつ/または実験にとって関心が薄い場合もある。しかしながら、第1の特徴および第2の特徴は、関心のある特徴、すなわち観察される第3の特徴に対する背景としてまだ使用されてよい。これにより、第1の特徴および第2の特徴は、いわば試料内で第3の特徴を容易に位置特定可能にさせるロードマップを提供する。
【0025】
本発明はさらに、コンピュータプログラム製品がプロセッサ上で実行されるときに、上述の方法を実行するように構成されたプログラムコードを含んでいる、コンピュータプログラム製品に関する。
【0026】
このコンピュータプログラム製品は、上述した撮像装置および方法と同じ利点を有し、それぞれ撮像装置および撮像装置を制御するための方法に向けられた従属請求項の特徴を使用して補足することができる。
【0027】
以下では、特定の実施形態を、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】
図1による撮像装置を用いて試料を撮像するための方法のフローチャートである。
【
図3】
図1による撮像装置によって生成された第1の蛍光画像の概略図である。
【
図4】
図3による第1の蛍光画像の第1の画像領域の概略図である。
【
図5】
図3による第1の蛍光画像の第2の画像領域の概略図である。
【
図6】
図1による撮像装置によって生成された第2の蛍光画像の概略図である。
【
図7】
図1による撮像装置によって生成された合成画像の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、一実施形態による、試料102を撮像するための撮像装置100の概略図である。
【0030】
試料102は、例示的に生物学的試料として示されている。試料102は、特に、肝臓または脳の切片などの組織切片であってよい。第1の蛍光体は、試料102の第1の特徴104と試料102の第2の特徴106とに付着している。
図1では、第1の特徴104は例示的に細胞壁から選択され、第2の特徴106は例示的に細胞核から選択されている。第2の蛍光体は、試料102の第3の特徴108に付着している。
【0031】
撮像装置100は、励起光111を発光するように構成された励起ユニット110を含む。特に、励起ユニット110は、第1の蛍光体を励起するための第1の励起光を発光し、第2の蛍光体を励起するための第2の励起光を発光するように構成されている。
図1では、第1および第2の励起光は、明瞭にするために同じ参照符号111によって示されている。励起ユニット110は、特に、励起光111を生成するために1つまたは複数のレーザー光源を含むことができる。例えば、それぞれ1つのレーザー光源が、第1および第2の励起光111のために設けられてよい。代替的に、広帯域レーザー光を生成するように構成された単一の広帯域レーザー光源が設けられてもよい。次いで、第1および第2の励起光111は、例えばフィルタを用いて、特に音響光学チューナブルフィルタ(AOTF)を用いて、広帯域レーザー光から生成されてよい。励起ユニット110は、第1および第2の励起光111を試料102に配向するように構成された光学素子をさらに含むことができる。特に、励起ユニット110は、第1および第2の励起光111を試料102の異なる領域に選択的に配向するように構成された走査ユニットを含むことができる。
【0032】
撮像装置100の検出ユニット112は、顕微鏡対物レンズ114、ビームスプリッタ116、第1の検出器素子118aおよび第2の検出器素子118bを含む。顕微鏡対物レンズ114は、試料102に配向され、励起された蛍光体からの蛍光120を受光し、蛍光120をビームスプリッタ116に配向するように構成されている。ビームスプリッタ116は、例示的にダイクロイックビームスプリッタとして形成されている。ビームスプリッタ116は、第1の波長帯域内の波長を有する蛍光120を第1の検出器素子118aに配向し、第2の波長帯域内の波長を有する蛍光120を第2の検出器素子118bに配向するように構成されている。第1の波長帯域は、第1の蛍光体の発光スペクトルの少なくとも一部を含む。好適には、第1の波長帯域は、第1の蛍光体の発光極大値を含む。同様に、第2の波長帯域は、第2の蛍光体の発光スペクトルの少なくとも一部を含む。好適には、第2の波長帯域は、第2の蛍光体の発光極大値を含む。第1の検出器素子118aと第2の検出器素子118bとの間で蛍光120を分割することにより、2つのスペクトルチャネルが形成される。より多くのビームスプリッタおよび検出器素子を設けることにより、より多くのスペクトルチャネルが容易に形成されてもよい。
【0033】
第1の蛍光体によって発光された蛍光120の大部分は、第1の検出器素子118aによって捕捉されるため、第1の特徴104および第2の特徴106は、第1の検出器素子118aによって撮像される。同様に、第2の蛍光体によって発光された蛍光120の大部分は、第2の検出器素子118bによって捕捉され、第3の特徴108は、第2の検出器素子118bによって撮像される。換言すれば、第1の特徴104および第2の特徴106は、第1のスペクトルチャネルにおいて撮像され、第3の特徴108は、第2のスペクトルチャネルにおいて撮像される。
【0034】
第1の検出器素子118aおよび第2の検出器素子118bによって検出された蛍光120は、蛍光発光信号に変換される。各蛍光発光信号は、蛍光120の1つまたは複数の光子に対応する。検出ユニット112は、第1の検出器素子118aによって生成された蛍光発光信号から第1の蛍光画像300(
図3参照)を形成し、第2の検出器素子118bによって生成された蛍光発光信号から第2の蛍光画像600(
図6参照)を形成する。第1の蛍光画像300は、第1の特徴104と第2の特徴106とを含む。第2の蛍光画像600は、第3の特徴108を含む。第1および第2の蛍光画像600は、特にモノクロ画像である。本実施形態では、第1の蛍光画像300および第2の蛍光画像600は、複数の画素を含み、各画素は蛍光発光信号の1つまたは複数に対応する。第1の蛍光画像300および第2の蛍光画像600は、それぞれ
図3および
図6を参照して以下でより詳細に説明される。
【0035】
本実施形態では、撮像装置100は、例示的に顕微鏡として、より具体的には、試料102の観察領域全体を同時に撮像するように構成された広視野顕微鏡として形成される。また、撮像装置100は、連続した撮像ステップにおいて試料102の観察領域を走査するように構成された走査型顕微鏡として形成されてもよい。特に、撮像装置100は、共焦点顕微鏡として形成されてよい。しかしながら、撮像装置100は、顕微鏡であることに限定されるものでもない。
【0036】
図1では、励起光111のビーム光路と蛍光120のビーム光路とが重なっていない。しかしながら、撮像装置100は、励起光111のビーム光路と蛍光120のビーム光路とが少なくとも部分的に一致するように構成されてよい。例えば、励起光111は、顕微鏡対物レンズ114を通るように試料に配向されてよい。
【0037】
撮像装置100は、コントローラ122と出力ユニット124とをさらに含む。コントローラ122は、記憶素子126を含み、励起ユニット110、検出ユニット112および出力ユニット124を制御するように構成されている。コントローラ122は、さらに試料102を撮像するための方法を実行するように構成されている。この方法は、特に、コントローラ122が、第1の蛍光画像300内の第1の特徴104に対応する第1の画像領域104’と、第1の蛍光画像300内の第2の特徴106に対応する第2の画像領域106’と、を決定するステップを含む。本方法は、
図2~
図7を参照して以下でより詳細に説明される。
【0038】
図1では、出力ユニット124は、第1の画像領域104’、第2の画像領域106’および第2の蛍光画像600に基づきコントローラ122によって生成された合成画像128を例示的に表示する。第1の画像領域104’は、第1の特徴104、すなわち試料102の細胞壁に対応し、
図1では破線で示されている。第2の画像領域106’は第2の特徴106、すなわち試料102の細胞核に対応し、
図1では点線で示されている。第3の特徴108は、例示的に試料102のフィラメントであり、
図1では実線で示されている。
【0039】
図2は、
図1による撮像装置100を用いて試料102を撮像するための方法のフローチャートである。
【0040】
本方法は、特に、実験の一部であってよく、ここで、第1の特徴104および第2の特徴106における可能性のある変化は、第3の特徴108における変化よりも実験との関連性が低い。そのような実験では、第1の特徴104および第2の特徴106は、第3の特徴108と比較してすでに十分既知であり、かつ/または関心が低い可能性がある。そのような場合、第1の特徴104および第2の特徴106は、第3の特徴108における変化が観察される背景として使用される。
【0041】
本プロセスは、ステップS200において開始される。ステップS202では、第1の特徴104および第2の特徴106が、第1の蛍光体で染色され、第3の特徴108が第2の蛍光体で染色される。ステップS204では、コントローラ122は、第1および第2の励起光111を発光するために励起ユニット110を制御し、これによって、第1の蛍光体および第2の蛍光体が励起される。第1および第2の励起光111は、任意の順序で同時にもしくは連続して発光されてよい。ステップS206では、制御装器122は、例えば顕微鏡対物レンズ114を試料102上に集束させることにより、励起された蛍光体からの蛍光120を受光するように検出ユニット112を制御する。ステップS208では、検出ユニット112は、受光された蛍光120を第1のスペクトルチャネルと第2のスペクトルチャネルとに分離する。ステップ210では、コントローラ122は、第1の検出器素子118aによって検出された蛍光120から第1の蛍光画像300が生成され、第2の検出器素子118bによって検出された蛍光120から第2の蛍光画像600が生成されるように検出ユニット112を制御する。撮像装置100が広視野顕微鏡である場合、第1の蛍光画像300および第2の蛍光画像600は、単一の撮像ステップにおいてそれぞれ第1の検出器素子118aと第2の検出器素子118bとによって捕捉された画像である。撮像装置100が走査型顕微鏡である場合、第1の蛍光画像300および第2の蛍光画像600は、複数の連続した撮像ステップにおいて生成された蛍光発光信号から生成される。
【0042】
ステップS212では、コントローラ122は、第1の特徴104および第2の特徴106の事前知識に基づいて第1のスペクトルチャネルにおける画像分割を実行する。このステップでは、第1の特徴104および第2の特徴106は、例えばそれらの形状および/またはサイズなどの既知の特性によって識別される。本実施形態では、これらの既知の特性が事前知識を構成している。コントローラ122は、当該コントローラ122の記憶素子126に格納されてよいデータベース内でこれらの既知の特性を検索することができる。また、データベースは、1つまたは複数のリモート記憶素子に格納され、コンピュータネットワークを介してアクセスされてもよい。コントローラ122は、画像分割を実行するために機械学習アルゴリズムを使用しない。既知の特性を画像分割のために使用するならば、より高速で、計算量が少なくなり、トレーニングも不要になる。画像分割は、第1の蛍光画像300に対して実行してよい。代替的に、コントローラ122が、第1の検出器素子118aによって生成された蛍光発光信号に対して画像分割を実行する。後者の場合では、ステップS212は、ステップS210において第1の蛍光画像300が生成される前に実行されてよい。
【0043】
ステップS214では、コントローラ122は、画像分割に基づいて、第1の画像領域104’と第2の画像領域106’とを決定する。第1の画像領域104’は第1の特徴104に対応し、第2の画像領域106’は第2の特徴106に対応する。ステップS216では、コントローラ122は、第1の画像領域104’に基づいて第1の画像400(
図4参照)を生成し、第2の画像領域106’に基づいて第2の画像500(
図5参照)を生成する。第1の画像400は、第1の特徴104を示し、
図4を参照して以下でより詳細に説明される。第2の画像500は、第2の特徴106を示し、
図5を参照して以下でより詳細に説明される。第1の画像400および第2の画像500は、コントローラ122により、モノクロ画像として、または偽色画像として生成されてよい。代替的または付加的に、ステップS216では、コントローラ122は、少なくとも第1の画像領域104’および第2の画像領域106’を含んだ合成画像128を生成する。合成画像128は、この合成画像128が第1の特徴104、第2の特徴106および第3の特徴108を示すように第2の蛍光画像600を含んでいてもよい。任意付加的なステップS218では、コントローラ122は背景領域を決定し、この背景領域を第1の画像400、第2の画像500、合成画像128、第1の蛍光画像300および/または第2の蛍光画像600から除去する。特に、コントローラ122は、第1の特徴104または第2の特徴106のいずれにも対応しない、第1の検出器素子118aによって検出されたすべての蛍光発光信号を背景領域に割り当てる。別の任意付加的なステップS220では、コントローラ122は、第1の蛍光画像300、第2の蛍光画像600、第1の画像400、第2の画像500および/または合成画像128を、出力ユニット124を介してユーザーに表示する。本プロセスは、ステップS222で終了する。
【0044】
図3は、
図1による撮像装置100によって生成された第1の蛍光画像300の概略図である。
【0045】
第1の蛍光画像300は複数の画素を含み、各画素は、第1の検出器素子118aによって検出された蛍光発光信号に対応する。
図3において、第1の蛍光画像300は、明瞭化のために反転されている。これは、より暗い画素がより強い蛍光発光信号に対応することを意味する。同じ理由から、
図3では、第1の特徴104および第2の特徴106のすべてのインスタンスが参照符号でマークされているわけではない。第1の検出器素子118aは、第1の特徴104および第2の特徴106に付着した第1の蛍光体によって発光された蛍光120のみを検出する。したがって、
図3に見られ得るように、第1の蛍光画像300は、例示的に細胞壁として示された第1の特徴104と、例示的に細胞核として示された第2の特徴106と、を含む。
【0046】
図4は、
図3による第1の蛍光画像300の第1の画像領域104’の概略図である。
【0047】
第1の画像400は、コントローラ122により第1の画像領域104’に基づいて生成されたものであり、第1の特徴104、すなわち細胞壁のみを示している。第1の画像400は、第1の画像領域104’に対応する第1の蛍光画像300の画素を含む。
図4において、第1の画像400は、明瞭化のために反転されている。同じ理由から、
図4では、第1の特徴104のすべてのインスタンスが参照符号でマークされているわけではない。
図4はモノクロ画像であるが、第1の画像400は偽色画像、好適には単一色を有する偽色画像であってもよい。
【0048】
図5は、
図3による第1の蛍光画像300の第2の画像領域106’の概略図である。
【0049】
第2の画像500は、コントローラ122により第2の画像領域106’に基づいて生成されたものであり、第2の特徴106、すなわち細胞核のみを示している。第2の画像500は、第2の画像領域106’に対応する第1の蛍光画像300の画素を含む。
図5において、第2の画像500は、明瞭化のために反転されている。同じ理由から、
図3では、第2の特徴106のすべてのインスタンスが参照符号でマークされているわけではない。
図5はモノクロ画像であるが、第2の画像500は偽色画像、好適には第1の画像400の単一色とは異なる単色を有する偽色画像であってもよい。
【0050】
図6は、
図1による撮像装置100によって生成された第2の蛍光画像600の概略図である。
【0051】
第2の蛍光画像600は複数の画素を含み、各画素は、第2の検出器素子118bによって検出された蛍光発光信号に対応する。
図6において、第2の蛍光画像600は、明瞭化のために反転されている。同じ理由から、
図6では、第3の特徴108のすべてのインスタンスが参照符号でマークされているわけではない。第2の検出器素子118bは、第3の特徴108に付着した第2の蛍光体によって発光された蛍光120のみを検出する。したがって、
図3に見られ得るように、第2の蛍光画像600は、例示的にオルガネラとして示された第3の特徴108を含む。
【0052】
図7は、
図1による撮像装置100によって生成された合成画像700の概略図である。
【0053】
合成画像700は、コントローラ122により、第1の画像領域104’、第2の画像領域106’および第2の蛍光画像600に基づいて生成されたものである。換言すれば、合成画像700は、第1の特徴104、第2の特徴106および第3の特徴108を示す。
図7において、合成画像700は、明瞭化のために反転されている。同じ理由から、
図3では、第1の特徴104、第2の特徴106および第3の特徴108のすべてのインスタンスが参照符号でマークされているわけではない。
図7はモノクロ画像であるが、合成画像700は好適には偽色画像である。例えば、第1の特徴104は青色で示され、第2の特徴106は赤色で示され、さらに第3の特徴108は黄色で示されてよい。
【0054】
すべての図面において、同一または類似の動作要素には同一の参照符号が付されている。本明細書で使用されるように、用語「および/または(かつ/または)」は、関連する記載項目のうちの1つまたは複数の項目のあらゆるすべての組み合わせを含んでおり、「/」として略記されることがある。実施形態の個々の特徴および実施形態の個々の特徴相互間のすべての組み合わせは開示されたものとみなされ、ならびに前述の説明および/または特許請求の範囲の個々の特徴または特徴グループとの組み合わせにおいても開示されたものとみなされる。
【0055】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。
【0056】
いくつかの実施形態は、
図1に関連して説明されたようなシステムを含んでいる顕微鏡に関する。択一的に、顕微鏡は、
図1に関連して説明されたようなシステムの一部であってもよい、または
図1に関連して説明されたようなシステムに接続されていてもよい。
図1は本明細書に記載された方法を実施するように構成されたシステム100の概略図を示している。システム100は、顕微鏡112とコンピュータシステム122とを含んでいる。顕微鏡112は、撮像するように構成されており、かつコンピュータシステム122に接続されている。コンピュータシステム122は、本明細書に記載された方法の少なくとも一部を実施するように構成されている。コンピュータシステム122は、機械学習アルゴリズムを実行するように構成されていてもよい。コンピュータシステム122と顕微鏡112は別個の存在物であってもよいが、1つの共通のハウジング内に一体化されていてもよい。コンピュータシステム122は、顕微鏡112の中央処理システムの一部であってもよく、かつ/またはコンピュータシステム122は、顕微鏡112のセンサ、アクター、カメラまたは照明ユニット等の、顕微鏡112の従属部品の一部であってもよい。
【0057】
コンピュータシステム122は、1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるローカルコンピュータデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、タブレットコンピュータまたは携帯電話)であってもよく、または分散コンピュータシステム(例えば、ローカルクライアントおよび/または1つまたは複数のリモートサーバファームおよび/またはデータセンター等の様々な場所に分散されている1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるクラウドコンピューティングシステム)であってもよい。コンピュータシステム122は、任意の回路または回路の組み合わせを含んでいてもよい。1つの実施形態では、コンピュータシステム122は、任意の種類のものとすることができる、1つまたは複数のプロセッサを含んでいてもよい。本明細書で使用されるように、プロセッサは、例えば、顕微鏡または顕微鏡部品(例えばカメラ)のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、グラフィックプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マルチコアプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または任意の他の種類のプロセッサまたは処理回路等のあらゆる種類の計算回路を意図していてもよいが、これらに限定されない。コンピュータシステム122に含まれ得る他の種類の回路は、カスタム回路、特定用途向け集積回路(ASIC)等であってもよく、例えばこれは、携帯電話、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、双方向無線機および類似の電子システム等の無線装置において使用される1つまたは複数の回路(通信回路等)等である。コンピュータシステム122は、ランダムアクセスメモリ(RAM)の形態のメインメモリ等の特定の用途に適した1つまたは複数の記憶素子を含み得る1つまたは複数のストレージデバイス、1つまたは複数のハードドライブおよび/またはコンパクトディスク(CD)、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク(DVD)等のリムーバブルメディアを扱う1つまたは複数のドライブ等を含んでいてもよい。コンピュータシステム122はディスプレイ装置、1つまたは複数のスピーカーおよびキーボードおよび/またはマウス、トラックボール、タッチスクリーン、音声認識装置を含み得るコントローラ、またはシステムのユーザーがコンピュータシステム122に情報を入力することおよびコンピュータシステム122から情報を受け取ることを可能にする任意の他の装置も含んでいてもよい。
【0058】
ステップの一部または全部は、例えば、プロセッサ、マイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路等のハードウェア装置(またはハードウェア装置を使用すること)によって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、極めて重要なステップのいずれか1つまたは複数が、そのような装置によって実行されてもよい。
【0059】
一定の実装要件に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装され得る。この実装は、非一過性の記録媒体によって実行可能であり、非一過性の記録媒体は、各方法を実施するために、プログラマブルコンピュータシステムと協働する(または協働することが可能である)、電子的に読取可能な制御信号が格納されている、デジタル記録媒体等であり、これは例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROMおよびEPROM、EEPROMまたはFLASHメモリである。したがって、デジタル記録媒体は、コンピュータ読取可能であってもよい。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法が実施されるように、プログラマブルコンピュータシステムと協働することができる、電子的に読取可能な制御信号を有するデータ担体を含んでいる。
【0061】
一般的に、本発明の実施形態は、プログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品として実装可能であり、このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときにいずれかの方法を実施するように作動する。このプログラムコードは、例えば、機械可読担体に格納されていてもよい。
【0062】
別の実施形態は、機械可読担体に格納されている、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを含んでいる。
【0063】
したがって、換言すれば、本発明の実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0064】
したがって、本発明の別の実施形態は、プロセッサによって実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、格納されているコンピュータプログラムを含んでいる記録媒体(またはデータ担体またはコンピュータ読取可能な媒体)である。データ担体、デジタル記録媒体または被記録媒体は、典型的に、有形である、かつ/または非一過性である。本発明の別の実施形態は、プロセッサと記録媒体を含んでいる、本明細書に記載されたような装置である。
【0065】
したがって、本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号シーケンスである。データストリームまたは信号シーケンスは例えば、データ通信接続、例えばインターネットを介して転送されるように構成されていてもよい。
【0066】
別の実施形態は、処理手段、例えば、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するように構成または適合されているコンピュータまたはプログラマブルロジックデバイスを含んでいる。
【0067】
別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、インストールされたコンピュータプログラムを有しているコンピュータを含んでいる。
【0068】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを(例えば、電子的にまたは光学的に)受信機に転送するように構成されている装置またはシステムを含んでいる。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイル機器、記憶装置等であってもよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機に転送するために、ファイルサーバを含んでいてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、プログラマブルロジックデバイス(例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)が、本明細書に記載された方法の機能の一部または全部を実行するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためにマイクロプロセッサと協働してもよい。一般的に、有利には、任意のハードウェア装置によって方法が実施される。
【符号の説明】
【0070】
100 撮像装置
102 試料
104,106,108 特徴
104’,106’ 画像領域
110 励起ユニット
111 励起光
112 検出ユニット
114 顕微鏡対物レンズ
116 ビームスプリッタ
118a,118b 検出器素子
120 蛍光
122 コントローラ
124 出力ユニット
126 記憶素子
128 合成画像
300,400,500,600,700 画像
【外国語明細書】