(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168390
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】信号制御システム、信号制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/112 20130101AFI20241128BHJP
【FI】
H04B10/112
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085004
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】595095353
【氏名又は名称】株式会社三技協
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆
(72)【発明者】
【氏名】山本 翔也
(72)【発明者】
【氏名】林田 章吾
(72)【発明者】
【氏名】日隈 功
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA24
5K102AL11
5K102AL23
5K102AL28
5K102MA01
5K102MB01
5K102MD04
5K102MH03
5K102MH14
5K102MH17
5K102PB01
5K102PH31
5K102RD02
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】光無線通信の通信状態の悪化を抑制する信号制御システム、信号制御方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】信号制御システム210は、互いに離間しており相対的な姿勢または距離の少なくともいずれか一方が変化し得る送信装置と受信装置とが行う光無線通信における信号制御システムである。信号制御システム210は、指標算出部211と、調整信号出力部212と、を有している。指標算出部211は、受信装置が受けた光信号の信号品質を示す指標を算出する。調整信号出力部212は、算出した指標に基づいて送信装置における光信号を送信するレンズの視野角を調整するための調整信号を出力する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間しており相対的な姿勢または距離の少なくともいずれか一方が変化し得る送信装置と受信装置とが行う光無線通信における信号制御システムであって、
前記受信装置が受けた光信号の信号品質を示す指標を算出する指標算出部と、
算出した前記指標に基づいて前記送信装置における光信号を送信するレンズの視野角を調整するための調整信号を出力する調整信号出力部と、を備える
信号制御システム。
【請求項2】
前記指標算出部は、前記受信装置が受けた光信号の信号対雑音比を前記指標として算出する、
請求項1に記載の信号制御システム。
【請求項3】
前記調整信号出力部は、
前記指標が予め設定された第1閾値より大きい場合に、前記視野角を大きくするための前記調整信号を出力し、
前記指標が予め設定された第2閾値より小さい場合に、前記視野角を小さくするための前記調整信号を出力する、
請求項1に記載の信号制御システム。
【請求項4】
前記指標算出部は、予め設定された期間ごとに前記受信装置が受けた光信号の信号品質を示す前記指標を算出し、
前記調整信号出力部は、前記指標が予め設定された値の範囲に含まれない場合に、前記指標が前記範囲に含まれるまで前記期間ごとに前記調整信号を出力する、
請求項1に記載の信号制御システム。
【請求項5】
前記調整信号出力部は、前記指標の大きさに基づいて前記視野角の調整量を設定し、前記調整量に応じた前記調整信号を出力する、
請求項1に記載の信号制御システム。
【請求項6】
前記指標の大きさと前記視野角の調整量との対応関係を示す調整値データを記憶する記憶部をさらに備え、
前記調整信号出力部は、前記調整値データを参照したうえで、前記指標の大きさに応じた前記視野角の調整量を設定する調整信号を出力する、
請求項1に記載の信号制御システム。
【請求項7】
前記受信装置と前記送信装置との距離に関する距離情報を取得する距離情報取得部をさらに備え、
前記調整信号出力部は、前記距離情報を加味して前記視野角の調整量を設定する、
請求項6に記載の信号制御システム。
【請求項8】
前記距離情報取得部は、前記送信装置の位置情報と前記送信装置の位置情報とに基づいて算出される前記距離情報を取得する、
請求項7に記載の信号制御システム。
【請求項9】
前記送信装置から受信した信号にかかる通信速度を評価する速度評価部と、
前記通信速度が所定の閾値速度より低い場合に、前記第2閾値を相対的に大きい値に変更する閾値設定部と、をさらに備える、
請求項3に記載の信号制御システム。
【請求項10】
前記送信装置から受信した信号にかかる通信速度を評価する速度評価部と、
前記通信速度が所定の閾値速度より速い場合に、前記第1閾値を相対的に小さい値に変更する閾値設定部と、をさらに備える、
請求項3に記載の信号制御システム。
【請求項11】
前記送信装置から受信する信号にかかる通信速度の要求条件を受け付ける条件受付部と、
前記通信速度を評価する速度評価部と、
前記指標の大きさと前記通信速度との対応関係を示す設定値データを記憶する記憶部と、
受信した信号にかかる前記指標の大きさと前記通信速度とが前記設定値データに対応していない場合に、前記第1閾値および第2閾値の少なくともいずれか一方を、前記通信速度の条件に対応するよう変更する閾値設定部と、をさらに備える、
請求項3に記載の信号制御システム。
【請求項12】
前記受信装置または前記送信装置の少なくともいずれか一方は移動体である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の信号制御システム。
【請求項13】
前記移動体は飛行体である、
請求項12に記載の信号制御システム。
【請求項14】
互いに離間しており相対的な姿勢または距離の少なくともいずれか一方が変化し得る送信装置と受信装置とが行う光無線通信における信号制御方法であって、
前記受信装置が受けた光信号の信号品質を示す指標を算出し、
算出した前記指標に基づいて前記送信装置における光信号を送信するレンズの視野角を調整するための調整信号出力する、
信号制御方法。
【請求項15】
互いに離間しており相対的な姿勢または距離の少なくともいずれか一方が変化し得る送信装置と受信装置とが行う光無線通信における信号制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記信号制御方法は、
前記受信装置が受けた光信号の信号品質を示す指標を算出し、
算出した前記指標に基づいて前記送信装置における光信号を送信するレンズの視野角を調整するための調整信号出力する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は信号制御システム、信号制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ドローン、無人航空機またはUAS(Unmanned Aircraft Systems)と呼ばれる飛行体が普及している。飛行体のような移動局と地上の端末のような基地局との通信に、光無線通信が利用され得る。光無線通信に関しては種々の提案が開示されている。
【0003】
例えば特許文献1は、初めに指向性の広い赤外線光で大まかな位置調整を行い、次に指向性の狭い赤外線光で精密な位置調整を行うことで、光軸合わせを行う送信装置を開示している。
【0004】
特許文献2は、光ビームを受信手段と送信手段と追尾手段とを有し、送信手段では、透明で屈折率が大きい平行平板を挿入することで、投光用光学レンズからの光ビームの投光角度が拡大される構成を有する光無線通信装置を開示している。
【0005】
特許文献3は、自由空間光通信において、レーザーの光信号を受け、そのビーム発散を制御する解像度低下装置を含み、レーザーの動作モードに基づくビーム発散調整のコントローラーを有する装置について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-209520号公報
【特許文献2】特開2008-53849号公報
【特許文献3】米国特許出願第2022/0239373号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
移動局と基地局とが互いに離れた場所にあって、且つ、移動局と基地局との相対的な位置や姿勢が変動し得る状況において、通信状態の悪化を抑えて好適に通信が可能な技術が所望されている。
【0008】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、光無線通信の通信状態の悪化を抑制する信号制御システム等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示にかかる信号制御システムは、互いに離間しており相対的な姿勢または距離の少なくともいずれか一方が変化し得る送信装置と受信装置とが行う光無線通信における信号制御システムである。信号制御システムは、指標算出部と、調整信号出力部と、を有している。指標算出部は、受信装置が受けた光信号の信号品質を示す指標を算出する。調整信号出力部は、算出した指標に基づいて送信装置における光信号を送信するレンズの視野角を調整するための調整信号を出力する。
【0010】
本開示にかかる信号制御方法は、互いに離間しており相対的な姿勢または距離の少なくともいずれか一方が変化し得る送信装置と受信装置とが行う光無線通信における信号制御方法である。信号制御方法は、受信装置が受けた光信号の信号品質を示す指標を算出する処理と、算出した指標に基づいて送信装置における光信号を送信するレンズの視野角を調整するための調整信号出力する処理と、を有している。
【0011】
本開示にかかるプログラムは、互いに離間しており相対的な姿勢または距離の少なくともいずれか一方が変化し得る送信装置と受信装置とが行う光無線通信における信号制御方法をコンピュータに実行させるプログラムである。信号制御方法は、受信装置が受けた光信号の信号品質を示す指標を算出する処理と、算出した指標に基づいて送信装置における光信号を送信するレンズの視野角を調整するための調整信号出力する処理と、を有している。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、光無線通信の通信状態の悪化を抑制する信号制御システム、信号制御方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示にかかる通信システムの使用状況を示す図である。
【
図3】実施の形態1にかかる信号制御システムのブロック図である。
【
図5】通信システムの信号のやり取りを示すシーケンス図である。
【
図6】実施の形態1にかかる信号制御方法のフローチャートである。
【
図7】実施の形態2にかかる信号制御システムのブロック図である。
【
図8】実施の形態2にかかる信号制御方法のフローチャートである。
【
図9】実施の形態3にかかる信号制御システムのブロック図である。
【
図10】実施の形態3にかかる信号制御方法のフローチャートである。
【
図11】実施の形態4にかかる信号制御システムのブロック図である。
【
図12】実施の形態4にかかる信号制御方法のフローチャートである。
【
図13】実施の形態5にかかる信号制御システムのブロック図である。
【
図14】実施の形態5にかかる信号制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0015】
<実施の形態1>
まず、実施の形態1について説明する。
図1は、本開示にかかる通信システム1の使用状況を示す図である。
図1に示す通信システム1は、空中を飛行する飛行体10と、地上に設置された基地局20とを含む。通信システム1は、互いに離間しており相対的な姿勢または距離の少なくともいずれか一方が変化し得る状態で、光無線通信を行う。
【0016】
飛行体10は、ドローン、無人航空機またはUAS(Unmanned Aircraft Systems)と呼ばれる飛行体である。飛行体10は例えば上空から撮影した画像を基地局20に送信する。飛行体10は、本開示にかかる送信装置の一実施態様である。飛行体10は光無線通信技術を使って信号を基地局20に送信できる。
【0017】
基地局20は、地上に設置された基地局であって、飛行体10が送信する信号を受信できる。すなわち基地局20は本開示にかかる受信装置の一実施態様である。すなわち通信システム1が有する送信装置である飛行体10は、光信号を基地局20に向けて送信する。また通信システム1が有する受信装置である基地局20は、飛行体10が送信した光信号を地上で受信する。
【0018】
光無線通信は、レーザ光、赤外光または可視光などを無線信号として使用して通信を行う技術である。光無線通信は、電波を利用する無線通信と比較して、帯域幅が広く、データ伝送速度が高い。しかし光無線通信による通信可能な距離は、光信号をレンズによって集光しないと短くなる可能性がある。そこで送信装置である飛行体10は、レンズを制御してFOV(Field of View)を可変させる。これにより飛行体10は、離間した位置から基地局20へ信号を供給する。
【0019】
一方、基地局20が受光できる範囲(通信範囲)は、レンズによって光信号を集光しすぎると、狭くなる。通信範囲が狭くなりすぎた場合、基地局20は、飛行体10の姿勢の微妙な変化により信号を受信できなくなる可能性がある。そこで、通信システム1は、光無線通信における上述の特徴を踏まえ、好適な通信が行えるように、FOVを調整する機能を有する。
【0020】
図2を参照して基地局20について説明する。
図2は、基地局20のハードウェア構成を示す図である。基地局20は主な構成として、演算装置21、記憶装置22、駆動装置23、受信部24、送信部25および操作受付部26を有している。
【0021】
演算装置21は、CPU(Central Processing Unit)またはMCU(Micro Controller Unit)と称される演算回路や、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やレジスタなどの記憶手段を含む。演算装置21は通信バスにより他の構成と通信可能に接続しており、基地局20の各構成に本開示の機能を発揮させるための処理を実行する。
【0022】
記憶装置22は、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリを含む。記憶装置22は演算装置21が使用するデータ等を記憶する。
【0023】
駆動装置23は、モータやモータドライバ等を含み、基地局20の受信部24の方向が変更可能に駆動装置23を駆動する。受信部24は、光電変換素子を含む。受信部24は、飛行体10が送信する光信号を受け、受けた光信号を電気信号に変換する。さらに受信部24は、光信号から変換した電気信号を演算装置21に供給する。送信部25は、基地局20から飛行体10に対して所定の信号を出力するための手段である。送信部25は光信号を送信するものであってもよい。また送信部25は、光通信に代えて、電波による無線通信により飛行体10に信号を送信するものであってもよい。
【0024】
操作受付部26は、例えばキーボード、釦、スイッチ、タッチパネルなどの情報入力装置を含む。操作受付部26は、通信システム1を使用するユーザが基地局20に対して行う操作を受け付ける。例えば基地局20は操作受付部26を介して、受信部24の向きを変更する操作を受け付け、受け付けた操作にかかる信号を、演算装置21に供給する。
【0025】
次に、
図3を参照して、飛行体10について説明する。
図3は、飛行体10のハードウェア構成を示す図である。飛行体10は主な構成として、制御ブロック11、測位ブロック12、ジャイロセンサ13、通信ブロック14、操作受付部15、駆動装置16、カメラ17、バッテリ18および光通信部19を有している。
【0026】
制御ブロック11は、飛行体10の各構成を制御するためのCPUまたはMPU等を含む。また制御ブロック11は、DRAM等の揮発性メモリやフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含む。これにより、制御ブロック11は、所定の通信バスを介して各構成から種々の信号を受け取り、受け取った信号を処理して、適宜、各構成に指示をする。
【0027】
制御ブロック11は、光信号調整部100を含む。光信号調整部100は、光通信部19に光信号を供給する。また光信号調整部100は、光通信部19が有しているFOV調整機構に対してFOVの設定を指示する。ここで光信号調整部100が行うFOVの設定は、基地局20から受け取る調整信号に応じて行うものも含む。
【0028】
測位ブロック12は、GNSS(Global Navigation Satellite System)の信号を受信するアンテナを含む。測位ブロック12は測位衛星から測位信号を受信し、受信した測位信号から位置情報を生成する。測位ブロック12は生成した位置情報を制御ブロック11に供給する。
【0029】
ジャイロセンサ13は、飛行体10の姿勢の変化および飛行体10の動きを検出し、飛行体10の移動方向や移動速度を測定する。ジャイロセンサ13は、測定した姿勢変化や移動速度等に関するデータを制御ブロック11に供給する。
【0030】
通信ブロック14は、飛行体10が基地局等と電波信号による無線通信をするためのアンテナ、および電波信号の送受信を行うための変調回路および復調回路を含む。通信ブロック14は、基地局等が発信した電波信号を受信し、制御ブロック11に対して受信した電波を復調した信号を供給する。また通信ブロック14は、飛行体10から基地局等に送信する所定の電波信号を制御ブロック11から受け取り、受け取った信号を変調して発信する。
【0031】
操作受付部15は、スイッチやボタンを含み、飛行体10を操作する操作者が行う起動操作等を受け付ける。操作受付部15は、受け付けた操作に関する信号を、制御ブロック11に供給する。
【0032】
駆動装置16は、飛行体10が移動するための手段である1つ以上のプロペラ、このプロペラを回転させるためのモータおよびモータを駆動するためのドライブ回路等を含む。駆動装置16は、制御ブロック11の指示に応じてプロペラを回転させる。駆動装置16はプロペラの回転数に関するフィードバック信号を制御ブロック11に供給し得る。
【0033】
カメラ17は、レンズ、撮像素子および画像データを生成するための回路等を含む。カメラ17は制御ブロック11の指示に応じて撮影を行い、撮影した画像のデータである画像データを制御ブロック11に供給する。カメラ17は例えば1秒間に30フレームの画像を撮影し、30分の1秒毎に画像データを制御ブロック11に供給する。本開示にかかる飛行体10は、カメラ17が撮影して生成した画像データを光信号に変換して基地局20に送信する。
【0034】
バッテリ18は、飛行体10を動作させるための電源であり、飛行体10が有する構成に適宜電力を供給する。またバッテリ18は、電力の残量に関するデータを制御ブロック11に供給する。
【0035】
光通信部19は、光信号を基地局20に向かって送信する。光通信部19はレンズによるFOVの調整をする機構を含む。光通信部19は光信号の発信強度を制御して、所望の光信号を生成して発信する。光通信部19は光信号のダイナミックレンジを調整する機能を有していてもよい。
【0036】
次に、
図4を参照して、通信システム1が有している信号制御システムについて説明する。
図4は、実施の形態1にかかる信号制御システム210のブロック図である。信号制御システム210は、送信装置と受信装置とが行う光無線通信において光信号を制御するシステムである。
【0037】
信号制御システム210は、送信装置が送信した信号を受信装置が受けた場合に、受けた信号から送信装置のFOVを制御する。信号制御システム210は、基地局20の少なくとも一部を含む。より具体的には例えば信号制御システム210は、基地局20の演算装置21と記憶装置22とによりその機能を実現し得る。ただし、信号制御システム210が有する機能の一部を飛行体10が担ってもよい。また信号制御システム210は例えば、基地局20が有する記憶装置22が記憶するプログラムが後述する信号制御方法を実行することにより実現するものであってもよい。信号制御システム210は主な構成として、指標算出部211および調整信号出力部212を有している。
【0038】
指標算出部211は、受信装置である基地局20が受けた光信号の信号品質を示す指標を算出する。この場合、指標算出部211が算出する指標とは、例えば光信号の信号対雑音比(SNR(Signal to Noise Ratio))である。すなわち指標算出部211は、基地局20が受けた光信号の信号対雑音比を信号品質を示す指標として算出する。なお、指標算出部211は光信号の信号レベルとノイズレベルとからSNRを算出してもよいし、単に光信号の信号レベルとノイズレベルとの差を測定するものであってもよい。
【0039】
また指標算出部211が算出する指標は、単にSNRに限られない。例えば上述の指標は、所定期間における光信号を統計的に処理することにより算出されるものであってもよい。ここで言う統計的な処理とは、例えば平均値、最大値、最小値、分散などを含み得る。また例えば上述の指標は、光信号の信号強度であってもよい。
【0040】
なお、指標算出部211が算出する指標は、無線通信における相対的に下位のレイヤにおいて算出することが好ましい。ここで言う下位のレイヤとは、物理層に近いレイヤを指す。指標算出部211が下位のレイヤの信号品質を算出することにより、信号制御システム210は、上位のレイヤの信号品質を評価する場合に比べて、速く処理を行うことができる。これにより信号制御システム210は短い周期で視野角の調整を行うことができる。
【0041】
調整信号出力部212は、指標算出部211が算出した指標を受け取り、受け取った指標に応じて、送信装置である飛行体10に対して、光信号を送信するレンズの視野角を調整するための調整信号を出力する。調整信号出力部212が出力する調整信号は、基地局20から飛行体10に送信される。飛行体10は調整信号を受け取ると、受け取った調整信号の内容に応じて視野角を調整する。なお、以降の説明において視野角は、FOV(Field of View)とも称される。
【0042】
調整信号出力部212は例えば以下のような原理により調整信号を出力する処理を行う。例えば上記指標が予め設定された第1閾値より大きい場合には、信号品質が所望の通信を行うのに充分な状態であると言える。その場合、調整信号出力部212は、飛行体10のFOVを大きくするための調整信号を出力する。これにより信号制御システム210は、信号品質を維持しつつ、飛行体10の姿勢の変動に対する許容量を拡大させる。
【0043】
一方、上記指標が予め設定された第2閾値より小さい場合には、受信する光信号の信号品質を改善するための処理が必要とされる。そこでこの場合には、調整信号出力部212は、飛行体10が送信する光信号のFOVを小さくするための調整信号を出力する。これにより信号制御システム210は、信号品質を向上させ、所望の通信状態を維持できる。
【0044】
なお、信号制御システム210は、上述の構成に加えて、記憶部213を有し得る。記憶部213は、上述の機能を実現するための第1閾値および第2閾値を記憶する。なお、信号制御システム210は記憶部213を含まない構成であってもよい。この場合、信号制御システム210は、通信可能に接続している記憶部213から適宜閾値等の情報を取得する。
【0045】
指標算出部211は、上記光信号の信号品質を示す指標を予め設定された期間ごとに算出してもよい。この場合、調整信号出力部212は、上記指標が予め設定された値の範囲に含まれない場合に、指標が範囲に含まれるまで、上記期間ごとに調整信号を出力するものであってもよい。このような構成により、信号制御システム210は、通信状態の悪化が抑制できる状態になるまで飛行体10のFOVを調整できる。
【0046】
次に、信号制御システム210が実行する処理について説明する。
図5は、通信システム1における飛行体10と基地局20との信号のやり取りを示すシーケンス図である。
【0047】
まず、飛行体10は、光信号の送信を開始する(ステップS11)。次に、基地局20は、光信号の受信を開始する(ステップS12)。なおこの場合、基地局20は所定期間ごとにポーリングを行い、光信号の受信を検出してもよい。あるいは通信システム1は、光信号の送受信の前に、電波信号により、光信号の送受信の開始をネゴシエーションしてもよい。
【0048】
次に、基地局20は、受信した光信号の指標S1を算出する(ステップS13)。さらに基地局20は、算出した指標S1が予め設定された範囲に含まれるか否かを判定する。より具体的には基地局20は、S1が第1閾値未満であって、第1閾値より小さい第2閾値以上であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0049】
算出した指標S1が予め設定された範囲に含まれると判定される場合(ステップS14:YES)、信号品質は適切な範囲である。この場合、信号制御システム210は、光信号のFOVの調整を必要としない。そのため、基地局20は
図5に示す処理を終了する。この場合、通信システム1は、FOVの調整をすることなく通信を継続する。
【0050】
一方、算出した指標S1が予め設定された範囲に含まれると判定されない場合(ステップS14:NO)、信号品質は適切な範囲から逸脱している状態である。この場合、信号制御システム210は、光信号のFOVの調整をする。この場合、基地局20は、FOVを変更する調整信号を生成する(ステップS15)。
【0051】
次に、基地局20は、生成した調整信号を飛行体10に対して送信する(ステップS16)。基地局20は電波信号により調整信号を送信してもよいし、光信号により飛行体10に送信してもよい。
【0052】
次に飛行体10は、基地局20から調整信号を受信する(ステップS17)。さらに飛行体10は、受信した調整信号に従い、FOVを変更する(ステップS18)。以上、通信システム1が実行する処理について説明した。
【0053】
次に、
図6を参照して、信号制御システム210が実行する処理について説明する。
図6は、実施の形態1にかかる信号制御方法のフローチャートである。
図6のフローチャートは、通信システム1が有する信号制御システム210の処理を示している。すなわち
図6のフローチャートの一部は、基地局20が実行する処理であると限定されない。
図6のフローチャートの一部は、飛行体10が担ってもよい。
【0054】
まず、信号制御システム210は、光信号を受信したか否かを判定する(ステップS210)。信号制御システム210が光信号を受信したと判定しない場合(ステップS210:NO)、信号制御システム210はステップS210を繰り返す。
【0055】
信号制御システム210が光信号を受信したと判定する場合(ステップS210:YES)、信号制御システム210の指標算出部211は、受信信号の指標S1を算出する(ステップS220)。
【0056】
次に、調整信号出力部212は、指標算出部211が算出した指標S1が第1閾値STH1未満であるか否かを判定する(ステップS230)。指標S1が第1閾値STH1未満であると調整信号出力部212が判定する場合(ステップS230:YES)、信号制御システム210はステップS240に進む。一方、指標S1が第1閾値STH1未満であると調整信号出力部212が判定しない場合(ステップS230:NO)、信号制御システム210はステップS250に進む。
【0057】
ステップS240において、調整信号出力部212は、FOVを狭めるための調整信号を出力する(ステップS240)。これにより、飛行体10の光通信部19は、FOVを狭めて信号を送信する。調整信号出力部212が調整信号を出力すると、信号制御システム210はステップS270に進む。
【0058】
ステップS250において、調整信号出力部212は、指標S1が第2閾値STH2以上であるか否かを判定する(ステップS250)。指標S1が第2閾値STH2以上であると調整信号出力部212が判定する場合(ステップS250:YES)、信号制御システム210はステップS260に進む。一方、指標S1が第2閾値STH2以上であると調整信号出力部212が判定しない場合(ステップS250:NO)、信号制御システム210は調整信号を出力することなく、ステップS270に進む。
【0059】
ステップS260において、調整信号出力部212は、FOVを拡げるための調整信号を出力する(ステップS260)。これにより、飛行体10の光通信部19は、FOVを拡げて信号を送信する。調整信号出力部212が調整信号を出力すると、信号制御システム210はステップS270に進む。
【0060】
ステップS270において、信号制御システム210は、一連の処理を終了するか否かを判定する(ステップS270)。一連の処理を終了するか否かの判定は、例えばユーザの操作により終了する指示を受けたか否かにより行い得る。あるいは一連の処理を終了するか否かの判定は、例えば光信号の送信が終了したか否かを判定することにより行い得る。一連の処理を終了すると信号制御システム210が判定する場合(ステップS270:YES)、信号制御システム210は処理を終了する。一方、一連の処理を終了すると信号制御システム210が判定しない場合(ステップS270:NO)、信号制御システム210はステップS210に戻り、処理を続ける。
【0061】
以上、信号制御システム210が実行する処理について説明した。上述の処理により、信号制御システム210は、基地局20が受信する信号品質が必要以上に良い場合には、信号品質を低下させてFOVを拡げる。これにより信号制御システム210は、飛行体10の姿勢の変化に対してより安定した通信を実現できる。一方、信号品質が充分ではない場合には、信号制御システム210はFOVを狭くする。これにより信号制御システム210は、通信状態の悪化を抑制する。すなわち信号制御システム210は、信号品質の悪化を抑えつつ、飛行体10の姿勢の変動等による影響も抑制できる。なお、本開示における第1閾値STH1と第2閾値STH2とは同じ値であってもよい。
【0062】
以上、実施の形態1について説明した。通信システム1は、光無線通信により、100Mbps以上の通信も実現できる。そのため、ドローンなどの飛行体10から基地局20に映像を伝送可能である。
【0063】
また上述の通り、光無線通信におけるプロトコルのうち、相対的に高いレイヤの通信速度の算出を行うよりも、相対的に低いレイヤのSNRを算出する方が調整信号を出力するまでの処理時間を短くできる。
【0064】
なお、本実施の形態にかかる信号制御システム210は、受信装置または送信装置の少なくともいずれか一方が移動体であればよい。この場合、移動体は、飛行体に限られない。すなわち移動体は例えば、船、AGV(Automated Guided Vehicle)、UGV(Unmanned Ground Vehicle)、歩行ロボット等であってもよい。信号制御システム210は、受信装置および送信装置の両方が移動体であってもよい。本実施の形態の場合、飛行体10が受信装置であって、基地局20が送信装置であってもよい。
【0065】
以上、信号制御システム210は、好適に通信システム1の通信状態の悪化を抑制できる。すなわち、本実施の形態は、光無線通信の通信状態の悪化を抑制する信号制御システム、信号制御方法およびプログラムを提供できる。
【0066】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2は、調整信号の生成方法が実施の形態1と異なる。
図7は、実施の形態2にかかる信号制御システム220のブロック図である。
【0067】
信号制御システム220は、記憶部213に調整値データを含む。調整値データは、指標の大きさと視野角の調整量との対応関係を示すデータである。より具体的には例えば、指標算出部211が算出する指標が、所定の閾値の範囲から相対的に大きく外れている第1指標と、相対的に小さく外れている第2指標が存在するとする。この場合に、調整値データは、第1指標に対応するFOVの調整値が、第2指標に対応するFOVの調整値より大きく設定されている。
【0068】
すなわち、調整信号出力部212は、指標の大きさに基づいて視野角の調整量を設定し、調整量に応じた調整信号を出力する。これにより、信号制御システム220は、FOVの調整回数を低減させ、FOVの最適化に要する時間を短くできる。
【0069】
本実施の形態にかかる調整信号出力部212は、調整値データを参照したうえで、指標の大きさに応じた視野角の調整量を設定する調整信号を出力する。
【0070】
図8は、実施の形態2にかかる信号制御方法のフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、ステップS230の後にステップS235を有する点が、
図6に示したフローチャートと異なる。また
図8に示すフローチャートは、ステップS250の後にステップS255を有する点が、
図6に示したフローチャートと異なる。
【0071】
ステップS230において指標S1が第1閾値STH1未満であると判定された場合(ステップS230:YES)、信号制御システム220は、ステップS235に進む。
【0072】
ステップS235において、信号制御システム220は、第1閾値STH1と指標S1との差|STH1-S1|を算出する(ステップS235)。そして調整信号出力部212は、第1閾値STH1と指標S1との差と、記憶部213が記憶している調整値データとを参照して、FOVを狭める調整信号を出力する(ステップS240)。
【0073】
同様に、ステップS250において指標S1が第2閾値STH2以上であると判定された場合(ステップS250:YES)、信号制御システム220は、ステップS255に進む。
【0074】
ステップS255において、信号制御システム220は、第2閾値STH2と指標S1との差|STH2-S1|を算出する(ステップS255)。そして調整信号出力部212は、第2閾値STH2と指標S1との差と、記憶部213が記憶している調整値データとを参照して、FOVを拡げる調整信号を出力する(ステップS260)。
【0075】
以上、信号制御システム220は、短い処理時間によりFOVを調整する。これにより信号制御システム220は、通信システム1の通信状態の悪化を抑制できる。すなわち、本実施の形態は、光無線通信の通信状態の悪化を抑制する信号制御システム、信号制御方法およびプログラムを提供できる。
【0076】
<実施の形態3>
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3は、送信装置と受信装置との距離を参照することによりFOVを調整する点が、上述の実施の形態と異なる。
図9は、実施の形態3にかかる信号制御システム230のブロック図である。信号制御システム230は距離情報取得部231を有している。
【0077】
距離情報取得部231は、受信装置と送信装置との距離に関する距離情報を取得する。距離情報は、例えば飛行体10の測位情報と、基地局20が設置されている位置の情報との差を算出することにより取得される。すなわち距離情報取得部231は例えば、送信装置である飛行体10の位置情報と、送信装置である基地局20の位置情報と、から算出される距離情報を取得する。
【0078】
あるいは距離情報は、飛行体10と基地局20との直線距離を測定することにより取得されてもよい。飛行体10と基地局20との直線距離は、光信号の送信時刻と受信時刻との差により算出されてもよい。飛行体10と基地局20との直線距離は、飛行体10または基地局20が有する測距センサにより測定ないし算出されてもよい。
【0079】
本実施の形態にかかる調整信号出力部212は、上述の距離情報を加味して視野角の調整量を設定する。例えば調整信号出力部212は、FOVを変更する場合に、飛行体10と基地局20との直線距離が大きい程、調整信号に含まれるFOVの変更の幅を小さくする。これにより、信号制御システム230は、調整信号をより好適に設定できる。
【0080】
図10は、実施の形態3にかかる信号制御方法のフローチャートである。
図10のフローチャートは、ステップS220とステップS230の間にステップS225を含む点が、
図8に示したフローチャートと異なる。
【0081】
ステップS220において、信号制御システム230の指標算出部211が指標S1を算出した後に、信号制御システム230は、距離情報を取得する(ステップS225)。
【0082】
本実施の形態にかかる信号制御システム230は、ステップS240において、距離情報をさらに加味して、調整信号を出力する。同様に、信号制御システム230は、ステップS260において、距離情報をさらに加味して、調整信号を出力する。
【0083】
以上、実施の形態3について説明したが、実施の形態3にかかるフローチャートにおいて、ステップS225は、ステップS220より前であってもよい。ステップS225は、ステップS230より後であって、ステップS240の前、あるいはステップS260の前であってもよい。
【0084】
上述の通り、本実施の形態にかかる信号制御システム230は、距離情報を加味することにより、FOVの調整の幅を好適に設定する。これにより、本実施の形態は、光無線通信の通信状態の悪化を抑制する信号制御システム、信号制御方法およびプログラムを提供できる。
【0085】
<実施の形態4>
次に、実施の形態4について説明する。実施の形態4は、光通信プロトコルにおける相対的に高いレイヤである通信速度を評価する点が、上述の実施の形態と異なる。
図11は、実施の形態4にかかる信号制御システム240のブロック図である。信号制御システム240は、速度評価部241および閾値設定部242を有している。
【0086】
速度評価部241は、送信装置から受信した信号にかかる通信速度を評価する。この場合、速度評価部241は例えば基地局20が受信した光信号を処理することにより、TCP(Transmission Control Protocol)におけるスループットを測定し、このスループットが所望の範囲か否かを評価する。これにより信号制御システム240は、例えば映像のストリーミングのように所定の転送レートが要求される通信が問題無く処理できるか否かを評価する。
【0087】
本実施の形態にかかる閾値設定部242は、上述の通信速度が所定の閾値速度より低い場合に、第2閾値STH2を相対的に大きい値に変更する。このように、物理層に近いレイヤにおける信号品質に加えて、アプリケーションレイヤにおける通信速度を評価することにより、信号制御システム240は、閾値をより好適に設定できる。
【0088】
あるいは本実施の形態にかかる閾値設定部242は、上述の通信速度が所定の閾値速度より速い場合に、第1閾値STH1を相対的に小さい値に変更するものであってもよい。
【0089】
図12は、実施の形態4にかかる信号制御方法のフローチャートである。
図12に示すフローチャートは、例えば信号制御システム240がFOVの調整を行った後に開始される。
【0090】
まず、信号制御システム240の速度評価部241は、受信信号の通信速度S2を測定する(ステップS31)。
【0091】
次に、速度評価部241は、通信速度S2が、予め設定された第3閾値STH3未満か否かを判定する(ステップS32)。通信速度S2が第3閾値STH3未満であると速度評価部241が判定しない場合(ステップS32:NO)、スループットに問題が無いため、信号制御システム240はFOVの調整を行わない。よって、この場合、信号制御システム240は処理を終了する。
【0092】
一方、通信速度S2が第3閾値STH3未満であると速度評価部241が判定した場合(ステップS32:YES)、スループットを上げる必要がある。そのため、信号制御システム240はFOVの調整を行う処理を進める。そのため、信号制御システム240は、ステップS33に進む。
【0093】
ステップS33において、信号制御システム240は光信号の指標S1が第1閾値STH1未満であって、且つ、第2閾値以上であるか否を判定する(ステップS33)。指標S1が第1閾値STH1未満であって、且つ、第2閾値以上であると判定されない場合(ステップS33:NO)、FOVの調整が適切でなくなっていることになる。そのため、信号制御システム240は、閾値の変更を行わず、ステップS35に移動し、FOV調整処理を実行する(ステップS35)。ステップS35で行う処理は、上述の実施の形態において説明した処理である。
【0094】
一方、指標S1が第1閾値STH1未満であって、且つ、第2閾値以上であると判定された場合(ステップS33:YES)、FOVの調整は設定の範囲内で適切に行われていることになる。そのため、信号制御システム240は、ステップS34に進み、FOV調整の閾値を変更する(ステップS34)。さらに信号制御システム240は、閾値を変更した後に、変更後の閾値を用いてFOV調整処理を実行する(ステップS35)。
【0095】
ステップS35においてFOVを調整した後、信号制御システム240は一連の処理を終了するか否かを判定する(ステップS36)。信号制御システム240が一連の処理を終了すると判定する場合(ステップS36:YES)、信号制御システム240は処理を終了する。一方、信号制御システム240が一連の処理を終了すると判定しない場合(ステップS36:NO)、信号制御システム240はステップS31に戻り、再び通信速度の評価を行う。
【0096】
以上、実施の形態4について説明した。上述の通り、本実施の形態にかかる信号制御システム230は、通信速度を評価することにより、FOVの調整の幅をより好適に設定する。これにより、本実施の形態は、光無線通信の通信状態の悪化を抑制する信号制御システム、信号制御方法およびプログラムを提供できる。
【0097】
<実施の形態5>
次に、実施の形態5について説明する。本実施の形態は、通信速度と受信信号の指標との対応関係を示す設定値データを利用する点が、上述の実施の形態と異なる。
図13は、実施の形態5にかかる信号制御システム250のブロック図である。信号制御システム250は、条件受付部251を有している。また信号制御システム250は、記憶部213が設定値データを記憶している。
【0098】
条件受付部251は、送信装置から受信する信号にかかる通信速度の要求条件を受け付ける。通信速度の要求条件とは、基地局20が受信する信号の通信速度を規制するための要求条件である。例えば基地局20が飛行体10から映像のストリーミングデータを受け取る場合に、この映像データを欠損することなく受信するにはこのデータの転送レートに対応した通信速度により信号を受信する必要がある。この場合、このデータの転送レートに対応した通信速度が要求条件となり得る。
【0099】
本実施の形態にかかる速度評価部241は、通信速度を評価する。本実施の形態において通信速度を評価するとは、すなわち通信速度を測定することである。
【0100】
本実施の形態にかかる記憶部213は、設定値データを記憶する。設定値データは、
指標の大きさと通信速度との対応関係を示すものである。設定値データは例えば、指標の値と通信速度とが1対1で紐付いた数値の組み合わせが複数集まったものである。
【0101】
信号制御システム250は、飛行体10から受信した信号の指標と通信速度のそれぞれを取得し、取得したこれらの値と、記憶部213が記憶する設定値データとを照合する。より具体的には、閾値設定部242は、まず、速度評価部241が測定した通信速度(測定速度)に対応する通信速度に最も近い値(参照速度)を参照するとともに、この通信速度(参照速度)に対応する指標(参照指標)を参照する。そして閾値設定部242は、参照した設定値に含まれる指標(参照指標)と、実際に受信した信号の指標(算出指標)との差を算出する。
【0102】
さらに閾値設定部242は、この差が所定の範囲を越えていた場合には、受信した信号にかかる指標の大きさと通信速度とが設定値データに対応していないと判定する。この場合、閾値設定部242は、FOVの調整をするための指標の閾値である第1閾値STH1および第2閾値STH2の少なくともいずれか一方を、通信速度の条件に対応するよう変更する。
【0103】
次に、
図14を参照して信号制御システム250が実行する処理について説明する。
図14は、実施の形態5にかかる信号制御方法のフローチャートである。
図14に示すフローチャートは例えば飛行体10が送信した信号を基地局20が受信したことにより開始する。なお、
図14のフローチャートを実行する前に、信号制御システム250は条件受付部251を介して要求条件を予め受け付けているものとする。
【0104】
まず信号制御システム250の指標算出部211は、受信信号の指標S1を算出する(ステップS41)。
【0105】
次に、速度評価部241は、上記受信信号の通信速度S2を測定する(ステップS42)。
【0106】
次に、閾値設定部242は、指標S1と通信速度S2が設定値データに対応しているか否かを判定する(ステップS43)。指標S1と通信速度S2が設定値データに対応していると判定する場合(ステップS43:YES)、信号制御システム250はステップS45に進む。指標S1と通信速度S2が設定値データに対応していると判定しない場合(ステップS43:NO)、信号制御システム250はステップS44に進む。
【0107】
ステップS44において、閾値設定部242は、FOVの調整をするための指標の閾値である第1閾値STH1および第2閾値STH2の少なくともいずれか一方を、通信速度の条件に対応するよう変更する(ステップS44)。
【0108】
ここで、一例として、測定速度に対応する算出指標が、設定値データの参照指標よりも低い場合について説明する。この場合、実際に受信した信号の信号品質は、設定値データより相対的に悪い状態である。換言すると、この場合、信号制御システム250は、設定値データより相対的に悪い信号品質を受信した場合であっても、所望の通信速度を実現する可能性がある。そのため、閾値設定部242は、第1閾値STH1を相対的に低い値に変更し得る。
【0109】
別の例として、測定速度に対応する算出指標が、設定値データの参照指標よりも高い場合について説明する。この場合、実際に受信した信号の信号品質は、設定値データより相対的に良い状態である。換言すると、この場合、信号制御システム250は、設定値データより相対的に良い信号品質を受信した場合であっても、所望の通信速度が実現できない可能性がある。そのため、閾値設定部242は、第2閾値STH2を相対的に高い値に変更し得る。
【0110】
ステップS45において、信号制御システム250は光信号の指標S1が第1閾値STH1未満であって、且つ、第2閾値以上であるか否を判定する(ステップS45)。指標S1が第1閾値STH1未満であって、且つ、第2閾値以上であると判定されない場合(ステップS45:NO)、信号制御システム250は、ステップS46に移動し、FOV調整処理を実行する(ステップS46)。ステップS46で行う処理は、上述の実施の形態において説明した処理である。ステップS46の後、信号制御システム250はステップS47に進む。
【0111】
一方、指標S1が第1閾値STH1未満であって、且つ、第2閾値以上であると判定された場合(ステップS45:YES)、FOVの調整は設定の範囲内で適切に行われていることになる。そのため、信号制御システム240は、ステップS47に進む。
【0112】
ステップS47において信号制御システム250は、一連の処理を終了するか否かを判定する(ステップS47)。信号制御システム250が一連の処理を終了すると判定する場合(ステップS47:YES)、信号制御システム250は処理を終了する。一方、信号制御システム250が一連の処理を終了すると判定しない場合(ステップS47:NO)、信号制御システム250はステップS41に戻り、処理を続ける。
【0113】
以上、実施の形態5について説明した。上述の構成により、信号制御システム250は、通信プロトコルの高いレイヤにおける通信速度が所望の状態になるように、閾値の変更をする。これにより、信号制御システム250は、所望の通信速度を実現するための信号制御方法を実行する。あるいは信号制御システム250は、所望の通信速度を実現しつつ物理レイヤに近い信号の信号品質をモニタしながらFOVを調整する。なお、ここでも、上述の通り、第1閾値STH1と第2閾値STH2とは同じ値であってもよい。
【0114】
これにより、本実施の形態は、光無線通信の通信状態の悪化を抑制する信号制御システム、信号制御方法およびプログラムを提供できる。
【0115】
なお、上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0116】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0117】
1 通信システム
10 飛行体
11 制御ブロック
12 測位ブロック
13 ジャイロセンサ
14 通信ブロック
15 操作受付部
16 駆動装置
17 カメラ
18 バッテリ
19 光通信部
20 基地局
21 演算装置
22 記憶装置
23 駆動装置
24 受信部
25 送信部
26 操作受付部
100 光信号調整部
210 信号制御システム
211 指標算出部
212 調整信号出力部
213 記憶部
220 信号制御システム
230 信号制御システム
231 距離情報取得部
240 信号制御システム
241 速度評価部
242 閾値設定部
250 信号制御システム
251 条件受付部