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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168392
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】監視装置及び監視方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20241128BHJP
   F16C 19/52 20060101ALI20241128BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20241128BHJP
   F16N 29/00 20060101ALI20241128BHJP
   F16N 29/04 20060101ALI20241128BHJP
   G01M 13/04 20190101ALI20241128BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C19/52
F16C19/38
F16N29/00 D
F16N29/04
G01M13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085009
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 純一
【テーマコード(参考)】
2G024
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024BA12
2G024BA27
2G024CA21
2G024CA30
3J217JA02
3J217JA17
3J217JA23
3J217JA38
3J217JB23
3J217JB27
3J217JB84
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA77
3J701CA40
3J701FA13
3J701FA21
3J701FA26
3J701GA34
3J701XB03
3J701XB24
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で正確に潤滑油を監視できる監視装置及び監視方法を提供する。
【解決手段】軸受部の潤滑油を監視する監視装置であって、前記軸受部における外輪及び内輪との間を視野に含めるセンサ部を先端に設け、前記外輪と前記内輪との間から流れ出る前記潤滑油に向けて光照射を行うと共に、前記光照射に基づく前記潤滑油からの反射光を受光する検出装置と、前記検出装置にて受光した前記反射光における色情報及び光強度の少なくとも一方に基づいて、前記潤滑油の劣化の有無を判定する演算装置と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受部の潤滑油を監視する監視装置であって、
前記軸受部における外輪及び内輪との間を視野に含めるセンサ部を先端に設け、前記外輪と前記内輪との間から流れ出る前記潤滑油に向けて光照射を行うと共に、前記光照射に基づく前記潤滑油からの反射光を受光する検出装置と、
前記検出装置にて受光した前記反射光における色情報及び光強度の少なくとも一方に基づいて、前記潤滑油の劣化の有無を判定する演算装置と、
を有する、監視装置。
【請求項2】
前記演算装置は、
未使用の潤滑油に対して光照射を行った際に受光される反射光の初期色情報及び初期光強度を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記初期色情報及び前記初期光強度の少なくとも一方と、前記検出装置にて受光された前記色情報及び前記光強度の少なくとも一方とに基づいて、前記外輪と前記内輪との間から流れ出る前記潤滑油の適合度を算出する算出部と、
前記算出部にて算出された前記適合度と、予め設定された前記適合度に関する閾値とを比較して、前記潤滑油の劣化の有無を判定する劣化判定部と、
を有する、請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記演算装置は、前記潤滑油に対して劣化を有すると判定した場合に、劣化を有する旨の報知を行う出力部を更に有する、請求項1又は2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記演算装置は、前記検出装置にて受光された前記色情報及び前記光強度の少なくとも一方に基づいて、前記潤滑油における鉄粉濃度又は水分濃度を推定する濃度推定部を更に有する、請求項1又は2に記載の監視装置。
【請求項5】
前記検出装置は、前記軸受部の軸線に対して、0℃超え30℃以下の範囲の角度を有して配置される直線形状の挿入部を有する、請求項1又は2に記載の監視装置。
【請求項6】
軸受部の潤滑油を監視する監視方法であって、
前記軸受部における外輪及び内輪との間を視野に含めるセンサ部を先端に設け、前記外輪と前記内輪との間から流れ出る前記潤滑油に向けて光照射を行うと共に、前記光照射に基づく前記潤滑油からの反射光を受光し、
受光した前記反射光における色情報及び光強度の少なくとも一方に基づいて、前記潤滑油の劣化の有無を判定する、監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油の監視装置及び潤滑油の監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼分野等の工場設備においては、多数及び多種類の軸受部が使用されている。軸受部は、回転動作の潤滑性を維持するため、自動的に潤滑油を供給する構成を備えている。しかし、潤滑油の供給管等の破損により、潤滑油の供給が途絶えると、軸受部における潤滑性が維持されず、そのまま回転動作等を続けることで、軸受部の破損を招く。その結果、破損した軸受部の改修作業(取り換え等)を行うこととなり、工場設備の操業を停止する事態となる。このため、軸受部における潤滑油の供給状況の継続的な監視が必要となる。
【0003】
また、軸受部に供給された潤滑油は、軸受部の度重なる回転動作により、軸受部にて発生する鉄粉(摩耗粉)や、外部から浸入する水分等の混入が進行して劣化する。そして、劣化した潤滑油を循環させて繰り返し使用し続けると、軸受部における潤滑性を損なうことに留まらず、部品同士の摩擦に起因する設備上の損傷も招く。
【0004】
そのため、従来から、軸受部の潤滑油を監視する方法について検討が行われている。特許文献1には、軸受からドレインに排出されたグリースの可視光反射特性をドレイン内に設置された光学式センサによって計測することで、グリースを監視する技術が開示されている。しかし、特許文献1に開示された監視方法においては、ドレインに排出されたグリースの監視を行ったとしても、グリースが軸受からドレインに到達するまでのタイムラグが発生することから、軸受に存在する時点のグリースの性状(劣化)を正確に監視できない。
【0005】
そこで、例えば特許文献2には、鉄粉センサの先端部分を軸受内に差し込むことによって軸受内に封入されたグリースを直接監視する技術が開示されている。また、特許文献3には、軸受の側面に覗き窓を設け、覗き窓に固定されたセンサユニットによって覗き窓を介して軸受内の潤滑剤を監視する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-76379号公報
【特許文献2】特開2011-202626号公報
【特許文献3】特開2006-177715号公報
【特許文献4】特開2017-110926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の方法を適用した場合には、鉄粉センサを軸受に固定して先端部分を軸受内に差し込むため、軸受の振動による鉄粉センサの位置ずれや鉄粉センサの破損が発生するおそれがあり、グリースの継続的かつ安定的な監視が難しい。また、特許文献3の方法を適用した場合には、覗き窓を介して軸受内の潤滑剤を監視するため、監視するための装置と軸受内の潤滑剤とが離れた状態となり、潤滑剤の性状を正確に監視することが難しい。また、監視装置と軸受との間に窓を設けるため、監視装置の構成が複雑化するといった問題もある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、簡易な構成で正確に潤滑油を監視できる監視装置及び監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]軸受部の潤滑油を監視する監視装置であって、前記軸受部における外輪及び内輪との間を視野に含めるセンサ部を先端に設け、前記外輪と前記内輪との間から流れ出る前記潤滑油に向けて光照射を行うと共に、前記光照射に基づく前記潤滑油からの反射光を受光する検出装置と、前記検出装置にて受光した前記反射光における色情報及び光強度の少なくとも一方に基づいて、前記潤滑油の劣化の有無を判定する演算装置と、を有する、監視装置。
[2]前記演算装置は、未使用の潤滑油に対して光照射を行った際に受光される反射光の初期色情報及び初期光強度を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記初期色情報及び前記初期光強度の少なくとも一方と、前記検出装置にて受光された前記色情報及び前記光強度の少なくとも一方とに基づいて、前記外輪と前記内輪との間から流れ出る前記潤滑油の適合度を算出する算出部と、前記算出部にて算出された前記適合度と、予め設定された前記適合度に関する閾値とを比較して、前記潤滑油の劣化の有無を判定する劣化判定部と、を有する、[1]に記載の監視装置。
[3]前記演算装置は、前記潤滑油に対して劣化を有すると判定した場合に、劣化を有する旨の報知を行う出力部を更に有する、[1]又は[2]に記載の監視装置。
[4]前記演算装置は、前記検出装置にて受光された前記色情報及び前記光強度の少なくとも一方に基づいて、前記潤滑油における鉄粉濃度又は水分濃度を推定する濃度推定部を更に有する、[1]又は[2]に記載の監視装置。
[5]前記検出装置は、前記軸受部の軸線に対して、0℃超え30℃以下の範囲の角度を有して配置される直線形状の挿入部を有する、[1]又は[2]に記載の監視装置。
[6]軸受部の潤滑油を監視する監視方法であって、前記軸受部における外輪及び内輪との間を視野に含めるセンサ部を先端に設け、前記外輪と前記内輪との間から流れ出る前記潤滑油に向けて光照射を行うと共に、前記光照射に基づく前記潤滑油からの反射光を受光し、受光した前記反射光における色情報及び光強度の少なくとも一方に基づいて、前記潤滑油の劣化の有無を判定する、監視方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構成で正確に潤滑油を監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】監視装置の一例を示す概略構成図である。
図2】軸受部及び検出装置の一例を示す拡大構成図である。
図3】鉄粉濃度を有する潤滑油の劣化の有無の判定結果を示す図である。
図4】水分濃度を有する潤滑油の劣化の有無の判定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<監視装置>
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1に、本実施形態に係る監視装置10の構成を示す。図1は、監視装置10の一例を示す概略構成図である。
【0013】
監視装置10は、軸受部14の潤滑油を監視するためのものであり、検出装置17と、演算装置19とを有する。なお、本実施形態において、潤滑油にはグリースも含まれる。軸受部14は、周壁12と、エンドプレート13と、仕切壁15とを有する軸受箱11に収容されている。軸受部14は、内輪14aと、外輪14bと、コロ14dとを有する。外輪14bは、流路14cを有する。
【0014】
コロ14dは、外輪14bと内輪14aとの間に円転可能に設けられている。図1に示す通り、内輪14aと外輪14bとの間において、空隙部14eを挟んで一対のコロ14dが設けられている。そして、一対のコロ14dは、内輪14aと外輪14bとの間の間隙に沿って、軸受部14の周方向に複数設けられている。
【0015】
外輪14bは、周壁12に固定されている。内輪14aは、ロール回転軸Rを中心として回転するロール20のロール端部22の表面に設けられている。このため、ロール20におけるロール本体部21の回転と共にロール端部22が回転した際には、内輪14aも回転する。その際、周壁12に固定されている外輪14bは回転することなく、外輪14bと内輪14aとの間においてコロ14dが円転することで、周壁12に対するロール20の回転動作がスムーズに行われる。
【0016】
周壁12は、ロール本体部21と共に回転するロール端部22の周方向側を覆うように構成される。また、周壁12は、内部に軸受部14を有するように構成される。周壁12は、軸受部14に潤滑油を供給するための給油口12aを有する。周壁12は、軸受部14にて使用された潤滑油を排出するための排油口12bを有する。
【0017】
図1に示す実施形態は、図面に向かって上方が鉛直方向上側、下方が鉛直方向下側となっている。このため、軸受部14に潤滑油を供給する場合には、図面の上方に配置される給油口12aから潤滑油を供給することで、外輪14bの流路14cを経由して、コロ14dの空隙部14eに潤滑油が到達する。そして、ロール端部22の回転に伴う内輪14aの回転、及び、コロ14dの円転が行われることで、空隙部14eに溜まった潤滑油が、コロ14dと、内輪14aと、外輪14bとの間に亘って浸透する。そして、使用済みの潤滑油は、軸受部14における動作が行われることで、徐々に排油口12bから排出される。排油口12bから排出された潤滑油は、ろ過された後、再び給油口12aから軸受部14に供給される。
【0018】
エンドプレート13は、挿入孔13aを有する。また、エンドプレート13は、ロール端部22を挟んでロール本体部21と反対側の位置に設けられ、ロール端部22の端部側を覆う構成となっている。このため、ロール端部22は、周方向側を覆う周壁12及び端部側を覆うエンドプレート13により、囲繞されるように構成されている。同様に、軸受部14についても、周壁12及びエンドプレート13により、囲繞されるように構成されている。
【0019】
図1に示す通り、仕切壁15は、軸受部14とロール本体部21との間に設けられている。また、仕切壁15に設けられたシール部15aにより、潤滑油が軸受部14からロール本体部21へ漏洩することを防止している。軸受部14は、周壁12と、エンドプレート13と、仕切壁15とを有する軸受箱11に収容された構成となっている。即ち、軸受箱11は、軸受部14に供給された潤滑油を外部に漏洩させないように構成されている。
【0020】
給油口12aから供給されると共に外輪14bの流路14cを経由してコロ14dの空隙部14eに溜まった潤滑油の一部は、外輪14bと内輪14aとの間から軸受部14とエンドプレート13との間の空間に流れ出る。この場合、流れ出た潤滑油は、軸受箱11の鉛直方向下側(底部)に溜まり、図1の下方に設けられた排油口12bから排出される。
【0021】
次に、検出装置17の構成について、図2を用いて説明する。図2は、軸受部14及び検出装置17の一例を示す拡大構成図である。検出装置17は、挿入部17aと、センサ部17bとを有する。検出装置17において、挿入部17aは、直線形状の構成となっている。センサ部17bは、挿入部17aの先端部に設けられている。そして、図2に示す通り、エンドプレート13の挿入孔13aに挿入部17aを挿入して固定すると共に、先端部のセンサ部17bを軸受部14に近接させた状態とし、軸受部14の潤滑油の監視を行う。
【0022】
センサ部17bは、対象(潤滑油)に対して光照射を行うと共に、光照射に基づく対象(潤滑油)からの反射光を受光する。センサ部17bは、光照射として、白色の可視光を照射してよい。具体的に、センサ部17bは、軸受部14における外輪14b及び内輪14aとの間を視野に含め、外輪14bと内輪14aとの間から軸受箱11内に流れ出る潤滑油に対して光照射を行うと共に、光照射に基づく潤滑油からの反射光を受光する。
【0023】
ここで、軸受箱11における周壁12を介して、直線形状の挿入部17aを軸受箱11の内部に挿入した場合、センサ部17bの視野について、外輪14b及び内輪14aとの間を視野に含めることが困難となる。このため、本実施形態においては、軸受箱11を構成するエンドプレート13に形成された挿入孔13aを介して、軸受箱11の内部に挿入部17aを挿入する構成としている。
【0024】
センサ部17bは、外輪14b及び内輪14aとの間を視野に含めると共に、コロ14dのコロ最外部Mに対して所定の距離を設けた位置に配置される。即ち、センサ部17bを、コロ最外部Mに対して所定の距離を設けて配置することで、センサ部17bの軸受部14への巻き込みを防止できる。ここで、コロ最外部Mは、図2に示す通り、外輪14bと内輪14aとの間においてコロ14dが露出している領域の最外部を意味する。なお、センサ部17bが、コロ最外部Mに対して遠い位置に配置されると、外輪14bと内輪14aとの間から流れ出る潤滑油の量が少ない場合(給油と給油との間のタイミング等)に、センサ部17bからの照射光の発散に起因して反射光の光量が低下し、それに伴い正確な測定が困難となる。そのため、「所定の距離」は、1cm以内とすることが好ましい。一方、「所定の距離」は、センサ部17bと測定対象物(流れ出る潤滑油)との距離が過剰に近い場合に、センサ部17bにおける受光量の変動が生じるため、0.1cm以上とすることが好ましい。
【0025】
センサ部17bは、視野について、外輪14b及び内輪14aとの間を視野に含めると共に、コロ14dの表面から流れ出る潤滑油を視野に含めるように配置することが好ましい。具体的に、コロ14dのコロ回転軸Pの延長線よりも鉛直方向下側、かつ、コロ最外部Mの上側の範囲を視野に含めるように、配置することが好ましい。
【0026】
また、軸受箱11においては、外輪14bと内輪14aとの間から流れ出た潤滑油が鉛直方向に沿って移動するため、軸受箱11の鉛直方向下側(底部)に潤滑油が溜まる。このため、図1に示す軸受部14(内輪14a、外輪14b、コロ14d)のうち、鉛直方向下側(底部)に位置する軸受部14に対してセンサ部17bを配置した場合には、鉛直方向下側(底部)に溜まった潤滑油も視野に含むことになり、潤滑油の劣化の判定を正確に実施できない。このため、センサ部17bは、軸受箱11の鉛直方向上側(上部)に位置する軸受部14(内輪14a、外輪14b、コロ14d)に対向して配置することが好ましい。
【0027】
更に、センサ部17bの視野の角度について、軸受部14に対して所定の角度を有して配置することが好ましい。具体的に、軸受部14の軸線、すなわちロール回転軸Rに平行な線に対して、0℃超え30℃以下の範囲の角度を有して直線形状の挿入部17aを配置することが好ましい。本実施形態では、図2に示すように、ロール回転軸Rに平行な垂線Tに対して、0℃超え30℃以下の範囲の角度θを有して挿入部17aが配置されている。ここで、垂線Tは、外輪14b及び内輪14aの間に設けられるコロ14dのコロ最外部Mと外輪14bの外輪最外部Nとを結んだ直線Lに対する垂線である。
【0028】
直線形状の挿入部17aについて、所定の角度θを有して配置することで、センサ部17bの軸受部14に対する視野も所定の角度θを有することとなる。そのため、軸受部14に対して広い範囲に亘り光照射を行うと共に、広い視野からの反射光の受光が可能となる。なお、所定の角度θについて30℃を超えると、光照射の範囲が広がり過ぎてしまい、潤滑油以外の設備構成からの反射光の受光量が増加し、潤滑油の正確な監視が困難となることがある。
【0029】
次に、演算装置19の構成について、図1を用いて説明する。演算装置19は、記憶部19aと、算出部19bと、劣化判定部19cと、濃度推定部19dと、出力部19eとを有する。なお、演算装置19は、算出部19b及び濃度推定部19dの少なくとも何れか一方を有していればよい。演算装置19は、検出装置17のセンサ部17bにて受光した反射光における色情報及び光強度の少なくとも一方に基づいて、潤滑油の劣化の有無を判定する。
【0030】
ここで、潤滑油は、軸受部14にて繰り返し使用し続けた場合に、軸受部14にて発生する鉄粉(摩耗粉)や外部から浸入する水分等の混入が発生して、劣化が進行する。そして、潤滑油へ混入した鉄粉(摩耗粉)や水分等は、光に対する反射や散乱の変化をもたらす特性を有している。このため、潤滑油における劣化の有無を判定するに際し、潤滑油に光照射を行うと共に、光照射に基づく反射光の色情報及び光強度の少なくとも一方に基づいて、潤滑油における鉄粉等の混入の程度、即ち、潤滑油の劣化の有無を判定することができる。例えば、潤滑油であるグリースに鉄粉が混入した場合には、光照射に基づく反射光の色情報は「黒」に近いものとなり、反射光の光強度は減少して波長が短波長側へシフトする。一方、グリースに水分が混入した場合には、光照射に基づく反射光の色情報は「薄い色」となり、反射光の光強度は増加して波長が長波長側へシフトする。
【0031】
記憶部19aは、未使用の潤滑油に対して光照射を行った際に受光される反射光の初期色情報及び初期光強度を記憶する。算出部19bは、検出装置17のセンサ部17bと通信可能に接続されている。算出部19bは、センサ部17bにて受光した反射光における色情報及び光強度に関する情報をセンサ部17bから受信する。算出部19bは、記憶部19aに記憶された初期色情報及び初期光強度の少なくとも一方と、センサ部17bにて受光された色情報及び光強度の少なくとも一方に基づいて、外輪14bと内輪14aとの間から流れ出た潤滑油の適合度を算出する。その後、劣化判定部19cは、算出部19bにて算出された潤滑油の適合度と、予め設定された適合度に関する閾値とを比較して、潤滑油の劣化の有無を判定する。そして、出力部19eは、劣化判定部19cにて潤滑油に対して劣化を有すると判定した場合に、劣化を有する旨の報知を行う。閾値は、過去の操業実績に基づき、鉄粉濃度又は水分濃度の限界値と、潤滑油の色情報及び光強度の少なくとも一方との関係から決定してよい。閾値は、初期色情報及び初期光強度と同様に、予め記憶部19aに記憶されていてよい。ここで、適合度の算出は、初期色情報及び反射光の色情報に基づいた算出を行う場合には、互いのRGB値を比較して算出を行う。また、初期光強度及び反射光の光強度に基づいた適合度の算出を行う場合には、互いの光強度の波長分布を比較して算出を行う。適合度の算出は、反射光等の光の一致度の判定方法(特許文献4参照)を用いて算出してよい。
【0032】
潤滑油の劣化の判定においては、潤滑油の鉄粉濃度又は水分濃度を利用してもよい。この場合、濃度推定部19dについて、センサ部17bと通信可能に接続してよい。そして、濃度推定部19dは、センサ部17bにて受光された色情報及び光強度の少なくとも一方に基づいて、潤滑油における鉄粉濃度又は水分濃度を推定してよい。その後、劣化判定部19cは、濃度推定部19dにて算出された潤滑油の鉄粉濃度又は水分濃度と、予め設定された鉄粉濃度又は水分濃度に関する閾値とを比較して、潤滑油の劣化の有無を判定してよい。出力部19eは、劣化判定部19cにて潤滑油に対して劣化を有すると判定した場合に、劣化を有する旨の報知を行ってよい。閾値は、過去の操業実績に基づき、鉄粉濃度又は水分濃度の限界値から決定してよい。閾値は、予め記憶部19aに記憶されていてよい。
【0033】
この場合、予め、潤滑油における鉄粉濃度又は水分濃度と反射光の色情報又は光強度との関係式を作成してよい。具体的に、先ず、鉄粉濃度又は水分濃度が異なる複数の潤滑油を用意すると共に、それら複数の潤滑油への光照射に基づく反射光の色情報及又は光強度を測定する。その後、測定された鉄粉濃度又は水分濃度と反射光の色情報又は光強度との組み合わせパターンを蓄積すると共に、測定された鉄粉濃度又は水分濃度と反射光の色情報又は光強度との関係式を作成する。そして、作成された関係式に、新たに測定された潤滑油からの反射光の色情報又は光強度を代入することで、測定対象である潤滑油の鉄粉濃度又は水分濃度を推定してよい。測定された鉄粉濃度又は水分濃度と反射光の色情報又は光強度との関係式は、予め記憶部19aに記憶されていてよい。
【0034】
<監視方法>
以上の構成を踏まえ、本発明における監視方法は、軸受部14の潤滑油を監視する監視方法であって、軸受部14における外輪14b及び内輪14aとの間を視野に含めるセンサ部17bを先端に設け、外輪14bと内輪14aとの間から流れ出る潤滑油に向けて光照射を行うと共に、光照射に基づく潤滑油からの反射光を受光し、受光した反射光における色情報及び光強度の少なくとも一方に基づいて、潤滑油の劣化の有無を判定する。
【0035】
以上に述べた通り、本実施形態に係る監視装置及び監視方法によれば、軸受箱11の内部に検出装置17を挿入し、軸受部14に対して所定の距離を有する位置に検出装置17のセンサ部17bを配置することで、軸受部14から流れ出る潤滑油を簡易な構成で正確に監視することができる。
【0036】
特に、本実施形態では、検出装置17を軸受箱11のエンドプレート13に固定し、外輪14bと内輪14aとの間から流れ出る潤滑油を監視する。このため、検出装置17を軸受部14に固定して軸受部14内の潤滑油を監視する構成と比較して、検出装置17(センサ部17b)の軸受部14への巻き込みを防止できる。更に、ロール端部22の回転動作に伴い軸受部14において振動が発生しても、検出装置17(センサ部17b)の位置ずれを抑制することができる。
【0037】
本実施形態においては、軸受部14について、コロ14dを有する構成を述べたものの、軸受部の構成を限定することなく、玉軸受等の他の転がり軸受や、転がり軸受以外の滑り軸受等であっても、本発明に適用可能である。
【0038】
また、本実施形態においては、図1に示す通り、ロール回転軸Rが水平方向に延びるロール20のロール端部22に軸受部14が設けられている構成を述べたものの、ロール20の延びる方向を限定することなく、例えば、ロール回転軸Rが鉛直方向に延びる構成であっても、本発明を適用可能である。
【0039】
更に、本実施形態においては、検出装置17にて受光した反射光における色情報及び光強度の少なくとも一方に基づいて潤滑油の劣化の有無を判定する構成を述べたものの、適合度の算出は、反射光における色情報及び光強度の両方に基づいて算出することが望ましい。潤滑油からの反射光の光強度及び色情報の両方に基づいて潤滑油の劣化を判定することで、潤滑油の鉄粉濃度及び水分濃度の微小な変化に基づく劣化の判定が可能となる。
【実施例0040】
本発明に係る監視装置及び監視方法を用いて、軸受部14の潤滑油の劣化の有無を監視した実施結果を説明する。
【0041】
先ず、潤滑油に鉄粉が混入されている場合に、潤滑油の劣化の有無を判定可能か、否か検証を行った。潤滑油は、未使用の潤滑油として鉄粉の濃度を0質量%とするサンプルを用意し、使用済みの潤滑油として鉄粉濃度を変更したサンプルを数種類用意した。そして、予め、未使用の潤滑油について、光照射を行うと共に反射光を受光し、受光された光における初期色情報及び初期光強度を演算装置19に記憶させた。その後、数種類用意した鉄粉濃度を有する潤滑油を軸受部14に供給し、劣化の有無の判定を行った。判定は、鉄粉の濃度を0質量%とする未使用の潤滑油における初期色情報及び初期光強度を基準とし、鉄粉濃度を有するその他のサンプルから得られた色情報及び光強度の少なくとも一方との適合度を算出すると共に、鉄粉濃度の限界値(鉄粉濃度が0.6質量%)における適合度を閾値として設定した。このとき、未使用の潤滑油の適合度が1000であり、鉄粉濃度の限界値における適合度(閾値)は8000であった。閾値は、過去の操業実績に基づき、鉄粉濃度の限界値と、潤滑油の色情報及び光強度の少なくとも一方との関係から決定した。
【0042】
図3に、鉄粉濃度を有する潤滑油の劣化の有無の判定結果を示す。図3に示す通り、潤滑油の鉄粉濃度の増加に伴い、基準とする未使用の潤滑油との適合度は減少した。そして、鉄粉濃度が0.6質量%のサンプルを検証した際に、適合度が閾値(800)を下回ったことにより、出力部19eにて報知することができた。
【0043】
次に、潤滑油に水分が混入されている場合に、潤滑油の劣化の有無を判定可能か、否か検証を行った。潤滑油は、未使用の潤滑油として水分の濃度を0質量%とするサンプルを用意し、使用済みの潤滑油として水分濃度を変更したサンプルを数種類用意した。そして、予め、未使用の潤滑油について、光照射を行うと共に反射光を受光し、受光された光における初期色情報及び初期光強度を演算装置19に記憶させた。その後、数種類用意した水分濃度を有する潤滑油を軸受部14に供給し、劣化の有無の判定を行った。判定は、水分の濃度を0質量%とする未使用の潤滑油における初期色情報及び初期光強度を基準とし、水分濃度を有するその他のサンプルから得られた色情報及び光強度の少なくとも一方との適合度を算出すると共に、水分濃度の限界値(水分濃度が10質量%)における適合度を閾値として設定した。このとき、未使用の潤滑油の適合度が1000であり、水分濃度の限界値における適合度(閾値)は700であった。本実施例においても、閾値は、過去の操業実績に基づき、水分濃度の限界値と、潤滑油の色情報及び光強度の少なくとも一方との関係から決定した。
【0044】
図4に、水分濃度を有する潤滑油の劣化の有無の判定結果を示す。図4に示す通り、潤滑油の水分濃度の増加に伴い、基準とする未使用の潤滑油との適合度は減少した。そして、水分濃度が10質量%のサンプルを検証した際に、適合度が閾値(700)以下となったため、出力部19eにて報知することができた。
【0045】
なお、実施例にて用いたサンプルは、未使用の潤滑油及び鉄粉濃度を有する潤滑油と、未使用の潤滑油及び水分濃度を有する潤滑油とについて、検証を行っているものの、本発明はこの実施例にて用いたサンプルに限らず、任意の潤滑油に対して適用可能である。適用する潤滑油に即して、劣化の判定に用いる閾値の設定も適宜可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 監視装置
11 軸受箱
12 周壁
12a 給油口
12b 排油口
13 エンドプレート
13a 挿入孔
14 軸受部
14a 内輪
14b 外輪
14d コロ
15 仕切壁
15a シール部
17 検出装置
17a 挿入部
17b センサ部
19 演算装置
19a 記憶部
19b 算出部
19c 劣化判定部
19d 濃度推定部
19e 出力部
20 ロール
21 ロール本体部
22 ロール端部
L 直線
M コロ最外部
N 外輪最外部
P コロ回転軸
R ロール回転軸
図1
図2
図3
図4