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  • 特開-壁紙及び壁紙の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168395
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】壁紙及び壁紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 27/20 20060101AFI20241128BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241128BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20241128BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20241128BHJP
   D21H 19/66 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
D21H27/20 A
B32B27/00 E
E04F13/07 B
B32B27/10
D21H19/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085014
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 槙一
(72)【発明者】
【氏名】南部 祐一
【テーマコード(参考)】
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
4F100AA20
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK03B
4F100AK04B
4F100AK15
4F100AK15B
4F100AK25
4F100AK68B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA32D
4F100BA42B
4F100CA04
4F100CA23
4F100CA23D
4F100DE01
4F100DE01D
4F100DG10
4F100DG10A
4F100EH46
4F100EJ42
4F100EJ42A
4F100EJ42B
4F100EJ42C
4F100EJ42D
4F100EJ50
4F100EJ50A
4F100EJ50B
4F100EJ50C
4F100EJ50D
4F100EJ86
4F100EJ86A
4F100EJ86B
4F100EJ86C
4F100EJ86D
4F100GB08
4F100HB31
4F100HB31C
4F100JJ07
4F100JN21
4F100JN21B
4F100YY00A
4F100YY00D
4L055AG04
4L055AG58
4L055AG64
4L055AG66
4L055AG89
4L055AH02
4L055AH50
4L055AJ01
4L055AJ04
4L055BE08
4L055EA08
4L055EA14
4L055FA12
4L055FA30
4L055GA23
(57)【要約】
【課題】グロスマットな意匠感を維持しつつ、立体的な意匠感を得ることの可能な壁紙を提供する。
【解決手段】壁紙10は、紙基材1の上に、基体樹脂層2と、絵柄が印刷された絵柄印刷層3と、表面保護層4とがこの順に積層されて形成される。絵柄印刷層3は同一平面をなす第一絵柄形成部3a及び第二絵柄形成部3bを有し、表面保護層4は、上面視で第一絵柄形成部3a及び第二絵柄形成部3bのうちの一方の絵柄形成部例えば第二絵柄形成部3bのみと重なり、この第二絵柄形成部3bと同調するように配置される。また、第一絵柄形成部3aと第二絵柄形成部3bのうちの他方の絵柄形成部例えば第一絵柄形成部3aと表面保護層4とは光沢差を有する。そのため、グロスマットな意匠感を維持しつつ、立体的な意匠感を発現することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の上に、基体樹脂層と、絵柄が印刷された絵柄印刷層と、表面保護層とがこの順に積層された壁紙であって、
前記絵柄印刷層は同一平面をなす第一絵柄形成部及び第二絵柄形成部を有し、
前記表面保護層は、上面視で前記第一絵柄形成部及び前記第二絵柄形成部のうちの一方の絵柄形成部のみと重なり、当該一方の絵柄形成部と同調するように配置され、
前記第一絵柄形成部及び前記第二絵柄形成部のうちの他方の絵柄形成部と前記表面保護層とが光沢差を有することを特徴とする壁紙。
【請求項2】
前記表面保護層は、マットコート剤が添加された樹脂層であることを特徴とする請求項1に記載の壁紙。
【請求項3】
前記表面保護層の塗布量は、4[g/m]以上6[g/m]以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の壁紙。
【請求項4】
前記基体樹脂層は、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂のうちの少なくとも一つを含む層であることを特徴とする請求項1に記載の壁紙。
【請求項5】
前記表面保護層は、合成樹脂ビーズ及び無機化合物のフィラーのうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の壁紙。
【請求項6】
前記紙基材は、坪量が50[g/m]以上100[g/m]以下の範囲内であり且つ厚みが80[μm]以上150[μm]以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の壁紙。
【請求項7】
紙基材の一方の面に、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂のうちの少なくとも一つを含む基体樹脂層を形成する工程と、
前記基体樹脂層の上に、同一平面をなす第一絵柄形成部及び第二絵柄形成部を含む絵柄印刷層を形成する工程と、
表面保護層を、上面視で前記第一絵柄形成部及び前記第二絵柄形成部のうちの一方の絵柄形成部のみと重なり且つ当該一方の絵柄形成部と同調するように当該一方の絵柄形成部の上に形成する工程と、
前記紙基材と前記基体樹脂層と前記絵柄印刷層と前記表面保護層とが積層された積層体を、当該積層体の表面温度が130[℃]以上200[℃]以下の範囲内となるように加熱する工程と、
当該加熱する工程後、前記積層体を冷却し乾燥させる工程と、を備えることを特徴とする壁紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙及び壁紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁面装飾等に用いる化粧用シートは、表面の艶が低いことが好まれる。このため、建築物の壁面装飾等に用いる化粧用シートとしては、例えば特許文献1に開示されているグロスマット化粧用シートを用いることが多い。特許文献1に開示されているグロスマット化粧用シートは、ケミカルエンボス法を用い、表面保護層の構成を、艶消しされた層であるマット樹脂層と、艶出しされた層であるグロス樹脂層と、を含む構成としたものである。また、絵柄印刷層に印刷した絵柄と表面保護層の外観とが同調した意匠を得ることが可能なグロスマット化粧用シート(例えば、特許文献2参照。)等も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5742972号公報
【特許文献2】特開2018-122574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように、ケミカルエンボス法を用いて、マット樹脂層とグロス樹脂層とを含む表面保護層を得る方法にあっては、絵柄印刷層に印刷した絵柄と表面保護層の外観とが同調した意匠を得ることが困難であるという問題がある。また、絵柄印刷層と表面保護層とを同調するようにした方法にあっては、エンボス加工を行うと表面保護層の同調したグロスマット感が消失することがあり、また、エンボス加工を行わない場合には立体的な意匠感が得られないという問題がある。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、グロスマットな意匠感を維持しつつ、立体的な意匠感を得ることの可能な壁紙を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、紙基材の上に、基体樹脂層と、絵柄が印刷された絵柄印刷層と、表面保護層とがこの順に積層された壁紙であって、絵柄印刷層は同一平面をなす第一絵柄形成部及び第二絵柄形成部を有し、表面保護層は、上面視で第一絵柄形成部及び第二絵柄形成部のうちの一方の絵柄形成部のみと重なり、一方の絵柄形成部と同調するように配置され、第一絵柄形成部及び第二絵柄形成部のうちの他方の絵柄形成部と表面保護層とが光沢差を有する、壁紙が提供される。
【0007】
また、本発明の他の態様によれば、紙基材の一方の面に、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂のうちの少なくとも一つを含む基体樹脂層を形成する工程と、基体樹脂層の上に、同一平面をなす第一絵柄形成部及び第二絵柄形成部を含む絵柄印刷層を形成する工程と、表面保護層を、上面視で第一絵柄形成部及び第二絵柄形成部のうちの一方の絵柄形成部のみと重なり且つ一方の絵柄形成部と同調するように一方の絵柄形成部の上に形成する工程と、紙基材と基体樹脂層と絵柄印刷層と表面保護層とが積層された積層体を、積層体の表面温度が130[℃]以上200[℃]以下の範囲内となるように加熱する工程と、加熱する工程後、積層体を冷却し乾燥させる工程と、を備える、壁紙の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、グロスマットな意匠感を維持しつつ、立体的な意匠感を得ることの可能な壁紙を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る壁紙の一例を模式的に示す断面図である。
図2】参考例1に係る壁紙の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各厚みの比率などは現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状などが下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
<構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る壁紙10の一例を模式的に示す断面図である。
壁紙10は、紙基材1と、基体樹脂層2と、絵柄印刷層3と、表面保護層4と、を備え、紙基材1の上に、基体樹脂層2と、絵柄印刷層3と、表面保護層4とが、この順に積層されている。
壁紙10の厚さは、例えば、100[μm]以上1000[μm]以下の範囲内である。
【0012】
(紙基材1)
紙基材1は、壁紙用の裏打紙等、紙基材として通常使用されている材料を用いて形成される。紙基材1は、坪量が50[g/m]以上100[g/m]以下の範囲内であり、且つ厚さが80[μm]以上150[μm]以下の範囲内であることが好ましい。
紙基材1の材料を、上述した構成の例えば普通紙とすることで、壁紙10に対して、壁装材として求められる剛性を確保することができる。
【0013】
(基体樹脂層2)
基体樹脂層2は、紙基材1上に積層されている。なお、「紙基材1上」とは、図1中において、紙基材1の上側の面を表す。
基体樹脂層2は、例えば、ナイフコート法、ノズルコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、グラビアコート法、ロータリースクリーンコート法、リバースロールコート法等の塗工方法を用いて、紙基材1上に積層されている。
基体樹脂層2は、紙基材1の上側の面に、シート状に設けてもよく、絵柄模様状に設けてもよい。
【0014】
基体樹脂層2は、主成分が水性エマルジョン系樹脂、例えば塩化ビニル樹脂等からなる。基体樹脂層2となる樹脂には、無機フィラーが含有されている。
基体樹脂層2の塗布量は、80[g/m]以上230[g/m]以下の範囲内である。なお、基体樹脂層2の主成分が塩化ビニル樹脂からなる場合には、基体樹脂層2の塗布量は、塩化ビニル系樹脂の重合度で限定される。
【0015】
壁紙10に防火性能を付与する観点から、紙基材1と基体樹脂層2の合計重量が、200[g/m]以下であることが望ましい。
発泡樹脂層である基体樹脂層2には、発泡剤を混合し、加熱処理によって発泡させている。なお、基体樹脂層2には、発泡剤が混合されていなくてもよい。ここでは、発泡剤が混合されている場合について説明している。
【0016】
基体樹脂層2の発泡倍率は2倍以上8倍以下の範囲内に設定する。本実施形態では、一例として、基体樹脂層2の発泡倍率を、4倍以上6倍以下の範囲内に設定した場合について説明する。なお、ここでいう発泡倍率とは、(発泡前の樹脂の厚み)/(発泡後の樹脂の厚み)の値として表される。なお発泡後の樹脂の厚みとは発泡させた後、基体樹脂層2に対して厚みが変化するような加工が施される前の時点における厚みのことをいう。
【0017】
基体樹脂層2の塗布量及び発泡倍率を上記の値に設定することにより、不陸隠蔽性を得るために十分なボリューム感と、優れた表面強度を有する壁紙10を形成することが可能となる。
基体樹脂層2の材料としては、水性エマルジョンの形態で使用可能な樹脂、例えば、塩化ビニル樹脂や、ポリオレフィン系樹脂を用いることが可能である。また、基体樹脂層2の材料としては、特に、エチレンとエチレン以外の成分とをモノマーとするエチレン共重合体(以降の説明では、「エチレン共重合体」と記載する場合がある) のうち、少なくとも一種を用いることが好適である。
【0018】
さらに、基体樹脂層2の材料としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)が、好適に使用可能である。これに加え、基体樹脂層2の材料としては、エチレンーメチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレンメタクリル酸教授融合体(EMAA)、エチレン-αオレフィン共重合体が、好適に使用可能である。
【0019】
なお、基体樹脂層2の材料として塩化ビニル系樹脂を用いる場合、塩化ビニル系樹脂の重合度は、600以上とすることが好ましい。これは、基体樹脂層2に用いる塩化ビニル系樹脂の重合度を600以上とすることで、壁紙10の表面強度を高くすることが可能となるためである。
以上により、基体樹脂層2は、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂のうち少なくとも一つを含む熱可塑性樹脂を用いて形成されている。
【0020】
また、基体樹脂層2には、可塑剤、発泡剤、安定剤(発泡安定剤)、減粘剤、その他の有機系添加剤、無機粉体を、用途に応じて適宜混合する。
無機粉体は、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪砂、タルク、シリカ類、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、二酸化チタン等を含む。
また、無機粉体は、樹脂100部に対して、例えば、40部以上150部以下の範囲内で加える。なお、樹脂100部に対して加える無機粉体の量が150部を超えると、不燃性能が上がるものの、ボリューム感が低下するおそれがある。
【0021】
以下、基体樹脂層2に混合する、発泡剤と安定剤について説明する。
(発泡剤)
発泡剤としては、例えば、熱膨張性マイクロカプセル発泡剤、アゾ系、ヒドラジッド系、ニトロソ系、ADCA(アゾジカルボンアミド発泡剤)、炭酸水素ナトリウム等、公知の発泡化粧用シートで一般的に使用されている発泡剤を用いることが可能である。
【0022】
なお、発泡剤としては、熱膨張性マイクロカプセル発泡剤が、性能(発泡倍率、強度)の観点から好ましい。
また、発泡剤として、ADCAと炭酸水素ナトリウムを用いる場合、例えば、ADCAと炭酸水素ナトリウムとを3:1~1:3の割合とするとともに、二種類の合計が塩化ビニル系樹脂100部に対して1部以上4部以下の範囲内となるように混合する。これにより、発泡倍率の確保と、発泡表面の荒れ防止が可能となる。
【0023】
発泡剤の添加量としては、基体樹脂層2の厚さと発泡倍率にもよるが、樹脂100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下の範囲内、特に、5重量部以上15重量部以下の範囲内程度が好適である。
【0024】
(安定剤)
安定剤としては、例えば、二種類の安定剤(バリウム塩系と亜鉛塩系)を1:4~4:1の割合とするとともに、二種類の合計が塩化ビニル系樹脂100部に対して1部以上4部以下の範囲内となるように混合する。これにより、熱安定性の付与と、発泡厚さの増加が可能となる。
【0025】
(絵柄印刷層3)
絵柄印刷層3は、第一絵柄形成部3aと、第一絵柄形成部3a同士の間に形成された第二絵柄形成部3bと、を有する層であり、第一絵柄形成部3a及び第二絵柄形成部3bは同一平面を形成し、基体樹脂層2上に積層されている。第一絵柄形成部3aと第二絵柄形成部3bとを印刷することにより、所定の絵柄が形成されるようになっている。なお、「基体樹脂層2上」とは、図1中において、基体樹脂層2の上側の面を表す。
第一絵柄形成部3aは、例えば、印刷インキ(非発泡性インキ)や水性エマルジョン樹脂を主成分とした発泡性インキ、塩化ビニルペースト樹脂を主成分とした発泡性インキ等を用いて形成されている。
【0026】
また、第一絵柄形成部3aは、カレンダー成形法、コーティング法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インキジェット印刷法等を用いて、基体樹脂層2上に積層して形成されている。
【0027】
また、第一絵柄形成部3aは、シート状、または、絵柄模様状に設ける。なお、基体樹脂層2上において、絵柄印刷層3と同一平面上に、パールインキ柄層を印刷しても良い。また、第一絵柄形成部3aと表面保護層4とは光沢差が生じるように設定され、第一絵柄形成部3aは、表面保護層4よりも高い光沢度となるように設定される。なお、ここでいう第一絵柄形成部3aの光沢度とは、基体樹脂層2の上に積層された第一絵柄形成部3aの光沢度のことをいう。つまり、第一絵柄形成部3aの光沢度は、第一絵柄形成部3aが積層された基体樹脂層2の光沢度を反映し、本実施形態では、後述のように加熱することで基体樹脂層2の光沢度を調整していることから、第一絵柄形成部3aと表面保護層4との光沢差は、加熱温度、この加熱により得られる基体樹脂層2の光沢度、及び基体樹脂層2の上に積層される第一絵柄形成部3aの光沢度と、表面保護層4の光沢度とで決定される。第一絵柄形成部3aと表面保護層4との光沢差の大きさは、光沢差により意匠感を得ることができ、また、立体的意匠感等が得られる大きさであればよく、例えば、JIS Z-8741に準じた鏡面光沢度測定法により測定された60°入射の光沢値で、2以上30以下の程度に設定される。
【0028】
第二絵柄形成部3bは、絵柄が形成され、且つ第一絵柄形成部3aと濃度の異なるパターンを有する。濃度の異なる第一絵柄形成部3aと第二絵柄形成部3bとで同一平面を形成することによって、所定の絵柄が形成されるようになっている。
【0029】
(表面保護層4)
表面保護層4は、絵柄印刷層3の上に部分的に形成される。なお、「絵柄印刷層3上」とは、図1中において、絵柄印刷層3の上側の面を表す。表面保護層4は、艶消しのためのマットコート剤が添加された樹脂層であるマット樹脂層からなる。表面保護層4は、上面視で、第二絵柄形成部3bと重なる位置のみに形成される。表面保護層4が形成されていない領域は、第一絵柄形成部3aが露出した状態であり、第一絵柄形成部3aと表面保護層4との段差により壁紙10の表面に凹凸を形成している。
【0030】
表面保護層4は、上面視で、第二絵柄形成部3bと重なる位置に形成され、第二絵柄形成部3bと表面保護層4とが同調するようになっている。これにより、第二絵柄形成部3bの絵柄を、視覚と触感との両方で表現できる。
表面保護層4は、グラビア印刷法、ナイフコート法、ノズルコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法等を用いて、絵柄印刷層3の上に積層して形成される。
【0031】
表面保護層4は、表面保護層4を通して、第二絵柄形成部3bの絵柄を透視できる程度に透明または半透明な材料(樹脂)で形成されている。表面保護層4、すなわちマット樹脂層の材料としては、例えば、熱硬化型樹脂が好ましい。熱硬化型樹脂としては、例えば、絵柄印刷層3との接着性等を考慮すれば、2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂(バインダー)に、マットコート剤としてシリカ粒子等の艶消剤、及び合成樹脂ビーズを添加した混合物を用いるのが好ましい。艶消剤を添加することにより、表面保護層4の光沢度を低くし、表面保護層4と第一絵柄形成部3aとで光沢差が生じるようにしている。
【0032】
このように、表面保護層4は、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂、つまり、下層(第二絵柄形成部3b)の光沢の影響を受けない樹脂で形成し、表面保護層4と第一絵柄形成部3aとに光沢差が生じるようにしている。そのため、視覚的な立体感を適切に表現できる。また、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂は、硬度が高いため、壁紙10の耐傷性を向上できる。
【0033】
シリカ粒子は、熱硬化型樹脂の全質量に対し、5質量%以上含むのが好ましい。これにより、表面保護層4の光沢を十分に低下することができ、表面保護層4と第一絵柄形成部3aとの光沢差を増大することができる。なお、シリカ粒子の上限は、熱硬化型樹脂の全質量に対し、35質量% 以下とする。
合成樹脂ビーズとしては、例えば、透明度の高いアクリル樹脂ビーズを用いることができる。これにより、表面保護層4の透明度を向上でき、意匠を付与するための絵柄印刷層3の絵柄をより明瞭に透視することができる。合成樹脂ビーズの平均粒径は30[μm]以上とする。また、溶剤としては、酢酸エチル、酢酸nブチルを用いることができる。
【0034】
また、表面保護層4の表面は、接触式粗さ計で測定した最大高さRmax値を30[μm]以上とする。これにより、触感による立体感をより適切に感じさせることができる。
なお、本実施形態では、表面保護層4のバインダーとして、熱硬化型樹脂を用いる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、電離放射線硬化型樹脂を用いる構成としてもよい。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型樹脂が好ましい。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を使用できる。これにより、表面保護層4、つまり、壁紙10の最表面層の硬度を向上でき、壁紙10の耐摩耗性や、耐擦傷性、耐溶剤性等の表面物性を向上できる。また、例えば、バインダーとして、熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂との混合物を用いる構成としてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、表面保護層4として、熱硬化型樹脂に、合成樹脂ビーズを添加する例を示したが、例えば、合成樹脂ビーズに替えて、無機化合物のフィラーを添加する構成としてもよく、合成樹脂ビーズと無機化合物のフィラーとの両方を添加する構成としてもよく、合成樹脂ビーズ及び無機化合物のフィラーのうちの少なくとも一方を添加する構成であればよい。
【0036】
また、表面保護層4の形状は、特に限定されず、丸、四角形、六角形等の規則的に並んだ定形の形状としてもよく、不定型な絵柄形状としてもよい。また、絵柄印刷層3の絵柄と同調させた形状としてもよく、このようにすることによって、絵柄をよりリアルに見せることができる。
表面保護層4となる樹脂の塗布量は、4[g/m]以上6[g/m]以下の範囲内であることが好ましい。塗布量が4[g/m]よりも少ないと、十分なマット感が得られず、6[g/m]よりも多いと、不燃性能の要求を満たすことが困難となる。表面保護層4の厚みは、例えば、0.5[μm]以上30[μm]以下の範囲内であることが好ましい。
【0037】
<壁紙の製造方法>
以下、壁紙10の製造方法について説明する。
まず、紙基材1の一方の面に、基体樹脂層2となる樹脂を、例えばコーティング法を用いて塗布する。このとき、塗布量が、80[g/m]以上230[g/m]以下の範囲内となるように塗布し、基体樹脂層2を形成する。
次に、基体樹脂層2の上に、水性インキを用いたグラビア印刷法を用いて、第一絵柄形成部3a及び第二絵柄形成部3bを形成する。
【0038】
次に、例えば合成樹脂ビーズを添加したマット樹脂を使用し、第二絵柄形成部3bの上のみに、グラビア印刷により表面保護層4を形成する。
そして、紙基材1、基体樹脂層2、絵柄印刷層3及び表面保護層4からなる積層体を、表面温度が130℃以上200℃の範囲内となるように加熱し、その後冷却し乾燥させる。これによって、壁紙10が形成される。
【0039】
ここで、紙基材1、基体樹脂層2、絵柄印刷層3及び表面保護層4からなる積層体を、表面温度が130℃以上200℃の範囲内で加熱すると、基体樹脂層2の艶(光沢度)が上昇する。表面温度が130℃未満では、艶がそれほど上昇せず、逆に表面温度が200℃以上となると、基体樹脂層2に発泡剤が混入されている場合には、発泡材が過発泡となり、意匠性が低下する。
【0040】
基体樹脂層2の艶が上昇することにより、第一絵柄形成部3aの艶が上昇したことと同等の状態となり、結果的に、第一絵柄形成部3aと表面保護層4との光沢差が大きくなり、グロスマット意匠感を高めることができる。
【0041】
(効果)
(1)本実施形態では、同一平面をなす第一絵柄形成部3aと第二絵柄形成部3bとを含む絵柄印刷層3を形成し、第一絵柄形成部3aと表面保護層4とに光沢差が生じるようにし、さらに表面保護層4を、上面視で第二絵柄形成部3bのみと重なり、第二絵柄形成部3bと同調するように配置している。そのため、表面保護層4と第一絵柄形成部3aとの光沢差から、壁紙10の表面保護層4側の面である、壁紙10の表面側に凹凸感を出すことができる。そのため、例えば、エンボス加工等を用いなくとも、立体的な意匠感を得ることができ、表面保護層4と第二絵柄形成部3bとが同調し、グロスマット意匠感を有する立体的な意匠感を容易に得ることができる。
(2)さらに、シリカ粒子等のマットコート剤が添加された樹脂層を用いて表面保護層4を形成しているため、表面保護層4の光沢度が低下し、表面保護層4と第一絵柄形成部3aとの光沢差をより大きくすることができ、立体的な意匠感をより一層得ることができる。
(3)表面保護層4となる樹脂を絵柄印刷層3の上面に塗布する際に、その塗布量を、4[g/m]以上6[g/m]以下の範囲内としたため、十分なマット感を得ることができる。
(4)表面保護層4には、合成樹脂ビーズ及び無機化合物のフィラーのうちの少なくとも一方を混入するようにしたため、視覚的だけでなく、触覚的にも立体的な意匠感を与えることができる。そのため、エンボス加工を施すことなく、グロスマット同調による視覚的な立体感を維持しつつ、立体的な意匠感を付与することができる。
(5)第二絵柄形成部3bと表面保護層4とが同調するように形成されているため、基体樹脂層2に発泡剤を添加したとしても、第二絵柄形成部3bと表面保護層4との同調、また、グロスマット意匠感が消失することを抑制し、良好なグロスマット意匠感を有する壁紙10を実現することができる。
(6)絵柄印刷層3上に、透明または半透明な表面保護層4を有するため、絵柄印刷層3の絵柄を透視することができる。
(7)表面保護層4は、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を含み、さらにシリカ粒子等のマットコート剤を含む。そのため、表面保護層4の絵柄印刷層3との接着性や、壁紙10の変形追従性、耐傷性を向上できる。
(8)また、絵柄印刷層3の上に、表面保護層4を形成した後、表面が130[℃]以上200[℃]以下の範囲内となるように加熱している。そのため、基体樹脂層2の光沢度を向上させることができ、結果的に第一絵柄形成部3aの光沢度を向上させ、第一絵柄形成部3aと表面保護層4との光沢差を大きくすることができ、壁紙10のマットグロス感をより高めることができる。
【0042】
このように、基体樹脂層2の光沢度を向上させることで、第一絵柄形成部3aと表面保護層4との光沢差を大きくするようにしているため、第一絵柄形成部3aの光沢度を向上させるために、例えば、第一絵柄形成部3aの上に艶出し層を別途設ける等の必要はない。そのため、より簡易な製造工程で、マットグロス感のある壁紙を生成することができ、その分コスト削減を図ることができる。
【実施例0043】
以下、本実施形態の実施例及び比較例を示す。なお、本実施形態は以下に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
紙基材1として、坪量65g/m、厚み110[μm]の普通紙(例えばKJ特殊製紙株式会社製の「WK665IHT」)を使用した。
基体樹脂層2は、塩化ビニル樹脂として例えば、新第一塩ビ株式会社製の「PQLT」を使用し、これに可塑剤55部、充填材150部を加え、このペーストを、塗布量が200[g/m]となるように、コーティング法により紙基材1に塗布して形成した。
第一絵柄形成部3a及び第二絵柄形成部3bからなる絵柄印刷層3は水性インキを用いたグラビアインキで形成した。
【0045】
表面保護層4はマット樹脂(例えばシリカ)を使用し、グラビア印刷により、第二絵柄形成部3b上に同調するようにマット樹脂層を成形した。このとき塗布量が4[g/m]となるように成形した。また、マット樹脂には、合成樹脂ビーズ(例えばアクリルビーズ)を添加した。
表面保護層4となるマット樹脂を印刷した後、表面温度が170[℃]になるように加熱し、その後冷却・乾燥させて壁紙10を形成した。これにより、第一絵柄形成部3aと表面保護層4とに光沢差を発現させた。
【0046】
(実施例2)
表面保護層4となるマット樹脂の塗布量を3[g/m]とした以外は実施例1と同様にして壁紙10を形成した。これにより、第一絵柄形成部3aと表面保護層4とに光沢差を発現させた。
(実施例3)
表面保護層4となるマット樹脂の塗布量を7[g/m]とした以外は実施例1と同様にして壁紙10を形成した。これにより、第一絵柄形成部3aと表面保護層4とに光沢差を発現させた。
【0047】
(実施例4)
表面保護層4となるマット樹脂層を印刷した後、表面温度が120[℃]になるように加熱したこと以外は、実施例1と同様にして壁紙を形成した。これにより、第一絵柄形成部3aと表面保護層4とに光沢差を発現させた。
(実施例5)
表面保護層4となるマット樹脂層を印刷した後、表面温度が210[℃]になるように加熱したこと以外は、実施例1と同様にして壁紙を形成した。これにより、第一絵柄形成部3aと表面保護層4とに光沢差を発現させた。
【0048】
(実施例6)
表面保護層となるマット樹脂に、合成樹脂ビーズを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして壁紙を形成した。これにより、第一絵柄形成部3aと表面保護層4とに光沢差を発現させた。
(実施例7)
基体樹脂層の塗布量を60[g/m]としたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙を形成した。これにより第一絵柄形成部3aと表面保護層4とに光沢差を発現させた。
(実施例8)
基体樹脂層の塗布量を250[g/m]としたこと以外は、実施例1と同様にして壁紙を形成した。これにより第一絵柄形成部3aと表面保護層4とに光沢差を発現させた。
【0049】
(比較例1)
基体樹脂層の塗布量を70[g/m]とし、表面保護層の塗布量を3[g/m]とし、表面保護層4となるマット樹脂層を印刷した後、表面温度が110[℃]になるように加熱したこと以外は、実施例1と同様にして壁紙を形成した。この場合、第一絵柄形成部3aと表面保護層4とに光沢差が生じなかった。
【0050】
(参考例1)
参考例1として、図2に示す構成を有する壁紙10′を形成した。図2に示す壁紙10′は、図1に示す壁紙10において、表面保護層として第一表面保護層4aと第二表面保護層4bとを備えること以外は同一である。なお、同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0051】
図2に示す壁紙10′は、紙基材1と基体樹脂層2と絵柄印刷層3と表面保護層4′とがこの順に積層されて形成される。絵柄印刷層3は、第一絵柄形成部3aと第二絵柄形成部3bとを備える。表面保護層4′は、第一表面保護層4aと第二表面保護層4bとを備える。第一表面保護層4aは、絵柄印刷層3の上面全体を覆うように形成される。第二表面保護層4bは、第一表面保護層4aの上に形成され、且つ上面視で、第二絵柄形成部3bと同調するように、上面視で第二絵柄形成部3bのみと重なるように形成される。
【0052】
参考例1における壁紙10′は、次の手順で形成される。
紙基材1として、坪量65g/m、厚み110[μm]の普通紙(例えばKJ特殊製紙株式会社製の「WK665IHT」)を使用した。
基体樹脂層2は、塩化ビニル樹脂として例えば、新第一塩ビ株式会社製の「PQLT」を使用し、これに可塑剤55部、充填材150部を加え、このペーストを、塗布量が200[g/m]となるように、コーティング法により紙基材1へ塗布して形成した。
【0053】
第一絵柄形成部3a及び第二絵柄形成部3bからなる絵柄印刷層3は水性インキを用いたグラビアインキで形成した。
第一表面保護層4aはマット樹脂を使用し、絵柄印刷層3を形成した後、グラビア印刷により塗布量が3[g/m]となるように成形した。第二表面保護層4bは、合成樹脂ビーズ(例えばアクリルビーズ)を添加したグロス樹脂を使用し、第一表面保護層4aを成形した後、グラビア印刷により第二絵柄形成部3bに同調させてこの第二絵柄形成部3bの上に印刷した。第二表面保護層4bは、塗布量が3[g/m]となるように成形した。
その後、表面温度が170[℃]になるように加熱し、その後冷却・乾燥させて壁紙10′を形成した。これにより、表面保護層4と第一絵柄形成部3aとの間に光沢差が生じた。
【0054】
(評価方法及び評価基準)
実施例1、2、比較例1~5及び参考例1の壁紙それぞれを以下の方法により評価した。
(1)グロスマット意匠感
壁紙としてのグロスマットな意匠感について、10人の試験官に対し官能試験を実施した。
評価の指標は次の通りである。
◎:良いとした人 9~10人
〇:良いとした人 7~8人
△:良いとした人 1~6人
×:良いとした人 0人
【0055】
(2)立体的意匠感(手触り感)
壁紙としての立体的な意匠感(手触り感)について、10人の試験官に対し官能試験を実施した。
評価の指標は次の通りである。
◎:良いとした人 9~10人
〇:良いとした人 7~8人
△:良いとした人 1~6人
×:良いとした人 0人
【0056】
(3)不陸隠蔽性
厚さ100[μm]、直径20[mm]の円形シールを準不燃規格の石膏ボード(厚さ9.5[mm])に1枚貼り、石膏ボードに貼るときの糊の塗布量が20[g/m](固形分)になるように糊を塗布した壁紙を石膏ボードに施工した。そして、下地の円形シールが明確に検知できるかどうかを確認した。
評価の指標は次の通りである。
〇:明確には検知できない
△:やや検知できる。
×:明確に検知できる
【0057】
(4)不燃性能
実施例、比較例及び参考例で得た各壁紙に対して、コーンカロリーメータC3(株式会社東洋精機製作所製の燃焼試験機)を用いて、建築基準法で定められた発熱性試験法(ISO 5660)に基づく不燃材料の発熱性試験(50[kW/m]で20分加熱)を実施した。
評価の指標は次の通りである。
○:燃焼カロリーが6.0[MJ]以下。
△:燃焼カロリーが6.0[MJ]より大きく7.2[MJ]以下
×:燃焼カロリーが7.2[MJ]より大きい。
【0058】
(評価結果)
下記の表1に評価結果を示す。
なお、各評価項目の判定結果に応じた総合的な「判定」の指標は次の通りである。
◎:全ての評価項目の結果が「◎」又は「○」である。
○:いずれの評価項目も「×」がなく、「◎」が2以上である。
△:いずれの評価項目も「×」がなく、「△」が一つである。
×:一つでも「×」がある場合である。
【0059】
【表1】
【0060】
表1から、形成された壁紙に、光沢差が生じていれば、全ての評価項目を満足するが、光沢差が生じていなければ、グロスマット意匠感及び立体的意匠感を得ることができず、また、不陸隠蔽性及び不燃性能も低下することが確認された。
また、表面保護層の塗布量が4~6[g/m]の範囲内にある場合には、光沢差が生じ良好なグロスマット意匠感を得ることができるが、表面保護層の塗布量が4~6[g/m]の範囲外となると、グロスマット意匠感が低下することがわかる。
【0061】
また、表面保護層を形成した後、加熱する際の温度が130[℃]以上200[℃]以下の範囲内にある場合は、光沢差が生じ良好なグロスマット意匠感を得ることができるが、加熱する際の温度が130[℃]以上200[℃]以下の範囲外の場合には、グロスマット意匠感が低下することがわかる。
さらに、表面保護層に合成樹脂ビーズを添加しない場合には、立体的意匠感が低下することがわかる。
【0062】
また、基体樹脂層の塗布量が80~230[g/m]の範囲外になると、80[g/m]より少ないと不陸隠蔽性が低下し、230[g/m]より多いと不燃性能が低下することがわかる。
また、実施例1の壁紙は、参考例1のようにグロス樹脂を積層しなくても、グロス樹脂を積層した場合と同等の特性を発現することができる。すなわち、壁紙の製造工程を簡略化することができ、その分コスト削減を図ることができる。
【0063】
なお、本発明は、例えば、以下のような構成をとることができる。
(1)
紙基材の上に、基体樹脂層と、絵柄が印刷された絵柄印刷層と、表面保護層とがこの順に積層された壁紙であって、前記絵柄印刷層は同一平面をなす第一絵柄形成部及び第二絵柄形成部を有し、前記表面保護層は、上面視で前記第一絵柄形成部及び前記第二絵柄形成部のうちの一方の絵柄形成部のみと重なり、当該一方の絵柄形成部と同調するように配置され、前記第一絵柄形成部及び前記第二絵柄形成部のうちの他方の絵柄形成部と前記表面保護層とは光沢差を有することを特徴とする壁紙。
(2)
前記表面保護層は、マットコート剤が添加された樹脂層であることを特徴とする上記(1)に記載の壁紙。
(3)
前記表面保護層の塗布量は、4[g/m]以上6[g/m]以下の範囲内であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の壁紙。
(4)
前記基体樹脂層は、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂のうちの少なくとも一つを含む層であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の壁紙。
(5)
前記表面保護層は、合成樹脂ビーズ及び無機化合物のフィラーのうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の壁紙。
(6)
前記紙基材は、坪量が50[g/m]以上100[g/m]以下の範囲内であり且つ厚みが80[μm]以上150[μm]以下の範囲内であることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の壁紙。
(7)
紙基材の一方の面に、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂のうちの少なくとも一つを含む基体樹脂層を形成する工程と、
前記基体樹脂層の上に、同一平面をなす第一絵柄形成部及び第二絵柄形成部を含む絵柄印刷層を形成する工程と、
前記表面保護層を、上面視で前記第一絵柄形成部及び前記第二絵柄形成部のうちの一方の絵柄形成部のみと重なり且つ当該一方の絵柄形成部と同調するように当該一方の絵柄形成部の上に形成する工程と、
前記紙基材と前記基体樹脂層と前記絵柄印刷層と前記表面保護層とが形成された積層体を、当該積層体の表面温度が130[℃]以上200[℃]以下の範囲内となるように加熱する工程と、
当該加熱する工程後、前記積層体を冷却し乾燥させる工程と、を備えることを特徴とする壁紙の製造方法。
【符号の説明】
【0064】
1 紙基材
2 基体樹脂層
3 絵柄印刷層
3a 第一絵柄形成部
3b 第二絵柄形成部
4 表面保護層
4a 第一表面保護層
4b 第二表面保護層
10、10′ 壁紙
図1
図2