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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168397
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】インク供給機構及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/19 20060101AFI20241128BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20241128BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B41J2/19
B41J2/18
B41J2/175 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085018
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】坂岡 伸哉
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056EB04
2C056EB20
2C056EB29
2C056EB56
2C056EB59
2C056EC19
2C056EC32
2C056KB16
2C056KD02
2C056KD10
(57)【要約】
【課題】インクタンクのインクの充填量を増やしても効率よく脱気する。
【解決手段】プリンター1に備わるインク供給機構20は、インクを収容するインクコンテナ14と、インクコンテナ14から記録ヘッド13へと供給されるインクを貯留するインクタンク21と、インクタンク21の内部を減圧する減圧ポンプ22並びに第1減圧流路26a及び第2減圧流路26bと、インクタンク21から流出されるインクを循環してインクタンク21へと流入する第1脱気流路31a及び第2脱気流路31bと、を備え、記録ヘッド13に対して複数のインクタンク21が並列に配置され、複数のインクタンク21の内、一のインクタンク21が印刷に使用される場合に、他のインクタンク21の内部を減圧部によって減圧した状態で、脱気流路を用いて他のインクタンクの内部のインクを循環することで、他のインクタンクの内部のインクを脱気する脱気動作を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するインクコンテナと、
前記インクコンテナから記録ヘッドへと供給される前記インクを貯留するインクタンクと、
前記インクタンクの内部を減圧する減圧部と、
前記インクタンクから流出される前記インクを循環して前記インクタンクへと流入する脱気流路と、を備え、
前記記録ヘッドに対して複数の前記インクタンクが並列に配置され、
複数の前記インクタンクの内、一の前記インクタンクが印刷に使用される場合に、他の前記インクタンクの内部を前記減圧部によって減圧した状態で、前記脱気流路を用いて他の前記インクタンクの内部の前記インクを循環することで、他の前記インクタンクの内部の前記インクを脱気する脱気動作を行うことを特徴とするインク供給機構。
【請求項2】
他の前記インクタンクの前記脱気動作の開始タイミングを、一の前記インクタンクのインク残量及び/又はインク溶存酸素量、及び/又は、他の前記インクタンクのインク残量及び/又はインク溶存酸素量に基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載のインク供給機構。
【請求項3】
他の前記インクタンクの前記脱気動作の開始タイミングを、ユーザーの印刷頻度に基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載のインク供給機構。
【請求項4】
一の前記インクタンクの前記インク残量を印刷中に測定することを特徴とする請求項2に記載のインク供給機構。
【請求項5】
一の前記インクタンクの前記インク溶存酸素量を印刷中又は印刷待機中に測定することを特徴とする請求項2に記載のインク供給機構。
【請求項6】
複数の前記インクタンクに共通の脱気ポンプを前記脱気流路に備え、
複数の前記インクタンクのそれぞれの前記脱気動作を、前記脱気ポンプを用いて行うことを特徴とする請求項1に記載のインク供給機構。
【請求項7】
請求項1に記載のインク供給機構を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドからインクを吐出して印刷を行うインク供給機構及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット式の画像形成装置は、用紙等の記録媒体にインク滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、インクを収容するインクコンテナと、インクコンテナから供給されるインクを貯留するインクタンクとを備えて、インクタンクと記録ヘッドとの水頭圧を利用して記録ヘッドにインクを供給する。画像形成装置では、インク中に気泡が含まれていると、ノズルに気泡が詰まり、吐出性能が低下してしまう。インクタンク内ではインクの液面が空気と接して溶存し易いため、記録ヘッドに供給されるインクの空気の溶存量を抑制する必要がある。
【0003】
例えば、従来の画像形成装置には、中空糸フィルターにインクを通すことによりインクを脱気する方法を適用したものがある。しかし、この方法では、高価な中空糸フィルターをインクの色別に使用し、更に各中空糸フィルターを定期的に交換する必要もあるので、インクの脱気に多くのコストがかかってしまう。
【0004】
また、特許文献1によれば、インクジェットプリンタで使用されるインクに溶存する空気を除去する脱気装置は、インクを収容するインクボトル内を-80kPa以下に減圧するポンプと、磁界を発生させる磁界発生部とを備え、インクボトルは、外部の磁界の変化に応じて回転する磁石回転子をインク中に収容し、磁界発生部は、インクボトルの外部から磁石回転子へ磁界を加えて磁石回転子を回転させることにより、インクボトル内のインクを攪拌し、ポンプによって減圧されたインクボトル内のインクが磁石回転子の回転により攪拌され、これにより、インク内の空気を脱気している。
【0005】
また、特許文献2によれば、インクジェット記録装置は、インクを吐出する記録ヘッドと、記録ヘッドへ供給されるインクを収容するタンクと、タンク内のインクの液面に浮遊する浮遊体と、を備え、浮遊体は、インクと接する底面側に、インクと空気との境界である液面に向かう傾斜を有する。そして、インクを減圧下で攪拌することで、脱気したインク中への空気の再融解を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5030305号
【特許文献2】特開2019-142189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の画像形成装置では、上記したように、減圧したインクタンク内のインクを磁石攪拌子により攪拌することで脱気する方式(攪拌脱気方式)を適用して、液面付近で脱気されたインクをインクタンク内で攪拌することで脱気効率の向上を図っている。しかし、攪拌子がインクタンクの底面に位置するため、インクタンクにおけるインクの充填深さを大きくすると、溶存空気の少ない液面付近のインクと溶存空気の多い底面付近のインクとで、インクの入れ替わり性能が低下してしまう。そのため、インクタンク内のインクの充填量を大きくすることが困難である。これに対して、従来の画像形成装置では、攪拌子の回転数を上げることで攪拌効率を上げる方法を適用するものがある。しかしながら、攪拌子を過度に高回転にすると、攪拌子が外部磁気からの拘束を受けず、攪拌が適切に行われなくなり、脱気性能が低下するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は上記事情を考慮し、インクタンクのインクの充填量を増やしても効率よく脱気することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインク供給機構は、インクを収容するインクコンテナと、前記インクコンテナから記録ヘッドへと供給される前記インクを貯留するインクタンクと、前記インクタンクの内部を減圧する減圧部と、前記インクタンクから流出される前記インクを循環して前記インクタンクへと流入する脱気流路と、を備え、前記記録ヘッドに対して複数の前記インクタンクが並列に配置され、複数の前記インクタンクの内、一の前記インクタンクが印刷に使用される場合に、他の前記インクタンクの内部を前記減圧部によって減圧した状態で、前記脱気流路を用いて他の前記インクタンクの内部の前記インクを循環することで、他の前記インクタンクの内部の前記インクを脱気する脱気動作を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の画像形成装置は、上記したインク供給機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インクタンクのインクの充填量を増やしても効率よく脱気することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの例を概要的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプリンターのインク供給機構の例を概要的に示すブロック図である。
図3】インク供給機構におけるインクタンクの脱気時のインク溶存酸素量の時間変化の例示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態に係るプリンターのインク供給機構の次タンク準備の動作例を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係るプリンターのインク供給機構の次タンク準備の動作例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係るプリンターのインク供給機構の次タンク準備の動作例を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係るプリンターのインク供給機構の次タンク準備の動作例を示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態に係るプリンターのインク供給機構の次タンク準備の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
先ず、インクジェット式の画像形成装置としてのプリンター1の全体の構成について図1を参照しながら説明する。以下、説明の便宜上、図1における紙面手前側をプリンター1の前側とする。各図に適宜付される矢印L、R、U、Loは、それぞれプリンター1の左側、右側、上側、下側を示す。
【0014】
図1に示すように、プリンター1は、箱型形状のプリンター本体2を備える。プリンター本体2内の下部には、用紙を収納する給紙カセット3が引出可能に収容される。
【0015】
プリンター本体2内の右部には、用紙の搬送経路4が設けられ、プリンター本体2内の中央部には、昇降可能な用紙搬送ユニット5が給紙カセット3の上方に設けられる。搬送経路4は、給紙カセット3から用紙搬送ユニット5まで設けられ、搬送経路4の用紙の搬送方向に沿って、上流側から順に、給紙ローラー、搬送ローラー及びレジストローラーが設けられる。
【0016】
用紙搬送ユニット5は、搬送フレーム6と、無端状の搬送ベルト7(搬送部材)とを備える。搬送フレーム6には、駆動ローラー、従動ローラー及びテンションローラーが回転可能に設けられ、搬送ベルト7は、搬送フレーム6に対して交換可能に取り付けられ、駆動ローラー、従動ローラー及びテンションローラーに巻き掛けられる。搬送ベルト7は、駆動ローラーの回転に応じて、例えば、正面視反時計回りに回転し、搬送ベルト7上の用紙を右側から左側へと搬送するように、下記の制御部16によって制御される。
【0017】
また、用紙搬送ユニット5は、搬送フレーム6及び搬送ベルト7を上下方向に昇降可能な昇降機構(図示せず)を備え、搬送フレーム6及び搬送ベルト7を、印字動作時に下記の記録ヘッド13に近接した印字位置に移動させ、非印字動作時に記録ヘッド13から離間した退避位置に移動させる。また、用紙搬送ユニット5は、吸気部5aを搬送ベルト7の内側に備える。搬送ベルト7には多数の吸気孔が設けられ、吸気部5aは、搬送ベルト7の上方から内側へ吸気孔を介して吸気する。
【0018】
プリンター本体2内の左部には、印字後の用紙を排出するために、印字位置の用紙搬送ユニット5の左側に、用紙搬送部8、乾燥装置9及び排出ローラー10が設けられる。プリンター本体2の左側面には、排出口11が排出ローラー10の近傍に形成され、排出口11の下方には、排紙トレイ12が左側に突出して設けられる。
【0019】
また、プリンター本体2内には、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクにそれぞれ対応して、インクを吐出する4つの記録ヘッド13(13K、13C、13M、13Y)と、インクを収容する4つのインクコンテナ14(14K、14C、14M、14Y)とが設けられる。各記録ヘッド13は、複数のインクタンク21(サブタンク)を有するインク供給機構20を介して各インクコンテナ14に接続される。なお、図1では、ブラックのインクに対応するインク供給機構20を図示していて、シアン、マゼンタ、イエローのインクに対応するインク供給機構20を省略している。
【0020】
記録ヘッド13K、13C、13M、13Yの下面には、インク滴を吐出する複数のノズル13aが形成されている。記録ヘッド13K、13C、13M、13Yは、プリンター本体2内の中央部で用紙搬送ユニット5の上方に並設され、例えば、用紙の搬送方向における上流側(右側)から順に配置される。記録ヘッド13K、13C、13M、13Yは、印字動作時に用紙搬送ユニット5の搬送ベルト7の上面と対向して、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを搬送ベルト7上の用紙へ吐出する。
【0021】
インクコンテナ14K、14C、14M、14Yは、プリンター本体2内の左下部に並設され、例えば、下側から順に配置される。インクコンテナ14K、14C、14M、14Yは、例えば、プリンター本体2内の左下部に設けられた各コンテナ収納部(図示せず)に対して着脱可能に収納される。インクコンテナ14K、14C、14M、14Yは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを収容する。
【0022】
また、プリンター本体2内には、プリンター1の各部を制御する制御部16が設けられる。制御部16は、CPU等からなるコンピュータであり、ROMやRAM、HDD等からなる記憶部(図示せず)に記憶された制御プログラムや制御用データに基づいて演算処理を実行することにより、制御部16に接続されたプリンター1の各部を制御する。
【0023】
制御部16は、インク供給機構20における後述の補給動作、脱気動作、供給動作及び循環動作を制御する。制御部16は、印刷を行う場合に、複数のインクタンク21の内、印刷に使用する一のインクタンク21(以下、印刷使用タンクと称する)から記録ヘッド13へとインクを供給する供給動作を行うところ、同時に、次に印刷使用タンクとして切り換えられるべき他のインクタンク21(以下、次タンクと称する)の準備として補給動作や脱気動作を行うことができる。
【0024】
本実施形態では特に、制御部16は、インクタンク21のインク残量やインク溶存酸素量、あるいはプリンター1のユーザーの印刷頻度に基づいて、次タンクのインクタンク21の準備を制御し、即ち、補給動作や脱気動作の開始タイミングを制御する。制御部16によるインク供給機構20の補給動作、脱気動作、供給動作及び循環動作の制御の詳細や、次タンク準備(脱気動作の開始タイミング)の制御の詳細は後述する。
【0025】
次に、インク供給機構20の詳細について説明する。
【0026】
インク供給機構20は、各インクコンテナ14(14K、14C、14M、14Y)から各記録ヘッド13(13K、13C、13M、13Y)へとインクを供給する機構である。本実施形態では、インク供給機構20は、図2に示すように、記録ヘッド13及びインクコンテナ14に加えて、複数のインクタンク21と、減圧ポンプ22と、吸引ポンプ23と、脱気ポンプ24と、循環ポンプ25とを備える。
【0027】
インク供給機構20は、例えば、インクコンテナ14から供給されるインクを貯留する複数のインクタンク21として、第1インクタンク21aと第2インクタンク21bとを備える。インク供給機構20は、第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bに貯留されたインクの水頭圧を利用して記録ヘッド13に向けてインクを供給するように構成される。なお、本実施形態では、インク供給機構20が2つのインクタンク21(第1インクタンク21a及び第2インクタンク21b)を備える例を説明するが、本発明はこの例に限定されず、インク供給機構20は3つ以上のインクタンク21を備えてもよい。
【0028】
インク供給機構20は、インクタンク21の内部を減圧するための減圧流路として、第1インクタンク21aに接続されてインク液面よりも上側の内部空間に連通する第1減圧流路26aと、第2インクタンク21bに接続されてインク液面よりも上側の内部空間に連通する第2減圧流路26bとを有する。第1減圧流路26a及び第2減圧流路26bの上流部分は、共通減圧流路26cとして部分的に共通していて、減圧ポンプ22が共通減圧流路26cに設けられる。
【0029】
第1減圧流路26a及び減圧ポンプ22は、第1インクタンク21aの減圧部として機能し、第2減圧流路26b及び減圧ポンプ22は、第2インクタンク21bの減圧部として機能する。減圧ポンプ22は、制御部16によって制御されて第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bの内部を減圧する負圧発生源である。第1減圧流路26aには、第1減圧流路26aを開閉する第1減圧用弁27aが設けられ、第2減圧流路26bには、第2減圧流路26bを開閉する第2減圧用弁27bが設けられる。第1減圧用弁27a及び第2減圧用弁27bは、制御部16によって制御されて開閉する。
【0030】
また、第1インクタンク21aには、第1インクタンク21aと大気との連通を開閉する第1大気用弁28aが設けられ、第2インクタンク21bには、第2インクタンク21bと大気との連通を開閉する第2大気用弁28bが設けられる。第1大気用弁28a及び第2大気用弁28bは、制御部16によって制御されて開閉する。
【0031】
インク供給機構20は、インクコンテナ14から第1インクタンク21aにインクを吸引する第1吸引流路29aと、インクコンテナ14から第2インクタンク21bにインクを吸引する第2吸引流路29bとを有する。第1吸引流路29a及び第2吸引流路29bの上流部分は、共通吸引流路29cとして部分的に共通していて、吸引ポンプ23が共通吸引流路29cに設けられる。
【0032】
吸引ポンプ23は、ダイアフラムポンプ等で構成され、制御部16によって制御されて、インクコンテナ14から第1吸引流路29a及び第2吸引流路29bを介して第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bにインクを供給させる。第1吸引流路29aの下流部分には、第1吸引流路29aを開閉する第1吸引用弁30aが設けられ、第2吸引流路29bの下流部分には、第2吸引流路29bを開閉する第2吸引用弁30bが設けられる。第1吸引用弁30a及び第2吸引用弁30bは、制御部16によって制御されて開閉する。
【0033】
インク供給機構20は、インクタンク21から流出されるインクを循環してインクタンク21へと流入する脱気流路として、第1インクタンク21aに循環される第1脱気流路31aと、第2インクタンク21bに循環される第2脱気流路31bとを有する。第1脱気流路31a及び第2脱気流路31bの中流部分は、共通脱気流路31cとして部分的に共通していて、脱気ポンプ24が共通脱気流路31cに設けられる。
【0034】
脱気ポンプ24は、制御部16によって制御されて、第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bに貯留されるインクを第1脱気流路31a及び第2脱気流路31bに流出させ、第1脱気流路31a及び第2脱気流路31bに流出したインクを第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bに流入させることで、第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bに貯留されるインクを循環して脱気する。第1脱気流路31aの上流部分及び下流部分には、第1脱気流路31aを開閉する第1脱気用弁32a、33aが設けられ、第2脱気流路31bの上流部分及び下流部分には、第2脱気流路31bを開閉する第2脱気用弁32b、33bが設けられる。第1脱気用弁32a、33a及び第2脱気用弁32b、33bは、制御部16によって制御されて開閉する。
【0035】
インク供給機構20は、第1インクタンク21aから記録ヘッド13へとインクを供給する第1供給流路34aと、第2インクタンク21bから記録ヘッド13へとインクを供給する第2供給流路34bとを有する。第1供給流路34a及び第2供給流路34bの下流部分は、共通供給流路34cとして部分的に共通し、共通供給流路34cが記録ヘッド13に接続されている。
【0036】
第1供給流路34a及び第2供給流路34bは、記録ヘッド13に向けてインクを供給するために、第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bに貯留されたインクの水頭圧を受ける。第1供給流路34aの上流部分には、第1供給流路34aを開閉する第1供給用弁35aが設けられ、第2供給流路34bの上流部分には、第2供給流路34bを開閉する第2供給用弁35bが設けられる。第1供給用弁35a及び第2供給用弁35bは、制御部16によって制御されて開閉する。
【0037】
なお、共通供給流路34cの中間部分は、インク供給に用いられる供給用分岐路34c1と、インク循環に用いられる循環用分岐路34c2とに分岐されていて、循環ポンプ25が循環用分岐路34c2に設けられる。循環ポンプ25は、制御部16によって制御されて、記録ヘッド13に残るインクを循環させるために、循環用分岐路34c2を介して記録ヘッド13にインクを供給させる。供給用分岐路34c1には、供給用分岐路34c1を開閉する供給分岐用弁34c3が設けられ、循環用分岐路34c2には、循環用分岐路34c2を開閉する循環分岐用弁34c4が設けられる。供給分岐用弁34c3及び循環分岐用弁34c4は、制御部16によって制御されて開閉する。
【0038】
インク供給機構20は、記録ヘッド13から第1インクタンク21aへとインクを循環する第1循環流路36aと、記録ヘッド13から第2インクタンク21bへとインクを循環する第2循環流路36bとを有する。第1循環流路36a及び第2循環流路36bの上流部分は、共通循環流路36cとして部分的に共通し、共通循環流路36cが記録ヘッド13に接続されている。第1循環流路36aの下流部分には、第1循環流路36aを開閉する第1循環用弁37aが設けられ、第2循環流路36bの下流部分には、第2循環流路36bを開閉する第2循環用弁37bが設けられる。第1循環用弁37a及び第2循環用弁37bは、制御部16によって制御されて開閉する。
【0039】
<インク供給機構の動作例>
次に、本実施形態のインク供給機構20の動作例について説明する。
【0040】
<補給動作>
インク供給機構20は、インクコンテナ14から第1インクタンク21aにインクを補給する第1補給動作と、インクコンテナ14から第2インクタンク21bにインクを補給する第2補給動作との何れかを行う。
【0041】
インク供給機構20は、第1補給動作を行う場合、第1インクタンク21aに対して第1大気用弁28a及び第1吸引用弁30aを開放し、吸引ポンプ23を稼働して、第1吸引流路29aを介してインクコンテナ14から第1インクタンク21aにインクを補給する。このとき、第2インクタンク21bに対して第2吸引用弁30bを閉鎖し、第1インクタンク21aに対して第1減圧用弁27a、第1脱気用弁32a、33a、第1供給用弁35a及び第1循環用弁37aを閉鎖する。
【0042】
なお、第1補給動作を行っている間に、供給分岐用弁34c3及び循環分岐用弁34c4、並びに減圧ポンプ22、脱気ポンプ24及び循環ポンプ25は、第2インクタンク21bの第2脱気動作、第2供給動作及び第2循環動作等に対して使用可能である。換言すれば、インク供給機構20では、第1インクタンク21aの第1補給動作を行っている間に、第2インクタンク21bを用いた第2供給動作により印刷を行うことが可能である。
【0043】
インク供給機構20は、第2補給動作を行う場合、第2インクタンク21bに対して第2大気用弁28b及び第2吸引用弁30bを開放し、吸引ポンプ23を稼働して、第2吸引流路29bを介してインクコンテナ14から第2インクタンク21bにインクを補給する。このとき、第1インクタンク21aに対して第1吸引用弁30aを閉鎖し、第2インクタンク21bに対して第2減圧用弁27b、第2脱気用弁32b、33b、第2供給用弁35b及び第2循環用弁37bを閉鎖する。
【0044】
なお、第2補給動作を行っている間に、供給分岐用弁34c3及び循環分岐用弁34c4、並びに減圧ポンプ22、脱気ポンプ24及び循環ポンプ25は、第1インクタンク21aの第1脱気動作、第1供給動作及び第1循環動作等に対して使用可能である。換言すれば、インク供給機構20では、第2インクタンク21bの第2補給動作を行っている間に、第1インクタンク21aを用いた第1供給動作により印刷を行うことが可能である。
【0045】
<脱気動作>
インク供給機構20は、第1インクタンク21aに貯留するインクを脱気する第1脱気動作と、第2インクタンク21bに貯留するインクを脱気する第2脱気動作との何れかを行う。
【0046】
ところで、インクタンク21に貯留するインクに溶存した空気を脱気する方式として、インクタンク21に攪拌装置を設けて、インクタンク21に貯留するインクを攪拌することで脱気を行う攪拌脱気方式が従来では適用されていた。これに対して、本発明では、インクタンク21に貯留するインクを流出させると共に、流出したインクを循環して再度インクタンク21へと流入することにより、インクタンク21内のインク全体に亘って流れを作ってかき混ぜることで脱気を行う循環脱気方式を適用する。図3では、攪拌脱気方式及び循環脱気方式のそれぞれによってインクタンク21の脱気を行う場合の、インク溶存酸素量の時間変化のグラフを示す。図3に示すように、攪拌脱気方式に比べて、循環脱気方式では、インク溶存酸素量が所定の目標値に達する時間が短くなっている。
【0047】
インク供給機構20は、第1脱気動作を行う場合、第1インクタンク21aに対して第1大気用弁28a、第1吸引用弁30a、第1脱気用弁32a、33a、第1供給用弁35a及び第1循環用弁37aを閉鎖すると共に、第1減圧用弁27aを開放し、減圧ポンプ22を稼働して、第1減圧流路26aを介して第1インクタンク21aの内部を減圧する。このとき、第2インクタンク21bに対して第2減圧用弁27bを閉鎖する。そして、インク供給機構20は、第1インクタンク21aの内部を減圧した状態で、第1インクタンク21aに対して第1脱気用弁32a、33aを開放し、脱気ポンプ24を稼働して、第1脱気流路31aを介して第1インクタンク21aに貯留するインクを脱気する。このとき、第2インクタンク21bに対して第2脱気用弁32b、33bを閉鎖し、第1インクタンク21aに対して第1減圧用弁27a、第1大気用弁28a及び第1吸引用弁30a、第1供給用弁35a及び第1循環用弁37aを閉鎖する。
【0048】
なお、第1脱気動作を行っている間に、供給分岐用弁34c3及び循環分岐用弁34c4、並びに吸引ポンプ23及び循環ポンプ25は、第2インクタンク21bの第2補給動作、第2供給動作及び第2循環動作等に対して使用可能である。換言すれば、インク供給機構20では、第1インクタンク21aの第1脱気動作を行っている間に、第2インクタンク21bを用いた第2供給動作により印刷を行うことが可能である。
【0049】
インク供給機構20は、第2脱気動作を行う場合、第2インクタンク21bに対して第2大気用弁28b、第2吸引用弁30b、第2脱気用弁32b、33b、第2供給用弁35b及び第2循環用弁37bを閉鎖すると共に、第2減圧用弁27bを開放し、減圧ポンプ22を稼働して、第2減圧流路26bを介して第2インクタンク21bの内部を減圧する。このとき、第1インクタンク21aに対して第1減圧用弁27aを閉鎖する。そして、インク供給機構20は、第2インクタンク21bの内部を減圧した状態で、第2インクタンク21bに対して第2脱気用弁32b、33bを開放し、脱気ポンプ24を稼働して、第2脱気流路31bを介して第2インクタンク21bに貯留するインクを脱気する。このとき、第1インクタンク21aに対して第1脱気用弁32a、33aを閉鎖し、第2インクタンク21bに対して第2減圧用弁27b、第2大気用弁28b及び第2吸引用弁30b、第2供給用弁35b及び第2循環用弁37bを閉鎖する。
【0050】
なお、第2脱気動作を行っている間に、供給分岐用弁34c3及び循環分岐用弁34c4、並びに吸引ポンプ23及び循環ポンプ25は、第1インクタンク21aの第1補給動作、第1供給動作及び第1循環動作等に対して使用可能である。換言すれば、インク供給機構20では、第2インクタンク21bの第2脱気動作を行っている間に、第1インクタンク21aを用いた第1供給動作により印刷を行うことが可能である。
【0051】
<供給動作>
インク供給機構20は、記録ヘッド13によって印刷を行う場合、第1インクタンク21aから記録ヘッド13にインクを供給する第1供給動作と、第2インクタンク21bから記録ヘッド13にインクを供給する第2供給動作との何れかを行う。
【0052】
インク供給機構20は、第1供給動作を行う場合、第1インクタンク21aに対して第1大気用弁28a、第1供給用弁35a及び供給分岐用弁34c3を開放し、供給用分岐路34c1を経由する第1供給流路34aを介して第1インクタンク21aから記録ヘッド13にインクを供給する。このとき、第2インクタンク21bに対して第2供給用弁35bを閉鎖し、第1インクタンク21aに対して第1減圧用弁27a、第1吸引用弁30a、第1脱気用弁32a、33a、循環分岐用弁34c4及び第1循環用弁37aを閉鎖し、循環ポンプ25の稼働を停止する。
【0053】
なお、第1供給動作を行っている間に、減圧ポンプ22、吸引ポンプ23及び脱気ポンプ24は、第2インクタンク21bの第2補給動作及び第2脱気動作等に対して使用可能である。換言すれば、インク供給機構20では、第1インクタンク21aを用いた第1供給動作により印刷を行っている間に、第2インクタンク21bの第2補給動作及び第2脱気動作を行うことが可能である。
【0054】
インク供給機構20は、第2供給動作を行う場合、第2インクタンク21bに対して第2大気用弁28b、第2供給用弁35b及び供給分岐用弁34c3を開放し、供給用分岐路34c1を経由する第2供給流路34bを介して第2インクタンク21bから記録ヘッド13にインクを供給する。このとき、第1インクタンク21aに対して第1供給用弁35aを閉鎖し、第2インクタンク21bに対して第2減圧用弁27b、第2吸引用弁30b、第2脱気用弁32b、33b、循環分岐用弁34c4及び第2循環用弁37bを閉鎖し、循環ポンプ25の稼働を停止する。
【0055】
なお、第2供給動作を行っている間に、減圧ポンプ22、吸引ポンプ23及び脱気ポンプ24は、第1インクタンク21aの第1補給動作及び第1脱気動作等に対して使用可能である。換言すれば、インク供給機構20では、第2インクタンク21bを用いた第2供給動作により印刷を行っている間に、第1インクタンク21aの第1補給動作及び第1脱気動作を行うことが可能である。
【0056】
<循環動作>
インク供給機構20は、記録ヘッド13から第1インクタンク21aにインクを循環する第1循環動作と、記録ヘッド13から第2インクタンク21bにインクを循環する第2循環動作との何れかを行う。
【0057】
インク供給機構20は、第1循環動作を行う場合、第1インクタンク21aに対して第1大気用弁28a、第1供給用弁35a、循環分岐用弁34c4及び第1循環用弁37aを開放し、循環ポンプ25を稼働して、循環用分岐路34c2を経由する第1供給流路34aを介して第1インクタンク21aから記録ヘッド13にインクを供給すると共に、第1循環流路36aを介して記録ヘッド13から第1インクタンク21aにインクを回収することで、記録ヘッド13から第1インクタンク21aにインクを循環する。このとき、第2インクタンク21bに対して第2供給用弁35b及び第2循環用弁37bを閉鎖し、第1インクタンク21aに対して第1減圧用弁27a、第1吸引用弁30a、第1脱気用弁32a、33a及び供給分岐用弁34c3を閉鎖する。
【0058】
なお、第1循環動作を行っている間に、減圧ポンプ22、吸引ポンプ23及び脱気ポンプ24は、第2インクタンク21bの第2補給動作及び第2脱気動作等に対して使用可能である。
【0059】
インク供給機構20は、第2循環動作を行う場合、第2インクタンク21bに対して第2大気用弁28b、第2供給用弁35b、循環分岐用弁34c4及び第2循環用弁37bを開放し、循環ポンプ25を稼働して、循環用分岐路34c2を経由する第2供給流路34bを介して第2インクタンク21bから記録ヘッド13にインクを供給すると共に、第2循環流路36bを介して記録ヘッド13から第2インクタンク21bにインクを回収することで、記録ヘッド13から第2インクタンク21bにインクを循環する。このとき、第1インクタンク21aに対して第1供給用弁35a及び第1循環用弁37aを閉鎖し、第2インクタンク21bに対して第2減圧用弁27b、第2吸引用弁30b、第2脱気用弁32b、33b及び供給分岐用弁34c3を閉鎖する。
【0060】
なお、第2循環動作を行っている間に、減圧ポンプ22、吸引ポンプ23及び脱気ポンプ24は、第1インクタンク21aの第1補給動作及び第1脱気動作等に対して使用可能である。
【0061】
<インク残量の測定>
次に、制御部16によるインクタンク21のインク残量の測定について説明する。制御部16は、予測及び/又は実測によりインクタンク21のインク残量を測定する。
【0062】
制御部16は、後述するようにインク残量の予測情報を取得し、インク残量の予測情報の内、少なくとも1つに基づいて第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bのインク残量を予測してよい。
【0063】
例えば、制御部16は、インク残量の予測情報として、第1供給流路34a及び第2供給流路34bに備わる流量センサによって、第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bから第1供給流路34a及び第2供給流路34bを介して流出されるインクの流出量を検出しておく。そして、制御部16は、第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bからのインクの流出量の検出結果に基づいて、第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bのインク残量を予測してもよい。
【0064】
若しくは、制御部16は、インク残量の予測情報として、印刷濃度等の印刷設定や印刷対象となる画像データに基づいて、印刷に使用されるインク使用量を算出し、特に、第1インクタンク21a及び第2インクタンク21b毎に、インク使用量を算出しておく。そして、制御部16は、インク使用量の算出結果に基づいて第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bのインク残量を予測してもよい。
【0065】
あるいは、制御部16は、現時点までに完了した印刷ジョブのインク使用量を算出して、現時点での第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bのインク残量を予測することができる。また、制御部16は、現時点までに完了した印刷ジョブのインク使用量と次回の印刷ジョブのインク使用量とを算出して、次回の印刷ジョブの完了時点での第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bのインク残量を予測することもできる。
【0066】
インクタンク21のインク残量を実測する場合には、制御部16は、第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bに備わるインク残量センサによって、第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bのインク残量又は空き容量を検出し、制御部16は、その検出結果に基づいてインクタンク21のインク残量を実測してもよい。なお、インク残量センサとして、光学式、静電容量式、電極式、差圧式、フロート式等の何れの方式のセンサが適用されてもよい。
【0067】
なお、制御部16は、第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bのインク残量の予測結果及び実測結果の何れか一方を測定結果としてよく、あるいは、予測結果及び実測結果を組み合わせて測定結果としてもよい。
【0068】
<インク溶存酸素量の測定>
次に、制御部16によるインクタンク21のインク溶存酸素量の測定について説明する。制御部16は、予測及び/又は実測によりインクタンク21のインク溶存酸素量を測定する。
【0069】
制御部16は、後述するようにインク溶存酸素量の予測情報を取得し、インク溶存酸素量の予測情報の内、少なくとも1つに基づいて第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bのインク溶存酸素量を予測してよい。
【0070】
例えば、制御部16は、インク溶存酸素量の予測情報として、プリンター1に備わる温度センサ、気圧センサによってプリンター1の設置環境の環境温度、環境気圧を検出しておく。また、制御部16は、インク溶存酸素量の予測情報として、第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bのインク補給終了からの経過時間を測定しておく。また、制御部16は、インク溶存酸素量の予測情報として、印字濃度等の印刷設定や印刷対象となる画像データに基づいて、印刷に使用されるインク使用量を算出し、特に、第1インクタンク21a及び第2インクタンク21b毎に、インク使用量を算出しておく。
【0071】
例えば、環境温度が低温(所定の温度閾値未満)且つ環境気圧が低圧(所定の気圧閾値未満)の場合、飽和溶存酸素量が少なくなるので、制御部16は、インク中の溶存酸素量が少ないと予測する。また、第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bはインクコンテナ14から脱気されたインクを補給するので、インク補給終了からの経過時間が短い場合(所定の時間閾値未満の場合)、制御部16は、インク中の溶存酸素量が少ないと予測する。また、印字濃度が大きい場合(所定の濃度閾値以上の場合)や画像データにおける印字量が多い場合(所定の印字量閾値以上の場合)、インクコンテナ14から第1インクタンク21aや第2インクタンク21bへの脱気されたインクの供給が活発になるので、制御部16は、インク中の溶存酸素量が少ないと予測する。
【0072】
制御部16は、現時点での第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bのインク溶存酸素量を予測することができ、また、次回の印刷ジョブの完了時点での第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bのインク溶存酸素量を予測することもできる。
【0073】
インクタンク21のインク溶存酸素量を実測する場合には、制御部16は、第1脱気流路31aや第2脱気流路31b、又は第1インクタンク21aや第2インクタンク21bに備わる気泡センサによってインク中の気泡を検出し、制御部16は、その検出結果に基づいてインクタンク21のインク溶存酸素量を実測してもよい。例えば、制御部16は、プリンター1の電源オン時や長時間放置後(例えば、所定時間以上、印刷が行われなかった場合)に、気泡センサの検出結果に基づいてインクタンク21のインク溶存酸素量を実測するとよい。なお、気泡センサとして、光電式、静電容量式、超音波式等の何れの方式のセンサが適用されてもよい。
【0074】
例えば、光電式の気泡センサは、ビームを送信する送信部とビームを受信する受信部とから構成され、第1脱気流路31aや第2脱気流路31b、又は第1インクタンク21aや第2インクタンク21bの内部の一方側からビームを送信し、他方側でビームを受信する。そして、ビームがインクや気泡によって遮られることでビームの受信信号が変化することに基づいて、光電式の気泡センサは、ビームの受信信号に応じて気泡の存在を確認する。
【0075】
静電容量式の気泡センサは、互いに絶縁された検出電極と接地電極とから構成され、第1脱気流路31aや第2脱気流路31b、又は第1インクタンク21aや第2インクタンク21bの内部の一方側に検出電極を配置し、他方側に接地電極を配置する。そして、検出電極と接地電極との間に生じる静電容量の変化に応じて、静電容量式の気泡センサは、インク中の気泡の状態を検出する。なお、静電容量式の気泡センサは、光電式の気泡センサに比べて、より幅広い材料や直径で構成される第1脱気流路31aや第2脱気流路31bに適用可能である。また、静電容量式の気泡センサは、超音波式の気泡センサに比べて、より安いコストで構成されるので、気泡検出のためのコスト効率のよい方式である。
【0076】
超音波式の気泡センサは、超音波を発生させるトランスデューサ等の発生部と超音波を受信するトランスデューサ等の受信部とから構成され、第1脱気流路31aや第2脱気流路31b、又は第1インクタンク21aや第2インクタンク21bの内部の一方側から超音波を発生させ、他方側で超音波を受信する。そして、超音波が液体を通過する一方で、気泡を通過できずに反射される特性を利用して、超音波式の気泡センサは、受信した超音波の信号強度に応じて気泡の存在を確認する。超音波式の気泡センサは、直径の細い第1脱気流路31aや第2脱気流路31bに適用可能であり、また、インク中のマイクロバブルの検出にも適していて、光電式の気泡センサや静電容量式の気泡センサよりも精度の高い測定が可能である。
【0077】
なお、制御部16は、第1インクタンク21a及び第2インクタンク21bのインク溶存酸素量の予測結果及び実測結果の何れか一方を測定結果としてよく、あるいは、予測結果及び実測結果を組み合わせて測定結果としてもよい。
【0078】
<印刷頻度の取得>
次に、制御部16によるプリンター1のユーザーの印刷頻度の取得について説明する。例えば、制御部16は、印刷回数(印刷ジョブ数)又は印刷枚数を計数し、所定期間内に行われた印刷回数又は印刷枚数を印刷頻度として取得する。
【0079】
<次タンク準備>
次に、本実施形態のプリンター1において、制御部16によるインク供給機構20の次タンク準備(脱気動作の開始タイミング)を説明する。制御部16は、複数のインクタンク21の内、印刷使用タンクのインク残量及び/又はインク溶存酸素量、及び/又は、印刷使用タンク以外のインクタンク21(以下、待機タンクと称する)のインク残量及び/又はインク溶存酸素量に基づいて、次タンク準備(脱気動作の開始タイミング)を判定する。
【0080】
例えば、印刷使用タンクから次タンクへの切換時期が近いと予測される場合、具体的には、印刷使用タンクのインク残量が少なくなって所定の切換目標値に近付いた場合や、インク中の溶存酸素量が多くなって所定の切換目標値に近付いた場合に、次タンクを準備する必要がある。そこで、待機タンクのインクがインク残量及び/又はインク溶存酸素量の所定の供給目標値を満たしていない場合、制御部16は、何れかのインクタンク21の補給動作や脱気動作を開始することで次タンク準備を行う。制御部16は、次タンクの脱気動作を開始してから、次タンクのインク溶存酸素量が所定の供給酸素量値以下になって所定の供給目標値を満たした場合、脱気動作を終了する。なお、印刷使用タンクが既に設定されている場合でも、印刷使用タンクのインク残量及び/又はインク溶存酸素量によっては、次タンク準備を行う場合もある。
【0081】
また、制御部16は、プリンター1のユーザーの印刷頻度に応じて次タンク準備(脱気動作の開始タイミング)を判定してもよい。例えば、制御部16は、印刷使用タンクがインク残量やインク溶存酸素量に起因して印刷に使用できなくなるタイミングを、ユーザーの印刷頻度に基づいて予測して、そのタイミングまでに次タンクを準備する。そのため、ユーザーの印刷頻度が高い場合には、早めに次タンクを準備する必要がある が、印刷頻度が低い場合には、急いで次タンクを準備する必要はない。制御部16は、ユーザーの印刷頻度を利用することで、ユーザーに合わせて次タンク準備を行って次タンクの補給動作や脱気動作を行うことで、脱気を直前に完了した次タンクを切り換えて、溶存酸素量の少ないインクを印刷に使用することができ、無駄なインクタンク21の切り換えを防ぐことができる。
【0082】
具体的には、制御部16は、印刷中に印刷使用タンクのインク残量の測定を行い、実行中の印刷ジョブの終了時の印刷使用タンクのインク残量を予測する。そして、制御部16は、インク残量が所定の切換残量値以下になると予測した場合に、次タンクの補給動作及び/又は脱気動作を開始する。
【0083】
ところで、インクタンク21におけるインク溶存酸素量は、印刷中だけでなく印刷待機中にも変化するため、制御部16は、印刷中及び印刷待機中に、印刷使用タンクのインク溶存酸素量を予測及び/又は実測により測定する。制御部16は、印刷使用タンクのインク溶存酸素量が所定の切換酸素量値を超えると予測した場合に、印刷待機中に印刷使用タンクの脱気動作を行った後、当該印刷使用タンクを継続して印刷に使用してもよく、印刷中又は印刷待機中に次タンクの脱気動作を開始して次タンク準備を行ってもよく、印刷使用タンクを脱気の完了した次タンクに切り換えてもよい。
【0084】
このように、制御部16は、インクタンク21のインク残量及びインク溶存酸素量を適切に測定することで、インクタンク21の脱気動作を適切なタイミングで開始することができる。
【0085】
なお、次タンクの脱気動作を完了した後で、印刷待機を長時間経過することで、次タンクのインク溶存酸素量が所定の供給酸素量値を超えてしまった場合には、制御部16は、次タンクの脱気動作を再度行ってもよい。
【0086】
また、制御部16は、印刷中又は印刷待機中に、予測及び/又は実測により測定した待機タンクのインク残量及びインク溶存酸素量に基づいて、待機タンクの補給動作を行うか否かを判定する。なお、制御部16は、待機タンクのインク残量及びインク溶存酸素量に基づいて、補給動作に要する補給時間及び脱気動作に要する脱気時間を算出し、待機タンクである複数のインクタンク21の内、補給時間及び脱気時間の総時間が最も短いインクタンク21を次タンクに設定して補給動作及び脱気動作を行って次タンク準備を行うとよい。
【0087】
その後、次タンクの脱気動作を完了してから印刷待機を長時間経過することで、次タンクのインク溶存酸素量が所定の供給酸素量値を超えてしまい、次タンクが脱気を必要とする場合には、制御部16は、次タンクの脱気動作を再度行ってもよく、あるいは、他の待機タンクを次タンクとするために脱気動作を行ってもよい。また、プリンター1が印刷待機中である場合、制御部16は、各インクタンク21のインク残量及び/又はインク溶存酸素量によっては、適宜、各インクタンク21の脱気動作を行ってよい。
【0088】
<電源オン時・スリープ復帰時の次タンク準備の動作例>
本実施形態のプリンター1において、電源オン時又はスリープ復帰時における次タンク準備の動作例について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0089】
先ず、プリンター1の電源をオンにし、又はプリンター1をスリーブから復帰させると(ステップS1)、制御部16は、複数のインクタンク21の内、一のインクタンク21、例えば、第1インクタンク21aを印刷に使用するインクタンク21(印刷使用タンク)として初期設定する。
【0090】
そして、制御部16は、印刷使用タンクである第1インクタンク21aのインク残量及びインク溶存酸素量を測定する(ステップS2)。このとき、制御部16は、現時点での第1インクタンク21aのインク残量及びインク溶存酸素量を予測及び/又は実測して測定し、あるいは、次回の印刷ジョブの終了時点での第1インクタンク21aのインク残量及びインク溶存酸素量を予測及び/又は実測して測定する。
【0091】
制御部16は、印刷使用タンクである第1インクタンク21aのインク残量及び/又はインク溶存酸素量がそれぞれの所定の切換目標値に達しているか否かを判定する(ステップS3)。例えば、制御部16は、インク残量が所定の切換残量値以下である場合に切換目標値に達していると判定し、また、溶存酸素量が所定の切換酸素量値以上である場合に切換目標値に達していると判定する。
【0092】
第1インクタンク21aのインク残量及び/又はインク溶存酸素量が切換目標値に達していない場合(ステップS3:No)、制御部16は、第1インクタンク21aを継続して印刷使用タンクとして設定することで、印刷に使用する第1インクタンク21aを準備する(ステップS4)。
【0093】
一方、第1インクタンク21aのインク残量及び/又はインク溶存酸素量が切換目標値に達している場合(ステップS3:Yes)、制御部16は、複数のインクタンク21の内、第1インクタンク21a以外に、インク残量及びインク溶存酸素量が供給目標値に達している他のインクタンク21があるか否かを判定する(ステップS5)。例えば、制御部16は、第2インクタンク21bのインク残量が所定の供給残量値(>切換残量値)以上である場合に供給目標値に達したと判定し、また、溶存酸素量が所定の供給酸素量値(<切換酸素量値)以下である場合に供給目標値に達したと判定する。
【0094】
第2インクタンク21bのインク残量及びインク溶存酸素量が供給目標値に達している場合(ステップS5:Yes)、制御部16は、印刷使用タンクを第1インクタンク21aから次タンクの第2インクタンク21bに切り換えて設定することで、印刷に使用する第2インクタンク21bを準備する(ステップS6)。
【0095】
一方、第2インクタンク21bのインク残量及び/又はインク溶存酸素量が供給目標値に達していない場合、制御部16は、印刷に使用する第2インクタンク21bを準備するために、次タンク準備開始信号を送信する(ステップS7)。
【0096】
制御部16は、次タンク準備開始信号に応じて、第2インクタンク21bの次タンク準備を行う。このような次タンク準備の動作例について、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0097】
制御部16は、次タンク準備開始信号を受信して次タンク準備を開始すると(ステップS11)、先ず、次に印刷使用タンクとして切り換える第2インクタンク21bを選定する(ステップS12)。このとき、制御部16は、「最も早く脱気が完了する」、「最もインク容量が多い」、「予め決められた順番」等の選定基準に従って、次に印刷使用タンクとして切り換えるインクタンク21(第2インクタンク21b)を選定するとよい。
【0098】
次に、制御部16は、選定した第2インクタンク21bの第2脱気動作を開始し、あるいは、選定した第2インクタンク21bの第2補給動作及び第2脱気動作を開始する(ステップS13)。このとき、制御部16は、第2インクタンク21bのインク残量が供給目標値に達するまで第2補給動作を行い、第2インクタンク21bのインク溶存酸素量が供給目標値に達するまで第2脱気動作を行う。なお、制御部16は、第2補給動作においてインクコンテナ14のインクがなくなったときには、第2インクタンク21bのインク残量が供給目標値に達しない場合でも、第2補給動作を終了して第2脱気動作に移行してよい。
【0099】
第2インクタンク21bのインク溶存酸素量が供給目標値に達すると(ステップS14:Yes)、制御部16は、第2脱気動作を終了して(ステップS15)、次タンク準備完了信号を送信し(ステップS16)、次タンク準備を終了して図4のステップS8に移行する。
【0100】
制御部16は、次タンク準備完了信号を受信すると(ステップS8)、印刷使用タンクを第1インクタンク21aから次タンクの第2インクタンク21bに切り換えて設定することで、印刷に使用する第2インクタンク21bを準備する(ステップS6)。
【0101】
<インクタンク切換時の次タンク準備の動作例>
本実施形態のプリンター1において、印刷使用タンクを切り換えた際における次タンク準備の動作例について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0102】
例えば、第1インクタンク21aを印刷使用タンクとして切り換えた直後に(ステップS21)、複数のインクタンク21の内、第1インクタンク21a以外を待機タンクとする。そして、制御部16は、待機タンクであるインクタンク21、例えば、第2インクタンク21bのインク残量及びインク溶存酸素量を測定する(ステップS22)。このとき、制御部16は、現時点での第2インクタンク21bのインク残量及びインク溶存酸素量を予測及び/又は実測して測定する。
【0103】
制御部16は、待機タンクである第2インクタンク21bのインク残量及びインク溶存酸素量がそれぞれの所定の供給目標値に達しているか否かを判定する(ステップS23)。
【0104】
第2インクタンク21bのインク残量及びインク溶存酸素量が供給目標値に達している場合(ステップS23:Yes)、制御部16は、待機タンクの第2インクタンク21bを次タンクとして設定することで(ステップS24)、次タンクの準備を完了する。
【0105】
一方、第2インクタンク21bのインク残量及び/又はインク溶存酸素量が供給目標値に達していない場合(ステップS23:No)、制御部16は、第2インクタンク21bを次タンクとして準備するために、次タンク準備開始信号を送信する(ステップS25)。
【0106】
制御部16は、次タンク準備開始信号に応じて、第2インクタンク21bの次タンク準備を行う。このような次タンク準備は、上記した図5のフローチャートの動作例と同様に行われる。次タンク準備が完了した後、制御部16は、次タンク準備完了信号を受信すると(ステップS26)、待機タンクの第2インクタンク21bを次タンクとして設定することで(ステップS24)、次タンクの準備を完了する。
【0107】
<印刷中・印刷待機中の次タンク準備の動作例>
次に、本実施形態のプリンター1において、一のインクタンク21を印刷使用タンクとして印刷中又は印刷待機中である場合の次タンク準備の動作例について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0108】
例えば、第1インクタンク21aを印刷使用タンクとして印刷中又は印刷待機中であるとき、複数のインクタンク21の内、第1インクタンク21a以外を待機タンクとする。そして、制御部16は、印刷使用タンクである第1インクタンク21aのインク残量及びインク溶存酸素量を測定する(ステップS31)。このとき、制御部16は、現時点での第1インクタンク21aのインク残量及びインク溶存酸素量を予測及び/又は実測して測定する。
【0109】
制御部16は、印刷使用タンクである第1インクタンク21aのインク残量及び/又はインク溶存酸素量がそれぞれの所定の切換準備目標値に達しているか否かを判定する(ステップS32)。例えば、制御部16は、インク残量が所定の切換準備残量値(>切換残量値)以下である場合に切換準備目標値に達していると判定し、また、溶存酸素量が所定の切換準備酸素量値(<切換酸素量値)以上である場合に切換準備目標値に達していると判定する。
【0110】
第1インクタンク21aのインク残量及び/又はインク溶存酸素量が切換準備目標値に達していない場合(ステップS32:No)、制御部16は、第1インクタンク21aを継続して印刷使用タンクとして設定し(ステップS33)、次タンク準備を行わない。
【0111】
一方、第1インクタンク21aのインク残量及び/又はインク溶存酸素量が切換準備目標値に達している場合(ステップS32:Yes)、複数のインクタンク21の内、第1インクタンク21a以外を待機タンクとする。そして、制御部16は、待機タンクであるインクタンク21、例えば、第2インクタンク21bの状態測定として、インク残量及びインク溶存酸素量を測定する(ステップS34)。このとき、制御部16は、現時点での第2インクタンク21bのインク残量及びインク溶存酸素量を予測及び/又は実測して測定する。
【0112】
制御部16は、待機タンクである第2インクタンク21bのインク残量及びインク溶存酸素量がそれぞれの所定の供給目標値に達しているか否かを判定する(ステップS35)。
【0113】
第2インクタンク21bのインク残量及びインク溶存酸素量が供給目標値に達している場合(ステップS35:Yes)、制御部16は、待機タンクの第2インクタンク21bを次タンクとして設定することで(ステップS36)、次タンクの準備を完了する。
【0114】
一方、第2インクタンク21bのインク残量及び/又はインク溶存酸素量が供給目標値に達していない場合(ステップS35:No)、制御部16は、第2インクタンク21bを次タンクとして準備するために、次タンク準備開始信号を送信する(ステップS37)。
【0115】
制御部16は、次タンク準備開始信号に応じて、第2インクタンク21bの次タンク準備を行う。このような次タンク準備は、上記した図5のフローチャートの動作例と同様に行われる。次タンク準備が完了した後、制御部16は、次タンク準備完了信号を受信すると(ステップS38)、待機タンクの第2インクタンク21bを次タンクとして設定することで(ステップS36)、次タンクの準備を完了する。
【0116】
また、待機タンクである第2インクタンク21bの状態測定中や、次タンク準備中に、制御部16は、現時点での第1インクタンク21aのインク残量及びインク溶存酸素量を予測及び/又は実測して測定する(ステップS39)。
【0117】
制御部16は、印刷使用タンクである第1インクタンク21aのインク残量及び/又はインク溶存酸素量がそれぞれの所定の切換目標値に達しているか否かを判定する(ステップS40)。
【0118】
次タンクの準備を完了した後、第1インクタンク21aのインク残量及び/又はインク溶存酸素量が切換目標値に達していない場合(ステップS40:No)、制御部16は、第1インクタンク21aを継続して印刷使用タンクとして設定し(ステップS33)、次タンク準備を行わない。
【0119】
一方、次タンクの準備を完了した後、第1インクタンク21aのインク残量及び/又はインク溶存酸素量が切換目標値に達している場合(ステップS40:Yes)、制御部16は、印刷使用タンクを第1インクタンク21aから次タンクの第2インクタンク21bに切り換えて設定することで、印刷に使用する第2インクタンク21bを準備する(ステップS41)。
【0120】
<次タンク準備の開始タイミング判定の動作例>
次に、本実施形態のプリンター1において、一のインクタンク21を印刷使用タンクとして印刷中又は印刷待機中である場合に、印刷使用タンクであるインクタンク21の状況と、印刷使用タンク以外の待機タンクであるインクタンク21の状況とに基づいて、次タンク準備を開始するタイミングを判定する動作例について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0121】
例えば、プリンター1の印刷中又は印刷待機中において、複数のインクタンク21の内、第1インクタンク21aを印刷使用タンクとし、第2インクタンク21bを待機タンクとする。
【0122】
制御部16は、印刷使用タンクである第1インクタンク21aのインク残量及びインク溶存酸素量が、それぞれの所定の切換準備目標値に達するまでの切換目標到達予測時間を、ユーザーの印刷頻度等の使用状況に基づいて予測する(ステップS51)。例えば、制御部16は、所定時間間隔で定期的に、印刷頻度を取得し、また、インク残量及びインク溶存酸素量を予測及び/又は実測して測定していて、印刷頻度の変化量に対応するインク残量及びインク溶存酸素量の変化量を算出することで、印刷頻度の傾向に応じて切換目標到達予測時間を予測する。
【0123】
また、制御部16は、複数のインクタンク21の内、次に印刷使用タンクとして切り換えるインクタンク21を選定し、ここでは、第2インクタンク21bを選定する(ステップS52)。なお、制御部16は、各インクタンク21のインク残量及びインク溶存酸素量に基づいて、次に印刷使用タンクとして切り換えるインクタンク21を選定し、例えば、「最も早く脱気が完了する」、「最もインク容量が多い」、「予め決められた順番」等の選定基準に従って選定するとよい。
【0124】
制御部16は、選定した第2インクタンク21bのインク残量及びインク溶存酸素量が、それぞれの所定の供給準備目標値に達するまでの供給目標到達予測時間を予測する(ステップS52)。例えば、制御部16は、所定時間間隔で定期的に、インク残量及びインク溶存酸素量を予測及び/又は実測して測定していて、インク残量及びインク溶存酸素量の変化量を算出することで、供給目標到達予測時間を予測する。
【0125】
なお、図8では、印刷使用タンクの切換目標到達予測時間の予測(ステップS51)と、次に切り換えるインクタンク21の選定(ステップS52)、選定したインクタンク21の供給目標到達予測時間の予測(ステップS53)とを平行して行う例を示しているが、ステップS51とステップS53とは、同時に行われてもよいが、異なる時点で行われてもよい。例えば、ステップS51は、印刷使用タンクが設定された後、所定の時間間隔毎に、又は印刷ジョブの終了毎に行われてよい。また、ステップS53は、ステップS52の後、所定の時間間隔毎に、又は印刷ジョブの終了毎に行われてよい。
【0126】
制御部16は、切換目標到達予測時間と供給目標到達予測時間とが一致しない場合(ステップS54:No)、第1インクタンク21aを継続して印刷使用タンクとして設定し(ステップS55)、次タンク準備を行わない。
【0127】
一方、制御部16は、切換目標到達予測時間と供給目標到達予測時間とが一致した場合(ステップS54:Yes)、次タンク準備開始信号を送信する(ステップS56)。
【0128】
制御部16は、次タンク準備開始信号に応じて、第2インクタンク21bの次タンク準備を行う。このような次タンク準備は、上記した図5のフローチャートの動作例と同様に行われる。次タンク準備が完了した後、制御部16は、次タンク準備完了信号を受信すると(ステップS57)、待機タンクの第2インクタンク21bを次タンクとして設定することで(ステップS58)、次タンクの準備を完了する。
【0129】
また、制御部16は、第1インクタンク21aのインク残量及びインク溶存酸素量を予測及び/又は実測して測定する(ステップS59)。
【0130】
制御部16は、印刷使用タンクである第1インクタンク21aのインク残量及び/又はインク溶存酸素量がそれぞれの所定の切換目標値に達しているか否かを判定する(ステップS60)。
【0131】
次タンクの準備を完了した後、第1インクタンク21aのインク残量及び/又はインク溶存酸素量が切換目標値に達していない場合(ステップS60:No)、制御部16は、第1インクタンク21aを継続して印刷使用タンクとして設定し(ステップS55)、次タンク準備を行わない。
【0132】
一方、次タンクの準備を完了した後、第1インクタンク21aのインク残量及び/又はインク溶存酸素量が切換目標値に達している場合(ステップS60:Yes)、制御部16は、印刷使用タンクを第1インクタンク21aから第2インクタンク21bに切り換えて設定することで、印刷に使用する第2インクタンク21bを準備する(ステップS61)。
【0133】
本実施形態では上述のように、プリンター1に備わるインク供給機構20は、インクを収容するインクコンテナ14と、インクコンテナ14から記録ヘッド13へと供給されるインクを貯留するインクタンク21と、インクタンク21の内部を減圧する減圧部(減圧ポンプ22並びに第1減圧流路26a及び第2減圧流路26b)と、インクタンク21から流出されるインクを循環してインクタンク21へと流入する脱気流路(第1脱気流路31a及び第2脱気流路31b)と、を備える。インク供給機構20では、記録ヘッド13に対して複数のインクタンク21が並列に配置され、複数のインクタンク21の内、一のインクタンク21が印刷に使用される場合に、他のインクタンク21の内部を減圧部によって減圧した状態で、脱気流路を用いて他のインクタンク21の内部のインクを循環することで、他のインクタンク21の内部のインクを脱気する脱気動作を行う。
【0134】
これにより、インク供給機構20は、循環脱気方式を適用することで、攪拌脱気方式を適用する場合に比べて、短い時間で脱気を完了することができる。また、一のインクタンク21を使用して印刷を行っている間に、他のインクタンク21の脱気を行うことで、一のインクタンク21の切り換えが必要になった場合に、即座に他のインクタンク21に切り換えることができる。このとき、脱気動作のために待機する必要がなく、印刷効率を向上することができる。このように、本発明によれば、インクタンク21のインクの充填量を増やしても効率よく脱気することができる。
【0135】
また、本実施形態では、インク供給機構20は、他のインクタンク21の脱気動作の開始タイミングを、一のインクタンク21のインク残量及び/又はインク溶存酸素量、及び/又は、他のインクタンク21のインク残量及び/又はインク溶存酸素量に基づいて決定する。
【0136】
これにより、インクタンク21のインク残量やインク溶存酸素量を利用することで、適切なタイミングで脱気動作を行うことができ、効率よくインクタンク21を脱気することができるので、印刷効率を向上することができる。
【0137】
また、本実施形態では、インク供給機構20は、他のインクタンク21の脱気動作の開始タイミングを、ユーザーの印刷頻度に基づいて決定する。
【0138】
これにより、ユーザーの印刷頻度を利用することで、適切なタイミングで脱気動作を行うことができ、効率よくインクタンク21を脱気することができるので、印刷効率を向上することができる。
【0139】
また、本実施形態では、インク供給機構20は、一のインクタンク21のインク残量を印刷中に測定する。
【0140】
これにより、インク残量の測定のために印刷を中止する必要がないので、インク残量を利用して効率よくインクタンク21を脱気することができるので、印刷効率を向上することができる。
【0141】
また、本実施形態では、インク供給機構20は、一のインクタンク21のインク溶存酸素量を印刷中又は印刷待機中に測定する。
【0142】
これにより、インク溶存酸素量の測定のために印刷を中止する必要がなく、また、印刷待機中に変化するインク溶存酸素量を把握することができるので、インク溶存酸素量を利用して効率よくインクタンク21を脱気することができるので、印刷効率を向上することができる。
【0143】
また、本実施形態では、インク供給機構20は、複数のインクタンク21に共通の脱気ポンプ24を脱気流路に備え、複数のインクタンク21のそれぞれの脱気動作を、脱気ポンプ24を用いて行う。
【0144】
これにより、複数のインクタンク21のそれぞれに脱気ポンプ24を備える必要がなく、スペース効率を向上することができる。なお、脱気音を抑制するために、複数のインクタンク21の1つずつに対して脱気動作を行い、複数のインクタンク21に対して同時に脱気動作を行うことはしない。
【0145】
なお、上記した実施形態では、インク供給機構20は、インクタンク21に対して脱気流路(第1脱気流路31a及び第2脱気流路31b)及び脱気ポンプ24を備えて、インクタンク21から流出されるインクを循環してインクタンク21へと流入することで、インクタンク21の脱気を行う例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。本発明では、インク供給機構20は、インクコンテナ14に対して、脱気流路及び脱気ポンプを備えて、インクコンテナ14から流出されるインクを循環してインクコンテナ14へと流入することで、インクコンテナ14の脱気を行うように構成されてもよい。
【0146】
本発明は、プリンター1やインク供給機構20について上記した実施形態の構成に限定されず、使用環境に応じてプリンター1やインク供給機構20の動作の仕様や組合せを変更して構成してもよい。これにより、プリンター1のコンディションに応じた最適な脱気動作を行うことができ、プリンター1のダウンタイムを抑制することができる。
【0147】
本実施形態では、画像形成装置としてプリンター1に本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、インクジェット式のインク供給機構を備えるものであれば、複写機、ファクシミリ、複合機等の他の異なる画像形成装置に本発明の構成を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0148】
1 プリンター(画像形成装置)
13、13K、13C、13M、13Y 記録ヘッド
14、14K、14C、14M、14Y インクコンテナ
20 インク供給機構
16 制御部
20 インク供給機構
21 インクタンク
21a 第1インクタンク
21b 第2インクタンク
22 減圧ポンプ(減圧部)
23 吸引ポンプ
24 脱気ポンプ
25 循環ポンプ
26a 第1減圧流路(減圧部)
26b 第2減圧流路(減圧部)
26c 共通減圧流路(減圧部)
27a 第1減圧用弁(減圧部)
27b 第2減圧用弁(減圧部)
31a 第1脱気流路(脱気流路)
31b 第2脱気流路(脱気流路)
31c 共通脱気流路(脱気流路)
32a、33a 第1脱気用弁
32b、33b 第2脱気用弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8