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特開2024-1684リチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001684
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20231227BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100513
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小林 和暉
(72)【発明者】
【氏名】磯村 省吾
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB07
5H050EA23
5H050FA17
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA08
(57)【要約】
【課題】正極活物質がLiFePOである場合にその被覆正極活物質粒子の二次粒子を維持し、電気性能(放電容量維持率)が優れた電池が得られるリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子を提供する。
【解決手段】正極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物及び導電性フィラーを含む被覆層で被覆されたリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子であって、上記正極活物質粒子がLiFePOであり、容量100cm、直径30mmの円筒容器を用い、JIS K 6219-2(2005)に準じて測定したゆるめ嵩密度と、落下高さを5mm、タンプ回数を2000回としてJIS K 5101-12-2(2004)に準じて測定したかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)が0.50~0.90であるリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物及び導電性フィラーを含む被覆層で被覆されたリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子であって、
前記正極活物質粒子がLiFePOであり、
容量100cm、直径30mmの円筒容器を用い、JIS K 6219-2(2005)に準じて測定したゆるめ嵩密度と、落下高さを5mm、タンプ回数を2000回としてJIS K 5101-12-2(2004)に準じて測定したかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度) が0.50~0.90であるリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子。
【請求項2】
前記高分子化合物の重量割合が、前記リチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子の重量を基準として0.1~11重量%であり、
前記導電性フィラーの重量割合が、前記リチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子の重量を基準として2~14重量%である請求項1に記載のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高出力密度が達成できる二次電池として、近年様々な用途に多用されており、安価で、より高性能のリチウムイオン電池を開発するために種々の検討がなされている。
【0003】
安定的な供給が期待できるリチウムイオン電池用正極活物質としてLiFePOの利用が検討されてきた。LiFePOは他の正極活物質と比較して電子伝導性が低いため、結着剤である樹脂と抵抗低減のための炭素系導電助剤とを有機溶剤を用いて塗布、乾燥させることで電極の導電性を確保してきた(特許文献1)。
また、高容量の電池を得ることを目的としてより厚膜の電極を作製するために、正極活物質を高分子化合物及び導電助剤を含む被覆層で被覆して、得られた被覆正極活物質を圧縮成形することで電極を作製する方法も提案されており(特許文献2)、この方法をLiFePOに適用することもできると考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-117833号公報
【特許文献2】特開2016-189325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、検討を進めるうち、正極活物質がLiFePOである場合に特許文献2に記載の方法で被覆活物質を作製すると、得られる電池の電気性能(放電容量維持率)が悪化することがわかってきた。
電気抵抗低減及び活物質の密度向上の観点から、被覆正極活物質粒子は一次粒子が凝集した二次粒子として存在することが好ましいが、LiFePOは二次粒子が砕けやすく被覆活物質製造工程(被覆工程)で簡単に一次粒子化してしまう。被覆正極活物質粒子の粒子構造は、正極組成物においても、圧縮成形後の電極においても維持される。あくまで推測ではあるが、正極活物質がLiFePOである場合の電池の性能悪化は、被覆正極活物質粒子の一次粒子化が原因であると考えた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、正極活物質がLiFePOである場合にその被覆正極活物質粒子の二次粒子を維持し、電気性能(放電容量維持率)が優れた電池が得られるリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、正極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物及び導電性フィラーを含む被覆層で被覆されたリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子であって、上記正極活物質粒子がLiFePOであり、容量100cm、直径30mmの円筒容器を用い、JIS K 6219-2(2005)に準じて測定したゆるめ嵩密度と、落下高さを5mm、タンプ回数を2000回としてJIS K 5101-12-2(2004)に準じて測定したかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)が0.50~0.90であるリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、正極活物質がLiFePOである場合にその被覆正極活物質粒子の二次粒子を維持し、電気性能(放電容量維持率)が優れた電池が得られる被覆正極活物質粒子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、リチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子に関する。以下では、「リチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子」を「被覆正極活物質粒子」と記載することがある。
なお、本明細書において、リチウムイオン電池と記載する場合、リチウムイオン二次電池も含む概念とする。
【0010】
本発明のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子は、正極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物及び導電性フィラーを含む被覆層で被覆されている。
正極活物質粒子はLiFePOであり、LiFePOはリチウム含有遷移金属リン酸塩の1種である。LiFePOは、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。他の遷移金属としては、例えば、Co、Mn、Ni、V、Mo及びTi等が挙げられる。
【0011】
正極活物質粒子の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01~100μmであることが好ましく、0.1~35μmであることがより好ましく、2~30μmであることが更に好ましい。
本明細書において体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
【0012】
本発明のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子は、容量100cm、直径30mmの円筒容器を用い、JIS K 6219-2(2005)に準じて測定したゆるめ嵩密度と、落下高さを5mm、タンプ回数を2000回としてJIS K 5101-12-2(2004)に準じて測定したかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)が0.50~0.90である。ゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比が上記の範囲内であると、被覆正極活物質粒子の二次粒子を維持し、放電容量維持率等の電気性能が優れたリチウムイオン電池が得られる。ゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比は、好ましくは0.50~0.85であり、より好ましくは0.50~0.80である。
なお、ゆるめ嵩密度及びかため密度は、それぞれ5回の測定の平均値を用いる。
【0013】
被覆層は、高分子化合物及び導電性フィラーを含む。
高分子化合物としては、例えば、アクリルモノマー(a)を必須構成単量体とする重合体を含む樹脂であることが好ましい。
具体的には、被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)を含む単量体組成物の重合体であることが好ましい。上記単量体組成物において、アクリル酸(a0)の含有量は、単量体全体の重量を基準として90重量%を超え、98重量%以下であることが好ましい。被覆層の柔軟性の観点から、アクリル酸(a0)の含有量は、単量体全体の重量を基準として93.0~97.5重量%であることがより好ましく、95.0~97.0重量%であることが更に好ましい。
【0014】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)以外のカルボキシル基又は酸無水物基を有するモノマー(a1)を含有してもよい。
【0015】
アクリル酸(a0)以外のカルボキシル基又は酸無水物基を有するモノマー(a1)としては、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸等の炭素数3~15のモノカルボン酸;(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の炭素数4~24のジカルボン酸;アコニット酸等の炭素数6~24の3価~4価又はそれ以上の価数のポリカルボン酸等が挙げられる。
【0016】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、下記一般式(1)で表されるモノマー(a2)を含有してもよい。
CH=C(R)COOR (1)
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数4~12の直鎖又は炭素数3~36の分岐アルキル基である。]
【0017】
上記一般式(1)で表されるモノマー(a2)において、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rはメチル基であることが好ましい。
は、炭素数4~12の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は、炭素数13~36の分岐アルキル基であることが好ましい。
【0018】
(a21)Rが炭素数4~12の直鎖又は分岐アルキル基であるエステル化合物
炭素数4~12の直鎖アルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられる。
炭素数4~12の分岐アルキル基としては、1-メチルプロピル基(sec-ブチル基)、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基(tert-ブチル基)、1-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,2-ジメチルヘキシル基、1,3-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、4-メチルオクチル基、5-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、1,1-ジメチルヘプチル基、1,2-ジメチルヘプチル基、1,3-ジメチルヘプチル基、1,4-ジメチルヘプチル基、1,5-ジメチルヘプチル基、1,6-ジメチルヘプチル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3-メチルノニル基、4-メチルノニル基、5-メチルノニル基、6-メチルノニル基、7-メチルノニル基、8-メチルノニル基、1,1-ジメチルオクチル基、1,2-ジメチルオクチル基、1,3-ジメチルオクチル基、1,4-ジメチルオクチル基、1,5-ジメチルオクチル基、1,6-ジメチルオクチル基、1,7-ジメチルオクチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルデシル基、2-メチルデシル基、3-メチルデシル基、4-メチルデシル基、5-メチルデシル基、6-メチルデシル基、7-メチルデシル基、8-メチルデシル基、9-メチルデシル基、1,1-ジメチルノニル基、1,2-ジメチルノニル基、1,3-ジメチルノニル基、1,4-ジメチルノニル基、1,5-ジメチルノニル基、1,6-ジメチルノニル基、1,7-ジメチルノニル基、1,8-ジメチルノニル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基、1-メチルウンデシル基、2-メチルウンデシル基、3-メチルウンデシル基、4-メチルウンデシル基、5-メチルウンデシル基、6-メチルウンデシル基、7-メチルウンデシル基、8-メチルウンデシル基、9-メチルウンデシル基、10-メチルウンデシル基、1,1-ジメチルデシル基、1,2-ジメチルデシル基、1,3-ジメチルデシル基、1,4-ジメチルデシル基、1,5-ジメチルデシル基、1,6-ジメチルデシル基、1,7-ジメチルデシル基、1,8-ジメチルデシル基、1,9-ジメチルデシル基、1-エチルデシル基、2-エチルデシル基等が挙げられる。これらの中では、特に、2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0019】
(a22)Rが炭素数13~36の分岐アルキル基であるエステル化合物
炭素数13~36の分岐アルキル基としては、1-アルキルアルキル基[1-メチルドデシル基、1-ブチルエイコシル基、1-ヘキシルオクタデシル基、1-オクチルヘキサデシル基、1-デシルテトラデシル基、1-ウンデシルトリデシル基等]、2-アルキルアルキル基[2-メチルドデシル基、2-ヘキシルオクタデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ウンデシルトリデシル基、2-ドデシルヘキサデシル基、2-トリデシルペンタデシル基、2-デシルオクタデシル基、2-テトラデシルオクタデシル基、2-ヘキサデシルオクタデシル基、2-テトラデシルエイコシル基、2-ヘキサデシルエイコシル基等]、3~34-アルキルアルキル基(3-アルキルアルキル基、4-アルキルアルキル基、5-アルキルアルキル基、32-アルキルアルキル基、33-アルキルアルキル基及び34-アルキルアルキル基等)、並びに、プロピレンオリゴマー(7~11量体)、エチレン/プロピレン(モル比16/1~1/11)オリゴマー、イソブチレンオリゴマー(7~8量体)及びα-オレフィン(炭素数5~10)オリゴマー(4~8量体)等から得られるオキソアルコールから水酸基を除いた残基のような1又はそれ以上の分岐アルキル基を含有する混合アルキル基等が挙げられる。
【0020】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物(a3)を含有してもよい。
エステル化合物(a3)を構成する炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノール等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0021】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)のうちの少なくとも1つとを含む単量体組成物の重合体であることが好ましく、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、エステル化合物(a21)及びエステル化合物(a3)のうちの少なくとも1つとを含む単量体組成物の重合体であることがより好ましく、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)のうちのいずれか1つとを含む単量体組成物の重合体であることが更に好ましく、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、エステル化合物(a21)及びエステル化合物(a3)のうちのいずれか1つとを含む単量体組成物の重合体であることが最も好ましい。
被覆層を構成する高分子化合物としては、例えば、モノマー(a1)としてマレイン酸を用いた、アクリル酸及びマレイン酸の共重合体、モノマー(a2)としてメタクリル酸2-エチルヘキシルを用いた、アクリル酸及びメタクリル酸2-エチルヘキシルの共重合体、エステル化合物(a3)としてメタクリル酸メチルを用いた、アクリル酸及びメタクリル酸メチルの共重合体等が挙げられる。
【0022】
モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)の合計含有量は、正極活物質粒子の体積変化抑制等の観点から、単量体全体の重量を基準として2.0~9.9重量%であることが好ましく、2.5~7.0重量%であることがより好ましい。
【0023】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体の塩(a4)を含有しないことが好ましい。
【0024】
重合性不飽和二重結合を有する構造としてはビニル基、アリル基、スチレニル基及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
アニオン性基としては、スルホン酸基及びカルボキシル基等が挙げられる。
重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体はこれらの組み合わせにより得られる化合物であり、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸及び(メタ)アクリル酸が挙げられる。
なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
アニオン性単量体の塩(a4)を構成するカチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0025】
また、被覆層を構成する高分子化合物は、物性を損なわない範囲で、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)、モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)と共重合可能であるラジカル重合性モノマー(a5)を含有してもよい。
ラジカル重合性モノマー(a5)としては、活性水素を含有しないモノマーが好ましく、下記(a51)~(a58)のモノマーを用いることができる。
【0026】
(a51)炭素数13~20の直鎖脂肪族モノオール、炭素数5~20の脂環式モノオール及び炭素数7~20の芳香脂肪族モノオールのうち少なくとも1つのモノオールと(メタ)アクリル酸から形成されるハイドロカルビル(メタ)アクリレート
上記モノオールとしては、(i)直鎖脂肪族モノオール(トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール等)、(ii)脂環式モノオール(シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘプチルアルコール、シクロオクチルアルコール等)、(iii)芳香脂肪族モノオール(ベンジルアルコール等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0027】
(a52)ポリ(n=2~30)オキシアルキレン(炭素数2~4)アルキル(炭素数1~18)エーテル(メタ)アクリレート[メタノールのエチレンオキサイド(以下EOと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート、メタノールのプロピレンオキサイド(以下POと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート等]
【0028】
(a53)窒素含有ビニル化合物
(a53-1)アミド基含有ビニル化合物
(i)炭素数3~30の(メタ)アクリルアミド化合物、例えばN,N-ジアルキル(炭素数1~6)又はジアラルキル(炭素数7~15)(メタ)アクリルアミド(N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジベンジルアクリルアミド等)、ジアセトンアクリルアミド
(ii)上記(メタ)アクリルアミド化合物を除く、炭素数4~20のアミド基含有ビニル化合物、例えばN-メチル-N-ビニルアセトアミド、環状アミド[ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えば、N-ビニルピロリドン等)]
【0029】
(a53-2)(メタ)アクリレート化合物
(i)ジアルキル(炭素数1~4)アミノアルキル(炭素数1~4)(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]
(ii)4級アンモニウム基含有(メタ)アクリレート{3級アミノ基含有(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]の4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等}
【0030】
(a53-3)複素環含有ビニル化合物
ピリジン化合物(炭素数7~14、例えば2-又は4-ビニルピリジン)、イミダゾール化合物(炭素数5~12、例えばN-ビニルイミダゾール)、ピロール化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニルピロール)、ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニル-2-ピロリドン)
【0031】
(a53-4)ニトリル基含有ビニル化合物
炭素数3~15のニトリル基含有ビニル化合物、例えば(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアルキル(炭素数1~4)アクリレート
【0032】
(a53-5)その他の窒素含有ビニル化合物
ニトロ基含有ビニル化合物(炭素数8~16、例えばニトロスチレン)等
【0033】
(a54)ビニル炭化水素
(a54-1)脂肪族ビニル炭化水素
炭素数2~18又はそれ以上のオレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン等)、炭素数4~10又はそれ以上のジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等)等
【0034】
(a54-2)脂環式ビニル炭化水素
炭素数4~18又はそれ以上の環状不飽和化合物、例えばシクロアルケン(例えばシクロヘキセン)、(ジ)シクロアルカジエン[例えば(ジ)シクロペンタジエン]、テルペン(例えばピネン及びリモネン)、インデン
【0035】
(a54-3)芳香族ビニル炭化水素
炭素数8~20又はそれ以上の芳香族不飽和化合物、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン
【0036】
(a55)ビニルエステル
脂肪族ビニルエステル[炭素数4~15、例えば脂肪族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメトキシアセテート)]
芳香族ビニルエステル[炭素数9~20、例えば芳香族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えばビニルベンゾエート、ジアリルフタレート、メチル-4-ビニルベンゾエート)、脂肪族カルボン酸の芳香環含有エステル(例えばアセトキシスチレン)]
【0037】
(a56)ビニルエーテル
脂肪族ビニルエーテル[炭素数3~15、例えばビニルアルキル(炭素数1~10)エーテル(ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2-エチルヘキシルエーテル等)、ビニルアルコキシ(炭素数1~6)アルキル(炭素数1~4)エーテル(ビニル-2-メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、3,4-ジヒドロ-1,2-ピラン、2-ブトキシ-2’-ビニロキシジエチルエーテル、ビニル-2-エチルメルカプトエチルエーテル等)、ポリ(2~4)(メタ)アリロキシアルカン(炭素数2~6)(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等)]、芳香族ビニルエーテル(炭素数8~20、例えばビニルフェニルエーテル、フェノキシスチレン)
【0038】
(a57)ビニルケトン
脂肪族ビニルケトン(炭素数4~25、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン)、芳香族ビニルケトン(炭素数9~21、例えばビニルフェニルケトン)
【0039】
(a58)不飽和ジカルボン酸ジエステル
炭素数4~34の不飽和ジカルボン酸ジエステル、例えばジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)
【0040】
ラジカル重合性モノマー(a5)を含有する場合、その含有量は、単量体全体の重量を基準として0.1~3.0重量%であることが好ましい。
【0041】
被覆層を構成する高分子化合物の重量平均分子量の好ましい下限は3,000、より好ましい下限は5,000、更に好ましい下限は7,000である。一方、上記高分子化合物の重量平均分子量の好ましい上限は100,000、より好ましい上限は70,000である。
【0042】
被覆層を構成する高分子化合物の重量平均分子量は、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記)測定により求めることができる。
装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
溶媒:オルトジクロロベンゼン、DMF、THF
標準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED-B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:135℃
【0043】
被覆層を構成する高分子化合物は、公知の重合開始剤{アゾ系開始剤[2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等]、パーオキサイド系開始剤(ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等)等}を使用して公知の重合方法(塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等)により製造することができる。
重合開始剤の使用量は、重量平均分子量を好ましい範囲に調整する等の観点から、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%、更に好ましくは0.1~1.5重量%であり、重合温度及び重合時間は重合開始剤の種類等に応じて調整されるが、重合温度は好ましくは-5~150℃、(より好ましくは30~120℃)、反応時間は好ましくは0.1~50時間(より好ましくは2~24時間)である。
【0044】
溶液重合の場合に使用される溶媒としては、例えばエステル(炭素数2~8、例えば酢酸エチル及び酢酸ブチル)、アルコール(炭素数1~8、例えばメタノール、エタノール及びオクタノール)、炭化水素(炭素数4~8、例えばn-ブタン、シクロヘキサン及びトルエン)、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する))及びケトン(炭素数3~9、例えばメチルエチルケトン)が挙げられ、重量平均分子量を好ましい範囲に調整する等の観点から、その使用量はモノマーの合計重量に基づいて好ましくは5~900重量%、より好ましくは10~400重量%、更に好ましくは30~300重量%であり、モノマー濃度としては、好ましくは10~95重量%、より好ましくは20~90重量%、更に好ましくは30~80重量%である。
【0045】
乳化重合及び懸濁重合における分散媒としては、水、アルコール(例えばエタノール)、エステル(例えばプロピオン酸エチル)、軽ナフサ等が挙げられ、乳化剤としては、高級脂肪酸(炭素数10~24)金属塩(例えばオレイン酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウム)、高級アルコール(炭素数10~24)硫酸エステル金属塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、エトキシ化テトラメチルデシンジオール、メタクリル酸スルホエチルナトリウム、メタクリル酸ジメチルアミノメチル等が挙げられる。更に安定剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を加えてもよい。
溶液又は分散液のモノマー濃度は好ましくは5~95重量%、より好ましくは10~90重量%、更に好ましくは15~85重量%であり、重合開始剤の使用量は、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%である。
重合に際しては、公知の連鎖移動剤、例えばメルカプト化合物(ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン等)及び/又はハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル等)を使用することができる。
【0046】
被覆層を構成する高分子化合物は、該高分子化合物をカルボキシル基と反応する反応性官能基を有する架橋剤(A’){好ましくはポリエポキシ化合物(a’1)[ポリグリシジルエーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリントリグリシジルエーテル等)及びポリグリシジルアミン(N,N-ジグリシジルアニリン及び1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル))等]及び/又はポリオール化合物(a’2)(エチレングリコール等)}で架橋してなる架橋重合体であってもよい。
【0047】
架橋剤(A’)を用いて被覆層を構成する高分子化合物を架橋する方法としては、正極活物質粒子を、被覆層を構成する高分子化合物で被覆した後に架橋する方法が挙げられる。具体的には、正極活物質粒子と被覆層を構成する高分子化合物を含む樹脂溶液を混合し脱溶剤することにより、被覆活物質粒子を製造した後に、架橋剤(A’)を含む溶液を該被覆活物質粒子に混合して加熱することにより、脱溶剤と架橋反応を生じさせて、被覆層を構成する高分子化合物が架橋剤(A’)によって架橋される反応を正極活物質粒子の表面で起こす方法が挙げられる。
加熱温度は、架橋剤の種類に応じて調整されるが、架橋剤としてポリエポキシ化合物(a’1)を用いる場合は好ましくは70℃以上であり、ポリオール化合物(a’2)を用いる場合は好ましくは120℃以上である。
【0048】
本発明のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子における上記高分子化合物の重量割合は、リチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子の重量を基準として0.1~11重量%であることが好ましい。高分子化合物の重量割合が上記範囲であると、被覆正極活物質粒子の二次粒子を維持し、放電容量維持率に優れた電池が得られる。より好ましくは1.0~10.0重量%である。
高分子化合物の重量割合は、高分子化合物の固形分重量での重量割合である。
【0049】
導電性フィラーとしては、導電性を有する材料から選択されることが好ましい。
導電性フィラーとして好ましいものとしては、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びサーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられる。
これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物として用いられてもよい。
なかでも、電気的安定性の観点から、より好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタン及びこれらの混合物であり、更に好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、特に好ましくはカーボンである。
またこれらの導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料[好ましくは、上記した導電性フィラーのうち金属のもの]をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0050】
導電性フィラーの形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性フィラーとして実用化されている形態であってもよい。
【0051】
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01~10μm程度であることが好ましい。
本明細書中において、「導電性フィラーの粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、30個の粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0052】
導電性フィラーの重量割合は、リチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子の重量を基準として2~14重量%であることが好ましい。導電性フィラーの重量割合が上記範囲であると、被覆正極活物質粒子の二次粒子を維持し、放電容量維持率に優れた電池が得られる。より好ましくは3~11重量%である。
本発明のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子は、高分子化合物の重量割合が、リチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子の重量を基準として0.1~11重量%であり、かつ、導電性フィラーの重量割合が、リチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子の重量を基準として2~14重量%であることが好ましい。
【0053】
被覆層を構成する高分子化合物と導電性フィラーの比率は特に限定されるものではないが、電池の放電容量維持率等の観点から、重量比率で被覆層を構成する高分子化合物(樹脂固形分重量):導電性フィラーが1:0.01~1:50であることが好ましく、1:0.2~1:4.0であることがより好ましい。
【0054】
被覆層は、任意でセラミック粒子を含んでいてもよい。セラミック粒子としては、金属炭化物粒子、金属酸化物粒子、ガラスセラミック粒子等が挙げられる。
【0055】
金属炭化物粒子としては、例えば、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC)、炭化モリブデン(MoC)、炭化チタン(TiC)、炭化タンタル(TaC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ジルコニウム(ZrC)等が挙げられる。
【0056】
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化スズ(SnO)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、酸化インジウム(In)、Li、LiTi12、LiTi、LiTaO、LiNbO、LiAlO、LiZrO、LiWO、LiTiO、LiPO、LiMoO、LiBO、LiBO、LiCO、LiSiOや、ABO(但し、Aは、Ca、Sr、Ba、La、Pr及びYからなる群より選択される少なくとも1種であり、Bは、Ni、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Mo、Ru、Rh、Pd及びReからなる群より選択される少なくとも1種)で表されるペロブスカイト型酸化物粒子等が挙げられる。
金属酸化物粒子としては、電解液と被覆正極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制する観点から、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ケイ素(SiO)、及び、四ほう酸リチウム(Li)が好ましい。
【0057】
セラミック粒子としては、電解液と被覆正極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制する観点から、ガラスセラミック粒子であることが好ましい。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
ガラスセラミック粒子としては、菱面体晶系を有するリチウム含有リン酸化合物であることが好ましく、その化学式は、LiM”12(X=1~1.7)で表される。
ここでM”はZr、Ti、Fe、Mn、Co、Cr、Ca、Mg、Sr、Y、Sc、Sn、La、Ge、Nb、Alからなる群より選ばれた1種以上の元素である。また、Pの一部をSi又はBに、Oの一部をF、Cl等で置換してもよい。例えば、Li1.15Ti1.85Al0.15Si0.052.9512、Li1.2Ti1.8Al0.1Ge0.1Si0.052.9512等を用いることができる。
また、異なる組成の材料を混合又は複合してもよく、ガラス電解質等で表面をコートしてもよい。又は、熱処理によりNASICON型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の結晶相を析出するガラスセラミック粒子を用いることが好ましい。
ガラス電解質としては、特開2019-96478号公報に記載のガラス電解質が挙げられる。
【0059】
ここで、ガラスセラミック粒子におけるLiOの配合割合は酸化物換算で8質量%以下であることが好ましい。
NASICON型構造でなくとも、Li、La、Mg、Ca、Fe、Co、Cr、Mn、Ti、Zr、Sn、Y、Sc、P、Si、O、In、Nb、Fからなり、LISICON型、ぺロブスカイト型、β-Fe(SO型、LiIn(PO型の結晶構造を、持ち、Liイオンを室温で1×10-5S/cm以上伝導する固体電解質を用いても良い。
【0060】
上述したセラミック粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
セラミック粒子の体積平均粒子径は、エネルギー密度の観点及び電気抵抗値の観点から、1~1000nmであることが好ましく、1~500nmであることがより好ましく、1~150nmであることが更に好ましい。
セラミック粒子の体積平均粒子径は、正極活物質粒子と同様にマイクロトラック法を用いて得られる値を意味する。
【0062】
セラミック粒子の重量割合は、被覆正極活物質粒子の重量を基準として0.5~5.0重量%であることが好ましい。
セラミック粒子を上記範囲で含有することにより、電解液と被覆正極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制することができる。
セラミック粒子の重量割合は、被覆正極活物質粒子の重量を基準として2.0~4.0重量%であることがより好ましい。
【0063】
正極活物質粒子と、被覆層を構成する高分子化合物と導電性フィラーとを含む樹脂組成物との配合比率は特に限定されるものではないが、重量比率で正極活物質粒子:樹脂組成物=1:0.001~0.2であることが好ましい。
【0064】
本発明のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子において、正極活物質粒子は、表面の少なくとも一部が被覆層で被覆されている。
正極活物質粒子は、サイクル特性の観点から、下記計算式で得られる被覆率が30~95%であることが好ましい。
被覆率(%)={1-[被覆正極活物質粒子のBET比表面積/(未被覆の正極活物質粒子のBET比表面積×被覆正極活物質中に含まれる正極活物質粒子の重量割合+導電性フィラーのBET比表面積×被覆正極活物質粒子中に含まれる導電性フィラーの重量割合+任意で含まれるセラミック粒子のBET比表面積×被覆正極活物質粒子中に任意で含まれるセラミック粒子の重量割合)]}×100
【0065】
[リチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子の製造方法]
本発明のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子の製造方法(以下、単に「被覆正極活物質粒子の製造方法」ともいう)は特に限定されないが、一態様として、正極活物質粒子、高分子化合物、導電性フィラー及び有機溶剤を、周速度4.0~12.0m/sで回転するインペラを備える密閉容器内で混合しながら攪拌する攪拌工程を備える方法が挙げられる。
【0066】
本発明の被覆正極活物質粒子は、正極活物質粒子を、高分子化合物と導電性フィラーとを含む被覆層で被覆することで得ることができる。上記の被覆正極活物質粒子の製造方法では、正極活物質粒子、高分子化合物、導電性フィラー及び有機溶剤を、インペラを備える密閉容器内で混合する。有機溶剤としては高分子化合物を溶解可能な有機溶剤であれば特に限定されず、公知の有機溶剤を適宜選択して用いることができる。有機溶剤の使用量は、高分子化合物に対して、例えば、50~500重量%である。
【0067】
正極活物質粒子、高分子化合物及び導電性フィラーを混合する順番は特に限定されず、例えば、事前に混合した高分子化合物と導電性フィラーとからなる樹脂組成物を正極活物質粒子と更に混合してもよいし、正極活物質粒子、高分子化合物及び導電性フィラーを同時に混合してもよいし、正極活物質粒子に高分子化合物を混合し、更に導電性フィラーを混合してもよい。被覆層に任意でセラミック粒子を用いる場合は、導電性フィラーと共にセラミック粒子を混合すればよい。なお、高分子化合物は、正極活物質粒子、導電性フィラーとの混合前に事前に有機溶剤に溶解させていることが好ましい。
【0068】
インペラを備える密閉容器としては、例えば、万能混合機、ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]等が挙げられる。
【0069】
インペラの周速度は、被覆正極活物質粒子のゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比を上述の範囲とするため、4.0~12.0m/sであり、好ましくは4.5~11.0m/s、より好ましくは5.0~10.0m/sである。なお、周速度とは、インペラ(回転式攪拌翼)の最外端部の速度を意味し、下記式(1)により表すことができる。また攪拌する時間は、インペラの周速度が遅いほど長くなるように、インペラの周速度によっても変動し得る。
インペラの周速度(m/s)=インペラの半径(m)×2×π×回転数(rpm)÷60 (1)
【0070】
攪拌する時間は、密閉容器に投入する正極活物質粒子、高分子化合物、導電性フィラー及び有機溶剤の合計量に応じて適宜調整する必要があるが、例えば1~90分であり、好ましくは10~60分である。
【0071】
上記攪拌工程を、周速度4.0~12.0m/sで回転するインペラを備える密閉容器内で1~90分間行う場合、上記密閉容器に投入する正極活物質粒子、高分子化合物、導電性フィラー及び有機溶剤の合計量は、密閉容器1cm当たり、好ましくは0.1~0.6gであり、より好ましくは0.2~0.5gである。
【0072】
本発明のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子の製造方法の一例として、正極活物質粒子をインペラを備える密閉容器に入れて、周速度4.0~12.0m/sで撹拌した状態で、高分子化合物を含む樹脂溶液を1~90分かけて滴下混合し、更に導電性フィラーを混合することで、被覆正極活物質粒子を製造することができる。
【0073】
本発明のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子の製造方法では、攪拌工程の後、脱溶剤することが好ましい。脱溶剤する方法は特に限定されず、正極活物質粒子、高分子化合物、導電性フィラー及び有機溶剤を撹拌したまま例えば50~200℃に昇温し、0.007~0.04MPaまで減圧した後に10~150分保持して行うことができる。
【0074】
上述の、正極活物質粒子、高分子化合物、導電性フィラー及び有機溶剤を、周速度4.0~12.0m/sで回転するインペラを備える密閉容器内で混合しながら攪拌する攪拌工程を備えるリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子の製造方法も本明細書に開示されている。
【0075】
<リチウムイオン電池用正極>
本発明のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子は、リチウムイオン電池用正極の製造に用いることができる。
リチウムイオン電池用正極は、本発明のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子と、電解質及び溶媒を含有する電解液とを含む正極活物質層を備える。電解質及び溶媒は、公知のものを用い得る。
【0076】
正極活物質層に含まれる被覆正極活物質粒子は、正極活物質粒子の分散性及び電極成形性の観点から、正極活物質層の重量を基準として40~95重量%であることが好ましく、60~90重量%であることがより好ましい。
【0077】
正極活物質層の厚みは、電池性能の観点から、150~550μmであることが好ましく、200~540μmであることがより好ましい。
【0078】
リチウムイオン電池用正極は、例えば、本発明のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子及び必要に応じて導電助剤等を混合した粉体(正極活物質層用組成物)を集電体に塗布しプレス機でプレスして正極活物質層を形成した後に電解液を注液することによって作製することができる。
また、正極活物質層用組成物を離型フィルム上に塗布、プレスして正極活物質層を形成し、正極活物質層を集電体に転写した後、電解液を注液してもよい。
なお、集電体の上に枠状部材を載置し、枠状部材の内側に枠状部材の厚さと同じ厚さとなるように正極活物質層用組成物を充填して、リチウムイオン電池用正極を作製してもよい。
【0079】
[リチウムイオン電池]
上記のリチウムイオン電池用正極を、対極となる電極を組み合わせて、セパレータと共にセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することでリチウムイオン電池を得ることができる。
また、集電体の一方の面に上記のリチウムイオン電池用正極を形成し、もう一方の面に負極を形成してバイポーラ(双極)型電極を作製し、バイポーラ(双極)型電極をセパレータと積層してセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することでもリチウムイオン電池を得ることができる。
【0080】
セパレータとしては、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム、多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンとの積層フィルム、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)又はガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用のセパレータが挙げられる。
【実施例0081】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0082】
<高分子化合物の作製>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF150部を仕込み、75℃に昇温した。次いで、アクリル酸91部、メタクリル酸メチル9部及びDMF50部を配合した単量体組成物と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.3部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8部をDMF30部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで、80℃に昇温して反応を3時間継続し、樹脂濃度30%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して150℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行い、DMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の高分子化合物を得た。得られた高分子化合物の重量平均分子量は、58,000であった。
【0083】
<電解液の作製>
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiN(FSOを2.0mol/Lの割合で溶解させて電解液を作製した。
【0084】
<樹脂集電体の作製>
2軸押出機にて、ポリプロピレン[商品名「サンアロマーPL500A」、サンアロマー(株)製]70部、カーボンナノチューブ[商品名:「FloTube9000」、CNano社製]25部及び分散剤[商品名「ユーメックス1001」、三洋化成工業(株)製]5部を200℃、200rpmの条件で溶融混練して樹脂混合物を得た。
得られた樹脂混合物を、Tダイ押出しフィルム成形機に通して、それを延伸圧延することで、膜厚100μmの樹脂集電体用導電性フィルムを得た。次いで、得られた樹脂集電体用導電性フィルムを17.0cm×17.0cmとなるように切断し、片面にニッケル蒸着を施した後、電流取り出し用の端子(5mm×3cm)を接続した樹脂集電体を得た。
【0085】
<実施例1>
[被覆正極活物質粒子Aの作製]
高分子化合物1部をDMF4部に溶解し、高分子化合物溶液を得た。
正極活物質粒子(LiFePO、体積平均粒子径13μm)90.0部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、周速度5.2m/sで撹拌した状態で、高分子化合物溶液25.0部(樹脂固形分5.0部)を2分かけて滴下し、更に5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電性フィラーであるアセチレンブラック[デンカ(株)製デンカブラック(登録商標)、平均粒子径35nm]5.0部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、被覆正極活物質粒子Aを得た。
【0086】
<実施例2>
[被覆正極活物質粒子Bの作製]
正極活物質粒子を92.0部に変更し、高分子化合物溶液を15.0部(樹脂固形分3.0部)に変更した以外は、実施例1と同様にして被覆正極活物質粒子Bを得た。
【0087】
<実施例3>
[被覆正極活物質粒子Cの作製]
周速度を5.2m/sから9.1m/sに変更した以外は、実施例1と同様にして被覆正極活物質粒子Cを得た。
【0088】
<実施例4>
[被覆正極活物質粒子Dの作製]
正極活物質粒子を86.0部に変更し、高分子化合物溶液を20.0部(樹脂固形分4.0部)に変更し、導電性フィラーを10.0部に変更した以外は、実施例3と同様にして被覆正極活物質粒子Dを得た。
【0089】
<実施例5>
[被覆正極活物質粒子Eの作製]
正極活物質粒子を88.0部に変更し、高分子化合物溶液を45.0部(樹脂固形分9.0部)に変更し、導電性フィラーを3.0部に変更した以外は、実施例3と同様にして被覆正極活物質粒子Eを得た。
【0090】
<実施例6>
[被覆正極活物質粒子Fの作製]
正極活物質粒子を93.3部に変更し、高分子化合物溶液を7.5部(樹脂固形分1.5部)に変更し、導電性フィラーを5.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして被覆正極活物質粒子Fを得た。
【0091】
<実施例7>
[被覆正極活物質粒子Gの作製]
周速度を5.2m/sから7.3m/sに変更した以外は、実施例1と同様にして被覆正極活物質粒子Gを得た。
【0092】
<比較例1>
[被覆正極活物質粒子Hの作製]
周速度を5.2m/sから15.2m/sに変更した以外は、実施例1と同様にして被覆正極活物質粒子Hを得た。
【0093】
<比較例2>
[被覆正極活物質粒子Iの作製]
正極活物質粒子を91.9部に変更し、高分子化合物溶液を15.0部(樹脂固形分3.0部)に変更し、導電性フィラーを5.1部に変更した以外は、比較例1と同様にして被覆正極活物質粒子Iを得た。
【0094】
<リチウムイオン電池用正極の作製>
作製したリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子A~Iのそれぞれを、Φ15の金型上に目付量が100mg/cmになるように充填し、プレス機(HANDTAB-100T15、市橋精機(株)製)で1ton/cmの圧力で打錠成形して正極活物質層(厚さが520μm)を形成し、上記樹脂集電体の片面に積層してリチウムイオン電池用正極(直径15mmの円形)A~Iを作製した。
【0095】
<被覆負極活物質粒子の作製>
上述した被覆用高分子化合物1部をDMF3部に溶解し、被覆用高分子化合物溶液を得た。負極活物質粒子(ハードカーボン粉末、体積平均粒子径25μm)80.04部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、被覆用高分子化合物溶液37.92部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。次いで、撹拌した状態で導電助剤であるアセチレンブラック[デンカ(株)製デンカブラック(登録商標)]9.48部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、被覆負極活物質粒子を得た。
【0096】
<リチウムイオン電池用負極の作製>
作製した被覆負極活物質粒子99部と、炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製ドナカーボ・ミルドS-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]1部とを混合して負極前駆体を作製した。作製した負極前駆体を、Φ16の金型上に負極活物質粒子の目付量が41.6mg/cmになるように充填し、プレス機(HANDTAB-100T15、市橋精機(株)製)で1ton/cmの圧力で打錠成形して負極活物質層(厚さが450μm)を形成し、上記樹脂集電体の片面に積層してリチウムイオン電池用負極(直径16mmの円形)を作製した。
【0097】
<リチウムイオン電池の作製>
上記で得られたリチウムイオン電池用正極A~Iを、セパレータ(セルガード製#3501)を介し、リチウムイオン電池用負極と組み合わせ、ラミネートセルを作製した。
【0098】
各実施例及び比較例で密閉容器に投入する正極活物質粒子、高分子化合物溶液及び導電性フィラーの重量と、密閉容器1cm当たりの重量割合とを表1に示す。
各実施例及び比較例で得られたリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子のゆるめ嵩密度及びかため嵩密度について、本明細書に記載の方法を用いて測定した。結果を表2に示す。
また、各実施例及び比較例で得られたリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子を用いて作製したリチウムイオン電池の放電容量を測定し、放電容量維持率を算出した。結果を表2に示す。
【0099】
<放電容量維持率の測定>
各実施例及び比較例で製造したリチウムイオン電池について、25℃下、充放電測定装置「HJ-SD8」[北斗電工(株)製]を用いて、0.1Cの電流で3.7Vまで充電し、2時間の休止後、0.1Cの電流で2.0Vまで放電し、この充放電を21サイクル繰り返した。
初回充電時の電池容量(1サイクル目放電容量)と、21サイクル目充電時の電池容量(21サイクル目放電容量)を測定した。下記式から放電容量維持率を算出した。結果を表2に示す。なお、数値が大きいほど、電池の劣化が少ないことを示す。
放電容量維持率(%)=(21サイクル目放電容量/1サイクル目放電容量)×100
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
実施例1~7のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子は、ゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)が、0.51~0.79であり、比較例1~2のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子は、ゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)が、0.45~0.46であった。
実施例1~7のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子を用いて得られたリチウムイオン電池は、比較例1~2のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子を用いて得られたリチウムイオン電池と比較して、21サイクル目の放電容量維持率が高かった。
実施例1、3及び7を比較すると、周速度が小さいほど、21サイクル目の放電容量維持率が高いことがわかった。
実施例1、2及び6を比較すると、正極活物質粒子の量が少なく高分子化合物の量が多いほど、21サイクル目の放電容量維持率が高いことがわかった。
実施例3、4及び5を比較すると、高分子化合物の量が少なく導電性フィラーの量が多いほど、21サイクル目の放電容量維持率が高いことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明のリチウムイオン電池用被覆正極活物質粒子は、特に、定置用電源、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用等に用いられるリチウムイオン電池を作製するために有用である。