(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168408
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】洗浄水タンクの給水装置
(51)【国際特許分類】
E03D 1/33 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
E03D1/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085049
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000107332
【氏名又は名称】ジャニス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多澤 浩
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039BA06
2D039BA09
2D039DB00
(57)【要約】
【課題】タンク内部におけるフロートの取付配置の自由度を向上させ、小型のタンクにも対応可能な給水装置を提供する。
【解決手段】本発明の給水装置は、水洗便器の洗浄水タンクに取り付けられる給水弁本体12と、タンク内水位が上昇したときに給水弁本体12に内蔵された給水弁13を閉じるフロート30とを備える。給水弁本体12に対するフロート30の取付角度を、水平面内で変更可能な構造としたので、小型のタンク内にも取り付けることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器の洗浄水タンクに取り付けられる給水弁本体と、
タンク内水位が上昇したときに前記給水弁本体に内蔵された給水弁を閉じるフロートとを備えた給水装置であって、
前記給水弁本体に対する前記フロートの取付角度を、水平面内で変更可能としたことを特徴とする洗浄水タンクの給水装置。
【請求項2】
前記フロートは上下に延びるガイド部材に沿って昇降するものであり、このガイド部材の上部を保持する支持アームの先端に取付リングを形成し、この取付リングを前記給水弁本体の上部に形成された円形受け部に嵌合させたことを特徴とする請求項1に記載の洗浄水タンクの給水装置。
【請求項3】
前記フロートは外側に小タンクを備えた二重構造であり、タンク内水位が前記小タンクの上面を超えたときに浮上し、前記給水弁を閉じるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄水タンクの給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗便器の洗浄水タンクに組み込まれる給水装置に関するものである。以下、洗浄水タンクをタンクと略記する。
【背景技術】
【0002】
水洗便器のタンクには、タンク内の洗浄水が放出され水位が低下したとき自動的に給水を開始し、タンク内の水位が所定レベルに達したときに自動的に給水を停止する給水装置が設けられている。例えば特許文献1に示されるように、給水弁を内蔵した給水弁本体の側部下方にフロートを設け、タンク内水位が上昇するとフロートが浮上し、給水弁を閉じる構造が広く用いられている。
【0003】
この特許文献1の給水装置は、タンクの底部を貫通して上方に延びる給水管を備えたものであるが、給水管がタンクの上部側壁を貫通して水平に延びる構造の給水装置も一般的である。この場合には、タンクに形成された貫通孔の位置によって給水管及び給水弁本体の位置も決定されることとなる。しかし最近では水洗便器の洗浄水量の減少が進み、タンクのサイズも小型化が進んでいる。このため給水装置をタンク内に組み込もうとした際に、小型化されたタンクの内面にフロートが干渉してしまい、組み込めないことがあった。このような場合には別構造の給水装置と取り換えねばならず、作業時間とコストの無駄が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、タンク内部におけるフロートの取付配置の自由度を向上させ、小型のタンクにも対応可能な給水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、水洗便器の洗浄水タンクに取り付けられる給水弁本体と、タンク内水位が上昇したときに前記給水弁本体に内蔵された給水弁を閉じるフロートとを備えた給水装置であって、前記給水弁本体に対する前記フロートの取付角度を、水平面内で変更可能としたことを特徴とするものである。
【0007】
なお、前記フロートは上下に延びるガイド部材に沿って昇降するものであり、このガイド部材の上部を保持する支持アームの先端に取付リングを形成し、この取付リングを前記給水弁本体の上部に形成された円形受け部に嵌合させた構造とすることができる。
【0008】
また前記フロートは外側に小タンクを備えた二重構造であり、タンク内水位が前記小タンクの上面を超えたときに浮上し、前記給水弁を閉じる構造とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗浄水タンクの給水装置は、給水弁本体に対するフロートの取付角度を水平面内で変更可能としたので、タンクが小型であってそのままでは組み込みできない場合にも、フロートの位置をタンク内に組み込み可能となるように容易に変更することができる。このため従来のように給水装置を交換したり、複数種類の給水装置を製作したりする無駄をなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図7】水位調整機構によりフロートを上昇させた状態を示す断面図である。
【
図8】水位調整機構によりフロートを下降させた状態を示す断面図である。
【
図9】タンクの内面にフロートが干渉した状態を示す上面図である。
【
図10】タンクの内面へのフロートの干渉を回避した状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(全体構造)
図1は実施形態の給水装置の全体図、
図2はその上面図、
図3はその縦断面図である。
図1において、10は給水弁本体であり、30はフロートである。給水弁本体10はタンク側壁11を水平に貫通する給水金具12を備え、この給水金具12をタンク側壁11の貫通孔に締結することによって、給水弁本体10はタンクの内部に取り付けられている。
【0012】
図3に示されるように、給水弁本体10には給水弁13が内蔵されている。給水弁13は給水金具12を通じて給水される洗浄水を、給水弁本体10の下方に設けられた注水口14に導く水路の途中に設けられ、タンク内への給水をオンオフするための弁である。実施形態の給水弁13はダイヤフラム弁とよばれる公知の弁であるが、その構造を
図4を用いて簡単に説明する。
【0013】
図4に示すように、金具給水12側の第1流路18と注水口14側の第2流路19とはダイヤフラム70によって遮断されている。このダイヤフラム70にはブリード穴71が開いており、クリーニングピン72が貫通している。ダイヤフラム70の上方の圧力室73はブリード穴71とクリーニングピン72の隙間を通じて第1流路18と連通している。そのため止水時においては、圧力室73は第1流路18と同じ水圧となる。ダイヤフラム70は圧力室73側の面積が大きく、下側の第1流路18側と接する面積は小さい。このため受圧面積の差によってダイヤフラム70は下側に押し付けられ、給水弁13は閉じた状態となる。
【0014】
タンク内の水位が低下してフロート30が低下すると、レバーアーム16が軸17を中心として
図4の時計方向に回転する。そのため給水弁13の上部のパイロット穴74が開き、圧力室73内の水が流出する。ここでパイロット穴74の流量がブリード穴71とクリーニングピン72の隙間の流量よりも大きくなるように設計されているため、圧力室73内の水圧が低下してダイヤフラム70の上側が受ける圧力が弱くなる。そのためダイヤフラム70は上方に移動し、下側の第1流路18から注水口14側の第2流路19に向かって水が流れ、タンク内に給水される。
【0015】
給水によりタンク内の水位が上昇してフロートが上がると、レバーアーム16が反時計方向に回転してパイロット穴74が閉じられる。すると圧力室73からの水の流出が止まり、圧力室73内の水圧が上昇する。そしてダイヤフラム70の上側の力が下側の力よりもおおきくなったとき、ダイヤフラム70は下側に押し下げられ、止水する。
【0016】
以下に説明する通り、レバーアーム16は上下に延びるガイド部材31に沿って昇降するフロート30によって動かされるようになっている。
【0017】
給水弁本体10の上部には
図6に拡大して示す円形受け部20が形成されている。この実施形態の円形受け部20は、おねじ21を備えた円柱22の基部外周に、歯車状の凹凸23を形成した形状である。フロート30のガイド部材31の上端は
図3に示すように支持部材32によって支持されており、この支持部材32には側方に延びる支持アーム33が一体に形成されている。
図5に示すようにこの支持アーム33の先端には取付リング34が形成されている。この取付リング34の内周面にも歯車状の凹凸35が形成されており、取付リング34を給水弁本体10の上部に形成された円形受け部20に嵌め、歯車状の凹凸35を円形受け部20の歯車状の凹凸23と噛み合わせたうえで、キャップ状ナット36を円形受け部20のおねじ21に締結することにより固定する。
【0018】
このようにしてフロート30の支持部材32は給水弁本体10の上部に固定されるが、支持部材32を水平面内で自由な位置に回転させて円形受け部20に嵌めて締結することができるので、給水弁本体10に対するフロート30の取付位置を任意の角度に変更することができる。この実施形態では円形受け部20の歯車状の凹凸23と取付リング34の歯車状の凹凸35とを噛み合わせることにより確実に回り止めできる構造としたが、これらの凹凸は省略することもできる。
図1から
図3は、給水弁本体10に対してフロート30を直線的に配置した状態を示している。しかし
図10に示すように、給水弁本体10に対してフロート30を直角に配置することも可能となる。
図10については後詳する。
【0019】
(フロートの構造)
次にフロート30の構造について説明する。
図3に示すように本実施形態のフロート30は、外側の小タンク40とその内部のフロート本体41の二重構造となっている。外側の小タンク40は上下に延びるガイド部材31に沿って昇降することができ保持部42を備えている。外側の小タンク40の底面には逆止弁43が設けられている。この逆止弁43は水位が上昇してきた際には浮上して小タンク40内への水の流入を阻止するが、小タンク40からの水の流下を許容するものである。このためタンク内の水位が上昇する際には小タンク40の底面から水が小タンク40の内部に流入することはなく、便器内への放水によりタンク内の水位が低下する際には小タンク40の内部の水も空になる。
【0020】
フロート本体41は底面が開いた箱状のもので、その天井面46は外側の小タンク40の上端44よりも上方に位置している。タンク内の水位が上昇して小タンク40の上端44を越えると、タンク内の水は一気に小タンク40の内部に流入する。しかしフロート本体41の内部には空気があるため、フロート本体41は浮力を生じる。この浮力により昇降アーム45が押上げられ、前記したレバーアーム16を回動させて給水弁13を閉じる。このように、タンク内への給水が停止される水位は外側の小タンク40の上端44の高さにより決定されるので、小タンク40の高さを調節できる水位調整機構が組み込まれている。昇降アーム45及び水位調整機構の詳細を、以下に説明する。
【0021】
(水位調整機構)
図3に示すように、前記したフロート30の支持部材32には、垂直下方に延びる水位調整軸50が支持されている。この水位調整軸50は上端にドライバを差し込むことができる工具受け部51を備え、水位調整時に自由に回転させることができる。水位調整軸50は長尺ボルトと同様の形状であり、長尺の第1のおねじ52が形成されている。以下に述べる部分の構造は複雑であるため、
図3の一部を拡大した
図5を併せて参照いただきたい。
【0022】
外側の小タンク40にはその底面から上方に立ち上がる第1円筒53が形成されている。第1円筒53の高さは小タンク40の上端44の高さと同一である。この第1円筒53の内面には水位調整軸50の第1のおねじ52とかみ合う第1螺旋状部54が形成されている。このため水位調整軸50を回転させることにより、小タンク40を昇降させることができる。
【0023】
また内側のフロート本体41には上下両面が開口した第2円筒55が形成されている。この第2円筒55の内面には第2螺旋状部56が形成されている。この第2螺旋状部56は、中空の水位調整筒57の外表面に形成された第2のおねじ58とかみ合っている。
【0024】
水位調整筒57の頭部には前記した水位調整軸50を貫通させる中心孔59が形成されており、その一部にキイ溝60が形成されている。また水位調整軸50の第1のおねじ52の上方部分には、キイ61が所定長さにわたり形成されている。このため水位調整軸50を回転させると、水位調整筒57も同時に回転する。このため水位調整筒57の第2のおねじ58と、フロート本体41の第2円筒55の内面の第2螺旋状部56とによって、フロート本体41も昇降する。ここで第1のおねじ52と第2のおねじ58は同一ピッチとなっている。このため水位調整軸50を回転させたときの外側の小タンク40と内側のフロート本体41の昇降量は常に同一となる。すなわち、外側の小タンク40と内側のフロート本体41とは常に一体的に昇降することとなる。
図7と
図8に昇降状態を図示した。
【0025】
上記のように、外側の小タンク40とフロート本体41とをガイド部材31に沿って昇降させることによって、小タンク40の上端44の高さを調整することができる。これにより、給水を停止させる水位を変更することが可能となる。水位調整軸50を回転させると水位調整筒57は同一位置で回転するが、その高さは変わらない。本実施形態においては、水位調整可能な範囲は水位調整軸50の長さにより決定される。
【0026】
水位調整筒57の頭部の外周には環状凹部62が形成されている。そして前記した昇降アーム45の下端部63がこの環状凹部62に嵌っている。昇降アーム45は支持アーム33を貫通して上方に延び、その先端に形成された軸64に前記したレバーアーム16の先端が係止されている。このため、タンク内の水位が上昇して小タンク40の上端44を越えると同時にフロート本体41は外側の小タンク40とともに急浮上し、下端部63が水位調整筒57の環状凹部62に嵌っている昇降アーム45を押上げる。このため回動アーム16は
図3の反時計方向に回動して給水弁13閉じ、給水が停止される。
【0027】
(本発明の作用)
以上に説明したように、本発明の給水装置は給水弁本体10に対するフロート30の取付け角度を水平面内で自由に変えることができる。このため、
図9に示すようにタンクのサイズが小さく、フロート30がタンク内壁に干渉するような場合には、
図10に示すようにフロート30の取付け角度を変更し、タンク内に収まるようにすることができる。このように、本発明の給水装置は、タンク内部におけるフロート30の取付配置の自由度を向上させ、小型のタンクにも対応可能である。なお
図10の状態では注水口14の位置も変更されているが、注水口14は給水弁本体10の両側に設けておき、その片側を使用し、反対側を封止する構造としておけばよい。
【符号の説明】
【0028】
10 給水弁本体
11 タンク側壁
12 給水金具
13 給水弁
14 注水口
16 レバーアーム
17 軸
18 第1流路
19 第2流路
20 円形受け部
21 おねじ
22 円柱
23 歯車状の凹凸
30 フロート
31 ガイド部材
32 支持部材
33 支持アーム
34 取付リング
35 凹凸
36 キャップ状ナット
40 小タンク
41 フロート本体
42 保持部
43 逆止弁
44 小タンクの上端
45 昇降アーム
46 フロート本体の天井面
50 水位調整軸
51 工具受け部
52 第1のおねじ
53 第1円筒
54 第1螺旋状部
55 第2円筒
56 第2螺旋状部
57 水位調整筒
58 第2のおねじ
59 中心孔
60 キイ溝
61 キイ
62 環状凹部
63 下端部
64 軸
70 ダイヤフラム
71 ブリード穴
72 クリーニングピン
73 圧力室
74 パイロット弁