(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168412
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】車両走行制御装置及び車両走行制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085085
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西脇 和弘
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA00
5H181BB04
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】 他車両の走行状態を考慮して適正に衝突を回避できる車両走行制御装置を提供する。
【解決手段】 自車両の位置情報及び速度情報、自車両の周辺に存在する周辺車両の位置情報及び速度情報を取得する取得部と、自車両の位置情報及び速度情報、周辺車両の位置情報及び速度情報に基づいて、自車両の移動先を走行する衝突する可能性のある対象車両を判定する対象車両判定部と、対象車両と衝突する衝突想定位置を設定し、仮想速度で走行して、対象車両が前記衝突想定位置に到達するときに衝突想定位置に到達する仮想車両を、自車両が衝突想定位置に到達する前から継続して生成する仮想車両生成部と、自車両と仮想車両との間隔を制御する指令を出す車両制御部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の位置情報及び速度情報、前記自車両の周辺に存在する周辺車両の位置情報及び速度情報を取得する取得部と、
前記自車両の位置情報及び速度情報、前記周辺車両の位置情報及び速度情報に基づいて、前記自車両の移動先を走行する衝突する可能性のある対象車両を判定する対象車両判定部と、
前記対象車両と衝突する衝突想定位置を設定し、仮想速度で走行して、前記対象車両が前記衝突想定位置に到達するときに前記衝突想定位置に到達する仮想車両を、前記自車両が前記衝突想定位置に到達する前から継続して生成する仮想車両生成部と、
前記自車両と前記仮想車両との間隔を制御する指令を出す車両制御部と
を備える車両走行制御装置。
【請求項2】
前記仮想車両生成部は、
前記対象車両から前記衝突想定位置までの距離をXT、前記仮想車両から前記衝突想定位置までの距離をXI、前記対象車両の速度をVT、前記仮想速度をVIをとしたとき、次式(1)
XT/VT=XI/VI (1)
を満たすように、前記仮想車両を生成する請求項1に記載の車両走行制御装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記自車両の移動先の制限速度を取得し、
前記仮想車両生成部は、前記自車両の速度、前記自車両の移動先の制限速度、及び予め設定された速度の少なくともいずれか1つを前記仮想速度として設定する請求項1に記載の車両走行制御装置。
【請求項4】
前記仮想車両生成部は、
前記自車両の移動先が前記対象車両の走行する変更先車線であり、前記自車両が変更元車線から前記変更先車線へ車線を変更する車両である場合に、
車線変更を行う車線変更想定区間内に前記衝突想定位置を設定し、前記自車両が前記衝突想定位置に到達するまで、前記変更先車線上に継続して前記仮想車両を生成する請求項1に記載の車両走行制御装置。
【請求項5】
前記変更元車線は支線で前記変更先車線は本線であって、前記自車両が前記支線から前記本線に合流する車両、前記対象車両が前記本線を走行する車両である場合に、
前記自車両が合流する合流制御区間を前記車線変更想定区間として、前記車線変更想定区間内に前記衝突想定位置を設定し、前記自車両が前記衝突想定位置に到達するまで、前記本線上に継続して前記仮想車両を生成する請求項4に記載の車両走行制御装置。
【請求項6】
前記仮想車両生成部は、
前記対象車両の速度をVT、前記仮想速度をVIをとしたとき、
VT>VIの場合は、前記対象車両の前方に前記仮想車両を生成し、
VT<VIの場合は、前記対象車両の後方に前記仮想車両を生成し、
VT=VIの場合は、前記対象車両の位置に前記仮想車両を生成する
請求項4に記載の車両走行制御装置。
【請求項7】
前記仮想車両生成部は、
前記自車両の移動先が、前記自車両が進入する交差点であり、前記対象車両が前記自車両と異なる車線から前記交差点に進入する車両である場合に、
前記交差点を前記衝突想定位置として、前記自車両が前記衝突想定位置に到達するまで、前記自車両が走行する車線上に継続して前記仮想車両を生成する請求項1に記載の車両走行制御装置。
【請求項8】
前記取得部を複数有し、
第一取得部は、前記自車両に設けられ、前記自車両の位置情報及び速度情報を取得し、
第二取得部は、路側に設置される路側機に設けられ、前記周辺車両の位置情報及び速度情報を取得する請求項1に記載の車両走行制御装置。
【請求項9】
前記車両制御部は、
前記自車両が前記衝突想定位置に到達した後、設定速度となる加速度指令を出力する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両走行制御装置。
【請求項10】
前記車両制御部は、前記設定速度を、前記取得部より取得した前記自車両の移動先の制限速度または予め決定された速度として加速度指令を出力する請求項9に記載の車両走行制御装置。
【請求項11】
自車両の位置情報及び速度情報、前記自車両の周辺に存在する周辺車両の位置情報及び速度情報を取得するステップと、
前記自車両の位置情報及び速度情報、前記周辺車両の位置情報及び速度情報に基づいて、前記自車両の移動先を走行する衝突する可能性のある対象車両を判定するステップと、
前記対象車両と衝突する衝突想定位置を設定し、仮想速度で走行して、前記対象車両が前記衝突想定位置に到達するときに前記衝突想定位置に到達する仮想車両を、前記自車両が前記衝突想定位置に到達する前から継続して生成するステップと、
前記自車両と前記仮想車両との間隔を制御する指令を出すステップと
を備える車両走行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両走行制御装置及び車両走行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、目的地までの車両走行経路において、走行位置、速度等を自動制御する自動運転技術が検討されている。そして車両走行経路で車線を変更したり、支線から本線へ合流したりする場合に、他車両との衝突を回避して走行する制御技術についても検討されている。
例えば、特許文献1には、高速道路の支線から本線に合流する際に、本線を走行する他車両の位置、速度を考慮して決定した合流ターゲット位置に向けて自車両の加減速を制御することにより本線へスムーズに合流させる車両制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両制御システムでは、決定した合流ターゲット位置に向けて自車両の加減速を制御するため、他車両の速度が制限速度を超過している等、他車両の走行状態によっては加減速を制御することが難しい場合があった。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであり、他車両の走行状態を考慮して適正に衝突を回避できる車両走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車両走行制御装置は、自車両の位置情報及び速度情報、自車両の周辺に存在する周辺車両の位置情報及び速度情報を取得する取得部と、自車両の位置情報及び速度情報、周辺車両の位置情報及び速度情報に基づいて、自車両の移動先を走行する衝突する可能性のある対象車両を判定する対象車両判定部と、対象車両と衝突する衝突想定位置を設定し、仮想速度で走行して、対象車両が前記衝突想定位置に到達するときに衝突想定位置に到達する仮想車両を、自車両が衝突想定位置に到達する前から継続して生成する仮想車両生成部と、自車両と仮想車両との間隔を制御する指令を出す車両制御部とを備える。
【0007】
また、本開示に係る車両走行制御方法は、自車両の位置情報及び速度情報、自車両の周辺に存在する周辺車両の位置情報及び速度情報を取得するステップと、自車両の位置情報及び速度情報、周辺車両の位置情報及び速度情報に基づいて、自車両の移動先を走行する衝突する可能性のある対象車両を判定するステップと、対象車両と衝突する衝突想定位置を設定し、仮想速度で走行して、対象車両が衝突想定位置に到達するときに衝突想定位置に到達する仮想車両を、自車両が衝突想定位置に到達する前から継続して生成するステップと、自車両と仮想車両との間隔を制御する指令を出すステップとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、衝突する可能性がある対象車両が衝突想定位置に到達するときに、仮想速度で走行して衝突想定位置に到達する仮想車両を、対象車両が衝突想定位置に到達する前から継続して生成し、自車両と仮想車両との間隔を制御することによって、対象車両の走行状態を考慮した適正な衝突回避制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る自車両に搭載される車両走行制御装置及び周辺機器を示す概略ブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る車両走行制御装置が使用される道路の合流部を示す模式図である。
【
図3】実施の形態1に係る合流制御開始時及び合流制御時における仮想車両生成部の処理を説明するための模式図である。
【
図4】実施の形態1に係る合流制御開始時及び合流制御時における仮想車両生成部の処理を説明するための模式図である。
【
図5】実施の形態1に係る合流制御開始時及び合流制御時における仮想車両生成部の処理を説明するための模式図である。
【
図6】実施の形態1に係る車両走行制御装置が実行する処理フローを示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態1に係る車両走行制御装置の各機能を実現する処理回路の一例を示す概略構成図である。
【
図8】実施の形態1に係る車線変更制御開始時及び車線変更制御時における仮想車両生成部の処理を説明するための模式図である。
【
図9】実施の形態2に係る取得部が自車両と路側機に分けて搭載される車両走行制御装置及び周辺機器示す概略ブロック図である。
【
図10】実施の形態2に係る車両走行制御装置が使用される道路の合流部を示す模式図である。
【
図11】実施の形態2に係る路側走行制御部の各機能を実現する処理回路の一例を示す概略構成図である。
【
図12】実施の形態3に係る車両走行制御装置が使用される道路の交差点の状態を示す模式図である。
【
図13】実施の形態3に係る制御開始及び制御時における仮想車両生成部の処理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1に係る車両制御装置100について図面を用いて説明する。
図1は、自車両VSに搭載される車両走行制御装置100及び周辺機器を示す概略ブロック図である。自車両VSには、周辺機器として、位置受信機11、速度センサ12、周辺センサ13、地図格納部14、駆動制御装置15が搭載され、これらの情報を処理する車両走行制御装置100が搭載されている。
【0011】
ここで位置受信機11は、例えば衛星からのGPS(Global Positioning System)信号により自車両VSの位置情報を受信する。速度センサ12は、自車両VSの速度情報を検出する。周辺センサ13は、自車両VSの周辺に存在する周辺車両を検出するとともに、当該周辺車両の位置情報及び速度情報を検出する。地図格納部14には、道路情報が格納されており、例えば後述の道路の本線L1及び支線L2等の道路情報を含んでいる。
【0012】
車両走行制御装置100は、取得部101、対象車両判定部102、仮想車両生成部103、及び車両制御部104を備える。
取得部101は、自車両VSの位置情報及び速度情報、自車両VSの周辺に存在する周辺車両の位置情報及び速度情報を取得する。対象車両判定部102は、取得部101で取得した自車両VSの位置情報及び速度情報、周辺車両の位置情報及び速度情報に基づいて、自車両VSの移動先を走行する衝突する可能性のある対象車両VTを判定する。そして判定した対象車両VTの位置情報、速度情報を取得する。仮想車両生成部103は、対象車両VTが自車両VSに衝突する可能性がある衝突想定位置Psを設定し、仮想速度VIで走行して、対象車両VSが衝突想定位置Psに到達するときに衝突想定位置Psに到達する仮想車両VIを生成する。仮想車両VIは、自車両VSが衝突想定位置Psに到達する前から継続して対象車両VTが走行する本線L1上に生成される。
【0013】
車両制御部104は、自車両VSと仮想車両VIとの間隔を制御する指令を出す。そして自車両VSと生成した仮想車両VIとの間隔を確保することにより、自車両VSが対象車両VTを回避できる適正な速度で合流するための指令を駆動制御装置15に出力する。駆動制御装置15は、車両走行制御装置100の車両制御部104からの指令に基づいて、自車両VS内の図示しない駆動装置及び制動装置を制御することにより、自車両VSの加減速を制御する。
【0014】
図1~
図8を用いて、車両走行制御装置100の機能について詳細に説明する。
図2は、車両走行制御装置100が使用される道路の合流部を上面からみた模式図である。道路の合流部では、車線である本線L1と支線L2とが接続されており、自車両VSは走行している支線L2から合流する本線L1へ移動しようとしている。対象車両VTは本線L1を走行する車両である。自車両VSは、合流部に入ると加減速しながら移動することで対象車両VTを回避して本線L1へ合流する。
図2では、本線L1と支線L2とが平行に設けられた例を示すが、必ずしも平行である必要はない。
【0015】
ここで自車両VSの位置及び合流部の道路情報に基づき、支線L2において合流制御を開始する始点をL2s、合流制御を完了する目標終点をL2eとし、始点L2sから目標終点L2eまでの区間を合流制御区間とする。合流部内に設定される合流制御区間の長さは始点L2sと目標終点L2eを結ぶXLである。始点L2s及び目標終点L2eは、合流部の合流車線LM内に設ける。加速して対象車両VTの前に合流する場合は、合流車線LMの終端部の手前に目標終点L2eを設定する。
【0016】
取得部101は、地図格納部14から道路情報を取得し、位置受信機11から自車両VSの位置情報を取得する。また速度センサ12から自車両VSの速度情報を取得し、周辺センサ13から対象車両VTを含む周辺車両の位置情報及び速度情報を取得する。対象車両判定部102は、取得部101から送信された情報に基づいて、回避すべき対象車両VTを判定するとともに、取得部101から判定した対象車両VTの位置情報、速度情報を取得する。
【0017】
より具体的に述べると、対象車両判定部102は、周辺センサ13に周辺車両の位置情報を取得し、取得した周辺車両の中から自車両VSの移動先である本線L1上に存在する衝突する可能性のある対象車両VTを判定する。例えば
図2の例では、本線L1上に存在する車両の中から対象車両VTが判定される。
図2には本線L1を走行する他の車両を図示していないが、本線L1に複数台の車両が走行している場合は、複数の車両のうち、対象車両VTが対象として判定された車両となる。そして対象車両判定部102は、取得部101から取得した対象車両VTの位置情報と、対象車両VTの速度情報を仮想車両生成部103に出力する。本線L1の合流部に自車両VSと衝突する可能性がある車両が存在しない場合は、対象車両VTは判定されない。
【0018】
仮想車両生成部103は、対象車両VTの位置情報、対象車両VTの速度情報、自車両VSの位置情報、及び速度センサ12から取得する自車両VSの速度情報に基づいて、本線L1を走行する仮想車両VIを生成する。そして、仮想車両VIの位置情報及び仮想車両VIの速度情報を車両制御部104へ出力する。
【0019】
仮想車両VIを生成する例について説明する。
図3は、(a)合流制御開始時及び(b)合流制御時における仮想車両生成部103の処理を説明するための模式図である。自車両VSが合流制御区間の始点L2sを通過する時点で合流制御を開始し(
図3(a))、合流制御区間の目標終点L2eに衝突想定位置Psを設定して目標距離d
*を確保する合流制御を行う状態(
図3(b))を例示している。
図3において対象車両VTは、本線L1を走行している車両であり、対象車両判定部102により自車両VSと衝突する可能性があると判定された車両である。
ここで対象車両VTと自車両VSとの相対距離をdとし、合流制御開始時の初期値をd
0とする。相対距離dは自車両VSの前方を正とし、
図3(a)に示すように対象車両VTが後方を走行する場合は、d<0である。自車両VSの速度はV
S、対象車両VTの速度はV
Tとする。
【0020】
対象車両VTは速度VTで距離(XL-d0)を走行する。そのため、合流制御区間の目標終点L2eまでの走行に要する時間Tは、式(1)となる。
【0021】
【0022】
仮想車両生成部103において、自車両VSとの相対距離dIが合流制御開始時にdI0である仮想車両VIを生成する。仮想車両VIが仮想速度VIで合流制御区間の目標終点L2eまでの距離(XL-dIO)を走行するのに要する時間Tは、式(2)となる。
【0023】
【0024】
対象車両VTと仮想車両VIが同時刻Tsに目標終点L2eに到着すると仮定すると、仮想車両VIの相対距離dIの初期値dI0は、式(3)で表される。
【0025】
【0026】
すなわち、
図3(b)に示す合流制御区間の目標終点L2eは、対象車両VTと仮想車両VIとの位置が一致する衝突想定位置Psである。このように対象車両VTが自車両VSに衝突する可能性がある衝突想定位置Psを自車両VSの位置情報、対象車両VTの位置情報及び速度情報から設定できる。
【0027】
仮想車両VIの仮想速度VIは、例えば自車両VSの速度VSとする。地図格納部14の道路情報から取得する本線L1の制限速度VLIM、制限速度VLIMを参照した目標速度、ドライバ、車載機器等により予め設定された速度等としてもよい。
【0028】
(ケース1)
ここで、対象車両VTの速度V
Tが仮想車両VIの仮想速度V
Iを超過している(V
T>V
I)場合、対象車両VTの前方を走行する仮想車両VIを生成すると(
図3(a)においてd
I0>d
0)、仮想車両VIは対象車両VTの前方を走行した後、所定の時刻Tsに、
図3(b)に示す合流制御区間の目標終点L2eで対象車両VTに追いつかれ、仮想車両VIと対象車両VTの位置が一致することとなる。したがって合流制御区間の目標終点L2eが衝突想定位置Psとなる。
【0029】
この場合、
図3(b)に示すように、対象車両VTが合流制御区間の目標終点L2eを通過する時刻Tsより前に、支線L2上の自車両VSと本線L1上の仮想車両VIとの間隔が目標距離d
*確保できるように、支線L2上で仮想車両VIの後方に移動するように減速する。そして、目標距離d
*を確保できた時点で自車両VSは本線L1上に移動して合流する。
【0030】
(ケース2)
一方、対象車両VTの速度V
Tが仮想車両VIの仮想速度V
Iを超過しない(V
T<V
I)場合、対象車両VTの後方を走行する仮想車両VIを生成すると(
図4(a)においてd
I0<d
0)、仮想車両VIは対象車両VTの後方を走行し、所定の時刻Tsに合流制御区間の目標終点L2eで対象車両VTに追いつき、仮想車両VIと対象車両VTの位置が一致する。したがって合流制御区間の目標終点L2eが衝突想定位置Psとなる。
【0031】
この場合、対象車両VTが合流制御区間の目標終点L2eを通過する時刻Tsより前に、支線L2上の自車両VSと本線L1上の仮想車両VIとの間隔が目標距離d
*確保できるように、支線L2上で仮想車両VIの例えば前方に移動するように加速する。そして、目標距離d
*を確保できた時点で自車両VSは本線L1上に移動して合流する(
図4(b))。
図4(b)に示す合流制御時において、支線L2上で仮想車両VIの後方に移動するように減速する制御を行ってもよい。
【0032】
(ケース3)
また、対象車両VTの速度V
Tと仮想車両VIの仮想速度V
Iが等しい(V
T=V
I)場合、仮想車両VIを対象車両VTの位置に生成する(
図5(a)においてd
I0=d
0)。この場合制御開始時から、仮想車両VIと対象車両VTの位置が一致し、一致した位置が衝突想定位置Psとなる。
【0033】
この場合、制御開始時から、自車両VSと仮想車両VIとの間隔が目標距離d
*確保できるように、加速または減速して、目標距離d
*を確保できた時点で自車両VSは本線L1上に移動して合流する(
図5(b))。
【0034】
そして、目標距離d*を確保するための加速度指令arefは、次の式(4)により演算される。ここで、d*は自車両VSから仮想車両VIまでの目標距離であり、d*>0の場合は仮想車両VIの後方に移動するように減速し、d*<0の場合は仮想車両VIの前方に移動するように加速する。式(4)において、Kdp,Kddはそれぞれ、車間距離制御のための比例ゲイン,微分ゲインである。
【0035】
【0036】
車両制御部104は、仮想車両VIの位置情報及び速度情報、自車両VSの速度情報に基づいて、加速度指令arefを演算する。そして、演算した加速度指令arefを駆動制御装置15へ出力する。駆動制御装置15は、加速度指令arefに従って自車両VSの加減速を制御する。
【0037】
このように、対象車両VTの速度が速い場合(ケース1)でも、対象車両VTの速度が遅い場合(ケース2)でも対象車両VTの走行状態を考慮した適正な衝突回避制御を行うことができる。
すなわち、対象車両VSから衝突想定位置Psまでの距離XT、仮想車両VIから衝突想定位置までの距離XI、対象車両VTの速度VT、仮想速度VIをとしたとき、次の式(5)、
【0038】
【数5】
を満たすように、自車両VSが衝突想定位置Psに到達するまで、仮想車両VTを生成すれば、対象車両VTの走行状態を考慮して仮想車両VIを生成することができ、適正な衝突回避制御を行うことができる。
いずれの場合も、合流部の終端部に達するまでに、合流が完了できるように合流制御区間を設定することは言うまでもない。
【0039】
また、対象車両VTとの衝突を回避した後は、自車両VSの速度VSを設定速度VSETとし、例えば、設定速度VSETを地図格納部14の道路情報から取得する本線L1の制限速度VLIMを設定速度VSETとすれば、本線L1の制限速度を守ることができる。制限速度VLIMを参照して設定した目標速度を設定速度VSETとしてもよく、ドライバが設定する速度としてもよい。
【0040】
図6は、車両走行制御装置100が実行する処理フローを示すフローチャートである。処理フローにおいて、制御開始となると、取得部101は、自車両VSの位置情報及び速度情報、周辺車両の位置情報及び速度情報を取得する(ステップS101)。
【0041】
次いで、対象車両判定部102は、取得部101で取得した情報に基づいて、例えば自車両VSが支線L2から本線L1に合流する際に、移動先を走行する周辺車両に自車両VSに衝突する可能性のある車両が存在するか否かを確認し、衝突する可能性のある車両が存在すれば、その車両を対象車両VTと判定し、取得部101から対象車両VTの位置情報及び速度情報を取得する(ステップS102)。
【0042】
次いで、仮想車両生成部103は、対象車両VTと衝突する衝突想定位置Psを設定し、仮想速度VIで走行して、対象車両VTが衝突想定位置Psに到達するときに衝突想定位置Psに到達する仮想車両VIを、自車両VSが衝突想定位置Psに到達する前から継続して生成する(ステップS103)。
【0043】
次いで、車両制御部104は、自車両VSと仮想車両VIとの間隔を制御する指令を出す(ステップS104)。そして、間隔が目標距離d*となれば、合流等の移動が実行可能であることを通知する。
【0044】
ここで、車両走行制御装置100の各機能は、処理回路によって実現される。
図7は、車両走行制御装置100の各機能を実現する処理回路の一例を示す構成図である。車両走行制御装置100は、演算処理装置80と、複数の記憶装置81と、通信装置82と、車載ネットワーク83とを有している。
【0045】
演算処理装置80には、例えば、CPU(Central Processing Unit)が用いられる。複数の記憶装置81は、演算処理装置80との間においてデータを送受信し、データを記憶する。通信装置82は、車載ネットワーク83とデータ通信を行う。通信装置82は、車載ネットワーク83を経由して、外部装置としての地図格納部14、位置受信機11、及び周辺センサ13と通信を行う。
【0046】
また、演算処理装置80には、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いた論理回路、及び各種の信号処理回路が備えられていてもよい。また、演算処理装置80として、同じ種類のもの又は異なる種類のものが複数備えられることにより、各処理が複数の演算処理装置によって分担して実行されてもよい。
【0047】
複数の記憶装置81としては、例えば、演算処理装置80からのデータの読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(Random Access Memory)、演算処理装置80からデータを読み出し可能に構成されたROM(Read Only Memory)が備えられる。
【0048】
車両走行制御装置100の各機能は、演算処理装置80が、複数の記憶装置81に記憶されたソフトウェア又はプログラムを実行し、ハードウェアと協働することにより実現される。例えば通信装置82等の他のハードウェアと協働することもある。車両走行制御装置100に設定される設定データは、ソフトウェア又はプログラムの一部として、複数の記憶装置81に記憶されていてもよく、ユーザにより入力されるようにしてもよい。
【0049】
このように、本実施の形態の車両走行制御装置100は、支線L2を走行する自車両VSが本線L1に合流する際に、本線L1を走行する対象車両VTを判定し、衝突する可能性がある対象車両VTが衝突想定位置Psに到達するときに、仮想速度VIで走行して衝突想定位置Psに到達する仮想車両VIを、対象車両VTが衝突想定位置Psに到達する前から継続して生成し、自車両VSと仮想車両VIとの間隔を制御する指令を出すことで、対象車両VTの走行状態を考慮して適正に衝突を回避して自車両VSの走行を制御できる。
【0050】
また対象車両VTが制限速度を超過したり、遅すぎたりする場合であっても、仮想車両VIに対して、自車両VSの加減速を制御するため、必要以上に加減速を発生させず、適正な走行が可能となる。
【0051】
さらに、自車両VSと仮想車両VIとの間隔が目標距離d*確保でき、合流等の移動を実行した後、設定された速度となるように加速度指令を出力すれば、所望の速度で適正に走行を継続できる。対象車両VTが道路の制限速度VLIMを超過している場合であっても自車両は制限速度VLIMを守ることができ、所望の速度で走行したい場合には所望の速度で走行できる。
【0052】
なお、本実施の形態において、地図格納部14から道路情報取得する例について説明したが、例えば、周辺センサ13により合流部等の道路情報を把握して、地図格納部14を用いず実行してもよい。
また、本線L1に支線L2から合流する例について説明したが、
図8に示すように複数車線を有する道路において、他の車線に移動する場合に適用してもよい。つまり、支線L2を変更元車線L4、本線L1を移動先の変更先車線L3とすれば、同様に制御が可能である。
つまり、自車両VSの移動先が対象車両VTの走行する変更先車線L3であり、自車両VSが変更元車線L4から変更先車線L3へ車線を変更する車両である場合に、仮想車両生成部103は、車線変更を行う車線変更想定区間内に衝突想定位置Psを設定し、自車両VSが衝突想定位置Psに到達するまで、変更先車線L3上に継続して仮想車両VIを生成する。
上述した合流する場合は、変更元車線L4は支線で変更先車線L3は本線であり、自車両VSが支線から本線に合流する車両、対象車両VTが本線を走行する車両である。この場合に、自車両VSが合流する合流制御区間を車線変更想定区間として、車線変更想定区間内に衝突想定位置Psを設定し、自車両VSが衝突想定位置Psに到達するまで、本線上に継続して仮想車両VIを生成する。
また、取得部101で、地図格納部14、位置受信機11、周辺センサ13の情報を取得し、対象車両判定部102において、対象車両VTを判定する例について説明したが、対象車両判定部102で取得を含めて行うようにしてもよい。
自車両VSの速度V
S初期値と合流時間T
vを設定してこれらの積から合流制御区間の長さXLを決定してもよい。道路情報を用いず合流制御区間を設定できる。
このようにしても、同様の効果を得ることができる。
【0053】
実施の形態2.
実施の形態2に係る車両制御装置200について図面を用いて説明する。
図9は、取得部101が第一取得部201a、第二取得部201bとして自車両VSと路側機RSUに分けて搭載される車両走行制御装置200及び周辺機器示す概略ブロック図である。実施の形態2に係る車両走行制御装置200は、自車両VSに搭載される車両側走行制御部100Aと路側機RSUに搭載される路側走行制御部100Bとで構成される点、周辺車両の情報、道路情報を路側機RSUで取得し、取得した情報を自車両VSへ送信する点が実施の形態1と異なり、その他は実施の形態1と同様である。
【0054】
図9に示すように、自車両VSには、位置受信機11、速度センサ12、駆動制御装置15が備えられ、実施の形態1と同様に機能する。自車両VSには、車両側走行制御部100Aが備えられる。
【0055】
また、
図10に示す支線L2から本線L1に合流する合流部には、路側機RSUが設置され、路側機RSUには、道路上の物体を検出する路側センサ21、車線L1、L2の情報を含む道路情報を格納する地図格納部14、路側走行制御部100Bが備えられる。
【0056】
自車両VS、路側機RSUには、それぞれ通信部16a、16bが備えられ、互いに通信を行う。
【0057】
車両VSに搭載される車両側走行制御部100Aには、位置受信機11から自車両VSの位置情報を取得する第一取得部201aが備えられる。通信部16aは路側機RSUから対象車両VTの位置情報及び速度情報、本線L1、支線L2の情報を含む道路情報を受信する。仮想車両生成部203は第一取得部201a、通信部16aから取得した情報に基づいて、仮想速度VIで時刻Tsに本線L1で対象車両VTとの位置が一致する仮想車両VIを生成する。車両制御部204は仮想車両VI、自車両VSの情報に基づき、相対距離を制御する加速度指令arefを演算する。第一取得部201a、仮想車両生成部203、車両制御部204の具体的な機能は、実施の形態1に係る車両走行制御装置100の各機能と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0058】
路側機RSUに搭載される路側走行制御部100Bには、路側センサ21から合流部の周辺車両の位置情報及び速度情報、地図格納部14から車線L1、L2の情報を含む道路情報を取得する第二取得部201bが備えられ、さらに第二取得部201bの情報に基づき、周辺車両から対象車両VTを判定し、対象車両VTの位置情報、速度情報を通信部16bに送信する対象車両判定部202が備えられる。
そして、通信部16bは、対象車両VTの位置情報及び速度情報を自車両VSに搭載された通信部16aへ送信する。
【0059】
通信部16aで受けた情報は、車両VSに搭載される車両側走行制御部100Aで上述のとおり処理され、実施の形態1と同様にして車両制御部204から取得した指令に基づき、駆動制御装置15が自車両VSの駆動装置及び制動装置を制御することにより、自車両VSを加減速制御する。
【0060】
図11は、
図9の路側走行制御部100Bの機能を実現する処理回路の一例を示す構成図である。路側走行制御部100Bは、演算処理装置90と、複数の記憶装置91と、通信装置92と、内部ネットワーク93とを有している。
【0061】
演算処理装置90には、例えば、CPUが用いられる。複数の記憶装置91は、演算処理装置90との間においてデータを送受信し、データを記憶する。通信装置92は、内部ネットワーク93とデータ通信を行う。通信装置92は、内部ネットワーク93を経由して、外部装置としての路側センサ21及び地図格納部14と通信を行う。
【0062】
また、演算処理装置90には、例えば、ASIC、IC、DSP、FPGA、各種の論理回路、及び各種の信号処理回路が備えられていてもよい。また、演算処理装置90として、同じ種類のもの又は異なる種類のものが複数備えられることにより、各処理が複数の演算処理装置によって分担して実行されてもよい。複数の記憶装置91としては、例えば、演算処理装置90からのデータの読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM及び演算処理装置90からデータを読み出し可能に構成されたROMが備えられている。
【0063】
路側走行制御部100Bの機能は、演算処理装置90が、複数の記憶装置91に記憶されたソフトウェア又はプログラムを実行し、複数の記憶装置91、通信装置92等の路側機RSUの他のハードウェアと協働することにより実現される。なお、路側走行制御部100Bの各機能により用いられる設定データは、ソフトウェア又はプログラムの一部として、複数の記憶装置91に記憶されている。
【0064】
このように、本実施の形態に係る車両走行制御装置200は、第二取得部201b及び対象車両判定部202を路側機RSU内の路側走行制御部100Bに設け、第一取得部201a、仮想車両生成部203、及び車両制御部204を自車両VS内の車両側走行制御部100Aに設けて、支線L2を走行する自車両VSが本線L1に合流する際に、本線L1を走行する対象車両VTを判定し、対象車両VTと衝突する衝突想定位置Psを設定し、対象車両VTが衝突想定位置Psに到達するときに衝突想定位置Psに到達する仮想車両VIを、自車両VSが衝突想定位置Psに到達する前に生成し、自車両VSと仮想車両VIとの間隔を制御する指令を出すことで、対象車両の走行状態を考慮して適正に衝突を回避して自車両の走行を制御できる。
【0065】
また対象車両VTが制限速度を超過して走行する場合であっても、対象車両VTとの衝突を回避でき、適正な加減速制御で移動が可能となる。また仮想車両VIに対して、自車両VSの加減速を制御するため、必要以上に加減速を発生させず、適正な走行が可能となる。
【0066】
また自車両VSと仮想車両VIとの間隔が目標距離d*確保でき、合流等の移動を実行した後、設定された速度となるように加速度指令を出力すれば、所望の速度で適正に走行を継続できる。対象車両VTが道路の制限速度VLIMを超過している場合であっても自車両は制限速度VLIMを守ることができ、所望の速度で走行したい場合には所望の速度で走行できる。
【0067】
そしてさらに、対象車両VTが自車両VSの周辺センサ13の死角に存在している場合であっても、本線L1を走行する対象車両VTの位置情報及び速度情報を取得することができる。
【0068】
なお、本実施の形態において、道路情報を路側機RSUに搭載された地図格納部14から取得する例について説明したが、路側機RSUに搭載された路側センサ21で取得してもよい。自車両VS内に地図格納部14を設けていない例について説明したが、自車両VS内に地図格納部14を備えて道路情報を取得してもよい。道路情報を用いず合流制御区間を設定してもよい。
また、車両側走行制御部100A、路側走行制御部100Bのそれぞれに第一取得部201a、第二取得部201bを設けた例を説明したが、第一取得部201aを仮想車両生成部203内に備え、第二取得部201bを対象車両判定部202内に備えるようにしてもよい。
また、通信部16aを車両側走行制御部100A内に、通信部16bを路側走行制御部内に設けてもよい。
また、第二取得部201bを路側走行制御部100Bに設け、対象車両判定部202は車両側走行制御部100A内に設けて、第二取得部201bで取得した情報を通信部16b、16aを介して取り込み自車両VS内に搭載された車両側走行制御部100Aで処理するようにしてもよい。
このようにしても、同様の効果を得ることができる。
【0069】
実施の形態3.
実施の形態3について図面を用いて説明する。車両走行制御装置200は実施の形態2と同様に構成される。実施の形態3では、自車両VSは交差点に進入する車両であり、対象車両VTは自車両VSと異なる車線から交差点に進入する車両である。自車両VSは走行車線を変えないため、交差点において衝突する可能性のある車両があるか否か確認される。したがって移動先は交差点上の同じ車線となるが、制御処理は実施の形態1、2と同様である。
【0070】
図12は車両走行制御装置200が使用される道路の交差点の状態を示す模式図である。車線L5と自車両VSが走行する車線L6とは交差しており、自車両VSと車線L5を走行する対象車両VTとがともに交差点に差しかかろうとする状態である。交差点には路側機RSUが設置されている。車線L5と車線L6が直交する交差点の例を示すが、必ずしも直角に交差する必要はない。
【0071】
ここで、自車両VSと対象車両VTが仮に同時刻に交差点に進入した場合、自車両VSと対象車両VTは衝突するおそれがある。対象車両VTが車線L5を紙面の上から下へ、自車両VSが車線L6を紙面の左から右へ移動する例を示すが移動方向は問わない。
【0072】
路側機RSUは、路側センサ21、地図格納部14、通信部16b、及び路側走行制御部100Bを有している。路側センサ21は、交差点上の車両を検出する。地図格納部14は、車線L5、L6の情報を含む道路情報を格納している。通信部16bは、路側走行制御部100Bからの信号を自車両VSの通信部16aに送信する。
【0073】
路側走行制御部100Bは、第二取得部201b及び対象車両判定部202を有している。第二取得部201bは、路側センサ21から周辺車両の位置情報及び周辺車両の速度情報を、地図格納部14からの道路情報を取得する。そして対象車両判定部202は、周辺車両の位置情報及び周辺車両の速度情報と、道路情報とを照合し、周辺車両の中から車線L5上に存在する車両から対象車両VTを判定する。対象車両VTの位置情報及び速度情報は通信部16bへ出力され、通信部16bから自車両VSの通信部16aへ送信される。
【0074】
車両側走行制御部100Aは、第一取得部201a、仮想車両生成部203、及び車両制御部204を有している。第一取得部201aは、位置受信機11から自車両VSの位置情報を取得する。
仮想車両生成部203は、通信部16aから対象車両VTの位置情報及び速度情報を取得し、自車両VSが走行する現車線であり移動車線となる車線L6を走行する仮想車両VIを生成する。そして、仮想車両VIの位置情報及び仮想車両VIの速度情報を車両制御部104へ出力する。
【0075】
図13は、制御開始時及び制御時における仮想車両生成部203の処理を説明するための模式図である。
図13(a)は、制御開始時において、自車両VSが交差点から距離x
so離れた車線L6上の位置を走行し、対象車両VTが交差点から距離x
T0の離れた車線L5上の位置を走行しており、互いに交差点に進入しようとしている状態を示す。自車両VSの初期速度はV
S0、対象車両VTの速度はV
Tである。
図13(b)は、交差点を通過する際に、自車両VSを制御する状態を示す。
【0076】
ここで、対象車両VTは、制御開始時から交差点に到達するまで、速度VTで距離xT0を走行する。そのため、(a)制御開始時から(b)交差点到達までの走行に要する時間Tは、式(6)となる。
【0077】
【0078】
自車両VSが初期速度VS0を維持して時間T走行した場合、交差点からの距離は式(7)となる。この距離が車両長さより小さい場合、対象車両VTと衝突する。
【0079】
【0080】
そこで、仮想車両生成部203は車線L6を仮想速度V
Iで走行し、時間T経過後に交差点を通過する仮想車両VIを生成する。仮想車両VIは、制御開始時には
図13(a)に示すように交差点からの距離X
I0手前の位置を走行する。距離x
I0、及び自車両VSと仮想車両VIとの相対距離d
I0は、次の式(8)、式(9)となる。
【0081】
【0082】
【0083】
車両制御部204は、実施の形態1及び実施の形態2と同様に、自車両VSと仮想車両VIとの相対距離を目標距離d*となるように加減速を制御する。これにより、交差点における対象車両VTとの衝突を回避する。
【0084】
ここで、仮想車両VIの仮想速度VIは、例えば道路情報から取得する車線L6の制限速度VLIMとする。自車両VSが制限速度VLIMで走行している場合、制御開始時に交差点からの距離XI0手前の位置であった仮想車両VIは、交差点到達時に距離xso進んだ位置となり、対象車両VTと同じ位置になる。そして車両制御部204は自車両VSと仮想車両VIとの間に目標距離d*を確保するために減速を指令し、交差点通過後に仮想車両VIの仮想速度VI(=制限速度VLIM)まで加速するように指令する。
【0085】
すなわち、自車両VSは交差点に進入する車両であり、対象車両VTは自車両VSと異なる車線から交差点に進入する車両である。この場合に、仮想車両生成部103は、交差点を衝突想定位置Psとして、自車両VSが衝突想定位置Psに到達するまで、自車両VSが走行する車線上に継続して仮想車両VIを生成する。そして、車両制御部104は、自車両VSと仮想車両VIとの間隔を目標距離d*となるように制御する指令を出す。
【0086】
仮想車両VIの仮想速度VIは、例えば対象車両VTの位置情報、速度情報及び自車両VSの位置情報、速度情報から決定してもよい。(a)制御開始時の状態から、自車両VSが一定の加速度a(<0)で減速し、時間T経過後仮想車両VIの仮想速度VIに到達し、仮想車両VIと目標距離d*を確保して走行する状態を考える。このとき、時間、速度、距離の関係は式(10)、式(11)となる。
【0087】
【0088】
【0089】
式を整理すると、仮想車両VIの仮想速度VIは次の式(12)のようになる。加速度aを任意に設定することで、対象車両VTの位置情報、速度情報及び自車両VSの位置情報、速度情報に基づいて仮想車両VIの仮想速度VIを変更することができる。
【0090】
【0091】
上述の説明において、自車両VSから交差点までの距離、対象車両VTから交差点までの距離、自車両VSの速度をそれぞれ、制御開始時の初期値としたが、自車両VSが衝突想定位置Psに到達するまで、自車両VSから交差点までの距離xS、対象車両VTから交差点までの距離xT、自車両VSの速度Vsとすれば、継続して仮想車両VIを生成できる。
すなわち、対象車両VSから衝突想定位置Psまでの距離XT、仮想車両VIから衝突想定位置までの距離XI、対象車両VTの速度VT、仮想速度VIをとしたとき、次の式(13)、
【0092】
【数13】
を満たすように、自車両VSが衝突想定位置Psに到達するまで、仮想車両VTを生成すれば、対象車両VTの走行状態を考慮して仮想車両VIを生成することができ、適正な衝突回避制御を行うことができる。
【0093】
このように、本実施の形態に係る車両走行制御装置200は、車両側走行制御部100Aの仮想車両生成部203により車線L6を走行する自車両VS車線L5と交わる交差点に進入する際に、車線L5を走行する対象車両VTを判定し、対象車両VTと衝突する衝突想定位置Psを設定し、対象車両VTが衝突想定位置Psに到達するときに衝突想定位置Psに到達する仮想車両VIを、自車両VSが衝突想定位置Psに到達する前に生成し、自車両VSと仮想車両VIとの間隔を制御する指令を出すことで、対象車両の走行状態を考慮して適正に衝突を回避して自車両の走行を制御できる。
【0094】
また対象車両VTが制限速度を超過して走行する場合であっても、対象車両VTとの衝突を回避でき、適正な加減速制御で移動が可能となる。また仮想車両VIに対して、自車両VSの加減速を制御するため、必要以上に加減速を発生させず、適正な走行が可能となる。
【0095】
また自車両VSと仮想車両VIとの間隔が目標距離d*確保でき、合流等の移動を実行した後、設定された速度となるように加速度指令を出力すれば、所望の速度で適正に走行を継続できる。対象車両VTが道路の制限速度VLIMを超過している場合であっても自車両は制限速度VLIMを守ることができ、所望の速度で走行したい場合には所望の速度で走行できる。
【0096】
なお、上記実施の形態1~3において、位置情報における基準点に触れなかったが、距離を決定するためには基準点を決めることはいうまでもない。例えば自車両VSの位置の基準点は、車長を半分にした位置等適宜決めればよい。衝突想定位置Psを仮想車両VIと対象車両VTとの位置が一致する点としたが、互いの基準点、中心等が一致する位置のみではなく、対象車両VTとの衝突を考慮した位置を含む。目標距離d*を確保するための位置は、車体が当たらず衝突を回避する距離であることはいうまでもない。
【0097】
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0098】
11 位置受信機、12 速度センサ、13 周辺センサ、14 地図格納部、15 駆動制御装置、21 路側センサ、16a、16b 通信部、100、200 車両走行制御装置、100A 車両側走行制御部、100B 路側走行制御部、101、201a、201b 取得部、102、202 対象車両判定部、103、203 仮想車両生成部、104 車両制御部、L1~L6 車線、VS 自車両、VT 対象車両、VI 仮想車両、RSU 路側機、Ps 衝突想定位置