(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168428
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】環境音快音化システム
(51)【国際特許分類】
G10L 21/007 20130101AFI20241128BHJP
G10L 25/18 20130101ALI20241128BHJP
G10L 25/51 20130101ALI20241128BHJP
G10H 1/00 20060101ALI20241128BHJP
G10G 3/04 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G10L21/007
G10L25/18
G10L25/51 300
G10H1/00 Z
G10G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085115
(22)【出願日】2023-05-24
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【弁理士】
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】原澤 悠
(72)【発明者】
【氏名】小谷 朋央貴
(72)【発明者】
【氏名】阿部 将幸
(72)【発明者】
【氏名】江川 隼太
【テーマコード(参考)】
5D182
5D478
【Fターム(参考)】
5D182AD05
5D478GG01
(57)【要約】
【課題】環境音に対する不快感を低減させる。
【解決手段】環境音快音化システム100では、工事騒音により不快感が生じる室内において、屋外で集音した工事騒音S0を「快音化回路12」と「室内用適正化回路23」とにより第2快音化音源S2へ変換し、室内に設置したスピーカ26から出力することで、工事騒音S0の不快感が低減した音環境を提供する。工事騒音S0を基に作成した第2快音化音源S2を供給することで、工事騒音S0のレベルを下げることなく、不快感の低減・印象改善が図れる。また、集音機10と発生機20とをそれぞれ設置するだけなので、大きな工事も必要なく、手軽に低コストで工事期間のみ効果を得ることができる。さらに、一つの騒音源に対して、別々の建物内にある室内条件が全く違う居室であっても個別に発生機20を設置することができるため、それぞれの居室に適した第2快音化音源S2を出力することができる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の場所の第1環境音を集音する第1集音部と、
前記第1の場所とは異なる第2の場所の第2環境音を集音する第2集音部と、
前記第1環境音をスペクトルに変換し、前記スペクトルをその各成分の態様を示す第1データに変換する第1変換部と、
前記第2環境音に基づいて、前記第1データを前記第2の場所に適した第2データに変換する第2変換部と、
前記第2データを前記第2の場所で出力するための快音化音源に変換する音変換部と、
前記第2の場所で前記快音化音源を出力する出力部と、
を備える環境音快音化システム。
【請求項2】
請求項1に記載の環境音快音化システムにおいて、
前記第1の場所に配置された集音機と、
前記第2の場所に配置され、前記集音機と有線又は無線により接続された発生機と、を備え、
前記第1集音部及び前記第1変換部は、前記集音機に設けられ、
前記第2集音部、前記第2変換部、前記音変換部及び前記出力部は、前記発生機に設けられていることを特徴とする環境音快音化システム。
【請求項3】
請求項1に記載の環境音快音化システムにおいて、
前記第1の場所に配置された集音機と、
前記第2の場所に配置され、前記集音機と有線又は無線により接続された発生機と、を備え、
前記第1集音部は、前記集音機に設けられ、
前記第1変換部、前記第2集音部、前記第2変換部、前記音変換部及び前記出力部は、前記発生機に設けられていることを特徴とする環境音快音化システム。
【請求項4】
請求項1に記載の環境音快音化システムにおいて、
前記第2変換部は、前記第1の場所から前記第2の場所に音が伝わる際の音の透過損失及び前記第2の場所の吸音力のうち少なくとも一方に基づいて、前記第1データを前記第2データに変換することを特徴とする環境音快音化システム。
【請求項5】
請求項1に記載の環境音快音化システムにおいて、
前記第2変換部は、前記第1の場所と前記第2の場所との間に距離がある場合、前記距離に基づく音の時間差に関する補正を行う機能を有していることを特徴とする環境音快音化システム。
【請求項6】
請求項1に記載の環境音快音化システムにおいて、
前記快音化音源の特徴に関する特徴情報の入力を受け付ける特徴情報入力部を備え、
前記音変換部は、前記特徴情報に基づいて前記快音化音源を生成することを特徴とする環境音快音化システム。
【請求項7】
請求項1に記載の環境音快音化システムにおいて、
前記音変換部は、前記快音化音源に対応する音データをオーディオ信号に変換し、
前記出力部は、前記オーディオ信号に応じた音を出力することを特徴とする環境音快音化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境音を快音化する環境音快音化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に騒音は好ましくないものとして認識されており、従来、騒音対策のための様々な技術が知られている。例えば、特許文献1には、建設機械の稼働により建設機械自体に発生して伝搬する騒音をマイクロホン等の音センサを用いて計測し、騒音の実測値が許容値よりも大きい場合に、建設機械の運転席内のスピーカから通報音を鳴らすことでオペレータにその旨を通報するシステムが開示されている。また、特許文献2には、空調装置の送風条件に基づいて空調音の周波数スペクトルを推定し、これに適したマスク音を選択してオーディオ装置から出力する空調音の快音化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-126387号公報
【特許文献2】特開2018-122677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、通報を受けたオペレータに騒音を許容値以下に抑える操縦を行わせることができるため、近隣への工事騒音の影響を低減することができると考えらえる。また、特許文献2に記載の技術によれば、空調音に対してマスク音が重ねられるため、空調音を聞こえにくくすることができると考えられる。
【0005】
しかし、これらの先行技術はいずれも、騒音を抑制する(騒音を大きく出さないようにする、騒音を聞こえにくくする)という観点からの対策であって、騒音に対する好ましくないイメージに変化をもたらすものではないため、依然として騒音が人々の大きなストレス源となりうる。これに対し、何らかの手法で騒音に対するイメージを少しでも良くすることができれば、騒音が聞こえても人々は従来ほどストレスを感じなくなることが期待され、環境音に対する不快感を低減させることができる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、環境音に対する不快感を低減させることができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため以下の解決手段を採用する。なお、以下の解決手段及び括弧書中の文言はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。また、本発明は、以下の解決手段に示す各発明特定事項を少なくとも1つ含む発明とすることができる。さらに、以下の解決手段に示す各発明特定事項には、発明特定事項を限定する要素を追加して下位概念化することができ、発明特定事項を限定する要素を削除して上位概念化することもできる。
【0008】
解決手段1:本解決手段の環境音快音化システムは、第1の場所の第1環境音を集音する第1集音部と、前記第1の場所とは異なる第2の場所の第2環境音を集音する第2集音部と、前記第1環境音をスペクトルに変換し、前記スペクトルをその各成分の態様を示す第1データに変換する第1変換部と、前記第2環境音に基づいて、前記第1データを前記第2の場所に適した第2データに変換する第2変換部と、前記第2データを前記第2の場所で出力するための快音化音源に変換する音変換部と、前記第2の場所で前記快音化音源を出力する出力部と、を備える環境音快音化システムである。
【0009】
本解決手段によれば、第1環境音及び第2環境音に基づいて作成した快音化音源を第2の場所で出力するため、第1環境音のレベルを下げることなく、第2の場所で第1環境音に対する不快感を低減させることができ、第1環境音に対する印象も改善することができる。
【0010】
解決手段2:本解決手段の環境音快音化システムは、上述したいずれかの解決手段において、前記第1の場所に配置された集音機と、前記第2の場所に配置され、前記集音機と有線又は無線により接続された発生機と、を備え、前記第1集音部及び前記第1変換部は、前記集音機に設けられ、前記第2集音部、前記第2変換部、前記音変換部及び前記出力部は、前記発生機に設けられていることを特徴とする環境音快音化システムである。
【0011】
本解決手段によれば、第1変換部は、集音機に設けられているため、発生機に第1変換部を設ける必要がなくなり、発生機側の処理負担や実装負担を軽減させることができる。
【0012】
解決手段3:本解決手段の環境音快音化システムは、上述したいずれかの解決手段において、前記第1の場所に配置された集音機と、前記第2の場所に配置され、前記集音機と有線又は無線により接続された発生機と、を備え、前記第1集音部は、前記集音機に設けられ、前記第1変換部、前記第2集音部、前記第2変換部、前記音変換部及び前記出力部は、前記発生機に設けられていることを特徴とする環境音快音化システムである。
【0013】
本解決手段によれば、第1変換部は、発生機に設けられているため、集音機に第1変換部を設ける必要がなくなり、集音機側の処理負担や実装負担を軽減させることができる。
【0014】
解決手段4:本解決手段の環境音快音化システムは、上述したいずれかの解決手段において、前記第2変換部は、前記第1の場所から前記第2の場所に音が伝わる際の音の透過損失及び前記第2の場所の吸音力のうち少なくとも一方に基づいて、前記第1データを前記第2データに変換することを特徴とする環境音快音化システムである。
【0015】
本解決手段によれば、第2変換部は、透過損失や吸音力に基づいて第1データを第2データに変換するため、第2の場所により適した第2データを生成することができる。
【0016】
解決手段5:本解決手段の環境音快音化システムは、上述したいずれかの解決手段において、前記第2変換部は、前記第1の場所と前記第2の場所との間に距離がある場合、前記距離に基づく音の時間差に関する補正を行う機能を有していることを特徴とする環境音快音化システムである。
【0017】
本解決手段によれば、第2変換部は、距離に基づく音の時間差に関する補正を行う機能を有しているため、第2の場所において快音化音源が早く出力されすぎてしまうことを回避することができる。なお、第2変換部は、距離以外の要素(例えば、透過損失、吸音力、機器の通信速度、第1の場所と第2の場所の高低差等)に基づく音の時間差に関する補正を行う機能を有していてもよい。
【0018】
解決手段6:本解決手段の環境音快音化システムは、上述したいずれかの解決手段において、前記快音化音源の特徴に関する特徴情報の入力を受け付ける特徴情報入力部を備え、前記音変換部は、前記特徴情報に基づいて前記快音化音源を生成することを特徴とする環境音快音化システムである。
【0019】
本解決手段によれば、音変換部は、特徴情報に基づいて快音化音源を生成するため、利用者が好む快音化音源を生成することができ、第1環境音に対する不快感をより一層低減させることができる。
【0020】
解決手段7:本解決手段の環境音快音化システムは、上述したいずれかの解決手段において、前記音変換部は、前記快音化音源に対応する音データをオーディオ信号に変換し、前記出力部は、前記オーディオ信号に応じた音を出力することを特徴とする環境音快音化システムである。
【0021】
本解決手段によれば、オーディオ信号によって快音化音源を簡単に出力することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、環境音に対する不快感を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態の環境音快音化システム100の構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態の集音機10が実行する集音機処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施形態の発生機20が実行する発生機処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図4】発生機20の室内用適正化回路23が実行する第2データ変換処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図5】第1環境音の第1データへの変換を説明する図である。
【
図6】音変換処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図7】利用者により特徴情報入力部14への操作を通じてなされる情報入力の一例を示す連続図である。
【
図8】環境音快音化システム100の集音機10のデジタルサイネージへの応用例を示す図である。
【
図9】第1実施形態の環境音快音化システム100の集音機10及び発生機20の配置例を示す図である。
【
図10】環境音快音化システム100のその他の運用例を示す概念図である。
【
図11】室内外による処理の違いを示す概念図である。
【
図13】第2実施形態の環境音快音化システム100-2の構成を示すブロック図である。
【
図14】第2実施形態の集音機10-2が実行する集音機処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図15】第2実施形態の発生機20-2が実行する発生機処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図16】第2実施形態の環境音快音化システム100-2の集音機10-2及び発生機20-2の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は環境音快音化システムの好適な一例であり、本発明はこの例示に限定されない。
【0025】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態の環境音快音化システム100の構成を示すブロック図である。環境音快音化システム100は、環境音、特に騒音に処理を施し、騒音を活かしつつ快音化した快音化音源(例えば、音楽)を作成して出力するシステムである。環境音快音化システム100は、システムの処理に必要なプログラムやソフトウェアが実装されたコンピュータとこれに接続された各種機器とで構成されている。
【0026】
環境音快音化システム100は、屋外(第1の場所)に配置された集音機10と、室内(第2の場所)に配置され、集音機10と有線又は無線により接続された発生機20と、を備えている。集音機10は、デジタルサイネージ、専用PC(パーソナルコンピュータ)、専用端末等とすることができる。また、集音機10は、集音マイク11(第1集音部)、快音化回路12(第1変換部)、送信機13、特徴情報入力部14、音変換部15、スピーカ16、及び、屋外配信部17を備えている。
【0027】
集音マイク11は、屋外(第1の場所)の騒音(第1環境音)を集音する機器である。集音マイク11は、例えば、指向性マイク、無指向性マイク、全天候型マイク等である。快音化回路12は、集音マイク11が集音した騒音をスペクトルに変換し、スペクトルをその各成分の態様を示すMIDI(Musical Instrument Digital Interface)形式の第1データ(デジタルデータ)に変換する。送信機13は、発生機20の受信機21に、第1データを送信する機器である。送信機13と受信機21とは、例えば、Wi-FiやBlutooth等のローカル回線や有線による回線を利用することが好ましいが、インターネット等の回線を利用してもよい。なお、一の集音機10に対しては、複数の発生機20を配置することもでき、その場合には、送信機13は、複数の発生機20(複数の受信機21)に対して第1データを送信する。
【0028】
特徴情報入力部14は、表示機能と入力機能とを兼ね備えた機器(例えば、タッチパネル)であり、環境音快音化システム100の利用者による操作に応じて第1快音化音源の特徴に関する特徴情報の入力を受け付ける。特徴情報の入力は、特徴情報入力部14に対する直接操作による入力であってもよく、スマートフォン等を用いた外部からの間接操作による入力であってもよい。音変換部15は、快音化回路12が生成した第1データを、特徴情報入力部14が受け付けた特徴情報に基づいて、屋外(第1の場所)で出力するための第1快音化音源に変換する。また、音変換部15は、第1快音化音源に対応する音データをオーディオ信号に変換する。スピーカ16は、音を出力する機器であり、例えば、指向性のスピーカや無指向性のスピーカである。スピーカ16は、音変換部15が変換したオーディオ信号に応じた第1快音化音源を出力する。屋外配信部17は、スピーカ16を介して、現場の進捗情報やニュースを配信する。
【0029】
一方、発生機20は、家庭用スマートスピーカやスマートフォン、館内放送システム、館内放送システムに付随する装置等とすることができる。また、発生機20は、受信機21、室内観測用マイク22(第2集音部)、室内用適正化回路23(第2変換部)、特徴情報入力部24、音変換部25、スピーカ26(出力部)、及び、室内配信部27を備えている。
【0030】
受信機21は、集音機10の送信機13から送信されてきた第1データを受信する機器である。室内観測用マイク22は、屋外(第1の場所)とは異なる室内(第2の場所)の室内音(第2環境音)を集音する機器である。室内観測用マイク22は、例えば、指向性マイク、無指向性マイク、全天候型マイク等である。室内用適正化回路23は、室内観測用マイク22が集音した第2環境音に基づいて、第1データを室内(第2の場所)に適した第2データに変換する。
【0031】
室内用適正化回路23は、集音機10から送信されてきた第1データを、サッシの透過損失及び室内吸音力の値で補正するフィルタに通すことができる機能を有している。なお、サッシは窓を含んでいてもよい。室内用適正化回路23は、このフィルタにより第1データを第2データに変換する。また、室内用適正化回路23は、集音機10と発生機20の間に距離がある場合、時間差の補正を行う機能も有している。発生機20を複数の部屋や複数の住居に設置する場合、部屋ごとに(住居ごとに)、遮音、防音の環境が異なるため、室内用適正化回路23は、部屋や住居に応じた第2データを生成することができる。第2データは、音源の形式は限定されないがここでは第1データと同様のMIDI形式のデータ(デジタルデータ)である。なお、第1データについても、音源の形式は限定されない。
【0032】
特徴情報入力部24は、表示機能と入力機能とを兼ね備えた機器(例えば、タッチパネル)であり、環境音快音化システム100の利用者による操作に応じて第2快音化音源の特徴に関する特徴情報の入力を受け付ける。特徴情報の入力は、特徴情報入力部24に対する直接操作による入力であってもよく、スマートフォン等を用いた外部からの間接操作による入力であってもよい。音変換部25は、室内用適正化回路23が生成した第2データを、特徴情報入力部24が受け付けた特徴情報に基づいて、室内(第2の場所)で出力するための第2快音化音源に変換する。また、音変換部25は、第2快音化音源に対応する音データをオーディオ信号に変換する。スピーカ26は、音を出力する機器であり、例えば、指向性のスピーカや無指向性のスピーカである。スピーカ26は、音変換部25が変換したオーディオ信号に応じた第2快音化音源を出力する。室内配信部27は、スピーカ26を介して、現場の進捗情報やニュースを配信する。なお、第1快音化音源は、集音機10のスピーカ16から出力される屋外用の快音化音源であり、第2快音化音源は、発生機20のスピーカ26から出力される室内用の快音化音源である。
【0033】
集音マイク11を発生機20ではなく、集音機10に配置している理由は、(1)窓やサッシ等の透過時のエネルギ損失や室内吸音により、外部騒音と室内透過騒音の周波数特性が異なる可能性があるからであり、また、(2)室内に集音マイク11を設置すると工事騒音以外の音も集音して変換されてしまう恐れがあるからである。また、集音機10に、「快音化回路12」及び「室内用適正化回路23」を実装していない理由は、発生機20が置かれる室内条件は、発生機20の設置場所により変わってくるため、「室内用適正化回路23」に関しては発生機20側に実装する必要があるからである。
【0034】
このような理由から、第1実施形態の環境音快音化システム100では、集音マイク11及び快音化回路12は、集音機10に設けられ、室内観測用マイク22、室内用適正化回路23、音変換部25及びスピーカ26は、発生機20に設けられている。
【0035】
環境音快音化システム100が備える各機能部や各回路が扱うデータや設定値等は、必要に応じて不図示の記憶部に記憶される。環境音快音化システム100を構成するコンピュータは、CPUやRAM、HDD、各種I/F等を備えた汎用的なコンピュータ(例えば、PC、クラウドサーバ、スマートフォン、タブレット端末等)であり、コンピュータにプログラム等が実装されることにより、コンピュータのCPUが各機能部や各回路として機能する。なお、このような構成に代えて、環境音快音化システム100専用のコンピュータを設計し、そのコンピュータに各機能部や各回路に対応する物理的な回路基板を一体的又は個別に設けてもよい。
【0036】
また、集音マイク11、送信機13、特徴情報入力部14、スピーカ16のうち少なくとも1つは、コンピュータにネットワークやケーブルを介して接続させてもよいし、プログラム等が実装される第1コンピュータとは別の第2コンピュータに集音マイク11、特徴情報入力部14、スピーカ16のうち少なくとも1つを接続させ、第1コンピュータと第2コンピュータとをネットワーク等を介して接続させてもよい。
【0037】
さらに、受信機21、室内観測用マイク22、特徴情報入力部24、スピーカ26のうち少なくとも1つは、コンピュータにネットワークやケーブルを介して接続させてもよいし、プログラム等が実装される第1コンピュータとは別の第2コンピュータに受信機21、室内観測用マイク22、特徴情報入力部24、スピーカ26のうち少なくとも1つを接続させ、第1コンピュータと第2コンピュータとをネットワーク等を介して接続させてもよい。
【0038】
〔第1実施形態の集音機が実行する処理の流れ〕
図2は、第1実施形態の集音機10が実行する集音機処理の手順例を示すフローチャートである。以下、手順例に沿って説明する。
【0039】
ステップS10:第1環境音集音処理が実行される。この処理では、集音マイク11が騒音(第1環境音)を集音し、電気信号に変換して出力する。出力された騒音の電気信号は、直接、又はファイルを介して、快音化回路12に送信される。
【0040】
ステップS11:スペクトル変換処理が実行される。この処理では、快音化回路12が、ステップS10で出力された騒音の電気信号を、フーリエ変換等により周波数スペクトルに変換して騒音の周波数スペクトルを分析し、スペクトルの全ての成分、又は、特定の周波数帯域(例えば、特定騒音に対応する周波数帯域)の成分を抽出する。
【0041】
ステップS12:第1データ変換処理が実行される。この処理では、音変換部15が、ステップS11で得られたスペクトルの各成分の態様(音程、音圧、音の長さ等)を示す第1データに変換する。
【0042】
ステップS13:送信処理が実行される。この処理では、送信機13が、発生機20の受信機21に、第1データを送信する。
【0043】
ステップS14:音変換処理が実行される。この処理では、音変換部15が、ステップS12で得られた第1データに対し、環境音快音化システム100の利用者により特徴情報入力部14への操作を通じて入力される情報を加味して、騒音を快音化した第1快音化音源を作成する。なお、音変換処理の詳細は後述する。
【0044】
ステップS15:オーディオ信号変換処理が実行される。この処理では、音変換部15が、ステップS14で作成された第1快音化音源に対応するデジタルデータをオーディオ信号に変換し、ステップS10で騒音が集音されてから所定時間(例えば、30ms~3s)が経過した後のタイミングで出力する。出力されたオーディオ信号は、直接、又はファイルを介して、スピーカ16に送信される。
【0045】
ステップS16:出力処理が実行される。この処理では、スピーカ16が、ステップS15で送信されたオーディオ信号を即時に出力する。これにより、ステップS14で作成された第1快音化音源がスピーカ16から出力される。なお、出力処理においては、屋外配信部17が、例えば所定の時間帯(8時~17時30分以外の時間帯)に、特徴情報入力部14やスピーカ16、及び、設置場所のネットワーク環境(Wi-Fi等)を利用して、現場の進捗情報やニュースを配信することができる。
【0046】
集音機10においては終始、上述した流れに沿って、騒音に基づいて快音化された第1快音化音源が作成され、騒音が集音されてから(≒利用者に騒音が聞こえてから)、所定時間経過後のタイミングでオーディオ信号が出力されることで、快音化した第1快音化音源が出力される(≒利用者に快音化された第1快音化音源が聞こえる)。
【0047】
ところで、オーディオ信号(快音化された音楽)の出力を敢えて遅延させているのは、論文「遅延のある演奏系での遅延の認知に関する実験とその考察」(西堀佑ら著,情報処理学会研究報告,vol.2003,no.127(2003-MUS-053),pp.37-42,2003年12月21日)の記載に基づいている。この論文では、楽曲中に遅延を発生させた場合に30ms以上の遅延であれば、音が遅延していると認知されるとの実験結果が示されている。この実験結果を踏まえれば、オーディオ信号の出力を敢えて遅延させ、騒音が集音されてから所定時間が経過した後のタイミングで出力することにより、快音化した第1快音化音源が騒音から遅れている、すなわち騒音と第1快音化音源とがずれている(騒音と第1快音化音源とが同じものでない)と認知させることができ、第1快音化音源をより聞こえ易くすることができる。
【0048】
なお、上記の手順例はあくまで一例として示したものであり、これに限定されない。例えば、上記の手順例においては、ステップS15にて音変換部15がオーディオ信号の出力を遅延させているが、これに代えて、音変換部15はオーディオ信号を即時に出力し、ステップS16にてスピーカ16がオーディオ信号の出力を遅延させてもよいし、或いは、ステップS14以前のより上流側の処理を遅延させることで、最終的にオーディオ信号を出力するタイミングが騒音の集音から所定時間経過後となるように調整してもよい。いずれの場合においても、利用者に騒音が聞こえてから所定時間が経過した後のタイミングで、騒音に基づいて快音化された第1快音化音源を聞かせることができる。なお、集音機10は、所定時間の経過を待たずに第1快音化音源を出力してもよい。
【0049】
〔第1実施形態の発生機が実行する処理の流れ〕
図3は、第1実施形態の発生機20が実行する発生機処理の手順例を示すフローチャートである。以下、手順例に沿って説明する。
【0050】
ステップS20:受信処理が実行される。この処理では、受信機21が、集音機10の送信機13から送信されてきた第1データを受信する。
【0051】
ステップS21:第2環境音集音処理が実行される。この処理では、室内観測用マイク22が室内音(第2環境音)を集音し、電気信号に変換して出力する。出力された室内音の電気信号は、直接、又はファイルを介して、室内用適正化回路23に送信される。
【0052】
ステップS22:第2データ変換処理が実行される。この処理では、室内用適正化回路23が、室内音に基づいて、第1データを第2の場所(室内)に適した第2データに変換する。なお、第2データ変換処理の詳細は後述する。
【0053】
ステップS23:音変換処理が実行される。この処理では、音変換部25が、ステップS22で得られた第2データに対し、環境音快音化システム100の利用者により特徴情報入力部24への操作を通じて入力される情報を加味して、騒音を室内音に基づいて快音化した第2快音化音源を作成する。なお、音変換処理の詳細は後述する。
【0054】
ステップS24:オーディオ信号変換処理が実行される。この処理では、音変換部25が、ステップS23で作成された第2快音化音源に対応するデジタルデータをオーディオ信号に変換し、特定のタイミング(例えば、ステップS20で第1データを受信したとき、ステップS21で室内音が集音されたとき、
図2のステップS10で騒音が集音されたとき等)から所定時間(例えば、30ms~3s)が経過した後のタイミングで出力する。出力されたオーディオ信号は、直接、又はファイルを介して、スピーカ26に送信される。
【0055】
ステップS25:出力処理が実行される。この処理では、スピーカ26が、ステップS24で送信されたオーディオ信号を即時に出力する。これにより、ステップS23で作成された第2快音化音源がスピーカ26から出力される。なお、出力処理においては、室内配信部27が、例えば所定の時間帯(8時~17時30分以外の時間帯)に、特徴情報入力部24やスピーカ26、及び、設置場所のネットワーク環境(Wi-Fi等)を利用して、現場の進捗情報やニュースを配信することができる。
【0056】
発生機20においては終始、上述した流れに沿って、騒音及び室内音に基づいて快音化された第2快音化音源が作成され、特定のタイミングから(≒利用者に騒音や室内音が聞こえてから)、所定時間経過後のタイミングでオーディオ信号が出力されることで、快音化した第2快音化音源が出力される(≒利用者に快音化された第2快音化音源が聞こえる)。なお、所定時間の考え方や所定時間の経過のさせ方は、第1快音化音源の場合と同様である。また、発生機20は、所定時間の経過を待たずに第2快音化音源を出力してもよい。
【0057】
図4は、発生機20の室内用適正化回路23が実行する第2データ変換処理の手順例を示すフローチャートである。以下、手順例に沿って説明する。
【0058】
ステップS30:フィルタ設定処理が実行される。この処理では、集音機10から送信されてきた第1データを第2データに変換するためのフィルタ(サッシ透過時の減衰フィルタや、室内吸音力を加味したフィルタ等)を設定する処理を実行する。
【0059】
フィルタの設定方法は、以下の通りである。
(1)屋外から基本となる音を出し、サッシの透過損失を簡易的に測定することでフィルタの設定を行う。
(2)集音機10が集音した騒音と、室内観測用マイク22が集音した室内音とを比較し、差分に基づきフィルタの設定を行う。
(3)窓やサッシの条件等で決められた値を入力することでフィルタの設定を行う。
上記(1)~(3)は、いずれかの方法を採用してもよく、複数の方法を併用してもよい。
【0060】
ステップS31:変換処理が実行される。この処理では、室内用適正化回路23が、設定されたフィルタによって、第1データを第2データに変換する。フィルタは、第1データの一部の内容を削除したり、第1データに別の内容を加えたりする機能を有している。例えば、フィルタは、所定の周波数の音(例えば、高い音)を減少させ、規定の周波数の音(例えば、低い音)を増加させることができる。これにより、室内で聞こえやすい音のみを快音化させることができる。このように、室内用適正化回路23は、屋外(集音機10が配置されている場所)から室内(発生機20が配置されている場所)に音が伝わる際の音の透過損失及び室内(発生機20が配置されている場所)の吸音力のうち少なくとも一方に基づいて、第1データを第2データに変換する。
【0061】
ステップS32:時間差補正処理が実行される。この処理では、室内用適正化回路23は、屋外(集音機10が配置されている場所)と室内(発生機20が配置されている場所)との間に距離がある場合、距離に基づく音の時間差に関する補正を行う。距離に関しては、GPS(全地球測位システム)の機能を用いて計測してもよく、利用者による入力を受け付けるようにしてもよい。集音機10から送信されてくる第1データは、実際の騒音よりも早く発生機20に到達するため、時間差の分を遅らせて第2快適化音源を出力するようにすることができる。
【0062】
ステップS33:周辺環境検出処理が実行される。この処理では、室内用適正化回路23が、室内観測用マイク22を利用して周辺環境を自動的に検出し、フィルタ等に用いる数値として設定する。ただし、周辺環境の初期設定は手動で行い、その後一定の範囲内であれば自動補正し、室内環境が大きく変わった場合は再度手動にて設定をする等といったように半自動で周辺環境の設定を行ってもよい。なお、本処理は、ステップS30よりも前に実行することもできる。
【0063】
図5は、第1環境音の第1データへの変換を説明する図である。ここでは一例として、工事現場において生じた環境音、すなわち工事騒音を集音した場合の例を示している。
【0064】
図5中(A):工事現場で集音された工事騒音に対応する2つの信号波形を示している。図中の縦軸は音圧を表しており、横軸は時間を表しているが、この状態のままでは工事騒音の構成を把握することができず処理しにくいため、工事騒音の信号波形は周波数スペクトルに変換されたのち、スペクトルの各成分の態様を示すデジタルデータに変換される。
【0065】
図5中(B):工事騒音を元に変換されたデジタルデータのイメージを、一般的なMIDI編集ソフトウェアと同様のユーザインタフェースを用いて示している。図中に示された長さや濃さが様々に異なる帯状表示が、スペクトルの各成分に対応している。帯状表示の縦方向における位置は、各成分の音程(音の高さ)を示しており、これに対応する音がピアノの鍵盤を用いて表されている。また、帯状表示の濃さは、各成分の音圧(音の強さ)を示しており、帯状表示の長さは、各成分の長さ(音の継続時間)を示している。図示の例においては、工事騒音の周波数成分がC2からC5までの音域に特に集中していることが分かる。
【0066】
本実施形態においては、集音された工事騒音に基づいて生成されるこのようなデジタルデータに対し、利用者による操作を通じて入力される音楽の特徴に関する特徴情報を加味して、工事騒音が快音化された第1快音化音源や第2快音化音源が作成される。なお、
図5中(B)は、デジタルデータに関する理解を促進するために図示されたものであり、環境音快音化システム100においては、上述したように、集音された工事騒音のスペクトル変換処理(
図2中のステップS11)、第1データ変換処理(
図2中のステップS12)及び音変換処理(
図2中のステップS14)等は、それぞれ快音化回路12及び音変換部15が実行するため、図示されたようなユーザインタフェースが用いられることはない。
【0067】
〔音変換処理〕
図6は、音変換処理の手順例を示すフローチャートである。音変換処理は、音変換部15がコンピュータに実装されたソフトウェアを用いて実行する。ソフトウェアは、独自に開発して実装してもよいし、或いは、既存のDAW(Digital Audio Workstation)やその他のソフトウェアを用いてもよい。以下、手順例に沿って説明する。
【0068】
ステップS110:音変換部15は、利用者の操作により音階(明るい感じ、暗い感じ、落ち着いた感じ等)の選択が変更されたか否かを確認し、音階の選択が変更された場合には(ステップS110:Yes)、ステップS111を実行する一方、音階の選択が変更されていない場合には(ステップS110:No)、ステップS112に進む。
【0069】
ステップS111:音変換部15は、記憶部に記憶されている音階の設定を、利用者の操作により選択された音階で更新する。
【0070】
ステップS112:音変換部15は、第1データに音階の設定を反映させる。例えば、利用者の操作により、音階に関する複数の選択肢の中から[暗い感じ2]が選択された場合には、音変換部15は、作成する音楽の音階を[暗い感じ2]に対応する音階(例えば、ニ短調)に変更する。これに対し、音階の選択が変更されていない場合には、音変換部15は、作成する音楽の音階を予め初期設定された音階(例えば、ハ長調)のまま維持する。
【0071】
ステップS120:音変換部15は、利用者の操作によりリズム(細かい(速い)、普通、粗い(ゆっくり)等)の選択が変更されたか否かを確認し、リズムの選択が変更された場合には(ステップS120:Yes)、ステップS121を実行する一方、リズムの選択が変更されていない場合には(ステップS120:No)、ステップS122に進む。
【0072】
ステップS121:音変換部15は、記憶部に記憶されているリズムの設定を、利用者の操作により選択されたリズムで更新する。
【0073】
ステップS122:音変換部15は、第1データにリズムの設定を反映させた上でクオンタイズを実行する。例えば、利用者の操作により、リズムに関する複数の選択肢の中から[やや細かい1]が選択された場合には、音変換部15は、作成する音楽のリズムを[やや細かい1]に対応するリズム(例えば、8分音符を中心に構成されたリズム)に変更する。これに対し、リズムの選択が変更されていない場合には、音変換部15は、作成する音楽のリズムを予め初期設定されたリズム(例えば、4分音符を中心に構成されたリズム)のまま維持する。その上で、音変換部15はクオンタイズを実行し、設定されたリズムに合わせて各成分の音のタイミングを揃える。
【0074】
ステップS130:音変換部15は、利用者の操作により音色(楽器の種類)の選択が変更されたか否かを確認し、音色の選択が変更された場合には(ステップS130:Yes)、ステップS131を実行する一方、音色の選択が変更されていない場合には(ステップS130:No)、ステップS132に進む。
【0075】
ステップS131:音変換部15は、記憶部に記憶されている音色の設定を、利用者の操作により選択された音色で更新する。
【0076】
ステップS132:音変換部15は、第1データに音色の設定を反映させる。例えば、利用者の操作により、音色に関する複数の選択肢の中から[ギター]が選択された場合には、音変換部15は、作成する音楽の音色をギターの音色に変更する。これに対し、音色の選択が変更されていない場合には、音変換部15は、作成する音楽の音色を予め初期設定された音色(例えば、バイオリンの音色)のまま維持する。以上の手順を終えると、音変換処理が終了し、第1データはオーディオ信号に変換される。
【0077】
なお、上記の手順例はあくまで一例として示したものであり、これに限定されない。例えば、音階に関する手順(ステップS110~S112)、リズムに関する手順(ステップS120~S122)、音色に関する手順(ステップS130~S132)の実行は、上記の順序に限定されず、例えば、音色に関する手順を実行してから音階、リズムに関する各手順を実行してもよい。また、上記の手順例においては、特徴情報入力部14への操作を通じて音階、リズム、音色に関する情報が入力されているが、音楽の特徴に関するさらなる情報(例えば、テンポ等)が入力されてもよい。さらに、上記の手順例においては、音階、リズム、音色に関して予め初期値が設定されているが、これに代えて、例えば、音色に関してのみ初期値を設定してもよいし、全ての項目に関する初期値の設定を任意としてもよい。
【0078】
また、上記の手順例は、集音機10の音変換部15が実行する音変換処理の手順例であるが、発生機20の音変換部25が実行する音変換処理も基本的には同様の処理であるため、重複する説明は省略する。発生機20の音変換部25が実行する音変換処理の場合は、
図5の手順例のうち、「音変換部15」が「音変換部25」に変更になり、「第1データ」が「第2データ」に変更になる。
【0079】
図7は、利用者により特徴情報入力部14への操作を通じてなされる情報入力の一例を示す連続図である。
【0080】
図7中(A):特徴情報入力部14の画面には、環境音快音化メニューとして、例えば、音色の選択、音階の選択、リズムの選択の3つの項目が表示される。利用者は、いずれかの項目にタッチすることによりタッチした項目の画面にアクセスすることができる。また、集音機10の起動時には、これら3つのメニューに関してそれぞれ初期設定が適用されており、スピーカ16からは、初期設定された音色、音階、リズムにより騒音が快音化された第1快音化音源が出力される。ここで、利用者が[音色の選択]にタッチしたと想定する。
【0081】
図7中(B):利用者が[音色の選択]にタッチしたのに伴い、特徴情報入力部14の画面には、音色の選択に関する表示がなされる。具体的には、画面の上部に、現在の音色として、初期設定された楽器(バイオリン)が表示される。また、その下には、楽器に関する複数の選択肢が表示され、現在の音色に対応する楽器が太枠で囲まれている。利用者は、画面をスワイプすることにより楽器の選択肢を確認することができ、他のいずれかの楽器にタッチすることにより音色をその楽器に変更することができる。この時点では、スピーカ16からは依然として、初期設定された音色(バイオリン)、音階、リズムにより騒音が快音化された第1快音化音源が出力される。ここで、利用者が[トランペット]にタッチしたと想定する。
【0082】
図7中(C):利用者が[トランペット]にタッチしたのに伴い、特徴情報入力部14の画面には、音色の選択が変更されたことを示す表示がなされる。具体的には、画面の上部に、現在の音色として、直前に選択された[トランペット]が表示されるとともに、楽器に関する複数の選択肢のうち、直前に選択された[トランペット]が太枠で囲まれて表示される。このように、利用者は、直感的で容易な操作により音色の選択を変更することができる。この時点では、スピーカ16からは、変更後の音色(トランペット)と、初期設定された音階、リズムとにより騒音が快音化された第1快音化音源が出力される。
【0083】
利用者は、画面内に表示された[戻る]ボタンにタッチすることにより、
図7中(A)に示した環境音快音化メニューに戻ることができ、ここからさらに他の項目(音階の選択、リズムの選択)に進むことができる。他の項目に関する画面の内容については説明を省略するが、上述した音色の選択に関する画面と同様に、利用者が音楽に関する専門知識を有していない場合でも直感的で容易な操作により選択を変更することができる画面構成とされている。
【0084】
なお、
図7中(A)に図示した例においては、環境音快音化メニューとして、3つの選択項目(音色、音階、リズム)が表示されているが、これに限定されず、さらなる選択項目(例えば、テンポ等)が表示されてもよい。
図7中(B)及び
図7中(C)に図示した例においては、単体の楽器のみが選択肢として表示されているが、バンド編成(例えば、ギター、ベース、ドラムの組み合わせ)やストリングス編成(例えば、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスの組み合わせ)のように、複数の楽器の組み合わせを1つの選択肢として表示することも可能である。このような選択肢が選択された場合には、騒音は複数の楽器を組み合わせた複合的な音色に変換され快音化されることとなる。
【0085】
また、説明の便宜のため、
図7においては、特徴情報入力部14の画面に音楽の特徴に関する選択を行うための表示のみがなされている例を図示しているが、この表示に加えて、例えば、騒音を快音化する前後の波形(元の環境音の波形、及び、第1快音化音源の波形)を並べて表示する等、環境音快音化メニューに関連する他の情報を、同じ画面内に表示してもよいし、別の画面に別途表示してもよい。また、特徴情報入力部14の画面において、アンケートを実施し(利用者の年齢や性別を問う質問、快音化音源の満足度を問う質問等を実施し)、アンケート結果が含まれるデータを外部のサーバに送信し、送信したデータを外部のサーバで保存するようにしてもよい。
【0086】
また、特に図示はしていないが、発生機20の特徴情報入力部24においては、特徴情報入力部14と同じ表示が行われ、発生機20のスピーカ26においては、第1快音化音源と同様に、利用者の好みが反映された第2快音化音源が出力される。
【0087】
〔環境音快音化システム100の集音機10の応用例〕
図8は、環境音快音化システム100の集音機10のデジタルサイネージへの応用例を示す図である。ここでは一例として、工事現場に設置されるデジタルサイネージDSに環境音快音化システム100の集音機10を応用した場合の例を示している。
【0088】
図8中(A):工事現場の仮囲いTFにデジタルサイネージDSが設置されるとともに、デジタルサイネージDSに近接する位置(例えば、デジタルサイネージDSの上方)にスピーカ16が設置された様子を示している。デジタルサイネージDSの画面には、近隣の風景や作業員のイメージ画像とともに、通行人に向けた挨拶や施工会社名等が表示されている。通行人は、例えば、画面内に表示されている[ここにタッチしてね]ボタンにタッチすることにより、メインメニューにアクセスすることができ、メインメニューに表示される項目にタッチすることにより、デジタルサイネージDSに表示可能な様々なコンテンツにアクセスすることができる。
【0089】
そして、デジタルサイネージDSに表示可能なコンテンツの1つとして、[騒音快音化メニュー]が用意されている。騒音快音化メニューは、
図7に示した環境音快音化メニューに対応するものであるが、工事現場において生じる環境音は工事騒音であるため、ここでは直接的に[騒音快音化メニュー]と表現されている。ここで、通行人が[ここにタッチしてね]ボタンにタッチし、さらにメインメニューにて[騒音快音化メニュー]にタッチしたと想定する。
【0090】
図8中(B):通行人が[騒音快音化メニュー]にタッチしたのに伴い、デジタルサイネージDSの画面には、環境音快音化システム100を用いたコンテンツが表示される。具体的には、画面の右側部分(特徴情報入力部14に該当)に、
図7中(A)に示した環境音快音化メニューと同様の内容が表示されるが、ここで利用者となるのは通行人であるため、どのような通行人であっても抵抗感なく試してみたいと思えるよう、メニューにはより親しみ易い表現が採用されている。
【0091】
また、スピーカ16からは、初期設定された音色、音階、リズムにより騒音が快音化された第1快音化音源が出力される。そして、画面の左側部分に、元の騒音の波形と騒音が快音化された第1快音化音源の波形が上下に並べて表示される。通行人は、画面の右側部分に表示されるメニューを自由に操作しながら、自らの手で騒音を音楽に変える体験をすることができる。
【0092】
工事現場に設置される従来型のデジタルサイネージは、その日に実施する工事内容の案内、工事の完成予想図や写真、天気予報等の情報を表示するものであって内容に乏しく、通行人がわざわざ足を止めて見てみたいと思えるようなものではない。
【0093】
これに対し、環境音快音化システム100の集音機10を応用したデジタルサイネージDSは、通行人に、画面に表示される騒音快音化メニューを気軽に操作して遊んでもらい、音色、音階、リズム等を変えると騒音がどのような音楽に変化するのかを体験しながら楽しんでもらうことができる。そして、デジタルサイネージDSを介してこのようなコンテンツを提供することにより、人々が騒音に対して抱くイメージを好転させることができる。
【0094】
なお、環境音快音化システム100の集音機10は、工事現場以外の場所に設置されるデジタルサイネージに応用してもよい。例えば、空港や駅等に設置されるデジタルサイネージに環境音快音化システム100の集音機10を応用し、これらの場所で生じる騒音に基づいて快音化された第1快音化音源をBGMとして出力してもよいし、高速道路や線路の周辺等に設置されるデジタルサイネージに環境音快音化システム100の集音機10を応用し、これらの場所で生じる騒音に基づいて快音化された第1快音化音源を新たな環境音として出力してもよい。また、環境音快音化システム100の集音機10は、デジタルサイネージ以外の機器やシステムにも応用可能である。
【0095】
一方、環境音快音化システム100の発生機20においても、上述したデジタルサイネージDSと同様の表示を行いなら、スピーカ26からは、利用者の好みが反映された第2快音化音源を出力することができる。また、環境音快音化システム100の発生機20は、基本的には住居内や狭いスペースに配置されるため、比較的小型の機器になるが、オフィスや学校、病院等の広いスペースに配置する場合にはデジタルサイネージとして配置することもできる。
【0096】
図9は、第1実施形態の環境音快音化システム100の集音機10及び発生機20の配置例を示す図である。第1実施形態では、工事現場200の仮囲いTF上で騒音を集音する場合を想定している。仮囲いTF上で騒音を集音する場合、工事現場200の仮囲いTFに集音機10を配置し、現場近隣の住居の室内210に発生機20を配置する。工事現場200で発生する工事騒音S0(第1環境音)は、集音マイク11で集音され、快音化回路12で第1データに変換され、オーディオ信号に変換されて、スピーカ16から第1快音化音源として出力される。また、第1データは、送信機13と受信機21との通信により、受信機21に送信され、室内用適正化回路23により第2データに変換され、オーディオ信号に変換されて、スピーカ26から第2快音化音源として出力される。本配置例では、集音機10(例えば、現場に配置したデジタルサイネージ)と併用して快音化回路12を利用するため、快音化回路12は集音機10側に配置している。
【0097】
図10は、環境音快音化システム100のその他の運用例を示す概念図である。環境音快音化システム100は、
図10に示すように、屋外・室内問わず、幅広い場面での使用が可能である。環境音快音化システム100は、第1の場所300と第2の場所400とに跨って配置することにより、第1の場所300で発生する各種騒音を、環境音快音化システム100(快音化フィルタ)を通して、騒音の不快感低減に繋げることができる。
【0098】
第1の場所300の各種騒音としては、工事騒音301、自動車騒音302、鉄道騒音303、工場内作業騒音304、WEB会議による騒音305等が挙げられる。第2の場所400としては、住居内401、オフィス402、学校403、病院404等が挙げられる。環境音快音化システム100の適用箇所は、現場近隣の住居、学校、病院等や、現場周辺の建物内であり、工事騒音や自動車騒音、鉄道騒音、工場騒音、会議騒音等の各種騒音により不快感が生じる場所であれば建物用途は問わない。また、環境音快音化システム100によって快音化する音の方向としては、屋外から室内だけでなく、屋外から屋外であってもよく、室内から室内であってもよく、室内から屋外であってもよい。
【0099】
図11は、室内外による処理の違いを示す概念図である。
ステップS40:屋外で騒音が発生する。対象とする騒音の種類(新築工事、解体工事等)により集音マイク11の設置位置や機器(指向性マイク等)を変更することができる。
ステップS41:集音マイク11で騒音を集音する。集音マイク11は、現場敷地境界線上(仮囲い上)に配置してもよく、近隣住居のベランダ等に設置してもよい。
ステップS42:快音化回路12で騒音を快音化する。
ステップS43:集音機10では、屋外用に適正化が行われる。ステップS42及びステップS43により、騒音が第1データに変換される。
ステップS44:集音機10では、音色、リズム選択等が行われ、第1データが第1快音化音源に変換される。
ステップS45:屋外のスピーカ16により、第1快音化音源が出力される。
【0100】
ステップS46:快音化回路12で変換された第1データが、Wi-Fi、Bluetooth等にて室内端末(発生機20)へ送信される(有線可)。
ステップS47:発生機20では、室内用に適正化(サッシ透過時の減衰フィルタ等による処理)が行われる(第1データが第2データに変換される)。
ステップS48:発生機20では、音色、リズム選択等が行われ、第2データが第2快音化音源に変換される。
ステップS49:室内端末(スマートフォン、スマートスピーカ等のスピーカ26)により、第2快音化音源が出力される。
【0101】
図12は、従来技術の問題点を示す図である。工事現場周囲への騒音対策としては、現場敷地境界線上にて仮囲いの設置、防音シートの設置、低騒音型重機の使用、ANC(アクティブノイズコントロール)の活用、対象居室サッシへ仮設インナーサッシの設置等がある。
【0102】
しかし、
図12中(A)に示すように、工事現場200を仮囲いTFや防音シートで囲う技術では、上方向への遮音効果が期待できず、隣接建物上部への伝搬音が問題となる場合がある。仮囲いTFや防音シートの高さは、数メートル程度であるため、仮囲いTFの高さよりも低い場所にある住居では、仮囲いの効果範囲E1に入るが、仮囲いTFの高さよりも高い場所にある住居では、仮囲いの効果範囲外E2となってしまう。
【0103】
また、
図12中(B)に示すように、騒音の対象となる居室のサッシ201に、工事期間中に限りインナーサッシ202を新たに取付け、騒音を防ぐことも可能である。しかし、インナーサッシ202の取付けはコストが高く、インナーサッシ202の設置及び解体に日数がかかるという問題があり、窓が多かったり住居数が多かったりすると、インナーサッシ202の設置範囲が広範囲にわたる場合もあるという問題がある。
【0104】
一方、騒音の発生側(工事現場側等)で低騒音型重機を使用したり、ANCを使用したりする等して対策を講じ、騒音レベルを十分に低減させた場合でも、室内暗騒音が小さい場合は、騒音を不快に感じる恐れがある。
【0105】
これに対して、第1実施形態の環境音快音化システム100では、
図9に示すように、工事騒音S0により不快感が生じる室内において、屋外で集音した工事騒音S0を「快音化回路12」と「室内用適正化回路23」とにより第2快音化音源S2へ変換し、室内に設置したスピーカ26から出力することで、工事騒音S0の不快感が低減した音環境を提供することができる。具体的には、屋外の集音機10と室内の発生機20とをローカル通信で繋ぎ、工事騒音S0は「快音化回路12」と「室内用適正化回路23」を順に通り、室内の発生機20から第2快音化音源S2として出力されることで、室内において工事騒音S0の不快感低減を行っており、このような構成によって、従来技術の問題点を解消することができる。
【0106】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)第1実施形態によれば、工事騒音S0を基に作成した第2快音化音源S2を供給することで、工事騒音S0のレベルを下げることなく、不快感の低減・印象改善が図れる。
(2)第1実施形態によれば、集音機10と発生機20とをそれぞれ設置するだけなので、大きな工事も必要なく、手軽に低コストで工事期間のみ効果を得ることができる。
(3)第1実施形態によれば、一つの騒音源に対して、別々の建物内にある室内条件が全く違う居室であっても個別に発生機20を設置することができるため、それぞれの居室に適した第2快音化音源S2を出力することができる。
【0107】
(4)第1実施形態によれば、騒音(第1環境音)及び室内音(第2環境音)に基づいて作成した第2快音化音源を室内(第2の場所)で出力するため、騒音のレベルを下げることなく、室内で騒音に対する不快感を低減させることができ、騒音に対する印象も改善することができる。
(5)第1実施形態によれば、快音化回路12(第1変換部)は、集音機10に設けられているため、発生機20に快音化回路12を設ける必要がなくなり、発生機20側の処理負担や実装負担を軽減させることができる。特に、工事現場にデジタルサイネージDSを設置する場合には、デジタルサイネージDSの快音化回路12を有効に活用することができる(発生機20が複数あっても快音化回路12は1つで済み、ハードウェア資源を有効活用することができる)。
【0108】
(6)第1実施形態によれば、室内用適正化回路23(第2変換部)は、透過損失や吸音力に基づいて第1データを第2データに変換するため、室内により適した第2データを生成することができる。
(7)第1実施形態によれば、室内用適正化回路23(第2変換部)は、距離に基づく音の時間差に関する補正を行う機能を有しているため、室内において第2快音化音源が早く出力されすぎてしまうことを回避することができる。
【0109】
(8)第1実施形態によれば、音変換部15は、利用者により入力された特徴情報に基づいて第1快音化音源を生成し、音変換部25は、利用者により入力された特徴情報に基づいて第2快音化音源を生成するため、利用者が好む第1快音化音源や第2快音化音源を生成することができ、騒音に対する不快感をより一層低減させることができる。
(9)第1実施形態によれば、オーディオ信号によって第1快音化音源や第2快音化音源を簡単に出力することができる。
【0110】
(10)第1実施形態によれば、騒音に基づいて生成された第1データや第2データに対し、音色、音階、リズム等の設定を変更して快音化された第1快音化音源や第2快音化音源を生成するため、騒音を活かしながらこれを快音化することができる。また、快音化された第1快音化音源や第2快音化音源を聞かせることで、人々の騒音に対するイメージに変化をもたらし、イメージの好転に寄与することができる。
【0111】
(11)第1実施形態によれば、マスキングやANC等のような騒音対策の手法とは技術思想が根本的に異なり、騒音を抑制するのではなく、騒音は騒音として聞かせながら騒音を快音化された第1快音化音源や第2快音化音源を聞かせることにより、利用者に騒音に対する新鮮な印象を与えることができ、騒音に対するイメージを好転させることができる。
【0112】
(12)第1実施形態によれば、利用者に騒音が聞こえてから所定時間(例えば、30ms~3s)が経過した後のタイミングで、第1快音化音源や第2快音化音源が出力されるため、第1快音化音源や第2快音化音源をより聞こえ易くすることができる。また、利用者には、うるさい騒音が聞こえてから少し遅れて第1快音化音源や第2快音化音源が聞こえるため、うるさい環境音が別の音源に変わったことを明確に認知させることができ、騒音に対するイメージを好転させることができる。
【0113】
(13)第1実施形態によれば、利用者が特徴情報入力部14への操作を通じて音色、音階、リズム等を変更することができるため、騒音を快音化する上でのパターンが一辺倒にならず、利用者の操作により多様な快音化を実現することができる。また、利用者が自身の操作によって騒音が音楽に変化することを実感できるため、環境音快音化システム100で遊ばせながら無意識のうちに騒音に対するイメージを好転させることができる。
【0114】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0115】
図13は、第2実施形態の環境音快音化システム100-2の構成を示すブロック図である。第1実施形態では集音機10を工事現場の仮囲いに配置していたが、第2実施形態では集音機10-2を現場近隣の住居のベランダに配置する。また、第2実施形態では、集音機10-2及び発生機20-2の構成が異なっており、具体的には、快音化回路12が、集音機10-2側ではなく発生機20-2側に配置され、集音機10-2には、特徴情報入力部14、音変換部15、スピーカ16、屋外配信部17が配置されなくなっている。
【0116】
第2実施形態の環境音快音化システム100-2では、集音マイク11は、集音機10-2に設けられ、快音化回路12、室内観測用マイク22、室内用適正化回路23、音変換部25及びスピーカ26は、発生機20-2に設けられている。
【0117】
〔第2実施形態の集音機が実行する処理の流れ〕
図14は、第2実施形態の集音機10-2が実行する集音機処理の手順例を示すフローチャートである。以下、第1実施形態の
図2の手順例と異なる点を中心に説明する。ステップS10及びステップS11の処理は、
図2の処理内容と同様である。第1実施形態の
図2においては、この後、ステップS12において第1データ変換処理を実行しているが、第2実施形態の
図14では、第1データ変換処理を実行せず、ステップS13において送信処理を実行している。ステップS13の送信処理では、周波数分析をしていない音の波形のデータをそのまま送信する。なお、第2実施形態の集音機10-2は、音を出力しないので、第2実施形態の
図14では、第1実施形態の
図2のステップS14(音変換処理)、ステップS15(第1オーディオ信号変換処理)、ステップS16(出力処理)が存在しない。
【0118】
〔第2実施形態の発生機が実行する処理の流れ〕
図15は、第2実施形態の発生機20-2が実行する発生機処理の手順例を示すフローチャートである。以下、第1実施形態の
図3の手順例と異なる点を中心に説明する。
【0119】
ステップS20:受信処理が実行される。この処理では、受信機21が、集音機10の送信機13から送信されてきた音の波形のデータを受信する。
【0120】
ステップS21の第2環境音集音処理は、
図3のステップS21の処理内容と同様である。次のステップS12の第1データ変換処理は、
図2のステップS12の処理内容と同様である。次以降のステップS22~ステップS25の第2データ変換処理、音変換処理、オーディオ信号変換処理、出力処理は、
図3のステップS22~ステップS25の処理内容と同様である。このように、第2実施形態の発生機20-2が実行する発生機処理では、第1データ変換処理が追加されている点が、第1実施形態の処理と異なっている。
【0121】
図16は、第2実施形態の環境音快音化システム100-2の集音機10-2及び発生機20-2の配置例を示す図である。第2実施形態では、現場近隣の住居のベランダ205で騒音を集音する場合を想定している。ベランダ205で騒音を集音する場合、ベランダ205に集音機10-2を設置し、現場近隣の住居の室内210に発生機20-2を設置する。工事現場200で発生する工事騒音S0(第1環境音)は、集音マイク11で集音され、送信機13と受信機21との通信により、受信機21に送信され、快音化回路12により第1データに変換され、室内用適正化回路23により第2データに変換され、オーディオ信号に変換されて、スピーカ26から第2快音化音源として出力される。本配置例では、現場に集音機10-2を配置していないため(現場にデジタルサイネージを配置していないため)、快音化回路12は発生機20-2側に配置している。
【0122】
第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、快音化回路12(第1変換部)は、発生機20-2に設けられているため、集音機10-2に快音化回路12(第1変換部)を設ける必要がなくなり、集音機10-2側の処理負担や実装負担を軽減させることができる。また、第2実施形態は、特定の部屋(例えば1つの部屋)だけ騒音対策をしたい場合に有効であり、デジタルサイネージを現場に取り付けなくてもよくなる。一方、第1実施形態は、多くの部屋に第1データを送信したい場合に有効であり、快音化回路12は1個で足りる。
【0123】
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。
【0124】
上述した実施形態においては、オーディオ信号の出力を敢えて遅延させ、騒音が集音されてから所定時間経過後のタイミングでオーディオ信号を出力しているが、これに代えて、オーディオ信号を即時で出力してもよい。この場合には、利用者に騒音が聞こえるのとほぼ同時に第1快音化音源や第2快音化音源が出力されることとなる。
【0125】
上述した実施形態においては、特徴情報入力部14や特徴情報入力部24にタッチパネルを採用しているが、これに代えて、ディスプレイに操作メニューを表示するとともに、マウスやキーボード等の入力機器を用いて操作メニューに対する操作を受け付けることにより、利用者による特徴情報の入力を受け付けてもよい。
【0126】
サッシの透過損失は、どのようなサッシでも概ね同じ値になることがあるため、そのような場合には、発生機20に室内観測用マイク22を設けなくてもよい。この場合、室内用適正化回路23には、室内音(第2環境音)の情報が入力されなくなるため、室内用適正化回路23は、室内音の情報の代わりに予め定めた数値(定数、フィルタ)で第1データを第2データに変換することができる。ただし、サッシだけではなく、カーテンやその他の遮蔽物も透過損失に影響を及ぼす場合もあるため、そのような場合には、室内観測用マイク22を使用することによって、どの程度、音が遅延しているかということや、どの程度、音が損失しているかということをより正確に把握することができる。
【0127】
第1の場所は、屋外であってもよく室内であってもよい。第2の場所は、屋外であってもよく室内であってもよい。
【0128】
その他、実施形態において図示とともに挙げたものはいずれも、あくまで好ましい一例であり、本発明の実施に際して適宜に変形が可能である。
【符号の説明】
【0129】
10、10-2 集音機
11 集音マイク
12 快音化回路
13 送信機
14 特徴情報入力部
15 音変換部
16 スピーカ
17 屋外配信部
20、20-2 発生機
21 受信機
22 室内観測用マイク
23 室内用適正化回路
24 特徴情報入力部
25 音変換部
26 スピーカ
27 室内配信部
100、100-2 環境音快音化システム
DS デジタルサイネージ
S0 工事騒音
S1 第1快音化音源
S2 第2快音化音源