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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168430
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】接続端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20241128BHJP
   H01R 4/70 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R4/70 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085118
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智彦
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB01
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD14
5E085EE07
5E085FF01
5E085GG07
5E085HH27
5E085JJ19
5E085JJ47
5E085JJ50
(57)【要約】
【課題】金属板を屈曲させて形成しても、クラックなどを生じさせることなくその首部からの防食材の流失を防止することができる。接続端子を提供すること。
【解決手段】金属板を屈曲させて形成された接続端子1Aであり、相手端子と電気的に接続される端子接続部3と、電線2の被覆2bの先端縁から延出された芯線2aを加締める芯線加締部5と、端子接続部3と芯線加締部5との間に設けられて芯線2aの先端部が配置される首部4と、を備えている。接続端子1Aは、首部4の両側部にそれぞれ配置されて端子接続部3と芯線加締部5との間の空間を仕切る、少なくとも芯線加締部5とは独立している一対の側壁9aをさらに備えている。一対の側壁9aは、端子接続部3の後端両側部(又は首部4の両側縁)からそれぞれ延出されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を屈曲させて形成された接続端子であって、
相手端子と電気的に接続される端子接続部と、
電線の被覆の先端縁から延出された芯線を加締める芯線加締部と、
前記端子接続部と前記芯線加締部との間に設けられて、前記芯線の先端部が配置される首部と、
前記首部の両側部にそれぞれ配置されて前記端子接続部と前記芯線加締部との間の空間を仕切る、少なくとも前記芯線加締部とは独立している一対の側壁と、を備えており、
一対の前記側壁は、前記端子接続部の後端両側部又は前記首部の両側縁からそれぞれ延出されている、接続端子。
【請求項2】
一対の前記側壁が、前記端子接続部の後端両側部及び前記首部の両側縁の双方からそれぞれ延出される形態で形成されている、請求項1に記載の接続端子。
【請求項3】
前記金属板の厚さが1.0mm以上である、請求項1又は2に記載の接続端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の端部に取り付けられる接続端子に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の芯線の金属とこの電線の端部に取り付けられる接続端子の金属とが異なる場合、ガルバニック腐食が生じる可能性がある。そこで、両者の金属の接続部に防食材を塗布することで腐食を防止することが行われている。下記特許文献1は、このような接続端子を開示している。
【0003】
特許文献1の接続端子は、プレスで打ち抜かれた金属板を複数回のプレスによって折り曲げることで形成される。接続端子は、その先端側から、端子接続部、首部、芯線加締部及び被覆加締部を備えている。端子接続部は、相手端子との電気的接続部である。首部は後述する芯線加締部との間に形成され、首部には芯線の先端が配置される。芯線加締部は、電線の被覆の先端縁から延出された芯線を加締める部分であり、芯線と接続端子との電気的接続が形成される部分である。被覆加締部は、電線の被覆部を加締める部分であり、芯線加締部のみで十分な接合強度が得られる場合は設けられない場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-103220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の接続端子と芯線とは異種金属で形成されており、いわゆるガルバニック腐食を生じる可能性がある。ガルバニック腐食は異種金属間に水分などに含まれる電解質が介入すると電位差が生じて腐食する。このため、首部に配置される芯線の先端に防食材が塗布され、芯線が水分と触れるのを防止して腐食を防止する。首部両側縁には端子接続部及び芯線加締部の両方に連続する一対の側壁が形成されており、塗布した防食材が固化するまでに防食材が側方から流失してしまうことが抑止される。
首部両側縁には端子接続部及び芯線加締部の両方に連続する一対の側壁が形成される場合、芯線加締部の加締め時に首部に形成される側壁にクラックが生じるおそれがある。しかし、首部に側壁が形成されないと、首部からの防食材の流失が懸念される。
【0006】
本発明の目的は、金属板から形成される接続端子において、首部からの防食材の流失を防止することのできる接続端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る接続端子は、金属板を屈曲させて形成され、相手端子と電気的に接続される端子接続部と、電線の被覆の先端縁から延出された芯線を加締める芯線加締部と、前記端子接続部と前記芯線加締部との間に設けられて、前記芯線の先端部が配置される首部と、前記首部の両側部にそれぞれ配置されて前記端子接続部と前記芯線加締部との間の空間を仕切る、少なくとも前記芯線加締部とは独立している一対の側壁と、を備えており、一対の前記側壁は、前記端子接続部の後端両側部又は前記首部の両側縁からそれぞれ延出されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る接続端子によれば、金属板を屈曲させて形成しても、クラックなどを生じさせることなくその首部からの防食材の流失を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態に係る接続端子の斜視図である。
図2】上記接続端子の側面図である。
図3】上記接続端子の平面図である。
図4】上記接続端子の展開図である。
図5】第二実施形態に係る接続端子の斜視図である。
図6】上記接続端子の側面図である。
図7】上記接続端子の平面図である。
図8】上記接続端子の展開図である。
図9】第三実施形態に係る接続端子の斜視図である。
図10】上記接続端子の側面図である。
図11】上記接続端子の平面図である。
図12】上記接続端子の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて実施形態に係る接続端子について詳細に説明する。なお、下記の説明における「上下左右」については説明のための図中の上下左右であり、接続端子を設置する向きを限定するものではない。
【0011】
まず、図1図4を参照しつつ、第一実施形態に係る接続端子1Aについて説明する。なお、図1及び図2は、電線2の端部に取り付けられた状態の接続端子1Aを示している。図3は、電線2に取り付けられる前の単体状態の接続端子1Aを示している。図4は、接続端子1Aとして形成される前の状態の打ち抜かれた金属板1aを示している。本実施形態では、金属板1aは銅製又は銅合金製であり、折り曲げられて接続端子1Aとして形成されるまでには銅の酸化を防止するために表面にメッキが施される。一方、電線2の芯線2aはアルミニウム製又はアルミニウム合金製である。従って、接続端子1Aと芯線2aとは異種金属であり、上述したガルバニック腐食が生じる可能性がある。このため、ガルバニック腐食を防止するために、接続端子1Aが電線2に取り付けられた後に、上述した特許文献1と同様に防食材8が塗布される。防食材8については追って説明する。
【0012】
接続端子1Aは、図4に示されるプレスにより打ち抜かれた金属板1aを複数回折り曲げることで形成される。ここで、本実施形態の金属板1aの厚さは、1.0mm以上と厚く、具体的には1.2mmである。接続端子1Aは、その先端側から、端子接続部3、首部4、芯線加締部5、加締中間部6及び被覆加締部7を備えている。端子接続部3は、相手端子との電気的接続部であり、様々な形態を採り得るが、本実施形態では箱型のメス端子である。
【0013】
芯線加締部5は、電線2の被覆2bの先端縁から延出された芯線2aを加締める部分であり、芯線2aと接続端子1Aとの電気的接続が形成される部分である。本実施形態の芯線加締部5はオープンバレル型の加締部であり、加締められる前は底の丸まったV字状の形態を有している(図3の状態)。このV字状の形態の一対の先端部が芯線2aに食い込むように丸められて加締められる(図1及び図2の状態)。
【0014】
芯線加締部5の内面には、セレーションとも呼ばれる複数の凹溝が形成されている(図3参照)。これらの凹溝が形成されているので、芯線加締部5が加締められると、芯線2aが凹溝に食い込んで電線2に引張力が作用しても電線2が接続端子1Aから抜け難くなる。また、芯線2aの表面に酸化皮膜が形成されていても、芯線2aが酸化皮膜を破って凹溝に食い込ので、これらの凹溝は芯線加締部5での接続端子1Aと電線2との電気的接続を担保する機能もある。
【0015】
端子接続部3と芯線加締部5との間に設けられる首部4は両者を繋ぐ部分であり、首部4には必然的に芯線2aの先端が配置されることになる。首部4は上方に開放された形となり、芯線2aの先端部はそのままでは露出されてしまう。このため、接続端子1Aが収納されるコネクタハウジング内に侵入した水分や空気中の水分によってガルバニック腐食が生じる可能性がある。ガルバニック腐食を防止するために、後述する防食材8が用いられる。
【0016】
被覆加締部7は、電線2の被覆2bを加締める部分である。本実施形態の被覆加締部7はオープンバレル型の加締部であり、加締められる前は底の丸まったV字状の形態を有している(図3の状態)。このV字状の部分が被覆2bを保持するように加締められる(図1及び図2の状態)。被覆加締部7の内面にもセレーションとも呼ばれる複数の凹溝が形成されている(図3参照)。これらの凹溝が形成されているので、被覆加締部7が加締められると、被覆2bが凹溝に食い込んで電線2に引張力が作用しても電線2が接続端子1Aから抜け難くなる。
【0017】
芯線加締部5及び被覆加締部7の内部に形成される凹溝は、図4に示されるように、金属板1aをプレスで打ち抜く際に同時に形成される。なお、図4には、金属板1aをプレスで打ち抜く際に残されるランナー10も示されている。図4では、隣の金属板1aは切除されているが、接続端子1Aは、複数の金属板1aがランナー10で繋がれた状態で製造される。金属板1aに施されるメッキは、複数の金属板1aがランナー10に繋がれた状態で行われる。また、金属板1aの折り曲げも複数の金属板1aがランナー10に繋がれた状態で行われる。
【0018】
さらに、図4に示される端子接続部3の接続片3aは、相手端子と主たる接触部分である。本実施形態では、相手端子はタブ状のオス端子である。この部分はそれ自身の弾性復元性で相手端子との接触を維持する。このため、接続片3aの部分のみはより適切な弾性復元性を発現するように局所的に薄くされている(厚さ0.7mm)。接続端子1Aは上述したように、厚い(厚さ1.0mm以上の)金属板1aを折り曲げて形成されるが、首部4の近傍以外の部分にこのような局所的に薄い部分が形成されてもよい。
【0019】
芯線加締部5と被覆加締部7との間に設けられる加締中間部6は両者を繋ぐ部分であり、必然的に首部4には被覆2bの先端縁が配置されることになる。被覆加締部7は上方に開放された形となり、被覆2bの先端縁から延出される芯線2aの一部はそのままでは露出されてしまう。このため、ガルバニック腐食を防止するために、この部分にも後述する防食材8が用いられる。加締中間部6は底の丸まったV字状の芯線加締部5及び被覆加締部7の間に位置するため、加締中間部6の両側縁は図1及び図2に示されるように湾曲しつつ立ち上がっている。
【0020】
芯線2aが水分と接触しないように、図2に示されるように、防食材8が塗布される。本実施形態では、UV硬化型の防食材8が用いられる。防食材8は、芯線2aが露出している首部4及び加締中間部6に加えて、それらの中間の芯線加締部5にも塗布される。芯線加締部5の合わせ目から水分が侵入する可能性もあるため、芯線加締部5にも防食材8が塗布される。本実施形態では、首部4からの防食材8の流失を防止するために、一対の側壁9aが端子接続部3の後端両側部から首部4側に延出されている。
【0021】
一対の側壁9aは、首部4の両側部にそれぞれ配置されて端子接続部3と芯線加締部5との間の空間を仕切っている。即ち、一対の側壁9aは、首部4の上方空間の両側部を仕切っている。これらの側壁9aによって、首部4に塗布された防食材8の側方への流失が防止される。側壁9aの下縁と首部4との間や側壁9aの先端と芯線加締部5との間に僅かな隙間は形成されるが、防食材8の粘性や表面張力などにより防食材8は首部4上に保持される。防食材8が首部4上に保持された状態でUV照射が行われて防食材8が硬化される。
【0022】
UV照射時には、芯線加締部5に塗布された防食材8や加締中間部6に塗布された防食材8も同時に硬化される。なお、芯線加締部5に塗布された防食材8は、折り曲げられた芯線加締部5の合わせ目からの水分の浸入を防止できればよく、防食材8は合わせ目の凹溝状の部分に保持されるので防食材8の流失は抑止される。また、加締中間部6の芯線2a及び被覆2b上に塗布された防食材8も、湾曲する加締中間部6によって受け止められるので防食材8の流失は抑止される。
【0023】
芯線加締部5と連続する側壁を首部4の両側縁に設けると、芯線加締部5の加締め時に側壁に応力が作用してクラックが入りやすくなる。クラックが進行すれば首部4が破断して接続端子1Aが正常に機能しないおそれがある。このため、本実施形態では、一対の側壁9aを端子接続部3から延出させることで一対の側壁9aを芯線加締部5と独立させてこのような問題を回避しつつ、側壁9aによって防食材8の流失を防止することができる。特に、接続端子1Aを形成する金属板1aが厚い(1.0mm以上である)と、芯線加締部5と連続する側壁を首部4の両側縁に設けると、芯線加締部5の加締め時に側壁に応力が作用してクラックがより一層入りやすくなる。したがって、本実施形態のように金属板1aが厚い(1.0mm以上である)場合は、クラックの防止効果が高い。
【0024】
また、もし仮に、首部4の両側縁に端子接続部3と芯線加締部5の両方に連続する側壁を設けると、芯線加締部5の加締め時に側壁を介して端子接続部3に変形が生じる可能性がある。このような変形が生じると、接続端子1Aをコネクタハウジングに収納する際に正常に挿入することができないおそれがある。あるいは、端子接続部3に相手端子を接続しにくくなるおそれもある。本実施形態では、一対の側壁9aが芯線加締部5と独立しているため、このような問題も回避できる。さらに、一対の側壁9aが首部4とも芯線加締部5とも独立しているため、金属板1aを折り曲げて接続端子1Aを形成する際に、曲げ加工性を向上することもできる。また、側壁9aによって芯線2aの先端の広がりを抑止できるので、芯線加締部5の加締め作業や防食材8の塗布作業の作業性を向上させることもできる。
【0025】
なお、ここに言う「側壁9aが芯線加締部5と独立している」とは、側壁9aが芯線加締部5から連続して延出されていないことを意味する。より詳しく言えば、接続端子1Aは図4に示される金属板1aを屈曲させて形成されるが、当該金属板1aにおいて芯線加締部5の部分と側壁の部分とが一体的に連続していないことを意味する。本実施形態では、加締められた芯線加締部5と側壁9aの先端との間には僅かな隙間が形成される。このような僅かな隙間であれば、塗布される防食材8の粘性や表面張力などによって、この隙間からの防食材8の流出は防止される。しかし、芯線加締部5の加締めを阻害しないのであれば、加締められた芯線加締部5と側壁9aの先端とが接触して上述した僅かな隙間が形成されなくても構わない。このような場合でも、「側壁9aは芯線加締部5と独立している」形態である。
【0026】
なお、図3に示されるように、本実施形態の側壁9aは、端子接続部3に対して折り曲げられていない。側壁9aは、単に、端子接続部3の後端両側部から延出されているだけである。しかし、側壁9aと首部4との間の隙間をより狭めるために、側壁9aの先端が内側に位置するように、側壁9aが端子接続部3に対して若干折り曲げられてもよい。
【0027】
次に、図5図8を参照しつつ、第二実施形態に係る接続端子1Bについて説明する。本実施形態の接続端子1Bは、図8に示される金属板1bを折り曲げることで形成されている。本実施形態の接続端子1Bと上述した第一実施形態の接続端子1Aとの違いは、側壁の形成形態のみである。従って、以下には、側壁についてのみ詳しく説明し、その他の同一又は同等の構成については、同一の参照符号を付してそれらの説明を省略する。
【0028】
本実施形態の一対の側壁9bは、首部4の両側縁からそれぞれ延出されている。より詳しくは、一対の側壁9bは、首部4の両側縁からそれぞれ立設されて端子接続部3と芯線加締部5との間の空間を仕切っている。即ち、一対の側壁9bは、首部4の上方空間の両側部を仕切っている。これらの側壁9bによって、首部4に塗布された防食材8の側方への流失が防止される。側壁9bの側縁と端子接続部3との間や側壁9bの側縁と加締められた芯線加締部5との間に僅かな隙間は形成されるが、防食材8の粘性や表面張力などにより防食材8は首部4上に保持される。第一実施形態で説明したように、これらの隙間が形成されずに、側壁9bが端子接続部3と接触したり、側壁9bが加締められた芯線加締部5と接触したりしても構わない。防食材8が首部4上に保持された状態でUV照射が行われて防食材8が硬化される。
【0029】
本実施形態の接続端子1Bによっても、一対の側壁9bを首部4から延出させることで一対の側壁9bを芯線加締部5と独立させて上述したクラックの問題を回避しつつ、側壁9bによって防食材8の流失を防止することができる。また、一対の側壁9bが端子接続部3とも芯線加締部5とも独立しているため、芯線加締部5の加締め時に端子接続部3の変形を生じさせることもない。さらに、一対の側壁9bが端子接続部3とも芯線加締部5とも独立しているため、金属板1bを折り曲げて接続端子1Bを形成する際に、曲げ加工性を向上することもできる。また、上述した芯線加締部5の加締め作業や防食材8の塗布作業の作業性向上も側壁9bによって実現され得る。
【0030】
次に、図9図12を参照しつつ、第三実施形態に係る接続端子1Cについて説明する。本実施形態の接続端子1Cは、図12に示される金属板1cを折り曲げることで形成されている。本実施形態の接続端子1Cと上述した第一実施形態の接続端子1Aや第二実施形態の接続端子1Bとの違いは、側壁の形成形態のみである。従って、以下には、側壁についてのみ詳しく説明し、その他の同一又は同等の構成については、同一の参照符号を付してそれらの説明を省略する。
【0031】
本実施形態の一対の側壁9cは、端子接続部3の後端両側部及び首部4の両側縁の双方からそれぞれ延出される形態で形成されている。より詳しくは、一対の側壁9cは、端子接続部3及び首部4の両方から延出されて端子接続部3と芯線加締部5との間の空間を仕切っている。即ち、一対の側壁9cは、首部4の上方空間の両側部を仕切っている。これらの側壁9cによって、首部4に塗布された防食材8の側方への流失が防止される。側壁9cと加締められた芯線加締部5との間に僅かな隙間は形成されるが、防食材8の粘性や表面張力などにより防食材8は首部4上に保持される。第一実施形態で説明したように、これらの隙間が形成されずに、側壁9cが加締められた芯線加締部5と接触しても構わない。防食材8が首部4上に保持された状態でUV照射が行われて防食材8が硬化される。
【0032】
本実施形態の接続端子1Cによっても、一対の側壁9cを端子接続部3及び首部4の双方から延出させることで一対の側壁9cを芯線加締部5と独立させて上述したクラックの問題を回避しつつ、側壁9cによって防食材8の流失を防止することができる。また、一対の側壁9cが芯線加締部5と独立しているため、芯線加締部5の加締め時に端子接続部3の変形を生じさせることもない。また、上述した芯線加締部5の加締め作業や防食材8の塗布作業の作業性向上も側壁9cによって実現され得る。
【0033】
さらに、一対の側壁9cは首部4とも芯線加締部5とも独立しているため、金属板1cを折り曲げて接続端子1Cを形成する際に、曲げ加工性を向上することもできる。ただし、第一実施形態では側壁9aは端子接続部3からのみ延出されて、側壁9a自体は折り曲げられない。第二実施形態では側壁9bは首部4からのみ延出されて首部4に対してのみ折り曲げられる。これに対して、本実施形態では側壁9cは端子接続部3及び首部4の双方から延出されて、双方に対して折り曲げられることになる。このため、側壁9a~9cのみの曲げ加工性に関しては、第一及び第二実施形態の方が折り曲げやすいかもしれない。しかし、本実施形態では、側壁9cと加締められた芯線加締部5との間にしか隙間が形成されないため、より確実に防食材8の流失を防止することができる。
【0034】
上記実施形態の接続端子1A~1Cは、金属板1a~1cを屈曲させて形成される。接続端子1A~1Cは、相手端子と電気的に接続される端子接続部3と、電線2の被覆2bの先端縁から延出された芯線2aを加締める芯線加締部5と、端子接続部3と芯線加締部5との間に設けられて、芯線2aの先端部が配置される首部4とを備えている。接続端子1A~1Cは、首部4の両側部にそれぞれ配置されて端子接続部3と芯線加締部5との間の空間を仕切る、少なくとも芯線加締部5とは独立している一対の側壁9a~9cをさらに備えている。一対の側壁9a~9cは、端子接続部3の後端両側部又は首部4の両側縁からそれぞれ延出されている。
【0035】
上記実施形態の接続端子1A~1Cによれば、首部4に塗布された防食材8が硬化されるまでに防食材8が首部4から流失してしまうのを一対の側壁9a~9cによって防止することができる。ここで、接続端子1A~1Cは、金属板1a~1cから形成されるが、側壁9a~9cが芯線加締部5とは独立しているため、芯線加締部5の加締め時に側壁9a~9cにクラックが生じることを防止できる。また、側壁9a~9cが芯線加締部5とは独立しているため、芯線加締部5の加締め時に端子接続部3が側壁9a~9cを介して変形してしまうこともない。また、側壁9a~9cが芯線加締部5とは独立しているため、金属板1a~1cを折り曲げて接続端子1A~1Cを形成する際に、曲げ加工性を向上することもできる。また、側壁9a~9cによって首部4での芯線2aの広がりを抑止でき、芯線加締部5の加締め作業や防食材8の塗布作業の作業性を向上させることもできる。
【0036】
特に、上記第三実施形態の接続端子1Cでは、一対の側壁9cが、端子接続部3の後端両側部及び首部4の両側縁の双方からそれぞれ延出される形態で形成される。このため、上記第三実施形態の接続端子1Cによれば、側壁9cと加締められた芯線加締部5との間にしか隙間が形成されないため、より確実に防食材8の流失を防止することができる。
【0037】
また、上記実施形態の接続端子1A~1Cによれば、金属板1a~1cの厚さが1.0mm以上である(上記実施形態では1.2mm)。金属板1a~1cの厚さが厚く(1.0mm以上)なると、金属板1a~1cを屈曲させて接続端子1A~1Cを形成する際に、金属板1a~1cにクラックが入りやすくなる。しかし、このようにクラックが入りやすい厚さが1.0mm以上の金属板を用いたとしても、側壁9a~9cが芯線加締部5とは独立しているため、芯線加締部5の加締め時に側壁9a~9cにクラックが生じることを確実に防止できる。
【0038】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で用いられた防食材8はUV硬化型の防食材であった。しかし、空気中の水分との反応で硬化する防食材や、含有されている水分や溶剤の気化により硬化する防食材など様々な防食材があり、本発明の接続端子によればこれらの様々な防食材に対応することができる。
【符号の説明】
【0039】
1A~1C 接続端子
1a~1c 金属板
2 電線
2a 芯線
2b 被覆
3 端子接続部
4 首部
5 芯線加締部
7 被覆加締部
8 防食材
9a~9c 側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12