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特開2024-168432音場補正装置および音場補正プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168432
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】音場補正装置および音場補正プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04S 5/02 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H04S5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085121
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100183760
【弁理士】
【氏名又は名称】山鹿 宗貴
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 哲生
【テーマコード(参考)】
5D162
【Fターム(参考)】
5D162AA06
5D162AA07
5D162BA07
5D162CA21
5D162DA23
5D162EG04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】音像定位を改善しつつ音の広がり感のバランスが崩れることを抑える音場補正装置および音場補正プログラムを提供する。
【解決手段】オーディオ信号の位相を周波数毎に調整するための位相制御データに基づいて音場を補正する音場補正装置2であって、ステレオ信号から、モノラル成分の信号である第1のモノラル信号およびステレオ成分の信号であるRチャンネル信号とLチャンネル信号を抽出する信号抽出部と、位相制御データを用いて第1のモノラル信号の位相を周波数毎に調整することにより第2のモノラル信号を生成する位相制御部と、第2のモノラル信号とRチャンネル信号とを合成し、第2のモノラル信号とLチャンネル信号とを合成する信号合成部を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ信号の位相を周波数毎に調整するための位相制御データに基づいて音場を補正する音場補正装置において、
ステレオ信号から、モノラル成分の信号である第1のモノラル信号およびステレオ成分の信号であるRチャンネル信号とLチャンネル信号を抽出する信号抽出部と、
前記位相制御データを用いて前記第1のモノラル信号の位相を周波数毎に調整することにより第2のモノラル信号を生成する位相制御部と、
前記第2のモノラル信号と前記Rチャンネル信号とを合成し、前記第2のモノラル信号と前記Lチャンネル信号とを合成する信号合成部と、を備える、
音場補正装置。
【請求項2】
前記位相制御データに基づいてゲインを設定するゲイン設定部と、
設定されたゲインで前記Rチャンネル信号および前記Lチャンネル信号を増幅する信号増幅部と、を更に備え、
前記信号合成部は、前記信号増幅部による増幅後の前記Rチャンネル信号、前記Lチャンネル信号のそれぞれを、前記第2のモノラル信号と合成する、
請求項1に記載の音場補正装置。
【請求項3】
前記ゲイン設定部は、
前記位相制御データにより位相が調整される周波数帯域が所定帯域幅よりも広い場合、前記ゲインを第1の値に設定し、
前記位相制御データにより位相が調整される周波数帯域が前記所定帯域幅以下の場合、前記ゲインを前記第1の値よりも小さい第2の値に設定する、
請求項2に記載の音場補正装置。
【請求項4】
前記ゲイン設定部は、前記位相制御データにより位相が調整される周波数帯域が広いほど前記ゲインを大きい値に設定する、
請求項2に記載の音場補正装置。
【請求項5】
前記ステレオ信号から所定の第1の周波数帯域の信号を抽出するフィルタ部を更に備え、
前記信号抽出部は、前記第1の周波数帯域の信号から前記第1のモノラル信号および前記Rチャンネル信号と前記Lチャンネル信号を抽出し、
前記信号合成部は、
前記位相制御部で生成された前記第2のモノラル信号、前記ステレオ信号のうち周波数帯域が前記第1の周波数帯域よりも低い低域信号、前記ステレオ信号のうち周波数帯域が前記第1の周波数帯域よりも高い高域信号および前記Rチャンネル信号を合成し、
前記位相制御部で生成された前記第2のモノラル信号、前記低域信号、前記高域信号および前記Lチャンネル信号を合成する、
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の音場補正装置。
【請求項6】
前記位相制御データにより位相が調整される周波数帯域に基づいて前記第1の周波数帯域を設定する周波数帯域設定部を更に備える、
請求項5に記載の音場補正装置。
【請求項7】
オーディオ信号の位相を周波数毎に調整するための位相制御データに基づいて音場を補正する音場補正プログラムにおいて、
ステレオ信号から、モノラル成分の信号である第1のモノラル信号およびステレオ成分の信号であるRチャンネル信号とLチャンネル信号を抽出し、
前記位相制御データを用いて前記第1のモノラル信号の位相を周波数毎に調整することにより第2のモノラル信号を生成し、
前記第2のモノラル信号と前記Rチャンネル信号とを合成し、前記第2のモノラル信号と前記Lチャンネル信号とを合成する、処理を、コンピュータに実行させる、
音場補正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音場補正装置および音場補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車室内には複数の位置にスピーカが設置されている。例えば、右ドア部(運転席側ドア部)の右フロントスピーカと左ドア部(助手席側ドア部)の左フロントスピーカは、車室空間の中心線を挟んで対称となる位置に設置されている。しかし、これらのスピーカは、リスナの聴取位置(運転席や助手席、後部座席など)を基準に考えると、対称となる位置にはない。
【0003】
例えばリスナが運転席に座る場合、右フロントスピーカとリスナとの距離と、左フロントスピーカとリスナとの距離は等しい距離にはならない。右ハンドル車の場合、前者の距離が後者の距離よりも短い。そのため、両ドア部のスピーカから音が同時に出力されると、運転席に座るリスナの耳には、右フロントスピーカから出力された音が届き、その後、左フロントスピーカから出力された音が届くことが一般的である。リスナの聴取位置と複数のスピーカのそれぞれとの間の距離の差(各スピーカから放出された再生音が到達する時間の差)により、ハース効果による音像定位の偏りが発生する。
【0004】
このような音像定位の偏りを改善する音場補正装置が知られている。例えば特許文献1に記載の音場補正装置は、各スピーカに出力されるオーディオ信号の位相を周波数毎に調節することによって音像定位を改善する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-106359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の音場補正装置では、オーディオ信号の位相を周波数毎に調節することにより、左右のスピーカからの出力音の位相差が整えられて音像定位が改善する一方、音の広がり感のバランスが崩れる場合がある。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑み、音像定位を改善しつつ音の広がり感のバランスが崩れることを抑えることができる音場補正装置および音場補正プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る音場補正装置は、オーディオ信号の位相を周波数毎に調整するための位相制御データに基づいて音場を補正する装置であり、ステレオ信号から、モノラル成分の信号である第1のモノラル信号およびステレオ成分の信号であるRチャンネル信号とLチャンネル信号を抽出する信号抽出部と、位相制御データを用いて第1のモノラル信号の位相を周波数毎に調整することにより第2のモノラル信号を生成する位相制御部と、第2のモノラル信号とRチャンネル信号とを合成し、第2のモノラル信号とLチャンネル信号とを合成する信号合成部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、音像定位を改善しつつ音の広がり感のバランスが崩れることを抑えることができる音場補正装置および音場補正プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る音場補正システムが設置された車両を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る音場補正システムの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る音場補正装置の機能ブロック図である。
図4】本発明の一実施形態においてプレイヤより入力されるステレオ信号を各スピーカに接続されたD/Aコンバータに出力するまでの信号の流れを示すブロック図である。
図5】インパルス応答に基づいて測定された周波数毎の位相シフト値の一例を示す図である。
図6図4の信号処理の流れを示すフローチャートである。
図7】本発明の変形例1においてプレイヤより入力されるステレオ信号を各スピーカに接続されたD/Aコンバータに出力するまでの信号の流れを示すブロック図である。
図8】本発明の変形例2においてプレイヤより入力されるステレオ信号を各スピーカに接続されたD/Aコンバータに出力するまでの信号の流れを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明は、本発明の一実施形態に係る音場補正装置および音場補正プログラムに関する。なお、共通の又は対応する要素については、同一又は類似の符号を付して、重複する説明を適宜簡略又は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る音場補正システム1が設置された車両A(一例として右ハンドル車)を模式的に示す図である。図2は、この音場補正システム1の構成を示すブロック図である。
【0013】
車両Aの車室内に、4つの座席が設置される。具体的には、車室内の一列目に運転席SFR、助手席SFLが設置され、2列目(後部座席列)に2つの座席が設置される。2つの座席は、運転席後方の右後部座席SRR、助手席後方の左後部座席SRLである。
【0014】
図1及び図2に示されるように、音場補正システム1は、音場補正装置2および4基のスピーカSPを備える。
【0015】
4基のスピーカSPは、スピーカSPFR、SPFL、SPRR、SPRLである。スピーカSPFRは、右フロントドア部に埋設された右フロントスピーカである。スピーカSPFLは、左フロントドア部に埋設された左フロントスピーカである。スピーカSPRRは、右リアドア部に埋設された右リアスピーカである。スピーカSPRLは、左リアドア部に埋設された左リアスピーカである。
【0016】
音場補正装置2は、本発明の一実施形態に係る音場補正方法および音場補正プログラムを実行するコンピュータの一例である。音場補正装置2は、オーディオ装置であってもよく、また、ナビゲーション装置やIVI(In-Vehicle Infotainment)の一部をなす装置であってもよい。また、音場補正装置2は、車載型の装置に限らない。音場補正装置2は、スマートフォン、フィーチャフォン、タブレット端末、PC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistant)、PND(Portable Navigation Device)、携帯ゲーム機などの他の形態の装置であってもよい。
【0017】
音場補正装置2は、スピーカSPFR、SPFLに対応するIIR(Infinite Impulse Response)型オールパスフィルタを用いた位相制御により、ターゲット位置(運転席SFR、助手席SFL)における音場補正を行う。また、音場補正装置2は、スピーカSPRR、SPRLに対応するIIR型オールパスフィルタを用いた位相制御により、ターゲット位置(右後部座席SRR、左後部座席SRL)における音場補正を行う。
【0018】
本実施形態では、運転席SFR、助手席SFL、右後部座席SRR、左後部座席SRLの位置は、位相制御データに基づく音場補正の対象となるターゲット位置である。何れの座席位置をターゲット位置とするかは、例えば、車種や移動体の形態(例えば、乗用車、バス、トラック、飛行機)等に応じて適宜変更することができる。
【0019】
音場補正用のIIRフィルタのフィルタ係数は、例えば、特許文献1に記載の方法で演算されて、音場補正装置2のフラッシュメモリ16に予め格納されている。
【0020】
座席の左右に位置するスピーカSPの配置は、何れのターゲット位置に対しても対称にはならない。このようなリスニング環境では、何れのターゲット位置でも音像定位の偏りが発生する。そこで、本実施形態では、IIR型オールパスフィルタを用いた位相制御を行う。対応するスピーカ対に出力されるオーディオ信号の位相を周波数毎に調節することにより、ターゲット位置で音像定位が改善される。
【0021】
このような位相制御をオーディオ信号全体に対して行うと、モノラル成分(ボーカル、メインの楽器など)の音像定位が改善する。また、ステレオ成分に対しても位相を調整したことの影響が出てしまい、音の広がり感のバランスが崩れることがある。音の広がり感のバランスが崩れるとは、例えば、左右スピーカが埋設されるドア部に音像が張り付くような状態となり、音の広がり感が不自然になってしまうことなどである。
【0022】
そこで、音場補正装置2は、ステレオ信号から、モノラル成分の信号である第1のモノラル信号およびステレオ成分の信号であるRチャンネル信号とLチャンネル信号を抽出し、位相制御データ(オーディオ信号の位相を周波数毎に調整するためのデータ)を用いて第1のモノラル信号の位相を周波数毎に調整することにより第2のモノラル信号を生成し、第2のモノラル信号とRチャンネル信号とを合成し、第2のモノラル信号とLチャンネル信号とを合成する、という一連の処理を実行する。
【0023】
図2に示されるように、音場補正装置2は、制御部10、プレイヤ11、D/Aコンバータ12、アンプ13、表示部14、操作部15およびフラッシュメモリ16を備える。
【0024】
音場補正装置2は、図2に示されていない他の構成を備えたものであってもよい。すなわち、音場補正装置2の態様には自由度があり、各種の設計変更が可能である。
【0025】
プレイヤ11は、音源と接続される。プレイヤ11は、音源より入力されるオーディオ信号を再生して、制御部10に出力する。
【0026】
音源は、例えば、デジタルオーディオデータを格納したCD(Compact Disc)、SACD(Super Audio CD)等のディスクメディア、HDD(Hard Disk Drive)、USB(Universal Serial Bus)等のストレージメディア、スマートフォン、タブレット端末、ネットワークを介してストリーム配信を行うサーバなどである。
【0027】
制御部10は、例えば、LSI(Large Scale Integration)として構成されており、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを備える。
【0028】
制御部10は、RAMのワークエリアに展開されたプログラムを実行する。制御部10により実行されるプログラムには、本発明の一実施形態に係る音場補正プログラム100が含まれる。
【0029】
制御部10は、例えばシングルプロセッサまたはマルチプロセッサであり、少なくとも1つのプロセッサを含む。複数のプロセッサを含む構成とした場合、制御部10は、単一の装置としてパッケージ化されたものであってもよく、音場補正装置2内で物理的に分離した複数の装置で構成されてもよい。
【0030】
制御部10によるフィルタ処理後のオーディオ信号は、D/Aコンバータ12によりアナログ信号に変換される。このアナログ信号は、アンプ13で増幅されて、各スピーカSPに出力される。これにより、例えば音源に収録された楽曲が各スピーカSPから車室内で再生される。
【0031】
表示部14は、各種画面を表示する装置であり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)などのディスプレイを含む。表示部14は、タッチパネルを含む構成としてもよい。
【0032】
操作部15は、メカニカル方式、静電容量無接点方式、メンブレン方式等のスイッチ、ボタン、ノブ、ホイール等の操作子を含む。表示部14がタッチパネルを含む場合、このタッチパネルも操作部15の一部をなす。
【0033】
フラッシュメモリ16は、各種プログラムおよび各種データを格納する。一例として、フラッシュメモリ16は、音場補正用のIIRフィルタのフィルタ係数を格納する。
【0034】
図3は、音場補正装置2の機能ブロック図である。音場補正装置2は、図3に示されるように、機能ブロックとして、信号抽出部110、位相制御部120、ゲイン設定部130、信号増幅部140および信号合成部150を含む。各機能ブロックは、コンピュータの一例である音場補正装置2が実行する音場補正プログラム100により実現される。各機能ブロックは、一部または全部が専用の論理回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0035】
信号抽出部110は、プレイヤ11より入力されるステレオ信号から、モノラル成分の信号である第1のモノラル信号およびステレオ成分の信号であるRチャンネル信号とLチャンネル信号を抽出する。
【0036】
位相制御部120は、IIRフィルタに位相制御データ(フィルタ係数)を適用して第1のモノラル信号の位相を周波数毎に調整することにより、第2のモノラル信号を生成する。
【0037】
ゲイン設定部130は、位相制御データに基づいて、Rチャンネル信号、Lチャンネル信号のそれぞれに対するゲインを設定する。ゲインは、Rチャンネル信号、Lチャンネル信号のそれぞれで個別に設定されてもよく、また、共通で設定されてもよい。
【0038】
例示的には、位相制御データにより位相が調整される周波数帯域が所定帯域幅よりも広い場合、ゲイン設定部130は、ゲインを第1の値に設定する。位相制御データにより位相が調整される周波数帯域が所定帯域幅以下の場合、ゲイン設定部130は、ゲインを第1の値よりも小さい第2の値に設定する。
【0039】
ゲイン設定部130は、位相制御データにより位相が調整される周波数帯域が広いほどゲインを大きい値に設定してもよい。
【0040】
信号増幅部140は、ゲイン設定部130で設定されたゲインでRチャンネル信号およびLチャンネル信号を増幅する。
【0041】
信号合成部150は、位相制御部120により生成された第2のモノラル信号とRチャンネル信号とを合成する。信号合成部150は、位相制御部120により生成された第2のモノラル信号とLチャンネル信号とを合成する。
【0042】
附言するに、信号合成部150は、信号増幅部140による増幅後のRチャンネル信号、Lチャンネル信号のそれぞれを、位相制御部120により生成された第2のモノラル信号と合成する。
【0043】
このように、本実施形態に係る音場補正装置2は、ステレオ信号から抽出したモノラル成分に対してだけ位相制御を行うことにより、ボーカルなどのモノラル成分の音像定位を改善しつつ、ステレオ成分に対する位相制御を行わないことで音の広がり感のバランスが崩れることを抑えられる。
【0044】
モノラル成分の音像定位が改善するトレードオフとして、音の広がり感が相対的に減少することがある。そこで、本実施形態に係る音場補正装置2は、位相制御データにより位相が調整される周波数帯域に応じてRチャンネル信号およびLチャンネル信号を増幅することにより、相対的な音の広がり感の減少を補償する。
【0045】
図4は、プレイヤ11より入力されるステレオ信号を各スピーカSPに接続されたD/Aコンバータ12に出力するまでの信号の流れを示すブロック図である。図4に示される構成は、例えば、音源LSIとして構成される制御部10に含まれる。
【0046】
プレイヤ11からのステレオ信号(Rチャンネルのオーディオ信号RとLチャンネルのオーディオ信号L)は、図4に示されるように、モノラル/ステレオ成分抽出部200に入力される。
【0047】
モノラル/ステレオ成分抽出部200は、ステレオ信号から、モノラル成分信号M1(第1のモノラル信号の一例)およびステレオ成分信号R1(Rチャンネル信号の一例)とステレオ成分信号L1(Lチャンネル信号の一例)を抽出する。
【0048】
モノラル/ステレオ成分抽出部200は、例えば和差信号から各成分信号を抽出する。具体的には、モノラル/ステレオ成分抽出部200は、オーディオ信号Rとオーディオ信号Lの和信号(R+L)をモノラル成分信号M1として抽出する。モノラル/ステレオ成分抽出部200は、和信号(R+L)から、オーディオ信号Rとオーディオ信号Lとの差信号(L-R)を減算したものをステレオ成分信号R1として抽出する。モノラル/ステレオ成分抽出部200は、和信号(R+L)と差信号(L-R)を加算したものをステレオ成分信号L1として抽出する。
【0049】
モノラル/ステレオ成分抽出部200で抽出されたモノラル成分信号M1は、IIRフィルタ部210およびIIRフィルタ部210に入力される。
【0050】
IIRフィルタ部210、IIRフィルタ部210は、それぞれ、カスケード接続された複数のIIRフィルタを含む。位相制御データの一例であるフィルタ係数がフラッシュメモリ16から読み出されて、各IIRフィルタに適用される。
【0051】
IIRフィルタ部210内のIIRフィルタは、運転席SFRおよび助手席SFLをターゲット位置として、ボーカルなどのモノラル成分の音像を定位させるためのオールパスフィルタとして使用される。IIRフィルタ部210内のIIRフィルタは、右後部座席SRRおよび左後部座席SRLをターゲット位置として、ボーカルなどのモノラル成分の音像を定位させるためのオールパスフィルタとして使用される。
【0052】
本実施形態において音場補正のために用いられるオールパスフィルタ(IIRフィルタ)のフィルタ係数は、例えば、特許文献1に記載の方法で演算されて、音場補正装置2のフラッシュメモリ16に予め格納されている。
【0053】
IIRフィルタ部210に入力されたモノラル成分信号M1は、カスケード接続された複数のIIRフィルタによるフィルタ処理により、運転席SFRおよび助手席SFLでモノラル成分の音像定位が適切に得られるように位相制御される。位相制御後のモノラル成分信号M2(第2のモノラル信号の一例)は、ゲイン回路232FRおよび232FLに出力される。
【0054】
ゲイン回路232FRに入力されたモノラル成分信号M2は、ゲイン回路232FRでゲイン調整されて合成回路240FRに入力される。ゲイン回路232FLに入力されたモノラル成分信号M2は、ゲイン回路232FLでゲイン調整されて合成回路240FLに入力される。
【0055】
IIRフィルタ部210に入力されたモノラル成分信号M1は、カスケード接続された複数のIIRフィルタによるフィルタ処理により、右後部座席SRRおよび左後部座席SRLでモノラル成分の音像定位が適切に得られるように位相制御される。位相制御後のモノラル成分信号M2(第2のモノラル信号の一例)は、ゲイン回路232RRおよび232RLに出力される。
【0056】
ゲイン回路232RRに入力されたモノラル成分信号M2は、ゲイン回路232RRでゲイン調整されて合成回路240RRに入力される。ゲイン回路232RLに入力されたモノラル成分信号M2は、ゲイン回路232RLでゲイン調整されて合成回路240RLに入力される。
【0057】
モノラル/ステレオ成分抽出部200で抽出されたステレオ成分信号R1、L1は、それぞれ、ゲイン回路220FR、220FLに入力される。
【0058】
IIRフィルタ部210は、運転席SFRおよび助手席SFLをターゲット位置とした場合にモノラル成分信号M1に適用する、位相制御の周波数帯域(以下「制御帯域」と記す。)を示す情報Iを保持する。制御帯域は、各スピーカSPからの出力音をもとに生成されたインパルス応答に基づいて予め決められている。制御帯域を示す情報Iは、ゲイン回路220FRおよびゲイン回路220FLに入力される。
【0059】
図5は、インパルス応答に基づいて測定された周波数毎の位相シフト値の一例を示す。このような測定結果を参照して制御帯域が決定される。例えば、周波数帯域B1~B3のうち1つまたは2つの周波数帯域が制御帯域として決定される。周波数帯域B1~B3の全てが制御帯域として決定されてもよい。周波数帯域B1~B3の全てが制御帯域として決定された場合、制御帯域幅は、例えば600Hz程度となる。
【0060】
インパルス応答に基づいて測定される位相制御の適用帯域は、ターゲット位置に対する音響空間(本実施形態では車室内空間)の対称性およびスピーカの配置の対称性に依存する。これらの対称性が高いほど、位相制御の適用帯域として広い周波数帯域が測定される。これらの対称性が低いほど、位相制御の適用帯域として狭い周波数帯域が測定される。
【0061】
例示的には、車室内の前列には、ハンドル、レバー、各種計器などが設置される。そのため、車室内の前列は、空間形状が左右非対称となっており、後列と比べて音響空間の対称性が低い。そのため、前列では、後列よりも、位相制御の適用帯域として狭い周波数帯域が測定される。
【0062】
制御帯域幅が広いほどモノラル成分の音像を定位させる効果が高いため、音の広がり感が相対的に減少する。そこで、音場補正装置2は、ステレオ成分のゲインを上げることにより、相対的な音の広がり感の減少を補償する。
【0063】
具体的には、ゲイン回路220FRは、IIRフィルタ部210より入力される情報Iに応じて、モノラル/ステレオ成分抽出部200より入力されるステレオ成分信号R1のゲインを上げる。
【0064】
一例として、情報Iが示す制御帯域幅が広いほど(言い換えると、位相制御データにより位相が調整される周波数帯域が広いほど)、ゲイン回路220FRは、ステレオ成分信号R1のゲインを大きい値に設定する。
【0065】
他の例として、情報Iが示す制御帯域幅が所定幅よりも広い場合(言い換えると、位相制御データにより位相が調整される周波数帯域が所定帯域幅よりも広い場合)、ゲイン回路220FRは、ゲインを第1の値に設定する。情報Iが示す制御帯域幅が所定幅以下の場合、ゲイン回路220FRは、ステレオ成分信号R1のゲインを第1の値よりも小さい第2の値に設定する。
【0066】
本実施形態では、例えば、100Hz未満を低域とし、100Hz以上1000Hz未満を中域とし、1000Hz以上を高域とする。音像定位において聴感上で位相が支配的となるのは中域である。そこで、100Hz以上1000Hz未満のなかで位相制御を行う周波数帯域(制御帯域)が占める割合がN%(一例として50%)を超える場合、情報Iが示す制御帯域幅が所定幅よりも広いものとする。
【0067】
ゲイン回路220FLもゲイン回路220FRと同様に、IIRフィルタ部210より入力される情報Iに応じて、モノラル/ステレオ成分抽出部200より入力されるステレオ成分信号L1のゲインを上げる。
【0068】
ゲイン回路220FRでゲインが上げられたステレオ成分信号R1は、ゲイン回路234FRでゲイン調整されて合成回路240FRに入力される。ゲイン回路220FLでゲインが上げられたステレオ成分信号L1は、ゲイン回路234FLでゲイン調整されて合成回路240FLに入力される。
【0069】
合成回路240FRは、位相制御後のモノラル成分信号M2とゲイン増幅後のステレオ成分信号R1とを合成してイコライザ250FRに出力する。この合成信号(オーディオ信号FR)は、イコライザ250FRでイコライジングされて、D/Aコンバータ12およびアンプ13を介してスピーカSPFRに出力される。
【0070】
合成回路240FLは、位相制御後のモノラル成分信号M2とゲイン増幅後のステレオ成分信号L1とを合成してイコライザ250FLに出力する。この合成信号(オーディオ信号FL)は、イコライザ250FLでイコライジングされて、D/Aコンバータ12およびアンプ13を介してスピーカSPFLに出力される。
【0071】
オーディオ信号FRがスピーカSPFRで再生されるとともにオーディオ信号FLがスピーカSPFLで再生される。これにより、車室内の前列の各ターゲット位置において、ボーカルなどのモノラル成分の音像定位が改善され、かつ音の広がり感の減少が抑えられる。
【0072】
モノラル/ステレオ成分抽出部200で抽出されたステレオ成分信号R1、L1は、それぞれ、ゲイン回路220RR、220RLにも入力される。
【0073】
IIRフィルタ部210は、右後部座席SRRおよび左後部座席SRLをターゲット位置とした場合にモノラル成分信号M1に適用する、位相制御の周波数帯域(制御帯域)を示す情報Iを保持する。
【0074】
モノラル成分信号M1の制御帯域は、車室内の前列と後列で同じであってもよく、また、異なっていてもよい。
【0075】
ゲイン回路220RRは、IIRフィルタ部210より入力される情報Iに応じて、モノラル/ステレオ成分抽出部200より入力されるステレオ成分信号R1のゲインを上げる。ゲイン回路220RLは、IIRフィルタ部210より入力される情報Iに応じて、モノラル/ステレオ成分抽出部200より入力されるステレオ成分信号L1のゲインを上げる。
【0076】
ゲイン回路220RRでゲインが上げられたステレオ成分信号R1は、ゲイン回路234RRでゲイン調整されて合成回路240RRに入力される。ゲイン回路220RLでゲインが上げられたステレオ成分信号L1は、ゲイン回路234RLでゲイン調整されて合成回路240RLに入力される。
【0077】
合成回路240RRは、位相制御後のモノラル成分信号M2とゲイン増幅後のステレオ成分信号R1とを合成してイコライザ250RRに出力する。この合成信号(オーディオ信号RR)は、イコライザ250RRでイコライジングされて、D/Aコンバータ12およびアンプ13を介してスピーカSPRRに出力される。
【0078】
合成回路240RLは、位相制御後のモノラル成分信号M2とゲイン増幅後のステレオ成分信号L1とを合成してイコライザ250RLに出力する。この合成信号(オーディオ信号RL)は、イコライザ250RLでイコライジングされて、D/Aコンバータ12およびアンプ13を介してスピーカSPRLに出力される。
【0079】
オーディオ信号RRがスピーカSPRRで再生されるとともにオーディオ信号RLがスピーカSPRLで再生される。これにより、車室内の後列の各ターゲット位置において、ボーカルなどのモノラル成分の音像定位が改善され、かつ音の広がり感の減少が抑えられる。
【0080】
図6に、図4の信号処理の流れをフローチャートで示す。
【0081】
制御部10は、プレイヤ11より入力されるステレオ信号からモノラル成分信号M1とステレオ成分信号R1、L1を抽出する(ステップS101)。
【0082】
制御部10は、ステップS101で抽出されたモノラル成分信号M1の位相制御を行う(ステップS102)。
【0083】
制御部10は、モノラル成分信号M1に対する制御帯域幅に応じてステレオ成分信号R1、L1のゲインを上げる(ステップS103)。
【0084】
制御部10は、ゲイン増幅後のステレオ成分信号R1、L1のそれぞれを、位相制御後のモノラル成分信号M1と合成する(ステップS104)。
【0085】
制御部10は、ステップS104で得られた合成信号に対してイコライジングを行って(ステップS105)、イコライジング後のオーディオ信号を、D/Aコンバータ12およびアンプ13を介してスピーカSPに出力する。このオーディオ信号がスピーカSPで再生されることにより、車室内の各ターゲット位置において、音の広がり感のバランスを崩すことなくボーカルなどのモノラル成分の音像定位が改善され、かつモノラル成分の音像定位による音の広がり感の減少が抑えられる。
【0086】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0087】
図7は、変形例1に係る音場補正装置2において、プレイヤ11より入力されるステレオ信号を各スピーカSPに接続されたD/Aコンバータ12に出力するまでの信号の流れを示すブロック図である。図7では、便宜上、ステレオ成分信号R1、L1をそれぞれ「信号R1」、「信号L1」と記す。モノラル成分信号M1を「信号M1」と記す。低域成分信号R2、L2をそれぞれ「信号R2」、「信号L2」と記す。中域成分信号R3、L3をそれぞれ「信号R3」、「信号L3」と記す。高域成分信号R4、L4をそれぞれ「信号R4」、「信号L4」と記す。
【0088】
一般に、モノラル成分は中域に多く含まれる。そこで、変形例1では、プレイヤ11より入力されるステレオ信号のうち中域成分に対して位相制御が施される。
【0089】
具体的には、変形例1では、プレイヤ11からのステレオ信号は、帯域分割部1000に入力される。
【0090】
帯域分割部1000は、低域抽出部1010、中域抽出部1020、高域抽出部1030を含む。低域抽出部1010は、ステレオ信号から、低域成分(低域成分信号R2、L2)を抽出する。中域抽出部1020は、ステレオ信号から中域成分(中域成分信号R3、L3)を抽出する。高域抽出部1030は、ステレオ信号から高域成分(高域成分信号R4、L4)を抽出する。
【0091】
このように、帯域分割部1000は、ステレオ信号から中域成分(所定の第1の周波数帯域の信号)を抽出するフィルタ部として動作する。
【0092】
帯域分割部1000は、制御帯域(位相制御データにより位相が調整される周波数帯域)に基づいて中域抽出部1020の通過帯域(第1の周波数帯域の一例)を設定する周波数帯域設定部として動作する。
【0093】
中域抽出部1020の通過帯域は、制御帯域に拘わらず一定の周波数帯域(例えば100Hz~1000Hz)に決められてもよい。
【0094】
一例として、帯域分割部1000は、中域を含む所定周波数帯域(例えば100Hz~1000Hz)のうち、制御帯域となっている周波数帯域を、中域抽出部1020の通過帯域として設定する。
【0095】
図7では、便宜上、低域抽出部1010、中域抽出部1020、高域抽出部1030の各ブロックに、フィルタ特性を示す図を付記する。
【0096】
低域抽出部1010により抽出されたLチャンネルに対応する低域成分信号L2は、ゲイン回路GL1およびGL3でゲイン調整される。高域抽出部1030により抽出されたLチャンネルに対応する高域成分信号L4は、ゲイン回路GH1およびGH3でゲイン調整される。
【0097】
合成回路1240FLは、ゲイン回路GL1より入力される低域成分信号L2とゲイン回路GH1より入力される高域成分信号L4とを合成して、合成回路2240FLに出力する。
【0098】
合成回路1240RLは、ゲイン回路GL3より入力される低域成分信号L2とゲイン回路GH3より入力される高域成分信号L4とを合成して、合成回路2240RLに出力する。
【0099】
中域抽出部1020により抽出された中域成分信号R3およびL3は、モノラル/ステレオ成分抽出部200に入力される。モノラル/ステレオ成分抽出部200は、ステレオ信号の中域成分(中域成分信号R3およびL3)からモノラル成分信号M1とステレオ成分信号R1およびL1を抽出する。
【0100】
モノラル成分信号M1は、中域のモノラル成分を含む信号である。モノラル成分信号M1は、IIRフィルタ部210LTで位相制御されて、ゲイン回路232FL、232RLでゲイン調整されて、それぞれ、合成回路2240FL、2240RLに出力される。
【0101】
ステレオ成分信号L1は、中域のステレオ成分を含む信号である。ステレオ成分信号L1は、ゲイン回路220LTにおいて、助手席SFLおよび左後部座席SRLに対する制御帯域幅に応じてゲインが上げられて、更に、ゲイン回路234FL、234RLでゲイン調整されて、それぞれ、合成回路240FL、240RLに出力される。ここでは、制御帯域は、全ターゲット位置で同じであるものとする。
【0102】
合成回路2240FLは、合成回路1240FLより入力される低域と高域の合成信号と位相制御後のモノラル成分信号M1とを合成して、合成回路240FLに出力する。合成回路240FLは、合成回路2240FLより入力される合成信号とゲイン回路234FLでゲイン増幅されたステレオ成分信号L1とを合成する。この合成信号(オーディオ信号FL)は、イコライザ250FL図4参照)でイコライジングされて、D/Aコンバータ12およびアンプ13を介してスピーカSPFLに出力される。
【0103】
合成回路2240RLは、合成回路1240RLより入力される低域と高域の合成信号と位相制御後のモノラル成分信号M1とを合成して、合成回路240RLに出力する。合成回路240RLは、合成回路2240RLより入力される合成信号とゲイン回路234RLでゲイン増幅されたステレオ成分信号L1とを合成する。この合成信号(オーディオ信号RL)は、イコライザ250RL図4参照)でイコライジングされて、D/Aコンバータ12およびアンプ13を介してスピーカSPRLに出力される。
【0104】
低域抽出部1010により抽出されたRチャンネルに対応する低域成分信号R2は、ゲイン回路GL2およびGL4でゲイン調整される。高域抽出部1030により抽出されたRチャンネルに対応する高域成分信号R4は、ゲイン回路GH2およびGH4でゲイン調整される。
【0105】
合成回路1240FRは、ゲイン回路GL2より入力される低域成分信号R2とゲイン回路GH2より入力される高域成分信号R4とを合成して、合成回路2240FRに出力する。
【0106】
合成回路1240RRは、ゲイン回路GL4より入力される低域成分信号R2とゲイン回路GH4より入力される高域成分信号R4とを合成して、合成回路2240RRに出力する。
【0107】
モノラル成分信号M1は、IIRフィルタ部210RTで位相制御されて、ゲイン回路232FR、232RRでゲイン調整されて、それぞれ、合成回路2240FR、2240RRに出力される。
【0108】
ステレオ成分信号R1は、ゲイン回路220RTにおいて、運転席SFRおよび右後部座席SRRに対する制御帯域幅に応じてゲインが上げられて、更に、ゲイン回路234FR、234RRでゲイン調整されて、それぞれ、合成回路240FR、240RRに出力される。
【0109】
合成回路2240FRは、合成回路1240FRより入力される低域と高域の合成信号と位相制御後のモノラル成分信号M1とを合成して、合成回路240FRに出力する。合成回路240FRは、合成回路2240FRより入力される合成信号とゲイン回路234FRでゲイン増幅されたステレオ成分信号R1とを合成する。この合成信号(オーディオ信号FR)は、イコライザ250FR図4参照)でイコライジングされて、D/Aコンバータ12およびアンプ13を介してスピーカSPFRに出力される。
【0110】
合成回路2240RRは、合成回路1240RRより入力される低域と高域の合成信号と位相制御後のモノラル成分信号M1とを合成して、合成回路240RRに出力する。合成回路240RRは、合成回路2240RRより入力される合成信号とゲイン回路234RRでゲイン増幅されたステレオ成分信号R1とを合成する。この合成信号(オーディオ信号RR)は、イコライザ250RR図4参照)でイコライジングされて、D/Aコンバータ12およびアンプ13を介してスピーカSPRRに出力される。
【0111】
このように、スピーカSPFLおよびスピーカSPRLに対応する信号ラインでは、位相制御後のモノラル成分信号M1(第2のモノラル信号の一例)、低域成分信号L2(低域信号の一例)、高域成分信号L4(高域信号の一例)およびゲイン増幅後のステレオ成分信号L1(Lチャンネル信号の一例)が合成される。スピーカSPFRおよびスピーカSPRRに対応する信号ラインでは、位相制御後のモノラル成分信号M1(第2のモノラル信号の一例)、低域成分信号R2(低域信号の一例)、高域成分信号R4(高域信号の一例)およびゲイン増幅後のステレオ成分信号R1(Lチャンネル信号の一例)が合成される。
【0112】
変形例1においても、車室内の各ターゲット位置において、音の広がり感のバランスを崩すことなくボーカルなどのモノラル成分の音像定位が改善され、かつモノラル成分の音像定位による音の広がり感の減少が抑えられる。また、変形例1では、モノラル成分を多く含む中域に対してだけ、モノラル成分の位相制御を行うことができるとともにステレオ成分のゲインが上げられる。モノラル成分を多く含まない低域および高域において、ステレオ成分のゲインを不必要に上げることが避けられる。
【0113】
図8は、変形例2に係る音場補正装置2において、プレイヤ11より入力されるステレオ信号を各スピーカSPに接続されたD/Aコンバータ12に出力するまでの信号の流れを示すブロック図である。図8に示される変形例2のブロック図は、低域抽出部1010、中域抽出部1020および高域抽出部1030のフィルタ特性を除き、図7に示される変形例1のブロック図と同じである。
【0114】
変形例2において、帯域分割部1000は、プレイヤ11からのステレオ信号を帯域分割することなくモノラル/ステレオ成分抽出部200へスルー出力する。すなわち、変形例2における信号の流れは、実質的に、上記の実施形態(図4等参照)と同じである。
【0115】
低域抽出部1010、中域抽出部1020および高域抽出部1030のフィルタ特性を適宜設定することにより、上記の実施形態(図4等参照)と同じ信号処理を行うことができたり、変形例1と同じ信号処理を行うことができたりする。
【0116】
変形例1および2では、低域抽出部1010、中域抽出部1020、高域抽出部1030の各通過帯域は、車室内の前列と後列で共通であるが、更なる変形例では、低域抽出部1010、中域抽出部1020、高域抽出部1030の各通過帯域は、車室内の前列と後列とで異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 :音場補正システム
2 :音場補正装置
10 :制御部
11 :プレイヤ
12 :D/Aコンバータ
13 :アンプ
14 :表示部
15 :操作部
16 :フラッシュメモリ
100 :音場補正プログラム
110 :信号抽出部
120 :位相制御部
130 :ゲイン設定部
140 :信号増幅部
150 :信号合成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8