(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168436
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】三次元成形用ツールヘッド及びそれを用いた三次元成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/209 20170101AFI20241128BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20241128BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20241128BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241128BHJP
B29C 64/236 20170101ALI20241128BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20241128BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20241128BHJP
【FI】
B29C64/209
B29C64/118
B29C64/321
B33Y30/00
B29C64/236
B33Y50/02
B29C64/393
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085128
(22)【出願日】2023-05-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】522069507
【氏名又は名称】株式会社グーテンベルク
(74)【代理人】
【識別番号】110003890
【氏名又は名称】弁理士法人SIPPs
(72)【発明者】
【氏名】山口 勇二
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】グェン ミン トゥ
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC02
4F213AK13
4F213AM16
4F213AM24
4F213WA25
4F213WB01
4F213WF01
4F213WF36
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL95
(57)【要約】
【課題】 本発明は、フィラメントをダイレクト方式で送出する熱溶解積層法の三次元成形において、高速造形が可能な三次元成形用ツールヘッドを提供する。
【解決手段】 本発明は、三次元成形装置用のツールヘッド(100)であって、フィラメント(200)を送出するためのエクストルーダ(10)、前記エクストルーダ(10)を駆動するためのエクストルーダモータ(20)、前記エクストルーダ(10)から送出されたフィラメント(200)を溶融するための加熱部(40)、及び前記加熱部(40)で溶融されたフィラメント(200)を吐出するためのノズル(41)、前記エクストルーダモータを冷却するためのファン(30)を具備している、三次元成形装置用のツールヘッド(100)に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元成形装置用のツールヘッドであって、
フィラメントを送出するためのエクストルーダ、
前記エクストルーダを駆動するためのエクストルーダモータ、
前記エクストルーダから送出されたフィラメントを溶融するための加熱部、及び
前記加熱部で溶融されたフィラメントを吐出するためのノズル、
前記エクストルーダモータを冷却するためのファン
を具備している、三次元成形装置用のツールヘッド。
【請求項2】
前記エクストルーダモータを冷却するためのファンが、前記加熱部を冷却するホットエンドファンであり、前記ホットエンドファンからの冷却風が、前記加熱部と共に前記エクストルーダモータを冷却するように構成されている、請求項1に記載のツールヘッド。
【請求項3】
前記冷却風のための通風路がその内部に存在している、請求項2に記載のツールヘッド。
【請求項4】
前記エクストルーダが、第1回転部材及び第2回転部材を有しており、
第1回転部材が、
前記エクストルーダモータの第1駆動ギアから駆動力を受ける第1従動ギア、
前記第2回転部材に駆動力を伝える第2駆動ギア、及び
前記第1従動ギア及び第2駆動ギアを支持する第1支軸
を具備しており、
第2回転部材が、
前記第2駆動ギアから駆動力を受ける第2従動ギア、及び
第2従動ギアを支持する第2支軸
を具備しており、
前記第1回転部材と第2回転部材とで前記フィラメントを挟み込んで送出する、請求項1に記載のツールヘッド。
【請求項5】
前記第1従動ギアが、前記第1駆動ギアよりも歯数が多く、かつ前記第2駆動ギアが、第1従動ギアよりも歯数が少ない、請求項4に記載のツールヘッド。
【請求項6】
さらに造形物を冷却するためのパーツクーリングファンを具備する、請求項1に記載のツールヘッド。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のツールヘッド、
前記ツールヘッドを水平方向に移動させるXY機構、
前記ツールヘッドから吐出されて成形される造形物が載置されるビルドプレート、
前記ビルドプレートを昇降させる昇降機構、
前記ツールヘッドにフィラメントを提供するフィラメント提供機構、及び
これらの動作を制御する制御装置
を具備する三次元成形装置。
【請求項8】
前記XY機構が、
前記ツールヘッドを水平移動させる2つのベルト、
前記ベルトのそれぞれを駆動させる2つのモータ、及び
前記ツールヘッドと接続されているXバー、及び前記Xバーの両側にある2つのYバー
を具備しており、
前記2つのYバーが、レール及びブロックを有するリニアガイドで構成されており、前記ブロック上に、前記2つのベルトのためのプーリが存在している、請求項7に記載の三次元成形装置。
【請求項9】
前記XY機構の2つのモータが、三次元成形を行うチャンバの外部にある、請求項8に記載の三次元成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元成形用ツールヘッド及びそれを用いた三次元成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元の造形物を簡単に成形することができる三次元成形装置、所謂3Dプリンタの普及が進んでいる。三次元成形装置には、様々な方式があり、例えばABS樹脂等の熱可塑性樹脂のフィラメントを高温で溶かし積層させることによって三次元造形物を成形する熱溶解積層法等が知られている。
【0003】
熱溶解積層法の三次元成形装置において、樹脂を吐出するツールヘッドにフィラメントを送出する方式として、いわゆるボーデン方式とダイレクト方式の2種類が知られている。ボーデン方式は、フィラメントをツールヘッドに送出するエクストルーダが、ツールヘッド以外の場所、例えばプリンタのフレーム等に取り付けられている方式であり、ダイレクト方式は、エクストルーダがツールヘッドに取り付けられている方式である。
【0004】
ボーデン方式は、ツールヘッドにエクストルーダがないためにツールヘッドの軽量化が容易であり、その分だけ高速造形がしやすいが、柔らかいフィラメント材料の送出及び高精度でのフィラメント材料の送出が難しくなる。一方で、ダイレクト方式は、ツールヘッドが重くなる結果、高速でツールヘッドを駆動させることが難しくなるが、様々なフィラメント材料を使用することが可能となり、またフィラメントの高精度での送出も容易になる。
【0005】
例えば、特許文献1は、ダイレクト方式の熱溶解積層法の三次元成形装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、フィラメントをダイレクト方式で送出する熱溶解積層法の三次元成形において、高速造形が可能な三次元成形用ツールヘッド及びそれを含む三次元成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下の本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
第1の実施形態として、本発明は、三次元成形装置用のツールヘッドであって、
フィラメントを送出するためのエクストルーダ、
前記エクストルーダを駆動するためのエクストルーダモータ、
前記エクストルーダから送出されたフィラメントを溶融するための加熱部、
前記加熱部で溶融されたフィラメントを吐出するためのノズル、及び
前記エクストルーダモータを冷却するためのファン
を具備している、三次元成形装置用のツールヘッドに関する。
【0010】
本発明においては、エクストルーダモータに対してファンで冷却を行うことに特徴を有する。これにより、エクストルーダモータに大きな電流を用いて高い負荷を掛けて駆動させても、過熱の影響を防ぐことができる。すなわち、本発明のツールヘッドにおいては、通常のモータに通常の駆動をさせるのではなく、比較的小型軽量のモータに大きな負荷で駆動させる。ツールヘッドの部品の中でも特に大きな体積と重量を占めるエクストルーダモータとして、比較的小型軽量のモータを採用することによって、ツールヘッド全体の小型化とツールヘッドの重量を小さくすることができ、それによりチャンバの小型化とさらにはヘッドの速度及び加速度を向上させることができて高速造形が可能となる。造形を行うチャンバの小型化は、装置全体の小型化と熱効率の向上をもたらすことができるため、このような構成は非常に有利である。また、エクストルーダモータが比較的高温になってもファンで冷却することで悪影響がしにくくなるため、比較的高温で溶融させるフィラメントを用いる場合にも、このような構成が有利である。
【0011】
第2の実施形態として、本発明のツールヘッドは、前記エクストルーダモータを冷却するためのファンが、前記加熱部を冷却するホットエンドファンであり、前記ホットエンドファンからの冷却風が、前記加熱部と共に前記エクストルーダモータを冷却するように構成されている。
【0012】
このような実施形態では、エクストルーダモータ用のファンを別途設けることなく、エクストルーダモータの冷却が可能となるため非常に有利である。また、ホットエンドファンがあることによって、フィラメントの流路内でフィラメントが溶融して送出が困難になるという現象を防ぐことができる。
【0013】
第3の実施形態として、本発明のツールヘッドは、前記冷却風のための通風路がその内部に存在している。
【0014】
このような実施形態では、ホットエンドファンからの冷却風が効果的にエクストルーダモータに当たり、ホットエンドファンを効果的に冷却することができる。
【0015】
第4の実施形態として、本発明のツールヘッドは、前記エクストルーダが、第1回転部材及び第2回転部材を有しており、
第1回転部材が、
前記エクストルーダモータの第1駆動ギアから駆動力を受ける第1従動ギア、
前記第2回転部材に駆動力を伝える第2駆動ギア、及び
前記第1従動ギア及び第2駆動ギアを支持する第1支軸
を具備しており、
第2回転部材が、
前記第2駆動ギアから駆動力を受ける第2従動ギア、及び
第2従動ギアを支持する第2支軸
を具備しており、
前記第1回転部材と第2回転部材とで前記フィラメントを挟み込んで送出する。
【0016】
このような実施形態では、駆動ギア及び従動ギアの歯数を様々に変更することによって、エクストルーダモータがフィラメントを送出するトルク及び速度を自由に選択することができる。
【0017】
第5の実施形態として、本発明のツールヘッドは、前記第1従動ギアが、前記第1駆動ギアよりも歯数が多く、かつ前記第2駆動ギアが、第1従動ギアよりも歯数が少ない。
【0018】
このような実施形態では、第1従動ギアが、第1駆動ギアよりも歯数が多いことによって、また第2駆動ギアが、第1従動ギアよりも歯数が少ないことによって、エクストルーダモータのトルクが比較的小さくても、第1回転部材と第2回転部材を回転させてフィラメントを送出することができる。これにより、エクストルーダモータとして低トルクの小型のモータを採用することができるため、ツールヘッドの重量を小さくすることができ、それにより高速造形が可能となる。さらにはギアによって減速されることによって送り出しの分解能が高まり、より緻密な送出が容易になる。
【0019】
第6の実施形態として、本発明のツールヘッドは、さらに造形物を冷却するためのパーツクーリングファンを具備する。
【0020】
このような実施形態では、ノズルから吐出された樹脂を効果的に冷却することができるため造形物の表面に凹凸等を発生させずに成形することができる。
【0021】
第7の実施形態として、本発明の三次元成形装置は、
上記のようなツールヘッド、
前記ツールヘッドを水平方向に移動させるXY機構、
前記ツールヘッドから吐出されて成形される造形物が載置されるビルドプレート、
前記ビルドプレートを昇降させる昇降機構、
前記ツールヘッドにフィラメントを提供するフィラメント提供機構、及び
これらの動作を制御する制御装置
を具備する。
【0022】
この実施形態の三次元成形装置によれば、ツールヘッドを小型軽量化することができるため、高速造形が可能となる。
【0023】
第8の実施形態として、本発明の三次元成形装置は、前記XY機構が、
前記ツールヘッドを水平移動させる2つのベルト、
前記ベルトのそれぞれを駆動させる2つのモータ、及び
前記ツールヘッドと接続されているXバー、及び前記Xバーの両側にある2つのYバー
を具備しており、
前記2つのYバーが、レール及びブロックを有するリニアガイドで構成されており、かつ前記ブロック上に、前記2つのベルトのためのプーリが存在している。
【0024】
このような実施形態では、2つのYバーに通常採用されるキャリッジを採用することなく、非常に簡易的かつ軽量にXY機構を構成することができ、それによりツールヘッドの高速での水平移動が可能となる。
【0025】
第9の実施形態として、本発明の三次元成形装置は、XY機構の2つのモータが、三次元成形を行うチャンバの外部にある。
【0026】
このような実施形態では、内部が高温になるチャンバの外側にモータが存在することで、XY機構の2つのモータの過熱を防ぐことができる。これにより、モータに大きな負荷を掛けた運転が可能になり、ツールヘッドの高速での水平移動が可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、フィラメントをダイレクト方式で送出する熱溶解積層法の三次元成形において、高速造形が可能な三次元成形用ツールヘッド及びそれを含む三次元成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態に係るツールヘッドの断面図を示している。
【
図2】
図2は、本発明の1つの実施形態に係るツールヘッドの斜視図を示している。
【
図3】
図3は、本発明の1つの実施形態に係るツールヘッドにあるエクストルーダのギア機構を示している。
【
図4】
図4は、本発明の1つの実施形態に係るツールヘッドのホットエンド部分の側面図を示している。
【
図5】
図5は、本発明の1つの実施形態に係る三次元成形装置のXY機構を示している。
【
図6】
図6は、本発明の1つの実施形態に係る三次元成形装置のXY機構において、リニアガイドであるYバーに取り付けられているXバー及びプーリを示している。
【
図7】
図7は、本発明の1つの実施形態に係る三次元成形装置のXY機構において、モータが成形が行われるチャンバから空間的に隔離されている状態を示している。
【
図8】
図8は、本発明の1つの実施形態に係る三次元成形装置において、XY機構のモータが外部に露出している状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を以下の実施形態を例として具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。本明細書における各装置、機構、手段等について特に詳細な言及がない場合には、これらについては当業者であれば周知の機械的装置、機構、手段等を用いることができる。各実施形態は、当業者が通常の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、各実施形態について特記していない構成については、他の実施形態と同じ構成又はその実施形態に適した構成を有することができる。
【0030】
本明細書において、「水平方向」とは図面中のX-Y方向をいい、「水平」とは、X-Y平面のX-Z方向及びY-Z方向の一方又は両方で、Z方向の変位が三次元造形する上で無視できる程度であることをいう。また、「上下方向」とは、図面中のZ方向をいう。
【0031】
図1は、本発明の1つの実施形態に係るツールヘッドの断面図を示しており、
図2は、その斜視図を示している。
【0032】
ツールヘッド100は、フィラメント200を送出するためのエクストルーダ10、エクストルーダ10を駆動するためのエクストルーダモータ20、エクストルーダ10から送出されたフィラメント200を溶融するための加熱部40、加熱部40で溶融されたフィラメント200を吐出するためのノズル41、エクストルーダモータ20を冷却するためのファン30を具備している。
【0033】
エクストルーダ10は、ツールヘッド100の外部から提供されるフィラメント200を、フィラメントを溶融するための加熱部40及びその先のノズル41へと送り出すための機構である。エクストルーダ10は、エクストルーダモータ20によって駆動される。
【0034】
図3に示すように、エクストルーダ10は、第1回転部材11及び第2回転部材12を有している。第1回転部材11は、エクストルーダモータ20の第1駆動ギア21から駆動される第1従動ギア11a、第2回転部材12に駆動力を伝える第2駆動ギア11b、及び第1従動ギア11a及び第2駆動ギア11bを支持する第1支軸11cを有している。また、第2回転部材12は、第2駆動ギア11bから駆動力を受ける第2従動ギア12a、及び第2従動ギア12aを支持する第2支軸12bを有している。
【0035】
エクストルーダモータ20の第1駆動ギア21は、比較的小さい直径と比較的少ない歯数を有しており、エクストルーダモータ20が高い回転数で回転することで、小さなトルクで、第1回転部材11の第1従動ギア11aを駆動することができる。第1従動ギア11aは、比較的大きい直径と比較的多い歯数を有しており、小さい回転数で高いトルクを得ることができる。
【0036】
第1支軸11cは、ツールヘッド内の外装等に回転可能に取り付けられており、第1従動ギア11aの回転によって回転し、それにより第2駆動ギア11bも回転する。第2駆動ギア11bは、第2回転部材12を駆動する。第2駆動ギア11bは、第1従動ギア11aよりも小さい直径と少ない歯数を有している。
【0037】
第2支軸12bも、ツールヘッド内の外装等に回転可能に取り付けられており、第2駆動ギア11bによって駆動される第2従動ギア12aの回転によって回転する。第2駆動ギア11bと第2従動ギア12aとは、実質的に同一の直径と同一の数の歯数を有している。
【0038】
フィラメント200は、第1支軸11cと第2支軸12bとによって挟み込まれて送出されるが、これらに限定されず、第1回転部材11及び第2回転部材12のいずれかの部材、例えば第1支軸11cと第2支軸12bに取り付けられた他の部材等で送出されてもよい。
【0039】
フィラメント200の材料としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等を用いることができる。
【0040】
エクストルーダモータ20は、エクストルーダ10を駆動させる。この実施形態において、エクストルーダ10は、フィラメント200を引き込むために、ツールヘッド100の上部に位置しており、それを駆動させるためのエクストルーダモータ20もツールヘッド100の上部に位置している。
【0041】
エクストルーダモータ20は、ファン30によって冷却される。この実施形態において、ファン30は、フィラメント200を溶融するための加熱部40を冷却するためのホットエンドファン30である。ホットエンドファン30からの冷却風Aは、加熱部40を冷却した後に、エクストルーダモータ20に到達するように構成されており、ツールヘッド100の内部に冷却風Aが通るための通風路が存在している。加熱部40は、エクストルーダ10の下部にあるために、冷却風Aは、ツールヘッド100内で下部から上部に向かって流れる構成となっている。
【0042】
ファン30は、ホットエンドファンに限定されず、エクストルーダモータ20を冷却するための独立したファンであってもよく、またパーツクーリングファン60がエクストルーダモータ20も冷却する構成であってもよい。
【0043】
加熱部40は、ホットエンドとも呼ばれ、フィラメントを溶融するためのヒータ43と、フィラメントの流路でフィラメントの溶融をさせないようにするヒートシンク44を有することができる。例えば、加熱部40は、
図4に示されるように、溶融されたフィラメントを吐出するノズル41、冷却風Aによって冷却されるヒートシンク42、発熱部であるヒータ43、保熱するためのヒートブロック44、及び温度を図るためのサーミスタ45を含むことができる。ヒータ43で及びヒートブロック44によって溶融されるフィラメントは、ヒートシンク42付近では冷却風Aによって冷却されるため、その付近での溶融を防ぐことができる。このようにして、エクストルーダ10からのフィラメント200は、ツールヘッド100の下部にあるヒータ43にまでしっかりと送出できるようになる。
【0044】
この実施形態において、ツールヘッド100は、ツールヘッド100を水平方向に移動させるためのXY機構のXバーに、摺動可能に取り付けられる。ツールヘッド100は、Xバーを取り付けるための取付部50を有しており、例えばXバーをリニアガイドで構成することによって、リニアガイドのブロックにツールヘッド100の取付部50を固定する。また、ツールヘッド100が2つのベルトを用いるXY機構で水平方向に移動する場合には、
図2に示すように、そのためのベルト接続部51,52を有することができる。
【0045】
この実施形態において、ツールヘッド100は、パーツクーリングファン60を有しており、これによりノズル41から吐出された樹脂を効果的に冷却することができるため、造形物の表面に凹凸等を発生させずに成形することができる。パーツクーリングファン60の位置は特に限定されないが、この実施形態においては、ツールヘッド100の後ろ側に位置しており、背面から吸い込んだ空気をファンダクト70を通じて、造形物まで冷却風Bを送り込む。
【0046】
ツールヘッド100は、ツールヘッド100に信号を送るためのケーブル、ビルドプレートとの距離を測るセンサ等の様々な部材がさらに存在しているが、これらは本発明の特徴とは関係していないために、図面では省略されている。
【0047】
例えば、ツールヘッド100は、水平度測定機構として、本分野で公知のタッチ式のレベリングセンサを有することができる。ツールヘッド100をビルドプレート上で走査させて、例えば3点の位置でZ方向の造形ヘッドからの距離を測定することによって、ビルドプレートの水平度を測定することができる。水平度測定機構としては、電磁誘導式センサ、Tof式の光センサ、LiDARセンサ、通電式センサ等の様々な方式を用いることができる。
【0048】
図5は、三次元成形装置1000の一部を示しており、三次元成形装置1000は、ツールヘッド100、XY機構300、XY機構300が取り付けられるXYプレート400、及びビルドプレート500が図示されており、フィラメント、筐体、昇降機構、制御装置、電源等については、図示されていない。
図6は、フィラメント200、フィラメントロール600、制御装置700、及び筐体800を含む、三次元成形装置1000を示している。
【0049】
三次元成形装置1000は、熱溶解積層方式の装置である。この方式は、ビルドプレート500上に、造形材料となる熱可塑性樹脂のフィラメント200をツールヘッド100で溶融しながら造形物を成形する。ツールヘッド100は、水平方向に動いてビルドプレート500上に溶融樹脂を吐出しながら、ビルドプレート500が昇降機構によって上下方向に移動することで、三次元的に造形物を成形する。熱可塑性樹脂のフィラメント200は、筐体800の外側にあるフィラメントロール600から筐体800の開口部810を通じてツールヘッド100のエクストルーダ10に供給される。フィラメント200は、このような造形材料提供機構によってツールヘッド100に供給される。
【0050】
ツールヘッド100は、水平方向に移動することができ、この移動の方式として、CoreXY方式と呼ばれるオープンソースの動作方式を採用することができる。ただし、XY機構は、ツールヘッド100を水平方向に移動できればこれに限定されるものではなく、他の方式、例えばデカルト(カルテシアン)方式、クロスガントリー方式、H-bot方式等を採用してもよい。
【0051】
図5は、XY機構がCoreXY方式である実施形態を示している。この方式では、ツールヘッド100に2本のベルト301,302を接続して、ツールヘッド100をX-Y平面で駆動させる。2本のベルト301,302を、2つのモータ351,352で動かすことで、Xバー310及び2つのYバー321,322を通じてツールヘッド100を自由に移動させることができる。
【0052】
このXY機構では、2本のベルト301,302の張力を同程度にすることが非常に重要であり、2本のベルト301,302のそれぞれに対応して、このXY機構は、さらにベルトテンショナ341,342を有している。また、このXY機構は、Yバー上のY方向のベルトを、Xバー上のX方向に変更するプーリ331,332を有しており、その他にも各所にプーリが存在している。
【0053】
この実施形態では、XYプレート400上に2つのYバー321,322を固定することによって、振動の影響を低減させている。1つのXバー310は、ツールヘッド100と接続されており、Xバー310の両端にある2つのYバー321,322にまたがって取り付けられている。
【0054】
図7に示すように、Yバー321は、レール321a及びブロック321bを有するリニアガイドで構成することができ、Yバー321のブロック321bに、Xバー310を固定して取り付けることができる。Yバー321のブロック321bには、さらに2つのベルト(図から省略)のためのプーリ331a及び331bが取り付けられている。このような実施形態では、非常に簡易的かつ軽量にXY機構を構成することができ、それによりツールヘッド100の高速での水平移動が可能となる。
【0055】
図8に示すように、XY機構のためのモータ351は、ベルト301,302の駆動を妨げないような形態で、モータカバー361によって覆われていてもよい。これにより、モータ351を、三次元成形を行うチャンバから空間的に隔離させることができる。このような実施形態では、内部が高温になるチャンバの外側にモータが存在することで、XY機構のモータの過熱を防ぐことができる。そして、モータに大きな負荷を掛けた運転が可能になり、ツールヘッドの高速での水平移動が可能となる。また、チャンバ内を比較的高温にしてもXY機構のモータに悪影響がしにくくなるため、比較的高温で溶融させるフィラメントを用いる場合にも、このような構成が有利である。
【0056】
この実施形態では、モータ351は、モータカバー361によってチャンバ内とは空間的に隔離された上で、
図7に示すように、筐体800の開口から外気に露出されている。これにより、モータ351を外気によって冷却することができる。ただし、上記のような有利な効果を得るためには、モータ351は、チャンバ内と空間的に隔離されていれば、このような位置に限定される必要はない。
【0057】
ビルドプレート500は、昇降機構によって、上下方向に移動することができ、それによりツールヘッド100から吐出された造形材料の層を積層させることができる。昇降機構は、モータ及びすべりネジ等によって構成することができる。
【0058】
三次元成形装置100は、制御装置700のコントロールパネルを用いて、又は制御装置60が有線又は無線で接続された端末を通じて、様々な設定がされる。制御装置700の回路基板は、図示されていないが、三次元成形装置100の下部、背面部等に位置させることができる。制御装置700は、モータ等を制御して、ツールヘッド100、XY機構300、ビルドプレート500等の動作を制御することができ、またヒータ、ファン等を制御することによってツールヘッド100、ビルドプレート500等の温度を制御することができる。
【符号の説明】
【0059】
10…エクストルーダ
11…第1回転部材
11a…第1従動ギア
11b…第2駆動ギア
11c…第1支軸
12…第2回転部材
12a…第2従動ギア
12b…第2支軸
20…エクストルーダモータ
21…第1駆動ギア
30…ファン(ホットエンドファン)
40…加熱部
41…ノズル
42…ヒートシンク
43…ヒータ
44…ヒートブロック
45…サーミスタ
50…取付部
51,52…ベルト接続部
60…パーツクーリングファン
70…ダクト
100…ツールヘッド
200…フィラメント
300…XY機構
301,302…ベルト
310…Xバー
321,322…Yバー
321a…レール
321b…ブロック
331,332,331a,331b…プーリ
341,342…ベルトテンショナ
351,352…モータ
361…モータカバー
400…XYプレート
500…ビルドプレート
600…フィラメントロール
700…制御装置
800…筐体
810…開口
1000…三次元成形装置