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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168437
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】端子付き電線及び端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20241128BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R4/62 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085129
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智彦
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 英彦
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB01
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD14
5E085FF01
5E085GG01
5E085HH06
5E085JJ06
5E085JJ13
(57)【要約】
【課題】端子と防食材との接着面積を増加させることにより、防食被覆部の接着力を向上させることができる端子付き電線及び端子を提供する。
【解決手段】端子付き電線1Aは、電線10と、電線10に取り付けられる端子20Aと、防食被覆部60とを備える。端子20Aは、電線10の先端部において絶縁被覆12の外部に露出する芯線11に圧着される芯線圧着部41と、芯線圧着部41の後方に配置され、電線10の先端部において絶縁被覆12に圧着される絶縁被覆圧着部42とを有する。防食被覆部60は、防食材から構成されて、芯線圧着部41から露出する芯線11を少なくとも覆うように形成される。芯線圧着部41及び絶縁被覆圧着部42の少なくとも一方には、端子20Aの上部の外表面に凹設される凹部51が複数設けられ、防食被覆部60が、凹部51に入り込んでいる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、前記電線に取り付けられる端子と、防食被覆部と、を備え、
前記端子は、
前記電線の先端部において絶縁被覆の外部に露出する芯線に圧着される芯線圧着部と、
前記芯線圧着部の後方に配置され、前記電線の前記先端部において前記絶縁被覆に圧着される絶縁被覆圧着部と、を有し、
前記防食被覆部は、防食材から構成されて、前記芯線圧着部から露出する前記芯線を少なくとも覆うように形成され、
前記芯線圧着部及び前記絶縁被覆圧着部の少なくとも一方には、前記端子の上部の外表面に凹設される凹部が複数設けられ、
前記防食被覆部が、前記凹部に入り込んでいる、
端子付き電線。
【請求項2】
前記端子は、前記芯線圧着部と前記絶縁被覆圧着部とを連結する連結部を有する、請求項1に記載の端子付き電線。
【請求項3】
前記絶縁被覆圧着部は、
前記絶縁被覆が配置される底板部と、
前記底板部から延びる一対の絶縁被覆圧着片と、を有し、
前記底板部の上に前記絶縁被覆を配置した状態で、一対の前記絶縁被覆圧着片によって前記絶縁被覆を覆うように加締めることにより、前記絶縁被覆圧着部が前記絶縁被覆に圧着され、
前記凹部は、前記絶縁被覆圧着片の前端縁部の外表面に形成されている、
請求項1又は2に記載の端子付き電線。
【請求項4】
前記芯線圧着部は、
前記芯線が配置される底板部と、
前記底板部から延びる一対の芯線圧着片と、を有し、
前記底板部の上に前記芯線を配置した状態で、一対の前記芯線圧着片によって前記芯線を覆うように加締めることにより、前記芯線圧着部が前記芯線に圧着され、
前記凹部は、前記芯線圧着片の後端縁部の外表面に形成されている、
請求項1又は2に記載の端子付き電線。
【請求項5】
前記芯線圧着部は、
前記芯線が配置される底板部と、
前記底板部から延びる一対の芯線圧着片と、を有し、
前記底板部の上に前記芯線を配置した状態で、一対の前記芯線圧着片によって前記芯線を覆うように加締めることにより、前記芯線圧着部が前記芯線に圧着され、
前記凹部は、一対の前記芯線圧着片の先端部同士が突き合わされている部分の外表面に形成されている、
請求項1又は2に記載の端子付き電線。
【請求項6】
端子本体と、
前記端子本体に形成され、電線の先端部において絶縁被覆の外部に露出する芯線に圧着される芯線圧着部と、
前記端子本体における前記芯線圧着部よりも後方の部分に形成され、前記電線の前記先端部において前記絶縁被覆に圧着される絶縁被覆圧着部と、を備え、
前記芯線圧着部及び前記絶縁被覆圧着部の少なくとも一方には、前記端子本体の上部の外表面に凹設され、防食材から構成されて前記芯線圧着部から露出する前記芯線を少なくとも覆うための防食被覆部が入り込む凹部が設けられている、
端子。
【請求項7】
前記端子本体に形成され、前記芯線圧着部と前記絶縁被覆圧着部とを連結する連結部を備える、請求項6に記載の端子。
【請求項8】
前記絶縁被覆圧着部は、
前記絶縁被覆が配置される底板部と、
前記底板部から延びる一対の絶縁被覆圧着片と、を有し、
前記凹部は、前記絶縁被覆圧着片の前端縁部の外表面に形成されている、
請求項6又は7に記載の端子。
【請求項9】
前記芯線圧着部は、
前記芯線が配置される底板部と、
前記底板部から延びる一対の芯線圧着片と、を有し、
前記凹部は、前記芯線圧着片の後端縁部の外表面に形成されている、
請求項6又は7に記載の端子。
【請求項10】
前記芯線圧着部は、
前記芯線が配置される底板部と、
前記底板部から延びる一対の芯線圧着片と、を有し、
前記凹部は、一対の前記芯線圧着片によって前記芯線を覆うように加締める際に一対の前記芯線圧着片の先端部同士が突き合わされる部分の外表面に形成されている、
請求項6又は7に記載の端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線及び端子に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に配索されるワイヤハーネスには、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成された芯線を有する電線(以下、「アルミニウム電線」という。)に銅又は銅合金等から形成された端子が取り付けられた端子付き電線が使用される場合がある。
【0003】
アルミニウム電線を用いた端子付き電線は、電線自体の軽量化等の利点があるが、電線の芯線と端子とが異種金属であることに起因し、芯線と端子との間に付着した水が電解液となって異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)が生じ得る。
【0004】
アルミニウム電線を用いた端子付き電線の一つでは、防食材を用いて、端子の前足部(芯線圧着部)と後足部(絶縁被覆圧着部)との間の電線、端子の前足部から露出する芯線を被覆している(特許文献1参照)。これにより、前述の異種金属接触腐食が抑制され、電線の芯線と端子との電気的接続が長期間にわたって維持され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7097265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の端子付き電線では、例えば、塗布材(樹脂)を用いて防食材を形成している。具体的には、端子を電線の端末に圧着した後に、外部に露出している芯線及びその周辺の端子の部分を覆うように塗布材を滴下して塗布する。そして、外部に露出している芯線及びその周辺の端子の部分を塗布材によって十分に覆った後に、塗布材を硬化させることにより、硬化した塗布材(樹脂)によって形成される防食被覆部を形成する。
【0007】
ところで、防食被覆部の形状及び配置の精度は、塗布材(樹脂)の塗布量及び塗布位置に依存する。特に端子の芯線圧着部から露出している芯線を覆う防食被覆部の厚さを正確に制御することは困難であり、端子付き電線に引っ張る力等の外力が加わることによって当該防食被覆部が剥がれる可能性がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、端子と防食材との接着面積を増加させることにより、防食被覆部の接着力を向上させることができる端子付き電線及び端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様に係る端子付き電線は、電線と、電線に取り付けられる端子と、防食被覆部と、を備え、端子は、電線の先端部において絶縁被覆の外部に露出する芯線に圧着される芯線圧着部と、芯線圧着部の後方に配置され、電線の先端部において絶縁被覆に圧着される絶縁被覆圧着部と、を有し、防食被覆部は、防食材から構成されて、芯線圧着部から露出する芯線を少なくとも覆うように形成され、芯線圧着部及び絶縁被覆圧着部の少なくとも一方には、端子の上部の外表面に凹設される凹部が複数設けられ、防食被覆部が、凹部に入り込んでいる。
【0010】
本発明の態様に係る端子は、端子本体と、端子本体に形成され、電線の先端部において絶縁被覆の外部に露出する芯線に圧着される芯線圧着部と、端子本体における芯線圧着部よりも後方の部分に形成され、電線の先端部において絶縁被覆に圧着される絶縁被覆圧着部と、を備え、芯線圧着部及び絶縁被覆圧着部の少なくとも一方には、端子本体の上部の外表面に凹設され、防食材から構成されて芯線圧着部から露出する芯線を少なくとも覆うための防食被覆部が入り込む凹部が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、端子と防食材との接着面積を増加させることにより、防食被覆部の接着力を向上させることができる端子付き電線及び端子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る端子付き電線の一例を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る端子付き電線の平面図である。
図3図2のA-A線による断面図である。
図4】第1実施形態に係る端子付き電線の側面図である。
図5】端子の斜視図である。
図6A】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
図6B】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
図6C】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
図6D】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
図6E】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
図7】第2実施形態に係る端子付き電線の一例を示す斜視図である。
図8】第2実施形態に係る端子付き電線の平面図である。
図9図8のB-B線による断面図である。
図10】第2実施形態に係る端子付き電線の側面図である。
図11】端子の斜視図である。
図12A】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
図12B】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
図12C】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
図12D】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
図12E】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
図13】第3実施形態に係る端子付き電線の一例を示す斜視図である。
図14】第3実施形態に係る端子付き電線の平面図である。
図15】第3実施形態に係る端子付き電線の側面図である。
図16】端子の斜視図である。
図17A】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
図17B】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
図17C】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
図17D】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
図17E】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
図17F】凹部の形状及び配置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本実施形態に係る端子付き電線について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0014】
[第1実施形態]
以下、電線10に端子20Aを取り付けた端子付き電線1Aについて説明する。以下、説明の便宜上、端子20Aの長手方向(嵌合方向)において、相手側端子(図示せず)が嵌合する側(図1図4において図中左側)を先端側(前方側)とし、その反対側(図1図4において図中右側)を基端側(後方側)とする。また、図1図3及び図4において図中上側及び図中下側をそれぞれ、上側及び下側とする。
【0015】
図1図4に示すように、電線10の先端部に端子20Aが圧着され、電線10の芯線11と端子20Aとが電気的に接続されている。図2及び図4に一点鎖線で示すように、電線10の芯線11が接続された端子20Aの所定箇所には、防食被覆部60が設けられる。この防食被覆部60の形成により、電線10の芯線11の異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)が抑制され、電線10の芯線11と端子20Aとの電気的接続が長期間にわたって維持され得る。これらの電線10と端子20Aと防食被覆部60とにより、端子付き電線1Aが構成される。この端子付き電線1Aは、例えば、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスを構成する。
【0016】
電線10は、導体からなる芯線11と、この芯線11を被覆する樹脂からなる絶縁被覆12とを有する絶縁電線である。芯線11は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成され、例えば複数の素線を撚り合わせて構成される。電線10の芯線11をアルミニウム又はアルミニウム合金から形成することにより、端子付き電線1Aが軽量化され、端子付き電線1Aを含んで構成されるワイヤハーネスも軽量化される。軽量化された端子付き電線1Aは、特に電気自動車及びハイブリッド自動車等のワイヤハーネスが多用される車両において好適に用いられる。
【0017】
端子20Aは、長手方向において前端側から後端側に向けて順に、接点部31A、芯線圧着部41、及び絶縁被覆圧着部42を有している。接点部31Aは、相手側端子(図示せず)と接続される。芯線圧着部41は、第1バレル部又は前足部とも称されるものであり、電線10の先端部における絶縁被覆12から露出した芯線11と電気的に接続される。絶縁被覆圧着部42は、第2バレル部又は後足部とも称されるものであり、電線10の先端部における絶縁被覆12と電気的に接続される。接点部31Aと芯線圧着部41とは、第1連結部35によって互いに繋がっており、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42とは、第2連結部36によって互いに繋がっている。
【0018】
端子20Aは、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成される電線10の芯線11とは異なる金属材料(異種金属材料)から形成される。具体的には、端子20Aは、銅又は銅合金等からなる金属板(板状体)を母材として形成されている。
【0019】
端子20Aは、金属板(板状体)に対してプレス加工(打ち抜き加工及び曲げ加工)を施すことにより形成されたものである。プレス加工される前の金属板の全表面(表裏面及び側面)には、電線10の芯線11の腐食を抑制して耐食性を向上させる等の目的から、メッキ処理が施されていてもよい。この場合、プレス加工後においてプレス加工で露出した金属板の端面(加工面)は、メッキ処理が施されていない母材(例えば、銅又は銅合金等)が露出した状態となる。
【0020】
第1実施形態に係る端子20Aは、接点部31Aとしての端子バネ部15と、端子バネ部15の後方側に連設されている箱部16とを有する雌型の端子である。この端子20Aは、電線10が接続されてから、図示しないコネクタハウジングにおける複数の端子収容室のそれぞれに挿入される。
【0021】
端子20Aの端子本体21を構成する底壁(底板部32)及び一対の側壁(側板部33,33)は、箱部16から端子20Aの後端側に延在している。箱部16から端子20Aの後端側に延在する底板部32及び一対の側板部33,33は、端子20Aの長手方向において前端側から順に、第1連結部35の全体、芯線圧着部41の一部、第2連結部36の全体、及び絶縁被覆圧着部42の一部を構成している。
【0022】
芯線圧着部41は、電線10の先端部における絶縁被覆12から露出した芯線11に圧着されて電線10の芯線11に電気的に接続される。この芯線圧着部41は、底板部32の両側に立設され、側板部33の上端から延出して芯線11に圧着される一対の加締め片(芯線圧着片45,45)を有している。一対の芯線圧着片45,45は、芯線11を取り囲むように湾曲し、且つ、一対の芯線圧着片45,45の先端部45aが芯線11に食い込む加締め形状を有する。これにより、一対の芯線圧着片45,45の先端部45a同士が突き合わされている箇所に溝状部45bが形成されている。また、加締め圧着後の端子20Aにおいて、芯線圧着部41は、後端部に、芯線11から離れる向き(上側)に反り上げられたベルマウス部46を有している。
【0023】
絶縁被覆圧着部42は、電線10の先端部における絶縁被覆12に圧着されている。この絶縁被覆圧着部42は、底板部32の両側に立設され、側板部33の上端から延出して絶縁被覆12に圧着される一対の加締め片(絶縁被覆圧着片47,47)を有している。一対の絶縁被覆圧着片47,47は、絶縁被覆12を取り囲むように湾曲する加締め形状を有することにより、一対の絶縁被覆圧着片47,47の先端部45a同士が突き合わされている箇所に溝状部47bが形成されている。
【0024】
絶縁被覆圧着部42には、図1及び図5に示すように、電線10に端子20Aが取り付けられたときに外部に露出することになる外表面(上面)に、厚さ方向に窪んだ形状の凹部51が複数設けられている。これら複数の凹部51は、各絶縁被覆圧着片47の前端縁部47cの外表面(上面)に形成されている。具体的には、凹部51は、各絶縁被覆圧着片47の前端縁部47cにおいて、延在方向に間隔をおいて複数(本実施形態では、2つ)形成されている。前述の防食被覆部60は、凹部51に入り込み、その凹部51内を埋めるように設けられている。
【0025】
端子20Aの圧着作業前に凹部51を予め形成しておいてもよく、この場合、プレス加工に用いる金型に凸部を設け、この凸部によってブランク材(金属板)の表面を押圧することにより凹部51を形成するようにしてもよい。また、端子20Aの圧着時に加締め型(クリンパ)を用いて凹部51を形成してもよい。
【0026】
図6Aに示すように、凹部51aが平面視で矩形状に形成されていてもよい。また、図6B及び図6Cに示すように、凹部51b,51cが矩形状以外の形状に形成されていてもよい。例えば、図6Bに示すように、凹部51bが平面視で三角形状に形成されていてもよく、図6Cに示すように、凹部51cが平面視で台形状に形成されていてもよい。また、図6D及び図6Eに示すように、各絶縁被覆圧着片47の前端縁部47cにおいて、凹部51d,51eが1つずつ形成されていてもよい。この場合、図6Dに示すように、凹部51dが平面視で半円形状(半楕円形状)に形成されていてもよく、図6Eに示すように、凹部51eが平面視で三角形状に形成されていてもよい。
【0027】
流動性を有する防食材(例えば、紫外線硬化型の液状の樹脂)を、防食被覆部60が設けられる前の端子付き電線1Aの所定領域に滴下して配置した後に、その防食材を所定の手法(例えば、紫外線の照射)によって硬化させることで、防食被覆部60が形成される。防食被覆部60は、例えば、芯線圧着部41の前端部から露出する芯線11、芯線圧着部41の溝状部45b、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42との間の芯線11、及び、絶縁被覆圧着部42の前端部を覆うように形成される。
【0028】
ところで、液状の樹脂が順次滴下されていく過程において、絶縁被覆圧着部42の前端部(各絶縁被覆圧着片47の前端縁部47c)に滴下された樹脂が、各絶縁被覆圧着片47の前端縁部47cの外表面(上面)に形成された凹部51に入り込む。そして、樹脂が各絶縁被覆圧着片47の前端縁部47cの外表面(上面)に形成された凹部51内を埋めている状態で、樹脂を硬化させることにより、端子20Aと防食材との接着面積を増加させて、防食被覆部60の接着力を向上させることができる。
【0029】
このように、本実施形態の態様に係る端子付き電線1Aは、電線10と、電線10に取り付けられる端子20Aと、防食被覆部60とを備える。端子20Aは、電線10の先端部において絶縁被覆12の外部に露出する芯線11に圧着される芯線圧着部41と、芯線圧着部41の後方に配置され、電線10の先端部において絶縁被覆12に圧着される絶縁被覆圧着部42とを有する。防食被覆部60は、防食材から構成されて、芯線圧着部41から露出する芯線11を少なくとも覆うように形成される。芯線圧着部41及び絶縁被覆圧着部42の少なくとも一方には、端子20Aの上部の外表面に凹設される凹部51が複数設けられ、防食被覆部60が、凹部51に入り込んでいる。
【0030】
端子付き電線1Aにおいて、少なくとも、芯線圧着部41から露出する芯線11が防食被覆部60によって覆われており、この防食被覆部60によって水等の浸入が抑制される。防食被覆部60を形成する過程において、絶縁被覆圧着部42に対して滴下された樹脂は、端子20Aの上部の外表面に凹設した凹部51に入り込む。このため、凹部51内への防食被覆部60の形成によって、端子20Aと防食材との接着面積を増加させて、防食被覆部60の接着力を向上させることができる。
【0031】
以上のように、本実施形態によれば、端子20Aと防食材との接着面積を増加させることにより、防食被覆部60の接着力を向上させることができる端子付き電線1Aを提供することができる。
【0032】
端子付き電線1Aにおいて、端子20Aは、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42とを連結する連結部(第2連結部36)を有してもよい。
【0033】
防食被覆部60を形成する過程において、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42との間の芯線11に対して滴下された樹脂は、第2連結部36によって保持されることになる。
【0034】
端子付き電線1Aにおいて、絶縁被覆圧着部42は、絶縁被覆12が配置される底板部32と、底板部32から延びる一対の絶縁被覆圧着片47,47とを有してもよい。底板部32の上に絶縁被覆12を配置した状態で、一対の絶縁被覆圧着片47,47によって絶縁被覆12を覆うように加締めることにより、絶縁被覆圧着部42が絶縁被覆12に圧着されてもよい。凹部51は、絶縁被覆圧着片47の前端縁部47cの外表面に形成されていてもよい。
【0035】
端子付き電線1Aにおいて、少なくとも、芯線圧着部41から露出する芯線11が防食被覆部60によって覆われており、この防食被覆部60によって水等の浸入が抑制される。防食被覆部60を形成する過程において、絶縁被覆圧着部42に対して滴下された樹脂は、絶縁被覆圧着片47の前端縁部47cの外表面に凹設した凹部51に入り込む。このため、凹部51内への防食被覆部60の形成によって、端子20Aと防食材との接着面積を増加させて、防食被覆部60の接着力を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態の態様に係る端子20Aは、端子本体21と、端子本体21に形成され、電線10の先端部において絶縁被覆12の外部に露出する芯線11に圧着される芯線圧着部41を備える。端子20Aは、端子本体21における芯線圧着部41よりも後方の部分に形成され、電線10の先端部において絶縁被覆12に圧着される絶縁被覆圧着部42を備える。芯線圧着部41及び絶縁被覆圧着部42の少なくとも一方には、端子本体21の上部の外表面に凹設され、防食材から構成されて芯線圧着部41から露出する芯線11を少なくとも覆うための防食被覆部60が入り込む凹部51が設けられている。
【0037】
防食被覆部60を形成する過程において、絶縁被覆圧着部42に対して滴下された樹脂が端子20Aの上部の外表面に凹設した凹部51に入り込むことにより、端子20Aと防食材との接着面積を増加させて、防食被覆部60の接着力を向上させることができる。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば、端子20Aと防食材との接着面積を増加させることにより、防食被覆部60の接着力を向上させることができる端子20Aを提供することができる。
【0039】
端子20Aにおいて、端子本体21に形成され、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42とを連結する連結部(第2連結部36)を備えてもよい。
【0040】
防食被覆部60を形成する過程において、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42との間の芯線11に対して滴下された樹脂は、第2連結部36によって保持されることになる。
【0041】
端子20Aにおいて、絶縁被覆圧着部42は、絶縁被覆12が配置される底板部32と、底板部32から延びる一対の絶縁被覆圧着片47,47とを有し、凹部51は、絶縁被覆圧着片47の前端縁部47cの外表面に形成されていてもよい。
【0042】
防食被覆部60を形成する過程で絶縁被覆圧着部42に対して滴下された樹脂が絶縁被覆圧着片47の前端縁部47cに凹設した凹部51に入り込むことにより、端子20Aと防食材との接着面積を増加させて、防食被覆部60の接着力を向上させることができる。
【0043】
[第2実施形態]
以下、電線10に端子20Bを取り付けた端子付き電線1Bについて説明する。以下、説明の便宜上、端子20Bの長手方向(嵌合方向)において、相手側端子(図示せず)が嵌合する側(図7図10において図中左側)を先端側(前方側)とし、その反対側(図7図10において図中右側)を基端側(後方側)とする。また、図7図9及び図10において図中上側及び図中下側をそれぞれ、上側及び下側とする。
【0044】
図7図10に示すように、電線10の先端部に端子20Bが圧着され、電線10の芯線11と端子20Bとが電気的に接続されている。図8及び図10に一点鎖線で示すように、電線10の芯線11が接続された端子20Bの所定箇所には、防食被覆部60が設けられる。この防食被覆部60の形成により、電線10の芯線11の異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)が抑制され、電線10の芯線11と端子20Bとの電気的接続が長期間にわたって維持され得る。これらの電線10と端子20Bと防食被覆部60とにより、端子付き電線1Bが構成される。この端子付き電線1Bは、例えば、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスを構成する。
【0045】
電線10は、導体からなる芯線11と、この芯線11を被覆する樹脂からなる絶縁被覆12とを有する絶縁電線である。芯線11は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成され、例えば複数の素線を撚り合わせて構成される。電線10の芯線11をアルミニウム又はアルミニウム合金から形成することにより、端子付き電線1Bが軽量化され、端子付き電線1Bを含んで構成されるワイヤハーネスも軽量化される。軽量化された端子付き電線1Bは、特に電気自動車及びハイブリッド自動車等のワイヤハーネスが多用される車両において好適に用いられる。
【0046】
端子20Bは、長手方向において前端側から後端側に向けて順に、接点部31B、芯線圧着部41、及び絶縁被覆圧着部42を有している。接点部31Bは、相手側端子(図示せず)と接続される。芯線圧着部41は、第1バレル部又は前足部とも称されるものであり、電線10の先端部における絶縁被覆12から露出した芯線11と電気的に接続される。絶縁被覆圧着部42は、第2バレル部又は後足部とも称されるものであり、電線10の先端部における絶縁被覆12と電気的に接続される。接点部31Bと芯線圧着部41とは、第1連結部35によって互いに繋がっており、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42とは、第2連結部36によって互いに繋がっている。
【0047】
端子20Bは、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成される電線10の芯線11とは異なる金属材料(異種金属材料)から形成される。具体的には、端子20Bは、銅又は銅合金等からなる金属板(板状体)を母材として形成されている。
【0048】
端子20Bは、金属板(板状体)に対してプレス加工(打ち抜き加工及び曲げ加工)を施すことにより形成されたものである。プレス加工される前の金属板の全表面(表裏面及び側面)には、電線10の芯線11の腐食を抑制して耐食性を向上させる等の目的から、メッキ処理が施されていてもよい。この場合、プレス加工後においてプレス加工で露出した金属板の端面(加工面)は、メッキ処理が施されていない母材(例えば、銅又は銅合金等)が露出した状態となる。
【0049】
第2実施形態に係る端子20Bは、接点部31Bとしての端子バネ部15と、端子バネ部15の後方側に連設されている箱部16とを有する雌型の端子である。この端子20Bは、電線10が接続されてから、図示しないコネクタハウジングにおける複数の端子収容室のそれぞれに挿入される。
【0050】
端子20Bの端子本体21を構成する底壁(底板部32)及び一対の側壁(側板部33,33)は、箱部16から端子20Bの後端側に延在している。箱部16から端子20Bの後端側に延在する底板部32及び一対の側板部33,33は、端子20Bの長手方向において前端側から順に、第1連結部35の全体、芯線圧着部41の一部、第2連結部36の全体、及び絶縁被覆圧着部42の一部を構成している。
【0051】
芯線圧着部41は、電線10の先端部における絶縁被覆12から露出した芯線11に圧着されて電線10の芯線11に電気的に接続される。この芯線圧着部41は、底板部32の両側に立設され、側板部33の上端から延出して芯線11に圧着される一対の加締め片(芯線圧着片45,45)を有している。一対の芯線圧着片45,45は、芯線11を取り囲むように湾曲し、且つ、一対の芯線圧着片45,45の先端部45aが芯線11に食い込む加締め形状を有する。これにより、一対の芯線圧着片45,45の先端部45a同士が突き合わされている箇所に溝状部45bが形成されている。また、加締め圧着後の端子20Bにおいて、芯線圧着部41は、後端部に、芯線11から離れる向き(上側)に反り上げられたベルマウス部46を有している。
【0052】
絶縁被覆圧着部42は、電線10の先端部における絶縁被覆12に圧着されている。この絶縁被覆圧着部42は、底板部32の両側に立設され、側板部33の上端から延出して絶縁被覆12に圧着される一対の加締め片(絶縁被覆圧着片47,47)を有している。一対の絶縁被覆圧着片47,47は、絶縁被覆12を取り囲むように湾曲する加締め形状を有することにより、一対の絶縁被覆圧着片47,47の先端部45a同士が突き合わされている箇所に溝状部45bが形成されている。
【0053】
芯線圧着部41には、図7及び図11に示すように、電線10に端子20Bが取り付けられたときに外部に露出することになる外表面(上面)に、厚さ方向に窪んだ形状の凹部52が複数設けられている。これら複数の凹部52は、各芯線圧着片45の後端縁部45cの外表面(上面)に形成されている。具体的には、凹部52は、各芯線圧着片45の後端縁部45cにおいて、延在方向に間隔をおいて複数(本実施形態では、2つ)形成されている。前述の防食被覆部60は、凹部52に入り込み、その凹部52内を埋めるように設けられている。
【0054】
端子20Bの圧着作業前に凹部52を予め形成しておいてもよく、この場合、プレス加工に用いる金型に凸部を設け、この凸部によってブランク材(金属板)の表面を押圧することにより凹部52を形成するようにしてもよい。また、端子20Bの圧着時に加締め型(クリンパ)を用いて凹部52を形成してもよい。
【0055】
図12Aに示すように、凹部52aが平面視で矩形状に形成されていてもよい。また、図12B及び図12Cに示すように、凹部52b,52cが矩形状以外の形状に形成されていてもよい。例えば、図12Bに示すように、凹部52bが平面視で三角形状に形成されていてもよく、図12Cに示すように、凹部52cが平面視で台形状に形成されていてもよい。また、図12D及び図12Eに示すように、各芯線圧着片45の後端縁部45cにおいて、凹部52d,52eが1つずつ形成されていてもよい。この場合、図12Dに示すように、凹部52dが平面視で半円形状(半楕円形状)に形成されていてもよく、図12Eに示すように、凹部52eが平面視で三角形状に形成されていてもよい。
【0056】
流動性を有する防食材(例えば、紫外線硬化型の液状の樹脂)を、防食被覆部60が設けられる前の端子付き電線1Bの所定領域に滴下して配置した後に、その防食材を所定の手法(例えば、紫外線の照射)によって硬化させることで、防食被覆部60が形成される。防食被覆部60は、例えば、芯線圧着部41の前端部から露出する芯線11、芯線圧着部41の溝状部45b、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42との間の芯線11、及び、絶縁被覆圧着部42の前端部を覆うように形成される。
【0057】
ところで、液状の樹脂が順次滴下されていく過程において、芯線圧着部41の後端部(各芯線圧着片45の後端縁部45c)に滴下された樹脂が、各芯線圧着片45の後端縁部45cの外表面(上面)に形成された凹部52に入り込む。そして、樹脂が各芯線圧着部41の後端縁部45cの外表面(上面)に形成された凹部52内を埋めている状態で、樹脂を硬化させることにより、端子20Bと防食材との接着面積を増加させて、防食被覆部60の接着力を向上させることができる。
【0058】
このように、第2実施形態の態様に係る端子付き電線1Bは、電線10と、電線10に取り付けられる端子20Bと、防食被覆部60とを備える。端子20Bは、電線10の先端部において絶縁被覆12の外部に露出する芯線11に圧着される芯線圧着部41と、芯線圧着部41の後方に配置され、電線10の先端部において絶縁被覆12に圧着される絶縁被覆圧着部42とを有する。防食被覆部60は、防食材から構成されて、芯線圧着部41から露出する芯線11を少なくとも覆うように形成される。芯線圧着部41及び絶縁被覆圧着部42の少なくとも一方には、端子20Bの上部の外表面に凹設される凹部52が複数設けられ、防食被覆部60が、凹部52に入り込んでいる。
【0059】
端子付き電線1Bにおいて、少なくとも、芯線圧着部41から露出する芯線11が防食被覆部60によって覆われており、この防食被覆部60によって水等の浸入が抑制される。防食被覆部60を形成する過程において、絶縁被覆圧着部42に対して滴下された樹脂は、端子20Bの上部の外表面に凹設した凹部52に入り込む。このため、凹部52内への防食被覆部60の形成によって、端子20Bと防食材との接着面積を増加させて、防食被覆部60の接着力を向上させることができる。
【0060】
以上のように、この実施形態によれば、端子20Bと防食材との接着面積を増加させることにより、防食被覆部60の接着力を向上させることができる端子付き電線1Bを提供することができる。
【0061】
端子付き電線1Bにおいて、端子20Bは、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42とを連結する連結部(第2連結部36)を有してもよい。
【0062】
防食被覆部60を形成する過程において、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42との間の芯線11に対して滴下された樹脂は、第2連結部36によって保持されることになる。
【0063】
端子付き電線1Bにおいて、芯線圧着部41は、芯線11が配置される底板部32と、底板部32から延びる一対の芯線圧着片45,45とを有してもよい。底板部32の上に芯線11を配置した状態で、一対の芯線圧着片45,45によって芯線11を覆うように加締めることにより、芯線圧着部41が芯線11に圧着されてもよい。凹部52は、芯線圧着片45の後端縁部45cの外表面に形成されていてもよい。
【0064】
端子付き電線1Bにおいて、少なくとも、芯線圧着部41から露出する芯線11が防食被覆部60によって覆われており、この防食被覆部60によって水等の浸入が抑制される。防食被覆部60を形成する過程において、絶縁被覆圧着部42に対して滴下された樹脂は、芯線圧着片45の後端縁部45cの外表面に凹設した凹部52に入り込む。このため、凹部52内への防食被覆部60の形成によって、端子20Bと防食材との接着面積を増加させて、防食被覆部60の接着力を向上させることができる。
【0065】
また、第2実施形態の態様に係る端子20Bは、端子本体21と、端子本体21に形成され、電線10の先端部において絶縁被覆12の外部に露出する芯線11に圧着される芯線圧着部41を備える。端子20Bは、端子本体21における芯線圧着部41よりも後方の部分に形成され、電線10の先端部において絶縁被覆12に圧着される絶縁被覆圧着部42を備える。芯線圧着部41及び絶縁被覆圧着部42の少なくとも一方には、端子本体21の上部の外表面に凹設され、防食材から構成されて芯線圧着部41から露出する芯線11を少なくとも覆うための防食被覆部60が入り込む凹部52が設けられている。
【0066】
防食被覆部60を形成する過程において、絶縁被覆圧着部42に対して滴下された樹脂が端子20Bの上部の外表面に凹設した凹部52に入り込むことにより、端子20Bと防食材との接着面積を増加させて、防食被覆部60の接着力を向上させることができる。
【0067】
以上のように、この実施形態によれば、端子20Bと防食材との接着面積を増加させることにより、防食被覆部60の接着力を向上させることができる端子20Bを提供することができる。
【0068】
端子20Bにおいて、端子本体21に形成され、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42とを連結する連結部(第2連結部36)を備えてもよい。
【0069】
防食被覆部60を形成する過程において、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42との間の芯線11に対して滴下された樹脂は、第2連結部36によって保持されることになる。
【0070】
端子20Bにおいて、芯線圧着部41は、芯線11が配置される底板部32と、底板部32から延びる一対の芯線圧着片45,45とを有してもよい。凹部52は、芯線圧着片45の後端縁部45cの外表面に形成されていてもよい。
【0071】
防食被覆部60を形成する過程において、絶縁被覆圧着部42に対して滴下された樹脂が芯線圧着片45の後端縁部45cの外表面に凹設した凹部52に入り込む。これにより、端子20Bと防食材との接着面積を増加させて、防食被覆部60の接着力を向上させることができる。
【0072】
[第3実施形態]
以下、電線10に端子20Cを取り付けた端子付き電線1Cについて説明する。以下、説明の便宜上、端子20Cの長手方向(嵌合方向)において、相手側端子(図示せず)が嵌合する側(図13図15において図中左側)を先端側(前方側)とし、その反対側(図13図15において図中右側)を基端側(後方側)とする。また、図13及び図15において図中上側及び図中下側をそれぞれ、上側及び下側とする。
【0073】
図13図15に示すように、電線10の先端部に端子20Cが圧着され、電線10の芯線11と端子20Cとが電気的に接続されている。図14及び図15に一点鎖線で示すように、電線10の芯線11が接続された端子20Cの所定箇所には、防食被覆部60が設けられる。この防食被覆部60の形成により、電線10の芯線11の異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)が抑制され、電線10の芯線11と端子20Cとの電気的接続が長期間にわたって維持され得る。これらの電線10と端子20Cと防食被覆部60とにより、端子付き電線1Cが構成される。この端子付き電線1Cは、例えば、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスを構成する。
【0074】
電線10は、導体からなる芯線11と、この芯線11を被覆する樹脂からなる絶縁被覆12とを有する絶縁電線である。芯線11は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成され、例えば複数の素線を撚り合わせて構成される。電線10の芯線11をアルミニウム又はアルミニウム合金から形成することにより、端子付き電線1Cが軽量化され、端子付き電線1Cを含んで構成されるワイヤハーネスも軽量化される。軽量化された端子付き電線1Cは、特に電気自動車及びハイブリッド自動車等のワイヤハーネスが多用される車両において好適に用いられる。
【0075】
端子20Cは、長手方向において前端側から後端側に向けて順に、接点部31C、芯線圧着部41、及び絶縁被覆圧着部42を有している。接点部31Cは、相手側端子(図示せず)と接続される。芯線圧着部41は、第1バレル部又は前足部とも称されるものであり、電線10の先端部における絶縁被覆から露出した芯線11と電気的に接続される。絶縁被覆圧着部42は、第2バレル部又は後足部とも称されるものであり、電線10の先端部における絶縁被覆12と電気的に接続される。接点部31Cと芯線圧着部41とは、第1連結部35によって互いに繋がっており、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42とは、第2連結部36によって互いに繋がっている。
【0076】
端子20Cは、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成される電線10の芯線11とは異なる金属材料(異種金属材料)から形成される。具体的には、端子20Cは、銅又は銅合金等からなる金属板(板状体)を母材として形成されている。
【0077】
端子20Cは、金属板(板状体)に対してプレス加工(打ち抜き加工及び曲げ加工)を施すことにより形成されたものである。プレス加工される前の金属板の全表面(表裏面及び側面)には、電線10の芯線11の腐食を抑制して耐食性を向上させる等の目的から、メッキ処理が施されていてもよい。この場合、プレス加工後においてプレス加工で露出した金属板の端面(加工面)は、メッキ処理が施されていない母材(例えば、銅又は銅合金等)が露出した状態となる。
【0078】
第3実施形態に係る端子20Cは、接点部31Cとしてのタブ17と、タブ17の後方側に連設されている箱部18とを有する雄型の端子である。この端子20Cは、電線10が接続されてから、図示しないコネクタハウジングにおける複数の端子収容室のそれぞれに挿入される。
【0079】
端子20Cの端子本体21を構成する底壁(底板部32)及び一対の側壁(側板部33,33)は、箱部18から端子20Cの後端側に延在している。箱部18から端子20Cの後端側に延在する底板部32及び一対の側板部33,33は、端子20Cの長手方向において前端側から順に、第1連結部35の全体、芯線圧着部41の一部、第2連結部36の全体、及び絶縁被覆圧着部42の一部を構成している。
【0080】
芯線圧着部41は、電線10の先端部における絶縁被覆12から露出した芯線11に圧着されて電線10の芯線11に電気的に接続される。この芯線圧着部41は、底板部32の両側に立設され、側板部33の上端から延出して芯線11に圧着される一対の加締め片(芯線圧着片45,45)を有している。一対の芯線圧着片45,45は、芯線11を取り囲むように湾曲し、且つ、一対の芯線圧着片45,45の先端部45aが芯線11に食い込む加締め形状を有する。これにより、一対の芯線圧着片45,45の先端部45a同士が突き合わされている箇所に溝状部45bが形成されている。また、加締め圧着後の端子20Cにおいて、芯線圧着部41は、後端部に、芯線11から離れる向き(上側)に反り上げられたベルマウス部46を有している。
【0081】
絶縁被覆圧着部42は、電線10の先端部における絶縁被覆12に圧着されている。この絶縁被覆圧着部42は、底板部32の両側に立設され、側板部33の上端から延出して絶縁被覆12に圧着される一対の加締め片(絶縁被覆圧着片47,47)を有している。一対の絶縁被覆圧着片47,47は、絶縁被覆12を取り囲むように湾曲する加締め形状を有することにより、一対の絶縁被覆圧着片47,47の先端部47a同士が突き合わされている箇所に溝状部47bが形成されている。
【0082】
芯線圧着部41には、図13及び図16に示すように、電線10に端子20Cが取り付けられたときに外部に露出することになる外表面(上面)に、厚さ方向に窪んだ形状の凹部53が複数設けられている。これら複数の凹部53は、一対の芯線圧着片45,45によって芯線11を覆うように加締める際に一対の芯線圧着片45,45の先端部45a同士が突き合わされる部分の外表面(上面)に形成されている。具体的には、凹部53は、各芯線圧着片45の先端部45aにおいて、端子20Cの長手方向に間隔をおいて複数(本実施形態では、2つ)形成されている。前述の防食被覆部60は、凹部53に入り込み、その凹部53内を埋めるように設けられている。
【0083】
端子20Cの圧着作業前に凹部53を予め形成しておいてもよく、この場合、プレス加工に用いる金型に凸部を設け、この凸部によってブランク材(金属板)の表面を押圧することにより凹部53を形成するようにしてもよい。また、端子20Cの圧着時に加締め型(クリンパ)を用いて凹部53を形成してもよい。
【0084】
図17A及び図17Bに示すように、凹部53a,53bが平面視で四角形状に形成されていてもよい。また、図17C図17Fに示すように、凹部53c,53d,53e,53fが四角形状以外の形状に形成されていてもよい。例えば、図17C及び図17Dに示すように、凹部53c,53dが平面視で三角形状に形成されていてもよく、図17E及び図17Fに示すように、凹部53e,53fが平面視で半円形状(半楕円形状)に形成されていてもよい。
【0085】
流動性を有する防食材(例えば、紫外線硬化型の液状の樹脂)を、防食被覆部60が設けられる前の端子付き電線1Cの所定領域に滴下して配置した後に、その防食材を所定の手法(例えば、紫外線の照射)によって硬化させることで、防食被覆部60が形成される。防食被覆部60は、例えば、芯線圧着部41の前端部から露出する芯線11、芯線圧着部41の溝状部45b、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42との間の芯線11、及び、絶縁被覆圧着部42の前端部を覆うように形成される。
【0086】
ところで、液状の樹脂が順次滴下されていく過程において、芯線圧着部41の溝状部45bに滴下された樹脂が、一対の芯線圧着片45,45の先端部45a同士が突き合わされる部分の外表面(上面)に形成された凹部53に入り込む。そして、樹脂が各芯線圧着片45の先端部45aの外表面(上面)に形成された凹部53に入り込み、当該凹部53内を埋めている状態で、樹脂を硬化させる。これにより、端子20Cと防食材との接着面積を増加させて、防食被覆部60の接着力を向上させることができる。
【0087】
このように、第3実施形態の態様に係る端子付き電線1Cは、電線10と、電線10に取り付けられる端子20Cと、防食被覆部60とを備える。端子20Cは、電線10の先端部において絶縁被覆12の外部に露出する芯線11に圧着される芯線圧着部41と、芯線圧着部41の後方に配置され、電線10の先端部において絶縁被覆12に圧着される絶縁被覆圧着部42とを有する。防食被覆部60は、防食材から構成されて、芯線圧着部41から露出する芯線11を少なくとも覆うように形成される。芯線圧着部41及び絶縁被覆圧着部42の少なくとも一方には、端子20Cの上部の外表面に凹設される凹部53が複数設けられ、防食被覆部60が、凹部53に入り込んでいる。
【0088】
端子付き電線1Cにおいて、少なくとも、芯線圧着部41から露出する芯線11が防食被覆部60によって覆われており、この防食被覆部60によって水等の浸入が抑制される。防食被覆部60を形成する過程において、芯線圧着部41に対して滴下された樹脂は、端子20Cの上部の外表面に凹設した凹部53に入り込む。このため、凹部53内への防食被覆部60の形成によって、端子20Cと防食材との接着面積を増加させて、防食被覆部60の接着力を向上させることができる。
【0089】
以上のように、この実施形態によれば、端子20Cと防食材との接着面積を増加させることにより、防食被覆部60の接着力を向上させることができる端子付き電線1Cを提供することができる。
【0090】
端子付き電線1Cにおいて、端子20Cは、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42とを連結する連結部(第2連結部36)を有してもよい。
【0091】
防食被覆部60を形成する過程において、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42との間の芯線11に対して滴下された樹脂は、第2連結部36によって保持されることになる。
【0092】
端子付き電線1Cにおいて、芯線圧着部41は、芯線11が配置される底板部32と、底板部32から延びる一対の芯線圧着片45,45とを有してもよい。底板部32の上に芯線11を配置した状態で、一対の芯線圧着片45,45によって芯線11を覆うように加締めることにより、芯線圧着部41が芯線11に圧着されてもよい。凹部53は、一対の芯線圧着片45,45の先端部45a同士が突き合わされている部分の外表面に形成されていてもよい。
【0093】
端子付き電線1Cにおいて、少なくとも、芯線圧着部41から露出する芯線11が防食被覆部60によって覆われており、この防食被覆部60によって水等の浸入が抑制される。防食被覆部60を形成する過程において、芯線圧着部41に対して滴下された樹脂は、一対の芯線圧着片45,45の先端部45a同士が突き合わされている部分の外表面に凹設した凹部53に入り込む。このため、凹部53内への防食被覆部60の形成によって、端子20Cと防食材との接着面積を増加させて、防食被覆部60の接着力を向上させることができる。
【0094】
また、第3実施形態の態様に係る端子20Cは、端子本体21と、端子本体21に形成され、電線10の先端部において絶縁被覆12の外部に露出する芯線11に圧着される芯線圧着部41を備える。端子20Cは、端子本体21における芯線圧着部41よりも後方の部分に形成され、電線10の先端部において絶縁被覆12に圧着される絶縁被覆圧着部42を備える。芯線圧着部41及び絶縁被覆圧着部42の少なくとも一方には、端子本体21の上部の外表面に凹設され、防食材から構成されて芯線圧着部41から露出する芯線11を少なくとも覆うための防食被覆部60が入り込む凹部53が設けられている。
【0095】
防食被覆部60を形成する過程において、芯線圧着部41に対して滴下された樹脂が端子20Cの上部の外表面に凹設した凹部53に入り込むことにより、端子20Cと防食材との接着面積を増加させて、防食被覆部60の接着力を向上させることができる。
【0096】
以上のように、この実施形態によれば、端子20Cと防食材との接着面積を増加させることにより、防食被覆部60の接着力を向上させることができる端子20Cを提供することができる。
【0097】
端子20Cにおいて、端子本体21に形成され、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42とを連結する連結部(第2連結部36)を備えてもよい。
【0098】
防食被覆部60を形成する過程において、芯線圧着部41と絶縁被覆圧着部42との間の芯線11に対して滴下された樹脂は、第2連結部36によって保持されることになる。
【0099】
端子20Cにおいて、芯線圧着部41は、芯線11が配置される底板部32と、底板部32から延びる一対の芯線圧着片45,45とを有してもよい。凹部53は、一対の芯線圧着片45,45によって芯線11を覆うように加締める際に一対の芯線圧着片45,45の先端部45a同士が突き合わされる部分の外表面に形成されている。
【0100】
防食被覆部60を形成する過程で芯線圧着部41に対して滴下された樹脂が、一対の芯線圧着片45,45によって芯線11を覆うように加締める際に一対の芯線圧着片45,45の先端部45a同士が突き合わされる部分の外表面に凹設した凹部53に入り込む。これにより、端子20Cと防食材との接着面積を増加させて、防食被覆部60の接着力を向上させることができる。
【0101】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0102】
1A,1B,1C 端子付き電線
10 電線
11 芯線
12 絶縁被覆
20A,20B,20C 端子
21 端子本体
32 底板部
33 側板部
36 第2連結部
41 芯線圧着部
42 絶縁被覆圧着部
45 芯線圧着片
45a 先端部
45c 後端縁部
47 絶縁被覆圧着片
47c 前端縁部
51 凹部
52 凹部
53 凹部
60 防食被覆部
図1
図2
図3
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図5
図6A
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図17F