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特開2024-16844抗ウイルス導入ベクターIGM応答を減弱化するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016844
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】抗ウイルス導入ベクターIGM応答を減弱化するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240131BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240131BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240131BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240131BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240131BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240131BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/761
A61K39/395 A
A61K39/395 H
A61K47/02
A61K47/30
A61K47/34
A61K47/42
A61K31/519
A61K31/436
A61K9/51
A61P37/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023159452
(22)【出願日】2023-09-25
(62)【分割の表示】P 2020520799の分割
【原出願日】2018-10-12
(31)【優先権主張番号】62/572,297
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】511254321
【氏名又は名称】セレクタ バイオサイエンシーズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SELECTA BIOSCIENCES,INC.
【住所又は居所原語表記】65 Grove Street,Watertown,MA 02472,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イリンスキー,ピョートル
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,クリストファー,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】キシモト タカシ ケイ.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076DD21
4C076EE18
4C076EE19
4C076EE24
4C076EE26
4C076EE30
4C076EE41
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA13
4C084AA20
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA10
4C084NA13
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZC202
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085EE05
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB06
4C086CB22
4C086MA03
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA10
4C086NA13
4C086ZB08
4C086ZC20
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA06
4C087NA10
4C087NA13
4C087ZB08
4C087ZC75
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対象における抗ウイルス導入ベクター減弱化応答を確立することを含む方法を提供する。
【解決手段】ウイルス導入ベクター、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア、および抗IgM剤を含む、組成物を提供する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス導入ベクター、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア、および抗IgM剤を含む、組成物。
【請求項2】
抗IgM剤が、CD10、CD19、CD20、CD22、CD27、CD34、CD40、CD79a、CD79b、CD123、CD179b、FLT-3、ROR1、BR3、BAFF、またはB7RP-1に特異的に結合する、抗体またはそれらのフラグメント;チロシンキナーゼ阻害剤、例として、syk阻害剤、BTK阻害剤、またはSRCタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤;PI3K阻害剤;PKC阻害剤;APRILアンタゴニスト;ミゾリビン;トファシチニブ;および、テトラサイクリン、から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
抗IgM剤が、抗BAFF抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
抗IgM剤が、BTK阻害剤、例としてイブルチニブである、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
ウイルス導入ベクターが、レトロウイルス導入ベクター、アデノウイルス導入ベクター、レンチウイルス導入ベクターまたはアデノ随伴ウイルス導入ベクターである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ウイルス導入ベクターが、アデノウイルス導入ベクターであり、ならびに、アデノウイルス導入ベクターが、サブグループA、サブグループB、サブグループC、サブグループD、サブグループEまたはサブグループFのアデノウイルス導入ベクターである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ウイルス導入ベクターが、レンチウイルス導入ベクターであり、ならびに、レンチウイルス導入ベクターが、HIV、SIV、FIV、EIAVまたはヒツジレンチウイルスベクターである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
ウイルス導入ベクターが、アデノ随伴ウイルス導入ベクターであり、ならびに、アデノ随伴ウイルス導入ベクターが、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10またはAAV11アデノ随伴ウイルス導入ベクターである、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
ウイルス導入ベクターが、キメラウイルス導入ベクターである、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
キメラウイルス導入ベクターが、AAVアデノウイルス導入ベクターである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ウイルス導入ベクターの導入遺伝子が、遺伝子治療導入遺伝子、遺伝子編集導入遺伝子、エクソンスキッピング導入遺伝子または遺伝子発現調節導入遺伝子を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
合成ナノキャリアが、脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤー、ウイルス様粒子またはペプチドもしくはタンパク質粒子を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
合成ナノキャリアが、ポリマーナノ粒子を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ポリマーナノ粒子が、非メトキシ末端のプルロニックポリマーではないポリマーを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
ポリマーナノ粒子が、ポリエステル、ポリエーテルに接着したポリエステル、ポリアミノ酸、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリケタール、多糖、ポリエチルオキサゾリンまたはポリエチレンイミンを含む、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
ポリエステルが、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)またはポリカプロラクトンを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
ポリマーナノ粒子が、ポリエステルおよびポリエーテルに接着したポリエステルを含む、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
ポリエーテルが、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
合成ナノキャリアの集団の動的光散乱を使用して得られた粒子サイズ分布の平均が、110nmより大きい直径である、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
直径が、150 nmより大きい、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
直径が、200nmより大きい、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
直径が、250 nmより大きい、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
直径が、5μmより小さい、請求項19~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
直径が、4μmより小さい、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
直径が、3μmより小さい、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
直径が、2μmより小さい、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
直径が、1μmより小さい、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
直径が、500 nmより小さい、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
直径が、450 nmより小さい、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
直径が、400 nmより小さい、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
直径が、350 nmより小さい、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
直径が、300 nmより小さい、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
合成ナノキャリア中に含まれる免疫抑制剤の負荷量が、合成ナノキャリア全体の平均で、0.1%と50%(重量/重量)との間である、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
負荷量が、0.1%と25%との間である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
負荷量が、1%と25%との間である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
負荷量が、2%と25%との間である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
負荷量が、2%と20%との間にある、2%と15%との間にある、または、2%と10%との間にある、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
免疫抑制剤が、NF-kB経路の阻害剤である、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
免疫抑制剤が、mTOR阻害剤である、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
免疫抑制剤が、ラパログである、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
免疫抑制剤が、ラパマイシンである、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
合成ナノキャリアの集団のアスペクト比が、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7または1:10より大きい、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物、および使用のための説明書を含む、キット。
【請求項44】
先行する請求項のいずれか一項に記載のウイルス導入ベクター、先行する請求項のいずれか一項に記載の合成ナノキャリア、先行する請求項のいずれか一項に記載の抗IgM剤、および使用のための説明書を含む、キット。
【請求項45】
使用のための説明書が、本明細書に記載の方法のいずれか1つを実行するための説明書を含む、請求項43または44に記載のキット。
【請求項46】
対象へのウイルス導入ベクター、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア、および抗IgM剤の併用投与によって、対象における抗ウイルス導入ベクター減弱化応答を確立することを含む、方法。
【請求項47】
抗ウイルス導入ベクター減弱化応答が、ウイルス導入ベクターに対するIgM応答である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
抗ウイルス導入ベクター減弱化応答が、更に、ウイルス導入ベクターに対するIgG応答を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
ウイルス導入ベクター、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア、および抗IgM剤を、繰り返し、併用して、対象に投与することによって、対象におけるウイルス導入ベクターの導入遺伝子発現を拡大することを含む、方法。
【請求項50】
ウイルス導入ベクター、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア、および/または抗IgM剤の併用投与が、繰り返される、請求項46~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
ウイルス導入ベクターが、先行する請求項のいずれか一項に記載のとおりである、請求項46~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
合成ナノキャリアが、先行する請求項のいずれか一項に記載のとおりである、請求項46~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
抗IgM剤が、先行する請求項のいずれか一項に記載のとおりである、請求項46~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
併用投与が、同時投与である、請求項46~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
ウイルス導入ベクターおよび/または合成ナノキャリアが、静脈内に投与される、請求項46~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
抗IgM剤が、腹腔内に投与される、請求項46~55のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年10月13日に出願された米国仮出願62/572,297の35 U.S.C.§119下における利益を主張し、これらの各々の全内容は、本明細書において参考として援用される。
発明の分野
本発明は、対象に、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよび抗IgM(IgM)剤を伴うウイルス導入ベクターを、投与するための方法および関連する組成物に、関する。好ましくは、該方法および組成物は、ウイルス導入ベクターに対するIgM応答を低下させるかまたは阻止するために、ある。
【発明の概要】
【0002】
一側面において、対象へのウイルス導入ベクター、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよび抗IgM剤の併用投与によって、対象における抗ウイルス導入ベクター減弱化応答を確立することを含む方法が、提供される。
本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、抗ウイルス導入ベクター減弱化応答は、ウイルス導入ベクターに対するIgM応答である。
【0003】
別の側面において、対象へ、ウイルス導入ベクター、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよび抗IgM剤を、繰り返し、併用して、対象に投与することによって、対象におけるウイルス導入ベクターの導入遺伝子発現を拡大することを含む方法が、提供される。
本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルス導入ベクター、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよび/または抗IgM剤の併用投与は、繰り返される。
【0004】
提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、該ウイルス導入ベクターは、本請求項のいずれか1つにおいて定義されたかかるベクターのいずれか1つなどの、本明細書に提供されるウイルス導入ベクターのいずれか1つである。
【0005】
提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、該合成ナノキャリアは、本請求項のいずれか1つにおいて定義されたかかる合成ナノキャリアのいずれか1つなどの、本明細書に提供される合成ナノキャリアのいずれか1つである。
提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、抗IgM剤は、IgMアンタゴニスト抗体である。
【0006】
IgMアンタゴニスト抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、CD10、CD19、CD20、CD22、CD27、CD34、CD40、CD79a、CD79b、CD123、CD179b、FLT-3、ROR1、BR3、BAFF、またはB7RP-1に特異的に結合する。
【0007】
一態様において、IgMアンタゴニスト抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、請求項のいずれか1つにおいて定義される、かかるCD10、CD19、CD20、CD22、CD27、CD34、CD40、CD79a、CD79b、CD123、CD179b、FLT-3、ROR1、BR3、BAFF、またはB7RP-1抗体またはそれらの抗原結合フラグメントのいずれか1つなどの、本明細書に提供される、CD10、CD19、CD20、CD22、CD27、CD34、CD40、CD79a、CD79b、CD123、CD179b、FLT-3、ROR1、BR3、BAFF、またはB7RP-1抗体またはそれらの抗原結合フラグメントのいずれか1つである。
提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、IgMアンタゴニスト抗体は、抗BAFF抗体またはそれらの抗原結合フラグメントである。
【0008】
一態様において、抗BAFF抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、請求項のいずれか1つにおいて定義される、かかる抗BAFF抗体またはそれらの抗原結合フラグメントのいずれか1つなどの、本明細書に提供される、抗BAFF抗体またはそれらの抗原結合フラグメントのいずれか1つである。
【0009】
提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、抗IgM剤は、抗BAFF剤である。一態様において、抗BAFF剤は、請求項のいずれか1つにおいて定義される、かかる抗BAFF剤のいずれか1つなどの、本明細書に提供される、抗BAFF剤のいずれか1つである。
【0010】
提供される方法、組成物またはキットのいずれか1つの一態様において、抗IgM剤は、IL-21調節剤、例として、IL-21アンタゴニストまたはIL-21受容体アンタゴニストである。一態様において、剤を調節しているIL-21は、請求項のいずれか1つにおいて定義される、かかるIL-21の調節剤のいずれか1つなどの、本明細書に提供される、IL-21の調節剤のいずれか1つである。
【0011】
提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、抗IgM剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、例として、Syk阻害剤、BTK阻害剤、またはSRCタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤である。
【0012】
一態様において、チロシンキナーゼ阻害剤は、請求項のいずれか1つにおいて定義される、かかるチロシンキナーゼ阻害剤のいずれか1つなどの、本明細書に提供される、チロシンキナーゼ阻害剤のいずれか1つである。提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、チロシンキナーゼ阻害剤は、Syk阻害剤である。一態様において、Sykキナーゼ阻害剤は、請求項のいずれか1つにおいて定義される、かかるSyk阻害剤のいずれか1つなどの、本明細書に提供される、Syk阻害剤のいずれか1つである。
【0013】
提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、チロシンキナーゼ阻害剤は、BTK阻害剤である。一態様において、BTKキナーゼ阻害剤は、請求項のいずれか1つにおいて定義される、かかるBTK阻害剤のいずれか1つなどの、本明細書に提供される、BTK阻害剤のいずれか1つである。提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、チロシンキナーゼ阻害剤は、SRCタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤である。
【0014】
一態様において、SRCタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤は、請求項のいずれか1つにおいて定義される、かかるSRCタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤のいずれか1つなどの、本明細書に提供される、SRCタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤のいずれか1つである。
提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、抗IgM剤は、PI3K阻害剤である。一態様において、PI3K阻害剤は、請求項のいずれか1つにおいて定義される、かかるPI3K阻害剤のいずれか1つなどの、本明細書に提供される、PI3K阻害剤のいずれか1つである。
提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、抗IgM剤は、PKC阻害剤である。一態様において、PKC阻害剤は、請求項のいずれか1つにおいて定義される、かかるPKC阻害剤のいずれか1つなどの、本明細書に提供される、PKC阻害剤のいずれか1つである。
提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、抗IgM剤は、APRILアンタゴニストである。
【0015】
一態様において、APRILアンタゴニストは、請求項のいずれか1つにおいて定義される、かかるAPRILアンタゴニストのいずれか1つなどの、本明細書に提供される、APRILアンタゴニストのいずれか1つである。
提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、抗IgM剤は、テトラサイクリンである。一態様において、テトラサイクリンは、請求項のいずれか1つにおいて定義される、かかるテトラサイクリンのいずれか1つなどの、本明細書に提供される、テトラサイクリンのいずれか1つである。
提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、抗IgM剤は、ミゾリビンまたはトファシチニブである。
【0016】
別の側面において、本明細書に提供されるウイルス導入ベクターのいずれか1つ、本明細書に提供される合成ナノキャリアのいずれか1つ、および本明細書に提供される抗IgM剤のいずれか1つを含むキットなどの組成物が、提供される。
別の側面において、本明細書に提供される組成物または組成物の組み合わせのいずれか1つを含むキットが、提供される。
【0017】
提供されるキットのいずれか1つの一態様において、キットは、使用のための説明書をさらに含む。提供されるキットのいずれか1つの一態様において、使用のための説明書は、本明細書に提供される方法のいずれか1つを実行するための説明書を、含む。
別の側面において、例のいずれか1つにおいて記載のような方法または組成物が提供される。
別の側面において、組成物のいずれか1つは、提供される方法のいずれか1つにおける使用のためのものである。
別の側面において、方法または組成物のいずれか1つは、本明細書において記載の疾患または状態のいずれか1つを処置することにおける使用のためのものである。
【0018】
別の側面において、方法または組成物のいずれか1つは、抗ウイルス導入ベクター応答(例として、IgM応答)を減弱化させること、減弱化された抗ウイルス導入ベクター応答(例えば、IgM応答)を確立すること、導入遺伝子発現を拡大させることにおける、および/またはウイルス導入ベクターの反復投与に関する使用のために、ある。
別の側面において、例の剤のいずれかの組み合わせを投与する方法が、提供される。別の側面において、剤のこれらの組み合わせのいずれか1つを含む組成物またはキットも、提供される。
方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、該方法、組成物またはキットは、IgG応答、体液、または細胞免疫応答などの、別の免疫応答に加えてIgM応答を減弱化するために、ある。
方法、組成物、またはキットのいずれか1つの一態様において、該方法、組成物またはキットは、導入遺伝子発現を増加させることに加えて、IgM応答を減弱化させるために、ある。
【0019】
方法、組成物またはキットのいずれか1つの一態様において、該方法、組成物またはキットは、IgG応答、体液性または細胞性の免疫応答などの、別の免疫応答、ならびに導入遺伝子発現の増加に加えて、IgM応答を減弱化するために、ある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、指し示された処置(分泌されるアルカリホスファターゼ(AAV-SEAP)をコードするアデノ関連ウイルスべクター単独、ラパマイシン(AAV-SEAP+SVP[RAPA])を含む合成ナノキャリアとの組み合わせ、または、抗BAFF(AAV-SEAP+SVP[RAPA]+抗BAFF)との組み合わせ)の投与に続く、5、9、12、16、および21日のマウスにおける、血清抗AAVIgMレベルを、示す。それぞれの処置群は、6匹のマウスを含んだ。
図2図2は、図1に記載されているように、同じマウスからの処置の投与の5、9、12、および16日後に、ケミルミネッセンスを使用して測定された、SEAP発現レベルを、示す。
図3図3は、BAFFとAPRILの両方が、B細胞の生存および分化を支持することを、示す。BAFFまたはデュアルBAFF/APRIL阻害剤TACI-Fc(膜貫通活性化因子及びカルシウム・モジュレーター配位子インタラクターFc-融合)に対する抗体が、使用された。この検討のレイアウトは、図1、2、4-10、および15-17中に提示されるデータに、関する。
図4A図4Aは、SVP[Rapa]による、典型的なIgMレベル、およびそれらの完全な抑制を示す(図4B);BAFF阻害は、IgM応答を低下させる追加の効果を有するようである(図4A)。
図4B図4Bは、SVP[Rapa]による、典型的なIgGレベル、およびそれらの完全な抑制を示す。
図5図5は、IgGレベルおよびそれらのSVP[Rapa]による初期の完全な抑制に続く、1/6のポストブーストブレークスルーを、示す。BAFFまたはTACI-Fcによって処置群でのブレークスルーは、ポストブースト18日時点でなかった(矢印によって示される)。
図6A-6B】図6A-6Bは、[Rapa]―及び[Rapa]+TACI-Fc処置群;より明確には[Rapa]+BAFF処置マウスにおけるIgM阻害を示す。
図6C-6D】図6C-6Dは、16日と21日での[Rapa]―及び[Rapa]+TACI-Fc処置群;より明確には[Rapa]+BAFF処置マウスにおけるIgM阻害を示す。
図7図7は、未処置群(ポストブースト上昇がみられる)における、および、SVP[Rapa]-処置群(1/6のブレークスルーマウスにおける高いポストブーストレベル)における、ポストブーストIgMの変遷を、示す;BAFF阻害は、IgM応答を低下させる追加の効果を有するようである;Fc-TACIは、プライムで多くをSVP[Rapa]に加えず、追加のポストブースト利益を与えるかもしれない。
図8図8は、[Rapa]によるSEAPの上昇を、示す;さらに、抗BAFFの存在において増強される。
図9A図9Aは、5日での導入遺伝子(SEAP)発現の上昇に関する[Rapa]と抗BAFFの組合せの、一貫して有意な効果を示す。
図9B-9C】図9B-9Cは、9および12日での導入遺伝子(SEAP)発現の上昇に関する[Rapa]と抗BAFFの組合せの、一貫して有意な効果を示す。
図9D図9Dは、16日での導入遺伝子(SEAP)発現の上昇に関する[Rapa]と抗BAFFの組合せの、一貫して有意な効果を示す。
図10図10は、d21/28のプレブーストから、および次いで、d37ブーストの後、最高14日間のデータを、提供する。[Rapa]と抗BAFFの組合せは、導入遺伝子発現の上昇に関して、一貫して有意な効果を、提供する。
図11図11は、別の試験のためのレイアウトを、示す。この検討のレイアウトは、図12-14および18-20において提示されるデータに、関する。
図12A-12B】図12A-12Bは、IgM抑制に関する、初期のIgMおよびIgGの変遷を、示す。
図13図13は、IgM抑制に関する、抗BAFFと[Rapa]の相乗効果を、立証する。
図14図14は、[Rapa]によるSEAPレベルおよびその増強を、示す。
図15図15は、0、37および、155日での、AAV-SEAP単独、AAV-SEAP+SVP[RAPA]、またはAAV-SEAP+SVP[RAPA]+抗BAFFで処置されたマウスにおける、AAVIgMレベルを、示す。
図16図16は、0、37および、155日での、AAV-SEAP単独、AAV-SEAP+SVP[RAPA]、またはAAV-SEAP+SVP[RAPA]+抗BAFFで処置されたマウスにおける、AAVIgGレベルを、示す。
図17図17は、0、37および、155日での、AAV-SEAP単独、AAV-SEAP+SVP[RAPA]、またはAAV-SEAP+SVP[RAPA]+抗BAFFで処置されたマウスにおける、SEAPレベルを、示す。
図18A-18B】図18A-18Bは、0、32、および98日での、AAV-SEAP単独、AAV-SEAP+SVP[RAPA]、AAV-SEAP+抗BAFF、またはAAV-SEAP+SVP[RAPA]+抗BAFFで処置されたマウスにおける、SEAP、およびIgMレベルを、示す。
図18C図18Cは、IgGレベルを示す。
図19A図19Aは、注入日のみ、または第1の、第3の、および第4のAAV投与後14日でも投与された、抗BAFFの有無による、0、32、98、および160日での、AAV-SEAP単独、AAV-SEAP+SVP[RAPA](50μg)、またはAAV-SEAP+SVP[RAPA]で処置されたマウスにおける、SEAPレベルを、示す。
図19B-19C】図19B-19Cは、150μg(図19B)のラパマイシンでの、SEAPレベル、およびIgMレベルを示す。
図19D図19Dは、IgGレベルを示す。
図19E図19Eは、IgMレベルを示す。
図19F図19Fは、IgGレベルを示す。
図20A図20Aおよび20Bは、0、32、98、および160日での、AAV-SEAP+SVP[RAPA]、またはAAV-SEAP+SVP[RAPA]+抗BAFFで処置されたマウスにおける、SEAPと初期の11日でのIgMレベルの間の関係を、示す。
図20B】上記と同様である。
図21A図21A-21Fは、AAV-SEAP単独、AAV-SEAP+SVP[RAPA]、AAV-SEAP+抗BAFF、またはAAV-SEAP+SVP[RAPA]+抗BAFF(B、D、F)、または、w/oAAV、すなわち、SVP[RAPA]、抗BAFFまたはSVP[RAPA]+抗BAFF(A、C、E)処置により処置されたマウスにおける、種々のB細胞集団の割合を、示す。
図21B】上記と同様である。
図21C】上記と同様である。
図21D】上記と同様である。
図21E】上記と同様である。
図21F】上記と同様である。
図22A図22A-22Fは、AAV-SEAP単独、AAV-SEAP+SVP[RAPA]、またはAAV-SEAP+SVP[RAPA]+イブリチナブで処置されたマウスにおける、IgMレベルを示す。
図22B】上記と同様である。
図22C】上記と同様である。
図22D】上記と同様である。
図22E】上記と同様である。
図22F】上記と同様である。
図23A-23B】図23A-23Bは、AAV-SEAP単独、AAV-SEAP+SVP[RAPA]、またはAAV-SEAP+SVP[RAPA]+イブリチナブで処置されたマウスにおける、SEAPおよびIgMレベルとの関係を、示す。SEAPレベルは、図23Aにおいて示される。初期の6日でのIgMレベルと遅い(d104/111)でのSEAPレベルとの関係は、図23Bにおいて示される。
図24A図24Aは、AAV-SEAP単独、AAV-SEAP+SVP[RAPA]、AAV-SEAP+イブリチナブ、またはAAV-SEAP+SVP[RAPA]+イブリチナブで処置されたマウスにおける、IgMを、示す。
図24B図24Bは、AAV-SEAP単独、AAV-SEAP+SVP[RAPA]、AAV-SEAP+イブリチナブ、またはAAV-SEAP+SVP[RAPA]+イブリチナブで処置されたマウスにおける、IgGレベルを、示す。
図25図25は、AAV-SEAP単独、AAV-SEAP+SVP[RAPA]、AAV-SEAP+イブリチナブ、またはAAV-SEAP+SVP[RAPA]+イブリチナブで処置されたマウスにおける、SEAレベルを、示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
【0022】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は特に例示された材料またはプロセスに限定されず、パラメーターのようなものは無論変化し得ることが理解されるべきである。また、本明細書において用いられる用語は、本発明の特定の態様のみを記載することを目的とし、本発明を記載する代替的用語の使用を限定することを意図しないことが理解されるべきである。
【0023】
上記または下記のいずれであっても、本明細書において引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、その全体において全ての目的のために本明細書により参考として援用される。かかる参考としての援用は、本明細書において引用される援用された刊行物、特許および特許出願のいずれかが先行技術を構成するという承認であることを意図しない。
本明細書および添付の請求の範囲において用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が明らかに他を支持しない限り、複数の参照対象を含む。
【0024】
本明細書において用いられる場合、用語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などのそのバリエーションは、いずれかの列記される完全体(integer)(例えば、特色、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップもしくは限定)または完全体の群(例えば特色、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップもしくは限定)の包含を示すが、いずれかの他の完全体または完全体の群の除外を示すものではないと読まれるべきである。したがって、本明細書において用いられる場合、用語「含むこと(comprising)」は、包括的であり、さらなる列記されていない完全体または方法/プロセスステップを除外しない。
【0025】
本明細書において提供される組成物および方法のいずれかの態様において、「含むこと(comprising)」は、「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」で置き換えることができる。句「から本質的になる」は、本明細書において、特定された完全体(単数または複数)またはステップ、ならびに請求される発明の特徴または機能に実質的には影響を及ぼさないものを要求するために用いられる。
【0026】
本明細書において用いられる場合、用語「からなる」は、列記される完全体(例えば特色、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップもしくは限定)または完全体の群(例えば特色、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップもしくは限定)単独での存在を示すために用いられる。
A. 序論
【0027】
ウイルス導入ベクターは、遺伝子治療、遺伝子編集、遺伝子発現調節およびエクソンスキッピングなどの多様な適用のための有望な治療剤である。ウイルス導入ベクターは、したがって、治療用のタンパク質または核酸をコードする導入遺伝子を含んでもよい。残念ながら、これらの治療法の見込みは、ウイルス導入ベクターに対する免疫応答のため、大部分においてまだ完全には実現されていなかった。これらの免疫応答は、抗体、B細胞、およびT細胞応答を含み、そして、ウイルスカプシドまたはコートタンパク質またはそれらのペプチドなどの、ウイルス導入ベクターのウイルス抗原に特異的であることができる。
【0028】
驚くべきことに、AAVが、IgMおよびIgGの両方の、極めて強いおよび速い抗体産生を誘発し、それらの後者が有意にブロックされ、前者が、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアによって遅延させられることが、見出された。また、驚くべきことに、免役抑制剤を含む合成ナノキャリア、およびIgM応答免疫を抑制する剤、例として、抗BAFFモノクローナル抗体などの抗IgM剤と組み合わせたウイルス導入ベクターによる処置は、IgM応答などの免疫応答の上で相乗効果を有することができ、ウイルス導入ベクターの第1の投与の後、導入遺伝子発現の実質的増加にも、結果としてなる。
【0029】
処置のためのウイルス導入ベクターの効果的な使用に対する障害に対する解決方法を提供する方法および組成物が、提供される。とりわけ、IgM抗ウイルス導入ベクター免疫応答単独、または他の免疫応答と組み合わせが、本明細書に提供される方法および関連した組成物によって減弱化されることができることが、予想外に発見された。方法および組成物は、ウイルス導入ベクターによる処置の有効性を増大し、ウイルス導入ベクターの投与を反復する必要がある場合であっても、免疫減弱化を提供することができる。
本発明をここで、以下により詳細に記載する。
B.定義
【0030】
「投与すること」または「投与」または「投与する」とは、材料を、薬理学的に有用である様式において、対象に与えるかまたは分配することを意味する。当該用語は、「投与させること(causing to be administered)」を含むことを意図される。「投与させること」とは、別の当事者が材料を投与することを、直接的または間接的に、引き起こすこと、駆り立てること、奨励すること、補助すること、誘導することまたは指示することを含む。本明細書に提供される方法のいずれか1つは、ウイルス導入ベクター、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよび抗IgM剤を併用投与するステップを、含んでもよいかまたはさらに含んでもよい。いくつかの態様において、併用投与は、反復して行われる。本発明のまたさらなる態様において、併用投与は、同時投与である。
【0031】
本明細書において提供される組成物または対象への投与のための投与形態に関する「有効量」とは、例えば、IgM応答などのウイルス導入ベクターに対する免疫応答の軽減もしくは除去、または抗ウイルス導入ベクター減弱化応答の発生を生成する、対象において1以上の所望される結果となる、組成物または投与形態の量を指す。有効量は、in vitroまたはin vivoでの目的のためのものであってよい。in vivoでの目的のために、量は、医師が、ウイルス導入ベクターの投与の結果として望ましくない免疫応答を経験し得る対象のための臨床的利益を有し得ると考えるものであってよい。本明細書において提供される方法のいずれか1つにおいて、投与される組成物は、本明細書において提供されるような有効量のうちのいずれか1つにおけるものであってよい。
有効量は、望ましくない免疫応答のレベルを低下させることを含み得るが、いくつかの態様において、それは、望ましくない免疫応答を完全に予防することを含む。有効量はまた、望ましくない免疫応答の発生を遅延させることを含んでもよい。有効量は、所望される治療的エンドポイントまたは所望される治療効果を結果としてなる量であってもよい。有効量は、好ましくは、対象において、ウイルス導入ベクター抗原などの抗原に対して、免疫寛容原性免疫応答に結果としてなる。有効量はまた、好ましくは、導入遺伝子発現の増大をもたらし得る(ウイルス導入ベクターにより送達されている導入遺伝子)。このことは、対象における多様な目的の組織または系において、導入遺伝子発現を測定することにより、決定することができる。この発現の増大は、局所的にまたは全身で測定することができる。前述のもののいずれかの達成は、慣用的な方法によりモニタリングすることができる。
【0032】
提供される組成物および方法のいずれか1つのいくつかの態様において、有効量は、ウイルス導入ベクターに対する免疫応答の軽減もしくは除去、または抗ウイルス導入ベクター減弱応答の発生などの所望される免疫応答は、対象において、少なくとも1週間、少なくとも2週間または少なくとも1か月間にわたり持続する。提供される組成物および方法のいずれか1つの他の態様において、有効量は、ウイルス導入ベクターに対する免疫応答の軽減もしくは除去、または抗ウイルス導入ベクター減弱応答の発生などの、測定可能な所望される免疫応答に結果としてなるものである。いくつかの態様において、有効量は、測定可能な所望される免疫応答を(例えば特定のウイルス導入ベクター抗原に対して)、少なくとも1週間、少なくとも2週間または少なくとも1か月間にわたりもたらすものである。
【0033】
有効量は、無論、処置された特定の対象;状態、疾患または障害の重篤度;年齢、体調、サイズおよび体重を含む個々の患者のパラメーター;処置の期間;併用療法の性質(あれば);投与の特定の経路、ならびに保健実施者の知識および経験の範囲内の類似の要因に依存するであろう。これらの要因は、当業者に周知であり、慣用的な実験のみを用いて取り組むことができる。
【0034】
「抗BAFF剤」は、いずれかの剤、小分子、抗体、ペプチド、または核酸を指し、それが、BAFFの産生、またはレベル、または活性を低下させることが、公知である。いくつかの態様において、抗BAFF剤は、抗BAFF抗体である。例示的な抗BAFF剤は、TACI-Igおよび可溶性BAFF受容体を含むが、これらに限定されない。
「抗BAFF抗体」は、BAFFポリペプチドに特異的に結合するいかなる抗体も、指す。
【0035】
たとえば、ベリムマブ(Benlysta)などの、抗BAFF抗体は、モノクローナル抗体でもよい。いくつかの例において、抗BAFF抗体は、BAFFの生物活性を抑制することができる。あるいは、または、加えて、抗BAFF抗体は、BAFFと、BAFF-RおよびBCMA(B細胞成熟抗原)などの、その受容体との間の相互作用を、ブロックしてもよい。いくつかの態様において、全部完全な抗体が、使用される。いくつかの態様において、抗BAFF抗体の抗原結合フラグメントは、代わりとして使用される。
【0036】
「抗IgM剤」は、小分子、抗体、ペプチド、または核酸を含むがこれらに限定されない、IgMの産生またはレベルを低下させることが公知であるいずれかの剤、例として、IgM抗体を、指す。B細胞が抗体を発生させることが、当業者によって、認識されるだろう。
【0037】
したがって、いくつかの態様において、抗IgM剤は、B細胞レベルを調節するかまたは抑制することが公知である、いずれかの剤である。いくつかの態様において、抗IgM剤は、B細胞成熟を調節するかまたは抑制することが公知である、いずれかの剤である。いくつかの態様において、抗IgM剤は、B細胞活性化を調節するかまたは抑制することが公知である、いずれかの剤である。いくつかの態様において、抗IgM剤は、T細胞から独立したB細胞活性化を調節するかまたは抑制することが公知である、いずれかの剤である。
【0038】
抗IgM剤は、CD10、CD19、CD20、CD22、CD27、CD34、CD40、CD79a、CD79b、CD123、CD179b、FLT-3、ROR1、BR3、BAFF、またはB7RP-1に特異的に結合する、IgMアンタゴニスト抗体またはそれらの抗原結合フラグメント;IL21調節剤、例として、IL-21およびIL-21受容体アンタゴニスト;チロシンキナーゼ阻害剤、例として、Syk阻害剤、BTK阻害剤、SRCタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤;PI3K阻害剤;PKC阻害剤;APRIL アンタゴニスト、例として、TACI-Ig;ミゾリビン;トファシチニブ;および、テトラサイクリンを含むが、これらに限定されない。
【0039】
「IgMアンタゴニスト抗体」は、IgMの産生またはレベルを低下させることが公知である抗体、例として、IgM抗体を含むが、これらに限定されない。いくつかの態様において、IgMアンタゴニスト抗体は、IgMの産生に関わる、例として、IgM抗体、または、IgMの産生につながる調節または刺激免疫経路に関わる、例として、IgM抗体に関わるタンパク質またはペプチドに結合し活性を阻害する。
【0040】
いくつかの態様において、IgMアンタゴニスト抗体は、B細胞レベルを調節することが公知であるいずれかの抗体である。いくつかの態様において、IgMアンタゴニスト抗体は、B細胞成熟を調節することが公知であるいずれかの抗体である。いくつかの態様において、IgMアンタゴニスト抗体は、B細胞活性化を調節することが公知であるいずれかの抗体である。いくつかの態様において、IgMアンタゴニスト抗体は、T細胞から独立したB細胞活性化を調節するかまたは抑制することが公知であるいずれかの抗体である。
本明細書に提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つのいくつかの態様において、抗体の抗原結合フラグメントは、抗体の代用で使用されることができる。
【0041】
CD10、CD19、CD20、CD22、CD27、CD34、CD40、CD79a、CD79b、CD123、CD179b、FLT-3、ROR1、BR3、BAFFまたはB7RP-1に特異的に結合する、IgMアンタゴニスト抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、本明細書において提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つにおいて、使用されることができる抗IgM剤の例である。したがって、かかる剤は、かかるマーカーに特異的に結合するB細胞マーカーまたは他の分子に対する、抗体または抗原結合性剤であることも、できる。
【0042】
「APRILアンタゴニスト」は、APRILの機能または産生を阻害するいずれかの分子を含むが、これらに限定されない。増殖誘導リガンド(APRIL)、別名腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー13(TNFSF13))は、細胞表面受容体TACIによって認識されるTNFスーパーファミリーのタンパク質である。APRILは、TNFRSF17/BCMA、TNF受容体ファミリーのメンバーに関する、リガンドである。このタンパク質およびその受容体が、両方ともB細胞の発生にとって重要であるとわかる。
【0043】
APRILアンタゴニストは、APRILの小型分子阻害剤、APRILに対する抗体、およびAPRILの発現を低下させるアンチセンスオリゴマーおよびRNAi阻害剤を、含む。例示的なAPRIL阻害剤は、BION-1301(Aduro Biotech、 Inc.)を含むが、これに限定されない。いくつかの態様において、APRIL アンタゴニストは、TACI-Igである。TACI-Igは、BLySおよびAPRILの結合部位を免疫グロブリンの一定の領域と結合する組み換え融合タンパク質である。
【0044】
「Brutonのチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤」は、チロシンキナーゼのBTKファミリーのメンバーの機能または産生を低下させるかまたは阻害するいずれかの分子を含むが、これらに限定されない。チロシン-タンパク質キナーゼBTK酵素を阻害することによって、BTK阻害剤は機能し、それはB細胞発生において重要な役割を果たす。BTK阻害剤は、BTKの小型分子阻害剤、BTKに対する抗体、およびBTKの発現を低下させるアンチセンスオリゴマーおよびRNAi阻害剤を、含む。例示的なBTK阻害剤は、AVL-292、CC-292、ONO-4059、ACP-196、PCI-32765、アカラブルチニブ、GS-4059、スペブルチニブ、BGB-3111、およびHM71224を含むが、これらに限定されない。
【0045】
「IL-21調節剤」は、IL-21またはIL-21受容体の機能または産生を低下させるかまたは阻害する、いずれかの分子を含むが、これらに限定されない。インターロイキン-21は、ウイルスに感染しているかがん性の細胞を破壊することができるナチュラルキラー(NK)細胞および細胞障害性T細胞を含む、免疫系の細胞上の強力な調節効果を有する、サイトカインである。IL-21が、CD4+ヘルパーT細胞がウイルス感染への免疫系応答を統制する機構に寄与することが、報告されてきた。いくつかの態様において、IL21調節剤は、IL-21アンタゴニストである。IL-21アンタゴニストは、IL-21の小型分子阻害剤、IL-21に対する抗体、およびIL-21の発現を低下させるアンチセンスオリゴマーおよびRNAi阻害剤を、含む。例示的なIL-21阻害剤は、NNC0114(NovoNordisk)を含むが、これに限定されない。いくつかの態様において、そして、IL-21調節剤は、IL-21受容体アンタゴニストである。IL-21受容体アンタゴニストは、IL-21受容体の小型分子阻害剤、IL-21受容体に対する抗体、およびIL-21受容体の発現を低下させるアンチセンスオリゴマーおよびRNAi阻害剤を、含む。例示的なIL-21受容体阻害剤は、ATR-107(Pfizer)を含むが、これに限定されない。
【0046】
「PI3K阻害剤」は、PI3Kキナーゼファミリーのメンバーの機能または産生を低下させるかまたは阻害するいずれかの分子を含むが、これらに限定されない。PI3キナーゼは、PIK3CA、PIK3CB、PIK3CG、PIK3CD、PIK3R1、PIK3R2、PIK3R3、PIK3R4、PIK3R5、PIK3R6、PIK3C2A、PIK3C2B、PIK3C2G、およびPIK3C3を含むが、これらに限定されない。PI3K阻害剤は、PI3Kの小型分子阻害剤、PI3Kに対する抗体、およびPI3Kの発現を低下させるアンチセンスオリゴマーおよびRNAi阻害剤を含む。例示的なPI3K阻害剤は、GS-1101、イデラリシブ、デュベリシブ、TGR-1202、AMG-319、コパンリシブ、ワートマニン、LY294002、IC486068、およびIC87114(ICOS Corporation)、およびGDC-0941を含むが、これらに限定されない。
【0047】
「PKC阻害剤」は、PKCキナーゼファミリーのメンバーの機能または産生を低下させるかまたは阻害するいずれかの分子を含むが、これらに限定されない。タンパク質キナーゼCは、これらのタンパク質またはこのファミリーのメンバー上のセリンおよびトレオニンのアミノ酸残基のヒドロキシル基のリン酸化による、他のタンパク質の機能の制御に関わる、タンパク質キナーゼ酵素のファミリーである。PKC酵素は、PKC-α(PRKCA)、PKC-β1(PRKCB)、PKC-β2(PRKCB)、PKC-γ(PRKCG)、PKC-δ(PRKCD)、PKC-ε(PRKCE)、PKC-η(PRKCH)、PKC-θ(PRKCQ)、およびPKC-ι(PRKCI)、(PKC-ζ(PRKCZ))を含むが、これらに限定されない。PKC阻害剤は、PKCの小型分子阻害剤、PKCに対する抗体、およびPKCの発現を低下させるアンチセンスオリゴマーおよびRNAi阻害剤を、含む。
【0048】
例示的なPKC阻害剤は、エンザスタウリン、ルボキシスタウリン、ケレリトリン、ミヤベノールC、ミリシトリン、ゴシポール、ベルバスコシド、BIM-1、およびブリオスタチン1を含むが、これらに限定されない。
【0049】
「SRCタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤」は、SRCキナーゼファミリーのメンバーの機能または産生を低下させるかまたは阻害するいずれかの分子を含むが、これらに限定されない。SRC阻害剤は、SRCの小型分子阻害剤、SRCに対する抗体、およびSRCの発現を低下させるアンチセンスオリゴマーおよびRNAi阻害剤を、含む。
例示的なSyk阻害剤は、ダサチニブを含むが、これに限定されない。
【0050】
「Syk阻害剤」は、チロシンキナーゼのSykファミリーのメンバーの機能または産生を低下させるかまたは阻害するいずれかの分子を含むが、これらに限定されない。Sykは、B細胞受容体およびT細胞受容体からのシグナル伝達に関わる。Syk阻害剤は、Sykの小型分子阻害剤、Sykに対する抗体、およびSykの発現を低下させるアンチセンスオリゴマーおよびRNAi阻害剤を、含む。例示的なSyk阻害剤は、フォスタマチニブ(R788)、エントスプレチニブ(GS-9973)、セルズラテニブ(PRT062070)、およびTAK-659(エントスプレチニブおよびニルバジピン)を含むが、これらに限定されない。
【0051】
「テトラサイクリン」は、共通の基本構造を有する一群の広域抗生物質化合物であり、ストレプトマイセスバクテリアのいくつかの種から直接単離されることができるか、または少なくとも半合成的に、産生されることができる。例示的なテトラサイクリンは、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメチルクロルテトラサイクリン、ロリテトラサイクリン、リメサイクリン、クロモサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、および3級-ブチルグリシルアミドミノサイクリンを含むが、これらに限定されない。
【0052】
「チロシンキナーゼ阻害剤」は、1以上のチロシンキナーゼの機能または産生を低下させるかまたは阻害するいずれかの分子を含むが、これらに限定されない。チロシンキナーゼ阻害剤は、チロシンキナーゼの小型分子阻害剤、チロシンキナーゼに対する抗体、およびチロシンキナーゼの発現を低下させるアンチセンスオリゴマーおよびRNAi阻害剤を、含む。
【0053】
例示的なチロシンキナーゼ阻害剤は、Syk阻害剤、BTK阻害剤、およびSRCタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を、含む。「抗ウイルス導入ベクター免疫応答」または「ウイルス導入ベクターに対する免疫応答」または類似のものは、IgM応答などの、ウイルス導入ベクターに対するいずれかの望ましくない免疫応答を、指す。いくつかの態様において、望ましくない免疫応答は、ウイルス導入ベクターまたはその抗原に対する抗原特異的免疫応答である。いくつかの態様において、免疫応答は、ウイルス導入ベクターのウイルス抗原に対して特異的である。
【0054】
抗ウイルス導入ベクター免疫応答は、それが、対象において何らかの様式において、または対象もしくは別の対象において予測もしくは測定される応答と比較して、低下するかまたは取り除かれる場合に、「抗ウイルス導入ベクター減弱応答」であるといえる。いくつかの態様において、本明細書において提供される併用投与の後に対象から得られた生物学的試料を用いて測定される、当該対象における抗ウイルス導入ベクター減弱化応答は、別の対象(試験対象など)から、この他方の対象への、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよび抗IgM剤の併用投与なしでのウイルス導入ベクター投与の後に得られた生物学的試料を用いて測定される抗ウイルス導入ベクター免疫応答と比較して、低下した抗ウイルス導入ベクター免疫応答(IgM抗体応答など)を含む。いくつかの態様において、抗ウイルス導入ベクター減弱応答は、本明細書において提供される併用投与の後に対象から得られた生物学的試料中の、対象の生物学的試料に対して行われるその後のウイルス導入ベクターのin vitroでの負荷(challenge)により、別の対象(試験対象など)から、この他方の対象への、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよび抗IgM剤の併用投与なしでのウイルス導入ベクターの投与の後に得られた生物学的試料に対して行われるウイルス導入ベクターのin vitro負荷の後で検出される、抗ウイルス導入ベクター免疫応答と比較して、低下した抗ウイルス導入ベクター免疫応答(抗IgM抗体など)である。
【0055】
「抗原」とは、B細胞抗原またはT細胞抗原を意味する。「抗原の型」とは、同じまたは実質的に同じ抗原性の特徴を共有する分子である。いくつかの態様において、抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、多糖などであってよい。
【0056】
「接着する(attach)」または「接着している(attached)」または「カップリングする」または「カップリングされた」(など)は、1つの実体(例えば部分)を別のものに化学的に会合させることを意味する。いくつかの態様において、接着は共有的であり、これは、接着が2つの実体の間の共有結合の存在に関して起こることを意味する。非共有的態様において、非共有的接着は、限定されないが以下を含む非共有的相互作用により媒介される:電荷相互作用、アフィニティー相互作用、金属配位、物理的吸着、主客相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁性相互作用、静電相互作用、双極子-双極子相互作用、および/またはこれらの組み合わせを含む。態様において、封入は、接着の形態である。
【0057】
「平均」とは、本明細書において用いられる場合、他に記述されないかぎり、算数的平均値を指す。「共に(concomintantly)」とは、対象に、時間的に相関する、好ましくは、免疫応答の調節を提供するために時間的に十分に相関する様式において、2以上の材料/剤を投与すること、およびさらにより好ましくは2以上の材料/剤が組み合わせて投与されることを意味する。態様において、併用投与は、2以上の材料/剤の、特定された期間内、好ましくは1か月間以内、より好ましくは1週間以内、なおより好ましくは1日以内、さらにより好ましくは1時間以内の投与を包含してもよい。態様において、材料/剤は、繰り返し併用投与してもよい;すなわち2以上の場合の併用投与である。
【0058】
「投与形態」とは、培地、対象への投与のために好適なキャリア、ビヒクルまたはデバイス中の薬理学的におよび/または免疫学的に活性な材料を意味する。本明細書において提供される組成物または用量のいずれか1つは、投与形態におけるものであってもよい。
「封入する」とは、合成ナノキャリア内の物質の少なくとも一部を囲い込むことを意味する。いくつかの態様において、物質は、合成ナノキャリア内に完全に囲い込まれる。
【0059】
他の態様において、封入される物質の殆どまたは全てが、合成ナノキャリアの外の局所環境に暴露されない。他の態様において、50%、40%、30%、20%、10%または5%(重量/重量)以下が、局所環境に暴露される。封入は、吸収とは別のものであり、吸収は、物質の殆どまたは全てを合成ナノキャリアの表面上に配置し、物質を合成ナノキャリアの外部の局所環境に暴露させる。
【0060】
「導入遺伝子発現を拡大させること」とは、対象におけるウイルス導入ベクターの導入遺伝子発現産物のレベルを増大させることを指し、導入遺伝子は、ウイルス導入ベクターにより送達されるものである。いくつかの態様において、導入遺伝子発現産物のレベルは、対象における目的の多様な組織または系における導入遺伝子発現を測定することにより決定することができる。いくつかの態様において、導入遺伝子発現産物は、タンパク質である。他の態様において、導入遺伝子発現産物は、核酸である。導入遺伝子発現を拡大させることは、例えば、対象から得られた試料中の導入遺伝子発現産物の量を測定すること、およびそれを前の試料と比較することにより決定することができる。試料は、組織試料であってよい。いくつかの態様において、導入遺伝子発現産物は、フローサイトメトリーを用いて決定することができる。
【0061】
「エクソンスキッピング導入遺伝子」とは、エクソンスキッピングを発生させ得るアンチセンスオリゴヌクレオチトまたは他の剤をコードするいずれかの核酸を意味する。「エクソンスキッピング」とは、タンパク質産生の間に、mRNA前駆体のレベルにおいてスキップされて取り除かれるエクソンを指す。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、スプライス部位またはエクソン内の調節要素と干渉し得る。これは、遺伝子変異の存在に関わらず、短縮された部分的に機能的なタンパク質に結果としてなる。一般に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、変異特異的であり、メッセンジャーRNA前駆体中の変異部位に結合して、エクソンスキッピングを引き起こす。
【0062】
対象は、エクソンスキッピングが有益となるであろう疾患または障害を有する対象であってよい。対象は、本明細書において提供される、ジストロフィーなどの、エクソンスキッピングの発生が有益となるであろう疾患または障害のいずれか1つを有していてよい。
【0063】
加えて、エクソンスキッピング導入遺伝子は、エクソンスキッピングの結果が利益を与えるであろういずれかの内因性タンパク質の発現の間にエクソンスキッピングを発生させることができる剤をコードしていてもよい。かかるタンパク質の例は、本明細書において提供される疾患または障害、例えば本明細書において提供されるジストロフィーのいずれかに関連するタンパク質である。タンパク質は、いくつかの態様においては、本明細書において提供される治療用タンパク質のいずれかの内因性のバージョンであってもよい。
【0064】
「遺伝子編集導入遺伝子」とは、遺伝子編集プロセスに関与する剤または成分をコードするいずれかの核酸を意味する。「遺伝子編集」とは、一般に、ターゲティングされたDNAの挿入、置き換え、変異誘発または除去などの、ゲノムDNAに対する持続的または恒久的な改変を指す。遺伝子を編集は、発現されたタンパク質の部分もしくは全てをコードするDNA配列を標的としても、または標的遺伝子の発現に影響を及ぼすDNAの非コード配列を標的としてもよい。遺伝子編集は、目的のDNA配列をコードする核酸の送達、およびエンドヌクレアーゼを用いて目的の配列をゲノムDNA中の標的部位に挿入することを含む。
【0065】
エンドヌクレアーゼは、ゲノム中の所望される位置において二本鎖DNAの切断部を作り出し、宿主細胞の機構を使用して、相同組み換え、非相同末端結合などを用いて切断部を修復することができる。遺伝子を編集するために用いることができるエンドヌクレアーゼのクラスとして、これらに限定されないが、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPRおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられる。
【0066】
本明細書において提供される対象は、本明細書において提供される疾患または障害のいずれか1つであってよく、導入遺伝子は、本明細書において提供されるタンパク質のいずれか1つ、またはその内因性バージョンにおける欠損を補正するために用いることができる遺伝子編集剤をコードするものである。あるいは、いくつかの態様において、遺伝子を編集するウイルス導入ベクターはまた、本明細書において提供される治療用タンパク質またはその部分または核酸をコードする導入遺伝子を含んでもよい。いくつかの態様において、遺伝子を編集するウイルス導入ベクターは、本明細書において提供される治療用タンパク質またはその部分または核酸をコードする導入遺伝子を有するウイルス導入ベクターと共に、対象に投与することができる。
【0067】
「遺伝子発現調節導入遺伝子」は、遺伝子発現モジュレーターをコードするいずれかの核酸を指す。「遺伝子発現モジュレーター」とは、1以上の内在遺伝子の発現を、増強、阻害または調節することができる分子を指す。遺伝子発現モジュレーターは、したがって、DNA結合タンパク質(例えば、人工転写因子)ならびにRNA干渉を媒介する分子を含む。遺伝子発現モジュレーターは、RNAi分子(例えば、dsRNAまたはssRNA)、miRNA、および三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)を含む。遺伝子発現モジュレーターはまた、前述のRNA分子のいずれかの改変されたバージョンを含む、改変されたRNAを含んでもよい。
【0068】
本明細書において提供される対象は、本明細書において提供される疾患または障害のいずれか1つであってよく、導入遺伝子は、本明細書において提供されるタンパク質のいずれか1つの発現を制御するために用いることができる遺伝子発現モジュレーターをコードするものである。いくつかの態様において、対象は、タンパク質の対象の内因性バージョンが欠損しているか、または限定された量においてのみ産生されるか、全く産生されない疾患または障害を有し、遺伝子発現モジュレーターは、かかるタンパク質の発現を制御することができる。したがって、遺伝子発現モジュレーターは、いくつかの態様において、本明細書において提供されるタンパク質のいずれか1つまたはその内因性バージョン(例えば本明細書において提供される治療用タンパク質の内因性バージョン)の発現を制御することができる。
「遺伝子治療導入遺伝子」は、タンパク質または核酸などの発現産物をコードし、細胞に導入される場合に、タンパク質または核酸の発現を導く核酸を、指す。タンパク質の場合、タンパク質は、治療タンパク質であることができる。本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、ウイルス導入ベクターにより遺伝子治療導入遺伝子が投与される対象は、タンパク質の対象の内因性バージョンが欠損しているか、または限定された量においてのみ産生されるか、全く産生されない疾患または障害を有する。いくつかの態様において、コードされたタンパク質は、ヒトのカウンターパートを有しないが、疾患または障害の処置において治療的に有益な効果を提供することが予測される。
【0069】
「免疫抑制剤」は、好ましくはAPCに対する効果を通して、免疫寛容原性効果を引き起こす化合物を意味する。免疫寛容原性効果は、一般に、APCまたは他の免疫細胞による、全身性および/または局所的な調節であって、耐久的な様式において抗原に対する望ましくない免疫応答を阻害または予防するものを指す。一態様において、免疫抑制剤は、APCに、1以上の免疫エフェクター細胞における調節性の表現型を促進させるものである。例えば、調節性の表現型は、抗原特異的CD4+T細胞またはB細胞の産生、誘導、刺激または動員の阻害、抗原特異的抗体の産生の阻害、Treg細胞(例えば、CD4+CD25highFoxP3+Treg細胞)の産生、誘導、刺激または動員などにより特徴づけられ得る。このことは、CD4+T細胞またはB細胞の調節性の表現型への変換の結果であってもよい。このことはまた、CD8+T細胞、マクロファージおよびiNKT細胞などの他の免疫細胞におけるFoxP3の誘導の結果であってもよい。一態様において、免疫抑制剤は、APCが抗原をプロセッシングした後の応答に影響を及ぼすものである。別の態様において、免疫抑制剤は、抗原のプロセッシングに干渉するものではない。さらなる態様において、免疫抑制剤は、アポトーシスシグナル分子ではない。別の態様において、免疫抑制剤は、リン脂質ではない。
【0070】
いくつかの態様において、免疫抑制剤は、合成ナノキャリアの構造を構成する材料に加える要素である。例えば、一態様において、合成ナノキャリアが1以上のポリマーからなる場合、免疫抑制剤は、追加の、およびいくつかの態様においては1以上のポリマーに接着した、化合物である。別の例として、一態様において、合成ナノキャリアが、1以上の脂質からなる場合、免疫抑制剤は、やはり、1以上の脂質に加えるものであり、およびはいくつかの態様においては、接着している。他の実施態様において、合成ナノキャリアの材料も免疫寛容原性効果に結果としてなる場合に、免疫抑制剤は、免疫寛容原性効果に結果としてなる合成ナノキャリアの材料に加えて存在する要素である。
【0071】
免疫抑制剤として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシンアナログ(すなわち、ラパログ(rapalog))などのmTOR阻害剤;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;トリコスタチンAなどのヒストンデアセチラーゼ阻害剤;副腎皮質ステロイド;ロテノンなどのミトコンドリアの機能の阻害剤;P38阻害剤;6Bio、デキサメタゾン、TCPA-1、IKK VIIなどのNF-κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;ミソプロストールなどのプロスタグランジンE2アゴニスト(PGE2);ホスホジエステラーゼ阻害剤、ロリプラムなどのホスホジエステラーゼ4阻害剤(PDE4);プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;糖質コルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤;TGX-221などのPI3KB阻害剤;3-メチルアデニンなどのオートファジー阻害剤;アリール炭化水素受容体阻害剤;プロテアソーム阻害剤I(PSI);ならびにP2X受容体遮断薬などの酸化ATP。IDO、ビタミン D3、レチノイン酸、シクロスポリンAなどのシクロスポリン、アリール炭化水素受容体阻害剤、レスベラトロール、アザチオプリン (アザ)、6-メルカプトプリン (6-MP)、6-チオグアニン (6-TG)、FK506、サングリフィーリンA、サルメテロール、ミコフェノール酸モフェチル (MMF)、アスピリンおよび他のCOX阻害剤、ニフルミン酸、エストリオールおよびトリプトライド。他の例示的な免疫抑制剤として、限定されないが、低分子薬、天然生成物、抗体(例えば、CD20、CD3、CD4に対する抗体)、生物製剤ベースの薬物、炭水化物ベースの薬物、RNAi、アンチセンス核酸、アプタマー、メトトレキサート、NSAID;フィンゴリモド;ナタリズマブ;アレムツズマブ;抗CD3;タクロリムス(FK506)、アバタセプト、ベラタセプトなどが挙げられる。「ラパログ」とは、ラパマイシン(シロリムス)に構造的に関連する(そのアナログである)分子を指す。ラパログの例として、限定することなく、テムシロリムス(CCI-779)、エベロリムス(RAD001)、リダフォロリムス(AP-23573)、およびゾタロリムス(ABT-578)が挙げられる。ラパログのさらなる例は、例えばWO公開WO1998/002441および米国特許第8,455,510号において見出すことができ、それらのラパログは、本明細書においてその全体において参考として援用される。
さらなる免疫抑制剤は、当業者に公知であり、本発明は、この点において限定されない。
態様において、免疫抑制剤は、本明細書に提供される剤のいずれか1つを含んでもよい。
【0072】
「負荷量(load)」とは、合成ナノキャリアと共役する場合、合成ナノキャリア全体における材料の乾燥処方重量(重量/重量)に基づいた、合成ナノキャリアと共役する免疫抑制剤の量である。一般に、かかる負荷量は、合成ナノキャリアの集団全体の平均として計算される。一態様において、負荷量は、合成ナノキャリア全体の平均で0.1%と50%との間である。別の態様において、負荷量は、0.1%と20%との間である。さらなる態様において、負荷量は、0.1%と10%との間である。なおさらなる態様において、負荷量は、1%と10%との間である。なおさらなる態様において、負荷量は、7%と20%との間である。さらに別の態様において、負荷量は、合成ナノキャリアの集団全体の平均で、少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.3%、少なくとも0.4%、少なくとも0.5%、少なくとも0.6%、少なくとも0.7%、少なくとも0.8%、少なくとも0.9%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、または少なくとも25%である。そのうえさらなる態様において、負荷量は、合成ナノキャリアの集団全体の平均で、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%である。いくつかの上の態様のうちの態様において、負荷量は、合成ナノキャリアの集団全体の平均で、25%以下である。態様において、負荷量は、当該技術分野において公知のいかなる方法も使用して算出される。免疫抑制剤の負荷量は、合成ナノキャリアにおいて、本明細書に提供される負荷量のいずれか1つを含んでもよい。
【0073】
「合成ナノキャリアの最大寸法」とは、合成ナノキャリアのいずれかの軸に沿って測定されるナノキャリアの最大寸法を意味する。「合成ナノキャリアの最小寸法」とは、合成ナノキャリアのいずれかの軸に沿って測定される合成ナノキャリアの最小寸法を意味する。例えば、球体の合成ナノキャリアについて、合成ナノキャリアの最大および最小寸法は、実質的に同一であり、その直径のサイズである。同様に、立方状合成ナノキャリアについて、合成ナノキャリアの最小寸法は、その高さ、幅または長さのうちの最小のものであり、一方、合成ナノキャリアの最大寸法は、その高さ、幅または長さのうちの最大のものである。一態様において、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づいた、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nmと等しいか、またはこれより大きい。一態様において、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づいた、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、5μmと等しいか、またはこれより小さい。好ましくは、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づいた、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、110nmより大きく、より好ましくは120nmより大きく、より好ましくは130nmより大きく、より好ましくはなお、150nmより大きい。合成ナノキャリアの最大および最小寸法のアスペクト比は、態様に依存して変化し得る。例えば、合成ナノキャリアの最小寸法に対する最大寸法のアスペクト比は、1:1~1,000,000:1、好ましくは1:1~100,000:1、より好ましくは1:1~10,000:1、より好ましくは1:1~1000:1、なおより好ましくは1:1~100:1、およびさらにより好ましくは1:1~10:1の間で変化し得る。好ましくは、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づいた、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、3μmと等しいか、またはこれより小さく、より好ましくは2μmと等しいか、またはこれより小さく、より好ましくは1μmと等しいか、またはこれより小さく、より好ましくは800nmと等しいか、またはこれより小さく、より好ましくは600nmと等しいか、またはこれより小さく、およびより好ましくはなお、500nmと等しいか、またはこれより小さい。好ましい態様において、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づいた、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nmと等しいか、またはこれより大きく、より好ましくは120nmと等しいか、またはこれより大きく、より好ましくは130nmと等しいか、またはこれより大きく、より好ましくは140nmと等しいか、またはこれより大きく、およびより好ましくはなお、150nmと等しいか、またはこれより大きい。合成ナノキャリアの寸法(例えば有効直径)の測定は、いくつかの態様において、合成ナノキャリアを液体(通常は水性)媒体中に懸濁して、動的光散乱(DLS)を用いること(例えばBrookhaven ZetaPALS装置を用いること)により、得ることができる。例えば、合成ナノキャリアの懸濁液を、約0.01~0.1mg/mLの最終合成ナノキャリア懸濁液濃度を達成するために、水性バッファーから精製水中で希釈することができる。希釈された懸濁液は、DLS分析のために好適なキュベット中で直接調製しても、またはこれに移してもよい。キュベットを、次いで、DLS内に置き、制御された温度まで平衡化させて、次いで、媒体の粘度および試料の屈折率のための適切なインプットに基づいて、安定で再現性のある分布を得るために十分な時間にわたりスキャンすることができる。有効直径、または分布の平均を、次いで報告させる。高アスペクト比または非球形の合成ナノキャリアの有効サイズを決定することは、より正確な測定値を得るために、電子顕微鏡法などの増強技術を必要とする場合がある。合成ナノキャリアの「次元」または「寸法」または「直径」は、例えば動的光散乱を用いて得られる粒子サイズ分布の平均を意味する。「非メトキシ末端のポリマー」とは、メトキシ以外の部分で終了する少なくとも1つの末端を有するポリマーを意味する。いくつかの態様において、ポリマーは、メトキシ以外の部分で終了する少なくとも2つの末端を有する。他の態様において、ポリマーは、メトキシで終了する末端を有しない。
【0074】
「非メトキシ末端のプルロニックポリマー」とは、両端にメトキシを有する直鎖状プルロニックポリマー以外のポリマーを意味する。本明細書において提供されるポリマーナノ粒子は、いくつかの態様において、非メトキシ末端のポリマーまたは非メトキシ末端のプルロニックポリマーを含むことができる。他の態様において、ポリマーナノ粒子は、かかるポリマーを含まない。「薬学的に許容し得る賦形剤」または「薬学的に許容し得るキャリア」とは、組成物を処方するために薬理学的に活性な材料と一緒に用いられる薬理学的に不活性な材料を意味する。薬学的に許容し得る賦形剤は、当該分野において公知の多様な材料を含み、これは、限定されないが、糖(例えばグルコース、ラクトースなど)、抗菌剤などの保存剤、再構成補助剤、色素、食塩水(例えばリン酸緩衝化食塩水)およびバッファーを含む。
【0075】
「プロトコル」とは、対象に投与するパターンを意味し、1以上の物質の対象へのいずれかの投薬レジメンを含む。プロトコルは、要素(または変数)からなり;したがって、プロトコルは、1以上の要素を含む。プロトコルのかかる要素は、投薬量(用量)、投薬頻度、投与の経路、投薬期間、投薬速度、投薬の間隔、前述のもののいずれかの組み合わせなどを含んでもよい。いくつかの態様において、プロトコルは、1以上の本発明の組成物を、1以上の試験対象に投与するために用いることができる。これらの試験対象における免疫応答を、次いで、所望される、または所望されるレベルの、免疫応答または治療効果を生じることにおいてプロトコルが有効であったか否かを決定するために評価することができる。いずれかの治療効果および/または免疫性効果を評価することができる。プロトコルの要素の1以上は、非ヒト対象などの試験対象において前に実証されていてもよく、次いでヒトプロトコルに翻訳してもよい。例えば、相対成長率または他の尺度法などの確立された技術を用いて、非ヒト対象において実証された投薬量を、トプロトコルの要素としてスケーリングしてもよい。プロトコルが所望される効果を有したか否かは、本明細書において提供されるかまたは他の当該分野において公知の方法のうちのいずれかを用いて決定することができる。例えば、試料は、特定の免疫細胞、サイトカイン、抗体などが、低下、産生または活性化されたか否かなどを決定するために、本明細書において提供される組成物が特定のプロトコルにしたがって投与された対象から得ることができる。例示的なプロトコルは、ウイルス導入ベクター抗原に対する免疫寛容原性免疫応答に結果としてなること、または本明細書において記載の有益な結果のいずれか1つを達成することが、以前に示されているものである。
【0076】
免疫細胞の存在および/または数検出するために有用な方法として、これらに限定されないが、フローサイトメトリー法(例えば、FACS)、ELISpot、増殖応答、サイトカイン産生、および免疫組織化学法が挙げられる。免疫細胞マーカーの特異的染色のための抗体および他の結合剤は、市販されている。かかるキットは、典型的には、FACSベースの検出、不均一な細胞の集団からの所望される細胞集団の精製および/または定量化を可能にする、抗原についての染色試薬を含む。態様において、本明細書において提供される組成物は、選択された要素が対象において所望される結果を達成すると予測されることを前提として、プロトコルを構成する要素の1もしくは2以上、または全てもしくは実質的に全てを用いて、対象に投与される。かかる予測は、試験対象において決定されたプロトコルおよび必要とされる場合にはスケーリングに基づくものであってよい。本明細書に提供される方法のいずれか1つは、免疫抑制剤と、IgM応答などの、抗ウイルス導入ベクター免疫応答を減弱化し、および/またはウイルス導入ベクターの反復投与をゆるす、および/またはウイルス導入ベクターに対する1以上の免疫応答の減弱化に結果としてなる、および/または増加した導入遺伝子発現に結果としてなるために示されたプロトコルにしたがって本明細書に記載の抗IgM剤とを含む合成ナノキャリアと組み合わせて、ウイルス導入ベクターの用量を投与するステップを、含んでもよいかさらに含んでもよい。本明細書において提供される方法のいずれか1つは、本明細書において記載の有益な結果のいずれか1つを達成するかかるプロトコルを決定することを含んでもよいか、またはこれをさらに含んでもよい。本明細書において提供される方法のいずれか1つは、本明細書において記載の有益な結果のいずれか1つを達成するプロトコルに従い投与することを含んでもよいか、またはこれをさらに含んでもよい。
【0077】
「反復用量」または「反復投薬」または類似のものは、同じ材料の以前の用量または投薬の後に対象に投与される、少なくとも1回のさらなる用量または投薬を意味する。例えば、ウイルス導入ベクターの反復用量は、同じ材料の以前の用量の後の、ウイルス導入ベクターの少なくとも1回のさらなる用量である。材料は同じであってよいが、一方で、反復用量中の材料の量は、以前の用量と異なっていてもよい。本明細書に提供されるように、反復用量は、例の間隔などで、投与されてもよい。反復投薬は、それが対象のために有益な効果に結果としてなる場合、有効であると考えられる。好ましくは、有効な反復投与は、減弱化された抗ウイルス導入ベクター応答と連動して、治療効果などの、有益な効果に結果としてなる。
【0078】
「同時(simultaneous)」とは、医師が、投与の間のいずれかの時間を、所望される治療成績に対して影響を及ぼすためには実質的に無または無視し得ると考えるであろう場合に、同じ時間または実質的に同じ時間における投与を意味する。いくつかの態様において、同時とは、投与が、5、4、3、2、1分間またはそれより短い時間内に起きることを意味する。
【0079】
「対象」とは、ヒトおよび霊長類などの温血哺乳動物;鳥類;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマおよびブタなどの家庭内または家畜動物;マウス、ラットおよびモルモットなどの実験動物;魚類;爬虫類;動物園および野生の動物などを含む動物を意味する。本明細書において用いられる場合、対象は、本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つを必要とするものであってよい。
【0080】
「合成ナノキャリア(単数または複数)」とは、天然では見出されない個別の物体であって、サイズが5マイクロメートルより小さいか、またはこれと等しい、少なくとも1つの寸法を有するものを意味する。アルブミンナノ粒子は、一般に合成ナノキャリアとして含まれるが、しかし、ある態様においては、合成ナノキャリアは、アルブミンナノ粒子を含まない。態様において、合成ナノキャリアは、キトサンを含まない。他の態様において、合成ナノキャリアは、脂質ベースのナノ粒子ではない。さらなる態様において、合成ナノキャリアは、リン脂質を含まない。
【0081】
合成ナノキャリアは、これらに限定されないが、1つまたは複数の脂質ベースのナノ粒子(また本明細書において液体ナノ粒子、すなわち、それらの構造を構成する材料の大部分が脂質であるナノ粒子としても言及される)、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤー、ウイルス様粒子(すなわち、主にウイルスの構造タンパク質からなるが、感染性ではないか、低い感染性を有する粒子)、ペプチドまたはタンパク質ベースの粒子(また本明細書において、タンパク質粒子、すなわち、それらの構造を構成する材料の大部分がペプチドもしくはタンパク質である粒子としても言及される)(アルブミンナノ粒子など)および/または脂質-ポリマーナノ粒子などのナノ材料の組み合わせを用いて開発されるナノ粒子であってもよい。合成ナノキャリアは、多様な異なる形状であってよく、これは、限定されないが、球体、立方状、錐体、長方形、円柱状、ドーナツ型などを含む。本発明による合成ナノキャリアは、1以上の表面を含む。本発明の実施における使用のために適応させることができる例示的な合成ナノキャリアは、以下を含む:(1)Grefらに対する米国特許5,543,158において開示される生分解性ナノ粒子、(2)Saltzmanらに対する米国特許出願公開20060002852のポリマーナノ粒子、(3)DeSimoneらに対する米国特許出願公開20090028910のリソグラフィーにより構築されるナノ粒子、(4)von Andrianらに対するWO 2009/051837の開示、(5)Penadesらに対する米国特許出願公開2008/0145441において開示されるナノ粒子、(6)de los Riosらに対する米国特許出願公開20090226525において開示されるタンパク質ナノ粒子、(7)Sebbelらに対する米国特許出願公開20060222652において開示されるウイルス様粒子、(8)Bachmannらに対する米国特許出願公開20060251677において開示される核酸結合ウイルス様粒子、(9)WO2010047839A1またはWO2009106999A2において開示されるウイルス様粒子、(10)P. Paolicelli et al., 「Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles」Nanomedicine. 5(6): 843-853 (2010)において開示されるナノ沈殿させたナノ粒子、(11)米国公開2002/0086049において開示されるアポトーシス細胞、アポトーシス小体または合成もしくは半合成模倣物、あるいは(12)Look et al., Nanogel-based delivery of mycophenolic acid ameliorates systemic lupus erythematosus in mice」J. Clinical Investigation 123(4): 1741-1749 (2013)のもの。
【0082】
約100nmと等しいかこれより小さい、好ましくは100nmと等しいかこれより小さい最小寸法を有する、本発明による合成ナノキャリアは、補体を活性化するヒドロキシル基を有する表面を含まないか、あるいは、補体を活性化するヒドロキシル基ではない部分から本質的になる表面を含む。好ましい態様において、約100nmと等しいかこれより小さい、好ましくは100nmと等しいかこれより小さい最小寸法を有する、本発明による合成ナノキャリアは、補体を実質的に活性化する表面を含まないか、あるいは、補体を実質的に活性化しない部分から本質的になる表面を含む。より好ましい態様において、約100nmと等しいかこれより小さい、好ましくは100nmと等しいかこれより小さい最小寸法を有する、本発明による合成ナノキャリアは、補体を活性化する表面を含まないか、あるいは、補体を活性化しない部分から本質的になる表面を含む。態様において、合成ナノキャリアは、ウイルス様粒子を除外する。態様において、合成ナノキャリアは、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7より大きい、または1:10より大きいアスペクト比を有してもよい。
【0083】
「治療用タンパク質」とは、本明細書において提供される遺伝子治療導入遺伝子から発現され得るいずれかのタンパク質を意味する。治療用タンパク質は、タンパク質の置き換えまたはタンパク質の補充のために用いられるものであってよい。治療用タンパク質として、これらに限定されないが、酵素、酵素補因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカイン、増殖因子などが挙げられる。他の治療用タンパク質の例は、本明細書において他の場所で提供される。対象は、本明細書において提供される治療用タンパク質のいずれかによる処置を必要とするものであってよい。
【0084】
「ウイルス導入ベクターの導入遺伝子」とは、細胞中に輸送するためにウイルス導入ベクターが用いられる核酸材料であって、一旦細胞中に入ると、発現して、本明細書において記載のような治療的適用のためのタンパク質または核酸分子を産生するものを指す。導入遺伝子は、遺伝子治療導入遺伝子、遺伝子編集導入遺伝子、遺伝子発現調節導入遺伝子またはエクソンスキッピング導入遺伝子であってよい。「発現される」または「発現」または類似のものは、導入遺伝子が細胞中に形質導入されて、形質導入された細胞によりプロセッシングされた後の、機能的(すなわち、所望される目的のために生理学的に活性な)遺伝子産物の合成を指す。かかる遺伝子産物はまた、本明細書において「導入遺伝子発現産物」としても言及される。発現された産物は、したがって、導入遺伝子によりコードされた結果としてのタンパク質または核酸、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは治療用RNAを含む。
【0085】
「ウイルス導入ベクター」は、本明細書に提供されるように、導入遺伝子などの、核酸を送達するのに適していたウイルスのベクターを意味し、かかる核酸を含む。「ウイルスベクター」とは、ウイルス導入ベクターのウイルス成分の全てを、指す。したがって、「ウイルス抗原」は、それが送達する導入遺伝子などの核酸ではなく、カプシドまたはコートタンパク質などの、ウイルス導入ベクターのウイルス成分の抗原を、またはそれがコードするいずれかの生成物を、指す。「ウイルス導入ベクター抗原」は、導入遺伝子などの送達された核酸と同様に、そのウイルス成分を含むウイルス導入ベクターのいずれかの抗原、またはそれらのいずれかの発現生成物を、指す。導入遺伝子は、遺伝子治療導入遺伝子、遺伝子編集導入遺伝子、遺伝子発現調節導入遺伝子またはエクソンスキッピング導入遺伝子であってよい。いくつかの態様において、導入遺伝子は、治療用タンパク質、DNA結合タンパク質またはエンドヌクレアーゼなどの本明細書において提供されるタンパク質をコードするものである。
【0086】
他の態様において、導入遺伝子は、ガイドRNA、アンチセンス核酸、snRNA、RNAi分子(例えば、dsRNAもしくはssRNA)、miRNA、または三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)などをコードするものである。ウイルスベクターは、限定することなく、レトロウイルス(例えば、マウスレトロウイルス、トリレトロウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーヴェイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳房腫瘍ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV))、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、アルファウイルスなどに基づくものであってよい。他の例は、本明細書において他の場所において提供されるか、当該分野において公知である。ウイルスベクターは、ウイルスの天然のバリアント、株、または血清型、例えば本明細書において提供されるもののいずれか1つに基づくものであってよい。ウイルスベクターはまた、分子進化を通して選択されるウイルスに基づくものであってよい。ウイルスベクターはまた、操作されたベクター、組み換えベクター、変異体ベクター、またはハイブリッドベクターであってよい。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、「キメラウイルスベクター」である。かかる態様において、このことは、ウイルスベクターが、1種より多くのウイルスまたはウイルスベクターに由来するウイルス成分からなることを意味する。
C.本発明の方法における使用のための組成物
【0087】
重要なことに、明細書に提供される方法および組成物が、ウイルス導入ベクターに対して、IgM応答などの、本免疫応答を減弱化することが、わかった。その上、本明細書に提供される方法および組成物が、導入遺伝子発現の実質的増加を、可能にすることが、わかった。
【0088】
本明細書において提供される方法および組成物は、ウイルス導入ベクターによる対象の処置のために有用である。ウイルス導入ベクターは、遺伝子治療、遺伝子編集、遺伝子発現調節およびエクソンスキッピングのためのものを含む多様な目的のために導入遺伝子を送達するために用いることができ、本明細書において提供される方法および組成物もまた、そのように適用可能である。
導入遺伝子
【0089】
本明細書において提供されるウイルス導入ベクターの導入遺伝子は、遺伝子治療導入遺伝子であってよく、疾患または障害によるものなどの、対象にとって有益ないずれかのタンパク質またはその部分をコードしてもよい。タンパク質は、細胞外、細胞内、または膜結合タンパク質であってよい。該タンパク質は、治療用タンパク質であり、ウイルス導入ベクターにより遺伝子治療導入遺伝子が投与される対象は、当該タンパク質の対象の内因性バージョンが欠損しているか、限定された量で産生されるか、または全く産生されない疾患または障害を有する。したがって、対象は、本明細書において提供される疾患または障害のいずれか1つを有するものであってよく、導入遺伝子は、本明細書において提供される治療用タンパク質またはその部分のいずれか1つをコードするものであってもよい。
【0090】
治療用タンパク質の例として、これらに限定されないが、注入可能なまたは注射可能な治療用タンパク質、酵素、酵素補因子、ホルモン、血液または血液凝固因子、サイトカインおよびインターフェロン、増殖因子、アディポカインなどが挙げられる。
【0091】
注入可能なまたは注射可能な治療用タンパク質の例として、例えば、トシリズマブ(Roche/Actemra(登録商標))、アルファ-1アンチトリプシン(Kamada/AAT)、Hematide(登録商標)(AffymaxおよびTakeda、合成ペプチド)、アルブインターフェロンアルファ-2b(Novartis/Zalbin(商標))、Rhucin(登録商標)(Pharming Group、C1阻害剤補充療法)、テサモレリン(Theratechnologies/Egrifta、合成成長ホルモン放出因子)、オクレリズマブ(Genentech、RocheおよびBiogen)、ベリムマブ(GlaxoSmithKline/Benlysta(登録商標))、ペグロチカーゼ(Savient Pharmaceuticals/Krystexxa(商標))、タリグルセラーゼアルファ(Protalix/Uplyso)、アガルシダーゼアルファ(Shire/Replagal(登録商標))、ならびにベラグルセラーゼアルファ(Shire)が挙げられる。
【0092】
酵素の例として、リゾチーム、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、アスパラギナーゼ、ウリカーゼ、グリコシダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、ヘパリナーゼ、ヘパラナーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、溶解素およびリガーゼが挙げられる。酵素の他の例は、酵素補充療法のために用いられるものを含み、これは、限定されないが、イミグルセラーゼ(例えば、CEREZYME(商標))、a-ガラクトシダーゼA(a-gal A)(例えば、アガルシダーゼベータ、FABRYZYME(商標))、酸a-グルコシダーゼ(GAA)(例えば、アルグルコシダーゼアルファ、LUMIZYME(商標)、MYOZYME(商標))、およびアリールスルファターゼB(例えば、ラロニダーゼ、ALDURAZYME(商標)、イデュルスルファーゼ、ELAPRASE(商標)、アリールスルファターゼB、NAGLAZYME(商標))を含む。
【0093】
ホルモンの例は、性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、メラノコルチン、脳下垂体ホルモン、バゾプレシン、オキシトシン、成長ホルモン、プロラクチン、オレキシン、ナトリウム排泄増加ホルモン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、エリスロポイエチン、および膵臓ホルモンを含むが、これらに限定されない。
【0094】
血液または血液凝固因子の例として、第I因子(フィブリノーゲン)、第II因子(プロトロンビン)、組織因子、第V因子(プロアクセレリン、不安定因子)、第VII因子(安定因子、プロコンバーチン)、第VIII因子(抗血友病性グロブリン)、第IX因子(クリスマス因子または血漿トロンボプラスチン成分)、第X因子(スチュアート・プロワー因子)、第Xa因子、第XI因子、第XII因子(ハーゲマン因子)、第XIII因子(フィブリン安定化因子)、フォン・ヴィルブランド因子、フォン・ヘルデブラント因子、プレカリクレイン(フレッチャー因子)、高分子キニノーゲン(HMWK)(フィッツジェラルド因子)、フィブロネクチン、フィブリン、トロンビン、アンチトロンビンIIIなどのアンチトロンビン、ヘパリンコファクターII、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-アンチプラスミン、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤-1(PAI1)、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤-2(PAI2)、癌凝血原(cancer procoagulant)、およびエポエチンアルファ(Epogen、Procrit)が挙げられる。
【0095】
サイトカインの例として、リンホカイン、インターロイキン、ならびにケモカイン、IFN-γ、TGF-βなどの1型サイトカイン、ならびにIL-4、IL-10およびIL-13などの2型サイトカインが挙げられる。
【0096】
増殖因子の例として、アドレノメデュリン(AM)、アンギオポエチン(Ang)、自己分泌型細胞運動刺激因子、骨形成タンパク質(BMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮増殖因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリア細胞由来神経栄養因子受容体(GDNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、肝細胞腫由来増殖因子(HDGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、遊走刺激因子、ミオスタチン(GDF-8)、神経増殖因子(NGF)および他のニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、Wntシグナル伝達経路、胎盤増殖因子(PlGF)、[(ウシ胎仔ソマトトロフィン)](FBS)、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6およびIL-7が挙げられる。
アディポカインの例として、レプチンおよびアディポネクチンが挙げられる。
【0097】
治療用タンパク質のさらなる例として、これらに限定されないが、受容体、シグナル伝達タンパク質、細胞骨格タンパク質、足場タンパク質、転写因子、構造タンパク質、膜タンパク質、細胞質タンパク質、結合タンパク質、核タンパク質、分泌型タンパク質、ゴルジ体タンパク質、小胞体タンパク質、ミトコンドリアタンパク質、および小胞タンパク質などが挙げられる。
【0098】
本明細書において提供される遺伝子治療用ウイルス導入ベクターの導入遺伝子は、対象におけるその内因性バージョンの何らかの欠損(内因性バージョン発現の欠損を含む)を通して、対象において疾患または障害に結果としてなる、いずれかのタンパク質の機能的なバージョンをコードしていてもよい。かかる疾患または障害の例として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:リソソーム蓄積性疾患/障害、例えばSantavuori-Haltia病(小児性神経セロイドリポフスチン沈着症1型)、Jansky-Bielschowsky病(遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症、2型)、バッテン病(若年性神経セロイドリポフスチン症、3型)、クーフス病(神経セロイドリポフスチン症、4型)、フォン・ギールケ病(糖原病、Ia型)、糖原病、Ib型、ポンペ病(糖原病、II型)、フォーブス病またはコリ病(糖原病、III型)、ムコリピドーシスII(I-細胞病)、ムコリピドーシスIII(偽性ハーラー・ポリジストロフィー)、ムコリピドーシスIV(シアロリピドーシス(sialolipidosis))、シスチン症(成人非腎症性型)、シスチン症(小児性腎症性型)、シスチン症(若年性または青年性腎症型)、サラ病/小児型シアル酸蓄積障害、およびサポシン欠損;脂質およびスフィンゴ脂質分解の障害、例えばGM1ガングリオシドーシス(小児性、遅発型小児性/若年性、および成人型/慢性)、テイ・サックス病、サンドホフ病、GM2ガングリオシドーシス、Abバリアント、ファブリー病、ゴーシェ病、I、IIおよびIII型、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病(早発型および遅発型)、ニーマン・ピック病、A、B、C1およびC2型、ファーバー病およびウォルマン病(コレステリルエステル蓄積症);ムコ多糖分解の障害、例えばハーラー症候群(MPSI)、シャイエ症候群(MPS IS)、ハーラー・シャイエ症候群(MPS IH/S)、ハンター症候群(MPS II)、サンフィリポA症候群(MPS IIIA)、サンフィリポB症候群(MPS IIIB)、サンフィリポC症候群(MPS IIIC)、サンフィリポD症候群(MPS IIID)、モルキオA症候群(MPS IVA)、モルキオB症候群(MPS IVB)、マロトー・ラミー症候群(MPS VI)、およびスライ症候群(MPS VII);糖タンパク質分解の障害、例えばアルファマンノース症、ベータマンノース症、フコシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、ムコリピドーシスI(シアリドーシス)、ガラクトシアリドーシス、シンドラー病、およびII型シンドラー病/神崎病;ならびに白質ジストロフィー疾患/障害、例えば、無ベータリポ蛋白血症、新生児副腎白質ジストロフィー、カナバン病、脳腱黄色腫症、ペリツェウス・メルツバッヘル病、タンジール病、小児性レフサム病、および古典的レフサム病。
【0099】
本明細書において提供される対象のかかる疾患/障害のさらなる例として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:酸性マルターゼ欠損症(例えば、ポンペ病、糖原病2型、リソソーム蓄積症);カルニチン欠損症;カルニチンパルミチルトランスフェラーゼ欠損症;
【0100】
脱分枝酵素欠損症(例えば、コリ病またはフォーブス病、糖原病3型);ラクタート デヒドロゲナーゼ 欠乏症 (例として、グリコーゲンosis タイプ 11);ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症;ホスホフルクトキナーゼ欠損症(例えば、垂井病、糖原病7型);ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症(例えば、糖原病9型);ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症(例えば、糖原病10型);ホスホリラーゼ欠損症(例えば、マッカードル病、筋ホスホリラーゼ欠損症、糖原病5型);ゴーシェ病(例えば、染色体1、酵素グルコセレブロシダーゼが影響を受ける);軟骨無形成症(例えば、染色体4、線維芽細胞増殖因子受容体3が影響を受ける);ハンチントン病(例えば、染色体4、ハンチンチン);ヘモクロマトーシス(例えば、染色体6、HFEタンパク質);嚢胞性線維症(例えば、染色体7、CFTR);フリートライヒ運動失調症(染色体9、フラタキシン);ベスト病(染色体11、VMD2);鎌状赤血球症(染色体11、ヘモグロビン);フェニルケトン尿症(染色体12、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ);マルファン症候群(染色体15、フィブリリン);筋緊張性ジストロフィー(染色体19、筋緊張性ジストロフィータンパク質キナーゼ);副腎白質ジストロフィー(X染色体、ペルオキシソーム中のリグノセロイル-CoAリガーゼ);デュシェンヌ筋ジストロフィー(X染色体、ジストロフィン);レット症候群(X染色体、メチルCpG結合タンパク質2);レーベル遺伝性視神経症(ミトコンドリア、呼吸器タンパク質);ミトコンドリア脳症、乳酸アシドーシスおよび脳卒中(MELAS)(ミトコンドリア、トランスファーRNA);
ならびに尿素回路の酵素欠損。
【0101】
かかる疾患または障害のなおさらなる例として、これらに限定されないが、鎌状赤血球貧血、筋細管ミオパチー、血友病B、リポタンパク質リパーゼ欠損症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、クリグラー・ナジャー症候群、ムコリピドーシスIV、ニーマン・ピック病A、サンフィリポA、サンフィリポB、サンフィリポC、サンフィリポD、b-地中海貧血症およびデュシェンヌ型筋ジストロフィーが挙げられる。疾患または障害のなおさらなる例として、脂質およびスフィンゴ脂質分解、ムコ多糖分解、糖タンパク質分解における欠損の結果であるもの、白質ジストロフィーなどが挙げられる。
【0102】
本明細書において提供される疾患または障害のいずれか1つの欠損タンパク質の機能的バージョンは、遺伝子治療用ウイルス導入ベクターの導入遺伝子によりコードされていてもよく、また治療用タンパク質と考えられる。治療用タンパク質もまた、筋ホスホリラーゼ、グルコセレブロシダーゼ、線維芽細胞増殖因子受容体3、ハンチンチン、HFEタンパク質、CFTR、フラタキシン、VMD2、ヘモグロビン、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、フィブリリン、筋強直性ジストロフィータンパク質キナーゼ、リグノセロイル-CoAリガーゼ、ジストロフィン、メチルCpG結合タンパク質2、ベータヘモグロビン、ミオチューブラリン、カテプシンA、第IX因子、リポタンパク質リパーゼ、ベータガラクトシダーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、イズロン酸-2-スルファターゼ、酸性アルファグルコシダーゼ、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ1-1、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ、ムコリピン(Mucolipin)-1、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質、スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダーゼ、ライソゾーム酸性リパーゼ、アルファ-L-イズロニダーゼ、ヘパランN-スルファターゼ、アルファ-N-アセチルグルコサミニダーゼ、アセチル-CoAアルファ-グルコサミニドアセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ、N-アセチルガラクトサミン-6スルファターゼ、アルファ-マンノシダーゼ、アルファ-ガラクトシダーゼA、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子および呼吸器タンパク質を含むということになる。
【0103】
さらなる例として、治療用タンパク質はまた、以下に関連するタンパク質の機能的バージョンを含む:脂質およびスフィンゴ脂質分解の障害(例えば、β-ガラクトシダーゼ-1、β-ヘキソサミニダーゼA、β-ヘキソサミニダーゼAおよびB、GM2アクチベータータンパク質、8-ガラクトシダーゼA、グルコセレブロシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、アリールスルファターゼA、ガラクトシルセラミダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、NPC1、HE1タンパク質(コレステロール輸送の欠陥)、酸性セラミダーゼ、ライソゾーム酸性リパーゼ);ムコ多糖分解の障害(例えば、L-イズロニダーゼ、L-イズロニダーゼ、L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、ヘパランN-スルファターゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、アセチル-CoA-グルコサミニダーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ、ガラクトサミン-6-スルファターゼ、アリールスルファターゼB、グルクロニダーゼ);糖タンパク質分解の障害(例えば、マンノシダーゼ、マンノシダーゼ、l-フコシダーゼ、アスパルチルグルコサミニダーゼ、ノイラミニダーゼ、リソソーム保護タンパク質、リソソーム8-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、リソソーム8-N-アセチルガラクトサミニダーゼ);リソソーム蓄積障害(例えば、パルミトイル-タンパク質チオエステラーゼ、少なくとも4種のサブタイプ、リソソーム膜タンパク質、未知、グルコース-6-ホスファターゼ、グルコース-6-ホスファートトランスロカーゼ、酸性マルターゼ、脱分枝酵素アミロ-1,6グルコシダーゼ、N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ、ガングリオシドシアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)、リソソームシステイン輸送タンパク質、リソソームシステイン輸送タンパク質、リソソームシステイン輸送タンパク質、シアル酸輸送タンパク質サポニンA、B、C、D)および白質ジストロフィー(例えば、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質/アポリポタンパク質B、ペルオキシソーム膜輸送タンパク質、ペルオキシン、アスパルトアシラーゼ、ステロール-27-ヒドロキシラーゼ、プロテオリピドタンパク質、ABC1トランスポーター、ペルオキシソーム膜タンパク質3またはペルオキシソーム新生因子1、フィタン酸オキシダーゼ)。
【0104】
本明細書において提供されるウイルス導入ベクターは、遺伝子編集のために用いることができる。かかる態様において、ウイルス導入ベクターの導入遺伝子は、遺伝子編集導入遺伝子である。かかる導入遺伝子は、遺伝子編集プロセスに関与する剤または成分をコードする。一般に、かかるプロセスは、ゲノムDNAに対する、ターゲティングされたDNAの挿入、置き換え、変異誘発または除去などの、持続性のまたは恒久的な改変に結果としてなる。
【0105】
遺伝子編集は、目的のDNA配列をコードする核酸の送達、およびエンドヌクレアーゼを用いて目的の配列をゲノムDNA中の標的部位に挿入することを含む。したがって、遺伝子編集導入遺伝子は、挿入のための目的のDNA配列をコードするこれらの核酸を含んでもよい。
【0106】
いくつかの態様において、挿入のためのDNA配列は、本明細書において提供される治療用タンパク質のいずれかをコードするDNA配列である。あるいは、またはこれに加えて、遺伝子編集導入遺伝子は、単独で、または他の成分と組み合わせて遺伝子編集プロセスを行う1以上の成分をコードする核酸を、含んでもよい。本明細書において提供される遺伝子編集導入遺伝子は、エンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNAなどをコードしていてもよい。
【0107】
エンドヌクレアーゼは、ゲノム中の所望される位置において二本鎖DNA中に切断部を作り出し、宿主細胞の機構を用いて、相同組み換え、非相同末端結合などを用いて切断部を修復する。遺伝子を編集するために用いることができるエンドヌクレアーゼのクラスとして、これらに限定されないが、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPRおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられる。本明細書において提供されるウイルス導入ベクターの遺伝子編集導入遺伝子は、本明細書において提供されるエンドヌクレアーゼのいずれか1つをコードしていてもよい。
【0108】
メガヌクレアーゼは、一般に、それらがDNA配列を認識して切断する能力により特徴づけられる(約14~40塩基対)。加えて、変異誘発およびハイスループットスクリーニングおおよびコンビナトリアルアセンブリなどの公知の技術を用いて、カスタマイズされたメガヌクレアーゼを作り出すことができ、ここで、タンパク質のサブユニットを会合または融合させることができる。メガヌクレアーゼの例は、米国特許第8,802,437号、同第8,445,251号および同第8,338,157号;ならびに米国公開番号20130224863、20110113509および20110033935において見出すことができ、これらのメガヌクレアーゼは、本明細書において参考として援用される。
【0109】
ジンクフィンガーヌクレアーゼは、典型的には、核酸分子内の特異的な標的部位に結合するジンクフィンガードメイン、および結合ドメインに結合した標的部位内またはその近傍において核酸分子を切断する核酸切断ドメインを含む。典型的な操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼは、3~6の個別のジンクフィンガーモチーフを有し、9塩基対~18塩基対の範囲の長さの標的部位に結合する、結合ドメインを含む。ジンクフィンガーヌクレアーゼは、所与の核酸分子中の実質的にあらゆる所望される配列を、切断のための標的とするように設計することができる。例えば、既知の特異性の個々のジンクフィンガーモチーフを組み合わせることにより、所望される特異性を有するジンクフィンガー結合ドメインを設計することができる。DNAに結合したジンクフィンガータンパク質Zif268の構造は、この分野における研究の多くの情報をもたらし、64の可能な塩基対トリプレットの各々についてジンクフィンガーを得て、次いでこれらのモジュラージンクフィンガーを混合およびマッチングして、いずれかの所望される配列特異性を有するタンパク質を設計するというコンセプトが記載されている(Pavletich NP, Pabo CO(1991年5月)、「Zinc finger-DNA recognition:crystal structure of a Zif268-DNA complex at 2.1 A」、Science 252 (5007):809-17;この全内容は、本明細書において参考として援用される)。いくつかの態様において、細菌またはファージディスプレイを用いて、所望される核酸配列、例えば所望されるエンドヌクレアーゼ標的部位を認識するジンクフィンガードメインを開発する。ジンクフィンガーヌクレアーゼは、いくつかの態様において、リンカー、例えばポリペプチドリンカーを介して互いに融合または他の方法で共役した、ジンクフィンガー結合ドメインと切断ドメインとを含む。リンカーの長さにより、ジンクフィンガードメインに結合した核酸配列からの切断部の距離を決定することができる。ジンクフィンガーヌクレアーゼの例は、米国特許第8,956,828号;同第8,921,112号;同第8,846,578号;同第8,569,253号において見出すことができ、そのジンクフィンガーヌクレアーゼは、は、本明細書において参考として援用される。
【0110】
TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、特異的DNA結合ドメインを一般的なDNA切断ドメインに融合させることにより作製された、人工制限酵素である。いずれかの所望されるDNA配列に結合するように設計することができるDNA結合ドメインは、植物に感染する特定の細菌により排出されるDNA結合タンパク質であるトランスクリプション・アクチベーター-ライク(transcription activator-like)(TAL)エフェクターに由来する。TALエフェクター(TALE)は、実際にいずれかのDNA配列に結合するように設計するか、または一緒に結合させてDNA切断ドメインと組み合わせてアレイにすることができる。TALENは、ジンクフィンガーヌクレアーゼを設計するために同様に用いることができる。TALENの例は、米国特許第8,697,853号;ならびに米国公開番号20150118216、20150079064および20140087426において見出すことができ、そのTALENSは、本明細書において参考として援用される。
【0111】
CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/Casシステムもまた、遺伝子編集のためのツールとして用いることができる。CRISPR/Casシステムにおいて、ガイドRNA(gRNA)は、ゲノムにより、またはエピソームにより(例えば、プラスミド上で)コードされる。gRNAは、転写に続いて、Cas9エンドヌクレアーゼなどのエンドヌクレアーゼと複合体を形成する。複合体は、次いで、gRNAの特異性決定配列(SDS)により、典型的には細胞のゲノム中に位置するDNA標的配列にガイドされる。Cas9またはCas9エンドヌクレアーゼとは、RNAによりガイドされる、Cas9タンパク質、またはそのフラグメント(例えば、Cas9の活性もしくは不活性なDNA切断ドメインまたは部分的に不活性なDNA切断ドメイン(例えば、Cas9ニッカーゼ(nickase))、および/あるいはCas9のgRNA結合ドメインを含むタンパク質)を含む、エンドヌクレアーゼを指す。Cas9は、CRISPR反復配列中の短いモチーフ(PAMまたはプロトスペーサー(protospacer)隣接モチーフ)を認識して、自己と非自己を区別することを助ける。Cas9エンドヌクレアーゼの配列および構造は、当業者に周知である(例えば「Complete genome sequence of an M1 strain of Streptococcus pyogenes.」Ferretti J.J., McShan W.M., Ajdic D.J., Savic D.J., Savic G., Lyon K., Primeaux C., Sezate S., Suvorov A.N., Kenton S., Lai H.S., Lin S.P., Qian Y., Jia H.G., Najar F.Z., Ren Q., Zhu H., Song L. expand/collapse author list McLaughlin R.E., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98:4658-4663(2001);「CRISPR RNA maturation by trans-encoded small RNA and host factor RNase III.」Deltcheva E., Chylinski K., Sharma C.M., Gonzales K., Chao Y., Pirzada Z.A., Eckert M.R., Vogel J., Charpentier E., Nature 471:602-607(2011);および「A programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity.」Jinek M., Chylinski K., Fonfara I., Hauer M., Doudna J.A., Charpentier E. Science 337:816-821(2012) を参照)。sgRNA(single guide RNA:「sgRNA」または単に「gNRA」)は、crRNAとtracrRNAとの両方の側面を単一のRNA種中に組み込むように操作することができる。
例えば、Jinek M., Chylinski K., Fonfara I., Hauer M., Doudna J.A., Charpentier E.参照。
Science 337:816-821(2012)を参照。
【0112】
Cas9のオルトログは、多様な種において記載されており、これは、これらに限定されないが、S. pyogenesおよびS. thermophilusを含む。さらなる好適なCas9エンドヌクレアーゼおよび配列は、当業者には明らかであり、かかるCas9エンドヌクレアーゼおよび配列は、Chylinski、RhunおよびCharpentier、「The tracrRNA and Cas9 families of type II CRISPR-Cas immunity systems」(2013)RNA Biology 10:5, 726-737において開示される生物および遺伝子座からのCas9配列を含む。いくつかの態様において、遺伝子編集導入遺伝子は、野生型Cas9、フラグメントまたはCas9バリアントをコードする。「Cas9バリアント」は、Cas9の機能を有するいずれかのタンパク質であって、天然に存在するCas9野生型エンドヌクレアーゼと同一ではないものである。いくつかの態様において、Cas9バリアントは、野生型Cas9またはそのフラグメントに対して相同性を共有する。Cas9バリアントは、いくつかの態様において、Streptococcus pyogenesまたはS. thermophilusのCas9タンパク質に対して少なくとも40%の配列同一性を有し、Cas9の機能性を保持する。好ましくは、配列同一性は、少なくとも90%、95%であるかまたはそれより高い。より好ましくは、配列同一性は、少なくとも98%または99%の配列同一性である。本明細書において提供される方法のいずれか1つにおける使用のためのCas9バリアントのいずれか1つのいくつかの態様において、配列同一性は、アミノ酸配列同一性である。Cas9バリアントはまた、Cas9二量体、Cas9融合タンパク質、Cas9フラグメント、最小化されたCas9タンパク質、切断ドメインを有しないCas9バリアント、gRNAドメインを有しないCas9バリアント、Cas9リコンビナーゼ融合物、fCas9、FokI-dCas9などを含む。かかるCas9バリアントの例は、例えば、米国公開番号20150071898および20150071899において見出すことができ、そのCas9タンパク質およびCas9バリアントの記載は、本明細書において参考として援用される。
【0113】
Cas9バリアントはまた、Cas9ニッカーゼを含み、これは、Cas9中の単一のエンドヌクレアーゼドメインを不活化する変異を含む。かかるニッカーゼは、標的核酸において、二本鎖切断とは対照的に、一本鎖の切断を誘導することができる。Cas9バリアントはまた、1つのヌクレアーゼドメインが変異により不活化されているCas9バリアントであるCas9ヌルヌクレアーゼを含む。さらなるCas9バリアントおよびさらなるCas9バリアントを同定する方法の例は、米国公開番号20140357523、20150165054および20150166980において見出すことができ、Cas9タンパク質、Cas9バリアントおよびそれらの同定の方法に関するこれらの内容は、本明細書において参考として援用される。
【0114】
Cas9バリアントのなお他の例は、Cas9D10Aとして知られるニッカーゼ活性のみを有する変異形態を含む。Cas9D10Aは、遺伝子座が、隣接するDNAニックを生じるように設計された一対のCas9複合体により標的とされる場合に、標的特異性に関して魅力的である。
【0115】
Cas9バリアントの別の例は、ヌクレアーゼ欠損Cas9(dCas9)である。HNHドメインにおける変異H840AおよびRuvCドメインにおける変異D10Aは、切断活性を不活化するが、DNA結合を妨げない。したがって、このバリアントは、切断をともなくことなくゲノムのいずれかの領域を配列特異的にターゲティングするために、用いることができる。実際に、多様なエフェクタードメインと融合させることにより、dCas9は、遺伝子サイレンシングまたは活性化のいずれかのツールとして用いることができる。遺伝子編集導入遺伝子は、いくつかの態様において、本明細書において提供されるCas9バリアントのいずれか1つをコードしていてもよい。
【0116】
Cas9などのRNAによりプログラム可能なエンドヌクレアーゼを部位特異的な切断のために(例えばゲノムを改変するために)用いる方法は、当該分野において公知である(例えば、Cong, L. et al. Multiplex genome engineering using CRISPR/Cas systems. Science 339, 819-823 (2013);Mali, P. et al. RNA-guided human genome engineering via Cas9. Science 339, 823-826 (2013);Hwang, W.Y. et al. Efficient genome editing in zebrafish using a CRISPR-Cas system. Nature biotechnology 31, 227-229 (2013);Jinek, M. et al. RNA-programmed genome editing in human cells. eLife 2, e00471 (2013);Dicarlo, J.E. et al. Genome engineering in Saccharomyces cerevisiae using CRISPR-Cas systems. Nucleic acids research (2013);Jiang, W. et al. RNA-guided editing of bacterial genomes using CRISPR-Cas systems. Nature biotechnology 31, 233-239 (2013)を参照)。
【0117】
ホーミングエンドヌクレアーゼは、数個または単一の位置において、それらを合成するために用いられたゲノムDNAの加水分解を触媒することができ、それにより、それらの遺伝子を宿主中で水平方向に伝達して、それらの対立遺伝子頻度を増大することができる。
【0118】
ホーミングエンドヌクレアーゼは、一般に、長い認識配列を有し、それにより、それらは、低い確率の無作為切断を有する。1つの対立遺伝子は、伝達の前に遺伝子を担持し(ホーミングエンドヌクレアーゼ遺伝子+、HEG+)、一方、他方はこれを担持せず(HEG-)、酵素切断されやすい。酵素は、合成された後、HEG-の対立遺伝子において染色体を破壊し、細胞のDNA修復システムからの応答を開始させ、これが、組み換えを用いて、エンドヌクレアーゼのための遺伝子を含む、損傷を受けていないDNA対立遺伝子HEG+の逆のパターンを取る。したがって、遺伝子は、初めはそれを有しなかった別の対立遺伝子にコピーされ、首尾よく伝播される。ホーミングエンドヌクレアーゼの例は、例えば、米国公開番号20150166969;および米国特許第9,005,973号において見出すことができ、そのホーミングエンドヌクレアーゼは、本明細書において参考として援用される。
【0119】
本明細書において提供されるウイルス導入ベクターは、遺伝子発現調節のために用いることができる。かかる態様において、ウイルス導入ベクターの導入遺伝子は、遺伝子発現調節導入遺伝子である。かかる導入遺伝子は、1以上の内在遺伝子の発現を増強するか、阻害するか、または調節することができる、遺伝子発現モジュレーターをコードする。内在遺伝子は、本明細書において提供されるタンパク質のいずれか1つをコードしていてもよい(当該タンパク質が対象の内因性タンパク質であることを前提とする)。したがって、対象は、遺伝子発現調節により提供される利益が存在するであろう、本明細書において提供される疾患または障害のいずれか1つを有するものであってよい。
【0120】
遺伝子発現モジュレーターは、DNA結合タンパク質(例えば、人工転写因子、例えば米国公開番号20140296129のもの(その人工転写因子は、本明細書において参考として援用される);および米国公開番号20030125286の転写サイレンサータンパク質(そのNRF転写サイレンサータンパク質NRFは、本明細書において参考として援用される))、ならびに治療用RNAを含む。治療用RNAとして、これらに限定されないが、mRNA翻訳の阻害剤(アンチセンス)、RNA干渉の剤(RNAi)、触媒活性RNA分子(リボザイム)、トランスファーRNA(tRNA)、ならびにタンパク質および他の分子リガンドに結合するRNA(アプタマー)が挙げられる。遺伝子発現モジュレーターは、前述のうちのいずれかの剤を含み、アンチセンス核酸、RNAi分子(例えば、二本鎖RNA(dsRNA)、一本鎖RNA(ssRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA))および三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)を含む。遺伝子発現モジュレーターはまた、前述のRNA分子のいずれかの改変されたバージョンを含んでもよく、したがって、改変されたmRNA、例えば合成化学的に改変されたRNAを含む。
【0121】
遺伝子発現モジュレーターは、アンチセンス核酸であってもよい。アンチセンス核酸は、遺伝子発現(例えば、変異体タンパク質、優性的に活性な遺伝子産物、毒性に関連するタンパク質、またはウイルスなどの感染性の剤により細胞中に導入される遺伝子産物の発現)の、ターゲティングされた阻害を提供することができる。したがって、遺伝子発現調節ウイルス導入ベクターは、ドミナント・ネガティブまたは機能獲得型の病原機構に関連する疾患もしくは障害、がんまたは感染症を処置するために用いることができる。本明細書において提供される方法のいずれか1つの対象は、ウイルス感染、炎症性障害、心血管疾患、がん、遺伝子障害または自己免疫性疾患を有する対象であってよい。
【0122】
アンチセンス核酸はまた、mRNAスプライシング機構に干渉して、正常な細胞によるmRNAプロセッシングを妨害することができる。したがって、遺伝子発現調節導入遺伝子は、スプライソソームと相互作用する要素をコードしていてもよい。アンチセンス核酸(および関連するコンストラクト)の例は、例えば、米国公開番号20050020529および20050271733において見出すことができ、そのアンチセンス核酸およびコンストラクトは、本明細書において参考として援用される。
【0123】
遺伝子発現モジュレーターはまた、リボザイム(すなわち、一本鎖RNAなどの他のRNAを切断することができるRNA分子)であってもよい。かかる分子は、RNA分子中の特異的なヌクレオチド配列を認識して、それを切断するように操作することができる(Cech, J. Amer. Med. Assn., 260:3030, 1988)。例えば、リボザイムは、そのリボザイムを含むコンストラクトに相補的な配列を有するmRNAのみが不活化されるように、操作することができる。リボザイムの型および関連するコンストラクトを調製する方法は、当該分野において公知である(Hasselhoff et al., Nature, 334:585, 1988; and 米国公開番号20050020529;かかるリボザイムおよび方法に関するその教示は、本明細書において参考として援用される)。
【0124】
遺伝子発現モジュレーターは、干渉RNA(RNAi)であってよい。RNA干渉は、干渉RNAにより媒介される配列特異的な転写後の遺伝子サイレンシングのプロセスを指す。一般に、dsRNAの存在は、RNAi応答を引き起こし得る。RNAiは、多様な系において研究されてきた。Fire et al., 1998, Nature, 391, 806、C. elegansにおけるRNAi;Bahramian and Zarbl, 1999, Molecular and Cellular Biology, 19, 274-283およびWianny and Goetz, 1999, Nature Cell Biol., 2, 70、哺乳動物系においてdsRNAにより媒介されるRNAi;Hammond et al., 2000, Nature, 404, 293、ショウジョウバエ細胞におけるRNAi in Drosophila cells;Elbashir et al., 2001, Nature, 411, 494、培養哺乳動物細胞において合成の21ヌクレオチドのRNAの二本鎖の導入により誘導されるRNAi。かかる研究は、他のものと共に、RNAi活性を媒介するためにRNAi分子の構築において役立つ、長さ、構造、化学組成および配列に関するガイダンスを提供してきた。多様な刊行物が、遺伝子発現モジュレーターとして用いることができるRNAi分子の例を提供する。かかる刊行物として、米国特許第8,993,530号、同第8,877,917号、同第8,293,719号、同第7,947,659号、同第7,919,473号、同第7,790,878号、同第7,737,265号、同第7,592,322号;ならびに米国公開番号20150197746、20140350071、20140315835、20130156845および20100267805が開挙げられ、RNAi分子の型ならびにそれらの作製に関する教示は、本明細書において参考として援用される。
【0125】
アプタマーは、多様なタンパク質標的に結合して、それらのタンパク質の他のタンパク質との相互作用を妨害することができる。したがって、遺伝子発現モジュレーターは、アプタマーであってもよく、遺伝子発現調節導入遺伝子は、かかるアプタマーをコードしていてもよい。アプタマーは、それらが、調節性タンパク質のDNA結合部位に特異的に結合することにより遺伝子の転写を妨げる能力のために選択され得る。PCT公開番号WO 98/29430およびWO 00/20040は、遺伝子発現を調節するために用いられたアプタマーの例を提供し;米国公開番号20060128649もまた、かかるアプタマーの例を提供する;これらの各々のアプタマーは、本明細書において参考として援用される。
さらなる例として、遺伝子発現の調節は、三重鎖オリゴマーであってもよい。
【0126】
かかる分子は、転写を停止させることができる。一般に、これは、オリゴマーが二重らせんDNAの周りを取り巻き、三重鎖らせんを形成するので、三重鎖戦略として知られる。かかる分子は、選択された遺伝子上のユニークな部位を認識するように設計することができる(Maher et al., Antisense Res. and Dev., 1(3):227, 1991;Helene, C., Anticancer Drug Design, 6(6):569, 1991)。
【0127】
本明細書において提供されるウイルス導入ベクターはまた、エクソンスキッピングのために用いることができる。かかる態様において、ウイルス導入ベクターの導入遺伝子は、エクソンスキッピング導入遺伝子である。かかる導入遺伝子は、エクソンスキッピングを生じることができるアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは他の剤をコードする。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、エクソン内のスプライス部位または調節要素に干渉して、遺伝子変異の存在に関わらず部分的に機能的な、短縮されたタンパク質に結果としてなることができる。加えて、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、変異特異的であってもよく、メッセンジャーRNA前駆体中の変異部位に結合してエクソンスキッピングを誘導することができる。エクソンスキッピングのためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、当該分野において公知であり、一般に、AONと称される。かかるAONは、snRNAを含む。アンチセンスオリゴヌクレオチド、それらを設計する方法および関連する作製方法の例は、例えば、米国公開番号20150225718、20150152415、20150140639、20150057330、20150045415、20140350076、20140350067および20140329762において見出すことができ、それらのAON、ならびに記載の関連する方法、例えばAONを設計および作製する方法は、その全体において本明細書において参考として援用される。
本明細書において提供される方法のいずれか1つは、それを必要とする対象の細胞においてエクソンスキッピングに結果としてなるために用いることができる。
【0128】
対象は、エクソンスキッピングが利益に結果としてなるであろういずれかの疾患または障害を有していてよく、かかる疾患または障害に関連する適切な(その発現の間のエクソンスキッピングが有益であろう)タンパク質に基づいて、アンチセンスオリゴヌクレオチドを設計することができる。疾患および障害ならびに関連するタンパク質の例は、本明細書において提供される。本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、対象は、筋ジストロフィー(例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィー)などの本明細書において記載のジストロフィーのいずれか1つを有する。したがって、本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、エクソンスキッピング導入遺伝子は、本明細書において提供されるジストロフィーのいずれか1つと関連する本明細書において提供されるタンパク質のいずれか1つにおいてエクソンスキッピングに結果としてなることができる、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは他の剤をコードする。本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは他の剤は、ジストロフィンにおいてエクソンスキッピングに結果としてなることができる。
【0129】
導入遺伝子の配列はまた、発現制御配列を含んでもよい。発現制御DNA配列は、プロモーター、エンハンサーおよびオペレーターを含み、一般に、発現コンストラクトが利用されるべき発現系に基づいて選択される。いくつかの態様において、プロモーターおよびエンハンサー配列は、遺伝子発現を増大する能力のために選択され、一方、オペレーター配列は、遺伝子発現を調節する能力のために選択され得る。導入遺伝子はまた、宿主細胞中での相同組み換えを容易にする、および好ましくは促進する、配列を含んでもよい。導入遺伝子はまた、宿主細胞中での複製のために必要である配列を含んでもよい。
【0130】
例示的な発現制御配列は、プロモーター配列、例えば、サイトメガロウイルスプロモーター;ラウス肉腫ウイルスプロモーター;およびサルウイルス40プロモーター;ならびに本明細書において他の場所で開示されるか当該分野において他に公知のいずれかの他の型のプロモーターを含む。一般に、プロモーターは、所望される発現産物をコードする配列の上流(すなわち5')で作動的に連結される。導入遺伝子はまた、コード配列の下流で作動的に連結された(すなわち3')好適なポリアデニル化配列(例えば、SV40またはヒト成長ホルモン遺伝子ポリアデニル化配列)を含んでもよい。
ウイルスベクター
【0131】
ウイルスは、それらが感染する細胞の内部でそれらのゲノムを輸送するために特化した機構を進化させてきた;かかるウイルスに基づくウイルスベクターは、特別な用途のために細胞に形質移入するように仕立てることができる。本明細書において提供されるとおり用いることができるウイルスベクターの例は、当該分野において公知であるか、本明細書において記載の。好適なウイルスベクターとして、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)に基づくベクター、アデノウイルスに基づくベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくベクター、およびAAV-アデノウイルスキメラベクターが挙げられる。
【0132】
本明細書において提供されるウイルス導入ベクターは、レトロウイルスに基づくものであってもよい。レトロウイルスは、広範な宿主細胞に感染することができる一本鎖ポジティブ・センスRNAウイルスである。感染すると、レトロウイルスゲノムは、そのRNAゲノムからDNAを生成するためにそれ自身の転写酵素を用いて、その宿主細胞のゲノム中に組み込まれる。ウイルスDNAが、次いで、ウイルスおよび宿主の遺伝子を翻訳および転写する宿主細胞DNAと共に複製される。レトロウイルスベクターは、ウイルス複製能力を失うように操作することができる。したがって、レトロウイルスベクターは、in vivoでの安定な遺伝子導入のために特に有用であると考えられる。レトロウイルスベクターの例は、例えば、米国公開番号20120009161、20090118212および20090017543において見出すことができ、そのウイルスベクターおよびそれらの作製の方法は、本明細書においてその全体において参考として援用される。
【0133】
レンチウイルスベクターは、本明細書において提供されるウイルス導入ベクターの作製のために用いることができるレトロウイルスベクターの例である。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染する能力を有し、これは、遺伝子送達ベクターのより効率的な方法を構成する特性である(例えば、Durand et al., Viruses. 2011 Feb; 3(2):132-159を参照)。レンチウイルスの例として、HIV(ヒト)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)およびビスナウイルス(ヒツジレンチウイルス)が挙げられる。他のレトロウイルスとは異なり、HIVに基づくベクターは、それらのパッセンジャー遺伝子を非分裂細胞中に組み込むことが知られている。レンチウイルスベクターの例は、例えば、米国公開番号20150224209、20150203870、20140335607、20140248306、20090148936および20080254008において見出すことができ、そのウイルスベクターおよびそれらの作製の方法は、本明細書においてその全体において参考として援用される。
【0134】
単純ヘルペスウイルス(HSV)に基づくウイルスベクターもまた、本明細書において提供される使用のために好適である。多くの複製欠損HSVベクターは、複製を防止するために、1以上のintermediate-early遺伝子を取り除く欠失を含む。
【0135】
ヘルペスベクターの利点は、潜伏期に入る能力により長期のDNA発現に結果としてなることができること、および大きなウイルスDNAゲノムにより25kbまでの外来DNAを収容することができることである。HSVに基づくベクターの記載については、例えば、米国特許第5,837,532号、同第5,846,782号、同第5,849,572号および同第5,804,413号、ならびに国際特許出願WO 91/02788、WO 96/04394、WO 98/15637およびWO 99/06583を参照;そのウイルスベクターおよびそれらの作製の方法の記載は、その全体において参考として援用される。
【0136】
アデノウイルス(Ad)は、多様な異なる標的細胞型にin vivoでDNAを導入することができる無エンベロープウイルスである。ウイルスは、ウイルス複製のために必要とされる選択遺伝子を欠失させることにより、複製欠損にすることができる。より大きなDNAインサートのためのさらなる余地を可能にするために、犠牲にしてもよい複製に必須でないE3領域もまた頻繁に欠失させられる。ウイルス導入ベクターは、アデノウイルスに基づいていてもよい。アデノウイルス導入ベクターは、高い力価において作製することができ、DNAを複製中および非複製中の細胞に効率的に導入することができる。レンチウイルスとは異なり、アデノウイルスDNAは、ゲノム中には組み込まれず、したがって、細胞分裂の間には複製せず、その代わりに、それらは宿主細胞の核内で、宿主の複製機構を用いて複製する。
ウイルス導入ベクターの基礎となるアデノウイルスは、いずれかの起源、いずれかのサブグループ、いずれかのサブタイプ、サブタイプの混合物、またはいずれかの血清型からのものであってよい。
【0137】
例えば、アデノウイルスは、サブグループA(例えば、血清型12、18および31)、サブグループB(例えば、血清型3、7、11、14、16、21、34、35および50)、サブグループC(例えば、血清型1、2、5および6)、サブグループD(例えば、血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22~30、32、33、36~39および42~48)、サブグループE(例えば、血清型4)、サブグループF(例えば、血清型40および41)、未分類の血清群(例えば、血清型49および51)、またはいずれかの他のアデノウイルス血清型のものであってよい。アデノウイルス血清型1~51は、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas, Va.)から入手可能である。非C群アデノウイルス、および非ヒトアデノウイルスですら、複製欠損アデノウイルスベクターを調製するために用いることができる。
【0138】
非C群アデノウイルスベクター、非C群アデノウイルスベクターを作製する方法、および非C群アデノウイルスベクターを用いる方法は、例えば、米国特許第5,801,030号、同第5,837,511号および同第5,849,561号、ならびに国際特許出願WO 97/12986およびWO 98/53087において開示される。いずれかのアデノウイルス、キメラアデノウイルスですら、アデノウイルスベクターのためのウイルスゲノムのソースとして用いることができる。
【0139】
例えば、ヒトアデノウイルスを、複製欠損アデノウイルスベクターのためのウイルスゲノムのソースとして用いることができる。アデノウイルスベクターのさらなる例は、米国公開番号20150093831、20140248305、20120283318、20100008889、20090175897および20090088398において見出すことができ、そのウイルスベクターおよびそれらの作製の方法の記載は、その全体において参考として援用される。
【0140】
本明細書において提供されるウイルス導入ベクターはまた、アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づいていてもよい。AAVベクターは、本明細書において記載のもののような治療的適用における使用のために、特に関心を集めて来た。AAVは、ヒト疾患を引き起こすことは知られていないDNAウイルスである。一般に、AAVは、効率的な複製のために、ヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルスまたはヘルペスウイルス)との共感染またはヘルパー遺伝子の発現を必要とする。AAVは、宿主細胞ゲノムに特定の部位において安定に感染する能力を有し、それにより、レトロウイルスより予測可能である;しかし、一般に、ベクターのクローニング能力は4.9kbである。遺伝子治療の適用において用いられてきたAAVベクターは、一般に、DNA複製およびパッケージングのための認識シグナルを含む末端反復(ITR)のみが残るように、親ゲノムの約96%を欠失している。AAVに基づくベクターの記載については、例えば、米国特許第8,679,837号、同第8,637,255号、同第8,409,842号、同第7,803,622号および同第7,790,449、ならびに米国公開番号20150065562、20140155469、20140037585、20130096182、20120100606および20070036757を参照;そのウイルスベクターおよびそれらの作製の方法は、は、本明細書においてその全体において参考として援用される。AAVベクターは、組み換えAAVベクターであってよい。AAVベクターはまた、自己相補的(sc)AAVベクターであってよく、これは、例えば、米国特許公開2007/01110724および2004/0029106、ならびに米国特許第7,465,583号および同第7,186,699号において記載され、ベクターおよびその作製の方法は、本明細書において参考として援用される。
【0141】
ウイルス導入ベクターの基礎となるアデノ随伴ウイルスは、いずれかの血清型または血清型の混合物のものであってよい。AAV血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびAAV11を含む。例えば、ウイルス導入ベクターが血清型の混合物に基づく場合、ウイルス導入ベクターは、AAV血清型の1つ(例えばAAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10および11のいずれか1つから選択される)から取得されるカプシドシグナル配列、ならびに異なる血清型(例えばAAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10および11のいずれか1つから選択される)からのパッケージング配列を含んでもよい。したがって、本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、AAVベクターは、AAV 2/8ベクターである。本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つの他の態様において、AAVベクターは、AAV 2/5ベクターである。
【0142】
本明細書において提供されるウイルス導入ベクターはまた、アルファウイルスに基づいていてもよい。アルファウイルスとして、シンドビス(およびVEEV)ウイルス、アウラ(Aura)ウイルス、ババンキ(Babanki)ウイルス、バーマフォレストウイルス、ベバル(Bebaru)ウイルス、カバソウ(Cabassou)ウイルス、チクングニアウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、エバーグレード(Everglades)ウイルス、フォートモーガン(Fort Morgan)ウイルス、ゲタウイルス、ハイランドJ(Highlands J)ウイルス、キジラガチ(Kyzylagach)ウイルス、マヤロウイルス、メトリ(Me Tri)ウイルス、ミデルバーグ(Middelburg)ウイルス、モッソダスペドラス(Mosso das Pedras)ウイルス、ムカンボウイルス、ヌドゥムウイルス、オニョンニョンウイルス、ピクスナウイルス、リオネグロウイルス、ロスリバーウイルス、サケ膵臓病ウイルス、セムリキ森林ウイルス、南部ゾウアザラシ(Southern elephant seal)ウイルス、トナテ(Tonate)ウイルス、トロカラ(Trocara)ウイルス、ウナウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、およびワタロアウイルスが挙げられる。一般に、かかるウイルスのゲノムは、宿主細胞の細胞質中で翻訳されることができる、非構造タンパク質(例えばレプリコン)および構造タンパク質(例えば、カプシドおよびエンベロープ)をコードする。ロスリバーウイルス、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス(SFV)、およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)は全て、導入遺伝子送達のためのウイルス導入ベクターを開発するために用いられてきた。シュードタイプウイルスは、アルファウイルスのエンベロープ糖タンパク質とレトロウイルスのカプシドとを組み合わせることにより形成させることができる。アルファウイルスベクターの例は、米国公開番号20150050243、20090305344および20060177819において見出すことができ;ベクターおよびそれらの作製の方法は、その全体において本明細書において参考として援用される。
抗IgM剤
抗IgM剤は、IgM、例として、IgM抗体の産生を低下させる、いずれかの剤である。
【0143】
IgM抗体は、B細胞によって産生される。IgG抗体が、B細胞のT細胞依存的な活性化に応答してまず産生される一方で、IgM抗体は、ウイルスのベクターに伴う感染に応答して生じるなどの、T細胞から独立したB細胞活性化に応答してまず産生される。
【0144】
抗IgM剤は、CD10、CD19、CD20、CD22、CD27、CD34、CD40、CD79a、CD79b、CD123、CD179b、FLT-3、ROR1、BR3、BAFF、またはB7RP-1に特異的に結合する、IgMアンタゴニスト抗体またはそれらの抗原結合フラグメント;IL21調節剤、例として、IL-21およびIL-21受容体アンタゴニスト;チロシンキナーゼ阻害剤、例として、Syk阻害剤、BTK阻害剤、SRCタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤;PI3K阻害剤;PKC阻害剤;APRIL アンタゴニスト、例として、TACI-Ig;ミゾリビン;トファシチニブ;および、テトラサイクリンを含むが、これらに限定されない。
IgMアンタゴニスト抗体
【0145】
いくつかの態様において、抗IgM剤は、IgMアンタゴニスト抗体またはそれらの抗原結合フラグメントである。いくつかの態様において、抗体は、B細胞上の細胞表面分子を標的とし、そして、抗体の結合は、対象の免疫系を補充し、B細胞を攻撃して、殺す。
【0146】
いくつかの態様において、抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、CD10、CD19、CD20、CD22、CD27、CD34、CD40、CD79a、CD79b、CD123、CD179b、FLT-3、ROR1、BR3、BAFF、またはB7RP-1に特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体は、抗CD10抗体、例として、CD10を特異的に結合する抗体である。例示的な抗CD10抗体は、J5を含むが、これに限定されない。いくつかの態様において、抗体は、抗CD27抗体、例として、CD27を特異的に結合する抗体である。CD27は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。いくつかの態様において、抗体は、抗CD34抗体、例として、CD34を特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、抗体は、抗CD79a抗体、例として、CD79aを特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、抗体は、抗CD79b抗体、例として、CD79bを特異的に結合する抗体である。例示的な抗CD79b抗体は、ポラツズマブベドチンを含むが、これに限定されない。いくつかの態様において、抗体は、抗CD123抗体、例として、CD123を特異的に結合する抗体である。例示的な抗CD123抗体は、KHK2823およびCSL362を含むが、これらに限定されない。いくつかの態様において、抗体は、抗CD179b抗体、例として、CD179bを特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、抗体は、抗FLT-3抗体、例として、FLT-3を特異的に結合する抗体である。例示的な抗FLT-3抗体は、ソラフェニブおよびキザルチニブを含むが、これらに限定されない。いくつかの態様において、抗体は、抗ROR1抗体、例として、ROR1を特異的に結合する抗体である。例示的な抗ROR1抗体は、シルムツズマブを含むが、これに限定されない。いくつかの態様において、抗体は、抗BR3抗体、例として、BR3を特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、抗体は、抗B7RP-1抗体、例として、B7RP-1を特異的に結合する抗体である。例示的な抗B7RP-1抗体は、プレザルマブを含むが、これに限定されない。
いくつかの態様において、抗体は、抗CD19抗体、例として、CD19を特異的に結合する抗体である。例示的な抗CD19抗体は、MOR00208(MorphoSysAG)を含むが、これに限定されない。
【0147】
いくつかの態様において、抗体は、抗CD20抗体、例として、CD20を特異的に結合する抗体である。例示的な抗CD20抗体は、リツキシマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、ヨウ素131トシツモマブ(Bexxar)、イブリツモマブ、ヒアルロニダーゼ/リツキシマブ、およびイブリツモマブを含むが、これらに限定されない。
いくつかの態様において、抗体は、抗CD22抗体、例として、CD22を特異的に結合する抗体である。
例示的な抗CD22抗体は、エプラツズマブおよびモキセツモマブを含むが、これらに限定されない。
【0148】
いくつかの態様において、抗体は、抗CD40抗体、例として、CD40を特異的に結合する抗体である。例示的な抗CD40抗体は、ABBV-927(Abbvie)およびAPX005M(Apexigen)を含むが、これらに限定されない。
【0149】
いくつかの態様において、抗体は、抗BAFF抗体またはそれらの抗原結合フラグメントである。BAFF、B細胞活性化因子(Bリンパ球スティミュレーター)は、B細胞の発生および維持のための重要なサイトカインである。BAFFは複数の受容体を有し、BAFF-Rなどの、B細胞の種々のクラスにシグナルを伝達することにおいて重要な役割を果たし、それは、初期のB細胞ホメオスタシスおよびT-reg機能およびB細胞成熟抗原(BCMA)において選択的および重要であり、それは抗体産生細胞に限定され、そして、血漿細胞の長寿にとって重要である。ベリムマブなどの抗BAFF抗体は、BAFFを特異的に結合する剤を含むことができる。抗BAFF抗体は、BAFFと、BAFF-RおよびBCMA(B細胞成熟抗原)などの、その受容体との間の相互作用を、干渉してもよい。抗BAFF抗体は商業的に入手可能であり、そして、当業者は、一定の剤が、抗BAFF抗体であるかどうか、確かめることが可能である。本明細書に記載の、さもなくば公知の抗BAFF抗体、またはそれらの抗原結合フラグメントのいずれか1つは、提供される方法のいずれか1つにおいて使用されてもよいか、または提供される組成物またはキットのいずれか1つに含まれてもよい。
【0150】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、結合することができ、その標的の活性を少なくとも50%(例として、60%、70%、80%、90%、95%以上)阻害することができる。本明細書に記載の抗体またはそれらの抗原結合性フラグメントのいずれかの阻害性活性は、たとえば、ELISAによって当該技術分野において公知のルーチンの方法によって決定されることができる。さらにその上、結合アフィニティー(または結合特異性)は、平衡透析、平衡結合、ゲルろ過、ELISA、表面プラズモン共鳴、または(例として、蛍光アッセイを使用する)分光法を含む様々な方法によって、決定されることができる。 本明細書に使用されているように、「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続する少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質を、指す。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書にHCVRまたはVHと略記される)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3からなる。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書にLCVRまたはVLと略記される)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)からなる。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と名付けられ、より保護され、フレームワーク領域(FRs)と名付けられた領域により点在された超可変性の領域に、さらに再分割されることができる。それぞれのVHおよびVLは、3つのCDRおよび4FRsで構成され、以下の順序で、アミノ末端からカルボキシ末端まで調整される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0151】
重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、にすることまたは免疫系(例として、エフェクター細胞)の様々な細胞および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を、仲介してもよい。
【0152】
本明細書に使用されているように、抗体の「抗原結合フラグメント」は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上の部分を、指す。抗体の抗原結合性機能は、全長の抗体のフラグメントによって遂行されることができる。抗体の、用語「抗原結合フラグメント」内に包含される結合フラグメントの例は、以下を含む:(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなるFabフラグメント、一価のフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む、F(ab’)2フラグメント、二価フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなる、Fvフラグメント、
【0153】
(v)VHドメインからなる、dAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)。さらにその上、Fvフラグメント、VおよびVH、の2つのドメインが、別々の遺伝子によってコードされるにもかかわらず、それらを、VLおよびVH領域が一対になる単一タンパク質鎖として作成され、一価の分子を形成することを可能にする合成リンカーによって、組み換え方法を用いて、それらは、接続されることができる(単鎖Fv(scFv)として公知;例としてBird et al. (1988) Science 242:423-426; and Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883参照)。かかる単鎖抗体は、抗体の、用語「抗原結合性部分」内に包含されることも、意図する。J. Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp 98-118 (N.Y. Academic Press 1983)に記載されているように、これらの抗体フラグメントは、タンパク分解性断片化手順などの、従来の手順を使用して得られ、それは、当業者に公知の他の技法と同様に、本願明細書により参考として援用される。フラグメントは、完全な抗体と同様の手法で、有用性に関してスクリーニングされることができる。
【0154】
本明細書において提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの態様において、該抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、抗体またはそれらの抗原結合フラグメントに基づいて操作された配列によって、産生されてもよい。
【0155】
本明細書に記載の抗体の例は、商業的に入手可能であり、そして、当業者は、一定の剤が、CD10、CD19、CD20、CD22、CD27、CD34、CD40、CD79a、CD79b、CD123、CD179b、FLT-3、ROR1、BR3、BAFF、またはB7RP-1抗体であるかどうかを、確かめることが可能である。
【0156】
本明細書に記載の、さもなくば公知の抗体、またはそれらの抗原結合フラグメントのいずれか1つは、提供される方法のいずれか1つにおいて使用されてもよいか、または提供される組成物またはキットのいずれか1つに含まれてもよい。
チロシンキナーゼ阻害剤
いくつかの態様において、抗IgM剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、例として、syk阻害剤、BTK阻害剤、またはSRCタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤である。
【0157】
いくつかの態様において、抗IgM剤は、syk阻害剤である。例示的なSyk阻害剤は、フォスタマチニブ(R788)、エントスプレチニブ(GS-9973)、セルズラテニブ(PRT062070)、およびTAK-659(エントスプレチニブおよびニルバジピン)を含むが、これらに限定されない。
【0158】
いくつかの態様において、抗IgM剤は、BTK阻害剤である。BTK阻害剤は、BTKの小型分子阻害剤、BTKに対する抗体、およびBTKの発現を低下させるアンチセンスオリゴマーおよびRNAi阻害剤を、含む。例示的なBTK阻害剤は、AVL-292、CC-292、ONO-4059、ACP-196、PCI-32765、アカラブルチニブ、GS-4059、スペブルチニブ、BGB-3111、およびHM71224を含むが、これらに限定されない。
【0159】
いくつかの態様において、抗IgM剤は、SRCタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤である。SRC阻害剤は、SRCの小型分子阻害剤、SRCに対する抗体、およびSRCの発現を低下させるアンチセンスオリゴマーおよびRNAi阻害剤を、含む。
例示的なSRCタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤は、ダサチニブを含むが、これに限定されない。
【0160】
いくつかの態様において、抗IgM剤は、抗BAFF剤である。抗BAFF剤は、いずれかの剤、小分子、抗体、ペプチド、または核酸を指し、それが、BAFFの産生、またはレベル、または活性を低下させることが、公知である。いくつかの態様において、抗BAFF剤は、本明細書に記載の抗BAFF抗体である。例示的な抗BAFF剤は、TACI-Igおよび可溶性BAFF受容体を含むが、これらに限定されない。
【0161】
いくつかの態様において、抗IgM剤は、PI3K阻害剤である。PI3キナーゼは、PIK3CA、PIK3CB、PIK3CG、PIK3CD、PIK3R1、PIK3R2、PIK3R3、PIK3R4、PIK3R5、PIK3R6、PIK3C2A、PIK3C2B、PIK3C2G、およびPIK3C3を含むが、これらに限定されない。 PI3K阻害剤は、PI3Kの小型分子阻害剤、PI3Kに対する抗体、およびPI3Kの発現を低下させるアンチセンスオリゴマーおよびRNAi阻害剤を含む。例示的なPI3K阻害剤は、GS-1101、イデラリシブ、デュベリシブ、TGR-1202、AMG-319、コパンリシブ、ワートマニン、LY294002、IC486068、およびIC87114(ICOS Corporation)、およびGDC-0941を含むが、これに限定されない。
【0162】
いくつかの態様において、抗IgM剤は、PKC阻害剤である。PKC阻害剤は、PKCの小型分子阻害剤、PKCに対する抗体、およびPKCの発現を低下させるアンチセンスオリゴマーおよびRNAi阻害剤を、含む。例示的なPKC阻害剤は、ダサチニブを含むが、これに限定されない。
【0163】
いくつかの態様において、抗IgM剤は、APRILアンタゴニストである。APRILアンタゴニストは、APRILの小型分子阻害剤、APRILに対する抗体、およびAPRILの発現を低下させるアンチセンスオリゴマーおよびRNAi阻害剤を、含む。いくつかの態様において、APRILアンタゴニストは、抗体である。例示的な抗APRIL抗体は、BION-1301(Aduro Biotech、 Inc.)を含むが、これに限定されない。いくつかの態様において、抗IgM剤は、TACI-Ig、アタシセプトである。
【0164】
いくつかの態様において、抗IgM剤は、IL-21調節剤である。例示的なIL-21阻害剤は、NNC0114(NovoNordisk)を含むが、これに限定されない。いくつかの態様において、そして、IL-21調節剤は、IL-21受容体アンタゴニストである。IL-21受容体アンタゴニストは、IL-21受容体の小型分子阻害剤、IL-21受容体に対する抗体、およびIL-21受容体の発現を低下させるアンチセンスオリゴマーおよびRNAi阻害剤を、含む。例示的なIL-21受容体阻害剤は、ATR-107(Pfizer)を含むが、これに限定されない。例示的なIL-21アンタゴニストは、NNC0114(NovoNordisk)を含むが、これに限定されない。いくつかの態様において、抗IgM剤は、IL-21受容体アンタゴニストである。例示的なIL-21受容体アンタゴニストは、ATR-107(Pfizer)を含むが、これに限定されない。
いくつかの態様において、抗IgM剤は、ミゾリビンである。
いくつかの態様において、抗IgM剤は、トファシチニブである。
【0165】
いくつかの態様において、抗IgM剤は、テトラサイクリンである。例示的なテトラサイクリンは、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメチルクロルテトラサイクリン、ロリテトラサイクリン、リメサイクリン、クロモサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、および3級-ブチルグリシルアミドミノサイクリンを含むが、これらに限定されない。
免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア
【0166】
多種多様な他の合成ナノキャリアは、本発明にしたがって使用されることができる。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、球体または球状体である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、扁平または平板状である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、立方体または立方である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、卵円または楕円である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、円柱、円錐または錐体である。
【0167】
いくつかの態様において、各々の合成ナノキャリアが類似の特性を有するように、サイズまたは形状に関して比較的均一である合成ナノキャリアの集団の使用が望ましい。例えば、提供される組成物または方法のいずれか1つの合成ナノキャリアの、合成ナノキャリアの合計数に基づいて、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%は、合成ナノキャリアの平均直径または平均寸法の5%、10%、または20%以内に該当する最小寸法または最大寸法を有していてもよい。
合成ナノキャリアは、中実であっても中空であってもよく、1以上の層を含んでもよい。
【0168】
いくつかの態様において、各層は、他の層と比較してユニークな組成およびユニークな特性を有する。一例のみを挙げると、合成ナノキャリアは、コア/シェル構造を有していてもよく、ここで、コアは1つの層であり(例えばポリマーのコア)、シェルは第2の層である(例えば脂質二重層または単層)。
【0169】
合成ナノキャリアは、複数の異なる層を含んでもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、1以上の脂質を任意に含んでもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、リポソームを含んでもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質二重層を含んでもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質単層を含んでもよい。
【0170】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、ミセルを含んでもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質層(例えば、脂質二重層、脂質単層など)に囲まれたポリマーマトリックスを含むコアを含んでもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質層(例えば、脂質二重層、脂質単層など)に囲まれた非ポリマー性のコア(例えば、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨粒子、ウイルス粒子、タンパク質、核酸、炭水化物など)を含んでもよい。
【0171】
他の態様において、合成ナノキャリアは、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子などを含んでもよい。いくつかの態様において、非ポリマー性合成ナノキャリアは、金属原子(例えば金原子)の凝集物などの、非ポリマー性成分の凝集物である。
【0172】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、1以上の両親媒体を任意に含んでもよい。いくつかの態様において、両親媒体は、増大した安定性、改善した均一性または増大した粘性により、合成ナノキャリアの製造を促進することができる。いくつかの態様において、両親媒体は、脂質膜(例えば、脂質二重層、脂質単層など)の内部表面に関連していてもよい。当該分野において公知の多くの両親媒体が、本発明による合成ナノキャリアを作製するために好適である。かかる両親媒性の実体は、ホスホグリセリドを含むが、これに限定されない;ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレオイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;コハク酸ジアシルグリセロール;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪アルコール;ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル;パルミチン酸またはオレイン酸などの界面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレアート(Span(登録商標)85)グリココーレート;ソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)20);ポリソルベート20(Tween(登録商標)20);ポリソルベート60(Tween(登録商標)60);ポリソルベート65(Tween(登録商標)65);ポリソルベート80(Tween(登録商標)80);ポリソルベート85(Tween(登録商標)85);ポリオキシエチレンモノステアレート;サーファクチン;ポロキサマー;ソルビタントリオレアートなどのソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(セファリン);カルジオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;リン酸ジセチル;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシルアミン;パルミチン酸アセチル;グリセロールリシノレート;ヘキサデシルステアレート;ミリスチン酸イソプロピル;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000-ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400-モノステアレート;リン脂質;高い界面活性剤特性を有する合成および/または天然の洗剤;デオキシコラート;シクロデキストリン;カオトロピックな塩;イオン対化剤(ion pairing agent);およびこれらの組み合わせ。両親媒体成分は、異なる両親媒体の混合物であってもよい。当業者は、これは例示的な界面活性剤効果を有する物質のリストであって、包括的なものではないことを理解するであろう。本発明により用いられるべき合成ナノキャリアの製造において、いずれかの両親媒体を用いることができる。
いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、1以上の炭水化物を任意に含んでもよい。
【0173】
炭水化物は、天然であっても合成であってもよい。炭水化物は、誘導体化された天然の炭水化物であってもよい。態様において、炭水化物は、単糖または二糖を含み、これは、限定されないが、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セロビオース、マンノース、キシロース、アラビノース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミンおよびノイラミン酸を含む。態様において、炭水化物は多糖であり、これは、限定されないが、プルラン、セルロース、微晶質セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(MC)、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、ヒドロキシエチルデンプン、カラギーナン、グリコン(glycon)、アミロース、キトサン、N,O-カルボキシルメチルキトサン、アルギン酸およびアルギニン酸、デンプン、キチン、イヌリン、コンニャク、グルコマンナン、プスツラン(pustulan)、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードランおよびキサンタンを含む。態様において、合成ナノキャリアは、多糖などの炭水化物を含まない(または特に除外する)。態様において、炭水化物は、糖アルコールなどの炭水化物誘導体を含んでもよく、これは、限定されないが、マンニトール、ソルビトールキシリトール、エリスリトール、マルチトールおよびラクチトールを含む。
いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、1以上のポリマーを含んでもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、非メトキシ末端のプルロニックポリマーである1以上のポリマーを含む。
【0174】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)は、非メトキシ末端のプルロニックポリマーである。
【0175】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの全てが、非メトキシ末端のプルロニックポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、非メトキシ末端のポリマーである1以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)は、非メトキシ末端のポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの全ては、非メトキシ末端のポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、プルロニックポリマーを含まない1以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)は、プルロニックポリマーを含まない。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの全ては、プルロニックポリマーを含まない。いくつかの態様において、かかるポリマーは、コーティング層(例えば、リポソーム、脂質単層、ミセルなど)により囲まれていてもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアの要素は、ポリマーに接着していてもよい。
【0176】
免疫抑制剤は、多数の方法のうちのいずれかにより合成ナノキャリアにカップリングすることができる。一般に、接着は、免疫抑制剤と合成ナノキャリアとの間の接着の結果である。この結合により、免疫抑制剤の合成ナノキャリアの表面への接着、および/または合成ナノキャリア中での包含(封入)に結果としてなることができる。いくつかの態様において、しかし、免疫抑制剤は、合成ナノキャリアへの結合よりもむしろ合成ナノキャリアの構造の結果として、合成ナノキャリアにより封入される。好ましい態様において、合成ナノキャリアは、本明細書において提供されるポリマーを含み、免疫抑制剤はポリマーに接着している。
【0177】
接着が、免疫抑制剤と合成ナノキャリアとの間の結合の結果として生じる場合、接着は、カップリング部分を介して生じてもよい。カップリング部分は、それを通して免疫抑制剤が合成ナノキャリアに結合するいずれかの部分であってよい。かかる部分は、アミド結合またはエステル結合などの共有結合、ならびに免疫抑制剤を合成ナノキャリアに(共有的または非共有的に)結合する別の分子を含む。かかる分子は、リンカーまたはポリマーまたはその単位を含む。例えば、カップリング部分は、免疫抑制剤が静電気的に結合する荷電したポリマーを含んでもよい。別の例として、カップリング部分は、それが共有結合しているポリマーまたはその単位を含んでもよい。
好ましい態様において、合成ナノキャリアは、本明細書において提供されるポリマーを含む。これらの合成ナノキャリアは、完全にポリマー性のものであっても、ポリマーと他の材料との混合物であってもよい。
【0178】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアのポリマーは、会合してポリマーマトリックスを形成する。これらの態様のいくつかにおいて、免疫抑制剤などの成分は、ポリマーマトリックスの1以上のポリマーと共有的に会合することができる。いくつかの態様において、共有的会合は、リンカーにより媒介される。いくつかの態様において、成分は、ポリマーマトリックスの1以上のポリマーに、非共有的に会合していてもよい。例えば、いくつかの態様において、成分は、ポリマーマトリックス中に封入されていても、ポリマーマトリックスにより囲まれていても、および/またはポリマーマトリックス全体に分散していてもよい。あるいはまたは加えて、成分は、疎水性相互作用、電荷相互作用、ファンデルワールス力などにより、ポリマーマトリックスの1以上のポリマーに会合することができる。それらからポリマーマトリックスを形成するための広範なポリマーおよび方法が、慣習的に知られている。
【0179】
ポリマーは、天然または非天然の(合成の)ポリマーであってよい。ポリマーは、ホモポリマーであっても、2以上のモノマーを含むコポリマーであってよい。配列に関して、コポリマーは、ランダムであっても、ブロックであっても、またはランダムおよびブロック配列の組み合わせを含んでもよい。典型的には、本発明によるポリマーは、有機ポリマーである。
【0180】
いくつかの態様において、ポリマーは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドまたはポリエーテル、またはこれらの単位を含む。他の態様において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)コポリマー、またはポリカプロラクトン、またはこれらの単位を含む。いくつかの態様において、ポリマーは、生分解性であることが好ましい。したがって、これらの態様において、ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコールまたはこれらの単位などのポリエーテルを含む場合、ポリマーが生分解性となるように、ポリマーが、ポリエーテルのブロックコポリマーおよび生分解性ポリマーを含むことが好ましい。他の態様において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコールまたはその単位などのポリエーテルまたはその単位を単独では含まない。
【0181】
本発明に好適なポリマーの他の例は、ポリエチレン、ポリカーボネート(例として、ポリ(1,3-ジオキサ-2オン))、ポリ無水物(例として、ポリ(セバシン酸無水物))、ポリプロピルフメラート、ポリアミド(例として、ポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例として、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリ乳酸-コ-グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酸(例として、ポリ(β-ヒドロキシアルカノアート)))ポリ(オルソエステル)、ポリシアノアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリラート、ポリメタクリレート、ポリ尿素、ポリスチレン、およびポリアミン、ポリリジン、ポリリジン-PEGコポリマー、およびポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン-PEGコポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0182】
いくつかの態様において、本発明によるポリマーは、米国食品医薬品局(FDA)により21 C.F.R.§177.2600下においてヒトにおける使用について承認されているポリマーを含み、これは、限定されないが、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(1,3-ジオキサン-2オン));ポリ酸無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物));ポリ酸無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物));ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール);ポリウレタン;
【0183】
ポリメタクリラート;およびポリシアノアクリラートを含む。いくつかの態様において、ポリマーは、親水性であってよい。例えば、ポリマーは、アニオン基(例えば、リン酸基、硫酸基、カルボン酸基);カチオン基(例えば、四級アミン基);または極性基(例えば、ヒドロキシル基、チオール基、アミン基)を含んでもよい。いくつかの態様において、親水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノキャリアは、合成ナノキャリア中に親水性環境を生じる。
【0184】
いくつかの態様において、ポリマーは、疎水性であってもよい。いくつかの態様において、疎水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノキャリアは、合成ナノキャリア中に疎水性環境を生じる。ポリマーの親水性または疎水性の選択は、合成ナノキャリア中に組み込まれる材料の性質に対して影響を有し得る。
【0185】
いくつかの態様において、ポリマーは、1以上の部分および/または官能基により修飾されていてもよい。本発明により多様な部分または官能基を用いることができる。いくつかの態様において、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)により、炭水化物により、および/または多糖から誘導される非環式ポリアセタールにより修飾することができる(Papisov, 2001, ACS Symposium Series, 786:301)。ある態様は、Grefらに対する米国特許第5543158号またはVon AndrianらによるWO公開WO2009/051837の一般的教示を用いて行ってもよい。
いくつかの態様において、ポリマーを、脂質または脂肪酸基により修飾してもよい。
【0186】
いくつかの態様において、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸またはリグノセリン酸の1以上であってよい。いくつかの態様において、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファ-リノール酸、ガンマ-リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸またはエルカ酸の1以上であってよい。
【0187】
いくつかの態様において、ポリマーは、ポリエステルであってよく、これは、乳酸およびグリコール酸の単位を含むコポリマー、例えばポリ(乳酸-コ-グリコール酸)およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(本明細書において集合的に「PLGA」として言及される);ならびにグリコール酸単位を含むホモポリマー(本明細書において「PGA」として言及される)、ならびにポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチド、およびポリ-D,L-ラクチド乳酸単位を含むホモポリマー(本明細書において集合的に「PLA」として言及される)を含む。いくつかの態様において、例示的なポリエステルとして、例えば、ポリヒドロキシ酸;PEGコポリマーおよびラクチドとグリコリドとのコポリマー(例えば、PLA-PEGコポリマー、PGA-PEGコポリマー、PLGA-PEGコポリマー)およびそれらの誘導体が挙げられる。いくつかの態様において、ポリエステルとして、例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)-PEGコポリマー、ポリ(L-ラクチド-L-リジン)コポリマー、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、ポリ[α-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸]およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0188】
いくつかの態様において、ポリマーは、PLGAであってよい。PLGAは、乳酸とグリコール酸との生体適合性かつ生分解性のコポリマーであり、PLGAの多様な形態は、乳酸:グリコール酸の比により特徴づけられる。乳酸は、L-乳酸、D-乳酸またはD,L-乳酸であってよい。PLGAの分解速度は、乳酸:グリコール酸比を変更することにより調節することができる。いくつかの態様において、本発明により用いられるべきPLGAは、約85:15、約75:25、約60:40、約50:50、約40:60、約25:75または約15:85の乳酸:グリコール酸の比により特徴づけられる。
いくつかの態様において、ポリマーは、1以上のアクリル酸ポリマーであってよい。
【0189】
態様において、アクリル酸ポリマーとして、例えば、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、メチルメタクリラートコポリマー、エトキシエチルメタクリラート、シアノエチルメタクリラート、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(メタクリル酸無水物)、メチルメタクリラート、ポリメタクリラート、ポリ(メチルメタクリラート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、グリシジルメタクリラートコポリマー、ポリシアノアクリラート、および前述のポリマーの1以上を含む組み合わせが挙げられる。アクリル酸ポリマーは、低い含有量の四級アンモニウム基と共に、アクリル酸とメタクリル酸エステルとの完全に重合したコポリマーを含んでもよい。
いくつかの態様において、ポリマーは、カチオン性ポリマーであってよい。
【0190】
一般的に、カチオン性ポリマーは、核酸の負に荷電した鎖を縮合および/または保護することができる。ポリ(リジン)などのアミン含有ポリマー(Zauner et al., 1998, Adv. Drug Del. Rev., 30:97;およびKabanov et al., 1995, Bioconjugate Chem., 6:7)、ポリ(エチレンイミン)(PEI; Boussif et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 1995, 92:7297)、およびポリ(アミドアミン)デンドリマー(Kukowska-Latallo et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 93:4897;Tang et al., 1996, Bioconjugate Chem., 7:703;およびHaensler et al., 1993, Bioconjugate Chem., 4:372)は、生理学的pHにおいて正に荷電しており、核酸とイオン対を形成する。態様において、合成ナノキャリアは、カチオン性ポリマーを含まなくともよい(またはこれを除外してもよい)。
【0191】
いくつかの態様において、ポリマーは、カチオン性側鎖を有する分解性ポリエステルであってもよい(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658;Barrera et al., 1993, J. Am. Chem. Soc., 115:11010;Kwon et al., 1989, Macromolecules, 22:3250;Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633;およびZhou et al., 1990, Macromolecules, 23:3399)。そして、Zhouその他、1990、Macromolecules、23:3399)。これらのポリエステルの例として、ポリ(L-ラクチド-L-リジン)コポリマー(Barrera et al., 1993, J. Am. Chem. Soc., 115:11010)、ポリ(セリンエステル)(Zhou et al., 1990, Macromolecules, 23:3399)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658;およびLim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633)、ならびにポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658; and Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633)が挙げられる。
【0192】
これらのおよび他のポリマーの特性およびそれらを調製するための方法は、当該分野において周知である(例えば、米国特許第6,123,727号;同第5,804,178号;同第5,770,417号;同第5,736,372号;同第5,716,404号;同第6,095,148号;同第5,837,752号;同第5,902,599号;同第5,696,175号;同第5,514,378号;同第5,512,600号;同第5,399,665号;同第5,019,379号;同第5,010,167号;同第4,806,621号;同第4,638,045号;同第および同第4,946,929号;Wang et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:9480;Lim et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:2460;Langer, 2000, Acc. Chem. Res., 33:94;Langer、1999、J.Control。解放、62:7;およびUhrich et al., 1999, Chem. Rev., 99:3181を参照)。より一般的には、特定の好適なポリマーを合成するための多様な方法は、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts、Goethals編、Pergamon Press, 1980;OdianによるPrinciples of Polymerization、John Wiley & Sons、第4版、2004;AllcockらによるContemporary Polymer Chemistry、Prentice-Hall、1981;
【0193】
Deming et al., 1997, Nature, 390:386において;および米国特許第6,506,577号、同第6,632,922号、同第6,686,446号および同第6,818,732号において記載されている。
【0194】
いくつかの態様において、ポリマーは、直鎖状または分枝状ポリマーであってよい。いくつかの態様において、ポリマーは、デンドリマーであってよい。いくつかの態様において、ポリマーは、互いに実質的に架橋されていてもよい。いくつかの態様において、ポリマーは、実質的に架橋を含まなくてもよい。いくつかの態様において、ポリマーは、架橋するステップを経ることなく用いることができる。さらに、合成ナノキャリアは、前述のおよび他のポリマーのいずれかのブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ブレンド、混合物および/または付加物を含んでもよいことが、理解されるべきである。当業者は、本明細書において列記されるポリマーは、本発明による使用のものである例示的なポリマーのリストを代表するが、包括的なものではないことを認識するであろう。
いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、ポリマー成分を含まない。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子などを含んでもよい。いくつかの態様において、非ポリマー性合成ナノキャリアは、金属原子(例えばとして金原子)の凝集物などの、非ポリマー性成分の凝集物である。
【0195】
本明細書に提供されるいかなる免疫抑制剤も、いくつかの実施形態において、合成ナノキャリアに連結することができる。免疫抑制剤として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:スタチン;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤;副腎皮質ステロイド;ロテノンなどのミトコンドリアの機能の阻害剤;P38阻害剤;NF-κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト;ホスホジエステラーゼ4阻害剤などのホスホジエステラーゼ阻害剤;プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;糖質コルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤ならびに酸化ATP。免疫抑制剤はまた、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンA、アリール炭化水素受容体阻害剤、レスベラトロール、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、アスピリン、ニフルミン酸、エストリオール、トリポリド(tripolide)、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-10)、シクロスポリンA、サイトカインまたはサイトカイン受容体などを標的とするsiRNAを含む。
【0196】
mTOR阻害剤の例として、ラパマイシンおよびそのアナログ(例えば、CCL-779、RAD001、AP23573、C20-メタリルラパマイシン(C20-Marap)、C16-(S)-ブチルスルホンアミドラパマイシン(C16-BSrap)、C16-(S)-3-メチルインドールラパマイシン(C16-iRap)(Bayle et al. Chemistry & Biology 2006、13:99-107)、AZD8055、BEZ235(NVP-BEZ235)、クリソファン酸(クリソファノール)、デフォロリムス(MK-8669)、エベロリムス(RAD0001)、KU-0063794、PI-103、PP242、テムシロリムス、およびWYE-354(Selleck、Houston、TX、USAから入手可能)が挙げられる。
【0197】
NF(例えば、NK-κβ)阻害剤の例として、IFRD1、2-(1,8-ナフチリジン-2-イル)-フェノール、5-アミノサリチル酸、BAY 11-7082、BAY 11-7085、CAPE(Caffeic Acid Phenethylエステル)、マレイン酸ジエチル、IKK-2阻害剤IV、IMD 0354、ラクタシスチン、MG-132[Z-Leu-Leu-Leu-CHO]、NFκB活性化阻害剤III、NF-κB活性化阻害剤II、JSH-23、パルテノライド、フェニルアルシンオキシド(PAO)、PPM-18、ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム塩、QNZ、RO 106-9920、ロカグラミド、ロカグラミドAL、ロカグラミドC、ロカグラミドI、ロカグラミドJ、ロカグラオール、(R) -MG-132、サリチル酸ナトリウム、トリプトライド(PG490)、およびウェデロラクトンが挙げられる。
【0198】
「ラパログ」は、本明細書に使用されているように、構造的にラパマイシン(シロリムス)の(類似体)に関する分子を、指す。ラパログの例として、限定することなく、テムシロリムス(CCI-779)、エベロリムス(RAD001)、リダフォロリムス(AP-23573)、およびゾタロリムス(ABT-578)が挙げられる。ラパログのさらなる例は、例えばWO公開WO1998/002441および米国特許第8,455,510号において見出すことができ、それらのラパログは、本明細書においてその全体において参考として援用される。さらなる免疫抑制剤は、当業者に公知であり、本発明は、この点において限定されない。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの態様において、免疫抑制剤は、本明細書に提供される剤のいずれか1つを含んでもよい。
本発明による組成物は、保存剤、バッファー、食塩水またはリン酸緩衝化食塩水などの薬学的に許容し得る賦形剤を含んでもよい。
組成物は、有用な投与形態を達成するために、慣用的な医薬の製造および配合技術を用いて製造することができる。一態様において、組成物は、注射のために、無菌の食塩水溶液中で保存剤と一緒に懸濁される。
D.組成物を使用および作製する方法
【0199】
ウイルス導入ベクターは、当業者に公知の、または本明細書において他の場所で記載の方法により作製することができる。例えば、ウイルス導入ベクターは、例えば、米国特許第4,797,368号およびLaughlin et al., Gene, 23, 65-73(1983)において記載の方法を用いて構築および/または精製することができる。
【0200】
例として、複製欠損アデノウイルスベクターは、複製欠損アデノウイルスベクターにおいては存在しないが、ウイルスの伝播のために必要とされる遺伝子の機能を提供する補完細胞株において、高力価のウイルス導入ベクターストックに結果としてなるために適切なレベルにおいて、作製することができる。補完細胞株は、全てのアデノウイルス機能を含む、early領域、late領域、ウイルスパッケージング領域、ウイルス関連RNA領域、またはそれらの組み合わせによりコードされる、少なくとも1つの複製必須遺伝子の機能の欠損を補完することができる(例えば、アデノウイルスアンプリコンの伝播を可能にするために)。補完細胞株の構築は、Sambrook et al., Molecular Cloning, a Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989年)、およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons、New York、N.Y.(1994年)により記載のような標準的な分子生物学および細胞培養技術を伴う。
【0201】
アデノウイルスベクターを作製するための補完細胞株として、これらに限定されないが、293細胞(例えばGraham et al., J. Gen. Virol., 36, 59-72 (1977)において記載の)、PER.C6細胞(例えば国際特許出願WO 97/00326、ならびに米国特許第5,994,128号および同第6,033,908号において記載の)、ならびに293-ORF6細胞(例えば国際特許出願WO 95/34671およびBrough et al., J. Virol., 71, 9206-9213 (1997)において記載の)が挙げられる。いくつかの例において、補完細胞は、全ての必要とされるアデノウイルス遺伝子機能を補完しない。ヘルパーウイルスは、アデノウイルスベクターの複製を可能にするために、細胞またはアデノウイルスのゲノムによりコードされていない遺伝子機能を、トランスに提供するために使用することができる。アデノウイルスベクターは、例えば、米国特許第5,965,358号、同第5,994,128号、同第6,033,908号、同第6,168,941号、同第6,329,200号、同第6,383,795号、同第6,440,728号、同第6,447,995号および同第6,475,757号、米国特許出願公開番号2002/0034735 A1、ならびに国際特許出願WO 98/53087、WO 98/56937、WO 99/15686、WO 99/54441、WO 00/12765、WO 01/77304およびWO 02/29388、ならびに本明細書において同定される他の参考文献において記載の材料および方法を用いて、構築するか、伝播させるか、および/または精製することができる。アデノウイルス血清型35ベクターを含む非C群アデノウイルスベクターは、例えば、米国特許第5,837,511号および同第5,849,561号、ならびに国際特許出願WO 97/12986およびWO 98/53087において記載の方法を用いて作製することができる。
【0202】
AAVベクターは、組み換え方法を用いて作製することができる。典型的には、方法は、AAVカプシドタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸配列;機能的rep遺伝子;AAV末端逆位反復配列(ITR)および導入遺伝子からなる組み換えAAVベクター;ならびに組み換えAAVベクターのAAVカプシドタンパク質中へのパッケージングを可能にするために十分なヘルパー機能を含む宿主細胞を培養することを含む。いくつかの態様において、ウイルス導入ベクターは、以下からなる群から選択されるAAV血清型の反転末端反復(ITR)を含んでもよい:AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、およびそれらのバリアント。
【0203】
rAAVベクターをAAVカプシド中にパッケージングするために宿主細胞において培養されるべき成分を、宿主細胞にトランスに提供してもよい。あるいは、必要とされる成分のいずれか1つまたは2つ以上(例えば、組み換えAAVベクター、rep配列、cap配列および/またはヘルパー機能)を、当業者に公知の方法を用いて、必要とされる成分のいずれか1つまたは2つ以上を含むように操作された安定な宿主細胞により、提供してもよい。
【0204】
最も好適には、かかる安定な宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下において、必要とされる成分を含むことができる。しかし、必要とされる成分は、構成的プロモーターの制御下にあってもよい。本発明のrAAVを作製するために必要とされる組み換えAAVベクター、rep配列、cap配列、およびヘルパー機能は、いずれかの適切な遺伝子要素を用いてパッケージング宿主細胞に送達することができる。選択される遺伝子要素は、本明細書において記載のものを含むいずれかの好適な方法により送達することができる。本発明のいずれかの態様を構築するために用いられる方法は、核酸操作において技術を有する当業者に公知であり、遺伝子工学、組み換え工学および合成技術を含む。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N.Y.を参照。同様に、rAAVウイルス粒子を作製する方法は、周知であり、好適な方法の選択は、本発明に対する限定ではない。例えば、K. Fisher et al, J. Virol., 70:520-532(1993)および米国特許第5,478,745号を参照。
【0205】
いくつかの態様において、組み換えAAVベクターは、三重トランスフェクション法(triple transfection method)を用いて作製することができる(例えば、米国特許第6,001,650号において詳細に記載のように;三重トランスフェクション法に関するその内容は、本明細書において参考として援用される)。典型的には、組み換えAAVは、宿主細胞を、AAV粒子中にパッケージングされるべき組み換えAAVベクター(導入遺伝子を含む)、AAVヘルパー機能ベクター、および補助機能ベクターでトランスフェクションすることにより作製する。一般に、AAVヘルパー機能ベクターは、増殖性AAVの複製およびカプシド形成のためにトランスで機能する、AAVヘルパー機能配列(repおよびcap)をコードする。好ましくは、AAVヘルパー機能ベクターは、いずれかの検出可能な野生型AAVウイルス粒子(すなわち、機能的なrepおよびcap遺伝子を含むAAVウイルス粒子)を作製することなく、効率的なAAVベクター作製を支持する。補助機能ベクターは、AAVが複製のために依存する、非AAV由来のウイルスおよび/または細胞の機能のためのヌクレオチド配列をコードしていてもよい。補助機能は、AAV複製のために必要とされる機能を含み、これは、限定することなく、AAV遺伝子転写、ステージ特異的なAAVのmRNAのスプライシング、AAVのDNAの複製、cap発現産物の合成、およびAAVカプシドアセンブリーの活性化に関与する部分を含む。ウイルスに基づく補助機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外のもの)、およびワクシニアウイルスなどの既知のヘルパーウイルスのいずれかに由来してよい。
【0206】
レンチウイルスベクターは、当該分野において公知の多数の方法のいずれかを用いて作製することができる。レンチウイルスベクターおよび/またはそれらの作製の方法の例は、例えば、米国公開番号20150224209、20150203870、20140335607、20140248306、20090148936および20080254008において見出すことができ、かかるレンチウイルスベクターおよび作製の方法は、本明細書において参考として援用される。例として、レンチウイルスベクターが組み込み不能である場合、レンチウイルスゲノムはさらに複製起点(ori)を含み、その配列は、レンチウイルスゲノムを発現させなければならない細胞の性質に依存する。前記複製起点は、真核生物由来、好ましくは哺乳動物起源のもの、最も好ましくヒト起源のものであってよい。レンチウイルスゲノムは細胞宿主のゲノム中に組み込まれない(不完全なインテグラーゼのため)ので、レンチウイルスゲノムは、頻繁な細胞分裂を経験している細胞においては失われ得る;このことは、BまたはT細胞などの免疫細胞における場合はことさらである。複製起点の存在は、いくつかの場合において有益であり得る。
【0207】
ベクター粒子は、293T細胞などの適切な細胞のトランスフェクションの後で、前記プラスミドにより、または他のプロセスにより、産生させることができる。レンチウイルス粒子の発現のために用いられる細胞において、プラスミドの全てまたは一部を、それらがコードしているポリヌクレオチドを安定に発現させるために、またはそれらがコードしているポリヌクレオチドを一過性にもしくは半安定して(semi-stably)発現させるために用いることができる。
本明細書において提供される他のウイルスベクターを作製するための方法は、当該分野において公知であり、上の例示的な方法と同様である。さらに、ウイルスベクターは市販されている。
態様において、免疫抑制剤を含む一定の合成ナノキャリアを調製する場合、免疫抑制剤を合成ナノキャリアに付着させるための方法は、有用かもしれない。
【0208】
ある態様において、接着は、共有的リンカーであってよい。態様において、本発明による免疫抑制剤は、外側表面に、アルキン基を含む免疫抑制剤とのアジド基の1,3-双極性環化付加反応により、またはアジド基を含む免疫抑制剤とのアルキンの1,3-双極性環化付加反応により形成された、1,2,3-トリアゾールリンカーを介して、共有的に接着していてもよい。かかる環化付加反応は、好ましくは、好適なCu(I)-リガンドおよびCu(II)化合物を触媒活性Cu(I)化合物に還元するための還元剤と共に、Cu(I)触媒の存在下において行う。このCu(I)により触媒されたアジド-アルキン環化付加(CuAAC)はまた、クリック反応としても言及される。
【0209】
加えて、共有的カップリングは、共有的リンカーを含んでもよく、これは、アミドリンカー、ジスルフィドリンカー、チオエーテルリンカー、ヒドラゾンリンカー、ヒドラジドリンカー、イミンまたはオキシムリンカー、ウレアまたはチオウレアリンカー、アミジンリンカー、アミンリンカー、およびスルホンアミドリンカーを含む。
【0210】
アミドリンカーは、免疫抑制剤などの1つの成分上のアミンと、ナノキャリアなどの第2の成分のカルボン酸基との間のアミド結合を介して形成される。リンカー中のアミド結合は、N-ヒドロキシサクシニミドにより活性化されたエステルなどの好適に保護されたアミノ酸との慣用的なアミド結合形成反応のいずれかを用いて生成することができる。
【0211】
ジスルフィドリンカーは、例えばR1-S-S-R2の形態の2つの硫黄原子の間のジスルフィド(S-S)結合の形成を介して、生成することができる。ジスルフィド結合は、チオール/メルカプタン基(-SH)を含む成分の、別の活性化されたチオール基との、またはチオール/メルカプタン基を含む成分の、活性化されたチオール基を含む成分とのチオール交換により、形成させることができる。
R1およびR2は、いずれかの化学成分である形態の、トリアゾールリンカー、特に1,2,3-トリアゾール
【0212】
【化1】
【0213】
は、第1の成分に接着したアジドの、免疫抑制剤などの第2の成分に接着した末端アルキンによる1,3-双極性環化付加反応により生成することができる。1,3-双極性環化付加反応は、触媒を用いてまたはこれを用いずに、好ましくは1,2,3-トリアゾール官能基を通して2つの成分を連結するCu(I)触媒を用いて行う。この化学は、Sharpless et al., Angew. Chem. Int. Ed. 41(14), 2596, (2002)およびMeldal, et al, Chem. Rev., 2008, 108(8), 2952-3015において詳細に記載され、しばしば、「クリック」反応またはCuAACとして言及される。
【0214】
チオエーテルリンカーは、例えばR1-S-R2の形態における硫黄-炭素(チオエーテル)結合の形成により生成される。チオエーテルは、1つの成分上でのチオール/メルカプタン(-SH)基の、第2の成分上のハライドまたはエポキシドなどのアルキル化基によるアルキル化により、生成することができる。チオエーテルリンカーはまた、1つの成分上のチオール/メルカプタン基の、マイケルアクセプターとしてマレイミド基またはビニルスルホン基を含む第2の成分上の電子欠乏アルケン基に対するマイケル付加により、形成させることができる。別の方法において、1つの成分上のチオール/メルカプタン基の、第2の成分上のアルケン基によるラジカルチオール-エン反応により、チオエーテルリンカーを調製することができる。
ヒドラゾンリンカーは、1つの成分上のヒドラジド基の、第2の成分上のアルデヒド/ケトン基との反応により生成することができる。
【0215】
ヒドラジドリンカーは、1つの成分上のヒドラジン基の、第2の成分上のカルボン酸基との反応により生成することができる。かかる反応は、一般に、カルボン酸が活性化試薬により活性化される、アミド結合の形成に類似する化学を用いて行う。
イミンまたはオキシムリンカーは、1つの成分上のアミンまたはN-アルコキシアミン(またはアミノオキシ)基の、第2の成分上のアルデヒドまたはケトン基との反応により形成される。
ウレアまたはチオウレアリンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のイソシアナートまたはチオイソシアナート基との反応により調製される。
アミジンリンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のイミドエステル基との反応により調製される。
【0216】
アミンリンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のハライド、エポキシドまたはスルホナートエステル基などのアルキル化基によるアルキル化反応により生成される。あるいは、アミンリンカーはまた、シアノ水素化ホウ素ナトリウムまたはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどの好適な還元試薬による、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のアルデヒドまたはケトン基による還元性アミノ化により生成することができる。
スルホンアミドリンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のスルホニルハライド(スルホニルクロリドなどの)基との反応により生成される。
スルホンリンカーは、ビニルスルホンへの求核試薬のマイケル付加により生成される。
ビニルスルホンまたは求核試薬のいずれかは、ナノキャリアの表面上にあるか、成分に接着していてもよい。
【0217】
成分はまた、非共有的共役方法を介して共役させることができる。例えば、静電吸着を通して、負に荷電した免疫抑制剤を、正に荷電した成分に共役させることができる。金属配位子を含む成分はまた、金属-配位子錯体を介して金属錯体に共役させることができる。
【0218】
態様において、成分は、合成ナノキャリアのアセンブリーの前に、ポリマー、例えばポリ乳酸-ブロック-ポリエチレングリコールに接着していてもよく、合成ナノキャリアは、反応性または活性化可能な基により形成させることができる。後者の場合において、成分は、合成ナノキャリアの表面により提示される接着化学に適合性である基を用いて調製することができる。他の態様において、ペプチド成分は、好適なリンカーを用いてVLPまたはリポソームに接着させることができる。リンカーは、2つの分子を一緒にカップリングすることができる化合物または試薬である。一態様において、リンカーは、Hermanson 2008において記載のようなホモ二官能性またはヘテロ二官能性の試薬であってよい。例えば、表面上にカルボン酸基を含むVLPまたはリポソーム合成ナノキャリアを、EDCの存在下において、ホモ二官能性リンカーであるアジピン酸ジヒドラジド(ADH)で処置して、ADHリンカーを有する対応する合成ナノキャリアを形成させることができる。結果として生じるADHと連結された合成ナノキャリアを、次いで、ナノキャリア上のADHリンカーの他方の末端を介して、酸基を含むペプチド成分と共役させて、対応するVLPまたはリポソームペプチドコンジュゲートを生成する。
【0219】
態様において、ポリマー鎖の末端側にアジドまたはアルキン基を含むポリマーを調製する。このポリマーを、次いで、複数のアルキンまたはアジド基がナノキャリアの表面上に位置するような様式において合成ナノキャリアを調製するために用いる。あるいは、合成ナノキャリアを、別の経路により調製して、その後、アルキンまたはアジド基で官能化してもよい。成分は、アルキン(ポリマーがアジドを含む場合)またはアジド(ポリマーがアルキンを含む場合)基のいずれかの存在と共に調製される。成分を、次いで、1,3-双極性環化付加反応を介して、1,4-二置換1,2,3-トリアゾールリンカーを通して成分を粒子に共有的に接着させる触媒を用いてまたはこれを用いずに、ナノキャリアと反応させる。
【0220】
成分が低分子である場合、合成ナノキャリアのアセンブリーの前に成分をポリマーに接着させることは、有利であり得る。態様において、成分を合成ナノキャリアに接着させるために用いられる表面基を用いて、成分をポリマーに接着させるというよりはむしろこれらの表面基の使用を通して、合成ナノキャリアを調製し、次いで、このポリマーコンジュゲートを合成ナノキャリアの構築において用いることもまた、有利であり得る。
【0221】
利用可能な共役方法の詳細な記載については、Hermanson G T「Bioconjugate Techniques」、第2版、Academic Press, Inc.刊行、2008年を参照。共有的接着に加えて、成分は、予め形成された合成ナノキャリアに吸着させることにより接着させても、または合成ナノキャリアの形成の間の封入により接着させてもよい。
【0222】
合成ナノキャリアは、当該分野において公知の広範な方法を用いて調製することができる。例えば、合成ナノキャリアは、ナノ沈殿、流体チャネルを用いるフローフォーカシング(flow focusing)、スプレー乾燥、シングルおよびダブルエマルション溶媒蒸発、溶媒抽出、相分離、製粉、マイクロエマルション法、微細加工(microfabrication)、ナノ加工(nanofabrication)、犠牲層、単純および複合コアセルベーションなどの方法、ならびに当業者に周知の他の方法により形成することができる。あるいはまたは加えて、単分散半導体のための水性および有機性の溶媒合成、伝導性、磁性、有機および他のナノ材料が記載されている(Pellegrino et al., 2005, Small, 1:48; Murray et al., 2000, Ann. Rev. Mat. Sci., 30:545; and Trindade et al., 2001, Chem. Mat., 13:3843)。さらなる方法は、文献において記載されている(例えば、Doubrow編、「Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy」、CRC Press, Boca Raton, 1992;Mathiowitz et al., 1987, J. Control. Release, 5:13; Mathiowitz et al., 1987, Reactive Polymers, 6:275;ならびにMathiowitz et al., 1988, J. Appl. Polymer Sci., 35:755;米国特許第5578325号および同第6007845号;P. Paolicelli et al., 「Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles」Nanomedicine. 5(6):843-853 (2010)を参照)。
【0223】
材料を、望ましい場合には、限定されないが以下を含む多様な方法を用いて、合成ナノキャリア中に封入してもよい:C. Astete et al., 「Synthesis and characterization of PLGA nanoparticles」J. Biomater. Sci. Polymer Edn、第17巻、第3号、pp. 247-289(2006);K. Avgoustakis「Pegylated Poly(Lactide) and Poly(Lactide-Co-Glycolide) Nanoparticles:Preparation, Properties and Possible Applications in Drug Delivery」Current Drug Delivery 1:321-333(2004);C. Reis et al., 「Nanoencapsulation I. Methods for preparation of drug-loaded polymeric nanoparticles」Nanomedicine 2:8- 21(2006);P. Paolicelli et al., 「Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles」Nanomedicine. 5(6): 843-853(2010)。材料を合成ナノキャリア中に封入するために好適な他の方法を用いてもよく、これらは、限定することなく、2003年10月14日に発行されたUngerに対する米国特許第6,632,671号において開示される方法を含む。
【0224】
ある態様において、合成ナノキャリアは、ナノ沈殿法またはスプレー乾燥により調製される。合成ナノキャリアを調製することにおいて用いられる条件は、所望されるサイズおよび特性(例えば、疎水性、親水性、外側の形態、「粘着性」、形状など)の粒子を得るために改変することができる。合成ナノキャリアを調製する方法および用いられる条件(例えば、溶媒、温度、濃度、気体の流速など)は、合成ナノキャリアに結合させるべき材料および/またはポリマーマトリックスの組成に依存し得る。
上記の方法のいずれかにより調製される合成ナノキャリアが所望される範囲の外のサイズ範囲を有する場合、合成ナノキャリアを、例えば篩を用いて、サイズ分類することができる。
【0225】
合成ナノキャリアの要素は、例えば1以上の共有結合により合成ナノキャリア全体に接着させても、1以上のリンカーにより接着させてもよい。合成ナノキャリアを官能化するさらなる方法は、Saltzmanらに対する米国特許出願公開2006/0002852、DeSimoneらに対する米国特許出願公開2009/0028910、またはMurthyらに対する国際特許出願公開WO/2008/127532 A1から適応させることができる。
【0226】
あるいはまたは追加で、合成ナノキャリアは、非共有相互作用を経由して直接的または万節的に接着されることができる。非共有的態様において、非共有的接着は、限定されないが以下を含む非共有的相互作用により媒介される:電荷相互作用、アフィニティー相互作用、金属配位、物理的吸着、主客相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、磁性相互作用、静電相互作用、双極子-双極子相互作用、および/またはこれらの組み合わせを含む。かかる接着は、合成ナノキャリアの外部表面または内部表面上にあるように配置することができる。態様において、封入および/または吸収は、接着の形態である。
【0227】
本明細書において提供される組成物は、無機または有機の緩衝化剤(例えば、リン酸、炭酸、酢酸またはクエン酸のナトリウムまたはカリウム塩)およびpH調整剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウムまたはカリウム、クエン酸または酢酸の塩、アミノ酸およびそれらの塩)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、アルファ-トコフェロール)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン9-10ノニルフェノール、デオキシコール酸ナトリウム)、溶液および/または低温(cryo)/凍結安定化剤(例えば、スクロース、ラクトース、マンニトール、トレハロース)、浸透圧調節剤(例えば、塩または糖)、抗菌剤(例えば、安息香酸、フェノール、ゲンタマイシン)、消泡剤(例えば、ポリジメチルシロキサン、保存剤(例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、EDTA)、ポリマー性安定化剤および粘度調節剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー488、カルボキシメチルセルロース)および共溶媒(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、エタノール)を含んでもよい。
【0228】
本発明による組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤を含んでもよい。組成物は、有用な投与形態を達成するために、慣用的な医薬の製造および配合技術を用いて製造することができる。本発明を実践するために、好適な技法は、Industrial MixingのHandbookで見つかってもよい:ScienceおよびPractice、Edward L.PaulによるEdited、Victor A.Atiemo-ObengおよびSuzanne M.Kresta(2004のJohn Wiley & Sons、 Inc.);そして、Pharmaceutics:Dosageの中でScienceフォームDesign、第2の版。M.E.Auten、2001、Churchill Livingstoneによって編集される。一態様において、組成物を、注射のために、保存剤と共に、無菌の食塩水溶液中に懸濁する。
【0229】
本発明の組成物は、いずれかの好適な様式において製造することができることが、理解されるべきであり、本発明は、本明細書において記載の方法を用いて製造することができる組成物に決して限定されない。適切な製造の方法の選択は、関連する特定の部分の特性に対する注意を必要とする場合がある。
【0230】
いくつかの態様において、組成物は、無菌条件下において製造されるか、最終的に無菌化される。このことにより、結果として生じる組成物が無菌であり、非感染性であることを確実にすることができ、それにより、非無菌の組成物と比較して安全性を改善する。このことは、特に組成物を投与されている対象が免疫欠損を有するか、感染症を罹患しているか、および/または感染に対して感受性である場合に、有益な安全性の指標を提供する。
【0231】
本発明による投与は、多様な経路によるものであってよく、これは、限定されないが、静脈内および腹腔内経路を含む。本明細書において言及される組成物は、投与、いくつかの態様においては併用投与のために、従来の方法を用いて製造および調製することができる。
【0232】
本発明の組成物は、有効量、例えば本明細書において他の場所で記載の有効量で投与することができる。いくつかの態様において、ウイルス導入ベクターおよび/または免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよび/または抗IgM剤は、有効な量の投与形態に存在して、IgM応答などの、抗ウイルス導入ベクター免疫応答を減弱化しておよび/または対象および/または増加導入遺伝子にウイルス導入ベクターの再投与のために、ウイルス導入ベクターの発現を許す。投与形態は、多様な頻度において投与することができる。
免疫抑制剤を備えている合成ナノキャリアを有するウイルス導入ベクターのいくつかの態様において繰り返された投与および行われる抗IgM剤。
【0233】
本発明の側面は、本明細書において提供される投与の方法のためのプロトコルを決定することに関する。プロトコルは、ウイルス導入ベクターの、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの、および/または抗IgM剤の、少なくとも頻度、投与量を変化させることにより、続いて所望されるまたは所望されない免疫応答を評価することによって、決定されることができる。発明の実施のための好ましいプロトコルは、IgM応答などのウイルス導入ベクターに対する免疫応答を減弱化し、および/またはウイルス導入ベクターに対する所望されない別の免疫応答を減弱化し、および/または導入遺伝子発現を拡大する。プロトコルは、いくつかの態様において、ウイルス導入ベクター、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよび抗IgM剤の、少なくとも投与頻度および用量を、含むことができる。
【0234】
開示の別の側面は、キットに関する。いくつかの態様において、キットは、本明細書に提供される組成物のいずれか1以上の、または本明細書に提供される組成物の組み合わせのいずれか1つを、含む。いくつかの態様において、キットは、ウイルス導入ベクターを含む1以上の組成物、および/または免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアを含む1以上の組成物、および/または抗IgM剤を含む1以上の組成物を、含む。好ましくは、組成物は、量において、本明細書に提供されるいずれか1以上の用量を、提供する。組成物は、1つの容器において、または、キットにおいて複数の容器中に、あることができる。提供されるキットのいずれか1つのいくつかの態様において、容器は、バイアルまたはアンプルである。提供されるキットのいずれか1つのいくつかの態様において、組成物は、引き続き再構成されてもよいように、各々別々の容器中で、または同じ容器中で、凍結乾燥型で、ある。提供されるキットのいずれか1つのいくつかの態様において、キットは、再構成、混合、投与等々のための説明書をさらに備える。提供されるキットのいずれか1つのいくつかの態様において、説明書は、本明細書に記載の方法のいずれか1つの記載を、含む。説明書は、例として、印刷された挿入または標識として、いずれかの好適な形であることが、できる。本明細書に提供されるキットのいずれか1つのいくつかの態様において、キットは、対象にin vivoで、組成物を送達することができる1以上のシリンジ、または他の装置を、さらに含む。
【0235】

例1:免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア
ラパマイシンなどの免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアは、当業者に公知のいずれかの方法を使用して、産生されることができる。好ましくは、本明細書に提供される方法、組成物またはキットのいずれか1つのいくつかの態様において、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアは、US Publication No. US 2016/0128986 A1およびUS Publication No. US 2016/0128987 A1の方法のいずれか1つによって産生され、かかる産生および結果として生じる合成ナノキャリアの記載の方法は、本明細書においてその全体において参考として援用される。本明細書に提供される方法、組成物、またはキットのいずれか1つにおいて、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアは、かかる援用された合成ナノキャリアである。ラパマイシンを含む合成ナノキャリアは、少なくともこれらの援用された方法と類似の方法によって産生し、以下の例において使用した。
【0236】
例2:アデノ随伴ウイルス(AAV)と免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよび抗BAFF抗体との組み合わせ送達
免疫抑制剤(ラパマイシン)を含む合成ナノキャリアおよび抗BAFF抗体を伴うアデノ随伴ウイルスベクターを投与する効果を、調査した。以下の3つの処置を、試験した:分泌されたアルカリホスファターゼ(AAV-SEAP)単独、ラパマイシン(AAV-SEAP+SVP[RAPA])を含む合成ナノキャリアと組み合わせて、および、抗BAFF抗体(AAV-SEAP+SVP[RAPA]+抗BAFF])と組わせてコードするアデノ随伴ウイルスベクター。6匹のマウスの3つの群は、上記の3つの処置のうちの1つと同一量によって、1回で注入した。注入は、AAV-SEAPおよびSVP[RAPA]に関して静脈内(i.v.)に、抗BAFFに関して腹腔内に(i.p.)、投与した。
【0237】
全血は、注入後後5、9、12、16、および21日目のそれぞれの対象から血清を単離するために、収集し、処理した。プレートに結合したAAVへと導いた血清IgMは、ELISAを使用して決定した。未処置の血清は、負のベースラインレベルとして使用した。図1に示すように、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアおよび抗BAFF抗体と組み合わせたAAV-SEAPの投与は、その他の2つの群と比較して、血清抗AAVIgMレベルの低下に、結果としてなった。16および21日までに、AAVベクターおよびラパマイシンを含む合成ナノキャリアおよび抗BAFF抗体の組み合わせを受けた多数のマウスにおいて、抗AAV免疫は、ほとんど消滅した。
上記載のマウスからの血清も、SEAP発現レベルを決定するために、分析した。
【0238】
図2に示すように、5、9、12および16日目に、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアおよび抗BAFF抗体と組み合わせたAAV-SEAPの投与は、2つの他の群と比較して、SEAPのより大きな発現レベルを生んだ。その上、該組み合わせが、初期におよび経時的に改善された標的導入遺伝子発現につながることを示し、SEAP発現の規模は、それぞれの時点で増強された。
【0239】
例3:合成ナノキャリア封入ラパマイシンと全身への抗BAFFとの組み合わせによるAAVに対するin vivo IgM免疫応答の相乗的低下
C57BL/6の雌のマウスの3つの群(各々6匹のマウス)は、いかなるナノキャリアも伴わない(1つの群)、または150μgでのSVP[Rapa]を伴う(2つの群)AAV8-SEAPの1×1010VGを、0、37、および155日目に、3回注入した(i.v.尾静脈)。後者の2つのうち、1つの群は、0、15、37、155、および169日目、すなわちAAV8注入ごとに、および、プライムおよび第2のブーストの後の14日にも、全身への抗BAFF(i.p.100μg)(clone Sandy-2 from Adipogen Corp., San Diego, CA, USA)で、追加で、処置した。
【0240】
指し示された時間(5、9、12、16、21、42、47、51、55、162,167,174、195、および210日)に、マウスから採血し、血清を全血から分離し、分析まで-20±5°Cで保存した。次いで、AAVに対するIgM抗体をELISAで測定した:96ウェルプレートをo/nでAAVでコートし、つぎの日に洗浄し、ブロックし、次いで希釈した血清試料(1:40)をプレートに加え、インキュベートした;プレートを洗浄し、ロバ抗マウスIgM特異的HRPを加え、別のインキュベーションおよび洗浄の後、AVに対するIgM抗体の存在を、TMB基質を加え570 nmのレファレンス波長により450 nmの吸光度で測定することにより、検出した(最上部光学密度(OD)として提示されるシグナルの強度は、試料のIgM抗体の量と、直接比例する)。
【0241】
図15において示されているように、AAVによって併用投与したSVP[Rapa]は、特にプライムの後、AAVIgMの初期の誘発を抑制し、その出現を遅延させた。しかしながら、これは、ブースト(矢印によって指し示す)の後、特に37日目のそれらの最初の後、より目立たず、42~55日の間にSVP[Rapa]のみで処置した群において、IgM上昇が結果として目立った。同時に、SVP[Rapa]および全身への抗BAFFで処置した群におけるIgM産生は、IgM応答のさらにより強いおよび統計学的により著しい抑制を示し、それは最初の2つの注入(0日および37日)の後にSVP[Rapa]のみで処置した群において、より低く、3番目のもの(155日)の後、それを統計学的に上回らなかった。
【0242】
例4:AAV IgGブレークスルーのより低いレベルが、ラパマイシンを封入したナノキャリアと全身への抗BAFFとの組み合わせによって誘導される
例3からと同じ血清試料は、使用しているヤギ抗マウスIgG特異的HRPを除いてIgMと同じラインに沿って、ELISAによって測定したAAV IgGに関しても、試験した。以前に示されたように、図16は実験動物の大多数のAAV IgGの誘発抑制AAVによって共投与されたSVP[Rapa]を示す。但し、それらのいくつかは、試験後半に、IgGの進展を始めた(この群の遅延IgM速度論と相関する)。顕著に、SVP[Rapa]および抗BAFFの組み合わせにより処置した群におけるIgGブレークスルーは、存在せず、それは、IgMのより低いレベルおよびその産生におけるより著しい遅延にさえ、相関する。
【0243】
例5:ナノキャリアを封入したラパマイシンと全身への抗BAFFとの組み合わせによるin vivoでのAAV誘導導入遺伝子発現の相乗的な長期増強
例3および4と同じ検討において、血清中のSEAPレベルは、ThermoFisher Scientific(Waltham, MA, USA)からのアッセイキットを使用して、測定した。希釈緩衝液中で血清試料および陽性コントロールを希釈し、65°Cで30分間インキュベートし、次いで室温まで冷却し、96ウェルフォーマットに塗布し、緩衝液を検定し(5分)、そして、次いで基質を加え(20分)、そして、プレートを照度計(477 nm)で読み込んだ。
【0244】
図17において示されているように、SVP[Rapa]で処置された群の導入遺伝子発現において、即時の増加があった。これらのうちで、SVP[Rapa]と抗BAFFとの組み合わせで処置された群の血清SEAP上昇は、SVP[Rapa]のみの処置によって発生したレベルから、より高くおよび統計学的に異なっていた(各時点の相対的な発現レベルは、未処置の群のレベルに対して算出してグラフ内に示し、それは百(100)のスコアに割り当てた)。さらに、あらゆるその後のAAV投与(37および155日、図17の矢印によって示す)で、SVP[Rapa]と抗BAFFとを組み合わせた群は、SEAP発現において更なるブーストを示し、それは、特に第2のブーストの後に、SVP[Rapa]のみで処置した群にみられるものより、決して劣っておらず、大部分が、より高かった(以前記載のように、未処置のマウスにおいては、ブーストはなく;ポストからプレブースト発現レベルは、相対的な発現レベルより上の最上部ラインのすべてのポストブースト時点に関して示した)。これは、検討においてみられるSEAP発現の安定したおよび最も高いレベルに、結果としてなった。検討の半年越えにわたる期間の多数の場合に、SVP[Rapa]と抗BAFFとの組み合わせで処置した群のSEAP発現が、16日目の初期にみられたレベルを超え、その一方で、SVP[Rapa]のみで処置した群、または無処置のままの群のどちらも超えなかったことに注意すべきである。まとめると、多数の時点で、SVP[Rapa]と抗BAFFとの組み合わせで処置した群のSEAP発現レベルは、AAVだけで処置した群より3倍以上高い。
【0245】
例6:ナノキャリア封入ラパマイシンと全身への抗BAFFとの組み合わせによる、相乗的なAAV誘導導入遺伝子発現の増加と、AAVに対するIgMおよびIgG免疫応答の低下が、SVP[Rapa]なしで、抗BAFF単独で使用した場合、見られない
【0246】
C57BL/6の雌のマウスの4つの群(各々6匹のマウス)は、いかなるナノキャリアも伴わない(2つの群)、または150μgでのSVP[Rapa]を伴う(2つの群)AAV8-SEAPの1×1010VGを、0、32、および98日目に、3回注入した(i.v.尾静脈)。両アームにおいて、1つの群は、いかなる追加の介入なし(すなわち、1つは完全に未処置であり、そして、1つはSVP[Rapa]のみで処置された)のままとし、そして、他のものは、追加で、AAV投与の日(0、32、および98日)に、全身への抗BAFF(i.p.100μg)で、処置した。
【0247】
指し示した時(5、11、21、28、38、42、49、63、91、108、112、118、125、139、および153日)に、マウスを採血し、血清を全血から分離し、上記のAAVに対するIgMおよびIgG抗体(図18B-18C)と同様に、SEAPレベル(図18A)の決定のために使用した。
【0248】
図18Aにおいて示されているように、SVP[Rapa]単独が、一定の利益を導入遺伝子発現に提供する一方で、特に98日目の第2のブーストの後、SVP[Rapa]と抗BAFFとの組み合わせで処置しる群のSEAP活性の、きわめてより高く、統計学的に異なる増加が、あった(各時点の相対的な発現レベルは、未処置の群のレベルに対して算出して示し、100のスコアに割り当て;ポストからプレブースト発現レベルは、相対的な発現レベルより下のすべてのポストブースト時点に関して示した)。これは、まとめると、未処置のマウスと比較して、SVP[Rapa]と抗BAFFとの組み合わせで処置した群のSEAP発現の3.5~4倍の上昇に、結果としてなった。重要なことに、特に第2のブースト(第3のAAV-SEAP投与)の後、導入遺伝子発現の統計的に有意な上昇は、抗BAFFで単独で処置した群においてみられなかった。
【0249】
反対に、AAVIgM(およびIgGブレークスルーがない)の最も低いレベルは、他の群と比較して、SVP[Rapa]と抗BAFFとの組み合わせで処置した群において、みられた。この群のIgM応答は、第1および第3のAAV投与の後で特に低く、多数の時点で、SVP[Rapa](図18B)のみで処置したものを含む他の全ての群から、統計学的に異なっていた。
【0250】
IgMレベルがまず最初にわずかに遅延し、抗BAFFのみで処置した群において低下する一方で、それらはSVP[Rapa]で処置した両群、特にSVP[Rapa]と抗BAFFとの組み合わせで処置したものより、常により高かった(図18B)。同様に、IgG速度論は、マウスの大多数が21日までに血清陽性となり、それらのすべてが、38日までに変換したこの群において、ほんのわずかに遅延したのみであり(未処置のマウスは21日までに完全に転換した)、その一方で、SVP[Rapa]で処置した群のマウスは、91日まで転換せず、そして、SVP[Rapa]と抗BAFFとの組み合わせで処置した群のマウスは、検討の期間に、IgG陽性にならなかった(図18C)。
【0251】
まとめると、SVP[Rapa]単独が、AAV誘導導入遺伝子発現およびIgM/IgG抑制に関する利益を示し、そして、抗BAFF単独が、AAV特異的IgMおよびIgGの発生を遅延させる一定の能力を立証し、両方の処置の組み合わせが、特に反復AAV投与の後で、AAV特異的IgM/IgG抑制と同様にSEAP発現を上昇させることにおいて、はるかに優れていた。
【0252】
例7:ナノキャリア封入ラパマイシンと全身への抗BAFFとの組み合わせによるAAVに対するIgMおよびIgG免疫応答の連続した抑制と結合したAAV誘導導入遺伝子発現の相乗的な増加は、複数回のAAV投与の後にみられる
【0253】
C57BL/6の雌のマウスの6つの群(各々6匹のマウス)は、単独で、または注入日のみに投与する追加の全身への抗BAFF(i.p.100μg)での処置を伴いまたは伴わずに、SVP[Rapa]の種々の容量(50または150μg)と組み合わせてAAV8-SEAPの1×1010VGを、0、32、98、および160日目に、4回注入し(i.v.尾静脈)、次いで4つの処理の総量を等しくし、「低い」と定義し、または第1、第3、および第4のAAV投与、すなわち該検討の14、112、および174日後の14日にも与え、次いで7つの総量の処置を等しくし、「中間」と定義した。指し示された時(28、38、91、108、153、167、172、179、186、および214日)にマウスを採血し、そして、血清を全血から分離し、上記のとおり、AAVに対するIgMおよびIgG抗体と同様に、SEAPレベル(図19A-19B)の決定のために使用された(図19C-19F)。
【0254】
顕著に、両方のSVP[Rapa]用量で、抗BAFFを投与することは、SEAP発現の有意に遅いブーストを提供し、それは、ほぼ3週間のポスト注入に関して相当な上昇を示す抗BAFFと50μgのSVP[Rapa]との組み合わせ(図19A)、および注入後8週間までの持続導入遺伝子上昇を提示する、150μgのSVP[Rapa]との同じ組み合わせ(図19B)を伴う、160日での最後のAAV注入の後、よく明示され、それは、両方の場合に、単独使用のSVP[Rapa]によって達成された利益から、より明確に、そして、統計学的に異なっていた(各時点の相対的な発現レベルは、未処置の群のレベルに対して算出して示し、100のスコアに割り当て;ポストからプレブースト発現レベルは、相対的な発現レベルより下のすべてのポストブースト時点に関して示した)。あらゆるその後の注入で、SVP[Rapa]によって、そして、そうであるからより、SVP[Rapa]と抗BAFFとの組み合わせによって処置した群は導入遺伝子活性の増加をしめし、その一方で、未処置のマウスはそうではなく(図19A中の点線によって記録した28日の、それぞれの群に関するSEAP活性レベルを参照)、そして、このように、まとめると、いくつかの時点で、いかなる追加の処置もないAAV-SEAPにより4回注入した群と比較して、SVP[Rapa]と抗BAFFの蓄積効果は、7倍の近いかそれを超えた(図19B)。
【0255】
AAVに対するIgMとともに、検討の期間に著しく抑制され続けたAAVに対するIgMおよびIgGの両方は、150μgのSVP[Rapa]と中間の抗BAFFとの組み合わせにより処置した群において、特によく抑制された(図19Cおよび図19E)。
【0256】
この群におけるIgM応答は、検討の214日までマウスの大多数においてベースラインにとどまり(図19E)、他の全ての群から統計学的に異なっていた(最上部の>0.1のODが、図19Cおよび図19D中において示されるとおりに定義された、それぞれの群におけるIgMとIgGのブレークスルーの数)。抗BAFFと組み合わせて150μgのSVP[Rapa]で処置した両群は、検討の最後まで、IgGブレークスルーを示さなかった(図19Dおよび図19F)。
【0257】
例8:抗BAFFを伴うかまたは伴わないSVP[Rapa]を投与したマウスにおける初期のおよび後期のIgMレベルは、AAV誘導導入遺伝子の長期の発現に逆相関する
C57BL/6の雌のマウスの5つの群(各々6匹のマウス)は、全身への抗BAFF(i.p.100μg)の追加の処置を伴うか伴わずに、VP[Rapa]の種々の用量(50または150μg)と組み合わせて、AAV8-SEAPの1×1010VGで、S0、32、98および160日目に4回、注入した(i.v.尾静脈)。図20において示されているように、わずかなマウスが、それまでに血清変換したにもかかわらず、これらのマウスの全ては、AAVIgMを形成することにおいて遅延を立証し、それは、11日で著しく抑制された(SVP[Rapa]で非処置のマウスは、5日までに、一様にIgM陽性である、より以前の例を参照)。11日に、IgM値を、32、98、および160日に投与した各3つのその後のAAVブーストのそれぞれの前に、そして、その後に決定した血清SEAPレベルに対してプロットした場合に、これらのデータセットの全ては、統計的に有意な逆相関を示し、それは時間とともに強くなり(38日目のp=0.043から179日目のp=0.0001まで、図20Aを参照)それゆえ、初期のIgM応答が、AAV伝達およびその後の長期の導入遺伝子発現を決定することができることを示した。
【0258】
同様に、(第4のAAV接種=第3のブーストの前一週)中で、抗BAFFが伴うかまたは伴わない150μgでのSVP[Rapa]により処置したマウスに見られた153日目のIgMレベルを、ポストブーストSEAP上昇に対してプロットし(ポストからプレブーストの発現レベルの比として)、同様に強い逆相関が、見られた(図20B)。
【0259】
まとめると、これは、AAVに対する初期および長期のIgM応答が、特に反復AAV後に、AAV誘導導入遺伝子発現レベルを決定することができ、SVP[Rapa]と抗BAFFとの組み合わせによって達成される抗原特異的IgM抑制が、有益であることができ、in vivoで長期のおよび安定な導入遺伝子発現に結果としてなることができることを、示す。
【0260】
例9:SVP[Rapa]の抗BAFFによる組み合わせは、未処置のおよびAAVを注射したマウスにおいて、一般的なおよび具体的な脾臓B細胞集団を低下させ抑制する
C57BL/6の雌のマウスの7つの群(各々9匹のマウス、それぞれの時点当たり3匹のマウス)に、AAV8-SEAPの1×1010VGによって注入したか(i.v.尾静脈)(4つの群)、またはウイルス未処置のままにした(3つの群)。前者のうち、1つの群は、さらに処置せず、1つは、SVP[Rapa]の150μgによって同時注入し、1つは、追加で抗BAFF(i.p.100μg)によって処置し、そして、最後の1つは、SVP[Rapa]と全身への抗BAFFとの組み合わせで処置した。同様に、AAVによって注入しなかった3つの群は、SVP[Rapa]の150μg、抗BAFF(i.p.100μg)、およびそれらの組み合わせによって処置した。注入をしなかったマウスは、ベースラインコントロール(0日目)として役立った。
【0261】
指し示した時(注入後1,4、および7日)マウスを処理し、そして、脾臓をとりだし、単一細胞浮遊液にメッシュし、次いでB細胞表面マーカーCD19、CD138、およびCD127に対する抗体で染色した。図21Aおよび図21Bにグラフに示されるように、未処置であるかまたはSVP[Rapa]で処置したAAV注入マウス)では、B細胞起源(CD19+として定義される)の脾細胞の総数において、いかなる低下も経験できなかった。
【0262】
同様に、SVP[Rapa]で処置したウイルス未処置のマウスは、CD19+細胞の数の軽微な低下のみを示した。反対に、抗BAFFで処置した(AAV注入したかウイルス未処置の)マウスは、CD19+脾細胞の著しいおよび時間依存的な低下を示し(少なくとも2倍の)、それは、SVP[Rapa]も使用した場合、さらに著しかった(3~4倍の)。
この効果は、(図21Cおよび図21D)と(CD19+CD138+として定義された)形質芽細胞、抗体分泌長寿命血漿の直接前駆体の分画を評価した場合、さらに目立った。この場合、SVP[Rapa]処置は、抗BAFF処置のように、時間依存的脾臓形質芽細胞低下につながった(2~3倍の;未処置のAAV注射マウスの変化は、実質的になかった)。
【0263】
しかしながら、SVP[Rapa]と抗BAFFとの組み合わせ処置の蓄積効果は、形質芽細胞分画の7倍以上の低下より強い結果となり、この組み合わせが、B細胞株の抗体産生細胞に対して、特異的に作用することができることを示した。
【0264】
これは、グラフ図21Eおよび図21Fに示されるように、プレ/プロB細胞分画(すなわち、CD19+CD127+として定義された未成熟B細胞の即時前駆体)の相対的な増加に相互に反映された。この場合には、未処置のおよびSVP[Rapa]処置AAV注入マウスは、プレ/プロB細胞変遷の変化を示さず、そして、ウイルス未処置のマウスへのSVP[Rapa]の効果は、2倍未満であり、7日目のみに、見られた。抗BAFFは、より強い効果を呈し、それは、ウイルス未処置のおよびAAV注入マウスの両方にみられ、前者において、顕著に、より著しくなかった。顕著に、SVP[Rapa]と抗BAFFとの組み合わせ処置は、相乗効果を、再び呈し(SVP[Rapa]と抗BAFFによる単一処置の、算術和より高い)、AAV注入マウスにおいて、未成熟B細胞前駆体の分画を、ほぼ4倍に上昇させ、ウイルス未処置のものにおけるより高くさえあった。まとめると、SVP[Rapa]と抗BAFFとの組み合わせ処置が、ウイルス未処置マウスの、そして、さらに重要なことに、AAV感染の場合さえ、その両方において、B細胞成熟の特異的および初期のブロックにつながり、それは、この組み合わせ処置によって達成されたウイルス特異的IgMおよびIgG産生の著しい抑制と、相関したように、見えた。
【0265】
例10:ナノキャリア封入ラパマイシンとBrutonチロシンキナーゼ阻害剤PCI-32765(イブルチニブ)の全身投与との組み合わせによるAAVに対するin vivo IgM免疫応答の相乗的低下
C57BL/6の雌のマウスの5つの群(各々6匹のマウス)は、いかなるナノキャリアも伴わない(1つの群)、または100μgでのSVP[Rapa]を伴う(4つの群)AAV8-SEAPの1×1010VGを、0および93日目に、2回注入した(i.v.尾静脈)。後者のうち、3つの群は、AAV-SEAPおよびSVP[Rapa]注入(-2~14日および91~107日)の2日前に開始し、以下の用量:20、100、または500μg/マウスで、毎日17日間連続の全身へのイブルチニブ(i.p.200μL)により処置した。
【0266】
指し示された時(6、9、14、21、28、49、63、91、97、100、104、および111日)に、マウスを採血し、血清を全血から分離し、分析まで-20±5°Cで保存した。次いで、AAVに対するIgM抗体をELISAで測定した:96ウェルプレートをo/nでAAVでコートし、つぎの日に洗浄し、ブロックし、次いで希釈した血清試料(1:40)をプレートに加え、インキュベートした;プレートを洗浄し、ロバ抗マウスIgM特異的HRPを加え、別のインキュベーションおよび洗浄の後、AVに対するIgM抗体の存在を、TMB基質を加え570 nmのレファレンス波長により450 nmの吸光度で測定することにより、検出した(最上部光学密度(OD)として提示されるシグナルの強度は、試料のIgM抗体の量と、直接比例する)。
【0267】
図22において示されているように、AAVによって共投与したSVP[Rapa]は、AAVIgMの初期の誘発を抑制し、その出現を遅延させた(図22A)。しかしながら、SVP[Rapa]のみで処置した群において、IgMは、一般に検出可能で、また93日での反復AAV注入の後、一定のブーストが立証された(図22Aの矢印によって示される)。
【0268】
同時に、SVP[Rapa]と全身へのイブルチニブで共処置したすべての群は、初期のIgM応答のさらにより強いおよび統計学的により著しい抑制を、示し、それは、500μgの高いイブルチニブ用量で、14日まで、SVP[Rapa]のみで処置した群から統計学的に異なっていた(図22B-22D)。さらにその上、SVP[Rapa]と全身へのイブルチニブとの組み合わせで処置した群の全ては、93日の反復AAV注入のすぐ後、SVP[Rapa]のみで処置した群と比較して、統計学的により低いIgMレベルを示した(図22E-22F)。
【0269】
例11:初期のAAVIgMと逆相関するナノキャリア封入ラパマイシンと全身へのイブルチニブとの組み合わせによってin vivoでのAAV誘導導入遺伝子発現の相乗的ポストブースト増強
例10と同じ検討において、血清中のSEAPレベルは、上記のThermoFisher Scientific(Waltham, MA, USA)からのアッセイキットを使用して、測定した:希釈緩衝液中で試料を希釈し、65°Cで30分間インキュベートし、次いで室温まで冷却し、96ウェルフォーマットに塗布し、緩衝液を検定し(5分)、そして、次いで基質を加え(20分)、そして、プレートを照度計(477 nm)で読み込んだ。
【0270】
SVP[Rapa]で処置されない群と比較して、これらの全ては、血清SEAPの高次を示したが、イブルチニブ投与にかかわりなくSVP[Rapa]で処置したすべての群間の最初のSEAP発現レベルにおいて、目立つ違いはなかった(図23A中の14日のデータを参照;他のいかなる処置もないAAV-SEAPを受けたマススにおけるSEAPレベルは、すべての時点で、およびしたがって、算出した他の全ての群における相対的な発現で、「100」の数を割り当てた)。後の時点(91日目、すなわち反復AAV投与の2日前;図23A)で測定した場合、すべての試験群は、おおよそSEAP発現と同じレベルを示した。
93日目での反復AAV-SEAP投与の直後に、SVP[Rapa]で処置したすべての群は、導入遺伝子発現の上昇を示した(図23A)。
【0271】
SVP[Rapa]のみで処置したマウスの群は、63~75%の未処置のマウスを超えるSEAPレベルを有する一方で(図23A、97~100日、すなわちブーストの4~7日後)、その時、効果は、イブルチニブ用量に依存していなかったが、より高い上昇が、SVP[Rapa]とフリーのイブルチニブとの組み合わせで処置したすべてのマウスにおいて、見られた(100日での未処置のマウスと比較して2倍超)。これは、未処置のマウス対5倍の違い超える上昇したSEAPレベルを呈し続けるSVP[Rapa]とイブルチニブとの組み合わせにより処理した群により104日(AAVブーストの11日後)までに変化をはじめ(100および500μgの最も高いイブルチニブ用量に関して)、そして、SVP[Rapa]のみで処置したマウスにおけるそれより、2倍より高かったまでの変化およびに、スタートさせた(図23A)。20μgのイブルチニブを使用した群と比較して、イブルチニブの100~500μgを組み合わせたSVP[Rapa]で処置したマウスにおいてみられた高い発現レベルが104日から始まったとみられる例において、用量依存が、あるように思えた。顕著に、SVP[Rapa]処置マウスのAAVIgMの初期(プライム後6日)のレベルは、ポストブースト血清SEAPレベルと逆相関し(図23B)、初期のIgM抑制(イブルチニブと組み合わせたSVP[Rapa]により処置したマウスにおいてより著しい)が、AAVに対する免疫記憶のより低いレベルに、その結果、反復AAV投与後のより低い既往応答に、およびブースト後のより多く維持されたおよび上昇した導入遺伝子発現に、結果としてなることができることを示唆した。
【0272】
例12:ナノキャリア封入ラパマイシンと全身へのイブルチニブとの組み合わせによるAAVに対するIgMおよびIgG免疫応答の相乗的な低下が、単独で使用したラパマイシンまたはイブルチニブによって達成したそれより、強い
【0273】
C57BL/6の雌のマウスの4つの群(各々8~10匹のマウス)は、いかなるナノキャリアも伴わない(2つの群)、または100μgでのSVP[Rapa]を伴う(2つの群)AAV8-SEAPの1×1010VGを、0、51、および105日目に、3回注入した(i.v.尾静脈)。群の両方の対において、1つの群は、AAV8の注入ごとに14日後に終わる前に、2日に開始して、毎日17日間の全身へのイブルチニブ(i.p.500μg)により、追加で処置した(実験のタイムラインの0日としてみなされるAAV-SEAP注入日による-2~14日、49~65日、および日103~119)。
【0274】
指し示された時(6、9、15、22、29、36、43、49、58、65、72、および79日)に、マウスを採血し、血清を全血から分離し、分析まで-20±5°Cで保存した。次いで、AAVに対するIgM抗体をELISAで測定した:96ウェルプレートをo/nでAAVでコートし、つぎの日に洗浄し、ブロックし、次いで希釈した血清試料(1:40)をプレートに加え、インキュベートした;プレートを洗浄し、ロバ抗マウスIgM特異的HRPを加え、別のインキュベーションおよび洗浄の後、AVに対するIgM抗体の存在を、TMB基質を加え570 nmのレファレンス波長により450 nmの吸光度で測定することにより、検出した(最上部光学密度(OD)として提示されるシグナルの強度は、試料のIgM抗体の量と、直接比例する)。
【0275】
図24において示されているように、AAVによって共投与したSVP[Rapa]は、特にプライムの後、AAVIgMの初期の誘発を抑制し、その出現を遅延させた(図24A、グラフ2)。しかしながら、これは、51日のブースト(矢印によって指し示した)の後により目立たなく、58~79日間隔の間に、SVP[Rapa]のみで処置した群における、目立つIgM上昇に結果としてなった。同時に、SVP[Rapa]と全身へのイブルチニブで処置した群(図24A、群3)のIgM産生は、IgM応答のさらにより強いおよび統計学的により著しい抑制を示し、それは、最初の2つの注入(0日および51日)の後、SVP[Rapa]のみで処置した群において、より低かった。重要なことに、全身へのイブルチニブ単独(図24A、群4)は、未処置の群1(図24A)と同じその誘発の変遷を示すIgM抑制において、完全に非効率的だった。
【0276】
これは、22日までに転換したすべての動物(8/8および10/10)に伴う本質的に類似のおよび強固な応答を産生する未処置およびイブルチニブのみで処置したマウス(群1および4に対応して)によるIgG変遷(図24B)にも、同様に翻訳されることができ、その一方で、SVP[Rapa]処置したマウス(群2)は、22日までに変換した動物の2/10およびブースト(d49)の前に検出可能なIgGレベルを示すわずか4/10の動物による遅延したおよび抑制されたIgG速度を提示した。この抑制は、79日(ポストブースト28日)までのAAV IgG陽性になった5/10の動物のみによる51日のブーストの後、持続した。依然として、SVP[Rapa]と全身へのイブルチニブとの組み合わせは、79日での1/9のポストブースト変換のみの直前の変換なしに(0/9)、単独使用のSVP[Rapa]より、優れていた(そして、統計学的に79日までのそれと異なっていた)。
【0277】
例13:ナノキャリア封入ラパマイシンと全身へのイブルチニブとの組み合わせによる反復AAV免疫処置の後の導入遺伝子発現の上昇は、それが単独で使用したラパマイシンとイブルチニブによって達成したそれより高い
【0278】
例12と同じ検討において、血清中のSEAPレベルは、上記のThermoFisher Scientificからのアッセイキットを使用して、測定した:図25において示されているように、SVP[Rapa]で処置された群の導入遺伝子発現において、小さいとはいえ即時の増加があった。これらのうちで、SVP[Rapa]とイブルチニブとの組み合わせで処置した群の血清SEAP上昇は、SVP[Rapa]のみの処置によって発生したレベルから、統計学的に異なっていなかったが、より高く(各時点の相対的な発現レベルは、未処置の群のレベルに対して算出してグラフ内に示し、それは百(100)のスコアに割り当てた)、一方で、単独で使用したイブルチニブは、対無処置マウスで効果を示さなかった。さらに、あらゆるその後のAAV投与(51および105日、矢印によって示した)で、群はSVP[Rapa]とイブルチニブとを組み合わせて投与した群は、SEAP発現において、最も高いブーストを示し、それは、特に最初のブーストの後、SVP[Rapa]のみで処置した群に対して、決して劣っておらず、ほとんどが高かった(ポストからプレブースト発現レベルは、相対的な発現レベルの下の最下端のすべての時点に関して示された)。
【0279】
示されているように、イブルチニブで処置した群と同様に、未処置のマウスのブーストは、なかった。これは、SVP[Rapa]と全身へのイブルチニブとの組み合わせにより処置した群3において呈される検討においてみられる、SEAP発現の安定な最も高いレベルに結果としてなった。まとめると、多数の時点で、SVP[Rapa]とイブルチニブとの組み合わせで処置したAAV注入群におけるSEAP発現レベルが、は、AAVのみによって、または、AAV+イブルチニブによって処置した群においてより、2倍高かった。
【0280】
例14:ナノキャリア封入ラパマイシンおよびリツキシマブによるAAV免疫化(プロフェティック)
C57BL/6の雌のマウスの3つの群は、いかなるナノキャリアも伴わない(1つの群)、または150μgでのSVP[Rapa]を伴う(2つの群)AAV8-SEAPを、0、37、および155日目に、3回注入する(i.v.尾静脈)。後者2つのうち、1つの群は、0、15、37、155、および169日目に、すなわちプライムおよび第2のブーストの14日後の、それぞれのAAV注入で、リツキシマブにより、追加の処置をする。
【0281】
指し示された時(5、9、12、16、21、42、47、51、55、162,167,174、195、および210日)に、マウスから採血し、血清を全血から分離し、分析まで-20±5°Cで保存する。次いで、Adに対するIgMおよびIgG抗体を、ELISAで測定する。血清のSEAPレベルは、ThermoFisher Scientific(Waltham、MA、USA)からのアッセイキットを使用して、測定する。
【0282】
例15:GSK1059615と抗BAFF抗体とを含む合成ナノキャリアによるAAV免疫化(プロフェティック)
C57BL/6の雌のマウスの3つの群は、いかなるナノキャリアも伴わない(1つの群)、またはGSK1059615を含む合成ナノキャリアを伴う(2つの群)AAV8-SEAPを、0、37、および155日目に、3回注入する(i.v.尾静脈)。後者2つのうち、1つの群は、0、15、37、155、および169日目に、すなわちそれぞれのAAV注入で、およびプライムおよび第2のブーストの14日後にも、全身抗BAFF(i.p.100μg)により、追加の処置をする。
【0283】
指し示された時(5、9、12、16、21、42、47、51、55、162,167,174、195、および210日)に、マウスから採血し、血清を全血から分離し、分析まで-20±5°Cで保存する。次いで、Adに対するIgMおよびIgG抗体を、ELISAで測定する。血清のSEAPレベルは、ThermoFisher Scientific(Waltham、MA、USA)からのアッセイキットを使用して、測定する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A-6B】
図6C-6D】
図7
図8
図9A
図9B-9C】
図9D
図10
図11
図12A-12B】
図13
図14
図15
図16
図17
図18A-18B】
図18C
図19A
図19B-19C】
図19D
図19E
図19F
図20A
図20B
図21A
図21B
図21C
図21D
図21E
図21F
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図22F
図23A-23B】
図24A
図24B
図25
【手続補正書】
【提出日】2023-10-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス導入ベクター、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア、および抗IgM剤を含む、組成物。
【外国語明細書】