(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168441
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】コネクタ構造
(51)【国際特許分類】
H01R 24/00 20110101AFI20241128BHJP
【FI】
H01R24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085134
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 孝治
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB15
5E223AB20
5E223AB38
5E223AC21
5E223BA01
5E223BA06
5E223BA07
5E223BB17
5E223CB24
5E223CB26
5E223CC07
5E223DA33
5E223DB09
5E223EA29
5E223EA38
5E223EB02
5E223EB14
5E223EB17
5E223EC07
5E223EC32
5E223EC42
(57)【要約】
【課題】取り付けられる電線又はケーブルの保持力を向上させることのできるコネクタ構造を提供すること。
【解決手段】コネクタ構造は、ケーブル3の端部に加締められる加締部材14と、加締められた加締部材14を収納するコネクタハウジング16と、加締部材14に係合されて加締部材14と共にコネクタハウジング16に収納される係合部材17と、を備えている。加締部材14は、ケーブル3に加締められる一対の加締片14bを有するオープンバレル型の加締部14Xを備えており、一対の加締片14bは、加締部14Xがケーブル3に加締められた際に互いに対向する先端縁をそれぞれ有すると共に、係合凹部14cをそれぞれ有している。係合部材17は、加締部材14の加締部14Xに係合される際に係合凹部14cにそれぞれ係合される一対の係合凸部17eを有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線又は電線を内部に有するケーブルの端部に取り付けられるコネクタにおいて構築されるコネクタ構造であって、
前記端部に加締められて前記端部を保持する加締部材と、
前記端部に加締められた前記加締部材を収納するコネクタハウジングと、
前記端部に加締められた前記加締部材に係合されて前記加締部材と共に前記コネクタハウジングに収納される係合部材と、を備えており、
前記加締部材が、前記端部に加締められる一対の加締片を有するオープンバレル型の加締部を備えており、
一対の前記加締片は、前記加締部が前記端部に加締められた際に互いに対向する先端縁をそれぞれ有すると共に、係合凹部をそれぞれ有しており、
前記係合部材が、前記加締部材の前記加締部に係合される際に前記係合凹部にそれぞれ係合される一対の係合凸部を有している、コネクタ構造。
【請求項2】
前記加締部材が、前記加締部に係合された前記係合部材を係止する係止部を有し、
前記係合部材が、前記加締部に係合された際に前記係止部と係止される被係止部を有している、請求項1に記載のコネクタ構造。
【請求項3】
一対の前記加締片の前記係合凹部が、前記加締片上の前記コネクタの接続面とは反対側に寄せて形成されている、請求項1又は2に記載のコネクタ構造。
【請求項4】
前記加締部材の前記係止部が、前記加締部に対して前記コネクタの接続面側に設けられた第一係止部と、前記加締部に対して前記接続面とは反対側に設けられた第二係止部とを備えており、
前記係合部材の前記被係止部が、前記第一係止部と係止する第一被係止部と、前記第二係止部と係止する第二被係止部とを備えている、請求項2に記載のコネクタ構造。
【請求項5】
前記第一係止部が一対の第一係止片にそれぞれ設けられた第一係止孔を有すると共に、前記第二係止部が一対の第二係止片に設けられた第二係止孔を有しており、
前記第一被係止部が一対の前記第一係止孔とそれぞれ係止する一対の第一係止爪を有すると共に、前記第二被係止部が一対の前記第二係止孔とそれぞれ係止する一対の第二係止爪とを有しており、
一対の前記第二係止孔のそれぞれの開口面積が、一対の前記第一係止孔のそれぞれの開口面積よりも大きくされている、請求項4に記載のコネクタ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コネクタは、電線や電線を内部に有するケーブルの端部に取り付けられる端子と、この端子を収納するハウジングとを備えている。端子がメス端子であればメスコネクタと呼ばれ、端子がオス端子であればオスコネクタと呼ばれることが多い。端子は導電性素材(通常は金属)で形成され、電線の端部に露出された芯線と電気的に接続される。コネクタは、電線やケーブル内に収容されたシールド線と電気的に接続されるシールド端子をさらに備えていることもある。下記特許文献1は、シールド端子を備えたコネクタを開示している。
【0003】
特許文献1に開示されたコネクタは、そのハウジング内に同軸ケーブル用端子を備えており、同軸ケーブル用端子はケーブルのシールド線と接続されるシールド端子と、ケーブル内の芯線と接続されて筒状のシールド端子の内部中央に配置される端子とを備えている。シールド線はケーブルの被覆の端縁よりも突出されて露出されおり、シールド端子の加締部はシールド線に加締められてシールド線に圧着される。また、シールド端子はケーブルの被覆と加締められる被覆加締部も有しており、被覆加締部は加締められて被覆と固定される。
【0004】
特許文献1に開示された被覆加締部はオープンバレル式加締部であり、一対の加締片を有している。一方の加締片にはロック孔が形成されており、他方の加締片の先端にはこのロック孔と係止するロック爪が設けられている。一方の加締片が電線の被覆に直接巻きつけられ、他方の加締片はこの一方の加締片上に巻き付けられる。即ち、一方の加締片と他方の加締片とは一部重複してケーブルに巻き付けられる。一方の加締片上に巻き付けられた他方の加締片のロック爪が一方の加締片に形成されたロック孔に係止され、シールド端子によるケーブルの保持力を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、一方の加締片上に他方の加締片が巻き付けられるため、一方の加締片の先端近傍において、一方の加締片の厚さに起因して他方の加締片とケーブルの被覆との間に隙間が生じてしまう。この結果、被覆加締部によるケーブルの保持力が周方向に均等にはならず、ケーブルに引張力が作用した際の保持力が十分に発揮されないおそれがあった。また、特許文献1に開示されたもう一方の加締部(被覆ではなく露出されたシールド線を加締める加締部)にはロック爪及びロック孔は形成されないが、やはり一方の加締片上に他方の加締片が巻き付けられる。他方の加締片とシールド線の外周面との間にはやはり隙間が形成されてしまうので、シールド加締部でも固定力が十分に発揮されないおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、取り付けられる電線又はケーブルの保持力を向上させることのできるコネクタ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコネクタ構造は、電線又は電線を内部に有するケーブルの端部に取り付けられるコネクタにおいて構築され、前記端部に加締められて前記端部を保持する加締部材と、前記端部に加締められた前記加締部材を収納するコネクタハウジングと、前記端部に加締められた前記加締部材に係合されて前記加締部材と共に前記コネクタハウジングに収納される係合部材と、を備えており、前記加締部材が、前記端部に加締められる一対の加締片を有するオープンバレル型の加締部を備えており、一対の前記加締片は、前記加締部が前記端部に加締められた際に互いに対向する先端縁をそれぞれ有すると共に、係合凹部をそれぞれ有しており、前記係合部材が、前記加締部材の前記加締部に係合される際に前記係合凹部にそれぞれ係合される一対の係合凸部を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るコネクタ構造によれば、取り付けられる電線又はケーブルの保持力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るコネクタ構造を備えたメスコネクタがオスコネクタに接続された状態を示す断面図である。
【
図2】接続状態の上記メスコネクタ及び上記オスコネクタを示す斜視図である。
【
図4】上記メスコネクタからコネクタハウジング及び係合部材を除いた状態を示す斜視図である。
【
図5】上記メスコネクタの係合部材を示す斜視図である。
【
図6】上記メスコネクタの加締部の軸方向ズレを示す平面図である。
【
図7】上記メスコネクタの加締部の軸垂直方向ズレを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態に係るコネクタ構造について図面を参照しつつ説明する。
図1及び
図2には互いに接続されたメスコネクタ1とオスコネクタ2とが示されているが、メスコネクタ1が本実施形態のコネクタ構造を備えている。即ち、オスコネクタ2は、本実施形態のコネクタ構造を備えるコネクタ(メスコネクタ1)が接続される相手コネクタである。なお、下記の説明における「上下左右」については説明のための図中の上下左右であり、メスコネクタ1が設置される向きを限定するものではない。
【0012】
メスコネクタ1は、内部に二本の電線4を有するケーブル3の端部に取り付けられている。二本の電線4は、二重螺旋構造を形成して非導電性素材で形成された被覆5の内部に収納されている。電線4と被覆5との間には、筒状のシールド線6も収納されている。本実施形態のシールド線6は編組線であり、導電性素材(金属)で形成されている。各電線4も被覆を有しており、その中央に導電性素材(金属)で形成された芯線7を有している。電線4の端部は被覆5の端縁から延出されており、その先端では芯線7が露出されている。芯線7の先端には導電性素材(金属)で形成されたメス端子8が接続されている。シールド線6は、被覆5の端縁で折り返されて被覆5の外周面を覆っている。
【0013】
メスコネクタ1が接続されるオスコネクタ2は、プリント基板9上に実装されている。オスコネクタ2の樹脂製のハウジング10の内部には、上述したメス端子8と電気的に接続されるオス端子11が絶縁ベース12に保持されて収納されている。メス端子8とこのメス端子8を保持する絶縁ベース12とは、互いに接触している二つのシールドカバー13によって二重に覆われている。オス端子11はプリント基板9の回路に接続されている。外側のシールドカバー13もプリント基板9のシールド回路に接続されている。
【0014】
上述したケーブル3の端部には導電性素材(金属)で形成された加締部材14が加締められている。ケーブル3の端部は加締部材14によって保持されていると言うこともできる。加締部材14のケーブル3への加締めについては追って詳しく説明する。本実施形態の加締部材14は、メスコネクタ1とオスコネクタ2との接続時、即ち、メス端子8とオス端子11との接続時に上述した外側のシールドカバー13と電気的に接続されるシールド部材である。シールド部材はシールド端子と呼ぶこともできる。ケーブル3内の二本の電線4の先端、即ち、二つのメス端子8は絶縁部材15に囲まれた状態で加締部材14の内部で並べられている。このため、メスコネクタ1の接続面CP(
図4参照)には絶縁部材15の先端面上に形成された二つの接続口が並べて配置される。ケーブル3の端部への加締部材14の取付状態は
図4によく示されている。なお、
図1は、並べられた二本の電線4のうちの一方の電線4の芯線7を通る断面での断面図である。
【0015】
ケーブル3は、その端部に加締められた加締部材14と共にメスコネクタ1の樹脂製のコネクタハウジング16の内部に形成された収容室16aに収容される。このとき、加締部材14は、その加締状態が緩まないように、その加締部14Xに係合部材17が係合された状態で収容室16aに収納される。加締部材14の加締部14Xへの係合部材17の係合については追って詳しく説明する。
【0016】
加締部材14の上面にはスタビライザ14a(
図1及び
図4参照)が突設されると共に、コネクタハウジング16にはランス16b(
図1参照)が形成されている。ランス16bは、加締部材14のコネクタハウジング16の収容室16aへの挿入方向、即ち、ケーブル3をコネクタハウジング16から引く抜く方向とは反対方向へと延出されている。加締部材14をコネクタハウジング16の収容室16aに挿入すると、ランス16bの先端がスタビライザ14aと係合して、加締部材14のコネクタハウジング16からの引き抜きが抑止される。また、メスコネクタ1のオスコネクタ2への接続時には、スタビライザ14aがランス16bの先端と当接して、加締部材14を外側のシールドカバー13に安定して押し込むことができる。
【0017】
なお、
図1に示されるように、メスコネクタ1のコネクタハウジング16の上部にはロックレバー16cが設けられており、ロックレバー16cの上面には係止爪16dが形成されている。一方、オスコネクタ2のハウジング10のメスコネクタが挿入される挿入口の開口縁部内面上には、係止爪16dと係止する被係止爪10aが形成されている。このため、オスコネクタ2に接続されたメスコネクタ1は、ロックレバー16cを操作しなければオスコネクタ2から外すことができない。
【0018】
次に、
図4を参照しつつ、加締部材14の構造について、ケーブル3の端部への取り付け形態と共に説明する。加締部材14は、プレス加工によって打ち抜かれた一枚の金属板を折り曲げて形成されている。加締部材14は、ケーブル3の上述した折り返されたシールド線6に加締められる加締部14Xと、ケーブル3の被覆5に加締められる被覆加締部14Yとを備えている。加締部14Xは、一対の加締片14bを有するオープンバレル型の加締部である。一対の加締片14bは、加締められる前は底部が丸められたV字状の形態であり、加締められることでケーブル3の上述した折り返されたシールド線6の外周面に圧着される。
【0019】
図3に示されるように、一対の加締片14bの先端縁は、加締められると互いに対向する。即ち、一対の加締片14bは互いに重なることはない。各加締片14bには、係合凹部14cが形成されており、本実施形態の係合凹部14cは四角形の貫通孔である。なお、
図3は、係合凹部14cの部分におけるケーブル3の中心軸に垂直な断面での断面図である。この加締部14Xに、本実施形態に係るコネクタ構造が構築される。係合部材17と共に構築されるこのコネクタ構造については係合部材17と共に追って詳しく説明する。
図4に示されるように、もう一方の被覆加締部14Yも、一対の被覆加締片14dを有するオープンバレル型の加締部である。一対の被覆加締片14dも、加締められる前は底部が丸められたV字状の形態であり、加締められることでケーブル3の被覆5の外周面に圧着される。
【0020】
図4に示されるように、加締部材14は、係合部材17を係止する二つの係止部14Z1及び14Z2も有している。一方の第一係止部14Z1は、加締部14Xに対してメスコネクタ1の接続面CP側に設けられており、他方の第二係止部14Z2は、加締部14Xに対して接続面CPとは反対側に設けられている。第一係止部14Z1は、一対の第一係止片14eを有しており、各第一係止片14eには第一係止孔14fが形成されている。一対の第一係止片14eは、互いに平行に延出されている。第二係止部14Z2も、一対の第二係止片14gを有しており、各第二係止片14gには第二係止孔14hが形成されている。一対の第二係止片14gも、互いに平行に延出されており、一対の第一係止片14eとも平行である。
【0021】
加締部材14の先端部は長円断面を有するように形成されており、その上面には上述したスタビライザ14aが設けられている。この先端部の内部には、上述した絶縁部材15が収納されている。この先端部の接続面CP寄りには、周方向に貫通孔が形成されている。上面中央の貫通孔は、加締部材14の先端縁まで達するスリットとして形成されている。隣接する貫通孔の間のブリッジ部分は僅かに外方に屈曲されており、オスコネクタ2との接続時に外側のシールドカバー13の挿入孔の内面と接触する。
【0022】
次に、
図5を参照しつつ、加締部材14に取り付けられる係合部材17について説明する。硬質樹脂製の係合部材17は、U字形の断面を有しており、二つの被係止部17Z1,17Z2が設けられている。係合部材17の一端部には加締部材14の上述した第一係止部14Z1と係止する第一被係止部17Z1が設けられており、他端部には第二係止部14Z2と係止する第二被係止部17Z2が設けられている。第一被係止部17Z1には、第一係止部14Z1の第一係止孔14fと係止する第一係止爪17aがそれぞれ形成された一対の第一係止腕部17bが設けられている。一対の第一係止腕部17bは、互いに平行に延設されている。各第一係止爪17aは、第一係止腕部17bから外側に向けて突設されている。第二被係止部17Z2には、第二係止部14Z2の第二係止孔14hと係止する第二係止爪17cがそれぞれ形成された一対の第二係止腕部17dが設けられている。一対の第二係止腕部17dも、互いに平行に延設されており、一対の第一係止腕部17bとも平行である。各第二係止爪17cは、第二係止腕部17dから内側に向けて突設されている。
【0023】
そして、係合部材17の第一被係止部17Z1と第二被係止部17Z2とのほぼ中央の内面からは、加締部材14の一対の係合凹部14cと係合する一対の係合凸部17eが突設されている。一対の係合凸部17eの突設方向は互いに平行であり、第一係止腕部17bや第二係止腕部17dの延設方向とも平行である(
図3参照)。このように形成された係合部材17は、第一係止腕部17b及び第二係止腕部17dの延設方向と加締部材14の第一係止片14e及び第二係止片14gの延出方向とを一致させて加締部材14に向けて押し込むと、加締部材14に係止されて固定される。
【0024】
係合部材17の加締部材14への取付時には、一対の第一係止爪17aによって加締部材14の一対の第一係止片14eが一旦広げられる。その後、それらの弾性復元力で閉じて、一対の第一係止爪17aが一対の第一係止片14eに形成された一対の第一係止孔14fと係止する(第一係止部14Z1及び第一被係止部17Z1)。同様に、係合部材17の加締部材14への取付時には、一対の第二係止爪17cによって加締部材14の一対の第二係止片14gが一旦狭められる。その後、それらの弾性復元力で開いて、一対の第二係止爪17cが一対の第二係止片14gに形成された一対の第二係止孔14hと係止する(第二係止部14Z2及び第二被係止部17Z2)。
【0025】
これらの第一係止部14Z1と第一被係止部17Z1との係止過程及び第二係止部14Z2と第二被係止部17Z2との係止過程と共に、係合部材17の一対の係合凸部17eが加締部材14の一対の係合凹部14cにそれぞれ挿入されて互いに係合する。この結果、加締部14Xにおける加締部材14と係合部材17との係合が完了する(
図3参照)。このように係合部材17が加締部材14に正常に取り付けられると、加締部材14の一対の加締片14bの加締状態が、一対の係合凸部17e及び一対の係合凹部14cとの係合によってしっかりと保持される。この結果、加締部材14によるケーブル3の保持力が担保される。
【0026】
ケーブル3に加締部材14をコネクタハウジング16から引き抜こうとする引張力が作用すると、加締部14Xでは当該引張力は加締められた一対の加締片14bを開こうと作用する。同時に、被覆加締部14Yでは加締められた一対の被覆加締片14dを開こうと作用する。しかし、本実施形態のコネクタ構造が構築されている加締部14Xでは、一対の加締片14bに形成された一対の係合凹部14cに係合部材17の一対の係合凸部17eが係合される。このため、一対の加締片14bは、開こうとする力によって開かれないようにしっかりと保持されている。この結果、上述した引張力に十分に対抗でき、メスコネクタ1によるケーブル3の保持力が低下することはなく、ケーブル3の保持力を向上させることができる。また、本実施形態では加締部14Xではシールド線6を加締めているので、ケーブル3のシールド機能が確実に保証されることにもなる。
【0027】
ここで、上述した引張力に起因して一対の加締片14bに開こうとする力が作用した場合、一対の加締片14bでは、メスコネクタ1の接続面CP側の側縁よりも、接続面CPとは反対側の側縁の方が開かれ易くなる。言い換えれば、ケーブル3に作用する引張力は、接続面CPとは反対側の側縁から一対の加締片14bを開こうとする。そこで、本実施形態では、
図1及び
図4に示されるように、係合凹部14cが、加締片14b上の接続面CPとは反対側の側縁に寄せて形成されている。このように係合凹部14cを加締片14b上に形成することで、より効果的に一対の加締片14bの開きを防止できる。
【0028】
また、本実施形態では、
図4に示されるように、一対の第二係止孔14hの各開口面積が一対の第一係止孔14fの各開口面積よりも大きくされている。第二係止孔14hが形成される第二係止片14gは、第一係止孔14fが形成される第一係止片14eよりも、加締片14bの接続面CPとは反対側の開かれやすい側縁に近い。このため、第二係止孔14hの開口面積を第一係止孔14fの開口面積よりも大きくすることで、第二係止孔14hと第二係止爪17cとの係止力を第一係止孔14fと第一係止爪17aとの係止力よりも大きく作用するようにしている。この結果、一対の加締片14bの開かれやすい側縁に近い一対の第二係止片14gがしっかりと係止されるので、より効果的に一対の加締片14bの開きが防止される。
【0029】
特に、本実施形態では、第二係止孔14hが形成される一対の第二係止片14gは、対向して内方に突出された第二係止爪17cが形成された一対の第二係止腕部17dによって外側から挟み込まれる。このため、上述した係止力の設定に加えて、一対の加締片14bの開かれやすい側縁に近い一対の第二係止片14gの開きを一対の第二係止腕部17dによって外方から挟んで防止することで、より効果的に一対の加締片14bの開きを防止することができる。
【0030】
さらに、本実施形態では、
図1に示されるように、コネクタハウジング16の収容室16aに収納された係合部材17の先端部は、ランス16bの下面と接触又は近接して配置される。ケーブル3に加締部材14をコネクタハウジング16から引き抜こうとする引張力が作用すると、加締部材14のスタビライザ14aと当接するランス16bには下方に曲げる力が作用する。このような力が作用しても、ランス16bは下方から係合部材17によって支持されるため、ランス16bの座屈が防止される。従って、ランス16bの座屈によってスタビライザ14aとの係止状態が解除されてしまうことが防止される。
【0031】
また、上述した本実施形態のコネクタ構造では、加締部14Xでの一対の加締片14bの加締状態が正常でないと、係合部材17を加締部材14に係合させることができない。係合部材17に形成される一対の係合凸部17eは互いの位置関係が変わることはない。一方、一対の加締片14bの加締状態が正常でないと、一対の加締片14bに形成されている一対の係合凹部14cの互いの相対位置が正しく配置されない。従って、加締状態が正常でないと、一対の係合凸部17eが一対の係合凹部14cにそれぞれ正しく係合されず、係合部材17を加締部材14に正しく取り付けることができない。従って、係合部材17を正常に取り付けられるか否かによって、一対の加締片14bの加締状態が正常であるか否かを検知することができる。
【0032】
特に、本実施形態では、加締部14Xに対して接続面CP側に第一係止部14Z1が設けられると共に加締部14Xに対して接続面CPとは反対側に第二係止部14Z2が設けられている。即ち、加締部14Xの前後に係止機構が設けられている。係合凹部14cと係合凸部17eとが正常に係合しないと、これらの係止機構での係止も正常に行われない。即ち、加締部材14と係合部材17とが加締部14Xで正常に係合しないと、二つの係止機構において加締部材14に係合部材17が係止されないので、より上述した加締不良の検知が分かりやすくなる。
【0033】
なお、このように、二つの係止機構が加締部14Xの前後にそれぞれ設けられるのが、ケーブル3の保持の点でも加締不良検知の点でも好ましい。しかし、一つの係止機構のみが設けられてもよい。このような場合にもし仮に加締部14Xにおける係合が正常ではないのに一つの係止機構で不十分な係止が行われても、加締部材14に対して係合部材17が傾いてしまうため加締不良を検知できる。また、このような不十分な係止では加締められた加締部材14のコネクタハウジング16の収容室16aへの挿入に支障が出るため加締不良を検知できる。
【0034】
図6及び
図7を参照して、加締部14Xにおける加締不良の場合について説明する。
図6は、加締部14Xの一対の加締片14bの一方がケーブル3の軸方向にズレてしまった場合を示している(軸方向ズレ)。このような場合、一対の加締片14bに形成された一対の係合凹部14cに係合部材17の一対の係合凸部17eが同時に係合されることがない。このため、係合部材17は加締部材14に対して浮いてしまい、第一係止部14Z1や第二係止部14Z2での係止も正常に行われ得ない。このため、加締部14Xの加締不良が容易に検知される。
【0035】
一方、
図7は、加締が不十分で加締部14Xの一対の加締片14bがケーブル3の軸に対して垂直な方向にズレてしまった場合を示している(軸垂直方向ズレ)。一対の加締片14bの先端縁が浮いてしまっており、正常に互いに対向していない。このような場合も、一対の加締片14bに形成された一対の係合凹部14cに係合部材17の一対の係合凸部17eが同時に係合されることがない。このため、係合部材17は加締部材14に対して浮いてしまい、第一係止部14Z1や第二係止部14Z2での係止も正常に行われ得ない。このため、加締部14Xの加締不良が容易に検知される。
【0036】
上記実施形態に係るコネクタ構造は、ケーブル3の端部に加締められる加締部材14と、加締部材14を収納するコネクタハウジング16と、加締部材14に係合されて加締部材14と共にコネクタハウジング16に収納される係合部材17とを備えている。加締部材14は、一対の加締片14bを有するオープンバレル型の加締部14Xを備えている。一対の加締片14bは、加締部14Xが加締められた際に互いに対向する先端縁をそれぞれ有すると共に、係合凹部14cをそれぞれ有している。係合部材17は、加締部材14の加締部14Xに係合される際に係合凹部14cにそれぞれ係合される一対の係合凸部17eを有している。
【0037】
従って、上記実施形態に係るコネクタ構造によれば、加締部材14の一対の加締片14bの加締状態が、加締片14bに形成された一対の係合凹部14cと係合部材17の一対の係合凸部17eとの係合によって維持される。このため、ケーブル3に引張力が作用したとしても、一対の加締片14bが開いてしまうのが防止され、加締部材14によるケーブル3の保持力を向上させることができる。ここで、加締められた一対の加締片14bの先端縁は互いに対向するので、加締部14Xによるケーブル3の保持力はケーブル3の周方向に沿って均一に作用する。この点も、加締部材14によるケーブル3の保持力を向上させる一因である。また、加締部14Xにおいて一対の加締片14bが正常に加締められていないと係合部材17を加締部14Xに係合させることができないので、加締部14Xの加締不良を容易に検知することができる。
【0038】
また、上記実施形態に係るコネクタ構造によれば、加締部材14が、加締部14Xに係合された係合部材17を係止する係止部14Z1,14Z2を有している。また、係合部材17が、加締部14Xに係合された際に係止部14Z1,14Z2と係止される被係止部17Z1,17Z2を有している。このため、加締部14Xに正常に係合された係合部材17が係止部14Z1,14Z2及び被係止部17Z1,17Z2の係止によって維持されるので、係合部材17が係合された加締部材14のコネクタハウジング16への取り付け作業の作業性が向上する。また、係止部14Z1,14Z2及び被係止部17Z1,17Z2の係止によって加締部14Xの係合が確実に維持されるので、加締部材14によるケーブル3の保持が確実に維持される。
【0039】
さらに、一対の加締片14bが正常に加締めされていなければ、係止部14Z1,14Z2及び被係止部17Z1,17Z2の係止も正常に行われない。このため、加締不良の検知が分かりやすくなる。なお、上記実施形態では、係合部材17の加締部材14への係止は、第一係止部14Z1及び第一被係止部17Z1と第二係止部14Z2及び第二被係止部17Z2との二箇所で行われるように構成された。この方が好ましいが、一組の係止部及び被係止部によって一箇所でのみ係止が行われてもよい。
【0040】
また、上記実施形態に係るコネクタ構造によれば、一対の加締片14bの係合凹部14cが、加締片14b上のメスコネクタ1の接続面CPとは反対側に寄せて形成されている。ケーブル3に作用する引張力は、一対の加締片14bの接続面CP側の側縁よりも接続面CPとは反対側の側縁を開こうと作用する。そこで、係合凹部14cを接続面CPとは反対側に寄せて加締片14b上に寄せて形成することで、上述した引張力による一対の加締片14bの開きをより確実に抑止することができる。
【0041】
また、上記実施形態に係るコネクタ構造によれば、係止部14Z1,14Z2が、加締部14Xに対してコネクタ1の接続面CP側に設けられた第一係止部14Z1と、加締部14Xに対して接続面CPとは反対側に設けられた第二係止部14Z2とを備えている。一方、被係止部17Z1,17Z2も、第一係止部14Z1と係止する第一被係止部17Z1と、第二係止部14Z2と係止する第二被係止部17Z2とを備えている。即ち、加締部14Xの前後の二箇所で加締部材14と係合部材17とが係止される。この結果、加締部14Xでの係合状態が前後の二箇所の係止機構で維持されるため、より確実に加締部14Xでの係合状態を維持できる。この結果、加締部材14によるケーブル3の保持力をより確実に向上させることができる。
【0042】
ここで、上記実施形態に係るコネクタ構造によれば、さらに、第一係止部14Z1は、一対の第一係止片14eにそれぞれ設けられた第一係止孔14fを有している。第二係止部14Z2は、一対の第二係止片14gに設けられた第二係止孔14hを有している。また、第一被係止部17Z1は、一対の第一係止孔14fとそれぞれ係止する一対の第一係止爪17aを有している。第二被係止部17Z2は、一対の前記第二係止孔14hとそれぞれ係止する一対の第二係止爪17cとを有している。そして、一対の第二係止孔14hのそれぞれの開口面積が、一対の第一係止孔14fのそれぞれの開口面積よりも大きくされている。上述したように、ケーブル3に作用する引張力は接続面CPとは反対側の側縁から一対の加締片14bを開こうとする。第二係止孔14hの開口面積を第一係止孔14fの開口面積よりも大きくすることで、第二係止孔14hと第二係止爪17cとの係止力を第一係止孔14fと第一係止爪17aとの係止力よりも大きく作用するようにする。この結果、一対の加締片14bの開かれやすい側縁に近い一対の第二係止片14gが係合部材17にしっかりと係止されるので、より効果的に一対の加締片14bの開きを防止することができる。
【0043】
以上、上記実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、加締部14Xにのみ係合凹部14c及び係合凸部17eの係合機構が構築された。しかし、加締部14Xに加えて被覆加締部14Yにも同様の係合機構が構築されてもよい。この場合、係合部材17を被覆加締部14Yも覆うように形成して係合凸部を設ければよい。
【0044】
また、上記実施形態では、加締部材14は複数の電線4を内部に有するケーブル3の端部に加締められた。しかし、加締部材が電線の端部に加締られるような場合も本発明のコネクタ構造を適用することができる。また、上記実施形態の加締部材14は、ケーブル3のシールド線6に加締められたが、加締部材は、電線又はケーブルの被覆部に加締められる加締部や、電線の芯線を加締める加締部に適用することもできる。
【0045】
さらに、上記実施形態では、係止部14Z1,14Z2及び被係止部17Z1,17Z2によって加締部材14と係合部材17との係合状態が維持されるようにコネクタ構造が構築された。このように構築されるのが好ましいが、係止部及び被係止部が設けられずに係合状態の加締部材14及び係合部材17がコネクタハウジング16の収容室16aに収容されると両者の係合状態が維持されるようにコネクタ構造が構築されてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 メスコネクタ(コネクタ構造を備えるコネクタ)
3 ケーブル
4 電線
14 加締部材
14b 加締片
14X 加締部
14c 係合凹部
14e 第一係止片
14f 第一係止孔
14g 第二係止片
14h 第二係止孔
14Z1 第一係止部
14Z2 第二係止部
16 コネクタハウジング
17 係合部材
17Z1 第一被係止部
17Z2 第二被係止部
17a 第一係止爪
17c 第二係止爪
17e 係合凸部
CP 接続面