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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168442
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】賦形装置および賦形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/46 20060101AFI20241128BHJP
   B29C 70/44 20060101ALI20241128BHJP
   B29C 43/12 20060101ALI20241128BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20241128BHJP
   B29C 33/16 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B29C70/46
B29C70/44
B29C43/12
B29C43/36
B29C33/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085135
(22)【出願日】2023-05-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、「グリーンイノベーション基金事業/次世代航空機の開発(航空機主要構造部品の複雑形状・飛躍的軽量化開発)」に係る「航空機主要複合材構造部品の軽量化・生産高レート化・複雑形状化」に関する助成研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渡部 達也
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F202AC03
4F202AD16
4F202AM29
4F202AM32
4F202AR12
4F202CA09
4F202CB01
4F202CK12
4F202CK90
4F202CN01
4F202CN17
4F202CN30
4F202CQ01
4F202CQ06
4F204AC03
4F204AD16
4F204AJ09
4F204AM29
4F204FA01
4F204FA13
4F204FB01
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ15
4F204FQ37
4F205AC03
4F205AD16
4F205AJ09
4F205AM29
4F205AM32
4F205HA09
4F205HA23
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK31
(57)【要約】
【課題】湾曲領域を含む賦形面を有する賦形型により積層体を賦形する際に、積層体に皺(リンクル)が発生する不具合を抑制する。
【解決手段】凸面13および凹面14を含む賦形面10aを有するとともに複数の電磁石16a~16sが配置された賦形型10と、複数の電磁石のそれぞれに選択的に電流を供給可能な電流供給部と、磁性材料を含む弾性部材により形成されて可撓性を有し賦形面10aとの間に積層体200を挟んだ状態で配置されるシート部材20と、を備え、複数の電磁石は、幅方向WDにおける賦形面10aの第1端部10a1から第2端部10a2に向けて間隔を空けて配置されており、電流供給部は、電磁石に電流を供給することにより、電流が供給される電磁石と該電磁石に対応する領域のシート部材20との間に配置される積層体200を、賦形面10aの形状に沿うように賦形する賦形装置100を提供する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維を含む複数のシート材料を積層した積層体を賦形する賦形装置であって、
長手方向に沿って延びるとともに幅方向に沿った凹形状または凸形状の少なくともいずれかの湾曲領域を含む賦形面を有するとともに前記賦形面に磁力を発生させる複数の電磁石が配置された賦形型と、
複数の前記電磁石のそれぞれに選択的に電流を供給可能な電流供給部と、
磁性材料を含む弾性部材により形成されて可撓性を有し前記賦形面との間に前記積層体を挟んだ状態で配置されるシート部材と、を備え、
複数の前記電磁石は、前記長手方向に延びるように形成され、かつ前記幅方向における前記賦形面の第1端部から第2端部に向けて間隔を空けて配置されており、
前記電流供給部は、前記電磁石に電流を供給することにより、電流が供給される前記電磁石と該電磁石に対応する領域の前記シート部材との間に配置される前記積層体を、前記賦形面の形状に沿うように賦形する賦形装置。
【請求項2】
前記電流供給部は、前記幅方向の所定位置に配置される前記電磁石へ電流の供給を開始した後に、前記所定位置から前記第1端部および/または前記第2端部に向けて複数の前記電磁石への電流の供給を段階的に開始する請求項1に記載の賦形装置。
【請求項3】
前記所定位置は、前記湾曲領域に対応する位置であり、
前記電流供給部は、前記所定位置に配置される前記電磁石へ電流の供給を開始した後に、前記所定位置から前記第1端部および前記第2端部に向けて複数の前記電磁石への電流の供給を段階的に開始する請求項2に記載の賦形装置。
【請求項4】
前記所定位置は、前記第1端部であり、
前記電流供給部は、前記所定位置に配置される前記電磁石へ電流の供給を開始した後に、前記所定位置から前記第2端部に向けて複数の前記電磁石への電流の供給を段階的に開始する請求項2に記載の賦形装置。
【請求項5】
前記賦形面は、前記湾曲領域よりも前記幅方向に沿った曲率の変化が小さい非湾曲領域を含み、
前記湾曲領域における複数の前記電磁石の前記幅方向の第1配置間隔は、前記非湾曲領域における複数の前記電磁石の前記幅方向の第2配置間隔よりも狭い請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の賦形装置。
【請求項6】
前記電流供給部は、複数の前記電磁石に含まれる第1の前記電磁石に供給する第1電流値と、複数の前記電磁石に含まれる第2の前記電磁石に供給する第2電流値とを異ならせる請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の賦形装置。
【請求項7】
前記電流供給部は、第1の前記電磁石に対応する領域に配置される前記積層体の第1の厚さが、第2の前記電磁石に対応する領域に配置される前記積層体の第2の厚さよりも厚い場合に、前記第1電流値を前記第2電流値よりも大きくする請求項6に記載の賦形装置。
【請求項8】
強化繊維を含む複数のシート材料を積層した積層体を賦形する賦形方法であって、
長手方向に沿って延びるとともに幅方向に沿った凹形状または凸形状の少なくともいずれかの湾曲領域を含む賦形面を有するとともに前記賦形面に磁力を発生させる複数の電磁石が配置された賦形型に前記積層体を設置する積層体設置工程と、
前記賦形面との間に前記積層体を挟んだ状態で磁性材料を含む弾性部材により形成されて可撓性を有するシート部材を設置するシート部材設置工程と、
複数の前記電磁石のそれぞれに選択的に電流を供給することにより、電流が供給される前記電磁石と該電磁石に対応する領域の前記シート部材との間に配置される前記積層体を、前記賦形面の形状に沿うように賦形する賦形工程と、を備え、
複数の前記電磁石は、前記長手方向に延びるように形成され、かつ前記幅方向における前記賦形面の第1端部から第2端部に向けて間隔を空けて配置されている賦形方法。
【請求項9】
前記賦形工程は、前記幅方向の所定位置に配置される前記電磁石へ電流の供給を開始した後に、前記所定位置から前記第1端部および/または前記第2端部に向けて複数の前記電磁石への電流の供給を段階的に開始する請求項8に記載の賦形方法。
【請求項10】
前記所定位置は、前記湾曲領域に対応する位置であり、
前記賦形工程は、前記所定位置に配置される前記電磁石へ電流の供給を開始した後に、前記所定位置から前記第1端部および前記第2端部に向けて複数の前記電磁石への電流の供給を段階的に開始する請求項9に記載の賦形方法。
【請求項11】
前記所定位置は、前記第1端部であり、
前記賦形工程は、前記所定位置に配置される前記電磁石へ電流の供給を開始した後に、前記所定位置から前記第2端部に向けて複数の前記電磁石への電流の供給を段階的に開始する請求項9に記載の賦形方法。
【請求項12】
前記賦形面は、前記湾曲領域よりも前記幅方向に沿った曲率の変化が小さい非湾曲領域を含み、
前記湾曲領域における複数の前記電磁石の前記幅方向の第1配置間隔は、前記非湾曲領域における複数の前記電磁石の前記幅方向の第2配置間隔よりも狭い請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の賦形方法。
【請求項13】
前記賦形工程は、複数の前記電磁石に含まれる第1の前記電磁石に供給する第1電流値と、複数の前記電磁石に含まれる第2の前記電磁石に供給する第2電流値とを異ならせる請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の賦形方法。
【請求項14】
前記賦形工程は、第1の前記電磁石に対応する領域に配置される前記積層体の第1の厚さが、第2の前記電磁石に対応する領域に配置される前記積層体の第2の厚さよりも厚い場合に、前記第1電流値を前記第2電流値よりも大きくする請求項13に記載の賦形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、強化繊維を含む複数のシート材料を積層した積層体を賦形する賦形装置および賦形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機や自動車等に用いられる複合構造部材は任意の断面形状を有しており、これを製造する方法として、強化繊維を含む複数のシート材料を積層した積層体を賦形型に押し付けて賦形して目的形状を得る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1,2には、Z型の断面を有する賦形型に積層体を配置して真空バッグで封止し、真空バッグで封止された空間を減圧することにより、積層体をZ型に賦形することが開示されている。
【0003】
また、他の賦形方法として、上型と下型を磁力により引き付けて上型と下型との間に配置した積層体を賦形する技術(例えば、特許文献2参照)や、磁性を有する強化繊維を含む複数のシート材料を積層した積層体を磁力により賦形型に押し付けて真空バッグによる賦形を補助する技術(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第11155069号明細書
【特許文献2】米国特許第8268226号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/0180209号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1において、賦形型の凹んだ領域では、真空バッグで封止された空間を減圧することによる積層体の賦形型への加圧力が他の領域に比べて低下してしまい、積層体を賦形型の形状に沿って忠実に折り曲げることが困難となる。特に、真空バッグにより減圧する前には賦形型に接触しておらず、真空バッグによる減圧の開始後に賦形型に押し付けて賦形される積層体の面積が大きい場合、賦形後の積層体に皺(リンクル)が発生する可能性がある。
【0006】
また、特許文献2では、下型に設置された積層体の全領域を上型により同時に賦形するため、凹形状や凸形状の積層体を賦形する場合に、凹形状や凸形状の領域に皺が発生する可能性がある。また、特許文献3では、積層体を賦形する賦形力の大きさが積層体の各領域における強化繊維の磁性に依存するため、凹形状や凸形状の積層体を賦形する場合に、凹形状や凸形状の領域に適切な賦形力が発生せずに皺が発生する可能性がある。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、凹形状または凸形状の少なくともいずれかの湾曲領域を含む賦形面を有する賦形型により積層体を賦形する際に、積層体に皺(リンクル)が発生する不具合を抑制することが可能な賦形装置および賦形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る賦形装置は、強化繊維を含む複数のシート材料を積層した積層体を賦形する賦形装置であって、長手方向に沿って延びるとともに幅方向に沿った凹形状または凸形状の少なくともいずれかの湾曲領域を含む賦形面を有するとともに前記賦形面に磁力を発生させる複数の電磁石が配置された賦形型と、複数の前記電磁石のそれぞれに選択的に電流を供給可能な電流供給部と、磁性材料を含む弾性部材により形成されて可撓性を有し前記賦形面との間に前記積層体を挟んだ状態で配置されるシート部材と、を備え、複数の前記電磁石は、前記長手方向に延びるように形成され、かつ前記幅方向における前記賦形面の第1端部から第2端部に向けて間隔を空けて配置されており、前記電流供給部は、前記電磁石に電流を供給することにより、電流が供給される前記電磁石と該電磁石に対応する領域の前記シート部材との間に配置される前記積層体を、前記賦形面の形状に沿うように賦形する。
【0009】
本開示の一態様に係る賦形方法は、強化繊維を含む複数のシート材料を積層した積層体を賦形する賦形方法であって、長手方向に沿って延びるとともに幅方向に沿った凹形状または凸形状の少なくともいずれかの湾曲領域を含む賦形面を有するとともに前記賦形面に磁力を発生させる複数の電磁石が配置された賦形型に前記積層体を設置する積層体設置工程と、前記賦形面との間に前記積層体を挟んだ状態で磁性材料を含む弾性部材により形成されて可撓性を有するシート部材を設置するシート部材設置工程と、複数の前記電磁石のそれぞれに選択的に電流を供給することにより、電流が供給される前記電磁石と該電磁石に対応する領域の前記シート部材との間に配置される前記積層体を、前記賦形面の形状に沿うように賦形する賦形工程と、を備え、複数の前記電磁石は、前記長手方向に延びるように形成され、かつ前記幅方向における前記賦形面の第1端部から第2端部に向けて間隔を空けて配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、凹形状または凸形状の少なくともいずれかの湾曲領域を含む賦形面を有する賦形型により積層体を賦形する際に、積層体に皺(リンクル)が発生する不具合を抑制することが可能な賦形装置および賦形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る下型および積層体を示す斜視図であり、積層体を賦形する前の状態を示す。
図2】本開示の一実施形態に係る下型および積層体を示す斜視図であり、積層体を賦形した後の状態を示す。
図3】長手方向の中央部分の近傍における賦形型の断面図であり、賦形型に積層体およびシート部材を設置する前の状態を示す。
図4】長手方向の中央部分の近傍における賦形型の断面図であり、賦形型に積層体およびシート部材を設置した後の状態を示す。
図5】電流供給部の構成を示すブロック図である。
図6】本実施形態の積層体の賦形方法を示すフローチャートである。
図7】長手方向の中央部分の近傍における賦形型の断面図であり、賦形工程を実行中の状態を示す。
図8】長手方向の中央部分の近傍における賦形型の断面図であり、賦形工程を実行中の状態を示す。
図9】長手方向の中央部分の近傍における賦形型の断面図であり、賦形工程が終了した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態に係る賦形装置100およびそれを用いた賦形方法について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る賦形型10および積層体200を示す斜視図であり、積層体200を賦形する前の状態を示す。図2は、本実施形態に係る賦形型10および積層体200を示す斜視図であり、積層体200を賦形した後の状態を示す。
【0013】
本実施形態の賦形装置100は、複数のシート材料を積層した積層体200を賦形型10の賦形面10aの形状に沿って賦形する装置である。図1に示すように、賦形する前の積層体200は、シート状の複数層の複合材料を平坦状に積層したものである。積層体200は、シート状の複数層の複合材料を積層したものである。積層体200を構成する複合材料は、強化繊維にマトリックス樹脂が付着されて半一体化したシート状の中間成形材料である。
【0014】
図2に示すように、シート部材20は、賦形型10の賦形面10aとの間に積層体200を挟んだ状態で配置されるシート状の部材である。シート部材20は、磁性材料(例えば、磁化された鉄粉)を含む弾性部材(例えば、ゴム材料により形成される部材)により形成されて可撓性を有する部材である。シート部材20は、賦形型10に配置された複数の電磁石16が発生する磁力により賦形面10aに向けて引き付けられる。
【0015】
複合材料に含まれる強化繊維は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等である。複合材料に含まれるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を用いることができる。熱硬化性のマトリックス樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール、シアネートエステル、ポリイミド等である。
【0016】
熱可塑性のマトリックス樹脂は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ナイロン6(PA6)、ナイロン66(PA66)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)等である。
【0017】
賦形型10は、マトリックス樹脂を軟化温度以上に加熱することが可能な加熱機構(図示略)を備えていてもよい。加熱機構によりマトリックス樹脂を軟化温度以上に加熱することにより、マトリックス樹脂を含む積層体200を賦形型10の表面形状に沿って賦形することができる。
【0018】
積層体200として、マトリックス樹脂を含まないシート状の複数の強化繊維(ドライファブリック)を積層して平坦状に形成したものを用いてもよい。ドライファブリックを用いる場合、賦形型10の表面形状に沿って賦形された積層体200を成形型(図示略)に配置し、成形型の内部に樹脂材料を注入して強化繊維に含浸させて成形するRTM(Resin Transfer Molding)法が用いられる。
【0019】
また、ドライファブリックにより形成される積層体200において、複数層のドライファブリックのそれぞれの表面には、隣接するドライファブリック同士を仮止めするための粉末状の樹脂(パウダーバインダー)を散布するのが望ましい。パウダーバインダーとして、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0020】
図1および図2に示す賦形装置100は、三次元空間上に配置されている。図1および図2に示すX軸、Y軸、Z軸は、三次元空間上で互いに交差する軸線である。X軸は賦形型10が設置される設置面Sと平行に延びる軸線であり、Z軸は賦形型10が設置される設置面Sに直交する方向に延びる軸線である。Y軸はX軸およびZ軸の双方に直交する軸線である。
【0021】
賦形型10は、積層体200を賦形する賦形面10aを有するブロック状の型であり、例えば、金属材料により形成されている。賦形型10は、積層体200を賦形する賦形面10aとして、上面11と、側面12と、凸面(湾曲領域)13と、凹面14(湾曲領域)と、底面15と、を有する。
【0022】
図3は、長手方向LDの中央部分の近傍における賦形型10の断面図であり、賦形型10に積層体200およびシート部材20を設置する前の状態を示す。図4は、長手方向LDの中央部分の近傍における賦形型10の断面図であり、賦形型10に積層体200およびシート部材20を設置した後の状態を示す。
【0023】
図3および図4に示すように、賦形型10の上面11はX軸に沿って平坦状に延びる面である。賦形型10の側面12はZ軸に沿って平坦状に延びる面である。賦形型10の底面15はX軸に沿って平坦状に延びる面である。
【0024】
凸面13は、上面11と側面12を連結する面であり、X軸に沿って上面11から側面12に近づくにつれて、X軸に沿った面からZ軸に沿った面となるように面の法線方向を漸次変化させる円弧形状となっている。凸面13は、X軸と平行な幅方向WDに沿った凸形状を含む部分である。
【0025】
凹面14は、側面12と底面15を連結する面であり、Z軸に沿って側面12から底面15に近づくにつれて、Z軸に沿った面からX軸に沿った面となり、さらにX軸と交差した面となるように面の法線方向を漸次変化させる円弧形状となっている。凹面14は、幅方向WDに沿った凹形状を含む部分である。上面11と側面12と底面15は、それぞれ凸面13および凹面14よりも幅方向WDに沿った曲率の変化が小さい非湾曲領域である。
【0026】
図3および図4に示す賦形型10の形状は、他の態様であってもよい。例えば、上面11は、X軸とは異なる方向に延びる面でもよい。また、側面12は、Z軸とは異なる方向に延びる面であってもよい。また、凸面13は、円弧形状とは異なる任意の凸形状としてもよい。また、凹面14は、円弧形状とは異なる任意の凹形状としてもよい。また、底面15は、X軸と平行な方向やX軸から下方に傾斜した方向に延びる面であってもよい。賦形型10は、長手方向LDに沿って延びるとともに幅方向WDに沿った凹形状または凸形状の少なくともいずれかの湾曲領域を含む賦形面10aを有していればよい。
【0027】
図3および図4に示すように、賦形型10には、賦形面10aの一部を構成するように、複数の電磁石16a,16b,16c,16d,16e,16f,16g,16h,16i,16j,16k,16l,16m,16n,16o,16p,16q,16r,16s(以下、電磁石16とも呼ぶ)が配置されている。複数の電磁石16は、電流供給部30から供給される電流により賦形面10aに磁力を発生させる。なお、複数の電磁石16は、賦形面10aの一部を構成せずに、賦形型10の賦形面10aの近傍に埋め込まれていてもよい。
【0028】
複数の電磁石16のそれぞれは、長手方向LDに沿って延びるように形成され、かつ幅方向WDにおける賦形面10aの第1端部10a1から第2端部10a2に向けて間隔を空けて配置されている。凸面13および凹面14(湾曲領域)における複数の電磁石16の幅方向WDの配置間隔(第1配置間隔)は、上面11,側面12,底面15(非湾曲領域)における複数の電磁石16の幅方向WDの配置間隔(第2配置間隔)よりも狭い。配置間隔は、幅方向WDにおいて隣接する一対の電磁石16の賦形面10aの面内における中心位置の間隔である。
【0029】
次に、賦形装置100が有する電流供給部30について図5を参照して説明する。図5は、電流供給部30の構成を示すブロック図である。図5に示すように、電流供給部30は、電源31と、リレー32と、ブレーカー33と、電圧変換部34と、電流制御部35と、を有する。電流供給部30は、複数の電磁石16のそれぞれに選択的に電流を供給可能な装置である。
【0030】
電流供給部30は、複数の電磁石16のそれぞれに選択的に電流を供給することで、所望の電磁石16が磁力を発生する状態とする。電流供給部30は、所望の電磁石16に電流を供給することにより、電流が供給される電磁石16とその電磁石16に対応する領域のシート部材20との間に配置される積層体200を、賦形面10aの形状に沿うように賦形する。
【0031】
電流供給部30は、電源31から電圧変換部34に電圧を供給し、電圧変換部34で変換された電圧を電流制御部35に供給する。電流制御部35は、複数の電磁石16に選択的に電圧を印加することにより、複数の電磁石16のそれぞれに選択的に電流を供給する。電圧変換部34は、電源31から交流電圧が供給される場合には、交流電圧を直流電圧に変換する。また、電圧変換部34は、電源31から直流電圧が供給される場合には、直流電圧の電圧値を所望の電圧値に変換する。
【0032】
リレー32は、電源31から電圧変換部34へ電圧を供給する状態と供給しない状態を切り替える装置である。ブレーカー33は、電源31から電圧変換部34に供給される電圧値が所定の閾値電圧を超える場合に電源31から電圧変換部34への電圧の供給を遮断する安全装置である。
【0033】
次に、本実施形態の積層体200の賦形方法について、図面を参照して説明する。図6は、本実施形態の積層体200の賦形方法を示すフローチャートである。
【0034】
ステップS101(積層体設置工程)において、作業者は、賦形型10の賦形面10aと対向するように積層体200を賦形型10に設置する。
ステップS102(シート部材設置工程)において、作業者は、賦形面10aとの間に積層体200を挟んだ状態でシート部材20を設置する。
【0035】
積層体200の硬度が比較的低く、積層体200およびシート部材20の自重により積層体200の形状が賦形型10の賦形面10aに沿って変形する場合には、ステップS101およびステップS102を実行することにより、図4に示す状態となる。
【0036】
なお、積層体200の硬度が比較的高く、図4に示すように積層体200およびシート部材20の自重により積層体200の形状が賦形型10の賦形面10aに沿って変形しない場合には、ステップS103を実行する前に、ステップS103で複数の電磁石16に供給される電流の電流値よりも低い電流値の電流を複数の電磁石16の全てに供給してもよい。
【0037】
ステップS103を実行する前に複数の電磁石16の全てに電流を供給することにより、複数の電磁石16の全てが磁力を発生し、各電磁石16に対応する領域に配置されるシート部材20が賦形面10aに向けて引き付けられる。シート部材20が賦形面10aに向けて引き付けられると、積層体200が賦形型10の賦形面10aに沿って変形し、図4に示す状態となる。
【0038】
ステップS103で複数の電磁石16に供給される電流の電流値よりも低い電流値としているのは、複数の電磁石16の全てに供給する電流値をステップS103と同じにしてしまうと、シート部材20の全領域が賦形面10aに向けて引き付けられ、積層体200に部分的に皺が発生する状態で賦形面10aに沿って変形してしまう可能性があるからである。
【0039】
ステップS103(賦形工程)で、作業者は、電流供給部30を動作させ、電流供給部30が複数の電磁石16のそれぞれに選択的に電流を供給することにより、積層体200を賦形面10aの形状に沿うように賦形する。
【0040】
ここで、賦形工程で、電流供給部30が複数の電磁石16のそれぞれに選択的に電流を供給する動作について図面を参照して説明する。図7および図8は、長手方向LDの中央部分の近傍における賦形型10の断面図であり、賦形工程を実行中の状態を示す。図9は、長手方向LDの中央部分の近傍における賦形型10の断面図であり、賦形工程が終了した状態を示す。
【0041】
図7図9に示すように、電磁石16aが配置される領域に積層体200の第1端部領域200aが設置され、電磁石16sが配置される領域に積層体200の第2端部領域200bが設置される。電流供給部30は、凹面14から側面12、側面12から凸面13、凸面13から上面11へ向けた賦形面10a内の第1方向DR1に沿って各領域に対応する積層体200を段階的に賦形する。また、電流供給部30は、凹面14から底面15へ向けた賦形面10a内の第2方向DR2に沿って各領域に対応する積層体200を段階的に賦形する。
【0042】
ステップS104で、電流供給部30の電流制御部35は、複数の電磁石16のうち凹面14の幅方向WDの中央位置(所定位置)に配置された電磁石16nへの電流の供給を開始する。電流が供給される電磁石16nと電磁石16nに対応する領域のシート部材20との間に配置される積層体200を、前記賦形面の形状に沿うように賦形する。
【0043】
電流制御部35は、電磁石16nへの電流の供給を開始した後に、所定時間(少なくとも1秒以上)が経過したことに応じて、電磁石16nが配置される位置から賦形面10aの第1端部10a1および第2端部10a2に向けて複数の電磁石16への電流の供給を段階的に開始する。電流制御部35は、所定の電磁石16への電流の供給を開始してから所定時間(少なくとも1秒以上)が経過した後に、隣接する他の電磁石16への電流の供給を開始し、この動作を複数の電磁石16について連続的に繰り返す。
【0044】
図7は、電流制御部35は、電磁石16nへの電流の供給を開始した後に、幅方向WDにおいて電磁石16nに隣接する電磁石16mおよび電磁石16oへの電流の供給を開始した状態を示す。図7に示すように、電磁石16n,16m,16oが発生する磁力により電磁石16n,16m,16oに対応する領域のシート部材20が賦形面10aに引き付けられ、電磁石16n,16m,16oに対応する領域の積層体200が凹面14の形状に沿って賦形される。
【0045】
電流制御部35は、電磁石16mへの電流の供給を開始した後、所定時間が経過したことに応じて、賦形面10aの第1端部10a1側に隣接する電磁石16lへの電流の供給を開始する。その後、電流制御部35は、所定時間が経過する度に、電磁石16k,16j,16iへの電流の供給を段階的に開始する。
【0046】
同様に、電流制御部35は、電磁石16oへの電流の供給を開始した後、所定時間が経過したことに応じて、賦形面10aの第2端部10a2側に隣接する電磁石16pへの電流の供給を開始する。その後、電流制御部35は、所定時間が経過する度に、電磁石16q,16r,16sへの電流の供給を段階的に開始し、図8に示す状態とする。
【0047】
図8に示すように、電磁石16i-16sが発生する磁力により電磁石16i-16sに対応する領域のシート部材20が賦形面10aに引き付けられ、電磁石16i-16sに対応する領域の積層体200が凹面14の形状に沿って賦形される。
【0048】
電流制御部35は、電磁石16iへの電流の供給を開始した後、所定時間が経過したことに応じて、賦形面10aの第1端部10a1側に隣接する電磁石16hへの電流の供給を開始する。その後、電流制御部35は、所定時間が経過する度に、電磁石16g,16f,16e,16d,16c,16b,16aへの電流の供給を段階的に開始し、図9に示す状態とする。
【0049】
図9に示すように、賦形工程が終了した状態で、電磁石16a-16sが発生する磁力により電磁石16a-16sに対応する領域のシート部材20が賦形面10aに引き付けられ、電磁石16a-16sに対応する領域の積層体200が凹面14の形状に沿って賦形される。
【0050】
以上のように、ステップS103で、電流制御部35は、凹面14の幅方向WDの中央位置に配置される電磁石16nへ電流の供給を開始した後に、凹面14の幅方向WDの中央位置から第1端部10a1に向けて電磁石16m,16l,16k,16j,16i,16h,16g,16f,16e,16d,16c,16b,16aの順に電流の供給を段階的に開始する。同様に、電流制御部35は、凹面14の幅方向WDの中央位置に配置される電磁石16nへ電流の供給を開始した後に、凹面14の幅方向WDの中央位置から第2端部10a2に向けて電磁石16o,16p,16q,16r,16sの順に電流の供給を段階的に開始する。
【0051】
ステップS104(硬化工程)において、積層体200の複数の強化繊維シートに含浸した樹脂材料を硬化させる。樹脂材料が熱硬化性である場合は、樹脂材料を硬化温度以上となるように加熱して樹脂材料を硬化させる。樹脂材料が熱可塑性樹脂である場合は樹脂材料を冷却して軟化温度未満にすることにより樹脂材料を硬化させる。以上のステップS101からステップS104により、賦形装置100を用いて積層体200を賦形して複合材を成形する複合材成形方法が実行される。
【0052】
以上説明した本実施形態の賦形装置100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の賦形装置100によれば、幅方向WDに沿った凸面13および凹面14を含む賦形面10aを有する賦形型10には、賦形面10aに磁力を発生させる複数の電磁石16が配置されている。複数の電磁石16は、長手方向LDに延びるように形成され、かつ幅方向WDにおける賦形面10aの第1端部10a1から第2端部10a2に向けて間隔を空けて配置されている。
【0053】
電流供給部30は、電磁石16に電流を供給することにより、磁性材料を含む可撓性のシート部材20を賦形面10aに向けて引き付ける賦形力を発生させ、電流が供給される電磁石16と該電磁石16に対応する領域のシート部材20との間に配置される積層体200を、賦形面10aの形状に沿うように賦形する。電流供給部30は、複数の電磁石16のそれぞれに選択的に電流を供給可能であるため、幅方向WDの凹面14に対応する位置から第1端部10a1および第2端部10a2に向けて複数の電磁石16への電流の供給を段階的に開始することにより、複数の電磁石16に同時に電流の供給を開始する場合に比べ、積層体200に皺(リンクル)が発生する不具合を抑制することができる。
【0054】
本実施形態の賦形装置100によれば、凸面13および凹面14(湾曲領域)における複数の電磁石16の第1配置間隔を上面11,側面12および底面15(非湾曲領域)における複数の電磁石16の第2配置間隔よりも狭くすることで、曲率の変化の大きい湾曲領域おいて皺が発生することを適切に抑制することができる。
【0055】
〔他の実施形態〕
以上の説明において、電流制御部35は、凹面14の幅方向WDの中央位置に配置される電磁石16nへ電流の供給を開始した後に、凹面14の幅方向WDの中央位置から第1端部10a1および第2端部10a2に向けて複数の電磁石16への電流の供給を段階的に開始するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、電流制御部35は、第1端部10a1から第2端部10a2に向けて複数の電磁石16への電流の供給を段階的に開始してもよい。この場合、電流制御部35は、電磁石16a,16b,16c,16d,16e,16f,16g,16h,16i,16j,16k,16l,16m,16n,16o,16p,16q,16r,16sの順に電流の供給を段階的に開始する。
【0056】
また、例えば、電流制御部35は、第2端部10a2から第1端部10a1に向けて複数の電磁石16への電流の供給を段階的に開始してもよい。この場合、電流制御部35は、電磁石16s,16r,16q,16p,16o,16n,16m,16l,16k,16j,16i,16h,16g,16f,16e,16d,16c,16b,16aの順に電流の供給を段階的に開始する。
【0057】
また、電流制御部35は、第1端部10a1と第2端部10a2との間の任意の位置に配置される電磁石16への電流の供給を開始した後に、第1端部10a1および第2端部10a2に向けて複数の電磁石16への電流の供給を段階的に開始してもよい。
【0058】
また、電流制御部35は、複数の電磁石16aに供給する電流の電流値を同一としてもよいし、異なる電流値としてもよい。例えば、電流制御部35は、積層体200の厚さが幅方向WDにおいて異なる場合、積層体200の厚さが厚くなるに応じて電流値を高くするようにしてもよい。すなわち、電流制御部35は、積層体200の厚さが厚くなるに応じて電磁石16がシート部材20を引き付ける磁力が大きくなるように電流値を制御してもよい。
【0059】
具体的には、電流制御部35は、ステップS103(賦形工程)において、第1の電磁石16に対応する領域に配置される積層体200の第1の厚さが、第2の電磁石16に対応する領域に配置される積層体200の第2の厚さよりも厚い場合に、第1電流値を第2電流値よりも大きくするよう電流供給部30を制御する。
【0060】
以上の説明において、賦形型10は積層体200を凸面13および凹面14の双方で折り曲げて略Z型に賦形するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、賦形型10は、積層体200を凸面13と凸面13に隣接する上面11および側面12のみで凸型(L型)に賦形してもよいし、積層体200を凹面14と凹面14に隣接する側面12および底面15のみで凹型(L型)に賦形してもよい。
【0061】
以上説明した実施形態に記載の賦形装置および賦形方法は、例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係る賦形装置は、強化繊維を含む複数のシート材料を積層した積層体(200)を賦形する賦形装置(100)であって、長手方向(LD)に沿って延びるとともに幅方向(WD)に沿った凹形状または凸形状の少なくともいずれかの湾曲領域(13)を含む賦形面(10a)を有するとともに前記賦形面に磁力を発生させる複数の電磁石(16)が配置された賦形型(10)と、複数の前記電磁石のそれぞれに選択的に電流を供給可能な電流供給部(30)と、磁性材料を含む弾性部材により形成されて可撓性を有し前記賦形面との間に前記積層体を挟んだ状態で配置されるシート部材(20)と、を備え、複数の前記電磁石は、前記長手方向に延びるように形成され、かつ前記幅方向における前記賦形面の第1端部(10a1)から第2端部(10a2)に向けて間隔を空けて配置されており、前記電流供給部は、前記電磁石に電流を供給することにより、電流が供給される前記電磁石と該電磁石に対応する領域の前記シート部材との間に配置される前記積層体を、前記賦形面の形状に沿うように賦形する。
【0062】
本開示の第1態様に係る賦形装置によれば、幅方向に沿った凹形状または凸形状の少なくともいずれかの湾曲領域を含む賦形面を有する賦形型には、賦形面に磁力を発生させる複数の電磁石が配置されている。複数の電磁石は、長手方向に延びるように形成され、かつ幅方向における賦形面の第1端部から第2端部に向けて間隔を空けて配置されている。
【0063】
電流供給部は、電磁石に電流を供給することにより、磁性材料を含む可撓性のシート部材を賦形面に向けて引き付ける賦形力を発生させ、電流が供給される電磁石と該電磁石に対応する領域のシート部材との間に配置される積層体を、賦形面の形状に沿うように賦形する。電流供給部は、複数の電磁石のそれぞれに選択的に電流を供給可能であるため、例えば、幅方向に沿って隣接する複数の電磁石への電流の供給を段階的に開始することにより、複数の電磁石に同時に電流の供給を開始する場合に比べ、積層体に皺(リンクル)が発生する不具合を抑制することができる。
【0064】
本開示の第2態様に係る賦形装置は、第1態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記電流供給部は、前記幅方向の所定位置に配置される前記電磁石へ電流の供給を開始した後に、前記所定位置から前記第1端部および/または前記第2端部に向けて複数の前記電磁石への電流の供給を段階的に開始する。
本開示の第2態様に係る賦形装置によれば、幅方向の所定位置から第1端部および/または第2端部に向けて複数の電磁石への電流の供給を段階的に開始することにより、複数の電磁石に同時に電流の供給を開始する場合に比べ、積層体に皺(リンクル)が発生する不具合を抑制することができる。
【0065】
本開示の第3態様に係る賦形装置は、第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記所定位置は、前記湾曲領域(13)に対応する位置であり、前記電流供給部は、前記所定位置に配置される前記電磁石へ電流の供給を開始した後に、前記所定位置から前記第1端部および前記第2端部に向けて複数の前記電磁石への電流の供給を段階的に開始する。
本開示の第3態様に係る賦形装置によれば、幅方向の湾曲領域に対応する位置から第1端部および第2端部のそれぞれに向けて複数の電磁石への電流の供給を段階的に開始することにより、複数の電磁石に同時に電流の供給を開始する場合に比べ、積層体に皺(リンクル)が発生する不具合を抑制することができる。
【0066】
本開示の第4態様に係る賦形装置は、第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記所定位置は、前記第1端部であり、前記電流供給部は、前記所定位置に配置される前記電磁石へ電流の供給を開始した後に、前記所定位置から前記第2端部に向けて複数の前記電磁石への電流の供給を段階的に開始する。
本開示の第4態様に係る賦形装置によれば、幅方向の第1端部から第2端部に向けて複数の電磁石への電流の供給を段階的に開始することにより、複数の電磁石に同時に電流の供給を開始する場合に比べ、積層体に皺(リンクル)が発生する不具合を抑制することができる。
【0067】
本開示の第5態様に係る賦形装置は、第1態様から第4態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記賦形面は、前記湾曲領域よりも前記幅方向に沿った曲率の変化が小さい非湾曲領域(11,12,15)を含み、前記湾曲領域における複数の前記電磁石の前記幅方向の第1配置間隔は、前記非湾曲領域における複数の前記電磁石の前記幅方向の第2配置間隔よりも狭い。
本開示の第5態様に係る賦形装置によれば、湾曲領域における複数の電磁石の第1配置間隔を非湾曲領域における複数の電磁石の第2配置間隔よりも狭くすることで、曲率の変化の大きい湾曲領域おいて皺が発生することを適切に抑制することができる。
【0068】
本開示の第6態様に係る賦形装置は、第1態様から第4態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記電流供給部は、複数の前記電磁石に含まれる第1の前記電磁石に供給する第1電流値と、複数の前記電磁石に含まれる第2の前記電磁石に供給する第2電流値とを異ならせる。
本開示の第6態様に係る賦形装置によれば、第1の磁石に供給する第1電流値と、第2の磁石に供給する第2電流値とを異ならせることで、例えば、領域ごとに厚さがことなる積層体のそれぞれの領域に厚さに応じた適切な大きさの賦形力を付与することができる。
【0069】
本開示の第7態様に係る賦形装置は、第6態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記電流供給部は、第1の前記電磁石に対応する領域に配置される前記積層体の第1の厚さが、第2の前記電磁石に対応する領域に配置される前記積層体の第2の厚さよりも厚い場合に、前記第1電流値を前記第2電流値よりも大きくする。
本開示の第7態様に係る賦形装置によれば、第1の電磁石に対応する領域に配置される積層体の第1の厚さが、第2の電磁石に対応する領域に配置される積層体の第2の厚さよりも厚い場合に、第1電流値を第2電流値よりも大きくし、第1の電磁石が発生させる賦形力を第2の電磁石が発生させる賦形力よりも大きくすることができる。
【0070】
本開示の第8態様に係る賦形方法は、強化繊維を含む複数のシート材料を積層した積層体を賦形する賦形方法であって、長手方向に沿って延びるとともに幅方向に沿った凹形状または凸形状の少なくともいずれかの湾曲領域を含む賦形面を有するとともに前記賦形面に磁力を発生させる複数の電磁石が配置された賦形型に前記積層体を設置する積層体設置工程(S101)と、前記賦形面との間に前記積層体を挟んだ状態で磁性材料を含む弾性部材により形成されて可撓性を有するシート部材を設置するシート部材設置工程(S102)と、複数の前記電磁石のそれぞれに選択的に電流を供給することにより、電流が供給される前記電磁石と該電磁石に対応する領域の前記シート部材との間に配置される前記積層体を、前記賦形面の形状に沿うように賦形する賦形工程(S103)と、を備え、複数の前記電磁石は、前記長手方向に延びるように形成され、かつ前記幅方向における前記賦形面の第1端部から第2端部に向けて間隔を空けて配置されている。
【0071】
本開示の第8態様に係る賦形方法によれば、幅方向に沿った凹形状または凸形状の少なくともいずれかの湾曲領域を含む賦形面を有する賦形型には、賦形面に磁力を発生させる複数の電磁石が配置されている。複数の電磁石は、長手方向に延びるように形成され、かつ幅方向における賦形面の第1端部から第2端部に向けて間隔を空けて配置されている。
【0072】
賦形工程は、複数の電磁石のそれぞれに選択的に電流を供給することにより、磁性材料を含む可撓性のシート部材を賦形面に向けて引き付ける賦形力を発生させ、電流が供給される電磁石と該電磁石に対応する領域のシート部材との間に配置される積層体を、賦形面の形状に沿うように賦形する。例えば、幅方向に沿って隣接する複数の電磁石への電流の供給を段階的に開始することにより、複数の電磁石に同時に電流の供給を開始する場合に比べ、積層体に皺(リンクル)が発生する不具合を抑制することができる。
【0073】
本開示の第9態様に係る賦形方法は、第8態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記賦形工程は、前記幅方向の所定位置に配置される前記電磁石へ電流の供給を開始した後に、前記所定位置から前記第1端部または前記第2端部に向けて複数の前記電磁石への電流の供給を段階的に開始する。
本開示の第9態様に係る賦形方法によれば、幅方向の所定位置から第1端部または第2端部に向けて複数の電磁石への電流の供給を段階的に開始することにより、複数の電磁石に同時に電流の供給を開始する場合に比べ、積層体に皺(リンクル)が発生する不具合を抑制することができる。
【0074】
本開示の第10態様に係る賦形方法は、第9態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記所定位置は、前記湾曲領域に対応する位置であり、前記賦形工程は、前記所定位置に配置される前記電磁石へ電流の供給を開始した後に、前記所定位置から前記第1端部および前記第2端部に向けて複数の前記電磁石への電流の供給を段階的に開始する。
本開示の第10態様に係る賦形方法によれば、幅方向の湾曲領域に対応する位置から第1端部および第2端部のそれぞれに向けて複数の電磁石への電流の供給を段階的に開始することにより、複数の電磁石に同時に電流の供給を開始する場合に比べ、積層体に皺(リンクル)が発生する不具合を抑制することができる。
【0075】
本開示の第11態様に係る賦形方法は、第9態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記所定位置は、前記第1端部であり、前記賦形工程は、前記所定位置に配置される前記電磁石へ電流の供給を開始した後に、前記所定位置から前記第2端部に向けて複数の前記電磁石への電流の供給を段階的に開始する。
本開示の第11態様に係る賦形方法によれば、幅方向の第1端部から第2端部に向けて複数の電磁石への電流の供給を段階的に開始することにより、複数の電磁石に同時に電流の供給を開始する場合に比べ、積層体に皺(リンクル)が発生する不具合を抑制することができる。
【0076】
本開示の第12態様に係る賦形方法は、第8態様から第11態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記賦形面は、前記湾曲領域よりも前記幅方向に沿った曲率の変化が小さい非湾曲領域を含み、前記湾曲領域における複数の前記電磁石の前記幅方向の第1配置間隔は、前記非湾曲領域における複数の前記電磁石の前記幅方向の第2配置間隔よりも狭い。
本開示の第12態様に係る賦形方法によれば、湾曲領域における複数の電磁石の第1配置間隔を非湾曲領域における複数の電磁石の第2配置間隔よりも狭くすることで、曲率の変化の大きい湾曲領域おいて皺が発生することを適切に抑制することができる。
【0077】
本開示の第13態様に係る賦形方法は、第8態様から第11態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記電流供給部は、複数の前記電磁石に含まれる第1の前記電磁石に供給する第1電流値と、複数の前記電磁石に含まれる第2の前記電磁石に供給する第2電流値とを異ならせる。
本開示の第13態様に係る賦形方法によれば、第1の磁石に供給する第1電流値と、第2の磁石に供給する第2電流値とを異ならせることで、例えば、領域ごとに厚さがことなる積層体のそれぞれの領域に厚さに応じた適切な大きさの賦形力を付与することができる。
【0078】
本開示の第14態様に係る賦形方法は、第13態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記電流供給部は、第1の前記電磁石に対応する領域に配置される前記積層体の第1の厚さが、第2の前記電磁石に対応する領域に配置される前記積層体の第2の厚さよりも厚い場合に、前記第1電流値を前記第2電流値よりも大きくする。
本開示の第14態様に係る賦形方法によれば、第1の電磁石に対応する領域に配置される積層体の第1の厚さが、第2の電磁石に対応する領域に配置される積層体の第2の厚さよりも厚い場合に、第1電流値を第2電流値よりも大きくし、第1の電磁石が発生させる賦形力を第2の電磁石が発生させる賦形力よりも大きくすることができる。
【符号の説明】
【0079】
10 賦形型
10a 賦形面
10a1 第1端部
10a2 第2端部
11 上面(非湾曲領域)
12 側面(非湾曲領域)
13 凸面(湾曲領域)
14 凹面(湾曲領域)
15 底面(非湾曲領域)
16,16a,16b,16c,16d,16e,16f,16g,16h,16i,16j,16k,16l,16m,16n,16o,16p,16q,16r,16s 電磁石
20 シート部材
30 電流供給部
31 電源
32 リレー
33 ブレーカー
34 電圧変換部
35 電流制御部
100 賦形装置
200 積層体
200a 第1端部領域
200b 第2端部領域
DR1 第1方向
DR2 第2方向
LD 長手方向
WD 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9