(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168445
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】弾性波装置
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H03H9/25 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085143
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 亮
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA13
5J097BB11
5J097EE08
5J097GG03
5J097GG04
5J097HA01
5J097HA03
5J097HA06
5J097KK09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電極指ピッチにより規定される波長の2倍程度の波長の弾性波を励振させ、基本波を抑制する弾性波装置を提供する。
【解決手段】弾性波装置1は、圧電体層6を含む圧電性基板2と、複数の第1の電極指18及び複数の第2の電極指19を有するIDT電極12とを備える。圧電体層6は、第1の領域Aと、第1の領域Aとは分極方向が異なる第2の領域Bと、を有する。第1の区間D1及び第2の区間D2の境界が、第1の電極指18が設けられている部分に位置するように、また、第3の区間D3及び第4の区間D4の境界が、第2の電極指19が設けられている部分に位置するように、複数の第1の電極指18及び複数の第2の電極指19を、順番に第1~第8の区間D1~D8に分ける。区間D1、D3、D6、D8には、第1の領域Aが位置しており、区間D2、D4、D5、D7には、第2の領域Bが位置している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体層を含む圧電性基板と、
前記圧電体層上に設けられており、互いに間挿し合っており、互いに異なる電位に接続される複数の第1の電極指及び複数の第2の電極指を有するIDT電極と、
を備え、
前記圧電体層における前記IDT電極が設けられている部分が、交叉領域を含み、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指が延びる方向を電極指延伸方向、前記電極指延伸方向と直交する方向を電極指直交方向とし、前記電極指直交方向から前記IDT電極を見たときに、隣り合う前記第1の電極指及び前記第2の電極指が重なり合っている領域が前記交叉領域であり、
前記圧電体層が、第1の領域、及び前記第1の領域と分極方向が異なる第2の領域を有し、前記第1の領域及び前記第2の領域が、少なくとも前記交叉領域に位置しており、
前記交叉領域が、前記第1の領域及び前記第2の領域が前記電極指直交方向において交互に並んでいる、分極変化領域を含み、
前記分極変化領域に位置している各前記第1の領域及び各前記第2の領域が、平面視において、前記第1の電極指及び前記第2の電極指のうち少なくとも一方の、少なくとも一部と重なっており、
前記圧電体層を前記電極指直交方向において複数の区間に分け、前記複数の区間がそれぞれ、前記第1の電極指または前記第2の電極指が設けられている部分から、前記第1の電極指及び前記第2の電極指が設けられていない部分までの範囲であるとし、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指のうち、各前記区間に設けられている電極指が1本のみであるとしたときに、前記複数の区間が、前記電極指直交方向において順番に並んでいる第1~第8の区間を含み、
前記第1の区間及び前記第2の区間の境界が、前記第1の電極指が設けられている部分に位置しており、
前記第1の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第2の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第3の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第4の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第5の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第6の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第7の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第8の区間に前記第1の領域が位置している、弾性波装置。
【請求項2】
圧電体層を含む圧電性基板と、
前記圧電体層上に設けられており、互いに間挿し合っており、互いに異なる電位に接続される複数の第1の電極指及び複数の第2の電極指を有するIDT電極と、
を備え、
前記圧電体層における前記IDT電極が設けられている部分が、交叉領域を含み、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指が延びる方向を電極指延伸方向、前記電極指延伸方向と直交する方向を電極指直交方向とし、前記電極指直交方向から前記IDT電極を見たときに、隣り合う前記第1の電極指及び前記第2の電極指が重なり合っている領域が前記交叉領域であり、
前記圧電体層が、第1の領域、及び前記第1の領域と分極方向が異なる第2の領域を有し、前記第1の領域及び前記第2の領域が、少なくとも前記交叉領域に位置しており、
前記交叉領域が、前記第1の領域及び前記第2の領域が前記電極指直交方向において交互に並んでいる、分極変化領域を含み、
前記分極変化領域に位置している各前記第1の領域及び各前記第2の領域が、平面視において、前記第1の電極指及び前記第2の電極指のうち少なくとも一方の、少なくとも一部と重なっており、
前記圧電体層を前記電極指直交方向において複数の区間に分け、前記複数の区間がそれぞれ、前記第1の電極指または前記第2の電極指が設けられている部分から、前記第1の電極指及び前記第2の電極指が設けられていない部分までの範囲であるとし、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指のうち、各前記区間に設けられている電極指が1本のみであるとしたときに、前記複数の区間が、前記電極指直交方向において順番に並んでいる第1~第8の区間を含み、
前記第1の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第2の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第3の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第4の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第5の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第6の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第7の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第8の区間に前記第1の領域が位置している、弾性波装置。
【請求項3】
前記第1の区間及び前記第2の区間の境界が、前記第1の電極指が設けられている部分に位置している、請求項2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記第1の領域における分極軸、及び前記第2の領域における分極軸がなす角の角度が180°±5°以内の範囲である、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記第1~第8の区間に位置している前記第1の領域及び前記第2の領域の境界のうち少なくとも1つの境界が、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指のうちいずれかの電極指が設けられている部分に位置しており、該境界と、該電極指の前記電極指直交方向における中央との間の、前記電極指直交方向における距離をL1、該電極指が位置している部分の電極指ピッチをp1としたときに、L1/p1<0.1である、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項6】
隣り合う前記第1の電極指及び前記第2の電極指の間の部分を電極指間部としたときに、前記第1~第8の区間に位置している前記第1の領域及び前記第2の領域の境界のうち少なくとも1つの境界が、複数の前記電極指間部のうちいずれかの電極指間部に位置しており、該境界と、該電極指間部の前記電極指直交方向における中央との間の、前記電極指直交方向における距離をL2、該電極指間部が位置している部分の電極指ピッチをp2としたときに、L2/p2<0.1である、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記第1~第8の区間において、前記第1の領域の前記電極指直交方向に沿う寸法の合計をE1、前記第2の領域の前記電極指直交方向に沿う寸法の合計をE2としたときに、E2/E1が1±0.1以内の範囲である、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記圧電性基板が高音速部材層を含み、
前記高音速部材層上に、直接的または間接的に前記圧電体層が設けられており、
前記高音速部材層を伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体層を伝搬する弾性波の音速よりも高い、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記圧電性基板が音響反射膜を含み、
前記音響反射膜上に、直接的または間接的に前記圧電体層が設けられており、
前記音響反射膜が、相対的に音響インピーダンスが低い、少なくとも1層の低音響インピーダンス層と、相対的に音響インピーダンスが高い、少なくとも1層の高音響インピーダンス層と、を有し、前記低音響インピーダンス層及び前記高音響インピーダンス層が交互に積層されている、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項10】
前記圧電性基板が電極層を含み、
前記電極層上に、直接的または間接的に前記圧電体層が設けられている、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項11】
前記圧電性基板が酸化ケイ素膜を含み、
前記酸化ケイ素膜上に、直接的または間接的に前記圧電体層が設けられている、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性波装置は携帯電話機のフィルタなどに広く用いられている。下記の特許文献1には、弾性波装置の一例が開示されている。この弾性波装置においては、支持基板、高音速膜、低音速膜及び圧電膜がこの順序で積層されている。圧電膜上にIDT(Interdigital Transducer)電極が設けられている。特許文献1には、圧電膜を伝搬する主モードとして、P波を主成分とするモード、SH波を主成分とするモード及びSV波を主成分とするモードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような従来の弾性波装置においては、IDT電極の電極指ピッチにより規定される波長よりも長い波長の弾性波を好適に励振させることは困難である。なお、このような長い波長の波を弾性波装置の動作に利用する場合には、基本波は不要波となる。そのため、基本波を抑制することが要される。
【0005】
本発明の目的は、電極指ピッチにより規定される波長の2倍程度の波長の弾性波を励振させることができ、基本波を抑制することができる、弾性波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性波装置のある広い局面では、圧電体層を含む圧電性基板と、前記圧電体層上に設けられており、互いに間挿し合っており、互いに異なる電位に接続される複数の第1の電極指及び複数の第2の電極指を有するIDT電極とが備えられており、前記圧電体層における前記IDT電極が設けられている部分が、交叉領域を含み、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指が延びる方向を電極指延伸方向、前記電極指延伸方向と直交する方向を電極指直交方向とし、前記電極指直交方向から前記IDT電極を見たときに、隣り合う前記第1の電極指及び前記第2の電極指が重なり合っている領域が前記交叉領域であり、前記圧電体層が、第1の領域、及び前記第1の領域と分極方向が異なる第2の領域を有し、前記第1の領域及び前記第2の領域が、少なくとも前記交叉領域に位置しており、前記交叉領域が、前記第1の領域及び前記第2の領域が前記電極指直交方向において交互に並んでいる、分極変化領域を含み、前記分極変化領域に位置している各前記第1の領域及び各前記第2の領域が、平面視において、前記第1の電極指及び前記第2の電極指のうち少なくとも一方の、少なくとも一部と重なっており、前記圧電体層を前記電極指直交方向において複数の区間に分け、前記複数の区間がそれぞれ、前記第1の電極指または前記第2の電極指が設けられている部分から、前記第1の電極指及び前記第2の電極指が設けられていない部分までの範囲であるとし、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指のうち、各前記区間に設けられている電極指が1本のみであるとしたときに、前記複数の区間が、前記電極指直交方向において順番に並んでいる第1~第8の区間を含み、前記第1の区間及び前記第2の区間の境界が、前記第1の電極指が設けられている部分に位置しており、前記第1の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第2の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第3の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第4の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第5の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第6の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第7の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第8の区間に前記第1の領域が位置している。
【0007】
本発明に係る弾性波装置の他の広い局面では、圧電体層を含む圧電性基板と、前記圧電体層上に設けられており、互いに間挿し合っており、互いに異なる電位に接続される複数の第1の電極指及び複数の第2の電極指を有するIDT電極とが備えられており、前記圧電体層における前記IDT電極が設けられている部分が、交叉領域を含み、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指が延びる方向を電極指延伸方向、前記電極指延伸方向と直交する方向を電極指直交方向とし、前記電極指直交方向から前記IDT電極を見たときに、隣り合う前記第1の電極指及び前記第2の電極指が重なり合っている領域が前記交叉領域であり、前記圧電体層が、第1の領域、及び前記第1の領域と分極方向が異なる第2の領域を有し、前記第1の領域及び前記第2の領域が、少なくとも前記交叉領域に位置しており、前記交叉領域が、前記第1の領域及び前記第2の領域が前記電極指直交方向において交互に並んでいる、分極変化領域を含み、前記分極変化領域に位置している各前記第1の領域及び各前記第2の領域が、平面視において、前記第1の電極指及び前記第2の電極指のうち少なくとも一方の、少なくとも一部と重なっており、前記圧電体層を前記電極指直交方向において複数の区間に分け、前記複数の区間がそれぞれ、前記第1の電極指または前記第2の電極指が設けられている部分から、前記第1の電極指及び前記第2の電極指が設けられていない部分までの範囲であるとし、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指のうち、各前記区間に設けられている電極指が1本のみであるとしたときに、前記複数の区間が、前記電極指直交方向において順番に並んでいる第1~第8の区間を含み、前記第1の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第2の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第3の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第4の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第5の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第6の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第7の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第8の区間に前記第1の領域が位置している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電極指ピッチにより規定される波長の2倍程度の波長の弾性波を励振させることができ、基本波を抑制することができる、弾性波装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の一部を示す模式的正面断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態における第1の領域及び第2の領域の配置を示す、圧電体層の模式的平面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態及び第1の比較例におけるアドミッタンス周波数特性を示す図である。
【
図5】第1の比較例における2対の電極指付近を示す模式的正面断面図であって、第1の比較例において基本波が励振されることを説明するための図である。
【
図6】第2の比較例における2対の電極指付近を示す模式的正面断面図であって、第2の比較例において基本波が励振されることを説明するための図である。
【
図7】第2の比較例における、実効歪と電荷との関係を示す模式的正面断面図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図であって、第1の実施形態において基本波が励振され難いことを説明するための図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図であって、第1の実施形態において1/2倍波が励振されることを説明するための図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態及び第1の比較例におけるアドミッタンス周波数特性を示す図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図であって、第2の実施形態において1/2倍波が励振されることを説明するための図である。
【
図15】本発明の第2の実施形態の変形例に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【
図16】本発明の第3の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【
図17】本発明の第4の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【
図18】本発明の第5の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【
図19】本発明の第6の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【
図20】本発明の第6の実施形態の第1の変形例に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【
図21】本発明の第6の実施形態の第2の変形例に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【
図22】本発明の第6の実施形態の第3の変形例に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【
図23】本発明の第6の実施形態の第4の変形例に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0011】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の一部を示す模式的正面断面図である。
図2は、第1の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。なお、
図1は、
図2中のI-I線に沿う模式的断面図である。
【0013】
図1に示すように、弾性波装置1は圧電性基板2を有する。圧電性基板2は圧電性を有する基板である。圧電性基板2は、圧電材料からなる圧電体層6を含む。より具体的には、本実施形態においては、圧電性基板2は、高音速部材層としての高音速支持基板4と、低音速膜としての酸化ケイ素膜5と、上記圧電体層6とを含む。高音速支持基板4上に酸化ケイ素膜5が設けられている。酸化ケイ素膜5上に圧電体層6が設けられている。なお、圧電性基板2の積層構成は上記に限定されない。圧電性基板2は、少なくとも圧電体層6を含んでいればよい。
【0014】
圧電体層6の材料としては、ニオブ酸リチウムが用いられている。より具体的には、圧電体層6の材料として、回転YカットのLiNbO3が用いられている。もっとも、圧電体層6の材料は上記に限定されない。例えば、圧電体層6の材料には、LiTaO3などのタンタル酸リチウムなどが用いられていてもよい。
【0015】
圧電体層6上にはIDT電極12が設けられている。IDT電極12に交流電圧を印加することにより、弾性波が励振される。弾性波装置1は、1/2倍波を利用可能に構成されている。本明細書において1/2倍波とは、基本波の周波数の約1/2倍の周波数である弾性波をいう。1/2倍波の波長は、基本波の波長の約2倍である。弾性波装置1の動作に1/2倍波を利用する場合には、基本波は不要波となる。
【0016】
高音速支持基板4である高音速部材層は、相対的に高音速な層である。より具体的には、高音速部材層を伝搬するバルク波の音速は、圧電体層6を伝搬する弾性波の音速よりも高い。本実施形態における高音速部材層としての高音速支持基板4は、シリコン基板である。もっとも、高音速部材層の材料はシリコンに限定されない。なお、高音速部材層は高音速膜であってもよい。この場合、圧電性基板2は、例えば、支持基板を有していればよい。支持基板上に高音速膜が設けられていればよい。
【0017】
低音速膜は相対的に低音速な膜である。より具体的には、低音速膜を伝搬するバルク波の音速は、圧電体層6を伝搬するバルク波の音速よりも低い。本実施形態における低音速膜は酸化ケイ素膜5である。もっとも、低音速膜の材料は酸化ケイ素に限定されない。
【0018】
図2に示すように、IDT電極12は、1対のバスバーと、複数の電極指とを有する。1対のバスバーは、具体的には、第1のバスバー16及び第2のバスバー17である。第1のバスバー16及び第2のバスバー17は互いに対向している。複数の電極指は、具体的には、複数の第1の電極指18及び複数の第2の電極指19である。複数の第1の電極指18の一端はそれぞれ、第1のバスバー16に接続されている。複数の第2の電極指19の一端はそれぞれ、第2のバスバー17に接続されている。複数の第1の電極指18及び複数の第2の電極指19は互いに間挿し合っている。
【0019】
第1の電極指18及び第2の電極指19は、互いに異なる電位に接続される。例えば、第1の電極指18及び第2の電極指19のうち一方が信号電位に接続され、他方がグラウンド電位に接続されてもよい。あるいは、第1の電極指18及び第2の電極指19のうち一方が信号電位における入力電位に接続され、他方が信号電位における出力電位に接続されてもよい。
【0020】
圧電体層6上には、1対の反射器13A及び反射器13Bが設けられている。より具体的には、反射器13A及び反射器13Bは、弾性波伝搬方向において、IDT電極12を挟み互いに対向するように設けられている。弾性波装置1は弾性表面波共振子である。
【0021】
本実施形態では、IDT電極12及び各反射器は単層の金属膜からなる。具体的には、IDT電極12及び各反射器の材料としてAlが用いられている。もっとも、IDT電極12及び各反射器の材料は上記に限定されない。あるいは、IDT電極12及び各反射器は、積層金属膜からなっていてもよい。
【0022】
以下においては、複数の第1の電極指18及び複数の第2の電極指19が延びる方向を電極指延伸方向、電極指延伸方向と直交する方向を電極指直交方向とする。電極指直交方向と弾性波伝搬方向とは平行である。電極指直交方向からIDT電極12を見たときに、隣り合う第1の電極指18及び第2の電極指19が重なり合っている領域が交叉領域Cである。なお、交叉領域Cは、IDT電極12の構成により規定される圧電体層6の領域である。すなわち、圧電体層6におけるIDT電極12が設けられている部分が、交叉領域Cを含む。交叉領域Cにおいて、1/2倍波が励振される。
【0023】
IDT電極12の電極指ピッチにより規定される波長をλとしたときに、波長λは基本波の波長である。一方で、1/2倍波の波長は、波長λの2倍程度である。なお、電極指ピッチとは、隣り合う第1の電極指18及び第2の電極指19の、電極指直交方向における中心間距離である。例えば、電極指ピッチをpとしたときに、λ=2pである。
【0024】
図1に示すように、圧電体層6は第1の領域A及び第2の領域Bを有する。第1の領域A及び第2の領域Bは、分極方向が互いに反転した関係である。本明細書では、2つの部分において分極方向が互いに反転した関係とは、双方において、結晶の音響的な性質は同一であり、分極方向のみが約180°互いに異なっていることをいう。第1の領域A及び第2の領域Bにおける分極方向の差は、例えば、走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)などを用いて評価することができる。
【0025】
なお、結晶の音響的な性質が同一であるとは、結晶構造が実質的に同じであることを意味している。結晶構造が同じであるか否かは、例えば、結晶構造をX線回折(XRD)によって確認することにより、あるいは、分極の状態を非線形誘電率顕微鏡によって確認することにより判断することができる。
【0026】
2つの部分において分極方向が互いに完全に反転した関係は、該2つの部分のオイラー角(φ,θ,ψ)におけるθの差の絶対値が180°であることと等価である。弾性波装置1における第1の領域A及び第2の領域Bにおいては、双方の分極軸がなす角の角度が180°±5°以内である。なお、第1の領域A及び第2の領域Bにおいては、分極方向が互いに異なっていればよい。
【0027】
本実施形態では、第1の領域Aにおいては、オイラー角は(0°,140°,0°)である。第2の領域Bにおいては、第1の領域Aに対して、分極方向は完全に反転している。よって、第2の領域Bにおいては、オイラー角は等価的に(0°,320°,0°)である。
【0028】
図3は、第1の実施形態における第1の領域及び第2の領域の配置を示す、圧電体層の模式的平面図である。なお、
図3においては、第1の領域A及び第2の領域Bを、ハッチングを付して示している。
【0029】
第1の領域A及び第2の領域Bは、少なくとも交叉領域Cに位置している。具体的には、本実施形態においては、第1の領域Aは、交叉領域C外の全体にも位置している。他方、第2の領域Bは、交叉領域C内のみに位置している。すなわち、第2の領域Bは第1の領域Aにより囲まれている。もっとも、第2の領域Bは、交叉領域Cの外側に位置する部分を有していてもよい。
【0030】
図1に戻り、第1の領域A及び第2の領域Bはそれぞれ、圧電体層6の厚み方向における全体に位置している。なお、第1の領域Aまたは第2の領域Bは、圧電体層6の厚み方向における一部に位置していてもよい。本発明においては、第1の領域A及び第2の領域Bは、少なくとも圧電体層6における、IDT電極12が設けられている主面に位置していればよい。
【0031】
交叉領域Cは分極変化領域を含む。具体的には、分極変化領域とは、第1の領域A及び第2の領域Bが、電極指直交方向において交互に並んでいる領域である。本実施形態では、分極変化領域は交叉領域Cの全体に位置している。もっとも、分極変化領域は、交叉領域Cの、電極指延伸方向及び電極指直交方向のうち少なくとも一方における一部に位置していてもよい。
【0032】
なお、上記のように、
図3に示す本実施形態の第1の領域Aは、交叉領域C内に位置する複数の部分、及び交叉領域C外に位置する部分を有する。そして、第1の領域Aにおける交叉領域C内に位置する複数の部分は、交叉領域C外に位置する部分により接続されている。よって、第1の領域Aは、連続した1つの領域である。もっとも、本明細書においては、第1の領域Aにおける、第2の領域Bを挟み互いに対向している各部分を、便宜上、それぞれ別個の第1の領域Aとして記載することがある。なお、実際の構成として、圧電体層6が複数の第1の領域A及び複数の第2の領域Bを有していてもよい。
【0033】
図1に示すように、圧電体層6は第1~第8の区間D1~D8を有する。より詳細には、圧電体層6は、電極指直交方向において複数の区間に分けることができる。複数の区間はそれぞれ、第1の電極指18または第2の電極指19が設けられている部分から、第1の電極指18及び第2の電極指19が設けられていない部分までの範囲であるとする。複数の第1の電極指18及び複数の第2の電極指19のうち、各区間に設けられている電極指が1本のみであるとする。これら複数の区間が第1~第8の区間D1~D8を含む。
【0034】
第1~第8の区間D1~D8は電極指直交方向において順番に並んでいる。具体的には、第1の区間D1、第2の区間D2、第3の区間D3、第4の区間D4、第5の区間D5、第6の区間D6、第7の区間D7及び第8の区間D8がこの順序において並んでいる。第1~第8の区間D1~D8は、2対の第1の電極指18及び第2の電極指19が設けられている部分にわたり位置している。
【0035】
より具体的には、第1の区間D1は、第1の電極指18及び第2の電極指19が設けられていない部分から、
図1における最も左側の第1の電極指18が設けられている部分までの範囲である。第2の区間D2は、該第1の電極指18が設けられている部分から、第1の電極指18及び第2の電極指19が設けられていない部分までの範囲である。よって、第1の区間D1及び第2の区間D2の境界は、該第1の電極指18が設けられている部分に位置している。なお、第1の電極指18は、信号電位の入力側に接続されてもよく、信号電位の出力側に接続されてもよく、あるいはグラウンド電位に接続されてもよい。
【0036】
第3の区間D3は、第1の電極指18及び第2の電極指19が設けられていない部分から、
図1における最も左側の第2の電極指19が設けられている部分までの範囲である。第2の区間D2及び第3の区間D3の境界は、第1の電極指18及び第2の電極指19が設けられていない部分に位置している。すなわち、隣り合う第1の電極指18及び第2の電極指19の間の部分を電極指間部としたときに、第2の区間D2及び第3の区間D3の境界は、電極指間部に位置している。
【0037】
第4の区間D4は、
図1における最も左側の第2の電極指19が設けられている部分から電極指間部までの範囲である。第3の区間D3及び第4の区間D4の境界は、該第2の電極指19が設けられている部分に位置している。以上のように、第1~第4の区間D1~D4が並んでいる。そして、第5~第8の区間D5~D8も同様に並んでいる。
【0038】
第1~第8の区間D1~D8を1組の区域したときに、圧電体層6は複数の区域を有する。複数の区域は、電極指直交方向において連続して並んでいる。すなわち、第8の区間D8は、第7の区間D7及び第1の区間D1により挟まれている。第8の区間D8及び第1の区間D1の境界は、電極指間部に位置している。
【0039】
各区間には、第1の領域Aまたは第2の領域Bが位置している。具体的には、第1の区間D1に第1の領域Aが位置している。第2の区間D2に第2の領域Bが位置している。第3の区間D3に第1の領域Aが位置している。第4の区間D4に第2の領域Bが位置している。第5の区間D5に第2の領域Bが位置している。第6の区間D6に第1の領域Aが位置している。第7の区間D7に第2の領域Bが位置している。第8の区間D8に第1の領域Aが位置している。
【0040】
以下においては、第1~第8の区間D1~D8に位置している第1の領域A及び第2の領域Bを、省略して示すことがある。具体的には、第1の領域Aを1と示し、第2の領域Bを2と示し、各区間に位置している領域をスラッシュ記号により分けて示す。そして、左側から順番に、第1~第8の区間D1~D8に位置している領域を示す。本実施形態の場合には、第1~第8の区間D1~D8における第1の領域A及び第2の領域Bの配置は、1/2/1/2/2/1/2/1である。このような1組の区域が、電極指直交方向において連続して並んでいる。よって、例えば、連続する2組の区域における第1の領域A及び第2の領域Bの配置は、1/2/1/2/2/1/2/1/1/2/1/2/2/1/2/1である。
【0041】
本実施形態の特徴は、交叉領域Cにおいて、第1の領域A及び第2の領域Bによって分極変化領域が構成されており、分極変化領域において、第1の領域A及び第2の領域Bの配置が、1/2/1/2/2/1/2/1とされていることにある。それによって、基本波の波長λの2倍程度である波長の弾性波を励振させることができる。すなわち、1/2倍波を励振させることができる。さらに、基本波を抑制することができる。従って、弾性波装置1の動作に1/2倍波を好適に利用することができ、不要波としての基本波を抑制することができる。これを、本実施形態と第1の比較例とを比較することによって、以下において説明する。
【0042】
第1の比較例は、圧電体層に分極方向が反転した領域が含まれない点において、第1の実施形態と異なる。第1の比較例では、圧電体層の分極方向は一定である。第1の実施形態の構成を有する弾性波装置1、及び第1の比較例の弾性波装置のアドミッタンス周波数特性を、FEM(Finite Element Method)シミュレーションにより導出した。なお、第1の実施形態の構成を有する弾性波装置1の設計パラメータは以下の通りである。
【0043】
高音速支持基板:材料…Si
酸化ケイ素膜:材料…SiO2、厚み…0.2λ
圧電体層:材料…回転YカットのLiNbO3、厚み…0.2λ、第1の領域のオイラー角…(0°,140°,0°)、第2の領域のオイラー角…(0°,320°,0°)
IDT電極:材料…Al、厚み…0.1λ
波長λ…1μm
デューティ比…0.5
【0044】
第1の比較例の設計パラメータは、圧電体層が第2の領域を有しない点以外においては、第1の実施形態と同様である。よって、第1の比較例における圧電体層は、第1の領域のみを有する。そして、該圧電体層のオイラー角は(0°,140°,0°)である。
【0045】
図4は、第1の実施形態及び第1の比較例におけるアドミッタンス周波数特性を示す図である。
【0046】
図4中の矢印N1は、基本波が生じる周波数を示している。より詳細には、第1の実施形態及び第1の比較例においては、圧電体層を伝搬する弾性波の音速は、約4000m/sである。そして、上記の設計パラメータより、基本波の波長は1μmである。なお、任意の波の波長をλn、周波数をf、音速をvとしたときに、f=v/λnである。この式から、第1の実施形態における基本波の周波数は、約4GHzである。
図4に示すように、第1の比較例においては、基本波が強勢に励振されている。これに対して、第1の実施形態においては、基本波が抑制されていることがわかる。
【0047】
図4中の矢印N2は、1/2倍波が生じる周波数を示している。1/2倍波の周波数は2GHzを超える周波数である。
図4に示すように、第1の比較例では、1/2倍波は生じていない。これに対して、第1の実施形態においては、1/2倍波が強勢に励振されていることがわかる。従って、第1の実施形態では、弾性波装置1の動作に1/2倍波を好適に利用することができ、不要波としての基本波を効果的に抑制することができる。
【0048】
以下において、第1の実施形態における上記の効果を得られる理由を説明する。まず、参考のために、第1の比較例及び第2の比較例において、基本波が励振されることを説明する。第1の比較例は、上記のように、圧電体層が第1の領域のみを有する。第2の比較例においては、圧電体層の分極方向が、第1の比較例における圧電体層の分極方向に対して反転している。第2の比較例における圧電体層は、第1の実施形態における第2の領域に相当する領域のみを有する。
【0049】
図5は、第1の比較例における2対の電極指付近を示す模式的正面断面図であって、第1の比較例において基本波が励振されることを説明するための図である。
図6は、第2の比較例における2対の電極指付近を示す模式的正面断面図であって、第2の比較例において基本波が励振されることを説明するための図である。
【0050】
図5及び
図6においては、圧電体層における分極方向を模式的に示す。
図5及び
図6においては、分極方向の符号として、圧電体層の、各電極指が設けられている主面側の符号を示している。
図5及び
図6においては、基本波が励振されたと仮定した場合の変位と、これに伴い生じる歪及び電荷を模式的に示す。
【0051】
なお、
図5に示す例においては、各電極指が設けられている部分は、変位の極大値または極小値に位置している。そのため、例えば、
図5においては、各電極指が設けられている部分は、変位の傾きが右斜め上の部分と、変位の傾きが右斜め下の部分とを含む。よって、
図5においては、各電極指が設けられている部分毎に含まれた2つの部分において生じる電荷を示している。これは、
図5以外の、波が励振されること、または励振され難いことを示す図においても同様である。
【0052】
簡易的には、圧電体層が変位することにより電荷が生じるといえる。そして、簡易的には、圧電体層において生じる電荷の符号は、圧電体層の分極方向の符号と、変位の方向との積により表わすことができる。
図5に示すように、第1の比較例では、第1の電極指18が設けられている部分においては、分極方向の符号が正であり、変位の方向は正である。よって、第1の電極指18が設けられている部分において生じる電荷の符号は正である。第2の電極指19が設けられている部分においても、分極方向の符号は正である。そして、第2の電極指19が設けられている部分において、変位の方向は負である。よって、第2の電極指19が設けられている部分において生じる電荷の符号は負である。
【0053】
これらのように、第1の電極指18が設けられている部分において生じる電荷と、第2の電極指19が設けられている部分において生じる電荷とにおいては、符号が互いに異なる。そのため、第1の電極指18及び第2の電極指19は電位差を有する。すなわち、基本波の励振と、第1の電極指18及び第2の電極指19が電位差を有することとが整合する。従って、比較例においては、基本波が強勢に励振されることとなる。
【0054】
なお、圧電体層が変位することにより、圧電体層には歪が生じる。
図5に示すように、歪の符号は、変位を位置により微分した値の符号である。具体的には、変位をy、位置をxとしたときのdy/dxの値の符号が、歪の符号である。より具体的には、
図5における右側を位置の正方向としたときに、変位を表わす曲線が、右斜め上の傾きを有する場合には、歪の符号は正である。
図5における変位を表わす曲線が、右斜め下の傾きを有する場合には、歪の符号は負である。これは、
図5以外の、波が励振されること、または励振され難いことを示す図においても同様である。
【0055】
圧電体層において電荷が生じることは、正確には、圧電体層に生じた歪に起因する。例えば、第1の区間D1に設けられた第1の電極指18の部分においては、歪の符号と、電荷の符号とは同じである。同様に、第1の区間D1以外の奇数の区間に設けられた電極指の部分においても、歪の符号と、電荷の符号とは同じである。一方で、第2の区間D2などの偶数の区間に設けられた電極指の部分においては、歪の符号と、電荷の符号とは互いに逆である。
【0056】
図6に示すように、第2の比較例においては、第1の電極指18が設けられている部分において生じる電荷の符号は負である。第2の電極指19が設けられている部分において生じる電荷の符号は正である。そのため、第1の電極指18及び第2の電極指19は電位差を有する。よって、基本波の励振と、第1の電極指18及び第2の電極指19が電位差を有することとが整合する。従って、第2の比較例においては、基本波が強勢に励振されることとなる。
【0057】
上記のように、第2の比較例における圧電体層の分極方向は、第1の比較例における圧電体層の分極方向に対して反転している。これにより、
図5及び
図6を対照してわかるように、第2の比較例においては、第1の比較例に対して、歪の符号と電荷の符号との関係が反転している。このことから、電荷の符号を基準とすれば、分極方向が反転していることと、歪の符号が反転していることとは等価である。これに基づき、分極方向の符号と歪の符号との積である、実効歪の概念を導入することができる。
【0058】
図7は、第2の比較例における、実効歪と電荷との関係を示す模式的正面断面図である。
【0059】
図7に示すように、第2の比較例においては、圧電体層の分極方向の符号は負である。よって、実効歪の符号は、歪の符号とは逆の符号となっている。他方、第1の比較例においては、圧電体層の分極方向は正である。そのため、実効歪の符号は、歪の符号と同じである。よって、
図5に示す歪の符号は、実効歪の符号を示しているといえる。
図5及び
図7を対照してわかるように、第1の比較例及び第2の比較例においては、実効歪の符号と、電荷の符号との関係は同じである。すなわち、実効歪を用いて、生じる電荷を評価することができる。
【0060】
さらに、第1の実施形態において、1/2倍波を励振させることができ、基本波を抑制できることを以下において示す。
【0061】
図8は、第1の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図であって、第1の実施形態において基本波が励振され難いことを説明するための図である。
図9は、第1の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図であって、第1の実施形態において1/2倍波が励振されることを説明するための図である。
【0062】
図8に示すように、第1の実施形態においては、分極変化領域において、第1の領域A及び第2の領域Bの配置が、1/2/1/2/2/1/2/1とされている。この構成では、基本波が励振されたと仮定した場合、第1の電極指18が設けられている部分において生じる電荷の符号は、該第1の電極指18と隣り合う2本の第2の電極指19のうち一方が設けられている部分において生じる電荷の符号と同じとなる。そのため、隣り合う第1の電極指18及び第2の電極指19が電位差を有しない部分が生じる。すなわち、基本波が励振されることと、第1の電極指18及び第2の電極指19が電位差を有することとが、整合しない部分が存在する。従って、第1の実施形態において、基本波の励振を効果的に抑制することができる。
【0063】
なお、第1の領域A及び第2の領域Bは、必ずしも分極方向が互いに反転した関係ではなくともよい。第1の領域A及び第2の領域Bにおいて、分極方向が互いに異なっていればよい。この場合においても、基本波が励振されることによる、第1の電極指18及び第2の電極指19の電位差は小さくなる。従って、基本波による応答の強度を小さくすることができる。すなわち、基本波を抑制することができる。
【0064】
一方で、
図9に示すように、1/2倍波が励振されたと仮定した場合、第1の電極指18が設けられている部分において生じる電荷と、第2の電極指19が設けられている部分において生じる電荷とでは、符号が互いに異なる。そのため、第1の電極指18及び第2の電極指19は電位差を有する。すなわち、1/2倍波の励振と、第1の電極指18及び第2の電極指19が電位差を有することとが整合する。従って、第1の実施形態では、1/2倍波を強勢に励振させることができる。
【0065】
上記のように、任意の波の周波数f、音速v及び波長λnの関係は、f=v/λnにより表わされる。そして、波長λnは、IDT電極の電極指ピッチにより規定される。よって、従来においては、低い周波数の波を利用する場合には、IDT電極の電極指ピッチを広くする必要があった。そのため、弾性波装置を大型にする必要があった。これに対して、第1の実施形態においては、IDT電極の電極指ピッチを広くしなくとも、1/2倍波のような低い周波数の弾性波を好適に利用することができる。従って、第1の実施形態においては、弾性波装置1を大型化せずして、低い周波数の弾性波を好適に利用することができる。
【0066】
なお、
図1に示す第1の実施形態における、第1の領域A及び第2の領域Bを有する圧電体層6を得る際には、例えば、第1の領域Aのみを有する圧電体層に相当するウエハ上に、成膜処理を行えばよい。これにより、第1の領域A及び第2の領域Bを有する圧電体層6を形成してもよい。この場合、例えば、ウエハの表面の一部における結晶性を、イオンビームの照射やプラズマ処理などの表面処理によって、予め乱しておけばよい。あるいは、上記ウエハ上に成膜処理をする際の成膜温度を低くすることによって、表面拡散を減らせばよい。これらにより、第2の領域Bを有する膜を成長させることができる。例えば、上記表面処理時にレジストパターンを形成することにより、第1の領域A及び第2の領域Bの配置を調整することができる。
【0067】
あるいは、スパッタリングによる成膜を行う場合であれば、セルフバイアスによるミリング効果を用いればよい。これにより、優先される配向面を制御し、第1の領域Aの分極方向に対して、第2の領域Bの分極方向を容易に傾けることができる。より具体的には、例えば、ウエハの材料としてLiNbO3を用いる場合には、ウエハの主面の法線方向から、イオンビームの照射を行ってもよい。これにより、結晶c軸方向が上記法線方向から傾いた膜を成長させ易くすることができる。それによって、分極方向が傾いた膜を成膜することができる。
【0068】
ウエハにおいて第2の領域Bを形成した後に、ウエハの厚みを調整することなどにより、第2の領域Bが、ウエハの厚み方向における全体に位置するようにしてもよい。その後、ウエハを分割することにより、複数の圧電体層6を得てもよい。
【0069】
以下において、第1の実施形態の好ましい構成を示す。
【0070】
第1の領域Aにおける分極軸、及び第2の領域Bにおける分極軸がなす角の角度が180°±5°以内の範囲であることが好ましい。この場合には、上記のように、第1の領域A及び第2の領域Bは、分極方向が互いに反転した関係である。これにより、1/2倍波を強勢に励振させることができ、基本波を効果的に抑制することができる。
【0071】
図1に示すように、第1の実施形態では、第1の区間D1及び第2の区間D2の境界は、第1の電極指18が設けられている部分に位置している。具体的には、第1の実施形態では、該境界は、該電極指の電極指直交方向における中央に位置している。すなわち、該境界と、該電極指の電極指直交方向における中央との間の、電極指直交方向における距離をL1、該電極指が位置している部分の電極指ピッチをp1としたときに、L1/p1=0である。
【0072】
他の区間同士の境界及び他の電極指においても、同様に距離L1及び電極指ピッチp1を定義することができる。より具体的には、第1の実施形態では、第3の区間D3及び第4の区間D4の境界並びに第2の電極指19とにおいて、距離L1及び電極指ピッチp1を定義することができる。他にも、第5の区間D5及び第6の区間D6の境界並びに第1の電極指18と、第7の区間D7及び第8の区間D8の境界並びに第2の電極指19とにおいて、距離L1及び電極指ピッチp1を定義することができる。
【0073】
なお、区間同士の境界が、任意の電極指が設けられている部分に位置している場合において、該電極指が他の2本の電極指と隣接している場合には、該電極指を中央とする連続する3本の電極指における電極指ピッチの平均を、電極指ピッチp1とする。もっとも、第1の実施形態においては、電極指ピッチは一定である。
【0074】
少なくとも1組の、電極指及び該電極指が設けられている部分に位置している境界において、L1/p1<0.1であることが好ましい。この場合には、1/2倍波をより確実に励振させることができ、基本波をより確実に抑制することができる。全ての、電極指及び該電極指が設けられている部分に位置している境界において、L1/p1<0.1であることが好ましい。それによって、1/2倍波をより一層確実に励振させることができ、基本波をより一層確実に抑制することができる。第1の実施形態のように、L1/p1=0であることがさらに好ましい。それによって、1/2倍波をより一層確実に強勢に励振させることができ、基本波をより一層確実に効果的に抑制することができる。
【0075】
図1に示すように、第1の実施形態では、第2の区間D2及び第3の区間D3の境界は、電極指間部に位置している。具体的には、第1の実施形態では、該境界は、該電極指間部の電極指直交方向における中央に位置している。すなわち、該境界と、該電極指間部の電極指直交方向における中央との間の、電極指直交方向における距離をL2、該電極指間部が位置している部分の電極指ピッチをp2としたときに、L2/p2=0である。
【0076】
他の区間同士の境界及び他の電極指においても、同様に距離L2及び電極指ピッチp2を定義することができる。より具体的には、第1の実施形態では、第4の区間D4及び第5の区間D5の境界並びに電極指間部とにおいて、距離L2及び電極指ピッチp2を定義することができる。他にも、第6の区間D6及び第7の区間D7の境界並びに電極指間部において、距離L2及び電極指ピッチp2を定義することができる。
【0077】
少なくとも1組の、電極指間部及び該電極指間部に位置している境界とにおいて、L2/p2<0.1であることが好ましい。この場合には、1/2倍波をより確実に励振させることができ、基本波をより確実に抑制することができる。全ての、電極指間部及び該電極指間部に位置している境界において、L2/p2<0.1であることが好ましい。それによって、1/2倍波をより一層確実に励振させることができ、基本波をより一層確実に抑制することができる。第1の実施形態のように、L2/p2=0であることがさらに好ましい。それによって、1/2倍波をより一層確実に強勢に励振させることができ、基本波をより一層確実に効果的に抑制することができる。
【0078】
圧電性基板2が、高音速部材層及び圧電体層6を含む積層基板であることが好ましい。圧電性基板2が、高音速部材層、低音速膜及び圧電体層6がこの順序において積層された積層基板であることがより好ましい。なお、第1の実施形態においては、高音速部材層は高音速支持基板4であり、低音速膜は酸化ケイ素膜5である。圧電性基板2が上記のような積層構成を有する場合には、1/2倍波のエネルギーを圧電体層6側に効果的に閉じ込めることができる。
【0079】
なお、第1の実施形態のように、低音速膜が酸化ケイ素膜5であることが好ましい。それによって、弾性波装置1の周波数温度係数(TCF)の絶対値を小さくすることができる。これにより、弾性波装置1の周波数温度特性を改善することができる。
【0080】
もっとも、低音速膜の材料としては、例えば、ガラス、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化リチウム、酸化タンタル、もしくは酸化ケイ素にフッ素、炭素やホウ素を加えた化合物などの誘電体、または上記材料を主成分とする材料を用いることもできる。
【0081】
本明細書において主成分とは、占める割合が50重量%を超える成分をいう。上記主成分の材料は、単結晶、多結晶、及びアモルファスのうちいずれかの状態、もしくは、これらが混在した状態で存在していてもよい。
【0082】
第1の実施形態では、低音速膜としての酸化ケイ素膜5上に直接的に圧電体層6が設けられている。なお、低音速膜上に、圧電体層6以外の圧電体層や、誘電体層などを介して間接的に圧電体層6が設けられていてもよい。
【0083】
高音速部材層である高音速支持基板4の材料としては、シリコンが用いられている。もっとも、高音速部材層の材料は上記に限定されない。高音速部材層の材料としては、例えば、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶などの圧電体、アルミナ、サファイア、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、スピネル、サイアロンなどのセラミック、酸化アルミニウム、酸窒化ケイ素、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、ダイヤモンドなどの誘電体、もしくはシリコンなどの半導体、または上記材料を主成分とする材料を用いることもできる。なお、上記スピネルには、Mg、Fe、Zn、Mnなどから選ばれる1以上の元素と酸素とを含有するアルミニウム化合物が含まれる。上記スピネルの例としては、MgAl2O4、FeAl2O4、ZnAl2O4、MnAl2O4を挙げることができる。
【0084】
第1の実施形態においては、高音速部材層としての高音速支持基板4上に、低音速膜を介して間接的に圧電体層6が設けられている。なお、例えば、高音速部材層上に、圧電体層6以外の圧電体層や低音速膜以外の誘電体膜を介して間接的に圧電体層6が設けられていてもよい。あるいは、高音速部材層上に直接的に圧電体層6が設けられていてもよい。
【0085】
第1の実施形態の弾性波装置1においては、いずれの区間同士の境界も、電極指が設けられている部分の電極指直交方向における中央、及び電極指間部の電極指直交方向における中央のうち一方に位置している。よって、いずれの区間同士の境界においても、L1=0及びL2=0のうち一方である。なお、各区間同士の境界の配置は上記に限定されない。例えば、
図10に示す第1の変形例の圧電体層6Aにおいては、全ての区間同士の境界において、L1>0及びL2>0のうち一方である。本変形例においても、第1の実施形態と同様に、1/2倍波を励振させることができ、基本波を抑制することができる。
【0086】
第1の実施形態及びその第1の変形例においては、第1の領域A及び第2の領域Bの境界は、圧電体層の主面の法線方向に延びている。もっとも、第1の領域A及び第2の領域Bの境界の配置は上記に限定されない。例えば、
図11に示す第1の実施形態の第2の変形例の圧電体層6Bにおいては、第1の領域A及び第2の領域Bの境界が、電極指直交方向に沿う断面において曲線状の形状を有する。具体的には、第2の領域Bの電極指直交方向に沿う寸法が、圧電体層6Bの厚み方向において、IDT電極12が設けられている主面から遠ざかるほど小さくなっている。そのため、第1の領域A及び第2の領域Bの境界は、第2の領域Bが位置している区間に配置されている。
【0087】
より具体的には、圧電体層6BにおけるIDT電極12が設けられている主面においては、第2の領域Bは、第2の区間D2、第4の区間D4、第5の区間D5及び第7の区間D7の全体に至っている。もっとも、第2の区間D2における第2の区間D2と隣接する区間との境界付近においては、第1の領域A上に第2の領域Bが積層されている。第4の区間D4、第5の区間D5及び第7の区間D7においても同様である。他方、第1の区間D1、第3の区間D3、第6の区間D6及び第8の区間D8には、第1の領域Aのみが位置している。
【0088】
第1の領域A及び第2の領域Bは、少なくとも圧電体層6Bにおける、IDT電極12が設けられている主面に位置していればよい。そして、本変形例においても、第1の実施形態と同様に、分極変化領域において、第1の領域A及び第2の領域Bの配置が、1/2/1/2/2/1/2/1である。よって、本変形例においても、1/2倍波を励振させることができ、基本波を抑制することができる。
【0089】
なお、本変形例では、第1の変形例と同様に、全ての区間同士の境界において、L1>0及びL2>0のうち一方である。
【0090】
第1の変形例における各区間同士の境界の構成、並びに第2の変形例における第1の領域A及び第2の領域Bの境界の構成は、本発明における他の形態においても採用することができる。
【0091】
上記のように、分極変化領域は、第1の領域A及び第2の領域Bが、電極指直交方向において交互に並んでいる領域である。分極変化領域は、
図2に示す交叉領域Cの、電極指延伸方向における少なくとも一部に位置していればよい。電極指が設けられている部分に位置している各領域は、該電極指における交叉領域Cに位置している部分の少なくとも一部と、平面視において重なっていればよい。以下において具体例を示す。なお、本明細書において平面視とは、
図1における上方に相当する方向から弾性波装置を見ることをいう。
図1においては、例えば、高音速支持基板4側及び圧電体層6側のうち、圧電体層6側が上方である。
【0092】
例えば、
図1に示す第1の区間D1などでは、第1の領域Aは、第1の電極指18における交叉領域Cに位置している部分の電極指延伸方向における少なくとも一部と、平面視において重なっていればよい。第3の区間D3などでは、第1の領域Aは、第2の電極指19における交叉領域Cに位置している部分の電極指延伸方向における少なくとも一部と、平面視において重なっていればよい。
【0093】
同様に、例えば、第2の区間D2などでは、第2の領域Bは、第1の電極指18における交叉領域Cに位置している部分の電極指延伸方向における少なくとも一部と、平面視において重なっていればよい。第4の区間D4などでは、第2の領域Bは、第2の電極指19における交叉領域Cに位置している部分の電極指延伸方向における少なくとも一部と、平面視において重なっていればよい。
【0094】
図3により模式的に示すように、圧電体層6は1つの第1の領域A及び複数の第2の領域Bを有する。もっとも、圧電体層6は、複数の第1の領域A及び複数の第2の領域Bを有していてもよい。例えば、一部の第2の領域Bが複数の第1の領域Aのうち1つの第1の領域Aを囲んでいてもよい。この場合、具体的には、例えば、一部の第2の領域Bが、交叉領域C内に位置する複数の部分、及び交叉領域C外に位置する複数の部分を有する。そして、第2の領域Bにおける交叉領域C内に位置する複数の部分が、交叉領域C外に位置する各部分により接続されている。該第2の領域Bにより、1つの第1の領域Aが囲まれている。
【0095】
ところで、圧電体層6上には、誘電体膜が設けられていてもよい。これにより、誘電体膜によってIDT電極12が保護されるため、IDT電極12が破損し難い。誘電体膜の材料としては、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素または酸窒化ケイ素などを用いることができる。この誘電体膜が設けられた構成は、本発明における他の形態においても採用することができる。
【0096】
圧電体層6及びIDT電極12の間には、圧電体層6以外の圧電体層または、誘電体層が設けられていてもよい。この場合には、上記圧電体層または上記誘電体層の厚みを調整することなどにより、弾性波装置の比帯域を調整することができる。上記圧電体層または、上記誘電体層が設けられた構成は、本発明における他の形態においても採用することができる。
【0097】
第1~第8の区間D1~D8において、第1の領域Aの電極指直交方向に沿う寸法の合計をE1、第2の領域Bの電極指直交方向に沿う寸法の合計をE2としたときに、第1の実施形態では、E2/E1=1である。なお、これに限定されるものではない。もっとも、E2/E1が1±0.1以内の範囲であることが好ましい。それによって、1/2倍波をより確実に強勢に励振させることができ、基本波をより確実に効果的に抑制することができる。第1の実施形態のように、E2/E1=1であることがより好ましい。それによって、1/2倍波をより一層確実に強勢に励振させることができ、基本波をより一層確実に効果的に抑制することができる。
【0098】
第1の実施形態においては、IDT電極12の電極指ピッチは一定である。なお、本発明においては、IDT電極12に、電極指ピッチが互いに異なる複数の部分が含まれていてもよい。例えば、IDT電極12において、電極指ピッチがランダムであってもよい。この場合には、E2/E1を、隣り合う第1の電極指18同士の電極指直交方向における中心間距離と、隣り合う第2の電極指19同士の電極指直交方向における中心間距離との比に基づく値にすることが好ましい。具体的には、隣り合う第1の電極指18同士の電極指直交方向における中心間距離をp3、隣り合う第2の電極指19同士の電極指直交方向における中心間距離をp4としたときに、(p4/p3)/(E2/E1)=1±0.1以内の範囲とすることが好ましい。それによって、1/2倍波をより確実に強勢に励振させることができ、基本波をより確実に抑制することができる。
【0099】
第1の実施形態におけるIDT電極12の電極指の幅は一定である。もっとも、本発明においては、IDT電極12の複数の電極指は、幅が異なる電極指を含んでいてもよい。電極指の幅は、電極指の電極指直交方向に沿う寸法である。
【0100】
上記に挙げたそれぞれの好ましい例などは、分極変化領域における第1の領域A及び第2の領域Bの配置が、1/2/1/2/2/1/2/1以外である、本発明の形態にも適用することができる。
【0101】
図12は、第2の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【0102】
本実施形態は、圧電体層26の分極変化領域において、第1の領域A及び第2の領域Bの配置が、1/1/1/2/2/2/2/1とされている点において、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置21は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0103】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、1/2倍波を励振することができ、基本波を抑制できる。これを、本実施形態と第1の比較例とを比較することにより、以下において示す。第1の比較例は、
図4における比較に係る第1の比較例と同様である。すなわち、第1の比較例では、圧電体層の分極方向は一定である。
【0104】
第2の実施形態の構成を有する弾性波装置21、及び第1の比較例の弾性波装置のアドミッタンス周波数特性を、FEMシミュレーションにより導出した。なお、第2の実施形態の構成を有する弾性波装置21の設計パラメータは以下の通りである。
【0105】
高音速支持基板:材料…Si
酸化ケイ素膜:材料…SiO2、厚み…0.2λ
圧電体層:材料…回転YカットのLiNbO3、厚み…0.2λ、第1の領域のオイラー角…(0°,140°,0°)、第2の領域のオイラー角…(0°,320°,0°)
IDT電極:材料…Al、厚み…0.1λ
波長λ…1μm
デューティ比…0.5
【0106】
第1の比較例の設計パラメータは、圧電体層が第2の領域を有しない点以外においては、第2の実施形態と同様である。よって、第1の比較例における圧電体層は、第1の領域のみを有する。そして、該圧電体層のオイラー角は(0°,140°,0°)である。
【0107】
図13は、第2の実施形態及び第1の比較例におけるアドミッタンス周波数特性を示す図である。
【0108】
図13中の矢印N1により示すように、第2の実施形態においては、基本波が抑制されていることがわかる。そして、
図13中の矢印N2により示すように、第2の実施形態においては、1/2倍波が強勢に励振されていることがわかる。従って、第2の実施形態では、弾性波装置21の動作に1/2倍波を好適に利用することができ、不要波としての基本波を効果的に抑制することができる。他方、第1の比較例においては、基本波が強勢に励振されており、1/2倍波は生じていない。
【0109】
図14は、第2の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図であって、第2の実施形態において1/2倍波が励振されることを説明するための図である。
【0110】
図14に示すように、1/2倍波が励振されたと仮定した場合、第1の電極指18が設けられている部分において生じる電荷と、第2の電極指19が設けられている部分において生じる電荷とでは、符号が互いに異なる。そのため、第1の電極指18及び第2の電極指19は電位差を有する。すなわち、1/2倍波の励振と、第1の電極指18及び第2の電極指19が電位差を有することとが整合する。従って、第2の実施形態では、1/2倍波を強勢に励振させることができる。
【0111】
第1の区間D1及び第2の区間D2の境界が、第1の電極指18が設けられている部分に位置していることが好ましい。この場合には、第1の領域A及び第2の領域Bが
図12に示す配置となる。具体的には、分極変化領域において、第1の領域A及び第2の領域Bの配置が、1/1/1/2/2/2/2/1となる。それによって、1/2倍波をより確実に強勢に励振させることができ、基本波をより確実に抑制することができる。もっとも、上述したように、第1の電極指18は、信号電位の入力側に接続されてもよく、信号電位の出力側に接続されてもよく、あるいはグラウンド電位に接続されてもよい。
【0112】
なお、第1の区間D1及び第2の区間D2の境界は、電極指間部に位置していてもよい。この場合には、第1~第8の区間D1~D8の配置は、
図12に示す配置から、例えば1つの区間分、
図12における右側にずれた配置となる。すなわち、
図15に示す第2の実施形態の変形例のように、
図15における最も左側の区間が第8の区間D8となり、第8の区間D8の右側に、第1~第7の区間D1~D7がこの順序において並ぶ。
【0113】
図15に示す部分では、見かけ上、分極変化領域において、第1の領域A及び第2の領域Bの配置が、1/1/1/1/2/2/2/2となる。もっとも、本変形例の圧電体層26Aにおいても、第1~第8の区間D1~D8における第1の領域A及び第2の領域Bの配置としては、第2の実施形態と同様に、1/1/1/2/2/2/2/1である。本変形例においても、1/2倍波を励振させることができ、基本波を抑制することができる。
【0114】
以下において、圧電性基板の積層構造が第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる例として、第3~第5の実施形態を示す。なお、第3~第5の実施形態においては、圧電体層は、
図10に示す第1の実施形態の第1の変形例と同様に構成されている。上記の点以外においては、第3~第5の実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置1と同様に構成されている。
【0115】
第3~第5の実施形態においては、圧電体層の分極変化領域において、第1の領域及び第2の領域の配置が、1/2/1/2/2/1/2/1とされている。それによって、第1の実施形態と同様に、1/2倍波を励振させることができ、基本波を抑制することができる。従って、弾性波装置の動作に1/2倍波を好適に利用することができ、不要波としての基本波を抑制することができる。
【0116】
図16は、第3の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【0117】
本実施形態の圧電性基板32は、支持基板33と、音響反射膜37と、圧電体層6Aとを有する。支持基板33上に音響反射膜37が設けられている。音響反射膜37上に圧電体層6Aが設けられている。
【0118】
支持基板33はシリコン基板である。本実施形態における支持基板33は、高音速部材層としての高音速支持基板である。よって、支持基板33の材料として、シリコン以外の、上述した高音速部材層の材料を用いることもできる。もっとも、支持基板33は高音速部材層ではなくともよい。支持基板33の材料としては、例えば樹脂などの、高音速部材層の材料とは異なる材料を用いることもできる。
【0119】
音響反射膜37は複数の音響インピーダンス層の積層体である。具体的には、音響反射膜37は、複数の低音響インピーダンス層37aと、複数の高音響インピーダンス層37bとを有する。低音響インピーダンス層37aは、相対的に音響インピーダンスが低い層である。一方で、高音響インピーダンス層37bは、相対的に音響インピーダンスが高い層である。
【0120】
音響インピーダンス層において、相対的に音響インピーダンスが低いとは、該音響インピーダンス層と隣接する音響インピーダンス層よりも、音響インピーダンスが低いことをいう。音響インピーダンス層において、相対的に音響インピーダンスが高いとは、該音響インピーダンス層と隣接する音響インピーダンス層よりも、音響インピーダンスが高いことをいう。低音響インピーダンス層37a及び高音響インピーダンス層37bは交互に積層されている。なお、低音響インピーダンス層37aが、音響反射膜37において最も圧電体層6A側に位置する層である。
【0121】
音響反射膜37は、低音響インピーダンス層37aを6層有し、高音響インピーダンス層37bを6層有する。もっとも、音響反射膜37は、低音響インピーダンス層37a及び高音響インピーダンス層37bをそれぞれ少なくとも1層ずつ有していればよい。
【0122】
低音響インピーダンス層37aの材料としては、例えば、酸化ケイ素またはアルミニウムなどを用いることができる。高音響インピーダンス層37bの材料としては、例えば、白金またはタングステンなどの金属や、窒化アルミニウムまたは窒化ケイ素などの誘電体を用いることができる。
【0123】
本実施形態においては、音響反射膜37上に直接的に圧電体層6Aが設けられている。もっとも、音響反射膜37上に、圧電体層6A以外の圧電体層や、誘電体層などを介して間接的に圧電体層6Aが設けられていてもよい。圧電性基板32は、該誘電体層として、酸化ケイ素膜を含んでいてもよい。あるいは、支持基板33及び音響反射膜37の間に、酸化ケイ素膜が設けられていてもよい。圧電性基板32において、圧電体層6A及び音響反射膜37が積層されていればよい。それによって、1/2倍波のエネルギーを効果的に圧電体層6A側に閉じ込めることができる。
【0124】
図17は、第4の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【0125】
本実施形態においては、酸化ケイ素膜5及び圧電体層6Aの間に電極層48が設けられている。電極層48の材料としては、適宜の金属を用いることができる。
【0126】
IDT電極12及び電極層48は、圧電体層6Aを挟み互いに対向している。これにより、静電容量を大きくすることができる。例えば、圧電体層6Aの厚みを調整することなどにより、静電容量の大きさを調整することができる。それによって、弾性波装置における比帯域を調整することができる。
【0127】
本実施形態においては、電極層48上に直接的に圧電体層6Aが設けられている。もっとも、電極層48上に、圧電体層6A以外の圧電体層や、誘電体層などを介して間接的に圧電体層6Aが設けられていてもよい。この場合には、上記圧電体層または上記誘電体層の厚みを調整することなどにより、弾性波装置の静電容量を調整することができる。それによって、弾性波装置の比帯域を調整することができる。
【0128】
なお、例えば、酸化ケイ素膜5の代わりに、
図16に示した音響反射膜37が用いられていてもよい。
【0129】
図18は、第5の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【0130】
本実施形態の圧電性基板52においては、高音速支持基板4上に直接的に圧電体層6Aが設けられている。この場合にも、第1の実施形態と同様に、1/2倍波のエネルギーを圧電体層6A側に効果的に閉じ込めることができる。
【0131】
圧電性基板の積層構成が、第3~第5の実施形態により示した構成とされている場合においても、第1の領域A及び第2の領域Bの配置が、
図12に示した第2の実施形態と同様とされていてもよい。すなわち、分極変化領域において、第1の領域A及び第2の領域Bの配置が、1/1/1/2/2/2/2/1とされていてもよい。あるいは、第1の区間D1及び第2の区間D2の境界が、電極指間部に位置していてもよい。例えば、
図15に示した第2の実施形態の変形例と同様に、第1の領域A及び第2の領域Bの配置が、見かけ上、1/1/1/1/2/2/2/2とされていてもよい。
【0132】
図19は、第6の実施形態に係る弾性波装置の、2対の電極指付近を示す模式的正面断面図である。
【0133】
本実施形態は、圧電性基板62が圧電体層のみからなる点において第1の実施形態と異なる。圧電性基板62は、圧電材料のみからなる基板である。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0134】
圧電性基板62における、IDT電極12が設けられている主面においては、第1の領域A及び第2の領域Bの配置は第1の実施形態と同様である。もっとも、第2の領域Bは、圧電性基板62の厚み方向における一部に位置している。平面視において第2の領域Bが位置している部分では、第1の領域A及び第2の領域Bが積層されている。
【0135】
図19に示すように、圧電性基板62の厚み方向において第2の領域Bが位置する部分では、第1の領域A及び第2の領域Bの境界は、圧電性基板62の主面の法線方向に延びている。圧電性基板62においては、いずれの区間同士の境界も、電極指が設けられている部分の電極指直交方向における中央、及び電極指間部の電極指直交方向における中央のうち一方に位置している。よって、いずれの区間同士の境界においても、L1=0及びL2=0のうち一方である。
【0136】
圧電性基板62の分極変化領域においては、第1~第8の区間D1~D8と、第1の領域A及び第2の領域Bの配置との関係が、第1の実施形態と同様である。それによって、1/2倍波を励振させることができ、基本波を抑制することができる。従って、弾性波装置の動作に1/2倍波を好適に利用することができ、不要波としての基本波を抑制することができる。
【0137】
以下において、各区間の境界の配置、第1の領域A及び第2の領域Bの境界の配置、または第1の領域A及び第2の領域Bの配置の順序のみが第6の実施形態と異なる、第6の実施形態の第1~第4の変形例を示す。第1~第4の変形例においても、第6の実施形態と同様に、1/2倍波を励振させることができ、基本波を抑制することができる。
【0138】
図20に示す第1の変形例の圧電性基板62Aでは、全ての区間同士の境界において、L1>0及びL2>0のうち一方である。
【0139】
図21に示す第2の変形例の圧電性基板62Bでは、第1の領域A及び第2の領域Bの境界が、電極指直交方向に沿う断面において曲線状の形状を有する。具体的には、第2の領域Bの電極指直交方向に沿う寸法が、圧電性基板62Bの厚み方向において、IDT電極12が設けられている主面から遠ざかるほど小さくなっている。なお、第1の変形例と同様に、全ての区間同士の境界において、L1>0及びL2>0のうち一方である。
【0140】
図22に示す第3の変形例の圧電性基板62Cでは、分極変化領域において、第1の領域A及び第2の領域Bの配置が、第2の実施形態と同様に、1/1/1/2/2/2/2/1とされている。なお、第1の変形例と同様に、全ての区間同士の境界において、L1>0及びL2>0のうち一方である。
【0141】
図23に示す第4の変形例の圧電性基板62Dでは、第1の区間D1及び第2の区間D2の境界が、電極指間部に位置している。分極変化領域において、第1の領域A及び第2の領域Bの配置が、見かけ上、1/1/1/1/2/2/2/2とされている。なお、第1の変形例と同様に、全ての区間同士の境界において、L1>0及びL2>0のうち一方である。
【0142】
以下において、本発明に係る弾性波装置の形態の例をまとめて記載する。
【0143】
<1>圧電体層を含む圧電性基板と、前記圧電体層上に設けられており、互いに間挿し合っており、互いに異なる電位に接続される複数の第1の電極指及び複数の第2の電極指を有するIDT電極と、を備え、前記圧電体層における前記IDT電極が設けられている部分が、交叉領域を含み、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指が延びる方向を電極指延伸方向、前記電極指延伸方向と直交する方向を電極指直交方向とし、前記電極指直交方向から前記IDT電極を見たときに、隣り合う前記第1の電極指及び前記第2の電極指が重なり合っている領域が前記交叉領域であり、前記圧電体層が、第1の領域、及び前記第1の領域と分極方向が異なる第2の領域を有し、前記第1の領域及び前記第2の領域が、少なくとも前記交叉領域に位置しており、前記交叉領域が、前記第1の領域及び前記第2の領域が前記電極指直交方向において交互に並んでいる、分極変化領域を含み、前記分極変化領域に位置している各前記第1の領域及び各前記第2の領域が、平面視において、前記第1の電極指及び前記第2の電極指のうち少なくとも一方の、少なくとも一部と重なっており、前記圧電体層を前記電極指直交方向において複数の区間に分け、前記複数の区間がそれぞれ、前記第1の電極指または前記第2の電極指が設けられている部分から、前記第1の電極指及び前記第2の電極指が設けられていない部分までの範囲であるとし、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指のうち、各前記区間に設けられている電極指が1本のみであるとしたときに、前記複数の区間が、前記電極指直交方向において順番に並んでいる第1~第8の区間を含み、前記第1の区間及び前記第2の区間の境界が、前記第1の電極指が設けられている部分に位置しており、前記第1の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第2の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第3の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第4の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第5の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第6の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第7の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第8の区間に前記第1の領域が位置している、弾性波装置。
【0144】
<2>圧電体層を含む圧電性基板と、前記圧電体層上に設けられており、互いに間挿し合っており、互いに異なる電位に接続される複数の第1の電極指及び複数の第2の電極指を有するIDT電極と、を備え、前記圧電体層における前記IDT電極が設けられている部分が、交叉領域を含み、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指が延びる方向を電極指延伸方向、前記電極指延伸方向と直交する方向を電極指直交方向とし、前記電極指直交方向から前記IDT電極を見たときに、隣り合う前記第1の電極指及び前記第2の電極指が重なり合っている領域が前記交叉領域であり、前記圧電体層が、第1の領域、及び前記第1の領域と分極方向が異なる第2の領域を有し、前記第1の領域及び前記第2の領域が、少なくとも前記交叉領域に位置しており、前記交叉領域が、前記第1の領域及び前記第2の領域が前記電極指直交方向において交互に並んでいる、分極変化領域を含み、前記分極変化領域に位置している各前記第1の領域及び各前記第2の領域が、平面視において、前記第1の電極指及び前記第2の電極指のうち少なくとも一方の、少なくとも一部と重なっており、前記圧電体層を前記電極指直交方向において複数の区間に分け、前記複数の区間がそれぞれ、前記第1の電極指または前記第2の電極指が設けられている部分から、前記第1の電極指及び前記第2の電極指が設けられていない部分までの範囲であるとし、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指のうち、各前記区間に設けられている電極指が1本のみであるとしたときに、前記複数の区間が、前記電極指直交方向において順番に並んでいる第1~第8の区間を含み、前記第1の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第2の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第3の区間に前記第1の領域が位置しており、前記第4の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第5の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第6の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第7の区間に前記第2の領域が位置しており、前記第8の区間に前記第1の領域が位置している、弾性波装置。
【0145】
<3>前記第1の区間及び前記第2の区間の境界が、前記第1の電極指が設けられている部分に位置している、<2>に記載の弾性波装置。
【0146】
<4>前記第1の領域における分極軸、及び前記第2の領域における分極軸がなす角の角度が180°±5°以内の範囲である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0147】
<5>前記第1~第8の区間に位置している前記第1の領域及び前記第2の領域の境界のうち少なくとも1つの境界が、前記複数の第1の電極指及び前記複数の第2の電極指のうちいずれかの電極指が設けられている部分に位置しており、該境界と、該電極指の前記電極指直交方向における中央との間の、前記電極指直交方向における距離をL1、該電極指が位置している部分の電極指ピッチをp1としたときに、L1/p1<0.1である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0148】
<6>隣り合う前記第1の電極指及び前記第2の電極指の間の部分を電極指間部としたときに、前記第1~第8の区間に位置している前記第1の領域及び前記第2の領域の境界のうち少なくとも1つの境界が、複数の前記電極指間部のうちいずれかの電極指間部に位置しており、該境界と、該電極指間部の前記電極指直交方向における中央との間の、前記電極指直交方向における距離をL2、該電極指間部が位置している部分の電極指ピッチをp2としたときに、L2/p2<0.1である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0149】
<7>前記第1~第8の区間において、前記第1の領域の前記電極指直交方向に沿う寸法の合計をE1、前記第2の領域の前記電極指直交方向に沿う寸法の合計をE2としたときに、E2/E1が1±0.1以内の範囲である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0150】
<8>前記圧電性基板が高音速部材層を含み、前記高音速部材層上に、直接的または間接的に前記圧電体層が設けられており、前記高音速部材層を伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体層を伝搬する弾性波の音速よりも高い、<1>~<7>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0151】
<9>前記圧電性基板が音響反射膜を含み、前記音響反射膜上に、直接的または間接的に前記圧電体層が設けられており、前記音響反射膜が、相対的に音響インピーダンスが低い、少なくとも1層の低音響インピーダンス層と、相対的に音響インピーダンスが高い、少なくとも1層の高音響インピーダンス層と、を有し、前記低音響インピーダンス層及び前記高音響インピーダンス層が交互に積層されている、<1>~<7>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0152】
<10>前記圧電性基板が電極層を含み、前記電極層上に、直接的または間接的に前記圧電体層が設けられている、<1>~<9>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0153】
<11>前記圧電性基板が酸化ケイ素膜を含み、前記酸化ケイ素膜上に、直接的または間接的に前記圧電体層が設けられている、<1>~<10>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【符号の説明】
【0154】
1…弾性波装置
2…圧電性基板
4…高音速支持基板
5…酸化ケイ素膜
6,6A,6B…圧電体層
12…IDT電極
13A,13B…反射器
16,17…第1,第2のバスバー
18,19…第1,第2の電極指
21…弾性波装置
26,26A…圧電体層
32…圧電性基板
33…支持基板
37…音響反射膜
37a…低音響インピーダンス層
37b…高音響インピーダンス層
48…電極層
52,62,62A~62D…圧電性基板
A,B…第1,第2の領域
C…交叉領域
D1~D8…第1~第8の区間