(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168451
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】元気度判定システム及び元気度判定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20241128BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61B5/16 200
A61B5/11 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085151
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】312015200
【氏名又は名称】H2L株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 絵美
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP01
4C038PQ00
4C038PS00
4C038VA04
4C038VB12
4C038VC01
(57)【要約】
【課題】活動中などであっても、簡単に元気度が判定できるようにする。
【解決手段】対象者の特定箇所の筋変位を検出する筋変位検出センサ10と、筋変位検出センサ10が検出した筋変位の時系列データに基づいて、対象者がどの程度肉体疲労しているかを示す元気度を判定する判定部104と、を備える。判定部104は、例えば機械学習部102によって肉体疲労についてのデータベースを使って筋変位の時系列データを分類した結果を使って、元気度を判定する。これによって、例えば何らかの活動をある程度の時間継続したときに、どの程度元気であるかなどを適切に判定できるようになる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の特定箇所の筋変位を検出する筋変位検出センサと、
前記筋変位検出センサが検出した筋変位の時系列データに基づいて、前記対象者がどの程度肉体疲労しているかを示す元気度を判定する判定部と、を備える
元気度判定システム。
【請求項2】
さらに、前記筋変位検出センサが検出した筋変位の時系列データを機械学習で分類する機械学習部と、
作業開始から一定の時間経過後の肉体疲労についてのデータを蓄積する肉体疲労データベースと、を備え、
前記機械学習部は、前記肉体疲労データベースに蓄積されたデータを使って、筋変位の時系列データを分類するものであり、
前記判定部は、前記機械学習部で機械学習処理した結果に基づいて、前記対象者の元気度を判定する
請求項1に記載の元気度判定システム。
【請求項3】
前記機械学習部は、前記筋変位検出センサが検出した筋変位の時系列データに、特定の周波数よりも高い周波数成分が含まれる状態に基づいて、肉体疲労の程度を判定する
請求項2に記載の元気度判定システム。
【請求項4】
前記機械学習部は、前記筋変位検出センサが検出した筋変位の時系列データが、前記肉体疲労データベースも蓄積された、作業開始から一定の時間経過後の肉体疲労のデータに基づいて、前記作業開始からどの程度の時間経過した肉体疲労に近いかを分類する
請求項3に記載の元気度判定システム。
【請求項5】
対象者の特定箇所の筋変位を検出する筋変位検出処理と、
前記筋変位検出処理により検出した筋変位の時系列データに基づいて、前記対象者がどの程度肉体疲労しているかを示す元気度を判定する判定処理と、を含む
元気度判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の元気度を判定する元気度判定システム及び元気度判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の疲労には、大きく分けて肉体疲労、精神疲労、神経疲労の3つがある。
肉体疲労は、筋肉を動かす活動によって生じる疲労であり、肉体活動を継続して行うことで生じる筋肉疲労の他に、エネルギー不足によって肉体疲労を感じる場合もある。このような肉体疲労がない状態は、対象者が元気であると言える。本明細書では、この肉体疲労がない状態を示す評価結果を、元気度と称する。
【0003】
特許文献1には、対象者の睡眠時間と睡眠の質(快眠度)を計測して、元気度を算出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された手法は、睡眠時間や睡眠の質を計測して元気度を算出するものであり、目覚めた直後の元気度を計測する手法である。したがって、日常生活中にどの程度の元気度があるかを計測することは困難であった。
もし、日常生活中の元気度がわかれば、判定した元気度を表示して、休憩が必要かどうかを適切に通知することができるし、また、仕事や学習などの活動を継続して行えるかどうかも判断することができるが、従来、そのような元気度を簡単に判定することは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、簡単に元気度が判定できる元気度判定システム及び元気度判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の元気度判定システムは、対象者の特定箇所の筋変位を検出する筋変位検出センサと、筋変位検出センサが検出した筋変位の時系列データに基づいて、対象者がどの程度肉体疲労しているかを示す元気度を判定する判定部と、を備える。
【0008】
また、本発明の元気度判定方法は、対象者の特定箇所の筋変位を検出する筋変位検出処理と、筋変位検出処理により検出した筋変位に基づいて、対象者がどの程度肉体疲労しているかを示す元気度を判定する判定処理と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筋変位に基づいて、対象者の元気度を簡単かつ適切に判定して通知することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態例による元気度判定システムの例を示す構成図である。
【
図2】本発明の一実施の形態例の元気度判定システムに使用されるセンサ装置の取付け例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施の形態例の元気度判定システムに使用されるセンサ装置の例(表面)を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施の形態例の元気度判定システムに使用されるセンサ装置の例(裏面)を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施の形態例による元気度判定システムによる判定処理の例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施の形態例による元気度判定システムが判定を行う波形の例(A:元気度が高い場合、B:元気度が低い場合)を示す波形図である。
【
図7】本発明の一実施の形態例による元気度判定システムによる判定結果の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)の元気度判定システム及び元気度判定方法を、添付図面を参照して説明する。
【0012】
[元気度判定システムの構成]
図1に示すように、本例の元気度判定システムは、対象者の身体Bに装着した筋変位検出センサ10と、その筋変位検出センサ10で検出した装着箇所の筋の筋変位に基づいて元気度を判定して表示する端末100で構成される。
図1では、筋変位検出センサ10は、身体Bの手首に装着した例を示すが、手首に装着するのは一例であり、その他の箇所に装着してもよい。
【0013】
端末100としては、スマートフォンやスマートウォッチなどが適用可能である。筋変位検出センサ10の構成例については後述する。
筋変位検出センサ10は、複数チャンネルの筋変位を検出するセンサであり、その検出信号である筋変位データを、端末100に有線又は無線伝送によって供給する。
【0014】
端末100は、ハードウェア構成としては、例えば
図1の下側に示すように、CPU(Central Processing Unit)111、メモリ112、センサインターフェース113、表示部105及び通信インターフェース114で構成される。そして、端末100は、メモリ112に実装されたアプリケーションプログラムをCPU111により実行することで、以下に説明する各処理部やデータベースが実現される。
【0015】
最初に、端末100が実行する機能から見た構成について説明する。端末100は、筋変位データ取得部101、機械学習部102、肉体疲労データベース103、判定部104、及び表示部105を備える。
筋変位データ取得部101は、筋変位検出センサ10からの筋変位データの時系列データを取得する。ここでは、14チャンネルの筋変位データを取得する。
機械学習部102は、14チャンネルの筋変位データの時系列データを機械学習処理で分類し、各チャンネルの筋変位データの変化状態から、元気度を分類する。そして、機械学習部102は、分類結果のデータを判定部104に供給する。
【0016】
肉体疲労データベース103には、人間の肉体疲労と筋変位との関係を示す多数のデータが蓄積される。例えば、何らかの作業を開始した際の筋変位、開始してから1時間後の筋変位、2時間後の筋変位などを様々な条件でのデータが蓄積される。この肉体疲労データベース103内のデータは、予め登録されるが、本例の元気度判定システムを稼働させることで取得したデータにより、肉体疲労データベース103のデータを更新してもよい。あるいは、外部の不図示のサーバから伝送されたデータにより、肉体疲労データベース103のデータを更新するようにしてもよい。
【0017】
判定部104は、機械学習部102で得られた分類結果に基づいて、対象者の元気度を判定する。
表示部105は、判定部104で判定した元気度を表示する。
なお、判定部104が判定して得た元気度のデータは、別の端末やサーバに送信してもよい。また、表示部105が元気度を表示する際には、他の端末やサーバから伝送された別の対象者の元気度を同時に表示してもよい。
【0018】
[センサの構成と装着例]
図2は、筋変位検出センサ10を身体Bの手首の近傍に装着した例を示す。
図2に示すように、筋変位検出センサ10は、例えば手首より若干(例えば10センチ程度)肩に近づいた箇所に装着され、手首の内側の筋肉の変位(張り)を筋変位データとして検出する。
【0019】
図3及び
図4は、この
図2に示すように装着される筋変位検出センサ10の構成例を示す。
図3は筋変位検出センサ10の表面側を示し、
図4は筋変位検出センサ10の裏面側を示す。
筋変位検出センサ10は、本体部11とベルト12で構成される。ベルト12はシリコンゴムなどの柔軟性を有する樹脂で形成される。そして、ベルト12の一端部12aと他端部12bを接合することで、
図2に示すように筋変位検出センサ10が手首の周囲などに装着される。
なお、筋変位検出センサ10の本体部11には、筋変位を検出する回路基板や電池が内蔵されている。
【0020】
また、
図4に示すように、筋変位検出センサ10の裏面側には、ベルト12の長手方向に沿って、14個のセンサ部材13が連続して配置されている。それぞれのセンサ部材13には、レンズが配置され、これらのレンズにより手首周りの筋肉の変位が検出される。
センサ部材13としては、例えば赤外線を使って距離を検出する光学式距離センサが使用され、各センサ部材13は、検出した距離に基づいて筋変位検出処理を行う。なお、筋変位検出センサ10を装着する際には、手首の内側(手のひら側)に14個のセンサ部材13が配置されるようにする。
【0021】
14個のセンサ部材13で検出された14チャンネルの筋変位データは、本体部11内の回路によりデジタルデータ化された上で、端末100に無線伝送される。あるいは、筋変位検出センサ10と端末100とを有線で接続して、有線により筋変位データを端末100に伝送してもよい。
【0022】
[元気度判定処理]
図5は、判定部104が元気度を判定する処理を示すフローチャートである。
まず、筋変位データ取得部101は、14チャンネルの筋変位データを取得し、取得した14チャンネルの筋変位データを機械学習部102に供給する(ステップS11)。
機械学習部102は、取得した14チャンネルの筋変位データの値について、肉体疲労データベース103のデータを教師信号として使って分類する機械学習処理を行う(ステップS12)。この機械学習部102での機械学習処理では、特に、筋変位データの振動成分に注目して元気度の分類が行われる。なお、筋変位データの振動成分については後述する。
【0023】
そして、判定部104は、ステップS12で機械学習した結果を取得し、その機械学習した結果とその推移から、現在の元気度を判定する(ステップS13)。
次に、判定部104は、元気度の判定結果に基づいた表示画面を表示部105に生成させ、表示部105により元気度を表示する(ステップS14)。なお、判定部104は、端末100の通信部を介してサーバなどに判定結果を送信してもよい。
【0024】
[機械学習部で判定する筋変位の例]
図6は、筋変位検出センサ10で検出した複数チャンネルの筋変位データの例を示す。
図6Aは、対象者の元気度が高い状態(肉体疲労が少ない状態)の例であり、
図6Bは、対象者の元気度が低い状態(肉体疲労が多い状態)の例である。
【0025】
筋変位検出センサ10で検出した筋変位データは、手などの動きに連動して筋変位データの値に変化があるが、
図6Aに示す元気な状態では、筋変位データの微小な変動成分は少ない。
これに対して、
図6Bに示す元気度が低い状態では、筋変位データの微小な変動成分が多く含まれている。特に、肉体疲労が多くなると、その微小な変動が多くなる傾向にある。但し、測定した全てのチャンネルでこのような筋変位データの微小な変動成分が多く含まれるとは限らない。ここで、筋変位データの微小な変動成分とは、特定の周波数よりも高い周波数成分が含まれていることをいう。
【0026】
機械学習部102は、この筋変位データの微小な変動成分の有無や量に基づいて、どの程度の元気度かを分類する処理を行う。肉体疲労データベース103には、例えば何らかの作業を開始する前の筋変位データと、開始から一定時間経過ごと(例えば1時間経過後、2時間経過後、など)の筋変位データが登録されている。そして、機械学習部102は、機械学習により、この肉体疲労データベース103から得たデータとの類似度に基づいて分類処理を行う。
これにより、判定部104では、作業開始からどの程度経過して、元気度が判定できるようになる。
【0027】
[元気度の表示例]
図7は、表示部105での元気度の表示例を示す。
この例では、「あなたの元気度は[4]です。またまだ働けます。」と表示した例を示す。
このように、元気度を数値で表示することで、どの程度元気かを提示することができる。
図7の表示例は一例であり、例えば顔画像を表示し、顔の色や周囲のマークなどで、元気度や肉体疲労状況を表示してもよい。
【0028】
以上説明したように、本例の元気度判定システムによると、筋変位データから、対象者の元気度がどの程度かを精度良く判定して表示することができる。
【0029】
[変形例]
なお、ここまで説明した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、上述した実施の形態例で説明した構成や処理は、各種変形や変更が可能である。
例えば、本例では、筋変位検出センサ10から14チャンネルの筋変位データを取得して、14チャンネルの筋変位データから元気度を判定するようにしたが、これよりも少ないチャンネル数の筋変位データから元気度を判定してもよい。
【0030】
また、
図1に示す例では、スマートフォンなどの端末100を使用した元気度判定システムとしたが、筋変位検出センサ10が、
図5のフローチャートに示す判定処理を行うマイコン等の処理部を内蔵してもよい。あるいは、筋変位検出センサ10で得た筋変位データを外部のサーバに送信して、サーバ側で元気度を判定してもよい。この場合には、サーバ側が、
図5のフローチャートに示す判定処理を行うプログラムを実装することになる。
【符号の説明】
【0031】
10…筋変位検出センサ、11…本体部、12…ベルト、13…センサ部材、100…端末、101…筋変位データ取得部、102…機械学習部、103…肉体疲労データベース、104…判定部、105…表示部、111…CPU、112…メモリ113…センサインターフェース、114…通信インターフェース