(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168464
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】乗用田植機のミッションケースの構成。
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A01C11/02 313C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085173
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】518012892
【氏名又は名称】石田 伊佐男
(72)【発明者】
【氏名】石田 伊佐男
【テーマコード(参考)】
2B062
【Fターム(参考)】
2B062AA14
2B062AB01
2B062BA06
2B062BA18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来、乗用田植機のミッションケースはステアリング装置と変速装置と後輪伝動装置は、それぞれ別々に構成されていたためエンジン位置が機体前方に離れて機体が長くなる、又、植付装置に機能追加する場合には動力取出しや伝達構成が複雑になっている為に高コストとなっている。
【解決手段】側面視で横幅が狭く縦が長い側面視L字状に構成されたミッションケースの上部にはステアリング減速装置を設け、更にその上部にはパワーステアリング装置を設けミッションケースの下部の後側にはサイドクラッチケースを設けた。左右一対の多板式クラッチ装置を近接して設け、一対の平歯車で互いに逆回転させた。
作業機への出力は作業機出力平歯車と後部出力平歯車又は後部出力従動平歯車のいずれかと噛合い動力を伝達させた。後輪へのサイドクラッチ装置と作業機出力軸とを同一のサイドクラッチケース内に設ける。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後方に昇降作動するリンク装置(3)を介して植付作業機(4)を装着した乗用田植機(1)は、一対の前輪(12・12)と一対の後輪(13・13)を設けた4輪駆動走行となっていて、前輪(12)の上側には前輪(12)を操向するハンドル(11)をもうけ、ハンドル(11)の後側には座席(10)を設け、ハンドル(11)の下側には側面視で横幅が狭く縦が長いL字状に構成されたミッションケース(18)が設けられ、ミッションケース(18)の前側にはエンジン(7)をミッションケース(18)に近接して設けたものに於いて、ミッションケース(18)の上部にはステアリング減速装置(19)を設け、更にその上部にはパワーステアリング装置(38)を設けミッションケース(18)の下部の後側にはサイドクラッチケース(22)を設けた乗用田植機のミッションケースとする。
【請求項2】
左右一対の多板式クラッチ装置(254・254)を近接して設け、一対の後部出力平歯車(239b)・後部出力従動平歯車(255a)とで互いに逆回転させる。
【請求項3】
作業機出力軸(267)は一体的に設けた作業機出力平歯車(267a)と後部出力平歯車(239b)又は後部出力従動平歯車(255a)のいずれかと噛合い動力を伝達する。
【請求項4】
後輪(13・13)へ動力を伝達する多板式クラッチ装置(254)と作業機出力軸(267)とを同一のサイドクラッチケース(22)内に設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機のミッションケースの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用田植機のミッションケースはステアリング装置と変速装置と後輪伝動装置は、それぞれ別々に構成されていた、又、植付装置に公知の回転式均平装置などを機能追加する場合には動力取出しの構成が複雑になっている。又、植付装置を取外し別の作業装置を取付る場合にも動力取出しや伝達構成が複雑になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、乗用田植機のミッションケースはステアリング装置と変速装置と後輪伝動装置は、それぞれ別々に構成されていたためエンジン位置が機体前方に離れて機体が長くなる、又、植付装置に公知の回転式均平装置などを機能追加する場合には動力取出しの構成が複雑になっているだけでなく、植付装置を取外し別の作業装置を取付る場合にも動力取出しや伝達構成が複雑になっている為に高コストとなっている。
本発明は、ミッションケースの構成を簡単で縦長に構成しエンジン位置を前輪に近づけると共に、後輪駆動の伝達と、作業装置への動力伝達構成が簡単で低コストとなる後輪伝動装置とする事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
走行車体(2)の後方に昇降作動するリンク装置(3)を介して植付作業機(4)を装着した乗用田植機(1)は、一対の前輪(12・12)と一対の後輪(13・13)を設けた4輪駆動走行となっていて、前輪(12)の上側には前輪(12)を操向するハンドル(11)をもうけ、ハンドル(11)の後側には座席(10)を設け、ハンドル(11)の下側には側面視で横幅が狭く縦が長いL字状に構成されたミッションケース(18)が設けられ、ミッションケース(18)の前側にはエンジン(7)をミッションケース(18)に近接して設けたものに於いて、ミッションケース(18)の上部にはステアリング減速装置(19)を設け、更にその上部にはパワーステアリング装置(38)を設けミッションケース(18)の下部の後側にはサイドクラッチケース(22)を設けた乗用田植機のミッションケースとする。
左右一対の多板式クラッチ装置(254・254)を近接して設け、一対の後部出力平歯車(239b)・後部出力平歯車(239b)とで互いに逆回転させる。
作業機出力軸(267)は一体的に設けた作業機出力平歯車(267a)と後部出力平歯車(239b)又は後部出力従動平歯車(255a)のいずれかと噛合い動力を伝達している。
後輪(13・13)へ動力を伝達する多板式クラッチ装置(254)と作業機出力軸(267)とを同一のサイドクラッチケース(22)内に設けた。
【発明の効果】
【0006】
側面視で横幅が狭く縦が長い側面視L字状に構成されたミッションケースの上部にはステアリング減速装置を設け、更にその上部にはパワーステアリング装置を設けミッションケースの下部の後側にはサイドクラッチケースを設けた乗用田植機のミッションケースとしたことにより、エンジン位置を前輪に近づけて設ける事でき機体を短くできる。
左右一対の多板式クラッチ装置を近接して設け、一対の平歯車で互いに逆回転させたことにより構造が簡単になる。
作業機への出力は作業機出力平歯車と後部出力平歯車又は後部出力従動平歯車のいずれかと噛合い動力を伝達させることにより構造が簡単になる。
後輪へのサイドクラッチ装置と作業機出力軸とを同一のサイドクラッチケース内に設けたことにより低コストになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図8】サイドクラッチ装置と作業機出力軸の配置図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明の実施例を図面に基づいて説明する。乗用田植機1は、走行車体2の後方の昇降作動するリンク装置3を介して、6条植えの植付作業機4を装着している。
リンク装置3はアッパーリンク401とロアリンク403リヤーリンク404で略平行四辺形で構成され植付作業機4を上昇、下降する。
植付作業機4には地面を均平にするセンターフロート28とサイドフロート29を具備していて、上部には苗載装置30を搭載している。
【0009】
走行車体2は、左右一対の操向を兼ねた小径の前輪12・12と、その後方には左右一対の大径の後輪13・13が設けられていて回転駆動して走行する。
前輪12の上側には操向や回転駆動しても前輪12と干渉しない位置に平面状のステップ面16aを有するステップ16が設けられている。
後輪13の上部はステップ面16aより高くなるため、局部的に後輪13と干渉しないようにした後輪フェンダー16bで後輪13を覆っている。
【0010】
前記ステップ面16aの上側にはハンドル11が設けられている。その前方にはエンジン7が設けられ、エンジン7はボンネット15で覆われている。
ハンドル11の後側には、座席台10cの上に操縦者用の座席10が設けられていて、座席台10cの後部もステップ面16aとなっていて補助作業者が安全に移動や苗供給作業できる。
座席10の左右両側で後輪フェンダー16bの前側位置に一対の補助座席10a・10aが補助座席支持10b・10bに回動自由に取り付けられていて、補助作業者が後輪フェンダー16bを跨いで座り楽に安全に苗供給作業をする事が出来る。
【0011】
前記ステップ16の上側でボンネット15の両側には、左右一対の予備苗枠14が予備苗枠フレーム14aに取り付けられていて多数の予備苗を搭載する事が出来る。
【0012】
前記ステップ面16aの下側には、井桁状に構成したフレーム17が設けられていてステップ16で覆われている。
【0013】
走行車体2の中央に設けられたハンドル11の前方に設けられたエンジン7の動力は、エンジンプーリー201・エンジンベルト202・HSTプーリー203を介して、ミッションケース18に取り付けられた油圧式無段変速機HST8に入力される。
【0014】
油圧ポンプ9は、HST軸204から油圧継手205・油圧伝達軸206を介して動力伝達される。
【0015】
HST8で変速された動力は、HST出力軸207からミッションケース18内部の入力ギヤー211に伝達され、減速ギヤー212を介してチェンジシャフト213に伝達されチェンジギヤー214を回転させる。チェンジギヤー214は、低速214a・作業速214b・高速214cの各歯車を有し、シフター215によって3段に位置変更変されて、変速軸216に設けた低速ギヤー217・作業速ギヤー218・高速ギヤー219の各各に動力伝達する。又、植付作業機4への動力伝達は、チェンジシャフト213に設けられた植付駆動傘歯車220と植付従動傘歯車221により植付作業機出力軸222に伝達される。
【0016】
高速ギヤー219からデフギヤー231に伝達された動力は、差動歯車装置230を内有するデフケース232が回転させる。差動歯車装置230からの回転は、前輪出力軸233・233から左右一対のフロントアクスル21・21に伝達される。デフケース232端部にはブレーキ装置234が設けられ、ブレーキ軸235の回動により作動する。又、デフギヤー231の端部にはデフロック装置236が設けられ、デフロック軸237の回動により作動する。ブレーキやデフロックの作動は公知の如くペダルにて操作する。
後輪13への動力は、デフケース232に設けられた一組の後部駆動傘歯車238と後部出力傘歯車239により後部に設けられたサイドクラッチケース22内へ出力される。
【0017】
ミッションケース18の左右両側に設けられたフロントアクスル支持ケース240・240に支持されたフロントアクスル軸241には、各々、前輪出力軸233に設けられたフロントアクスル駆動傘歯車242からフロントアクスル従動傘歯車243を介して動力伝達される。
操向回動ケース245・245には、各々、前輪ケース246が取付られ、フロントアクスル軸241に回動自由に取付られている。前輪ケース246には前輪軸247が設けられ、前輪12を取付ていてハンドル11の操作で操向される。前輪12は、フロントアクスル軸241に設けた前輪駆動傘歯車248から前輪軸247に設けた前輪従動傘歯車249に動力伝達され前輪12が回転する。
【0018】
ミッションケース18は側面視L字状に構成されていて上部にはステアリング減速装置19を設け、更にその上部には公知のパワーステアリング装置38が設けられている。
ミッションケース18の下部の後ろにはサイドクラッチケース22が設けられている。
後輪13への動力伝達は、デフケース232に設けた後部駆動傘歯車238と後部出力傘歯車239によりミッションケース18の後部に設けたサイドクラッチケース22内へ出力される。
後部出力傘歯車239と一体の軸部239aには後部出力平歯車239bを固着すると共に、サイドクラッチ軸253を支持している。軸部239bとサイドクラッチ軸253とは公知の多板式クラッチ装置254を介して動力を伝達している。
後部出力平歯車239bは同じ大きさの後部出力従動平歯車255aを介して後部出力軸255に伝えられ、後部出力軸255はサイドクラッチ軸253を支持している。後部出力軸とサイドクラッチ軸253とは公知の多板式クラッチ装置254を介して動力を伝達している。
サイドクラッチ装置254はサイドクラッチカム軸260の回動により動力の入り切りができる。
作業機出力軸267は一体的に設けた作業機出力平歯車267aと後部出力平歯車239b又は後部出力従動平歯車255aのいずれかと噛合い動力を後部へ伝達できる。
【0019】
機体左右中央に在るハンドル11の回転は、ハンドル軸270から公知のパワーステアリング装置38とステアリング継手271aを介してステアリング減速装置19内の、ピニオンギヤー271に伝えられ、ステアリング減速ギヤー282とで減速されステアリング軸276は減速回動する。
機体左右中央に在るステアリング軸276は、側面視でミッションケース18の上部から油圧伝達軸206・チェンジシャフト213・変速軸216の前側を通る。ステアリング軸276は、チェンジギヤー214の歯先と、低速ギヤー217と、作業速ギヤー218とに干渉しないようにされている。又、入力ギヤー211とチェンジシャフト213と変速軸216との各各の中心を結ぶ線を略直線としてステアリング軸276と略平行に設けた事により、ミッションケース18は側面視形状を幅狭くする事ができ、前輪からエンジン7までの距離を短くでき機体全体を短くできる。
【0020】
ステアリング軸276の下端部にはステアリング揺動アーム277が固着されていてハンドル11の回転で揺動する。
ステアリング揺動アーム277と左右一対のフロントアクスル21・21の操向回動ケース245・245に具備している操向回動アーム281・281はそれぞれタイロッド279・279で連結されていて、左右一対の前輪を操向させる。
【0021】
ステアリング揺動アーム277と左右一対のサイドクラッチ装置254・254に設けられたサイドクラッチカム軸260に取付られたサイドクラッチアーム296・296296・295はそれぞれサイドクラッチロッド295・295連結されていて、サイドクラッチカム軸260の回動により、後輪13への動力伝達の入り切りができる。
【0022】
左右一対の後輪13・13への動力はサイドクラッチケース22内のサイドクラッチ軸253.253からそれぞれ後輪伝動軸250.250を介して左右一対のリヤーアクスル23.23へ動力を伝達している。
【0023】
左右一対のリヤーアクスル23.23はリヤーアクスルケース257、リヤーアクスルパイプ258、後輪ケース259、後輪ケースカバー259aで構成されていてリヤーアクスルフレーム256の両側に門形状に取付られていて、井桁状のフレーム17の中央後部に揺動自在に取付られている。
【0024】
後輪伝動軸250の動力はリヤーアクスル入力軸251に伝えられ、一組の傘歯車251a・251bを介してカウンター軸252に伝えられ、カウンター軸252に具備されている駆動傘歯車261と従動傘歯車262の一組の傘歯車を介してリヤーアクスル軸263に伝えられ、リヤーアクスル軸263に具備されている車輪駆動傘歯車264と車輪従動傘歯車265の一組の傘歯車により後輪車軸266に伝えられ、後輪13は回動する。
【符号の説明】
【0025】
1:乗用田植機 2:走行車体 3:リンク装置 4:植付作業機 7:エンジン
10:座席 11:ハンドル 12:前輪 13:後輪 18:ミッションケース
19:ステアリング減速装置 22:サイドクラッチケース 38:パワーステアリング装置 後部出力平歯車239b 255a:後部出力従動平歯車 254:多板式クラッチ装置 267:作業機出力軸 267a:作業機出力平歯車