(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168465
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】圧接コネクタ装置、絶縁心線の接続構造、及び、絶縁心線接続方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/2452 20180101AFI20241128BHJP
H01R 43/01 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01R4/2452
H01R43/01 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085174
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】518241849
【氏名又は名称】コーニング リサーチ アンド ディヴェロップメント コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】大池 知保
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 広幸
(72)【発明者】
【氏名】山内 孝哉
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 明彦
【テーマコード(参考)】
5E012
5E051
【Fターム(参考)】
5E012AA03
5E012AA08
5E012AA31
5E012AA41
5E051HA07
(57)【要約】
【課題】より絶縁心線を強固に保持することができる圧接コネクタ装置を提供する。
【解決手段】圧接コネクタ装置1は、絶縁心線挿入孔を有するハウジング10と、絶縁心線のそれぞれに対応する第1のスロットを有し、絶縁心線の絶縁被覆の一部を剥離して第1のスロット内で導体芯線と導通するように対となる絶縁心線を圧接するように構成されたメインコンタクト20と、絶縁心線のそれぞれに対応して設けられ、それぞれ第2のスロットを有し、絶縁心線のそれぞれの絶縁被覆の一部を剥離して第2のスロット内の絶縁心線を把持するように構成された対となる把持部材30A、30Bと、を備え、絶縁心線をハウジング10内に挿入した状態で、ハウジング10に配置されたメインコンタクト20及び把持部材30A、30Bを押圧することにより、絶縁心線を電気的に接続するとともに絶縁心線を保持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体芯線と、前記導体芯線を包囲する絶縁被覆とをそれぞれ備え、互いに逆向きに配置された対となる絶縁心線を接続する圧接コネクタ装置であって、
前記対となる絶縁心線をそれぞれ対向する側から挿入可能な挿入孔を有するハウジングと、
前記ハウジングに前記挿入孔に向かって進出可能に配置され、前記対となる絶縁心線のそれぞれに対応する第1のスロットを有し、前記対となる絶縁心線の前記絶縁被覆の一部を剥離して前記第1のスロット内で前記導体芯線と導通するように前記対となる絶縁心線を圧接するように構成されたメインコンタクトと、
前記ハウジングに前記挿入孔に向かって進出可能に配置され、前記対となる絶縁心線のそれぞれに対応して設けられ、それぞれ第2のスロットを有し、前記対となる絶縁心線のそれぞれの前記絶縁被覆の一部を剥離して前記第2のスロット内の前記絶縁心線および前記絶縁心線内の前記導体芯線を把持するように構成された対となる把持部材と、
ハウジングと、
を備え、
前記対となる絶縁心線を前記挿入孔内に挿入した状態で、前記ハウジングに配置された前記メインコンタクト及び前記把持部材を押圧することにより、前記絶縁心線を電気的に接続するとともに当該絶縁心線を保持する、
ことを特徴とする圧接コネクタ装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、
前記対となる絶縁心線をそれぞれ対向する側から挿入可能な挿入孔と、
前記メインコンタクトが押圧された際に、前記メインコンタクトが前記対となる絶縁心線の前記絶縁被覆の一部を剥離して前記第1のスロット内に前記導体芯線が位置するように前記メインコンタクトを案内するメインコンタクトガイド孔と、
前記把持部材が押圧された際に、前記把持部材が対応する前記絶縁心線の前記絶縁被覆の一部を剥離して前記第2のスロット内に前記導体芯線が位置するように前記把持部材を案内する把持部材ガイド孔と、を有する、
請求項1に記載の圧接コネクタ装置。
【請求項3】
前記対となる把持部材はそれぞれ、複数の第2のスロットを有し、各把持部材は複数の位置において前記絶縁心線を把持する、
請求項1に記載の圧接コネクタ装置。
【請求項4】
前記メインコンタクトの前記第1のスロットが形成された面と、前記把持部材の前記第2のスロットが形成された面とは、略同形状である、
請求項1に記載の圧接コネクタ装置。
【請求項5】
前記メインコンタクト及び前記把持部材は、同じ導電性材料により形成されている、
請求項1に記載の圧接コネクタ装置。
【請求項6】
導体芯線が絶縁被覆により包囲された対となる絶縁心線を請求項1~5のいずれか1項に記載のコネクタ装置により接続した接続構造であって、
前記メインコンタクトにより前記対となる絶縁心線をそれぞれ保持するとともに前記対となる絶縁心線の前記導体芯線が電気的に接続され、
各把持部材により前記対となる絶縁心線をそれぞれが把持されている、ことを特徴とする絶縁心線の接続構造。
【請求項7】
圧接コネクタ装置を用いて対となる絶縁心線を接続する方法であって、
前記圧接コネクタ装置は、
前記対となる絶縁心線をそれぞれ対向する側から挿入可能な挿入孔を有するハウジングと、
前記ハウジングに前記挿入孔に向かって進出可能に配置され、前記対となる絶縁心線のそれぞれに対応する第1のスロットを有するメインコンタクトと、
前記ハウジングに前記挿入孔に向かって進出可能に配置され、前記対となる絶縁心線のそれぞれに対応して設けられた把持部材と、を備え、
前記挿入孔に対となる絶縁心線を挿入するステップと、
前記ハウジングに配置された前記メインコンタクトを治具により押圧して、前記対となる絶縁心線を圧接するステップと、
前記ハウジングに配置された前記把持部材のそれぞれを治具により押圧して、各把持部材により前記対となる絶縁心線をそれぞれ把持するステップと、
を含む、絶縁心線接続方法。
【請求項8】
圧接コネクタ装置を用いて対となる絶縁心線を接続する方法であって、
前記圧接コネクタ装置は、
前記対となる絶縁心線をそれぞれ対向する側から挿入可能な挿入孔を有するハウジングと、
前記ハウジングに前記挿入孔に向かって進出可能に配置され、前記対となる絶縁心線のそれぞれに対応する第1のスロットを有するメインコンタクトと、
前記ハウジングに前記挿入孔に向かって進出可能に配置され、前記対となる絶縁心線のそれぞれに対応して設けられた把持部材と、を備え、
前記挿入孔に一方の絶縁心線を挿入するステップと、
前記ハウジングに配置された一方の把持部材を治具により押圧して、前記一方の把持部材により前記一方の絶縁心線を把持するステップと、
前記挿入孔に他方の絶縁心線を挿入するステップと、
前記ハウジングに配置された前記メインコンタクトを治具により押圧して、前記対となる絶縁心線を圧接するステップと、
前記ハウジングに配置された前記他方の把持部材を治具により押圧して、前記他方の把持部材により前記他方の絶縁心線を把持するステップと、
を含む、絶縁心線接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧接コネクタ装置、絶縁心線の接続構造、及び、絶縁心線接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導体芯線と、導体芯線の周りに被覆された絶縁被覆とを備えた絶縁心線と端子の接続方法や、このような絶縁心線同士の接続方法として、IDCコネクタ(Insulation Displacement Connector:圧接コネクタ)が広く用いられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9は、圧接コネクタ装置により同軸に延びる絶縁心線同士を接続する様子を示す模式図である。また、
図10は
図9に示す圧接コネクタ装置に用いられているコンタクトを示す斜視図である。圧接コネクタ装置201は、導電性材料からなるコンタクト220とコンタクト220を収容するハウジング210とを有する。コンタクト220は、U字型に形成されており、両端部にスロット223を有する。ハウジング210内に一対の絶縁心線200A、200Bの端部をそれぞれ挿入した状態で、このコンタクト220の両端部で各絶縁心線200A、200Bを押圧する。これによりスロット223内に絶縁心線200A、200Bが入り込み、各絶縁心線200A、200Bの被覆が剥離され、絶縁心線内の導体芯線がコンタクト220のスロット223、223内で把持される。両絶縁心線200A、200Bの導体芯線はコンタクト220を介して電気的に接続される。
【0005】
ここで、
図9に示すような圧接コネクタでは、各絶縁心線を一か所でコンタクトのスロットで挟み込むことにより把持しているため、引き抜き耐力が小さく、絶縁心線が抜けてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、より絶縁心線を強固に保持することができる圧接コネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、導体芯線と、導体芯線を包囲する絶縁被覆とをそれぞれ備え、互いに逆向きに配置された対となる絶縁心線を接続する圧接コネクタ装置であって、対となる絶縁心線をそれぞれ対向する側から挿入可能な挿入孔を有するハウジングと、ハウジングに挿入孔に向かって進出可能に配置され、対となる絶縁心線のそれぞれに対応する第1のスロットを有し、対となる絶縁心線の絶縁被覆の一部を剥離して第1のスロット内で導体芯線と導通するように対となる絶縁心線を圧接するように構成されたメインコンタクトと、ハウジングに挿入孔に向かって進出可能に配置され、対となる絶縁心線のそれぞれに対応して設けられ、それぞれ第2のスロットを有し、対となる絶縁心線のそれぞれの絶縁被覆の一部を剥離して第2のスロット内の絶縁心線および絶縁心線内の導体芯線を把持するように構成された対となる把持部材と、を備え、対となる絶縁心線を挿入孔内に挿入した状態で、ハウジングに配置されたメインコンタクト及び把持部材を押圧することにより、絶縁心線を電気的に接続するとともに絶縁心線を保持する、ことを特徴とする圧接コネクタ装置が提供される。
上記の態様によれば、対となる把持部材により、絶縁心線が圧接されるため、複数個所で各絶縁心線および絶縁心線内の導体芯線が保持され、より強固に絶縁心線を固定することができる。また、メインコンタクトと把持部材とを用いて圧接しているため、複数回に分割して圧接することで一回の圧接作業で必要な押圧力が小さくなり、作業員が容易に圧接作業を行うことができる。
【0008】
本発明の一態様によれば、ハウジングは、対となる絶縁心線をそれぞれ対向する側から挿入可能な挿入孔と、メインコンタクトが押圧された際に、メインコンタクトが対となる絶縁心線の絶縁被覆の一部を剥離して第1のスロット内に導体芯線が位置するようにメインコンタクトを案内するメインコンタクトガイド孔と、把持部材が押圧された際に、把持部材が対応する絶縁心線の絶縁被覆の一部を剥離して第2のスロット内に導体芯線が位置するように把持部材を案内する把持部材ガイド孔と、を有する。
上記の態様によれば、コンタクト及び把持部材が、それぞれハウジングのメインコンタクトガイド孔及び把持部材ガイド孔により案内されるため、正確に絶縁心線の接続を行うことができる。
【0009】
本発明の一態様によれば、対となる把持部材はそれぞれ、複数の第2のスロットを有し、各把持部材は複数の位置において絶縁心線を把持する。
上記の態様によれば、把持部材が複数の第2のスロットを有することにより、各絶縁心線は3か所以上で圧接される。これにより、圧着スリーブにより絶縁心線を接続した場合と同等あるいはそれ以上の引張強度を確保することができる。
【0010】
本発明の一態様によれば、メインコンタクトコンタクトの第1のスロットが形成された面と、把持部材の第2のスロットが形成された面とは、略同形状である。
上記の態様によれば、同形状の部材により圧接を行うことができ、各圧接部における引張抵抗を均一化することができるととともに、圧接に必要な力を均一化することができる。
【0011】
本発明の一態様によれば、メインコンタクト及び把持部材は、同じ導電性材料により形成されている。
上記の態様によれば、同じ材料の部材により圧接を行うことができ、各圧接部における引張抵抗を均一化することができるととともに、製造の手間を低減できる。
【0012】
本発明の一態様によれば、導体芯線が絶縁被覆により包囲された対となる絶縁心線を上記のコネクタ装置により接続した接続構造であって、メインコンタクトにより対となる絶縁心線をそれぞれ保持するとともに対となる絶縁心線の導体芯線が電気的に接続され、各把持部材により対となる絶縁心線をそれぞれが把持されている、ことを特徴とする絶縁心線の接続構造が提供される。
【0013】
本発明の一態様によれば、圧接コネクタ装置を用いて対となる絶縁心線を接続する方法であって、圧接コネクタ装置は、対となる絶縁心線をそれぞれ対向する側から挿入可能な挿入孔を有するハウジングと、ハウジングに挿入孔に向かって進出可能に配置され、対となる絶縁心線のそれぞれに対応する第1のスロットを有するメインコンタクトと、ハウジングに挿入孔に向かって進出可能に配置され、対となる絶縁心線のそれぞれに対応して設けられた把持部材と、を備え、挿入孔に対となる絶縁心線を挿入するステップと、ハウジングに配置されたメインコンタクトを治具により押圧して、対となる絶縁心線を圧接するステップと、ハウジングに配置された把持部材のそれぞれを治具により押圧して、各把持部材により対となる絶縁心線をそれぞれ把持するステップと、を含む、絶縁心線接続方法が提供される。
【0014】
本発明の一態様によれば、圧接コネクタ装置を用いて対となる絶縁心線を接続する方法であって、圧接コネクタ装置は、対となる絶縁心線をそれぞれ対向する側から挿入可能な挿入孔を有するハウジングと、ハウジングに挿入孔に向かって進出可能に配置され、対となる絶縁心線のそれぞれに対応する第1のスロットを有するメインコンタクトと、ハウジングに挿入孔に向かって進出可能に配置され、対となる絶縁心線のそれぞれに対応して設けられた把持部材と、を備え、挿入孔に一方の絶縁心線を挿入するステップと、ハウジングに配置された一方の把持部材を治具により押圧して、一方の把持部材により一方の絶縁心線を把持するステップと、挿入孔に他方の絶縁心線を挿入するステップと、ハウジングに配置されたメインコンタクトを治具により押圧して、対となる絶縁心線を圧接するステップと、ハウジングに配置された他方の把持部材を治具により押圧して、他方の把持部材により他方の絶縁心線を把持するステップと、を含む、絶縁心線接続方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、より絶縁心線を強固に保持することができる圧接コネクタ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態による圧接コネクタ装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による圧接コネクタ装置を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態による圧接コネクタのメインコンタクト及び把持部材のみを示す斜視図である。
【
図4A】第1実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための斜視図である。
【
図4B】第1実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための斜視図である。
【
図4C】第1実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための斜視図である。
【
図4D】第1実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための斜視図である。
【
図4E】第1実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための斜視図である。
【
図5A】第1実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための縦断面である。
【
図5B】第1実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための縦断面である。
【
図5C】第1実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための縦断面である。
【
図5D】第1実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための縦断面である。
【
図5E】第1実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための縦断面である。
【
図6】本発明の第2実施形態による圧接コネクタ装置を示す斜視図である。
【
図7】コンタクトの圧接用スロット2か所にそれぞれ絶縁心線を同時に圧接する場合の移動距離と押圧力との関係を示すグラフである。
【
図8】スロットを配備したコンタクトの数と引き抜き耐力との関係を示すグラフである。。
【
図9】圧接コネクタ装置により絶縁心線同士を接続する様子を示す模式図である。
【
図10】
図9に示す圧接コネクタ装置に用いられているコンタクトを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による圧接コネクタ装置、及び、絶縁心線接続方法の一実施形態を、図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下の説明では、ハウジングの蓋部が開口する方向を上方とし、ハウジングの底部が位置する方向を下方として説明するが、本実施形態の圧接コネクタ装置は、蓋部が上方に位置するような姿勢で使用することは必須ではなく、蓋部が側方や下方に位置するような姿勢で使用してもよい。
【0018】
図1及び
図2は、本発明の第1実施形態による圧接コネクタ装置を示し、
図1は斜視図、
図2は断面図である。また、
図3は、第1実施形態による圧接コネクタ装置のメインコンタクト及び把持部材のみを示す斜視図である。
図1及び
図2に示すように、圧接コネクタ装置1は、ハウジング10と、メインコンタクト20と、一対の把持部材30(30A、30B)と、を有する。本実施形態の圧接コネクタ装置1は、導体芯線と、導体芯線の周りに設けられた絶縁被覆とを有する一対の絶縁心線100A、100Bを同軸で接続するための装置である。以下の説明では、一対の絶縁心線を接続する方向を軸方向という。
【0019】
メインコンタクト20は、導電性材料により形成され、側面視においてU字型に形成されている。メインコンタクト20は、水平方向に延びる矩形板状の基部21と、基部21の両端から基部21に対して垂直方向に延びる一対の圧接部22とを有する。基部21及び圧接部22の幅及び厚さは一定である。
【0020】
圧接部22は互いに平行であり、第1のスロット23が形成されている。スロット23は幅方向の中央に下縁から上方に向かって所定の長さにわたって形成されている。また、本実施形態では、スロット23の幅は一定となっているが、スロット23の底部(
図3における上方)に向かって幅が狭くなるように形成してもよい。あるいはスロットに絶縁心線を挿入した時に変形するスロットの広がり分まで、スロットの底部を広くしておくことも可能である。そして、スロット23の幅は少なくとも一部において(本実施形態では全体において)、接続される絶縁心線の導体芯線の直径よりも狭くなっている。
【0021】
把持部材30は、メインコンタクト20と同じ導電性材料により形成され、側面視においてU字型に形成されている。メインコンタクト20及び把持部材30を形成する材料としては、本実施形態では、導電性材料、例えば、C5191-H(リン青銅)などの銅合金を用いることができる。さらに、把持部材30を構成する材料は導電性材料に限られない。なお、メインコンタクト20及び把持部材30を形成する材料は同一であることが好ましいが、導体芯線よりも十分に硬い材料であれば、異なる材料を用いてもよい。把持部材30は、水平方向に延びる矩形板状の基部31と、基部31の両端から基部31に対して垂直方向に延びる一対の圧接部32とを有する。基部31及び圧接部32の幅及び厚さは一定である。メインコンタクト20及び把持部材30のスロットの幅は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0022】
把持部材30の圧接部32の形状は、メインコンタクト20の圧接部22の形状と同じである。把持部材30の圧接部32は互いに平行であり、第2のスロット33が形成されている。スロット33は幅方向の中央に下縁から上方に向かって所定の長さにわたって形成されている。また、本実施形態では、スロット33の幅は一定となっているが、スロット33の底部(
図2における上方)に向かって幅が狭くなるように形成してもよい。あるいはスロットに絶縁心線を挿入した時に変形するスロットの広がり分まで、スロットの底部を広くしておくことも可能である。そして、スロット33の幅は少なくとも一部において(本実施形態では全体において)接続される絶縁心線の導体芯線の直径よりも狭くなっている。
【0023】
なお、本実施形態では、把持部材30が一対の圧接部32を有し、2つのスロット33を有している場合について説明したが、これに限らず、3つ以上の圧接部32を設けて3つ以上のスロット33を設けてもよい。
【0024】
ハウジング10は、ハウジング10は軸方向の中央面に対して左右対称な形状になっている。ハウジング10は、絶縁心線とメインコンタクト20及び把持部材30を位置合わせする。ハウジング10は、収容部40と、収容部40の上面の一方の縁に回動可能に接続された蓋部50とを有する。ハウジング10は例えばポリプロピレンなどの樹脂を射出成型することにより製造することができる。
【0025】
収容部40は、軸方向に長尺な直方体状であり、絶縁心線を挿入するための一対の絶縁心線挿入孔41を有する。一対の絶縁心線挿入孔41は、収容部40の軸方向両端面に開口し、収容部40の軸方向中央まで内方に向かって延びている。絶縁心線挿入孔41は一対の絶縁心線を対向する側からそれぞれ挿入可能である。一対の絶縁心線挿入孔41の間には仕切り板42が位置し、仕切り板42により各絶縁心線挿入孔41が仕切られている。収容部40の軸方向両側面にはガイド筒43が立設されている。ガイド筒43は円筒状であり、内部空間に絶縁心線挿入孔41が連続している。
【0026】
各ガイド筒43の側面には、片持ち式の干渉部43Aが形成されている。干渉部43Aは先端側が絶縁心線挿入孔41内に進出している。これにより、絶縁心線挿入孔41に挿入された絶縁心線100A、100Bを干渉部43Aにより仮固定することができる。
【0027】
また、収容部40の仕切り板42の軸方向両側には、矩形状に形成された監視孔44が形成されている。この監視孔44は上面に開口している。監視孔44の内部空間は絶縁心線挿入孔41と連通している。また、収容部40の前面の凹部40Aには覗き穴40Bが形成されており、この覗き穴40Bは絶縁心線挿入孔41と連通している。
【0028】
また、収容部40の監視孔44から外方に向かって、それぞれ第1の圧接ガイド孔45(メインコンタクトガイド孔)、第2の圧接ガイド孔46(把持部材ガイド孔)、及び、第3の圧接ガイド孔47(把持部材ガイド孔)を有する。第1の圧接ガイド孔45、第2の圧接ガイド孔46、及び、第3の圧接ガイド孔47は、それぞれ平板状の空間であり、絶縁心線挿入孔41と連通している。第2の圧接ガイド孔46及び第3の圧接ガイド孔47の厚さ及び幅はそれぞれ把持部材30の圧接部32の厚さ及び幅と略等しく、第2の圧接ガイド孔46及び第3の圧接ガイド孔47の間隔は、各把持部材30の圧接部32の間隔に等しい。これにより、第2の圧接ガイド孔46及び第3の圧接ガイド孔47内に把持部材30の圧接部32を挿入可能になっている。
【0029】
また、第1の圧接ガイド孔45の厚さ及び幅はそれぞれメインコンタクト20の圧接部22の厚さ及び幅と略等しく、一対の圧接ガイド孔45の間隔はメインコンタクト20の圧接部22の間隔に等しい。これにより、第1の圧接ガイド孔45内にメインコンタクト20の圧接部22を挿入可能になっている。
また、収容部40の前方(
図1における右斜め下)の側面には、板状の凹部40Aが形成されている。この凹部40Aは上下方向に全高さにわたって形成されている。
【0030】
蓋部50は、長方形状の板部51と、板部51の一方の長辺の長さ方向中央に形成されたフラップ部52と、を有する。
【0031】
板部51は、長方形の板状であり、その幅及び長さは収容部40の上面の幅及び長さと等しい。フラップ部52は板部51に対して垂直に立設されている。フラップ部52の形状は、収容部40の凹部40Aの形状に対応しており、フラップ部52の長さ及び高さは収容部40の長さ及び高さと等しく、フラップ部52の厚さは凹部40Aの深さと等しい。フラップ部52の板部51と反対側の端部には垂直に立設された係合部53が形成されている。
【0032】
以下、第1実施形態の圧接コネクタ装置1を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明する。
図4A~
図4E及び
図5A~
図5Eは第1実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための図であり、
図4A~
図4Eは斜視図、
図5A~
図5Eは縦断面図である。
【0033】
図4A及び
図5Aに示すように、絶縁心線100A、100Bの接続を開始する前の状態では、蓋部50の板部51が収容部40の上面に対して180度開いた状態となっており、メインコンタクト20の圧接部22の先端が第1の圧接ガイド孔45内に挿入され、各把持部材30の圧接部32の先端がそれぞれ第2の圧接ガイド孔46及び第3の圧接ガイド孔47に挿入された状態となっている。なお、この状態で、メインコンタクト20の圧接部22の先端、及び、把持部材30の圧接部32の先端は、絶縁心線挿入孔41まで到達していない。この状態で、一方の絶縁心線挿入孔41に一方の絶縁心線100Aを先端が仕切り板42に当接するまで挿入する。このように絶縁心線挿入孔41に挿入された絶縁心線100A、100Bは、干渉部43Aにより仮固定される。そして、一方の絶縁心線100Aが十分な深さまで挿入されたことを監視孔44から確認する。
【0034】
次に、
図4B及び
図5Bに示すように、一方の把持部材30を、治具を用いて、押圧してハウジング10の収容部40内に押し込む。把持部材30を押し込むことにより、把持部材30の一対の圧接部32のスロット33の両側の部分が絶縁心線100Aの被覆を剥離する。これにより、一方の絶縁心線100Aの導体芯線が露出する。そして、さらに把持部材30を押し込むことにより、一方の絶縁心線100Aの露出した導体芯線の側部が、把持部材30のスロット33内で挟み込まれる。このようにして、一方の絶縁心線100Aの被覆が圧接部32に係合するとともに、絶縁心線100Aの導体芯線がスロット33内で把持部材30により把持される。
【0035】
次に、
図4C及び
図5Cに示すように、他方の絶縁心線挿入孔41に他方の絶縁心線100Bを先端が仕切り板42に当接するまで挿入する。そして、一方の絶縁心線100Bが十分な深さまで挿入されたことを監視孔44から確認する。
【0036】
次に、
図4D及び
図4Dに示すように、他方の把持部材30を、治具を用いて、押圧してハウジング10の収容部40内に押し込む。把持部材30を押し込むことにより、把持部材30の一対の圧接部32のスロット33の両側の部分が絶縁心線100Bの被覆を剥離する。これにより、他方の絶縁心線100Bの導体芯線が露出する。そして、さらに把持部材30を押し込むことにより、他方の絶縁心線100Bの露出した導体芯線の側部が、把持部材30のスロット33内で挟み込まれる。このようにして、他方の絶縁心線100Bの被覆が圧接部32に係合するとともに、絶縁心線100Bの導体芯線がスロット33内で把持部材30により把持される。
【0037】
次に、メインコンタクト20を、治具を用いて、押圧してハウジング10の収容部40内に押し込む。メインコンタクト20を押し込むことにより、メインコンタクト20の一対の圧接部22のスロット23の両側の部分が一方及び他方の絶縁心線100A、100Bの被覆を剥離する。これにより、一方及び他方の絶縁心線100A、100Bの導体芯線が露出する。そして、さらにメインコンタクト20を押し込むことにより、一方及び他方の絶縁心線100A、100Bの露出した導体芯線が、メインコンタクト20のスロット23内で挟み込まれる。このようにして、一方及び他方の絶縁心線100A、100Bの被覆が圧接部22に係合するとともに、一方及び他方の絶縁心線100A、100Bの導体芯線がそれぞれスロット23内でメインコンタクト20により把持される。さらに、一方及び他方の絶縁心線100A、100Bの導体芯線が、それぞれメインコンタクト20のスロット23の内周面と当接するため、メインコンタクト20を介して電気的に接続される。このように、メインコンタクト20による圧接を行った後、覗き穴40Bを通じて一方の絶縁心線100Aと他方の絶縁心線100Bが正しく配置され、メインコンタクト20により圧接されていることを確認する。
【0038】
次に、
図4E及び
図5Eに示すように、蓋部50を板部51が収容部40の上面に当接するまで回動させる。これにより、フラップ部52が収容部40の前面の凹部40A内に位置し、係合部53が収容部40の下面の縁に係合する。その結果、収容部40の上面が蓋部50により閉鎖され、蓋部50の収容部40に対する回動が規制される。このように蓋部50を閉じることにより、収容部40の上面及び覗き穴40Bが閉じられる。
以上により一方の絶縁心線100Aと他方の絶縁心線100Bの接続構造が形成される。
【0039】
なお、一方の絶縁心線100Aと他方の絶縁心線100Bの接続方法は、上記の方法に限られない。
例えば、一方の絶縁心線100Aと他方の絶縁心線100Bの両方を一対の絶縁心線挿入孔41にそれぞれ挿入し、ハウジング10に配置されたメインコンタクト20を治具により押圧して、一方の絶縁心線100Aと他方の絶縁心線100Bを圧接し、ハウジング10に配置された把持部材30のそれぞれを治具により押圧して、各把持部材30により記対となる一方の絶縁心線100Aと他方の絶縁心線100Bをそれぞれ把持してもよい。
【0040】
本実施形態によれば、メインコンタクト20に加えて、対となる把持部材30により、各絶縁心線100A、100Bが圧接されるため、複数個所で各絶縁心線100A、100Bが保持され、より強固に絶縁心線を固定することができる。また、メインコンタクト20と把持部材30とを用いて圧接しているため、一回の圧接作業で必要な押圧力が小さくなり、作業員が容易に圧接作業を行うことができる。特に、後述するように、一か所のスロットに絶縁心線を圧接するのに必要な押圧力は400N程度であるため、メインコンタクト20及び2か所の把持部材30全てを一括同時に押圧するのに必要な押圧力は2400N程度と大きな数値となり、これを分割して押圧することが可能となることで、作業員が治具により容易に作業できる。
【0041】
また、本実施形態によれば、ハウジング10は、メインコンタクト20を案内する第1の圧接ガイド孔45と、把持部材30を案内する第2の圧接ガイド孔46、及び、第3の圧接ガイド孔47と、を有する。このような構成によれば、メインコンタクト20及び把持部材30が、それぞれハウジング10の第1の圧接ガイド孔45、第2の圧接ガイド孔46、及び、第3の圧接ガイド孔47により案内されるため、正確に絶縁心線の接続を行うことができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、把持部材30はそれぞれ2つのスロット33を有し、各把持部材30は複数の位置において絶縁心線100A、100Bを把持する。このように把持部材30が2つのスロット33を有することにより、各絶縁心線は3か所以上で圧接される。これにより、後述する実験で確かめた通り、圧着スリーブにより絶縁心線を接続した場合と同等あるいはそれ以上の引張強度を確保することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、メインコンタクト20のスロット23が形成された圧接部22と、把持部材30のスロット33が形成された圧接部32とは、略同形状である。これにより、同形状の部材により圧接を行うことができ、各圧接部22、32における引張抵抗を均一化することができるととともに、圧接に必要な力を均一化することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、メインコンタクト20及び把持部材30は、同じ導電性材料により形成されている。これにより、同じ材料の部材により圧接を行うことができ、各圧接部22、32における引張抵抗を均一化することができるととともに、製造の手間を低減できる。
【0045】
以下、本発明の第2実施形態による圧接コネクタ装置を説明する。以下の説明では、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図6は、本発明の第2実施形態による圧接コネクタ装置を示す斜視図である。
図6に示すように、第2実施形態による圧接コネクタ装置101は把持部材130が板状であり、ハウジング110の収容部140が第3の圧接ガイド孔47を備えていない点が第1実施形態と異なっている。
【0046】
第2実施形態による把持部材130は、メインコンタクト20と同じ導電性材料により形成され、板状に形成されている。
把持部材130にはスロット133が形成されている。スロット133は幅方向の中央に下縁から上方に向かって所定の長さにわたって形成されている。また、スロット133の幅は一定となっている。また、本実施形態では、スロット133の幅は一定となっているが、スロット133の底部(
図6における上方)に向かって幅が狭くなるように形成してもよい。そして、スロット133の幅は少なくとも一部において(本実施形態では全体において)接続される絶縁心線の導体芯線の直径よりも狭くなっている。
【0047】
第2実施形態による圧接コネクタ装置101を用いた接続構造の構築方法は第1実施形態と同様である。第2実施形態による圧接コネクタ装置101によっても、一方の絶縁心線100Aと他方の絶縁心線100Bとを導体芯線同士が電気的に接続された状態で強固に接続することができる。
第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0048】
なお、発明者らは、板状のスロットを有する圧接部材で絶縁心線を圧接するために必要な力を実験的に検討した。本実験では、メインコンタクト20及び把持部材30の圧接部22、32と同じ様にスロット23、33を有する板状のコンタクトを銅合金(C2680-EH)により作成した。また、コンタクト材の厚みは0.8mmを使用し、スロットの幅は0.6mmとした。このようなスロットを持ったコンタクトにより断面積2mm2の導体芯線と絶縁被覆とを有する絶縁心線を圧接し、コンタクトの押圧方向の移動距離と、移動するのに必要な押圧力を測定した。
【0049】
図7は、コンタクトの圧接用スロット2か所にそれぞれ絶縁心線を同時に圧接する場合の移動距離と押圧力との関係を示すグラフである。同図に示すように、一般的な断面積2mm
2の導体芯線を有する被覆絶縁心線2本を、圧接部材により圧接する際には一か所あたり一つの圧接部材に設けた2か所の圧接部材により同時に圧接する際には800N程度の押圧力が必要になることが確認できた。
【0050】
また、発明者らは、絶縁心線への引き抜きに対する十分な耐力を持たせるのに必要なスロットを配備したコンタクトによる圧接箇所の数を実験的に検討した。本実験では、メインコンタクト20及び把持部材30の圧接部22、32と同じ様にスロット23、33を有する板状のコンタクトを銅合金(C2680-EH)により作成した。また、コンタクト材厚みを0.8mm、スロットの幅は0.6mmとした。このようなコンタクトを1枚、2枚、3枚用いて断面積2mm2の導体芯線と絶縁被覆とを有する絶縁心線を圧接した各場合について、絶縁心線が保持できなくなる引き抜き耐力を測定した。
【0051】
図8は、スロットを配備したコンタクトの数と引き抜き耐力との関係を示すグラフである。また、比較対象として、圧着スリーブにより絶縁心線を接続した場合の引き抜き耐力をRとして示す。同図に示すように、3枚のコンタクトにより絶縁心線を圧接することにより、圧着スリーブを用いた場合と同等の引き抜き耐力が得られることを確認できた。
【符号の説明】
【0052】
1 :圧接コネクタ装置
10 :ハウジング
20 :メインコンタクト
21 :基部
22 :圧接部
23 :スロット
30 :把持部材
31 :基部
32 :圧接部
33 :スロット
40 :収容部
40A :凹部
40B :覗き穴
41 :絶縁心線挿入孔
42 :仕切り板
43 :ガイド筒
43A :干渉部
44 :監視孔
45 :第1の圧接ガイド孔
46 :第2の圧接ガイド孔
47 :第3の圧接ガイド孔
50 :蓋部
51 :板部
52 :フラップ部
53 :係合部
100A :絶縁心線
100B :絶縁心線
101 :圧接コネクタ装置
110 :ハウジング
130 :把持部材
133 :スロット
140 :収容部