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特開2024-168467圧接コネクタ装置、絶縁心線の接続構造、及び、絶縁心線の接続方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168467
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】圧接コネクタ装置、絶縁心線の接続構造、及び、絶縁心線の接続方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/2452 20180101AFI20241128BHJP
   H01R 4/2445 20180101ALI20241128BHJP
   H01R 43/01 20060101ALI20241128BHJP
   H01R 4/2456 20180101ALI20241128BHJP
【FI】
H01R4/2452
H01R4/2445
H01R43/01 A
H01R4/2456
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085176
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】518241849
【氏名又は名称】コーニング リサーチ アンド ディヴェロップメント コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】大池 知保
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 広幸
(72)【発明者】
【氏名】山内 孝哉
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 明彦
【テーマコード(参考)】
5E012
5E051
【Fターム(参考)】
5E012AA08
5E012AA09
5E012AA23
5E012AA31
5E012AA41
5E051HA07
(57)【要約】
【課題】より絶縁心線を強固に保持することができる圧接コネクタ装置を提供する。
【解決手段】導体芯線と、導体芯線を包囲する絶縁被覆とをそれぞれ備え、互いに逆向きに並行配置された一方の絶縁心線と他方の絶縁心線を接続する圧接コネクタ装置1は、一方の絶縁心線及び他方の絶縁心線が延びる方向に離間して設けられた一方のコンタクト20及び他方のコンタクト40を備え、一方のコンタクト20は、一方の絶縁心線に対応する一方の第1のスロット、他方の絶縁心線に対応する他方の第3のスロット、及び、他方の絶縁心線の他方の第3のスロットに対して先端側に設けられた他方のカッタを有し、他方のコンタクト40は、他方の絶縁心線に対応する他方の第1のスロット、一方の絶縁心線に対応する一方の第3のスロット、及び、一方の絶縁心線の一方の第3のスロットに対して先端側に設けられた一方のカッタ、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体芯線と、前記導体芯線を包囲する絶縁被覆とをそれぞれ備え、互いに逆向きに並行配置された一方の絶縁心線と他方の絶縁心線を接続する圧接コネクタ装置であって、
前記一方の絶縁心線及び前記他方のケーブルが延びる方向に離間して設けられた一方のコンタクト及び他方のコンタクトを備え、
前記一方のコンタクトは、
前記一方の絶縁心線を圧接するための一方の第1のスロット、
前記他方の絶縁心線を圧接するための他方の第3のスロット、及び、
前記他方の絶縁心線の端部を切断するための他方のカッタを有し、
前記他方のコンタクトは、
前記他方の絶縁心線を圧接するための他方の第1のスロット、
前記一方の絶縁心線を圧接するための一方の第3のスロット、及び、
前記一方の絶縁心線の端部を切断するための一方のカッタ、
を有し、
前記一方のコンタクト及び前記他方のコンタクトは、前記圧接コネクタ装置に前記絶縁心線が挿入可能な準備位置から、前記コンタクトと前記導体芯線とが電気的に接続される接続位置へ移動可能にハウジングに保持されている、ことを特徴とする圧接コネクタ装置。
【請求項2】
前記一方のコンタクトは、
前記一方の絶縁心線を圧接するための一方の第2のスロットをさらに有し、
前記他方のコンタクトは、
前記他方の絶縁心線を圧接するための他方の第2のスロットをさらに有する、
請求項1に記載の圧接コネクタ装置。
【請求項3】
前記一方のコンタクトは、
前記他方の第3のスロット及び前記一方の第2のスロットが形成された一方の第1の板状部と、
前記他方のカッタ及び前記一方の第1のスロットが形成された一方の第2の板状部と、
前記一方の第1の板状部と前記一方の第2の板状部とを連結する一方の連結部とを有し、
前記他方のコンタクトは、
前記一方の第3のスロット及び前記他方の第2のスロットが形成された他方の第1の板状部と、
前記一方のカッタ及び前記他方の第1のスロットが形成された他方の第2の板状部と、
前記他方の第1の板状部と前記他方の第2の板状部とを連結する他方の連結部とを有する、
請求項2に記載の圧接コネクタ装置。
【請求項4】
前記一方のコンタクトと、前記他方のコンタクトとは同形状であり、
前記一方のコンタクト及び前記他方のコンタクトは、前記一方の第1のスロット、前記一方の第2のスロット、前記一方の第3のスロット及び前記一方のカッタが一直線上に位置するとともに、前記他方の第1のスロット、前記他方の第2のスロット、前記他方の第3のスロット及び前記他方のカッタが一直線上に位置するように配置されている、
請求項3に記載の圧接コネクタ装置。
【請求項5】
さらに、ハウジングを備え、
前記ハウジングは、
前記一方の絶縁心線を収容する一方の挿入孔と、
前記一方の挿入孔と逆向きに延び、前記他方の絶縁心線を収容する他方の挿入孔と、
前記一方の挿入孔と連通し、前記一方の第1の板状部を案内する一方の第1のガイド孔と、
前記一方の挿入孔と連通し、前記一方の第2の板状部を案内する一方の第2のガイド孔と、
前記他方の挿入孔と連通し、前記他方の第1の板状部を案内する他方の第1のガイド孔と、
前記他方の挿入孔と連通し、前記他方の第2の板状部を案内する他方の第2のガイド孔と、
を有する、
請求項3に記載の圧接コネクタ装置。
【請求項6】
導体芯線が絶縁被覆により包囲された対となる絶縁心線を請求項1~5のいずれか1項に記載の圧接コネクタ装置により接続した接続構造であって、
前記一方のコンタクトにより前記対となる絶縁心線をそれぞれ保持するとともに前記対となる絶縁心線の前記導体芯線が電気的に接続され、
前記他方のコンタクトにより前記対となる絶縁心線をそれぞれ保持するとともに前記対となる絶縁心線の前記導体芯線が電気的に接続される、ことを特徴とする絶縁心線の接続構造。
【請求項7】
導体芯線と、前記導体芯線を包囲する絶縁被覆とをそれぞれ備え、互いに逆向きに並行配置された一方の絶縁心線と他方の絶縁心線とを圧接コネクタ装置を用いて接続する方法であって、
前記圧接コネクタ装置は、
前記一方の絶縁心線及び前記他方の絶縁心線が延びる方向に離間して設けられた一方のコンタクト及び他方のコンタクトを備え、
前記一方のコンタクトは、一方の第1のスロット、他方の第3のスロット、及び、他方のカッタを有し、
前記他方のコンタクトは、他方の第1のスロット、一方の第3のスロット、及び、一方のカッタを有し、
前記一方のコンタクトを押圧し、前記圧接コネクタ装置に前記絶縁心線が挿入可能な準備位置からハウジング内に向けて移動させ、
これにより、
前記一方の絶縁心線の絶縁被覆の一部を剥離して前記一方の第1のスロット内で前記導体芯線と導通させ、
前記他方の絶縁心線の絶縁被覆の一部を剥離して前記他方の第3のスロット内で前記導体芯線と導通させ、
前記他方の絶縁心線の端部を前記他方のカッタで切断する、一方のコンタクト押圧ステップと、
前記他方のコンタクトを押圧し、前記圧接コネクタ装置に前記絶縁心線が挿入可能な準備位置からハウジング内に向けて移動させ、これにより、
前記他方の絶縁心線の絶縁被覆の一部を剥離して前記他方の第1のスロット内で前記導体芯線と導通させ、
前記一方の絶縁心線の絶縁被覆の一部を剥離して前記一方の第3のスロット内で前記導体芯線と導通させ、
前記一方の絶縁心線の端部を前記一方のカッタで切断する、他方のコンタクト押圧ステップと、
を含む、絶縁心線接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧接コネクタ装置、絶縁心線の接続構造、及び、絶縁心線の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導体芯線と、導体芯線の周りに被覆された絶縁被覆とを備えた絶縁心線と端子の接続方法や、このような絶縁心線同士の接続方法として、IDCコネクタ(Insulation Displacement Connector:圧接コネクタ)が広く用いられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58-214283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧接コネクタ装置を用いて、一対の平行に逆向きに延びる絶縁心線を接続することが行われている。図12は、圧接コネクタ装置により一対の平行に逆向きに延びる絶縁心線を接続する様子を示す模式図である。また、図13は、図12に示す圧接コネクタ装置に用いられているコンタクトを示す斜視図である。圧接コネクタ装置201は、導電性材料からなるコンタクト220と、コンタクト220を収容するハウジング210と、を有する。コンタクト220は平板状であり、幅方向に間隔をあけて一対のスロット223が形成されている。ハウジング210内に一対の絶縁心線200A、200Bの端部をそれぞれ挿入した状態で、このコンタクト220の両端部で各絶縁心線200A、200Bを押圧する。これによりスロット223内に絶縁心線200A、200Bが入り込み、各絶縁心線200A、200Bの被覆が剥離され、導体芯線がコンタクト220のスロット223内で把持される。両絶縁心線200A、200Bの導体芯線はコンタクト220を介して電気的に接続される。
【0005】
ここで、図12に示すような圧接コネクタでは、各絶縁心線を一か所でコンタクトのスロットで挟み込むことにより把持しているため、引き抜き耐力が小さく、絶縁心線が抜けてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、より絶縁心線を強固に保持することができる圧接コネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、導体芯線と、導体芯線を包囲する絶縁被覆とをそれぞれ備え、互いに逆向きに並行配置された一方の絶縁心線と他方の絶縁心線を接続する圧接コネクタ装置であって、一方の絶縁心線及び他方の絶縁心線が延びる方向に離間して設けられた一方のコンタクト及び他方のコンタクトを備え、一方のコンタクトは、一方の絶縁心線を圧接するための一方の第1のスロット、他方の絶縁心線を圧接するための他方の第3のスロット、及び、他方の絶縁心線の端部を切断するための他方のカッタを有し、他方のコンタクトは、他方の絶縁心線を圧接するための他方の第1のスロット、一方の絶縁心線を圧接するための一方の第3のスロット、及び、一方の絶縁心線の端部を切断するための一方のカッタ、を有し、一方のコンタクト及び他方のコンタクトは、圧接コネクタ装置に絶縁心線が挿入可能な準備位置から、コンタクトと導体芯線とが電気的に接続される接続位置へ移動可能に前記ハウジングに保持されている、ことを特徴とする圧接コネクタ装置が提供される。
上記の態様によれば、一方の絶縁心線が一方の第1のスロット及び一方の第3のスロットにより圧接され、他方の絶縁心線が他方の第1のスロット及び他方の第3のスロットにより圧接されるため、より強固に絶縁心線を保持することができる。さらに、一方の絶縁心線及び他方の絶縁心線の端部が一方のカッタ及び他方のカッタで切断されるため、作業工程を減らすことにより作業性を向上することができる。さらに、複数のコンタクトを用いて絶縁心線の圧接及び切断を分けて行っているため、圧接する際にコンタクトに作用させる押圧力を減らすことができる。
【0008】
本発明の一態様によれば、一方のコンタクトは、一方の絶縁心線を圧接するための一方の第2のスロットをさらに有し、他方のコンタクトは、他方の絶縁心線を圧接するための他方の第2スロットをさらに有する。
上記の態様によれば、各絶縁心線が3か所で圧接されるため、圧着スリーブと同程度の引張耐力を持たせることができる。
【0009】
本発明の一態様によれば、一方のコンタクトは、他方の第3のスロット及び一方の第2のスロットが形成された一方の第1の板状部と、他方のカッタ及び一方の第1のスロットが形成された一方の第2の板状部と、一方の第1の板状部と一方の第2の板状部とを連結する一方の連結部とを有し、他方のコンタクトは、一方の第3のスロット及び他方の第2のスロットが形成された他方の第1の板状部と、一方のカッタ及び他方の第1のスロットが形成された他方の第2の板状部と、他方の第1の板状部と他方の第2の板状部とを連結する他方の連結部とを有する。
上記の態様によれば、各コンタクトに3つのスロットと、1つのカッタが配置されることとなる。これにより、一度に複数の圧接作業と切断作業を行うことができるとともに、スロットを押圧するための力が過度大きくなるのを防止できる。
【0010】
本発明の一態様によれば、一方のコンタクトと、他方のコンタクトとは同形状であり、一方のコンタクト及び他方のコンタクトは、一方の第1のスロット、一方の第2のスロット、一方の第3のスロット及び一方のカッタが一直線上に位置するとともに、他方の第1のスロット、他方の第2のスロット、他方の第3のスロット及び他方のカッタが一直線上に位置するように配置されている。
上記の態様によれば、部材の種類を削減できるとともに、各スロットの保持力を均一化することができる。
【0011】
本発明の一態様によれば、さらに、ハウジングを備え、ハウジングは、一方の絶縁心線を収容する一方の挿入孔と、一方の挿入孔と逆向きに延び、他方の絶縁心線を収容する他方の挿入孔と、一方の挿入孔と連通し、一方の第1の板状部を案内する一方の第1のガイド孔と、一方の挿入孔と連通し、一方の第2の板状部を案内する一方の第2のガイド孔と、他方の挿入孔と連通し、他方の第1の板状部を案内する他方の第1のガイド孔と、他方の挿入孔と連通し、他方の第2の板状部を案内する他方の第2のガイド孔と、を有する。
上記の態様によれば、各板状部がガイド孔により案内されるため、精度良くスロット内で絶縁心線を圧接することができる。
【0012】
本発明の一態様によれば、導体芯線が絶縁被覆により包囲された対となる絶縁心線を上記の圧接コネクタ装置により接続した接続構造であって、一方のコンタクトにより対となる絶縁心線をそれぞれ保持するとともに対となる絶縁心線の導体芯線が電気的に接続され、他方のコンタクトにより対となる絶縁心線をそれぞれ保持するとともに対となる絶縁心線の導体芯線が電気的に接続される、ことを特徴とする絶縁心線の接続構造が提供される。
【0013】
本発明の一態様によれば、導体芯線と、導体芯線を包囲する絶縁被覆とをそれぞれ備え、互いに逆向きに並行配置された一方の絶縁心線と他方の絶縁心線とを圧接コネクタ装置を用いて接続する方法であって、圧接コネクタ装置は、一方の絶縁心線及び前記他方の絶縁心線が延びる方向に離間して設けられた一方のコンタクト及び他方のコンタクトを備え、一方のコンタクトは、一方の第1のスロット、他方の第3のスロット、及び、他方のカッタを有し、他方のコンタクトは、他方の第1のスロット、一方の第3のスロット、及び、一方のカッタを有し、一方のコンタクトを押圧し、圧接コネクタ装置に絶縁心線が挿入可能な準備位置からハウジング内に向けて移動させ、これにより、一方の絶縁心線の絶縁被覆の一部を剥離して一方の第1のスロット内で導体芯線と導通させ、他方の絶縁心線の絶縁被覆の一部を剥離して他方の第3のスロット内で導体芯線と導通させ、他方の絶縁心線の端部を他方のカッタで切断する、一方のコンタクト押圧ステップと、他方のコンタクトを押圧し、圧接コネクタ装置に絶縁心線が挿入可能な準備位置からハウジング内に向けて移動させ、これにより、他方の絶縁心線の絶縁被覆の一部を剥離して他方の第1のスロット内で導体芯線と導通させ、一方の絶縁心線の絶縁被覆の一部を剥離して一方の第3のスロット内で導体芯線と導通させ、一方の絶縁心線の端部を一方のカッタで切断する、他方のコンタクト押圧ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より絶縁心線を強固に保持することができる圧接コネクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態による圧接コネクタ装置を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による圧接コネクタ装置を示し、絶縁心線を挿入する一方の絶縁心線挿入孔に沿った鉛直断面図(図3におけるII-II断面図)である。
図3】本発明の一実施形態による圧接コネクタ装置を示し、絶縁心線を挿入する絶縁心線挿入孔に沿った水平断面図(図2におけるIII-III断面図)である。
図4】本実施形態による圧接コネクタ装置の一方のコンタクト及び他方のコンタクトを示す斜視図である。
図5】ハウジングの収容部の上面図である。
図6A】本実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための斜視図である。
図6B】本実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための斜視図である。
図6C】本実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための斜視図である。
図6D】本実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための斜視図である。
図7A】本実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための図2に対応する縦断面図である。
図7B】本実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための図2に対応する縦断面図である。
図7C】本実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための図2に対応する縦断面図である。
図7D】本実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための図2に対応する縦断面図である。
図8A】本実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための図3に対応する水平断面図である。
図8B】本実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための図3に対応する水平断面図である。
図9】圧接用スロット2か所にそれぞれ絶縁心線を同時に圧接する場合の移動距離と押圧力との関係を示すグラフである。
図10】カッタ部材の移動距離と断面積が2mm2の導体芯線をもった絶縁心線2本分を切断する場合の押圧力との関係を示すグラフである。
図11】絶縁心線1本を把持するコンタクトのスロット数と引き抜き耐力との関係を示すグラフである。
図12】圧接コネクタ装置により一対の平行に逆向きに延びる絶縁心線を接続する様子を示す模式図である。
図13図12に示す圧接コネクタ装置に用いられているコンタクトを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の圧接コネクタ装置、及び、絶縁心線の接続方法の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、ハウジングの蓋部が開口する方向を上方とし、ハウジングの底部が位置する方向を下方として説明するが、本実施形態の圧接コネクタ装置は、蓋部が上方に位置するような姿勢で使用することは必須ではなく、蓋部が側方や下方に位置するような姿勢で使用してもよい。
【0017】
図1図3は、本発明の一実施形態による圧接コネクタ装置を示し、図1は斜視図、図2は絶縁心線を挿入する一方の絶縁心線挿入孔に沿った鉛直断面図(図3におけるII-II断面図)、図3は絶縁心線を挿入する絶縁心線挿入孔に沿った水平断面図(図2におけるIII-III断面図)である。図1図3に示すように、圧接コネクタ装置1は、ハウジング10と、一方のコンタクト20と、他方のコンタクト40と、を有する。本実施形態の圧接コネクタ装置1は、導体芯線と、導体芯線の周りに設けられた絶縁被覆とを有する一方の絶縁心線100Aと、他方の絶縁心線100Bとを接続するための装置である。一方の絶縁心線100Aと他方の絶縁心線100Bは互いに逆方向に並行に延びている。なお、並行に延びるとは一方の絶縁心線100Aと他方の絶縁心線100Bとが側方に離間又は密着して配置されている状態をいい、一方の絶縁心線100Aと他方の絶縁心線100Bとが延びる方向が平行であることは必須ではない。
【0018】
図4は、本実施形態による圧接コネクタ装置の一方のコンタクト及び他方のコンタクトを示す斜視図である。図4では下方から一方のコンタクト及び他方のコンタクトを見た状態を示す。図4に示すように、一方のコンタクト20は、導電性材料により形成され、側面視においてU字型に形成されている。一方のコンタクト20は、水平方向に延びる矩形板状の(一方の)基部21と、基部21の一端から基部21に対して垂直方向に延びる(一方の)第1の板状圧接部22と、基部21の他端から基部21に対して垂直方向に延びる(一方の)第2の板状圧接部23とを有する。基部21と、第1の板状圧接部22と、第2の板状圧接部23の幅及び厚さは一定である。
【0019】
一方の第1の板状圧接部22には、一方の絶縁心線100Aに対応する一方の第2のスロット25と、他方の絶縁心線100Bに対応する他方の第3のスロット26とが形成されている。一方の第2の板状圧接部23には、一方の絶縁心線100Aに対応する一方の第1のスロット27と、他方の絶縁心線100Bに対応する他方のカッタ28とが形成されている。
【0020】
また、他方のコンタクト40は、一方のコンタクト20と同じ導電性材料により形成され、同形状である。一方のコンタクト20及び他方のコンタクト40を形成する材料としては、例えば、C5191-H(リン青銅)などの銅合金を用いることができるが導電性材料であればこれに限られない。なお、一方のコンタクト20及び他方のコンタクト40を形成する材料は同一であることが好ましいが、導体芯線よりも十分に硬い材料であれば、異なる材料を用いてもよい。他方のコンタクト40は、側面視においてU字型に形成されている。他方のコンタクト40は、水平方向に延びる矩形板状の(他方の)基部41と、基部41の一端から基部41に対して垂直方向に延びる(他方の)第1の板状圧接部42と、基部41の他端から基部41に対して垂直方向に延びる(他方の)第2の板状圧接部43とを有する。基部41と、第1の板状圧接部42と、第2の板状圧接部43の幅及び厚さは一定である。
【0021】
他方の第1の板状圧接部42には、他方の絶縁心線100Bに対応する他方の第2のスロット45と、一方の絶縁心線100Aに対応する一方の第3のスロット46とが形成されている。他方の第2の板状圧接部43には、他方の絶縁心線100Bに対応する他方の第1のスロット47と、一方の絶縁心線100Aに対応する一方のカッタ48とが形成されている。
【0022】
一方のコンタクト20は、ハウジング10に収容された状態で、第1の板状圧接部22が圧接コネクタ装置1の軸方向中心側に位置するように配置されている。他方のコンタクト40は、ハウジング10に収容された状態で、第1の板状圧接部42が圧接コネクタ装置1の軸方向中心側に位置するように配置されている。
【0023】
また、一方のコンタクト20及び他方のコンタクト40がハウジング10内に配置された状態で、一方のコンタクト20の一方の第1のスロット27及び一方の第2のスロット25と、他方のコンタクト40の一方の第3のスロット46及び一方のカッタ48とが一直線上に位置している。
【0024】
また、一方のコンタクト20及び他方のコンタクト40がハウジング10内に配置された状態で、他方のコンタクト40の他方の第1のスロット47及び他方の第2のスロット45と、一方のコンタクト20の一方の第3のスロット26及び一方のカッタ28とが一直線上に位置している。
【0025】
一方のコンタクト20及び他方のコンタクト40に形成された各スロット25、26、27、45、46、47の形状は同じであり、これらスロット25、26、27、45、46、47の幅は一定となっているが、スロット25、26、27、45、46、47の底部に向かって幅が狭くなるように形成してもよい。あるいはスロット絶縁心線を挿入した時に変形するスロットの広がり分まで、スロットの底部を広くしておくことも可能である。そして、スロット25、26、27、45、46、47の幅は少なくとも一部において(本実施形態では全体において)、接続される絶縁心線の導体芯線の直径よりも狭くなっている。スロット25、26、27、45、46、47の幅は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0026】
ハウジング10は、絶縁心線100A、100Bと一方のコンタクト20及び他方のコンタクト40を位置合わせする。ハウジング10は、収容部60と、収容部60の上面の一方の縁に回動可能に接続された蓋部70とを有する。ハウジング10は例えばポリプロピレンなどの樹脂を射出成型することにより製造することができる。
【0027】
図5はハウジングの収容部の上面図である。収容部60は、軸方向に長尺な直方体状であり、絶縁心線を挿入するための一方の絶縁心線挿入孔61A及び他方の絶縁心線挿入孔61Bを有する。一方の絶縁心線挿入孔61A及び他方の絶縁心線挿入孔61Bは、それぞれ、収容部60の軸方向両端面に開口し、すなわち、収容部60を軸方向に貫通している。これら一方の絶縁心線挿入孔61A及び他方の絶縁心線挿入孔61Bは、収容部60内において連通しており、一方の絶縁心線挿入孔61A及び他方の絶縁心線挿入孔61Bの間には仕切り板62が配置されている。なお、仕切り板62は省略してもよい。収容部60の、一方の絶縁心線挿入孔61Aの絶縁心線が挿入される側(絶縁心線挿入口側)の側面には一方のガイド筒63Aが立設されている。一方のガイド筒63Aは円筒状であり、内部に一方の絶縁心線挿入孔61Aが連続している。一方のガイド筒63Aの手前側(図3における下方)の側面は他方の絶縁心線挿入孔61Bに挿入された他方の絶縁心線100Bと干渉しないように切り欠かれている。また、収容部60の、他方の絶縁心線挿入孔61Bの絶縁心線が挿入される側(絶縁心線挿入口側)の側面には他方のガイド筒63Bが立設されている。他方のガイド筒63Bは円筒状であり、内部に他方の絶縁心線挿入孔61Bが連続している。他方のガイド筒63Bの奥側(図3における上方)の側面は一方の絶縁心線挿入孔61Aに挿入された一方の絶縁心線100Aと干渉しないように切り欠かれている。
【0028】
図5に示すように、収容部60の上面には、軸方向中央から一方の絶縁心線挿入孔61Aの挿入口側(図5に左側)に向かって一方の第1の圧接ガイド孔64Aと、一方の第2の圧接ガイド孔65Aとが形成されている。また、収容部60の上面には、軸方向中央から他方の絶縁心線挿入孔61Bの挿入口側(図5に右側)に向かって他方の第1の圧接ガイド孔64Bと、他方の第2の圧接ガイド孔65Bとが形成されている。
【0029】
一方の第1の圧接ガイド孔64A、及び、一方の第2の圧接ガイド孔65Aは、それぞれ矩形状であり、厚さ及び幅が一方のコンタクト20の一方の第1の板状圧接部22及び一方の第2の板状圧接部23と略等しい。これにより、一方の第1の圧接ガイド孔64A、及び、一方の第2の圧接ガイド孔65Aは、それぞれ一方のコンタクト20の一方の第1の板状圧接部22及び一方の第2の板状圧接部23を挿入可能になっている。一方の第1の圧接ガイド孔64A、及び、一方の第2の圧接ガイド孔65Aはそれぞれ一方の絶縁心線挿入孔61Aと連通している。また、収容部60の上面の一方の第1の圧接ガイド孔64A、及び、一方の第2の圧接ガイド孔65Aの間の部分は、一方のコンタクト20の基部21に厚さに合わせて凹状になっている。
【0030】
また、他方の第1の圧接ガイド孔64B、及び、他方の第2の圧接ガイド孔65Bは、それぞれ矩形状であり、厚さ及び幅が他方のコンタクト40の他方の第1の板状圧接部42及び他方の第2の板状圧接部43と略等しい。これにより、他方の第1の圧接ガイド孔64B、及び、他方の第2の圧接ガイド孔65Bは、それぞれ他方のコンタクト40の他方の第1の板状圧接部42及び他方の第2の板状圧接部43を挿入可能になっている。他方の第1の圧接ガイド孔64B、及び、他方の第2の圧接ガイド孔65Bはそれぞれ他方の絶縁心線挿入孔61Bと連通している。また、収容部60の上面の他方の第1の圧接ガイド孔64B、及び、他方の第2の圧接ガイド孔65Bの間の部分は、他方のコンタクト40の基部41に厚さに合わせて凹状になっている。
【0031】
なお、収容部60の内側壁には、一方の第1の圧接ガイド孔64A、一方の第2の圧接ガイド孔65A、他方の第1の圧接ガイド孔64B、及び、他方の第2の圧接ガイド孔65Bに合わせた凹部が形成されている。
【0032】
蓋部70は、長方形状の板部71と、板部71の先端側の縁に沿って形成された係合部72と、を有する。
【0033】
板部71は、収容部60の上面及び前面に沿うように中間部が直角に曲げられた板状の部位である。板部71の幅は収容部60の上面の幅と等しい。係合部72は板部71に対して内向きに垂直に立設されている。
【0034】
以下、本実施形態の圧接コネクタ装置1を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明する。図6A図6D図7A図7D、及び図8A図8Cは本実施形態の圧接コネクタ装置を用いて一対の絶縁心線を接続する方法を説明するための図であり、図6A図6Dは斜視図、図7A図7D図2に対応する縦断面図であり、図8A図8B図3に対応する水平断面図である。
【0035】
絶縁心線100A、100Bの接続を開始する前の状態では、蓋部70の板部71が収容部60の上面に対して180度開いた状態となっており、一方のコンタクト20の第1の板状圧接部22及び第2の板状圧接部23の先端が、それぞれ一方の第1の圧接ガイド孔64A、及び、一方の第2の圧接ガイド孔65Aに挿入された状態(準備位置)となっている。また、他方のコンタクト40の第1の板状圧接部42及び第2の板状圧接部43の先端が、それぞれ他方の第1の圧接ガイド孔64B、及び、他方の第2の圧接ガイド孔65Bに挿入された状態となっている。なお、この状態で、一方のコンタクト20の第1の板状圧接部22及び第2の板状圧接部23の先端、及び、他方のコンタクト40の第1の板状圧接部42及び第2の板状圧接部43の先端は、一方の絶縁心線挿入孔61A及び他方の絶縁心線挿入孔61Bまで到達していない。
【0036】
この状態で、図6A図7A、及び図8Aに示すように、一方の絶縁心線挿入孔61Aに一方のガイド筒63Aが形成された側から一方の絶縁心線100Aを挿入し、一方の絶縁心線100Aの先端を逆側の側面から突出させる。また、他方の絶縁心線挿入孔61Bに他方のガイド筒63Bが形成された側から他方の絶縁心線100Bを挿入し、他方の絶縁心線100Bの先端を逆側の側面から突出させる。
【0037】
次に、図6B及び図7Bに示すように、他方のコンタクト40を、治具を用いて、ハウジング10の収容部60内に押圧して押し込む。他方のコンタクト40を押し込むことにより、他方のコンタクト40の他方の第1のスロット47及び他方の第2のスロット45の両側の部分が一方の絶縁心線100Aの被覆を剥離する。これにより、一方の絶縁心線100Aの導体芯線が露出する。また、これと同時に他方のコンタクト40の一方の第3のスロット46の両側の部分が一方の絶縁心線100Aの被覆を剥離する。これにより、一方の絶縁心線100Aの導体芯線が露出する。
【0038】
そして、さらに他方のコンタクト40を押し込むことにより接続位置に移動し、他方の絶縁心線100Bの露出した導体芯線の側部が、他方の第1のスロット47及び他方の第2のスロット45内で挟み込まれる。また、これと同時に一方の絶縁心線100Aの露出した導体芯線の側部が、一方の第3のスロット46内で挟み込まれる。このようにして、他方の絶縁心線100Bの被覆が第2の板状圧接部43及び第1の板状圧接部42に係合するとともに、他方の絶縁心線100Bの導体芯線が他方の第1のスロット47及び一方の第2のスロット45内で他方のコンタクト40により把持される。また、一方の絶縁心線100Aの被覆が第1の板状圧接部42に係合するとともに、一方の絶縁心線100Aの導体芯線が一方の第3のスロット46内で他方のコンタクト40により把持される。
また、これと同時に、他方のコンタクト40を押し込むことにより、一方のカッタ48が一方の絶縁心線100Aの余長部分を切断する。
【0039】
次に、図6C図7C、及び図8Bに示すように、一方のコンタクト20を、治具を用いて、ハウジング10の収容部60内に押圧して押し込む。一方のコンタクト20を押し込むことにより、一方のコンタクト20の一方の第1のスロット27及び一方の第2のスロット25の両側の部分が一方の絶縁心線100Aの被覆を剥離する。これにより、一方の絶縁心線100Aの導体芯線が露出する。また、これと同時に一方のコンタクト20の他方の第3のスロット26の両側の部分が他方の絶縁心線100Bの被覆を剥離する。これにより、他方の絶縁心線100Bの導体芯線が露出する。
【0040】
そして、さらに一方のコンタクト20を押し込むことにより接続位置に移動し、一方の絶縁心線100Aの露出した導体芯線の側部が、一方の第1のスロット27及び一方の第2のスロット25内で挟み込まれる。また、これと同時に他方の絶縁心線100Bの露出した導体芯線の側部が、他方の第3のスロット26内で挟み込まれる。このようにして、一方の絶縁心線100Aの被覆が第2の板状圧接部23及び第1の板状圧接部22に係合するとともに、一方の絶縁心線100Aの導体芯線が一方の第1のスロット27及び一方の第2のスロット25内で一方のコンタクト20により把持される。また、他方の絶縁心線100Bの被覆が第1の板状圧接部22に係合するとともに、他方の絶縁心線100Aの導体芯線が他方の第3のスロット26内で一方のコンタクト20により把持される。
また、これと同時に、一方のコンタクト20を押し込むことにより、他方のカッタ28が他方の絶縁心線100Bの余長部分を切断する。
【0041】
次に、図6D及び図7Dに示すように、蓋部70を板部71が収容部60の上面及び前面に当接するまで回動させる。これにより、係合部72が収容部60の前面の下面の縁に係合する。その結果、収容部60の上面が蓋部70により閉鎖され、蓋部70の収容部60に対する回動が規制される。
以上により一方の絶縁心線100Aと他方の絶縁心線100Bの接続構造が形成される。
【0042】
本実施形態によれば、一方の絶縁心線100Aが一方の第1のスロット27及び一方の第3のスロット46により圧接され、他方の絶縁心線100Bが他方の第1のスロット47及び他方の第3のスロット26により圧接されるため、より強固に絶縁心線100A、100Bを保持することができる。さらに、一方の絶縁心線100A及び他方の絶縁心線100Bの端部が一方のカッタ48及び他方のカッタ28で切断されるため、作業工程を減らすことにより作業性を向上することができる。さらに、複数のコンタクト20、40を用いて絶縁心線100A、100Bの圧接及び切断を分けて行っているため、圧接する際にコンタクト20、40を分割して圧接することで、作用させる押圧力を減らすことができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、一方のコンタクト20は、一方の絶縁心線100Aを圧接するための一方の第2のスロット25をさらに有し、他方のコンタクト40は、他方の絶縁心線100Bを圧接するための他方の第2のスロット45をさらに有する。これにより、各絶縁心線100A、100Bが3か所で圧接される。このように絶縁心線を3か所で圧接することにより、後述するように、圧着スリーブと同程度の引張耐力を持たせることができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、一方のコンタクト20は、他方の第3のスロット26及び一方の第2のスロット25が形成された一方の第1の板状圧接部22と、他方のカッタ28及び一方の第1のスロット27が形成された一方の第2の板状圧接部23と、一方の第1の板状圧接部22と一方の第2の板状圧接部23とを連結する基部21とを有し、他方のコンタクト40は、一方の第3のスロット46及び他方の第2のスロット45が形成された他方の第1の板状圧接部42と、一方のカッタ48及び他方の第1のスロット47が形成された他方の第2の板状圧接部43と、他方の第1の板状圧接部42と他方の第2の板状圧接部43とを連結する他方の基部41とを有する。このように、本実施形態によれば各コンタクトに3つのスロットと、1つのカッタが配置されることとなる。これにより、一度に複数の圧接作業と切断作業を行うことができる。また、圧接作業で一つのスロットあたりに必要な押圧力は400N程度であり、絶縁心線を切断するのに必要な押圧力は800N程度である。したがって、本実施形態によれば、全絶縁心線の圧接と切断を一括で行うために必要なコンタクトへの総押圧力は3200N程度と大きな数値となるが、2つのコンタクトに分割してそれぞれを圧接することによりスロットとカッタとを押圧するための力が過度に大きくなるのを防止できる。
【0045】
また、本実施形態によれば、一方のコンタクト20と、他方のコンタクト40とは同形状である。これにより、部材の種類を削減できるとともに、各スロットの保持力を均一化することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、ハウジング10は、一方の絶縁心線100Aを収容する一方の絶縁心線挿入孔61Aと、一方の絶縁心線挿入孔61Aと逆向きに延び、他方の絶縁心線100Bを収容する他方の絶縁心線挿入孔61Bと、一方の絶縁心線挿入孔61Aと連通し、一方の第1の板状圧接部22を案内する一方の第1の圧接ガイド孔64Aと、一方の絶縁心線挿入孔61Aと連通し、一方の第2の板状圧接部23を案内する一方の第2の圧接ガイド孔65Aと、他方の絶縁心線挿入孔61Bと連通し、他方の第1の板状圧接部42を案内する他方の第1の圧接ガイド孔64Bと、他方の絶縁心線挿入孔61Bと連通し、他方の第2の板状圧接部43を案内する他方の第2の圧接ガイド孔65Bと、を有する。
このような構成によれば、各板状圧接部22、23、42、43がガイド孔64A、64B、65A、65Bにより案内されるため、精度良くスロット内で絶縁心線を圧接することができる。
【0047】
上記の実施係チアでは、一方のコンタクト20が一方の第1のスロット27、一方の第2のスロット25、他方の第3のスロット26及び他方のカッタ28を有し、他方のコンタクト40が他方の第1のスロット47、他方の第2のスロット45、一方の第3のスロット46、及び一方のカッタ48を有しているが、一方の第2のスロット25や他方の第2のスロット45を省略してもよいし、一方のカッタ48及び他方のカッタ28を省略してもよい。
【0048】
なお、発明者らは、板状でスロットを有する圧接部材で絶縁心線を圧接するために必要な力を実験的に検討した。本実験では、図17に示す板状コンタクト220を銅合金(C2680-EH)により作成した。また、コンタクト材の厚みは0.8mmとし、スロットの幅は0.6mmとした。このようなコンタクトにより断面積2mm2の7本撚り導体芯線と絶縁被覆とを有する絶縁心線を圧接し、コンタクトの押圧方向の移動距離と、移動するのに必要な押圧力を測定した。
【0049】
図9は、圧接用スロット2か所にそれぞれ絶縁心線を同時に圧接する場合の移動距離と押圧力との関係を示すグラフである。同図に示すように、一般的な断面積2mm2の導体芯線を有する絶縁心線2本を、一つの圧接部材に設けた2か所の圧接部材により同時に圧接する際には計800N程度の押圧力が必要になることが確認できた。
【0050】
また、発明者らは、板状のカッタ部で絶縁心線を切断するために必要な力を実験的に検討した。本実験では、一方のコンタクト20及び他方のコンタクト40の一方のカッタ48及び他方のカッタ28と同じ様なカッタを有する板状のカッタ部材を銅合金(C5191-H)により作成した。なお、カッタ部材の基部の厚さは0.8mm、カッタ先端の厚さは0.1mm、先端の角度は30°である。このような部材により断面積2mm2の7本撚り導体芯線と絶縁被覆とを有する絶縁心線を押圧し、カッタ部材の押圧方向の移動距離と、移動するのに必要な押圧力を測定した。
【0051】
図10は、カッタ部材の移動距離と断面積が2mm2の導体芯線をもった絶縁心線2本分を切断する場合の押圧力との関係を示すグラフである。同図に示すように、一般的な断面積2mm2の導体芯線を有する被覆絶縁心線2本を一つのカッタ部材により同時に切断する際には800N程度の押圧力が必要になることが確認できた。
【0052】
また、発明者らは、絶縁心線への引き抜きに対する十分な耐力を持たせるのに必要なスロットを配備したコンタクトによる圧接箇所の数を実験的に検討した。本実験では、本実験では、一方のコンタクト20及び他方のコンタクト40の第1の板状圧接部22、42及び第2の板状圧接部23、43と同じ様にスロットを有する板状のコンタクトを銅合金(C2680-EH)により作成した。また、スロットの幅は0.6mm、コンタクト材厚みを0.8mmとした。このようなスロットを配備したコンタクトを1枚、2枚、3枚用いて断面積2mm2の導体芯線と絶縁被覆とを有する絶縁心線を圧接した各場合について、絶縁心線が保持できなくなる引き抜き耐力を測定した。
【0053】
図11は、絶縁心線1本を把持するコンタクトのスロット数と引き抜き耐力との関係を示すグラフである。また、比較対象として、圧着スリーブにより絶縁心線を接続した場合の引き抜き耐力をRとして示す。同図に示すように、3枚スロットを配備したコンタクトにより絶縁心線を圧接することにより、圧着スリーブを用いた場合と同等の引き抜き耐力が得られることを確認できた。
【符号の説明】
【0054】
1 :圧接コネクタ装置
10 :ハウジング
20 :一方のコンタクト
21 :基部
22 :第1の板状圧接部
23 :第2の板状圧接部
25 :一方の第2のスロット
26 :他方の第3のスロット
27 :一方の第1のスロット
28 :他方のカッタ
40 :他方のコンタクト
41 :基部
42 :第1の板状圧接部
43 :第2の板状圧接部
45 :他方の第2のスロット
46 :一方の第3のスロット
47 :他方の第1のスロット
48 :一方のカッタ
60 :収容部
61A :一方の絶縁心線挿入孔
61B :他方の絶縁心線挿入孔
62 :仕切り板
63A :一方のガイド筒
63B :他方のガイド筒
64A :一方の第1の圧接ガイド孔
64B :一方の第1の圧接ガイド孔
65A :他方の第2の圧接ガイド孔
65B :他方の第2の圧接ガイド孔
70 :蓋部
71 :板部
72 :係合部
100A :一方の絶縁心線
100B :他方の絶縁心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13