(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168479
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 6/16 20200101AFI20241128BHJP
【FI】
B62J6/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085195
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】池谷 亮介
(72)【発明者】
【氏名】内田 真一
(72)【発明者】
【氏名】堀内 智貴
(72)【発明者】
【氏名】永田 一希
(72)【発明者】
【氏名】田中 夕美子
(72)【発明者】
【氏名】山本 一嘉
(72)【発明者】
【氏名】神保 光司
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ライダーがハンドルバーのグリップを握りながら当該グリップを握っている手の指によって操作するように構成されたハンドルスイッチの利便性を向上させることができる、鞍乗型車両を提供することである。
【解決手段】鞍乗型車両1では、ライダーがグリップ6を握りながら手の指によって操作するように構成されたハンドルスイッチ20を備え、ハンドルスイッチ20は、第1操作量M1を超えたとき、及び第2操作量M2を超えたときのそれぞれで、操作荷重の増加率が大きくなる方向に変化し、操作荷重の増加率が大きくなる方向に変化することにより、第1段階目の操作を行ったとき及び第2段階目の操作を行ったときのそれぞれで、操作感が得られるようになっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライダーがハンドルバーのグリップを握りながら当該グリップを握っている手の指によって操作するように構成されたハンドルスイッチを備える鞍乗型車両であって、
前記ハンドルスイッチは、
前記ライダーが指で第1方向への操作を行い得るものであり、
前記ライダーが指を離すと、前記ハンドルスイッチは初期位置に戻るようになっており、
前記初期位置からの操作量として第1操作量の操作による第1段階目の操作と、
前記初期位置からの操作量として前記第1操作量よりも大きい第2操作量による第2段階目の操作と、が可能であり、
前記第1操作量に到達するまでに要する最大の操作荷重は、第1最大操作荷重であり、
前記第2操作量に到達するまでに要する最大の操作荷重は、前記第1最大操作荷重よりも大きい第2最大操作荷重となっており、
前記第1操作量を超えたとき、及び前記第2操作量を超えたときのそれぞれで、操作荷重の増加率が大きくなる方向に変化し、
操作荷重の増加率が大きくなる方向に変化することにより、前記第1段階目の操作を行ったとき及び前記第2段階目の操作を行ったときのそれぞれで、操作感が得られるようになっている。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記第1最大操作荷重は、前記第2最大操作荷重の半分以上である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両であって、
前記第1最大操作荷重から前記第2最大操作荷重に至る間には、操作荷重の谷となる第1中間操作荷重が設けられており、
前記第1最大操作荷重と前記第1中間操作荷重との差分を第1荷重落差とすると、
前記第1荷重落差は、前記第1最大操作荷重の1/4以上である。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記第1操作量は、前記第2操作量の1/3以上、かつ2/3以下である。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記第2最大操作荷重に対応する操作量を超えた領域には、操作荷重の谷となる第2中間操作荷重が設けられており、
前記第2最大操作荷重と前記第2中間操作荷重との差分を第2荷重落差とすると、
前記第2荷重落差は、前記第2最大操作荷重の1/4以上である。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記ハンドルスイッチは、前記鞍乗型車両が備える灯火器を動作させるために用いられる。
【請求項7】
請求項6に記載の鞍乗型車両であって、
前記灯火器は、方向指示器であり、
前記第1段階目の操作に対応する前記方向指示器の点滅動作は、前記第2段階目の操作に対応する前記方向指示器の点滅動作と異なる。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記ハンドルスイッチは、
前記鞍乗型車両が備える装置を動作させるために用いられ、
前記第1段階目の操作又は前記第2段階目の操作に対応する前記装置の動作が行われているときに、
前記第1段階目の操作又は前記第2段階目の操作が行われることにより、
現在行われている前記装置の動作をキャンセルするように構成されている。
【請求項9】
請求項6に記載の鞍乗型車両であって、
前記第1段階目の操作及び前記第2段階目の操作の何れかに対応する前記灯火器の動作は、前記鞍乗型車両の走行状況に応じて前記灯火器を点灯させることである、鞍乗型車両。
【請求項10】
請求項9に記載の鞍乗型車両であって、
前記灯火器は、ヘッドライトであり、
前記ヘッドライトは、前記鞍乗型車両の前方の複数のエリアに対する光の照射の制御を行うように構成され、前記複数のエリアは、少なくとも1つの上方エリアを含み、
前記少なくとも1つの上方エリアは、前記鞍乗型車両の直立時において、部分的に又は全体的に、水平基準線よりも上に位置し、
前記第1段階目の操作及び前記第2段階目の操作の何れかに対応する前記ヘッドライトの動作は、前記鞍乗型車両の走行状況に応じて前記少なくとも1つの上方エリアに対する光の照射を行うことである、鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライダーがハンドルバーのグリップを握りながら当該グリップを握っている手の指によって操作するように構成されたハンドルスイッチを備える鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンドルバーを備えた鞍乗型車両が知られている。ハンドルバーには、ハンドルスイッチが設けられている。ハンドルスイッチは、ライダーがハンドルバーのグリップを握りながら当該グリップを握っている手の指によって操作するように構成されている。これにより、ライダーは、鞍乗型車両を運転しながら、ハンドルスイッチを操作することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ライダーがハンドルバーのグリップを握りながら当該グリップを握っている手の指によって操作するように構成されたハンドルスイッチの利便性を向上させることができる、鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者等は、ライダーがハンドルバーのグリップを握りながら当該グリップを握っている手の指によって操作するように構成されたハンドルスイッチを、ライダーが操作する状況について検討した。その結果、以下の知見を得るに至った。
このようなハンドルスイッチは、ライダーが鞍乗型車両を運転しながら操作される。そのため、ライダーが、ハンドルスイッチを見なくても、ハンドルスイッチへの操作を認識できるようにすることが好ましい。
また、ハンドルバーのグリップ近傍には、ハンドルスイッチを設けるためのスペースが限られている。そのため、機能ごとにハンドルスイッチを設けるのではなく、同じハンドルスイッチに複数の機能を設定する(割り当てる)ことが好ましい。
同じハンドルスイッチに複数の機能を設定する(割り当てる)場合、例えば、当該ハンドルスイッチを同じ方向に複数段階操作できるように構成することが考えられる。このように構成されたハンドルスイッチを操作する場合、操作段階ごとに操作感が得られるようにすることで、ライダーがハンドルスイッチを見ていなくてもハンドルスイッチを操作した感覚が得られるようになる。ライダーが鞍乗型車両を運転するときにグローブを着用していても、当該ハンドルスイッチへの操作をライダーに認識させやすくなる。また、第2段階目の操作に要する荷重を第1段階目の操作に要する荷重よりも大きくすれば、第1段階目の操作を行う際に間違って第2段階目の操作も行ってしまうというような誤操作の発生を抑制することができる。つまり、ハンドルスイッチの操作をライダーに認識させ易くしつつ、誤操作の発生を抑制できる。その結果、ハンドルスイッチの利便性が向上する。
本発明は、上記知見に基づいて完成されたものである。
【0006】
以上の知見に基づいて完成した本発明の各観点による鞍乗型車両は、次の構成を備える。
(1)本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両は、ライダーがハンドルバーのグリップを握りながら当該グリップを握っている手の指によって操作するように構成されたハンドルスイッチを備える鞍乗型車両であって、前記ハンドルスイッチは、前記ライダーが指で第1方向への操作を行い得るものであり、前記ライダーが指を離すと、前記ハンドルスイッチは初期位置に戻るようになっており、前記初期位置からの操作量として第1操作量の操作による第1段階目の操作と、前記初期位置からの操作量として前記第1操作量よりも大きい第2操作量による第2段階目の操作と、が可能であり、前記第1操作量に到達するまでに要する最大の操作荷重は、第1最大操作荷重であり、前記第2操作量に到達するまでに要する最大の操作荷重は、前記第1最大操作荷重よりも大きい第2最大操作荷重となっており、前記第1操作量を超えたとき、及び前記第2操作量を超えたときのそれぞれで、操作荷重の増加率が大きくなる方向に変化し、操作荷重の増加率が大きくなる方向に変化することにより、前記第1段階目の操作を行ったとき及び前記第2段階目の操作を行ったときのそれぞれで、操作感が得られるようになっている。
【0007】
上記(1)の鞍乗型車両によれば、第1段階目の操作と第2段階目の操作が同じ方向に行われるようになっているが、第1段階目の操作と第2段階目の操作のそれぞれに操作感が得られるようになっているとともに、第1段階目の操作に要する操作量及び操作荷重(第1最大操作荷重)よりも第2段階目の操作に要する操作量及び操作荷重(第2最大操作荷重)のほうが大きくなっているので、第1段階目の操作と第2段階目の操作との違いをライダーに認識させ易くしながら、例えば、第1段階目の操作を行う際に間違って第2段階目の操作も行ってしまうというような誤操作の発生を抑制することができる。つまり、上記(1)の鞍乗型車両によれば、ハンドルスイッチの操作をライダーに認識させ易くしつつ、誤操作の発生を抑制できる。その結果、ハンドルスイッチの利便性を向上させることができる。
【0008】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(2)上記(1)に記載の鞍乗型車両であって、前記第1最大操作荷重は、前記第2最大操作荷重の半分以上である。
【0009】
上記(2)の鞍乗型車両では、第1段階目の操作を行う場合に、ある程度の操作荷重が必要となる。具体的には、(2)の鞍乗型車両では、第1段階目の操作を行う場合に、第2最大操作荷重の半分以上の第1最大操作荷重を要する。これにより、(2)の鞍乗型車両では、ライダーが、第1段階目の操作を行ったことを十分に認識し得る。
【0010】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(3)上記(1)又は(2)に記載の鞍乗型車両であって、前記第1最大操作荷重から前記第2最大操作荷重に至る間には、操作荷重の谷となる第1中間操作荷重が設けられており、前記第1最大操作荷重と前記第1中間操作荷重との差分を第1荷重落差とすると、前記第1荷重落差は、前記第1最大操作荷重の1/4以上である。
【0011】
上記(3)の鞍乗型車両では、第1最大操作荷重と第2最大操作荷重との間に、操作荷重の谷となる第1中間操作荷重が設けられている。また、(3)の鞍乗型車両では、第1段階目の操作における落差(第1荷重落差)が第1最大操作荷重の1/4以上(落差25%以上)となっている。そのため、(3)の鞍乗型車両では、第1最大操作荷重と第1中間操作荷重との荷重差(第1荷重落差)により、第1段階目の操作を認識しやすくなる。
【0012】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(4)上記(1)~(3)の何れかに記載の鞍乗型車両であって、前記第1操作量は、前記第2操作量の1/3以上、かつ2/3以下である。
【0013】
上記(4)の鞍乗型車両では、第1操作量が、第2操作量の1/3以上、かつ2/3以下となっている。言い方を換えれば、(4)の鞍乗型車両では、ライダーが第1段階目の操作を行うにあたり第2段階目の操作量(第2操作量)に対してある程度の操作量を要し、かつ第2段階目の操作を行う際にあたり、第1段階目の操作からある程度の操作量を要する。そのため、(4)の鞍乗型車両では、ライダーが第1段階目の操作と、第2段階目の操作とを区別して認識しやすくなる。
【0014】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(5)上記(1)~(4)の何れかに記載の鞍乗型車両であって、前記第2最大操作荷重に対応する操作量を超えた領域には、操作荷重の谷となる第2中間操作荷重が設けられており、前記第2最大操作荷重と前記第2中間操作荷重との差分を第2荷重落差とすると、前記第2荷重落差は、前記第2最大操作荷重の1/4以上である。
【0015】
上記(5)の鞍乗型車両では、第2操作量を超えて操作を行った場合の操作荷重の谷となる第2中間操作荷重が設けられている。また、(5)の鞍乗型車両では、第2段階目の操作における落差(第2荷重落差)が第2最大操作荷重の1/4以上(落差25%以上)となっている。そのため、(5)の鞍乗型車両では、第2最大操作荷重と第2中間操作荷重との荷重差(第2荷重落差)により、第2段階目の操作を認識しやすくなる。
【0016】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載の鞍乗型車両であって、前記ハンドルスイッチは、前記鞍乗型車両が備える灯火器を動作させるために用いられる。
【0017】
上記(6)の鞍乗型車両によれば、1つのハンドルスイッチに対する操作で灯火器の複数の点灯パターンを実現し、点灯パターンに対応する操作段階ごとに操作感が得られるようになっている。これにより、(6)の鞍乗型車両では、ライダーがハンドルスイッチを見ていなくても、どの点灯パターンに対応する操作を行ったかを認識しやすくなる。
【0018】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(7)上記(6)に記載の鞍乗型車両であって、前記灯火器は、方向指示器であり、前記第1段階目の操作に対応する前記方向指示器の点滅動作は、前記第2段階目の操作に対応する前記方向指示器の点滅動作と異なる。
【0019】
上記(7)の鞍乗型車両によれば、1つのハンドルスイッチに対する操作で方向指示器の複数の点滅動作を実現することができる。また、(7)の鞍乗型車両では、ハンドルスイッチを操作する場合、操作段階ごとに操作感が得られるようになっている。これにより、本発明では、ライダーがハンドルスイッチを見ていなくても、どの点滅動作に対応する操作を行ったかを認識しやすくなる。
【0020】
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載の鞍乗型車両であって、前記ハンドルスイッチは、前記鞍乗型車両が備える装置を動作させるために用いられ、前記第1段階目の操作又は前記第2段階目の操作に対応する前記装置の動作が行われているときに、前記第1段階目の操作又は前記第2段階目の操作が行われることにより、現在行われている前記装置の動作をキャンセルするように構成されている。
【0021】
上記(8)の鞍乗型車両によれば、ハンドルスイッチを操作することによって現在行われている装置の動作をキャンセルすることができるので、装置の動作をキャンセルするためのキャンセルスイッチを別途設ける必要がなくなる。そのため、ハンドルスイッチそのものの構成やハンドルスイッチの配置などの自由度を向上させることができる。その結果、ハンドルスイッチの利便性が向上する。
【0022】
(9)上記(6)に記載の鞍乗型車両であって、前記第1段階目の操作及び前記第2段階目の操作の何れかに対応する前記灯火器の動作は、前記鞍乗型車両の走行状況に応じて前記灯火器を点灯させることである。
【0023】
上記(9)の鞍乗型車両によれば、第1段階目の操作又は第2段階目の操作により、鞍乗型車両の走行状況に応じた灯火器の点灯を行うことができる。そのため、例えば、車両前方に他の車両(具体的には、先行車及び/又は対向車)が存在する場合に、当該他の車両の運転者が灯火器からの光によって照らされないようにすることができる。
【0024】
(10)上記(9)に記載の鞍乗型車両であって、前記灯火器は、ヘッドライトであり、前記ヘッドライトは、前記鞍乗型車両の前方の複数のエリアに対する光の照射の制御を行うように構成され、前記複数のエリアは、少なくとも1つの上方エリアを含み、前記少なくとも1つの上方エリアは、前記鞍乗型車両の直立時において、部分的に又は全体的に、水平基準線よりも上に位置し、前記第1段階目の操作及び前記第2段階目の操作の何れかに対応する前記ヘッドライトの動作は、前記鞍乗型車両の走行状況に応じて前記少なくとも1つの上方エリアに対する光の照射を行うことである。
【0025】
上記(10)の鞍乗型車両によれば、第1段階目の操作又は第2段階目の操作により、鞍乗型車両の走行状況に応じて少なくとも1つの上方エリアに対する光の照射を行うように、ヘッドライトの動作が行われる。そのため、例えば、車両前方に他の車両(具体的には、先行車及び/又は対向車)が存在する場合に、当該他の車両の運転者がヘッドライトからの光によって照らされないようにすることができる。
【0026】
「鞍乗型車両」は、例えば、サドル型のシートを備える車両である。鞍乗型車両は、例えば、少なくとも1つの前輪と、少なくとも1つの後輪とを備える。つまり、鞍乗型車両は、二輪車に限定されず、前輪又は後輪が左右一対の車輪で構成された三輪車であってもよいし、前輪及び後輪がそれぞれ左右一対の車輪で構成された四輪車であってもよい。鞍乗型車両は、例えば、スクーター、モペッド、スノーモービル、ウォータークラフト、全地形対応車(ATV:All Terrain Vehicle)等を含む。鞍乗型車両は、例えば、傾斜車両であってもよい。傾斜車両とは、左旋回時に車両の左方向に傾斜し、右旋回時に車両の右方向に傾斜する傾斜車体を備える車両である。鞍乗型車両は、例えば、過給機を備えていてもよい。過給機は、例えば、ターボチャージャーであってもよいし、スーパーチャージャーであってもよい。鞍乗型車両は、エンジンと電動機を駆動源として備えるハイブリッド車両であってもよい。つまり、鞍乗型車両は駆動源として、エンジンの他に、電動機を備えていてもよい。さらに、鞍乗型車両は、駆動源として電動機を備える電動車両であってもよい。
【0027】
「ハンドルスイッチ」は、鞍乗型車両が備える種々の装置の機能を実現するスイッチに採用し得る。例えば、ハンドルスイッチにより操作を行い得る装置として、各種の灯火器などが挙げられる。また、ハンドルスイッチにより操作を行い得る灯火器としては、車線変更時、右左折時に点滅動作を行う方向指示器、ハザードランプ、ヘッドライトなどが挙げられる。
【0028】
「灯火器」には、ライダーの操作によって周囲の人が認識し得る態様で光を発する装置、及びライダーの操作によってライダーの意思を示す点灯パターンで光を発する装置が含まれる。ライダーの操作によって周囲の人が認識し得る態様で光を発する装置には、例えばライダーの操作によりハイビーム及びロービームの切り替えが可能なヘッドライトが挙げられる。また、ライダーの操作によってライダーの意思を示す点灯パターンで光りを発する装置としては、例えば、方向指示器、及びハザードランプが挙げられる。
【0029】
方向指示器は、ライダーの操作により右指示ランプを点滅表示させ、右折しようとするライダーの意思又は右車線に車線変更を行おうとするライダーの意思を周囲の人(他の車両の運転者など)に示すことができる。また、方向指示器は、ライダーの操作により左指示ランプを点滅表示させ、左折しようとするライダーの意思又は左車線に車線変更を行おうとするライダーの意思を周囲の人(他の車両の運転者など)に示すことができる。
【0030】
「鞍乗型車両が備える種々の装置の機能」としては、方向指示器の左指示ランプの点滅動作及び右指示ランプの点滅動作が挙げられる。本発明の鞍乗型車両のハンドルスイッチをフラッシャースイッチに適用した場合、例えば、フラッシャースイッチ(ハンドルスイッチ)の第1段階目の操作により方向指示器の第1の動作(例えば方向指示器を所定回数点滅させる動作)を実行させ、フラッシャースイッチ(ハンドルスイッチ)の第2段階目の操作により方向指示器の第2の動作(例えば方向指示器を継続して点滅させる動作)を実行させることができる。
【0031】
「装置の動作をキャンセルする」とは、現在行われている装置の動作を終了させることを意味する。本発明の鞍乗型車両のハンドルスイッチをフラッシャースイッチに適用した場合を挙げて説明すると、「キャンセルする」とは、例えば、方向指示器の点滅動作(所定回数の点滅動作又は点滅動作の継続)が行われているときに、予定されていたその点滅動作を終了させることを意味する。具体的な例を挙げて説明すると、「点滅動作が継続して行われている場合にその動作をキャンセルする」とは、現在行われている点滅動作を即座に終了させることを意味する。また、「所定回数の点滅動作をキャンセルする」とは、予定されていた回数の点滅動作が終了する前にその動作を終了させること(点滅動作の途中であってもその点滅動作を終了させること)を意味する。
【0032】
「現在行われている動作をキャンセルする」とは、現在の動作のキャンセル後に、別の動作が開始されるか否かを問わない。すなわち、「現在行われている動作をキャンセルする」とは、現在の動作がキャンセルされて他の動作も行われない場合(現在の動作がキャンセルされて初期状態となる場合)と、現在の動作がキャンセルされて、同じ動作、又は別の動作が開始される場合(現在の動作がキャンセルされて別の動作が開始される場合)との、双方が含まれる。
【0033】
なお、本発明のハンドルスイッチをフラッシャースイッチに適用し、かつ、フラッシャースイッチの第1段階目の操作に対応する動作として「方向指示器の所定回数の点滅動作」を、フラッシャースイッチの第2段階目の操作に対応する動作として「方向指示器の継続点滅動作」をそれぞれ適用する場合、操作の前後で方向指示器の点滅周期が変化しないものであるとよい。すなわち、例えば、現在所定回数の点滅動作を行っている場合にその動作をキャンセルし、再度所定回数の点滅動作を開始する場合、前回及び次の点滅動作を通じて、一定の周期で点滅動作を行われることが望ましい。
【0034】
本発明の鞍乗型車両は、ハンドルスイッチの第1段階目の操作又は第2段階目の操作が行われることにより、現在行われている方向指示器の点滅動作をキャンセルするように構成することができる。例えば、方向指示器の所定回数の点滅動作(例えば左指示ランプの3回の点滅動作)が行われているときにフラッシャースイッチの同方向又は異なる方向の第1段階目の操作又は第2段階目の操作が行われた場合、現在行われていた方向指示器の点滅動作(例えば左指示ランプの3回の点滅動作)をキャンセルするように構成することができる。また、方向指示器の点滅動作が継続して行われているとき(例えば左指示ランプの継続点滅)にフラッシャースイッチの同方向又は異なる方向の第1段階目の操作又は第2段階目の操作が行われた場合、現在行われていた方向指示器の点滅動作(例えば左指示ランプの継続点滅)をキャンセルするように構成することができる。
【0035】
「ハンドルスイッチの移動方向(第1方向)」は、種々の構成を採用し得る。例えば、ハンドルスイッチは、所定の方向(例えば、車両の上下方向に対して角度をなす方向、上下方向など)に延びる軸線を揺動軸線として揺動するシーソー方式のものを採用し得る。また、例えば、ハンドルスイッチは、所定の方向(例えばグリップの軸線方向、上下方向など)にスライドするように移動可能なスライド式のものを採用し得る。さらに、ハンドルスイッチは、レバー形状としてハンドルスイッチを傾斜させるように変位させるレバー式のものを採用し得る。さらに、ハンドルスイッチは、スイッチを押し込むことで変位させるプッシュ式のものを採用し得る。なお、ハンドルスイッチをシーソー式のものとする場合、揺動軸はひとつであってもよいし、2以上であってもよい。
【0036】
「操作感」は、ハンドルスイッチの操作中の手応えとして、ライダーが得られる感覚である。具体的には、本発明の鞍乗型車両では、「操作感」は、ハンドルスイッチの操作中において、最大操作荷重から中間操作荷重までの落差による手応え(クリック感)や、第1操作量又は第2操作量を超えたときに操作荷重の増加率が大きくなる方向に変化することにより、ハンドルスイッチが壁に当たったような感覚(手応え)、又はハンドルスイッチが急に重くなった感覚(手応え)として、ライダーが得られるようになっている。
【0037】
例えば、中間操作荷重が設けられている場合(
図8(a)参照)には、操作荷重のピーク(第1最大操作荷重又は第2最大操作荷重)を超えたときに(操作荷重の増加率がマイナスの方向に変化したときに)、ライダーはハンドルスイッチが急に軽くなったという感覚(最大操作荷重から中間操作荷重までの落差による感覚)を得ることとなる。すなわち、中間操作荷重が設けられている場合には、操作感として、最大操作荷重から中間操作荷重までの落差による感覚であるクリック感を得ることとなる。
【0038】
また、例えば、中間操作荷重が設けられておらず、第1段階目の操作において最大操作荷重により所定の操作量を要する場合には(第1段階目の操作において、第1最大操作荷重を維持する部分がある場合。
図8(b)参照)、操作荷重の増加率が大きくなる方向に変化していた状況から操作荷重が略一定となったとき、ライダーはハンドルスイッチが急に軽くなったという感覚を覚える。また、ライダーが操作を続行して、一旦軽くなったハンドルスイッチがその後再び重くなったときに(操作荷重の増加率がプラスの方向に転じたときに)、ライダーはハンドルスイッチが再び重くなったという手応えとして、操作感を得ることとなる。
【0039】
さらに、例えば、第1段階目の操作において、操作荷重の変化箇所が設けられていない場合には(第1段階目の操作中において操作荷重の屈曲箇所がない場合。
図8(c)参照)、操作荷重が大きくなっていく状況から、その後さらに操作荷重の増加率が大きくなるように変化したときに、ライダーはハンドルスイッチがさらに重くなったという手応えとして、操作感を得ることとなる。
【0040】
「スイッチの切り替え」とは、ハンドルスイッチの操作による装置(例えば方向指示器)の動作状態の切り替えを意味する。例えば、スイッチの切り替えには、装置が動作を行っていない初期状態から装置が動作を行う状態への切り替え(スイッチのオフ状態からオン状態への切り替え)と、装置が動作を行っている状態から初期状態への切り替え(スイッチのオン状態からオフ状態への切り替え)と、現在の動作から他の動作への切り替え(1のオン状態から他のオン状態への切り替え)と、が含まれる。
【0041】
上記のとおり、「スイッチの切り替え」には、スイッチのオフ状態からオン状態への切り替えと、スイッチのオン状態からオフ状態への切り替えと、スイッチのオン状態のうち1の状態から他の状態への切り替えと、が含まれている。また、スイッチのオン状態には、複数の状態が含まれている。本発明の鞍乗型車両のハンドルスイッチをフラッシャースイッチに適用した場合、「スイッチのオン状態」には、複数パターンの方向指示器の点滅状態が含まれる。例えば、本発明の鞍乗型車両のハンドルスイッチをフラッシャースイッチに適用した場合、「スイッチのオン状態」には、「右指示器の点滅動作を所定回数実行させる状態」、「右指示器の点滅動作を継続させる状態」、「左指示器の点滅動作を所定回数実行させる状態」、及び「左指示器の点滅動作を継続させる状態」が含まれる。
【0042】
「スイッチのオン状態のうち1の状態から他の状態への切り替え」とは、1のオン状態から他のオン状態への切り替えを意味する。例を挙げて説明すると、「スイッチのオン状態のうち1の状態から他の状態への切り替え」とは、「右指示器の点滅動作を所定回数実行させる状態」から「右指示器の点滅動作を継続させる状態」への切り替えを意味する
【0043】
本発明の鞍乗型車両では、スイッチの切り替えタイミングは、種々選択可能となっている。例えば、本発明の鞍乗型車両では、第1操作量に到達する前のタイミング又は第1操作量に到達した後のタイミングに、第1段階目の操作に係るスイッチの切り替えが行われるものとしてもよい。例を挙げると、本発明の鞍乗型車両では、ハンドルスイッチは、第1操作量の1/2以上、かつ、第1操作量以下の操作量の操作となるタイミング(第1操作量に到達する前のタイミング)に、前記第1段階目の操作に係るスイッチの切り替えが行われるようにしてもよいし、第1操作量に到達した後であって第2最大操作荷重に到達する前のタイミング(第1操作量に到達した後のタイミング)で、第1段階目の操作に係るスイッチの切り替えが行われるようにしてもよい。例えば、本発明の鞍乗型車両では、第1操作量により第1中間操作荷重に到達するように構成されている場合には、第1操作量の1/2以上、かつ第1中間操作荷重に到達するタイミングよりも前にスイッチの切り替えタイミングを設けることができる(
図8(a)、(b)のタイミングTx1参照)。また、本発明の鞍乗型車両では、第1最大操作荷重に到達する操作量が第1操作量よりも小さい場合(第1最大操作荷重の到達時≠第1操作量の到達時の場合)、第1最大操作荷重への到達時よりも後のタイミングであって、第1操作量の到達時よりも前のタイミングに、スイッチの切り替えが行われるものとしてもよい(
図8(a)のタイミングTx1参照)。
【0044】
本発明の鞍乗型車両では、第1段階目の操作において、第1最大操作荷重から第1中間操作荷重に至る間に、第1段階目の操作に関するスイッチの切り替えが行われるものとしてもよい(
図8(a)中のタイミングTx1参照)。また、例えば、本発明の鞍乗型車両では、第2段階目の操作において、第2最大操作荷重から第2中間操作荷重に至る間に、第2段階目の操作に関するスイッチの切り替えが行われるものとしてもよい(
図8(a)中のタイミングTx2参照)。
【0045】
なお、本発明の鞍乗型車両では、スイッチの切り替えは、各段階の操作における中間操作荷重の到達時に行われるものであってもよい。また、スイッチの切り替えは、各段階の操作から次の操作に移行するタイミングであってもよい。例えば、第1段階目の操作から第2段階目の操作に移行するタイミングで、第1段階目の操作に関するスイッチの切り替えを行ってもよい。また、第2段階目の操作に関するスイッチの切り替えは、第2操作量に到達したときに行ってもよい。すなわち、本発明の鞍乗型車両では、スイッチの切り替えは、第1操作量に到達したタイミング、及び第2操作量に到達したタイミングで実行される構成としてもよい(
図8(a)~(c)のタイミングT1,T2参照)。
【0046】
さらに、本発明の鞍乗型車両では、ハンドルスイッチに第1中間操作荷重を設けない構成とする場合、第1最大操作荷重に到達してから第1操作量に至る前のタイミングでスイッチの切り替えを行うものとしてもよい(
図8(b)のタイミングTx1参照)。
【0047】
本発明のハンドルスイッチをフラッシャースイッチに適用し、かつ、キャンセル機能を有する場合を具体例として、スイッチの切り替えについてさらに詳細に説明する。また、以下の具体例では、フラッシャースイッチ(ハンドルスイッチ)の第1段階目の操作により方向指示器の所定回数の点滅動作(第1点滅動作)が行われ、第2段階目の操作により方向指示器を継続して点滅させる動作(第2点滅動作)が行われるように設定されている場合を想定する。さらに、以下の具体例では、第2点滅動作の実行中に第1段階目の操作又は第2段階目の操作が行われると、第2点滅動作がキャンセルされるように設定されていると想定する。なお、第1点滅動作(所定回数の方向指示器の点滅動作)に係るスイッチのオン状態を「第1点滅動作ON」と、第2点滅動作(方向指示器の点滅動作の継続)に係るスイッチのオン状態を「第2点滅動作ON」と、それぞれ記載して説明する場合がある。
【0048】
上記の例では、初期状態(スイッチOFFの状態)から第1段階目の操作が行われると、スイッチOFFから第1点滅動作ONへとスイッチの切り替えが行われる。また、第1点滅動作の実行中に第2段階目の操作が行われると、第1点滅動作ONの状態から第2点滅動作ONの状態へとスイッチの切り替えが行われる。さらに、第2点滅動作の実行中に第1段階目の操作又は第2段階目の操作が行われると、第2点滅動作ONの状態からスイッチOFFの状態へとスイッチの切り替えが行われる(点滅動作がキャンセルされる)。
【0049】
「最大操作荷重」とは、例えば、各段階の操作(第1段階目の操作又は第2段階目の操作)における最大の操作荷重を意味する。すなわち、「最大操作荷重」とは、各段階の操作において、最大操作荷重に到達後、操作荷重が減少する場合(中間操作荷重が設けられている場合)に加え、その操作荷重が維持される場合(最大操作荷重を維持したまま所定の操作量を要する場合)、及び第1操作量に到達したときに最大の操作荷重となる場合をも含む。
【0050】
本発明では、「中間操作荷重」は、例えば、各段階の操作における最大操作荷重に対して3/4以下とすることができる。すなわち、最大操作荷重から中間操作荷重を減じた「荷重差分」は、1/4以上(荷重の落ち込みが25%以上)とすることができる。なお、「荷重差分」は、例えば、各段階の操作における最大操作荷重の半分以上としてもよい。これにより、さらにライダーが操作荷重の落差(クリック感)を感じやすくなる。
【0051】
「第1最大操作荷重から第2最大操作荷重に至る間に、操作荷重の谷となる第1中間操作荷重が設けられている」とは、例えば、第1最大操作荷重に対応する操作量と第2最大操作荷重に対応する操作量との間の領域において最小の操作荷重が第1中間操作荷重であることを意味する。
【0052】
「第2最大操作荷重に対応する操作量を超えた領域に、操作荷重の谷となる第2中間操作荷重が設けられている」とは、例えば、第2最大操作荷重に対応する操作量を超えた領域において最小の操作荷重が第2中間操作荷重であることを意味する。なお、本発明の鞍乗型車両は、ハンドルスイッチに第2中間操作荷重が設けられていないものであってもよい。
【0053】
「第1操作量」は、ライダーが第1段階目の操作を行ったことを認識し得るに至る操作量(変位量)、かつ、ライダーが指で操作可能な範囲内の操作量(変位量)であるとよい。また、「第2操作量」については、第1操作量よりも大きく、かつライダーが指で操作可能な範囲内の操作量(変位量)であって、ライダーが第2段階目の操作を行ったことを認識し得るに至る操作量であるとよい。
【0054】
本発明の鞍乗型車両が備えるハンドルスイッチは、例えば、灯火器としてのヘッドライトの照射態様を切り替えるために用いられてもよい。
ヘッドライトは、例えば、車両前方の複数のエリアに対する光の照射を行うように構成される。複数のエリアは、少なくとも1つの上方エリアを含む。少なくとも1つの上方エリアは、車両直立時において、部分的に又は全体的に、水平基準線よりも上に位置する。ヘッドライトは、例えば、少なくとも1つの上方エリアに対する光の照射を制御するように構成された配光可変型ヘッドライトである。ヘッドライトは、例えば、メインヘッドライトを含む。メインヘッドライトは、例えば、少なくともロービームを照射するように構成される。メインヘッドライトは、例えば、ロービームの他に、ハイビームを照射するように構成されていてもよい。つまり、メインヘッドライトは、少なくとも1つの上方エリアに光を照射するように構成されていてもよい。ハイビームを照射するときには、ロービームを照射していてもよいし、ロービームを照射していなくてもよい。ハイビームは、車両前方に他の車両(具体的には、先行車及び/又は対向車)が存在する場合、減光又は消灯するように制御してもよい。ヘッドライトは、例えば、メインヘッドライトの他に、サブヘッドライトを含んでいてもよい。サブヘッドライトは、例えば、車両旋回時に光を照射するように構成される。サブヘッドライトは、少なくとも1つの上方エリアに光を照射するように構成されていてもよい。サブヘッドライトは、車両旋回時に、少なくとも1つの上方エリアに光を照射するように構成されていてもよい。サブヘッドライトは、車両旋回時だけでなく、車両直立時においても、少なくとも1つの上方エリアに光を照射するように構成されていてもよい。「少なくとも1つの上方エリアに対する光の照射を制御する」ことには、例えば、「少なくとも1つの上方エリアに対する光の明るさを制御する」ことが含まれる。「少なくとも1つの上方エリアに対する光の照射を制御する」ことには、例えば、「メインヘッドライトが光を照射しているときに、サブヘッドライトが光を照射する」ことが含まれる。
エリアは、例えば、ヘッドライトに設けられた光源により光が照射される領域である。ヘッドライトは、固定配光型であり、ヘッドライトの物理的な配光の設定を維持するように構成されている。複数のエリアは、互いの相対的な位置関係が固定されるように設定される。
少なくとも1つの上方エリアは、単一の上方エリアであってもよい。当該単一の上方エリアは、ハイビームの照射エリアであってもよい。少なくとも1つの上方エリアは、ハイビームの照射エリアを含んでいてもよい。少なくとも1つの上方エリアは、例えば、少なくとも1つの左上方エリアと、少なくとも1つの右上方エリアを含んでいてもよい。少なくとも1つの左上方エリアは、例えば、車両直立時に互いに上下方向に異なる高さに位置する複数の左上方エリアであってもよい。左上方エリアは、その全てが左の空間に含まれるように配置されてもよく、当該左上方エリアの半分超が当該左の空間に含まれるように配置されてもよい。左の空間は、例えば、車両左右方向の中心よりも左の空間である。なお、少なくとも1つの右上方エリアについては、少なくとも1つの左上方エリアと同様であるから、その説明は省略する。
水平基準線は、例えば、車両直立時において所定エリアの上端に形成されて車両左右方向に延びる境界線を車両の左方向及び右方向の各々に延長した直線である。所定エリアは、例えば、ロービームの照射エリアである。水平基準線は、例えば、カットオフラインである。
本発明の鞍乗型車両が備えるハンドルスイッチを上記のようなヘッドライトの照射態様を切り替えるために用いる場合、例えば、以下のように操作してヘッドライトの照射態様を切り替えることが考えられる。
第1方向に第1段階目の操作を行うことにより、ヘッドライトはハイビームを照射する。
第1方向に第2段階目の操作を行うことにより、ヘッドライトはアダプティブ照射を行う。アダプティブ照射は、例えば、車両前方の複数のエリアのうち他の車両(具体的には、先行車及び/又は対向車)が存在するエリアの明るさを低下させることである。エリアの明るさの低下は、例えば、当該エリアに対応する光源を消灯すること、或いは、当該光源を減光状態で点灯することを含む。なお、第1方向に第1段階目の操作を行うことにより、ヘッドライトはアダプティブ照射を行ってもよい。この場合、第1方向に第2段階目の操作を行うことにより、ヘッドライトはハイビームを照射してもよい。或いは、ヘッドライトは、アダプティブ照射の代わりに、オートハイロー照射を行ってもよい。オートハイロー照射は、例えば、ハイビーム照射時に車両前方に他の車両(具体的には、先行車及び/又は対向車)が存在する場合に、ハイビームからロービームに照射態様を切り替えることである。
第2方向に第1段階目の操作を行うことにより、ヘッドライトはロービームを照射する。
第2方向に第2段階目の操作を行うことにより、ヘッドライトはパッシング照射を行う。パッシング照射は、例えば、一時的にロービームからハイビームに照射を切り替えることである。
【0055】
「鞍乗型車両の走行状況に応じて灯火器を点灯させる」というのは、例えば、ライダーが第1段階目の操作又は第2段階目の操作を行うことにより、当該操作に対応した灯火器の動作(つまり、灯火器の点灯)が鞍乗型車両の走行状況に応じて自動的に行われることである。灯火器は、ヘッドライトであってもよい。ヘッドライトは、例えば、アダプティブ照射を行ってもよい。ヘッドライトは、例えば、オートハイロー照射を行ってもよい。ヘッドライトは、例えば、コーナリングライトとして機能するサブヘッドライトを含んでいてもよい。灯火器は、例えば、路面描画に用いられてもよい。路面描画は、例えば、鞍乗型車両の存在を示すものであってもよいし、鞍乗型車両の進行方向を示すものであってもよい。路面描画に用いられる灯火器は、例えば、レーザ光源を備える。路面描画は、例えば、レーザ光によって行われる。
【0056】
「鞍乗型車両の走行状況に応じて少なくとも1つの上方エリアに対する光の照射を行う」というのは、例えば、ライダーが第1段階目の操作又は第2段階目の操作を行うことにより、当該操作に対応したヘッドライトの動作(つまり、少なくとも1つの上方エリアに対する光の照射を行うこと)が鞍乗型車両の走行状況に応じて自動的に行われることである。
【0057】
なお、本発明の鞍乗型車両は、ハンドルスイッチの操作が行われた場合に、その操作に対応する表示(画像)を、鞍乗型車両が備える表示装置(メーター)に表示可能であってもよいし、ライダーが所有する所定の装置(例えばスマートフォン)に表示可能であってもよい。例えば、本発明の鞍乗型車両は、ハンドルスイッチを操作したときに、ハンドルなどに固定されたライダー所有のスマートフォンの画面に変化が生じるようにしてもよい。
【0058】
この発明の上述の目的及びその他の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面に関連して行われる以下のこの発明の実施形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。本明細書にて使用される場合、用語「及び/又は(and/or)」は1つの、又は複数の関連した列挙されたアイテム(items)のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」、「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。本発明の説明においては、多数の技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせの全てを繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び特許請求の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面又は説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、ライダーがハンドルバーのグリップを握りながら当該グリップを握っている手の指によって操作するように構成されたハンドルスイッチの利便性を向上させることができる、鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本発明の実施形態に係る鞍乗型車両を示す左側面図と、鞍乗型車両の左グリップ及び左スイッチボックスを示す図と、フラッシャースイッチの操作を示す模式図と、フラッシャースイッチの操作を行った場合の操作荷重と操作量との関係を示すグラフとを併せて示す図である。
【
図2】(a-1)は
図1のフラッシャースイッチを示す図、(a-2)は
図2(a-1)のA1-A1’線断面図、(b)はフラッシャースイッチに対する各操作とその操作に対応する方向指示器の点滅パターンを示す図である。
【
図3】(a)は
図1の鞍乗型車両の左スイッチボックス及び左グリップを示す図、(b)は左スイッチボックスの左側面図、(c)は
図3(b)のA2-A2’線断面図である。
【
図4】
図1の鞍乗型車両の左スイッチボックス及びシフト操作部を示す左側面図である。
【
図5】
図1の鞍乗型車両の右スイッチボックス及びカバーを示す図である。
【
図6】
図1の鞍乗型車両のスイッチボックス及びハンドルバーの取り付け構造を示す図である。
【
図7】従来のスイッチボックス及びハンドルバーの取り付け構造を示す参考図である。
【
図8】
図1の鞍乗型車両のフラッシャースイッチにおいて、操作荷重、操作量、及びスイッチ切り替えタイミングの関係を示す図、及び
図1の鞍乗型車両のフラッシャースイッチの別の構成を例示するグラフである。
【
図9】フラッシャースイッチの操作荷重、及び操作量の関係を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態による鞍乗型車両1の詳細について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、あくまでも一例である。本発明は、以下に説明する実施の形態によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0062】
本明細書では、鞍乗型車両1の前後方向を「前後方向Y」と定義する。前後方向Yのうち、前方を「前方Fr」と定義する。前後方向Yのうち、後方を「後方Rr」と定義する。鞍乗型車両1の左右方向(車両の幅方向)を「左右方向X」と定義する。左右方向Xのうち左方を「左方L」と定義する。左右方向Xのうち右方を「右方R」と定義する。鞍乗型車両1の上下方向を「上下方向H」と定義する。上下方向Hのうち上方を「上方Up」と定義する。上下方向Hのうち下方を「下方Lw」と定義する。なお、鞍乗型車両1の前後上下左右は、鞍乗型車両1のシート4に着座した乗員から見た前後上下左右である。
【0063】
本明細書において、左右方向Xに延びる軸線や部材は、必ずしも左右方向Xと平行である軸線や部材だけを示すものではない。左右方向Xに延びる軸線や部材とは、左右方向Xに対して±45°の範囲で傾斜している軸線や部材を含む。
【0064】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る鞍乗型車両1の左側面図である。
図1に示すとおり、鞍乗型車両1は、前輪2、後輪3、フロントフォーク5、ハンドルバー6、スイッチボックス10、及び方向指示器8を備えている。また、鞍乗型車両1は、図示を省略した変速機、及び変速機のギア段を変更するシフト操作を補助するシフト補助装置(例えばシフトアクチュエータ)を備えている。
【0065】
図1(a)に示すとおり、前輪2には、フロントフォーク5が取り付けられている。また、フロントフォーク5の上方Upの端部には、ハンドルバー6が取り付けられている。ハンドルバー6は、左右方向Xに延びている。ハンドルバー6の左右方向Xの両端には、それぞれグリップ7が取り付けられている。より具体的には、
図1(b)に示すとおり、ハンドルバー6の左方Lの端部には左グリップ7Lが取り付けられている。また、ハンドルバー6の右方Rの端部には右グリップ7R(
図5(a)参照)が取り付けられている。
【0066】
鞍乗型車両1には、2つのスイッチボックス10が設けられている。具体的には、鞍乗型車両1には、左グリップ7Lの近傍に設けられた左スイッチボックス10L(
図1(b)参照)と、右グリップ7Rの近傍に設けられた右スイッチボックス10R(
図5(a)参照)とが設けられている。
【0067】
方向指示器8は、ライダーが左右折しようとするとき、車線変更を行おうとするときに、ライダーのフラッシャースイッチ20に対する操作により、所定の点滅パターンで点滅動作を行う。鞍乗型車両1には、4つの方向指示器8が設けられている。具体的には、
図1(a)に示すとおり、鞍乗型車両1には、方向指示器8として、前方Fr及び後方Rrのそれぞれに左指示ランプ8Lが設けられている。また、鞍乗型車両1には、
図1(a)では前方Frの左指示ランプ8Lに隠れた位置に前方Frの右指示ランプ8Rが設けられており、
図1(a)では後方Rrの左指示ランプ8Lに隠れた位置に後方Rrの右指示ランプ8Rが設けられている。
【0068】
なお、以下の説明では、前方Frに設けられた左指示ランプ8L、及び後方Rrに設けられた左指示ランプ8Lを総称して、単に「左指示ランプ8L」と記載して説明する。また、前方Frに設けられた右指示ランプ8R、及び後方Rrに設けられた右指示ランプ8Rを総称して、単に「右指示ランプ8R」と記載して説明する。
【0069】
各スイッチボックス10には、鞍乗型車両1が備える装置を動作させるために用いられる種々のスイッチが設けられている。例えば、
図1(b)に示すとおり、左スイッチボックス10Lには、進路変更や右左折時に、鞍乗型車両1が備える方向指示器8(灯火器)を点滅させるために用いられるフラッシャースイッチ20が設けられている。
【0070】
また、
図1(b)に示すとおり、左スイッチボックス10Lには、鞍乗型車両1が備えるメーターパネル(図示を省略)の表示や表示された画像を選択、決定するための操作に用いられるメーター操作スイッチ23、警笛を鳴らすフォーンスイッチ24、及びハザードランプ(灯火器)の点灯操作を行うためのハザードスイッチ25が設けられている。さらに、左スイッチボックス10Lには、変速機のシフト操作を行うためのシフト操作部13(
図4参照)、ヘッドライトの上向き下向きを切り替えるディマースイッチ(図示を省略)などが設けられている。
【0071】
<フラッシャースイッチの構成>
図1を参照して、フラッシャースイッチ20(ハンドルスイッチ)の構成について説明する。
図1は、フラッシャースイッチ20を備える鞍乗型車両1を示す左側面図と、鞍乗型車両1の左スイッチボックス10Lを示す平面図と、フラッシャースイッチ20の操作を示す模式図と、フラッシャースイッチ20の操作を行った場合の操作荷重のグラフとを併せて示す図である。
【0072】
フラッシャースイッチ20は、ライダーが左グリップ7Lを握りながら左グリップ7Lを握っている手の指(左手の指)によって操作するように構成されている。また、
図1(b)に示すとおり、フラッシャースイッチ20には、右操作部22、及び左操作部21が形成されている。鞍乗型車両1では、右操作部22を押し下げる操作が行われると右指示ランプ8Rが点滅し、左操作部21を押し下げる操作が行われると左指示ランプ8Lが点滅するようになっている。なお、フラッシャースイッチ20に対する操作、及び各操作に対応する方向指示器8の点滅動作については、後で説明する。
【0073】
図2(a-1)、及び(a-2)に示すとおり、フラッシャースイッチ20の右操作部22には、ライダーが鞍乗型車両1の左右方向Xの中心に向けて(右方Rに向けて)押すように操作可能な傾斜面22aが形成されている。右操作部22の傾斜面22aは、ライダーの指が当たる指当たり面となっている。これにより、鞍乗型車両1では、ライダーが右操作部22を操作しやすくなっている。
【0074】
図1(b)に示すとおり、フラッシャースイッチ20は、左グリップ7Lの中心軸線L1と交差する方向に延びる揺動軸線L2(上下方向Hに対して角度をなす軸線)を中心として、揺動軸線L2回りの方向B1(第1方向)に移動可能となっている。また、フラッシャースイッチ20は、左グリップ7Lの中心軸線L1と交差する方向に延びる揺動軸線L3(上下方向Hに対して角度をなす軸線)を中心として、揺動軸線L3回りの方向B2(第1方向)に移動可能となっている。すなわち、フラッシャースイッチ20は、揺動軸線L2回りの方向B1、及び揺動軸線L3回りの方向B2に揺動可能なシーソー式のスイッチとなっている。このように、本実施形態の鞍乗型車両1では、フラッシャースイッチ20は、2つの揺動軸線を有している。
【0075】
鞍乗型車両1では、フラッシャースイッチ20に対して、右操作部22に対する操作と、左操作部21に対する操作とを行い得る。
図1(c)に示すとおり、右操作部22に対して押し下げるように操作が行われると、フラッシャースイッチ20は揺動軸線L2を中心として揺動方向BRに傾く。また、
図1(c)に示すとおり、左操作部21に対して押し下げるように操作が行われると、フラッシャースイッチ20は揺動軸線L3を中心として揺動方向BLに傾く。
【0076】
また、
図1(c)に示すとおり、フラッシャースイッチ20は、初期位置からライダーが操作を行った場合に、第1段階目の操作と、第1段階目の操作よりも操作に要する操作量が大きい第2段階目の操作との、2段階の操作を行うことができるようになっている。第1段階目の操作、及び第2段階目の操作は、同じ方向に対する操作であり、かつ操作に必要となる操作荷重及び操作量が異なる。
【0077】
例えば、
図1(c)及び(d)に示すとおり、フラッシャースイッチ20では、初期位置から右操作部22を押し下げる操作(揺動方向BRに第1操作量M1分を揺動させる操作)を行うことで、第1段階目の操作を行うことができる。また、フラッシャースイッチ20では、初期位置から右操作部22を揺動方向BRに押し下げる動作であり、第1操作量M1よりも大きい第2操作量M2の動作を行うことで、第2段階目の操作を行うことができる。このように、フラッシャースイッチ20では、第1段階目の操作時と、第2段階目の操作時とで、必要となる操作量が異なる。具体的には、鞍乗型車両1では、第1段階目の操作に要する第1操作量M1は、第2段階目の操作に要する第2操作量M2の1/3以上、かつ2/3以下となっている(
図1(d)の例では、第1操作量M1は第2操作量M2の概ね半分)。また、フラッシャースイッチ20では、第1段階目の操作に対する操作感、及び第2段階目の操作に対する操作感の双方をライダーが得られるようになっている。
【0078】
また、
図1(d)に示すとおり、フラッシャースイッチ20では、第1段階目の操作には第1最大操作荷重N1を要し、第2段階目の操作には第2最大操作荷重N2を要する。さらに、第2最大操作荷重N2は、第1最大操作荷重N1よりも大きい。そのため、鞍乗型車両1では、フラッシャースイッチ20の第1段階目の操作時と、第2段階目の操作時とで、異なる操作荷重及び操作量によりそれぞれの操作を区別して認識することができる。
【0079】
なお、左操作部21でも、右操作部22と同様に第1段階目、及び第2段階目の操作を行い得る。左操作部21を押し下げる操作を行うと、フラッシャースイッチ20は揺動方向BLに傾く。また、フラッシャースイッチ20では、第1段階目の操作が行われた後、及び第2段階目の操作が行われた後にライダーがフラッシャースイッチ20から指を離した後には、初期位置の姿勢にもどるようになっている。
【0080】
上記のとおり、鞍乗型車両1では、フラッシャースイッチ20(ハンドルスイッチ)は、ライダーが指で方向B1,B2(第1方向)への操作を行い得るものであり、ライダーが指を離すと、フラッシャースイッチ20は初期位置に戻るようになっており、初期位置からの操作量として第1操作量M1の操作による第1段階目の操作と、初期位置からの操作量として第1操作量M1よりも大きい第2操作量M2による第2段階目の操作と、が可能であり、第1操作量M1において要する最大の操作荷重は、第1最大操作荷重N1であり、第2操作量M2において要する最大の操作荷重は、第1最大操作荷重よりも大きい第2最大操作荷重N2となっており、第1操作量M1を超えたとき、及び第2操作量M2を超えたときのそれぞれで、操作荷重の増加率が大きくなる方向に変化し、操作荷重の増加率が大きくなる方向に変化することにより、第1段階目の操作を行ったとき及び第2段階目の操作を行ったときのそれぞれで、操作感が得られるようになっている。
【0081】
上記の構成により、鞍乗型車両1では、フラッシャースイッチ20の操作をライダーに認識させ易くしつつ、誤操作の発生を抑制し、フラッシャースイッチ20の利便性を向上させることができる。
【0082】
なお、
図1(d)に示すとおり、鞍乗型車両1では、第1最大操作荷重N1から第2最大操作荷重N2に至る間には、操作荷重の谷となる第1中間操作荷重N3が設けられている。また、第1最大操作荷重N1と第1中間操作荷重N3との差分を第1荷重落差N5とすると、第1荷重落差N5は、第1最大操作荷重N1の1/4以上(
図1(d)に示す例では、1/2程度)となっている。また、鞍乗型車両1では、第2操作量M2を超えて操作を行った場合の操作荷重の谷となる第2中間操作荷重N4が設けられている。また、第2最大操作荷重N2と第2中間操作荷重N4との差分を第2荷重落差N6とすると、第2荷重落差N6は、第2最大操作荷重N2の1/4以上となっている(
図1(d)に示す例では、1/3程度)。
【0083】
なお、本発明の鞍乗型車両は、本実施形態に限定されず、中間最小操作荷重を設けないものとしてもよい。例えば、中間最小操作荷重を設けない第1の例として、
図8(b)に示す構成とすることができる。
図8(b)に示す例に係る鞍乗型車両1では、第1最大操作荷重N1aから第2最大操作荷重N2aに至る間には、操作荷重の谷となる中間最小操作荷重が設けられておらず、第1最大操作荷重N1aを維持しながら所定量の操作を要する構成となっている。
【0084】
具体的には、
図8(b)に示す例に係る鞍乗型車両1では、第1最大操作荷重N1aから第2最大操作荷重N2aに至る間には、操作荷重の谷となる中間最小操作荷重が設けられておらず、所定のタイミングまで操作荷重が大きくなり、その後第1操作量M1aまで第1最大操作荷重N1aでの操作を行う構成になっている。また、第1操作量M1aを超えたタイミングT1(第2段階目の操作に移行したタイミング)で操作荷重の増加比率が大きくなる構成となっている。
図8(b)に示す例では、ライダーがフラッシャースイッチ20の操作を行った場合、第1操作量M1aを超えたときに、フラッシャースイッチ20が重くなる感覚(操作感)を得ることとなる。これにより、
図8(c)に示す例に係る鞍乗型車両1では、ライダーが第1段階目の操作を行ったことを認識することとなる。
【0085】
図8(b)に示す例では、第2操作量M2aを超えて操作を行った場合の操作荷重の谷となる第2中間操作荷重N4aが設けられている。また、第2最大操作荷重N2aと第2中間操作荷重N4aとの差分を第2荷重落差N6aとすると、第2荷重落差N6aは、第2最大操作荷重N2aの1/4以上となっている(
図8(b)に示す例では、1/3程度)。
【0086】
中間最小操作荷重を設けない第2の例として、例えば、
図8(c)に示す構成とすることができる。
図8(c)に示す例に係る鞍乗型車両1では、第1最大操作荷重N1bから第2最大操作荷重N2bに至る間には、操作荷重の谷となる中間最小操作荷重が設けられておらず、第1操作量M1bまで操作荷重が大きくなり、第1操作量M1bを超えたタイミングT1で操作荷重の増加比率が大きくなる構成となっている。また、第1操作量M1b中の最大操作荷重(第1最大操作荷重N1b)は、第1操作量M1bに到達したとき(タイミングT1)となっている。
図8(c)に示す例では、ライダーがフラッシャースイッチ20の操作を行った場合、第1操作量M1bを超えたときに、さらにフラッシャースイッチ20が重くなる感覚(操作感)を得ることとなる。これにより、
図8(c)に示す例に係る鞍乗型車両1では、ライダーが第1段階目の操作を行ったことを認識することとなる。
【0087】
図8(c)に示す例では、
図1(d)に示す例、及び
図8(b)に示す例と同様に、第2操作量M2bを超えて操作を行った場合の操作荷重の谷となる第2中間操作荷重N4bが設けられている。また、第2最大操作荷重N2bと第2中間操作荷重N4bとの差分を第2荷重落差N6bとすると、第2荷重落差N6bは、第2最大操作荷重N2bの1/4以上となっている(
図8(c)に示す例では、1/3程度)。
【0088】
ここで、
図9において参考例として示すフラッシャースイッチについて説明する。
図9のフラッシャースイッチでは、第1段階目の操作から第2段階目の操作に移行する際に、操作荷重の増加率に変化がない構成となっている。すなわち、
図9に示す参考例では、第2最大操作荷重に至るまで操作荷重の増加率が略一定となっており、本願発明のような効果を得にくい。
【0089】
<フラッシャースイッチに対する各操作に対応する方向指示器の動作>
次に、フラッシャースイッチ20の各操作と、対応する方向指示器8の点滅動作について、
図2(b)を参照しつつ説明する。
【0090】
鞍乗型車両1では、フラッシャースイッチ20に対して、右操作部22に対する第1段階目の操作、右操作部22に対する第2段階目の操作、左操作部21に対する第1段階目の操作、及び左操作部21に対する第2段階目の操作との、4つのパターンの操作及びこれらの操作に対応する4つの機能を実現可能となっている。
【0091】
具体的には、本実施形態のフラッシャースイッチ20では、第1段階目の操作時には、方向指示器8を所定回数(例えば3回)点滅させた後、方向指示器8の点滅動作が終了する(ワンタッチ操作)。また、フラッシャースイッチ20では、第2段階目の操作時には、他の操作が行われるまで方向指示器8を継続して点滅させる(ターン操作)。このように、フラッシャースイッチ20では、第1段階目の操作に対応する方向指示器8の点滅動作は、第2段階目の操作に対応する方向指示器8の点滅動作と異なる。
【0092】
なお、以下の説明では、右操作部22に対する第1段階目の操作を単に「右ワンタッチスイッチ操作」、右操作部22に対する第2段階目の操作を単に「右ターンスイッチ操作」、左操作部21に対する第1段階目の操作を単に「左ワンタッチスイッチ操作」、及び左操作部21に対する第2段階目の操作を単に「左ターンスイッチ操作」と、それぞれ称して説明する場合がある。また、フラッシャースイッチ20に対する操作が行われていない状態、又はフラッシャースイッチ20に対する操作による機能がキャンセルされた状態を総称して、単に「キャンセル中」と称して説明する場合がある。すなわち、「キャンセル中」とは、方向指示器8の点滅動作が行われていない状態(初期状態)を意味する。
【0093】
ワンタッチスイッチ操作は、例えば、車線変更時を想定している。鞍乗型車両1は、ワンタッチスイッチ操作が行われた場合、方向指示器8を数回点滅させた後に自動的に点滅動作を終了する。これにより、鞍乗型車両1では、ライダーがわざわざ方向指示器8の点滅キャンセル操作を行う必要がない。その結果、鞍乗型車両1は、車線変更時などのライダーの利便性を向上させている。
【0094】
また、ターンスイッチ操作は、右左折待機時を想定している。鞍乗型車両1は、ターンスイッチ操作が行われた場合、キャンセル動作が行われるまで方向指示器8の点滅動作を継続する。
【0095】
なお、以下の説明では、ワンタッチスイッチ操作による方向指示器8の所定回数の点滅動作を、単に「ワンタッチ点滅中」又は「第1点滅動作」と記載して説明する場合がある。また、ワンタッチ点滅中のうち、左操作部21に対する1段階目の操作による点滅動作を「左ワンタッチ点滅」と、右操作部22に対する1段階目の操作による点滅動作を「右ワンタッチ点滅」と記載して説明する場合がある。
【0096】
また、ターンスイッチ操作による方向指示器8の継続した点滅動作を、単に「継続点滅」又は「第2点滅動作」と記載して説明する場合がある。また、継続点滅中のうち、左操作部21に対する2段階目の操作による点滅動作を「左継続点滅」と、右操作部22に対する2段階目の操作による点滅動作を「右継続点滅」と記載して説明する場合がある。
【0097】
<スイッチの切り替えタイミングについて>
ここで、フラッシャースイッチ20のスイッチ切り替えタイミングについて説明する。なお、以下の説明では、方向指示器8が点滅動作を行っていない初期状態から点滅動作を行う状態への切り替え(オフ状態からオン状態への切り替え)と、方向指示器8が点滅動作を行っている状態から動作を行っていない初期状態への切り替え(オン状態からオフ状態への切り替え)と、現在の点滅動作から他の点滅動作への切り替えと、を総称して、単に「スイッチの切り替え」と記載して説明する場合がある。また、第1点滅動作(方向指示器8の所定回数の点滅動作)に係る状態を「第1点滅動作ON」と、第2点滅動作(方向指示器8の点滅動作の継続)に係る状態を「第2点滅動作ON」と、それぞれ記載して説明する場合がある。
【0098】
図8(a)に示すとおり、本実施形態の鞍乗型車両1では、フラッシャースイッチ20の初期状態(スイッチOFFの状態)から第1段階目の操作が行われると、第1最大操作荷重N1に到達した後であって第1操作量M1に到達する前のタイミングTx1に、スイッチOFFから第1点滅動作ONへとスイッチの切り替えが行われる。また、鞍乗型車両1では、第1点滅動作の実行中に第2段階目の操作が行われると、第2最大操作荷重N2に到達した後であって第2操作量M2に到達する前のタイミングTx2に、第1点滅動作ONの状態から第2点滅動作ONの状態へとスイッチの切り替えが行われる。さらに、第2点滅動作の実行中に第1段階目の操作又は第2段階目の操作が行われると、第1最大操作荷重N1に到達した後であって第1操作量M1に到達する前のタイミングTx1に、第2点滅動作ONの状態からスイッチOFFの状態へとスイッチの切り替えが行われる(点滅動作がキャンセルされる)。
【0099】
なお、本発明の鞍乗型車両では、スイッチの切り替えタイミングTx1,Tx2は本実施形態に限定されない。例えば、本発明の鞍乗型車両では、スイッチの切り替えタイミングTx1,Tx2は、各段階の操作における中間操作荷重の到達時(第1操作量又は第2操作量に到達したとき)であってもよい。例えば、第1段階目の操作から第2段階目の操作に移行するタイミング(第1操作量M1に到達したタイミングT1)で、第1段階目の操作に関するスイッチの切り替えを行ってもよい。また、第2段階目の操作に関するスイッチの切り替えタイミングTx2は、第2操作量M2に到達したときであってもよい。なお、本発明の鞍乗型車両では、スイッチの切り替えタイミングTx1,Tx2は、各段階の操作における中間操作荷重を越えたときであってもよい。
【0100】
<キャンセル中の操作>
図2(b)を参照しつつ、フラッシャースイッチ20の操作と、その操作により実行される方向指示器8の点滅動作について、具体例を挙げて説明する。
図2(b)に示すとおり、現在の状態がキャンセル中(初期状態)である場合に右ターンスイッチ操作(右操作部22に対する第2段階目の操作)が行われると、方向指示器8の右指示ランプ8Rが点滅動作(右継続点滅)を開始し、他の操作が行われるまで同じ点滅動作が継続される。また、現在の状態がキャンセル中(初期状態)である場合に右ワンタッチスイッチ操作(右操作部22に対する第1段階目の操作)が行われると、右指示ランプ8Rが点滅動作(右ワンタッチ点滅)を開始し、所定回数(例えば3回)の点滅動作を行った後、点滅動作は自動的に終了する。
【0101】
さらに、現在の状態がキャンセル中(初期状態)である場合に左ターンスイッチ操作(左操作部21に対する第2段階目の操作)が行われると、左指示ランプ8Lが点滅動作(左継続点滅)を開始し、他の操作が行われるまで点滅動作が継続される。また、現在の状態がキャンセル中(初期状態)である場合に左ワンタッチスイッチ操作(左操作部21に対する第1段階目の操作)が行われると、左指示ランプ8Lが点滅動作(左ワンタッチ点滅)を開始し、所定回数(例えば3回)の点滅動作を行った後、点滅動作は自動的に終了する。
【0102】
<左ワンタッチ点滅中(左指示ランプ3回点滅中)の右ターンスイッチ操作>
図2(b)に示すとおり、現在の状態が左ワンタッチ点滅中である場合に右ターンスイッチ操作が行われると、左指示ランプ8Lの点滅動作がキャンセル(左消灯)され、右指示ランプ8Rが点滅動作を開始する。具体的には、左指示ランプ8Lが所定回数の点滅動作を終了する前に右操作部22に対する第2段階目の操作が行われると、左指示ランプ8Lの点滅動作がキャンセル(左消灯)され、右指示ランプ8Rが点滅動作(右継続点滅)を開始する。なお、右指示ランプ8Rの点滅動作(右継続点滅)は、他の操作が行われるまで継続する(右継続点滅)。
【0103】
現在の状態が左ワンタッチ点滅中である場合に右ワンタッチスイッチ操作が行われると、左指示ランプ8Lの点滅動作がキャンセル(左消灯)され、右指示ランプ8Rが点滅動作(右ワンタッチ点滅)を開始する。具体的には、左指示ランプ8Lが所定回数の点滅動作を終了する前に右操作部22に対する第1段階目の操作が行われると、左指示ランプ8Lの点滅動作がキャンセル(左消灯)され、右指示ランプ8Rが点滅動作(右ワンタッチ点滅)を開始する。なお、右指示ランプ8Rの点滅動作(右ワンタッチ点滅)は、所定回数行われた後に終了する(右ワンタッチ点滅)。
【0104】
現在の状態が左ワンタッチ点滅中である場合に左ターンスイッチ操作が行われると、左指示ランプ8Lの点滅動作が継続して行われるようになる(左継続点滅)。具体的には、左指示ランプ8Lが所定回数の点滅動作を終了する前に左操作部21に対する第2段階目の操作が行われると、左指示ランプ8Lの点滅動作が継続して行われるようになる。
【0105】
現在の状態が左ワンタッチ点滅中である場合に左ワンタッチスイッチ操作が行われると、左指示ランプ8Lの点滅動作の実行回数(点滅回数)が更新される。具体的には、左指示ランプ8Lが所定回数の点滅動作を終了する前に左操作部21に対する第1段階目の操作が行われると、左指示ランプ8Lの点滅動作の実行回数(点滅回数)が更新される。すなわち、左指示ランプ8Lの点滅動作は、所定回数の点滅動作が最初から行われ、所定回数の点滅動作が終了すると消灯する(左ワンタッチ点滅の回数更新)。
【0106】
<動作継続中のキャンセル操作>
ここで、鞍乗型車両1では、右指示ランプ8Rが継続して点滅動作を行っているとき(右継続点滅中)、又は左指示ランプ8Lが継続して点滅動作を行っているとき(左継続点滅中)に、フラッシャースイッチ20に対する前の操作と同方向の操作が行われると、方向指示器8で行われている現在の点滅動作がキャンセルされるようになっている。すなわち、鞍乗型車両1では、フラッシャースイッチ20に対する第2段階目の操作に対応する方向指示器8の動作が行われているときに、フラッシャースイッチ20に対する第1段階目の操作又は第2段階目の操作が行われることにより、現在行われている方向指示器8の点滅動作をキャンセルするように構成されている。
【0107】
例えば、鞍乗型車両1では、右指示ランプ8Rが継続して点滅動作を行っているとき(右継続点滅中)に右操作部22に対する第2段階目の操作(右ターンスイッチ操作)、又は右操作部22に対する第1段階目の操作(右ワンタッチスイッチ操作)が行われると、その点滅動作(右継続点滅)がキャンセルされる。また、鞍乗型車両1では、左指示ランプ8Lが継続して点滅動作を行っているとき(左継続点滅中)に左操作部21に対する第2段階目の操作(左ターンスイッチ操作)、又は左操作部21に対する第1段階目の操作(左ワンタッチスイッチ操作)が行われると、その点滅動作(左継続点滅)がキャンセルされる。
【0108】
このように、鞍乗型車両1では、ターン点滅動作を行っていた場合(継続点滅中)にはフラッシャースイッチ20に対する直前の操作と同方向の操作によりその点滅動作がキャンセルされる。すなわち、フラッシャースイッチ20では、方向指示器8が継続点滅動作を行っていたとしても、他のキャンセルスイッチなどへの操作を要さず、フラッシャースイッチ20に対する操作により、その点滅動作(継続点滅)をキャンセル可能となっている。
【0109】
また、鞍乗型車両1では、方向指示器8が左ワンタッチ点滅動作(左指示ランプ8Lの3回の点滅動作)を行っているときにフラッシャースイッチ20の右ワンタッチ操作又は右ターンスイッチ操作が行われると、その点滅動作(左ワンタッチ点滅)がキャンセルされる。さらに、鞍乗型車両1では、方向指示器8が右ワンタッチ点滅動作(右指示ランプ8Rの3回の点滅動作)を行っているときにフラッシャースイッチ20の左ワンタッチ操作又は左ターンスイッチ操作が行われると、その点滅動作(右ワンタッチ点滅)がキャンセルされる。すなわち、鞍乗型車両1では、方向指示器8が所定回数の点滅動作(ワンタッチ点滅)を行っているときには、他のボタン(例えばキャンセルボタン)などへの操作を要さず、フラッシャースイッチ20に対する前回の操作時の方向とは異なる方向(他方向)の操作により、その動作(ワンタッチ点滅)をキャンセル可能となっている。このように、鞍乗型車両1では、上記の構成によりキャンセルボタンを要さず、キャンセル機能を備えるフラッシャースイッチ20を実現している。
【0110】
ここで、従来のフラッシャースイッチでは、現在行われている動作をキャンセルするためのキャンセルボタンが設けられている場合がある。例えば、従来のフラッシャースイッチでは、現在行われている方向指示器8の点滅動作(例えば右指示ランプ8Rの点滅動作の継続など)をキャンセルするためのキャンセルボタンが設けられている場合がある。また、キャンセルボタンが設けられた従来のフラッシャースイッチでは、キャンセルボタンを設けるスペースが必要となるため、フラッシャースイッチを配置させる位置、及びフラッシャースイッチの操作部の構成(大きさなど)が制限されていた。
【0111】
例えば、キャンセルスイッチが設けられたフラッシャースイッチでは、左指示ランプの操作を行う左操作部と右指示ランプの操作を行う右操作部との間にキャンセルボタンが設けられている場合がある。ここで、フラッシャースイッチの中央にキャンセルボタンが設けられている場合、左操作部は比較的ライダーの左手の指に近いものの、フラッシャースイッチの中央にキャンセルボタンがあるため、右操作部(右側のノブ)がライダーの左手の指から遠い位置となっていた。また、フラッシャースイッチの右操作部をライダーの左手の指により近づけて、さらに操作性を向上したいとの要望があった。
【0112】
このような従来のフラッシャースイッチの構成を改善すべく本発明の発明者らが検討したところ、キャンセルボタンを設けずともフラッシャースイッチの操作によりキャンセル機能を実現可能とすれば、フラッシャースイッチの構成の自由度を拡大することができるとの知見に至った。本実施形態の鞍乗型車両1では、フラッシャースイッチ20の右操作部22をライダーの左手の親指に近づけるように構成されている。これにより、鞍乗型車両1では、ライダーのフラッシャースイッチ20の操作性を向上させている。
【0113】
<リード線の収容>
次に、
図3を参照しつつ、スイッチボックス10に設けられたリード線挿通部12について説明する。
【0114】
図3(b)に示すとおり、本実施形態の鞍乗型車両1では、スイッチボックス10の内側に、ハンドル挿通部11と、リード線挿通部12とが形成されている。
図3(b)に示すとおり、リード線挿通部12は、ハンドル挿通部11の下方Lwの開口を一部拡大するように形成されている。また、
図3(c)に示すとおり、リード線挿通部12は、左右方向Xに延びるように形成されている。さらに、リード線挿通部12は、左右方向Xの両端のうち、リード線30入口となる端部に形成された第1開口12aから他方の端部に形成された第2開口12bに向けて、開口径が縮小するような先細り形状となっている。
【0115】
上記の構成により、鞍乗型車両1では、スイッチボックス10に対するリード線30の組み付け時に、入口(第1開口12a)はリード線30を挿通させやすく、出口(第2開口12b)はリード線30の位置が決まるようになっている。このようにして、鞍乗型車両1では、リード線30の組み付け時の作業効率の向上を実現している。また、鞍乗型車両1では、スイッチボックス10の内部にグリップウォーマーのリード線30を通過させてハンドルバー6に沿って配策することで、スイッチボックス10の外部にリード線30が露出しないようになっている。その結果、鞍乗型車両1では、スイッチボックス10周辺の見栄えを向上させることができる。
【0116】
なお、本実施形態では、左スイッチボックス10Lを一例として示したが、上記の構成(リード線挿通部12)は、右スイッチボックス10Rに適用してもよい。
【0117】
<シフト操作部の構成>
次に、
図4を参照しつつ、シフト補助装置の操作部(シフト操作部13)の構成について説明する。図示を省略するが、鞍乗型車両1には、変速機のシフトアップダウンの操作(シフト操作)を補助するシフト補助装置が設けられている。シフト操作部13は、シフト補助装置のアクチュエータ(図示を省略)を駆動するために用いられるものである。
【0118】
図4に示すとおり、シフト操作部13は、左スイッチボックス10Lの前方Frに延在するレバーとして設けられている。シフト操作部13には、前方Frのレバーとして第1ノブ14と、後方Rrのレバーである第2ノブ15とが設けられている。本実施形態の鞍乗型車両1では、シフト操作部13は、第1ノブ14及び第2ノブ15のそれぞれに、ライダーの指が当たるような2箇所の操作部16(指当たり面)が形成されている。より詳細に説明すると、第1ノブ14には、第1操作部16aと、第2操作部16bとの、2つの操作部16(指当たり面)が形成されている。また、第2ノブ15には、第3操作部16cと、第4操作部16dとの2つの操作部16(操作面)が形成されている。このように、鞍乗型車両1では、シフト操作のレバーとなるノブが2つ設けられており(第1ノブ14及び第2ノブ15)、ライダーの指による操作面(操作部16)が複数(本実施形態では4つ)形成されている。
【0119】
図4に示すとおり、第1操作部16a、第2操作部16b、及び第3操作部16cは、ライダーが人差し指で操作可能となっている(
図4中の仮想線部分参照)。また、第4操作部16dは、ライダーが親指で操作可能となっている(
図4中の破線部分参照)。なお、ライダーの親指による操作面となる第4操作部16dは、ハンドルバー6の中心軸L3より前方Frに配置されている。
【0120】
このように、本実施形態に係るシフト操作部13は、4つの操作部16を備えている。これにより、シフト操作部13は、ライダーが好みに応じて操作方法を選ぶことができる。その結果、シフト操作部13は、ライダーのシフト操作時の操作性向上に貢献することができる。
【0121】
具体的には、ライダーが人差し指と親指とで操作したい場合や、第1ノブ14又は第2ノブ15のいずれかのみで操作したい場合がある。このような場合に、本実施形態のシフト操作部13では、例えば、人差し指だけで操作を行いたい場合には、(a)第1ノブ14のみによる操作(第1操作部16a、及び第2操作部16b)、又は(b)第2ノブ15(第3操作部16c)及び第1ノブ14(第2操作部16b)による操作の、いずれかを選択ことができる。また、例えば、人差し指及び親指により操作を行いたい場合には、(c)第1ノブ14(第1操作部16a)及び第2ノブ15(第4操作部16d)による操作、又は(d)第2ノブ15のみによる操作(第3操作部16c、及び第4操作部16d)の、いずれかを選択することができる。
【0122】
<リード線のカバー>
次に、右スイッチボックス10Rの近傍に設けられたリード線のカバー17について説明する。
図5は、右スイッチボックス10Rの近傍にあるストップスイッチ26に取り付けられたカバー17を示している。
図5(a)に示すとおり、本実施形態では、カバー17は箱状の収容体となっている。
【0123】
図5に示すとおり、右スイッチボックス10Rの近傍には、ストップスイッチのリード線31が取り付けられている。カバー17は、複数のリード線31をまとめて収容可能となっている。このように、鞍乗型車両1では、カバー17により折り返しのリード線31を丸ごと包み込む構造とすることで、リード線の長さのバラつきによる見栄えの低下を抑制し、見栄えを向上させている。
【0124】
<スイッチボックスの取り付け構造>
次に、ハンドルバー6へのスイッチボックス10の取り付け構造について、
図6を参照しつつ説明する。
【0125】
図6(a)に示すとおり、本実施形態の鞍乗型車両1では、ハンドルバー6にスイッチボックス10を取り付ける場合、先ずハンドルバー6の位置決め孔6aにクリップ18の突起部18aを嵌め込む。次いで、スイッチボックス10のハンドル挿通部11にハンドルバー6を挿通させてスイッチボックス10をハンドルバー6の軸線に沿って(左右方向Xに沿って)移動させる。次に、クリップ18のねじ孔18b、及びスイッチボックス10のねじ孔10bにスクリュ19を挿通させてスイッチボックス10とクリップ18とを締結する。このようにして、クリップ18を介してスイッチボックス10がハンドルバー6に対して取り付けられる。
【0126】
図6(b)に示すとおり、スイッチボックス10がハンドルバー6に対して取り付けられた状態では、クリップ18とスイッチボックス10とがスクリュ19により締結される。そのため、クリップ18とスイッチボックス10との間のガタが低減する。また、スクリュ19を取り外せば、スイッチボックス10をハンドルバー6から容易に取り外すことができる。このように、本実施形態の鞍乗型車両1では、スイッチボックス10の取り外しも容易になり、整備性を向上させることができる。
【0127】
ここで、
図7を参照しつつ、スイッチボックス10のハンドルバー6への取り付け構造の従来の例について説明する。
図7に示すとおり、スイッチボックス10のハンドルバー6への取り付け構造として、突起部53a及び係止部53bが形成されたクリップ53が用いられる場合がある。ハンドルバー6には、突起部53aが嵌め込まれる位置決め孔6aが形成されている。
図7に示すとおり、スイッチボックス10をハンドルバー6に取り付ける場合、先ずクリップ53の突起部53aを位置決め孔6aに嵌め込んだ後、スイッチボックス10をクリップ53の位置までスライドさせる。スイッチボックス10に形成された凹部10aに突起部53aが嵌め込まれる位置までスイッチボックス10を移動させると、ハンドルバー6に対してスイッチボックス10が位置決めされる。
【0128】
係止部53bが形成されたクリップ53を用いてスイッチボックス10をハンドルバー6に取り付ける場合、取り付けた後、構成部品同士のガタ(スイッチボックス10とクリップ53との間のガタと、クリップ53とハンドルバー6との間のガタ)が発生することがあった。また、クリップ53を一度入れてしまうと外すのに特殊工具等が必要となり、取り外しが面倒となる。
図6に示すスイッチボックス10のハンドルバー6への取り付け構造では、このようなガタの問題(特に、クリップ53とハンドルバー6との間のガタが生じること)を改善するとともに、特殊工具が不要となり、整備性を向上させている。
【0129】
(その他の実施形態)
本明細書において記載と図示の少なくとも一方がなされた実施形態及び変形例は、本開示の理解を容易にするためのものであって、本開示の思想を限定するものではない。上記の実施形態及び変形例は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得る。当該趣旨は、本明細書に開示された実施形態に基づいて当業者によって認識されうる、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、実施形態及び変形例に跨る特徴の組み合わせ)、改良、変更を包含する。特許請求の範囲における限定事項は当該特許請求の範囲で用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態及び変形例に限定されるべきではない。そのような実施形態及び変形例は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、本明細書において、「好ましくは」、「よい」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」、「よいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。
【符号の説明】
【0130】
1 鞍乗型車両
8 方向指示器(灯火器)
8L 左指示ランプ(灯火器、方向指示器)
8R 右指示ランプ(灯火器、方向指示器)
20 フラッシャースイッチ(ハンドルスイッチ)
M1 第1操作量
M2 第2操作量
N1 第1最大操作荷重
N2 第2最大操作荷重
N3 第1中間操作荷重