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特開2024-168484水素センサ、水素検知システム、および水素センサ用シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168484
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】水素センサ、水素検知システム、および水素センサ用シート
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20241128BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G01N27/12 B
G01N27/04 F
G01N27/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085202
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信行
(72)【発明者】
【氏名】松本 司
(72)【発明者】
【氏名】吉野 修弘
(72)【発明者】
【氏名】宮代 香衣
(72)【発明者】
【氏名】磯田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 智
(72)【発明者】
【氏名】荒木 登
【テーマコード(参考)】
2G046
2G060
【Fターム(参考)】
2G046AA05
2G046BA03
2G046BA09
2G046BB02
2G046BB08
2G046BC03
2G046BC07
2G046FB02
2G046FE46
2G060AA01
2G060AB03
2G060AE19
2G060AF07
2G060AG03
2G060AG10
2G060BB09
2G060BB18
2G060JA01
2G060KA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】広い範囲においても水素ガスを検知でき、水素漏洩個所の特定も可能な水素センサを提供する。
【解決手段】本開示は、基板と、上記基板の第1面に配置され、水素ガスを水素原子に解離する触媒、および酸化タングステンを含む感応膜と、電気抵抗の変化を検出する制御部と、上記基板の第1面に配置され、上記制御部に接続された第1バス電極および第2バス電極と、上記基板の第1面に上記感応膜に接して配置され、上記第1バス電極に接続された複数の第1センサ電極と、上記基板の第1面に上記感応膜に接して配置され、上記第2バス電極に接続された複数の第2センサ電極と、を有し、上記第1センサ電極および上記第2センサ電極は、上記感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置されている、水素センサを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第1面に配置され、水素分子を解離する触媒、および酸化タングステンを含む感応膜と、
電気抵抗の変化を検出する制御部と、
前記基板の第1面に配置され、前記制御部に接続された第1バス電極および第2バス電極と、
前記基板の第1面に前記感応膜に接して配置され、前記第1バス電極に接続された複数の第1センサ電極と、
前記基板の第1面に前記感応膜に接して配置され、前記第2バス電極に接続された複数の第2センサ電極と、を有し、
前記第1センサ電極および前記第2センサ電極は、前記感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置されている、水素センサ。
【請求項2】
1つの前記第1バス電極および1つの前記第2バス電極が、一筆書き可能な線状に配置され、
前記第1バス電極の一方の端部および前記第2バス電極の一方の端部が、前記制御部に接続されている、請求項1に記載の水素センサ。
【請求項3】
前記制御部が、前記第1バス電極の一方の端部および前記第2バス電極の一方の端部に接続された第1制御部と、前記第1バス電極の他方の端部および前記第2バス電極の他方の端部に接続された第2制御部とを有する、請求項2に記載の水素センサ。
【請求項4】
前記第1バス電極および前記第2バス電極が、蛇行線状に配置されている、請求項2に記載の水素センサ。
【請求項5】
複数の前記第1バス電極および複数の前記第2バス電極が、フレキシブルプリント基板を介して前記制御部に接続されている、請求項1に記載の水素センサ。
【請求項6】
複数の前記第1バス電極が、第1方向に沿って配置され、
複数の前記第2バス電極が、前記第1方向と直交する第2方向に沿って配置され、
前記制御部が、複数の前記第1バス電極の一方の端部に接続された第3制御部と、複数の前記第2バス電極の一方の端部に接続された第4制御部とを有し、
前記第1バス電極および前記第2バス電極が交差する領域では、前記第1バス電極および前記第2バス電極の間に絶縁膜が配置されている、請求項1に記載の水素センサ。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかの記載の水素センサを用いた水素検知システム。
【請求項8】
ロール状の水素センサ用シートであって、
基板と、
前記基板の第1面に配置され、水素分子を解離する触媒、および酸化タングステンを含む感応膜と、
前記基板の第1面に配置され、蛇行線状に配置されたバス電極と、
前記基板の第1面に前記感応膜に接して配置され、前記バス電極に接続された複数の第1センサ電極および複数の第2センサ電極と、を有し、
前記第1センサ電極および前記第2センサ電極は、前記感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置されている、水素センサ用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素センサ、水素検知システム、および水素センサ用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護や化石燃料の枯渇防止の観点から、クリーンかつ循環可能なエネルギーの活用が望まれている。特に、水素ガスをエネルギー源として利用するための研究は、燃料電池を中心に活発に行われている。一方、水素ガスは、爆発限界濃度が4%から75%と広く、水素ガスをエネルギー源として普及させるには、水素の貯蔵や輸送等のハンドリングや、水素漏洩に対する安全装置が不可欠となる。
【0003】
例えば、都市ガスで用いられている付臭が考えられるが、水素ガスの場合、燃料電池の被毒、ガスタービンの劣化等の問題が生じる。そのため、付臭に代わる安全対策が求められている。そこで、安全性を確保するため、水素ガスの漏洩を検知する水素センサは、非常に重要になっている。
【0004】
従来の水素センサは、接触燃焼方式または半導体方式が主に用いられている。接触燃焼方式の水素センサは、白金やパラジウム等の触媒金属をヒータで加熱し、触媒に接触した水素ガスを空気中の酸素で酸化させる。この水素ガスの酸化作用で生ずる発熱を、触媒金属の導電率の変化として電気的に検出する。また、半導体方式の水素センサは、水素ガスの感応膜への吸着による感応膜の電気特性の変化、すなわち電気抵抗の変化を検出する。この半導体式の水素センサも接触燃焼式と同様に、ヒータで加熱した状態で使用される。このように、接触燃焼方式や半導体方式等の従来の水素センサでは、加熱を行うため、防爆対応が必要な水素ガスに対してリスクがあった。
【0005】
また、近年、ガスクロミック式の水素センサが注目されている。ガスクロミック式の水素センサは、水素の吸着により色が変化する三酸化タングステン等の金属酸化物と、水素ガスを水素原子に解離させる白金等の触媒とを備えており、光学的に水素ガスを検知する。三酸化タングステン等の金属酸化物は、水素の吸着により電気特性も変化することから、ガスクロミック式の水素センサは、電気的に水素ガスを検知することも可能である。(例えば特許文献1、2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4496204号公報
【特許文献2】特開2002-328108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の接触燃焼方式や半導体方式等の水素センサは、設置された場所の水素ガスを検知するものである。そのため、狭い範囲でしか水素ガスを検知することができない。また、水素漏洩箇所の特定も困難である。
【0008】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、広い範囲においても水素ガスを検知でき、水素漏洩個所の特定も可能な水素センサを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態は、基板と、上記基板の第1面に配置され、水素分子を解離する触媒、および酸化タングステンを含む感応膜と、電気抵抗の変化を検出する制御部と、上記基板の第1面に配置され、上記制御部に接続された第1バス電極および第2バス電極と、上記基板の第1面に上記感応膜に接して配置され、上記第1バス電極に接続された複数の第1センサ電極と、上記基板の第1面に上記感応膜に接して配置され、上記第2バス電極に接続された複数の第2センサ電極と、を有し、上記第1センサ電極および上記第2センサ電極は、上記感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置されている、水素センサを提供する。
【0010】
本開示の他の実施形態は、上述の水素センサを用いた水素検知システムを提供する。
【0011】
本開示の他の実施形態は、ロール状の水素センサ用シートであって、基板と、上記基板の第1面に配置され、水素分子を解離する触媒、および酸化タングステンを含む感応膜と、上記基板の第1面に配置され、蛇行線状に配置されたバス電極と、上記基板の第1面に上記感応膜に接して配置され、上記バス電極に接続された複数の第1センサ電極および複数の第2センサ電極と、を有し、上記第1センサ電極および上記第2センサ電極は、上記感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置されている、水素センサ用シートを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本開示における水素センサは、広い範囲においても水素ガスを検知でき、水素漏洩個所の特定も可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示における水素センサを例示する概略平面図である。
図2】本開示における水素センサを例示する概略平面図である。
図3】本開示における水素センサを例示する概略平面図である。
図4】本開示における水素センサを例示する概略平面図である。
図5】本開示における水素センサを例示する概略平面図である。
図6】本開示における水素センサを例示する概略平面図である。
図7】本開示における水素センサを例示する概略平面図である。
図8】本開示における水素センサを例示する概略平面図である。
図9】本開示における水素センサを例示する概略平面図である。
図10】本開示における水素センサを例示する概略平面図である。
図11】本開示における水素センサを例示する概略平面図である。
図12】本開示における水素検知システムを例示する模式図である。
図13】本開示における水素検知システムを例示する模式図である。
図14】本開示における水素センサ用シートを例示する概略斜視図である。
図15】本開示における水素センサ用シートを例示する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の態様の記載内容に限定して解釈されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部材の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0015】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面側に」または「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0016】
また、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されない。例えば、「シート」は、フィルムや板とも呼ばれるような部材も含む意味で用いられる。
【0017】
以下、本開示における水素センサ、水素検知システム、および水素センサ用シートについて、詳細に説明する。
【0018】
A.水素センサ
本開示における水素センサは、基板と、上記基板の第1面に配置され、水素分子を解離する触媒、および酸化タングステンを含む感応膜と、電気抵抗の変化を検出する制御部と、上記基板の第1面に配置され、上記制御部に接続された第1バス電極および第2バス電極と、上記基板の第1面に上記感応膜に接して配置され、上記第1バス電極に接続された複数の第1センサ電極と、上記基板の第1面に上記感応膜に接して配置され、上記第2バス電極に接続された複数の第2センサ電極と、を有し、上記第1センサ電極および上記第2センサ電極は、上記感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置されている。
【0019】
図1は、本開示における水素センサの一例を示す概略平面図である。図1に示すように、水素センサ1は、基板2と、基板2の第1面に配置され、水素分子を解離する触媒、および酸化タングステンを含む感応膜3と、電気抵抗の変化を検出する制御部4と、基板2の第1面に配置され、制御部4に接続された第1バス電極5および第2バス電極6と、基板2の第1面に感応膜3に接して配置され、第1バス電極5に接続された複数の第1センサ電極7と、基板2の第1面に感応膜3に接して配置され、第2バス電極6に接続された複数の第2センサ電極8と、を有する。第1センサ電極7および第2センサ電極8は、感応膜3の電気抵抗の変化を検出可能な間隔d1をあけて交互に配置されている。図1において、第1センサ電極7および第2センサ電極8は、一対の櫛歯電極である。
【0020】
本開示における水素センサは、触媒および酸化タングステンを含む感応膜が、水素と反応すると、電気抵抗が低下することを利用した水素センサである。本開示における水素センサの動作原理について説明する。
【0021】
酸化タングステン(WO)は、電気抵抗が高い。そのため、水素が存在しない雰囲気では、感応膜は、電気抵抗が高く、絶縁性を有する。このとき、第1センサ電極および第2センサ電極は絶縁され、非導通状態である。
【0022】
一方、触媒に水素分子が接触すると、水素分子が解離吸着して水素原子が生じる。この水素原子が酸化タングステン(WO)を還元して、不定比化合物(HWO(0<x<1))が生成する。不定比化合物(HWO)は、W5+およびW6+の混合原子価状態にあるため、電気抵抗が低い。そのため、水素が存在する雰囲気では、上記の酸化タングステンの還元反応が起こり、感応膜は、電気抵抗が低下し、導電性を有するようになる。このとき、第1センサ電極および第2センサ電極が短絡し、導通状態になる。
【0023】
第1センサ電極には第1バス電極が接続され、第2センサ電極には第2バス電極が接続され、第1バス電極および第2バス電極には制御部が接続されているので、制御部によって電気抵抗の変化を検出することにより、水素ガスを検知できる。
【0024】
従来の半導体式や接触燃焼式等の水素センサでは、上述したように、加熱が必要であり、また狭い範囲でしか水素ガスを検知することができない。これに対し、上記の酸化タングステンの還元反応は、電気の供給が不要である。よって、本開示における水素センサは、大面積化が可能であり、比較的広い範囲を低コストで水素ガスを検知できる。したがって、本開示における水素センサを用いることにより、燃料電池等の小型機器だけでなく、水素製造施設、水素パイプライン、輸送タンカー、貯蔵タンク、水素発電施設等の大型設備においても、水素ガスの漏洩を検知できる。
【0025】
また、導体の電気抵抗は、導体の長さに比例する。そのため、図2に例示するように、領域10Aにおいて上記の酸化タングステンの還元反応が起こり、感応膜3の電気抵抗が低下して、第1センサ電極7および第2センサ電極8が短絡した場合と、領域10Bにおいて上記の酸化タングステンの還元反応が起こり、感応膜3の電気抵抗が低下して、第1センサ電極7および第2センサ電極8が短絡した場合とでは、制御部4で測定される電気抵抗の値が異なる。よって、制御部4によって電気抵抗を測定することにより、感応膜3が水素と反応して電気抵抗が低下した位置を特定できる。したがって、本開示における水素センサを用いることにより、水素漏洩箇所を特定可能である。
【0026】
このように本開示における水素センサを用いることにより、広い範囲においても水素漏洩を低コストで検知でき、さらには水素漏洩箇所を特定できる。
【0027】
本開示における水素センサは、3つの好ましい実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0028】
I.第1実施態様
本開示における水素センサの第1実施態様は、上述の水素センサであって、1つの上記第1バス電極および1つの上記第2バス電極が、一筆書き可能な線状に配置され、上記第1バス電極の一方の端部および上記第2バス電極の一方の端部が、上記制御部に接続されている。
【0029】
図3は、本実施態様の水素センサの一例を示す概略平面図である。図3に示すように、水素センサ1は、基板2と、基板2の第1面に配置され、水素分子を解離する触媒、および酸化タングステンを含む感応膜3と、電気抵抗の変化を検出する制御部4と、基板2の第1面に配置され、制御部4に接続された1つの第1バス電極5および1つの第2バス電極6と、基板2の第1面に感応膜3に接して配置され、第1バス電極5に接続された複数の第1センサ電極7と、基板2の第1面に感応膜3に接して配置され、第2バス電極6に接続された複数の第2センサ電極8と、を有する。第1センサ電極7および第2センサ電極8は、感応膜3の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置されている。図3において、第1センサ電極7および第2センサ電極8は、一対の櫛歯電極である。第1バス電極5および第2バス電極6は、一筆書き可能な線状に配置されている。図3において、第1バス電極5および第2バス電極6は、蛇行線状に配置されている。また、第1バス電極5の一方の端部および第2バス電極6の一方の端部が、制御部4に接続されている。
【0030】
図3に示す水素センサにおいては、上述したように、制御部によって電気抵抗の変化を検出することにより、水素ガスを検知できる。また、図3に示す水素センサにおいては、制御部が1つであり、1つの制御部によって電気抵抗を測定することにより、感応膜が水素と反応して電気抵抗が低下した位置を特定できる。
【0031】
図4は、本実施態様の水素センサの他の例を示す概略平面図である。図4に示す水素センサ1は、制御部が、第1バス電極5の一方の端部および第2バス電極6の一方の端部に接続された第1制御部4aと、第1バス電極5の他方の端部および第2バス電極6の他方の端部に接続された第2制御部4bとを有すること以外は、上記の図3に示す水素センサ1と同様である。
【0032】
図4に示す水素センサにおいては、上述したように、制御部によって電気抵抗の変化を検出することにより、水素ガスを検知できる。また、図4に示す水素センサにおいては、制御部が第1制御部4aおよび第2制御部4bの2つを有しており、第1制御部4aで測定される電気抵抗と、第2制御部4bで測定される電気抵抗との差により、感応膜3が水素と反応して電気抵抗が低下した位置を特定できる。
【0033】
本実施態様の水素センサを用いることにより、上述したように、広い範囲においても水素漏洩を低コストで検知でき、さらには水素漏洩箇所を特定できる。
【0034】
以下、本実施態様の水素センサについて、構成毎に説明する。
【0035】
1.第1センサ電極および第2センサ電極
本実施態様において、複数の第1センサ電極および複数の第2センサ電極は、基板の第1面に上記感応膜に接して配置され、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置される。第1センサ電極は第1バス電極に接続され、第2センサ電極は第2バス電極に接続されており、第1センサ電極および第2センサ電極は接続されていない。
【0036】
本明細書において、「感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔」とは、上記の酸化タングステンの還元反応が起こり、感応膜の電気抵抗が低下したときに、第1センサ電極および第2センサ電極が短絡可能な間隔をいう。
【0037】
複数の第1センサ電極および複数の第2センサ電極としては、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置されたものであればよく、例えば、一対の櫛歯電極が挙げられる。
【0038】
第1センサ電極および第2センサ電極の間隔は、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔であればよい。上記間隔は、例えば、100μm以上であり、500μm以上であってもよい。また、上記間隔は、例えば、10mm以下であり、5mm以下であってもよい。すなわち、上記間隔は、例えば、100μm以上10mm以下であり、500μm以上5mm以下であってもよい。
【0039】
第1センサ電極および第2センサ電極の間隔とは、隣り合う第1センサ電極の端部から第2センサ電極の端部までの距離をいう。例えば図3において、第1センサ電極および第2センサ電極の間隔はd1で示される。
【0040】
第1センサ電極の幅および第2センサ電極の幅は、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な幅であればよい。上記幅は、例えば、100μm以上であり、500μm以上であってもよい。また、上記幅は、例えば、10mm以下であり、5mm以下であってもよい。すなわち、上記幅は、例えば、100μm以上10mm以下であり、500μm以上5mm以下であってもよい。例えば図3において、第1センサ電極の幅はb1で示され、第2センサ電極の幅はb2で示される。
【0041】
第1センサ電極の長さおよび第2センサ電極の長さは、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な長さであればよい。上記長さは、例えば、10mm以上であり、50mm以上であってもよい。また、上記長さは、例えば、500mm以下であり、100mm以下であってもよい。すなわち、上記長さは、例えば、10mm以上500mm以下であり、50mm以上100mm以下であってもよい。例えば図3において、第1センサ電極の長さはa1で示され、第2センサ電極の長さはa2で示される。
【0042】
第1センサ電極および第2センサ電極の重なり長さは、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な長さであればよい。上記重なり長さは、例えば、9mm以上であり、45mm以上であってもよい。また、上記重なり長さは、例えば、450mm以下であり、90mm以下であってもよい。すなわち、上記重なり長さは、例えば、9mm以上450mm以下であり、45mm以上90mm以下であってもよい。例えば図3において、第1センサ電極および第2センサ電極の重なり長さはcで示される。
【0043】
第1センサ電極の本数および第2センサ電極の本数は、水素センサの大きさ、第1バス電極の配置および第2バス電極の配置等に応じて適宜設定される。
【0044】
第1センサ電極の形状および第2センサ電極の形状は、特に限定されず、例えば、直線状、折れ線状、曲線状が挙げられる。例えば図3において、第1センサ電極7の形状および第2センサ電極8の形状は直線状である。また、例えば図5において、第1センサ電極7の形状は直線状と折れ線状であり、第2センサ電極8の形状は直線状である。
【0045】
第1センサ電極および第2センサ電極に用いられる導電性材料としては、例えば、カーボン、金属材料が挙げられる。中でも、カーボンが好ましい。カーボンは、水素ガスに対して不活性であり、安価である。後述するように、基板の第1面に、感応膜と、第1センサ電極および第2センサ電極との順に配置されている場合、第1センサ電極および第2センサ電極に用いられる導電性材料は、水素ガスに対して不活性であることが好ましい。一方、基板の第1面に、第1センサ電極および第2センサ電極と、感応膜との順に配置されている場合、第1センサ電極および第2センサ電極に用いられる導電性材料は、水素ガスに曝されないため、水素ガスに対して活性であってもよく、不活性であってもよい。
【0046】
第1センサ電極の厚さおよび第2センサ電極の厚さは、電極として機能し得る厚さであれば特に限定されず、例えば、0.1μm以上2μm以下である。
【0047】
第1センサ電極の形成方法および第2センサ電極の形成方法としては、特に限定されず、例えば、導電膜を形成してパターニングする方法、マスク蒸着法、印刷法が挙げられる。導電膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法が挙げられる。パターニング方法としては、例えば、エッチング法、リフトオフ法が挙げられる。
【0048】
2.第1バス電極および第2バス電極
本実施態様において、第1バス電極および第2バス電極は、基板の第1面に配置され、制御部に接続されている。本実施態様の水素センサは、1つの第1バス電極および1つの第2バス電極を有する。第1バス電極および第2バス電極は、一筆書き可能な線状に配置されている。
【0049】
本明細書において、「一筆書き可能な線状」とは、連続した1本の線からなり、線が重複する部位を有しないことを意味する。
【0050】
一筆書き可能な線状としては、第1バス電極、第2バス電極、第1センサ電極および第2センサ電極を、基板の第1面に全体的に配置できれば特に限定されず、例えば、図3および図4に示すような蛇行線状、図5に示すような渦巻状が挙げられる。中でも、第1バス電極および第2バス電極は、蛇行線状に配置されていることが好ましい。この場合、ロールツーロール方式により第1バス電極および第2バス電極を形成できるため、水素センサを効率良く量産できる。
【0051】
第1バス電極および第2バス電極は、感応膜の電気抵抗が変化した位置を特定可能なように配置される。具体的には、第1バス電極に接続された複数の第1センサ電極と、第2バス電極に接続された複数の第2センサ電極とは、交互に配置されることから、第1バス電極および第2バス電極は、互いに沿うように配置される。
【0052】
第1バス電極の幅および第2バス電極の幅は、電極として機能し得る幅であればよい。上記幅は、例えば、1mm以上であり、5mm以上であってもよい。また、上記幅は、例えば、50mm以下であり、10mm以下であってもよい。すなわち、上記幅は、例えば、1mm以上50mm以下であり、5mm以上10mm以下であってもよい。例えば図3において、第1バス電極の幅はe1で示され、第2バス電極の幅はe2で示される。
【0053】
第1センサ電極および第2センサ電極を挟んで対向する第1バス電極および第2バス電極の間隔は、第1センサ電極および第2センサ電極を配置可能な間隔であればよい。上記間隔は、例えば、11mm以上であり、55mm以上であってもよい。また、上記間隔は、例えば、550mm以下であり、110mm以下であってもよい。すなわち、上記間隔は、例えば、11mm以上550mm以下であり、55mm以上110mm以下であってもよい。例えば図3において、第1センサ電極および第2センサ電極を挟んで対向する第1バス電極および第2バス電極の間隔は、fで示される。
【0054】
第1センサ電極および第2センサ電極を挟まずに対向する第1バス電極および第2バス電極の間隔は、感応膜の電気抵抗の変化を検出できない間隔であればよい。上記間隔は、例えば、10mm以上であり、50mm以上であってもよい。また、上記間隔は、例えば、100mm以下であり、70mm以下であってもよい。すなわち、上記間隔は、例えば、10mm以上100mm以下であり、50mm以上70mm以下であってもよい。上記間隔が小さすぎると、上記の酸化タングステンの還元反応が起こり、感応膜の電気抵抗が低下したときに、第1センサ電極および第2センサ電極を挟まずに対向する第1バス電極および第2バス電極が導通しやすくなり、水素漏洩個所の特定が困難になる可能性がある。例えば図3において、第1センサ電極および第2センサ電極を挟まずに対向する第1バス電極および第2バス電極の間隔は、gで示される。
【0055】
隣接する第1バス電極同士の間隔および隣接する第2バス電極同士の間隔は、感応膜の電気抵抗の変化を検出できない間隔であればよい。上記間隔は、例えば、10mm以上であり、50mm以上であってもよい。また、上記間隔は、例えば、100mm以下であり、70mm以下であってもよい。すなわち、上記間隔は、例えば、10mm以上100mm以下であり、50mm以上70mm以下であってもよい。上記間隔が小さすぎると、上記の酸化タングステンの還元反応が起こり、感応膜の電気抵抗が低下したときに、隣接する第1バス電極同士または隣接する第2バス電極同士が導通しやすくなり、水素漏洩個所の特定が困難になる可能性がある。例えば図3において、隣接する第1バス電極同士の間隔はh1で示され、隣接する第2バス電極同士の間隔はh2で示される。
【0056】
第1バス電極および第2バス電極は、一対の電極であり、第1バス電極の本数および第2バス電極の本数は、通常、1本である。なお、第1バス電極および第2バス電極が、一対の電極となっていれば、第1バス電極の本数および第2バス電極の本数は、2本であってもよい。例えば図6において、水素センサ1は、2つの第1バス電極5a、5bおよび2つの第2バス電極6a、6bを有しており、第1バス電極5aおよび第2バス電極6aが一対の電極となっており、第1バス電極5bおよび第2バス電極6bが一対の電極となっている。
【0057】
第1バス電極および第2バス電極に用いられる導電性材料は、上記の第1センサ電極および第2センサ電極に用いられる導電性材料と同様である。
【0058】
第1バス電極の厚さおよび第2バス電極の厚さは、上記の第1センサ電極の厚さおよび第2センサ電極の厚さと同様である。
【0059】
第1バス電極の形成方法および第2バス電極の形成方法は、上記の第1センサ電極の形成方法および第2センサ電極の形成方法と同様である。
【0060】
3.感応膜
本実施態様における感応膜は、水素分子を解離する触媒と、酸化タングステンとを含む。
【0061】
感応膜は、触媒および酸化タングステンを含む単層であってもよく、基板側から順に、酸化タングステンを含む酸化タングステン層と、触媒を含む触媒層とを有していてもよい。
【0062】
感応膜が、酸化タングステン層と触媒層とを有する場合、触媒層は、連続膜であってもよく、不連続膜であってもよい。
【0063】
触媒としては、水素分子を水素イオン(プロトン)に解離できるものであれば特に限定されず、パラジウム、白金、イリジウム等の貴金属が挙げられる。触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
酸化タングステンは、三酸化タングステン(WO)である。
【0065】
感応膜は、第1センサ電極および第2センサ電極に接して配置されていればよく、感応膜の位置は特に限定されない。例えば、基板の第1面に、第1センサ電極および第2センサ電極と、感応膜とがこの順に配置されていてもよく、基板の第1面に、感応膜と、第1センサ電極および第2センサ電極とがこの順に配置されていてもよい。
【0066】
感応膜が、触媒および酸化タングステンを含む単層である場合、感応膜の厚さは、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な厚さであれば特に限定されず、例えば、100nm以上3000nm以下である。
【0067】
一方、感応膜が、酸化タングステン層と触媒層とを有する場合、酸化タングステン層の厚さは、酸化タングステン層の電気抵抗の変化を検出可能な厚さであれば特に限定されず、例えば、100nm以上3000nm以下である。また、触媒層の厚さは、例えば、1nm以上10nm以下である。
【0068】
感応膜が、触媒および酸化タングステンを含む単層である場合、感応膜の形成方法としては、例えば、ゾルゲル法が挙げられる。ゾルゲル法による感応膜の形成方法は、例えば、特許第5152797号公報、特許第5540248号公報を参照できる。
【0069】
一方、感応膜が、酸化タングステン層と触媒層とを有する場合、酸化タングステン層の形成方法としては、特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法が挙げられる。触媒層の形成方法としても、特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法が挙げられる。
【0070】
4.制御部
本実施態様における制御部は、電気抵抗の変化を検出する部材である。制御部には、第1バス電極および第2バス電極が接続される。
【0071】
制御部は、電気抵抗の変化を検出できるものであればよく、例えば、電気抵抗の変化を検出するICチップを有するものが挙げられる。ICチップとしては、オープンショートタイプのICチップを用いることができる。オープンショートタイプは、端子間抵抗が設定値以下になるとフラグが「1」になり、別の設定値以上になるとフラグ「0」になることで、電気抵抗の変化を検知するICチップである。また、ICチップとして、容量タイプのICチップを用いてもよい。容量タイプは、典型的には、アンテナに水滴等が接触した場合にアンテナが離調し、そのインピーダンス変化を検知するICチップである。本開示においては、容量タイプのICチップを用いる場合、後述のICタグのアンテナに接して上記感応膜を別途配置し、そのインピーダンス変化を検知する。中でも、オープンショートタイプのICチップが好ましい。オープンショートタイプのICチップとしては、例えば、NXP社のUCODE G2iM+が挙げられる。
【0072】
具体的には、制御部としては、上記ICチップおよびアンテナを有するICタグが用いられる。なお、ICタグは、RFタグ、RFIDタグ、電子タグ、無線タグ等とも称される。ICタグとしては、上記ICチップおよびアンテナを有するものであればよく、一般的なICタグを使用できる。ICタグであれば、RFIDを利用して水素ガスを検知できる。
【0073】
ICタグには、電源(電池)を内蔵するアクティブ型と、電源(電池)を内蔵しないパッシブ型とがある。中でも、自らは電源(電池)を搭載することなく、外部から供給される電波をアンテナで受信することで駆動電源を得て動作するため、パッシブ型タグが好ましい。
【0074】
制御部がICタグであるときの、本開示における水素センサの動作原理の一例について説明する。上述したように、水素が存在しない雰囲気では、感応膜は、電気抵抗が高く、絶縁性を有する。このとき、第1センサ電極および第2センサ電極は絶縁され、非導通状態である。そのため、外部装置からICタグに電力が供給された場合でも、感応膜を介して第1センサ電極および第2センサ電極には電流が流れない。一方、水素が存在する雰囲気では、上記の酸化タングステンの還元反応が起こり、感応膜は、電気抵抗が低下し、導電性を有するようになる。このとき、第1センサ電極および第2センサ電極が短絡し、導通状態になる。そのため、外部装置からICタグに電力が供給された場合、感応膜を介して第1センサ電極および第2センサ電極に電流が流れる。ICチップでは、電気抵抗の値を測定し、その電気抵抗の値から情報を検知し、その情報に応じた信号を外部装置に送信する。外部装置では、上記情報に基づき、水素漏洩を検知するとともに、水素漏洩箇所を特定する。
【0075】
制御部は、少なくとも1つである。制御部は、1つであってよく、第1制御部および第2制御部の2つを有していてもよい。制御部が1つである場合、第1バス電極の一方の端部および第2バス電極の一方の端部が、1つの制御部に接続される。制御部が第1制御部および第2制御部の2つを有する場合、第1バス電極の一方の端部および第2バス電極の一方の端部が、第1制御部に接続され、第1バス電極の他方の端部および第2バス電極の他方の端部が、第2制御部に接続される。
【0076】
中でも、制御部は、第1制御部および第2制御部の2つを有することが好ましい。上述したように、第1バス電極の両端および第2バス電極の両端に制御部が接続されている場合には、第1制御部で測定される電気抵抗と、第2制御部で測定される電気抵抗との差により、感応膜が水素と反応して電気抵抗が低下した位置を特定できる。そのため、第1バス電極の長さおよび第2バス電極の長さによる電気抵抗の増大を抑制でき、制御部の電気的負荷を減らすことできる。よって、信頼性をより高めることができ、水素センサの精度を向上できる。
【0077】
5.基板
本実施態様における基板は、上記の感応膜、第1センサ電極、第2センサ電極、第1バス電極および第2バス電極を支持し、絶縁性を有する部材である。
【0078】
基板は、絶縁性を有していれば特に限定されず、例えば、ガラス基板、樹脂基板、セラミック基板、表面に絶縁膜を有するシリコン基板が挙げられる。
【0079】
基板の厚さは、特に限定されず、例えば、10μm以上2mm以下である。
【0080】
6.他の構成
本実施態様においては、基板の第1面に、上記の感応膜、第1センサ電極、第2センサ電極、第1バス電極および第2バス電極が配置されていればよい。基板の片面のみに、上記の感応膜、第1センサ電極、第2センサ電極、第1バス電極および第2バス電極が配置されていてもよく、あるいは、基板の両面にそれぞれ、上記の感応膜、第1センサ電極、第2センサ電極、第1バス電極および第2バス電極が配置されていてもよい。
【0081】
本実施態様の水素センサは、第1バス電極および第2バス電極の配置等を適宜設計することにより、大面積化が可能である。本実施態様の水素センサの大きさは、特に限定されず、例えば、幅は0.3m以上2m以下、長さは0.3m以上10m以下である。
【0082】
II.第2実施態様
本開示における水素センサの第1実施態様は、上述の水素センサであって、複数の上記第1バス電極および複数の上記第2バス電極が、フレキシブルプリント基板を介して制御部に接続されている。
【0083】
図7は、本実施態様の水素センサの一例を示す概略平面図である。図7に示すように、水素センサ1は、基板2と、基板2の第1面に配置され、水素ガスを水素原子に解離する触媒、および酸化タングステンを含む感応膜3と、電気抵抗の変化を検出する制御部4と、基板2の第1面に配置され、制御部4に接続された複数の第1バス電極5および複数の第2バス電極6と、基板2の第1面に感応膜3に接して配置され、第1バス電極5に接続された複数の第1センサ電極7と、基板2の第1面に感応膜3に接して配置され、第2バス電極6に接続された複数の第2センサ電極8と、を有する。第1センサ電極7および第2センサ電極8は、感応膜3の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置されている。図7において、第1センサ電極7および第2センサ電極8は、一対の櫛歯電極である。複数の第1バス電極5および複数の第2バス電極6は、フレキシブルプリント基板9を介して制御部4に接続されている。
【0084】
図7に示す水素センサにおいては、上述したように、制御部によって電気抵抗の変化を検出することにより、水素ガスを検知できる。また、図7に示す水素センサにおいては、制御部が1つであり、1つの制御部によって電気抵抗を測定することにより、感応膜が水素と反応して電気抵抗が低下した位置を特定できる。
【0085】
図8は、本実施態様の水素センサの他の例を示す概略平面図である。図8に示す水素センサ1は、制御部が、第1バス電極5の一方の端部および第2バス電極6の一方の端部に接続された第1制御部4aと、第1バス電極5の他方の端部および第2バス電極6の他方の端部に接続された第2制御部4bとを有すること以外は、上記の図7に示す水素センサ1と同様である。
【0086】
図8に示す水素センサにおいては、上述したように、制御部によって電気抵抗の変化を検出することにより、水素ガスを検知できる。また、図8に示す水素センサにおいては、制御部が第1制御部4aおよび第2制御部4bの2つを有しており、第1制御部4aで測定される電気抵抗と、第2制御部4bで測定される電気抵抗との差により、感応膜3が水素と反応して電気抵抗が低下した位置を特定できる。
【0087】
本実施態様の水素センサを用いることにより、上述したように、広い範囲においても水素漏洩を低コストで検知でき、さらには水素漏洩箇所を特定できる。また、本実施態様においては、上記第1実施態様と比較して、第1バス電極および第2バス電極の長さを短くすることができるので、第1バス電極の長さおよび第2バス電極の長さによる電気抵抗の増大を抑制できる。よって、水素センサの精度を向上できる。
【0088】
また、本実施態様においては、第1バス電極および第2バス電極を直線状に配置できることから、断線のリスクを軽減できる。
【0089】
以下、本実施態様の水素センサについて、構成毎に説明する。
【0090】
1.第1センサ電極および第2センサ電極
本実施態様において、複数の第1センサ電極および複数の第2センサ電極は、基板の第1面に上記感応膜に接して配置され、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置される。第1センサ電極は第1バス電極に接続され、第2センサ電極は第2バス電極に接続されており、第1センサ電極および第2センサ電極は接続されていない。
【0091】
第1センサ電極および第2センサ電極の間隔は、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔であればよい。上記間隔は、例えば、100μm以上であり、500μm以上であってもよい。また、上記間隔は、例えば、10mm以下であり、5mm以下であってもよい。すなわち、上記間隔は、例えば、100μm以上10mm以下であり、500μm以上5mm以下であってもよい。
【0092】
第1センサ電極および第2センサ電極の間隔とは、隣り合う第1センサ電極の端部から第2センサ電極の端部までの距離をいう。例えば図7において、第1センサ電極および第2センサ電極の間隔はd1で示される。
【0093】
第1センサ電極の幅および第2センサ電極の幅は、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な幅であればよい。上記幅は、例えば、100μm以上であり、500μm以上であってもよい。また、上記幅は、例えば、10mm以下であり、5mm以下であってもよい。すなわち、上記幅は、例えば、100μm以上10mm以下であり、500μm以上5mm以下であってもよい。例えば図7において、第1センサ電極の幅はb1で示され、第2センサ電極の幅はb2で示される。
【0094】
第1センサ電極の長さおよび第2センサ電極の長さは、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な長さであればよい。上記長さは、例えば、10mm以上であり、50mm以上であってもよい。また、上記長さは、例えば、500mm以下であり、100mm以下であってもよい。すなわち、上記長さは、例えば、10mm以上500mm以下であり、50mm以上100mm以下であってもよい。例えば図7において、第1センサ電極の長さはa1で示され、第2センサ電極の長さはa2で示される。
【0095】
第1センサ電極および第2センサ電極の重なり長さは、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な長さであればよい。上記重なり長さは、例えば、9mm以上であり、45mm以上であってもよい。また、上記重なり長さは、例えば、450mm以下であり、90mm以下であってもよい。すなわち、上記重なり長さは、例えば、9mm以上450mm以下であり、45mm以上90mm以下であってもよい。例えば図7において、第1センサ電極および第2センサ電極の重なり長さはcで示される。
【0096】
第1センサ電極の本数および第2センサ電極の本数は、水素センサの大きさ、第1バス電極の配置および第2バス電極の配置等に応じて適宜設定される。
【0097】
第1センサ電極の形状および第2センサ電極の形状は、特に限定されず、例えば、直線状、折れ線状、曲線状が挙げられる。
【0098】
第1センサ電極および第2センサ電極に用いられる導電性材料、第1センサ電極および第2センサ電極の厚さ、第1センサ電極および第2センサ電極の形成方法は、上記第1実施態様における第1センサ電極および第2センサ電極と同様である。
【0099】
2.第1バス電極および第2バス電極
本実施態様において、第1バス電極および第2バス電極は、基板の第1面に配置され、制御部に接続されている。本実施態様の水素センサは、複数の第1バス電極および複数の第2バス電極を有する。
【0100】
第1バス電極および第2バス電極は、一対の電極であり、交互に配置される。
【0101】
第1バス電極の幅および第2バス電極の幅は、電極として機能し得る幅であればよい。上記幅は、例えば、1mm以上であり、5mm以上であってもよい。また、上記幅は、例えば、50mm以下であり、10mm以下であってもよい。すなわち、上記幅は、例えば、1mm以上50mm以下であり、5mm以上10mm以下であってもよい。例えば図7において、第1バス電極の幅はe1で示され、第2バス電極の幅はe2で示される。
【0102】
第1バス電極および第2バス電極の間隔は、第1センサ電極および第2センサ電極を配置可能な間隔であればよい。上記間隔は、例えば、11mm以上であり、55mm以上であってもよい。また、上記間隔は、例えば、550mm以下であり、110mm以下であってもよい。すなわち、上記間隔は、例えば、11mm以上550mm以下であり、55mm以上110mm以下であってもよい。例えば図7において、第1バス電極および第2バス電極の間隔は、fで示される。
【0103】
第1バス電極の本数および第2バス電極の本数は、複数である。第1バス電極および第2バス電極は一対の電極となっていればよく、第1バス電極の本数および第2バス電極の本数は、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば図7において、第1バス電極5は4本、第2バス電極6は5本であり、第1バス電極の本数および第2バス電極の本数が異なっている。
【0104】
第1バス電極および第2バス電極に用いられる導電性材料は、上記の第1センサ電極および第2センサ電極に用いられる導電性材料と同様である。
【0105】
第1バス電極の厚さおよび第2バス電極の厚さは、上記の第1センサ電極の厚さおよび第2センサ電極の厚さと同様である。
【0106】
第1バス電極の形成方法および第2バス電極の形成方法は、上記の第1センサ電極の形成方法および第2センサ電極の形成方法と同様である。
【0107】
3.感応膜
本実施態様における感応膜は、水素ガスを水素原子に解離する触媒と、酸化タングステンとを含む。感応膜は、上記第1実施態様における感応膜と同様である。
【0108】
4.制御部
本実施態様における制御部は、電気抵抗の変化を検出する部材である。制御部には、第1バス電極および第2バス電極が接続される。
【0109】
制御部は、上記第1実施態様における制御部と同様である。
【0110】
制御部は、少なくとも1つである。制御部は、1つであってよく、第1制御部および第2制御部の2つを有していてもよい。制御部が1つである場合、第1バス電極の一方の端部および第2バス電極の一方の端部が、1つの制御部に接続される。制御部が第1制御部および第2制御部の2つを有する場合、第1バス電極の一方の端部および第2バス電極の一方の端部が、第1制御部に接続され、第1バス電極の他方の端部および第2バス電極の他方の端部が、第2制御部に接続される。
【0111】
5.フレキシブルプリント基板
本実施態様においては、複数の第1バス電極および複数の第2バス電極が、フレキシブルプリント基板(FPC)を介して制御部に接続されている。FPCとしては、一般的なFPCを使用できる。
【0112】
6.基板
本実施態様における基板は、上記の感応膜、第1センサ電極、第2センサ電極、第1バス電極および第2バス電極を支持し、絶縁性を有する部材である。基板は、上記第1実施態様における基板と同様である。
【0113】
III.第3実施態様
本開示における水素センサの第3実施態様は、上述の水素センサであって、複数の上記第1バス電極が、第1方向に沿って配置され、複数の上記第2バス電極が、上記第1方向と直交する第2方向に沿って配置され、上記制御部が、複数の上記第1バス電極の一方の端部に接続された第3制御部と、複数の上記第2バス電極の一方の端部に接続された第4制御部とを有し、上記第1バス電極および上記第2バス電極が交差する領域では、上記第1バス電極および上記第2バス電極の間に絶縁膜が配置されている。
【0114】
図9は、本実施態様の水素センサの一例を示す概略平面図である。図9に示すように、水素センサ1は、基板2と、基板2の第1面に配置され、水素分子を解離する触媒、および酸化タングステンを含む感応膜3と、電気抵抗の変化を検出する第3制御部4cおよび第4制御部4dと、基板2の第1面に配置され、第3制御部4cに接続された複数の第1バス電極5および第4制御部4dに接続された複数の第2バス電極6と、基板2の第1面に感応膜3に接して配置され、第1バス電極5に接続された複数の第1センサ電極7と、基板2の第1面に感応膜3に接して配置され、第2バス電極6に接続された複数の第2センサ電極8と、を有する。第1センサ電極7および第2センサ電極8は、感応膜3の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置されている。図9において、第1センサ電極7および第2センサ電極8は、一対の櫛歯電極である。複数の第1バス電極5は、第1方向D1に線状に配置され、複数の第2バス電極6は、第1方向D1と直交する第2方向D2に線状に配置されている。制御部は、複数の第1バス電極5の一方の端部に接続された第3制御部4cと、複数の第2バス電極6の一方の端部に接続された第4制御部4dとを有する。第1バス電極5および第2バス電極6が交差する領域では、第1バス電極5および第2バス電極6の間に絶縁膜11が配置されている。
【0115】
図9に示す水素センサにおいては、上述したように、制御部によって電気抵抗の変化を検出することにより、水素ガスを検知できる。また、図9に示す水素センサにおいては、第3制御部および第4制御部によって電気抵抗を測定することにより、第1バス電極および第2バス電極の交点のうち、電気抵抗が低下した第1バス電極および第2バス電極の交点を特定できる。そのため、電気抵抗が低下した第1バス電極および第2バス電極の交点を、感応膜が水素と反応して電気抵抗が低下した位置として、特定できる。
【0116】
本実施態様の水素センサを用いることにより、上述したように、広い範囲においても水素漏洩を低コストで検知でき、さらには水素漏洩箇所を特定できる。
【0117】
また、本実施態様においては、第1バス電極および第2バス電極を一筆書き可能な線状に配置する必要がないため、断線のリスクを軽減できる。また、図9に示すように、第1センサ電極7および第2センサ電極8が重なる部分10Cの面積を一定にできるので、信号のバラツキが少なくなり、検出感度が向上する。
【0118】
以下、本実施態様の水素センサについて、構成毎に説明する。
【0119】
1.第1センサ電極および第2センサ電極
本実施態様において、複数の第1センサ電極および複数の第2センサ電極は、基板の第1面に上記感応膜に接して配置され、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置される。第1センサ電極は第1バス電極に接続され、第2センサ電極は第2バス電極に接続されており、第1センサ電極および第2センサ電極は接続されていない。
【0120】
複数の第1センサ電極および複数の第2センサ電極としては、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置されたものであればよく、例えば、一対の櫛歯電極が挙げられる。
【0121】
第1センサ電極および第2センサ電極の間隔は、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔であればよい。上記間隔は、例えば、100μm以上であり、500μm以上であってもよい。また、上記間隔は、例えば、10mm以下であり、5mm以下であってもよい。すなわち、上記間隔は、例えば、100μm以上10mm以下であり、500μm以上5mm以下であってもよい。
【0122】
第1センサ電極および第2センサ電極の間隔とは、隣り合う第1センサ電極の端部から第2センサ電極の端部までの距離をいう。例えば図9において、第1センサ電極および第2センサ電極の間隔はd1で示される。
【0123】
第1センサ電極の幅および第2センサ電極の幅は、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な幅であればよい。上記幅は、例えば、100μm以上であり、500μm以上であってもよい。また、上記幅は、例えば、10mm以下であり、5mm以下であってもよい。すなわち、上記幅は、例えば、100μm以上10mm以下であり、500μm以上5mm以下であってもよい。例えば図9において、第1センサ電極の幅はb1で示され、第2センサ電極の幅はb2で示される。
【0124】
第1センサ電極の長さおよび第2センサ電極の長さは、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な長さであればよい。上記長さは、例えば、10mm以上であり、50mm以上であってもよい。また、上記長さは、例えば、500mm以下であり、100mm以下であってもよい。すなわち、上記長さは、例えば、10mm以上500mm以下であり、50mm以上100mm以下であってもよい。例えば図9において、第1センサ電極の長さはa1で示され、第2センサ電極の長さはa2で示される。
【0125】
第1センサ電極および第2センサ電極の重なり長さは、感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な長さであればよい。上記重なり長さは、例えば、9mm以上であり、45mm以上であってもよい。また、上記重なり長さは、例えば、450mm以下であり、90mm以下であってもよい。すなわち、上記重なり長さは、例えば、9mm以上450mm以下であり、45mm以上90mm以下であってもよい。例えば図9において、第1センサ電極および第2センサ電極の重なり長さはcで示される。
【0126】
第1センサ電極の本数および第2センサ電極の本数は、水素センサの大きさ、第1バス電極の配置および第2バス電極の配置等に応じて適宜設定される。
【0127】
第1センサ電極の形状および第2センサ電極の形状は、特に限定されず、例えば、直線状、折れ線状、曲線状が挙げられる。また、第1センサ電極の形状および第2センサ電極の形状は、分岐を有する形状であってもよい。例えば図9において、第1センサ電極7の形状は直線状、第2センサ電極8の形状は分岐を有する形状である。また、例えば図10において、第1センサ電極7の形状は直線状、第2センサ電極8の形状は折れ線状である。
【0128】
第1センサ電極および第2センサ電極に用いられる導電性材料、第1センサ電極および第2センサ電極の厚さ、第1センサ電極および第2センサ電極の形成方法は、上記第1実施態様における第1センサ電極および第2センサ電極と同様である。
【0129】
2.第1バス電極および第2バス電極
本実施態様において、第1バス電極および第2バス電極は、基板の第1面に配置され、制御部に接続されている。本実施態様の水素センサは、複数の第1バス電極および複数の第2バス電極を有する。第1バス電極は第1方向に沿って配置され、第2バス電極は第1方向に直交する第2方向に沿って配置されている。
【0130】
第1バス電極の幅および第2バス電極の幅は、電極として機能し得る幅であればよい。上記幅は、例えば、1mm以上であり、5mm以上であってもよい。また、上記幅は、例えば、50mm以下であり、10mm以下であってもよい。すなわち、上記幅は、例えば、1mm以上50mm以下であり、5mm以上10mm以下であってもよい。例えば図9において、第1バス電極の幅はe1で示され、第2バス電極の幅はe2で示される。
【0131】
隣接する第1バス電極同士の間隔および隣接する第2バス電極同士の間隔は、第1センサ電極および第2センサ電極を配置可能な間隔であればよい。上記間隔は、例えば、11mm以上であり、55mm以上であってもよい。また、上記間隔は、例えば、550mm以下であり、110mm以下であってもよい。すなわち、上記間隔は、例えば、11mm以上550mm以下であり、55mm以上110mm以下であってもよい。例えば図9において、隣接する第1バス電極同士の間隔はk1で示され、隣接する第2バス電極同士の間隔はk2で示される。
【0132】
第1バス電極の本数および第2バス電極の本数は、複数である。
【0133】
第1バス電極および第2バス電極に用いられる導電性材料は、上記の第1センサ電極および第2センサ電極に用いられる導電性材料と同様である。
【0134】
第1バス電極の厚さおよび第2バス電極の厚さは、上記の第1センサ電極の厚さおよび第2センサ電極の厚さと同様である。
【0135】
第1バス電極の形成方法および第2バス電極の形成方法は、上記の第1センサ電極の形成方法および第2センサ電極の形成方法と同様である。
【0136】
3.感応膜
本実施態様における感応膜は、水素分子を解離する触媒と、酸化タングステンとを含む。感応膜は、上記第1実施態様における感応膜と同様である。
【0137】
感応膜は、第1センサ電極および第2センサ電極に接して配置されていればよく、感応膜の位置は特に限定されない。例えば、基板の第1面に、第1センサ電極および第2センサ電極と、感応膜とがこの順に配置されていてもよく、基板の第1面に、感応膜と、第1センサ電極および第2センサ電極とがこの順に配置されていてもよく、基板の第1面に、第1センサ電極と感応膜と第2センサ電極とがこの順に配置されていてもよく、基板の第1面に、第2センサ電極と感応膜と第1センサ電極とがこの順に配置されていてもよい。
【0138】
4.制御部
本実施態様における制御部は、電気抵抗の変化を検出する部材である。制御部には、第1バス電極および第2バス電極が接続される。
【0139】
制御部は、上記第1実施態様における制御部と同様である。
【0140】
制御部は、複数の第1バス電極の一方の端部に接続された第3制御部と、複数の第2バス電極の一方の端部に接続された第4制御部とを有する。また、制御部は、上記第3制御部と、上記第4制御部と、複数の第1バス電極の他方の端部に接続された第5制御部とを有していてもよい。また、制御部は、上記第3制御部と、上記第4制御部と、複数の第2バス電極の他方の端部に接続された第6制御部とを有していてもよい。また、制御部は、上記第3制御部と、上記第4制御部と、上記第5制御部と、上記第6制御部とを有していてもよい。例えば図11において、制御部は、複数の第1バス電極5の一方の端部に接続された第3制御部4cと、複数の第2バス電極6の一方の端部に接続された第4制御部4dと、複数の第1バス電極5の他方の端部に接続された第5制御部4eとを有する。
【0141】
5.基板
本実施態様における基板は、上記の感応膜、第1センサ電極、第2センサ電極、第1バス電極および第2バス電極を支持し、絶縁性を有する部材である。基板は、上記第1実施態様における基板と同様である。
【0142】
6.絶縁膜
本実施態様における絶縁膜は、第1バス電極および第2バス電極が交差する領域において、第1バス電極および第2バス電極の間に配置される。
【0143】
絶縁膜の材料としては、絶縁性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、樹脂が挙げられる。
【0144】
絶縁膜の厚さは、第1バス電極および第2バス電極を絶縁できる厚さであれば特に限定されず、例えば、0.1μm以上2μm以下である。
【0145】
絶縁膜の形成方法としては、特に限定されず、例えば、絶縁膜を形成してパターニングする方法、マスク蒸着法、印刷法が挙げられる。絶縁膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法が挙げられる。パターニング方法としては、例えば、エッチング法、リフトオフ法が挙げられる。
【0146】
B.水素検知システム
本開示における水素検知システムは、上述の水素センサを用いる。
【0147】
図12は、本開示における水素検知システムの一例を示す模式図である。図12において、水素検知システム20は、複数の水素センサ1と、RFIDリーダライタ21と、RFIDリーダライタ21に接続された複数のアンテナ22とを備える。水素センサ1は、地下に設置された水素パイプライン30に取り付けられている。RFIDリーダライタ21およびアンテナ22は、地上付近の任意の場所に設置されており、固定式である。
【0148】
図13は、本開示における水素検知システムの他の例を示す模式図である。図12において、水素検知システム20は、複数の水素センサ1と、RFIDリーダライタ21と、RFIDリーダライタ21に接続されたアンテナ22とを備える。水素センサ1は、地下に設置された水素パイプライン30に取り付けられている。RFIDリーダライタ21およびアンテナ22は、移動体23に設置されており、移動式である。
【0149】
このような水素検知システムにおいては、非接触で水素センサの制御部を構成するICチップを駆動し、感応膜の電気抵抗の変化を検出でき、水素ガスを検知できる。
【0150】
本開示における水素検知システムは、水素センサを用いるシステムであれば特に限定されないが、RFIDを用いるシステムであることが好ましい。具体的には、本開示における水素検知システムは、水素センサと、RFIDリーダライタと、RFIDリーダライタに接続されたアンテナとを備える。
【0151】
RFIDリーダライタは、固定式であってもよく、移動式であってもよい。固定式のRFIDリーダライタを用いる場合は、常時監視が可能になる。一方、移動式のRFIDリーダライタを用いる場合は、トレース検査を行うことができ、トレース検査の高度化、スマート化、省人化が可能である。
【0152】
本開示における水素検知システムは、燃料電池等の小型機器だけでなく、水素製造施設、水素パイプライン、輸送タンカー、貯蔵タンク、水素発電施設等の大型設備に用いることができる。
【0153】
C.水素センサ用シート
本開示における水素センサ用シートは、ロール状の水素センサ用シートであって、基板と、上記基板の第1面に配置され、水素分子を解離する触媒、および酸化タングステンを含む感応膜と、上記基板の第1面に配置され、蛇行線状に配置されたバス電極と、上記基板の第1面に上記感応膜に接して配置され、上記バス電極に接続された複数の第1センサ電極および複数の第2センサ電極と、を有し、上記第1センサ電極および上記第2センサ電極は、上記感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置されている。
【0154】
図14は、本開示における水素センサ用シートの一例を示す概略斜視図であり、図15は、本開示における水素センサ用シートの一例を示す概略平面図である。図14に示すように、水素センサ用シート40はロール状である。図15に示すように、水素センサ用シート40は、基板2と、基板2の第1面に配置され、水素分子を解離する触媒、および酸化タングステンを含む感応膜3と、基板2の第1面に配置され、蛇行線状に配置されたバス電極41と、基板2の第1面に感応膜3に接して配置され、バス電極41に接続された複数の第1センサ電極7および複数の第2センサ電極8と、を有する。第1センサ電極7および第2センサ電極8は、感応膜3の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置されている。
【0155】
本開示における水素センサ用シートは、上述の水素センサの製造に用いられる。本開示における水素センサ用シートは、ロールツーロール方式により製造できるため、水素センサを効率良く量産できる。
【0156】
本開示の水素センサ用シートにおけるバス電極、第1センサ電極、第2センサ電極、感応膜は、上述の水素センサの第1実施態様において、第1バス電極および第2バス電極が接続されている点以外は、上述の水素センサの第1実施態様における第1バス電極、第2バス電極、第1センサ電極、第2センサ電極、感応膜と同様である。
【0157】
本開示における水素センサ用シートを用いて上述の水素センサを製造する場合、目的の長さに応じて水素センサ用シートを切断し、制御部を接続する部分のバス電極をカットする。その後、制御部を配置する。
【0158】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0159】
以下、実施例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
【0160】
図4に示す水素センサを作製した。厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、印刷法により、第1バス電極、第2バス電極、第1センサ電極および第2センサ電極を形成した。第1センサ電極の長さa1および第2センサ電極の長さa2は70mm、第1センサ電極の幅b1および第2センサ電極の幅b2は2mm、第1センサ電極および第2センサ電極の重なり長さcは50mm、第1センサ電極および第2センサ電極の間隔d1は2mm、第1バス電極の幅e1および第2バス電極の幅e2は10mm、第1センサ電極および第2センサ電極を挟んで対向する第1バス電極および第2バス電極の間隔fは90mm、第1センサ電極および第2センサ電極を挟まずに対向する第1バス電極および第2バス電極の間隔gは10mm、隣接する第1バス電極同士の間隔h1および隣接する第2バス電極同士の間隔h2は10mmとした。また、第1バス電極の厚さ、第2バス電極の厚さ、第1センサ電極の厚さおよび第2センサ電極の厚さはそれぞれ0.2μmとした。次に、上記PETフィルム上に、第1バス電極、第2バス電極、第1センサ電極および第2センサ電極を覆うように、ゾルゲル法により感応膜を形成した。次に、第1バス電極および第2バス電極にICタグを接続して搭載した。これにより、水素センサを得た。
【0161】
上記水素センサに、RFIDリーダライタで読み出し電波を送信し、反射送信される電波を検出できることを確認した。また、上記水素センサを水素ガスに暴露しながら、上記と同様に電波を送信したところ、反射送信される電波の信号レベルが変化した。これにより、水素センサ自体に電源を搭載すること無く、水素ガスを検出できることを確認した。
【0162】
また、第1制御部で測定された抵抗値R1、第2制御部で測定された抵抗値R2とし、R1を合計の抵抗値(R1+R2)で除した係数を、第1バス電極あるいは第2バス電極の全長さに掛けることで、第1制御部からの漏洩位置を特定した。抵抗値は水素の濃度により変化するが、上記方法により水素濃度に関わらず正確に漏洩位置を特定することができた。
【0163】
本開示においては、以下の発明が提供される。
[1]
基板と、
上記基板の第1面に配置され、水素分子を解離する触媒、および酸化タングステンを含む感応膜と、
電気抵抗の変化を検出する制御部と、
上記基板の第1面に配置され、上記制御部に接続された第1バス電極および第2バス電極と、
上記基板の第1面に上記感応膜に接して配置され、上記第1バス電極に接続された複数の第1センサ電極と、
上記基板の第1面に上記感応膜に接して配置され、上記第2バス電極に接続された複数の第2センサ電極と、を有し、
上記第1センサ電極および上記第2センサ電極は、上記感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置されている、水素センサ。
[2]
1つの上記第1バス電極および1つの上記第2バス電極が、一筆書き可能な線状に配置され、
上記第1バス電極の一方の端部および上記第2バス電極の一方の端部が、上記制御部に接続されている、[1]に記載の水素センサ。
[3]
上記制御部が、上記第1バス電極の一方の端部および上記第2バス電極の一方の端部に接続された第1制御部と、上記第1バス電極の他方の端部および上記第2バス電極の他方の端部に接続された第2制御部とを有する、[2]に記載の水素センサ。
[4]
上記第1バス電極および上記第2バス電極が、蛇行線状に配置されている、[2]または[3]に記載の水素センサ。
[5]
複数の上記第1バス電極および複数の上記第2バス電極が、フレキシブルプリント基板を介して上記制御部に接続されている、[1]に記載の水素センサ。
[6]
複数の上記第1バス電極が、第1方向に沿って配置され、
複数の上記第2バス電極が、上記第1方向と直交する第2方向に沿って配置され、
上記制御部が、複数の上記第1バス電極の一方の端部に接続された第3制御部と、複数の上記第2バス電極の一方の端部に接続された第4制御部とを有し、
上記第1バス電極および上記第2バス電極が交差する領域では、上記第1バス電極および上記第2バス電極の間に絶縁膜が配置されている、[1]に記載の水素センサ。
[7]
[1]から[6]までのいずれかの記載の水素センサを用いた水素検知システム。
[8]
ロール状の水素センサ用シートであって、
基板と、
上記基板の第1面に配置され、水素分子を解離する触媒、および酸化タングステンを含む感応膜と、
上記基板の第1面に配置され、蛇行線状に配置されたバス電極と、
上記基板の第1面に上記感応膜に接して配置され、上記バス電極に接続された複数の第1センサ電極および複数の第2センサ電極と、を有し、
上記第1センサ電極および上記第2センサ電極は、上記感応膜の電気抵抗の変化を検出可能な間隔をあけて交互に配置されている、水素センサ用シート。
【符号の説明】
【0164】
1 … 水素センサ
2 … 基板
3 … 感応膜
4 … 制御部
4a … 第1制御部
4b … 第2制御部
4c … 第3制御部
4d … 第4制御部
5 … 第1バス電極
6 … 第2バス電極
7 … 第1センサ電極
8 … 第2センサ電極
20 … 水素検知システム
40 … 水素センサ用シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15