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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168487
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20241128BHJP
   F04C 29/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F04C18/02 311Z
F04C29/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085208
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕之
(72)【発明者】
【氏名】本田 和也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 友次
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 洋介
(72)【発明者】
【氏名】武藤 圭史朗
(72)【発明者】
【氏名】管原 彬人
【テーマコード(参考)】
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H039AA02
3H039AA06
3H039AA12
3H039AA13
3H039BB02
3H039BB04
3H039CC02
3H039CC03
3H039CC04
3H039CC12
3H039CC15
3H039CC22
3H039CC29
3H129AA02
3H129AA15
3H129AA21
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB22
3H129BB44
3H129CC02
3H129CC25
3H129CC28
(57)【要約】
【課題】高い静粛性を発揮するとともに信頼性に優れたスクロール型圧縮機を提供する。
【解決手段】本発明のスクロール型圧縮機は、ハウジング6、駆動機構10、第1スクロール30及び第2スクロール40を備えている。第1スクロール30及び第2スクロール40は、冷媒を圧縮する圧縮室12を形成している。第1スクロール30にはケース15が固定されている。ケース15には吐出室16が形成されている。吐出室16は圧縮室12と連通しており、圧縮室12で圧縮された冷媒が吐出される。また、ケース15は、ハウジング6内で回転可能に軸受14を介してハウジング6に支持されている。吐出室16は、軸受14の外径よりも大径に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング、駆動機構、第1スクロール及び第2スクロールを備え、
前記駆動機構、前記第1スクロール及び前記第2スクロールは前記ハウジング内に収容され、
前記第1スクロールと前記第2スクロールとによって、冷媒を圧縮する圧縮室が形成されるスクロール型圧縮機であって、
前記第1スクロール、前記第2スクロール及び前記駆動機構の少なくとも一つには、内部に前記圧縮室と連通して前記圧縮室で圧縮された冷媒が吐出される吐出室が形成されたケースが固定され、
前記ケースは、前記ハウジング内で回転可能に軸受を介して前記ハウジングに支持され、
前記吐出室は、前記軸受の外径よりも大径に形成されていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
【請求項2】
前記吐出室には、前記圧縮室で圧縮された冷媒とともに潤滑油が吐出され、
前記ケースには、前記ハウジング内において前記吐出室よりも低圧となる個所に対し、前記ケース内の前記潤滑油を還流させる還流路が形成されている請求項1記載のスクロール型圧縮機。
【請求項3】
前記第1スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記第2スクロールは、前記第1スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記第1スクロール及び従動機構によって回転従動され、
前記ケースは、前記第1スクロールに固定されている請求項1又は2記載のスクロール型圧縮機。
【請求項4】
前記駆動機構は、前記ハウジング内に固定されたステータと、筒状に形成されて前記ステータ内で回転可能なロータとを有し、
前記ケースは、前記ロータの内側に配置されている請求項3記載のスクロール型圧縮機。
【請求項5】
前記第1スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記第2スクロールは、前記第1スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記第1スクロール及び従動機構によって回転従動され、
前記駆動機構は、前記ハウジング内に固定されたステータと、筒状に形成されて前記ステータ内で回転可能なロータとを有し、
前記第1スクロールは前記ロータの内側に配置され、
前記ケースは、前記第1スクロールに固定されている請求項1又は2記載のスクロール型圧縮機。
【請求項6】
前記駆動機構は、前記ハウジングに固定されたステータと、筒状に形成されて前記ステータ内で回転可能なロータと、前記ロータに固定されて前記ロータとともに回転可能な駆動軸とを有し、
前記第1スクロールは前記ハウジングに固定され、
前記第2スクロールは前記駆動軸の一端と接続され、前記駆動軸の回転によって前記第1スクロールに対して相対的に公転し、
前記ケースは前記駆動軸の他端に固定され、
前記駆動軸の内部には、前記一端から前記他端まで延びて前記圧縮室と前記吐出室とを連通させる軸路が形成されている請求項1又は2記載のスクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクロール型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のスクロール型圧縮機(以下、単に圧縮機という。)が開示されている。この圧縮機は、ハウジング、駆動機構、第1スクロール、第2スクロール及び従動機構を備えている。駆動機構及び第1スクロールはハウジング内に収容されている。また、ハウジングには、第1スクロールに向かって突出するボスが形成されている。ボスの内部には支持孔が形成されている。
【0003】
第1スクロールには駆動軸が形成されている。駆動軸は円筒状をなしており、内部にボスを収容している。駆動軸とボスとの間、より具体的には、駆動軸の内周面とボスの外周面との間には軸受が設けられている。また、駆動軸は外周面が駆動機構に固定されている。こうして、第1スクロールは、ハウジング内において駆動機構と固定されているとともに、軸受を介してボスに駆動軸心周りで回転可能に支持されている。
【0004】
第2スクロールは第1スクロール内に収容されている。これにより、第2スクロールは第1スクロールとの間に圧縮室を形成している。また、第2スクロールには、ボスに向かって突出する従動軸が形成されている。従動軸は支持孔に挿通されている。これにより、第2スクロールは、第1スクロール内に収容された状態でボスに従動軸心周りで回転可能に支持されている。また、従動軸の内部には吐出室が形成されている。吐出室は圧縮室と連通している。従動機構は第1スクロールと第2スクロールとの間に配置されている。
【0005】
この圧縮機では、第1スクロールが駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、従動スクロールが第1スクロール及び従動機構によって従動軸心周りで回転従動される。これにより、回転駆動する第1スクロールと回転従動する第2スクロールとによって圧縮室の容積が変化する。こうして、この圧縮機では、圧縮室内に冷媒が圧縮室内に吸入されつつ圧縮される。そして、圧縮室で圧縮された冷媒は吐出室に吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2-227575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の圧縮機では、作動時における高い静粛性が求められる。しかし、上記従来の圧縮機では、第2スクロールの従動軸の内部に吐出室が形成されているため、吐出室の容積を十分に確保することができない。これにより、この圧縮機では、圧縮室から吐出室に冷媒が吐出された際の吐出脈動を十分に低減させることができず、静粛性を向上させることが難しい。
【0008】
そこで、この圧縮機において、吐出室を大径化させて吐出室の容積を確保することが考えられるものの、この場合には、吐出室の大径化に伴って従動軸も大径化させる必要がある。また、この圧縮機では、従動軸の大径化に応じてボスの支持孔、ひいてはボスを大径化する必要がある。さらに、ボスの大径化によって軸受及び第1スクロールの駆動軸も大径化する必要がある。しかしながら、軸受を大径化すると、第1スクロールの高速回転時に軸受が駆動軸を十分に支持し得なくなる。このため、圧縮機の信頼性が損なわれてしまう。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、高い静粛性を発揮するとともに信頼性に優れたスクロール型圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスクロール型圧縮機は、ハウジング、駆動機構、第1スクロール及び第2スクロールを備え、
前記駆動機構、前記第1スクロール及び前記第2スクロールは前記ハウジング内に収容され、
前記第1スクロールと前記第2スクロールとによって、冷媒を圧縮する圧縮室が形成されるスクロール型圧縮機であって、
前記第1スクロール、前記第2スクロール及び前記駆動機構の少なくとも一つには、内部に前記圧縮室と連通して前記圧縮室で圧縮された冷媒が吐出される吐出室が形成されたケースが固定され、
前記ケースは、前記ハウジング内で回転可能に軸受を介して前記ハウジングに支持され、
前記吐出室は、前記軸受の外径よりも大径に形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のスクロール型圧縮機では、第1スクロール、第2スクロール又は駆動機構に対してケースが固定されている。また、ケースは軸受を介してハウジングに支持されており、ハウジング内で回転可能である。そして、ケースの内部には吐出室が形成されている。ここで、この吐出室は、軸受の外径よりも大径に形成されている。これにより、この圧縮機では、吐出室の容積を好適に確保できることから、圧縮室から吐出室に冷媒が吐出された際の吐出脈動を吐出室において好適に低減させることができる。
【0012】
また、この圧縮機では、軸受の外径が吐出室よりも小径となるため、吐出室を大径化しても、軸受が大径化することを抑制できる。換言すれば、この圧縮機では、軸受が吐出室と同径又は吐出室よりも大径となることはない。これにより、たとえハウジング内でケースが高速回転する場合であっても、軸受はケース、さらにはケースに固定された第1スクロール等を好適に支持することができる。
【0013】
したがって、本発明のスクロール型圧縮機は、高い静粛性を発揮するとともに信頼性に優れている。
【0014】
吐出室には、圧縮室で圧縮された冷媒とともに潤滑油が吐出され得る。そして、ケースには、ハウジング内において吐出室よりも低圧となる個所に対し、ケース内の潤滑油を還流させる還流路が形成されていることが好ましい。
【0015】
ケースはハウジング内で回転するため、吐出室に吐出された冷媒には、回転するケースの遠心力が作用する。これにより、本発明の圧縮機では、吐出室において、冷媒と潤滑油とを好適に分離させることができる。そして、ケースには還流路が形成されるため、この圧縮機では、還流路によって還流された潤滑油によって、第1スクロール及び第2スクロール等を好適に潤滑することができる。
【0016】
第1スクロールは、駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され得る。また、第2スクロールは、第1スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで第1スクロール及び従動機構によって回転従動され得る。そして、ケースは、第1スクロールに固定されていることが好ましい。
【0017】
この場合には、第1スクロールが回転駆動し、第2スクロールが回転従動することから、本発明の圧縮機は、第1スクロール及び第2スクロールの双方が回転する両回転式スクロール型圧縮機となる。
【0018】
そして、この圧縮機では、ケースが第1スクロールに固定されることにより、ケース、ひいては吐出室を圧縮室に可及的に接近させることが可能となる。これにより、この圧縮機では、吐出室において冷媒と潤滑油とを十分に分離させることができる。
【0019】
また、この場合、駆動機構は、ハウジング内に固定されたステータと、筒状に形成されてステータ内で回転可能なロータとを有し得る。そして、ケースは、ロータの内側に配置されていることが好ましい。
【0020】
ケースをロータの内側に配置することにより、ケースをロータの外側に配置する構成に比べて、この圧縮機では、ケース、ひいては吐出室の容積を大きくしつつもハウジングが駆動軸心方向に長大化することを抑制できる。
【0021】
また、第1スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され得る。さらに、第2スクロールは、第1スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで第1スクロール及び従動機構によって回転従動され得る。また、駆動機構は、ハウジング内に固定されたステータと、筒状に形成されてステータ内で回転可能なロータとを有し得る。さらに、第1スクロールはロータの内側に配置され得る。そして、ケースは、第1スクロールに固定されていることも好ましい。
【0022】
この場合には、ケースをロータの内側に配置する必要がないため、ケースの形状に関する設計の自由度を高くすることができる。これにより、ケースを大径化させ易いことから、この圧縮機では、吐出室の容積を好適に確保し易くなる。
【0023】
また、本発明の圧縮機において、駆動機構は、ハウジングに固定されたステータと、筒状に形成されてステータ内で回転可能なロータと、ロータに固定されてロータとともに回転可能な駆動軸とを有し得る。第1スクロールはハウジングに固定され得る。第2スクロールは駆動軸の一端と接続され、駆動軸の回転によって第1スクロールに対して相対的に公転し得る。ケースは駆動軸の他端に固定され得る。そして、駆動軸の内部には、一端から他端まで延びて圧縮室と吐出室とを連通させる軸路が形成されていることも好ましい。
【0024】
この場合には、ケースが駆動軸の他端に固定されることにより、ケースは駆動軸の回転によってハウジング内で回転可能となる。また、駆動軸には軸路が形成されているため、軸路を通じて圧縮室から吐出室へ冷媒を好適に流通させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のスクロール型圧縮機は、高い静粛性を発揮するとともに信頼性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施例1のスクロール型圧縮機の断面図である。
図2図2は、実施例2のスクロール型圧縮機の断面図である。
図3図3は、実施例3のスクロール型圧縮機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施例1~3を図面を参照しつつ説明する。実施例1~3の圧縮機は、図示しない車両に搭載されている。
【0028】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の圧縮機は、具体的には、両回転式スクロール型圧縮機である。この圧縮機は、ハウジング6、駆動機構10、駆動スクロール30、従動スクロール40、従動機構20及びケース15を備えている。駆動スクロール30は、本発明における「第1スクロール」の一例である。また、従動スクロール40は、本発明における「第2スクロール」の一例である。
【0029】
本実施例では、図1に示す実線矢印によって、圧縮機の前後方向を規定している。なお、前後方向は説明の便宜のための一例であり、圧縮機は搭載される車両に応じて、自己の姿勢を適宜変更可能である。図2、3に示す圧縮機についても同様である。
【0030】
図1に示すように、ハウジング6は、ハウジング本体60及びハウジングカバー61によって構成されている。ハウジング本体60及びハウジングカバー61はアルミニウム合金製である。
【0031】
ハウジング本体60は、外周壁60a及び後壁60bを有する有底筒状部材である。外周壁60aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。駆動軸心O1は前後方向と平行である。外周壁60aには、吸入連絡口69が形成されている。吸入連絡口69は、外周壁60aをハウジング本体60の径方向に貫通している。吸入連絡口69には配管(図示略)が接続されている。これにより、吸入連絡口69は配管を通じてハウジング6の外部、すなわち圧縮機の外部に接続している。
【0032】
後壁60bは、ハウジング本体60の後端に位置している。後壁60bは、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。後壁60bの外周縁は、外周壁60aの後端に接続している。後壁60bの内面中央には第1支持部64が形成されている。第1支持部64は、駆動軸心O1を中心とする略円柱状をなしており、後壁60bの内面中央から前方、すなわち、後述するスクロール室65内に突出している。なお、後壁60bに対して吸入連絡口69を形成しても良い。
【0033】
また、第1支持部64にはピン孔54が形成されている。ピン孔54は第1支持部64の前端面に開口しつつ、第1支持部64内を後方に向かって直線状に延びている。ここで、ピン孔54は第1支持部64を前後方向に貫通していない。
【0034】
ハウジングカバー61は、ハウジング本体60の前方に配置されている。ハウジングカバー61は、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。ハウジングカバー61は、その外周縁がハウジング本体60の外周壁60aの前端に当接した状態で図示しないボルトによってハウジング本体60に固定されている。これにより、ハウジングカバー61は、ハウジング本体60を前方から塞いでいる。こうして、ハウジング本体60内にスクロール室65が形成されている。
【0035】
ハウジングカバー61の内面中央には、第2支持部67が形成されている。第2支持部67は、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、ハウジングカバー61の内面中央から後方に突出している。
【0036】
また、第2支持部67には、ラジアル玉軸受14が設けられている。ラジアル玉軸受14は、本発明における「軸受」の一例である。ラジアル玉軸受14の外径の長さは、第1長さL1となっており、第2支持部67よりも小径をなしている。ラジアル玉軸受14は、外輪を第2支持部67内に嵌入することにより、第2支持部67に固定されている。なお、本発明における「軸受」として、滑り軸受等を採用しても良い。
【0037】
また、ハウジングカバー61には、吐出連絡口68が形成されている。吐出連絡口68は、ハウジングカバー61の中央に位置しており、ハウジングカバー61を駆動軸心O1方向に貫通している。吐出連絡口68は、後述する吐出通路151と駆動軸心O1方向で対向している。また、吐出連絡口68には配管(図示略)が接続されている。これにより、吐出連絡口68は配管を通じて圧縮機の外部に接続している。
【0038】
スクロール室65は吸入連絡口69と連通している。これにより、スクロール室65には、吸入連絡口69に接続された配管を通じて圧縮機の外部から低圧の冷媒が吸入される。これにより、スクロール室65は冷媒の吸入室としても機能する。
【0039】
駆動機構10は具体的には電動モータであり、スクロール室65内に収容されている。これにより、スクロール室65は、駆動機構10を収容するモータ室も兼ねている。駆動機構10は、ステータ17及びロータ11によって構成されている。ステータ17は、ステータコア17a及びコイルエンド17bを有している。ステータコア17aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状である。コイルエンド17bは、ステータコア17aに巻回されたコイルの一部によって形成されており、ステータコア17aから駆動軸心O1方向に突出する環状をなしている。ステータ17は、ステータコア17aを外周壁60aの内周面に嵌入することにより、ハウジング本体60に固定されている。
【0040】
ロータ11は、駆動軸心O1周りで円筒状をなしており、ステータ17内に配置されている。詳細な図示を省略するものの、ロータ11は、ステータ17に対応する複数個の永久磁石と、各永久磁石を固定する複数枚の電磁鋼板等とで構成されている。
【0041】
駆動スクロール30はアルミニウム合金製である。駆動スクロール30はスクロール室65内に収容されている。駆動スクロール30は、駆動端板31、駆動周壁32、駆動渦巻体33及びカバー体35を有している
【0042】
駆動端板31は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。ここで、従動軸心O2は、駆動軸心O1に対して偏心しつつ駆動軸心O1と平行に延びている。つまり、従動軸心O2も前後方向に平行である。
【0043】
駆動端板31は、ケース15と対向する前面311と、前面311の反対側に位置する後面312とを有している。また、駆動端板31には吐出口38が形成されている。吐出口38は、駆動端板31の略中央となる個所に配置されており、駆動端板31を駆動軸心O1方向に貫通している。
【0044】
さらに、駆動端板31の前面311には、吐出リード弁57及びリテーナ58が固定ボルト59によって固定されている。これにより、吐出リード弁57は吐出口38を開閉可能となっており、また、リテーナ58は、吐出リード弁57の開度を調整可能となっている。
【0045】
駆動周壁32は、駆動軸心O1を中心としつつ駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びる円筒状に形成されている。駆動周壁32は、前端が駆動端板31の外周縁と一体をなしており、駆動端板31から後方に向かって円筒状に延びている。
【0046】
駆動渦巻体33は駆動周壁32の内側に配置されている。駆動渦巻体33は駆動端板31と一体をなしており、駆動端板31の後面312から後方、すなわち従動スクロール40に向かって駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びている。詳細な図示を省略するものの、駆動渦巻体33は、駆動端板31の中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって渦巻状に延びている。また、駆動渦巻体33は、渦巻の外周端が駆動周壁32の内周面に接続している。
【0047】
カバー体35は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。カバー体35は、駆動端板31及び駆動周壁32と略同径に形成されている。カバー体35は、前面351と後面352とを有している。前面351は、駆動端板31の後面312と対向している。後面352は、前面351の反対側に位置しており、ハウジング本体60の後壁60bと対向している。
【0048】
また、カバー体35には、ボス36及び吸入口35aが形成されている。ボス36は、カバー体35の中央に一体に形成されており、後面352から後方に向かって突出している。また、ボス36内には挿通孔350が形成されている。挿通孔350は、ボス36内及びカバー体35内を駆動軸心O1方向に貫通している。これにより、ボス36は駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。挿通孔350内には、滑り軸受51が設けられている。なお、滑り軸受51に換えて、玉軸受等を挿通孔350内に設けても良い。
【0049】
吸入口35aは、ボス36よりもカバー体35の径方向の外側に配置されている。吸入口35aは、カバー体35を駆動軸心O1方向に貫通している。なお、吸入口35aの個数の他、カバー体35における吸入口35aの位置等は適宜設計可能である。
【0050】
また、カバー体35においてボス36と吸入口35aとの間となる個所には、複数のリング22が取り付けられている。各リング22は、前方に臨んだ状態でカバー体35の周方向に等間隔で配置されており、ボス36及び挿通孔350を外側から囲っている。なお、本実施例では、リング22の個数は6つとされている。また、図1では6つのリング22のうちの2つを図示している。図2についても同様である。
【0051】
図1に示す従動スクロール40もアルミニウム合金製である。従動スクロール40は、スクロール室65内、より具体的には駆動スクロール30内に収容されている。従動スクロール40は、従動端板41及び従動渦巻体43を有している。
【0052】
従動端板41は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。従動端板41は前面411と後面412とを有している。前面411は、駆動スクロール30内において駆動端板31の後面312と対向している。後面412は、前面411の反対側に位置しており、カバー体35の前面351と対向している。
【0053】
従動端板41には、収容部41aが形成されている。収容部41aは従動端板41の後面412から前方に向かって従動軸心O2を中心とする円柱状に凹設されている。収容部41a内にはブッシュ53が設けられている。なお、ブッシュ53は、滑り軸受や玉軸受等を介して収容部41a内に設けられても良い。
【0054】
また、ブッシュ53には従動ピン55が挿通されている。この際、従動ピン55はブッシュ53における中心、すなわち従動軸心O2よりも偏心した位置でブッシュ53に挿通されている。従動ピン55は鉄鋼製であり、円柱状をなしている。従動ピン55は、ブッシュ53、ひいては従動端板41から後方に突出している。
【0055】
さらに、従動端板41において、収容部41aよりも外周側には、後面412から後方に向かって突出した状態で複数の自転阻止ピン21が固定されている。より具体的には、各自転阻止ピン21は、収容部41aよりも外周側であって、それぞれリング22と対向する個所に固定されている。これにより、従動端板41において、各自転阻止ピン21同士は、従動端板41の周方向に等間隔で配置されており、収容部41a及びブッシュ53を外側から囲っている。なお、本実施例では、リング22の個数に対応して自転阻止ピン21の個数は6つとされている。また、図1及び図2では6つの自転阻止ピン21のうちの2つを図示している。
【0056】
図1に示すように、従動渦巻体43は従動端板41と一体をなしており、従動端板41の前面411から前方、すなわち駆動端板31に向かって駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びている。詳細な図示を省略するものの、従動渦巻体43は、従動端板41の中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって渦巻状に延びている。
【0057】
従動機構20は、上述の各自転阻止ピン21と、各リング22とで構成されている。なお、従動機構20を構成する自転阻止ピン21及びリング22の個数は、それぞれ3個以上であればその個数は適宜変更可能である。
【0058】
ケース15は、外周壁15a、前壁15b及びフランジ15cを有する有底筒状部材である。外周壁15aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。ここで、外周壁15aの外径は、ラジアル玉軸受14の外径よりも大径であって、ロータ11の内径とほぼ同径に形成されている。
【0059】
また、外周壁15aには、還流路150が形成されている。還流路150は、外周壁15aにおける前方部分に位置しており、外周壁60aをケース15の径方向に貫通している。
【0060】
前壁15bは、ケース15の前端に位置している。前壁15bは、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。前壁15bの外周縁は、外周壁15aの前端に接続している。また、前壁15bには、ボス15dが形成されている。ボス15dは、前壁15bの中央に一体に形成されており、前壁15bから前方に向かって突出している。ボス15dは、ラジアル玉軸受14の内径とほぼ同径に形成されている。
【0061】
ボス15d内には吐出通路151が形成されている。吐出通路151は、ボス15d内及び前壁15b内を駆動軸心O1方向に貫通している。これにより、ボス15dは駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。
【0062】
フランジ15cは、外周壁15aの後端に一体に形成されている。フランジ15cは、ケース15の径方向で外周壁15aよりも外側に向かって突出している。これにより、フランジ15cはロータ11及び外周壁15aよりも大径であって、駆動スクロール30の駆動端板31とほぼ同径をなしている。なお、フランジ15cの形成を省略しても良い。
【0063】
この圧縮機では、ケース15が駆動スクロール30に固定されている。具体的には、駆動スクロール30において、カバー体35の前面351を駆動端板31の後面312に向けた状態としつつ、カバー体35を駆動周壁32の後端に当接させている。ケース15は、外周壁15a及びフランジ15cを駆動端板31に向けつつ、フランジ15cを駆動端板31の前面311に当接させている。
【0064】
そして、この状態でフランジ15cと、駆動端板31及び駆動周壁32と、カバー体35とがフランジ15c側から複数のボルト50aによって接続されている。こうして、駆動スクロール30では、駆動端板31及び駆動周壁32と、カバー体35とが一体化されており、また、ケース15は駆動端板31、ひいては駆動スクロール30と一体化されている。
【0065】
そして、このようにケース15が駆動スクロール30に固定されることより、ケース15の外周壁15a及び前壁15bと、駆動端板31とによってケース15の内部に吐出室16が形成されている。吐出室16の内径の長さは、第1長さL1よりも長い第2長さL2とされている。これにより、吐出室16は、ラジアル玉軸受14の外径よりも大径に形成されている。また、吐出室16における駆動軸心O1方向の長さは、第3長さL3となっている。これにより、吐出室16はステータ17及びロータ11よりも駆動軸心O1方向に長くなっている。
【0066】
吐出室16は、吐出口38、還流路150及び吐出通路151とそれぞれ連通している。ここで、吐出口38及び吐出通路151は吐出室16に対して駆動軸心O1方向で連通している。これに対し、還流路150は、吐出室16に対してケース15の径方向、すなわち駆動軸心O1方向に直交する方向で連通している。また、これらの吐出口38、還流路150及び吐出通路151は、いずれも吐出室16よりも小径をなしている。
【0067】
そして、ケース15では、外周壁15aがロータ11内に挿通されつつ、ロータ11の内周面に固定されている。つまり、ケース15は、ロータ11の内側に配置された状態で駆動スクロール30及びロータ11の両方と固定されている。この際、ケース15は、還流路150がロータ11によって塞がれることがないように、還流路150をロータ11の前方に露出させた状態でロータ11に固定されている。こうして、ケース15はスクロール室65内に収容されている。また、還流路150は、吐出室16とスクロール室65と連通している。
【0068】
このようにケース15がロータ11に固定されることにより、ケース15は、スクロール室65内において、ロータ11と一体で駆動軸心O1周りに回転可能となっている。さらに、ケース15はボス15dをラジアル玉軸受14の内輪に内嵌させている。これにより、ケース15は、ラジアル玉軸受14を介して第2支持部67、すなわちハウジング6に対して駆動軸心O1周りで回転可能に支持されている。
【0069】
また、この圧縮機では、駆動スクロール30内に従動スクロール40を収容しつつ、駆動渦巻体33と従動渦巻体43とを噛合させている。さらに、各自転阻止ピン21をそれぞれ各リング22内に進入させている。こうして、駆動スクロール30と従動スクロール40とが前後方向で組み付けられることにより、駆動スクロール30と従動スクロール40とはスクロール圧縮部100を構成している。なお、より詳細には、駆動渦巻体33と従動渦巻体43とを噛合させ、かつ、各自転阻止ピン21を各リング22内に進入させた後に、各ボルト50aによって、ケース15と、駆動端板31及び駆動周壁32と、カバー体35とを接続している。
【0070】
また、駆動スクロール30と従動スクロール40とが組み付けられることにより、駆動スクロール30と従動スクロール40とによって吸入部30aが形成されている。つまり、駆動渦巻体33及び従動渦巻体43は吸入部30a内に位置している。吸入部30aは、駆動端板31、駆動周壁32及びカバー体35によってスクロール室65と区画されている他、駆動端板31によって吐出室16と区画されている。また、吸入部30aは、吸入口35aと連通している。
【0071】
そして、駆動スクロール30では、滑り軸受51内、つまりボス36内に第1支持部64を挿通させている。これにより、カバー体35は滑り軸受51を介して第1支持部64に回転可能に支持されている。このように、カバー体35が第1支持部64に支持されることにより、吸入口35aはスクロール室65に臨んだ状態となっている。こうして、吸入口35aは、スクロール室65と吸入部30aとを連通している。
【0072】
また、上述のように、この圧縮機では、ケース15が第2支持部67に回転可能に支持されている。このため、駆動スクロール30は、ケース15を通じて第2支持部67に回転可能に支持されている。この結果、駆動スクロール30は、第1支持部64と第2支持部67との両方によってハウジング6に駆動軸心O1周りで回転可能に支持されている。
【0073】
一方、従動スクロール40では、従動ピン55が第1支持部64のピン孔54内に挿通される。これにより、従動スクロール40は、従動ピン55によって第1支持部64に従動軸心O2周りで回転可能に支持されている。つまり、駆動スクロール30と異なり、従動スクロール40は、第1支持部64のみによってハウジング6に従動軸心O2周りで回転可能に支持されている。
【0074】
ここで、従動軸心O2は、駆動軸心O1に対して偏心している。このため、従動スクロール40は、ハウジング6に従動軸心O2周りで回転可能に支持されることにより、駆動スクロール30に対して偏心した状態で駆動スクロール30内に収容されている。
【0075】
以上のように構成されたこの圧縮機では、駆動機構10のロータ11が回転することにより、スクロール室65内において、ケース15が駆動軸心O1周りで回転駆動する。また、ケース15の回転によって駆動スクロール30もスクロール室65内において、駆動軸心O1周りで回転駆動する。つまり、この圧縮機では、ロータ11と駆動スクロール30とは非接触であるものの、ケース15を通じてロータ11の回転が駆動スクロール30に伝達される。
【0076】
また、ケース15及び駆動スクロール30の回転に伴い、従動機構20において、各自転阻止ピン21はそれぞれ各リング22の内周面を摺接しつつ、各リング22を各自転阻止ピン21の中心周りで相対的に回転させる。こうして、従動機構20は、従動スクロール40に駆動スクロール30のトルクを伝達する。
【0077】
その結果、従動スクロール40は、従動軸心O2周りで駆動スクロール30及び従動機構20によって回転従動される。この際、従動機構20は、従動スクロール40が自転することを規制する。これにより、従動スクロール40は駆動スクロール30に対して従動軸心O2周りで相対的に公転する。そして、吸入部30a内において駆動渦巻体33及び従動渦巻体43がそれぞれ回転することで、駆動渦巻体33及び従動渦巻体43は、互いに接触する。これにより、駆動渦巻体33及び従動渦巻体43は、双方の間に圧縮室12を形成する。
【0078】
また、駆動スクロール30及び従動スクロール40が回転することにより、図1の破線矢印で示すように、スクロール室65内には、配管及び吸入連絡口69を通じて圧縮機の外部から低圧の冷媒が吸入される。ここで、スクロール室65内に吸入される冷媒には、潤滑油18が含まれている。
【0079】
スクロール室65内の冷媒は、吸入口35aから吸入部30aを経て圧縮室12に吸入される。そして、圧縮室12は、駆動スクロール30の回転駆動及び従動スクロール40の回転従動によって、自己の内部に冷媒を閉じ込めつつ、自己の容積を縮小させて冷媒を圧縮する。こうして、吐出圧力まで圧縮された高圧の冷媒は、吐出口38から吐出室16に吐出される。そして、吐出室16に吐出された冷媒は、吐出通路151を流通し、吐出連絡口68に接続された配管によって、圧縮機の外部に吐出される。
【0080】
このように、吐出室16には、高圧の冷媒が吐出されるため、吐出室16は、スクロール室65及び吸入部30aに比べて高圧となっている。換言すれば、スクロール室65及び吸入部30aは、吐出室16よりも低圧の吸入雰囲気となっている。
【0081】
また、この圧縮機では、ケース15の内部に吐出室16が形成されている。そして、この吐出室16は内径が第2長さL2となることにより、ラジアル玉軸受14の外径よりも大径をなしている。さらに、吐出室16における駆動軸心O1方向の長さは、第3長さL3となっている。これらにより、この圧縮機では、吐出室16の容積を好適に確保することが可能となっている。このため、この圧縮機では、圧縮室12から吐出室16に冷媒が吐出された際の吐出脈動を吐出室16において好適に低減させることが可能となっている。この作用について、具体的に説明する。
【0082】
上述のように、圧縮室12で圧縮された冷媒は、吐出口38を流通して吐出室16に吐出される。ここで、吐出口38は吐出室16に比べて小径であるため、圧縮室12で圧縮された冷媒は、吐出口38を流通した後、吐出口38よりも容積の大きい空間である吐出室16に吐出されることになる。
【0083】
さらに、吐出室16内の冷媒は、吐出通路151を流通することで吐出室16の外部、すなわち圧縮機の外部に吐出される。ここで、ケース15のボス15dは、ラジアル玉軸受14の内輪に挿通されてラジアル玉軸受14に支持されている。このため、ボス15d、さらには、ボス15d内に形成された吐出通路151は、ラジアル玉軸受14よりも小径となる。つまり、この圧縮機では、吐出室16の内径がラジアル玉軸受14の外径よりも大径となることにより、吐出室16の内径と、吐出通路151の内径との差が十分に大きくなっている。
【0084】
このため、圧縮室12で圧縮された冷媒は、吐出口、吐出室及び吐出通路151の順で流通することにより、狭い空間を流通して広い空間に至り、再び狭い空間を流通することで圧縮機の外部に吐出されることになる。こうして、この圧縮機では、吐出室16におけるマフラー効果が十分に発揮されるようになっている。
【0085】
また、吐出室16における駆動軸心O1方向の長さが第3長さL3となることにより、この圧縮機では、吐出室16における駆動軸心O1方向の長さも好適に確保することが可能となっている。これにより、圧縮機では、圧縮室12で圧縮された冷媒が有する低い周波数の波長を吐出室16内で好適に打ち消すことが可能となっている。
【0086】
これらにより、この圧縮機では、圧縮室12から吐出室16に冷媒が吐出された際の吐出脈動を吐出室16において好適に低減させることが可能となっている。
【0087】
また、この圧縮機では、ラジアル玉軸受14の外径が吐出室16よりも小径となるため、上述のように吐出室16を大径化しても、ラジアル玉軸受14が大径化することを抑制できる。換言すれば、この圧縮機では、ラジアル玉軸受14が吐出室16と同径又は吐出室16よりも大径となることがない。これにより、この圧縮機では、たとえロータ11が高速回転することに伴ってケース15が高速回転する場合であっても、ラジアル玉軸受14軸受はケース15、さらには、ケース15を通じて駆動スクロール30を好適に支持することが可能となっている。
【0088】
したがって、実施例1の圧縮機は、高い静粛性を発揮するとともに信頼性に優れている。
【0089】
特に、この圧縮機では、ロータ11の回転によってケース15がスクロール室65内で回転するため、吐出室16に吐出された冷媒には、回転するケース15の遠心力が作用する。これにより、この圧縮機では、吐出室16において、冷媒と潤滑油18とを好適に分離させることができる。そして、冷媒から分離された潤滑油18は、ケース15の遠心力によって、吐出室16の内周面に付着し易くなる他、ケース15の径方向の外側で吐出室16内に留まり易くなる。このため、吐出通路151から吐出連絡口68の配管を経て圧縮機の外部に吐出される冷媒には潤滑油18が含まれ難くなっている。
【0090】
また、ケース15の外周壁15aには還流路150が形成されている。このため、この圧縮機では、ケース15に作用する遠心力、より具体的には、ケース15に作用する遠心力に加えて、吐出室16内とスクロール室65内との圧力差によって、還流路150を通じて吐出室16内の潤滑油18を冷媒の一部とともにスクロール室65内に流出させることが可能となっている。こうして、吐出室16からスクロール室65に流出した潤滑油18は、吸入口35aに吸入される冷媒とともに、吸入部30a、ひいては圧縮室12に還流されることになる。これにより、この圧縮機では、潤滑油18によって圧縮室12内を潤滑することができるため、駆動端板31、駆動渦巻体33、従動端板41及び従動渦巻体43が摩耗し難くなっている。
【0091】
また、この圧縮機では、吐出室16からスクロール室65に流出した潤滑油18によって、ロータ11及びラジアル玉軸受14等を潤滑することも可能となっている。
【0092】
さらに、この圧縮機では、ケース15が駆動スクロール30の駆動端板31に固定されているとともに、ロータ11の内側に配置されてロータ11の内周面に固定されている。このように、ケース15が駆動端板31に固定されることにより、この圧縮機では、ケース15、ひいては吐出室16について、駆動端板31を挟んで圧縮室12の前方に配置させることができる。つまり、この圧縮機では、吐出室16を圧縮室12に接近させて配置することができる。このため、この圧縮機では、吐出室16において冷媒と潤滑油18とを十分に分離させることが可能となっている。
【0093】
さらに、この圧縮機では、ケース15の全体がロータ11の外側に配置されることがない。こうして、この圧縮機では、吐出室16における駆動軸心O1方向の長さを第3長さL3とし、吐出室16を駆動軸心O1方向に長く形成しながらその容積を大きくしつつも、ハウジング6が全体として過度に軸長化することを抑制できる。
【0094】
また、この圧縮機では、ケース15を通じてロータ11の動力を駆動スクロール30に伝達することが可能であるため、ロータ11と駆動スクロール30とを動力伝達可能に直接接続する必要がない。これにより、この圧縮機では、駆動スクロール30の設計の自由度を高くすることが可能となっている。この結果、この圧縮機では、ハウジング6の大径化を可及的に抑制しつつも、駆動スクロール30及び従動スクロール40を大径化することにより、圧縮室12の容積を好適に確保することが可能となっている。
【0095】
(実施例2)
図2に示すように、実施例2の圧縮機も実施例1の圧縮機と同様に、両回転式スクロール型圧縮機である。この圧縮機は、ケース15に換えてケース25を備えている。また、この圧縮機では、実施例1の圧縮機に比べて、ハウジング本体60の外周壁60aが駆動軸心O1方向に短く形成されている。
【0096】
さらに、この圧縮機では、カバー体35に複数の凹部353が形成されている。各凹部353にはそれぞれボルト50cが収容されている。そして、駆動スクロール30では、駆動周壁32の後端にカバー体35の前面351を当接させつつ、各ボルト50cによって、駆動端板31及び駆動周壁32と、カバー体35とを接続している。つまり、各ボルト50cは、駆動スクロール30とケース25との固定は行わない。
【0097】
ケース25は、外周壁25a及び前壁25bを有する有底筒状部材である。外周壁25aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。ここで、外周壁25aの外径は、実施例1の圧縮機におけるケース15の外周壁15aよりも大径に形成されており、駆動端板31とほぼ同径に形成されている。また、外周壁25aにおける駆動軸心O1方向の長さは、ケース15の外周壁15aに比べて短く形成されている。さらに、外周壁25aには、還流路250が形成されている。還流路250は、外周壁25aをケース25の径方向に貫通している。
【0098】
前壁25bは、ケース25の前端に位置しており、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。前壁25bの外周縁は、外周壁25aの前端に接続している。また、前壁25bには、ボス25cが形成されている。ボス25cは、前壁15bの中央に一体に形成されており、前壁25bから前方に向かって突出している。そして、ボス25c内には吐出通路251が形成されている。これらのボス25c及び吐出通路251は、実施例1の圧縮機におけるボス15d及び吐出通路151と同様の構成である。
【0099】
ケース25は、外周壁25aを駆動端板31に向けつつ、外周壁25aの後端を駆動端板31の前面311に当接させている。そして、この状態でケース25は、複数のボルト50dによって駆動端板31に接続されている。こうして、ケース25は、駆動スクロール30に固定されて駆動スクロール30と一体化されている。なお、各ボルト50d又は各ボルト50cによってケース25と、駆動端板31及び駆動周壁32と、カバー体35とを接続しても良い。
【0100】
また、このようにケース25が駆動スクロール30に固定されることより、ケース25の外周壁25a及び前壁25bと、駆動端板31とによってケース25の内部に吐出室26が形成されている。ここで、外周壁25aの外径がケース15の外周壁15aよりも大径であるため、吐出室26の内径の長さは、第2長さL2よりも長い第4長さL4となっている。これにより、吐出室26は、ラジアル玉軸受14の外径よりも大径に形成されている。また、吐出室26における駆動軸心O1方向の長さは、第5長さL5となっており、吐出室16における駆動軸心O1方向の長さに比べて短くなっている。なお、吐出室26における駆動軸心O1方向の長さを第3長さL3としたり、第3長さL3よりも長く形成したりしても良い。
【0101】
吐出室26は、吐出口38、還流路250及び吐出通路251とそれぞれ連通している。これらの吐出口38、還流路250及び吐出通路251は、いずれも吐出室26よりも小径をなしている。また、吐出室26は、駆動端板31によって吸入部30aと区画されている。
【0102】
ケース25はスクロール室65内に収容されている。そして、ケース25はボス25cをラジアル玉軸受14の内輪に内嵌させている。これにより、ケース25は、ラジアル玉軸受14を介して第2支持部67、ひいてはハウジング6に対して駆動軸心O1周りで回転可能に支持されている。また、還流路250は、吐出室26とスクロール室65と連通している。そして、吐出通路251は吐出連絡口68と駆動軸心O1方向で対向している。
【0103】
そして、このようにケース25が第2支持部67に支持されることにより、この圧縮機では、駆動スクロール30がケース25を通じて第2支持部67に回転可能に支持されている。このため、この圧縮機でも、駆動スクロール30は、第1支持部64と第2支持部67との両方によってハウジング6に駆動軸心O1周りで回転可能に支持されている。
【0104】
また、この圧縮機では、スクロール室65内において、駆動機構10がケース25よりも後方に配置されている。そして、駆動スクロール30の駆動周壁32がロータ11内に挿通されつつ、ロータ11の内周面に固定されている。これに対し、ケース25は、ロータ11とは固定されていない。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0105】
図2の破線矢印で示すように、この圧縮機でも実施例1の圧縮機と同様に、スクロール室65内の冷媒が圧縮室12に吸入されて圧縮される。そして、この圧縮機では、圧縮室12で圧縮された高圧の冷媒が吐出口38から吐出室26に吐出される。また、吐出室26に吐出された冷媒は、吐出通路251を流通し、吐出連絡口68に接続された配管によって、圧縮機の外部に吐出される。
【0106】
ここで、この吐出室26は内径が第4長さL4となることにより、ラジアル玉軸受14の外径よりも大径をなしている。さらに、吐出室26における駆動軸心O1方向の長さは、第5長さL5となっている。これらにより、この圧縮機でも吐出室26の容積を好適に確保することが可能となっている。また、吐出通路251は、ラジアル玉軸受14よりも小径であるため、吐出室26の内径と、吐出通路251の内径との差が十分に大きくなっている。
【0107】
また、この圧縮機では、吐出室26において冷媒から分離された潤滑油18を還流路250を通じてスクロール室65内に流出させることが可能となっている。これらにより、この圧縮機でも実施例1の圧縮機と同様の作用を奏することが可能となっている。
【0108】
特に、この圧縮機では、駆動周壁32がロータ11の内側に配置されつつロータ11の内周面に固定されており、ケース25は駆動スクロール30の駆動端板31に固定されている。これにより、この圧縮機でも吐出室26を圧縮室12に接近させて配置することができるため、吐出室26において冷媒と潤滑油18とを十分に分離させることが可能となっている。
【0109】
さらに、この圧縮機では、ケース25をロータ11の内側に配置する必要がないため、その分、ケース25の設計の自由度が高くなっている。この結果、この圧縮機では、吐出室26の内径を第4長さL4とすることで吐出室26を大径化することが可能となっている。こうして、この圧縮機では、圧縮室12から吐出室26に冷媒が吐出された際の吐出脈動を吐出室26において好適に低減させることが可能となっている。
【0110】
また、この圧縮機では、吐出室26における駆動軸心O1方向の長さを第5長さL5とすることにより、上述のように吐出室26において吐出脈動を好適に低減させつつも、ケース25を駆動軸心O1方向に小型化することが可能となっている。これにより、この圧縮機では、実施例1の圧縮機に比べて、ハウジング6を軸短化させることが可能となっている。
【0111】
さらに、この圧縮機では、駆動スクロール30を通じてロータ11の動力をケース25に伝達することが可能であるため、ロータ11とケース25とを動力伝達可能に直接接続する必要がない。この点においても、この圧縮機では、ケース25の設計の自由度が高くなっている。
【0112】
(実施例3)
図3に示すように、実施例3の圧縮機は、ハウジング7と、駆動機構80と、固定スクロール90と、可動スクロール110と、ケース27とを備えている。固定スクロール90は、本発明における「第1スクロール」の一例である。また、可動スクロール110は、本発明における「第2スクロール」の一例である。
【0113】
ハウジング7は、モータハウジング71と、コンプレッサハウジング72と、固定ブロック73とで構成されている。モータハウジング71は、ハウジング7における後方部分を構成しており、コンプレッサハウジング72は、ハウジング7における前方部分を構成している。
【0114】
モータハウジング71は、後壁71aと第1周壁71bとを有している。後壁71aは、モータハウジング71の後端に位置しており、モータハウジング71の径方向に延びている。第1周壁71bは、後壁71aと接続しており、後壁71aから前方に向かって略円筒状に延びている。これらの後壁71a及び第1周壁71bにより、モータハウジング71は、前方が開口する有底の筒状をなしている。モータハウジング71内には、モータ室75が形成されている。
【0115】
また、モータハウジング71には、吸入連絡口71c、支持部71d及び吐出連絡口71eが形成されている。吸入連絡口71cは第1周壁71bに形成されている。吸入連絡口71cは、第1周壁71bをモータハウジング71の径方向に貫通している。実施例1の圧縮機における吸入連絡口69と同様、吸入連絡口71cには配管(図示略)が接続されている。これにより、吸入連絡口71cは配管を通じて圧縮機の外部に接続している。また、吸入連絡口71cはモータ室75と連通している。なお、吸入連絡口71cを後壁71aに形成しても良い。
【0116】
支持部71dは駆動軸心O3を中心とする円筒状をなしており、後壁71aの中央からモータ室75内に向かって突出している。ここで、駆動軸心O3は前後方向と平行である。支持部71dには、ラジアル玉軸受39が設けられている。ラジアル玉軸受39も本発明における「軸受」の一例である。ラジアル玉軸受39の外径の長さは、第6長さL6となっており、支持部71dよりも小径をなしている。ラジアル玉軸受39は、外輪を支持部71d内に嵌入することにより、支持部71dに固定されている。
【0117】
吐出連絡口71eは後壁71aにおいて、支持部71d内となる個所に形成されている。吐出連絡口71eは、吐出連絡口71eよりも小径をなしており、後壁71aを駆動軸心O3方向に貫通している。実施例1の圧縮機における吐出連絡口68と同様、吐出連絡口71eには配管(図示略)が接続されている。これにより、吐出連絡口71eは配管を通じて圧縮機の外部に接続している。
【0118】
コンプレッサハウジング72は、前壁72aと第2周壁72bとを有している。前壁72aは、コンプレッサハウジング72の前端に位置しており、コンプレッサハウジング72の径方向に延びている。第2周壁72bは、前壁72aと接続しており、前壁72aから後方に向かって円筒状に延びている。これらの前壁72a及び第2周壁72bにより、コンプレッサハウジング72は、後方が開口する有底の筒状をなしている。
【0119】
固定ブロック73は、モータハウジング71とコンプレッサハウジング72との間に設けられている。そして、モータハウジング71とコンプレッサハウジング72と固定ブロック73とは、コンプレッサハウジング72側から複数のボルト78によって締結されている。こうして、固定ブロック73は、モータハウジング71とコンプレッサハウジング72とに挟持されつつ、モータハウジング71及びコンプレッサハウジング72に固定されている。これにより、固定ブロック73は、前後方向でモータ室75と可動スクロール110との間に位置している。なお、図3では、複数のボルト78のうちの1つのみを図示している。また、モータハウジング71とコンプレッサハウジング72と固定ブロック73との固定方法は、適宜設計可能である。
【0120】
固定ブロック73には、後方に向かって突出するボス73aが形成されている。ボス73aの先端には、挿通孔73bが形成されている。また、ボス73a内には、ラジアル玉軸受45と軸封部材29とが設けられている。さらに、固定ブロック73には、連通路73cが形成されている。連通路73cは、固定ブロック73において、ボス73aよりも外側に位置しており、固定ブロック73を駆動軸心O3方向に貫通している。なお、連通路73cの個数は適宜設計可能である。
【0121】
また、固定ブロック73には、前方に向かって突出した状態で6つの自転阻止ピン47が固定されている。各自転阻止ピン47同士は、固定ブロック73の周方向に等間隔で配置されている。なお、図3では、6つの自転阻止ピン47のうちの一つを図示している。
【0122】
駆動機構80はモータ室75内に収容されている。駆動機構80は、ステータ81、ロータ82及び駆動軸83によって構成されている。ステータ81は、ステータコア81a及びコイルエンド81bを有している。コイルエンド81bの後端は、後述するバランスウェイト86との干渉を回避するように内周側が傾斜している。なお、上述のコイルエンド81bの形状を除いて、ステータコア81a及びコイルエンド81bは実施例1の圧縮機におけるステータコア17a及びコイルエンド17bとほぼ同様の構成あることから、詳細な説明を省略する。ステータ81は、ステータコア81aを第1周壁71bの内周面に嵌入することにより、モータハウジング71に固定されている。
【0123】
ロータ82は、駆動軸心O3周りで円筒状をなしており、ステータ81内に配置されている。詳細な図示を省略するものの、ロータ82も複数個の永久磁石と、各永久磁石を固定する複数枚の電磁鋼板等とで構成されている。
【0124】
駆動軸83は、ロータ82から駆動軸心O3方向で前方及び後方にそれぞれ突出した状態でロータ82に固定されている。駆動軸83の前端は本発明における「駆動軸の一端」に相当しており、駆動軸83の後端は本発明における「駆動軸の他端」に相当している。
【0125】
駆動軸83は、前端を含む前方部分が固定ブロック73の挿通孔73bに挿通されており、ボス73a内に進入している。そして、駆動軸83の前端部分は、ボス73a内でラジアル玉軸受45に回転可能に支持されている。こうして、駆動軸83は、ハウジング7内で駆動軸心O3周りに回転可能となっている。固定ブロック73と駆動軸83との間は、軸封部材29によって封止されている。
【0126】
駆動軸83の内部には軸路84が形成されている。軸路84は駆動軸83の内部を駆動軸心O3方向に貫通している。これにより、軸路84の前端は駆動軸83の前端面83aに開口しており、軸路84の後端は駆動軸83の後端面83bに開口している。
【0127】
また、駆動軸83の前端面83aには、偏心ピン85が固定されている。偏心ピン85は、前端面83aにおいて、駆動軸心O3から偏心した位置に配置されている。偏心ピン85は、駆動軸83が挿通孔73bに挿通されることにより、ボス73a内に進入している。そして、偏心ピン85は、ボス73a内でブッシュ49に嵌合している。ブッシュ49には連通孔49aが形成されている。連通孔49aはブッシュ49を駆動軸心O3方向に貫通している。
【0128】
さらに、駆動軸83にはバランスウェイト86が一体で形成されている。バランスウェイト86は、駆動軸心O3から偏心した位置に配置されている。より具体的には、バランスウェイト86は、駆動軸心O3を挟んで偏心ピン85の反対側となる位置に配置されている。
【0129】
バランスウェイト86は、駆動軸83が挿通孔73bに挿通されることにより、モータ室75内において、固定ブロック73とロータ82との間に位置している。詳細な図示を省略するものの、バランスウェイト86は、略扇型をなす板状をなしており、駆動軸83の径方向で駆動軸83から離れる方向に延びている。なお、バランスウェイト86の形状は適宜設計可能である。
【0130】
固定スクロール90は、コンプレッサハウジング72に固定されており、コンプレッサハウジング72内に配置されている。固定スクロール90は、固定端板90aと、固定周壁90bと、固定渦巻体90cとを有している。固定端板90aは、固定スクロール90の前端に位置しており、駆動軸心O3に直交して延びる円板状をなしている。
【0131】
固定周壁90bは固定端板90aに一体に形成されている。固定周壁90bは、固定端板90aの外周で固定端板90aと接続しており、後方、すなわち可動スクロール110に向かって円筒状に延びている。固定周壁90bには、吸入口90fが形成されている。吸入口90fは、固定周壁90bを径方向に貫通している。これにより、吸入口90fは、コンプレッサハウジング72内に開口しており、コンプレッサハウジング72内に連通している。固定渦巻体90cは、固定周壁90bの内側で固定端板90aに一体に形成されている。固定渦巻体90cは、駆動軸心O3方向で可動スクロール110に向かって渦巻状に突出している。
【0132】
可動スクロール110は、コンプレッサハウジング72内に設けられており、固定スクロール90と固定ブロック73との間に位置している。可動スクロール110は、可動端板110aと、可動渦巻体110bとを有している。
【0133】
可動端板110aは、可動スクロール110の後端に位置しており、駆動軸心O3に直交して延びる円板状をなしている。可動端板110aには、収容部46が形成されている他、吐出口44が形成されている。
【0134】
収容部46は可動端板110aの後端面から前方に向かって略円柱状に凹設されている。吐出口44は、可動端板110aにおいて収容部46内となる個所に配置されており、可動端板110aを駆動軸心O3方向に貫通している。これにより、吐出口44は収容部46内に連通している。
【0135】
また、可動端板110aには、吐出リード弁57及びリテーナ58が固定ボルト59によって固定されている。これらの吐出リード弁57、リテーナ58及び固定ボルト59は収容部46内に配置されている。これにより、吐出リード弁57は吐出口44を開閉可能となっている。
【0136】
さらに、収容部46において、吐出リード弁57、リテーナ58及び固定ボルト59よりも後方には、ブッシュ49が回転可能に収容されている。ここで、ブッシュ49は固定ボルト59等とは非接触となっている。このようにブッシュ49が収容部46に収容されることにより、可動スクロール110は、ブッシュ49及び偏心ピン85を通じて、駆動軸心O3から偏心した位置で駆動軸83の前端に接続されている。また、ブッシュ49の連通孔49aは、前端で収容部46内に連通している。また、連通孔49aの後端は、駆動軸83の軸路84と対向している。なお、ブッシュ49は、滑り軸受や玉軸受等を介して収容部46内に設けられても良い。
【0137】
また、可動端板110aには、自転阻止ピン47と同数のリング48が設けられている。各リング48は、各自転阻止ピン47の先端部を遊嵌状態で受けるようになっている。これらの各自転阻止ピン47及び各リング48によって、自転防止機構が構成されている。なお、図3では、6つのリング48のうちの一つを図示している。また、自転防止機構を構成する自転阻止ピン47及びリング48の個数は、それぞれ3個以上であればその個数は適宜変更可能である。
【0138】
可動渦巻体110bは、可動端板110aに一体に形成されており、固定端板90aに向かって延びている。
【0139】
固定スクロール90と可動スクロール110とは前後方向で組み付けられることにより、スクロール圧縮部100aを構成している。また、固定渦巻体90cと可動渦巻体110bとが噛合することにより、固定スクロール90と可動スクロール110との間には、固定端板90a、固定渦巻体90c、可動端板110a及び可動渦巻体110bによって、圧縮室12aが形成されている。圧縮室12aは、可動スクロール110が回転することにより、容積を変化させる。これにより、圧縮室12aは、吸入口90f及び吐出口44とそれぞれ連通する。
【0140】
また、可動スクロール110と固定ブロック73との間には、スラストプレート92が設けられている。スラストプレート92は金属製の薄板によって形成されており、可動スクロール110及び固定ブロック73とそれぞれ当接している。スラストプレート92は弾性変形時の復元力によって、可動スクロール110を前方側、すなわち固定スクロール90側に付勢可能となっている。さらに、可動端板110a及びスラストプレート92により、固定ブロック73のボス73a内には、背圧室93が形成されている。背圧室93は連通孔49aと軸路84との間において、これらの連通孔49a及び軸路84と連通している。
【0141】
ケース27は、本体部27aと蓋部27bとで構成されている。本体部27aは外周壁271及び前壁272を有しており、有底の筒状をなしている。外周壁271は、駆動軸心O3を中心とする円筒状をなしている。ここで、外周壁271の外径は、ラジアル玉軸受39の外径よりも大径に形成されている。また、外周壁271には還流路270が形成されている。還流路270は、外周壁271を本体部27aの径方向に貫通している。
【0142】
前壁272は、本体部27aの前端、ひいてはケース27の前端に位置している。前壁272は、駆動軸心O3と直交して略円形平板状に延びている。前壁272の外周縁は、外周壁271の前端に接続している。また、前壁272には、取付孔27cが形成されている。取付孔27cは、前壁272の中央に一体に形成されており、前壁272を駆動軸心O3方向に貫通している。取付孔27cは駆動軸83とほぼ同径に形成されている。
【0143】
蓋部27bは、外周壁271の外径とほぼ同径に形成されており、駆動軸心O3と直交して略円形平板状に延びている。また、蓋部27bには、ボス27dが形成されている。ボス27dは、蓋部27bの中央に一体に形成されており、蓋部27bから後方に向かって突出している。ボス27dは、ラジアル玉軸受39の外径よりも小径であって、ラジアル玉軸受39の内輪とほぼ同径に形成されている。
【0144】
ボス27d内には吐出通路273が形成されている。吐出通路273は、ボス27d内及び蓋部27b内を駆動軸心O3方向に貫通している。これにより、ボス27dは駆動軸心O3を中心とする円筒状をなしている。
【0145】
ケース27では、外周壁271の後端に蓋部27bを当接させつつ、複数のボルト50eによって外周壁271と蓋部27bとを接続している。これにより、本体部27aと蓋部27bとが固定されて一体化されている。こうしてケース27内には、外周壁271及び前壁272と、蓋部27bとによって吐出室28が形成されている。ここで、吐出室28の内径の長さは、第6長さL6よりも長い第7長さL7となっている。これにより、吐出室28は、ラジアル玉軸受39の外径よりも大径に形成されている。また、吐出室28における駆動軸心O1方向の長さは、第8長さL8となっている。
【0146】
吐出室28は、還流路270及び吐出通路273とそれぞれ連通している。還流路270及び吐出通路273は、いずれも吐出室28よりも小径をなしている。また、ケース27は、取付孔27c内に駆動軸83の後端を挿通させた状態で駆動軸83に固定されている。これにより、ケース27は、モータ室75内に収容されているとともに、駆動軸83と一体で駆動軸心O3周りに回転可能となっている。そして、駆動軸83の軸路84は吐出室28内に臨んでいる。これにより、吐出室28は軸路84と連通している。この結果、吐出室28は、軸路84、背圧室93、連通孔49a、収容部46及び吐出口44を通じて圧縮室12aと連通している。
【0147】
また、ケース27はボス27dをラジアル玉軸受39の内輪に内嵌させている。これにより、ケース27は、ラジアル玉軸受39を介して支持部71dに支持されている。このように、ケース27が支持部71dに支持されることにより、吐出通路273は吐出連絡口71eと対向している。また、ケース27が支持部71dに支持されることにより、駆動軸83は、ケース27及びラジアル玉軸受39を介して支持部71dに支持されている。こうして、ケース27及び駆動軸83は、支持部71dに対して駆動軸心O3周りで回転可能となっている。
【0148】
この圧縮機では、図3の破線矢印で示すように、吸入連絡口71cを通じて圧縮機の外部からモータ室75内に低圧の冷媒が吸入される。また、この圧縮機では、ロータ82が回転することにより、駆動軸83が駆動軸心O3周りで回転する。これにより、可動スクロール110が回転し、可動端板110aが固定渦巻体90cの先端を摺動するとともに、固定渦巻体90cと可動渦巻体110bとが互いに摺動する。この際、自転防止機構により、可動スクロール110は自転が規制され、固定スクロール90に対して公転のみを行う。
【0149】
また、モータ室75内の冷媒は、連通路73c及び吸入口90fを流通して圧縮室12a内に吸入される。そして、圧縮室12aは、可動スクロール110の回転によって容積を減少させつつ、内部の冷媒を圧縮する。こうして圧縮室12aで圧縮された高圧の冷媒は、吐出口44から圧縮室12aの外部、つまり収容部46内に吐出される。こうして収容部46内に吐出された高圧の冷媒は、連通孔49aから背圧室93及び軸路84の順で流通し、吐出室28に吐出される。
【0150】
このように、この圧縮機では、モータ室75内には圧縮機の外部から低圧の冷媒が吸入される一方、吐出室28には高圧の冷媒が吐出される。このため、モータ室75は吐出室28に比べて低圧であり、吸入雰囲気となっている。
【0151】
また、吐出室28内の冷媒は、吐出通路273を流通し、吐出連絡口68に接続された配管によって、圧縮機の外部に吐出される。ここで、この吐出室28は内径が第7長さL7となることにより、ラジアル玉軸受39の外径よりも大径をなしている。さらに、吐出室28における駆動軸心O1方向の長さは、第8長さL8となっている。これらにより、この圧縮機でも吐出室28の容積を好適に確保することが可能となっている。また、吐出通路273は、ラジアル玉軸受39よりも小径であるため、吐出室28の内径と、吐出通路273の内径との差が十分に大きくなっている。
【0152】
また、この圧縮機では、駆動軸83の回転によってケース27がモータ室75内で回転するため、吐出室28に吐出された冷媒には、回転するケース27の遠心力が作用する。これにより、この圧縮機でも、吐出室28において、冷媒と潤滑油18とを好適に分離させることができる。そして、吐出室28において冷媒から分離された潤滑油18については、ケース27に作用する遠心力、及び、吐出室28内とモータ室75内との圧力差によって還流路270からモータ室75内に好適に流出させることが可能となっている。これにより、この圧縮機では、モータ室75内の潤滑油18によって駆動軸83及びラジアル玉軸受39等を好適に潤滑することが可能となっている。さらに、モータ室75内の潤滑油18は、モータ室75内を圧縮室12aに向かって流通する冷媒とともに圧縮室12aに還流される。これらにより、この圧縮機でも実施例1の圧縮機と同様の作用を奏することが可能となっている。
【0153】
以上において、本発明を実施例1~3に即して説明したが、本発明は上記実施例1~3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0154】
例えば、実施例1の圧縮機では、駆動スクロール30内に従動スクロール40を収容した状態で駆動スクロール30と従動スクロール40とを組み付けている。しかし、これに限らず、駆動スクロール30の外部に従動スクロール40を配置しつつ、駆動スクロール30と従動スクロール40とを組み付ける構成としても良い。この場合、従動端板41とケース15とを固定する構成としても良い。実施例2の圧縮機についても同様である。
【0155】
また、実施例3の圧縮機では、駆動軸83にケース27を固定している。しかし、これに限らず、ケース27をロータ82に固定することにより、ロータ82の回転によってケース27がモータ室75内で回転する構成としても良い。
【0156】
また、実施例1の圧縮機において、駆動スクロール30とロータ11とを軸体によって動力伝達可能に接続することにより、駆動スクロール30及びケース15とロータ11とを駆動軸心O1方向に離隔して配置する構成としても良い。実施例2の圧縮機についても同様である。
【0157】
また、実施例1、2の圧縮機では、従動機構20が自転阻止ピン21及びリング22によって構成されている。しかし、これに限らず、従動機構20は、2本のピンが1つのフリーリングの内周面に摺接するピン・リング・ピン方式、2本のピンの外周面同士が摺接するピン・ピン方式、オルダム接手を用いる方式等によって構成されていても良い。実施例3の圧縮機における自転防止機構についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は車両の空調装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0159】
6、7…ハウジング
10、80…駆動機構
11、82…ロータ
12、12a…圧縮室
14、39…ラジアル玉軸受(軸受)
15、25、27…ケース
16、26、28…吐出室
17、81…ステータ
18…潤滑油
20…従動機構
30…駆動スクロール(第1スクロール)
40…従動スクロール(第2スクロール)
83…駆動軸
84…軸路
90…固定スクロール(第1スクロール)
110…可動スクロール(第2スクロール)
150、250、270…還流路
O1、O3…駆動軸心
O2…従動軸心
図1
図2
図3