(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168490
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085213
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】池上 正太郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EA25
2C056EB29
2C056EC07
2C056EC28
2C056EC38
2C056FA13
2C056HA51
(57)【要約】
【課題】インクの吐出周期を延長させることなく、消費電力を低減可能な画像形成装置、及び画像形成方法を提供すること。
【解決手段】画像形成装置は、吐出量データDA10の入力に応じてインクの吐出量に対応する数のパルス信号を含む駆動信号SG20を生成する信号生成部42と、電源44から供給される供給電圧Voutに基づいて駆動信号SG20を増幅する増幅部43と、増幅部43による増幅後の駆動信号SG30の入力に応じてノズルからインクを吐出させる圧電素子41と、画像形成中に前記ノズルから最大量のインクが吐出されない場合に、供給電圧Voutを低下させるとともに駆動信号SG20に含まれるパルス信号の数を増加させる調整処理部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからのインクの吐出量を示す吐出量データの入力に応じて前記インクの吐出量に対応する数のパルス信号を含む駆動信号を生成する信号生成部と、
電源から供給される供給電圧に基づいて前記駆動信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部による増幅後の前記駆動信号の入力に応じて前記ノズルから前記インクを吐出させる吐出部と、
画像を形成する画像形成処理の実行中に前記信号生成部に入力される複数の前記吐出量データのうち前記インクの吐出量が最大の前記吐出量データを検出する検出処理部と、
前記検出処理部によって検出される前記吐出量データの前記インクの吐出量が前記駆動信号に含ませることが可能な前記パルス信号の最大数に対応する前記インクの吐出量よりも少ない場合に、前記供給電圧を低下させるとともに前記駆動信号に含まれる前記パルス信号の数を増加させる調整処理部と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記電源に接続される複数の前記増幅部と、
複数の前記増幅部に対応する複数の前記信号生成部と、
複数の前記増幅部に対応する複数の前記吐出部と、
を備え、
前記検出処理部は、前記画像形成処理の実行中に複数の前記信号生成部に入力される複数の前記吐出量データのうち前記インクの吐出量が最大の前記吐出量データを検出し、
前記調整処理部は、前記検出処理部によって検出される前記吐出量データの前記インクの吐出量が前記駆動信号に含ませることが可能な前記パルス信号の最大数に対応する前記インクの吐出量よりも少ない場合に、前記供給電圧を低下させるとともに前記信号生成部各々によって生成される前記駆動信号に含まれる前記パルス信号の数を増加させる、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記検出処理部は、シートの一面への画像の形成に用いられる複数の前記吐出量データのうち前記インクの吐出量が最大の前記吐出量データを検出し、
前記調整処理部は、前記検出処理部によって検出される前記吐出量データの前記インクの吐出量が前記駆動信号に含ませることが可能な前記パルス信号の最大数に対応する前記インクの吐出量よりも少ない場合に、前記シートの一面への画像の形成が終了するまで前記供給電圧を低下させるとともに前記駆動信号に含まれる前記パルス信号の数を増加させる、
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記調整処理部は、前記検出処理部によって検出される前記吐出量データの前記インクの吐出量と前記駆動信号に含ませることが可能な前記パルス信号の最大数に対応する前記インクの吐出量との差が大きいほど、前記供給電圧の低下量を多くするとともに前記駆動信号に含まれる前記パルス信号の数の増加数を多くする、
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
ノズルからのインクの吐出量を示す吐出量データの入力に応じて前記インクの吐出量に対応する数のパルス信号を含む駆動信号を生成する信号生成部と、電源から供給される供給電圧に基づいて前記駆動信号を増幅する増幅部と、前記増幅部による増幅後の前記駆動信号の入力に応じて前記ノズルから前記インクを吐出させる吐出部と、を備える画像形成装置で実行される画像形成方法であって、
画像を形成する画像形成処理の実行中に前記信号生成部に入力される複数の前記吐出量データのうち前記インクの吐出量が最大の前記吐出量データを検出する検出ステップと、
前記検出ステップによって検出される前記吐出量データの前記インクの吐出量が前記駆動信号に含ませることが可能な前記パルス信号の最大数に対応する前記インクの吐出量よりも少ない場合に、前記供給電圧を低下させるとともに前記駆動信号に含まれる前記パルス信号の数を増加させる調整ステップと、
を含む画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式で画像を形成する画像形成装置が知られている。例えば、前記画像形成装置は、信号生成部と、増幅部と、圧電素子などの吐出部とを備える。前記信号生成部は、ノズルからのインクの吐出量を示す吐出量データの入力に応じてインクの吐出量に対応する数のパルス信号を含む駆動信号を生成する。前記増幅部は、電源から供給される供給電圧に基づいて前記駆動信号を増幅する。前記吐出部は、前記増幅部による増幅後の前記駆動信号の入力に応じて前記ノズルからインクを吐出させる。
【0003】
また、前記電源として用いられるリニアレギュレータの入力端子と出力端子との間の電圧差を低減するために、前記供給電圧を上昇させるとともに、前記駆動信号に含まれる前記パルス信号の数を低減させる画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記吐出部における消費電力は、増幅後の前記駆動信号の入力に応じて流れる駆動電流と、前記供給電圧との積によって算出することが可能である。また、前記駆動電流は、前記供給電圧が低下すると小さくなる。
【0006】
そのため、前記供給電圧を低下させることにより、前記画像形成装置の消費電力を低減させることが可能である。また、前記供給電圧を低下させるとともに、前記駆動信号に含まれる前記パルス信号の数を増加させることにより、前記供給電圧の低下に伴うインクの吐出量の低下を抑制することが可能である。
【0007】
しかしながら、前記駆動信号に含まれる前記パルス信号の数を増加させる場合には、増加後の数の前記パルス信号が前記ノズルからの前記インクの吐出周期に含まれるように、当該吐出周期を延長させる必要がある。
【0008】
本発明の目的は、インクの吐出周期を延長させることなく、消費電力を低減可能な画像形成装置、及び画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の局面に係る画像形成装置は、信号生成部と、増幅部と、吐出部と、検出処理部と、調整処理部とを備える。前記信号生成部は、ノズルからのインクの吐出量を示す吐出量データの入力に応じて前記インクの吐出量に対応する数のパルス信号を含む駆動信号を生成する。前記増幅部は、電源から供給される供給電圧に基づいて前記駆動信号を増幅する。前記吐出部は、前記増幅部による増幅後の前記駆動信号の入力に応じて前記ノズルから前記インクを吐出させる。前記検出処理部は、画像を形成する画像形成処理の実行中に前記信号生成部に入力される複数の前記吐出量データのうち前記インクの吐出量が最大の前記吐出量データを検出する。前記調整処理部は、前記検出処理部によって検出される前記吐出量データの前記インクの吐出量が前記駆動信号に含ませることが可能な前記パルス信号の最大数に対応する前記インクの吐出量よりも少ない場合に、前記供給電圧を低下させるとともに前記駆動信号に含まれる前記パルス信号の数を増加させる。
【0010】
本発明の他の局面に係る画像形成方法は、ノズルからのインクの吐出量を示す吐出量データの入力に応じて前記インクの吐出量に対応する数のパルス信号を含む駆動信号を生成する信号生成部と、電源から供給される供給電圧に基づいて前記駆動信号を増幅する増幅部と、前記増幅部による増幅後の前記駆動信号の入力に応じて前記ノズルから前記インクを吐出させる吐出部と、を備える画像形成装置で実行され、検出ステップと、調整ステップとを含む。前記検出ステップでは、画像を形成する画像形成処理の実行中に前記信号生成部に入力される複数の前記吐出量データのうち前記インクの吐出量が最大の前記吐出量データが検出される。前記調整ステップでは、前記検出ステップによって検出される前記吐出量データの前記インクの吐出量が前記駆動信号に含ませることが可能な前記パルス信号の最大数に対応する前記インクの吐出量よりも少ない場合に、前記供給電圧が低下されるとともに前記駆動信号に含まれる前記パルス信号の数が増加される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インクの吐出周期を延長させることなく、消費電力を低減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の画像形成部の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の記録ヘッドの構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の増幅部の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の圧電素子に入力される増幅後の駆動信号の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る画像形成装置で実行される駆動信号調整処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0014】
[画像形成装置100の構成]
まず、
図1を参照しつつ、本発明の実施形態に係る画像形成装置100の構成について説明する。ここで、
図1は、画像形成装置100のシステム構成を示すブロック図である。
【0015】
画像形成装置100は、インクジェット方式でシートに画像を形成可能なプリンターである。画像形成装置100は、所謂ラインプリント型の画像形成装置である。なお、本発明は、インクジェット方式でシートなどの媒体に画像を形成可能なプリンター、ファクス装置、コピー機、及び複合機などの画像形成装置に適用可能である。
【0016】
図1に示されるように、画像形成装置100は、シート搬送部1、画像形成部2、操作表示部3、通信部4、第1制御部5、及び第2制御部6を備える。
【0017】
シート搬送部1は、画像形成部2によって画像が形成されるシートを搬送する。シート搬送部1は、給紙カセットと、複数の搬送ローラーとを備える。
【0018】
画像形成部2は、シート搬送部1によって搬送されるシートにインク画像を形成する。
【0019】
操作表示部3は、画像形成装置100のユーザーインターフェイスである。操作表示部3は、表示部、及び操作部を備える。前記表示部は、第1制御部5からの制御指示に応じて各種の情報を表示する。例えば、前記表示部は、液晶ディスプレーである。前記操作部は、ユーザーの操作に応じて第1制御部5に各種の情報を入力する。例えば、前記操作部は、タッチパネルである。
【0020】
通信部4は、パーソナルコンピューターなどの外部の情報処理装置との間で有線、又は無線によるデータ通信を実行する通信インターフェイスである。
【0021】
第1制御部5は、画像形成装置100を統括的に制御する。
図1に示されるように、第1制御部5は、CPU11、ROM12、及びRAM13を備える。CPU11は、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。ROM12は、CPU11に各種の処理を実行させるための制御プログラムなどの情報が予め格納される不揮発性の記憶装置である。RAM13は、CPU11が実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される揮発性、又は不揮発性の記憶装置である。CPU11は、ROM12に予め格納された各種の制御プログラムを実行することにより、画像形成装置100を統括的に制御する。なお、第1制御部5は、集積回路(ASIC)などの電子回路で構成されていてもよい。
【0022】
第2制御部6は、シート搬送部1、及び画像形成部2を制御する。例えば、第2制御部6は、集積回路(ASIC、FPGA)などの電子回路で構成される。
【0023】
[画像形成部2、及び第2制御部6の構成]
次に、
図1~
図5を参照しつつ、画像形成部2、及び第2制御部6の構成について説明する。ここで、
図2は、複数のラインヘッド20をノズル面32側から見た図である。また、
図3は、記録ヘッド31の構成を示すブロック図である。また、
図4は、増幅部43の構成を示す回路図である。また、
図5は、圧電素子41に入力される駆動信号SG30の一例を示す図である。なお、
図3では、記録ヘッド31が破線で示されている。また、
図3では、第2制御部6、及び信号生成部42から出力される電気信号が矢印付きの一点鎖線で示されている。また、
図4では、増幅部43が破線で示されている。
【0024】
画像形成部2は、4つの印刷色(ブラック、マゼンタ、シアン、イエロー)に対応する4つのラインヘッド20(21、22、23、24)(
図2参照)を備える。
【0025】
4つのラインヘッド20は、シート搬送部1によって搬送方向D1(
図2参照)へ搬送されるシートに対してインク画像を形成する。
【0026】
図2に示されるように、ラインヘッド20各々は、搬送方向D1(
図2参照)に直交する主走査方向D2(
図2参照)に長尺である。4つのラインヘッド20は、搬送方向D1に沿って等間隔で並んで設けられる。
【0027】
4つのラインヘッド20のうち、搬送方向D1の最下流に配置されるラインヘッド21は、ブラックの印刷色に対応している。4つのラインヘッド20のうち、ラインヘッド21よりも搬送方向D1の上流側でラインヘッド21に隣接するラインヘッド22は、マゼンタの印刷色に対応している。4つのラインヘッド20のうち、ラインヘッド22よりも搬送方向D1の上流側でラインヘッド22に隣接するラインヘッド23は、シアンの印刷色に対応している。4つのラインヘッド20のうち、搬送方向D1の最上流に配置されるラインヘッド24は、イエローの印刷色に対応している。
【0028】
ラインヘッド20各々は、対応する印刷色が異なる点を除けば、共通の構成を備える。そのため、以下では、ラインヘッド21の構成についてのみ説明し、その他のラインヘッド20の構成の説明を省略する。
【0029】
ラインヘッド21は、3つの記録ヘッド31(
図2参照)を備える。記録ヘッド31各々は、共通の構成を備える。なお、ラインヘッド20に含まれる記録ヘッド31の数は、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0030】
図2に示されるように、記録ヘッド31各々は、主走査方向D2に長尺な矩形状のノズル面32を有する。記録ヘッド31各々は、ノズル面32を底面とする角柱状に形成される。3つの記録ヘッド31は、主走査方向D2に沿って千鳥状に配置される。
【0031】
図2に示されるように、ラインヘッド21は、複数のノズル33を含むノズル群30(
図2参照)を備える。ノズル群30は、ラインヘッド21に設けられる全てのノズル33によって構成される。ノズル群30を構成する複数のノズル33は、主走査方向D2に沿って等間隔で配置される。
【0032】
具体的に、ノズル群30を構成する複数のノズル33は、3つのノズル面32に分散して配置される。例えば、ノズル面32各々には、主走査方向D2に沿って等間隔で並ぶ複数のノズル33が設けられる。また、3つの記録ヘッド31は、ノズル群30を構成する複数のノズル33が主走査方向D2に沿って等間隔で配置されるように、主走査方向D2に沿って千鳥状に配置される。なお、ノズル面32各々には、主走査方向D2に沿って等間隔で並ぶ複数のノズル33によって形成されるノズル列が、搬送方向D1に沿って複数個並んでいてもよい。
【0033】
第2制御部6は、シート搬送部1、及び画像形成部2を用いて一又は複数のシートに画像を形成する画像形成処理が実行される場合に、画像形成対象の画像データに基づいて、ラインヘッド21に含まれる記録ヘッド31各々の駆動を制御する。
【0034】
具体的に、画像形成装置100では、前記画像形成処理が実行される場合に、第1制御部5から出力されるビットマップ形式の前記画像データが第2制御部6に入力される。第2制御部6は、第1制御部5から前記画像データが入力された場合に、当該画像データに含まれる主走査方向D2(
図2参照)1ライン分の部分画像データ各々を、ノズル群30(
図2参照)を構成する複数のノズル33(
図2参照)に対応する複数の吐出量データDA10(
図3参照)に変換する。
【0035】
ここで、吐出量データDA10は、ノズル33からのインクの吐出量を示すデータである。例えば、吐出量データDA10は、「3」、「2」、「1」、「0」のいずれかの値を示すデータである。吐出量データDA10の値が多いほど、インクの吐出量が多くなる。また、吐出量データDA10が「0」である場合は、インクが吐出されない。画像形成装置100は、ノズル33各々から、「大」、「中」、「小」の3つのサイズのインク滴を選択的に吐出可能であるともいえる。なお、ノズル33各々から吐出可能なインク滴のサイズの種類は、3種類に限られなくてよい。
【0036】
また、第2制御部6は、前記部分画像データ各々が複数の吐出量データDA10に変換された後の前記画像データを、第2制御部6に設けられる不図示のメモリーに格納する。
【0037】
また、第2制御部6は、ラインヘッド21に含まれるノズル群30からインクが吐出される吐出タイミングが到来するごとに、前記メモリーに格納された前記画像データのうち、主走査方向D2(
図2参照)1ライン分の複数の吐出量データDA10を、ラインヘッド21に含まれる3つの記録ヘッド31に入力する(
図3参照)。これにより、ラインヘッド21のノズル群30に含まれるノズル33各々からインクが吐出される。前記吐出タイミングは、予め定められたインク吐出周期で到来するタイミングである。
【0038】
図3に示されるように、記録ヘッド31は、ノズル面32に配置されたノズル33各々に対応する圧電素子41、信号生成部42、及び増幅部43を備える。また、記録ヘッド31は、電源44を備える。
【0039】
電源44は、第2制御部6によって設定された電圧値の供給電圧Voutを出力する。例えば、電源44は、リニアレギュレータである。
【0040】
例えば、第2制御部6は、供給電圧Voutの電圧値を予め定められた複数の電圧値のいずれかに指定する旨の制御信号SG10(
図3参照)を出力する。電源44は、第2制御部6から出力される制御信号SG10が入力された場合に、供給電圧Voutの電圧値を制御信号SG10によって指定された電圧値に設定する。
【0041】
例えば、第2制御部6は、前記画像形成処理が実行される場合に、供給電圧Voutの電圧値をX1(
図5参照)に指定する旨の制御信号SG10を出力する。これにより、画像形成装置100では、前記画像形成処理が実行される場合に、供給電圧Voutの電圧値がX1に設定される。
【0042】
図3に示されるように、電源44は、記録ヘッド31に設けられる増幅部43各々に電気的に接続されている。電源44は、ノズル面32に配置された複数のノズル33に対応する複数の増幅部43に給電する。
【0043】
換言すると、記録ヘッド31は、電源44に接続された複数の増幅部43を備える。また、記録ヘッド31は、複数の増幅部43に対応する複数の信号生成部42を備える。また、記録ヘッド31は、複数の増幅部43に対応する複数の圧電素子41を備える。なお、記録ヘッド31は、ノズル面32に配置された複数のノズル33に対応する複数の電源44を備えていてもよい。
【0044】
信号生成部42は、第2制御部6から出力される吐出量データDA10の入力に応じて、インクの吐出量に対応する数のパルス信号を含む駆動信号SG20(
図3参照)を生成する。駆動信号SG20は、デジタル信号である。
【0045】
具体的に、信号生成部42は、予め内部のレジスタに格納された対応関係データに基づいて、入力された吐出量データDA10の値に対応する数のパルス信号を含む駆動信号SG20を生成する。前記対応関係データは、吐出量データDA10の値とパルス信号の数との対応関係を示すデータである。
【0046】
例えば、前記対応関係データでは、吐出量データDA10の値に対応するパルス信号の数が吐出量データDA10の値と同数になるように、吐出量データDA10の値とパルス信号の数との対応関係が定められている。この場合、信号生成部42は、「3」の値を示す吐出量データDA10の入力に応じて、3つのパルス信号を含む駆動信号SG20を生成する。また、信号生成部42は、「2」の値を示す吐出量データDA10の入力に応じて、2つのパルス信号を含む駆動信号SG20を生成する。また、信号生成部42は、「1」の値を示す吐出量データDA10の入力に応じて、1つのパルス信号を含む駆動信号SG20を生成する。なお、前記インク吐出周期は、駆動信号SG20が最大3つのパルス信号を含むことが可能となるように定められる。
【0047】
増幅部43は、電源44から供給される供給電圧Vout(
図3参照)に基づいて、駆動信号SG20を増幅する。また、増幅部43は、増幅後の駆動信号SG20を駆動信号SG30(
図3参照)として出力する。
【0048】
例えば、
図4に示されるように、増幅部43は、第1トランジスタ43A、及び第2トランジスタ43Bを含む。第1トランジスタ43Aは、PNP型のトランジスタである。第1トランジスタ43Aのベース端子は、信号生成部42に接続される。第1トランジスタ43Aのコレクタ端子は、圧電素子41、及び第2トランジスタ43Bのコレクタ端子に接続される。第1トランジスタ43Aのエミッタ端子は、電源44に接続される。第2トランジスタ43Bは、NPN型のトランジスタである。第2トランジスタ43Bのベース端子は、信号生成部42に接続される。第2トランジスタ43Bのコレクタ端子は、第1トランジスタ43Aのコレクタ端子、及び圧電素子41に接続される。第2トランジスタ43Bのエミッタ端子は、グランドに接続される。
【0049】
図5には、駆動信号SG30の一例が示されている。具体的に、
図5には、「3」の値を示す吐出量データDA10が信号生成部42に入力された場合に、増幅部43から出力される駆動信号SG30が示されている。
【0050】
圧電素子41は、駆動信号SG30(
図3参照)の入力に応じてノズル33からインクを吐出させる。圧電素子41は、本発明の吐出部の一例である。
【0051】
ところで、圧電素子41における消費電力は、駆動信号SG30の入力に応じて流れる駆動電流と、供給電圧Voutとの積によって算出することが可能である。また、前記駆動電流は、供給電圧Voutが低下すると小さくなる。
【0052】
そのため、供給電圧Voutを低下させることにより、画像形成装置100の消費電力を低減させることが可能である。また、供給電圧Voutを低下させるとともに、駆動信号SG30に含まれるパルス信号の数を増加させることにより、供給電圧Voutの低下に伴うインクの吐出量の低下を抑制することが可能である。
【0053】
しかしながら、駆動信号SG30に含まれるパルス信号の数を増加させる場合には、増加後の数のパルス信号が前記インク吐出周期に含まれるように、当該吐出周期を延長させる必要がある。
【0054】
これに対し、本発明の実施形態に係る画像形成装置100では、以下に説明するように、前記インク吐出周期を延長させることなく、画像形成装置100の消費電力を低減することが可能である。
【0055】
具体的に、
図1に示されるように、第2制御部6は、検出処理部51、及び調整処理部52を含む。
【0056】
なお、画像形成装置100は、第2制御部6として機能する第1制御部5を備えており、第2制御部6を備えていなくてもよい。この場合、第1制御部5のCPU11は、ROM12に予め格納された制御プログラムを実行することにより、検出処理部51、及び調整処理部52として機能すればよい。
【0057】
検出処理部51は、前記画像形成処理の実行中に信号生成部42に入力される複数の吐出量データDA10のうち、インクの吐出量が最大の吐出量データDA10を検出する。
【0058】
具体的に、検出処理部51は、前記画像形成処理の実行中に記録ヘッド31に含まれる複数の信号生成部42に入力される複数の吐出量データDA10のうち、インクの吐出量が最大の吐出量データDA10を検出する。
【0059】
例えば、検出処理部51は、シートの一面への画像の形成に用いられる複数の吐出量データDA10のうち、インクの吐出量が最大の吐出量データDA10を検出する。なお、検出処理部51は、シートの両面、又は複数枚のシートへの画像の形成に用いられる複数の吐出量データDA10のうち、インクの吐出量が最大の吐出量データDA10を検出してもよい。
【0060】
調整処理部52は、検出処理部51によって検出される吐出量データDA10のインクの吐出量が駆動信号SG20に含ませることが可能なパルス信号の最大数に対応するインクの吐出量よりも少ない場合に、供給電圧Voutを低下させるとともに駆動信号SG20に含まれるパルス信号の数を増加させる。
【0061】
具体的に、調整処理部52は、検出処理部51によって検出される吐出量データDA10のインクの吐出量が駆動信号SG20に含ませることが可能なパルス信号の最大数に対応するインクの吐出量よりも少ない場合に、供給電圧Voutを低下させるとともに記録ヘッド31に含まれる信号生成部42各々によって生成される駆動信号SG20に含まれるパルス信号の数を増加させる。
【0062】
例えば、調整処理部52は、検出処理部51によって検出される吐出量データDA10のインクの吐出量が駆動信号SG20に含ませることが可能なパルス信号の最大数に対応するインクの吐出量よりも少ない場合に、シートの一面への画像の形成が終了するまで、供給電圧Voutを低下させるとともに駆動信号SG20に含まれるパルス信号の数を増加させる。
【0063】
例えば、調整処理部52は、検出処理部51によって検出される吐出量データDA10の値が「2」以下である場合に、検出処理部51によって検出される吐出量データDA10のインクの吐出量が駆動信号SG20に含ませることが可能なパルス信号の最大数に対応するインクの吐出量よりも少ないと判定する。
【0064】
例えば、調整処理部52は、供給電圧Voutの電圧値をX1(
図5参照)よりも低いX2(
図5参照)に指定する旨の制御信号SG10を出力することにより、供給電圧Voutを低下させる。電圧値X2は、駆動信号SG20に含まれるパルス信号の数の増加によるインクの吐出量の増加量を相殺可能となるように定められればよい。
【0065】
例えば、調整処理部52は、信号生成部42の前記レジスタに格納された前記対応関係データを書き換えることにより、駆動信号SG20に含まれるパルス信号の数を増加させる。例えば、調整処理部52は、吐出量データDA10の値に対応するパルス信号の数が吐出量データDA10の値よりも一つ多くなるように、前記対応関係データを書き換える。また、調整処理部52は、前記対応関係データにおける、「0」の値を示す吐出量データDA10とパルス信号の数との対応関係は変更しない。これにより、信号生成部42は、「2」の値を示す吐出量データDA10の入力に応じて、3つのパルス信号を含む駆動信号SG20を生成する。また、信号生成部42は、「1」の値を示す吐出量データDA10の入力に応じて、2つのパルス信号を含む駆動信号SG20を生成する。
【0066】
[駆動信号調整処理]
以下、
図6を参照しつつ、画像形成装置100において第2制御部6により実行される駆動信号調整処理の手順の一例とともに、本発明の画像形成方法について説明する。ここで、ステップS11、S12・・・は、第2制御部6により実行される処理手順(ステップ)の番号を表している。なお、前記駆動信号調整処理は、一又は複数のシートに画像を形成する前記画像形成処理が実行される場合に、当該画像形成処理とともに実行される。また、前記駆動信号調整処理は、記録ヘッド31ごとに実行される。
【0067】
<ステップS11>
まず、ステップS11において、第2制御部6は、記録ヘッド31に含まれる複数の信号生成部42に入力される複数の吐出量データDA10であって、シートの一面への画像の形成に用いられる複数の吐出量データDA10のうち、インクの吐出量が最大の吐出量データDA10を検出する検出処理を実行する。ここで、ステップS11の処理は、本発明の検出ステップの一例であって、第2制御部6の検出処理部51により実行される。
【0068】
<ステップS12>
ステップS12において、第2制御部6は、直近の前記検出処理によって検出された吐出量データDA10のインクの吐出量が駆動信号SG20に含ませることが可能なパルス信号の最大数に対応するインクの吐出量よりも少ないか否かを判定する。
【0069】
具体的に、第2制御部6は、直近の前記検出処理によって検出された吐出量データDA10の値が「2」以下である場合に、検出された吐出量データDA10のインクの吐出量が駆動信号SG20に含ませることが可能なパルス信号の最大数に対応するインクの吐出量よりも少ないと判定する。
【0070】
ここで、第2制御部6は、直近の前記検出処理によって検出された吐出量データDA10のインクの吐出量が駆動信号SG20に含ませることが可能なパルス信号の最大数に対応するインクの吐出量よりも少ないと判定すると(S12のYes側)、処理をステップS13に移行させる。また、直近の前記検出処理によって検出された吐出量データDA10のインクの吐出量が駆動信号SG20に含ませることが可能なパルス信号の最大数に対応するインクの吐出量以上であれば(S12のNo側)、第2制御部6は、処理をステップS17に移行させる。
【0071】
<ステップS13>
ステップS13において、第2制御部6は、電源44から出力される供給電圧Voutを低下させる。
【0072】
具体的に、第2制御部6は、供給電圧Voutの電圧値をX1(
図5参照)よりも低いX2(
図5参照)に指定する旨の制御信号SG10を出力することにより、供給電圧Voutを低下させる。
【0073】
<ステップS14>
ステップS14において、第2制御部6は、記録ヘッド31に含まれる信号生成部42各々によって生成される駆動信号SG20に含まれるパルス信号の数を増加させる。ここで、ステップS13、及びステップS14の処理は、本発明の調整ステップの一例であって、第2制御部6の調整処理部52により実行される。
【0074】
具体的に、第2制御部6は、信号生成部42各々の前記レジスタに格納された前記対応関係データを書き換えることにより、駆動信号SG20に含まれるパルス信号の数を増加させる。
【0075】
<ステップS15>
ステップS15において、第2制御部6は、シートの一面への画像形成が終了したか否かを判定する。
【0076】
ここで、第2制御部6は、シートの一面への画像形成が終了したと判定すると(S15のYes側)、処理をステップS16に移行させる。また、シートの一面への画像形成が終了していなければ(S15のNo側)、第2制御部6は、ステップS15でシートの一面への画像形成の終了を待ち受ける。
【0077】
<ステップS16>
ステップS16において、第2制御部6は、供給電圧Voutの電圧値をステップS13の処理の実行前に戻すとともに、記録ヘッド31に含まれる信号生成部42各々によって生成される駆動信号SG20に含まれるパルス信号の数をステップS14の処理の実行前に戻すリセット処理を実行する。ここで、ステップS16の処理は、第2制御部6の調整処理部52により実行される。
【0078】
<ステップS17>
ステップS17において、第2制御部6は、前記画像形成処理が終了したか否かを判定する。
【0079】
ここで、第2制御部6は、前記画像形成処理が終了したと判定すると(S17のYes側)、前記駆動信号調整処理を終了させる。また、前記画像形成処理が終了していなければ(S17のNo側)、第2制御部6は、処理をステップS11に移行させる。
【0080】
このように、画像形成装置100では、検出処理部51によって検出される吐出量データDA10のインクの吐出量が駆動信号SG20に含ませることが可能なパルス信号の最大数に対応するインクの吐出量よりも少ない場合に、供給電圧Voutが低下されるとともに駆動信号SG20に含まれるパルス信号の数が増加される。これにより、前記インク吐出周期を延長させることなく、駆動信号SG30に含まれるパルス信号の数を増加させることが可能である。従って、前記インク吐出周期を延長させることなく、画像形成装置100の消費電力を低減することが可能である。
【0081】
なお、調整処理部52は、検出処理部51によって検出される吐出量データDA10のインクの吐出量と駆動信号SG20に含ませることが可能なパルス信号の最大数に対応するインクの吐出量との差が大きいほど、供給電圧Voutの低下量を多くするとともに駆動信号SG20に含まれるパルス信号の数の増加数を多くしてもよい。例えば、調整処理部52は、検出処理部51によって検出される吐出量データDA10の値が「1」である場合に、供給電圧VoutをX2よりも低い電圧値に低下させるとともに、「1」の値を示す吐出量データDA10の入力に応じて3つのパルス信号を含む駆動信号SG20が生成されるようにしてもよい。これにより、画像形成装置100の消費電力をより低減することが可能である。
【0082】
[発明の付記]
以下、上述の実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0083】
<付記1>
ノズルからのインクの吐出量を示す吐出量データの入力に応じて前記インクの吐出量に対応する数のパルス信号を含む駆動信号を生成する信号生成部と、電源から供給される供給電圧に基づいて前記駆動信号を増幅する増幅部と、前記増幅部による増幅後の前記駆動信号の入力に応じて前記ノズルから前記インクを吐出させる吐出部と、画像を形成する画像形成処理の実行中に前記信号生成部に入力される複数の前記吐出量データのうち前記インクの吐出量が最大の前記吐出量データを検出する検出処理部と、前記検出処理部によって検出される前記吐出量データの前記インクの吐出量が前記駆動信号に含ませることが可能な前記パルス信号の最大数に対応する前記インクの吐出量よりも少ない場合に、前記供給電圧を低下させるとともに前記駆動信号に含まれる前記パルス信号の数を増加させる調整処理部と、を備える画像形成装置。
【0084】
<付記2>
前記電源に接続される複数の前記増幅部と、複数の前記増幅部に対応する複数の前記信号生成部と、複数の前記増幅部に対応する複数の前記吐出部と、を備え、前記検出処理部は、前記画像形成処理の実行中に複数の前記信号生成部に入力される複数の前記吐出量データのうち前記インクの吐出量が最大の前記吐出量データを検出し、前記調整処理部は、前記検出処理部によって検出される前記吐出量データの前記インクの吐出量が前記駆動信号に含ませることが可能な前記パルス信号の最大数に対応する前記インクの吐出量よりも少ない場合に、前記供給電圧を低下させるとともに前記信号生成部各々によって生成される前記駆動信号に含まれる前記パルス信号の数を増加させる、付記1に記載の画像形成装置。
【0085】
<付記3>
前記検出処理部は、シートの一面への画像の形成に用いられる複数の前記吐出量データのうち前記インクの吐出量が最大の前記吐出量データを検出し、前記調整処理部は、前記検出処理部によって検出される前記吐出量データの前記インクの吐出量が前記駆動信号に含ませることが可能な前記パルス信号の最大数に対応する前記インクの吐出量よりも少ない場合に、前記シートの一面への画像の形成が終了するまで前記供給電圧を低下させるとともに前記駆動信号に含まれる前記パルス信号の数を増加させる、付記1又は2に記載の画像形成装置。
【0086】
<付記4>
前記調整処理部は、前記検出処理部によって検出される前記吐出量データの前記インクの吐出量と前記駆動信号に含ませることが可能な前記パルス信号の最大数に対応する前記インクの吐出量との差が大きいほど、前記供給電圧の低下量を多くするとともに前記駆動信号に含まれる前記パルス信号の数の増加数を多くする、付記1~3のいずれかに記載の画像形成装置。
【0087】
<付記5>
ノズルからのインクの吐出量を示す吐出量データの入力に応じて前記インクの吐出量に対応する数のパルス信号を含む駆動信号を生成する信号生成部と、電源から供給される供給電圧に基づいて前記駆動信号を増幅する増幅部と、前記増幅部による増幅後の前記駆動信号の入力に応じて前記ノズルから前記インクを吐出させる吐出部と、を備える画像形成装置で実行される画像形成方法であって、画像を形成する画像形成処理の実行中に前記信号生成部に入力される複数の前記吐出量データのうち前記インクの吐出量が最大の前記吐出量データを検出する検出ステップと、前記検出ステップによって検出される前記吐出量データの前記インクの吐出量が前記駆動信号に含ませることが可能な前記パルス信号の最大数に対応する前記インクの吐出量よりも少ない場合に、前記供給電圧を低下させるとともに前記駆動信号に含まれる前記パルス信号の数を増加させる調整ステップと、を含む画像形成方法。
【符号の説明】
【0088】
1 シート搬送部
2 画像形成部
3 操作表示部
4 通信部
5 第1制御部
6 第2制御部
20 ラインヘッド
30 ノズル群
31 記録ヘッド
32 ノズル面
33 ノズル
41 圧電素子
42 信号生成部
43 増幅部
44 電源
51 検出処理部
52 調整処理部
100 画像形成装置