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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168494
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20241128BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20241128BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241128BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20241128BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20241128BHJP
【FI】
B29C64/118
B29C64/295
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/393
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085217
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】寺本 達哉
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC01
4F213AC04
4F213AP06
4F213AP19
4F213AQ03
4F213AR07
4F213WA25
4F213WB01
4F213WK03
4F213WL02
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL87
(57)【要約】
【課題】三次元造形装置において、造形物に反りなどの成形不良が生じた場合、エネルギー源が造形物に接触する可能性ある。
【解決手段】三次元造形装置は、第1ヒーターを有し、材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部と、可塑化材料を吐出するノズルと、を有する吐出部と、可塑化材料が積層されるステージと、ステージに積層された可塑化材料を加熱する第2ヒーターを有し、少なくとも三次元造形物の造形時において、ノズルの先端よりも上方に位置する加熱部と、加熱部の位置ずれを検知するセンサーと、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ヒーターを有し、材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部と、前記可塑化材料を吐出するノズルと、を有する吐出部と、
前記可塑化材料が積層されるステージと、
前記ステージに積層された前記可塑化材料を加熱する第2ヒーターを有し、少なくとも三次元造形物の造形時において、前記ノズルの先端よりも上方に位置する加熱部と、
前記加熱部の位置ずれを検知するセンサーと、
を備える三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記吐出部及び前記加熱部が配置された可動部と、
前記可動部の前記ステージに対する相対的な位置を変更する移動部と、を有し、
前記センサーは、接触式のセンサーであり、
前記センサーが延びる方向に沿って見て、前記センサーの少なくとも一部を囲む壁部を有する構造物を備え、
前記センサーは、前記可動部及び前記加熱部のいずれか一方に固定され、前記構造物は、前記可動部及び前記加熱部のうち前記センサーが固定されている方とは異なる他方に固定される、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の三次元造形装置であって、
前記構造物には、前記センサーが延びる方向に沿って延びる第1穴が設けられている、三次元造形装置。
【請求項4】
請求項3に記載の三次元造形装置であって、
前記構造物には、前記第1穴が延びる方向と交わる方向に延び、前記第1穴と連通する第2穴が設けられており、
前記構造物は、前記第2穴に挿入された部材を有する、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項2に記載の三次元造形装置であって、
前記センサーによって前記位置ずれが検知された場合に、前記移動部を制御して、前記加熱部を前記ステージから相対的に離すように構成された制御部を備える三次元造形装置。
【請求項6】
請求項3に記載の三次元造形装置であって、
前記第1穴の底部は、前記センサーの先端の一部に対応する形状を有する、三次元造形装置。
【請求項7】
請求項2に記載の三次元造形装置であって、
前記センサーが延びる方向に沿って見て、前記センサーは、前記壁部に囲まれた空間の中心から偏心した位置に配置される、三次元造形装置。
【請求項8】
請求項2に記載の三次元造形装置において、
前記センサーが延びる方向に沿って見て、前記センサーの一部は、前記壁部の一部と重なる、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、三次元造形技術において、層間密着性を向上させるために、ヘッドに支持アームを介して接続されたエネルギー源によって前層を加熱し、加熱した前層の上に後続層を積層する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-523063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術において、例えば、造形物に反りなどの成形不良が生じた場合、エネルギー源が造形物に接触する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、第1ヒーターを有し、材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部と、前記可塑化材料を吐出するノズルと、を有する吐出部と、前記可塑化材料が積層されるステージと、前記ステージに積層された前記可塑化材料を加熱する第2ヒーターを有し、少なくとも三次元造形物の造形時において、前記ノズルの先端よりも上方に位置する加熱部と、前記加熱部の位置ずれを検知するセンサーと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す第1の図である。
図2】第1実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す第2の図である。
図3】スクリューの概略構成を示す斜視図である。
図4】バレルの概略平面図である。
図5】加熱部及び可動部の概略構成を示す斜視図である。
図6】加熱部の分解斜視図である。
図7】検知機構の斜視図である。
図8】検知機構の断面図である。
図9】加熱部退避処理のフローチャートである。
図10】第2実施形態における検知機構の断面図である。
図11】検知機構の他の実施形態を示す図である。
図12】検知機構の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す第1の図である。図2は、第1実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す第2の図である。図1及び図2には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X,Y,Z方向は、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸に沿った方向であり、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に沿う一方側の方向と、その反対方向とを、両方含む。X軸及びY軸は、水平面に沿った軸であり、Z軸は、鉛直線に沿った軸である。-Z方向は、鉛直方向であり、+Z方向は、鉛直方向とは逆向きの方向である。-Z方向のことを「下」ともいい、+Z方向のことを「上」ともいう。他の図においても、X,Y,Z方向に沿った矢印が、適宜、表されている。図1及び図2におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。
【0008】
三次元造形装置100は、吐出部200と、ステージ300と、移動部400と、制御部500と、可動部700とを備える。
【0009】
制御部500は、三次元造形装置100全体の動作を制御する制御装置である。制御部500は、1つ、又は、複数のプロセッサーと、メモリーと、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成される。制御部500は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、三次元造形物を造形するための造形処理を実行する機能や、後述するキャリブレーション処理を実行する処理等、種々の機能を発揮する。なお、制御部500は、コンピューターによって構成される代わりに、各機能の少なくとも一部を実現するための複数の回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0010】
吐出部200は、制御部500の制御下において、固体状態の材料を溶融させてペースト状にした可塑化材料を、三次元造形物の基台となる造形用のステージ300上に吐出する。吐出部200は、可塑化材料に転化される前の材料の供給源である材料供給部20と、材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部30と、生成された可塑化材料を吐出するノズル61とを備える。吐出部200のことをヘッドとも呼ぶ。
【0011】
本実施形態の三次元造形装置100は、吐出部200として、第1吐出部200aと、第2吐出部200bとを備える。第1吐出部200aは、材料供給部20として第1材料供給部20aを備え、可塑化部30として第1可塑化部30aを備え、ノズル61として第1ノズル61aを備える。第2吐出部200bは、材料供給部20として第2材料供給部20bを備え、可塑化部30として第2可塑化部30bを備え、ノズル61として第2ノズル61bを備える。第1吐出部200aと第2吐出部200bとは、第1ノズル61aのY方向における位置と第2ノズル61bのY方向における位置とが一致するように、X方向に並んで配置されている。本実施形態では、第2吐出部200bは、第1吐出部200aの+X方向の位置に配置されている。第1吐出部200aの構成と第2吐出部200bの構成とは同様であるため、以下では、両者を特に区別しない場合、両者を単に吐出部200と呼ぶことがある。また、両者の構成部材を区別する場合、第1吐出部200aの構成部材には、符号「a」を付し、第2吐出部200bの構成部材には、符号「b」を付して表記する。
【0012】
材料供給部20には、ペレットや粉末等の状態の材料が収容されている。材料としては、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂材料が用いられる。本実施形態における材料供給部20は、ホッパーによって構成されている。図2に示すように、材料供給部20の下方には、材料供給部20と可塑化部30との間を接続する供給路22が設けられている。材料供給部20は、供給路22を介して、可塑化部30に材料を供給する。
【0013】
図2に示すように、可塑化部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、スクリュー40と、バレル50とを備えている。可塑化部30は、材料供給部20から供給された材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の可塑化材料を生成して、ノズル61に供給する。「可塑化」とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0014】
図3は、スクリュー40のスクリュー下面42側の概略構成を示す斜視図である。図4は、バレル50のバレル上面52側を示す概略平面図である。スクリュー40は、その中心軸RXに沿った方向である軸線方向における長さが軸線方向に直交する方向における長さよりも小さい略円柱状を有する。スクリュー40は、その回転中心となる中心軸RXがZ方向に平行になるように配置される。スクリュー40は、フラットスクリューや、ローター、スクロールとも呼ばれる。
【0015】
図2に示すように、スクリュー40は、スクリューケース31内に収納されている。スクリュー40のスクリュー上面41側は駆動モーター32に連結されており、スクリュー40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース31内で回転する。駆動モーター32は、制御部500の制御下において駆動する。なお、スクリュー40は、減速機を介して駆動モーター32によって駆動されてもよい。
【0016】
図3に示すように、スクリュー下面42には、渦状の溝部45が形成されている。上述した材料供給部20の供給路22は、スクリュー40の側面から、溝部45に連通する。溝部45は、スクリュー40の側面に形成された材料導入口44まで連続している。この材料導入口44は、材料供給部20の供給路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。図3に示すように、本実施形態では、溝部45は、凸条部46によって隔てられて3本分形成されている。なお、溝部45の数は、3本に限られず、1本でもよいし、2本以上であってもよい。溝部45は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部47から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0017】
図2に示すように、バレル50は、スクリュー40の下方に配置されている。バレル上面52は、スクリュー下面42に面しており、スクリュー下面42の溝部45と、バレル上面52との間には空間が形成される。バレル50には、スクリュー40の中心軸RX上に、後述するノズル61のノズル流路65に連通する連通孔56が設けられている。バレル50には、スクリュー40の溝部45に対向する位置に第1ヒーター58が内蔵されている。第1ヒーター58の温度は、制御部500によって制御される。
【0018】
図4に示すように、バレル上面52における連通孔56の周りには、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54は、その一端が連通孔56に接続され、連通孔56からバレル上面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、可塑化材料を連通孔56に導く機能を有している。なお、案内溝54の一端が連通孔56に接続されていなくてもよい。また、バレル50には案内溝54が形成されていなくてもよい。
【0019】
スクリュー40の溝部45内に供給された材料は、溝部45内において可塑化されながら、スクリュー40の回転によって溝部45に沿って流動し、可塑化材料としてスクリュー40の中央部47へと導かれる。中央部47に流入した流動性を発現しているペースト状の可塑化材料は、連通孔56を介してノズル61に供給される。なお、可塑化材料を構成する全ての種類の物質が可塑化していなくてもよく、可塑化材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が可塑化することによって、可塑化材料が全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0020】
図2に示すように、ノズル61は、ノズル流路65と、ノズル61の先端63に設けられたノズル開口62とを備えている。ノズル流路65は、ノズル61内に形成された可塑化材料の流路であり、上述したバレル50の連通孔56に接続されている。ノズル開口62は、ノズル流路65の大気に連通する側の端部に設けられた、ノズル流路65の流路断面が縮小された部分である。第1ノズル61aの第1先端63aには第1ノズル開口62aが形成され、第2ノズル61bの第2先端63bには第2ノズル開口62bが形成されている。可塑化部30によって生成された可塑化材料は、連通孔56を介してノズル61へ供給され、ノズル流路65を介してノズル開口62から吐出される。
【0021】
ステージ300は、ノズル開口62に対向する位置に配置されている。三次元造形装置100は、ノズル開口62からステージ300の造形面321に向かって可塑化材料を吐出させ、造形面321に可塑化材料の層を積層することによって三次元造形物を造形する。造形面321に積層される可塑化材料の層のことを造形層とも呼ぶ。ステージ300の詳細については後述する。
【0022】
移動部400は、ノズル61とステージ300との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動部400は、吐出部200を積層方向であるZ方向に沿って移動させ、ステージ300を積層方向と交差する方向に移動させることによって、ノズル61とステージ300との相対的な位置を変化させる。より具体的には、本実施形態の移動部400は、吐出部200をZ方向に沿って移動させることによって、Z方向におけるノズル61とステージ300との相対的な位置を変化させ、ステージ300をZ方向と直交するX方向及びY方向に移動させることによって、X方向及びY方向におけるノズル61とステージ300との相対的な位置を変化させる。
【0023】
図1に示すように、移動部400は、ステージ300をX方向に沿って移動させる第1電動アクチュエーター410と、ステージ300と第1電動アクチュエーター410とをY方向に沿って移動させる第2電動アクチュエーター420と、吐出部200をZ方向に沿って移動させる第3電動アクチュエーター430とによって構成されている。第1電動アクチュエーター410、第2電動アクチュエーター420、及び、第3電動アクチュエーター430は、制御部500の制御下で駆動される。第3電動アクチュエーター430は、第1吐出部200a及び第2吐出部200bが配置された可動部700をZ方向に沿って移動させることによって、第1吐出部200a及び第2吐出部200bをZ方向に沿って移動させる。なお、図2では、第3電動アクチュエーター430及び可動部700は省略されている。なお、移動部400は、エアシリンダー等の他のアクチュエーターによって構成されていてもよい。
【0024】
図1に示すように、可動部700は、加熱部600を支持することによって、加熱部600をステージ300と対向する位置に配置する。従って、本実施形態における第3電動アクチュエーター430は、吐出部200と可動部700との位置関係を維持した状態で、吐出部200とともに可動部700をZ方向に沿って移動させる。つまり、可動部700は、ノズル61とともにステージ300との相対的な位置が変化するように構成されている。また、可動部700によって支持される加熱部600は、ノズル61とともにステージ300との相対的な位置が変化するように構成されている。このような構成により、可動部700は、吐出部200及び加熱部600のステージ300に対する相対的な位置を、吐出部200及び加熱部600を連動させて変更する。
【0025】
上記のとおり、本実施形態では、移動部400は、ステージ300をX方向及びY方向に沿って移動させ、吐出部200をZ方向に沿って移動させる。これに対して、移動部400は、例えば、ステージ300をZ方向に移動させ、吐出部200をX方向及びY方向に沿って移動させてもよい。また、移動部400は、吐出部200を移動させずにステージ300をX方向、Y方向及びZ方向に移動させてもよい。その他、移動部400は、ステージ300を移動させずに吐出部200をX方向、Y方向及びZ方向に移動させてもよい。
【0026】
以下では、ステージ300に対するノズル61の相対的な位置の変化を、単に、ノズル61の移動と呼ぶこともある。本実施形態では、例えば、ノズル61に対してステージ300を+X方向に移動させたことを、ノズル61を-X方向に移動させたと言い換えることもできる。また、同様に、ステージ300に対する吐出部200や加熱部600や可動部700の相対的な位置の変化を、単に、吐出部200や加熱部600や可動部700の移動と呼ぶこともある。
【0027】
図5は、本実施形態における加熱部600及び可動部700の概略構成を示す斜視図である。図6は、加熱部600の分解斜視図である。図5及び図6に示すように、加熱部600は、ステージ300に積層された可塑化材料を加熱して層間密着性を高めるための第2ヒーター610と、第2ヒーター610の熱を可塑化材料に伝える加熱板620と、加熱板620を支持するフレーム部630と、断熱材によって構成された断熱部650とを有している。図6に示すように、加熱板620と、第2ヒーター610と、フレーム部630と、断熱部650とは、下からこの順で積層されている。
【0028】
図2図5及び図6に示すように、加熱部600には、加熱部600をその面方向と直交する方向に貫通する貫通孔601が形成されている。本実施形態では、加熱部600には、貫通孔601として、第1貫通孔601aと、第2貫通孔601bとが形成されている。第1貫通孔601aと第2貫通孔601bとは、加熱部600のY方向における中央部に形成されている。第2貫通孔601bは、第1貫通孔601aの+X方向側に形成されている。以下では、第1貫通孔601aと第2貫通孔601bとを特に区別しない場合、両者を単に貫通孔601とも呼ぶ。図6に示すように、本実施形態では、貫通孔601は、第2ヒーター610をZ方向に貫通するように形成された孔HL1と、加熱板620をZ方向に貫通するように形成された孔HL2とが、Z方向に連なることによって形成されている。
【0029】
ノズル61の少なくとも一部は、可塑化材料を吐出して三次元造形物を造形しているとき、図2に示すように、貫通孔601内に位置する。図2では、Z方向に沿って見たときに、ノズル61の周囲が加熱部600によって囲われているとも言える。以下では、「可塑化材料を吐出して三次元造形物を造形しているとき」のことを、単に、「三次元造形物の造形時」や「造形時」とも呼ぶ。本実施形態では、三次元造形物の造形時には、ノズル開口62は、Z方向において、加熱面621と造形面321との間に配置される。なお、この「加熱面621と造形面321との間」は、加熱面621と同じ位置や造形面321と同じ位置を含まない。そのため、少なくとも三次元造形物の造形時には、図2に示すように、加熱部600は、ノズル61の先端63よりも上方に位置する。
【0030】
ノズル61は、造形時以外に貫通孔601内に位置していなくてもよい。例えば、2つの吐出部200のうち、三次元造形物の造形時に使用されない吐出部200は、制御部500による制御下で、図1に示した第4電動アクチュエーター440により加熱部600に対して上方に移動されることにより、ノズル61が加熱部600の上方に移動される。このように、第4電動アクチュエーター440は、吐出部200をZ方向に沿って移動させることによって、ノズル61が貫通孔601内に位置する状態と、ノズル61が加熱部600の上方に位置することによって貫通孔601内に位置しない状態とを、切り替える。なお、他の実施形態では、第4電動アクチュエーター440は、例えば、加熱部600を吐出部200に対してZ方向に沿って移動させることによって、ノズル61が貫通孔601内に位置する状態と位置しない状態とを切り替えるように構成されていてもよい。
【0031】
図6に示した第2ヒーター610は、矩形板状を有するラバーヒーターによって構成されている。第2ヒーター610は、図示しない配線を介して制御部500と電気的に接続されている。第2ヒーター610の出力及び温度は、制御部500によって制御される。他の実施形態では、第2ヒーター610は、例えば、ハロゲンヒーターや、ニクロム線ヒーター、カーボンヒーター等によって構成されていてもよい。
【0032】
本実施形態では、加熱板620は、矩形板状を有している。加熱板620の下面は、加熱面621を形成する。加熱面621とは、加熱部600の面のうち、造形面321に近い面のことを指す。加熱板620の上面には、第2ヒーター610が直接、貼り付けられている。加熱板620は、第2ヒーター610から供給される熱を、加熱面621を介して、造形層に供給する。他の実施形態では、第2ヒーター610は、例えば、接着剤を介して加熱板620に固定されていてもよいし、ボルト等の締結具によって加熱板620に固定されていてもよい。
【0033】
本実施形態では、加熱板620は、アルミニウムによって形成されている。これにより、例えば、加熱板620が鉄鋼やステンレス鋼によって形成されている場合と比較して、加熱板620によって第2ヒーター610の熱をより効率良く可塑化材料に伝えることができ、かつ、加熱板620を軽量化できる。他の実施形態では、加熱板620は、例えば、鉄鋼やステンレス鋼等によって形成されてもよい。
【0034】
可動部700は、加熱部600の姿勢の変更を許容可能に構成された姿勢変更部800を有している。より詳細には、本実施形態における可動部700は、支持部材710と、姿勢変更部800として機能する吊り下げ部810とを有している。
【0035】
支持部材710は、ノズル61とともにステージ300との相対位置が変更するように可動部700に備えられている。本実施形態における支持部材710は、固定板711と、一対の腕部712とを有している。固定板711は、X方向に長尺な矩形状の板状を有しており、その板面がX方向及びZ方向に沿い、かつ、その長手方向がX方向に沿うように可動部700に備えられている。固定板711のことを、背面プレートともいう。腕部712は、固定板711から-Y方向に向かって延び、かつ、X方向において互いに向かい合うように固定板711に固定されている。
【0036】
図5に示すように、本実施形態では、可動部700は、3つの吊り下げ部810を有している。本実施形態では、第1吊り下げ部810Aは、加熱部600のY方向における端部のX方向における中央部を吊り下げて支持している。より詳細には、第1吊り下げ部810Aは、固定板711のX方向における中央部から加熱部600を-Z方向に吊り下げて支持している。第2吊り下げ部810B及び第3吊り下げ部810Cは、加熱部600のY方向における中央位置よりも-Y方向側を支持している。より詳細には、第2吊り下げ部810Bは、-X方向側に配置された腕部712から加熱部600を-Z方向に吊り下げて支持している。第3吊り下げ部810Cは、+X方向側に配置された腕部712から加熱部600を-Z方向に吊り下げて支持している。
【0037】
図5に示すように、第2吊り下げ部810B及び第3吊り下げ部810Cの下側の端部は、第1固定部材631を介して、加熱部600のフレーム部630に固定されている。第2吊り下げ部810B及び第3吊り下げ部810Cの上端部は、第2固定部材801を介して、腕部712に固定されている。第1吊り下げ部810Aの下側の端部は、第3固定部材632を介して、フレーム部630に固定されている。第1吊り下げ部810Aの上端部は、第4固定部材802を介して、固定板711に固定されている。
【0038】
3つの吊り下げ部810は、それぞれ、Z方向に沿った長さが調整可能に構成されている。ユーザーは、3つの吊り下げ部810の長さをそれぞれ調整することで、ステージ300の造形面321と加熱部600の加熱面621との平行度を調整できる。
【0039】
第1吊り下げ部810A、第2吊り下げ部810B、及び、第3吊り下げ部810Cは、それぞれ、上端及び下端にロッドエンドを備えてもよい。この場合、第1固定部材631、第2固定部材801、第3固定部材632、及び、第4固定部材802は、ロッドエンドを、支持部材710に対して回転可能に支持する支持部を備える。このような構成によれば、ステージ300に対する加熱板620の平行度を保ちつつ、加熱板620が支持部材710に対して揺れ動くことが可能なように、加熱板620を支持部材710に吊り下げることができる。これにより、加熱板620が造形物に接触した際に、造形物に与える衝撃を小さくできる。
【0040】
図5に示すように、本実施形態の三次元造形装置100は、加熱部600の位置ずれを検知するための検知機構900を備える。
【0041】
図7は、検知機構900の斜視図である。図8は、検知機構900の断面図である。検知機構900は、可動部700に固定されたセンサー910と、加熱部600に固定された構造物920とを有する。
【0042】
本実施形態では、センサー910は、L字形のステー911を介して、可動部700に備えられた支持部材710のうちの固定板711に固定されている。センサー910は、制御部500に接続されている。センサー910は、長手方向を有し、棒状の形状を有する接触式のセンサーである。センサー910のことを、触覚スイッチともいう。センサー910は、その長手方向がZ方向に沿うように、ステー911によって可動部700に固定される。センサー910は、半球状の先端を有する先端部912を有している。センサー910は、先端部912に、X方向、Y方向、又は、Z方向から物体が接触した場合に、物体が接触したことを示す接触信号を制御部500に送信する。なお、他の実施形態では、センサー910は、支持部材710のうちの腕部712に固定されてもよい。
【0043】
構造物920は、加熱部600に固定される基部921と、センサー910に接触可能に設けられた壁部922と、を備える。本実施形態では、基部921は、加熱部600のうちのフレーム部630に固定される。基部921には、長穴923が形成されており、この長穴923を通じてネジ924がフレーム部630に設けられたネジ穴639に螺合することで、構造物920が加熱部600に固定される。長穴923は、構造物920の加熱部600に対する固定位置を調整するために設けられている。
【0044】
本実施形態において、壁部922は、センサー910が延びる方向である-Z方向に沿って見て、センサー910の少なくとも一部を囲む。図7に示すように、本実施形態では、-Z方向に沿って見て、壁部922の内周は真円である。本実施形態では、-Z方向に沿って見て、センサー910の先端部912の外周と、壁部922の内周とは、同心円である。本実施形態における壁部922は、基部921に設けられた凸部925の上面に凹部926が形成されることで構成されている。
【0045】
構造物920には、センサー910が延びる方向に沿って延びる第1穴927が設けられている。本実施形態では、第1穴927は、凹部926の中心に設けられている。第1穴927は、構造物920をZ方向に貫いている。第1穴927の直径は、センサー910の先端部912の直径とほぼ同じであり、センサー910の先端部912の直径よりもやや大きい。第1穴927は、センサー910のX、Y方向の位置決めに用いられる。ユーザーは、センサー910の先端部912を、第1穴927に挿入することで、センサー910のX方向及びY方向の位置決めを行う。ユーザーは、その後、センサー910を、+Z方向に移動させ、センサー910のZ方向の位置を、ステー911に設けられた長穴913で調整する。長穴913にネジ914を挿入し、固定板711に設けられたネジ穴にネジ914を螺合させることで、センサー910がステー911により固定板711に固定される。センサー910を固定板711に固定した後、ユーザーは、センサー910のステー911に対する取り付け高さを、ステー911に設けられたナット915によって微調整可能である。
【0046】
構造物920には、第2穴928が設けられている。第2穴928は、第1穴927が延びる方向と交わる方向に延びる。本実施形態では、第1穴927が延びる方向はZ方向であり、第2穴928が延びる方向はY方向である。第2穴928は、構造物920内において、第1穴927と連通する。構造物920は、第2穴928に挿入された部材である挿入部材929を有する。本実施形態では、挿入部材929の最も上部の位置は、凹部926の底面よりも低い位置にある。挿入部材929は、第1穴927を用いたセンサー910の位置決めが行われた後に、第2穴928に挿入される。つまり、挿入部材929は、センサー910が第1穴927から抜かれた後に、第2穴928に挿入される。
【0047】
以上のように構成された検知機構900では、加熱部600が造形物やステージ300に接触して、加熱部600がX方向又はY方向に位置ずれした場合に、その位置ずれを、センサー910が壁部922に接触することで検知できる。また、加熱部600が+Z方向に位置ずれした場合に、その位置ずれを、センサー910が凹部926の底面又は挿入部材929に接触することで検知できる。検知機構900の感度は、構造物920に対する壁部922の形成位置によって定まる。壁部922の内周の直径が小さいほど、検知機構900による検知の感度が高まり、壁部922の内周の直径が大きいほど、感度が低くなる。
【0048】
図9は、制御部500が実行する加熱部退避処理のフローチャートである。この処理は、三次元造形装置が動作している間に、所定のサイクルで繰り返し実行される。
【0049】
ステップS10において、制御部500は、センサー910から接触信号を受信したか否かを判断する。センサー910から接触信号を受信したと判断した場合、制御部500は、ステップS20において、移動部400の第3電動アクチュエーター430を制御し、可動部700を+Z方向に移動させることで、加熱部600をステージ300から相対的に離すように、加熱部600を上昇させる。このとき、加熱部600を相対的に上昇させる距離は、例えば、5mm~50mmである。その後、ステップS30において、制御部500は、三次元造形装置100の動作を停止させる。
【0050】
ステップS10において、接触信号を受信していないと判断した場合、制御部500は、ステップS20及びステップS30をスキップする。
【0051】
制御部500は、上述したステップS30において、三次元造形装置100の動作を停止させるとともに、三次元造形装置100に備えられた表示装置又は表示灯を用いてユーザーに、加熱部600に位置ずれが生じたことを警告してもよい。また、制御部500は、スピーカーから音を出力することで警告を行ってもよい。また、制御部500は、予め設定されたメールアドレスに、警告内容を表す電子メールを送信してもよい。
【0052】
以上で説明した第1実施形態の三次元造形装置100によれば、加熱部600の位置ずれを検知するためのセンサー910が備えられているので、造形物との接触による加熱部600の位置ずれを検知できる。そのため、ユーザーは、例えば、造形物に反りが発生しているなどの成形不良を察知できる。また、例えば、造形時において、加熱部600が+Z方向から-Z方向に変化したような場合において、加熱部600が造形物に接触することを検知できる。
【0053】
また、本実施形態の三次元造形装置100は、構造物920を備えており、センサーと、構造物920に備えられた壁部922との接触に基づいて、加熱部600の位置ずれを検知する。そのため、センサー910が延びる方向であるZ方向と交差するX、Y方向への加熱部600の位置ずれを検知できる。
【0054】
また、本実施形態では、構造物920に、センサー910が延びる方向に沿って延びる第1穴927が設けられている。そのため、第1穴927を用いることで、センサー910を容易に位置決めできる。
【0055】
また、本実施形態では、構造物920に、第1穴927が延びる方向と交わる方向に延び、第1穴927と連通する第2穴928が設けられている。そして、構造物920は、第2穴928に挿入された挿入部材929を有している。そのため、挿入部材929によって第1穴927の一部が埋まるため、センサー910が延びる方向に沿って相対的に加熱部600がセンサー910に近づく位置ずれを検知できる。
【0056】
また、本実施形態では、センサー910によって位置ずれが検知された場合に、制御部500は、可動部700を移動させることにより、加熱部600をステージ300から相対的に離す。そのため、加熱部600が造形物に接触し続けることを抑制でき、2つの物体間の荷重を逃がすことができる。これにより加熱部600の故障を抑制できる。また、造形物を造形するための造形データや制御データに誤りがあり、意図せずに吐出部200とともに加熱部600が造形物やステージ300に接近した場合に、加熱部600やステージ300が故障することを抑制できる。
【0057】
なお、本実施形態において、制御部500は、図9に示した加熱部待避処理を、三次元造形装置100が造形物を造形していない期間には実行しなくてもよい。三次元造形装置100が造形物を造形していない期間とは、例えば、三次元造形装置100に対して清掃やメンテナンスを行う期間である。このような期間に加熱部待避処理を実行しないこととすれば、ユーザーが誤って加熱部600に触れた場合に、加熱部600が意図せずに移動することを抑制できる。
【0058】
B.第2実施形態:
図10は、第2実施形態における検知機構900の断面図である。第2実施形態の検知機構900は、構造物920bの構成が第2実施形態の構造物920と異なる。構造物920bを除く三次元造形装置100の他の構成は第1実施形態と同じである。
【0059】
第2実施形態において、構造物920に設けられた第1穴927bの底部は、センサー910の先端の一部に対応する形状を有している。つまり、第2実施形態では、第1穴927bは、略半球状の窪みとして形成されている。第1穴927bの深さは、第1実施形態において、凹部926の底から、第2穴928に挿入される挿入部材929の最も上部までの距離に相当する。ユーザーは、第1穴927bの底部にセンサー910の先端部912を当てることで、センサー910のX、Y方向の位置決めを行うことができる。また、センサー910は、第1穴927と先端部912との接触を検知することで、加熱部600の+Z方向の位置ずれを検知できる。
【0060】
以上で説明した第2実施形態によれば、第1穴927bによって、センサー910のX、Y方向の位置決めと、センサー910が延びる方向における加熱部600の位置ずれの検知とを両方実現できる。そのため、構造物920を簡易な構造にできる。
【0061】
C.他の実施形態:
(C1)上記各実施形態では、センサー910の先端部912の外周と、壁部922の内周とは、同心円となっている。これに対して、図11の上部に示す例Aのように、センサー910が延びる方向である-Z方向に沿って見て、センサー910は、壁部922に囲まれた空間のXY平面における中心CTから偏心した位置PSに配置されていてもよい。このようにセンサー910が配置されることにより、壁部922に囲まれた空間の中心CTから偏心した位置PSに向かう方向において、センサー910から壁部922までの距離が小さくなるため、その方向への感度が高くなる。この結果、センサー910の感度に異方性を持たせることができる。その他、例えば、壁部922の内周を真円以外の形状、例えば、楕円や矩形とすることでも、センサー910の感度に異方性を持たせることが可能である。
【0062】
また、図11の下部に示す例Bのように、-Z方向に沿って見て、壁部922は、センサー910の周囲の全てを囲んでいなくてもよい。これにより、特定の方向への加熱部600の位置ずれを検出しないように検知機構900を構成することができる。
【0063】
(C2)上記各実施形態では、センサー910が延びる-Z方向に沿って見て、センサー910と、壁部922とは重なっていない。これに対して、センサー910が延びる-Z方向に沿って見て、センサー910の一部と、壁部922の一部とが重なるように構成されてもよい。例えば、図12の上部に示す例Cでは、センサー910をZ方向に対して傾斜するよう配置し、センサー910の先端部912の上方に壁部922を延伸させることで、-Z方向に沿って見て、センサー910の一部が、壁部922の一部と重なるように構成している。このような構成であれば、加熱部600の-Z方向への位置ずれをセンサー910によって検出することができる。センサー910をZ方向に対して傾斜させて配置する場合、第1穴927bを第2実施形態のように構成することで、センサー910が傾斜している場合であっても、センサー910のX、Y方向の位置決めを行うことができる。
【0064】
また、図12の下部に示す例Dのように、センサー910がZ方向に沿って配置されている場合でも、センサー910の先端部912に鍔部916を設け、鍔部916の上方に壁部922を延伸させることで、-Z方向に沿って見て、センサー910の一部と、壁部922の一部とが重なるように構成することができる。このような構成であっても、加熱部600の-Z方向への位置ずれをセンサー910によって検出することが可能である。
【0065】
(C3)上述した各実施形態では、センサー910が可動部700に設けられ、構造物920が加熱部600に設けられている。これに対して、センサー910が加熱部600に設けられ、構造物920が可動部700に設けられてもよい。
【0066】
(C4)上述した各実施形態において、ユーザーは、壁部922の内周の径や形状が異なる複数種類の構造物920を用意し、部品の精度、熱膨張率、接触時の許容変位量などを考慮して、それらから一の構造物920を選択し、三次元造形装置100に取り付けてもよい。こうすることで、装置の保護と誤検知防止を図ることができる。
【0067】
(C5)上述した各実施形態において、壁部922は、壁部922によって囲われる空間の大きさを変化させる可変機構を備えてもよい。このような機構として、例えば、絞り機構やシャッター機構、スライド機構を採用することが可能である。このような機構によって、壁部922内の空間の大きさを変更可能であれば、検知機構900による接触の検知範囲や感度を任意に調整できる。
【0068】
(C6)上述した各実施形態では、加熱部600は、矩形板状を有している。しかし、加熱部600の形状はこれに限らず、円形状でもよい。また、加熱部600の形状は、板状に限らず、例えば、スポット状に熱を放射する円筒状や半球状の熱源であってもよい。
【0069】
(C7)上述した各実施形態では、構造物920に第1穴927,927bが設けられている。しかし、第1穴927,927bは必須ではなく、構造物920に設けられていなくてもよい。また、第1実施形態において、第2穴928及び挿入部材929を省略することも可能である。
【0070】
(C8)上述した第1実施形態では、制御部500は、センサー910と加熱部600との接触を検知した場合に、加熱部600をステージ300から離すように移動させている。これに対して、制御部500は、センサー910と加熱部600との接触を検知した場合に、加熱部600を移動させず、ユーザーに対して警告を行うのみであってもよい。
【0071】
(C9)上記各実施形態では、三次元造形装置100は、吐出部200を2つ備えている。これに対して、三次元造形装置100は、吐出部200を1つのみ備えていてもよいし、3つ以上備えていてもよい。
【0072】
(C10)上記各実施形態において、吐出部200は、フラットスクリューによって材料を可塑化している。これに対して吐出部200は、例えば、インラインスクリューを回転させることによって材料を可塑化するものであってもよい。また、吐出部200は、フィラメント状の材料をヒーターで可塑化するものであってもよい。
【0073】
D.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0074】
(1)本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、第1ヒーターを有し、材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部と、前記可塑化材料を吐出するノズルと、を有する吐出部と、前記可塑化材料が積層されるステージと、前記ステージに積層された前記可塑化材料を加熱する第2ヒーターを有し、少なくとも三次元造形物の造形時において、前記ノズルの先端よりも上方に位置する加熱部と、前記加熱部の位置ずれを検知するセンサーと、を備える。このような形態によれば、加熱部の位置ずれを検知できるので、成形の不良を察知できる。
【0075】
(2)上記形態において、前記吐出部及び前記加熱部が配置された可動部と、前記可動部の前記ステージに対する相対的な位置を変更する移動部と、を有し、前記センサーは、接触式のセンサーであり、前記センサーが延びる方向に沿って見て、前記センサーの少なくとも一部を囲む壁部を有する構造物を備え、前記センサーは、前記可動部及び前記加熱部のいずれか一方に固定され、前記構造物は、前記可動部及び前記加熱部のうち前記センサーが固定されている方とは異なる他方に固定されてもよい。このような形態によれば、センサーと構造物との接触に基づいて、加熱部の位置ずれを検知できる。
【0076】
(3)上記形態において、前記構造物には、前記センサーが延びる方向に沿って延びる第1穴が設けられてもよい。このような形態によれば、第1穴を用いることで、センサーを容易に位置決めできる。
【0077】
(4)上記形態において、前記構造物には、前記第1穴が延びる方向と交わる方向に延び、前記第1穴と連通する第2穴が設けられており、前記構造物は、前記第2穴に挿入された部材を有してもよい。このような形態によれば、センサーが延びる方向に沿って相対的に加熱部がセンサーに近づく位置ずれを検知できる。
【0078】
(5)上記形態において、前記センサーによって前記位置ずれが検知された場合に、前記移動部を制御して、前記加熱部を前記ステージから相対的に離すように構成された制御部を備えてもよい。このような形態によれば、加熱部が造形物に接触し続けることを抑制できる。
【0079】
(6)上記形態において、前記第1穴の底部は、前記センサーの先端の一部に対応する形状を有してもよい。このような形態であれば、簡易な構成により、センサーの位置決めと、センサーが延びる方向における加熱部の位置ずれの検知とを実現できる。
【0080】
(7)上記形態において、前記センサーが延びる方向に沿って見て、前記センサーは、前記壁部に囲まれた空間の中心から偏心した位置に配置されてもよい。このような形態によれば、加熱部の位置ずれの精度に異方性を持たせることができる。
【0081】
(8)上記形態において、前記センサーが延びる方向に沿って見て、前記センサーの一部は、前記壁部の一部と重なってもよい。このような形態によれば、センサーが延びる方向に沿って相対的に加熱部がセンサーから遠ざかる位置ずれを検知できる。
【0082】
本開示は、上述した三次元造形装置に限らず、加熱部の位置ずれ検知方法やその方法を実現するためのコンピュータープログラム、コンピュータープログラムをコンピューターが読み取り可能に記録した一時的でない有形な記録媒体など、種々の態様によって実現できる。
【符号の説明】
【0083】
20…材料供給部、20a…第1材料供給部、20b…第2材料供給部、22…供給路、30…可塑化部、30a…第1可塑化部、30b…第2可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…スクリュー、41…スクリュー上面、42…スクリュー下面、44…材料導入口、45…溝部、46…凸条部、47…中央部、50…バレル、52…バレル上面、54…案内溝、56…連通孔、58…第1ヒーター、61…ノズル、61a…第1ノズル、61b…第2ノズル、62…ノズル開口、62a…第1ノズル開口、62b…第2ノズル開口、63…先端、63a…第1先端、63b…第2先端、65…ノズル流路、100…三次元造形装置、200…吐出部、200a…第1吐出部、200b…第2吐出部、300…ステージ、321…造形面、400…移動部、410…第1電動アクチュエーター、420…第2電動アクチュエーター、430…第3電動アクチュエーター、440…第4電動アクチュエーター、500…制御部、600…加熱部、601…貫通孔、601a…第1貫通孔、601b…第2貫通孔、610…第2ヒーター、620…加熱板、621…加熱面、630…フレーム部、631…第1固定部材、632…第3固定部材、639…ネジ穴、650…断熱部、700…可動部、710…支持部材、711…固定板、712…腕部、800…姿勢変更部、801…第2固定部材、802…第4固定部材、810,810A,810B,810C…吊り下げ部、900…検知機構、910…センサー、911…ステー、912…先端部、913…長穴、914…ネジ、915…ナット、916…鍔部、920…構造物、920b…構造物、921…基部、922…壁部、923…長穴、924…ネジ、925…凸部、926…凹部、927,927b…第1穴、928…第2穴、929…挿入部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12