(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168495
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】インクジェットインク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/328 20140101AFI20241128BHJP
D06P 1/38 20060101ALI20241128BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241128BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241128BHJP
D06P 5/30 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
C09D11/328
D06P1/38 A
B41M5/00 120
B41J2/01 501
D06P5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085218
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】岡村 久史
(72)【発明者】
【氏名】小松 英彦
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FA10
2C056FA13
2C056FB03
2C056FC02
2C056HA46
2H186BA08
2H186DA17
2H186FB11
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB54
4H157AA01
4H157BA07
4H157CA29
4H157DA01
4H157GA06
4J039BC13
4J039BC50
4J039BE02
4J039BE12
4J039BE19
4J039BE22
4J039CA03
4J039EA38
4J039EA41
4J039EA42
4J039EA43
4J039EA46
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】印捺物の発色性及び堅牢性に優れるインクジェットインク組成物の提供。
【解決手段】モノクロロトリアジン基及びアゾ結合を有する赤色色材と、下記式(1)で表される化合物等から選ばれる少なくとも1種と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有する、インクジェットインク組成物。式(1)中、複数あるXは、それぞれ独立に、H、Na、K、又はLiである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクロロトリアジン基及びアゾ結合を有する赤色色材と、
下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、
水溶性有機溶剤と、
水と、を含有する、インクジェットインク組成物。
【化1】
【化2】
(式(1)及び式(2)中、複数あるXは、それぞれ独立に、H、Na、K、又はLiである。)
【請求項2】
前記赤色色材が、C.I. Reactive Red 31である、請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項3】
下記式(V-1)で表される条件を満たす、請求項1又は2に記載のインクジェットインク組成物。
(A+B)≦5 (V-1)
(式(V-1)中、Aは、前記インクジェットインク組成物の総量に対する前記式(1)で表される化合物の含有量[質量%]であり、Bは、前記インクジェットインク組成物の総量に対する前記式(2)で表される化合物の含有量[質量%]である。)
【請求項4】
下記式(V-2)で表される条件を満たす、請求項1又は2に記載のインクジェットインク組成物。
5≦C/(A+B)≦3000 (V-2)
(式(V-2)中、Aは、前記インクジェットインク組成物の総量に対する前記式(1)で表される化合物の含有量[質量%]であり、Bは、前記インクジェットインク組成物の総量に対する前記式(2)で表される化合物の含有量[質量%]であり、Cは、前記インクジェットインク組成物の総量に対する前記赤色色材の含有量[質量%]である。)
【請求項5】
前記水溶性有機溶剤は、ラクタム系化合物を含む、請求項1又は2に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項6】
前記ラクタム系化合物が、2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン及びε-カプロラクタムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項5に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項7】
前記赤色色材の含有量が、インク組成物の総量に対して、4.0質量%以上である、請求項1又は2に記載のインクジェットインク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法は、記録媒体に対する画像の記録だけでなく、布帛の捺染にも適用が試みられ、各種のインクジェット捺染用のインク組成物が検討されている。
例えば、特許文献1には、着色剤として、C.I.ReactiveRed31とC.I.ReactiveRed245とを含有するインク組成物であって、該インク組成物の総質量中に含有するC.I.ReactiveRed31と、C.I.ReactiveRed245との含有比率が、質量基準で8:2~1:1であるインク組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなインク組成物には、得られる印捺物の発色性及び堅牢性に優れることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、モノクロロトリアジン基及びアゾ結合を有する赤色色材と、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有する、インクジェットインク組成物である。
【化1】
【化2】
(式(1)及び式(2)中、複数あるXは、それぞれ独立に、H、Na、K、又はLiである。)
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0008】
1.インクジェットインク組成物
本実施形態のインクジェットインク組成物(以下、「インク組成物」とも称する)は、モノクロロトリアジン基及びアゾ結合を有する赤色色材と、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有する。
【0009】
【0010】
【0011】
ここで、式(1)及び式(2)中、複数あるXは、それぞれ独立に、H(水素原子)、Na(ナトリウム原子)、K(カリウム原子)、又はLi(リチウム原子)である。
【0012】
本実施形態のインク組成物は、上記の構成を含むことで、得られる印捺物の発色性及び堅牢性に優れる。以下、インク組成物に含まれる各成分について説明する。
【0013】
1.1.色材
インク組成物は、モノクロロトリアジン基及びアゾ結合を有する赤色色材を含む。これによって、得られる印捺物の発色性を向上させることができる。モノクロロトリアジン基は、具体的には、下記式(m)で表される。
【0014】
【0015】
ここで、式(m)中、*は結合位置を表す。
【0016】
赤色色材としては、例えば、C.I. Reactive Red 1、3、3:1、4、13、14、17、19、21、22、23、24、24:1、25、26、29、31、32、35、37、40、41、43、44、45、46、49、55、60、66、74、79、96、97、108、141、180、218、226、245のような赤色の反応染料のうち、モノクロロトリアジン基及びアゾ結合を有するものが挙げられる。上記の中でも、得られる印捺物の発色性に優れる観点から、赤色色材としては、C.I. Reactive Red 31が好ましい。
赤色色材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
赤色色材の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは1.0質量%以上50.0質量%以下である。赤色色材の含有量が、インク組成物の総量に対して1.0質量%以上であることで、得られる印捺物の発色性に優れる。上記の観点から、赤色色材の含有量が、インク組成物の総量に対して、より好ましくは3.0質量%以上であり、さらに好ましくは4.0質量%以上である。赤色色材の含有量が、インク組成物の総量に対して50.0質量%以下であることで、得られる印捺物の堅牢性に優れる。上記の観点から、赤色色材の含有量が、インク組成物の総量に対して、より好ましくは40.0質量%以下であり、さらに好ましくは30.0質量%以下である。
【0018】
1.2.式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物
インク組成物は、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。これによって、得られる印捺物の堅牢性を向上させることができる。
【0019】
【0020】
【0021】
式(1)及び式(2)中、複数あるXは、それぞれ独立に、H、Na、K、又はLiであり、複数あるXの内少なくとも1つはHであることが好ましく、複数あるXのすべてがHであることがより好ましい。これにより、本発明による効果をより有効かつ確実に奏することができる。
【0022】
式(1)で表される化合物の含有量は、本発明による効果をより有効かつ確実に奏する観点から、インク組成物の総量に対して、好ましくは0.001質量%以上5.0質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上4.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以上2.0質量%以下である。
【0023】
式(2)で表される化合物の含有量は、本発明による効果をより有効かつ確実に奏する観点から、インク組成物の総量に対して、好ましくは0.001質量%以上5.0質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上4.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以上2.0質量%以下である。
【0024】
本実施形態のインク組成物は、下記式(V-1)で表される条件を満たすことが好ましい。
(A+B)≦5 (V-1)
ここで、式(V-1)中、Aは、インク組成物の総量に対する上記式(1)で表される化合物の含有量[質量%]であり、Bは、インク組成物の総量に対する上記式(2)で表される化合物の含有量[質量%]である。
【0025】
式(V-1)は、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物の合計含有量が、インク組成物の総量に対して、5.0質量%以下であることを表す。本発明による効果をより有効かつ確実に奏する観点から、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物の合計含有量(A+B)は、インク組成物の総量に対して、3.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。
本発明による効果をより有効かつ確実に奏する観点から、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物の合計含有量(A+B)は、インク組成物の総量に対して、0.001質量%以上であってもよく、好ましくは0.005質量%以上であり、さらに好ましくは0.01質量%以上である。
【0026】
下記式(V-2)で表される条件を満たす、請求項1又は2に記載のインクジェットインク組成物。
5≦C/(A+B)≦3000 (V-2)
ここで、式(V-2)中、Aは、上記インク組成物の総量に対する上記式(1)で表される化合物の含有量[質量%]であり、Bは、上記インク組成物の総量に対する上記式(2)で表される化合物の含有量[質量%]であり、Cは、上記インク組成物の総量に対する上記赤色色材の含有量[質量%]である。
【0027】
式(V-2)は、上記式(1)で表される化合物及び上記式(2)で表される化合物の合計含有量(A+B)に対する上記赤色色材の含有量Cの割合(C/(A+B))が、5以上3000以下であることを表す。C/(A+B)は、10以上であることがより好ましく、15以上であることがさらに好ましく、20以上であることが特に好ましい。C/(A+B)は、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。
【0028】
1.3.水溶性有機溶剤(浸透剤)
インク組成物は、水溶性有機溶剤などの浸透剤を含む。これによって、インク組成物の吐出安定性が向上する。浸透剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
浸透剤は、水に対して溶解性を示す有機化合物であればよいが、例えば、25℃における水への溶解度が1g/100g水以上の有機溶媒を水溶性有機溶剤として好適に用いることができる。
【0030】
水溶性有機溶剤としては、例えば、1価のアルコール及び多価アルコール等のアルコール;グリコールエーテル;分子内にラクタム構造を有するラクタム系化合物、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、並びにアセトニトリルが挙げられる。上記の中でも、水溶性有機溶剤は、ラクタム系化合物を含むことが好ましい。
【0031】
1価のアルコールとしては、例えば、炭素数が3以上20以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルアルコールが挙げられる。
【0032】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールなどのアルカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価のアルコール;トリメチロールプロパン、グリセリンなどの3価のアルコールが挙げられる。
【0033】
グリコールエーテルとしては、例えば、アルキレングリコールモノエーテル、及びアルキレングリコールジエーテルが挙げられる。
【0034】
アルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0035】
アルキレングリコールジエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、及びジプロピレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。
【0036】
ラクタム系化合物としては、例えば、2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、ε-カプロラクタム、2-アセチジノン、2-ピペリドン、4-エチル-2-アセチジノン、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、及び3-アミノ-2-ピペリドンが挙げられる。
【0037】
ラクタム系化合物としては、2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン及びε-カプロラクタムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0038】
インク組成物が水溶性有機溶剤としてラクタム系化合物を含む場合、ラクタム系化合物の含有量は、インク組成物の総量に対して、1.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上20.0質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
水溶性有機溶剤の含有量は、特に限定されないが、吐出安定性の観点から、インク組成物の総量に対して、1.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上40.0質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上30.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以上20.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0040】
1.4.水
インク組成物は、水を含む。水としては、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射や過酸化水素の添加等によって滅菌した水は、処理液組成物を長期間保存する場合に、カビやバクテリアの発生を抑制することができるため、好ましい。
【0041】
水の含有量は、インク組成物の総量に対して、30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。水の含有量を上記の範囲とすることにより、インク組成物の粘度の増大を抑制することができる。
【0042】
1.5.界面活性剤
インク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、インク組成物の表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性を調整する機能を備える。界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0043】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、サーフィノール(登録商標)104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(日信化学工業(株)製);オルフィン(登録商標)B、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14;AE-3(日信化学工業(株)製);アセチレノール(登録商標)E00、E00P、E40、E100(川研ファインケミカル(株)製)が挙げられる。
【0044】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等のポリシロキサン系化合物が挙げられる。ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348(ビックケミー・ジャパン(株)製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6004、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0045】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、フッ素変性ポリマーが挙げられる。より具体的には、例えば、BYK-340(ビックケミー・ジャパン(株)製)が挙げられる。
【0046】
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
より優れた発色性、耐光性及び目詰まり回復性を有することから、界面活性剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0048】
1.6.防腐剤
インク組成物は、防腐剤を含んでもよい。防腐剤は、防カビ剤としても機能する。防腐剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
そのような防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2-ジベンゾイソチアゾリン-3-オン、及び4-クロロ-3-メチルフェノール(バイエル社のプリベントールCMK等)が挙げられる。防腐剤としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、プロキセル(登録商標)シリーズの、CRL、BND、GXL、XL-2、及びTN(以上、商品名、ロンザジャパン社);プリベントール(登録商標)CMK(バイエル社)が挙げられる。
【0050】
より優れた発色性、耐光性及び目詰まり回復性を有することから、防腐剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0051】
1.7.その他の成分
インク組成物には、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、防錆剤、腐食防止剤、及びキレート化剤等の、インク組成物において通常用いることができる種々の添加剤を含んでもよい。添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
より優れた発色性、耐光性及び目詰まり回復性を有することから、添加剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、合計で0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0053】
2.インク組成物の製造方法
インク組成物は、上述の成分を、任意の順序で混合し、必要に応じてろ過などを実施して不純物、異物などを除去することで調製することができる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネティックスターラーなどの撹拌装置を備えた容器に、各成分を順次添加して撹拌、及び混合する方法が用いられる。ろ過方法としては、遠心ろ過、フィルターろ過などが挙げられる。
【0054】
3.記録方法
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、インクジェットインク組成物を用いて行われる。具体的には、インクジェット記録方法は、インク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程を含む。
次に、記録媒体、記録方法で用い得るインクジェット記録装置、及び工程について説明する。
【0055】
3.1.記録媒体
記録媒体としては、特に限定されず、液体を吸収する記録面を有するものであっても、液体を吸収する記録面を有しないものであってもよい。そのような記録媒体としては、例えば、紙、フィルム、布帛、金属、ガラス、及び高分子が挙げられる。本発明による効果をより有効かつ確実に奏する観点から、記録媒体は布帛であると好ましい。記録媒体が布帛である場合、インクジェット記録方法は、インクジェットによる捺染方法となる。
【0056】
布帛の原糸としては、例えば、綿、麻、羊毛、及び絹等の天然繊維;ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維;ポリ乳酸等の生分解性繊維などが挙げられ、これらの混紡繊維であってもよい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、及び不織布等いずれの形態にしたものでもよいし、混織等を施したものでもよい。より優れた発色性が得られることから、布帛の原糸としては、綿及び絹であることが好ましく、絹であることがより好ましい。
【0057】
3.2.インクジェット記録装置
インクジェット記録装置は、シリアル型及びライン型のいずれでも使用することができる。これらの型のインクジェット記録装置には、インクジェットヘッドが搭載されている。このインクジェット記録装置は、記録媒体とインクジェットヘッドとの相対的な位置関係を変化させながら、インクジェットヘッドのノズル孔からインク組成物の液滴を所定のタイミングでかつ所定の体積(質量)で吐出させる。吐出させたインク組成物を記録媒体に付着させることにより、所定の画像を形成することができる。
【0058】
インクジェット記録装置には、例えば、乾燥ユニット、ロールユニット、巻き取り装置などの公知の構成を任意に採用することができる。インクジェット記録装置は、例えば、記録媒体を搬送する搬送手段、インク組成物を用いて画像を記録する画像層形成手段、乾燥手段、記録面の加熱及び送風を行なう全体乾燥手段等を有してもよい。
【0059】
搬送手段は、例えば、ローラーによって構成される。その場合、複数のローラーを有してもよい。別の手段としては、記録媒体をゴムベルト等に密着及び吸着させて搬送する方法が挙げられる。搬送手段は、記録媒体が搬送できる限り、設けられる位置や個数は任意に採用できる。搬送手段は、ロール機構、トレイ、及び各種のプラテンなどを備えてもよい。
【0060】
画像層形成手段は、記録媒体の記録面に対して、インク組成物を吐出して画像層を記録する。画像層形成手段は、ノズルを備えたインクジェットヘッドを備えており、所定の組成物毎にノズル列が割り当てられる。
【0061】
乾燥手段は、記録面に形成される画像層の加熱、乾燥及び/又は記録媒体上の揮発成分の除去のために使用できる。乾燥手段は、付着工程のタイミングと、記録媒体の搬送経路等を考慮していずれの位置に設けてもよい。画像層乾燥手段としては、例えば、プラテン加熱等により記録媒体に熱を加える方法、記録媒体上の画像に風を吹きつける方法、さらにそれらを組み合わせる方法が挙げられる。具体的には、これらの方法に用いられる手段としては、例えば、強制空気加熱、輻射加熱、電導加熱、高周波乾燥、及びマイクロ波乾燥が挙げられる。
【0062】
3.3.記録方法の各工程
インク組成物を記録媒体へ付着させる工程は、インクジェット記録装置を用いて行うことができる。すなわち、インク組成物を所定のノズルから吐出できるように、インクジェットヘッドに充填し、その状態で所定のタイミングで記録媒体に対して吐出させることで、インク組成物を記録媒体へ付着させることができる。
【0063】
記録方法には、適宜、記録媒体を加熱する工程を備えてもよい。加熱工程は、例えば、インクジェット記録装置を用いる場合、上記の乾燥手段を用いることができる。インクジェット記録装置に限らず、適宜、その他の乾燥手段を用いてもよい。記録方法に加熱工程を含むことで、画像の滲みが抑制され、画像をより効率的に定着させることができる。
【0064】
記録方法には、他の工程を有していてもよい。このような工程としては、例えば、他の組成物を付与する工程、及び洗浄工程が挙げられる。
【0065】
記録方法では、本実施形態に係るインク組成物を用いるため、良好な目詰まり回復性を有し、優れた発色性及び耐光性を有する画像を記録することができる。
【実施例0066】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0067】
<インク組成物の材料>
インク組成物に含まれる各成分の詳細は下記の通りである。
【0068】
(色材)
RR31:C.I. Reactive Red 31(モノクロロトリアジン基及びアゾ結合を有する赤色色材、市販品)
AR289:C.I. Acid Red 289(モノクロロトリアジン基及びアゾ結合を有する赤色色材に該当しない色材、市販品)
【0069】
(式(1)で表される化合物)
A-1:式(1)で表され、式(1)中の全てのXがHである化合物
【0070】
(式(2)で表される化合物)
A-2:式(2)で表され、式(2)中のすべてのXがHである化合物
C.I. Reactive Red 31(市販品)の15質量%水溶液をpH<2の酸性条件下、90~95℃で、3~4時間反応させ、濾過により捕集し、再結晶法により、A-1及びA-2をそれぞれ得た。
【0071】
(式(1)及び式(2)に該当しない化合物)
RR245:C.I. Reactive Red 245(市販品)
【0072】
(水溶性有機溶剤(浸透剤))
2-ピロリドン
N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン
ε-カプロラクタム
ジメチルホルムアミド
トリエチレングリコールモノブチルエーテル
【0073】
(界面活性剤)
オルフィン(登録商標)PD-002W(商品名、日信化学工業(株))
【0074】
(防腐剤)
プロキセル(登録商標)XL-2(商品名、ロンザジャパン社)
【0075】
<インクジェットインク組成物の調製>
(実施例1~17、及び比較例1~3)
図1及び
図2に記載の組成になるように、混合物用タンクに各成分を入れ、マグネティックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過することで、実施例及び比較例に係るインクジェットインク組成物を得た。
図1及び
図2中の数値は、質量%を示す。水はイオン交換水を用い、各インクの質量がそれぞれ100質量%となるように添加した。
【0076】
[発色性]
以下のようにして、インクジェット記録装置(PX-930G(セイコーエプソン株式会社製商品名))を用いて布帛に印捺し、発色性を評価した。
上記記録装置用のインクカートリッジに、各実施例又は比較例のインク組成物を充填し、720dpi×720dpiの解像度で布帛(Cotton、Silk)に印捺した。発色性は、測色機(商品名:Spectrolino、X-RITE社製)で、画像のOD値を測定することで評価した。具体的には、測定されたM(マゼンタ)成分のOD値に基づいて、下記評価基準に従って画像の発色性を評価した。C評価以上の場合、良好な発色性が得られていると言える。
〔評価基準〕
A:OD値が0.75以上であった。
B:OD値が0.65以上0.75未満であった。
C:OD値が0.50以上0.65未満であった。
D:OD値が0.50未満であった。
【0077】
[吐出安定性]
以下のようにして、インクジェット記録装置(PX-H6000(セイコーエプソン株式会社製商品名))を用いて布帛に印捺し、吐出安定性を評価した。
上記記録装置用のインクカートリッジに、各実施例又は比較例のインク組成物を充填し、インクジェット記録装置における全てのノズルが抜け及び曲りがなく、正常吐出していることを確認した。その後、連続吐出を続けてから10時間後の吐出安定性を、下記評価基準に従って評価した。C評価以上の場合、実使用に耐える吐出安定性が得られていると言える。
〔評価基準〕
A:全ノズルが正常に吐出していた。
B:全ノズル数に対して、0%超10%未満のノズルで抜け又は曲りが発生していた。
C:全ノズル数に対して、10%以上20%未満のノズルで抜け又は曲りが発生していた。
D:全ノズル数に対して、20%以上のノズルで抜け又は曲りが発生していた。
【0078】
[洗濯堅牢性]
以下のようにして、インクジェット記録装置(PX-H6000(セイコーエプソン株式会社製商品名))を用いて布帛に印捺し、洗濯堅牢性を評価した。
上記記録装置用のインクカートリッジの各色室に、各実施例又は比較例のインク組成物を注入した後、これを記録装置に装着してインクを充填した。その後、布帛にベタ印刷を行って各色の捺染物を用意した。なお、布帛には、絹、羊毛、及びナイロンとウレタンとの混紡の3種類を使用した。
次いで、スチーマー(マチス社製;スチーマーDHe型)を用いて102℃の高加湿条件下で30分間スチーミング処理を行い得られた捺染物について、ISO 105-C10:2006に準じた方法で洗濯堅牢性を評価した。B評価以上の場合、良好な堅牢性が得られていると言える。
評価基準は、以下の通りである。
〔評価基準〕
A:洗濯堅牢性が4級以上であった。
B:洗濯堅牢性が3級以上、4級未満であった。
C:洗濯堅牢性が2級以上、3級未満であった。
D:洗濯堅牢性が2級未満であった。
【0079】
図1及び
図2に示すように、モノクロロトリアジン基及びアゾ結合を有する赤色色材と、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有するインク組成物を用いた実施例は、発色性及び洗濯堅牢性の評価に優れていた。そのため、本発明のインク組成物は、得られる印捺物の発色性及び堅牢性に優れることがわかった。一方、式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含まない比較例1及び2は、堅牢性に劣っていた。中でも、式(1)及び式(2)に該当しない化合物を含む比較例2は、吐出安定性にもやや劣っていた。モノクロロトリアジン基及びアゾ結合を有する赤色色材に該当しない色材を用いた比較例3は、発色性がやや劣り、吐出安定性及び洗濯堅牢性に劣っていた。
【0080】
また、式(V-1)で表される条件を満たす実施例1及び2、並びに4及び5は、式(V-1)で表される条件を満たさない実施例3及び7と比較して、発色性及び吐出安定性により優れていた。
水溶性有機溶剤がラクタム系化合物を含む実施例13は、水溶性有機溶剤がラクタム系化合物を含まない実施例17と比較して、発色性、吐出安定性及び洗濯堅牢性により優れていた。