(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168503
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/146 20140101AFI20241128BHJP
【FI】
B23K26/146
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085234
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊野 智允
(72)【発明者】
【氏名】氷見 太
(72)【発明者】
【氏名】湯谷 太一
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168EA17
4E168FA05
4E168FB01
4E168FC05
(57)【要約】
【課題】レーザ光による加工作業の効率を向上させることを目的とする。
【解決手段】レーザ加工装置は、レーザ光を照射するレーザ加工ヘッド22と、レーザ加工ヘッド22の先部から延びると共に、レーザ光を通過させて照射するレーザノズル40と、レーザノズル40の外周面を包囲するジェットノズル本体部81を含むと共に、レーザ光の照射方向とは反対方向から見て、レーザノズル40とジェットノズル本体部81との間に形成される隙間から液体が噴射されるウォータジェットノズル80と、を備える。液体がレーザ光の回りを取り囲むように噴射されるので、ウォータジェットノズル80を加工対象物に向けたまま、どの方向に動かしても、レーザ光の照射地点を液体が追従するようになり、レーザ光による溶融物が液体によって吹き飛ばされ、加工作業の効率が向上する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射するレーザ加工ヘッドと、前記レーザ加工ヘッドの先部から延びると共に、レーザ光を通過させて照射するレーザノズルと、前記レーザノズルの外周面を包囲するジェットノズル本体部を含むと共に、レーザ光の照射方向とは反対方向から見て、前記レーザノズルと前記ジェットノズル本体部との間に形成される隙間から液体が噴射されるウォータジェットノズルと、を備える、レーザ加工装置。
【請求項2】
前記レーザノズルの先端は、前記ジェットノズル本体部の先端よりも突出している、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記レーザノズルと前記ジェットノズル本体部とは、相対的な位置をレーザ光の照射方向に調整可能である、請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記ジェットノズル本体部からレーザ光の照射方向へ延長すると共に、レーザ光の照射方向とは反対方向から見て、前記ウォータジェットノズルの先端を包囲する延長管部を、更に備える、請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記レーザノズルの外周面は、先端に向かうにつれて細くなる円錐台状の傾斜面を有する、請求項1又は2記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記レーザ加工ヘッドは、前記レーザノズルの内部空間に通じる、アシストガス用のガス経路を有する、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記延長管部は、前記レーザノズルの先端よりも延長する、請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記ウォータジェットノズルは、前記延長管部を更に含み、前記ジェットノズル本体部と前記延長管部とを一体にしてある、請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
液体を前記ウォータジェットノズルから間欠的に噴射させる水制御装置を、更に備える、請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記レーザノズルは、銅で構成される、請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を照射するレーザノズルと、液体を噴射するウォータジェットノズルとを備える、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を照射するレーザヘッドと、液体を噴射するウォータジェットヘッドとを備える複合加工装置が知られている(特許4478251号公報)。前記複合装置においては、レーザヘッドとウォータジェットヘッドとは別々の位置に間隔をあけて配置される。レーザヘッドの照射口とウォータジェットヘッドの噴射口とは、加工対象物に向けられる。液体の噴射方向は、レーザ光の照射方向に対して傾斜している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した複合加工装置を用いて加工対象物を加工する場合、レーザ光と液体が加工対象物の加工点に達するように、作業者は、レーザヘッドの向きとウォータジェットヘッドの向きを別々に操作する。
【0004】
しかも、レーザ光と液体を加工点に厳密に一致させるようにすると、加工対象物が液体で冷たくなりすぎて、加工作業の効率が低下する。加工作業の効率を向上させるには、レーザ光の照射位置と液体の噴射位置とは僅かに離れるように、レーザヘッドの向きとウォータジェットヘッドの向きが調整される。この場合、レーザ光の照射地点を液体が追いかけるように、レーザヘッドとウォータジェットヘッドとを動かさなければならず、加工対象物に対する加工方向が制限され、加工作業の効率が悪くなる。
【0005】
本発明は、レーザ光による加工作業の効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
代表的な本発明は、レーザ加工装置であって、レーザ光を照射するレーザ加工ヘッドと、レーザ加工ヘッドの先部から延びると共に、レーザ光を通過させて照射するレーザノズルと、レーザノズルの外周面を包囲するジェットノズル本体部を含むと共に、レーザ光の照射方向とは反対方向から見て、レーザノズルとジェットノズル本体部との間に形成される隙間から液体が噴射されるウォータジェットノズルと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明のレーザ加工装置によれば、レーザ光による加工作業の効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第一実施形態のレーザ加工装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように本発明の第一実施形態のレーザ加工装置10は、レーザ発振器20と、光路21と、レーザ加工ヘッド22と、レーザノズル40と、アシストガス供給源50と、ガス管51と、エアコントローラ52と、液体供給源70と、液体管71と、高圧ポンプ72と、逆止弁73と、ウォータジェットノズル80と、整流子90とを備える。
【0010】
以後、レーザ光の進行方向を基準として、「上流側」、「下流側」、「先端」という用語が使用される。「先端」は、物体のうち、レーザ光が通過する通路において、下流側の端のことである。「レーザ光の進行方向」は、一直線に進む方向とは限らず、湾曲したり、屈曲したりしながら進む方向も含む。レーザ光の照射方向とは、一直線に進む方向である。
【0011】
レーザ発振器20は、レーザ光を発生し、放出する。レーザ光は、光路21を通過してレーザ加工ヘッド22に向かう。光路21は、例えばファイバーケーブルである。
【0012】
レーザ加工ヘッド22は、レーザ加工ヘッド本体部30と、ガスヘッド部60とを含む。レーザ加工ヘッド本体部30は、筐体31と、集光レンズ32と、ミラー33と、複数の保護レンズ34を含む。筐体31の内部にはレーザ光を通過させる第1の通路31aが形成される。本実施形態では第1の通路31aは、屈折している。本実施形態では保護レンズ34の数は、2つである。保護レンズ34(34a)、集光レンズ32、ミラー33、保護レンズ34(34b)は、この記載された順番で、レーザ光の進行方向に間隔をあけて、第1の通路31aに対して配置される。集光レンズ32と2枚の保護レンズ34は、筐体31に対し第1の通路31aをレーザ光の進行方向に遮る状態で固定される。2つの保護レンズ34を区別する場合、上流側の保護レンズ34a、下流側の保護レンズ34bと称する。レーザ光は、上流側の保護レンズ34aと集光レンズ32を通過した後、ミラー33で反射され、下流側の保護レンズ34bを通過する。なお、レーザ加工ヘッド本体部30は、ミラー33を含まない場合もある。この場合、レーザ加工ヘッド本体部30は、筐体31と、集光レンズ32と、複数の保護レンズ34を含む。なお、ミラー33の数は、複数であっても良い。保護レンズ34の数も1つ、又は3つ以上であっても良い。
【0013】
ガスヘッド部60は、筐体31の先端に着脱可能に固定される。ガスヘッド部60は筒状である。本実施形態では、ガスヘッド部60と筐体31とは、別の部品のボルト(図示せず)で固定される。ガスヘッド部60の内部空間は、第2の通路60aである。第2の通路60aは、レーザ光を通過させるもので、第1の通路31aに通じる。ガスヘッド部60の内部にはガス経路60bが形成される。ガス経路60bは、アシストガスを第2の通路60aに供給するもので、ガスヘッド部60の外周面から第2の通路60aに達するまでの範囲に形成される。
【0014】
アシストガス供給源50とエアコントローラ52とガスヘッド部60とは、ガス管51で接続される。アシストガス供給源50の一例は、アシストガスを収容するガスタンクである。アシストガスは、例えばアルゴンガスや窒素ガスや空気であり、下流側の保護レンズ34bを汚れ難くする。エアコントローラ52は、アシストガスの圧力を制御する。アシストガスは、アシストガス供給源50からエアコントローラ52を通過して、ガスヘッド部60に供給される。
【0015】
レーザノズル40は、レーザノズル本体部41と、鍔部42とを含む。レーザノズル本体部41と鍔部42とは、一体である。レーザノズル本体部41は筒状である。レーザノズル本体部41の内部空間は、第3の通路41aである。第3の通路41aは、レーザ光を通過させるもので、第2の通路60aに通じる。第3の通路41aの口径は、第2の通路60aの口径よりも小さい。第3の通路41aは、円筒形状である。また、レーザノズル40の材料としては、銅である。ウォータジェットノズル80内にレーザノズル40を配置する構成で、より小型のレーザ加工装置10とするためには、レーザノズル40とウォータジェットノズル80を小型化する必要があり、レーザノズル40の通路の径も小さくなる。その場合、レーザノズル40の内部を通過するレーザ光によって、レーザノズル40が熱を帯び易くなる。そこで、レーザノズル40の材料に、熱伝導性の高い材料として、銅を採用することによって、レーザノズル40の劣化を抑制することができる。
【0016】
鍔部42は、レーザノズル本体部41の外周面から半径方向の外側へ突出する。鍔部42は、レーザノズル本体部41の外周面の周方向の全長に亘って形成される。鍔部42は、レーザノズル本体部41の全長の中間部に形成される。全長とは、第3の通路41aの全長である。詳しくは、鍔部42は、レーザノズル本体部41の上流側の端に対して下流側に配置され、レーザノズル本体部41の全長の中間点よりも上流側に配置される。レーザノズル本体部41の上流側の端部は、鍔部42に対して上流側に突出する。レーザノズル本体部41とガスヘッド部60との固定は、後述する。
【0017】
ウォータジェットノズル80は、ジェットノズル本体部81と、延長管部82と、鍔部83とを含む。ジェットノズル本体部81と延長管部82と鍔部83は、一体である。
【0018】
ジェットノズル本体部81は、筒状である。ジェットノズル本体部81は、レーザノズル40の外周面を包囲すると共に、レーザ光の照射方向へ延長する。ジェットノズル本体部81の内部にはレーザノズル40と整流子90とが収容される。ジェットノズル本体部81の内部空間は、上流穴81iと、下流穴81kとによって構成される。
【0019】
上流穴81iは、ジェットノズル本体部81の上流側の端面に形成される。上流穴81iの内面は、円筒面81pと、環状面81qとを有する。円筒面81pは、ジェットノズル本体部81の上流側の端面からレーザ光の照射方向へ延びる面である。環状面81qは、上流穴81iの下流端を形成する。環状面81qは、レーザ光の照射方向から見て、環状である。環状面81qの内径は、円筒面81pの下流端の内径よりも小さい。上流穴81iの下流側の端部には整流子90が収容される。整流子90は、環状面81qによって下流方向への移動を阻止され、位置決めされる。
【0020】
上流穴81iの内側において、レーザノズル本体部41の外周面とジェットノズル本体部81の内周面との間には空間部80aが形成される。空間部80aは水排出路80aである。レーザ光の照射方向とは反対方向から見て、水排出路80aの下流端は隙間81hである。隙間81hは環状であり、液体の噴射口になる(
図2参照)。液体の噴射口は、言い換えればウォータジェットノズル80の噴射口である。ウォータジェットノズル80には水中継路80bが形成される。水中継路80bは、水排出路80aの上流側に通じる。水中継路80bは鍔部83の外周面から水排出路80aに達するまでの範囲に形成される。
【0021】
下流穴81kは、ジェットノズル本体部81の下流側の端面に形成される。下流穴81kの内径は下流へ向かうにつれて小さくなる。下流穴81kの表面は、先端に向かうにつれて細くなる円錐台状の傾斜面である。このようにジェットノズル本体部81の内周面の先部を下流側に向かうにつれて縮径する構造とすることで、液体供給源70から水中経路80b、上流孔81iを経て下流孔81kに供給される高圧水を、下流孔81kの内部で滑らかに移動させることができる。
【0022】
液体供給源70と高圧ポンプ72と逆止弁73とウォータジェットノズル80とは、液体管71としての水道管で接続される。液体供給源70の一例は、建物に設置された水道管である。高圧水は、液体供給源70から高圧ポンプ72、逆止弁73を経て、水中継路80bに間欠的に供給され、水排出路80aを経て隙間81hから噴射される。本実施形態では高圧ポンプ72は、高圧水を間欠的に送り出す水制御装置である。水制御装置は、高圧ポンプ72だけに限らず、他の制御装置、例えばオンオフバルブであっても良い。逆止弁73は、ウォータジェットノズル80側から高圧ポンプ72側へ水が逆流しないようにする。また、逆止弁73を配置することによって、ウォータジェットノズル80内に供給される(一時的に内部で貯留される)高圧水内に余計なエアが混入することを防止することができると共に、噴射する高圧水の噴射圧力の乱れを抑制することができる。
【0023】
さらに、高圧水を間欠的に送り出すために、高圧ポンプ72から供給される高圧水の量やタイミングも適宜、変更できる。例えば、高圧ポンプ72がカム式である場合、カムの回転数に応じて、高圧水の量やタイミングを調整することもできる。また、高圧ポンプ72が電磁弁式である場合、電磁力の大きさやタイミングに応じて、高圧水の量やタイミングを調整することもできる。
【0024】
鍔部83は、ジェットノズル本体部81の外周面から半径方向の外側へ突出する。鍔部83は、ジェットノズル本体部81の外周面の周方向の全長に亘って形成される。鍔部83は、ガスヘッド部60の先端に着脱可能に固定される。本実施形態では、鍔部83とガスヘッド部60とは別の部品のボルト(図示せず)によって固定される。その結果、ウォータジェットノズル80は、レーザ加工ヘッド22の先端に着脱可能に固定される。本実施形態では、ウォータジェットノズル80とガスヘッド部60とは、相対的な位置をレーザ光の照射方向へ不変とする。
【0025】
レーザノズル40は、ガスヘッド部60の先端に着脱可能に固定される。ガスヘッド部60とレーザノズル40との固定にはねじ対偶65が用いられる。レーザノズル本体部41の上流側の端部の外周面にはねじ対偶65の雄ネジ46が形成される。ガスヘッド部60の下流側の端部の内周面にはねじ対偶65の雌ネジ66が形成される。本実施形態では、ガスヘッド部60の先端と鍔部42との間にワッシャ(調整部)67が挟まれる。ワッシャ67の有無やワッシャ67の厚みによって、レーザノズル40とレーザ加工ヘッド22との相対的な位置は、変わる。前記したように、レーザ加工ヘッド22とウォータジェットノズル80とは、相対的な位置をレーザ光の照射方向へ不変とする。その結果、レーザノズル40とジェットノズル本体部81との相対的な位置は、ワッシャ67の有無やワッシャ67の厚みによって、調整可能となる。なお、本実施形態においては、ワッシャ67として表現しているが、レーザノズル40とジェットノズル本体部81との相対的な位置を調整可能な構造であればよく、形状、材質等は適宜、設定できる。例えば、ワッシャ67の代わりに,空気圧シリンダに代表される流体圧シリンダを用いることで、レーザノズル40とジェットノズル本体部81との相対的な位置を調整することができる。
【0026】
また、レーザ加工ヘッド22(ガスケット部60)とウォータジェットノズル80とは本実施形態においては、直に固定されるが、レーザ加工ヘッド22とウォータジェットノズル80との間に別のワッシャ(調整部)を配置することによって、レーザ加工ヘッド22とウォータジェットノズル80とはワッシャ(調整部)を介して固定されても良い。その結果、レーザノズル40とジェットノズル本体部81との相対的な位置は、ワッシャの有無やワッシャの厚みによって調整可能となる。
【0027】
ウォータジェットノズル80がレーザノズル40に対してレーザ光の照射方向とレーザ光の照射方向とは反対方向に抜き差し可能な構成であること、並びにレーザノズル40がレーザ加工ヘッド22に対してレーザ光の照射方向とレーザ光の照射方向とは反対方向に抜き差し可能な構成であることを、上述した調整は利用している。
【0028】
また、レーザノズル40とジェットノズル本体部81とは相対的な位置を、レーザ光の照射方向に調整可能な構造だけでなく、レーザ光の照射方向とは反対方向から見て、レーザノズル40の半径方向に調整可能な構造であっても良い。
【0029】
図2に示すように、レーザノズル本体部41の先端がジェットノズル本体部81の先端よりも下流側に突出している。ジェットノズル本体部81に対するレーザノズル本体部41の突出長さ41Lは、調整可能である。言い換えれば、突出長さ41Lは、ねじ対偶65のねじ込み量によって、調整可能となる。ガスヘッド部60と鍔部83との間にシール部(図示せず)が挟まれることによっても、突出長さ41Lは、調整可能となる。
また、レーザノズル本体部41の外周面は、先端に向かうにつれて細くなる円錐台状の傾斜面としてある。円錐台状の傾斜面であるので、レーザノズル本体部41の外径は先端に向かうにつれて縮径する。レーザノズル本体部41が先端に向かうにつれて縮径していることで、レーザノズル40をウォータジェットノズル80に対して下流側に移動させて調整するときには、ウォータジェットノズル80の噴射口(隙間81h)の口径を小さく絞ることができる。逆に、レーザノズル40をウォータジェットノズル80に対して上流側に移動させて調整するときには、ウォータジェットノズル80の噴射口の口径を大きく広げることができる。
【0030】
ジェットノズル本体部81の下流側の端面81aは、照射方向を向く面であり、環状である。下流側の端面81aは、半径方向の内側部81bと、半径方向の中間部81cと、半径方向の外側部81dとを有する。
【0031】
内側部81bは、中間部81cに対してレーザ光の照射方向に突出する。言い換えれば、内側部81bは、レーザ光の照射方向へ突出する凸部81bである。内側部81bの先端は、ジェットノズル本体部81の先端である。中間部81cは、レーザ光の照射方向とは反対方向へ凹む凹部81cである。外側部81dは、延長管部82に連続している。したがって、外側部81dは、目視不能である。なお、
図2で示すような凹部81cの凹む深さは適宜変更できる。
【0032】
延長管部82は、レーザ光の照射方向へ延長する。延長管部82は、筒状である。レーザ光の照射方向とは反対方向から見て、延長管部82の内部の中央部には第4の通路82aが形成される。第4の通路82aは第3の通路41aに通じる。第2の通路60a、第3の通路41a、第4の通路82aは、第1の通路31aから照射されたレーザ光の照射方向に一直線に配置される。レーザ光の照射方向とは反対方向から見て、第2の通路60a、第3の通路41a、第4の通路82aは、各々の中心を一致させてある。
なお、延長管部82の内面は、本実施形態では円筒面である。また、延長管部82の内径は、延長管部82のうちレーザ光の照射方向に延びる全長のどの位置においても同じである。しかし、延長管部82の内面は、上流側または下流側へ向かって太くなる円錐台状の傾斜面(延長管部82の内径が上流側または下流側へ向かって大きくなる形状)等の他の形状であってもよい。また、延長管部82の内面をコーティング層によって被覆することによって、延長管部82の摩耗防止等を図ることもできる。また、延長管部82の内径とレーザノズル本体部41の内径との比率は、図示の例に限らず、適宜変更できる。
【0033】
図3に示すように整流子90は、レーザ光の照射方向から見て、レーザノズル本体部41を包囲するリング91と、リング91を中心にしてリング91の外周面から半径方向の外側へ(放射状)に延びる複数の整流板92とを備える。本実施形態では、整流板92の枚数は10枚であるが、1枚や、10枚以外の複数枚であっても良い。複数の整流板92は、リング91の外周方向に間隔をあけて配置される。液体としての高圧水は、隣り合う整流板92の間を通過し、整流される。なお、整流子90が無くても、レーザ加工装置10は、機能する。
【0034】
第一実施形態のレーザ加工装置10によって加工対象物を加工する場合、レーザ発振器20、エアコントローラ52、高圧ポンプ72がそれぞれ駆動される。レーザ光は、レーザ発振器20から放出され、第1の通路31aを進行し、第1の保護レンズ34、集光レンズ32を透過し、ミラー33で反射してから第2の保護レンズ34を透過する。その後、レーザ光は直進し、第2の通路60a、第3の通路41a、第4の通路82aを順番に通過し、加工対象物に照射される。アシストガスは、アシストガス供給源50から供給され、第2の通路60a、第3の通路41a、第4の通路82aを順番に通過し、外部へ噴射される。高圧水は、液体供給源70から供給され、水中継路80b、水排出路80a、隙間81h、第4の通路82aを順番に通過し、外部へ噴射される。高圧水の噴射によって、延長管部82の内部空間に気流が発生する。気流は、延長管部82の内面に沿って延長管部82の下流端から凹部81cへ向かい、隙間81hから噴射された高圧水の外周面に沿って高圧水の噴射方向へ向かう。気流は、高圧水の直進性を高める。
【0035】
レーザ光は、加工対象物を溶かし、溶融物を発生させる。高圧水は、溶融物を吹き飛ばす。溶融物を効率良く除去するには、溶融物に高圧水を直接噴射することが望ましい。本実施形態のレーザ加工装置10を用いれば、理論上、レーザ光は、加工対象物の一点に照射され、高圧水は、レーザ光の照射地点を全周から取り囲むように噴射される。ウォータジェットノズル80を加工対象物に向けたまま、照射地点からどの方向に動かしても、照射地点に追従するように高圧水が噴射されることになる。その結果、本実施形態のレーザ加工装置10では、加工対象物に対する加工方向が自由であり、加工対象物を任意の形に効率よく切断できる。つまり、加工作業の効率が向上する。
【0036】
本実施形態では、ガス経路60bを有するので、レーザノズル40からはアシストガスも噴射される。レーザ光はアシストガスの中を進むことになり、高圧水がレーザ光に当たりに難い。その結果、レーザ光の効果が十分に発揮される。
【0037】
本実施形態では、レーザノズル40の先端がジェットノズル本体部81の先端よりも突出しているので、例えばジェットノズル本体部81の先端がレーザノズル40の先端よりも突出しているものに比べて、高圧水がレーザ光に当たり難い。その結果、レーザ光の効果が十分に発揮される。
【0038】
本実施形態では、レーザ加工装置10が延長管部82を備えるので、例えば延長管部82の無いレーザ加工装置に比べて、高圧水の直進性が向上する。その結果、高圧水の効果が十分に発揮される。
【0039】
本実施形態では、延長管部82の先端がレーザノズル40の先端よりもレーザ光の進行方向に突出するので、例えばレーザノズル40の先端が延長管部82の先端よりもレーザ光の進行方向に突出するレーザ加工装置に比べて、延長管部82の内部に気流が発生し易い。その結果、高圧水の直進性が向上し、高圧水の効果が十分に発揮される。
【0040】
本実施形態では、レーザ光の照射方向において、レーザノズル40とジェットノズル本体部81との相対的な位置が調整可能なので、レーザ光の効果と高圧水の効果が調整可能である。
【0041】
本実施形態では、ウォータジェットノズル80がジェットノズル本体部81と延長管部82とを一体に備えているので、レーザノズル40とジェットノズル本体部81との相対的な位置を調整しても、延長管部82による気流発生効果を保持できる。
【0042】
本実施形態では、レーザ加工装置10が水制御装置としての高圧ポンプ72を備えるので、高圧水をウォータジェットノズル80から間欠的に噴射させることによって、加工対象物が冷却しすぎるのを防止できる。また、間欠的に噴射させることによって、噴射する量を最小限に留めることもできるので、レーザ加工装置10と加工対象物の間に過度に水が溜まることや水蒸気状になって視界を妨げることを防止できる。
【0043】
その他、本実施形態では、レーザ加工装置10は、横型であったが、横型に限らず、縦型であってもよい。横型のレーザ加工装置10とは、レーザ光を通過させる第1の通路31aが屈折しており、第1の通路31aの形状に合わせて、レーザ加工ヘッド22が屈折する形である。縦型のレーザ加工装置とは、第1の通路31aが真っ直ぐであり、レーザ加工ヘッドが真っ直ぐな形である。横型のレーザ加工装置10の場合には、高圧水が水平に噴射するようにレーザ加工ヘッド22を保持しても、高圧水が重力方向の力によって、ウォータジェットノズル80内において下方に流れやすい(溜まりやすい)。しかし、縦型のレーザ加工装置10の場合には、高圧水が真下に噴射するようにレーザ加工ヘッドを保持すれば、高圧水の噴射方向と重力方向の力が同一方向になるので、ウォータジェットノズル80内における高圧水の乱れが小さくなる。
【0044】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の範囲の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
10 レーザ加工装置
22 レーザ加工ヘッド
40 レーザノズル
67 ワッシャ(調整部)
72 高圧ポンプ(水制御装置)
80 ウォータジェットノズル
81 ジェットノズル本体部
81h 隙間
82 延長管部