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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168504
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】放水装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/40 20060101AFI20241128BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20241128BHJP
   G08B 23/00 20060101ALI20241128BHJP
   A62C 31/28 20060101ALI20241128BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A62C37/40
G08B17/00 J
G08B23/00 530E
A62C31/28
A62C3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085235
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 孝治
(72)【発明者】
【氏名】岩間 三典
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 拓実
【テーマコード(参考)】
2E189
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
2E189FB06
2E189GA02
5C087DD04
5C087FF04
5C087GG63
5G405AB02
5G405AB05
5G405CA29
5G405CA31
(57)【要約】
【課題】二つの軸方向に回動するセンサを有する放水装置において、このセンサを用いて火源位置を特定する処理に要する時間を短縮する。
【解決手段】放水装置30は、センサ部33、放水ノズル34、旋回駆動部35、及び俯仰駆動部36を備える。センサ部33は、監視領域内の火源位置の特定に用いられる赤外線カメラ331及び赤外線センサ332を含む。放水ノズル34は、旋回軸を中心に旋回方向に回動し、火源位置に向けて、俯仰方向の範囲にわたって放水し得る。旋回駆動部35は、センサ部33を旋回軸を中心に放水ノズル34とともに旋回方向に回動させる。俯仰駆動部36は、俯仰軸を中心に放水ノズル34とは独立してセンサ部33を俯仰方向に回動させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域内の火源位置の特定に用いられるセンサを含むセンサ部と、
旋回軸を中心に旋回方向に回動し、前記火源位置に向けて、俯仰方向に延びる範囲に放水し得る放水ノズルとを備え、
前記センサ部は、前記旋回軸を中心に前記放水ノズルとともに前記旋回方向に回動し、俯仰軸を中心に前記放水ノズルとは独立して前記俯仰方向に回動する
放水装置。
【請求項2】
前記センサ部は、赤外線カメラと赤外線センサとを含み、
前記赤外線カメラと前記赤外線センサとが一つの筐体に収容される、
請求項1に記載の放水装置。
【請求項3】
前記赤外線カメラは、前記俯仰軸より上方に配置される、
請求項2に記載の放水装置。
【請求項4】
前記赤外線カメラと前記赤外線センサとは、前記俯仰方向に沿って並べて配置され、
前記赤外線カメラを用いて火源探索が行われた後、前記赤外線センサの正面が前記火源位置の方向を向くように前記赤外線カメラ及び前記赤外線センサを前記俯仰方向に回動させてから、前記赤外線センサを用いて炎検知が行われる、
請求項2に記載の放水装置。
【請求項5】
前記赤外線カメラ及び前記赤外線センサを収容する前記筐体は、前記赤外線カメラに対応する透過部と、前記赤外線センサに対応する透過部と、を有し、
前記赤外線カメラ及び前記赤外線センサを収容する前記筐体内には、前記赤外線カメラと前記赤外線センサの一方に対応する透過部を透過して他方に入射する光を遮蔽する部材が設けられる、
請求項2に記載の放水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消火液を放出するノズルを備える回転ヘッドを二つの軸方向に回動させる消火装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-5217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放水ノズルは重いため、例えば火源位置の特定に用いられるセンサを放水ノズルとともに俯仰方向に回動させると、回転速度が遅くなり、その結果、火源位置を特定する処理に時間がかかる。
【0005】
本開示は上記課題に鑑みて為されたのであり、二つの軸方向に回動するセンサを有する放水装置において、このセンサを用いた火源位置を特定する処理に要する時間を短縮する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本開示の第1の態様に係る放水装置は、センサ部と、放水ノズルとを備える。センサ部は、監視領域内の火源位置の特定に用いられるセンサを含む。放水ノズルは、旋回軸を中心に旋回方向に回動し、前記火源位置に向けて、俯仰方向に延びる範囲に放水し得る。センサ部は、前記旋回軸を中心に前記放水ノズルとともに前記旋回方向に回動し、俯仰軸を中心に前記放水ノズルとは独立して前記俯仰方向に回動する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、二つの軸方向に回動するセンサを有する放水装置において、このセンサを用いた火源位置を特定する処理に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る放水システムの構成の一例を示す図である。
図2】放水装置の構成の一例を示す図である。
図3】放水ノズルを正面に向けた状態の放水装置の正面図である。
図4】放水ノズルを正面に向けた状態の放水装置の平面図である。
図5】センサ部を正面に向けた状態の放水装置の正面図である。
図6】センサ部を正面に向けた状態の放水装置の側面図である。
図7】センサ部を正面に向けた状態の放水装置の平面図である。
図8】放水装置による放水の様子の一例を示す図である。
図9】センサ部の正面図である。
図10図9におけるAA´線に沿ったセンサ部の断面図である。
図11】放水装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(A:実施形態)
(A-1:放水システムの構成)
図1は、本実施形態に係る放水システム1の構成の一例を示す図である。放水システム1は、監視領域で火災が発生すると炎を検知し、火源に向けて放水する。図1に示されるように、放水システム1は、火災検知器10と、火災受信機15と、中央制御盤20と、現地制御盤25と、放水装置30とを備える。火災受信機15には、信号線を介して火災検知器10が接続されている。火災受信機15と中央制御盤20とは、信号線を介して接続されている。中央制御盤20と放水装置30とは、信号線を介してループ接続されている。同様に、現地制御盤25と放水装置30とは、信号線を介してループ接続されている。なお、図1では、火災検知器10、火災受信機15、現地制御盤25、及び放水装置30がそれぞれ一つずつ示されているが、これらの装置がそれぞれ複数設けられてもよい。
【0010】
火災検知器10は、監視領域で発生する火災を検知する。火災検知器10の例としては、煙を検知する煙感知器が挙げられる。火災検知器10は、火災を検知すると火災信号を火災受信機15に送信する。火災受信機15は、火災検知器10から火災信号を受信すると、火災移報信号を中央制御盤20に送信する。なお、火災受信機15に発信機が接続されている場合、発信機の押し釦の押下に応じて火災受信機15から中央制御盤20に火災移報信号が送信されてもよい。中央制御盤20は、放水システム1に含まれる各装置を制御する。中央制御盤20は、火災受信機15から火災移報信号を受信すると、放水装置30を起動して火源位置を特定させる。
【0011】
放水システム1に複数の放水装置30が含まれている場合、中央制御盤20は、何れかの放水装置30から火源の位置情報を受信すると、複数の放水装置30のうちで火源に最も近い放水装置30を選択し、選択した放水装置30からの放水を現地制御盤25に指示する。現地制御盤25は、中央制御盤20からの指示に従って、火源に最も近い放水装置30から火源位置に向けて放水を行わせる。放水装置30は、中央制御盤20からの制御に従って火源位置を特定し、火源の位置情報を中央制御盤20に送信する。また、放水装置30は、現地制御盤25の制御の下、火源位置に向けて放水を行う。
【0012】
(A-1-1:放水装置の電気的な構成)
図2は、放水装置30の電気的な構成の一例を示す図である。放水装置30は、制御部31と、通信部32と、センサ部33と、放水ノズル34と、旋回駆動部35と、俯仰駆動部36とを備える。放水装置30の各部は、バスにより接続されている。
【0013】
制御部31は、放水装置30の各部を制御する。制御部31は、メモリとプロセッサとにより構成される。メモリは、例えばRAMとEEPROMとを含み、放水装置30の機能を実現するためのプログラムを記憶する。プロセッサは、例えば一又は複数のCPUを含み、メモリに記憶されたプログラムを実行する。なお、制御部31の少なくとも一部は、センサ部33に含まれてもよい。
【0014】
本実施形態では、制御部31のプロセッサは、メモリに記憶されたプログラムに従って作動することにより、火源探索処理及び炎検知処理を実行する。火源探索処理は、監視領域の赤外線画像において高温となる部分を熱源、即ち火源として特定する処理である。炎検知処理は、火源探索処理にて特定された火源が炎であるか否かを判定する処理である。
【0015】
通信部32は、中央制御盤20及び現地制御盤25と各種の信号の送受信、即ち、中央制御盤20及び現地制御盤25との通信を行う。
【0016】
センサ部33は、旋回方向及び俯仰方向の二つの軸方向に回動し、火源を探査して火源位置を確定するための動作を行う。旋回方向は左右方向ともいい、略水平方向である。一方、俯仰方向は上下方向ともいい、略鉛直方向である。旋回方向と俯仰方向とは、互いに直交する。センサ部33は、赤外線カメラ331と、赤外線センサ332とを有する。
【0017】
赤外線カメラ331は、旋回方向及び俯仰方向に回動しながら赤外線画像を撮像する。火源探索処理では、赤外線カメラ331により撮影された監視領域の赤外線画像に基づいて火源が特定される。
【0018】
赤外線センサ332は、例えば焦電素子332dを有し、炎から発せられる光を感知することにより炎を検知する。赤外線センサ332は、二波長赤外線センサであってもよい。炎検知処理では、赤外線センサ332の出力に基づいて、火源探索処理にて特定された火源が炎であるか否かが判定される。
【0019】
放水ノズル34は、センサ部33により火源が確定されると、制御部31による制御の下、旋回方向に回動して火源の方向を向く。放水ノズル34は、制御部31による制御の下、現地制御盤25の制御に従って火源に向けて放水する。つまり、制御部31は、放水ノズル34の放水を制御する。
【0020】
旋回駆動部35は、制御部31による制御の下、センサ部33及び放水ノズル34を旋回軸AX1を中心に旋回方向に回動させる。旋回駆動部35は、例えばモータと、モータドライバと、エンコーダとを含む。モータは、モータドライバによる制御の下、センサ部33及び放水ノズル34を旋回方向に回動させる。つまり、本実施形態では、センサ部33と放水ノズル34とは共に旋回方向に回動する。モータドライバは、制御部31による制御の下、モータを制御する。エンコーダは、旋回角を検出する。制御部31は当該エンコーダにより検出された旋回角に応じてモータドライバを制御することにより、旋回駆動部35を制御する。
【0021】
俯仰駆動部36は、制御部31による制御の下、センサ部33を俯仰軸AX2を中心に俯仰方向に回動させる。つまり、本実施形態では、センサ部33は放水ノズル34とは独立して俯仰方向に回動する。俯仰駆動部36は、例えばモータと、モータドライバと、エンコーダとを含む。モータは、モータドライバによる制御の下、センサ部33を俯仰方向に回動させる。モータドライバは、制御部31による制御の下、モータを制御する。エンコーダは、俯仰角を検出する。制御部31は当該エンコーダにより検出された俯仰角に応じてモータドライバを制御することにより、俯仰駆動部36を制御する。
【0022】
(A-1-2:放水装置の構造)
図3図7は、放水装置30の外観の一例を示す図である。図3図7においてZ軸は鉛直方向の座標軸である。図3図7においてY軸及びX軸は、互いに直交し、且つ各々Z軸と直交する座標軸、即ち監視領域の底面と平行な座標軸である。本実施形態では、Y軸の方向は正面の方向と称される。図3は、放水ノズル34を正面に向けた状態の放水装置30の正面図である。図4は、放水ノズル34を正面に向けた状態の放水装置30の平面図である。放水ノズル34を正面に向けた状態とは、放水ノズル34がY軸に沿った状態のことをいう。図5は、センサ部33を正面に向けた状態の放水装置30の正面図である。図6は、センサ部33を正面に向けた状態の放水装置30の側面図である。図7は、センサ部33を正面に向けた状態の放水装置30の平面図である。センサ部33を正面に向けた状態とは、センサ部33のセンサ面の法線がY軸に沿った状態のことをいう。
【0023】
図3図5及び図6に示されるように、放水装置30の筐体内の空間は、鉛直方向に沿って収容空間SP3、収容空間SP2、及び収容空間SP1に区分けされる。収容空間SP1は、鉛直方向において収容空間SP2の上方に位置し、収容空間SP3は鉛直方向において収容空間SP2の下方に位置する。収容空間SP1には、制御部31、通信部32、及び旋回駆動部35が収容される。収容空間SP2には、センサ部33、放水ノズル34、及び俯仰駆動部36が収容される。なお、図4及び図7では、収容空間SP1の図示は省略されている。
【0024】
(A-1-3:放水ノズルの構造)
放水ノズル34は、旋回軸AX1を中心に、図4における旋回方向D1に回動する。本実施形態における旋回方向D1は、Z軸に直交する平面(以下、XY面)内の回転方向である。図3及び図4に示されるように、放水ノズル34は筒状の部材であり、放水ノズル34の側面には、俯仰方向に並ぶ噴出口341a、噴出口341b、噴出口341c、及び噴出口341dが配置される。
【0025】
図8は、放水装置30による放水の様子を示す図である。放水ノズル34の側面に並ぶ噴出口341a、噴出口341b、噴出口341c、及び噴出口341dの各々から放水されることによって、本実施形態では、図8に示されるように、俯仰方向D2に沿って帯状の放水が為される。図8では、放水ノズル34からの帯状の放水が点描のハッチングにより表されている。放水ノズル34から俯仰方向D2に沿って帯状の放水が為されるので、放水ノズル34を俯仰方向D2に回動させなくても、俯仰方向の範囲(すなわち、俯仰方向D2に延びる範囲)にわたる放水ができる。なお、放水ノズル34は、必ずしも帯状の放水を行わなくてもよい。例えば監視領域をY方向に沿って放水装置30から近い近傍範囲と放水装置30から遠い遠方範囲とに分割し、放水ノズル34は近傍範囲と遠方範囲のうち火源位置を含む方に放水してもよい。近傍範囲と遠方範囲とは一部が重複してもよい。この構成であっても、放水ノズル34は俯仰方向の範囲にわたって放水し得る。
【0026】
(A-1-4:センサ部の構造)
センサ部33は、放水ノズル34の旋回軸AX1に配置される。放水ノズル34とセンサ部33とは、旋回方向D1に沿って離れて配置される。放水ノズル34からの放水による水しぶきがセンサ部33にかかり難くするためである。本実施形態では、筒状の放水ノズル34の軸方向C1とセンサ部33の正面の方向C2とが120度の角度を為すように配置されるが、放水ノズル34とセンサ部33とが為す角度は120度には限定されない。センサ部33は、俯仰軸AX2を中心に、図6に示される俯仰方向D2に回動する。
【0027】
放水装置30は、制御部31、通信部32、センサ部33、放水ノズル34、旋回駆動部35、及び俯仰駆動部36の他に、調整部37a及び調整部37bと、基準板38とを備える。調整部37a及び調整部37bは、センサ部33の傾き、より正確にはセンサ部33を含む放水装置30の傾きの調整に用いられる。基準板38は、センサ部33の傾きの調整の際に用いる水平器の設置場所として用いられる。基準板38は、旋回軸AX1に固定されている。
【0028】
放水装置30の設置作業を行う作業員は、放水装置30を設置する際に、基準板38の上に水平器を置いて水平をとる。具体的には、作業員は、調整部37a及び調整部37bの各々に設けられた孔にボルトを入れて締め付ける又は緩めることにより、センサ部33が水平になるようにセンサ部33の水平方向の傾きを調整する。センサ部33の水平方向の傾きを調整する際に、作業員は、センサ部33を旋回方向D1に回動させ、複数の位置において水平をとってもよい。
【0029】
従来、放水装置の設置作業では、放水装置の筐体の天板の上に水平器を置いて水平をとっていたが、この方法ではセンサ部が水平にならない場合がある。センサ部が水平にならないと、火源位置の特定精度が下がる。本実施形態によれば、センサ部33の水平方向の傾きに起因する火源位置の特定精度の低下が回避される。
【0030】
(A-1-5:センサ部内の構造)
図9は、センサ部33の正面図であり、図10は、図9におけるAA´線に沿ったセンサ部33の断面図である。センサ部33は、赤外線カメラ331と、赤外線センサ332と、赤外線カメラ331及び赤外線センサ332を収容する筐体333とを備える。センサ部33の筐体333の内部における配線は、配線からの電磁波ノイズ対策のため、フェライトコアで覆われている。赤外線カメラ331と赤外線センサ332とを一つの筐体333に収容したのは、各々を別々の筐体に収容するとセンサ部33が重くなり、センサ部33の回転速度が遅くなるからである。筐体333は、センサ部33の正面を覆う蓋部を有するが、図9では、蓋部の図示は省略されている。
【0031】
図9に示されるように、赤外線カメラ331と赤外線センサ332とは、Z軸に沿って、即ち俯仰方向D2に沿って、並べて配置される。より具体的には、赤外線カメラ331はZ軸方向において俯仰軸AX2より上方に配置される。赤外線カメラ331をZ軸方向において俯仰軸AX2よりも上方に配置することにより、赤外線カメラ331を下方に向けたときでも、放水装置30の筐体が撮影範囲に入り難くなる。赤外線センサ332は、Z軸方向において俯仰軸AX2よりも下方、即ち赤外線カメラ331の下方に配置される。
【0032】
赤外線カメラ331の正面には透過部331aが設けられる。赤外線センサ332の正面には透過部332bが設けられる。透過部331a及び透過部332bの各々は、光が入射する孔と当該孔を通過した光のうちの赤外光を透過させる光学フィルタとにより構成される。孔は、筐体333の蓋部に形成される。透過部331aは例えばシリコン窓であり、透過部332bは例えばサファイヤ窓である。本実施形態では、赤外線カメラ331とは赤外線センサ332とはそれぞれ異なる透過部を有する。透過部331aと透過部332bを1つの透過部にすると、当該透過部を大きくすることが必要になり、赤外線カメラ331と赤外線センサ332の各々適した波長帯を全て透過するようにしなくてはならないため、ノイズが多くなる。そのため、赤外線カメラ331の透過部331aと赤外線センサ332の透過部332bとは別々に設けられる。
【0033】
(A-1-6:赤外線カメラの構成)
赤外線カメラ331は、調整板331b、レンズ331c、及び撮像素子331dと、撮像素子331dを収容する金属製の筐体と、を備える。撮像素子331dを金属製の筐体に収容するのは、透過部331aから入射する電磁波ノイズ対策のためである。調整板331bは、赤外線カメラ331をセンサ部33の筐体333に取り付けるために用いられる。また、調整板331bは、透過部332bを透過した光L2が赤外線カメラ331の撮像素子331dに入射しないように、光L2を遮蔽する役割を兼ねる。これにより、透過部332bを透過した光L2が赤外線カメラ331の撮像素子331dに入射するのが防止され、その結果、赤外線カメラ331を用いて行われる火源探索処理の精度の低下が回避される。
【0034】
(A-1-7:赤外線センサの構成)
赤外線センサ332は、シールドケース332a、視野制限部332c、及び焦電素子332d、を備える。シールドケース332aは、焦電素子332dを収容する金属製の筐体である。焦電素子332dをシールドケース332aに収容するのは、透過部332bから入射する電磁波ノイズ対策のためである。視野制限部332cは、焦電素子332dの視野を制限する。赤外線センサ332の視野は、炎から発せられる光以外の光の入射による誤検知を低減するため、赤外線カメラ331の視野より狭い。また、視野制限部332cは、透過部331aを透過した光L1が赤外線センサ332の焦電素子332dに入射しないように、光L1を遮蔽する役割を兼ねる。これにより、透過部331aを透過した光L1が赤外線センサ332の焦電素子332dに入射するのが防止され、その結果、赤外線センサ332を用いて行われる炎検知処理の精度の低下が回避される。
【0035】
(A-2:放水システムの動作)
図11は、放水装置30の動作の一例を示す図である。中央制御盤20は、火災受信機15から火災移報信号を受信すると、放水装置30に起動信号を送信する。中央制御盤20から起動信号を受信すると、制御部31はセンサ部33を用いて火源の探査を開始する(スキャン開始)。
【0036】
火源の探査が開始されると、まず制御部31は旋回駆動部35によりセンサ部33を例えば60度等の所定角度ずつ旋回方向D1に回動させる。このとき、センサ部33の俯仰角は、監視領域の底面全体を撮影し得る角度に固定される。センサ部33に含まれる赤外線カメラ331は、所定角度毎に監視領域の赤外線画像を撮影する。制御部31は、赤外線画像において高温となる部分をおおよその火源位置として特定する(プレスキャン)。
【0037】
所定の角度が60度である場合、センサ部33は、制御部31の制御に従って、まず、図11に示される監視領域の範囲R1の赤外線画像を赤外線カメラ331を用いて撮影する。続いて、旋回駆動部35は、制御部31の制御に従って、センサ部33を旋回方向D1に所定の角度だけ回動させる。センサ部33は、制御部31の制御に従って、監視領域の範囲R2の赤外線画像を赤外線カメラ331を用いて撮影する。続いて、旋回駆動部35は、制御部31の制御に従って、センサ部33を旋回方向D1に所定の角度だけ回動させる。センサ部33は、制御部31の制御に従って、監視領域の範囲R3の赤外線画像を赤外線カメラ331を用いて撮影する。制御部31は、赤外線カメラ331により撮影された監視領域の範囲R1~R3の赤外線画像を解析する。図11に示される例では、範囲R2に火源が含まれるため、範囲R2の赤外線画像には高温の部分が含まれる。そのため、制御部31は、範囲R2の赤外線画像において高温の部分をおおよその熱源位置として特定する。
【0038】
プレスキャンが完了すると、制御部31は俯仰駆動部36によりセンサ部33を俯仰方向D2に回動させ、赤外線カメラ331を用いて俯仰方向D2における熱源位置を特定する(俯仰角詳細スキャン)。
【0039】
具体的には、俯仰角詳細スキャンでは、俯仰駆動部36は、制御部31の制御に従って、センサ部33が熱源位置の近傍を向く俯仰角の範囲において、センサ部33を俯仰方向D2に所定角度ずつ回動させる。この所定角度は、プレスキャンで用いられる所定角度より小さい。このとき、センサ部33の旋回角は、制御部31の制御に従って、熱源位置周辺の方向を向く角度に固定される。赤外線カメラ331は、俯仰方向D2に回動し、制御部31の制御に従って所定角度毎に赤外線画像を撮影する。制御部31は、赤外線カメラ331により撮影された赤外線画像を解析し、その赤外線画像の解析結果から俯仰方向D2における熱源位置を特定する。この俯仰角詳細スキャンで特定される俯仰方向D2における熱源位置は、上述したプレスキャンにより特定される熱源位置よりも精度が高い。
【0040】
続いて、制御部31は旋回駆動部35によりセンサ部33を旋回方向D1に回動させ、赤外線カメラ331を用いて旋回方向D1におけるより詳細な熱源位置を特定する(旋回角詳細スキャン)。
【0041】
具体的には、旋回角詳細スキャンでは、旋回駆動部35は、制御部31の制御に従って、センサ部33が熱源位置の近傍を向く旋回角の範囲において、センサ部33を旋回方向D1に所定角度ずつ回動させる。この所定角度は、プレスキャンで用いられる所定角度より小さい。つまり、旋回角詳細スキャンでは、上述したプレスキャンによりも熱源位置が細かく探査される。このとき、センサ部33の俯仰角は、俯仰角詳細スキャンにおいて特定された熱源位置の方向を向く角度に固定される。赤外線カメラ331は、旋回方向D1に回動し、制御部31の制御に従って所定角度毎に赤外線画像を撮影する。制御部31は、赤外線カメラ331により撮影された赤外線画像を解析し、その赤外線画像の解析結果から旋回方向D1における熱源位置を特定する。この旋回角詳細スキャンで特定される旋回方向D1における熱源位置は、上述したプレスキャンにより特定される熱源位置よりも精度が高い。
【0042】
俯仰角詳細スキャン及び旋回角詳細スキャンが完了すると、制御部31は、赤外線センサ332の正面が俯仰角詳細スキャン及び旋回角詳細スキャンにおいて特定された熱源位置の方向を向くように、旋回駆動部35及び俯仰駆動部36によりセンサ部33を旋回方向D1及び俯仰方向D2に回動させる(赤外線センサの向きを調整)。赤外線センサ332の正面が俯仰方向D2において火源位置の方向に向くとは、赤外線センサ332のセンサ面の中心と火源位置とを通る直線が当該センサ面の直交する状態にするこという。赤外線センサ332は、正面の熱源位置から炎の検知を行う。このように、赤外線センサ332の正面を俯仰方向D2において火源位置の方向に向けてから炎の検知を行うことにより、炎検知処理の精度が上がる。
【0043】
次いで、制御部31は、赤外線センサ332による検知結果に応じて、炎の有無を判定する(炎有無判定)。制御部31により炎が有ると判定されると、通信部32は、火源の位置情報を中央制御盤20に送信する(位置情報送信)。この位置情報としては、俯仰角詳細スキャン及び旋回角詳細スキャンにおいて特定された熱源位置の旋回角及び俯仰角が用いられる。
【0044】
中央制御盤20は、位置情報に基づいて火源位置に最も近い放水装置30を選択し、その放水装置30から火源位置に向けた放水を指示する放水信号を当該放水装置30を介して現地制御盤25に送信する。当該放水信号を中継した放水装置30の制御部31は、旋回駆動部35により、火源位置の方向を向くように放水ノズル34を、旋回方向D1に回動させる。現地制御盤25は、選択された放水装置30の放水ノズル34の弁を制御し、火源位置に向けて放水を開始させる。
【0045】
以上説明したように本実施形態の放水装置30では、放水ノズル34は俯仰方向D2には回動せず、センサ部33は放水ノズル34とは独立して俯仰方向D2に回動する。このため、放水装置30によれば、センサ部33を放水ノズル34とともに俯仰方向D2に回動させる場合に比較して、センサ部33の俯仰方向D2の回転速度が上がり、その結果、火源位置の特定に要する時間が短縮される。
【0046】
(B:変形例)
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
(1)センサ部33の筐体内において、赤外線カメラ331と赤外線センサ332との間に遮蔽板が設けられてもよい。この遮蔽板により赤外線カメラ331と赤外線センサ332との一方の透過部を透過した光の他方への入射が遮蔽されてもよい。
【0047】
(2)センサ部33は、赤外線センサ332と赤外線カメラ331の2つを含まなくてもよい。センサ部33には、赤外線センサ332と赤外線カメラ331のうちいずれか1つが含まれてもよい。
【0048】
(3)火源探査用センサは赤外線カメラでなくてもよい。例えば火源探索用センサは、赤外線リニアセンサでもよい。炎検知用センサは赤外線センサでなくてもよい。炎検知用センサは、3波長式炎検知器でもよい。
【0049】
(4)火源探査用センサと炎検知用のセンサとは必ずしも1つの筐体に収容されなくてもよい。火源探査用センサと炎検知用のセンサとは、それぞれ別々の筐体に収容され、それぞれ放水ノズル34の旋回軸AX1に固定されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1:放水システム、10:火災検知器、15:火災受信機、20:中央制御盤、25:現地制御盤、30:放水装置、31:制御部、32:通信部、33:センサ部、34:放水ノズル、35:旋回駆動部、36:俯仰駆動部、331:赤外線カメラ、332:赤外線センサ。
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