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特開2024-168506作業車両の制御方法、作業車両用制御プログラム、作業車両用制御システム及び作業システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168506
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】作業車両の制御方法、作業車両用制御プログラム、作業車両用制御システム及び作業システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085241
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 博康
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康司
(72)【発明者】
【氏名】田村 得雄
(72)【発明者】
【氏名】大森 康永
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB03
2B043BB04
2B043BB06
2B043BB07
2B043DA04
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA32
2B043EA35
2B043EB05
2B043EB16
2B043EB17
2B043EB18
2B043EC12
2B043EC14
2B043EC16
2B043EE01
2B043EE02
2B043EE05
2B043EE06
(57)【要約】
【課題】作業地の外形線の際まで作業車両を前進走行させやすい作業車両の制御方法、作業車両用制御プログラム、作業車両用制御システム及び作業システムを提供する。
【解決手段】作業車両10の制御方法は、作業地F1を走行しつつ、作業機12によって作業地F1内で作業を行う作業車両10の制御方法である。この制御方法は、作業地F1を走行中の作業車両10の進行方向の前方であって、作業地F1の外形線(第4外形線f14)上、又は当該外形線より外側に設定される監視範囲A10内の検知対象物を検知することと、検知対象物の検知結果に基づいて作業車両10を走行させることと、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業地を走行しつつ、作業機によって前記作業地内で作業を行う作業車両の制御方法であって、
前記作業地を走行中の前記作業車両の進行方向の前方であって、前記作業地の外形線上、又は当該外形線より外側に設定される監視範囲内の検知対象物を検知することと、
前記検知対象物の検知結果に基づいて前記作業車両を走行させることと、を有する、
作業車両の制御方法。
【請求項2】
前記監視範囲は、高さ方向の範囲が規定されている、
請求項1に記載の作業車両の制御方法。
【請求項3】
前記監視範囲は、前記高さ方向の下限値が規定されている、
請求項2に記載の作業車両の制御方法。
【請求項4】
前記監視範囲の前記進行方向の奥行は、前記外形線から所定距離だけ外側の位置までに制限される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の作業車両の制御方法。
【請求項5】
前記監視範囲に前記検知対象物が存在しない場合、前記作業車両の少なくとも前端部が前記外形線から前記所定距離はみ出す位置まで前記作業車両を走行させることが可能である、
請求項4に記載の作業車両の制御方法。
【請求項6】
前記監視範囲に前記検知対象物が存在する場合、当該検知対象物に前記作業車両の前端部が到達する手前の位置まで前記作業車両を走行させることが可能である、
請求項4に記載の作業車両の制御方法。
【請求項7】
前記所定距離は、前記作業車両の作業幅に基づいて設定される、
請求項4に記載の作業車両の制御方法。
【請求項8】
前記監視範囲は、平面視において前記進行方向と直交する幅方向の範囲が規定されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の作業車両の制御方法。
【請求項9】
前記作業車両の前記作業地の外周部での旋回方向に従って、前記監視範囲を前記幅方向に拡大すること、を更に有する、
請求項8に記載の作業車両の制御方法。
【請求項10】
前記検知対象物の検知結果に基づいて、前記作業車両の自動走行時における前記作業地の外周部での旋回態様を変更する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の作業車両の制御方法。
【請求項11】
前記作業地には前記進行方向に沿って複数の作業経路が設定されており、
前記複数の作業経路上を前記作業車両が作業走行した後、前記複数の作業経路の各々についての作業終了位置に基づいて、前記作業車両に前記作業地の外周部を作業走行させる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の作業車両の制御方法。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか1項に記載の作業車両の制御方法を、
1以上のプロセッサに実行させるための作業車両用制御プログラム。
【請求項13】
作業地を走行しつつ、作業機によって前記作業地内で作業を行う作業車両に用いられ、
前記作業地を走行中の前記作業車両の進行方向の前方であって、前記作業地の外形線上、又は当該外形線より外側に設定される監視範囲内の検知対象物を検知する検知処理部と、
前記検知対象物の検知結果に基づいて前記作業車両を走行させる走行処理部と、を備える、
作業車両用制御システム。
【請求項14】
請求項13に記載の作業車両用制御システムと、
前記作業機が装着される前記作業車両の機体と、を備える、
作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業地を走行しつつ、作業機によって作業地内で作業を行う作業車両の制御方法、作業車両用制御プログラム、作業車両用制御システム及び作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、作業領域と枕地領域とを有する作業地(圃場)を自動走行する作業車両(田植機)が知られている(例えば、特許文献1参照)。関連技術に係る作業車両は、作業領域に設定される第1直線経路および第2直線経路と、枕地領域に設定される連結経路とを有する走行経路に沿って自動走行する。経路生成部は、連結経路として、第1連結経路と第2連結経路とを選択的に生成することができる。第1連結経路は、特定条件が成立しなければ作業車両の自動走行が停止されるように設定されている。第2連結経路は、特定条件を作業車両の自動走行の要件としない。
【0003】
例えば、第1連結経路が、第1終点から作業地の外形線(畦)に向かって作業車両を前進させる前進経路を含む場合、作業車両が前進経路における外形線側の端部に近づいたときにユーザが通信端末等をタッチ操作し続けることを特定条件とする。これにより、第1連結経路を自動走行中の作業車両が外形線に近づいたことにユーザが気付かなったとしても、作業車両の自動走行を強制的に停止させることができ、ユーザの監視の下で作業車両に畦際を走行させることができて、畦への作業車両の衝突を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-168812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記関連技術の構成では、作業地の外形線の際まで前進経路に沿って作業車両を走行させる場合、ユーザの監視下にあることが必要であり、ユーザの監視負担が大きくなる問題がある。
【0006】
本発明の目的は、作業地の外形線の際まで作業車両を前進走行させやすい作業車両の制御方法、作業車両用制御プログラム、作業車両用制御システム及び作業システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る作業車両の制御方法は、作業地を走行しつつ、作業機によって前記作業地内で作業を行う作業車両の制御方法であって、前記作業地を走行中の前記作業車両の進行方向の前方であって、前記作業地の外形線上、又は当該外形線より外側に設定される監視範囲内の検知対象物を検知することと、前記検知対象物の検知結果に基づいて前記作業車両を走行させることと、を有する。
【0008】
本発明の一の局面に係る作業車両用制御プログラムは、前記作業車両の制御方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0009】
本発明の一の局面に係る作業車両用制御システムは、作業地を走行しつつ、作業機によって前記作業地内で作業を行う作業車両に用いられる。前記作業車両用制御システムは、検知処理部と、走行処理部と、を備える。前記検知処理部は、前記作業地を走行中の前記作業車両の進行方向の前方であって、前記作業地の外形線上、又は当該外形線より外側に設定される監視範囲内の検知対象物を検知する。前記走行処理部は、前記検知対象物の検知結果に基づいて前記作業車両を走行させる。
【0010】
本発明の一の局面に係る作業システムは、前記作業車両用制御システムと、前記作業機が装着される前記作業車両の機体と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業地の外形線の際まで作業車両を前進走行させやすい作業車両の制御方法、作業車両用制御プログラム、作業車両用制御システム及び作業システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1に係る作業車両の外観を示す概略側面図である。
図2図2は、実施形態1に係る作業システムの概略ブロック図である。
図3図3は、実施形態1に係る作業システムにおける目標経路の一例を示す概略図である。
図4図4は、実施形態1に係る作業車両における監視範囲の一例を示す概略平面図である。
図5図5は、実施形態1に係る作業車両における監視範囲の一例を示す概略側面図である。
図6図6は、実施形態1に係る作業車両における監視範囲の一例を示す概略側面図である。
図7図7は、実施形態1に係る作業車両における監視範囲の一例を示す概略側面図である。
図8図8は、実施形態1に係る作業車両における監視範囲の一例を示す概略平面図である。
図9図9は、実施形態1に係る作業車両における監視範囲の一例を示す概略側面図である。
図10図10は、実施形態1に係る作業車両における監視範囲の一例を示す概略平面図である。
図11図11は、実施形態1に係る作業車両用制御システムの動作例を示すフローチャートである。
図12図12は、実施形態2に係る作業システムにおける目標経路の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【0014】
(実施形態1)
[1]全体構成
まず、本実施形態に係る作業システム100の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。本実施形態に係る作業車両用制御システム1(以下、単に「制御システム1」ともいう)は、作業車両10の機体11と共に作業システム100を構成する。機体11には作業機12が装着される。すなわち、作業システム100は、作業車両用制御システム1と、作業機12が装着される作業車両10の機体11と、を備えている。
【0015】
本実施形態では、制御システム1は、作業車両10の機体11に搭載されている制御装置13(図2参照)と、端末装置20と、を含んでいる。作業車両10と端末装置20とは、互いに通信可能である。本開示でいう「通信可能」とは、有線通信又は無線通信(電波又は光を媒体とする通信)の適宜の通信方式により、直接的、又は通信網(ネットワーク)N1若しくは中継器等を介して間接的に、情報を授受できることを意味する。作業車両10と端末装置20とは、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、公衆電話回線、携帯電話回線網、パケット回線網又は無線LAN等の通信網N1を介して通信可能である。作業車両10及び端末装置20間の通信手段は、上記の例に限らず、適宜の通信手段によって実現される。また、作業車両10及び端末装置20が互いに通信可能であることは、制御システム1において必須の構成ではない。
【0016】
作業車両10は、作業地F1(図3参照)を走行しつつ、作業機12によって作業地F1内で何らかの作業を行う。本開示でいう「作業」は、作業機12が作業地F1に対して実施する仕事であって、例えば、植付け(田植え)、播種、施肥、農薬散布、均平又は収穫等の各種の農作業、及び建設作業等の種々の作業を含む。本実施形態では一例として、作業車両10が行う作業は、作業地F1としての水田に苗を植付ける植付け(田植え)作業であることとする。
【0017】
作業機12は、作業車両10の機体11が作業地F1を移動する際に、作業地F1内で作業を実施する。本実施形態では一例として、作業機12は、苗の植付け作業を行うように、苗マットを載せる苗載せ台、及び苗マットから苗を取って植付けを行う植付けアーム等を含む。ここで、作業機12は機体11の後方側(機体11の前進方向とは反対側)に取り付けられる。つまり、作業機12は、機体11の後方側に連結され、機体11の前進時に機体11と共に前進しつつ、作業を行う。本実施形態では、作業機12は作業車両10の構成要素に含まれることとするが、作業機12は、作業車両10の構成要素に含まれなくてもよい。
【0018】
本開示でいう「作業車両」は、例えば圃場等の作業地F1において各種の作業を行う機械を意味し、一例として、田植機、トラクタ、播種機、散布機、噴霧機、移植機及び収穫機等の農業機械(農機)である。作業車両10は、例えば、建設機械(建機)等であってもよい。本実施形態では、特に断りが無い限り、作業車両10が田植機である場合を例に挙げて説明する。この作業車両10では、圃場等の作業地F1を機体11が走行することで、作業地F1に苗を受け付ける植付け作業が可能となる。
【0019】
また、本実施形態では一例として、作業車両10は、人(オペレータ)が搭乗可能でありながらも、自動運転(自律走行及び自律作業)により動作可能な自動機であることとする。ただし、これに限らず、作業車両10は、自動運転により動作する無人機であってもよいし、人(オペレータ)の操作(遠隔操作を含む)により動作してもよい。
【0020】
本開示でいう「作業地」は、作業車両10が移動しながら、例えば、植付け(田植え)、播種、施肥、農薬散布、均平又は収穫等の各種の作業を行う領域であって、水田、畑、果樹園及び牧草地等を含む。例えば、稲、麦、大豆又はそば等の作物(農産物)を生育する水田又は畑が作業地F1である場合、作業地F1で育成される作物は農産物である。さらに、植木畑で植木を生育している場合には植木畑が作業地F1となり、林業のように森林にて木材となる樹木を生育する場合には森林が作業地F1となる。この場合、作業地F1で生育される作物は植木又は樹木等である。本実施形態では、特に断りが無い限り、作業車両10は圃場(作業地F1)における苗の植付け作業に用いられ、作業地F1が稲の生育用の水田である場合を例に挙げて説明する。また、作業地F1は圃場に限らず、例えば作業車両10が建設機械であれば、建設機械が作業を行う現場が作業地F1となる。
【0021】
また、作業車両10は、作業地F1(ここでは圃場)だけでなく、例えば、作業地F1外の圃場外経路等の道路においても自動走行により移動可能である。作業車両10は、測位装置16(図2参照)により測位される作業車両10の現在位置の位置情報に基づいて、作業地F1内及び作業地F1外に予め設定された目標経路(圃場外経路を含む)に沿って自動走行(移動)可能に構成されている。圃場外経路は、例えば、複数の作業地F1(圃場)間を接続する圃場間接続路である。圃場間接続路は、農道、林道、公道、私道又は自動車道等であって、作業車両10専用の道路であってもよいし、一般車両(乗用車等)が通行可能な道路であってもよい。
【0022】
[2]作業車両の構成
次に、本実施形態に係る作業車両10の構成について図1及び図2を参照して詳しく説明する。
【0023】
本実施形態では、説明の便宜上、作業車両10が使用可能な状態での鉛直方向を上下方向D1と定義する。作業車両10の機体11(の運転部111)に乗っている人(オペレータ)から見た方向を基準として、前後方向D2及び左右方向D3(図3参照)を定義する。左右方向D3の左側は、機体11を前方に走行(前進)させる場合の左側を指し、左右方向D3の右側は、機体11を前方に走行(前進)させる場合の右側を指す。ただし、これらの方向は、作業車両10の使用方向(使用時の方向)を限定する趣旨ではない。
【0024】
作業車両10は、図2に示すように、機体11及び作業機12に加えて、制御装置13、走行装置14、検知装置15、測位装置16及び通信装置17等を備えている。制御装置13、走行装置14、検知装置15、測位装置16及び通信装置17は、いずれも機体11に搭載されている。
【0025】
機体11は、人(オペレータ)が搭乗可能な運転部111(図1参照)を有している。運転部111には、操舵装置、変速装置及び操作装置等が配置されている。操舵装置、変速装置及び操作装置等は、オペレータ又は制御装置13によって操作される操作部である。したがって、作業車両10は、オペレータの手動操作による手動運転と、制御装置13による自動運転と、の両方を実施可能である。また、上述したように、機体11の後方側には作業機12が連結されている。
【0026】
本実施形態では、作業機12は、機体11の後方側に連結されており、機体11の前進時に、作業地F1としての圃場に対して植付け作業を実施可能である。ここで、作業機12は、複数条(一例として、6条、7条又は8条等)の植付けに対応しており、幅方向(左右方向D3)において、対応している条数に応じた作業幅W1(図4参照)を有する。つまり、例えば、7条の植付けに対応する作業機12であれば、幅方向(左右方向D3)において7条分の苗の受け付けを同時に行うことが可能である。本実施形態では一例として、作業車両10が、8条に対応する作業機12を備える8条用の田植機であることと仮定する。
【0027】
走行装置14は、図1に示すように、前輪141、後輪142、及び動力源(エンジン及び/又はモータ等)等を有している。前輪141及び後輪142は、例えば、それぞれ左右一対ずつ設けられている。走行装置14は、動力源で発生する動力で後輪142が駆動されることにより、機体11を走行(移動)させることが可能である。ここで、前輪141は操舵輪として機能し、左右方向D3への旋回を可能とする。これにより、機体11は、作業地F1内を前後方向D2及び左右方向D3に移動するよう走行可能となる。
【0028】
少なくとも自律走行時には、上述したような操舵装置、変速装置及び操作装置等の制御装置13による操作に従って、走行装置14が動作する。例えば、走行装置14では、制御装置13による操舵装置の操作に応じて、油圧式パワーステアリング機構等によって前輪141の角度が変更され、機体11の進行方向が変更される。また、制御装置13による変速装置の操作に応じて、トランスミッションのギアが前進ギア又はバックギア等に切り替えられ、機体11の走行態様が前進又は後進等に切り替えられる。また、制御装置13は、操作装置のアクセル又はブレーキを操作して、動力源の回転数を制御したり、電磁ブレーキを用いて前輪141及び後輪142を制動したりする。
【0029】
検知装置15は、検知エリアA1(図4参照)の検知対象物Ob1(図4参照)を検知する。検知装置15は、例えば、レーダ、ソナーセンサ、LiDAR(Light Detection and Ranging)、人感センサ又はカメラ(イメージセンサ)等の種々のセンサを含み得る。ここで、検知装置15は、光又は音が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式、又は、ステレオカメラ方式等により、検知対象物Ob1(障害物)までの距離及び方位を測定可能な3次元センサであることが好ましい。これにより、検知装置15は、平面視における検知対象物Ob1の位置を含む測定情報を、制御装置13に出力可能である。本実施形態では一例として、検知装置15は、ミリ波を利用したレーダ(ミリ波レーダ)、又は超音波(若しくは音波)を利用したソナーセンサであることと仮定する。
【0030】
測位装置16は、機体11の現在位置(緯度、経度及び高度等)を求める。具体的に、測位装置16は、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システムを用いて機体11の現在位置(緯度及び経度)を算出する。つまり、測位装置16は、衛星からの測位信号を受信する測位用アンテナを有し、測位信号に基づいて現在位置を算出する。さらに、測位装置16は、慣性センサを含み、機体11の現在方位等の姿勢も検出可能である。
【0031】
また、測位装置16は、作業車両10に近い基地局(基準局)に対応する補正情報を利用して、作業車両10の現在位置を算出する、RTK(Real Time Kinematic)測位のように、比較的高精度で現在位置を検出してもよい。機体11の現在位置は、測位位置(測位用アンテナの位置)と同一位置であってもよいし、平面視における機体11の中心位置等のように測位位置からずれた位置であってもよい。測位装置16として、例えば、携帯電話端末、スマートフォン又はタブレット端末等が代用されてもよい。
【0032】
通信装置17は、作業車両10(制御装置13及び測位装置16等)を、有線又は無線で外部機器に接続し、外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インタフェースである。本実施形態では、通信装置17は、少なくとも外部機器である端末装置20との間で、通信網N1を介して相互に通信可能である。さらに、通信装置17は少なくとも無線にて通信網N1に接続可能であって、作業地F1を移動(走行)する作業車両10でありながらも、端末装置20と随時通信を行うことが可能である。通信装置17として、例えば、携帯電話端末、スマートフォン又はタブレット端末等が代用されてもよい。
【0033】
制御装置13は、CPU(Central Processing Unit)等の1以上のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の1以上のメモリとを有するコンピュータシステムを主構成とし、種々の処理(情報処理)を実行する。本実施形態では、制御装置13は1以上のプロセッサを有するコンピュータシステムを主構成とするので、1以上のプロセッサが作業車両用制御プログラムを実行することにより、制御装置13が実現される。本実施形態では、制御装置13は、作業車両10全体の制御を行う統合コントローラであって、例えば、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)からなる。ただし、制御装置13は、統合コントローラと別に設けられていてもよい。
【0034】
制御装置13は、機体11の各部に設けられたデバイスと通信可能に構成されている。つまり、制御装置13には、作業機12、走行装置14、検知装置15、測位装置16及び通信装置17等が電気的に接続されている。これにより、制御装置13は、作業機12及び走行装置14等を制御したり、検知装置15及び測位装置16の検出結果を取得したりすることが可能である。ここで、制御装置13は、各種の情報(データ)の授受を、各デバイスと直接的に行ってもよいし、中継器等を介して間接的に行ってもよい。
【0035】
本実施形態では、制御装置13は、図2に示すように、検知処理部131と、走行処理部132と、設定処理部133と、記憶部134と、を備えている。
【0036】
検知処理部131は、作業車両10の周囲に設定される監視範囲A10(図4参照)内の検知対象物Ob1を検知する検知処理を実行する。検知処理部131は、検知装置15の出力に基づいて、監視範囲A10における検知対象物Ob1を検知する。具体的には、検知処理部131は、ミリ波を利用したレーダ、又は超音波(若しくは音波)を利用したソナーセンサからなる検知装置15から、検知エリアA1内の検知対象物Ob1の位置を含む測定情報を取得し、当該測定情報に基づいて、監視範囲A10内の検知対象物Ob1を検知する。
【0037】
検知処理部131は、監視範囲A10における検知対象物Ob1の存否(有無)を判断し、監視範囲A10に検知対象物Ob1が存在するか否かを表す検知結果を出力する。本実施形態では一例として、検知対象物Ob1は、人及びその他の動物、車両等の移動体(他の作業車両を含む)、壁及び柱等の構造物、植物、段差、又はその他の障害物を含む。つまり、検知装置15の検知エリアA1内に設定される監視範囲A10に、何らかの障害物が存在する場合、検知処理部131は当該障害物を検知対象物Ob1として検知する。検知処理部131は、検知対象物Ob1の存否のみを検出してもよいし、検知対象物Ob1の位置、形状、数又は属性(種別等を含む)等を検出してもよい。
【0038】
本実施形態では、検知処理部131は、検知対象物Ob1(障害物)までの距離及び方位を含む、平面視における検知対象物Ob1の位置についても検知可能である。つまり、検知処理部131は、監視範囲A10に検知対象物Ob1が存在する場合、機体11を基準とする検知対象物Ob1までの距離及び方位を特定する。そのため、検知処理部131では、例えば、機体11からある距離(例えば、2m、3m、4m又は5m等)以内に存在する検知対象物Ob1を検知することが可能である。言い換えれば、検知処理部131は、検知装置15の検知エリアA1の全域を監視範囲A10とするだけでなく、検知エリアA1のうち任意に設定される大きさ及び形状の監視範囲A10の検知対象物Ob1を検知することも可能である。すなわち、監視範囲A10は、検知装置15が検知対象物Ob1を検知可能な検知エリアA1内に設定され、検知エリアA1と同一の範囲、又は検知エリアA1よりも狭い範囲である。
【0039】
制御装置13は、少なくとも作業車両10の自動走行中に検知処理部131が検知対象物Ob1として障害物を検出した場合、警報(音及び/又は光による報知を含む)の出力、及び走行装置14を制御することによる障害物の回避処理(迂回、減速又は停止等を含む)等を実行する。さらに、制御装置13は、障害物の位置情報、及び回避処理の実行履歴等を端末装置20に出力して端末装置20に表示等させてもよい。
【0040】
走行処理部132は、走行装置14を制御する走行処理を実行する。一例として、走行処理部132は、測位装置16により算出される作業車両10の現在位置と、予め設定されている目標経路とに基づいて、走行装置14を制御することによって、作業車両10の自動走行を行う。さらに、走行処理部132は、測位装置16により算出される作業車両10の現在位置と、予め設定されている目標経路とに基づいて、作業機12を制御することによって、目標経路上の適宜の位置で作業車両10による作業(本実施形態では植付け作業)を行う。
【0041】
具体的には、走行処理部132は、端末装置20から走行開始指示を取得すると作業車両10の自動走行を開始させる。例えば、端末装置20の操作画面においてオペレータがスタートボタンを操作すると、端末装置20は走行開始指示を作業車両10に出力する。これにより、例えば、作業車両10は、作業地F1内において目標経路R1(図3参照)に従って自動走行を開始し、作業機12による作業(本実施形態では植付け作業)を行う。
【0042】
作業車両10を自動走行させるための目標経路R1は、例えば、端末装置20において生成される。すなわち、作業車両10は、端末装置20から目標経路R1に対応する経路データを取得し、目標経路R1に従って自動走行を行う。
【0043】
また、走行処理部132は、端末装置20から走行停止指示を取得すると作業車両10の自動走行を停止させる。例えば、端末装置20の操作画面においてオペレータがストップボタンを操作すると、端末装置20は走行停止指示を作業車両10に出力する。
【0044】
また、本開示でいう「自動走行」には、オペレータの操作によらずに作業車両10が自律的に走行する「自律走行」と、例えば直進アシストのように操舵のみが自動化される「半自動走行」と、が含まれる。
【0045】
「自律走行」は、例えば、目標経路R1に沿って作業車両10が走行するように、操舵輪(前輪141)の自動操舵に加えて、車速等の制御も自動的に行われる走行態様である。「直進アシスト」は、例えば、基準となる直線(基準線)に平行な直線経路に沿って作業車両10が走行するように、操舵輪(前輪141)の自動操舵のみが行われ、車速等はオペレータの操作によって制御される走行態様である。
【0046】
他の例として、作業車両10は、オペレータの手動操舵により走行してもよい。例えば、オペレータは、作業車両10に搭乗して、目標経路R1を確認しながら手動操舵により作業車両10を走行させる。
【0047】
設定処理部133は、監視範囲A10を設定する設定処理を実行する。すなわち、検知処理部131は、設定処理部133で設定される監視範囲A10内の検知対象物Ob1を検知する。詳しくは後述するが、本実施形態では、監視範囲A10は、高さ方向(上下方向D1)、進行方向(前後方向D2)、及び幅方向(左右方向D3)の各々について設定される。
【0048】
記憶部134は、作業車両用制御プログラム、及び目標経路R1に関する目標経路情報等の種々のデータを記憶する不揮発性メモリ等である。つまり、走行処理部132は、記憶部134に記憶されている目標経路情報に基づいて、走行装置14に目標経路R1に沿った自動走行を実行させること等が可能である。
【0049】
また、作業車両10は、上述した構成に加えて、バッテリ、燃料タンク、表示装置及び各種センサ等を更に備えている。バッテリは、例えば、制御装置13等、作業車両10の各部に動作用の電力を供給する。特に制御装置13、検知装置15、測位装置16及び通信装置17等の電子機器は、バッテリからの電力供給により動作することで、走行装置14の動力源(エンジン)の停止中も動作可能である。表示装置は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような、ユーザ(オペレータ)に情報を提示するためのユーザインタフェースである。
【0050】
[3]端末装置の構成
次に、本実施形態に係る端末装置20の構成について図1及び図2を参照して詳しく説明する。
【0051】
本実施形態では、端末装置20は、上述したように作業車両10と通信可能であって、作業車両10の制御装置13と共に制御システム1を構成する。つまり、制御システム1の構成要素は、少なくとも作業車両10と端末装置20とに分散して設けられている。ただし、この構成に限らず、例えば、制御装置13の機能が端末装置20に設けられていてもよく、この場合には、制御システム1の構成要素は、端末装置20のみで実現されることになる。
【0052】
本実施形態では一例として、端末装置20は、タブレット端末、スマートフォン又はラップトップコンピュータ等の汎用端末で構成されている。端末装置20は、図2に示すように、情報処理部21、記憶部22、操作表示部23及び通信部24を備えている。さらに、端末装置20は、ユーザ(オペレータ)に対して音(音声を含む)を出力する音出力部、及びバッテリ等を更に備えている。
【0053】
情報処理部21は、CPU等の1以上のプロセッサと、ROM及びRAM等の1以上のメモリとを有するコンピュータシステムを主構成とし、種々の処理(情報処理)を実行する。本実施形態では、情報処理部21は1以上のプロセッサを有するコンピュータシステムを主構成とするので、1以上のプロセッサが作業車両用制御プログラムを実行することにより、情報処理部21が実現される。つまり、制御システム1に含まれる制御装置13の1以上のプロセッサと、情報処理部21の1以上のプロセッサと、がそれぞれ作業車両用制御プログラムを実行することにより、制御装置13と端末装置20とが協働して制御システム1が具現化される。
【0054】
情報処理部21は、端末装置20の各部(記憶部22、操作表示部23及び通信部24)と通信可能に構成されている。つまり、情報処理部21には、記憶部22、操作表示部23及び通信部24等が電気的に接続されている。これにより、情報処理部21は、記憶部22に対して情報を読み書きしたり、操作表示部23を表示制御したり、操作表示部23に対する操作入力を取得したりすることが可能である。ここで、情報処理部21は、各種の情報(データ)の授受を、各部と直接的に行ってもよいし、中継器等を介して間接的に行ってもよい。
【0055】
このような端末装置20は、ユーザ(オペレータ)による操作入力を受け付け、ユーザに種々の情報を出力するためのユーザインタフェースである。例えば、端末装置20は、操作表示部23に対するユーザの操作に応じた電気信号を出力することにより、ユーザによる各種の操作を受け付ける。さらに、端末装置20は、操作表示部23に種々の画面を表示することによって、ユーザに対して種々の情報を出力する。本開示でいう「画面」は、端末装置20の操作表示部23等にて表示される映像(画像)を意味し、図像、図形、写真、テキスト及び動画等を含む。端末装置20に表示される画面は、静止画だけでなく、刻一刻と変化する映像(動画)等を含む。
【0056】
記憶部22は、作業車両用制御プログラム、及び目標経路R1に関する目標経路情報等の種々のデータを記憶する不揮発性メモリ等である。さらに、記憶部22には、作業機情報、作業車両情報、圃場情報及び作業情報等の種々のデータが記憶可能である。作業機情報は、機体11に装着されている作業機12に関する情報であって、例えば、作業機12の種類、識別情報、機種名、型式及びサイズ(寸法)等の情報を含む。作業車両情報は、作業車両10の機体11(車両本体)に関する情報であって、例えば、機体11の種類(例えば、ハーフクローラ式/ホイール式等)、識別情報、機種名、型式及びサイズ(寸法)等の情報を含む。圃場情報は、作業地F1とする圃場に関する情報であって、圃場の識別情報、圃場名、位置、形状、大きさ、作業を開始する作業開始位置(走行開始位置)、作業を終了する作業終了位置(走行終了位置)及び作業方向等の情報を含む。作業情報は、作業車両10が行う作業に関する情報であって、例えば、作業の種類、及び作業を具体的にどのように行うか等の情報を含む。さらに、作業車両10による協調作業の有無、枕地の幅及び非耕作地の幅等についても、作業情報に含まれてもよい。
【0057】
記憶部22に記憶されるこれらの情報(目標経路情報、作業機情報、作業車両情報、圃場情報及び作業情報等)は、操作表示部23に対するユーザ(オペレータ)による操作入力、又は作業車両10から取得されることにより、設定(登録)される。例えば、作業機情報における作業機12の種類については、ユーザが操作表示部23を操作することで指定してもよいし、作業車両10が機体11に装着された作業機12を自動的に判別して端末装置20に送信してもよい。これらの情報は、端末装置20が、作業車両10以外の外部機器(例えば、サーバ、外部記憶媒体又は他の端末装置等)から取得してもよい。
【0058】
操作表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、キーボード、メカニカルスイッチ又はエンコーダのような操作部と、を備えるユーザインタフェースである。一例として、オペレータは、操作表示部23の表示部に表示される操作画面において、操作表示部23の操作部を操作して各種情報を設定(登録)する操作を行うことが可能である。例えば、オペレータは、作業車両10の自動走行に関する自動走行情報(目標経路情報を含む)の設定を行うことが可能である。
【0059】
また、操作表示部23は、作業地F1における作業の進捗状況、並びに作業車両10の目標経路R1、(実際の)移動軌跡、現在位置及び移動速度等を含む作業車両10の動作状況を表示することで、自動運転中の作業車両10のオペレータによる遠隔監視を可能とする。ここで、作業車両10の動作状況には、検知処理部131における検知対象物Ob1の検知結果等も含まれる。さらに、操作表示部23は、作業車両10の走行開始指示又は走行停止指示等をオペレータから受付可能である。端末装置20は、これらの走行開始指示又は走行停止指示等を作業車両10に送信することにより、作業車両10を遠隔制御することが可能である。したがって、オペレータによる作業車両10の遠隔操作が可能となる。
【0060】
通信部24は、端末装置20を、有線又は無線で作業車両10に接続し、作業車両10との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インタフェースである。本実施形態では、通信部24は、少なくとも作業車両10(の通信装置17)との間で、通信網N1を介して相互に通信可能である。さらに、通信部24は少なくとも無線にて通信網N1に接続可能であるため、作業車両10から十分に離れた場所であっても、作業車両10と随時通信を行うことが可能である。
【0061】
ところで、本実施形態では、情報処理部21は、図2に示すように、経路生成処理部211と、登録処理部212と、出力処理部213と、を有している。本実施形態では一例として、情報処理部21は1以上のプロセッサを有するコンピュータシステムを主構成とするので、1以上のプロセッサが作業車両用制御プログラムを実行することにより、これら複数の機能部(経路生成処理部211等)が実現される。情報処理部21に含まれる、これら複数の機能部は、複数の筐体に分散して設けられていてもよいし、1つの筐体に設けられていてもよい。
【0062】
経路生成処理部211は、作業地F1において作業車両10を自動走行させるための目標経路R1を生成する経路生成処理を実行する。ここで、経路生成処理部211は、記憶部22に記憶されている、作業機情報、作業車両情報、圃場情報及び作業情報等を含む生成用データに基づいて、目標経路R1を生成する。つまり、目標経路R1は、例えば、操作表示部23に対するユーザ(オペレータ)による操作入力等によって設定(登録)される作業機情報、作業車両情報、圃場情報及び作業情報等に基づいて、経路生成処理部211が目標経路を生成する。
【0063】
具体的には、経路生成処理部211は、圃場情報に含まれる走行開始位置P1(図3参照)及び走行終了位置P2(図3参照)に基づいて、作業地F1内の目標経路R1を生成する。例えば、経路生成処理部211は、生成用データに基づいて、作業地F1内において、走行開始位置P1から走行終了位置P2にかけて作業車両10の機体11を移動させるための目標経路R1を生成する。
【0064】
登録処理部212は、作業機情報、作業車両情報、圃場情報及び作業情報等を登録する登録処理を実行する。すなわち、目標経路R1の生成に用いられる作業機情報、作業車両情報、圃場情報及び作業情報等は、例えば、操作表示部23に対するユーザ(オペレータ)による操作入力等によって、登録処理部212によってそれぞれ登録(設定)される。
【0065】
出力処理部213は、例えば、目標経路R1の経路データを作業車両10に出力する出力処理を実行する。すなわち、経路生成処理部211で生成された目標経路R1に関する経路データは、出力処理部213から例えば通信部24に出力され、通信部24から作業車両10に送信される。
【0066】
例えば、オペレータは、作業を開始する際に、圃場(作業地F1)の選択、作業の選択、目標経路R1の確認等を行い、作業開始指示を行う。オペレータが作業開始指示を行うと、出力処理部213は、経路生成処理部211が生成した目標経路R1の経路データを作業車両10に送信(出力)する。作業車両10は、端末装置20において生成された経路データを受信すると、当該経路データを記憶部134に記憶する。そして、作業車両10は、測位装置16により算出される作業車両10の現在位置と、経路データにて特定される目標経路R1と、に基づいて、自動運転(自律走行及び自律作業)を行う。
【0067】
さらに、出力処理部213は、生成された目標経路R1を操作表示部23に出力することで、操作表示部23に表示させることも可能である。出力処理部213の出力の態様は、上述したような作業車両10への送信又は表示に限らず、例えば、他装置(ユーザ端末等)への送信、印刷(プリントアウト)、非一時的記録媒体への書き込み、又は音声出力等であってもよい。
【0068】
端末装置20は、サーバが提供する農業支援サービスのウェブサイト(農業支援サイト)に通信網N1を介してアクセス可能であってもよい。この場合、端末装置20は、情報処理部21によってブラウザプログラムが実行されることにより、サーバの操作用端末として機能することが可能である。そして、サーバは、上述の各処理部を備え、各処理を実行する。
【0069】
[3]作業車両の制御方法
以下、図3図11を参照しつつ、主として制御システム1(制御装置13及び端末装置20)によって実行される作業車両10の制御方法(以下、単に「制御方法」という)の一例について説明する。
【0070】
本実施形態に係る制御方法は、コンピュータシステムを主構成とする制御システム1にて実行されるので、言い換えれば、作業車両用制御プログラム(以下、単に「制御プログラム」という)にて具現化される。つまり、本実施形態に係る制御プログラムは、制御方法に係る各処理を1以上のプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0071】
ここで、制御システム1は、制御プログラムを実行させるための予め設定された特定の開始操作が行われた場合に、制御方法に係る下記の各種処理を実行する。開始操作は、例えば、端末装置20でのアプリケーションプログラム(作業車両用制御プログラム)の起動操作等である。一方、制御システム1は、予め設定された特定の終了操作が行われた場合に、制御方法に係る下記の各種処理を終了する。終了操作は、例えば、端末装置20でのアプリケーションプログラム(作業車両用制御プログラム)の終了操作等である。
【0072】
また、以下では、作業地F1が、図3に示すように、平面視において長方形状の圃場であって、当該作業地F1の外形線(外周縁)のうち、一方の短辺を「第1外形線f11」、他方の短辺を「第2外形線f12」、一方の長辺を「第3外形線f13」、他方の長辺を「第4外形線f14」と仮定する。そして、当該作業地F1において、走行開始位置P1は、第1外形線f11と第3外形線f13との間の角部付近に配置され、走行終了位置P2は、第2外形線f12と第3外形線f13との間の角部付近に配置されていることとする。
【0073】
[3.1]基本動作
まず、本実施形態に係る制御システム1にて、ある圃場からなる作業地F1において、目標経路R1に沿って作業車両10を自動走行させる場合の基本的な動作について、図3を参照して説明する。
【0074】
図3の例では、目標経路R1は、作業経路r11と、非作業経路r12と、外周作業経路r13と、を含む。作業経路r11及び外周作業経路r13は、作業車両10が作業機12で作業を行いながら走行(移動)する経路である。非作業経路r12は、複数の作業経路r11間を接続し、作業車両10が進行方向を変更する旋回走行を行うための経路であって、作業車両10が作業機12での作業を行わずに走行(移動)する経路である。
【0075】
図3等の目標経路R1を表す図面において、作業車両10が作業を行う経路(作業経路r11及び外周作業経路r13)を実線で示し、作業車両10が作業を行わない経路(非作業経路r12)を点線で示す。図3等の目標経路R1を表す図面では、平面視において作業地F1について生成される目標経路R1(及び作業車両10)を模式的に表している。図3において、前後方向D2及び左右方向D3は、図3に示す作業車両10の機体11の向きを基準としたときの方向である。
【0076】
より詳細には、目標経路R1は、図3に示すように、作業地F1の一対の長辺(第3外形線f13及び第4外形線f14)間に延びる複数の作業経路r11を含んでいる。すなわち、図3に例示する目標経路R1においては、図中左下角部に設定された走行開始位置P1から、図中上方へと延びる作業経路r11が配置され、さらに、当該作業経路r11に沿った(平行な)複数の作業経路r11が、図中右方に一定間隔で配置される。複数の作業経路r11は、作業地F1の一方の長辺(第3外形線f13)側から他方の長辺(第4外形線f14)側に向かう作業経路r11と、これとは反対向きの作業経路r11と、が交互に並ぶように配置される。
【0077】
ここで、複数の作業経路r11は、いずれも作業車両10が作業機12での作業を行いながら前進動作する直線状の経路である。隣接する作業経路r11間の間隔は、作業機12の左右方向D3の幅寸法に基づいて設定されており、複数の作業経路r11に沿って作業車両10が走行することで、作業地F1の略全域(外周部となる枕地領域を除く)に対して植付け作業が行われる。そして、隣接する一対の作業経路r11間は、第1外形線f11側となる一の作業経路r11の終端と、第2外形線f12側となる他の作業経路r11の始端とをつなぐ、非作業経路r12にて接続される。
【0078】
また、外周作業経路r13は、複数の作業経路r11のうちの最終(第2外形線f12側の)作業経路r11の終端に連続し、作業地F1の外形線(第1~第4外形線f11~f14)に沿って作業地F1の外周部を周回する経路である。図3の例では、外周作業経路r13は、図中右下角部から図中左下角部へ延び、図中左下角部から図中左上角部へ延び、図中左上角部から図中右上角部へ延び、図中右上角部から図中右下角部の走行終了位置P2へと延びることで、作業地F1の外周部となる枕地領域を1周する。
【0079】
このような目標経路R1によれば、作業車両10は、作業地F1のうち外周部となる枕地領域F12を除く内側領域F11(図3の一点鎖線の内側)において、走行開始位置P1から作業経路r11を平行に往復走行しながら植付け作業を行う。その後、作業車両10は、枕地領域F12において、走行終了位置P2に向けて外周作業経路r13を時計回りに周回走行しながら植付け作業を行う。ただし、作業車両10が外周作業経路r13を走行する際には、オペレータが機体11に搭乗した「有人状態」で作業車両10の自動走行を行うことが好ましい。これにより、作業車両10は、枕地領域F12を含む作業地F1の略全域に対して植付け作業を行うことが可能である。
【0080】
目標経路R1は、図3に例示する経路に限らず、適宜設定される。また、図3では、作業車両10は初めに内側領域F11を走行し、その後に枕地領域F12を走行するが、作業車両10の走行順はこれに限定されない。例えば、作業車両10は初めに枕地領域F12を走行し、その後に内側領域F11を走行してもよい。
【0081】
また、図3の例では、枕地領域F12に設定される非作業経路r12は、緩旋回での右旋回のための旋回経路を含むが、作業車両10の方位を変更するための旋回態様は、「緩旋回」に限らない。非作業経路r12は、例えば、いわゆる「フィッシュテールターン」等のように、限られたスペース内で機体11の旋回を可能とするために、前進と後進とを切り替えつつ機体11を旋回させる旋回態様を含んでもよい。
【0082】
上述したような作業車両10の自動走行を実現するためには、予め作業地F1の形状を認識して登録しておく必要がある。一例として、オペレータは、作業車両10に搭乗して登録対象の作業地F1の外周に沿って一回り周回するように運転し(ティーチング走行)、端末装置20は、作業車両10から走行中の位置情報を取得して当該位置情報に基づいて当該作業地F1の位置及び形状を認識して作業地F1として登録する。このようなティーチング走行において作業車両10が走行する経路上に、外周作業経路r13が生成されることになる。このようなティーチング走行、又は過去の走行経路の実績情報を基に、作業地F1が登録されることにより、例えば、暗渠等の検知装置15のみでは検知が困難な障害物については、最初から回避した状態で目標経路R1を生成することが可能である。
【0083】
ところで、比較例として、作業地F1の枕地領域F12に2行程分の幅を残して、複数の作業経路r11を生成し、作業地F1の外周に沿って2行程分の外周作業経路r13を生成することも考えられる。この場合、作業車両10は、複数の作業経路r11を作業走行後、内側の外周作業経路r13を無人状態で自動走行し、その後、更に外側の外周作業経路r13を有人状態で自動走行する。本実施形態のように、外周作業経路r13を作業地F1の外周に沿って1行程(1周)のみ設定することで、当該比較例に比べて、下記の利点がある。
【0084】
すなわち、本実施形態の構成によれば、内側の外周作業経路r13の作業時に、旋回によって作業地F1が無用に荒れることを防止できる。また、本実施形態の構成によれば、作業経路r11を走行時に植え付けた苗と、内側の外周作業経路r13を走行時に植え付けた苗との位置がずれる「株ずれ」の発生を防止できる。さらに、本実施形態の構成によれば、内側の外周作業経路r13を走行時に農資材(苗マット等)の補給が煩雑となることを防止できる。
【0085】
[3.2]検知対象物の検知処理
次に、作業車両10の(自動)走行中において行われる検知対象物Ob1の検知処理に係る処理について、図4図10を参照して説明する。
【0086】
すなわち、本実施形態に係る制御方法は、少なくとも検知装置15の出力(測定情報)に基づいて、監視範囲A10内の検知対象物Ob1を検知する検知処理を有している。検知処理は、少なくとも作業車両10の自動走行中に、検知処理部131にて随時実行される。本実施形態では、検知処理部131は、基本的に、図4及び図5に示すように、検知装置15の検知エリアA1のうちの一部に設定される監視範囲A10における検知対象物Ob1の検知を行う。
【0087】
そのため、検知エリアA1内に検知対象物Ob1が存在する場合でも、当該検知対象物Ob1が監視範囲A10内になければ、検知処理部131では、検知対象物Ob1が存在しないことと判断する。言い換えれば、検知処理部131は、監視範囲A10にのみ、検知対象物Ob1を検知するための感度を有し、検知エリアA1のうち監視範囲A10以外の領域には、検知対象物Ob1を検知するための感度を有さない。
【0088】
このような監視範囲A10は、例えば、検知処理部131において、検知エリアA1のうち監視範囲A10以外の領域に、マスク処理(フィルタ処理)を施すことにより、当該領域での検知を無効にすることで実現可能である。あるいは、例えば、検知処理部131が、ミリ波又は超音波の送波(又は受波)範囲を制限するように検知装置15を制御することにより、監視範囲A10を制限してもよい。
【0089】
具体的に、監視範囲A10は、図4及び図5に示すように、作業車両10の進行方向の前方であって、作業車両10の全幅(作業幅W1と同じ)に応じた幅を有する範囲に設定されている。図4及び図5では、作業地F1の内側領域F11に生成された作業経路r11を、第4外形線f14に向けて走行中の作業車両10を例示する。つまり、作業車両10の機体11から見て、その進行方向の前方に位置する第4外形線f14側に、監視範囲A10が設定されている。ここでは一例として、監視範囲A10の幅方向(左右方向D3)の範囲L2は、作業車両10の全幅よりもやや大きく設定されている。
【0090】
このように、検知処理部131は、検知対象物Ob1を検知する範囲を監視範囲A10に制限(限定)することにより、検知装置15から取得するデータ(測定情報)に対する情報処理の負荷を軽減でき、処理の高速化を図ることが可能である。特に、検知装置15が、ミリ波を利用したレーダ(ミリ波レーダ)、又は超音波(若しくは音波)を利用したソナーセンサである場合、検知装置15の出力にはノイズが多く含まれやすいところ、監視範囲A10を制限することで、検知対象物Ob1の検知精度の向上にもつながる。
【0091】
そして、監視範囲A10に検知対象物Ob1が存在する場合には、当該検知対象物Ob1を回避するべく作業車両10の制御が実行される。具体的に、検知処理部131が、監視範囲A10に検知対象物Ob1が存在すると判断した場合、検知結果を走行処理部132に出力する。このとき、走行処理部132は、検知処理部131の検知結果に基づいて、作業車両10の動作を牽制する牽制処理を実行する。本実施形態では、検知処理部131の検知結果が、監視範囲A10内の検知対象物Ob1の存在を示す結果である場合に、走行処理部132は牽制処理を実行する。本開示でいう「牽制処理」は、作業車両10の動作に関し、何かしら抑制する方向に作用する処理を意味する。一例として、牽制処理は、作業車両10の走行装置14等を制御することで、作業車両10の動作を直接的に牽制する制限処理を含む。さらに、牽制処理は、オペレータに対して、音又は光(表示を含む)により警告を行うことで、作業車両10の動作を間接的に牽制する警報処理を含む。
【0092】
本実施形態では、走行処理部132は、監視範囲A10に検知対象物Ob1が存在する場合に、少なくとも作業車両10の動作を制限する制限処理を実行し、作業車両10の動作を直接的に牽制する。一例として、制限処理は、走行装置14の走行動作を禁止する(走行動作不能とする)処理、検知対象物Ob1を回避しつつ作業車両10の走行を継続する処理、及び走行装置14の走行速度を低下させる処理等を含む。これにより、オペレータの操作によらずに、作業車両10の動作を強制的に制限し、作業車両10が動作することによる機体11と検知対象物Ob1との接触を回避できる。
【0093】
制御装置13は、上記制限処理に加えて又は代えて、例えば、端末装置20からオペレータに対して、音又は光(表示を含む)により警報処理を実行させてもよい。例えば、操作表示部23にて、検知対象物Ob1が存在することを示す表示を行うことで、オペレータに対して警告を出すことができる。
【0094】
ところで、本実施形態に係る制御方法は、図6図7及び図8に示すように、作業地F1を走行中の作業車両10の進行方向の前方であって、作業地F1の外形線(第1~第4外形線f11~f14)上、又は当該外形線より外側に設定される監視範囲A10内の検知対象物Ob1を検知すること、を有する。当該制御方法は、検知対象物Ob1の検知結果に基づいて作業車両10を走行させること、を有する。本実施形態では一例として、監視範囲A10は、外形線(第1~第4外形線f11~f14)より外側にまで設定されることとする。
【0095】
この構成によれば、作業地F1の外形線(第1~第4外形線f11~f14)上、又は当該外形線より外側にある検知対象物Ob1についても検知することが可能となる。例えば、図6図7及び図8に示すように、作業車両10が、作業地F1の内側領域F11に生成された作業経路r11を、第4外形線f14に向けて走行している場合、第4外形線f14のぎりぎりまで作業車両10を寄せたとしても、作業車両10の機体11に接触し得る検知対象物Ob1を検知することが可能である。したがって、作業地F1の外形線(第4外形線f14)の際まで前進経路(作業経路r11)に沿って作業車両10を走行させる場合でも、自動走行を継続することが可能であり、ユーザの監視負担を軽減しやすい。結果的に、作業地F1の外形線の際まで作業車両10を前進走行させやすい作業車両10の制御方法を実現可能である。
【0096】
ここで、監視範囲A10は、高さ方向(上下方向D1)の範囲L3(図6及び図7等参照)が規定されている。すなわち、作業地F1の外形線(第1~第4外形線f11~f14)上、又は当該外形線より外側にまで監視範囲A10を拡張する場合、例えば、畦又は雑草等、様々な物体が監視範囲A10に入り得る。そこで、監視範囲A10について、高さ方向の範囲L3に制限を設けることで、作業車両10の走行に影響のない物体を検知しにくくできる。
【0097】
特に、本実施形態では、監視範囲A10は、高さ方向の下限値が規定されている。つまり、監視範囲A10の高さ方向(上下方向D1)の範囲L3は、少なくとも下限値が制限される。これにより、例えば、図6及び図7のように、第4外形線f14より外側の畦を避けて監視範囲A10を設定することが可能である。
【0098】
また、監視範囲A10は、平面視において進行方向(前後方向D2)と直交する幅方向(左右方向D3)の範囲L2(図8等参照)が規定されている。すなわち、作業地F1の外形線(第1~第4外形線f11~f14)上、又は当該外形線より外側にまで監視範囲A10を拡張する場合、例えば、畦に設置された電柱等、様々な物体が監視範囲A10に入り得る。そこで、図8に示すように、監視範囲A10について、幅方向の範囲L2に制限を設けることで、作業車両10の走行に影響のない物体を検知しにくくできる。
【0099】
同様に、監視範囲A10は、図4及び図5に示すように、進行方向(前後方向D2)の範囲として奥行L1についても規定されている。これにより、本実施形態では、監視範囲A10は、高さ方向(上下方向D1)、幅方向(左右方向D3)、及び進行方向(前後方向D2)の3軸に関して、それぞれ範囲が制限されることになる。
【0100】
ところで、図4及び図5に示すように、監視範囲A10において、高さ方向の範囲L3、幅方向の範囲L2、及び進行方向の範囲(奥行L1)に関しては、基本的には、作業車両10の機体11を基準に設定される。つまり、作業車両10が作業地F1内を走行し、機体11の位置、姿勢及び方位が変化しても、作業車両10の機体11から見た監視範囲A10は変化しない。
【0101】
ただし、奥行L1のうちの最大値に関しては、作業地F1の外形線(第1~第4外形線f11~f14)を基準に設定される。具体的に、図6図7及び図8に示すように、監視範囲A10の進行方向の奥行L1は、外形線(第1~第4外形線f11~f14)から所定距離L10だけ外側の位置までに制限される。
【0102】
すなわち、例えば、図6に示すように、作業車両10が進行方向の前方に位置する外形線(第4外形線f14)から十分に離れた状態では、監視範囲A10の進行方向の奥行L1の最遠端は、所定距離L10によらずに外形線(第4外形線f14)以遠にも設定可能である。一方、例えば、図7及び図8に示すように、作業車両10が進行方向の前方に位置する外形線(第4外形線f14)に寄った状態では、監視範囲A10の進行方向の奥行L1の最遠端は、所定距離L10に制限される。このように、監視範囲A10の進行方向の奥行L1は、作業地F1の外形線(第1~第4外形線f11~f14)を基準に設定(制限)されるので、作業車両10が作業地F1内を走行し、機体11の位置、姿勢及び方位が変化すれば、作業車両10の機体11から見た監視範囲A10の奥行L1のみ変化することになる。
【0103】
これにより、例えば、電柱又は人等の物体が、作業地F1の周囲に存在しており、当該物体が作業車両10の走行の妨げとなり得ない場合には、これらを検知対象物Ob1として検知することを回避することが可能である。つまり、外形線(第1~第4外形線f11~f14)から所定距離L10だけ外側の位置を監視範囲A10の奥行L1の上限とすることで、それ以遠の物体を検知対象物Ob1として検知することを回避できる。
【0104】
そして、本実施形態に係る制御方法では、このように設定される監視範囲A10に検知対象物Ob1が存在しない場合、作業車両10の少なくとも前端部が外形線から所定距離L10はみ出す位置まで作業車両10を走行させることが可能である。つまり、外形線上、又は外形線より外側にまで監視範囲A10が拡張されることで、監視範囲A10内の検知対象物Ob1の存否は確認できるため、作業車両10の少なくとも前端部が外形線から所定距離L10はみ出す位置まで作業車両10を走行(前進)させても、機体11が検知対象物Ob1に接触することは回避できる。結果的に、作業車両10の機体11を作業地F1の外形線の際まで寄せることが可能となる。
【0105】
ここで、所定距離L10は、作業車両10の作業幅W1に基づいて設定される。本実施形態では一例として、図8に示すように、作業車両10の作業幅W1に相当する未作業幅W2が、作業地F1の外周部となる枕地領域F12に残る状態での、外形線(第4外形線f14)からの機体11のはみ出し量にマージンを加えた値が、所定距離L10として設定されている。これにより、作業車両10の機体11を作業地F1の外形線の際まで寄せた際に、作業車両10の作業幅W1に相当する未作業幅W2を、作業地F1の外周部となる枕地領域F12に残すことができる。結果的に、外周作業経路r13を作業地F1の外周に沿って1行程(1周)のみ設定することで、作業地F1の全域について作業を行うことができる。
【0106】
さらに、本実施形態では、図9に示すように、監視範囲A10に検知対象物Ob1が存在する場合、当該検知対象物Ob1に作業車両10の前端部が到達する手前の位置まで作業車両10を走行させることが可能である。すなわち、監視範囲A10内の検知対象物Ob1(図9の例では「電柱」)が検知された場合でも、直ちに作業車両10を停止させるのではなく、当該検知対象物Ob1に機体11の前端部(例えば、予備苗置台)が接触する手前の位置までは、作業車両10を寄せることが可能である。この場合、機体11から検知対象物Ob1までの距離が閾値以下になると、作業車両10の走行速度を低下させることが好ましい。これにより、作業地F1の外側に検知対象物Ob1(障害物)が存在する場合でも、作業車両10の機体11を作業地F1の外形線の際まで寄せることが可能となる。
【0107】
また、本実施形態に係る制御方法は、作業車両10の作業地F1の外周部(枕地領域F12)での旋回方向に従って、監視範囲A10を幅方向(左右方向D3)に拡大すること、を更に有する。すなわち、監視範囲A10の幅方向(左右方向D3)の範囲L2は固定値ではなく、左方と右方との少なくとも一方に拡大可能である。
【0108】
図10では、作業車両10が目標経路R1の非作業経路r12に沿って右旋回する状況を例示する。この場合、監視範囲A10の幅方向(左右方向D3)の範囲L2は、旋回方向である右方向に拡大されている。これにより、作業車両10が旋回走行する際に作業車両10の機体11が通る領域を監視範囲A10に含めることができるので、機体11が接触し得る検知対象物Ob1を検知しやすくなる。
【0109】
さらに、本実施形態に係る制御方法は、検知対象物Ob1の検知結果に基づいて、作業車両10の自動走行時における作業地F1の外周部(枕地領域F12)での旋回態様を変更する。すなわち、図10に例示するように、旋回方向の監視範囲A10に検知対象物Ob1(ここでは「電柱」)が存在する場合、当該検知対象物Ob1を回避するように、旋回態様を変更する。例えば、図10の状態では、そのまま作業車両10が旋回走行を行うと機体11が検知対象物Ob1に接触するおそれがあるので、旋回態様を、例えば、「フィッシュテールターン」又は「ドン突きバック」のように、前進と後進とを切り替えつつ機体11を旋回させる態様に変更する。具体的に、図10の例では、機体11を右方向に旋回しながら前進させ、その後、機体11を真っ直ぐ後進させ、最後に、機体11を右方向に旋回しながら前進させる「フィッシュテールターン」により、検知対象物Ob1を回避可能である。
【0110】
このように旋回態様を変更することで、機体11と検知対象物Ob1との接触を回避しながらも、作業車両10の自動走行を継続することが可能となる。あるいは、旋回態様として、緩旋回のまま旋回半径のみを変更することで、検知対象物Ob1を回避することも可能である。
【0111】
さらに、本実施形態に係る制御方法は、検知対象物Ob1の検知結果に基づいて、監視範囲A10を幅方向(左右方向D3)に拡大してもよい。これにより、例えば、図10のように、監視範囲A10内に検知対象物Ob1が存在する場合、監視範囲A10を幅方向(左右方向D3)に更に拡大し、より広範囲の検知対象物Ob1を検知することが可能となる。したがって、より広範囲の検知対象物Ob1を考慮して、旋回態様を変更することが可能となる。
【0112】
また、上述したような監視範囲A10内の検知対象物Ob1の検知処理を実行するのは、作業車両10の自動走行中に限らず、ティーチング走行中を含む手動走行(手動運転)中であってもよい。ティーチング走行中に、監視範囲A10内の検知対象物Ob1の検知処理を行う場合、検知処理部131は、例えば、機体11の側面に取り付けられた検知装置15の測定情報に基づいて、検知対象物Ob1を検知してもよい。
【0113】
[3.3]全体処理
次に、制御方法に係る処理の全体の流れについて、図11を参照して説明する。
【0114】
図11に示すように、制御システム1は、ユーザ(オペレータ)からの走行開始指示の有無を判断する(S1)。操作表示部23に対する特定の操作がされると、制御システム1は、走行開始指示があった判断し(S1:Yes)、処理をステップS2に移行させる。走行開始指示がなければ(S1:No)、制御システム1は、ステップS1の判断を継続する。
【0115】
ステップS2では、作業車両10の検知処理部131は、監視範囲A10を設定する。このとき、検知処理部131は、所定距離L10を設定し、監視範囲A10の進行方向の奥行L1については、外形線(第1~第4外形線f11~f14)から所定距離L10だけ外側の位置までに制限する。これにより、作業地F1の外形線より外側にも監視範囲A10が設定される。そして、検知処理部131は、検知装置15の出力に基づいて、監視範囲A10における検知対象物Ob1の検知(検知処理)を開始する(S3)。
【0116】
次の、ステップS4では、作業車両10の走行処理部132は、目標経路R1に従って作業車両10の自動走行を開始する。走行処理部132は、作業地F1のうち外周部となる枕地領域F12を除く内側領域F11において、作業車両10に、複数の作業経路r11を往復走行させつつ植付け作業を行わせる(S5)。その後、走行処理部132は、作業地F1のうち外周部となる枕地領域F12において、作業車両10に、外周作業経路r13を周回走行させつつ植付け作業を行わせる(S6)。
【0117】
ただし、図11に示すフローチャートは一例に過ぎず、処理が適宜追加又は省略されてもよいし、処理の順番が適宜入れ替わってもよい。
【0118】
[4]変形例
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0119】
本開示における制御システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしての1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラム(作業車両用制御プログラム)をプロセッサが実行することによって、本開示における制御システム1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、制御システム1に含まれる一部又は全部の機能部は電子回路で構成されていてもよい。
【0120】
また、制御システム1の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていることは制御システム1に必須の構成ではなく、制御システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。反対に、実施形態1において、複数の装置(例えば制御装置13及び端末装置20)に分散されている機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。さらに、制御システム1の少なくとも一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0121】
また、端末装置20は、タブレット端末、スマートフォン又はラップトップコンピュータ等の汎用端末に限らず、専用端末で構成されていてもよい。さらに、1台の作業車両10に対して複数台の端末装置20が対応付けられていてもよい、この場合、複数台の端末装置20にて1台の作業車両10を制御可能である。反対に、複数台の作業車両10に対して1台の端末装置20が対応付けられていてもよく、この場合、1台の端末装置20にて複数台の作業車両10を制御可能である。
【0122】
また、上述した目標経路R1は一例に過ぎず、適宜変更が可能である。例えば、作業車両10の作業方向(作業経路r11の方向)、及び/又は、作業経路r11の走行順序等についても、適宜変更可能である。
【0123】
また、検知装置15は、ミリ波を利用したレーダ(ミリ波レーダ)、又は超音波(若しくは音波)を利用したソナーセンサに限らず、例えば、LiDAR、人感センサ又はカメラ(イメージセンサ)等であってもよい。
【0124】
(実施形態2)
本実施形態に係る作業車両10の制御方法は、図12に示すように、複数の作業経路r11の各々についての作業終了位置に基づいて、外周作業経路r13を補正可能である点で、実施形態1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0125】
本実施形態に係る作業車両10の制御方法では、図12に示すように、作業地F1には進行方向に沿って複数の作業経路r11が設定されている。この制御方法では、複数の作業経路r11上を作業車両10が作業走行した後、複数の作業経路r11の各々についての作業終了位置に基づいて、作業車両10に作業地F1の外周部(枕地領域F12)を作業走行させる。図12は、作業車両10が複数の作業経路r11についての作業走行を終えた状況を示している。図12において、網掛け領域は、作業車両10が複数の作業経路r11上を作業走行して作業が完了した領域を表している。
【0126】
図12の例では、複数の作業経路r11のうち一部(左から3番目と右から4番目)の作業経路r11に関して、その進行方向の前方の第4外形線f14の奥に、検知対象物Ob1(ここでは「電柱」)が存在するため、当該作業経路r11においては、作業終了位置が他よりも手前となっている。つまり、検知処理部131によって監視範囲A10内の検知対象物Ob1が検知された結果、作業車両10が作業経路r11の終端まで到達せずに停止したケースを想定しており、そのために、内側領域F11には一部、未作業領域が生じている。
【0127】
このような場合において、走行処理部132は、複数の作業経路r11の各々についての作業終了位置に基づいて、外周作業経路r13を補正することで、内側領域F11の未作業領域をカバーする。具体的に、走行処理部132は、複数の作業経路r11の走行時、各作業経路r11の作業終了位置を記憶し、当該複数の作業終了位置に基づいて、外周作業経路r13の補正を行う。すなわち、走行処理部132は、図12において、第4外形線f14側の外周作業経路r13を、想像線(二点鎖線)で示す元々の直線状の経路から、実線で示す一部蛇行した経路へと補正する。これにより、作業車両10は、外周作業経路r13を走行する際に、内側領域F11の未作業領域について植付け作業を実施可能となる。
【0128】
ただし、複数の作業経路r11における作業終了位置のばらつき量(ずれ量)が判定閾値以下である場合、及び/又は、複数の作業経路r11のうち作業終了位置が手前にずれている作業経路r11の数が所定回数以下である場合には、外周作業経路r13の補正を行わないことが好ましい。この場合、例えば、複数の作業経路r11における作業終了位置のばらつき量(ずれ量)が僅かであれば、作業車両10は、蛇行せずに直線状の外周作業経路r13を走行することが可能である。
【0129】
実施形態2の構成は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0130】
〔発明の付記〕
以下、上述の実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0131】
<付記1>
作業地を走行しつつ、作業機によって前記作業地内で作業を行う作業車両の制御方法であって、
前記作業地を走行中の前記作業車両の進行方向の前方であって、前記作業地の外形線上、又は当該外形線より外側に設定される監視範囲内の検知対象物を検知することと、
前記検知対象物の検知結果に基づいて前記作業車両を走行させることと、を有する、
作業車両の制御方法。
【0132】
<付記2>
前記監視範囲は、高さ方向の範囲が規定されている、
付記1に記載の作業車両の制御方法。
【0133】
<付記3>
前記監視範囲は、前記高さ方向の下限値が規定されている、
付記2に記載の作業車両の制御方法。
【0134】
<付記4>
前記監視範囲の前記進行方向の奥行は、前記外形線から所定距離だけ外側の位置までに制限される、
付記1~3のいずれかに記載の作業車両の制御方法。
【0135】
<付記5>
前記監視範囲に前記検知対象物が存在しない場合、前記作業車両の少なくとも前端部が前記外形線から前記所定距離はみ出す位置まで前記作業車両を走行させることが可能である、
付記4に記載の作業車両の制御方法。
【0136】
<付記6>
前記監視範囲に前記検知対象物が存在する場合、当該検知対象物に前記作業車両の前端部が到達する手前の位置まで前記作業車両を走行させることが可能である、
付記4又は5に記載の作業車両の制御方法。
【0137】
<付記7>
前記所定距離は、前記作業車両の作業幅に基づいて設定される、
付記4~6のいずれかに記載の作業車両の制御方法。
【0138】
<付記8>
前記監視範囲は、平面視において前記進行方向と直交する幅方向の範囲が規定されている、
付記1~7のいずれかに記載の作業車両の制御方法。
【0139】
<付記9>
前記作業車両の前記作業地の外周部での旋回方向に従って、前記監視範囲を前記幅方向に拡大すること、を更に有する、
付記8に記載の作業車両の制御方法。
【0140】
<付記10>
前記検知対象物の検知結果に基づいて、前記作業車両の自動走行時における前記作業地の外周部での旋回態様を変更する、
付記1~9のいずれかに記載の作業車両の制御方法。
【0141】
<付記11>
前記作業地には前記進行方向に沿って複数の作業経路が設定されており、
前記複数の作業経路上を前記作業車両が作業走行した後、前記複数の作業経路の各々についての作業終了位置に基づいて、前記作業車両に前記作業地の外周部を作業走行させる、
付記1~10のいずれかに記載の作業車両の制御方法。
【0142】
<付記12>
付記1~11のいずれかに記載の作業車両の制御方法を、
1以上のプロセッサに実行させるための作業車両用制御プログラム。
【符号の説明】
【0143】
1 作業車両用制御システム
10 作業車両
11 機体
12 作業機
100 作業システム
131 検知処理部
132 走行処理部
A10 監視範囲
D1 上下方向(高さ方向)
D2 進行方向(前後方向)
D3 左右方向(幅方向)
F1 作業地
F12 枕地領域(外周部)
f11~f12 第1~第4外形線(外形線)
L1 奥行
L2 幅方向の範囲
L3 高さ方向の範囲
L10 所定距離
Ob1 検知対象物
r11 作業経路
W1 作業幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12