IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社安藤・間の特許一覧 ▶ 光洋機械産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-飛行体補助装置の昇降システム 図1
  • 特開-飛行体補助装置の昇降システム 図2
  • 特開-飛行体補助装置の昇降システム 図3
  • 特開-飛行体補助装置の昇降システム 図4
  • 特開-飛行体補助装置の昇降システム 図5
  • 特開-飛行体補助装置の昇降システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168510
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】飛行体補助装置の昇降システム
(51)【国際特許分類】
   B64U 70/97 20230101AFI20241128BHJP
   B64U 80/40 20230101ALI20241128BHJP
   B64U 70/80 20230101ALI20241128BHJP
   B64U 101/70 20230101ALN20241128BHJP
【FI】
B64U70/97
B64U80/40
B64U70/80
B64U101:70
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085250
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(71)【出願人】
【識別番号】000167233
【氏名又は名称】光洋機械産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 昭臣
(72)【発明者】
【氏名】村石 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】千坂 修
(72)【発明者】
【氏名】立田 昌宏
(57)【要約】
【課題】複数の階層を有する構造物において飛行体を飛行させる際、飛行体補助装置を好適に使用し得る飛行体補助装置の昇降システムを提供する。
【解決手段】複数の階層F1~F3を有する構造物100に設置され、階層F1~F3間を移動可能に構成された昇降体32を備えた昇降装置3と、無人で飛行する飛行体1と、飛行体1を離着可能に構成され、飛行体1の運用に関する機能を備えた飛行体補助装置2とを備え、飛行体補助装置2を昇降体32に積載して階層F1~F3間を移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階層を有する構造物に設置され、階層間を移動可能に構成された昇降体を備えた昇降装置と、
無人で飛行する飛行体と、
前記飛行体を離着可能に構成され、前記飛行体の運用に関する機能を備えた飛行体補助装置とを備え、
前記飛行体補助装置を前記昇降体に積載して階層間を移動させるよう構成されたこと
を特徴とする飛行体補助装置の昇降システム。
【請求項2】
前記飛行体補助装置は、前記飛行体との通信または前記飛行体の充電の少なくとも一方を実行し得るよう構成されていること
を特徴とする請求項1に記載の飛行体補助装置の昇降システム。
【請求項3】
前記昇降装置の動作を遠隔で実行し得るよう構成されていること
を特徴とする請求項1に記載の飛行体補助装置の昇降システム。
【請求項4】
1台以上の前記飛行体補助装置と、複数台の前記飛行体が備えられていること
を特徴とする請求項1に記載の飛行体補助装置の昇降システム。
【請求項5】
前記構造物は建設中または解体中の建築物であり、前記昇降装置は、前記構造物の床に設けられた開口を通すように設置されること
を特徴とする請求項1に記載の飛行体補助装置の昇降システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人式の飛行体の運用において、該飛行体の各種補助を行う装置を昇降させつつ使用するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローンと称される無人式の飛行体に関する技術の開発が様々な分野で進められている。有人式の飛行装置と比較して小型で軽量であり、操作性にも優れ、人が搭乗しないため費用も安価で運用上の安全性も高いドローンは、画像の撮影や物資の運搬、薬剤の散布など、多岐にわたる用途に使用されている。
【0003】
尚、航空法では、重量が200g以上で、遠隔操作または自動操縦により無人で飛行する装置がドローンと定義されるが、慣習上は200g未満の同様の装置もドローン、あるいはトイドローン等と呼ばれる場合がある。本明細書では、これらの「遠隔操作または自動操縦により無人で飛行する装置」をまとめて「ドローン」あるいは「飛行体」と称することとする。
【0004】
ドローン技術に関し、最近では、ドローンの運用に伴い補助的に使用される装置として、ドローンドックやドローンポート、ドローンステーション等と称される装置が一般に実用化されている。こうした装置は、ドローンを離着させる基地として機能し、着床させたドローンをそのまま格納したり、格納したドローンの電源装置を充電するなど、ドローンの運用における各種の補助を行うようになっている(以下、本明細書では、ドローンを離着可能に構成され、ドローンの格納、充電、ドローン本体の遠隔操作または自動操縦のための通信、ドローンに搭載された装置の操作のための通信、ドローン本体またはドローンに搭載された装置との間における各種のデータの送受信、といったドローンの運用に関する補助を行う装置を「補助装置」または「飛行体補助装置」と称する。すなわち、ドローンの運用に伴って使用される装置であって、少なくともドローンを離着機能を備えるほか、上に挙げた各種の機能またはそれ以外のドローンの運用に関する機能のうち、一個以上を備えた装置を「補助装置」または「飛行体補助装置」と称するものとする)。
【0005】
こうしたドローンの補助装置に関する技術を記載した先行技術文献としては、例えば、下記特許文献1~3等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-82189号公報
【特許文献2】特開2021-30756号公報
【特許文献3】特許第7050375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述の如き補助装置をドローンと共に使用する際、周囲の状況や、補助装置とドローンとの間の距離によっては、ドローンの操作が困難であったり、補助装置によるドローンの補助機能を十全に発揮できないといった場合が想定できる。例えば、複数の階層を有する建物内でドローンを飛行させる際、ある階に補助装置を設置し、該補助装置から離床させたドローンを別の階まで飛行させることを考えると、階の移動に伴い飛行経路が複雑になる分、遠隔操作の場合は経路に応じた操作入力の難度が高まるし、自動操縦を行う場合は飛行経路の設定が煩雑になる。また、飛行経路が複雑になれば、ドローンと補助装置との間の無線通信が障害物によって妨げられることで、遠隔操作や自動操縦に必要な電波状況の確保がしにくくなることも考えられる。
【0008】
また、充電式の電源装置をドローンに搭載し、補助装置によって充電を行う場合、ドローンは補助装置を離床した後、電力の持続時間内に補助装置に着床させる必要がある。ドローンの飛行経路が複雑であれば、それだけ飛行に時間がかかるため、補助装置からの飛行可能な距離が制限されたり、あるいは電力の持続時間内にドローンが補助装置へ帰着できないといった事態が発生する懸念がある。
【0009】
つまり、ドローンと共に補助装置を使用する場合、原則として、補助装置とドローンとの間はなるべく近く、また、その飛行経路上あるいはその近辺には障害物が少ないことが望ましく、したがって、複数の階層を有する建物等の構造物においてドローンを使用する際には、ドローンを飛行させる階と同じ階に補助装置を設置することが好適であると言える。しかしながら、階を移動する度にドローンと共に補助装置を行き来させるという手順は煩雑である。例えば、工事現場の定期的な巡回等にドローンを使用する場合、巡回の度に(例えば、毎日朝夕の二回)巡回作業員がドローンと共に補助装置を持って各階を移動し、補助装置を設置してはドローンを飛行させる、という手間が生じ、非常に面倒である。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、複数の階層を有する構造物において飛行体を飛行させる際、飛行体補助装置を好適に使用し得る飛行体補助装置の昇降システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数の階層を有する構造物に設置され、階層間を移動可能に構成された昇降体を備えた昇降装置と、無人で飛行する飛行体と、前記飛行体を離着可能に構成され、前記飛行体の運用に関する機能を備えた飛行体補助装置とを備え、前記飛行体補助装置を前記昇降体に積載して階層間を移動させるよう構成されたことを特徴とする飛行体補助装置の昇降システムにかかるものである。
【0012】
本発明の飛行体補助装置の昇降システムにおいて、前記飛行体補助装置は、前記飛行体との通信または前記飛行体の充電の少なくとも一方を実行し得るよう構成することができる。
【0013】
本発明の飛行体補助装置の昇降システムにおいては、前記昇降装置の動作を遠隔で実行し得るよう構成することができる。
【0014】
本発明の飛行体補助装置の昇降システムは、1台以上の前記飛行体補助装置と、複数台の前記飛行体を備えることができる。
【0015】
本発明の飛行体補助装置の昇降システムにおいて、前記構造物は建設中または解体中の建築物とし、前記昇降装置は、前記構造物の床に設けられた開口を通すように設置することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の飛行体補助装置の昇降システムによれば、複数の階層を有する構造物において飛行体を飛行させる際、飛行体補助装置を好適に使用するという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施による飛行体補助装置の昇降システムの全体的な構成の一例を示す概要図である。
図2】飛行体補助装置の昇降システムにおける情報的な構成の一例を示すブロック図である。
図3】飛行体補助装置の昇降システムを用いた飛行体の運用の一段階を示す概要図である。
図4】飛行体補助装置の昇降システムを用いた飛行体の運用の別の一段階を示す概要図である。
図5】本発明の参考例による飛行体の運用の一段階を示す概要図である。
図6】本発明の実施による飛行体補助装置の昇降システムの構成の別の一例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
本発明の飛行体補助装置の昇降システムは、図1図2に示す如く、複数の階層(ここに示した例では、F1~F3の3層)を有する構造物100内で無人式の飛行体(ドローン)1および飛行体補助装置(ドローンドック)2を使用するよう構成されており、階層F1~F3間を上下に移動する昇降装置3を備えると共に、該昇降装置3に飛行体補助装置2を設置したことを特徴としている。
【0020】
飛行体1および飛行体補助装置2としては、それぞれドローンおよびドローンドック(あるいはドローンポート、ドローンステーション等)として製造販売されている一般的な製品を使用することができる。ドローンである飛行体1は、偶数個(例えば4個)のプロペラを備えて構成される飛行部11と、該飛行部11の動作を制御する制御装置である制御部12を備えており、制御部12から入力される制御信号により、飛行部11を構成する各プロペラのオンオフおよび回転数が制御され、これにより、上昇や下降、水平飛行や方向転換、飛行速度の調整といった飛行動作に関する制御が行われるようになっている。
【0021】
また、飛行体1は、飛行体補助装置2との間で通信を行う通信部13を備えており、飛行体1を手動で操縦する場合には、後述する端末装置4、あるいは専用の図示しないコントローラ等から通信部13に対して入力される操作信号に応じ、制御部12から飛行部11に対し制御信号が入力され、飛行に関する操作が行われるようになっている。尚、手動操縦の場合、操作信号は端末装置4やコントローラから飛行体1へ直接入力することもできるし、飛行体補助装置2にて中継することもできる(ここに示した例では、端末装置4からネットワークを介して飛行体補助装置2に操作信号を入力することができるようになっている)。
【0022】
また、本実施例の場合、飛行体1はさらに、周囲の映像を撮像し、画像データとして取得するカメラである撮像装置14を搭載している。撮像装置14により取得された画像データは、制御部12の記憶部12aに格納される。
【0023】
制御部12のマップ作成部12bは、記憶部12aに格納された画像データに基づき、周辺環境のマップ(環境地図)を三次元または二次元のデータとして作成するようになっている。あるいは、飛行体1に備えた記憶部12aの代わりに、例えば通信部13を介してネットワークまたは飛行体補助装置2や端末装置4等の外部の機器に画像データを送信・格納し、これを環境地図の作成に利用するようにしてもよい。
【0024】
また、制御部12の自己位置判定部12cは、撮像装置14によって取得される現在の画像データに基づき、前記環境地図における飛行体1の現在位置を判定するようになっている。すなわち、飛行体1において、撮像装置14と制御部12のマップ作成部12b、自己位置判定部12cは、所謂ビジュアルSLAM機能を構成している。これにより、本実施例の飛行体1は、環境中における自己の位置を認識して自律飛行を行うことができるようになっている。すなわち、制御部12では、マップ作成部12bにより作成された環境地図を読み出すと共に、自己位置判定部12cにより判定される自己位置を前記環境地図に照合し、予めセッティングされた飛行経路に沿って飛行体1が飛行するよう、飛行部11を自律的に操作することができる。
【0025】
尚、環境地図の作成や自己位置の判定は、これ以外の機構によっても行うことができ、ここに説明したビジュアルSLAMの代わりに、例えばレーザ式の測距計によるLiDAR SLAMを搭載してもよい。また、環境地図の作成や飛行体1の位置の判定といった機能を、飛行体補助装置2やその他の情報端末といった外部の機器に持たせることも理論上は可能である。その場合、飛行体1の飛行は、前記外部機器から入力される操作信号に基づいて行うとよい。
【0026】
撮像装置14によって取得された画像データや、作成された環境地図のデータは、上述した自律飛行のほか、適宜の目的に利用することができる。例えば、室内で飛行体1を飛行させて作成した環境地図は、室内の見取り図や3Dデータとして利用することができる。また、撮像装置14によって取得された静止画または動画データは、そのまま写真や映像として利用できるし、写真や映像の内容を作業員が確認することで、対象とする空間内の状況を把握するといった使い方(つまり、作業員が現場を直接巡回する代わりに、飛行体1に巡回させるという使い方)も可能である。
【0027】
飛行体1によって収集される各種のデータは、例えば通信部13から無線通信によりリアルタイムで飛行体補助装置2やその他の外部の機器へ送信してもよいし、記憶部12aに格納しておき、飛行体1が帰着してから読み出すようにしてもよい。
【0028】
飛行部11、制御部12、通信部13、撮像装置14およびその他に飛行体1に搭載される各部の動作は、充電式の電源装置である動力部15から供給される電力によって駆動される。
【0029】
ドローンドックである飛行体補助装置2は、飛行体1を離着させる床面を備えるほか、充電部21、通信部22および制御部23を備えている。充電部21は、前記床面に着床した飛行体1の動力部15に対し充電を行うことができるようになっている。通信部22は、飛行体1の通信部13と通信を行う。通信部13,22間の通信は、無線で行うようにしてもよいし、有線で行うようにしてもよく、その両方の機能を備えてもよい。無線で通信を行う場合には、飛行中の飛行体1と飛行体補助装置2との間で信号やデータをやり取りすることができ、例えば上述の如く、飛行体1の飛行を飛行体補助装置2から入力される信号によって操作したり、飛行体1において収集されたデータをリアルタイムで取得することができる。
【0030】
また、飛行体補助装置2の通信部13は、無線または有線通信により外部のネットワークに接続するようになっている。さらに、該ネットワークにPCやタッチパネル等の情報処理装置である端末装置4を接続し、該端末装置4と飛行体補助装置2との間で、各種のデータのやり取りを行うことができる。すなわち、飛行体補助装置2における各種の動作(例えば、充電部21による充電)や設定等を端末装置4で操作したり、飛行体1で収集され飛行体補助装置2で読み出されたデータをさらに端末装置4で読み出すといったことが可能である。また、例えば端末装置4への操作入力を飛行体補助装置2を介して飛行体1に入力し、これによって飛行体1の操作を行うこともできるし、また、例えば端末装置4において飛行経路を設定し、これに基づいて飛行体1の自律飛行を行うこともできる。尚、飛行体補助装置2と端末装置4との間は、ネットワークを介さず、無線または有線通信により直接接続するようにしてもよい。
【0031】
また、図示は省略するが、端末装置4と飛行体1を無線または有線通信により直接接続し、飛行体補助装置2を介さずに各種の信号やデータのやり取りをするといったことも可能である。その他、各種の機能を好適に実行し得る限りにおいて、飛行体1、飛行体補助装置2および端末装置4における機能の分担は適宜設定し得る。
【0032】
昇降装置3は、図1に示す如く、構造物100の階層F1~F3間を上下に貫通する形で設けられている。特に、建設中の構造物や解体中の構造物においては、階層間における資材の搬送の利便のため、床に駄目穴と呼ばれる一時的な開口が設けられる場合があり、階層が3層以上ある場合、この駄目穴は各階の同じ位置に設けられることが多い。本実施例では、階層F2,F3の床の同じ位置にそれぞれ駄目穴(開口)5が設けられており、これらの開口5を上下に貫通するように、昇降装置3のシャフト31が設置されている。尚、構造物にこのような構成の昇降装置を設けるにあたり、利用し得る開口は駄目穴に限らない。床を貫通するように設けられた開口であれば適宜、昇降装置の設置に利用でき、さらに床の同じ位置に設けられた開口であれば特に好適である。例えば、エレベータやダムウェーターを設置するための穴も、昇降装置を設置する開口として利用することができる。
【0033】
昇降装置3は、上下方向に沿って延びるシャフト31と、該シャフト31に沿って上下に昇降する昇降体32を備えている。昇降体32は、例えば籠あるいは台であり、飛行体補助装置2を積載し、シャフト31に沿って階層F1~F3間を上下に移動するようになっている。
【0034】
昇降体32は、図示しないウインチ等の動力機構によって上下に動作するようになっており、該動力機構の動作は制御部33によって制御される。また、制御部33は通信部34を通じて無線または有線通信によりネットワークに接続され、同じネットワークに接続された端末装置4への操作入力により、昇降体32の動作を遠隔で操作することができるようになっている。尚、昇降装置3と端末装置4との間は、ネットワークを介さず、無線または有線通信により直接接続するようにしてもよい。あるいは、外部の機器によって昇降装置3を遠隔操作するのではなく、現地で作業員が昇降装置3を操作するよう構成することも勿論可能である。
【0035】
尚、ここに示した飛行体1や飛行体補助装置2の構成や機能はあくまで一例であって、本発明を実施するにあたって適宜変更し得る。例えば、飛行体1には、カメラや地図作成機能に代えて、あるいは加えて、別の装置や機能、例えば積荷を運搬する機能や、薬剤や塗料を散布する機能を備えてもよい。
【0036】
次に、上記した本実施例の作動を説明する。ここでは特に、建設中の構造物100において、飛行体1に搭載した撮像装置14を用いて各階層F1~F3の巡回を行う場合を想定して説明する。
【0037】
本実施例のシステムでは、複数の階層F1~F3を備えた構造物100において、飛行体補助装置2と飛行体1を同じ階層で使用するにあたり、飛行体補助装置2の階層F1~F3間における移動を昇降装置3によって簡便に行えるようになっている。
【0038】
まず、最初の階層F1の巡回を行う。飛行体1を着床させた飛行体補助装置2を昇降装置3の昇降体32に積載し、該昇降体32を目的の階層F1に移動させる(尚、巡回作業の開始前に昇降体32および飛行体補助装置2が目的の階層F1にある場合は、昇降体32の移動は必要ない)。昇降体32が目的の階層F1に到着したら、飛行体補助装置2から飛行体1を離床させ、階層F1内を飛行させる(図3参照)。飛行体1の自己位置判定部12cは、記憶部12aに格納された環境地図データを読み出し、これと撮像装置14によって取得される画像を照合し、環境内における現在位置を判定する。制御部12は、こうして飛行体1の現在位置を判定しつつ、飛行部11の動作を制御し、予め設定された飛行経路に沿って飛行体1を飛行させる。尚、飛行体1の飛行は、飛行体補助装置2または端末装置4により遠隔操作してもよい。
【0039】
飛行に伴い、撮像装置14は周辺環境の画像を取得する。取得された画像データは、例えば飛行体補助装置2を介して端末装置4に送られるか、あるいは記憶部12aに一旦格納され、飛行体1が飛行体補助装置2に帰着してから読み出される。作業員は、この画像データによって目的の階層F1内の状況を把握することができる。
【0040】
最初の階層F1における飛行体1の飛行が済んだら、次の階層F2へ移る。昇降体32に積載された飛行体補助装置2に飛行体1を帰着させ、昇降体32を次の階層F2に移動させる。このとき、昇降体32の動作は、作業員が現地で直接操作してもよいし、ネットワークに接続した端末装置4から遠隔で行うようにしてもよい。遠隔で行う場合、作業員が現場で昇降装置3の操作をすることなく、階層F1~F3間で飛行体1と飛行体補助装置2を運用することができる。
【0041】
飛行体補助装置2から飛行体1を離床させ、階層F2内を飛行させる(図4参照)。階層F2の巡回が済んだら、さらに飛行体補助装置2を昇降体32で階層F3に移動させ、そこから飛行体1を飛行させて階層F3の巡回を行う。
【0042】
このように階層F1~F3間を移動させながら各階層において飛行体1の飛行を行う場合、飛行体1の自律飛行や、飛行体1の遠隔操作、飛行体1によって収集されたデータの活用等のため、飛行体1が飛行する対象の階層を都度特定する必要がある。階層の特定は、例えば、昇降装置3の操作に伴い作業員が階層のフラグを端末装置4へ入力することで行ってもよいし、昇降装置3の動作と飛行体1や飛行体補助装置2の動作を紐づけることによって自動で行うようにすることもできる。また、飛行体1側で各階層の視覚的な特徴点に基づき階層を自動で認識するといったことも可能である。
【0043】
本実施例のような昇降装置3を用いた飛行体1の運用は、種々の面で便利である。上に述べたように、飛行体補助装置2を伴って飛行体1を使用する場合、両者の間はなるべく近く、障害物も少ないことが望ましいからである。
【0044】
飛行体1において三次元の環境地図を作成し、これに基づき自律飛行を行う場合や、階層を跨いでも遠隔操作に必要な電波状況を確保できる場合には、例えば図5に参考例として示すように、目的の階層に飛行体補助装置2を移動させず、ある階に設置した飛行体補助装置2から別の階へ飛行体1を飛行させることも原理的には可能である。しかしながら、このようにする場合、階の移動に伴い飛行経路が複雑になるため、自律飛行を行う場合には飛行経路の設定が煩雑になる。また、遠隔操作を行う場合は操作入力が難しくなる。さらに、飛行体1と飛行体補助装置2との間で無線通信を行う場合には、飛行経路上に存在する障害物により、必要な電波状況が確保しにくくなることも考えられる。
【0045】
また、特にビジュアルSLAM機能による自律飛行を行う場合、飛行体1は取得した画像内に検出される特徴点に基づいて自己の位置を判定するため、特徴点やその周辺の状況が変化した場合に位置の判定が困難になってしまうという問題もある。特に建設中の構造物100の巡回を想定すると、工事中の現場では環境内の状況が頻繁に変化するので、そういった問題が生じやすい。飛行経路が長かったり、複雑であったりすれば尚更である。本実施例のようにすれば、飛行体1を飛行体補助装置2のなるべく近傍で運用することにより、特徴点の変化という問題の発生を軽減することができる。
【0046】
また、飛行体1は、飛行体補助装置2から離床後、動力部15に充電された電力が持続している間に飛行体補助装置2に帰着する必要があるが、飛行経路が階層をまたぐ場合、それだけ飛行に時間がかかるため、飛行体補助装置2からの飛行可能な距離が制限されたり、飛行体1の飛行中に電力が切れてしまい、飛行体補助装置2へ帰着できなくなるといった事態が発生する懸念もある。
【0047】
本実施例のように、昇降装置3を用いて飛行体補助装置2を移動させるようにすれば、都度、飛行体補助装置2と同じ階層内で飛行体1を飛行させることで、上述のような飛行体1の飛行経路の複雑化や長距離化に伴う各種の問題の発生を抑えることができる。
【0048】
尤も、本実施例のような昇降装置3を使用せず、飛行体補助装置2を別の手段(例えば、作業員による手作業での運搬)で運搬することで上述の問題を解消することも、むろん可能である。しかしながら、対象の階を変更する度に、作業員が飛行体補助装置2を持って階層間を行き来するという手順は非常に煩雑である。飛行体1によって巡回を行う目的の一つとして、作業員による直接の巡回の手間を軽減することが挙げられるが、作業員が飛行体補助装置2を持って移動をしなければならないとすれば、巡回の手間の軽減というメリットが大きく損なわれてしまうことになる。本実施例のように、昇降装置3により飛行体補助装置2を階層間で簡便に移動できるようにすれば、作業員自身が飛行体補助装置2を階層間で移動させる必要がなくなり、飛行体1の運用における手間を大幅に軽減することができる。
【0049】
また、昇降装置3に飛行体補助装置2を設置することには、飛行体1の飛行の起点を昇降体32の位置に特定できるというメリットもある。例えば作業員が飛行体補助装置2を持って階層間を移動し、階層毎に飛行体補助装置2から飛行体1を飛ばすことを考えると、飛行体1の自律飛行や飛行体補助装置2による自動操縦を行う場合、作業員は、階層を移動する度に、環境地図中における飛行体1の飛行の起点としての飛行体補助装置2の位置を入力する必要がある。あるいは、作業員が飛行体補助装置2を移動させる度に、毎回、前回と同じ位置に正確に飛行体補助装置2を設置する必要がある。ここで、本実施例のように昇降装置3によって飛行体補助装置2を移動させる方式では、各階で飛行体1の飛行を行う際の飛行体補助装置2の位置が昇降装置3の位置に固定されるので、飛行の起点を都度入力する必要も、飛行体補助装置2の移動に伴って飛行体補助装置2の位置合わせを行う必要もない。
【0050】
さらに、飛行体1を運用する現場として複数の階層F1~F3を有する構造物100を想定すると、多くの構造物においては各階層の構成はほぼ同一であり、環境地図として同じマップデータを使用し得る場合も考えられる。その場合、シャフト31が各階層を垂直に貫くように昇降装置3を設置すると(上に述べたように、駄目穴としての開口は、各階の同じ位置に設けられることが多いので、そのような駄目穴を利用すれば、垂直なシャフト31を簡便に設置することができる)、飛行体1の飛行の起点としての昇降装置3の位置も各階で同一となるので、環境地図内における飛行経路を設定する際、その都度異なる起点を設定する必要がなく、さらに簡便である。
【0051】
また、本発明のシステムには、図6に別の実施例として示す如く、1台の飛行体補助装置2につき複数台(ここでは2台)の飛行体1を備えてもよい。このようにすると、例えば一の飛行体1がある階層F1を飛行中、他の飛行体1が飛行体補助装置2にて充電を行い、前記一の飛行体1の帰着と共に飛行体補助装置2を移動させて前記他の飛行体1を次の階層F2で飛行させ、その間、一の飛行体1を充電して次の階層F3での飛行に備える、といった形で、交代での充電を行うことができる。1台の飛行体補助装置2につき1台の飛行体1を備えた場合、充電中は飛行ができないが、このように複数台の飛行体1を備えると、充電による時間のロスを抑えることができて便利である。
【0052】
あるいは、図示は省略するが、複数台の飛行体1と、複数台の飛行体補助装置2を備えてシステムを構築してもよい。例えば、3台(第一~第三)の飛行体1と、2台あるいは3台の飛行体補助装置2を備え、飛行体1を1台ずつ順次飛行させる場合を考えると、第一の飛行体1の飛行を行い、続いて第二の飛行体1の飛行を行う間、第三の飛行体1は飛行体補助装置2に待機して充電を行うことができ、さらに、最初に飛行した第一の飛行体1は、飛行体補助装置2に帰着後、次の飛行を行うまでの間、第二および第三の飛行体1が飛行している時間を待機時間とし、その間に充電を行うことができる。1台の飛行体補助装置2に2台の飛行体1を備えて飛行体1を交代で飛行させる場合には、1台の飛行体1についてはもう1台の飛行体1の飛行時間中に充電できることになるが、2台または3台の飛行体補助装置2に3台の飛行体1を備えて飛行体1を順次飛行させる場合には、各飛行体1の充電時間を、他の2台の飛行体1が飛行している間の分だけ確保することができる。つまり、飛行体1を複数台備える場合には、飛行体1の台数を多くし、さらにそれに合わせて飛行体補助装置2の台数を増やせば、その分だけ1台の飛行体1あたりの待機時間を長く取ることができる。
【0053】
また、待機時間において飛行体1に対し飛行体補助装置2によって行うことのできる操作は充電に限らない。例えば地図データや画像データの入出力や、自律飛行を行う場合の飛行経路の設定、その他各種の設定等を飛行体1に対して行うこともできる。
【0054】
つまり、本発明のシステムには、必要に応じて飛行体1を複数台備え、一の飛行体1の飛行時間を他の飛行体1の待機時間として他の飛行体1に対し飛行体補助装置2で充電等の操作を行うことができ、さらに、飛行体1の台数を上限として飛行体補助装置2を複数台備えることで、待機時間を調整することができる。
【0055】
以上のように、各実施例の飛行体補助装置の昇降システムは、複数の階層F1~F3を有する構造物100に設置され、階層F1~F3間を移動可能に構成された昇降体32を備えた昇降装置3と、無人で飛行する飛行体1と、飛行体1を離着可能に構成され、飛行体1の運用に関する機能を備えた飛行体補助装置2とを備え、飛行体補助装置2を昇降体32に積載して階層F1~F3間を移動させるよう構成されている。このようにすれば、昇降装置3を用いて飛行体補助装置2を移動させ、飛行体補助装置2と同じ階層内で飛行体1を飛行させることで、飛行体1の飛行経路の複雑化や長距離化に伴う問題の発生を抑えることができる。
【0056】
実施例の飛行体補助装置の昇降システムにおいて、飛行体補助装置2は、飛行体1との通信または飛行体1の充電の少なくとも一方を実行し得るよう構成することができる。
【0057】
実施例の飛行体補助装置の昇降システムは、昇降装置3の動作を遠隔で実行し得るよう構成することができ、このようにすれば、作業員が現場で昇降装置3の操作をすることなく、階層F1~F3間で飛行体1と飛行体補助装置2を運用することができる。
【0058】
一部実施例の飛行体補助装置の昇降システムは、1台以上の飛行体補助装置2と、複数台の飛行体1を備えている。このようにすれば、一の飛行体1が飛行中、他の飛行体1を飛行体補助装置2にて待機させ、その間に充電等の操作を一の飛行体1に対して行うことができる。
【0059】
実施例の飛行体補助装置の昇降システムにおいて、構造物100は建設中または解体中の建築物とし、昇降装置3は、構造物100の床に設けられた開口5を通すように設置することができる。
【0060】
したがって、上記本実施例によれば、複数の階層を有する構造物において飛行体を飛行させる際、飛行体補助装置を好適に使用し得る。
【0061】
尚、本発明の飛行体補助装置の昇降システムは、上述の実施例にのみ限定されるものではない。例えば、上記実施例においては、撮像装置を備えた飛行体(ドローン)を用いて構造物内の巡回を行う場合を説明したが、この他に、例えば構造物のマップの作成や、積荷の運搬、薬剤や塗料等の散布といった、ドローンを用いて行う各種の作業も、同様の手順で実行し得る。その他、本発明は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
1 飛行体
2 飛行体補助装置
3 昇降装置
5 開口
32 昇降体
100 構造物
F1 階層
F2 階層
F3 階層
図1
図2
図3
図4
図5
図6