(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168513
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】注水井戸、注水システム及び注水井戸の目詰まり防止方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/10 20060101AFI20241128BHJP
E21B 43/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E02D3/10 102
E21B43/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085258
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】林 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 明
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】隅倉 光博
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 洋一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄大
(72)【発明者】
【氏名】倉部 美彩子
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043DA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、簡易な設備で水と大気との接触を防ぐことができ、地下水の酸化を防止できる注水井戸、注水システム及び注水井戸の目詰まり防止方法を目的とする。
【解決手段】地盤G内に地下水Wを注入する注水井戸であって、管軸方向に延びる筒状のケーシング10と、ケーシング10の側面に設けられたスリット12と、ケーシング10の内部又は頂部に位置し、ケーシング10の内部に注入された地下水Wと大気Aとを遮断する接触防止材20と、を備え、接触防止材20が、ケーシング10の内部への大気Aの流入を防止する逆止弁24を備える、注水井戸1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内に地下水を注入する注水井戸であって、
管軸方向に延びる筒状のケーシングと、前記ケーシングの側面に設けられたスリットと、前記ケーシングの内部又は頂部に位置し、前記ケーシングの内部に注入された地下水と大気とを遮断する接触防止材と、を備え、
前記接触防止材が、前記ケーシングの内部への大気の流入を防止する逆止弁を備える、注水井戸。
【請求項2】
前記接触防止材が平板状の遮蔽盤である、請求項1に記載の注水井戸。
【請求項3】
前記接触防止材が、前記ケーシングの内部に注入された地下水の水面よりも低い位置に位置する、請求項1又は2に記載の注水井戸。
【請求項4】
地盤内に地下水を注入する注水井戸であって、
管軸方向に延びる筒状のケーシングと、前記ケーシングの側面に設けられたスリットと、前記ケーシングの内部に位置し、前記ケーシングの内部に注入された地下水と大気とを遮断する接触防止材と、を備え、
前記接触防止材が、前記ケーシングの内部に注入された不活性ガスであり、
前記不活性ガスの比重が空気よりも大きい、注水井戸。
【請求項5】
前記不活性ガスが二酸化炭素である、請求項4に記載の注水井戸。
【請求項6】
地盤内に地下水を注入する注水井戸であって、
管軸方向に延びる筒状のケーシングと、前記ケーシングの側面に設けられたスリットと、前記ケーシングの内部に位置し、前記ケーシングの内部に注入された地下水と大気とを遮断する接触防止材と、を備え、
前記接触防止材が、前記ケーシングの内部に注入された地下水の水面に浮遊する水浮遊固体である、注水井戸。
【請求項7】
前記水浮遊固体が、複数のフロート材である、請求項6に記載の注水井戸。
【請求項8】
地盤内の地下水を揚水する揚水井戸と、前記揚水井戸で揚水された地下水を地盤内に注入する、請求項1又は4に記載の注水井戸と、を有する、注水システム。
【請求項9】
地盤内の地下水を揚水する揚水井戸と、前記揚水井戸で揚水された地下水を地盤内に注入する、請求項6に記載の注水井戸と、を有する、注水システム。
【請求項10】
管軸方向に延びる筒状のケーシングと、前記ケーシングの側面に設けられたスリットと、前記ケーシングの内部又は頂部に位置し、前記ケーシングの内部に注入された地下水と大気とを遮断する接触防止材と、を備える注水井戸の目詰まり防止方法であって、
前記接触防止材に備えられた逆止弁が、前記ケーシングの内部への大気の流入を防止する、注水井戸の目詰まり防止方法。
【請求項11】
管軸方向に延びる筒状のケーシングと、前記ケーシングの側面に設けられたスリットと、前記ケーシングの内部に位置し、前記ケーシングの内部に注入された地下水と大気とを遮断する接触防止材と、を備える注水井戸の目詰まり防止方法であって、
前記ケーシングの内部に、空気よりも比重が大きい不活性ガスを注入し、前記接触防止材とする、注水井戸の目詰まり防止方法。
【請求項12】
管軸方向に延びる筒状のケーシングと、前記ケーシングの側面に設けられたスリットと、前記ケーシングの内部に位置し、前記ケーシングの内部に注入された地下水と大気とを遮断する接触防止材と、を備える注水井戸の目詰まり防止方法であって、
前記ケーシングの内部に注入された地下水の水面に、水に浮遊する水浮遊固体を投入し、前記接触防止材とする、注水井戸の目詰まり防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注水井戸、注水システム及び注水井戸の目詰まり防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水を揚水する揚水井戸(ディープウェル)や、注水管を通じて地盤中へ地下水を戻す注水井戸(リチャージウェル)が知られている。土壌中には、鉄、マンガン等の金属が存在することから、地下水には、これら金属がイオンの状態で存在している。金属イオンを含む地下水が大気と接触すると、大気中の酸素が地下水に溶け込み、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることがある。注水井戸では、注水を続けるうちに、これらの粒子状物質が地盤内で目詰まりを起こし、注水性能が低下することがある。
【0003】
このため、井戸内の地下水を、出来るだけ大気と接触させない方法が必要となる。例えば、特許文献1には、井戸を密閉し、井戸内の気体エリアに不活性ガスを封入し、地下水の酸化を防止する井戸が提案されている。特許文献1の発明によれば、井戸内の地下水の酸化を防止することが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、井戸又はタンクを密閉するため、ガス発生時の対応や、内部圧力を調整する機構が必要になり、設備が複雑となる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、簡易な設備で水と大気との接触を防ぐことができ、地下水の酸化を防止できる注水井戸、注水システム及び注水井戸の目詰まり防止方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を有する。
[1]地盤内に地下水を注入する注水井戸であって、
管軸方向に延びる筒状のケーシングと、前記ケーシングの側面に設けられたスリットと、前記ケーシングの内部又は頂部に位置し、前記ケーシングの内部に注入された地下水と大気とを遮断する接触防止材と、を備え、
前記接触防止材が、前記ケーシングの内部への大気の流入を防止する逆止弁を備える、注水井戸。
[2]前記接触防止材が平板状の遮蔽盤である、[1]に記載の注水井戸。
[3]前記接触防止材が、前記ケーシングの内部に注入された地下水の水面よりも低い位置に位置する、[1]又は[2]に記載の注水井戸。
[4]地盤内に地下水を注入する注水井戸であって、
管軸方向に延びる筒状のケーシングと、前記ケーシングの側面に設けられたスリットと、前記ケーシングの内部に位置し、前記ケーシングの内部に注入された地下水と大気とを遮断する接触防止材と、を備え、
前記接触防止材が、前記ケーシングの内部に注入された不活性ガスであり、
前記不活性ガスの比重が空気よりも大きい、注水井戸。
[5]前記不活性ガスが二酸化炭素である、[4]に記載の注水井戸。
[6]地盤内に地下水を注入する注水井戸であって、
管軸方向に延びる筒状のケーシングと、前記ケーシングの側面に設けられたスリットと、前記ケーシングの内部に位置し、前記ケーシングの内部に注入された地下水と大気とを遮断する接触防止材と、を備え、
前記接触防止材が、前記ケーシングの内部に注入された地下水の水面に浮遊する水浮遊固体である、注水井戸。
[7]前記水浮遊固体が、複数のフロート材(ボール)である、[6]に記載の注水井戸。
【0008】
[8]地盤内の地下水を揚水する揚水井戸と、前記揚水井戸で揚水された地下水を地盤内に注入する、[1]~[7]のいずれかに記載の注水井戸と、を有する、注水システム。
【0009】
[9]管軸方向に延びる筒状のケーシングと、前記ケーシングの側面に設けられたスリットと、前記ケーシングの内部又は頂部に位置し、前記ケーシングの内部に注入された地下水と大気とを遮断する接触防止材と、を備える注水井戸の目詰まり防止方法であって、
前記接触防止材に備えられた逆止弁が、前記ケーシングの内部への大気の流入を防止する、注水井戸の目詰まり防止方法。
[10]管軸方向に延びる筒状のケーシングと、前記ケーシングの側面に設けられたスリットと、前記ケーシングの内部に位置し、前記ケーシングの内部に注入された地下水と大気とを遮断する接触防止材と、を備える注水井戸の目詰まり防止方法であって、
前記ケーシングの内部に、空気よりも比重が大きい不活性ガスを注入し、前記接触防止材とする、注水井戸の目詰まり防止方法。
[11]管軸方向に延びる筒状のケーシングと、前記ケーシングの側面に設けられたスリットと、前記ケーシングの内部に位置し、前記ケーシングの内部に注入された地下水と大気とを遮断する接触防止材と、を備える注水井戸の目詰まり防止方法であって、
前記ケーシングの内部に注入された地下水の水面に、水に浮遊する水浮遊固体を投入し、前記接触防止材とする、注水井戸の目詰まり防止方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の注水井戸、注水システム及び注水井戸の目詰まり防止方法によれば、簡易な設備で水と大気との接触を防ぐことができ、地下水の酸化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る注水井戸を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る注水システムの模式図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る注水井戸を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係る注水システムの模式図である。
【
図5】本発明の第三実施形態に係る注水井戸を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の第三実施形態に係る注水システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第一実施形態]
≪注水井戸≫
本発明の注水井戸は、ケーシングと、スリットと、接触防止材と、を備え、地盤内に地下水を注入する井戸である。地盤内に地下水を注入することで、地下掘削工事における現場周辺の水位低下による影響を低減できる。また、地下水の保全に寄与するものである。
以下、注水井戸の第一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の注水井戸1は、管軸方向に延びる筒状のケーシング10と、ケーシング10の側面に設けられたスリット12と、ケーシング10の内部又は頂部に位置し、ケーシング10の内部に注入された地下水Wと大気Aとを遮断する接触防止材20と、を備える。
接触防止材20は、ケーシング10の内部への大気Aの流入を防止する逆止弁24を備える。逆止弁24は、ケーシング10の内部とケーシング10の外部とを、ガスが自由に通流できる配管22の一方の端部に設けられている。配管22は、接触防止材20を貫通するように設けられ、地下水Wが存在する側から、大気Aが存在する側へは、ガスが自由に通流できる。このため、ケーシング10の内部の圧力が過度に高まることを防止できる。その結果、注水井戸1に、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
加えて、大気Aが存在する側から地下水Wが存在する側へのガスの流入を防止する逆止弁24を備えるため、地下水Wと大気Aとの接触を防ぐことができ、地下水Wの酸化を防止できる。その結果、地下水W中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、スリット12、スクリーンS、地盤Gの目詰まりを防止できる。
なお、図中、ケーシング10から地盤Gに向けて水平方向に延びる曲線は、地下水の水位を示す線である。
【0014】
注水井戸1のケーシング10の内部には、ケーシング10の管軸方向に沿って、注水管30が設けられている。注水管30は、外部に設けられたタンク等(不図示)から、ケーシング10の内部に地下水Wを注入するための配管である。注水管30は、接触防止材20を貫通するように設けられ、ケーシング10の底部に位置するポンプ32と接続されている。
【0015】
ケーシング10の下部の側面には、注水井戸1の内部と地盤Gとを連通するようにスリット12が形成されている。スリット12は、ケーシング10の周方向及び上下方向に複数形成されている。
【0016】
注水井戸1の地盤G内の周囲には、スクリーンSが設けられ、地下水Wが自由に通流できるようになっている。
【0017】
ケーシング10としては、例えば、配管用炭素鋼鋼管(SGP管)、ステンレス鋼管等が挙げられる。ケーシング10は、円筒状でもよいし、多角筒状でもよい。
【0018】
接触防止材20は、ガスを遮断する構造を有していればよく、例えば、平板状の遮蔽盤等が挙げられる。接触防止材20としては、遮蔽盤とケーシング10に設けられた取付け部の間にゴム等のパッキンを有するもの、遮蔽盤のまわりにパッカーを有するもの等であってもよい。ここで、パッキンは部材間にゴム等を挟みこんで気密性を高める部品をいう。パッカーは、内部に気体や液体などを注入し、パッカー自体を膨張させて気密性を高める部品をいう。
遮蔽盤の材質は特に限定されず、例えば、金属、樹脂、木材等が挙げられる。
【0019】
接触防止材20は、ケーシング10の内部又は頂部に位置していればよく、地下水Wの水面よりも低い位置に位置していてもよい。接触防止材20が地下水Wの水面よりも低い位置に位置していても、接触防止材20の下方に位置する地下水Wは、大気Aとの接触が妨げられる。このため、地下水W中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、スリット12、スクリーンS、地盤Gの目詰まりを防止できる。
しかし、より確実に地下水Wと大気Aとの接触を防ぐ観点からは、接触防止材20は、地下水Wの水面よりも高い位置に位置していることが好ましい。
【0020】
接触防止材20は、ケーシング10の頂部に設けられてもよい。すなわち、接触防止材20を注水井戸1の蓋体として用いてもよい。ここで、ケーシング10の「頂部」とは、ケーシング10の地表面側の開口部を覆う部分をいう。
このように、接触防止材20がケーシング10の頂部に位置する場合、接触防止材20は、注水井戸1の蓋体として機能する。
【0021】
逆止弁24としては、特に限定されず、例えば、公知のチャッキ弁、チェックバルブ、ディスク式逆止弁等が挙げられる。
【0022】
配管22としては、特に限定されず、例えば、樹脂製の配管、金属製の配管等が挙げられる。
【0023】
注水管30としては、特に限定されず、例えば、樹脂製の配管、金属製の配管等が挙げられる。
【0024】
ポンプ32としては、特に限定されず、例えば、公知の吸引ポンプ、真空ポンプ等が挙げられる。
【0025】
スクリーンSとしては、特に限定されず、例えば、砂利や砕石等の透水性を有する部材等が挙げられる。
【0026】
≪注水井戸の使用方法≫
本発明の注水井戸の使用方法(注水井戸の目詰まり防止方法)は、筒状のケーシングと、ケーシングの側面に設けられたスリットと、ケーシングの内部又は頂部に位置し、ケーシングの内部に注入された地下水と大気とを遮断する接触防止材と、を備える注水井戸の目詰まり防止方法であって、接触防止材に備えられた逆止弁が、ケーシングの内部への大気の流入を防止する。
以下、本発明の注水井戸の使用方法について、本実施形態の注水井戸1を用いた例について説明する。
【0027】
まず、注水井戸1のケーシング10の内部に、注水管30を介して地下水Wを注入する。ケーシング10の内部に注入された地下水Wは、ケーシング10の下部に一時貯留される。このとき、注水井戸1は、接触防止材20を備えるため、地下水Wと大気Aとが遮断される。このため、地下水Wに大気A中の酸素が溶存することが抑制され、地下水Wの酸化を防止できる。その結果、地下水W中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、スリット12、スクリーンS、地盤Gの目詰まりを防止できる。
【0028】
加えて、注水井戸1は、接触防止材20が逆止弁24付きの配管22を備えるため、ケーシング10の内部の圧力が過度に高まることを防止できる。このため、注水井戸1に、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0029】
注水井戸1のケーシング10の内部の地下水Wが存在する側に、地盤Gからプロパン等の可燃性ガスが侵入し、内部の圧力が上昇することがある。この場合、配管22から逆止弁24を通流させて、可燃性ガスを注水井戸1の外部の大気中に排出できる。このため、ケーシング10の内部の圧力の上昇を抑制できる。
【0030】
接触防止材20は、ケーシング10の内部に地下水Wを注入した後に、ケーシング10の内部に設けられてもよい。
【0031】
接触防止材20を構築した後に、ケーシング10の内部の地下水Wが存在する側に、別途配管等(不図示)から不活性ガスを注入して、ケーシング10の内部の地下水Wが存在する側の空気と置換してもよい。空気と不活性ガスとを置換することで、地下水Wと大気Aとの接触をより抑制できる。
不活性ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が挙げられる。
【0032】
接触防止材20を構築した後に、ケーシング10の内部の地下水Wが存在する側に、ドライアイスを投入して、ケーシング10の内部の地下水Wが存在する側に、気体の二酸化炭素を発生させてもよい。ドライアイスを投入することで、地下水Wと大気Aとの接触をより抑制できる。
【0033】
ケーシング10の内部に注入された地下水Wは、ポンプ32によって押し出され、スリット12、スクリーンSを透過し、地盤G内に浸透する。
【0034】
≪注水システム≫
本発明の注水システムは、地盤内の地下水を揚水する揚水井戸と、揚水井戸で揚水された地下水を地盤内に注入する注水井戸と、を有する。
本発明の注水システムは、本発明の注水井戸を備える。このため、地下水と大気との接触を防ぐことができ、地下水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、注水井戸の目詰まりを防止できる。
加えて、本発明の注水システムは、注水井戸の接触防止材が逆止弁付きの配管を備えるため、ケーシングの内部の圧力が過度に高まることを防止できる。このため、注水井戸に、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
以下、本実施形態の注水システムについて、図面を参照して説明する。
【0035】
図2に示すように、本実施形態の注水システム100は、揚水井戸50と、原水タンク60と、ろ過フィルター70と、処理水タンク80と、注水井戸1と、を有する。
揚水井戸50と、原水タンク60とは、揚水管40で接続されている。原水タンク60と、ろ過フィルター70とは、配管41で接続されている。ろ過フィルター70と、処理水タンク80とは、配管31で接続されている。処理水タンク80と、注水井戸1とは、注水管30で接続されている。揚水井戸50の周囲には、遮水壁90が設けられている。揚水井戸50には、注水井戸1と同様の接触防止材20が備えられている。原水タンク60には、注水井戸1と同様の接触防止材20が備えられている。処理水タンク80には、注水井戸1と同様の接触防止材20が備えられている。
図中の矢印は、地下水の流動方向を示す。
【0036】
揚水井戸50は、地盤G内の地下水を揚水する井戸である。地盤G内の地下水を揚水することで、掘削工事部分における地盤Gの水分を適度に抑えることができ、掘削工事の効率をより高められる。
遮水壁90は、掘削工事部分における地盤Gの崩落を防止するための土留である。
【0037】
揚水井戸50としては、例えば、注水井戸1と同様のケーシングと、スリットと、ポンプと、揚水管40とを備える、筒状の井戸が挙げられる。揚水井戸50は、接触防止材20を備えるため、地下水と大気との接触を防ぐことができ、地下水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、後述するろ過フィルター70でのろ過効率をより高められる。
加えて、揚水井戸50は、接触防止材20が逆止弁24付きの配管22を備えるため、ケーシングの内部の圧力が過度に高まることを防止できる。このため、揚水井戸50に、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0038】
遮水壁90としては、例えば、鋼製の矢板を連ねた連続壁や、コンクリート製の壁、水ガラス等による遮水等が挙げられる。
【0039】
原水タンク60は、揚水井戸50で揚水した地下水(原水)を貯留するタンクである。注水システム100は、原水タンク60を備えることで、地下水を安定して注水井戸1に供給できる。原水タンク60としては、例えば、原水を貯留できる水槽等が挙げられる。原水タンク60は、接触防止材20を備えるため、原水と大気との接触を防ぐことができ、原水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、後述するろ過フィルター70でのろ過効率をより高められる。
加えて、原水タンク60は、接触防止材20が逆止弁24付きの配管22を備えるため、原水タンク60の内部の圧力が過度に高まることを防止できる。このため、原水タンク60に、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0040】
ろ過フィルター70は、揚水した地下水(原水)中に含まれる粒子状物質等を除去し、処理された地下水(処理水)を得るものである。注水システム100は、ろ過フィルター70を備えることで、地下水中の粒子状物質等を除去し、注水井戸1の目詰まりをより確実に防止できる。ろ過フィルター70としては、特に限定されず、例えば、公知のフィルターを適用できる。
【0041】
処理水タンク80は、ろ過フィルター70から供給された処理水を貯留するタンクである。注水システム100は、処理水タンク80を備えることで、地下水を安定して注水井戸1に供給できる。処理水タンク80としては、例えば、処理水を貯留できる水槽等が挙げられる。処理水タンク80は、接触防止材20を備えるため、処理水と大気との接触を防ぐことができ、処理水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、注水井戸1におけるスリットやスクリーンの目詰まりを抑制できる。
加えて、処理水タンク80は、接触防止材20が逆止弁24付きの配管22を備えるため、処理水タンク80の内部の圧力が過度に高まることを防止できる。このため、処理水タンク80に、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0042】
注水井戸1は、ろ過フィルター70で処理された地下水を地盤G内に注入する井戸である。注水井戸1の構成は、上述した実施形態で説明した通りである。
【0043】
揚水管40は、揚水井戸50で揚水された地下水を原水タンク60に供給するための配管である。揚水管40としては、特に限定されず、例えば、樹脂製の配管、金属製の配管等が挙げられる。
地下水と大気との接触を防ぐ観点から、揚水管40には、逆流防止弁(逆止弁)を設けることが好ましい。
【0044】
配管41としては、特に限定されず、例えば、樹脂製の配管、金属製の配管等が挙げられる。
配管31としては、特に限定されず、例えば、樹脂製の配管、金属製の配管等が挙げられる。
【0045】
注水システム100における、揚水井戸50、原水タンク60、処理水タンク80、注水井戸1は、地下水が撹拌されにくい構造を有していることが好ましい。これらの各部が、地下水が撹拌されにくい構造を有していることで、地下水の空気による酸化を防ぐ効果をより高められる。
地下水が撹拌されにくい構造としては、例えば、インバータ制御揚水ポンプの使用、流量の急変を避けるバルブの制御、配管の開放端を水中に沈めた構造等が挙げられる。
【0046】
≪注水システムの使用方法≫
本実施形態の注水システム100の使用方法について説明する。
まず、揚水井戸50のポンプを稼働し、地盤Gから地下水を揚水する。揚水された地下水は、揚水管40を通流して、原水タンク60に供給される。原水タンク60で貯留された地下水は、配管41を通流して、ろ過フィルター70に供給される。ろ過フィルター70に供給された地下水は、粒子状物質等が除去され、処理水として配管31を通流して、処理水タンク80に供給される。処理水タンク80に供給された処理水は、注水管30を通流して注水井戸1に供給される。注水井戸1に供給された処理水は、注水井戸1のポンプを稼働することで、注水井戸1のスリット、スクリーンを透過して、地盤G内に供給される。その結果、地盤G内の地下水の水位を高めることができる。
【0047】
地下水のpHは、揚水時の地上での25℃における測定で、例えば、6~8が好ましい。地下水のpHが上記数値範囲内であると、地下水中の金属イオンの酸化防止効果をより高められる。
地下水のpHは、例えば、測定対象を25℃にした上で、pHメーターを用いて測定できる。
【0048】
地下水の酸化還元電位(Eh)は、0.1~0.3Vが好ましい。地下水の酸化還元電位が上記数値範囲内であると、地下水中の金属イオンの酸化防止効果をより高められる。
地下水の酸化還元電位は、例えば、酸化還元電位計を用いて測定できる。
【0049】
本実施形態の注水システム100によれば、揚水井戸50及び原水タンク60が接触防止材20を備えることで、地下水と大気との接触を防ぐことができ、地下水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、ろ過フィルター70でのろ過効率をより高められる。
本実施形態の注水システム100によれば、ろ過フィルター70を備えるため、粒子状物質が除去された処理水が得られる。このため、注水井戸1での目詰まりをより効率よく防ぐことができる。
本実施形態の注水システム100によれば、処理水タンク80及び注水井戸1が接触防止材20を備えることで、地下水と大気との接触を防ぐことができ、地下水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、注水井戸1での目詰まりをより効率よく防ぐことができる。
本実施形態の注水井戸1は、接触防止材20が逆止弁24付きの配管22を備えるため、ケーシング10の内部の圧力が過度に高まることを防止できる。このため、注水井戸1に、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0050】
[第二実施形態]
本実施形態は、接触防止材が不活性ガスである点で、第一実施形態とは異なる。
以下、本実施形態の注水井戸について、図面を参照して説明する。なお、第一実施形態と同じ構成には、同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0051】
≪注水井戸≫
図3に示すように、本実施形態の注水井戸2は、管軸方向に延びる筒状のケーシング10と、ケーシング10の側面に設けられたスリット12と、ケーシング10の内部に位置し、ケーシング10の内部に注入された地下水Wと大気Aとを遮断する接触防止材26と、を備える。
なお、図中、ケーシング10から地盤Gに向けて水平方向に延びる曲線は、地下水の水位を示す線である。
【0052】
接触防止材26は、ケーシング10の内部に注入された不活性ガスである。不活性ガスの比重は、空気よりも大きい。
不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素(1.977g/cm3、1.529)、アルゴン(1.784g/cm3、1.380)、クリプトン(3.739g/cm3、2.891)、キセノン(5.887g/cm3、4.553)、ラドン(9.73g/cm3、7.53)等が挙げられる。なお、括弧内の値は、標準状態(0℃、101,325Pa)における密度、同じ状態における空気に対する比重を示す。標準状態における空気の密度は、1.293g/cm3である。
これらの不活性ガスとしては、入手が容易なことから二酸化炭素が好ましい。
これらの不活性ガスは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
本実施形態の注水井戸2は、空気よりも比重が大きい(空気よりも重い)不活性ガスがケーシング10の内部の地下水Wの水面上に滞留し、大気Aと地下水Wとの接触を妨げる。すなわち、ケーシング10の内部に位置する不活性ガスが、接触防止材26として機能する。このため、地下水Wに大気A中の酸素が溶存することが抑制され、地下水Wの酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、スリット12、スクリーンS、地盤Gの目詰まりを防止できる。
【0054】
加えて、本実施形態の注水井戸2の接触防止材26は、不活性ガスであるため、ケーシング10が密閉されない。このため、注水井戸2のケーシング10の内部の圧力が大きく上昇することがない。その結果、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0055】
注水井戸2には、不活性ガスの濃度を測定する濃度計を設置することが好ましい。注水井戸2に濃度計を設置することで、接触防止材26の量を調節できる。
【0056】
≪注水井戸の使用方法≫
本発明の注水井戸の使用方法(注水井戸の目詰まり防止方法)は、筒状のケーシングと、ケーシングの側面に設けられたスリットと、ケーシングの内部に位置し、ケーシングの内部に注入された地下水と大気とを遮断する接触防止材と、を備える注水井戸の目詰まり防止方法であって、ケーシングの内部に、空気よりも比重が大きい不活性ガスを注入し、接触防止材とする方法である。
以下、本発明の注水井戸の使用方法について、本実施形態の注水井戸2を用いた例について説明する。
【0057】
まず、注水井戸2のケーシング10の内部に、注水管30を介して地下水Wを注入する。次いで、注水井戸2のケーシング10の内部に、空気よりも比重が大きい不活性ガスを注入する。
不活性ガスを注入する方法は、特に限定されず、例えば、不活性ガスが封入されたガスボンベから注入する方法、不活性ガスが貯留されたガスタンク等から配管を通流させて注入する方法等が挙げられる。
【0058】
注水井戸2のケーシング10の内部に注入された不活性ガスは、空気よりも比重が大きいため、ケーシング10の内部を沈降する。常圧(101,325Pa)において、不活性ガスは水に溶解しない、あるいは、地下水中の溶存ガス分圧以上には溶解しないため、地下水Wの水面上に滞留し、接触防止材26として機能する。
このように、注水井戸2は、接触防止材26を備えるため、地下水Wと大気Aとが遮断される。このため、地下水Wに大気A中の酸素が溶存することが抑制され、地下水Wの酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、スリット12、スクリーンS、地盤Gの目詰まりを防止できる。
【0059】
加えて、注水井戸2は、接触防止材26が不活性ガスであるため、ケーシング10が密閉されない。このため、注水井戸2のケーシング10の内部の圧力が大きく上昇することがない。その結果、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0060】
ケーシング10の内部に注入された地下水Wは、ポンプ32によって押し出され、スリット12、スクリーンSを透過し、地盤G内に浸透する。
【0061】
≪注水システム≫
本実施形態の注水システムは、本実施形態の注水井戸を備える。このため、地下水と大気との接触を防ぐことができ、地下水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、注水井戸の目詰まりを防止できる。
加えて、本実施形態の注水システムは、接触防止材が不活性ガスであるため、ケーシングの内部の圧力の上昇を抑制できる。このため、注水井戸に、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
以下、本実施形態の注水システムについて、図面を参照して説明する。
【0062】
図4に示すように、本実施形態の注水システム200は、揚水井戸52と、原水タンク62と、ろ過フィルター70と、処理水タンク82と、注水井戸2と、を有する。
揚水井戸52と、原水タンク62とは、揚水管40で接続されている。原水タンク62と、ろ過フィルター70とは、配管41で接続されている。ろ過フィルター70と、処理水タンク82とは、配管31で接続されている。処理水タンク82と、注水井戸2とは、注水管30で接続されている。揚水井戸52の周囲には、遮水壁90が設けられている。揚水井戸52には、注水井戸2と同様の接触防止材26が備えられている。原水タンク62には、注水井戸2と同様の接触防止材26が備えられている。処理水タンク82には、注水井戸2と同様の接触防止材26が備えられている。
図中の矢印は、地下水の流動方向を示す。
【0063】
揚水井戸52は、第一実施形態の揚水井戸50の接触防止材20に代えて、接触防止材26を備える。揚水井戸52は、接触防止材26を備えるため、地下水と大気との接触を防ぐことができ、地下水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、ろ過フィルター70でのろ過効率をより高められる。
加えて、揚水井戸52は、接触防止材26が不活性ガスであるため、ケーシングが密閉されない。このため、揚水井戸52のケーシングの内部の圧力が大きく上昇することがない。その結果、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0064】
原水タンク62は、第一実施形態の原水タンク60の接触防止材20に代えて、接触防止材26を備える。注水システム200は、原水タンク62を備えることで、地下水を安定して注水井戸2に供給できる。原水タンク62は、接触防止材26を備えるため、原水と大気との接触を防ぐことができ、原水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、ろ過フィルター70でのろ過効率をより高められる。
加えて、原水タンク62は、接触防止材26が不活性ガスであるため、原水タンク62が密閉されない。このため、原水タンク62の内部の圧力が大きく上昇することがない。その結果、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0065】
処理水タンク82は、第一実施形態の処理水タンク80の接触防止材20に代えて、接触防止材26を備える。注水システム200は、処理水タンク82を備えることで、地下水を安定して注水井戸2に供給できる。処理水タンク82は、接触防止材26を備えるため、処理水と大気との接触を防ぐことができ、処理水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、注水井戸2におけるスリットやスクリーンの目詰まりを抑制できる。
加えて、処理水タンク82は、接触防止材26が不活性ガスであるため、処理水タンク82が密閉されない。このため、処理水タンク82の内部の圧力が大きく上昇することがない。その結果、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0066】
注水井戸2は、ろ過フィルター70で処理された地下水を地盤G内に注入する井戸である。注水井戸2の構成は、上述した実施形態で説明した通りである。
【0067】
≪注水システムの使用方法≫
本実施形態の注水システム200の使用方法について説明する。
まず、揚水井戸52のポンプを稼働し、地盤Gから地下水を揚水する。揚水された地下水は、揚水管40を通流して、原水タンク62に供給される。原水タンク62で貯留された地下水は、配管41を通流して、ろ過フィルター70に供給される。ろ過フィルター70に供給された地下水は、粒子状物質等が除去され、処理水として配管31を通流して、処理水タンク82に供給される。処理水タンク82に供給された処理水は、注水管30を通流して注水井戸2に供給される。注水井戸2に供給された処理水は、注水井戸2のポンプを稼働することで、注水井戸2のスリット、スクリーンを透過して、地盤G内に供給される。その結果、地盤G内の地下水の水位を高めることができる。
【0068】
地下水のpH、酸化還元電位(Eh)は、第一実施形態と同様である。
【0069】
本実施形態の注水システム200によれば、揚水井戸52及び原水タンク62が接触防止材26を備えることで、地下水と大気との接触を防ぐことができ、地下水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、ろ過フィルター70でのろ過効率をより高められる。
本実施形態の注水システム200によれば、ろ過フィルター70を備えるため、粒子状物質が除去された処理水が得られる。このため、注水井戸2での目詰まりをより効率よく防ぐことができる。
本実施形態の注水システム200によれば、処理水タンク82及び注水井戸2が接触防止材26を備えることで、地下水と大気との接触を防ぐことができ、地下水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、注水井戸2での目詰まりをより効率よく防ぐことができる。
本実施形態の注水井戸2は、接触防止材26が不活性ガスであるため、ケーシング10が密閉されない。このため、注水井戸2のケーシング10の内部の圧力が大きく上昇することがなく、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0070】
[第三実施形態]
本実施形態は、接触防止材が水浮遊固体である点で、第一実施形態及び第二実施形態とは異なる。
以下、本実施形態の注水井戸について、図面を参照して説明する。なお、第一実施形態及び第二実施形態と同じ構成には、同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0071】
≪注水井戸≫
図5に示すように、本実施形態の注水井戸3は、管軸方向に延びる筒状のケーシング10と、ケーシング10の側面に設けられたスリット12と、ケーシング10の内部に位置し、ケーシング10の内部に注入された地下水Wと大気Aとを遮断する接触防止材28と、を備える。
なお、図中、ケーシング10から地盤Gに向けて水平方向に延びる曲線は、地下水の水位を示す線である。
【0072】
接触防止材28は、ケーシング10の内部に注入された地下水Wの水面に浮遊する水浮遊固体である。
水浮遊固体は、ガスを遮蔽でき、常温(例えば、5~30℃)で、水に浮く固体であればよく、特に限定されない。
水浮遊固体としては、例えば、複数のフロート材(ボール)等が挙げられる。ここで、フロート材(ボール)とは、直径5~100mm程度のポリスチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂製などのビーズをいい、液面に浮かべて、液面と空気が接触するのを遮断して、水の蒸発やミストの飛散を防止するものである。
フロート材(ボール)を複数水に浮かべることで、地下水Wと大気Aとの接触を抑制でき、地下水W内の溶存酸素濃度の上昇を防ぐことができる。このため、地下水W中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、スリット12、スクリーンS、地盤Gの目詰まりを防止できる。
【0073】
水浮遊固体がフロート材(ボール)の場合、フロート材(ボール)の層厚は、水の上に層厚5~200mmで浮遊させることが好ましく、層厚50~200mmがより好ましく、層厚100~200mmがさらに好ましい。大きさ、形状の異なるフロート材(ボール)を混合して、フロート材(ボール)同士の隙間を出来にくくしてもよい、フロート材(ボール)の層厚が上記下限値以上であると、地下水Wと大気Aとの接触をより抑制できる。フロート材(ボール)の個数が上記上限値以下であると、地下水Wと大気Aとの接触を防ぐ効果が飽和し、コスト面で有利である。
【0074】
フロート材(ボール)は、一つ一つが軽量であるため、地下水Wの水面に浮遊し、地下水Wの水面の上昇、下降に追従できる。
水浮遊固体としては、フロート材(ボール)のほか、ガスを遮蔽できる樹脂製のシート、ガスを遮蔽できる樹脂製のフィルム等であってもよい。
【0075】
本実施形態の注水井戸3は、水に浮遊する水浮遊固体がケーシング10の内部の地下水Wの水面上に浮遊し、大気Aと地下水Wとの接触を妨げる。すなわち、ケーシング10の内部に位置する水浮遊固体が、接触防止材28として機能する。このため、地下水Wに大気A中の酸素が溶存することが抑制され、地下水Wの酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、スリット12、スクリーンS、地盤Gの目詰まりを防止できる。
【0076】
加えて、本実施形態の注水井戸3の接触防止材28は、水浮遊固体であるため、ケーシング10が密閉されない。このため、注水井戸3のケーシング10の内部の圧力が大きく上昇することがない。その結果、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0077】
≪注水井戸の使用方法≫
本発明の注水井戸の使用方法(注水井戸の目詰まり防止方法)は、筒状のケーシングと、ケーシングの側面に設けられたスリットと、ケーシングの内部に位置し、ケーシングの内部に注入された地下水と大気とを遮断する接触防止材と、を備える注水井戸の目詰まり防止方法であって、ケーシングの内部に注入された地下水の水面に、水に浮遊する水浮遊固体を投入し、接触防止材とする方法である。
以下、本発明の注水井戸の使用方法について、本実施形態の注水井戸3を用いた例について説明する。
【0078】
まず、注水井戸3のケーシング10の内部に、注水管30を介して地下水Wを注入する。次いで、注水井戸3のケーシング10の内部に、水に浮遊する水浮遊固体を投入する。
水浮遊固体を投入する方法は、特に限定されず、常法によって投入すればよい。この際、大気Aと地下水Wとの接触をより確実に妨げる観点から、水浮遊固体とケーシング10の内面との間に空隙ができないように水浮遊固体を地下水Wの水面に浮かべることが好ましい。
水浮遊固体は、地下水Wの水面に浮遊することで、大気Aと地下水Wとの接触を妨げる。すなわち、水浮遊固体は、接触防止材28として機能する。
【0079】
このように、注水井戸3は、接触防止材28を備えるため、地下水Wと大気Aとが遮断される。このため、地下水Wに大気A中の酸素が溶存することが抑制され、地下水Wの酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、スリット12の目詰まりを防止できる。
【0080】
加えて、注水井戸3は、接触防止材28が水浮遊固体であるため、ケーシング10が密閉されない。このため、注水井戸3のケーシング10の内部の圧力が大きく上昇することがない。その結果、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0081】
ケーシング10の内部に注入された地下水Wは、ポンプ32によって押し出され、スリット12、スクリーンSを透過し、地盤G内に浸透する。
【0082】
≪注水システム≫
本実施形態の注水システムは、本実施形態の注水井戸を備える。このため、地下水と大気との接触を防ぐことができ、地下水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、注水井戸の目詰まりを防止できる。
加えて、本実施形態の注水システムは、接触防止材が水浮遊固体であるため、ケーシングの内部の圧力の上昇を抑制できる。このため、注水井戸に、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
以下、本実施形態の注水システムについて、図面を参照して説明する。
【0083】
図6に示すように、本実施形態の注水システム300は、揚水井戸54と、原水タンク64と、ろ過フィルター70と、処理水タンク84と、注水井戸3と、を有する。
揚水井戸54と、原水タンク64とは、揚水管40で接続されている。原水タンク64と、ろ過フィルター70とは、配管41で接続されている。ろ過フィルター70と、処理水タンク84とは、配管31で接続されている。処理水タンク84と、注水井戸3とは、注水管30で接続されている。揚水井戸54の周囲には、遮水壁90が設けられている。揚水井戸54には、注水井戸3と同様の接触防止材28が備えられている。原水タンク64には、注水井戸3と同様の接触防止材28が備えられている。処理水タンク84には、注水井戸3と同様の接触防止材28が備えられている。
図中の矢印は、地下水の流動方向を示す。
【0084】
揚水井戸54は、第一実施形態の揚水井戸50の接触防止材20に代えて、接触防止材28を備える。揚水井戸54は、接触防止材28を備えるため、地下水と大気との接触を防ぐことができ、地下水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、ろ過フィルター70でのろ過効率をより高められる。
加えて、揚水井戸54は、接触防止材28が水浮遊固体であるため、ケーシングが密閉されない。このため、揚水井戸54のケーシングの内部の圧力が大きく上昇することがない。その結果、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0085】
原水タンク64は、第一実施形態の原水タンク60の接触防止材20に代えて、接触防止材28を備える。注水システム300は、原水タンク64を備えることで、地下水を安定して注水井戸3に供給できる。原水タンク64は、接触防止材28を備えるため、原水と大気との接触を防ぐことができ、原水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、ろ過フィルター70でのろ過効率をより高められる。
加えて、原水タンク64は、接触防止材28が水浮遊固体であるため、原水タンク64が密閉されない。このため、原水タンク64の内部の圧力が大きく上昇することがない。その結果、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0086】
処理水タンク84は、第一実施形態の処理水タンク80の接触防止材20に代えて、接触防止材28を備える。注水システム300は、処理水タンク84を備えることで、地下水を安定して注水井戸3に供給できる。処理水タンク84は、接触防止材28を備えるため、処理水と大気との接触を防ぐことができ、処理水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、注水井戸3におけるスリットやスクリーンの目詰まりを抑制できる。
加えて、処理水タンク84は、接触防止材28が水浮遊固体であるため、処理水タンク84が密閉されない。このため、処理水タンク84の内部の圧力が大きく上昇することがない。その結果、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0087】
注水井戸3は、ろ過フィルター70で処理された地下水を地盤G内に注入する井戸である。注水井戸3の構成は、上述した実施形態で説明した通りである。
【0088】
≪注水システムの使用方法≫
本実施形態の注水システム300の使用方法について説明する。
まず、揚水井戸54のポンプを稼働し、地盤Gから地下水を揚水する。揚水された地下水は、揚水管40を通流して、原水タンク64に供給される。原水タンク64で貯留された地下水は、配管41を通流して、ろ過フィルター70に供給される。ろ過フィルター70に供給された地下水は、粒子状物質等が除去され、処理水として配管31を通流して、処理水タンク84に供給される。処理水タンク84に供給された処理水は、注水管30を通流して注水井戸3に供給される。注水井戸3に供給された処理水は、注水井戸3のポンプを稼働することで、注水井戸3のスリット、スクリーンを透過して、地盤G内に供給される。その結果、地盤G内の地下水の水位を高めることができる。
【0089】
地下水のpH、酸化還元電位(Eh)は、第一実施形態、第二実施形態と同様である。
【0090】
本実施形態の注水システム300によれば、揚水井戸54及び原水タンク64が接触防止材28を備えることで、地下水と大気との接触を防ぐことができ、地下水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、ろ過フィルター70でのろ過効率をより高められる。
本実施形態の注水システム300によれば、ろ過フィルター70を備えるため、粒子状物質が除去された処理水が得られる。このため、注水井戸3での目詰まりをより効率よく防ぐことができる。
本実施形態の注水システム300によれば、処理水タンク84及び注水井戸3が接触防止材28を備えることで、地下水と大気との接触を防ぐことができ、地下水の酸化を防止できる。その結果、地下水中の金属イオンが酸化され、粒子状物質となることを防止でき、注水井戸3での目詰まりをより効率よく防ぐことができる。
本実施形態の注水井戸3は、接触防止材28が水浮遊固体であるため、ケーシング10が密閉されない。このため、注水井戸3のケーシング10の内部の圧力が大きく上昇することがなく、内部圧力を調整する機構を設ける必要がなく、簡易な設備とすることができる。
【0091】
以上、本発明の注水井戸、注水システム及び注水井戸の目詰まり防止方法について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、注水システム100は、揚水井戸50、原水タンク60、処理水タンク80及び注水井戸1の全てが接触防止材20を備えるが、注水システムは、注水井戸のみが接触防止材を備えていればよい。しかし、注水井戸の目詰まりをより防止できる観点から、注水システムは、揚水井戸、原水タンク、処理水タンク及び注水井戸の全てが接触防止材を備えることが好ましい。
【0092】
例えば、注水システム200は、揚水井戸52、原水タンク62、処理水タンク82及び注水井戸2の全てが接触防止材26を備えるが、注水システムは、注水井戸のみが接触防止材を備えていればよい。しかし、注水井戸の目詰まりをより防止できる観点から、注水システムは、揚水井戸、原水タンク、処理水タンク及び注水井戸の全てが接触防止材を備えることが好ましい。
【0093】
例えば、注水システム300は、揚水井戸54、原水タンク64、処理水タンク84及び注水井戸3の全てが接触防止材28を備えるが、注水システムは、注水井戸のみが接触防止材を備えていればよい。しかし、注水井戸の目詰まりをより防止できる観点から、注水システムは、揚水井戸、原水タンク、処理水タンク及び注水井戸の全てが接触防止材を備えることが好ましい。
【0094】
例えば、注水システムは、原水タンクを備えていなくてもよい。しかし、地下水を安定して注水井戸に供給する観点から、注水井戸は、原水タンクを備えることが好ましい。
例えば、注水システムは、処理水タンクを備えていなくてもよい。しかし、地下水を安定して注水井戸に供給する観点から、注水井戸は、処理水タンクを備えることが好ましい。
例えば、注水システムは、ろ過フィルターを備えていなくてもよい。しかし、注水井戸の目詰まりをより確実に防止する観点から、注水システムは、ろ過フィルターを備えることが好ましい。
【0095】
例えば、注水システムは、接触防止材20、26、28を、適宜組み合わせて構成してもよい。
例えば、注水システムは、揚水井戸が2個以上あってもよい。
例えば、注水システムは、注水井戸が2個以上あってもよい。
【0096】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。一実施形態に係る注水井戸は、このSDGsの17の目標のうち、例えば、「15.陸の豊かさも守ろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0097】
1,2,3…注水井戸、10…ケーシング、12…スリット、20,26,28…接触防止材、22,31,41…配管、24…逆止弁、30…注水管、32…ポンプ、40…揚水管、50,52,54…揚水井戸、60,62,64…原水タンク、70…ろ過フィルター、80,82,84…処理水タンク、90…遮水壁、100,200,300…注水システム、A…大気、G…地盤、S…スクリーン、W…地下水