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特開2024-168519走行方法、走行プログラム、及び作業車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168519
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】走行方法、走行プログラム、及び作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20241128BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20241128BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
A01B69/00 303Q
G05D1/02 N
G05D1/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085269
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】李 昇圭
(72)【発明者】
【氏名】村山 昌章
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB14
2B043DA17
2B043EA16
2B043EA18
2B043EA26
2B043EB04
2B043EB05
2B043EB15
2B043EB16
2B043EB17
2B043EB18
2B043EB22
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
2B043EC15
2B043ED13
2B043ED27
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301LL02
5H301LL11
5H301LL14
(57)【要約】
【課題】作業部の位置の変化によって検知部の検知機能が低下することを防ぐことが可能な走行方法、走行プログラム、及び作業車両を提供する。
【解決手段】設定処理部112は、作業領域において刈取部3を作業位置に設定し、非作業領域において刈取部3を、第1非作業位置と、検知範囲のうち刈取部3が占める面積が前記第1非作業位置の場合の刈取部3が占める面積よりも小さい第2非作業位置とのいずれかに設定する。走行処理部111は、設定処理部112により設定される刈取部3の動作を制御しつつコンバイン1を走行させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業領域において所定の作業を行う作業部と、前記作業部よりも進行方向の後方側に配置され、所定の検知範囲の検知対象を検知する検知部とを備える作業車両を走行させる走行方法であって、
前記作業領域において前記作業部を作業位置に設定することと、
非作業領域において前記作業部を、第1非作業位置と、前記検知範囲のうち前記作業部が占める面積が前記第1非作業位置の場合の前記作業部が占める面積よりも小さい第2非作業位置とのいずれかに設定することと、
を実行する走行方法。
【請求項2】
前記非作業領域において前記作業車両が手動操舵により走行する場合、前記作業部を前記第1非作業位置に設定する、
請求項1に記載の走行方法。
【請求項3】
前記非作業領域において前記作業車両が自動走行し、かつ作業者が前記作業車両に搭乗する場合、前記作業部を前記第1非作業位置に設定し、
前記非作業領域において前記作業車両が自動走行し、かつ作業者が前記作業車両に搭乗しない場合、前記作業部を前記第2非作業位置に設定する、
請求項1に記載の走行方法。
【請求項4】
前記作業車両が実施する作業に関する作業情報、及び、前記作業車両を自動走行させる目標経路に関する経路情報の少なくともいずれかに基づいて、前記非作業領域において前記作業部を前記第1非作業位置又は前記第2非作業位置に設定する、
請求項1に記載の走行方法。
【請求項5】
前記目標経路は、前記作業部を前記作業位置に下降させて前記作業車両を自動走行させる作業経路と、前記作業部を非作業位置に上昇させて前記作業車両を自動走行させる旋回経路とを含み、
前記作業車両が前記作業経路を走行中に前記検知部が前記旋回経路上又は前記旋回経路付近に検知対象を検知しなかった場合に、前記非作業領域において前記作業部を前記第1非作業位置に設定し、
前記作業車両が前記作業経路を走行中に前記検知部が前記旋回経路上又は前記旋回経路付近に検知対象を検知した場合に、前記非作業領域において前記作業部を前記第2非作業位置に設定する、
請求項4に記載の走行方法。
【請求項6】
前記作業情報は、前記作業車両が前記所定の作業の途中に所定位置において行う途中作業の情報を含み、
前記作業車両を前記所定の作業の作業位置から前記所定位置までの移動経路を走行させる場合に、前記作業部を前記第2非作業位置に設定する、
請求項4に記載の走行方法。
【請求項7】
前記第1非作業位置は、前記第2非作業位置よりも高い位置であって、
前記非作業領域において、検知対象の高さが前記第2非作業位置よりも高く、かつ前記第1非作業位置よりも低い場合に、前記作業部を前記第1非作業位置に設定する、
請求項1~6のいずれかに記載の走行方法。
【請求項8】
前記非作業領域の幅が所定幅未満の場合に、前記非作業領域において前記作業部を前記第1非作業位置に設定し、
前記非作業領域の幅が所定幅以上の場合に、前記非作業領域において前記作業部を前記第2非作業位置に設定する、
請求項1~6のいずれかに記載の走行方法。
【請求項9】
前記作業車両が前記作業領域を退出してから次に前記作業領域に進入するまでの前記非作業領域における走行距離が所定距離以上の場合に、前記非作業領域において前記作業部を前記第1非作業位置に設定し、
前記走行距離が前記所定距離未満の場合に、前記非作業領域において前記作業部を前記第2非作業位置に設定する、
請求項1~6のいずれかに記載の走行方法。
【請求項10】
作業領域において所定の作業を行う作業部と、前記作業部よりも進行方向の後方側に配置され、所定の検知範囲の検知対象を検知する検知部とを備える作業車両を走行させる走行プログラムであって、
前記作業領域において前記作業部を作業位置に設定することと、
非作業領域において前記作業部を、第1非作業位置と、前記検知範囲のうち前記作業部が占める面積が前記第1非作業位置の場合の前記作業部が占める面積よりも小さい第2非作業位置とのいずれかに設定することと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための走行プログラム。
【請求項11】
作業領域において所定の作業を行う作業部と、前記作業部よりも進行方向の後方側に配置され、所定の検知範囲の検知対象を検知する検知部とを備える作業車両であって、
前記作業領域において前記作業部を作業位置に設定し、非作業領域において前記作業部を、第1非作業位置と、前記検知範囲のうち前記作業部が占める面積が前記第1非作業位置の場合の前記作業部が占める面積よりも小さい第2非作業位置とのいずれかに設定する設定処理部と、
前記設定処理部により設定される前記作業部の動作を制御しつつ前記作業車両を走行させる走行処理部と、
を備える作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業部及び検知部を備える作業車両の走行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場において、予め設定された目標経路に従って自動走行する作業車両(例えばコンバイン)が知られている(例えば特許文献1参照)。例えば、コンバインは、穀稈を刈り取る刈取部と、障害物などの検知対象を検知する検知部とを備え、進行方向前方の検知対象の有無を判定しながら刈取部による刈取作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-185852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の作業車両では、例えば作業車両が非作業領域を走行する場合に刈取部(作業部)を非作業位置(最上位置)に上昇させると、検知部の検知範囲に刈取部が進入し、検知可能範囲が狭くなる。これにより、検知部の検知機能が低下する問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、作業部の位置の変化によって検知部の検知機能が低下することを防ぐことが可能な走行方法、走行プログラム、及び作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る走行方法は、作業領域において所定の作業を行う作業部と、前記作業部よりも進行方向の後方側に配置され、所定の検知範囲の検知対象を検知する検知部とを備える作業車両を走行させる走行方法である。前記走行方法は、前記作業領域において前記作業部を作業位置に設定することと、非作業領域において前記作業部を、第1非作業位置と、前記検知範囲のうち前記作業部が占める面積が前記第1非作業位置の場合の前記作業部が占める面積よりも小さい第2非作業位置とのいずれかに設定することと、を実行する。
【0007】
本発明に係る走行プログラムは、作業領域において所定の作業を行う作業部と、前記作業部よりも進行方向の後方側に配置され、所定の検知範囲の検知対象を検知する検知部とを備える作業車両を走行させる走行プログラムである。前記走行プログラムは、前記作業領域において前記作業部を作業位置に設定することと、非作業領域において前記作業部を、第1非作業位置と、前記検知範囲のうち前記作業部が占める面積が前記第1非作業位置の場合の前記作業部が占める面積よりも小さい第2非作業位置とのいずれかに設定することと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるための走行プログラムである。
【0008】
本発明に係る作業車両は、作業領域において所定の作業を行う作業部と、前記作業部よりも進行方向の後方側に配置され、所定の検知範囲の検知対象を検知する検知部とを備える作業車両である。前記作業車両は、前記作業領域において前記作業部を作業位置に設定し、非作業領域において前記作業部を、第1非作業位置と、前記検知範囲のうち前記作業部が占める面積が前記第1非作業位置の場合の前記作業部が占める面積よりも小さい第2非作業位置とのいずれかに設定する設定処理部と、前記設定処理部により設定される前記作業部の動作を制御しつつ前記作業車両を走行させる走行処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業部の位置の変化によって検知部の検知機能が低下することを防ぐことが可能な走行方法、走行プログラム、及び作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る走行システムの構成を示す機能ブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るコンバインの構成を示す外観側面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るコンバインの構成を示す外観上面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る圃場に設定される目標経路の一例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るコンバインの作業手順の一例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るコンバインの刈取部の位置(最下位置)の一例を示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係るコンバインの刈取部の位置(最上位置)の一例を示す図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係るコンバインの刈取部の位置(中間位置)の一例を示す図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る走行システムによって実行される走行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の他の実施形態に係るコンバインの走行方法の一例を示す図である。
図11図11は、本発明の他の実施形態に係るコンバインの走行方法の一例を示す図である。
図12図12は、本発明の他の実施形態に係るコンバインの走行方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
本発明の作業車両の一例として、コンバイン1を挙げて説明する。図1に示すように、本発明の実施形態に係る走行システム10は、コンバイン1と操作端末30とを含んでいる。コンバイン1及び操作端末30は、通信網N1を介して通信可能である。例えば、コンバイン1及び操作端末30は、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANを介して通信可能である。
【0013】
コンバイン1は、圃場において刈取等の農作業(本発明の所定の作業の一例)を行う作業車両である。コンバイン1は、走行しながら作業を行うとともに、コンバイン1に搭載されたGNSSアンテナのGNSS情報、すなわちコンバイン1の自車位置を計測点データとして操作端末30に送信する。
【0014】
また、コンバイン1は、予め設定された目標経路に従って自動走行を行うことが可能である。なお、コンバイン1は、圃場の一部の領域(例えば直進経路)を自動走行し、他の領域(例えば旋回経路)を手動走行する構成であってもよい。また、コンバイン1は、操作端末30から各種の設定情報を受信して、設定情報に従って自動走行を行う。
【0015】
操作端末30は、コンバイン1を遠隔操作可能な携帯端末であって、例えば、タブレット端末、ノート型のパーソナルコンピュータ、スマートフォン等で構成される。なお、操作端末30と同様の操作装置がコンバイン1に搭載されていてもよい。
【0016】
作業者(オペレータ)は、操作端末30において、各種の設定項目について設定操作を行うことが可能である。また、操作端末30は、自動走行中のコンバイン1の作業状況、走行状況などの情報を表示させる。作業者は、操作端末30において作業状況、走行状況を把握することが可能である。なお、本発明において、操作端末30は省略されてもよい。
【0017】
図4には、圃場Fに対して設定された目標経路Rの一例を示している。例えば、コンバイン1は、圃場F内において、目標経路Rに従って開始位置Sから終了位置Gまで、外周側から内周側へ向かって走行しながら刈取作業(「回り刈り」、「往復刈り」)を行う。具体的には、コンバイン1は、圃場Fの外周側の外周領域F1では、圃場端(外周)に沿って走行しながら刈取作業を行う。また、圃場Fの内周側の内周領域F2では、コンバイン1は、図4の上下方向において各作業経路を直進走行しながら刈取作業を行い、左右方向において刈取作業を行わずに旋回走行及び直進走行を行って作業経路間を移動する。
【0018】
コンバイン1の作業手順の一例を図5を用いて説明する。先ず、コンバイン1は、開始位置Sにおいて自動走行を開始すると、圃場Fの外周に沿って穀稈を刈り取りながら走行する。また、コンバイン1は、刈り取った穀稈を脱穀すると、藁屑などの排藁を機体後方から外部に排出する。これにより、コンバイン1の走行跡には排藁B1が堆積され、コンバイン1が刈取作業を終えた経路には排藁列が形成される。なお、コンバイン1は、刈り取り対象の穀稈の位置に、刈り取った当該穀稈の排藁を排出するように設定されており、排藁B1の位置、幅(排藁列の左右方向の横幅)、長さなどを把握可能に構成されている。例えば、排藁B1は、コンバイン1の左右方向の中心を基準にして、機体の横幅よりも狭い幅で排出される。
【0019】
例えば、コンバイン1は、外周領域F1を2周する。この場合、2周分の排藁列が形成される。なお、外周領域F1の周回数は2周に限定されず、1周又は3周以上であってもよい。
【0020】
コンバイン1は、外周領域F1の刈取作業を終えると、内周領域F2に進入して、内周領域F2の刈取作業を開始する。内周領域F2では、コンバイン1は、上下方向において各作業経路を直進走行しながら刈取作業を行い、左右方向において刈取作業を行わずに外周領域F1(作業済領域、既刈領域)を旋回走行及び直進走行を行って作業経路間を移動する。コンバイン1は、内周領域F2において刈取作業を行い、終了位置Gに到達すると自動走行及び刈取作業を終了する。
【0021】
コンバイン1は、上記のように圃場F内において目標経路Rに従って自動走行しながら刈取作業を行う。なお、コンバイン1は、作業者が搭乗しないで自動走行する構成であってもよいし、作業者が搭乗して作業者の操作を受け付けながら自動走行する構成であってもよいし、作業者の手動操舵に応じて走行(手動走行)する構成であってもよい。また、コンバイン1は、作業者の設定操作に応じて、自動走行モードと手動走行モードとを切り替え可能であってもよい。
【0022】
[操作端末30]
図1に示すように、操作端末30は、操作制御部31、記憶部32、操作表示部33、及び通信部34などを備える情報処理装置である。操作端末30は、例えばタブレット端末で構成される。
【0023】
通信部34は、操作端末30を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数のコンバイン1などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0024】
操作表示部33は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。作業者は、前記表示部に表示される操作画面において、前記操作部を操作して各種の設定情報を登録する操作を行うことが可能である。また、作業者は、前記操作部を操作してコンバイン1に対する自動走行指示を行うことが可能である。さらに、作業者は、コンバイン1から離れた場所において、操作端末30に表示される走行軌跡により、圃場F内を自動走行するコンバイン1の走行状態を把握することが可能である。
【0025】
記憶部32は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリーなどの不揮発性の記憶部である。記憶部32には、操作制御部31に所定の制御処理を実行させるための制御プログラムが記憶されている。例えば、前記制御プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、操作端末30が備える所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部32に記憶される。なお、前記制御プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して操作端末30にダウンロードされて記憶部32に記憶されてもよい。また、記憶部32は、コンバイン1から送信される作業情報を記憶してもよい。
【0026】
また、記憶部32には、コンバイン1を自動走行させるための専用アプリケーションがインストールされている。操作制御部31は、前記専用アプリケーションを起動させて、コンバイン1に関する各種設定情報の設定処理、コンバイン1に対する自動走行指示などを行う。
【0027】
操作制御部31は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリーとして使用される。そして、操作制御部31は、前記ROM又は記憶部32に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより操作端末30を制御する。
【0028】
図1に示すように、操作制御部31は、設定処理部311、出力処理部312などの各種の処理部を含む。なお、操作制御部31は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0029】
設定処理部311は、コンバイン1が自動走行を行うための各種の設定情報を設定する。具体的には、設定処理部311は、圃場に関する圃場情報を設定する。前記圃場情報は、例えば、圃場最外周の形状、大きさ、及び位置情報(座標など)、圃場最外周を構成する計測点データ、圃場で作業を行う圃場内作業領域の形状、大きさ、及び位置情報(座標など)などを含む。また、前記圃場情報は、圃場の住所、圃場情報の登録名及び登録日、圃場内作業領域の登録名及び登録日などを含む。設定処理部311は、作業者による圃場情報の登録操作を受け付けて圃場情報を設定する。
【0030】
また、設定処理部311は、作業経路及び旋回経路を含む目標経路Rを作成する。例えば、作業者は、設定画面(不図示)において、経路パターン、旋回タイプなどを選択する。前記経路パターンには、複数の行程を往復する「往復刈り」と、圃場内作業領域の内周に沿った行程の周回を中央側にずらしながら繰り返す「回り刈り」とが含まれ、作業者はいずれかの経路パターンを選択する。また、作業者は、前記設定画面において、往復刈り及び回り刈りの作業で旋回する際の旋回半径を補正することが可能である。
【0031】
また、設定処理部311は、前記圃場情報、前記経路パターン、前記旋回タイプ、前記旋回半径などの情報に基づいて作業経路を作成する。設定処理部311は、作成した作業経路の経路情報(目標経路R)を圃場Fに対応付けて登録する。
【0032】
また、設定処理部311は、コンバイン1が実施する作業に関する作業情報を設定する。前記作業情報には、刈取作業に関する情報、コンバイン1が刈取作業の途中に所定位置において行う途中作業の情報などが含まれる。例えば、コンバイン1は、刈取作業中に貯留タンク27(図2参照)の貯留量が所定量(上限値)に達すると、圃場F内の排出位置に移動して貯留タンク27に貯留されている穀粒を搬送車に排出する。また例えば、コンバイン1は、刈取作業中に燃料が所定量(下限値)に達すると、圃場F内の補給位置に移動して燃料を補給する。設定処理部311は、作業者の設定操作に応じて、圃場F内の任意の位置に前記排出位置、前記補給位置を設定する。前記作業情報には、前記貯留量の上限値及び前記排出位置、前記燃料の下限値及び前記補給位置などの情報が含まれる。
【0033】
また、設定処理部311は、コンバイン1の走行速度(車速)を設定する。例えば、作業者は、前記設定画面において、作業時及び非作業時の直進車速、旋回車速、後進車速を設定することが可能である。
【0034】
設定処理部311は、上述の情報に加えて、コンバイン1の種類(最大刈取条数)、車幅、車両長さなど周知の情報を設定する。
【0035】
出力処理部312は、設定処理部311により設定された各種の設定情報をコンバイン1に出力する。また、出力処理部312は、作業者の操作に基づいて、作業開始指示及び作業終了指示をコンバイン1に出力する。
【0036】
操作制御部31が作業者から前記作業開始指示操作を受け付けると、出力処理部312は前記作業開始指示をコンバイン1に出力する。これにより、コンバイン1の制御装置11は、操作端末30から前記作業開始指示を取得する。制御装置11は、前記作業開始指示を取得すると、コンバイン1の作業及び走行を開始させる。また、操作制御部31が作業者から前記作業停止指示操作を受け付けると、出力処理部312は前記作業停止指示をコンバイン1に出力する。これにより、コンバイン1の制御装置11は、操作端末30から前記作業停止指示を取得する。制御装置11は、前記作業停止指示を取得すると、コンバイン1の作業及び走行を停止させる。
【0037】
なお、操作端末30は、サーバー(不図示)が提供する農業支援サービスのウェブサイト(農業支援サイト)に通信網N1を介してアクセス可能であってもよい。この場合、操作端末30は、操作制御部31によってブラウザプログラムが実行されることにより、前記サーバーの操作用端末として機能することが可能である。そして、前記サーバーは、上述の各処理部を備え、各処理を実行する。
【0038】
[コンバイン1]
図2にはコンバイン1を側方から見た外観図を示し、図3にはコンバイン1を上方から見た外観図を示している。図1図3に示すように、コンバイン1は、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7、動力部8、操縦部9、制御装置11、記憶部51、測位ユニット52、検知部53、通信部54などを備える。コンバイン1は、走行部2によって走行しつつ、刈取部3によって穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6に貯える。また、コンバイン1は、脱穀後の排藁を排藁処理部7によって処理する。コンバイン1は、動力部8が供給する動力によって、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、及び排藁処理部7を駆動する。
【0039】
走行部2は、機体フレーム12の下方に設けられており、左右一対のクローラ式走行装置23と、トランスミッション(不図示)とを備える。走行部2は、動力部8のエンジン20から伝達される動力(例えば回転動力)によって、クローラ式走行装置23のクローラを回転することで、コンバイン1を前後方向に走行させたり、左右方向に旋回させたりする。トランスミッションは、動力部8の動力(回転動力)をクローラ式走行装置23に伝達するものであり、回転動力を変速することもできる。
【0040】
刈取部3は、作業対象の圃場Fに対して作業を行う作業機であり、走行部2の前方に設けられ、圃場Fの未作業領域である未刈穀稈を有する領域(以下、未刈領域と称する)における所定の刈取幅の穀稈の刈取を行う。刈取部3は、本発明の作業部の一例である。刈取部3は、デバイダ13と、掻込リール14と、刈刃15と、掻込オーガ16と、フィーダハウス17と、搬送コンベヤ18とを備えている。また、刈取部3は、刈取作業を行うための回転作業の回転速度(作業速度)を検出する回転検出部(不図示)を備えている。前記回転検出部は、例えば、掻込リール14の回転速度、掻込オーガ16の回転速度、搬送コンベヤ18の回転速度などを検出する回転センサで構成される。
【0041】
デバイダ13は、刈取部3の左前端及び右前端から前方に突出して設けられ、未刈領域の穀稈を刈取幅内に案内する。掻込リール14は、デバイダ13の後方に配置され、左右方向に延びた回転軸周りに回転可能に設けられる。掻込リール14は、デバイダ13によって案内された穀稈の刈取を補助するために、回転駆動することによって穀稈を引き起こしながら穀稈の穂先側を掻き込む。刈刃15は、掻込リール14の下方に配置され、掻込リール14によって掻き込まれた穀稈の稈元側を切断して穀稈の刈取を行う。
【0042】
掻込オーガ16は、掻込リール14及び刈刃15の後方に配置され、左右方向に延びた回転軸周りに回転可能に設けられている。掻込オーガ16は、回転駆動することによって、刈刃15により刈り取った穀稈を掻き込んで後方へ搬送する。
【0043】
フィーダハウス17は、機体フレーム12から前方に延びていて掻込オーガ16の後方に配置され、機体フレーム12に昇降可能に支持されている。また、フィーダハウス17が昇降することによってデバイダ13、掻込リール14、刈刃15及び掻込オーガ16が昇降し、すなわち刈取部3が昇降する。
【0044】
なお、コンバイン1は、フィーダハウス17を昇降させて刈取部3を昇降させる昇降装置19を機体フレーム12に備えており、刈取部3を作業位置(図6参照)と非作業位置(図7及び図8参照)との間で昇降させる。昇降装置19は、例えば、エンジン20から動力を受けて稼動する油圧シリンダ等で構成される。
【0045】
搬送コンベヤ18は、フィーダハウス17内に回転可能に設けられており、フィーダハウス17の昇降に伴って移動する。搬送コンベヤ18は、回転駆動することによって、掻込オーガ16によってフィーダハウス17内に搬送された穀稈を更に後方に向かって脱穀部4へと搬送する。
【0046】
脱穀部4は、刈取部3のフィーダハウス17の後方に設けられており、フィーダハウス17から搬送された穀稈を脱穀する。脱穀部4は、扱胴21と、受網22とを備える。扱胴21は、フィーダハウス17から搬送された穀稈から穀粒を脱穀するとともに、脱穀後の穀稈、すなわち排藁を排藁処理部7へと搬送する。受網22は、扱胴21によって搬送される穀稈を支持するとともに、穀粒をふるいにかけて落下させる。
【0047】
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられている。選別部5は、揺動選別装置24と、送風選別装置25と、穀粒搬送装置(不図示)と、藁屑排出装置(不図示)とを備える。揺動選別装置24は、脱穀部4から落下した脱穀物をふるいにかけて穀粒と藁屑等に選別する。送風選別装置25は、脱穀部4から落下した脱穀物や揺動選別装置24によって選別された脱穀物を送風によって更に穀粒と藁屑等に選別する。穀粒搬送装置は、揺動選別装置24及び送風選別装置25によって選別された穀粒を貯留部6へ搬送する。藁屑排出装置は、揺動選別装置24及び送風選別装置25によって選別された穀粒以外の藁屑等を機外へ排出する。
【0048】
貯留部6は、脱穀部4の右側方に設けられている。貯留部6は、貯留タンク(グレンタンク)27と、穀粒排出装置28とを備える。貯留タンク27は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。穀粒排出装置28は、排出オーガ等を有して構成され、穀粒の排出作業を行い、貯留タンク27に貯留されている穀粒を予め設定された排出位置において搬送車に排出する。
【0049】
排藁処理部7は、脱穀部4の後方に設けられている。排藁処理部7は、例えば、排藁搬送装置(不図示)と、排藁切断装置(不図示)とを備えている。排藁処理部7は、脱穀部4から搬送された排藁を排藁搬送装置によって排藁切断装置へ搬送して、排藁切断装置によって切断した後でコンバイン1の後方に排出する(図5参照)。
【0050】
動力部8は、走行部2の上方、かつ貯留部6の下方に設けられている。動力部8は、回転動力を発生させるエンジン20を備えている。動力部8は、エンジン20が発生させた回転動力を、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7に伝達する。また、コンバイン1は、動力部8のエンジン20へ供給する燃料を収容する燃料タンクを備えている。
【0051】
操縦部9は、動力部8の上方に設けられている。操縦部9は、作業者が座る座席40である運転席の周囲に、コンバイン1の走行を操縦するための操作具として、コンバイン1の機体の旋回を指示するためのハンドル、コンバイン1の前後進の速度変更を指示するための主変速レバー及び副変速レバー等を備える。コンバイン1の手動走行は、操縦部9のハンドル、主変速レバー、及び副変速レバーの操作を受け付けた走行部2によって実行される。また、操縦部9は、刈取部3による刈取作業、脱穀部4による脱穀作業、貯留部6の穀粒排出装置28による排出作業等を操作するための機構を備える。
【0052】
測位ユニット52は、GPS等の衛星測位システムを利用してコンバイン1の自車位置を取得する。例えば、測位ユニット52は、測位アンテナを介して測位衛星から測位信号を受信し、測位信号に基づいて測位ユニット52の位置情報、すなわちコンバイン1の自車位置(計測点データ)を取得する。測位ユニット52は、測位アンテナに代えて、量子コンパスで構成されてもよい。
【0053】
通信部54は、コンバイン1を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して操作端末30などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0054】
記憶部51は、各種の情報を記憶するHDD、SSD、フラッシュメモリーなどの不揮発性の記憶部である。記憶部51には、制御装置11に後述の走行処理(図9参照)を実行させるための走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記走行プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部51に記憶される。なお、前記走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介してコンバイン1にダウンロードされて記憶部51に記憶されてもよい。また、記憶部51には、操作端末30から取得する各種設定情報が記憶される。
【0055】
検知部53は、赤外線、超音波などを利用して所定の検知範囲の検知対象を検知するセンサである。例えば、検知部53は、レーザーを用いて測定対象物(検知対象)までの距離を3次元で測定可能なライダーセンサ(距離センサ)であってもよいし、超音波を用いて測定対象物までの距離を測定可能な複数のソナーを有するソナーセンサであってもよい。検知部53は、刈取部3よりも進行方向の後方側に配置され、またコンバイン1の機体の上部かつ中央前部に配置されている。検知部53は、コンバイン1の機体の前部及び後部に配置されてもよいし、コンバイン1の機体の前後左右の各部に配置されてもよい。
【0056】
また、検知部53は、予め設定された所定の検知範囲の検知対象(例えば人物、物体などの障害物)を検知可能に構成されている。例えば検知部53に対して、コンバイン1の走行を制御するための監視対象のエリア(検知範囲)を設定することが可能である。例えば検知範囲には、コンバイン1に最も近い停止エリアと、停止エリアよりも前方側の減速エリアと、減速エリアよりもさらに前方側の報知エリアとが含まれる。例えば、停止エリアはコンバイン1から前方約2mの範囲に設定され、減速エリアは停止エリアから前方約6mの範囲に設定され、報知エリアは減速エリアから前方約2mの範囲に設定される。なお、コンバイン1の車速に応じて各エリアの範囲が設定されてもよい。
【0057】
検知部53は、測定情報(検知情報)を制御装置11に送信する。制御装置11は、検知部53から取得する測定情報に基づいて検知対象を検知するとともに検知対象の位置を特定する。制御装置11は、コンバイン1が自動走行中に報知エリアにおいて検知対象を検知した場合に、警報を外部に報知させる。また、制御装置11は、コンバイン1が自動走行中に減速エリアにおいて検知対象を検知した場合に、コンバイン1を減速させる。また、制御装置11は、コンバイン1が自動走行中に停止エリアにおいて検知対象を検知した場合に、コンバイン1を停止させる。制御装置11は、特定した検知対象の位置を示す位置情報を操作端末30に出力してもよい。
【0058】
他の実施形態として、検知部53は、カメラで構成されてもよい。例えば、検知部53は、コンバイン1の前方を撮像した撮像画像を画像解析して検知対象を検知する。また、検知部53は、人物、物体、穀稈などを判別し、制御装置11は、判別結果に応じて報知処理、減速処理、停止処理などを行ってもよい。また、他の実施形態として、検知部53は、ライダーセンサとカメラとで構成されてもよい。この場合、検知部53は、撮像画像と距離とに基づいて検知対象を検知する。検知部53は、本発明の検知部の一例である。
【0059】
制御装置11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリーとして使用される。そして、制御装置11は、前記ROM又は記憶部51に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することによりコンバイン1を制御する。
【0060】
ところで、従来の技術では、刈取部3の位置の変化によって検知部53の検知機能が低下する問題が生じる。具体的には、検知部53は、刈取部3よりも後方に設けられているため、刈取部3が検知部53の検知範囲内に進入する場合がある。例えば図6に示すように、検知部53の前方に刈取部3が配置されているため、検知範囲内の下側に刈取部3が位置する。図6に示すように、刈取部3が作業位置(例えば最下位置(高さH0))に下降して刈取作業を行う場合には、検知範囲の下側が刈取部3によって遮られるが、少なくとも前方の検知可能範囲Ar1においては刈取部3が存在しないため、検知可能範囲Ar1について検知対象を検知することが可能である。なお、検知部53の検知範囲に刈取部3が含まれる場合、刈取部3を含む領域(下側の領域)をマスキングすることによって刈取部3を障害物として検知しない制御を行う。例えば刈取部3の範囲又は穀稈の範囲をマスキング領域として予め設定することにより、マスキング領域に含まれる物体(刈取部3、穀稈など)を検知対象から除外することができる。また、カメラの撮像画像を解析して刈取部3又は穀稈を認識して検知対象から除外してもよい。図6に示す例では、コンバイン1から距離L1だけ離れた報知エリアに人物がいる場合に、検知部53は、人物を適切に検知することが可能である。なお、図6において、長さHaは、人物の身長を表している。図6に示すように、刈取部3が作業位置(高さH0)に位置している場合には、距離L1だけ離れた人物を適切に検知することが可能である。
【0061】
これに対して、例えば図7に示すように、刈取部3が非作業位置(例えば最上位置(高さH1))に上昇して走行している場合には、検知範囲の中央側が刈取部3によって遮られ、刈取部3を含む下側の領域がマスキングされるため、前方上側の検知可能範囲Ar2しか検知対象を検知することができなくなる。例えばコンバイン1から距離L1だけ離れた報知エリアに人物がいる場合に、人物が刈取部3で隠れてしまい、検知部53は、人物を適切に検知することができなくなる。このように、従来のコンバイン1では、例えばコンバイン1が非作業領域を走行する場合に刈取部3を非作業位置(最上位置)に上昇させると、検知部53の検知範囲のうち刈取部3が占める面積(占有率)が大きくなり、検知部53の検知機能が低下する問題が生じる。
【0062】
上記問題に関し、本実施形態に係るコンバイン1は、以下に示すように、刈取部3の位置の変化(昇降動作など)によって検知部53の検知機能が低下することを防ぐことが可能な構成を備えている。
【0063】
具体的には、図1に示すように、制御装置11は、走行処理部111、設定処理部112、検知処理部113などの各種の処理部を含む。なお、制御装置11は、前記CPUで前記走行プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記走行プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0064】
走行処理部111は、コンバイン1を走行させる走行処理を実行する。具体的には、走行処理部111は、圃場Fに対して設定された目標経路Rに従ってコンバイン1を自動走行させる。走行処理部111は、目標経路Rに含まれる、コンバイン1に所定の作業(刈取作業)を行なわせる複数の作業経路と、複数の作業経路間を接続する移動経路(旋回経路など)とに従ってコンバイン1を走行させる。走行処理部111は、圃場Fに対して設定される各種設定情報を操作端末30から取得する。また、走行処理部111は、刈取作業において、測位ユニット52からコンバイン1の自車位置を取得し、自車位置と目標経路Rに含まれる作業経路とに基づいて、コンバイン1が作業経路に沿って自動走行及び刈取作業を行うように走行部2、刈取部3、及び動力部8を制御する。
【0065】
例えば図5に示すように、走行処理部111は、コンバイン1を、開始位置Sから外周領域F1において外周に沿って自動走行及び刈取作業を実行させた後、内周領域F2において終了位置Gまで自動走行及び刈取作業を実行させる。
【0066】
設定処理部112は、コンバイン1における刈取部3の位置を設定する。具体的には、設定処理部112は、作業領域において刈取部3を作業位置に設定し、非作業領域において刈取部3を非作業位置に設定する。例えばコンバイン1が外周領域F1(未刈領域)において刈取作業を行う場合に、設定処理部112は、刈取部3を下降させて作業位置(最下位置(高さH0))(図6参照)に設定する。走行処理部111は、最下位置(高さH0)に設定された刈取部3によって刈取作業を実行させながら、コンバイン1を外周領域F1の目標経路Rに従って自動走行させる。
【0067】
コンバイン1が外周領域F1の刈取作業を終了すると、設定処理部112は、刈取部3を上昇させて非作業位置に設定する。例えば作業者がコンバイン1に搭乗している場合には、設定処理部112は、刈取部3を最上位置(高さH1)(図7参照)に設定する。走行処理部111は、刈取部3が最上位置に上昇すると刈取部3の駆動(刈取動作)を停止する。
【0068】
続いてコンバイン1が内周領域F2(未刈領域)において刈取作業を行う場合に、設定処理部112は、刈取部3を下降させて作業位置(最下位置(高さH0))(図6参照)に設定する。走行処理部111は、内周領域F2において、最下位置(高さH0)に設定された刈取部3によって刈取作業を実行させながら、作業経路(直進経路)を自動走行させる。コンバイン1が一つの作業経路の刈取作業を終えると外周領域F1(既刈領域)を走行(旋回走行及び直進走行)して、次の作業経路に進入する。この場合、設定処理部112は、コンバイン1が外周領域F1を走行する場合に刈取部3を最上位置(高さH1)(図7参照)に設定する。走行処理部111は、外周領域F1において、刈取部3が最上位置(高さH1)に上昇した状態でコンバイン1を旋回走行及び直進走行させる。刈取部3が最上位置に位置していると、例えばコンバイン1が旋回する際に圃場Fの外周の畔などに刈取部3が接触することを防ぐことができる。
【0069】
このように、作業者がコンバイン1に搭乗している場合には、設定処理部112は、刈取部3を最下位置(高さH0)(図6参照)と最上位置(高さH1)(図7参照)とを相互に切り替える。例えば、設定処理部112は、コンバイン1が作業領域(未刈領域)を走行する場合に刈取部3を最下位置に設定し、コンバイン1が非作業領域(既刈領域)を走行する場合に最上位置に設定する。
【0070】
なお、設定処理部112は、運転席の座席40(図3参照)に設けられたセンサ(不図示)又は運転席内に設けられたカメラにより、作業者がコンバイン1に搭乗しているか否かを判断してもよい。また、設定処理部112は、非作業領域においてコンバイン1が手動操舵により走行する場合に刈取部3を最上位置(高さH1)に設定してもよい。例えば、走行モードが手動走行モードに設定されている場合に、設定処理部112は、非作業領域における刈取部3の位置を最上位置に設定する。また、例えば、コンバイン1が作業領域を自動走行し、非作業領域を手動走行する走行モードに設定されている場合、設定処理部112は、非作業領域における刈取部3の位置を最上位置に設定してもよい。また、コンバイン1が作業領域及び非作業領域のそれぞれを自動走行する走行モード(自動走行モード)に設定されている場合に、設定処理部112は、非作業領域における刈取部3の位置を最上位置に設定してもよい。
【0071】
このように、刈取部3が最上位置に位置する場合には、検知部53の検知範囲に占める刈取部3の面積(占有率)が大きくなり、前方上側の検知可能範囲Ar2しか検知対象を検知することができなくなるが(図7参照)、作業者が目視により前方の検知対象の有無を判断することができるため、安全性を確保することができる。
【0072】
これに対して、作業者がコンバイン1に搭乗しない場合、すなわち走行モードが自動走行モードに設定され、コンバイン1が作業領域及び非作業領域のそれぞれを自動走行(無人走行)する場合には、設定処理部112は、非作業領域における刈取部3の位置を中間位置(高さH2)(図8参照)に設定する。
【0073】
例えばコンバイン1が外周領域F1(未刈領域)において刈取作業を行う場合に、設定処理部112は、刈取部3を下降させて作業位置(最下位置(高さH0))(図6参照)に設定する。走行処理部111は、最下位置(高さH0)に設定された刈取部3により刈取作業を実行させながら、コンバイン1を外周領域F1の目標経路Rに従って自動走行させる。
【0074】
コンバイン1が外周領域F1の刈取作業を終了すると、設定処理部112は、刈取部3を上昇させて中間位置(高さH2)(図8参照)に設定する。なお、中間位置は、最下位置よりも高く、かつ最上位置よりも低い高さ(H0<H2<H1)である。走行処理部111は、刈取部3が中間位置に上昇すると刈取部3の駆動(刈取動作)を停止する。
【0075】
続いてコンバイン1が内周領域F2(未刈領域)において刈取作業を行う場合に、設定処理部112は、刈取部3を下降させて作業位置(最下位置(高さH0))(図6参照)に設定する。走行処理部111は、内周領域F2において、最下位置(高さH0)に設定された刈取部3によって刈取作業を実行させながら、作業経路(直進経路)を自動走行させる。コンバイン1が一つの作業経路の刈取作業を終えると外周領域F1(既刈領域)を走行(旋回走行及び直進走行)して、次の作業経路に進入する。この場合、設定処理部112は、コンバイン1が外周領域F1を走行する場合に刈取部3を中間位置(高さH2)(図8参照)に設定する。走行処理部111は、外周領域F1において、刈取部3が中間位置(高さH2)に上昇した状態でコンバイン1を旋回走行及び直進走行させる。
【0076】
このように、作業者がコンバイン1に搭乗していない場合には、設定処理部112は、刈取部3を最下位置(高さH0)(図6参照)と中間位置(高さH2)(図8参照)とを相互に切り替える。例えば、設定処理部112は、コンバイン1が作業領域(未刈領域)を走行する場合に刈取部3を最下位置に設定し、コンバイン1が非作業領域(既刈領域)を走行する場合に中間位置に設定する。
【0077】
刈取部3が中間位置に位置する場合には、検知部53の検知範囲に占める刈取部3の面積が、刈取部3が最上位置に位置する場合の検知部53の検知範囲に占める刈取部3の面積(図7参照)よりも小さくなり、検知可能な範囲(検知可能範囲Ar3)を広くすることができる。図8に示す例では、前方中央側の検知可能範囲Ar3について検知対象を検知することが可能になる。このため、例えば検知部53の報知エリアに相当する距離L1だけ離れた位置に人物がいる場合に、当該人物を適切に検知することが可能になる。
【0078】
以上のように、設定処理部112は、刈取部3が刈取動作を行わないときの非作業位置を、最上位置又は中間位置に設定することが可能である。具体的には、設定処理部112は、非作業領域において刈取部3を、最上位置と、検知範囲のうち刈取部3が占める面積が最上位置の場合の刈取部3が占める面積よりも小さい中間位置とのいずれかに設定する。例えば、設定処理部112は、非作業領域においてコンバイン1が手動操舵により走行する場合、刈取部3を最上位置(第1非作業位置)(図7の高さH1)に設定する。また、設定処理部112は、非作業領域においてコンバイン1が自動走行し、かつ作業者がコンバイン1に搭乗する場合、刈取部3を最上位置(第1非作業位置)(図7の高さH1)に設定し、非作業領域においてコンバイン1が自動走行し、かつ作業者がコンバイン1に搭乗しない場合、刈取部3を中間位置(第2非作業位置)(図8の高さH2)に設定する。設定処理部112は、刈取部3の非作業位置を、作業者の搭乗の有無及び走行モードに応じて、最上位置及び中間位置を相互に切り替えることが可能である。
【0079】
検知処理部113は、検知部53の検知結果に基づいて所定の処理を実行する。具体的には、コンバイン1が自動走行中に検知部53が報知エリアにおいて検知対象を検知した場合に、検知処理部113は、警報を外部に報知させる。また、コンバイン1が自動走行中に検知部53が減速エリアにおいて検知対象を検知した場合に、検知処理部113は、コンバイン1を減速させる。また、コンバイン1が自動走行中に検知部53が停止エリアにおいて検知対象を検知した場合に、検知処理部113は、コンバイン1を停止させる。検知処理部113は、特定した検知対象の位置を示す位置情報を操作端末30に出力してもよい。
【0080】
他の実施形態として、例えば刈取部3が最上位置(高さH1)(図7参照)に位置する状態で、コンバイン1が自動走行中に検知部53が検知対象を検知した場合、又は、作業者が検知対象を発見して所定の操作を行った場合に、設定処理部112は、刈取部3を中間位置(高さH2)(図8参照)に下降させてもよい。また、設定処理部112は、前記検知対象までの距離が短くなるに従って(検知対象に近付くに従って)、刈取部3の位置を下降させてもよい。これにより、検知部53は前記検知対象を検知し続けることができるため、検知処理部113は、前記検知対象の位置に応じた適切な処理を実行することができる。
【0081】
ここで、設定処理部112は、検知部53の検知範囲に対応する距離L1に基づいて高さH2(図8参照)を決定してもよい。具体的には、設定処理部112は、検知対象に対する対処処理(報知処理、走行制御処理など)を実行する最遠距離(距離L1)における高さHa(例えば160cm)の位置が検知可能範囲Ar3に含まれるように高さH2を決定する。なお、本実施形態では刈取部3の高さを、地面からデバイダ13までの高さとしているが、刈取部3の高さはこれに限定されず、地面から掻込リール14の上端までの高さとしてもよい。このように、設定処理部112は、検知部53の検知範囲の距離(コンバイン1から進行方向の検知可能距離)と、当該距離の地点における検知可能高さとに基づいて刈取部3の中間位置(例えば高さH2)を決定する。
【0082】
[走行処理]
以下、図9を参照しつつ、走行システム10が実行する前記走行処理の一例について説明する。
【0083】
なお、本発明は、前記走行処理に含まれる一又は複数のステップを実行する走行方法の発明として捉えることができる。また、ここで説明する前記走行処理に含まれる一又は複数のステップは適宜省略されてもよい。また、前記走行処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここではコンバイン1の制御装置11が前記走行処理における各ステップを実行する場合を例に挙げて説明するが、一又は複数のプロセッサーが当該走行処理における各ステップを分散して実行する走行方法も他の実施形態として考えられる。
【0084】
ステップS1において、制御装置11は、作業開始指示を取得したか否かを判定する。制御装置11は、操作端末30又はコンバイン1の操作装置(操作レバーなど)から前記作業開始指示を取得すると(S1:Yes)、処理をステップS2に移行させる。制御装置11は、前記作業開始指示を取得するまで待機する(S1:No)。
【0085】
ステップS2において、制御装置11は、自動走行処理を開始する。具体的には、制御装置11は、操作端末30から取得する設定情報に含まれる目標経路Rに従って、コンバイン1を自動走行させる。例えば、制御装置11は、圃場F(図4参照)において、コンバイン1を目標経路Rに従って自動走行させながら作業(刈取作業)を実行させる。なお、制御装置11は、コンバイン1に搭乗する作業者による主変速レバーの操作を受け付け可能であってもよい。この場合、制御装置11は、作業者の操作に応じて、自動走行するコンバイン1の車速を変更する。なお、制御装置11は、自動走行処理を開始する時点(作業開始前の時点)で、刈取部3の高さを最上位置(高さH1)(図7参照)に設定する。
【0086】
ステップS3において、制御装置11は、コンバイン1が作業領域に進入するか否かを判定する。例えば、制御装置11は、コンバイン1が外周領域F1から内周領域F2(図4参照)に進入する場合に、コンバイン1が作業領域に進入すると判定する。制御装置11は、作業領域の手前で前記判定処理を実行する。制御装置11は、コンバイン1が作業領域に進入すると判定すると(S3:Yes)、処理をステップS4に移行させる。制御装置11は、コンバイン1が作業領域に進入しないと判定すると(S3:No)、処理をステップS5に移行させる。
【0087】
ステップS4において、制御装置11は、刈取部3を下降させて最下位置(高さH0)(図6参照)に設定する。制御装置11は、刈取部3を最下位置(高さH0)に設定すると、刈取部3により刈取作業を実行させながら、コンバイン1を目標経路R(作業経路)に従って自動走行させる。例えば、制御装置11は、コンバイン1が作業領域に進入する手前で刈取部3を最下位置に下降させ、コンバイン1が作業領域に進入すると刈取部3に刈取作業を実行させる。なお、制御装置11は、検知部53による検知可能範囲Ar1(図6参照)における検知情報に応じた処理(報知処理、減速処理、停止処理)を実行する。
【0088】
次にステップS5において、制御装置11は、コンバイン1が終了位置G(図4参照)に到達したか否かを判定する。制御装置11は、コンバイン1が終了位置Gに到達したと判定すると(S5:Yes)、前記走行処理を終了する。制御装置11は、コンバイン1が終了位置Gに到達していないと判定すると(S5:No)、処理をステップS6に移行させる。
【0089】
ステップS6において、制御装置11は、コンバイン1が作業領域から退出するか否かを判定する。例えば、制御装置11は、コンバイン1が内周領域F2から外周領域F1(図4参照)に退出する場合に、コンバイン1が作業領域から退出すると判定する。制御装置11は、外周領域F1の手前で前記判定処理を実行する。制御装置11は、コンバイン1が作業領域から退出すると判定すると(S6:Yes)、処理をステップS7に移行させる。制御装置11は、コンバイン1が作業領域から退出しないと判定すると(S6:No)、処理をステップS5に移行させる。
【0090】
ステップS7において、制御装置11は、作業者がコンバイン1に搭乗しているか否かを判定する。制御装置11は、作業者がコンバイン1に搭乗していると判定すると(S7:Yes)、処理をステップS8に移行させる。一方、制御装置11は、作業者がコンバイン1に搭乗していないと判定すると(S7:No)、処理をステップS71に移行させる。制御装置11は、例えば運転席の座席40(図3参照)に設置されたセンサ(重量センサなど)により作業者がコンバイン1に搭乗しているか否かを判定する。
【0091】
ステップS8では、制御装置11は、刈取部3を上昇させて最上位置(高さH1)(図7参照)に設定する。制御装置11は、刈取部3を最上位置(高さH1)に設定すると、刈取部3により刈取作業を停止させて、コンバイン1を目標経路R(旋回経路、直進経路など)に従って自動走行させる。例えば、制御装置11は、コンバイン1が作業経路の終端に到達した時点で刈取部3を最上位置に上昇させ、外周領域F1(既刈領域)においてコンバイン1を自動走行させる。なお、刈取部3が最上位置に位置した状態でコンバイン1が自動走行している間、作業者は、運転席において、目視で周囲の安全を確認したり、走行状況及び作業状況を確認したりする。また、制御装置11は、検知部53による検知可能範囲Ar2(図7参照)における検知情報に応じた処理(報知処理、減速処理、停止処理)を実行する。制御装置11は、ステップS8の後、処理をステップS9に移行させる。
【0092】
これに対して、ステップS71では、制御装置11は、刈取部3を上昇させて中間位置(高さH2)(図8参照)に設定する。制御装置11は、刈取部3を中間位置(高さH2)に設定すると、刈取部3により刈取作業を停止させて、コンバイン1を目標経路R(旋回経路、直進経路など)に従って自動走行させる。例えば、制御装置11は、コンバイン1が作業経路の終端に到達した時点で刈取部3を中間位置に上昇させ、外周領域F1(既刈領域)においてコンバイン1を自動走行させる。刈取部3が中間位置に位置した状態でコンバイン1が自動走行している間、制御装置11は、検知部53による検知可能範囲Ar3(図8参照)における検知情報に応じた処理(報知処理、減速処理、停止処理)を実行する。制御装置11は、ステップS71の後、処理をステップS9に移行させる。
【0093】
ステップS9において、制御装置11は、コンバイン1が終了位置G(図5参照)に到達したか否かを判定する。制御装置11は、コンバイン1が終了位置Gに到達したと判定すると(S9:Yes)、前記走行処理を終了する。制御装置11は、コンバイン1が終了位置Gに到達していないと判定すると(S9:No)、処理をステップS3に移行させる。制御装置11は、終了位置Gに到達するまで、上述の処理を繰り返し実行する(S9:No)。
【0094】
このように、制御装置11は、開始位置Sから終了位置Gまで上述の処理を繰り返し実行して、コンバイン1を目標経路Rに従って自動走行させるとともに、作業者の搭乗の有無に応じて刈取部3の非作業位置(最上位置又は中間位置)を設定して刈取作業を実行する。
【0095】
以上説明したように、本実施形態に係るコンバイン1は、作業領域において所定の作業を行う作業部(刈取部3)と、前記作業部よりも進行方向の後方側に配置され、所定の検知範囲の検知対象を検知する検知部(検知部53)とを備える。また、コンバイン1は、前記作業領域において前記作業部を作業位置(最下位置(高さH0))(図6参照)に設定し、非作業領域において前記作業部を、第1非作業位置(最上位置(高さH1))(図7参照)と、前記検知範囲のうち前記作業部が占める面積(占有率)が前記第1非作業位置の場合の前記作業部が占める面積(占有率)よりも小さい第2非作業位置(中間位置(高さH2))(図8参照)とのいずれかに設定する。すなわち、コンバイン1は、非作業領域において前記作業部を、検知可能範囲が狭い第1非作業位置(最上位置(高さH1))と、検知可能範囲が広い第2非作業位置(中間位置(高さH2))とのいずれかに設定する。
【0096】
例えば、コンバイン1は、非作業領域においてコンバイン1が手動操舵により走行する場合に、前記作業部を前記第1非作業位置(最上位置(高さH1))に設定する。
【0097】
また例えば、コンバイン1は、前記非作業領域において自動走行し、かつ作業者がコンバイン1に搭乗する場合に、前記作業部を前記第1非作業位置(最上位置(高さH1))に設定し、前記非作業領域において自動走行し、かつ作業者がコンバイン1に搭乗しない場合に、前記作業部を前記第2非作業位置(中間位置(高さH2))に設定する。
【0098】
上記構成によれば、刈取部3を前記第1非作業位置(最上位置(高さH1))に設定することにより、例えばコンバイン1が旋回する際に刈取部3が圃場Fの外周の畔などに接触することを防ぐことができる。また、刈取部3が最上位置にある場合、検知部53の検知範囲に占める刈取部3の面積が大きくなり、前方上側の検知可能範囲Ar2しか検知対象を検知することができなくなるが(図7参照)、作業者が目視により前方の検知対象の有無を判断することができるため、安全性を確保することができる。
【0099】
また、作業者がコンバイン1に搭乗しない場合に刈取部3を前記第2非作業位置(中間位置(高さH2))に設定することにより、検知部53の検知範囲に占める刈取部3の面積が小さくなるため、検知可能な範囲(検知可能範囲Ar3)を広くすることができる。よって、コンバイン1が非作業領域を走行(無人走行)する場合に検知対象を適切に検知することが可能になる。よって、刈取部3の位置の変化によって検知部53の検知機能が低下することを防ぐことが可能になる。
【0100】
[他の実施形態]
本発明は上述した実施形態に限定されない。本発明の他の実施形態について、以下に説明する。
【0101】
本発明の他の実施形態として、設定処理部112は、コンバイン1が実施する作業(刈取作業)に関する作業情報、及び、コンバイン1を自動走行させる目標経路Rに関する経路情報の少なくともいずれかに基づいて、非作業領域において刈取部3を第1非作業位置(最上位置)又は第2非作業位置(中間位置)に設定してもよい。
【0102】
具体的には、目標経路Rは、刈取部3を作業位置(最下位置)に下降させてコンバイン1を自動走行させる作業経路と、刈取部3を非作業位置に上昇させてコンバイン1を自動走行させる旋回経路とを含む。設定処理部112は、コンバイン1が前記作業経路を走行中に検知部53が前記旋回経路上又は前記旋回経路付近に検知対象を検知しなかった場合に、前記非作業領域において刈取部3を最上位置(高さH1)(図7参照)に設定する。一方、設定処理部112は、コンバイン1が前記作業経路を走行中に検知部53が前記旋回経路上又は前記旋回経路付近に検知対象を検知した場合に、前記非作業領域において刈取部3を中間位置(高さH2)(図8参照)に設定する。
【0103】
例えば図10に示すように、設定処理部112は、コンバイン1が作業経路r1を走行中(作業経路r1の終端に到達する前)に検知部53が非作業領域における旋回経路付近に障害物X1を検知した場合に、作業経路の終端に到達した時点で刈取部3を最下位置(高さH0)から中間位置(高さH2)に上昇させる。この場合、コンバイン1は、刈取部3を中間位置に維持して、検知可能範囲Ar3(図8参照)において障害物X1を検知(監視)しながら非作業領域を走行する。なお、障害物X1が走行制限エリア(減速エリア、停止エリア)に進入した場合には、制御装置11は、コンバイン1を減速又は停止させる。
【0104】
これに対して、コンバイン1が作業経路r1の終端に到達するまで検知部53が障害物X1を検知しない場合には、設定処理部112は、刈取部3を最上位置(高さH1)に上昇させる。このように、コンバイン1が非作業領域を走行する時点で非作業領域に検知対象が存在しないことが確認された場合には、刈取部3を最上位置に上昇させる。
【0105】
また例えば、前記作業情報は、コンバイン1が所定の作業の途中に所定位置において行う途中作業の情報を含む。設定処理部112は、コンバイン1を前記所定の作業の作業位置から前記所定位置までの移動経路を走行させる場合に、刈取部3を中間位置(高さH2)に設定する。例えば前記途中作業には、刈取作業中にコンバイン1を排出位置に移動させて貯留タンク27に貯留されている穀粒を搬送車に排出する作業、刈取作業中にコンバイン1を補給位置に移動させて燃料を補給する作業などが含まれる。
【0106】
例えば、刈取作業中に貯留タンク27の貯留量が所定量(上限値)に達すると、設定処理部112は刈取部3を中間位置(高さH2)に設定し、走行処理部111は、コンバイン1を現在位置から排出位置までの移動経路を走行させる。また例えば、刈取作業中に燃料が所定量(下限値)に達すると、設定処理部112は刈取部3を中間位置(高さH2)に設定し、走行処理部111は、コンバイン1を現在位置から補給位置までの移動経路を走行させる。
【0107】
このように、コンバイン1が移動経路を走行する際に刈取部3が中間位置に設定されることにより、コンバイン1が移動経路を走行中に検知対象を適切に検知することが可能になる。
【0108】
ところで、圃場Fの非作業領域や外周などに存在する検知対象(畔など)の高さが、中間位置の高さH2よりも高く、最上位置の高さH1よりも低い場合がある。この場合、設定処理部112は、コンバイン1が非作業領域を走行する場合に、刈取部3を最上位置(高さH1)に設定してもよい。他の実施形態として、設定処理部112は、検知対象の高さに応じて中間位置の高さH2を決定してもよい。また、設定処理部112は、走行履歴の情報(検知対象の検知履歴など)に基づいて、中間位置の高さH2を決定(更新)してもよい。これにより、刈取部3が検知対象に接触することを防ぎつつ、検知対象を適切に検知することができる。
【0109】
本発明の他の実施形態として、設定処理部112は、コンバイン1が旋回する非作業領域の幅に応じて刈取部3の非作業位置を設定してもよい。例えば図11に示すように、コンバイン1が作業領域から非作業領域に移動して、直進経路r11、旋回経路r12、直進経路r13を走行する場合において、非作業領域の幅が狭く、直進経路r13と内周領域F2との距離W1が短いと、コンバイン1が旋回経路r12を旋回したときに、刈取部3の端部が未刈領域の穀稈に接触して倒伏させてしまう恐れがある。そこで、例えば距離W1が所定距離(本発明の所定幅の一例)未満の場合に、設定処理部112は、非作業領域において、刈取部3を最上位置(高さH1)に設定する。これにより、穀稈の接触を回避することができるとともに、コンバイン1を最小幅で旋回させることができる。
【0110】
これに対して、例えば距離W1が所定距離以上の場合(図12参照)には、設定処理部112は、非作業領域において、刈取部3を中間位置(高さH2)に設定する。この場合、直進経路r11を長くすることにより、コンバイン1が旋回した場合でも刈取部3と穀稈との接触を回避することができる。
【0111】
図11に示すように、非作業時において刈取部3が最上位置(高さH1)に設定されると、検知範囲が狭くなり検知対象を検知し難くなるデメリットはあるが、既設の検知対象への接触を防ぐことができるとともに、非作業領域(旋回領域)を小さくすることができるため作業効率が向上するメリットがある。これに対して、図12に示すように、非作業時において刈取部3が中間位置(高さH2)に設定されると、既設の検知対象への接触のリスク、非作業領域(旋回領域)が大きくなるなどのデメリットはあるが、検知範囲が広くなり検知対象を検知し易くなるメリットがある。
【0112】
そこで、さらに他の実施形態として、設定処理部112は、作業の効率を優先する場合(作業性優先モードの場合)に刈取部3を最上位置(高さH1)に設定し(図11参照)、安全性を優先する場合(安全性優先モードの場合)に刈取部3を中間位置(高さH2)に設定してもよい(図12参照)。設定処理部112は、作業者の設定操作に応じて、作業性優先モード又は安全性優先モードに設定してもよい。また、設定処理部112は、非作業領域の幅、コンバイン1の旋回半径などに応じて、作業性優先モード又は安全性優先モードに自動設定してもよい。
【0113】
また、本発明の他の実施形態として、制御装置11は、コンバイン1が作業領域を退出してから次に作業領域に進入するまでの非作業領域における走行距離が所定距離以上の場合に、非作業領域において刈取部3を最上位置(高さH1)に設定し、前記走行距離が前記所定距離未満の場合に、非作業領域において刈取部3を中間位置(高さH2)に設定してもよい。これにより、非作業領域における走行距離が長い場合に刈取部3を最上位置に設定してコンバイン1を走行させることができるため次の作業経路に迅速に移動させることができる。また、非作業領域における走行距離が短い場合に刈取部3を中間位置に設定してコンバイン1を走行させることができるため次の作業経路まで移動する際の安全性を高めることができる。
【0114】
本発明の他の実施形態として、制御装置11は、コンバイン1が走行中に刈取部3の位置(高さH0、H1、H2)を変化させてもよいし、コンバイン1が停止中に刈取部3の位置を変化させてもよい。
【0115】
本発明の他の実施形態として、制御装置11は、作業者の操作に応じて刈取部3の位置を変化させてもよい。例えば、作業者がコンバイン1に設けられた操作レバー又は操作端末30の所定の操作ボタン(不図示)を押下した場合に、制御装置11は、刈取部3を最下位置(高さH0)、最上位置(高さH1)、中間位置(高さH2)に変化させる。また、作業者が中間位置(高さH2)を任意の位置に登録可能であってもよい。
【0116】
上述の各実施形態では、作業車両の一例としてコンバイン1を挙げたが、本発明の作業車両は、コンバイン1に限定されず、トラクタ、田植機、建設機械など様々な作業車両であってもよい。例えばトラクタが後方に接続される作業部を備える場合、検知部53は、トラクタの後部に設けられて、後方の検知対象を検知する。すなわち、トラクタは、作業領域において所定の作業を行う作業部(例えば耕耘機)と、作業部よりも進行方向(後進方向)の後方側(車体の前方側)に配置され、所定の検知範囲の検知対象を検知する検知部(検知部53)とを備える。この場合、設定処理部112は、例えばトラクタが非作業領域において後進走行する際に、作業部を、最上位置(高さH1)と、中間位置(高さH2)とのいずれかに設定する。このように、本発明の作業車両は、車体の前部に検知部53を備え、かつ検知部53よりも前方に作業部を備えてもよいし、車体の後部に検知部53を備え、かつ検知部53よりも後方に作業部を備えてもよい。
【0117】
本発明の他の実施形態として、コンバイン1は検知部53又は検知範囲を上下方向に移動可能な構成を備えてもよい。例えば制御装置11は、刈取部3を最上位置(高さH1)に設定する場合に(図7参照)、高さHaの位置が検知可能範囲Ar2に含まれるように検知部53又は検知範囲を上昇させる。また、例えば制御装置11は、刈取部3を中間位置(高さH2)に設定する場合に(図8参照)、検知部53又は検知範囲を上昇させて検知可能範囲Ar3をさらに広げてもよい。
【0118】
また、本発明の作業車両は、作業経路(例えば直進経路)を自動走行(自動操舵)し、旋回経路を手動走行(手動操舵)する作業車両であってもよいし、作業経路を手動走行(手動操舵)し、旋回経路を自動走行(自動操舵)する作業車両であってもよい。
【0119】
[発明の付記]
以下、上述の各実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0120】
<付記1>
作業領域において所定の作業を行う作業部と、前記作業部よりも進行方向の後方側に配置され、所定の検知範囲の検知対象を検知する検知部とを備える作業車両を走行させる走行方法であって、
前記作業領域において前記作業部を作業位置に設定することと、
非作業領域において前記作業部を、第1非作業位置と、前記検知範囲のうち前記作業部が占める面積が前記第1非作業位置の場合の前記作業部が占める面積よりも小さい第2非作業位置とのいずれかに設定することと、
を実行する走行方法。
【0121】
<付記2>
前記非作業領域において前記作業車両が手動操舵により走行する場合、前記作業部を前記第1非作業位置に設定する、
付記1に記載の走行方法。
【0122】
<付記3>
前記非作業領域において前記作業車両が自動走行し、かつ作業者が前記作業車両に搭乗する場合、前記作業部を前記第1非作業位置に設定し、
前記非作業領域において前記作業車両が自動走行し、かつ作業者が前記作業車両に搭乗しない場合、前記作業部を前記第2非作業位置に設定する、
付記1又は2に記載の走行方法。
【0123】
<付記4>
前記作業車両が実施する作業に関する作業情報、及び、前記作業車両を自動走行させる目標経路に関する経路情報の少なくともいずれかに基づいて、前記非作業領域において前記作業部を前記第1非作業位置又は前記第2非作業位置に設定する、
付記1~3のいずれかに記載の走行方法。
【0124】
<付記5>
前記目標経路は、前記作業部を前記作業位置に下降させて前記作業車両を自動走行させる作業経路と、前記作業部を非作業位置に上昇させて前記作業車両を自動走行させる旋回経路とを含み、
前記作業車両が前記作業経路を走行中に前記検知部が前記旋回経路上又は前記旋回経路付近に検知対象を検知しなかった場合に、前記非作業領域において前記作業部を前記第1非作業位置に設定し、
前記作業車両が前記作業経路を走行中に前記検知部が前記旋回経路上又は前記旋回経路付近に検知対象を検知した場合に、前記非作業領域において前記作業部を前記第2非作業位置に設定する、
付記4に記載の走行方法。
【0125】
<付記6>
前記作業情報は、前記作業車両が前記所定の作業の途中に所定位置において行う途中作業の情報を含み、
前記作業車両を前記所定の作業の作業位置から前記所定位置までの移動経路を走行させる場合に、前記作業部を前記第2非作業位置に設定する、
付記4又は5に記載の走行方法。
【0126】
<付記7>
前記第1非作業位置は、前記第2非作業位置よりも高い位置であって、
前記非作業領域において、検知対象の高さが前記第2非作業位置よりも高く、かつ前記第1非作業位置よりも低い場合に、前記作業部を前記第1非作業位置に設定する、
付記1~6のいずれかに記載の走行方法。
【0127】
<付記8>
前記非作業領域の幅が所定幅未満の場合に、前記非作業領域において前記作業部を前記第1非作業位置に設定し、
前記非作業領域の幅が所定幅以上の場合に、前記非作業領域において前記作業部を前記第2非作業位置に設定する、
付記1~7のいずれかに記載の走行方法。
【0128】
<付記9>
前記作業車両が前記作業領域を退出してから次に前記作業領域に進入するまでの前記非作業領域における走行距離が所定距離以上の場合に、前記非作業領域において前記作業部を前記第1非作業位置に設定し、
前記走行距離が前記所定距離未満の場合に、前記非作業領域において前記作業部を前記第2非作業位置に設定する、
付記1~8のいずれかに記載の走行方法。
【符号の説明】
【0129】
1 :コンバイン(作業車両)
2 :走行部
3 :刈取部(作業部)
4 :脱穀部
5 :選別部
6 :貯留部
7 :排藁処理部
8 :動力部
9 :操縦部
10 :走行システム
11 :制御装置
13 :デバイダ
14 :掻込リール
51 :記憶部
52 :測位ユニット
53 :検知部
54 :通信部
111 :走行処理部
112 :設定処理部
113 :検知処理部
F :圃場
Ar1 :検知可能範囲
Ar2 :検知可能範囲
Ar3 :検知可能範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12