(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168538
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】加飾フィルムおよび加飾フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B44C 1/17 20060101AFI20241128BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B44C1/17 L
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085297
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久世 康典
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 祥子
(72)【発明者】
【氏名】服部 公彦
【テーマコード(参考)】
3B005
4F100
【Fターム(参考)】
3B005FB23
3B005FB25
3B005FB30
3B005FB36
3B005FC08Z
3B005FC09Z
3B005FC20Z
3B005FE04
3B005FE12
3B005FE39
3B005FG04X
4F100AH03B
4F100AJ02B
4F100AK01C
4F100AK25B
4F100AK43B
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100CA13B
4F100CA30B
4F100EC04
4F100EH46
4F100EJ52
4F100HB00B
4F100JB14B
4F100JB14C
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】高精細かつ立体的な絵柄を生産性高く形成することができる加飾フィルムを提供すること。
【解決手段】少なくともフィルム、絵柄層およびバッキング層をこの順に有する部位を含む加飾フィルムであって、前記絵柄層および前記バッキング層がいずれも活性エネルギー線硬化膜である加飾フィルム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともフィルム、絵柄層およびバッキング層をこの順に有する部位を含む加飾フィルムであって、前記絵柄層および前記バッキング層がいずれも活性エネルギー線硬化膜である加飾フィルム。
【請求項2】
前記絵柄層が、ロジン変性樹脂、アリル系樹脂および/またはアクリル系樹脂を含む請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項3】
前記アクリル系樹脂が、スチレン基を有する請求項2に記載の加飾フィルム。
【請求項4】
前記絵柄層が、さらにウレタン結合を有する化合物を含む請求項1または2に記載の加飾フィルム。
【請求項5】
前記バッキング層の厚みが5μm以上100μm以下である請求項1または2に記載の加飾フィルム。
【請求項6】
少なくとも(1)印刷版の表面にインキを付着させ、直接またはブランケットを介して、インキをフィルム上に転写する工程、および(3a)バッキング層形成用塗液を前記インキ上に供給し、活性エネルギー線を照射して前記インキおよびバッキング層形成用塗液を硬化させ、絵柄層およびバッキング層を形成する工程を順に有する請求項1に記載の加飾フィルムの製造方法。
【請求項7】
少なくとも(1)印刷版の表面にインキを付着させ、直接またはブランケットを介して、インキをフィルム上に転写する工程、(2)活性エネルギー線を照射して前記インキを硬化させて絵柄層を形成する工程、および(3b)バッキング層形成用塗液を前記絵柄層上に供給し、活性エネルギー線を照射して前記バッキング層形成用塗液を硬化させ、バッキング層を形成する工程を順に有する請求項1に記載の加飾フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記印刷版が水なし平版印刷版である請求項6または7に記載の加飾フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記(3a)または(3b)の工程において、シリコーン層を有する平版印刷版を巻き付けた印刷胴によりバッキング層形成用塗液を塗布する請求項6または7に記載の加飾フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記シリコーン層の厚みが5μm以上50μm以下である請求項9に記載の加飾フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記(3a)または(3b)の工程において、前記インキまたは絵柄層上にバッキング層形成用塗液を2回以上供給する請求項6または7に記載の加飾フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾フィルムおよび加飾フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体面や曲面を有する構造体に文字や画像などの絵柄を付与する方法として、加飾フィルムによる表面加飾が挙げられる。一般的に、加飾フィルムには、グラビア印刷やスクリーン印刷等を用いてフィルム基材上に絵柄を印刷することにより、様々な意匠性が付与されている。このような加飾フィルムは、携帯電話端末やノートPC、デジタルカメラ等の筐体、その他家電製品や化粧品容器、自動車の内装部品、外装部品等の加飾に広く使用されている。
【0003】
近年、加飾フィルムには、立体感、奥行感、実物感等の意匠性の付与が求められている。例えば、透明基材フィルムの上に少なくとも着色層、樹脂層及びバッカーフィルムがこの順に積層されたインサート成形用加飾シートであって、着色層から透明基材フィルムに向かってエンボス加工が施され、かつ樹脂層の厚さが該エンボス深さに対して0.3~2.5倍であることを特徴とするインサート成形用加飾シート(例えば、特許文献1参照)や、基材フィルムの面上に、光輝層、パターン層、隠蔽層の順、または前記パターン層、前記光輝層、前記隠蔽層の順で積層されて形成された加飾フィルムであって、前記基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはアクリルフィルムで形成され、前記光輝層及び前記隠蔽層は、シルクスクリーン印刷によって積層され、前記パターン層は、オフセット印刷によって積層されていることを特徴とする加飾フィルム(例えば、特許文献2参照)などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-82912号公報
【特許文献2】特開2012-201006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のとおり、加飾フィルムは、グラビア印刷やスクリーン印刷により絵柄層を形成することが一般的である。かかる印刷には、有機溶剤を含む、低粘度で流動性の高いインキを使用することが一般的であり、インキを硬化させる加熱工程で排出されるVOCや二酸化炭素等による、環境への負荷が危惧されている。また、予備賦形しやすいガラス転移温度(Tg)の低いフィルムを用いる場合、インキを硬化させるための加熱温度を低くする必要があり、生産性に課題があった。さらに、万線模様、杢目模様、砂目模様、石目模様、布目模様、梨地模様、皮シボ模様、マット面模様、ヘアライン模様、幾何学模様などの絵柄において、より実物感を出すために、高精細化(網点・細線の狭幅化)や立体化(網点・細線の厚膜化)が求められているが、有機溶剤を含む、低粘度で流動性の高いインキを用いるグラビア印刷やスクリーン印刷では、加熱によるインキの硬化に時間を要することから、フィルムに転写されたインキは滲み広がりやすく、原理的に高精細化と立体化を両立する絵柄層を形成することは困難であった。
【0006】
また、バッキング層の形成においては、特許文献1に記載されるバッカーフィルムの貼り合わせや、特許文献2に記載されるスクリーン印刷は、生産性に課題があった。
【0007】
そこで、本発明ではかかる従来技術の課題を克服し、高精細かつ立体的な絵柄を生産性高く形成することができる加飾フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の加飾フィルムは、主として以下の構成を有する。
<1>少なくともフィルム、絵柄層およびバッキング層をこの順に有する部位を含む加飾フィルムであって、前記絵柄層および前記バッキング層がいずれも活性エネルギー線硬化膜である加飾フィルム。
<2>前記絵柄層が、ロジン変性樹脂、アリル系樹脂および/またはアクリル系樹脂を含む<1>に記載の加飾フィルム。
<3>前記アクリル系樹脂が、スチレン基を有する<2>に記載の加飾フィルム。
<4>前記絵柄層が、さらにウレタン結合を有する化合物を含む<1>~<3>のいずれかに記載の加飾フィルム。
<5>前記バッキング層の厚みが5μm以上100μm以下である<1>~<4>のいずれかに記載の加飾フィルム。
<6>少なくとも(1)印刷版の表面にインキを付着させ、直接またはブランケットを介して、インキをフィルム上に転写する工程、および(3a)バッキング層形成用塗液を前記インキ上に供給し、活性エネルギー線を照射して前記インキおよびバッキング層形成用塗液を硬化させ、絵柄層およびバッキング層を形成する工程を順に有する<1>~<5>のいずれかに記載の加飾フィルムの製造方法。
<7>少なくとも(1)印刷版の表面にインキを付着させ、直接またはブランケットを介して、インキをフィルム上に転写する工程、(2)活性エネルギー線を照射して前記インキを硬化させて絵柄層を形成する工程、および(3b)バッキング層形成用塗液を前記絵柄層上に供給し、活性エネルギー線を照射して前記バッキング層形成用塗液を硬化させ、バッキング層を形成する工程を順に有する<1>~<5>のいずれかに記載の加飾フィルムの製造方法。
<8>前記印刷版が水なし平版印刷版である<6>または<7>に記載の加飾フィルムの製造方法。
<9>前記(3a)または(3b)の工程において、シリコーン層を有する平版印刷版を巻き付けた印刷胴によりバッキング層形成用塗液を塗布する<6>~<8>のいずれかに記載の加飾フィルムの製造方法。
<10>前記シリコーン層の厚みが5μm以上50μm以下である<9>に記載の加飾フィルムの製造方法。
<11>前記(3a)または(3b)において、前記インキまたは絵柄層上にバッキング層形成用塗液を2回以上供給する<6>~<10>のいずれかに記載の加飾フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高精細かつ立体的な絵柄を生産性高く形成することができる加飾フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る加飾フィルムの構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明に係る加飾フィルムの構成の別の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0012】
(加飾フィルム)
本発明に係る加飾フィルムは、少なくともフィルム、絵柄層およびバッキング層をこの順に有する部位を含む。フィルムは、加飾フィルムの支持体として絵柄層およびバッキング層を保持する機能を有する。絵柄層は、所望の絵柄により被加飾物に意匠性を付与する機能を有する。バッキング層は、絵柄層の背景を隠蔽し、絵柄のコントラストを向上させる機能や、高温の溶融樹脂と接したときに絵柄層を保護する機能を有する。これら各層を2層以上有してもよい。また、絵柄およびバッキング層は全面に形成される必要はなく、例えば、絵柄層は所望の絵柄に応じて部分的に有してもよい。また、バッキング層上に、被加飾物とバッキング層を接着する接着層をさらに有してもよいし、各層の間に、さらに任意の機能層を有してもよい。
【0013】
本発明においては、絵柄層およびバッキング層がいずれも活性エネルギー線硬化膜である。ここで、活性エネルギー線硬化膜とは、エチレン性不飽和結合を有する化合物が、活性エネルギー線によって架橋され、硬化した膜をいう。絵柄層およびバッキング層がいずれも活性エネルギー線硬化膜であることにより、本発明に係る加飾フィルムは、絵柄層の形成において有機溶剤を含むインキを加熱硬化する工程を必要としないため、高精細かつ立体的な絵柄を生産性高く形成することができる。また、バッキング層の形成においても、有機溶剤を含むインキを加熱硬化する工程や、バッカーフィルムとの貼り合わせ工程を必要としないため、生産性高く形成することができる。
【0014】
図1に、本発明に係る加飾フィルムの構成の一例の概略断面図を示す。本発明に係る加飾フィルム100は、紙面上から順に、フィルム1、絵柄層2およびバッキング層3を有する。絵柄層2は2色以上で形成されていてもよく、例えば絵柄層が2色で形成される場合は、絵柄層2aおよび絵柄層2bとすることができる。各絵柄層の線幅は同じでも異なってもよく、最も線幅の小さい絵柄層の線幅を、最小線幅2Wとする。各絵柄層の高さは同じでも異なってもよく、最も高さの高い絵柄層の高さを、最大線高さ2Hとする。加飾フィルム100は、例えば、被加飾物が樹脂成形品である場合、射出成形などにより溶融した樹脂にバッキング層を密着させて加飾フィルムと樹脂成形品とを接着する用途に好適に用いることができる。
【0015】
図2に、本発明に係る加飾フィルムの構成の別の一例の概略断面図を示す。本発明に係る加飾フィルム200は、紙面上から順に、フィルム1、絵柄層2aおよび絵柄層2bからなる絵柄層2、バッキング層3および接着層4を有する。
図1と同様に、最も線幅の小さい絵柄層の線幅を、最小線幅2Wとし、最も高さの高い絵柄層の高さを、最大線高さ2Hとする。加飾フィルム200は、例えば、被加飾物が樹脂成形品である場合、射出成形した樹脂成形品と加飾フィルムとを接着層を介して接着する用途に好適に用いることができる。
【0016】
絵柄層2は、最小線幅2Wが小さいほど高精細な画像が再現でき、最大線高さ2Hが大きいほど立体的な表現が可能となるため、万線模様、杢目模様、砂目模様、石目模様、布目模様、梨地模様、皮シボ模様、マット面模様、ヘアライン模様、幾何学模様などの絵柄において、より実物感を出すことができる。かかる観点から、最小線幅2Wは、60μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、23μm以下がさらに好ましい。また、最大線高さ2Hは、2.0μm以上が好ましく、3.0μm以上がより好ましい。ここで、絵柄層の線幅と線高さは、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いた断面観察により測定することができ、無作為に選択した10箇所の絵柄層についてそれぞれ最も細い部分の線幅と最も高い部分の高さを測定し、線幅の最小値を最小線幅2W、高さの最大値を最大線高さ2Hとする。
【0017】
(フィルム)
フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタールなどの樹脂のフィルムが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンのフィルムが好ましい。これらのフィルムは、前述の樹脂に加えて添加剤を含有してもよい。また、フィルムは、プライマー樹脂のコーティング、コロナ放電処理、プラズマ処理などの表面処理が施されていてもよく、インキの密着性を向上させることができる。
【0018】
フィルムのガラス転移温度(Tg)は、予備賦形時に伸びやすくなり、成形性に優れる観点から、110℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。一方、フィルムのTgは、フィルムの表面強度を維持する観点から、0℃以上が好ましい。
【0019】
(絵柄層)
絵柄層は、活性エネルギー線硬化膜であり、例えば、フィルム上に、後述する光重合開始剤とエチレン性不飽和結合を有する化合物を含有する活性エネルギー線硬化型インキ(以下、「インキ」と略記する場合がある)の膜を形成し、インキ膜に活性エネルギー線を照射することにより硬化された膜などが挙げられる。これら光重合開始剤および/またはエチレン性不飽和結合を有する化合物の一部は、絵柄層中にも残存する。絵柄層中の光重合開始剤および/またはエチレン性不飽和結合を有する化合物は、例えば、絵柄層中の遊離成分をジクロロメタンで抽出した抽出物のGC-MS測定により分析することができる。
【0020】
活性エネルギー線としては、紫外線(UV)、電子線(EB)、赤外線(IR)などが挙げられる。これらの中でも、UVを好適に用いることができる。
【0021】
絵柄層を形成するインキ膜の形成方法としては、インキ中の有機溶剤を除去するための加熱工程を必要としないため、環境負荷が低く、Tgの低いフィルムが使用できること、印刷速度が速く生産性に優れることから、活性エネルギー線硬化方式のオフセット印刷やフレキソ印刷などが好ましい。その中でも、絵柄層の意匠性に優れることから、活性エネルギー線としてUVを用いるオフセット印刷、すなわちUVオフセット印刷を好適に用いることができる。オフセット印刷の印刷版としては、最小線幅をより小さく、最大線高さをより大きくして、より高精細かつ立体的な絵柄を形成することができることから、水なし平版印刷版が好ましい。
【0022】
活性エネルギー線硬化型インキは、着色剤、光重合開始剤、エチレン性不飽和結合を有する化合物および樹脂を含有することが好ましい。さらにウレタン結合を有する化合物を含有することが好ましく、加飾フィルムの伸張性、追従性を向上させ、成形性を向上させることができる。各成分について説明する。
【0023】
(1)着色剤
着色剤としては、有機顔料、無機顔料が挙げられる。有機顔料および無機顔料としては、国際公開第2020/235557号において、有機顔料および無機顔料としてそれぞれ例示したものが挙げられる。それらを2種以上含有してもよい。
【0024】
インキ中における着色剤の含有量は、5~40質量%が好ましい。
【0025】
(2)光重合開始剤
光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生させ、後述する(3)エチレン性不飽和結合を有する化合物の架橋を促進する成分であり、活性エネルギー線としてUVを使用する場合に好適に用いられる。
【0026】
光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、2-ジメチルアミノ)-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オンなどのアルキルフェノン系光重合開始剤、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、メチルベンゾイルホルメートなどの分子内水素引き抜き型光重合開始剤、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム)、エテノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)などのオキシムエステル系光重合開始剤、ヨードニウム,(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-,ヘキサフルオロホスフェート(1-)イン プロピレンカーボネート、スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、スルホニウムテトラキス[ペンタフルオロフェニル]ボレートなどのカチオン系光重合開始剤などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0027】
インキ中における光重合開始剤の含有量は、0.1~30質量%が好ましい。
【0028】
(3)エチレン性不飽和結合を有する化合物
エチレン性不飽和結合を有する化合物は、ラジカルによって架橋する成分であり、モノマーやオリゴマー等と呼ばれる。他のインキ成分の溶媒としても機能するため、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含有することにより、有機溶剤を用いる必要がない。
【0029】
モノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を1つ有する単官能モノマーや、分子内にエチレン性不飽和結合を2つ以上有する2官能以上のモノマーが挙げられる。活性エネルギー線による硬化を促進し、絵柄層の強度を高める観点から、2官能以上のモノマーが好ましい。
【0030】
2官能以上のモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DITMPTA)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、グリセリンプロポキシトリアクリレート(GPTA)、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA;2官能)やこれらのエチレンオキシド付加物等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。ここで、(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートの総称である。
【0031】
オリゴマーとしては、例えば、エポキシ樹脂等のエポキシ化合物に含まれるエポキシ基を酸や塩基で開環させた後に生じる水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるエポキシ変性(メタ)アクリレート、ロジン変性エポキシアクリレート、二塩基酸とジオールとの縮重合物の末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるポリエステル変性(メタ)アクリレート、ポリエーテル化合物の末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるポリエーテル変性(メタ)アクリレート、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との縮合物における末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるウレタン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸の総称である。
【0032】
インキ中におけるエチレン性不飽和結合を有する化合物の含有量は、30~80質量%が好ましい。
【0033】
(4)樹脂
樹脂としては、例えば、アルキド樹脂、ロジン変性樹脂、アリル系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0034】
ロジン変性樹脂としては、例えば、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂などが挙げられる。アリル系樹脂としては、例えば、ジアリルフタレート樹脂などが挙げられる。アクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸アルキルエステル樹脂、アクリル酸アルキルエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂などが挙げられる。ここで、スチレンアクリル樹脂とは、(A)スチレンおよび/またはα-メチルスチレンと、(B)(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体を指す。
【0035】
これらの中でも、絵柄層をより高精細化する観点から、スチレンアクリル樹脂が好ましい。スチレンアクリル樹脂は、(A)スチレンおよび/またはα-メチルスチレンの残基を含むことにより、樹脂間の相互作用が強くなり、インキの曳糸性を低減することができるため、微細な絵柄におけるインキの濡れ広がりを抑制し、絵柄層をより高精細化することができる。
【0036】
スチレンアクリル樹脂中における(A)スチレンおよび/またはα-メチルスチレンの残基の合計含有量は、インキの曳糸性をより抑制して絵柄層をより高精細化する観点から、40質量%以上が好ましい。一方、スチレンアクリル樹脂中における(A)スチレンおよび/またはα-メチルスチレンの残基の合計含有量は、樹脂の柔軟性を向上させ、絵柄層のクラックを抑制する観点から、65質量%以下が好ましい。
【0037】
インキ中における樹脂の含有量は、5~30質量%が好ましい。
【0038】
(5)ウレタン結合を有する化合物
ウレタン結合を有する化合物としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーやオリゴマーなどが挙げられる。本発明においては、ウレタン結合を有する化合物は、エチレン性不飽和結合を有する化合物や樹脂であっても(5)ウレタン結合を有する化合物に分類するものとする。
【0039】
ポリウレタン樹脂としては、イソシアネート化合物とポリオール化合物を反応させてなる、ウレタン結合を有するものが好ましい。ポリウレタン樹脂に含まれるウレタン結合は、水素結合によりハードセグメントを形成し、絵柄層に強靱性を付与することができる。また、ポリウレタン樹脂に含まれるポリオールはソフトセグメントを形成し、絵柄層に柔軟性を付与することができる。これにより、予備賦形時に加飾フィルムを延伸しても、絵柄層にクラックが生じにくくなり、成形性を向上させることができる。
【0040】
ポリウレタン樹脂としては、例えば、国際公開第2020/235556号において、(a)ポリウレタンとして例示されたものが挙げられる。
【0041】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、水酸基を有する(メタ)アクリル酸とイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させてなるものが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートに含まれるウレタン結合は、水素結合によりハードセグメントを形成し、絵柄層に強靱性を付与することができる。また、ウレタン(メタ)アクリレートに含まれるポリオールはソフトセグメントを形成し、絵柄層に柔軟性を付与することができる。これにより、予備賦形時に加飾フィルムを延伸しても、絵柄層にクラックが生じにくくなり、成形性を向上させることができる。さらに、ウレタン(メタ)アクリレートに含まれる(メタ)アクリロイル基は、活性エネルギー線の照射により硬化反応を引き起こすため、絵柄層に耐熱性を付与することができる。
【0042】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、国際公開第2020/235557号において、(a)ウレタン(メタ)アクリレートとして例示されたものが挙げられる。
【0043】
インキ中におけるウレタン結合を有する化合物の含有量は、3~20質量%が好ましい。
【0044】
(バッキング層)
バッキング層は、絵柄層の背景を隠蔽して絵柄のコントラストを向上させ、また、高温の溶融樹脂と接したときに絵柄層を保護する機能を有することから、微細パターンで意匠性を表現する絵柄層とは異なり、加飾フィルムのほぼ全面に存在することが好ましい。本発明においては、バッキング層とは、フィルム、絵柄層およびバッキング層の順に位置し、加飾フィルム中95~100面積%を占める層をいう。
バッキング層は、活性エネルギー線硬化膜であり、例えば、絵柄層上に、光重合開始剤とエチレン性不飽和結合を有する化合物を含有する活性エネルギー線硬化型インキの膜を形成し、インキ膜に活性エネルギー線を照射することにより硬化された膜などが挙げられる。この場合、光重合開始剤としては、例えば、前述の(2)として例示したものなどが挙げられ、エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、前述の(3)として例示したものなどが挙げられる。これら(2)および/または(3)の一部は、バッキング層中にも残存する。バッキング層中の(2)および/または(3)は、例えば、バッキング層中の遊離成分をジクロロメタンで抽出した抽出物のGC-MS測定により分析することができる。
【0045】
活性エネルギー線としては、紫外線(UV)、電子線(EB)、赤外線(IR)などが挙げられる。これらの中でも、UVを好適に用いることができる。
【0046】
バッキング層の形成に用いられる活性エネルギー線硬化型インキ(以下、「バッキング層形成用インキ」と略記する場合がある)は、前述の(2)光重合開始剤、(3)エチレン性不飽和結合を有する化合物、着色剤および樹脂を含有することが好ましい。
【0047】
バッキング層形成用インキに用いられる着色剤としては、前述の(1)着色剤の中でも、高温の溶融樹脂と接しても変性しないものが好ましく、耐熱性の高い無機顔料を好適に用いることができる。また、着色剤は2種以上含有してもよい。
【0048】
バッキング層形成用インキに用いられる樹脂としては、アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
図1に示す構成の加飾フィルムのように、被加飾物が樹脂成形品であって、射出成形などにより溶融した樹脂にバッキング層を密着させて加飾フィルムと樹脂成形品とを接着する場合、バッキング層は、溶融した樹脂と密着または接着しやすい材料から形成されることが好ましく、樹脂成形品を構成する樹脂と同種の材料であることがより好ましい。
【0049】
バッキング層形成用インキとしては、例えば、UV硬化型フレキソインキ、UV硬化型スクリーンインキ、UV硬化型オフセットインキ、EB硬化型フレキソインキ、EB硬化型オフセットインキなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。また、これら活性エネルギー線硬化型インキを、エチレン性不飽和結合を有する化合物で希釈して、低粘度化して用いてもよい。
【0050】
バッキング層の厚みは、加飾フィルムの強度を向上させる観点から、3.5μm以上が好ましく、5.0μm以上がより好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。一方、バッキング層の厚みは生産性を向上させる観点から、100μm以下が好ましい。
【0051】
バッキング層の反射濃度は、絵柄層の背景となる被加飾物を隠蔽し、絵柄のコントラストを向上させる観点から、1.20以上が好ましく、1.30以上がより好ましく、1.50以上がより好ましく、2.00以上がさらに好ましい。ここで、バッキング層の反射濃度は、絵柄層と重なっていない領域を対象に、反射分光光度計を用いて測定することができる。より具体的には、バッキング層から無作為に選択した10箇所について、反射分光光度計を用いて、カラーフィルター:ブラックの条件で反射濃度を測定し、その平均値を算出する。バッキング層の反射濃度は、例えば、バッキング層形成用インキの着色剤濃度や、バッキング層の厚みの選択により、所望の範囲に調整することができる。
【0052】
(接着層)
接着層の材料としては、例えば、イソシアネートを硬化剤とする2液硬化型ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0053】
接着層の厚みは、1μm以上50μm以下が好ましい。
【0054】
本発明の加飾フィルムは、加温された金型に挟み込むなどして、予備賦形を行うことができる。その場合、加飾フィルムの破断伸度は、加飾フィルムの成形性は、万能試験機を用いて、絵柄層のベタ画像部とバッキング層が重なっている領域を対象に測定した破断伸度を指標とすることができる。予備賦形のし易さ(成形性)の観点から、120%以上が好ましく、150%以上がより好ましく、200%以上がさらに好ましい。ここで、加飾フィルムの破断伸度は、少なくともフィルム、絵柄層およびバッキング層をこの順に有する部位について、万能試験機を用いて測定することができる。より具体的には、前述の部位から試験片打抜刃(ダンベル状4号形、JIS K 6251(2017年)準拠を用いて試験片を作製し、万能試験機と恒温槽を使用し、温度:150℃、チャック間距離:20mm、引張り速度:200mm/分の条件で、作製した試験片の150℃破断点を測定する。測定はそれぞれ3回行い、破断伸度(%)を以下の式(α)で算出し、その平均値を算出する。
破断伸度(%)=(破断点(mm)-20(mm))/20(mm)×100 ・・・(α)。
【0055】
(加飾フィルムの製造方法)
本発明の実施の形態に係る加飾フィルムの製造方法としては、例えば、少なくとも(1)印刷版の表面にインキを付着させ、直接またはブランケットを介して、インキをフィルム上に転写する工程(以下、「工程(1)」と略記する場合がある)および(3a)バッキング層形成用塗液を前記インキ上に供給し、活性エネルギー線を照射して前記インキおよびバッキング層形成用塗液を硬化させ、絵柄層とバッキング層を形成する工程(以下、「工程(3a)」と略記する場合がある)を順に有する方法や、少なくとも工程(1)、(2)活性エネルギー線を照射して前記インキを硬化させて絵柄層を形成する工程(以下、「工程(2)」と略記する場合がある)および(3b)バッキング層形成用塗液を前記絵柄層上に供給し、)活性エネルギー線を照射して前記バッキング層形成用塗液を硬化させ、バッキング層を形成する工程(以下、「工程(3b)と略記する場合がある」を順に有する方法などが挙げられる。いずれにおいても、絵柄層の形成において有機溶剤を含むインキを加熱硬化する工程を必要としないため、高精細かつ立体的な絵柄層を生産性高く形成することができる。また、バッキング層の形成においても、有機溶剤を含むインキを加熱硬化する工程や、バッカーフィルムとの貼り合わせ工程を必要としないため、生産性高く得ることができる。
【0056】
本発明に係る加飾フィルムの製造方法には、活性エネルギー線照射装置を備えた公知のオフセット印刷機、フレキソ印刷機、樹脂凸版印刷機などを用いることができる。それらの中でも、絵柄層の意匠性に優れる観点、印刷機が広く普及している観点から、UVオフセット印刷機を好適に用いることができる。以下に、加飾フィルムの製造方法の例を示す。
【0057】
工程(1)において、印刷版の表面にインキを付着させ、直接またはブランケットを介して、インキをフィルム上に転写する。
【0058】
UVオフセット印刷機を用いた加飾フィルムの製造方法において、UVオフセット印刷に用いられる印刷版としては、水あり平版印刷版、水なし平版印刷版が挙げられる。これらの中でも、湿し水を用いる必要がない水なし平版印刷版が好ましく、絵柄層をより高精細化することができる。UVオフセット印刷機としてインラインコーター搭載多色UVオフセット印刷機を用いて加飾フィルムを製造する場合、工程(1)においては、水なし平版印刷版原版を所定の画像様に製版した水なし平版印刷版を、インラインコーター搭載多色UVオフセット印刷機の前胴(例えば1~4胴)に装着し、前述の加飾フィルムの絵柄層を形成するインキとして例示したインキを、水なし平版印刷版の画像部に供給して付着させ、ブランケットを介して画像様のインキをフィルムに転写することが好ましい。
【0059】
必要に応じて、工程(2)において、活性エネルギー線を照射してインキを硬化させて絵柄層を形成する。UVオフセット印刷機としてインラインコーター搭載多色UVオフセット印刷機を用いて加飾フィルムを製造する場合、印刷機の胴間(例えば4-5胴間)に設置されたUVランプによりUV照射してインキを硬化させることが好ましい。
【0060】
次に工程(3a)または(3b)において、バッキング層形成用塗液をインキまたは絵柄層上に供給し、活性エネルギー線を照射してバッキング層形成用塗液を硬化させ、バッキング層を形成する。このとき、工程(2)を介しない工程(3a)の場合は、インキ上にバッキング層形成用塗液を供給した後、活性エネルギー線を照射してインキとバッキング層形成用塗液をあわせて硬化させ、絵柄層とバッキング層を同時に形成する。工程(2)の後に設けられる工程(3b)の場合は、絵柄層上にバッキング層形成用塗液を供給した後、活性エネルギー線を照射してバッキング層形成用塗液を硬化させ、バッキング層を形成する。
【0061】
バッキング層形成用塗液の供給方法としては、例えば、チャンバーコーター、ロールコーター、バーコーター、スリットダイコーター、ギャップアプリケーターなどのコーティング設備を用いた塗布、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、樹脂凸版印刷機、オフセット印刷機の印刷胴を用いた塗布、スクリーン印刷などの方法が挙げられる。これらの中でも、印刷機のインライン塗布設備として広く用いられているチャンバーコーターを用いた塗布や、多色印刷機の印刷胴の中で絵柄層形成に使用しない印刷胴を用いた塗布が好ましく、絵柄層とバッキング層を連続して形成することができ、生産性をより高めることができる。印刷胴を用いた塗布において、印刷版としては水なし平版印刷版が好ましい。すなわち、水なし平版印刷版を巻き付けた印刷胴をコーターとして用いて、バッキング層形成用塗液を塗布することが好ましい。水なし平版印刷版は、基板上に、シリコーン層を有することが好ましく、シリコーン層の厚みは、5μm以上50μm以下が好ましい。シリコーン層の厚みを5μm以上とすることにより、バッキング層形成用塗液が付着するセルを深くして、バッキング層形成用塗液を厚く塗布することができることから、厚み5μm以上のバッキング層を容易に形成することができる。シリコーン層の厚みは、10μm以上がより好ましい。一方、シリコーン層の厚みは、20μm以下がより好ましい。バッキング層の厚みを所望の範囲にするために、工程(3a)または(3b)において、バッキング層形成用塗液を2回以上供給してもよい。この場合、バッキング層形成用塗液を2回以上供給してから活性エネルギー線を照射してバッキング層形成用塗液を硬化させもよいし、バッキング層形成用塗液を供給してから活性エネルギー線を照射してバッキング層形成用塗液を硬化させるサイクルを2回以上行ってもよい。
【0062】
UVオフセット印刷機としてインラインコーター搭載多色UVオフセット印刷機を用いて加飾フィルムを製造する場合、工程(3a)または(3b)においては、水なし平版印刷版原版を所定の画像様(例えば、ベタ画像様)に製版した水なし平版印刷版を、インラインコーター搭載多色UVオフセット印刷機の後胴(例えば5~7胴)に装着し、前述のバッキング層形成用塗液を、水なし平版印刷版の画像部に供給し、ブランケットを介してインキまたは絵柄層上に転写することが好ましい。そして、印刷機の後胴以降に設置されたUVランプによりUV照射してバッキング層形成用塗液を硬化させることが好ましい。
【0063】
バッキング層上に接着層を形成する場合、前述の接着層の材料を、バッキング層上に供給して接着層を形成することが好ましい。接着層の材料の供給方法としては、工程(3a)または(3b)においてバッキング層形成用塗液の供給方法として例示した方法が挙げられる。
【実施例0064】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。まず、各実施例および比較例に用いた材料について説明する。
【0065】
<調製例1:インキ-1>
アルキド樹脂“アラキード”(登録商標)3145-80(荒川化学工業(株)製)30質量部、エチレン性不飽和結合を有する化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレートエチレンオキシド付加物“Miramer”(登録商標)M3130(MIWON社製)70.0質量部、重合禁止剤として4-メトキシフェノール(東京化成工業(株)製)0.1質量部を混合溶解してワニス-1を得た。このワニス-1と以下に示す各成分を、以下の割合で配合し、3本ロールを用いて混練してインキ-1を得た。
(a)ワニス-1:40質量部
(b)プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリアクリレート:30質量部
(c)酸化チタン“タイペーク”(登録商標)CR-50(石原産業(株)製):20質量部
(d)アルキルフェノン系光重合開始剤“Omnirad”(登録商標)907(IGM Resins B.V.製):5質量部
(e)アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤“Omnirad”TPO-L(IGM Resins B.V.製):5質量部。
【0066】
<調製例2:インキ-2>
アルキド樹脂“アラキード”3145-80(荒川化学工業(株)製)をロジン変性フェノール樹脂OR-581(星光PMC(株)製)に変更したワニス-2を用いた以外は調製例1と同様にして、インキ-2を得た。
【0067】
<調製例3:インキ-3>
アルキド樹脂“アラキード”3145-80(荒川化学工業(株)製)をジアリルフタレート樹脂“ダイソーダップ”(登録商標)((株)大阪ソーダ製)に変更したワニス-3を用いた以外は調製例1と同様にして、インキ-3を得た。
【0068】
<調製例4:インキ-4>
アルキド樹脂“アラキード”3145-80(荒川化学工業(株)製)をアクリル樹脂“ビームセット”(登録商標)700”(荒川化学工業(株)製)に変更したワニス-4を用いた以外は調製例1と同様にして、インキ-4を得た。
【0069】
<調製例5:インキ-5>
調製例4により得られたワニス-4と以下に示す各成分を、以下の割合で配合し、3本ロールを用いて混練してインキ-5を得た。
(a)ワニス-4:40質量部
(b)プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリアクリレート:20質量部
(c)酸化チタン“タイペーク”CR-50(石原産業(株)製):20質量部
(d)アルキルフェノン系光重合開始剤“Omnirad”907(IGM Resins B.V.製):5質量部
(e)アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤“Omnirad”TPO-L(IGM Resins B.V.製):5質量部
(f)ウレタン結合を有する化合物:脂肪族ウレタンアクリレート“EBECRYL”(登録商標)4858(ダイセル・オルネクス(株)製):10質量部。
【0070】
<調製例6:インキ-6>
アルキド樹脂“アラキード”3145-80(荒川化学工業(株)製)をスチレンアクリル樹脂MS-2225(スチレン残基:30質量%、星光PMC(株)製)に変更したワニス-6を用いた以外は調製例1と同様にして、インキ-6を得た。
【0071】
<調製例7:インキ-7>
アルキド樹脂“アラキード”3145-80(荒川化学工業(株)製)をスチレンアクリル樹脂YS-1274(スチレンおよびα-メチルスチレン残基:50質量%、星光PMC(株)製)に変更したワニス-7を用いた以外は調製例1と同様にして、インキ-7を得た。
【0072】
<調製例8:インキ-8>
調製例4により得られたワニス-4を調製例7により得られたワニス-7に変更した以外は調製例5と同様にして、インキ-8を調整した。
【0073】
<調製例9:インキ-9>
調製例7により得られたワニス-7と以下に示す各成分を、以下の割合で配合し、3本ロールを用いて混練してインキ-9を得た。
(a)ワニス-7:40質量部
(b)プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリアクリレート:20質量部
(c)酸化チタン“タイペーク”CR-50(石原産業(株)製):20質量部
(d)アルキルフェノン系光重合開始剤“Omnirad”907(IGM Resins B.V.製):5質量部
(e)アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤“Omnirad”TPO-L(IGM Resins B.V.製):5質量部
(f)ウレタン結合を有する化合物:ポリウレタン樹脂“ユリアーノ”(登録商標)W600(荒川化学工業(株)製):10質量部。
【0074】
<製造例1:水なし平版印刷版原版-1>
水なし平版印刷版原版-1を以下の方法で製造した。
【0075】
厚み0.24mmの脱脂したアルミ基板(三菱アルミ(株)製)上に、下記の断熱層組成物溶液を塗布し、200℃で90秒間乾燥し、厚み10.0μmの断熱層を設けた。なお、断熱層組成物溶液は、下記成分を室温にて撹拌混合することにより得た。
【0076】
[断熱層組成物溶液]
(i)エポキシ樹脂“jER”(登録商標)1010(三菱ケミカル(株)製):29.2質量部
(ii)ポリウレタン“サンプレン”(登録商標)LQ-T1331D(三洋化成工業(株)製、固形分濃度:20質量%):51.7質量部
(iii)アルミキレートALCH-TR(川研ファインケミカル(株)製):4.5質量部
(iv)レベリング剤“ディスパロン”(登録商標)LC951(楠本化成(株)製、固形分:10質量%):0.1質量部
(v)酸化チタン“タイペーク”(登録商標)CR-50(石原産業(株)製)のN,N-ジメチルホルムアミド分散液(酸化チタン50質量%):14.5質量部
(vi)N,N-ジメチルホルムアミド:450質量部
(vii)メチルエチルケトン:150質量部。
【0077】
次いで、下記の感熱層組成物溶液を前記断熱層上に塗布し、140℃で90秒間加熱乾燥し、厚み1.5μmの感熱層を設けた。なお、感熱層組成物溶液は、下記成分を室温にて撹拌混合することにより得た。
【0078】
[感熱層組成物溶液]
(i)赤外線吸収染料NK5559((株)林原製、最大吸収波長:774nm):12.0質量部
(ii)フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂“スミライトレジン”(登録商標)PR53195(住友ベークライト(株)製):70.4質量部
(iii)チタニウム-n-ブトキシドビス(アセチルアセトネート)“ナーセム”(登録商標)チタン(日本化学産業(株)製、濃度:73質量%、溶剤としてn-ブタノール:27質量%を含む):17.6質量部
(iv)テトラヒドロフラン:900質量部。
【0079】
次いで、塗布直前に調製した下記のシリコーン層組成物溶液を前記感熱層上に塗布し、140℃で80秒間加熱し、膜厚5μmのシリコーン層を設け、水なし平版印刷版原版-1を得た。なお、シリコーン層組成物溶液は、下記成分を室温にて撹拌混合することにより得た。
【0080】
[シリコーン層組成物溶液]
(i)α,ω-ジビニルポリジメチルシロキサン:DMS-V35(重量平均分子量49,500、GELEST Inc.製):87.0質量部
(ii)メチルハイドロジェンシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体RD-1(東レ・ダウコーニング(株)製):4.2質量部
(iii)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:2.6質量部
(iv)白金触媒SRX212(東レ・ダウコーニング(株)製):6.2質量部
(v)“アイソパー”(登録商標)E(エッソ化学(株)製):900質量部。
【0081】
<製造例2~5:水なし平版印刷版原版-2~5>
シリコーン層の厚みを以下のとおり変更した以外は製造例1と同様にして、水なし平版印刷版原版-2~水なし平版印刷版原版-5を得た。
製造例2:水なし平版印刷版原版-2:シリコーン層の膜厚3μm
製造例3:水なし平版印刷版原版-3:シリコーン層の膜厚10μm
製造例4:水なし平版印刷版原版-4:シリコーン層の膜厚20μm
製造例5:水なし平版印刷版原版-5:シリコーン層の膜厚50μm。
【0082】
<製造例6:絵柄層形成用水なし平版印刷版>
製造例1により得られた水なし平版印刷版原版-1に対し、CTP用露光機PlateRite 8900N-E((株)SCREEN製)を用いて、照射エネルギー:125mJ/cm2(ドラム回転数:210rpm)の条件で露光を行った。露光画像は、縦550mm×横650mmの平版印刷版原版の中央に、縦100mm×線幅200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10μmの細線を100μmの間隔を空けてそれぞれ10本ずつと、縦20mm×横650mmの帯状のベタ画像を設けた。露光した水なし平版印刷版原版-1を自動現像機TWL-1160F(東レ(株)製)に速度40cm/分で通し、前処理液DP-1(東レ(株)製)を用いて版面を前処理した後に、水道水をシャワーしながら回転ブラシで版面を擦ることにより絵柄層形成用水なし平版印刷版を製造した。絵柄層形成用水なし平版印刷版に形成された細線を、100倍のルーペを用いて観察したところ、線幅20μmまで断線せず再現していた。したがって、各実施例において絵柄層形成用水なし平版印刷版を用いて作製した絵柄層の最小線幅および最大線高さは、線幅20μm以上の細線で評価した。
【0083】
<製造例7~11:バッキング層形成用水なし平版印刷版-1~5>
製造例1~5により得られた水なし平版印刷版原版-1~5それぞれに対し、CTP用露光機PlateRite 8900N-E((株)SCREEN製)を用いて、照射エネルギー:125mJ/cm2(ドラム回転数:210rpm)の条件で露光を行った。露光画像は、縦550mm×横650mmの平版印刷版原版の中央に、縦200mm×横400mmのベタ画像を設けた。露光した原版を自動現像機TWL-1160F(東レ(株)製)に速度40cm/分で通し、前処理液DP-1(東レ(株)製)を用いて版面を前処理した後に、水道水をシャワーしながら回転ブラシで版面を擦ることにより、以下のとおりバッキング層形成用の水なし平版印刷版-1~5をそれぞれ製造した。
【0084】
<製造例12:グラビアシリンダー>
銅メッキを施したシリンダーに対し、グラビアシリンダー用電子彫刻機Vision3(OHIO社製)を用いて、縦100mm×線幅300、200、100、50、20μmの細線を100μmの間隔を空けてそれぞれ10本ずつと、縦20mm×横650mmの帯状のベタ画像を彫刻した。その後、表面の強度を出すためにクロムメッキして、グラビアシリンダーを製造した。グラビアシリンダーに形成された細線を、100倍のルーペを用いて観察したところ、線幅200μmまで断線せず再現していた。したがって、各比較例においてグラビアシリンダーを用いて作製した絵柄層の最小線幅および最大線高さは、線幅200μm以上の細線で評価した。
【0085】
次に、各実施例および比較例における評価方法について説明する。
【0086】
(1)最小線幅と最大線高さの測定
各実施例および比較例により得られた加飾フィルムを樹脂包埋した後、クロスセクションポリッシャ法(CP法)により断面を作製し、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、加速電圧:3.0kV、倍率:5,000倍の条件で、無作為に選択した10箇所の絵柄について、最も細い部分の線幅と最も高い部分の高さを測定し、測定した線幅の最小値を最小線幅、高さの最大値を最大線高さとした。
【0087】
(2)隠蔽性の評価
各実施例および比較例により得られた加飾フィルムのうち、加飾フィルムのバッキング層が設けられている縦200mm×横400mmのベタ画像部において、絵柄層と重なっていない領域を対象に、無作為に選択した10箇所について、反射分光光度計“SpectroEye”(登録商標)(X-rite(株)製)を用いて、カラーフィルター:ブラックの条件で反射濃度を測定し、その平均値を隠蔽性とした。
【0088】
(3)成形性の評価
各実施例および比較例により得られた加飾フィルムのうち、絵柄層のベタ画像部とバッキング層が重なっている領域を、試験片打抜刃(ダンベル状4号形、JIS K 6251(2017年)準拠)を用いて打ち抜き、試験片を作製した。
【0089】
万能試験機オートグラフAGS-J 500N((株)島津製作所製)および恒温槽TCE-N300A((株)島津製作所製)を使用し、温度:150℃、チャック間距離:20mm、引張り速度:200mm/分の条件で、作製した試験片の150℃破断点を測定した。測定は各加飾フィルムについてそれぞれ3回行い、破断伸度(%)を以下の式(α)で算出し、その平均値を成形性(%)とした。
破断伸度(%)=(破断点(mm)-20(mm))/20(mm)×100 ・・・(α)。
【0090】
<実施例1>
オフセット印刷が可能な7胴と、7胴目の後方にインライン塗布が可能なチャンバーコーターを2基備え、さらに4-5胴間およびコーター後方の2箇所にUV照射装置を備えた、インラインダブルコーター搭載7色UVオフセット印刷機“LITHRONE”(登録商標)GX40 advance((株)小森コーポレーション製)を準備した。
【0091】
絵柄層形成のため、1胴目の版胴に、製造例6により得られた絵柄層形成用水なし平版印刷版を装着し、1胴目のインキ壺に、調製例1により得られたインキ-1を投入した。また、バッキング層形成のため、チャンバーコーター1基に、バッキング層形成用塗液としてUV硬化型スクリーンインキUV FLX-972墨(帝国インキ製造(株)製)を投入した。
【0092】
上記条件の印刷機で、ポリカーボネートフィルムNF-2000(Tg:150℃、厚み:300μm、三菱ガス化学(株)製)をサイズ467mm×632mmに断裁した枚葉フィルムに、毎時8,000枚の印刷速度でインキ-1を印刷し、UV照射して絵柄層を形成した。続けてバッキング層形成用塗液を塗布した後、UV照射してバッキング層を形成し、毎時8,000枚の速度で加飾フィルムを製造した。
【0093】
<実施例2ないし9>
絵柄層を形成するインキを表1に記載のとおり変更した以外は実施例1と同様にして、加飾フィルムを製造した。
【0094】
<実施例10>
ポリカーボネートフィルムNF-2000をポリカーボネートフィルム“DURABIO”(登録商標)(Tg:102℃、三菱ケミカル(株)製)に変更した以外は実施例7と同様にして、加飾フィルムを製造した。
【0095】
<実施例11>
ポリカーボネートフィルムNF-2000をDURABIOに変更した以外は実施例9と同様にして、加飾フィルムを製造した。
【0096】
<実施例12>
ポリカーボネートフィルムNF-2000をポリ塩化ビニルフィルム“アキレスサラリア”(登録商標)(Tg:80℃、アキレス(株)製)に変更した以外は実施例9と同様にして、加飾フィルムを製造した。
【0097】
<実施例13>
ポリカーボネートフィルムNF-2000をポリプロピレンフィルムP2111(Tg:0℃、東洋紡(株)製)に変更した以外は実施例9と同様にして、加飾フィルムを製造した。
【0098】
<実施例14>
バッキング層形成用塗液の投入をチャンバーコーター1基からチャンバーコーター2基に変更し、バッキング層形成用塗液を2回塗布してバッキング層を形成した以外は、実施例13と同様にして加飾フィルムを製造した。
【0099】
<実施例15>
バッキング層形成用塗液の塗布方法をチャンバーコーターから印刷胴に変更した。5胴目および6胴目の各版胴に、製造例8により得られたバッキング層形成用水なし平版印刷版-2を装着し、各インキ壺にUV硬化型スクリーンインキUV FLX-972墨を投入して、バッキング層形成用塗液の塗布を2回行った以外は、実施例13と同様にして加飾フィルムを製造した。
【0100】
<実施例16>
水なし平版印刷版-2を製造例7により得られたバッキング層形成用水なし平版印刷版-1に変更した以外は、実施例15と同様にして加飾フィルムを製造した。
【0101】
<実施例17>
5胴目の版胴に、製造例9により得られたバッキング層形成用水なし平版印刷版-3を装着し、6胴目の版胴には印刷版を装着せず、バッキング層形成用塗液の塗布を1回行った以外は、実施例15と同様にして加飾フィルムを製造した。
【0102】
<実施例18>
水なし平版印刷版-2を製造例9により得られたバッキング層形成用水なし平版印刷版-3に変更した以外は、実施例15と同様にして加飾フィルムを製造した。
【0103】
<実施例19>
5胴目、6胴目、7胴目の各版胴に、製造例9により得られたバッキング層形成用水なし平版印刷版-3を装着し、バッキング層形成用塗液の塗布を3回行った以外は、実施例15と同様にして加飾フィルムを製造した。
【0104】
<実施例20~22>
水なし平版印刷版-3を製造例10により得られたバッキング層形成用水なし平版印刷版-4に変更した以外は、実施例17~19とそれぞれ同様にして加飾フィルムを製造した。
【0105】
<実施例23~25>
水なし平版印刷版-3を製造例11により得られたバッキング層形成用水なし平版印刷版-5に変更した以外は、実施例17~19とそれぞれ同様にして加飾フィルムを製造した。
【0106】
<比較例1>
製造例12により得られたグラビアシリンダーをFB型グラビア印刷機(富士機械工業(株)製)に取り付け、グラビアインキLSNT(東洋インキ(株)製)を用いて、ポリカーボネートフィルムNF-2000に対し連続印刷を行い、絵柄層を形成した。
【0107】
さらに絵柄層上に、接着剤として“タケラック”(登録商標)A-626/“タケネート”(登録商標)A-65(質量比16/1で混合、ともに三井化学(株)製)を、バーコート法により塗布して、80℃で1分間乾燥させた後の塗布量が4.0g/m2となるように接着層を形成した。その後、ラミネーターMPK-600を用いて、接着層上に黒色ABSフィルム(厚み:200μm、東和化工(株)製)を貼り合わせ、バッキング層を形成し、毎時約10枚の速度で加飾フィルムを製造した。オフラインでバッキング層を形成するため、生産性は低かった。
【0108】
<比較例2>
比較例1と同様にしてポリカーボネートフィルムNF-2000に絵柄層を形成した。
【0109】
さらに絵柄層上に、スクリーン印刷版BS(アサダメッシュ(株)製、メッシュ:325本、開口率:41%、メッシュ厚:60μm)を用いて、溶剤スクリーンインキHAS 911黒(帝国インキ製造(株)製)をG-002溶剤(帝国インキ製造(株)製)で30質量%に希釈したインキをベタ画像様に供給し、80℃で60分間乾燥してバッキング層を形成し、毎時約0.85枚の速度で加飾フィルムを製造した。オフラインでバッキング層を形成するため生産性は低かった。
【0110】
各実施例および比較例により得られた加飾フィルムについて、前述の方法により評価した結果を表1~2にまとめた。
【0111】
【0112】