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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168550
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H02J9/06 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085322
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 和真
【テーマコード(参考)】
5G015
【Fターム(参考)】
5G015GA05
5G015GB01
5G015HA16
5G015JA05
5G015JA09
5G015JA32
5G015JA33
5G015JA52
(57)【要約】
【課題】給電の継続性を向上させることができる無停電電源装置を提供する。
【解決手段】制御基板71は、インバータ給電の異常を検知した場合、電圧センサ基板51で検出された電圧V2と電圧V1とが同期しているか否かを判定する。制御基板71は、電圧V2と電圧V1とが同期していると判定した場合は、スイッチS3をオフに制御するとともにスイッチS4をオンに制御する。制御基板71は、所定の条件が成立した場合は、電圧V2と電圧V1とが同期していないと判定された場合であっても、スイッチS3をオフに制御するとともにスイッチS4をオンに制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータと、
前記コンバータまたは電力貯蔵装置から供給される直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータと、
バイパス入力電源から供給される交流電力を前記負荷に供給するバイパス回路と、
前記インバータおよび前記負荷の間に接続される第1のスイッチと、
前記バイパス入力電源および前記負荷の間に接続される第2のスイッチと、
前記交流電源から供給される交流電力の電圧を第1の電圧として検出するとともに前記バイパス入力電源から供給される交流電力の電圧を第2の電圧として検出する電圧検出回路と、
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとをオンまたはオフに制御するコントローラとを備え、
前記第1のスイッチがオンに制御されると、前記インバータによって生成された交流電力を前記負荷に供給するインバータ給電が行われるように構成され、
前記第2のスイッチがオンに制御されると、前記バイパス入力電源からの電力を前記負荷に供給するバイパス給電が行われるように構成され、
前記コントローラは、
前記インバータ給電の異常を検知した場合、前記電圧検出回路で検出された前記第1の電圧と前記第2の電圧とが同期しているか否かを判定し、
前記第1の電圧と前記第2の電圧とが同期していると判定した場合は、前記第1のスイッチをオフに制御するとともに前記第2のスイッチをオンに制御し、
所定の条件が成立した場合は、前記第1の電圧と前記第2の電圧とが同期していないと判定された場合であっても、前記第1のスイッチをオフに制御するとともに前記第2のスイッチをオンに制御する、無停電電源装置。
【請求項2】
前記バイパス入力電源から供給される交流電力の電圧を第3の電圧として検出する第2の電圧検出回路をさらに備え、
前記コントローラは、前記インバータ給電の異常を検知した場合、前記第1の電圧と前記第3の電圧とが同期しているか否かをさらに判定し、
前記所定の条件は、前記第1の電圧と前記第3の電圧とが同期していると判定した場合に成立する、請求項1に記載の無停電電源装置。
【請求項3】
前記第1のスイッチがオフに制御されるときに、前記第2のスイッチがオンに制御されるように構成された強制切替回路をさらに備え、
前記所定の条件は、前記強制切替回路において前記第1のスイッチをオフに制御する指令を検知した場合に成立する、請求項1に記載の無停電電源装置。
【請求項4】
前記バイパス入力電源から供給される交流電力の電圧を第3の電圧として検出する第2の電圧検出回路と、
前記第1のスイッチがオフに制御されるときに、前記第2のスイッチがオンに制御されるように構成された強制切替回路とをさらに備え、
前記コントローラは、前記インバータ給電の異常を検知した場合、前記第1の電圧と前記第3の電圧とが同期しているか否かをさらに判定し、
前記所定の条件は、前記第1の電圧と前記第3の電圧とが同期していると判定した場合、および、前記強制切替回路において前記第1のスイッチをオフに制御する指令を検知した場合のいずれかにおいて成立する、請求項1に記載の無停電電源装置。
【請求項5】
前記強制切替回路を無効化する第3のスイッチをさらに備える、請求項3または請求項4に記載の無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5917921号公報(特許文献1)には、交流電源から供給される交流電力をコンバータにより直流電源に変換した後にさらにインバータによって交流電力に変換して負荷に供給するインバータ給電モードと、交流電力を直接負荷に供給するバイパス給電モードとに切り替え可能な無停電電源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5917921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような無停電電源装置において、インバータ給電の異常が検知された場合、インバータ給電時に用いられる交流電源から供給される交流電力の電圧と、バイパス給電時に用いられる交流電源(バイパス入力電源)から供給される交流電力の電圧とが同期しているときに、インバータ給電からバイパス給電に切り替えるように構成される場合がある。
【0005】
しかしながら、接地系統からのノイズ流入による影響等によりバイパス入力電源から供給される交流電力の電圧が誤検出されることがあり、上記同期の判定が正しく行われない場合がある。このような場合、実際には両電圧が同期しているにも関わらずバイパス給電に切り替わらないことが原因で給電が途切れ、無停電電源装置による給電の継続性が低下することがあった。
【0006】
それゆえ、本開示の主たる目的は、給電の継続性を向上させることができる無停電電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の無停電電源装置は、コンバータと、インバータと、バイパス回路と、第1のスイッチと、第2のスイッチと、電圧検出回路と、コントローラとを備える。コンバータは、交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換する。インバータは、コンバータまたは電力貯蔵装置から供給される直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する。バイパス回路は、バイパス入力電源から供給される交流電力を負荷に供給する。第1のスイッチは、インバータおよび負荷の間に接続される。第2のスイッチは、バイパス入力電源および負荷の間に接続される。電圧検出回路は、交流電源から供給される交流電力の電圧を第1の電圧として検出するとともにバイパス入力電源から供給される交流電力の電圧を第2の電圧として検出する。コントローラは、第1のスイッチと第2のスイッチとをオンまたはオフに制御する。第1のスイッチがオンに制御されると、インバータによって生成された交流電力を負荷に供給するインバータ給電が行われるように構成される。第2のスイッチがオンに制御されると、バイパス入力電源からの電力を負荷に供給するバイパス給電が行われるように構成される。コントローラは、インバータ給電の異常を検知した場合、電圧検出回路で検出された第1の電圧と第2の電圧とが同期しているか否かを判定する。コントローラは、第1の電圧と第2の電圧とが同期していると判定した場合は、第1のスイッチをオフに制御するとともに、第2のスイッチをオンに制御する。コントローラは、所定の条件が成立した場合は、第1の電圧と第2の電圧とが同期していないと判定された場合であっても、第1のスイッチをオフに制御するとともに、第2のスイッチをオンに制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、給電の継続性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来型の無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図2】インバータ給電の異常発生時の処理の手順を説明するフローチャートである。
図3】スイッチを制御する処理の手順を説明するフローチャートである。
図4】実施の形態1に係る無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図5】実施の形態1に係るインバータ給電の異常発生時の処理の手順を説明するフローチャートである。
図6】実施の形態2に係る無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図7】実施の形態2に係るスイッチを制御する処理の手順を説明するフローチャートである。
図8】実施の形態3に係る無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0011】
[従来型の無停電電源装置]
まず、従来型の無停電電源装置の例について説明する。図1は、従来型の無停電電源装置100の構成を示す回路ブロック図である。
【0012】
無停電電源装置100は、商用交流電源30から供給される三相交流電力を直流電力に一旦変換し、その直流電力を三相交流電力に変換して負荷31に供給するものである。図1では、図面および説明の簡単化のため、三相(U相、V相、W相)のうちの一相(たとえばU相)に対応する部分の回路のみが示されている。商用交流電源30は、「交流電源」の一実施例に対応する。
【0013】
無停電電源装置100は、交流入力端子T11、バッテリ端子T12、交流出力端子T13、およびバイパス入力端子T14を備える。交流入力端子T11は、商用交流電源30から商用周波数の交流電力を受ける。バイパス入力端子T14は、バイパス交流電源33から商用周波数の交流電力を受ける。バイパス交流電源33は、商用交流電源であってもよいし、発電機であっても構わない。バイパス交流電源33は、「バイパス入力電源」の一実施例に対応する。
【0014】
バッテリ端子T12は、バッテリ32に接続される。バッテリ32は、直流電力を蓄える。バッテリ32は「電力貯蔵装置」の一実施例に対応する。バッテリ32の代わりにコンデンサが接続されていても構わない。交流出力端子T13は、負荷31に接続される。負荷31は、交流電力によって駆動される。
【0015】
無停電電源装置100は、さらに、コンバータ4、双方向チョッパ7、インバータ8、半導体スイッチ20、スイッチS1,S3,S4、電磁コイルC3,C4、LCD41、表示基板42、電圧センサ基板51、制御基板70、盤内リレー基板91を備える。電圧センサ基板51は、「電圧検出回路」の一実施例に対応する。制御基板70に盤内リレー基板91を加えた構成は、「コントローラ」の一実施例に対応する。
【0016】
スイッチS1の第1端子は交流入力端子T11に接続され、スイッチS1の第2端子はコンバータ4の交流端子4aに接続される。スイッチS1は、無停電電源装置100の使用時にオンされ、たとえば無停電電源装置100のメンテナンス時にオフされる。
【0017】
交流入力端子T11とスイッチS1との間にあるノードN2に現れる交流入力電圧(単に「電圧」とも称する)V2の瞬時値は、電圧センサ基板51によって検出されるように構成される。電圧センサ基板51は、信号線を介して制御基板70に接続される。電圧センサ基板51は、交流入力電流を検出するようにしてもよい。
【0018】
コンバータ4は、制御基板70によって制御され、商用交流電源30から交流電力が供給されている通常時には、交流電力を直流電力に変換して直流ライン6に出力する。商用交流電源30から交流電力が正常に供給されなくなった場合(商用交流電源30の停電時)には、コンバータ4の運転は停止される。コンバータ4の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。
【0019】
具体的には、コンバータ4は、図示しない複数のスイッチング素子を有している。複数のスイッチング素子にはゲートドライバ(図示なし)が接続される。ゲートドライバは、通信線を介して制御基板70に接続されており、制御基板70から与えられるゲート信号に従って複数のスイッチング素子を駆動する。
【0020】
直流ライン6は双方向チョッパ7の高電圧側ノードに接続され、双方向チョッパ7の低電圧側ノードはスイッチS2を介してバッテリ端子T12に接続される。
【0021】
スイッチS2は、無停電電源装置100の使用時はオンされ、たとえば無停電電源装置100およびバッテリ32のメンテナンス時にオフされる。バッテリ端子T12と双方向チョッパ7との間にあるノードN3に現れる電圧V3の瞬時値は、電圧センサ基板51によって検出されるよう構成される。
【0022】
双方向チョッパ7は、制御基板70によって制御され、通常時には、コンバータ4によって生成された直流電力をバッテリ32に蓄え、商用交流電源30の停電時には、バッテリ32の直流電力を直流ライン6を介してインバータ8に供給する。
【0023】
双方向チョッパ7は、直流電力をバッテリ32に蓄える場合には、直流ライン6の直流電圧を降圧してバッテリ32に与える。また、双方向チョッパ7は、バッテリ32の直流電力をインバータ8に供給する場合には、バッテリ32の電圧V3を昇圧して直流ライン6に出力する。直流ライン6は、インバータ8の入力ノードに接続されている。
【0024】
具体的には、双方向チョッパ7は、図示しない複数のスイッチング素子を有している。複数のスイッチング素子にはゲートドライバ(図示なし)が接続される。ゲートドライバは、通信線を介して制御基板70に接続されており、制御基板70から与えられるゲート信号に従って複数のスイッチング素子を駆動する。
【0025】
インバータ8は、制御基板70によって制御され、コンバータ4または双方向チョッパ7から直流ライン6を介して供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換して出力する。すなわち、インバータ8は、通常時には、コンバータ4から直流ライン6を介して供給される直流電力を交流電力に変換し、商用交流電源30の停電時には、バッテリ32から双方向チョッパ7を介して供給される直流電力を交流電力に変換する。インバータ8の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。
【0026】
具体的には、インバータ8は、図示しない複数のスイッチング素子を有している。複数のスイッチング素子にはゲートドライバが接続される。ゲートドライバは、通信線を介して制御基板70に接続されており、制御基板70から与えられるゲート信号に従って複数のスイッチング素子を駆動する。
【0027】
スイッチS3は、インバータ8および負荷31の間に接続される。インバータ8の交流端子8aはスイッチS3の第1端子に接続され、スイッチS3の第2端子は交流出力端子T13に接続される。スイッチS3と交流出力端子T13との間にあるノードN4に現れる電圧V4の瞬時値は、電圧センサ基板51によって検出されるように構成される。
【0028】
スイッチS3は、コントローラ(制御基板70、盤内リレー基板91)によって制御される。スイッチS3は、インバータ8によって生成された交流電力を負荷31に供給するインバータ給電時にはオンされ、バイパス交流電源33からの交流電力を負荷31に供給するバイパス給電時にはオフされる。スイッチS3は、「第1のスイッチ」の一実施例に対応する。
【0029】
半導体スイッチ20は、互いに逆並列に接続された一対のサイリスタを含み、バイパス入力端子T14とノードN5との間に接続される。ノードN5は、スイッチS3の第2端子と交流出力端子T13との間にある。ノードN4は、ノードN5と交流出力端子T13との間にある。
【0030】
スイッチS4は、バイパス交流電源33および負荷31の間に接続される。具体的には、スイッチS4は、半導体スイッチ20に並列接続される。スイッチS4は、「第2のスイッチ」の一実施例に対応する。半導体スイッチ20は、制御基板70によって制御される。半導体スイッチ20は、通常はオフに制御され、インバータ8の故障等のインバータ給電の異常発生に基づきオンに制御され、バイパス交流電源33からの交流電力を負荷31に供給する(バイパス給電)。
【0031】
本実施の形態では、バイパス回路21は、半導体スイッチ20とスイッチS4と電磁コイルC4とを含む。バイパス回路21は、バイパス交流電源33から供給される交流電力を負荷31に供給可能にする。
【0032】
バイパス入力端子T14と半導体スイッチ20との間にあるノードN1に現れる電圧V1の瞬時値は、電圧センサ基板51によって検出されるように構成される。
【0033】
スイッチS4は、コントローラ(制御基板70、盤内リレー基板91)によって制御される。スイッチS4は、インバータ給電時にはオフに制御され、バイパス給電時にはオンに制御される。スイッチS4は、インバータ8の故障等のインバータ給電の異常発生に基づきオンに制御され、バイパス交流電源33からの交流電力を負荷31に供給する。
【0034】
コンタクタ52Cは、スイッチS3と電磁コイルC3とを含んで構成される。コンタクタ52Sは、スイッチS4と電磁コイルC4とを含んで構成される。コンタクタ52CのスイッチS3およびコンタクタ52SのスイッチS4は、制御基板70からの指令に基づく、盤内リレー基板91の動作により制御される。具体的には、盤内リレー基板91は、制御基板70から与えられるオン指令またはオフ指令に従って、スイッチS3,S4をオンまたはオフに制御する。
【0035】
制御基板70は、電圧センサ基板51からの情報、コンバータ4、双方向チョッパ7およびインバータ8とそれぞれ接続されたゲートドライバからの情報等に基づき、無停電電源装置100全体を制御する。制御基板70は、交流入力電圧V2の検出値に基づいて停電が発生したか否かを検出し、交流入力電圧V2の位相に同期してコンバータ4およびインバータ8を制御する。
【0036】
制御基板70は、通常時には、直流電圧が所望の目標電圧になるようにコンバータ4を制御し、商用交流電源30の停電時には、コンバータ4の運転を停止させる。
【0037】
また制御基板70は、直流電圧およびバッテリ電圧V3に基づいて双方向チョッパ7を制御する。制御基板70は、通常時には、バッテリ電圧V3が所望の目標バッテリ電圧になるように双方向チョッパ7を制御し、商用交流電源30の停電時には、直流電圧が所望の目標電圧になるように双方向チョッパ7を制御する。また、制御基板70は、交流出力電圧V4が所望の目標電圧になるようにインバータ8を制御する。
【0038】
制御基板70は、少なくとも、AD変換器84と、制御用FPGA(Field Programmable Gate Array)81と、DSP(Digital Signal Processor)82と、シーケンスFPGA83とを備える。
【0039】
AD変換器84は、入力されたアナログ情報をデジタル情報に変換して出力する。具体的には、AD変換器84は、電圧センサ基板51からアナログ情報として電圧V1~V4を取得する。AD変換器84は、取得した電圧V1~V4を、デジタル値に変換して制御用FPGA81に送信する。なお、AD変換器84は、電流値等のアナログ情報を取得してこれをデジタル情報に変換して制御用FPGA81に送信するようにしてもよい。電圧V2は、「第1の電圧」の一実施例に対応する。電圧V1は、「第2の電圧」の一実施例に対応する。
【0040】
制御用FPGA81は、取得した電圧V1~V4等の情報に基づき、ゲートドライバを介してインバータ8、コンバータ4および双方向チョッパ7を制御するとともに、盤内リレー基板92を介してスイッチS3,S4等を制御する。
【0041】
DSP82は、電圧センサ基板51から取得した電圧情報に基づき後述する同期検出(同期判定用のデータの検出)および同期判定を行うとともに、スイッチS3,S4を制御する指令を行う。シーケンスFPGA83は、DSP82からの指令に基づき、盤内リレー基板92を制御する。
【0042】
なお、制御基板70は、上記構成に限らず、プロセッサ、メモリおよび入出力インターフェイス(IF)を含むものであればよい。プロセッサ、メモリ、入出力IFは、図示しないバスを経由して相互に信号の授受が可能である。プロセッサは、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのMPU(Micro Processing Unit)、少なくとも1つのFPGAまたはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
【0043】
メモリは、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含む。メモリは、SDカード等を含むものであってもよい。プロセッサは、ROMからRAMにプログラムを読み出し、各種プログラムを実行することによって無停電電源装置100の動作を制御する。RAMは、ワーキングメモリとして機能し、プログラムの実行に必要な各種データを一時的に格納する。入出力IFは、ゲートドライバあるいは電圧センサ基板51等との間でデータをやり取りするためのインターフェイスである。
【0044】
盤内リレー基板91は、端子T21~T24、電磁コイルC5,C6およびスイッチS5,S6とを備える。盤内リレー基板91は、スイッチS5と電磁コイルC5とを含んだコンタクタおよびスイッチS6と電磁コイルC6とを含んだコンタクタを制御する。制御基板71は、端子T21を介して電磁コイルC5に接続される。制御基板71は、端子T22を介して電磁コイルC6に接続される。スイッチS5は、端子T23を介して電磁コイルC3に接続される。スイッチS6は、端子T24を介して電磁コイルC4に接続される。
【0045】
制御基板70は、スイッチS3とスイッチS4とに対してオンオフ指令を送信する。これは、DSP82による制御指令あるいは同期判定結果に基づく盤内リレー基板91に対するスイッチS3,S4の制御指令を、シーケンスFPGA83が送信することで実現される。
【0046】
具体的には、シーケンスFPGA83は、インバータ給電を行う場合、スイッチS3(コンタクタ52C)に対するオン指令を盤内リレー基板91に送信する。シーケンスFPGA83がスイッチS3(コンタクタ52C)に対するオフ指令を盤内リレー基板91に送信すると、インバータ給電が停止する。
【0047】
盤内リレー基板91は、スイッチS3(コンタクタ52C)に対するオン指令に基づき電磁コイルC5を通電状態に制御して、この通電状態を維持する一方、スイッチS3に対するオフ指令に基づき電磁コイルC5を非通電状態に制御して、この非通電状態を維持する。
【0048】
スイッチS5は、電磁コイルC5が通電状態となることでオン状態となり、電磁コイルC5が非通電状態となることでオフ状態となるように構成されている。コンタクタ52Cの電磁コイルC3は、スイッチS5がオン状態となることで通電状態となり、スイッチS5がオフ状態となることで非通電状態となるよう構成されている。電磁コイルC3が通電状態となるとスイッチS3はオン状態となり、電磁コイルC3が非通電状態となるとスイッチS3はオフ状態となる。
【0049】
つまり、スイッチS3(コンタクタ52C)に対するオン指令が送信されると、電磁コイルC5が通電状態となることでスイッチS5がオン状態となり、これにより、電磁コイルC3が通電状態となることでスイッチS3がオン状態となり、インバータ給電が可能となる。スイッチS3に対するオフ指令が送信されると、インバータ給電が停止する。
【0050】
また、シーケンスFPGA83は、バイパス給電を行う場合、スイッチS4(コンタクタ52S)に対するオン指令を盤内リレー基板91に送信する。シーケンスFPGA83がスイッチS4(コンタクタ52S)に対するオフ指令を盤内リレー基板91に送信すると、バイパス給電が停止する。
【0051】
盤内リレー基板91は、スイッチS4(コンタクタ52S)に対するオン指令に基づき電磁コイルC6を通電状態にして、この通電状態を維持する一方、スイッチS4に対するオフ指令に基づき電磁コイルC6を非通電状態にして、この非通電状態を維持する。
【0052】
スイッチS6は、電磁コイルC6が通電状態となることでオン状態となり、電磁コイルC6が非通電状態となることでオフ状態となるように構成されている。コンタクタ52Sの電磁コイルC4は、スイッチS6がオン状態となることで通電状態となり、スイッチS6がオフ状態となることで非通電状態となるよう構成されている。電磁コイルC4が通電状態となるとスイッチS4はオン状態となり、電磁コイルC4が非通電状態となるとスイッチS4はオフ状態となる。
【0053】
つまり、スイッチS4(コンタクタ52S)に対するオン指令が送信されると、電磁コイルC6が通電状態となることでスイッチS6がオン状態となり、これにより、電磁コイルC4が通電状態となることでスイッチS4がオン状態となり、バイパス給電が可能となる。スイッチS4に対するオフ指令が送信されると、バイパス給電が停止する。
【0054】
制御基板70は、表示基板42を介してLCD(Liquid Crystal Display)41と接続する。LCD41は、無停電電源装置100に関する各種情報を表示する。表示基板42は、制御基板70からの指令に基づき、LCD41の表示を制御する。
【0055】
以下、フローチャートを用いて処理の流れを説明する。図2は、インバータ給電の異常発生時の処理の手順を説明するフローチャートである。たとえば、本処理は、所定周期(たとえば、10msec)ごとに起動するようにすればよい。
【0056】
上述のように、電圧センサ基板51は、商用交流電源30から供給される交流電力の電圧を電圧V2として検出するとともに、バイパス交流電源33から供給される交流電力の電圧を電圧V1として検出している。電圧V1,V2は、AD変換器84にてデジタルデータに変換された上で、制御用FPGAで81で取得され、さらにDSP82に送信される。
【0057】
本処理が開始すると、制御基板70は、S101において、インバータ給電の異常を検知したか否かを判定する。「インバータ給電の異常」とは、たとえば、インバータ8の故障(あるいは、コンバータ4、双方向チョッパ7の故障等)が発生して、インバータ給電ができなくなるような状況を指す。
【0058】
制御基板70は、インバータ給電の異常を検知したと判定した場合(S101でYES)、S102に処理を進める。一方、制御基板70は、インバータ給電の異常を検知したと判定しなかった場合(S101でNO)、本処理を終了する。
【0059】
制御基板70(DSP82)は、S102において、電圧センサ基板51が検出した電圧V2,V1を取得する(この処理を「同期検出」と称する)。ここでの電圧V2,V1は、AD変換器84によって変換されたデジタルデータである。
【0060】
制御基板70は、S103において、電圧V2と電圧V1とが同期しているか否かを判定する(この処理を「同期判定」と称する)。S103では、電圧V2と電圧V1とで、電圧、周波数および位相とを比較してこれらが同期しているか否かを判定する。S102においては、同期判定が行える程度の期間の電圧V2,V1の時系列データを取得する。
【0061】
制御基板70は、電圧V2と電圧V1とが同期していると判定した場合(S103でYES)、S104に処理を進める。一方、制御基板70は、電圧V2と電圧V1とが同期していると判定しなかった場合(S103でNO)、本処理を終了する。
【0062】
制御基板70は、S104において、スイッチS3に対するオフ指令を送信する。制御基板70は、S105において、スイッチS4に対するオン指令を送信する。
【0063】
このように、制御基板71は、インバータ給電の異常を検知した場合、電圧センサ基板51で検出された電圧V2と電圧V1とが同期しているか否かを判定する。制御基板71は、電圧V2と電圧V1とが同期していると判定した場合は、スイッチS3に対するオフ指令を送信するとともに、スイッチS4に対するオン指令を送信する。これにより、上述したように、インバータ給電が停止するとともにバイパス給電が開始する。
【0064】
図3は、スイッチを制御する処理の手順を説明するフローチャートである。本処理は、上述した盤内リレー基板91により実現される処理である。本処理は、ソフトウェア、ハードウェアまたはこれらの組合せにより実現可能である。本処理をソフトウェアで実現する場合、所定周期(たとえば、10msec)ごとに起動するようにすればよい。
【0065】
本処理が開始すると、盤内リレー基板91は、スイッチS3に対するオン指令を受信した場合(S201でYES)、電磁コイルC5を導電状態にして、スイッチS5をオンに制御する(S202)。制御基板70は、スイッチS3に対するオフ指令を受信した場合(S203でYES)、電磁コイルC5を非導電状態にして、スイッチS5をオフに制御する(S204)。その結果、スイッチS3に対するオン指令に基づきスイッチS3がオンになるとインバータ給電が行われ、スイッチS3に対するオフ指令によりインバータ給電が停止する。
【0066】
制御基板70は、スイッチS4に対するオン指令を受信した場合(S205でYES)、電磁コイルC6を導電状態にして、スイッチS6をオンに制御する(S206)。制御基板70は、スイッチS4に対するオン指令を受信した場合(S207でYES)、電磁コイルC6を非導電状態にして、スイッチS6をオフに制御する(S208)。その結果、スイッチS4に対するオン指令に基づきスイッチS4がオンになるとバイパス給電が行われ、スイッチS4に対するオフ指令によりバイパス給電が停止する。
【0067】
このように、制御基板70と盤内リレー基板91とで構成されるコントローラは、制御基板70がスイッチS3とスイッチS4とに対して送信するオンオフ指令と、盤内リレー基板91の動作に基づき、スイッチS3とスイッチS4とをオンまたはオフに制御している。
【0068】
また、無停電電源装置100において、インバータ給電の異常を検知した場合に、電圧V2と電圧V1とが同期していると判定した場合、インバータ給電からバイパス給電に切り替えを行っている(この動作を「保護連動動作」と称する)。このように、無停電電源装置100では、インバータ給電およびバイパス給電のいずれかを行うことで、負荷31に対する給電を継続している。
【0069】
上記において、ノイズの影響により電圧V1が誤検出され、実際には電圧V2と電圧V1とが同期しているにも関わらず、電圧V2と電圧V1とが同期していないと判定されることがある。この場合、電圧V1が正常であったとしても、バイパス給電に切り替わらない。この場合において、たとえば、インバータ8等の故障により物理的にインバータ給電が停止してしまった場合は、バイパス給電が可能であるにも関わらず、バイパス給電に切り替わることができない。この場合、負荷31に対する給電が行われないために、無停電電源装置100の給電の継続性を低下させてしまうことになる。このような給電の継続性の低下を防止するために、無停電電源装置を以下で説明するように構成する。
【0070】
[実施の形態1]
以下、実施の形態1に係る無停電電源装置101の構成について説明する。図4は、実施の形態1に係る無停電電源装置101の構成を示す回路ブロック図である。以下では、図1図3を用いて説明した従来型の無停電電源装置100と相違する構成について説明し、無停電電源装置100と構成が同じ箇所は説明を省略する。
【0071】
図1に示した従来型の無停電電源装置100と、図4に示す無停電電源装置101との違いは、バイパス電圧の検出および同期判定の機能が2重化された点である。
【0072】
具体的には、図1に示した無停電電源装置100では、電圧センサ基板51およびAD変換器84を備え、DSP82において、電圧センサ基板51から取得した電圧V1,V2に基づき同期判定を行っている。
【0073】
これに対して、図4に示す無停電電源装置101では、2つの電圧センサ基板51,52および2つのAD変換器84,85を備え、DSP82において2重に同期判定を行っている。以下、詳細に説明する。
【0074】
図4に示すように、無停電電源装置101は、電圧センサ基板51,52を備える。制御基板71は、AD変換器84,85を備える。電圧センサ基板52は、「第2の電圧検出回路」の一実施例に対応する。制御基板71に盤内リレー基板91を加えた構成は、「コントローラ」の一実施例に対応する。
【0075】
無停電電源装置100と同様に、電圧センサ基板51は、電圧V1~V4を取得する。AD変換器84は、電圧V1~V4をデジタル情報に変換して制御用FPGA81に送信する。DSP82は、制御用FPGA81から電圧V1,V2を取得し(同期検出)、電圧V1,V2に基づき同期判定を行う。以上の処理は、原則的に無停電電源装置100での処理と同様である。
【0076】
無停電電源装置101では、電圧センサ基板51に入力される電圧V1の信号線を分岐させて、電圧センサ基板52にも電圧V1が入力されるよう構成している。これにより、電圧センサ基板52においても、電圧V1が取得可能である。
【0077】
さらに、AD変換器85は、電圧センサ基板52から電圧V1を取得する。ここで、電圧センサ基板51から取得される電圧V1は「電圧V1」と表記するが、電圧センサ基板52から取得される電圧V1は「電圧V1a」と表記する。電圧V1aは、「第3の電圧」の一実施例に対応する。
【0078】
AD変換器85は、電圧V1aをデジタル情報に変換して制御用FPGA81に送信する。DSP82は、制御用FPGA81から電圧V1a,V2を取得し(同期検出)、電圧V1a,V2に基づき同期判定を行う。なお、電圧センサ基板52において電圧V1,V2を取得可能に構成し、電圧センサ基板52から取得した電圧V1,V2を用いて同期判定を行うようにしてもよい。
【0079】
制御基板71と盤内リレー基板91とで構成されるコントローラは、制御基板71がスイッチS3とスイッチS4とに対して送信するオンオフ指令と、盤内リレー基板91の動作に基づき、スイッチS3とスイッチS4とをオンまたはオフに制御している。以下、フローチャートを用いて説明する。
【0080】
図5は、実施の形態1に係るインバータ給電の異常発生時の処理の手順を説明するフローチャートである。図5のフローチャートは、バイパス電圧の検出および同期判定の機能が2重化されている点で、図2のフローチャートと処理が異なる。制御基板71は、インバータ給電の異常が発生した場合、電圧V2と電圧V1aとが同期しているか否かをさらに判定するように構成される。
【0081】
上述のように、電圧センサ基板51は、商用交流電源30から供給される交流電力の電圧を電圧V2として検出するとともに、バイパス交流電源33から供給される交流電力の電圧を電圧V1として検出している。さらに、電圧センサ基板52は、バイパス交流電源33から供給される交流電力の電圧を電圧V1aとして検出する。電圧V1,V2はAD変換器84で、電圧V1aはAD変換器85で、それぞれデジタルデータに変換された上で、制御用FPGAで81で取得され、さらにDSP82に送信される。
【0082】
本処理が開始すると、制御基板71は、S301において、インバータ給電の異常を検知したか否かを判定する。制御基板71は、インバータ給電の異常を検知したと判定した場合(S301でYES)、S302に処理を進める。一方、制御基板71は、インバータ給電の異常を検知したと判定しなかった場合(S301でNO)、本処理を終了する。
【0083】
制御基板71は、S302において、電圧センサ基板51が検出した電圧V2,V1を取得する(同期検出)。制御基板71は、S303において、電圧センサ基板52が検出した電圧V1aを取得する(同期検出)。
【0084】
制御基板71は、S304において、電圧V2と電圧V1とが同期しているか否かを判定する(同期判定)。ここでは、電圧センサ基板51が検出した電圧V1を用いて同期判定を行っている。
【0085】
制御基板71は、電圧V2と電圧V1とが同期していると判定した場合(S304でYES)、処理をS306に進める。一方、制御基板71は、電圧V2と電圧V1とが同期していると判定しなかった場合(S304でNO)、S305に処理を進める。
【0086】
制御基板71は、S305において、電圧V2と電圧V1aとが同期しているか否かを判定する(同期判定)。ここでは、電圧センサ基板52が検出した電圧V1aを用いて同期判定を行っている。
【0087】
制御基板71は、電圧V2と電圧V1aとが同期していると判定した場合(S305でYES)、処理をS306に進める。一方、制御基板71は、電圧V2と電圧V1aとが同期していると判定しなかった場合(S305でNO)、本処理を終了する。
【0088】
制御基板71は、S306において、スイッチS3に対するオフ指令を送信する。制御基板71は、S309において、スイッチS4に対するオン指令を送信して、本処理を終了する。
【0089】
つまり、電圧V2との比較において、電圧センサ基板51が検出した電圧V1および電圧センサ基板52が検出した電圧V1aのいずれか一方が同期すれば、インバータ給電を停止して、バイパス給電を開始するように構成されている。
【0090】
なお、実施の形態1に係るスイッチを制御する処理の手順は、図3で示したフローチャートによる処理手順と同じである。
【0091】
図1に示した無停電電源装置100において、たとえば、制御基板71等に電力を供給する電源の接地系統から電圧センサ基板51あるいは制御基板71のAD変換器84等にノイズが流入することがあり得る。そして、このノイズの影響により、制御基板71のメモリ内の電圧V1が瞬間的に不正な値に置き換わってしまう場合がある。
【0092】
上記対策として、無停電電源装置101では、バイパス電圧の検出および同期判定の機能を2重化している。このようにすることで、電圧センサ基板51またはAD変換器84がノイズの影響を受けて電圧V1が正しく検出されず、電圧V2と電圧V1とが同期していると判定されなかった場合であっても、電圧V2と電圧V1aとにより正しく同期判定を行うことができる。一方、電圧センサ基板52またはAD変換器85がノイズの影響を受けて電圧V1aが正しく検出されず、電圧V2と電圧V1aとが同期していると判定されなかった場合であっても、電圧V2と電圧V1とにより正しく同期判定を行うことができる。
【0093】
このように、2重化によりノイズの影響を除去しつつ同期判定を行うことができる。そして、いずれか一方の同期判定において電圧が同期している場合は、バイパス給電に切り替える。いずれの同期判定においても電圧が同期していない場合は、バイパス系統に異常が発生しているものと判断して、バイパス給電に切り替えない。
【0094】
従来型の無停電電源装置100において、制御基板70は、電圧V2と電圧V1とが同期していないと判定された場合、スイッチS4に対するオン指令を送信しない。つまり、盤内リレー基板91は、スイッチS4をオンに制御しない。これに対して、実施の形態1に係る無停電電源装置101では、制御基板71は、所定の条件が成立した場合は、電圧V2と電圧V1とが同期していないと判定された場合であっても、スイッチS4に対するオン指令を送信する。つまり、盤内リレー基板91は、所定の条件が成立した場合は、電圧V2と電圧V1とが同期していないと判定された場合であっても、スイッチS4をオンに制御する。所定の条件は、電圧V2と電圧V1aとが同期していると判定した場合に成立する。これにより、電圧V2および電圧V1が同期している場合および電圧V2および電圧V1aが同期している場合のいずれかであれば、バイパス給電が開始されることになる。
【0095】
以上のようにバイパス電圧の検出および同期判定の機能を2重化することで、ノイズによる同期の誤判定を防止することができるため、同期判定機能の信頼性を向上させることができる。そして、ノイズによる同期の誤判定を防止することで、給電の継続性を向上させることができる。
【0096】
[実施の形態2]
図6は、実施の形態2に係る無停電電源装置102の構成を示す回路ブロック図である。以下では、図1図3を用いて説明した従来型の無停電電源装置100と相違する構成について説明し、無停電電源装置100と構成が同じ箇所は説明を省略する。
【0097】
図1に示した従来型の無停電電源装置100と、図6に示す無停電電源装置102との違いは、バイパス給電への強制切替機能が付加されている点である。
【0098】
具体的には、無停電電源装置102における盤内リレー基板90は、図1に示した盤内リレー基板91に加えて、強制切替回路95をさらに備えたものである。制御基板70に盤内リレー基板90を加えた構成は、「コントローラ」の一実施例に対応する。強制切替回路95は、スイッチS7,S8および電磁コイルC7を備える。無停電電源装置102は、さらにEPOスイッチ61を備える。EPOスイッチ61は、端子T15を介して電磁コイルC7に接続される。EPOスイッチ61は、「第3のスイッチ」の一実施例に対応する。
【0099】
無停電電源装置100において、スイッチS3(コンタクタ52C)に対するオン指令が送信されると、電磁コイルC5が通電状態となることでスイッチS5がオン状態となり、これにより、電磁コイルC3が通電状態となることでスイッチS3がオン状態となり、インバータ給電が可能となる。スイッチS3に対するオフ指令が送信されると、インバータ給電が停止するように構成されている。さらに、無停電電源装置100において、スイッチS4(コンタクタ52S)に対するオン指令が送信されると、電磁コイルC6が通電状態となることでスイッチS6がオン状態となり、これにより、電磁コイルC4が通電状態となることでスイッチS4がオン状態となり、バイパス給電が可能となる。スイッチS4に対するオフ指令が送信されると、バイパス給電が停止する。
【0100】
これに対して、無停電電源装置102において、スイッチS4(コンタクタ52S)に対するオン指令が送信されなかったとしても、スイッチS3(コンタクタ52C)に対するオン指令の送信により、強制切替回路95によって強制的にスイッチS4をオン状態に制御するように構成している。
【0101】
具体的には、スイッチS6の第1端子側のノードN6とスイッチS6の第2端子側のノードN7との間を、強制切替回路95により接続する。強制切替回路95において、スイッチS8(b接点)は、電磁コイルC7が通電状態となることでオフ状態となり、電磁コイルC7が非通電状態となることでオン状態となるように構成されている。EPOスイッチ61がオン状態であるときに電磁コイルC7が通電状態となり、EPOスイッチ61がオフ状態であるときに電磁コイルC7が非通電状態となる。また、スイッチS7(b接点)は、電磁コイルC5が非通電状態となることでオン状態となり、電磁コイルC5が通電状態となることでオフ状態となるように補助接点として構成されている。
【0102】
すなわち、スイッチS3(コンタクタ52C)に対するオフ指令が送信されると、電磁コイルC5が非通電状態となることでスイッチS5がオフ状態となるとともにスイッチS7がオン状態となる。この場合、EPOスイッチ61がオフ状態(スイッチS8がオン状態)である場合に、電磁コイルC4が通電状態となることでスイッチS4がオン状態となり、バイパス給電が可能となる。一方、スイッチS3に対するオン指令が送信されると、バイパス給電が停止する。
【0103】
このように、スイッチS3に対するオフ指令が送信された場合、強制切替回路95の強制切替機能によって、強制的にスイッチS4がオン状態となり、バイパス給電が可能となる。ただし、EPOスイッチ61がオン状態であれば、強制切替回路95の強制切替機能は無効となる。つまり、強制切替機能を無効化させたい場合(強制的に切り替えられたバイパス給電を停止させたい場合)に、EPOスイッチ61をオンにすればよい。また、EPOスイッチ61によって、強制切替機能を使用するか否かをユーザが自由に選択することができる。
【0104】
制御基板70と盤内リレー基板90とで構成されるコントローラは、制御基板70がスイッチS3とスイッチS4とに対して送信するオンオフ指令と、盤内リレー基板90の動作に基づき、スイッチS3とスイッチS4とをオンまたはオフに制御している。
【0105】
図7は、実施の形態2に係るスイッチを制御する処理の手順を説明するフローチャートである。図7のフローチャートは、盤内リレー基板においてバイパス給電への強制切替機能が付加されている点で、図3のフローチャートと処理が異なる。
【0106】
本処理が開始すると、盤内リレー基板90は、スイッチS3に対するオン指令を受信した場合(S401でYES)、電磁コイルC5を導電状態にして、スイッチS5をオンに制御し(S402)、スイッチS7をオフに制御する(S403)。盤内リレー基板90は、スイッチS3に対するオフ指令を受信した場合(S404でYES)、電磁コイルC5を非導電状態にして、スイッチS5をオフに制御し(S405)、スイッチS7をオンに制御する(S406)。
【0107】
S201~S204の処理において、スイッチS3に対するオン指令によりインバータ給電が開始し、スイッチS3に対するオフ指令によりインバータ給電が停止している。一方、S401~S406の処理において、スイッチS3に対するオン指令によりインバータ給電が開始するとともにバイパス給電が強制的に停止し、スイッチS3に対するオフ指令によりインバータ給電が停止するとともにバイパス給電が強制的に開始する。S403,S405の処理は、強制切替回路95により実現される。
【0108】
盤内リレー基板90は、スイッチS4に対するオン指令を受信した場合(S407でYES)、電磁コイルC6を導電状態にして、スイッチS6をオンに制御する(S408)。盤内リレー基板90は、電磁コイルC6を非導電状態にして、スイッチS4に対するオン指令を受信した場合(S409でYES)、スイッチS6をオフに制御する(S410)。これらの処理は、S205~S208の処理と同じであり、スイッチS4に対するオン指令によりバイパス給電が開始し、スイッチS4に対するオフ指令によりバイパス給電が停止する。
【0109】
なお、実施の形態2に係るインバータ給電の異常発生時の処理の手順は、図2で示したフローチャートによる処理手順と同じである。
【0110】
従来型の無停電電源装置100は、電圧V2と電圧V1とが同期していないと判定された場合、スイッチS4をオンに制御しない。これに対して、実施の形態2に係る無停電電源装置102は、所定の条件が成立した場合は、電圧V2と電圧V1とが同期していないと判定された場合であっても、スイッチS4をオンに制御している。
【0111】
所定の条件は、強制切替回路95においてスイッチS3をオフに制御する指令を検知した場合に成立する。この場合、強制切替回路95は、スイッチS3がオフに制御されたときに、スイッチS4がオンに制御されるように構成している。これにより、電圧V2および電圧V1が同期しているか否かに関わらず、バイパス給電が開始されることになる。
【0112】
無停電電源装置102においては、スイッチS5をオフに制御する際に、スイッチS7を強制的にオンに制御している。そうすることで、無停電電源装置102での故障の発生によりインバータ給電が不能となってスイッチS3がオフに制御され、かつ、バイパス系統に異常が生じた場合(たとえば、電圧V1が数%~20%程度小さく、電圧V1と電圧V2とが同期していないと判定されるようなケースが想定される)であっても、コンタクタ52Sを駆動できる電圧駆動領域であれば、電磁コイルC4を励磁してバイパス給電へ切換えることができる。実施の形態2に係る無停電電源装置101では、バイパス系統に異常が生じた場合はバイパス給電へ切換えることができない。これに対して、無停電電源装置102では、バイパス系統に異常が生じた場合であっても強制的にバイパス給電へ切換えることで、給電の継続性をさらに向上させることができる。
【0113】
[実施の形態3]
図8は、実施の形態3に係る無停電電源装置103の構成を示す回路ブロック図である。図1に示した従来型の無停電電源装置100と、図8に示す無停電電源装置103との違いは、バイパス電圧の検出および同期判定の機能が2重化された点およびバイパス給電への強制切替機能が付加された点である。
【0114】
図8に示す無停電電源装置103における、上記2重化された機能は図4で示した無停電電源装置101の機能(実施の形態1)と同じであり、上記強制切替機能は図6で示した無停電電源装置102の機能(実施の形態2)と同じである。
【0115】
無停電電源装置103は、電圧センサ基板51,52とAD変換器84,85を含む制御基板71を備える。さらに、無停電電源装置103は、EPOスイッチ61および強制切替回路95を含む盤内リレー基板90を備える。制御基板71に盤内リレー基板90を加えた構成は、「コントローラ」の一実施例に対応する。
【0116】
制御基板71と盤内リレー基板90とで構成されるコントローラは、制御基板71がスイッチS3とスイッチS4とに対して送信するオンオフ指令と、盤内リレー基板90の動作に基づき、スイッチS3とスイッチS4とをオンまたはオフに制御している。
【0117】
実施の形態3に係るインバータ給電の異常発生時の処理の手順は、図5で示したフローチャートによる処理手順と同じである。実施の形態3に係るスイッチを制御する処理の手順は、図7で示したフローチャートによる処理手順と同じである。
【0118】
このように、無停電電源装置103においては、一方の同期検出機能において異常が発生しても、もう一方の同期検出機能で正常な電圧が検出できていれば、正常な電圧の検出値を用いて、同期判定を行う。これにより、ノイズによる同期の誤判定を防止することができる。
【0119】
2つの同期判定においていずれも電圧が同期しないと判定された場合、バイパス電圧の誤検出ではなく、バイパス系統自体の異常とみなす。そして、バイパス系統に異常が生じた場合でも、コンタクタ52C(スイッチS3)をオフに制御した際に、コンタクタを駆動できる電圧駆動領域であれば、強制的にコンタクタ52S(スイッチS4)をオンに制御して、バイパス給電へ切換えることができる。このように、無停電電源装置103において、給電の継続性を向上させることができる。
【0120】
たとえば、実施の形態2において、ノイズによる電圧V1の誤検出があり、かつ、何らかのインバータ給電の異常がコントローラにより検出された後、物理的にインバータ給電が停止したような場面が想定され得る。この場合、インバータ給電の異常が検出されたタイミングでは、電圧V2と電圧V1が同期しないため(図2のS103でNO)、バイパス給電に切り替わらない(S104,S105の処理が実行されない)。その後、電圧が検知されずに物理的にインバータ給電が停止した場合、電磁コイルC3が励磁されなくなくなってスイッチS3がオフ状態に変化する。この場合、インバータ給電の停止により強制切替機能が動作するため、2重化された同期判定機能がなくても、バイパス給電に切替えは行われる。ただし、この場合、インバータ給電停止からバイパス給電開始までの間に若干のタイムラグが発生するため、その間、負荷31に対する給電が停止することになる。一方で、実施の形態3では、2重化された同期判定機能により、インバータ給電の異常が検出されたタイミング(図5のS301)で、バイパス給電に切り替わる(S304~S307)ため、上記のような給電の停止が発生しない(切り替え処理が高速化できる)。このため、実施の形態2よりも実施の形態3の方が、より給電の継続性を向上させることができる。
【0121】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0122】
4 コンバータ、6 直流ライン、7 双方向チョッパ、8 インバータ、20 半導体スイッチ、21 バイパス回路、30 商用交流電源、31 負荷、32 バッテリ、33 バイパス交流電源、41 LCD、42 表示基板、51,52 電圧センサ基板、61 EPOスイッチ、70,71 制御基板、81 制御用FPGA、82 DSP、83 シーケンスFPGA、84,85 AD変換器、91,92 盤内リレー基板、95 強制切替回路、100~103 無停電電源装置、C4~C8 電磁コイル、S1~S8 スイッチ、T11 交流入力端子、T12 バッテリ端子、T13 交流出力端子、T15,T21~T24 端子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8