(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168564
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】毛髪用計測器及び毛髪用計測器を用いた毛髪の計測方法。
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A61B5/107 700
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085357
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 高世
(72)【発明者】
【氏名】白井 智之
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB21
4C038VC05
(57)【要約】
【課題】毛髪の状態を容易に把握できる毛髪用計測器及び毛髪用計測器を用いた毛髪の計測方法を提供する。
【解決手段】毛髪用計測器100は、第一面11に溝14を有する本体部材10と、前記溝14に配置された毛束101を前記第一面との間で挟む押さえ部材30と、前記毛束101の毛のうち前記溝14の奥端23に配置された1本の毛の状態を計測するセンサ40と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一面に溝を有する本体部材と、
前記溝に配置された毛束を前記第一面との間で挟む押さえ部材と、
前記毛束の毛のうち前記溝の奥端に配置された1本の毛の状態を計測するセンサと、を備えている毛髪用計測器。
【請求項2】
前記溝の全部又は一部の壁面は、前記溝の奥端側に向かって、前記溝の溝幅を狭くする傾斜部を有している、請求項1に記載の毛髪用計測器。
【請求項3】
前記傾斜部は、前記溝の延び方向に直交する断面において、前記溝の入口側から前記溝の奥端側に向かって直線状に延びている、請求項2に記載の毛髪用計測器。
【請求項4】
前記溝の壁面は、前記溝の入口側から前記溝の奥端側に向かって前記第一面に対して垂直に延びた垂直部を有している、請求項1に記載の毛髪用計測器。
【請求項5】
前記押さえ部材は、前記溝の延び方向と同じ方向に延びた軸を中心に回転自在である、請求項1に記載の毛髪用計測器。
【請求項6】
前記第一面は、櫛状部を備えている、請求項1に記載の毛髪用計測器。
【請求項7】
請求項1に記載された毛髪用計測器を用いた毛髪の計測方法であって、
前記本体部材と前記押さえ部材との間に毛束を挟み、
前記本体部材と前記押さえ部材との間に前記毛束を挟んだまま前記毛髪用計測器を前記毛束の長さ方向に移動させ、
前記毛束のうち前記溝の奥端に配置された1本の毛の所定の長さ範囲をセンサによって計測する、毛髪の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用計測器及び毛髪用計測器を用いた毛髪の計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、毛髪の状態を把握するために、毛髪の画像を用いる技術が知られている。例えば下記特許文献1には、毛髪の画像として対象者の背後から毛髪を撮像した後姿の画像を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
毛髪の状態を容易に把握したいという要望があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、毛髪の状態を容易に把握できる毛髪用計測器及び毛髪用計測器を用いた毛髪の計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の毛髪用計測器は、第一面に溝を有する本体部材と、前記溝に配置された毛束を前記第一面との間で挟む押さえ部材と、前記毛束の毛のうち前記溝の奥端に配置された1本の毛の状態を計測するセンサと、を備えているものである。
【0007】
本発明の毛髪の計測方法は、前記毛髪用計測器を用いた毛髪の計測方法であって、前記本体部材と前記押さえ部材との間に毛束を挟み、前記本体部材と前記押さえ部材との間に前記毛束を挟んだまま前記毛髪用計測器を前記毛束の長さ方向に移動させ、前記毛束のうち前記溝の奥端に配置された1本の毛の所定の長さ範囲をセンサによって計測する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、髪の毛1本の状態を取得できるから、毛髪の状態を容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1における毛髪用計測器であって、本体部材と押さえ部材との間に毛束を挟む様子を示す斜視図
【
図2】毛髪用計測器において軸を中心に押さえ部材が回転する様子を示す正面図
【
図4】接触子の先端と1本の毛の表面とが接触した状態を概略的に示す図
【
図8】実施例2における毛髪用計測器の本体部材を示す斜視図
【
図11】実施例3における毛髪用計測器の本体部材を示す斜視図
【
図14】実施例4における毛髪用計測器の本体部材を示す斜視図
【
図17】実施例5における毛髪用計測器の本体部材を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
(1)本発明の毛髪用計測器は、第一面に溝を有する本体部材と、前記溝に配置された毛束を前記第一面との間で挟む押さえ部材と、前記毛束の毛のうち前記溝の奥端に配置された1本の毛の状態を計測するセンサと、を備えているものである。このような構成によれば、髪の毛1本の状態を取得できるから、毛髪の状態を容易に把握できる。
(2)上記(1)に記載された毛髪用計測器において、前記溝の全部又は一部の壁面は、前記溝の奥端側に向かって、前記溝の溝幅を狭くする傾斜部を有しているものとしてもよい。このような構成によれば、毛の本数は溝の奥側へ行くほど減るから、溝の奥端に1本の毛だけを配置しやすくできる。
(3)上記(2)に記載された毛髪用計測器において、前記傾斜部は、前記溝の延び方向に直交する断面において、前記溝の入口側から前記溝の奥端側に向かって直線状に延びているものとしてもよい。このような構成によれば、溝に入った毛は、傾斜部に沿って溝の奥端側に入りやすいから、溝の奥端に1本の毛だけを配置しやすくできる。
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載された毛髪用計測器において、前記溝の壁面は、前記溝の入口側から前記溝の奥端側に向かって前記第一面に対して垂直に延びた垂直部を有しているものとしてもよい。このような構成によれば、溝に入った毛は、垂直部に沿って溝の奥端側に入りやすいから、溝の奥端に1本の毛だけを配置しやすくできる。なお、垂直部の構成である垂直については、毛髪をセンサで計測するために1本にする目的を達成できるのであれば、厳密に垂直にする必要はない。具体的には第一面に対して±10°程度傾いていてもよい。更に好ましくは±5°程度傾いていてもよい。また、垂直部の面については、平面である必要はなく、発明の効果を奏すれば、一部又は全部が曲面になっていてもよい。
(5)上記(1)から(4)のいずれかに記載された毛髪用計測器において、前記押さえ部材は、前記溝の延び方向と同じ方向に延びた軸を中心に回転自在であるものとしてもよい。このような構成によれば、押さえ部材は、第一面に対して斜め方向の力を毛束に加えるから、毛束は溝の壁面に押し付けられやすい。したがって、溝の奥端に1本の毛だけを配置しやすくできる。
(6)上記(1)から(5)のいずれかに記載された毛髪用計測器において、前記第一面は、櫛状部を備えているものとしてもよい。このような構成によれば、毛束の毛は整いやすいから、溝に毛束を沿わせやすくできる。
(7)本発明の毛髪の計測方法は、上記(1)から(6)のいずれかに記載された毛髪用計測器を用いた毛髪の計測方法であって、前記本体部材と前記押さえ部材との間に毛束を挟み、前記本体部材と前記押さえ部材との間に前記毛束を挟んだまま前記毛髪用計測器を前記毛束の長さ方向に移動させ、前記毛束のうち前記溝の奥端に配置された1本の毛の所定の長さ範囲をセンサによって計測する方法である。このような方法によれば、髪の毛1本の状態を取得できるから、毛髪の状態を容易に把握できる。
【0011】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について、
図1~
図7を参照しつつ詳細に説明する。本実施例における毛髪用計測器100は、毛髪の状態を把握するために用いられる。毛髪用計測器100を用いることによって、1本の毛の状態を取得できる。具体的には、毛髪用計測器100を用いることによって、1本の毛の表面の摩擦力及び凹凸を計測できる。これによって、髪の手触り感、髪の毛の表面の形状の不均一性、キューティクルの状態等を把握したり、髪の状態を診断したりできる。
【0012】
毛髪用計測器100は、
図1に示すように、本体部材10と押さえ部材30とを備えている。本体部材10及び押さえ部材30は、毛束101を挟む。毛束101は、計測対象者の頭髪の一部である。本体部材10と押さえ部材30との間に毛束101を挟み、毛髪用計測器100を一方向に移動させることで、1本の毛の状態を取得できる。
【0013】
以下、各構成部材において、押さえ部材30が設けられている側を上側、本体部材10が設けられている側を下側、押さえ部材30と本体部材10とが連結されている側を左側、その反対側を右側、毛束101に対して毛髪用計測器100を移動する方向の一方側を前側、他方側を後側として説明する。各図においてX軸の正方向側は前側、X軸の負方向側は後側、Y軸の正方向側は上側、Y軸の負方向側は下側、Z軸の正方向側は左側、Z軸の負方向側は右側を示す。X軸の延び方向は、毛束101の毛の延び方向と平行である。「平行」は、厳密に平行な状態に加えて、概ね平行な状態を含む。
【0014】
押さえ部材30は、
図1に示すように、押さえ部32及びアーム部33を有している。押さえ部32は、2枚の板状部材34を上下に重ねた形態をなしている。板状部材34は、いずれも長方形状をなしている。押さえ部32の下面は、毛束101と接触し、毛束101を下方へ押さえつける押さえ面35である。
【0015】
アーム部33は、
図1に示すように、押さえ部32の前後両側に一対設けられている。アーム部33は、押さえ部32の左端部から本体部材10の左端部まで延びている。アーム部33の延び方向の一方の端部は、押さえ部材30の左端部と一体である。アーム部33の延び方向の他方の端部は、本体部材10に回転自在に連結されている。
【0016】
押さえ部材30は、
図2に示すように、軸31を中心に回転自在である。押さえ部材30は、少なくとも開放位置から押さえ位置までの範囲を変位する。開放位置は、本体部材10の上面11を開放し、本体部材10と押さえ部材30との間に毛束101を配置できる位置である。押さえ位置は、本体部材10の上面11に近づき、本体部材10の上面11に配置された毛束101を本体部材10の上面11に押し付ける位置である。
【0017】
本体部材10の上面11は、
図3に示すように、長方形状をなしている。本体部材10の上面11の前後方向の寸法は、本体部材10の上面11の左右方向の寸法よりも小さい。本体部材10の上面11と押さえ面35とはほぼ同じ形状である。
【0018】
本体部材10の上面11には、
図3に示すように、櫛状部12が設けられている。櫛状部12は、本体部材10の上面11の前後方向中心に位置し、左右方向に直線状に延びている。櫛状部12は、左右方向に等間隔で並んだ凸部13によって構成されている。各凸部13は、本体部材10の上面11から上方に突出している。各凸部13の形状は、後述するガイド部17の形状と同じである。
【0019】
本体部材10の上面11には溝14が形成されている。溝14は、本体部材10の上面11の前後方向中心で、かつ左右方向中心に位置している。溝14については後程詳しく説明する。
【0020】
毛髪用計測器100は、
図3に示すように、1本の毛の表面を計測するセンサ40を備えている。センサ40は、溝14の真下に配置されている。センサ40は触覚センサである。センサ40は、全体として平板状である。
【0021】
センサ40は、
図3及び
図4に示すように、基板42、基部43及び接触子44を有している。基部43は、基板42の一面の上端部に固定されている。基部43の上面は基準面45である。接触子44は、基準面45に対してX軸方向及びY軸方向に変位可能に支持されている。センサ40の上面はセンシング面41である。センシング面41は、後述する溝14の奥端23に配置されている。
【0022】
接触子44は、
図4に示すように、上下方向に延びた部材である。接触子44の先端部は、前後の基準面45の間に配置されている。接触子44の先端部は基準面45から上方に突出している。接触子44の先端及び基準面45は、センシング面41を構成している。センシング面41を測定対象物に押し当てた状態で、毛髪用計測器100をX軸方向に移動させると、測定対象物の表面の凹凸によって、接触子44はY軸方向及びX方向に変位する。測定対象物の凹凸や摩擦力は、接触子44の変位に基づいて計測される。
【0023】
センサ40は、
図5に示すように、本体部材10の内壁15に固定されている。センサ40は、本体部材10の内部空間16に配置されている。接触子44は、薄い板状をなしている。接触子44の厚さ寸法は、1本の髪の毛の太さTよりも小さい(
図7参照)。毛の太さTは、80μm程度である。接触子44の厚さ寸法は、左右方向の寸法である。
【0024】
溝14は、
図5に示すように、左右に並んだガイド部17の間に形成されている。左右のガイド部17は同形状である。ガイド部17は、凸部13と同形状であり、櫛状部12の一部を構成している。ガイド部17は、本体部材10の上面11から上側に突出している。ガイド部17は、YZ平面において山状をなしている。ガイド部17の右面は、本体部材10の上面11に対して垂直をなしている。ガイド部17の右面は、YZ平面においてガイド部17の突出端28から下側へ向かって直線状に延びている。ガイド部17の左面は、YZ平面においてガイド部17の突出端28から下側に向かって左側に傾いている。
【0025】
左側のガイド部17の右面は、溝14の左壁面18を形成している。溝14の左壁面18は、垂直部21を有している。垂直部21は、本体部材10の上面11に対して垂直をなしている。垂直部21は、YZ断面において、溝14の入口22側から溝14の奥端23側へ向かって直線状に延びている。
【0026】
右側のガイド部17の左面は、溝14の右壁面19を形成している。溝14の右壁面19は、傾斜部24及び下端垂直部25を有している。傾斜部24は、本体部材10の上面11に対して傾斜している。具体的には、傾斜部24は、上端側から下側に向かって左側に傾いている。傾斜部24は、YZ断面において、溝14の入口22側から溝14の奥端23側に向かって直線状に延びている。傾斜部24は、溝14の入口22側から溝14の奥端23側に向かって、溝幅を狭くしている。溝幅は、溝14の左壁面18と溝14の右壁面19との間のZ軸に平行な距離である。
【0027】
下端垂直部25は、傾斜部24の下端から下側に連続している。下端垂直部25は、本体部材10の上面11に対して垂直である。下端垂直部25は、溝14の左壁面18の垂直部21と平行である。下端垂直部25の上下方向の寸法は、毛の太さTよりも少し大きい(
図7参照)。下端垂直部25は溝14の奥端23に至っている。なお、左壁面18の垂直部21と下端垂直部25とを平行にすることにより、毛髪がセンサ40に適切に接することができる。
【0028】
溝14の入口22は、
図5に示すように、溝14の左壁面18の上端と右壁面19の上端とによって形成されている。溝幅のうち溝14の入口22の幅W1は、溝幅のうち溝14の奥端23の幅W2よりも広い。これによって、多くの髪の毛を溝14に入り込みやすくできる。
【0029】
溝14の入口22の幅W1は、溝14の深さ寸法Dよりも大きい。溝14の深さ寸法Dは、溝14の入口22から溝14の奥端23までのY軸と平行な距離である。溝14の深さ寸法Dは、ガイド部17の突出高さと同じである。
【0030】
溝14の奥端23は、1本の毛の計測位置である。溝14の奥端23は、
図5に示すように、上下方向において本体部材10の上面11及び基準面45と同じ位置である。溝14の奥端23は、溝14の左壁面18の下端と右壁面19の下端とによって構成されている。溝14の奥端23の幅W2は、髪の毛1本の太さ以上である。溝14の奥端23の幅W2は、接触子44の厚さ寸法よりも大きい。溝14の奥端23の幅W2は、溝14の深さ寸法Dよりも小さい。
【0031】
溝14の奥端23より下側には、
図5に示すように、センサ40の配置空間26が設けられている。センサ40の配置空間26は、本体部材10の内部空間16の一部である。接触子44は、溝14の左壁面18に寄った位置に配置されている。溝14の左壁面18と接触子44との間には隙間が空いている。
【0032】
溝14は、
図6に示すように、前後方向に延びている。溝14の左壁面18及び右壁面19は、平面視においてX軸と平行である。溝14の長さ寸法Lは、溝14の入口22の幅W1よりも大きい。溝14の長さ寸法Lは、ガイド部17の前後方向の寸法と同じである。溝14は、本体部材10の上面11のうち接触子44の周辺のみに形成されている。溝14の長さ寸法Lを小さくすることによって、髪の毛は溝14に入りやすくなっている。
【0033】
次に、毛髪用計測器100を用いて毛髪を計測する方法の一例を説明する。まず、
図1に示すように、本体部材10と押さえ部材30との間に毛束101を挟む。具体的には、押さえ部材30を開放位置にして、溝14を毛束101に沿わせつつ、押さえ部材30を押さえ位置まで変位させ、本体部材10と押さえ部材30との間に毛束101を挟む。押さえ部材30の上面を下向きに押圧し、押さえ部材30によって毛束101を押さえる。押さえ部材30は軸31を中心に変位するから、毛束101を押さえる力は、本体部材10の上面11に対して左斜め上側から右斜め下側に向かう方向に作用する。
【0034】
溝14の周辺に配置された毛束の一部は、
図7に示すように、溝14に入る。
図7では、押さえ部材30を省略している。左側のガイド部17の上面に配置された毛束101の一部は、押さえ部材30に押されることによって、左側のガイド部17の傾斜面に沿って突出端28を乗り越え、溝14に入る。
【0035】
毛束101を押さえる力は、傾斜部24によって左側へ分解され、溝14に入った毛束101の毛は、溝14の左壁面18に押し付けられ、左側への逃げを制限される。こうして多くの毛が溝14に押し込まれ、溝14に押し込まれた毛は溝14を隙間なく埋める。溝14内の毛の本数は、下側へいくほど少なくなっている。溝14の奥端23には数本の毛が配置される。溝14の奥端23の毛は、接触子44の先端に接触、もしくは近接した状態になる。
【0036】
次いで、本体部材10と押さえ部材30との間に毛束101を挟んだまま、毛髪用計測器100を毛束101の長さ方向に移動させる。毛髪用計測器100は一定の速度で移動させるとよい。毛束101を押さえる力は、毛髪用計測器100の移動中、一定であるとよい。毛髪用計測器100は、毛束101に沿って所定の長さ以上を移動させるとよい。毛髪用計測器100の移動長さは、1本の毛の表面の所定の長さを計測するために必要な長さである。毛髪用計測器100の移動長さは、適宜設定してよい。
【0037】
毛髪用計測器100の移動によって、毛束101の毛は櫛状部12にとかされる。毛髪用計測器100の移動によって溝14内の毛は直線状になる。溝14の奥端23の毛は、毛髪用計測器100の移動前には接触子44の先端に接触していなかったとしても、毛髪用計測器100の移動に伴って接触子44の先端に接触した状態になる。
【0038】
接触子44は、毛髪用計測器100の移動中、1本の毛の表面との接触によって、X軸方向及びY軸方向に変位する。具体的には、接触子44は、接触子44の先端と毛の表面との間に働く摩擦力によってX軸方向に変位する。これによって、1本の毛の摩擦力は計測できる。また、接触子44は、1本の毛の表面の凹凸に沿ってY軸方向に変位する。これによって、1本の毛の表面の凹凸は計測される。こうして、1本の毛の表面の一部について摩擦力及び凹凸は計測される。以上により、毛髪用計測器100を用いた毛髪の計測は完了する。
【0039】
次に、上記のように構成された実施例の作用および効果について説明する。毛髪用計測器100は、本体部材10と、押さえ部材30と、センサ40と、を備えている。本体部材10は、上面11に溝14を有している。押さえ部材30は、溝14に沿わせるようにして配置された毛束101を上面11との間で挟む。センサ40は、毛束101の毛のうち溝14の奥端23に配置された1本の毛の表面を計測する。この構成によれば、髪の毛1本の状態を取得できるから、毛髪の状態を容易に把握できる。
【0040】
溝14の右壁面19は、傾斜部24を有している。傾斜部24は、溝14の奥端23側に向かって、溝14の溝幅を狭くする。この構成によれば、毛の本数は溝14の奥側へ行くほど減るから、溝14の奥端23に1本の毛だけを配置しやすくできる。
【0041】
傾斜部24は、溝14の延び方向に直交する断面において、溝14の入口22側から溝14の奥端23側に向かって直線状に延びている。この構成によれば、溝14に入った毛は、傾斜部24に沿って溝14の奥端23側に入りやすいから、溝14の奥端23に1本の毛だけを配置しやすくできる。
【0042】
溝14の左壁面18は、垂直部21を有している。垂直部21は、溝14の入口22側から溝14の奥端23側に向かって上面11に対して垂直に延びている。この構成によれば、溝14に入った毛は、垂直部21に沿って溝14の奥端23側に入りやすいから、溝14の奥端23に1本の毛だけを配置しやすくできる。
【0043】
押さえ部材30は、溝14の延び方向と同じ方向に延びた軸31を中心に回転自在である。この構成によれば、押さえ部材30は、上面11に対して斜め方向の力を毛束101に加えるから、毛束101は溝14の壁面に押し付けられやすい。したがって、溝14の奥端23に1本の毛だけを配置しやすくできる。
【0044】
上面11は、櫛状部12を備えている。この構成によれば、毛束101の毛は整いやすいから、溝14に毛束101を沿わせやすくできる。
【0045】
毛髪の計測方法は、毛髪用計測器100を用いた毛髪の計測方法である。毛髪の計測方法は、本体部材10と押さえ部材30との間に毛束101を挟み、本体部材10と押さえ部材30との間に毛束101を挟んだまま毛髪用計測器100を毛束101の長さ方向に移動させ、毛束101のうち溝14の奥端23に配置された1本の毛の表面の所定の長さ範囲をセンサ40によって計測する。この方法によれば、髪の毛1本の状態を取得できるから、毛髪の状態を容易に把握できる。
【0046】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2に係る毛髪用計測器102を
図8~
図10によって説明する。本実施例の毛髪用計測器102は、ガイド部17を小型化するとともに溝14の前後方向両端部を拡幅した点で、実施例1とは相違する。なお、実施例1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0047】
本実施例に係る毛髪用計測器102は、実施例1と同様に、本体部材10と押さえ部材30とセンサ40とを備えている。
図8~
図10において押さえ部材30は省略する。本体部材10は、櫛状部12を備えていない。
【0048】
溝14は、
図9及び
図10に示すように、左右に並んだガイド部17の間に形成されている。左右のガイド部17の形状は、異なっている。左側のガイド部17の左面は、右側のガイド部17の右面と比べて緩やかに傾斜している。
【0049】
溝14の左壁面18は、
図9に示すように、傾斜部24及び下端垂直部25を有している。溝14の左壁面18の傾斜部24は、YZ断面において、溝14の入口22側から溝14の奥端23側に向かって湾曲している。溝14の右壁面19は、傾斜部24及び下端垂直部25を有している。
【0050】
図9は、溝14の前後方向中心位置の断面である。溝14の前後方向中心部の入口22の幅W1は、実施例1の溝14の入口22の幅W1よりも小さい。溝14の深さ寸法Dは、実施例1の溝14の深さ寸法Dよりも小さい。溝14の前後方向中心部の奥端23の幅W2は、実施例1の溝14の奥端23の幅W2よりも小さい。
【0051】
溝14の左壁面18は、
図10に示すように、平面視において、前端から後端まで前後方向に直線状に延びている。溝14の右壁面19は、壁面傾斜部27を有している。壁面傾斜部27は、溝14の右壁面19の前後両端部に設けられている。壁面傾斜部27は、平面視において、溝14の前後方向両端へ向かって溝幅を広くするように傾斜している。溝14の前後両端部の入口22の幅W3は、溝14の前後方向中心部の入口22の幅W1よりも大きい。溝14の前後両端部の入口22の幅W3は、実施例1の溝14の入口22の幅W1よりも小さい。溝14の長さ寸法Lは、実施例1の溝14の長さ寸法Lと同等である。接触子44は、溝14の前後方向中心部に配置されている。
【0052】
以上のように本実施例においては、実施例1と同様、センサ40は、毛束101の毛のうち溝14の奥端23に配置された1本の毛の表面を計測する。この構成によれば、髪の毛1本の状態を取得できるから、毛髪の状態を容易に把握できる。
【0053】
溝14の左壁面18及び右壁面19は、実施例1と同様、傾斜部24を有している。傾斜部24は、溝14の奥端23側に向かって、溝14の溝幅を狭くする。この構成によれば、毛の本数は溝14の奥側へ行くほど減るから、溝14の奥端23に1本の毛だけを配置しやすくできる。
【0054】
溝14の左壁面18及び右壁面19は、下端垂直部25を有している。下端垂直部25は、溝14の入口22側から溝14の奥端23側に向かって上面11に対して垂直に延びている。この構成によれば、溝14に入った毛は、下端垂直部25に沿って溝14の奥端23側に入りやすいから、溝14の奥端23に1本の毛だけを配置しやすくできる。
【0055】
<実施例3>
次に、本発明を具体化した実施例3に係る毛髪用計測器103を
図11~
図13によって説明する。本実施例の毛髪用計測器103は、平面視において溝14を湾曲形状にした点で、実施例1とは相違する。なお、実施例1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0056】
本実施例に係る毛髪用計測器103は、実施例1と同様に、本体部材10と押さえ部材30とセンサ40とを備えている。
図11~
図13において押さえ部材30は省略する。本体部材10の上面11には、実施例1と同様に、櫛状部12が設けられている。凸部13は、YZ平面において山状をなしている。凸部13の左右両面は、凸部13の突出端から下側へ向かって凸部13の左右幅を広くする方向に傾斜している。
【0057】
溝14は、
図12及び
図13に示すように、左右に並んだガイド部17の間に形成されている。左右のガイド部17の形状は、異なっている。ガイド部17の形状と凸部13の形状とは異なっている。ガイド部17の前後方向寸法は、凸部13の前後方向寸法よりも大きい。ガイド部17の突出高さと凸部13の突出高さとは同等である。
【0058】
溝14の左壁面18は、
図12に示すように、傾斜部24及び下端垂直部25を有している。溝14の右壁面19は、傾斜部24及び下端垂直部25を有している。傾斜部24の上部は、YZ断面において、溝14の入口22側から溝14の奥端23側に向かって湾曲している。傾斜部24の下部は、YZ断面において、溝14の入口22側から溝14の奥端23側に向かって直線状に延びている。
【0059】
図12は、溝14の前後方向中心位置の断面である。溝14の前後方向中心部の入口22の幅W1は、実施例1の溝14の入口22の幅W1よりも小さい。溝14の深さ寸法Dは、実施例1の溝14の深さ寸法Dよりも大きい。溝14の前後方向中心部の奥端23の幅W2は、実施例1の溝14の奥端23の幅W2よりも小さい。
【0060】
溝14の左壁面18は、
図13に示すように、平面視において、円弧状に湾曲している。これによって、うねった毛を溝14に入りやすくできる。溝14の左壁面18の前後方向中心部は、平面視において前後方向両端部よりも右側に位置している。溝14の長さ寸法Lは、実施例1の溝14の長さ寸法Lよりも大きい。左側のガイド部17の前後方向の長さ寸法は、右側のガイド部17の前後方向の長さ寸法よりも若干大きい。ガイド部17は、凸部13よりも大きい。
【0061】
溝14の右壁面19の前後方向中心部は、平面視において、前後方向に直線状に延びている。溝14の右壁面19の前後両端部は、壁面傾斜部27を有している。壁面傾斜部27は、平面視において溝14の左壁面18に沿う方向に傾斜している。溝14の奥端23の溝幅及び溝14の入口22の溝幅はいずれも、前後方向両端部よりも前後方向中心部において小さい。溝14の前後方向両端部の入口22の幅W3は、実施例1の溝14の入口22の幅W1よりも小さい。
【0062】
以上のように本実施例においては、実施例1と同様、センサ40は、毛束101の毛のうち溝14の奥端23に配置された1本の毛の表面を計測する。この構成によれば、髪の毛1本の状態を取得できるから、毛髪の状態を容易に把握できる。
【0063】
溝14の左壁面18及び右壁面19は、実施例1と同様、傾斜部24を有している。傾斜部24は、溝14の奥端23側に向かって、溝14の溝幅を狭くする。この構成によれば、毛の本数は溝14の奥側へ行くほど減るから、溝14の奥端23に1本の毛だけを配置しやすくできる。
【0064】
溝14の左壁面18及び右壁面19は、下端垂直部25を有している。下端垂直部25は、溝14の入口22側から溝14の奥端23側に向かって上面11に対して垂直に延びている。この構成によれば、溝14に入った毛は、下端垂直部25に沿って溝14の奥端23側に入りやすいから、溝14の奥端23に1本の毛だけを配置しやすくできる。
【0065】
<実施例4>
次に、本発明を具体化した実施例4に係る毛髪用計測器104を
図14~
図16によって説明する。本実施例の毛髪用計測器104は、ガイド部17を大型化した点で、実施例3とは相違する。なお、実施例3と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0066】
本実施例に係る毛髪用計測器104は、実施例3と同様に、本体部材10と押さえ部材30とセンサ40とを備えている。
図14~
図16において押さえ部材30は省略する。本体部材10の上面11には、実施例3と同様に、櫛状部12が設けられている。
【0067】
溝14は、
図15及び
図16に示すように、左右に並んだガイド部17の間に形成されている。左右のガイド部17の形状は、異なっている。ガイド部17の形状と、凸部13の形状とは異なっている。
【0068】
溝14の左壁面18は、
図15に示すように、傾斜部24及び下端垂直部25を有している。溝14の右壁面19は、傾斜部24を有している。傾斜部24の上部は、YZ断面において、溝14の入口22側から溝14の奥端23側に向かって湾曲している。傾斜部24の下部は、YZ断面において、溝14の入口22側から溝14の奥端23側に向かって直線状に延びている。
【0069】
図15は、溝14の前後方向中心位置の断面である。溝14の前後方向中心部の入口22の幅W1は、実施例3の溝14の前後方向中心部の入口22の幅W1よりも大きい。溝14の前後方向中心部の入口22の幅W1は、実施例3の溝14の前後方向両端部の入口22の幅W3と同等である。溝14の深さ寸法Dは、実施例3の溝14の深さ寸法Dと同等である。溝14の前後方向中心部の奥端23の幅W2は、実施例3の溝14の奥端23の幅W2よりも大きい。
【0070】
溝14の左壁面18は、
図16に示すように、平面視において、湾曲している。これによって、うねった毛を溝14に入りやすくできる。溝14の左壁面18の前後方向中心部は、平面視において前後方向両端部よりも右側に位置している。平面視において、溝14の左壁面18の曲率半径Rは、実施例3の溝14の左壁面18の曲率半径Rよりも小さい。右側のガイド部17の前後方向の長さ寸法Lは、左側のガイド部17の前後方向の長さ寸法Lよりも大きい。溝14の長さ寸法Lは、実施例3の溝14の長さ寸法Lと同等である。
【0071】
溝14の右壁面19の前後方向中心部は、平面視において、前後方向に直線状に延びている。溝14の右壁面19の前後両端部は、壁面傾斜部27を有している。壁面傾斜部27は、平面視において溝14の左壁面18に沿う方向に傾斜している。溝14の奥端23の溝幅及び溝14の入口22の溝幅はいずれも、前後方向両端部よりも前後方向中心部において小さい。溝14の前後方向両端部の入口22の幅W3は、実施例3の溝14の前後方向両端部の入口22の幅W3よりも大きい。
【0072】
以上のように本実施例においては、実施例3と同様、センサ40は、毛束101の毛のうち溝14の奥端23に配置された1本の毛の表面を計測する。この構成によれば、髪の毛1本の状態を取得できるから、毛髪の状態を容易に把握できる。
【0073】
<実施例5>
次に、本発明を具体化した実施例5に係る毛髪用計測器105を
図17~
図19によって説明する。本実施例の毛髪用計測器105は、本体部材10の上面11を凹ませて溝14を形成した点で、実施例1とは相違する。なお、実施例1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0074】
本実施例に係る毛髪用計測器105は、実施例1と同様に、本体部材10と押さえ部材30とセンサ40とを備えている。
図17~
図19において押さえ部材30は省略する。櫛状部12は、本体部材10の上面11の前後両端に設けられている。
【0075】
溝14は、本体部材10の上面11の左右方向中心に設けられている。溝14は、本体部材10の上面11の前端から後端までX軸と平行に延びている。溝14の前端は前方に開放されている。溝14の後端は後方に開放されている。
【0076】
溝14は、
図18に示すように、本体部材10の上面11から下側に凹み形成されている。溝14の左壁面18及び溝14の右壁面19は、垂直部21を有している。溝14の奥端23の幅W2は、実施例1の溝14の奥端23の幅W2よりも小さい。
【0077】
溝14の左壁面18及び右壁面19のおおむね全体は、
図19に示すように、平面視において、前後方向に直線状に延びている。溝14の左壁面18の前後両端部及び溝14の右壁面19の前後両端部は、壁面傾斜部27を有している。壁面傾斜部27は、平面視において溝幅を広げるように傾斜している。
【0078】
以上のように本実施例においては、実施例1と同様、センサ40は、毛束101の毛のうち溝14の奥端23に配置された1本の毛の表面を計測する。この構成によれば、髪の毛1本の状態を取得できるから、毛髪の状態を容易に把握できる。
【0079】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0080】
(1)上記実施例において毛髪用計測器100,102,103,104,105は、センサ40を1つ備えている。これに限らず、毛髪用計測器は、センサを複数備えてもよい。この場合、毛髪用計測器は、溝を複数備えてもよい。これによって、同時に複数本の毛の表面を1本ずつ計測できる。
(2)上記実施例においてさらに溝14の奥側に毛を吸引するためのポンプを備えてもよい。これによって、溝14の奥端23に1本の毛を保持しやすくできる。
(3)上記実施例においてセンサ40は触覚センサである。これに限らず、センサは他の物理的なセンサであってもよいし、毛の内部を測定する光学式センサであってもよいし、例えば近赤外線センサ、カメラなどであってもよい。
(4)上記実施例の傾斜部24については、溝の左壁面及び右壁面の片側のみに設けてもよいし、その片側の一部(例えば上下方向の中心部)だけに設けてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10…本体部材
11…上面(第一面)
12…櫛状部
14…溝
18…溝の左壁面
19…溝の右壁面
21…垂直部
22…溝の入口
23…溝の奥端
24…傾斜部
30…押さえ部材
31…軸
40…センサ
100,102,103,104,105…毛髪用計測器
101…毛束