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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168573
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】三次元スキャナおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20241128BHJP
   A61C 19/04 20060101ALI20241128BHJP
   A61B 1/24 20060101ALI20241128BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20241128BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20241128BHJP
   G03B 19/00 20210101ALI20241128BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20241128BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61B1/00 735
A61C19/04
A61B1/24
G02B7/08 C
G02B7/04 D
G02B7/04 E
G03B19/00
G02B7/28 H
G01B11/24 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085376
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】林 毅
【テーマコード(参考)】
2F065
2H044
2H054
2H151
4C052
4C161
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065BB05
2F065CC16
2F065DD03
2F065DD06
2F065FF01
2F065FF10
2F065GG15
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065LL04
2F065LL12
2F065MM16
2F065MM26
2F065PP22
2H044BD10
2H044BE02
2H044BE18
2H044DA01
2H044DB02
2H044DC02
2H044DE06
2H054BB02
2H151AA15
2H151BA47
2H151BA48
2H151BA63
2H151CC04
2H151CE30
2H151EB04
2H151EB20
4C052NN03
4C052NN04
4C052NN15
4C161AA08
4C161CC06
4C161FF40
4C161NN01
4C161PP13
(57)【要約】
【課題】本開示は、対象物の表面形状の三次元データを適切に取得することができる技術を提供する。
【解決手段】三次元スキャナ100は、レンズ81の焦点位置にある対象物99を撮像する撮像部と、レンズ81が直線方向に往復運動するように当該レンズ81を駆動するレンズ駆動部80と、レンズ81の所定方向に対する傾斜角度の変化を検出する角度検出部と、角度検出部によって検出された傾斜角度の変化に応じてレンズ81の動作を制御するレンズ制御部とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面形状の三次元データを合焦法によって取得する三次元スキャナであって、
レンズと、
前記レンズの焦点位置にある前記対象物を撮像する撮像部と、
前記レンズが直線方向に往復運動するように当該レンズを駆動するレンズ駆動部と、
前記レンズの所定方向に対する傾斜角度の変化を検出する角度検出部と、
前記角度検出部によって検出された前記傾斜角度の変化に応じて前記レンズの動作を制御するレンズ制御部とを備える、三次元スキャナ。
【請求項2】
前記レンズ制御部は、前記レンズ駆動部を制御して、前記傾斜角度の変化に応じて前記レンズの往復運動の振幅を変更する、請求項1に記載の三次元スキャナ。
【請求項3】
前記レンズ制御部は、前記傾斜角度の変化に応じて前記レンズの往復運動の振幅を大きくする、請求項2に記載の三次元スキャナ。
【請求項4】
前記レンズ制御部は、前記傾斜角度の変化に応じて前記レンズの往復運動の中心位置を変更する機構を含む、請求項1に記載の三次元スキャナ。
【請求項5】
前記レンズ制御部は、前記傾斜角度の変化に応じて前記レンズの往復運動の前記中心位置を前記傾斜角度が変化する前の位置に戻す、請求項4に記載の三次元スキャナ。
【請求項6】
前記撮像部は、前記傾斜角度の変化に応じて前記対象物を撮像するフレームレートを変更する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の三次元スキャナ。
【請求項7】
前記撮像部は、前記傾斜角度の変化に応じて前記フレームレートを大きくする、請求項6に記載の三次元スキャナ。
【請求項8】
前記角度検出部は、インクリメンタルエンコーダまたはアブソリュートエンコーダである、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の三次元スキャナ。
【請求項9】
前記レンズの質量と同一または略同一の質量を有するカウンタウェイトと、
前記レンズと相対する方向に往復運動するように前記カウンタウェイトを駆動するカウンタウェイト駆動部と、
前記レンズの動作に合わせて前記カウンタウェイトの動作を制御するカウンタウェイト制御部とをさらに備える、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の三次元スキャナ。
【請求項10】
前記レンズを収容する手持ち式のハウジングをさらに備える、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の三次元スキャナ。
【請求項11】
対象物の表面形状の三次元データを合焦法によって取得する三次元スキャナを制御する制御方法であって、
コンピュータが実行する処理として、
前記三次元スキャナが備えるレンズの焦点位置にある前記対象物を撮像するステップと、
前記レンズが直線方向に往復運動するように当該レンズを駆動するステップと、
前記レンズの所定方向に対する傾斜角度の変化を検出するステップと、
前記検出するステップによって検出された前記傾斜角度の変化に応じて前記レンズの動作を制御するステップとを含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物の表面形状の三次元データを合焦法によって取得する三次元スキャナ、および当該三次元スキャナを制御する制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口腔内の歯および軟組織などの対象物の表面形状を走査して、当該表面形状の三次元データを取得する三次元スキャナが知られている。たとえば、特許文献1(特開2019-180881号公報)には、レンズを直線方向に往復運動させながらレンズを通過した光を対象物に投影し、対象物で反射した光を検出することによって対象物の表面形状の三次元データを取得する三次元スキャナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-180881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された三次元スキャナは、術者などのユーザが手持ちで使用可能なハンドピースを備える。三次元スキャナの使用中においては、ハンドピースが様々な角度で傾斜する。このため、ハンドピースの傾斜角度の変化に応じて、ハンドピース内のレンズに掛かる重力の往復運動方向の成分が変化し、それに伴い、レンズの往復運動の中心位置も変化し得る。これにより、三次元スキャナの使用中においては、レンズを通過した光の焦点位置が、ハンドピースの先端から遠ざかったり、ハンドピースの先端に近づいたりして、焦点位置の範囲である被写界深度が安定しない場合がある。このため、ユーザは、レンズの焦点位置を対象物の撮像対象としている部分に合わせるために、ハンドピースの傾斜角度に応じて、ハンドピースを対象物に近づけたり、ハンドピースを対象物から遠ざけたりする必要があり、ユーザの技量によっては対象物の表面形状の三次元データを適切に取得できない場合があった。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、対象物の表面形状の三次元データを適切に取得することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る三次元スキャナは、対象物の表面形状の三次元データを合焦法によって取得する。三次元スキャナは、レンズと、レンズの焦点位置にある対象物を撮像する撮像部と、レンズが直線方向に往復運動するように当該レンズを駆動するレンズ駆動部と、レンズの所定方向に対する傾斜角度の変化を検出する角度検出部と、角度検出部によって検出された傾斜角度の変化に応じてレンズの動作を制御するレンズ制御部とを備える。
【0007】
本開示に係る制御方法は、対象物の表面形状の三次元データを合焦法によって取得する三次元スキャナを制御する方法である。制御方法は、コンピュータが実行する処理として、三次元スキャナが備えるレンズの焦点位置にある対象物を撮像するステップと、レンズが直線方向に往復運動するように当該レンズを駆動するステップと、レンズの所定方向に対する傾斜角度の変化を検出するステップと、検出するステップによって検出された傾斜角度の変化に応じてレンズの動作を制御するステップとを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、レンズの所定方向に対する傾斜角度の変化を検出し、検出した傾斜角度の変化に応じてレンズの動作を制御することで、レンズの傾斜角度に関わらず、レンズの焦点位置を対象物に合わせることができるため、対象物の表面形状の三次元データを適切に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る三次元スキャナの構成を示す図である。
図2】実施の形態に係るハンドピースの構成を示す図である。
図3】実施の形態に係るハンドピースのX-Z断面を示す図である。
図4】実施の形態に係る三次元スキャナにおいてレンズとカウンタウェイトとの位置関係を説明するための図である。
図5】実施の形態に係るリニアモータのY-Z断面を示す図である。
図6】実施の形態に係るリニアモータのX-Z断面を示す図である。
図7】比較例に係るハンドピースの傾斜角度に応じた被写界深度を示す図である。
図8】実施の形態に係る三次元スキャナが備えるエンコーダを示す図である。
図9】実施の形態に係る三次元スキャナが備えるエンコーダを示す図である。
図10】実施の形態に係るハンドピースが基準状態である場合のレンズの往復運動を説明するための図である。
図11】実施の形態に係るハンドピースが基準状態である場合のレンズの往復運動を説明するための図である。
図12】実施の形態に係るハンドピースが基準状態から鉛直方向に傾斜する場合のレンズの往復運動を説明するための図である。
図13】実施の形態に係るハンドピースが基準状態から鉛直方向に傾斜する場合のレンズの往復運動を説明するための図である。
図14】実施の形態に係るハンドピースが基準状態から鉛直方向に傾斜する場合に実行される振幅制御を説明するための図である。
図15】実施の形態に係るハンドピースが基準状態から鉛直方向に傾斜する場合に実行される振幅制御を説明するための図である。
図16】実施の形態に係る三次元スキャナにおいて、振幅制御を実行した場合のレンズの傾斜角度に応じた被写界深度の位置を示す図である。
図17】実施の形態に係る三次元スキャナにおける傾斜角度に応じたフレームレートの制御を説明するための図である。
図18】実施の形態に係る三次元スキャナにおいて制御装置が実行する振幅制御のフローチャートである。
図19】変形例に係る三次元スキャナを説明するための図である。
図20】変形例に係る三次元スキャナを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態>
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
[三次元スキャナの構成]
図1は、実施の形態に係る三次元スキャナ100の構成を示す図である。三次元スキャナ100は、口腔内の歯および軟組織などの対象物99の表面形状を走査して、当該表面形状の三次元データを取得する口腔内スキャナ(IOS:Intra Oral Scanner)である。三次元データは、対象物99の表面形状を示す点群(複数の点)の各々の位置情報(縦方向,横方向,高さ方向の各軸の座標)を含む。なお、三次元スキャナ100は、三次元データとともに、対象物99の表面形状を示す点群(複数の点)の各々の色を示す色データを取得することも可能である。
【0012】
実施の形態に係る三次元スキャナ100は、歯科に限らず、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、内科、外科、および獣医科など、あらゆる医科の診療にも適用可能である。たとえば、実施の形態に係る三次元スキャナ100は、口腔内スキャナに限定されるものではなく、同様の構成を有する他の三次元スキャナにも適用可能であり、たとえば、口腔内以外に人の耳の内部を撮像することで外耳内の表面形状の三次元データを取得するスキャナにも適用可能である。
【0013】
三次元スキャナ100のユーザは、歯科医師などの術者、歯科助手、歯科大学の先生または生徒、歯科技工士、メーカの技術者、製造工場の作業者など、三次元スキャナ100を用いて歯牙および軟組織などの対象物99の三次元データを取得する者であればいずれであってもよい。三次元スキャナ100の走査対象者は、歯科医院の患者、歯科大学における被験者など、三次元スキャナ100の走査対象となり得る者であればいずれであってもよい。
【0014】
図1に示すように、三次元スキャナ100は、ハンドピース70と、制御装置40と、ディスプレイ50と、電源45とを備える。ハンドピース70は、手持ち式の部材であり、プローブ10と、接続部20と、光学計測部30とを含む。
【0015】
プローブ10は、口腔内に差し込まれ、歯および軟組織などの対象物99にパターンを有する光(以下、単に「パターン」とも称する。)を投影する。プローブ10は、パターンが投影された対象物99からの反射光を光学計測部30に導く。プローブ10は、接続部20の先端部外周を覆って当該接続部20に着脱可能に装着されている。
【0016】
接続部20は、光学計測部30の一部であって当該光学計測部30から突出しており、プローブ10の根元と嵌合可能な形状を有する。接続部20は、プローブ10で採光した光を光学計測部30へ導くためのレンズ系、カバーガラス、光学フィルタ、および位相差板(たとえば、1/4波長板)などの光学部品を含む。
【0017】
光学計測部30は、プローブ10を介して対象物99にパターンを投影し、投影したパターンを撮像する。なお、実施の形態に係る光学計測部30は、以下で説明されるように、合焦法の原理を用いて三次元形状を取得するように構成されている。
【0018】
制御装置40は、光学計測部30の動作を制御するとともに、光学計測部30によって撮像された画像を処理して三次元形状を取得する。制御装置40は、演算部41と、記憶部42とを備える。
【0019】
演算部41は、各種のプログラムを実行することで、各種の処理を実行する演算主体(コンピュータ)である。演算部41は、たとえば、CPU(central processing unit)またはMPU(Micro-processing unit)などのプロセッサで構成されている。なお、演算部41の一例であるプロセッサは、プログラムを実行することによって各種の処理を実行する機能を有するが、これらの機能の一部または全部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェア回路を用いて実装してもよい。「プロセッサ」は、CPUまたはMPUのようにストアードプログラム方式で処理を実行する狭義のプロセッサに限らず、ASICまたはFPGAなどのハードワイヤード回路を含み得る。このため、演算部41の一例である「プロセッサ」は、コンピュータ読み取り可能なコードおよび/またはハードワイヤード回路によって予め処理が定義されている、処理回路(processing circuitry)と読み替えることもできる。なお、演算部41は、1チップで構成されてもよいし、複数のチップで構成されてもよい。さらに、プロセッサおよび関連する処理回路は、ローカルエリアネットワークまたは無線ネットワークなどを介して、有線または無線で相互接続された複数のコンピュータで構成されてもよい。プロセッサおよび関連する処理回路は、入力データに基づきリモートで演算し、その演算結果を離れた位置にある他のデバイスへと出力するような、クラウドコンピュータで構成されてもよい。
【0020】
記憶部42は、図示しないメモリおよび記憶装置を含む。メモリは、演算部41が各種のプログラムを実行するにあたって、プログラムコードまたはワークメモリなどを一時的に格納する揮発性の記憶領域(たとえば、ワーキングエリア)を含む。メモリの一例としては、DRAM(dynamic random access memory)およびSRAM(static random access memory)などの揮発性メモリ、または、ROM(Read Only Memory)およびフラッシュメモリなどの不揮発性メモリが挙げられる。記憶装置は、演算部41が実行する各種のプログラムまたは各種のデータなどを記憶する。記憶装置は、1または複数の非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)であってもよいし、1または複数のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(computer readable storage medium)であってもよい。記憶装置の一例としては、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)などが挙げられる。
【0021】
実施の形態に係る三次元スキャナ100において、記憶部42は、演算部41によって実行される制御プログラム43を記憶する。演算部41は、制御プログラム43を実行することで、レンズ81の往復直線運動を制御するための振幅制御に係る処理を実行する。振幅制御の詳細については、後述する。
【0022】
また、制御装置40は、取得した三次元データをディスプレイ50に出力することも可能であり、光学計測部30の設定などの情報を図示しない入力装置などで入力することも可能である。
【0023】
なお、実施の形態に係る三次元スキャナ100においては、制御装置40がハンドピース70と別体で構成されているが、制御装置40が片手で持ち上げられるほど十分に小型かつ軽量であれば、制御装置40の演算部41および記憶部42の一部または全部の機能が、ハンドピース70に搭載されてもよい。
【0024】
図1の例では、三次元スキャナ100の各構成要素(30,40,45,50)がケーブル(図中の太線)によって配線されているように描かれているが、これらの配線のうちの一部または全部が無線通信によって接続されてもよい。
【0025】
ディスプレイ50は、制御装置40で得られた三次元データによって示される対象物99の三次元形状を表示する。ディスプレイ50は、光学計測部30の設定情報、患者情報、スキャナの起動状態、取扱説明書、およびヘルプ画面など、その他の情報も表示可能である。ディスプレイ50には、たとえば据え置き式の液晶ディスプレイ、ヘッドマウント式またはメガネ式のウェアラブルディスプレイなどが適用され得る。なお、三次元スキャナ100は、複数のディスプレイ50を備えていてもよく、対象物99の三次元形状およびその他の情報が、複数のディスプレイ50に同時表示あるいは分割表示されてもよい。
【0026】
電源45は、光学計測部30および制御装置40に電力を供給する。電源45は、図1に示すように制御装置40の外部に設けられてもよいが、制御装置40の内部またはハンドピース70の内部に設けられてもよい。また、電源45は、制御装置40、光学計測部30、およびディスプレイ50のそれぞれに個別に給電できるように複数設けられてもよい。
【0027】
[ハンドピースの構成]
図2は、実施の形態に係るハンドピース70の構成を示す図である。図3は、実施の形態に係るハンドピース70のX-Z断面を示す図である。なお、図2および図3に示すハンドピース70内の各部材は、図1に示す光学計測部30に収納されている。
【0028】
図2および図3に示すように、ハンドピース70は、手持ち式のハウジング77の内部に、投影光発生部75と、レンズ81と、光学センサ71と、プリズム72とを含む。光学センサ71は、「撮像部」の一例である。ハンドピース70は、これら以外に、対象物99に向けて光を反射させる反射板などを含んでもよい。なお、実施の形態においては、説明の便宜上、レンズ81が往復直線運動する方向を表す仮想直線をLで示し、直線Lに平行な軸をX軸、直線Lに垂直であって図2における紙面の上向きの軸をZ軸、X軸およびZ軸のそれぞれに垂直な軸をY軸と称する。
【0029】
投影光発生部75は、光源となるレーザー素子またはLED(Light Emitting Diode)などである。投影光発生部75からの光は、当該投影光発生部75の前方に配置される投影パターンを発生させる投影パターンスクリーン(図示は省略する)を経由してプリズム72およびレンズ81を通過し、プローブ10に設けられた反射部66を介して対象物99に照射され、当該対象物99で反射される。対象物99で反射された光は、反射部66を介して再びレンズ81を通過してプリズム72内に進入する。プリズム72は、対象物99からの光の進行方向を、光学センサ71が位置する方向(この例では、Z軸方向)に変化させる。プリズム72によって進行方向が変化した光は、光学センサ71によって検出される。なお、図3に示す例においては、投影光発生部75からの光と対象物99で反射してプリズム72に導かれる光とが別々に示されているが、これは分かり易く説明するためのものであり、実際には両者の光が同軸上に導かれるようにハンドピース70が構成されている。
【0030】
合焦法の技術を用いて三次元形状を取得する場合、レンズ81と対象物99との間に設けられたパターン生成素子(図示せず)を通過した光が対象物99に投影される。レンズ81が同一直線(たとえば、図示上の直線L)上を往復直線運動すると、投影パターンの焦点位置が変化する。光学センサ71は、制御装置40の制御に従って、投影パターンの焦点位置の変化ごとに対象物99からの光を所定のフレームレートで検出することによって、投影パターンの焦点位置に存在する対象物99を撮像する。制御装置40は、光学センサ71のシャッタースピードを変更することでフレームレートを変更することができるため、「フレームレート制御部」の機能を有する。制御装置40は、レンズ81の位置と、そのときの光学センサ71による検出結果とに基づいて、対象物99の形状情報を演算することで、対象物99の表面形状の三次元データを取得する。
【0031】
レンズ81は、レンズ駆動部80によって駆動し、往復直線運動する。レンズ81が直線Lの方向(X軸方向)に往復直線運動すると、レンズ81の質量分だけハンドピース70の重心位置が移動することになり当該ハンドピース70を保持するユーザの手に振動として伝わる。その振動を打ち消すために、ハンドピース70は、ハウジング77の内部において、カウンタウェイト91をさらに備える。カウンタウェイト91は、カウンタウェイト駆動部90によって駆動し、レンズ81と相対する方向に往復直線運動する。
【0032】
カウンタウェイト91は、対象物99とレンズ81との間の光路、およびレンズ81と光学センサ71との間の光路を遮らないように、X軸方向における投影光発生部75の背面側に設けられている。
【0033】
具体的には、図3に示すように、ハンドピース70は、ハウジング77内において、当該ハンドピース70の前方に位置する第1収容部501と、当該ハンドピース70の後方に位置する第2収容部502とが設けられている。第1収容部501には、レンズ81が収容され、第2収容部502には、カウンタウェイト91が収容される。さらに、ハンドピース70は、第1収容部501と第2収容部502との間において、第1収容部501によって保持されたレンズ81と第2収容部502によって保持されたカウンタウェイト91とを連結する連結収容部500が設けられている。連結収容部500には、上述した光学センサ71、プリズム72、および投影光発生部75が収容されている。
【0034】
図4は、実施の形態に係る三次元スキャナ100においてレンズ81とカウンタウェイト91との位置関係を説明するための図である。なお、図4に示す例では、ハウジング77が省略されている。図4に示すように、レンズ81は、直線Lに平行なリニアガイド60によって、直線Lの方向に往復直線運動するように支持されている。
【0035】
さらに、レンズ駆動部80は、可動子に保持されたレンズ81を磁気回路構成85によって直線Lの方向に往復直線運動させる。つまり、レンズ駆動部80は、リニアモータで構成されている。
【0036】
カウンタウェイト91は、レンズ81の直線運動方向の直線L上に設けられかつ当該レンズ81と同じ質量を有する錘である。カウンタウェイト91は、直線Lに平行なリニアガイド65によって、直線Lの方向に往復直線運動するように支持されている。実施の形態においては、リニアガイド60とリニアガイド65とは異なる部材であるが、リニアガイド60とリニアガイド65とを一つながりの部材で構成してもよい。
【0037】
さらに、カウンタウェイト駆動部90は、可動子に保持されたカウンタウェイト91を磁気回路構成95によって直線Lの方向に往復直線運動させる。つまり、カウンタウェイト駆動部90は、リニアモータで構成されている。
【0038】
リニアモータであるレンズ駆動部80およびカウンタウェイト駆動部90の具体的な構成は、後述する。以下では、レンズ駆動部80およびカウンタウェイト駆動部90をまとめて単に「リニアモータ」とも称する。レンズ駆動部80およびカウンタウェイト駆動部90の各々は、制御装置40によって制御される。制御装置40は、「レンズ制御部」および「カウンタウェイト制御部」の一例である。なお、実施の形態においては、レンズ駆動部80およびカウンタウェイト駆動部90が共通の制御装置40によって制御されるが、レンズ駆動部80およびカウンタウェイト駆動部90の各々が互いに異なる制御装置によって制御されてもよい。
【0039】
レンズ駆動部80によって、レンズ81が光軸となる直線Lの方向に往復直線運動すると、カウンタウェイト駆動部90によって、カウンタウェイト91は、レンズ81と相対する方向にレンズ81と同じ距離だけ往復直線運動する。たとえば、レンズ81が対象物99に近づく方向に直線L上を10mm移動すると、カウンタウェイト91は、対象物99から遠ざかる方向に直線L上を10mm移動する。また、レンズ81が対象物99から遠ざかる方向に直線L上を15mm移動すると、カウンタウェイト91は、対象物99に近づく方向に直線L上を15mm移動する。
【0040】
このように、レンズ81と相対する方向に当該レンズ81と同じ距離だけカウンタウェイト91が往復直線運動することで、レンズ81の往復直線運動に起因するハンドピース70の重心の偏りを相殺することができる。これにより、カウンタウェイト91によって、レンズ81の往復直線運動による振動を打ち消すことができる。
【0041】
[リニアモータの構成]
図5は、実施の形態に係るリニアモータのY-Z断面を示す図である。図6は、実施の形態に係るリニアモータのX-Z断面を示す図である。なお、図5および図6に示す例では、リニアモータのうち、レンズ駆動部80の構成を説明するが、カウンタウェイト駆動部90の構成もレンズ駆動部80と同様である。すなわち、カウンタウェイト駆動部90の場合、図5および図6に示す例において、レンズ81がカウンタウェイト91に置き換えられるが、その他の構成はレンズ駆動部80と同様である。
【0042】
図5および図6に示すように、レンズ駆動部80は、中央部に略円形のレンズ81を設けることができるように、レンズ81の周辺に当該レンズ81を往復直線運動させるための各部材が配置されており、直線運動方向である直線Lに沿って長尺状の中空形状を有する。このように、レンズ駆動部80の中央部に略円形のレンズ81を設けるような構成であるため、レンズ駆動部80の中央部に光を通すことができる。
【0043】
具体的には、図5に示すように、レンズ駆動部80においては、レンズ81の外周部に、レール57aおよびブロック56aで構成されるリニアガイド60aと、レール57bおよびブロック56bで構成されるリニアガイド60bとが設けられている。このように、複数のリニアガイド60a,60bが、レンズ81の外周側で互いに異なる位置に配置されている。
【0044】
より具体的には、複数のリニアガイド60a,60bは、レンズ81の直線運動方向と平行でかつレンズ81の中心を通る光軸(直線L)を回転軸として、それぞれが回転対称となる位置で互いに平行に配置されている。たとえば、図5において、直線Lを回転軸として、複数のリニアガイド60a,60bのそれぞれを180度回転させた場合、リニアガイド60aがリニアガイド60bの位置に、リニアガイド60bがリニアガイド60aの位置に配置されることになる。なお、図示は省略するが、複数のリニアガイド65についても同様の位置に配置されている。つまり、複数のリニアガイド65は、カウンタウェイト91の直線運動方向と平行でかつカウンタウェイト91の中心を通る軸(直線L)を回転軸として、それぞれが回転対称となる位置で互いに平行に配置されている。
【0045】
リニアガイド60aのブロック56aは、レンズ81を支持するとともにレール57aに嵌合しており、レール57aに沿って直線方向に移動することで、レンズ81を往復直線運動させる。リニアガイド60bのブロック56bは、ブロック56aとは異なる位置でレンズ81を支持するとともにレール57bに嵌合しており、レール57bに沿って直線方向に移動することで、レンズ81を往復直線運動させる。なお、リニアガイド60a,60bは、図3を参照しながら説明したリニアガイド60に対応する。
【0046】
さらに、図6に示すように、レンズ81の中心部における光路を遮らないように当該レンズ81の外周を取り囲むようにして、レンズ81の外周に沿って弾性部材としてのバネ55aおよびバネ55bが設けられている。バネ55aおよびバネ55bには、コイルバネなどが適用される。なお、弾性部材には、バネに限らず、ゴムなど、力を加えたときに変形する一方で力を除いたときには元に戻るものであればいずれの部材が適用されてもよい。
【0047】
バネ55aおよびバネ55bは、それぞれ、その一端がレンズ81に当接し、その他端はハウジング77内で固定されている。さらに、バネ55aおよびバネ55bは、X方向の変形が許容され、Y-Z方向に変形し難くなるようにハウジング77内で保持されている。このように配置されたバネ55aおよびバネ55bによって、レンズ81に対して直線運動方向に弾性力が与えられる。バネ55aおよびバネ55bのそれぞれの直径は、レンズ81を2つのバネによって挟み込んで固定できるように、レンズ81の直径と略同じであってもよい。
【0048】
バネ55aおよびバネ55bの外側(レンズ81の中心からZ方向に離れる側)には、レンズ81を直線Lの方向に往復直線運動させるための磁気回路構成85aが設けられている。磁気回路構成85aは、N極およびS極からなる磁石53aと、磁石53aの外側(レンズ81の中心からZ方向に離れる側)に配置されたコイル52aとを含む。
【0049】
磁石53aは、直線Lの方向に運動可能な可動子であり、磁石53aが直線Lに沿ってX方向に往復直線運動することで、レンズ81も直線Lに沿ってX方向に往復直線運動可能である。コイル52aは、固定子である。
【0050】
コイル52aのさらに外側(レンズ81の中心からZ方向に離れる側)には、ヨーク51aが設けられている。ヨーク51aは、コイル52aと同様に固定子である。
【0051】
レンズ81を介して磁気回路構成85aの反対側には、レンズ81を直線Lの方向に往復直線運動させるための磁気回路構成85bが設けられている。磁気回路構成85bは、N極およびS極からなる磁石53bと、磁石53bの外側(レンズ81の中心からZ方向に離れる側)に配置されたコイル52bとを含む。
【0052】
磁石53bは、直線Lの方向に運動可能な可動子であり、磁石53bが直線Lに沿ってX方向に往復直線運動することで、レンズ81も直線Lに沿ってX方向に往復直線運動可能である。コイル52bは、固定子である。
【0053】
コイル52bのさらに外側には、ヨーク51bが設けられている。ヨーク51bは、コイル52bと同様に固定子である。さらに、固定子であるヨーク51aおよびヨーク51bは、ハンドピース70のハウジング77に適宜固定されている。
【0054】
このような構成を有するレンズ駆動部80においては、磁気回路構成85aおよび磁気回路構成85bによってレンズ81に直線Lの方向に力が与えられることで、レンズ81が往復直線運動する。
【0055】
たとえば、磁気回路構成85aおよび磁気回路構成85bにおいて、図6に示すような位置関係でN極およびS極からなる磁石53aおよび磁石53bを配置すると、点線で示すような矢印方向の磁界が生じる。この場合において、図6に示すような駆動電流(Y軸に沿って紙面の手前から奥に向かう方向の電流を「×」、Y軸に沿って紙面の奥から手前に向かう方向の電流を「・」で示す。)をコイル52aおよびコイル52bのそれぞれに流すと、フレミングの左手の法則に従って、実線の矢印で示すようにX軸方向に電磁力(F)が生じる。このようにして生じた電磁力(F)が可動子である磁石53aおよび磁石53bに作用されると、磁石53aおよび磁石53bが電磁力(F)と反対の方向に動く。以下、バネ55a,55b、磁石53a,53b、レンズ81、コイル52a,52b、およびグリスなどの粘性を有する潤滑剤を含むダンパなど、装置内での物体の運動に関わる構成を、「運動系」とも称する。
【0056】
レンズ81は、レンズ81の慣性力、電磁力(F)、バネ55a,55bの弾性力、およびダンパの粘性力といった運動系の応答により直線Lの方向に振動することになる。制御装置40は、この振動を利用してレンズ81を直線Lの方向に往復直線運動させる。つまり、制御装置40は、運動系の固有振動数に合わせて一定周期でレンズ駆動部80を制御して磁気回路構成85aおよび磁気回路構成85bに駆動電流を流すことで、運動系による共振現象を利用してレンズ81を直線Lの方向に往復直線運動させることができる。駆動電流は、レンズ81の往復直線運動における変位量に比例するため、制御装置40は、駆動電流を変化させることで、レンズ81の往復直線運動における変位量を変化させることができる。たとえば、制御装置40は、駆動電流を大きくすればするほど、レンズ81の往復直線運動における変位量を大きくすることができ、駆動電流を小さくすればするほど、レンズ81の往復直線運動における変位量を小さくすることができる。
【0057】
このように、レンズ駆動部80は、運動系の固有振動数に合わせてコイル52aおよびコイル52bに駆動電流を流すことで、レンズ81を直線Lの方向に往復駆動させる共振駆動モータとして機能させることができる。ここで、モータにカムなどの機構部品を接続した機械的構成によってレンズ81を往復直線運動させるような場合、レンズ81を移動させている間、常にモータを駆動し続けなければならない。一方、実施の形態のように運動系の共振現象を利用すれば、一定周期に磁気回路構成85aおよび磁気回路構成85bに駆動電流を流すだけでレンズ81を往復直線運動させることができる。したがって、実施の形態のような磁気回路構成85を用いると、消費電力を抑えることができ、効率がよい。さらに、カム機構の場合、カム機構による接触音が発生したり、カム機構部の劣化によりカム面から接触粉が発生したりすることもあるが、実施の形態のように運動系の共振現象を利用すれば、これらも解消することができる。
【0058】
前述したように、レンズ駆動部80によって、レンズ81が直線Lの方向に往復直線運動すると、カウンタウェイト駆動部90によって、カウンタウェイト91は、レンズ81と相対する方向にレンズ81と同じ距離だけ往復直線運動する。レンズ81は、直線L上を往復直線運動するのに対して、カウンタウェイト91は重心の偏りを相殺するためにレンズ81の直線運動方向と相対する方向に直線L上を往復直線運動する。これにより、ユーザがハンドピース70を手に持って使用しても振動を感じない。
【0059】
[比較例]
上述したように、三次元スキャナ100は、ハンドピース70に内蔵されたレンズ81を往復直線運動させることによってレンズ81を通過した光の焦点位置を変化させ、光の焦点位置に存在する対象物99を撮像するように構成されている。レンズ81を通過した光の焦点位置は、往復直線運動するレンズ81の移動範囲に依存する。
【0060】
ここで、三次元スキャナ100の使用中においては、ハンドピース70が様々な方向および角度で傾斜する。このため、ハンドピース70の傾斜角度、すなわちハンドピース70内のレンズ81の傾斜角度の変化に応じて、レンズ81に掛かる重力の往復運動方向(直線Lの方向)の成分が変化する。たとえば、ハンドピース70が水平状態である場合、レンズ81に掛かる重力の往復運動方向の成分はゼロであるが、ハンドピース70の先端(プローブ10の先端)が鉛直方向へと傾斜すればするほど、レンズ81に掛かる重力の往復運動方向の成分が大きくなる。ハンドピース70の先端(プローブ10の先端)が鉛直方向を指す場合、レンズ81に掛かる重力の全てが往復運動方向の成分になる。
【0061】
このように、レンズ81の傾斜角度の変化に応じてレンズ81に掛かる重力の往復運動方向の成分が変化すると、それに伴い、レンズ81の往復運動の中心位置も変化し得る。たとえば、ハンドピース70の先端が鉛直方向に傾斜すればするほど、レンズ81の往復運動の中心位置がハンドピース70の先端方向に移動する。これにより、三次元スキャナ100の使用中においては、レンズ81を通過した光の焦点位置が、ハンドピース70の先端から遠ざかったり、ハンドピース70の先端に近づいたりして、焦点位置の範囲である被写界深度が安定しない場合がある。
【0062】
たとえば、図7は、比較例に係るハンドピース70の傾斜角度に応じた被写界深度を示す図である。図7に示すように、ハンドピース70が水平方向から鉛直方向へと45度傾斜した場合を基準状態として被写界深度が設計されている場合を想定する。
【0063】
ハンドピース70が水平状態である場合は、ハンドピース70が45度傾斜した場合よりも、レンズ81の焦点位置がハンドピース70の先端から遠ざかる。すなわち、ハンドピース70が水平状態である場合の被写界深度は、ハンドピース70が45度傾斜した場合の被写界深度よりもハンドピース70の先端から遠ざかるため、ハンドピース70の先端と被写界深度との間に隙間が生じるおそれがある。よって、ユーザは、ハンドピース70が水平状態である場合、レンズ81の焦点位置を対象物の撮像対象としている部分に合わせるために、ハンドピース70が45度傾斜した場合(基準状態)よりもハンドピース70の先端を対象物99から遠ざけて対象物99の表面形状を走査する必要がある。たとえば、ユーザは、ハンドピース70が水平状態である場合、ハンドピース70の先端を対象物99から少し浮かして対象物99の表面形状を走査する必要があり、ハンドピース70を対象物99に沿って適切に移動させることが難しい。
【0064】
ハンドピース70が鉛直方向に傾斜した場合は、ハンドピース70が45度傾斜した場合よりも、レンズ81の焦点位置がハンドピース70の先端に近づく。すなわち、ハンドピース70が鉛直方向に傾斜した場合の被写界深度は、ハンドピース70が45度傾斜した場合の被写界深度よりもハンドピース70の先端に近づくため、ユーザが撮像対象としている対象物99の一部(たとえば、対象物99の下部)が被写界深度に含まれなくなるおそれがある。よって、ユーザは、ハンドピース70が鉛直方向に傾斜した場合、レンズ81の焦点位置を対象物の撮像対象としている部分に合わせるために、ハンドピース70が45度傾斜した場合(基準状態)よりもハンドピース70の先端を対象物99に近付けて対象物99の表面形状を走査する必要がある。仮に、ハンドピース70が45度傾斜した場合(基準状態)に、ユーザが、ハンドピース70の先端を対象物99に接しながら対象物を走査している場合、ハンドピース70が鉛直方向に傾斜した場合には、これ以上、ハンドピース70の先端を対象物99に近付けることができないため、対象物99の一部(たとえば、対象物99の下部)の表面形状を撮像することができない。
【0065】
このように、ユーザは、レンズ81の焦点位置を対象物99の撮像対象としている部分に合わせるために、ハンドピース70の傾斜角度に応じて、ハンドピース70を対象物99に近づけたり、ハンドピース70を対象物から遠ざけたりする必要があり、ユーザの技量によっては対象物99の表面形状の三次元データを適切に取得できないおそれがある。そこで、以下で説明するように、実施の形態に係る三次元スキャナ100は、ハンドピース70の傾斜角度、すなわちレンズ81の傾斜角度の変化に応じてレンズ81の動作を制御することで、レンズ81の傾斜角度に関わらず、レンズ81の焦点位置を対象物99に合わせるように構成されている。
【0066】
[傾斜角度の変化の検出]
図8図13を参照しながら、制御装置40によるレンズ81の傾斜角度の変化の検出について説明する。図8および図9は、実施の形態に係る三次元スキャナ100が備えるエンコーダ82を示す図である。エンコーダ82は、レンズ81の位置、すなわちレンズ81の焦点位置を検出するための「位置検出部」であるとともに、後述する方法により制御装置40がハンドピース70の所定方向に対する傾斜角度の変化を検出するための「角度検出部」として用いることができる。なお、実施の形態に係る三次元スキャナ100においては、所定方向として、水平方向から鉛直方向へと45度傾斜した方向が適用されているが、所定方向は、水平方向など、三次元スキャナ100の設計者によって予め定められてもよい。
【0067】
図8および図9には、エンコーダ82として、インクリメンタルエンコーダが例示されている。エンコーダ82は、図8に示す検出部82Aと、図9に示す移動部82Bとを備える。移動部82Bは、スケール部82aとインデックス部82bとを含む。
【0068】
移動部82Bは、レンズ81とともにバネ55aおよびバネ55bによって両端から支持されている。レンズ81が水平状態である場合、移動部82Bのインデックス部82bは、予め定められたエンコーダ基準位置を中心として、レンズ81とともに往復運動する。レンズ81が水平状態から傾斜すると、レンズ81に掛かる重力の往復運動方向の成分が変化することで、インデックス部82bの往復運動の中心位置がエンコーダ基準位置から離れる。
【0069】
検出部82Aは、インデックス部82bの往復運動の中心位置がエンコーダ基準位置から離れた分の距離(レンズ81の変位量)を、スケール部82aを手掛かりに検出する。制御装置40は、スケール部82aの検出値を取得し、取得した検出値をレンズ81の所定方向に対する傾斜角度に変換することで、レンズ81の所定方向に対する傾斜角度の変化を検出することができる。
【0070】
なお、「角度検出部」は、インクリメンタルエンコーダに限らず、アブソリュートエンコーダ、地磁気センサ、ジャイロセンサ、または加速度センサなどのモーションセンサであってもよい。
【0071】
図10および図11を参照しながら、ハンドピース70が基準状態である場合のレンズ81の往復運動について説明する。なお、図7に示すように、「基準状態」は、ハンドピース70(すなわち、レンズ81)が水平方向から鉛直方向へと45度傾斜した状態であるが、たとえば、水平状態など、その他の状態であってもよい。図10および図11は、実施の形態に係るハンドピース70が基準状態である場合のレンズ81の往復運動を説明するための図である。
【0072】
図10には、横軸に時間、縦軸にレンズ81の変位量をとったグラフが示されている。具体的には、図10のグラフにおいては、時間の経過に伴い到来するタイミング(t11~t17)ごとに、第1の方向(たとえば、紙面右側)に移動した場合のレンズ81の変位量がプラス側にプロットされ、第1の方向と相対する第2の方向(たとえば、紙面左側)に移動した場合のレンズ81の変位量がマイナス側にプロットされている。
【0073】
たとえば、図10および図11に示すように、ハンドピース70が基準状態で、レンズ81が移動して往復直線運動する例を想定する。t11において、レンズ81が往復運動の中心位置から出発して第1の方向(紙面右側)に移動する。t12において、レンズ81が第1の方向(紙面右側)に最大まで移動する。その後、バネ55aの弾性力によって、レンズ81が第2の方向(紙面左側)に戻る。t13において、レンズ81が往復運動の中心位置を通過し、t14において、レンズ81が第2の方向(紙面左側)に最大まで移動する。その後、バネ55bの弾性力によって、レンズ81が第1の方向(紙面右側)に戻る。t15において、レンズ81が往復運動の中心位置を通過し、t16において、レンズ81が第1の方向(紙面右側)に最大まで移動する。その後、バネ55aの弾性力によって、t17において、レンズ81が往復運動の中心位置に戻る。
【0074】
上述したようなレンズ81の往復運動中において、エンコーダ82は、インデックス部82bがエンコーダ基準位置に位置することを検出し、レンズ81の所定方向に対する傾斜角度の変化を検出する。図10および図11の例の場合、エンコーダ82は、レンズ81の変位量がゼロになるタイミング(t11,t13,t15,t17)、すなわち、レンズ81が往復運動の中心位置に位置するときに、インデックス部82bがエンコーダ基準位置に位置することを検出する。このため、制御装置40は、レンズ81の所定方向に対する傾斜角度がゼロ、すなわち、レンズ81が水平方向から鉛直方向へと45度傾斜した状態であることを検出することができる。
【0075】
図12および図13を参照しながら、ハンドピース70が基準状態から鉛直方向に傾斜する場合のレンズ81の往復運動について説明する。図12および図13は、実施の形態に係るハンドピース70が基準状態から鉛直方向に傾斜する場合のレンズ81の往復運動を説明するための図である。
【0076】
図12には、横軸に時間、縦軸にレンズ81の変位をとったグラフが示されている。具体的には、図12のグラフにおいては、時間の経過に伴い到来するタイミング(t21~t27)ごとに、第1の方向(紙面右側)に移動した場合のレンズ81の変位量がプラス側にプロットされ、第1の方向と相対する第2の方向(紙面左側)に移動した場合のレンズ81の変位量がマイナス側にプロットされている。
【0077】
たとえば、図12および図13に示すように、ハンドピース70が基準状態から鉛直方向に傾斜した状態で、レンズ81が移動して往復直線運動する例を想定する。t21において、レンズ81が往復運動の中心位置から出発して第1の方向(紙面右側)に移動する。t22において、レンズ81がエンコーダ基準位置を通過し、t23において、レンズ81が第1の方向(紙面右側)に最大まで移動する。その後、バネ55aの弾性力によって、レンズ81が第2の方向(紙面左側)に戻る。t24において、レンズ81がエンコーダ基準位置を通過し、さらにt25において、レンズ81が往復運動の中心位置を通過し、t26において、レンズ81が第2の方向(紙面左側)に最大まで移動する。その後、バネ55bの弾性力によって、レンズ81が第1の方向(紙面右側)に戻る。t27において、レンズ81が往復運動の中心位置を通過し、さらにt28において、レンズ81がエンコーダ基準位置を通過し、t29において、レンズ81が第1の方向(紙面右側)に最大まで移動する。その後、バネ55aの弾性力によって、レンズ81が第2の方向(紙面左側)に戻る。t30において、レンズ81がエンコーダ基準位置を通過し、t31において、レンズ81が往復運動の中心位置に戻る。
【0078】
上述したようなレンズ81の往復運動中において、エンコーダ82は、インデックス部82bがエンコーダ基準位置に位置することを検出し、レンズ81の所定方向に対する傾斜角度の変化を検出する。図12および図13の例の場合、エンコーダ82は、レンズ81の変位量が所定量になるタイミング(t22,t24,t28,t30)で、インデックス部82bがエンコーダ基準位置に位置することを検出する。制御装置40は、エンコーダ82から取得したレンズ81の変位量をレンズ81の所定方向に対する傾斜角度に変換することで、レンズ81の所定方向に対する傾斜角度の変化を検出することができる。
【0079】
[傾斜角度に応じたレンズの動作の制御]
図14図16を参照しながら、レンズ81の所定方向に対する傾斜角度に応じたレンズ81の制御について説明する。図14および図15は、実施の形態に係るハンドピース70が基準状態から鉛直方向に傾斜する場合に実行される振幅制御を説明するための図である。
【0080】
図12および図13で例示したように、制御装置40は、レンズ81の所定方向に対する傾斜角度の変化を検出すると、検出した傾斜角度の変化に応じてレンズ81の往復運動の振幅を変更する。具体的には、図14および図15に示すように、制御装置40は、レンズ81の傾斜角度の変化に応じてレンズ81の往復運動の振幅を大きくする。制御装置40は、レンズ81の傾斜角度の変化に応じて駆動電流を変化させることで、レンズ81の往復直線運動の振幅を大きくすることができる。
【0081】
図14には、振幅制御が行われる前の時間に対するレンズ81の変位量のグラフとともに、振幅制御が行われた後の時間に対するレンズ81の変位量のグラフが示されている。図14および図15に示すように、振幅制御が行われた後においては、以下のようにレンズ81の変位量が変化する。
【0082】
t41において、レンズ81が往復運動の中心位置から出発して第1の方向(紙面右側)に移動する。t42において、レンズ81がエンコーダ基準位置を通過し、t43において、レンズ81が第1の方向(紙面右側)に最大まで移動する。このとき、振幅制御後のレンズ81の変位量は、振幅制御前のレンズ81の変位量よりも大きい。その後、バネ55aの弾性力によって、レンズ81が第2の方向(紙面左側)に戻る。t44において、レンズ81がエンコーダ基準位置を通過し、さらにt45において、レンズ81が往復運動の中心位置を通過し、t46において、レンズ81が第2の方向(紙面左側)に最大まで移動する。このとき、振幅制御後のレンズ81の変位量は、振幅制御前のレンズ81の変位量よりも大きい。その後、バネ55bの弾性力によって、レンズ81が第1の方向(紙面右側)に戻る。t47において、レンズ81が往復運動の中心位置を通過し、さらにt48において、レンズ81がエンコーダ基準位置を通過し、t49において、レンズ81が第1の方向(紙面右側)に最大まで移動する。このとき、振幅制御後のレンズ81の変位量は、振幅制御前のレンズ81の変位量よりも大きい。その後、バネ55aの弾性力によって、レンズ81が第2の方向(紙面左側)に戻る。t50において、レンズ81がエンコーダ基準位置を通過し、t51において、レンズ81が往復運動の中心位置に戻る。
【0083】
図16は、実施の形態に係る三次元スキャナ100において、振幅制御を実行した場合のレンズ81の傾斜角度に応じた被写界深度の位置を示す図である。図7で示したように、振幅制御が行われる前の比較例においては、ハンドピース70が水平状態である場合は、ハンドピース70が45度傾斜した場合よりも、レンズ81の焦点位置がハンドピース70の先端から遠ざかり、ハンドピース70の先端と被写界深度との間に隙間が生じていた。これに対して、図16に示すように、振幅制御が行われた後においては、振幅制御前よりもレンズ81の変位量が大きくなることで、振幅制御前よりも被写界深度が大きくなり、ハンドピース70の先端と被写界深度との間に隙間が生じることもない。
【0084】
図7で示したように、振幅制御が行われる前の比較例においては、ハンドピース70が鉛直方向に傾斜した場合は、ハンドピース70が45度傾斜した場合よりも、レンズ81の焦点位置がハンドピース70の先端に近づき、ユーザが撮像対象としている対象物99の一部(たとえば、対象物99の下部)が被写界深度に含まれなくなっていた。これに対して、図16に示すように、振幅制御が行われた後においては、振幅制御前よりもレンズ81の変位量が大きくなることで、振幅制御前よりも被写界深度が大きくなり、ユーザが撮像対象としている対象物99の下部まで被写界深度に含めることができる。
【0085】
[傾斜角度に応じたフレームレートの制御]
図17を参照しながら、レンズ81の傾斜角度に応じたフレームレートの制御について説明する。図17は、実施の形態に係る三次元スキャナ100における傾斜角度に応じたフレームレートの制御を説明するための図である。
【0086】
上述したように、制御装置40は、レンズ81の傾斜角度に応じて振幅制御を行うことで、レンズ81の往復直線運動における変位量を大きくする。ここで、レンズ81の変位量が大きくなると、光学センサ71による撮像範囲が広くなる。そこで、制御装置40は、振幅制御後において、振幅制御前と同程度の測定精度を担保するために、振幅制御前よりもフレームレートが大きくなるように光学センサ71を制御することが好ましい。
【0087】
たとえば、図17に示すように、制御装置40は、ハンドピース70が水平状態または鉛直方向に傾斜した場合は、ハンドピース70が水平方向から鉛直方向へと45度傾斜した基準状態である場合よりもレンズ81の振幅が大きいため、その分、フレームレートが大きくなるように光学センサ71を制御する。
【0088】
これにより、三次元スキャナ100は、振幅制御によってレンズ81の振幅を大きくすることで被写界深度を大きくした場合であっても、振幅制御前と同程度の分解能で対象物99を撮像することができるため、振幅制御前と同程度の測定精度を担保することができる。
【0089】
[制御装置の処理フロー]
図18は、実施の形態に係る三次元スキャナ100において制御装置40が実行する振幅制御のフローチャートである。図18に示す各STEP(以下、「S」で示す。)は、制御装置40の演算部41が制御プログラム43を実行することで実現される。
【0090】
図18に示すように、制御装置40は、磁気回路構成85に駆動電流を供給することで、レンズ81が往復直線運動するように当該レンズ81を駆動する(S1)。制御装置40は、エンコーダ82の検出値に基づき、ハンドピース70の傾斜角度、すなわちレンズ81の傾斜角度が変化したか否かを判定する(S2)。
【0091】
制御装置40は、レンズ81の傾斜角度が変化していない場合(S2でNO)、本処理フローを終了する。一方、制御装置40は、レンズ81の傾斜角度が変化した場合(S2でYES)、レンズ81の傾斜角度に応じて磁気回路構成85に供給する駆動電流を変化させることで、レンズ81の往復直線運動における振幅を変更する(S3)。たとえば、図14図16に示すように、制御装置40は、レンズ81の傾斜角度に応じて磁気回路構成85に供給する駆動電流を大きくすることで、レンズ81の往復直線運動における振幅を大きくする。
【0092】
制御装置40は、レンズ81の往復直線運動における振幅を変更すると、光学センサ71を制御してフレームレートを変更する(S4)。たとえば、図17に示すように、制御装置40は、レンズ81の往復直線運動における振幅を大きくした場合、光学センサ71を制御してフレームレートを大きくする。その後、本処理フローを終了する。
【0093】
以上のように、実施の形態に係る三次元スキャナ100は、レンズ81の傾斜角度の変化を検出し、検出した傾斜角度の変化に応じてレンズ81の動作を制御することで、レンズ81の傾斜角度に関わらず、レンズ81の焦点位置を対象物99に合わせることができるため、対象物99の表面形状の三次元データを適切に取得することができる。
【0094】
さらに、レンズ81の傾斜角度に関わらず、被写界深度を大きくした場合は、基準状態のような被写界深度が適切な場合であっても駆動電流が大きくなるため、駆動電流を無駄に消費するとともに、発熱量も大きくなる。また、基準状態であっても被写界深度が大きくなるため、撮像対象でない不要部分を撮像する可能性があり、不要部分を削除するための演算負荷が掛かり、その分、演算速度が遅くなるとともに発熱量も大きくなる。しかしながら、実施の形態に係る三次元スキャナ100においては、レンズ81の傾斜角度の変化に応じて被写界深度を変更するため、基準状態において、駆動電流を無駄に消費することなく、また、撮像対象でない不要部分を撮像することもない。
【0095】
<変形例>
本開示は、上記の実施例に限られず、さらに種々の変形、応用が可能である。以下、本開示に適用可能な変形例について説明する。なお、変形例に係る三次元スキャナ100においては、実施の形態に係る三次元スキャナ100と異なる部分のみを説明し、実施の形態に係る三次元スキャナ100と同じ部分については、同一符号を付してその説明を繰り返さない。
【0096】
実施の形態に係る三次元スキャナ100においては、制御装置40がレンズ81の傾斜角度の変化に応じて駆動電流を制御することで、レンズ81の往復運動の振幅を変更していたが、変形例に係る三次元スキャナ100は、レンズ81の傾斜角度の変化に応じてレンズ81の往復運動の中心位置を変更する機構を備えていてもよい。より具体的には、変形例に係る三次元スキャナ100は、レンズ81の傾斜角度の変化に応じて、レンズ81の往復運動の中心位置を、レンズ81の傾斜角度が変化する前の位置に戻すような機構を備えていてもよい。
【0097】
図19および図20は、変形例に係る三次元スキャナ100を説明するための図である。図19に示すように、レンズ81の重さを「m」、バネ55aおよびバネ55bのバネ定数の合計を「k」、レンズ81の所定方向に対する傾斜角度を「θ」、傾斜方向の下向きにおけるレンズ81の移動量を「X」とする。レンズ81の重力は「F=mg」になるため、レンズ81に掛かる重力の傾斜方向の下向きの成分は「F=mgsinθ」になる。レンズ81に掛かるバネ55aおよびバネ55bの力は「F=kX」になる。このため、傾斜方向の下向きにおけるレンズ81の移動量は、「X=mgsinθ/k」になる。
【0098】
このように、レンズ81の傾斜角度に応じて、「X=mgsinθ/k」の分だけ、レンズ81が傾斜方向の下向きに移動する。そこで、図20に示すように、変形例に係る三次元スキャナ100においては、ハンドピース70は、「レンズ制御部」の一例として、「X=mgsinθ/k」の分だけ、レンズ81を傾斜方向の上向きに移動させる移動機構200を備える。
【0099】
移動機構200は、リニアスライダ201,202と、円盤230と、リンク211,212と、バネ220と、支持部240と、バランスウェイト250とを備える。リニアスライダ201は、レンズ駆動部80を移動可能に支持する。リニアスライダ202は、カウンタウェイト駆動部90を移動可能に支持する。リンク211は、レンズ駆動部80と円盤230とを接続する。この例では、円盤230は、リンク211が傾斜方向の下向きに移動することに伴い反時計回りに回転する。リンク212は、カウンタウェイト駆動部90と円盤230とを接続する。この例では、円盤230は、リンク212が傾斜方向の下向きに移動することに伴い時計回りに回転する。バランスウェイト250は、支持部240を介して円盤230に接続されている。
【0100】
上述のように構成された移動機構200によれば、ハンドピース70の傾斜角度に関わらず、レンズ駆動部80とカウンタウェイト駆動部90とが、リンク211,212および円盤230によって釣り合う。また、レンズ駆動部80およびカウンタウェイト駆動部90の各々に対しては、相対する方向にバネ220による同等の力が与えられるため、ハンドピース70が水平状態であってもレンズ駆動部80およびカウンタウェイト駆動部90の位置関係が安定する。
【0101】
但し、レンズ駆動部80の内部においては、レンズ81が「X=mgsinθ/k」の分だけ傾斜方向の下向きに移動するため、レンズ81を傾斜方向の上向きに移動させる必要がある。この点、支持部240を介して円盤230に接続されたバランスウェイト250の重みによって、円盤230が時計回りに回転することで、レンズ駆動部80がレンズ81とともに「X=mgsinθ/k」の分だけ傾斜方向の上向きに移動する。
【0102】
このように、変形例に係る三次元スキャナ100は、レンズ81の傾斜角度の変化に応じて、レンズ81を「X=mgsinθ/k」の分だけ傾斜方向の上向きに移動させることができるため、レンズ81の往復運動の中心位置を、レンズ81の傾斜角度が変化する前の位置に戻すことができる。
【0103】
なお、三次元スキャナ100が適用される医療用診療装置としては、口腔内や外耳内、または胃や腸などの消化器を撮影する医療用のカメラが適用されてもよい。この場合、リニアモータの可動子に保持する物体としてカメラのレンズを適用し、別の可動子にカウンタウェイトを適用してもよい。
【0104】
また、三次元スキャナ100が適用される医療用診療装置としては、顕微鏡が適用されてもよい。この場合、リニアモータの可動子に保持する物体として顕微鏡内のレンズを適用し、別の可動子にカウンタウェイトを適用してもよい。
【0105】
さらに、三次元スキャナ100が適用される医療用診療装置としては、レーザー光線を用いて図などの対象物を指し示すレーザーポインタや歯を切削するレーザー装置が適用されてもよい。この場合、リニアモータの可動子に保持する物体としてレンズを適用し、別の可動子にカウンタウェイトを適用してもよい。
【0106】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。なお、実施の形態で例示された構成および変形例で例示された構成は、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0107】
10 プローブ、20 接続部、30 光学計測部、40 制御装置、41 演算部、42 記憶部、43 制御プログラム、45 電源、50 ディスプレイ、51a,51b ヨーク、52a,52b コイル、53a,53b 磁石、55a,55b,220 バネ、56a,56b ブロック、57a,57b レール、60,60a,60b,65 リニアガイド、66 反射部、70 ハンドピース、71 光学センサ、72 プリズム、75 投影光発生部、77 ハウジング、80 レンズ駆動部、81 レンズ、82 エンコーダ、82A 検出部、82B 移動部、82a スケール部、82b インデックス部、85,85a,85b,95 磁気回路構成、90 カウンタウェイト駆動部、91 カウンタウェイト、99 対象物、100 三次元スキャナ、200 移動機構、201,202 リニアスライダ、211,212 リンク、230 円盤、240 支持部、250 バランスウェイト、500 連結収容部、501 第1収容部、502 第2収容部。
図1
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