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特開2024-168575患者情報計測システム及び患者情報計測方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168575
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】患者情報計測システム及び患者情報計測方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20240101AFI20241128BHJP
【FI】
G06Q50/22
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085379
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】390039985
【氏名又は名称】パラマウントベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】清水 和也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀明
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】 地域包括ケアシステムに好適な患者情報計測システム及び患者情報計測方法等の提供。
【解決手段】 患者情報計測システムは、地域包括ケアにおける在宅患者、及び施設に入居する複数の施設患者を含む患者の位置情報を含む患者情報を取得する患者情報取得部と、在宅患者の位置情報に基づいて、地図上に在宅患者の患者情報を表示し、且つ、複数の施設患者の位置情報に基づいて、地図上に複数の施設患者の患者情報に関する統計情報を表示する処理を行う表示処理部と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地域包括ケアにおける在宅患者、及び施設に入居する複数の施設患者を含む患者の位置情報を含む患者情報を取得する患者情報取得部と、
前記在宅患者の前記位置情報に基づいて、地図上に前記在宅患者の前記患者情報を表示し、且つ、前記複数の施設患者の前記位置情報に基づいて、前記地図上に前記複数の施設患者の前記患者情報に関する統計情報を表示する処理を行う表示処理部と、
を含む患者情報計測システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記在宅患者の前記患者情報と、前記複数の施設患者の前記患者情報に基づいて、前記在宅患者及び前記施設の優先度を判定する判定処理部をさらに含む患者情報計測システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記判定処理部は、
前記患者情報のうち異常が発生している項目数を表す異常数、及び、異常が発生している人数である異常人数に基づいて、前記在宅患者の前記優先度及び前記施設の前記優先度を判定する患者情報計測システム。
【請求項4】
請求項2において、
前記在宅患者及び前記複数の施設患者の少なくとも一部に関する作業を行うスタッフの位置情報を含むスタッフ情報を取得するスタッフ情報取得部を含み、
前記判定処理部は、
前記在宅患者の前記優先度、前記施設の前記優先度、及び前記スタッフの前記位置情報に基づいて、前記スタッフに推奨される訪問ルートを判定する患者情報計測システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記在宅患者及び前記複数の施設患者の少なくとも一部に関する作業を行うスタッフの位置情報を含むスタッフ情報を取得するスタッフ情報取得部を含み、
前記表示処理部は、
前記スタッフの前記位置情報に基づいて、前記地図上に前記スタッフ情報を表示する処理を行う患者情報計測システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記在宅患者の前記患者情報と前記スタッフの前記位置情報に基づいて、前記スタッフが前記在宅患者の対応を行った場合の作業時間である第1作業時間を求める処理、及び、前記複数の施設患者の前記患者情報と前記スタッフの前記位置情報に基づいて、前記スタッフが前記施設の対応を行った場合の作業時間である第2作業時間を求める処理の少なくとも一方を行う判定処理部を含む患者情報計測システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記判定処理部は、
前記スタッフが複数のスタッフを含む場合に、前記複数のスタッフのそれぞれについて、前記第1作業時間及び前記第2作業時間の少なくとも一方を求めることによって、前記複数のスタッフから、前記患者の前記対応に適した前記スタッフを選択する処理を行う患者情報計測システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記判定処理部は、
前記患者情報に基づいて、前記患者に関する作業の内容である作業内容を求め、
前記作業内容と、前記複数のスタッフのそれぞれの職種を表す職種情報と、前記職種ごとに実行可能な作業とに基づいて、前記複数のスタッフから、前記患者の前記対応に適した前記スタッフを選択する処理を行う患者情報計測システム。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項において、
前記患者と、前記患者の生体情報または環境情報を出力するセンサを関連付けた情報である患者センサ情報を記憶する記憶部と、
前記センサの位置を表すセンサ位置情報と、前記患者情報に含まれる前記位置情報との比較処理を行い、前記センサ位置情報と前記位置情報が所定以上異なる場合にアラート情報を出力する報知処理部を含む患者情報計測システム。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか一項において、
前記患者情報は、
前記患者の体動に基づいて取得された睡眠状態情報、呼吸情報、心拍情報及び排泄情報の少なくとも1つを含む患者情報計測システム。
【請求項11】
請求項10において、
前記患者情報は、
前記患者の周辺に配置された環境センサに基づいて取得された温度情報、湿度情報、暑さ指数、照度情報、二酸化炭素情報の少なくとも1つを含む患者情報計測システム。
【請求項12】
地域包括ケアにおける在宅患者、及び施設に入居する複数の施設患者を含む患者の位置情報を含む患者情報を取得し、
前記在宅患者の前記位置情報に基づいて、地図上に前記在宅患者の前記患者情報を表示し、
前記複数の施設患者の前記位置情報に基づいて、前記地図上に前記複数の施設患者の前記患者情報に関する統計情報を表示する、
患者情報計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者情報計測システム及び患者情報計測方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサによって取得されたセンサ情報を表示する種々の手法が知られている。例えば特許文献1には、センサが取得したセンサ情報を、センサ位置と連動させて地図上に表示させる手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/179232号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地域包括ケアシステムに好適な患者情報計測システム及び患者情報計測方法等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、地域包括ケアにおける在宅患者、及び施設に入居する複数の施設患者を含む患者の位置情報を含む患者情報を取得する患者情報取得部と、前記在宅患者の前記位置情報に基づいて、地図上に前記在宅患者の前記患者情報を表示し、且つ、前記複数の施設患者の前記位置情報に基づいて、前記地図上に前記複数の施設患者の前記患者情報に関する統計情報を表示する処理を行う表示処理部と、を含む患者情報計測システムに関係する。
【0006】
本開示の他の態様は、地域包括ケアにおける在宅患者、及び施設に入居する複数の施設患者を含む患者の位置情報を含む患者情報を取得し、前記在宅患者の前記位置情報に基づいて、地図上に前記在宅患者の前記患者情報を表示し、前記複数の施設患者の前記位置情報に基づいて、前記地図上に前記複数の施設患者の前記患者情報に関する統計情報を表示する、患者情報計測方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】患者情報計測システムの構成例である。
図2】患者情報計測システムを含む情報処理システムの構成例である。
図3】サーバシステムの構成例である。
図4】管理端末装置の構成例である。
図5】情報処理システムの例、及び各装置のユーザの関係を示す図である。
図6】患者用装置の具体例である。
図7】患者端末装置の構成例である。
図8A】在宅患者の患者情報のデータ構成例である。
図8B】施設患者の患者情報のデータ構成例、及び統計情報の例である。
図9】スタッフ端末装置の構成例である。
図10】スタッフ情報のデータ構成例である。
図11】本実施形態の処理を説明するシーケンス図である。
図12】サーバシステムの処理を説明するフローチャートである。
図13】表示処理部が表示させる表示画面の例である。
図14】表示処理部が表示させる施設患者に関する施設詳細画面の例である。
図15】情報処理システムの例、及び各装置のユーザの関係を示す図である。
図16】表示処理部が表示させる表示画面の例、及び患者の移動操作の例である。
図17】アラート報知処理を説明するフローチャートである。
図18】作業時間の推定処理を説明するフローチャートである。
図19】スタッフによる過去の業務履歴の例である。
図20】業務履歴から求められる統計値の例である。
図21】表示処理部が表示させる表示画面の例である。
図22】表示処理部が表示させる表示画面の例である。
図23】スタッフによる過去の業務履歴の例である。
図24】スタッフによる業務履歴であって、作業時間が不適切な場合の例である。
図25】賃金の承認処理を説明するフローチャートである。
図26】情報処理システムの例、及び各装置のユーザの関係を示す図である。
図27】スタッフ評価処理を説明するフローチャートである。
図28】依頼スタッフの決定処理を説明するフローチャートである。
図29】介護スタッフの業務範囲の例である。
図30】医療スタッフの業務範囲の例である。
図31】スタッフによる過去の業務履歴の例である。
図32】表示処理部が表示させる表示画面の例である。
図33】訪問要否の判定処理を説明するフローチャートである。
図34】表示処理部が表示させる表示画面の例である。
図35】表示処理部が表示させる表示画面の例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について図面を参照しつつ説明する。図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本開示の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.システム構成例
図1は、本実施形態に係る患者情報計測システム10の構成例である。患者情報計測システム10は、例えば患者情報取得部11と、表示処理部12を含む。ただし、患者情報計測システム10の構成は図1に限定されず、一部の構成を省略する、他の構成を追加する等の種々の変形実施が可能である。
【0010】
患者情報取得部11は、地域包括ケアにおける在宅患者、及び施設に入居する複数の施設患者を含む患者の位置情報を含む患者情報を取得する。患者情報は、患者の生体活動の状態を表す情報(以下、生体情報)と、患者の周辺環境を表す情報(以下、環境情報)を含んでもよい。各情報の詳細については後述する。
【0011】
表示処理部12は、在宅患者の位置情報に基づいて、地図上に在宅患者の患者情報を表示する処理を行う。また表示処理部12は、複数の施設患者の位置情報に基づいて、同じ地図上に複数の施設患者の患者情報に関する統計情報を表示する処理を行う。
【0012】
ここでの在宅患者とは、自宅でケアを受ける患者である。なお本実施形態では、地域包括ケアシステムによる訪問医療・訪問介護の必要性の高い患者を想定しているため、在宅患者とは家族と別々に暮らしている独居患者であってもよい。ただし、在宅患者が家族と同居する患者であり、専門家の助力を得るために訪問医療等を利用することも妨げられない。施設患者とは、複数人の患者が存在する施設に入居する患者である。施設患者は入居患者と言い換えてもよい。ここでの施設とは、ホスピスであってもよいし、高齢者専用集合住宅であってもよいし、複数人の患者が入居する他の態様の施設であってもよい。
【0013】
また統計情報とは、複数の施設患者のそれぞれから取得される患者情報(生体情報や環境情報)から統計的に求められる情報であり、図8Bを用いて後述する総異常値数(施設)や、総異常者数等を含む。統計情報の詳細については後述する。
【0014】
近年、医療、介護、生活支援等のケアを地域において包括的に実行する地域包括ケアシステムが知られている。地域包括ケアシステムでは、患者が自宅でケアを受ける場合もあれば、複数人の患者がいる施設でケアを受ける場合があるため、在宅患者と施設患者の両方を考慮する必要がある。この場合、在宅患者は、対象の場所(患者宅)に当該在宅患者以外の患者が存在しないことが想定されるのに対して、施設患者は、対象施設に他の患者も存在することが想定される。そのため、地図に対応付けて患者情報を表示することは患者の管理に有用であるが、施設患者の情報が1箇所に集中してしまう可能性がある。なお、夫婦の両方がケアを必要とする患者である例のように、患者宅にも複数の患者が存在する場合も考えられる。そこで本実施形態では、対象の場所に単一の患者のみが存在する場合、当該患者を在宅患者(独居患者)とし、対象の場所に複数の患者が存在する場合、当該患者を施設患者と定義する。従って本実施形態では、患者宅に複数の患者が存在する場合、当該患者宅は施設であり、当該複数の患者はそれぞれ施設患者として取り扱われる。
【0015】
その点、本実施形態の手法では、複数の施設患者の患者情報については、統計的に求められる統計情報が表示対象となる。従って、1つの地図上に在宅患者と複数の施設患者の情報をまとめて表示した場合であっても、分かりやすい態様での表示が可能になる。結果として、例えば表示画面を閲覧した管理者に、患者の管理やスタッフの派遣等に関する判断を適切に実行させること等が可能になる。
【0016】
図2は、本実施形態に係る患者情報計測システム10を含む情報処理システム1の構成例を示す図である。情報処理システム1は、サーバシステム100、患者用装置200、スタッフ用装置300、管理端末装置400を含む。ただし、情報処理システム1の構成は図1に限定されず、一部の構成を省略する、他の構成を追加する等の種々の変形実施が可能である。例えば図2では、1人の在宅患者、及び2人の施設患者に対応する3つの患者用装置200を図示しているが、患者用装置200の数は患者の数に応じて変更されてもよい。スタッフ用装置300の数についても同様に、スタッフの数に応じて変更されてもよい。
【0017】
本実施形態に係る患者情報計測システム10は、サーバシステム100であってもよい。例えば以下で説明するサーバシステム100の患者情報取得部111が図1の患者情報取得部11に対応し、サーバシステム100の表示処理部114が図1の表示処理部12に対応する。ただし、患者情報計測システム10は、情報処理システム1に含まれる他の機器によって実現されてもよい。例えば、患者情報計測システム10は、管理端末装置400により実現されてもよいし、サーバシステム100と管理端末装置400の分散処理によって実現されてもよい。また患者情報計測システム10は、患者用装置200及びスタッフ用装置300の少なくとも一方を含んでもよい。以下では、患者情報計測システム10がサーバシステム100に対応する例について主に説明する。
【0018】
図2に示すサーバシステム100は、例えばネットワークを介して患者用装置200、スタッフ用装置300及び管理端末装置400と接続される。ここでのネットワークは、例えば、インターネット等の公衆通信網である。ただし、ネットワークは公衆通信網に限定されず、LAN(Local Area Network)等であってもよい。例えばサーバシステム100は、IEEE802.11の規格に従った通信を行ってもよい。ただし、各機器の間の通信手法については種々の変形実施が可能である。
【0019】
サーバシステム100は、1つのサーバであってもよいし、複数のサーバを含んでもよい。例えばサーバシステム100は、データベースサーバとアプリケーションサーバを含んでもよい。データベースサーバは、在宅患者の患者情報及び施設患者の患者情報を記憶する。またデータベースサーバは、図10を用いて後述するスタッフ情報、図19を用いて後述するスタッフの業務履歴(作業履歴)等、種々の情報を記憶することが可能である。アプリケーションサーバは、種々の処理を行う。アプリケーションサーバは、例えば図12等を用いて後述する処理を実行する。なおここでの複数のサーバは、物理サーバであってもよいし仮想サーバであってもよい。また仮想サーバが用いられる場合、当該仮想サーバは1つの物理サーバに設けられてもよいし、複数の物理サーバに分散して配置されてもよい。以上のように、本実施形態におけるサーバシステム100の具体的な構成は種々の変形実施が可能である。
【0020】
患者用装置200は、患者に対応付けて使用される1または複数の装置を含む。例えば患者用装置200は、図6を用いて後述するように、体動を検出する検出装置220、温度計230、湿度計240等を含んでもよい。患者用装置200は、これらの装置に基づいて患者の生体情報や環境情報を計測し、計測結果をサーバシステム100に送信する。生体情報や環境情報は患者情報の一部として用いられる。
【0021】
また患者用装置200は、図7を用いて後述するように、患者の周辺に配置される患者端末装置210を含んでもよい。患者端末装置210は、例えばスマートフォンやタブレット端末等の携帯端末装置である。ただし患者端末装置210は、PC(Personal Computer)、ヘッドセット、AR(Augmented Reality)グラスやMR(Mixed Reality)グラス等のウェアラブル装置等、他の装置であってもよい。患者用装置200の詳細については後述する。
【0022】
スタッフ用装置300は、患者に関する作業(ケア)を行うスタッフが使用する装置である。例えばスタッフ用装置300は、図9を用いて後述するように、スタッフが携帯するスタッフ端末装置310を含む。スタッフ端末装置310は、スマートフォン、タブレット端末であるが、PC等の他の機器であってもよい。例えばスタッフ用装置300は、位置情報を計測し、計測結果をサーバシステム100に送信する。スタッフの位置情報は、スタッフ情報の一部として用いられる。
【0023】
なお本実施形態のスタッフは、介護士やケアマネージャー等の介護関係者(以下、介護スタッフと記載)であってもよいし、看護師や医師等の医療従事者(以下、医療スタッフと記載)であってもよい。本実施形態のスタッフは、患者宅や施設等へ派遣されて派遣先の患者のケアを行う訪問介護、訪問医療を担当するスタッフである。
【0024】
管理端末装置400は、患者及びスタッフの管理を行う管理者によって使用される装置である。管理端末装置400は、PCであるが、スマートフォン、タブレット端末等であってもよい。管理端末装置400は、管理者の勤務場所に配置される。管理者の勤務場所は、例えばスタッフの派遣拠点である派遣ステーションや、病院等であってもよいし、他の施設であってもよい。また管理端末装置400は所定の場所に固定されるものには限定されず、管理者が携帯し持ち運ぶ機器であってもよい。
【0025】
図3は、サーバシステム100の詳細な構成例を示すブロック図である。サーバシステム100は、例えば処理部110と、記憶部120と、通信部130を含む。ただしサーバシステム100の構成は図3に限定されず、一部の構成を省略する、他の構成を追加する等の変形実施が可能である。
【0026】
本実施形態の処理部110は、下記のハードウェアによって構成される。ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、ハードウェアは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置や、1又は複数の回路素子によって構成できる。1又は複数の回路装置は例えばIC(Integrated Circuit)、FPGA(field-programmable gate array)等である。1又は複数の回路素子は例えば抵抗、キャパシター等である。
【0027】
また処理部110は、下記のプロセッサによって実現されてもよい。本実施形態のサーバシステム100は、情報を記憶するメモリと、メモリに記憶された情報に基づいて動作するプロセッサと、を含む。情報は、例えばプログラムと各種のデータ等である。メモリは、記憶部120であってもよいし、他のメモリであってもよい。プロセッサは、ハードウェアを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等、各種のプロセッサを用いることが可能である。メモリは、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリであってもよいし、レジスタであってもよいし、ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリはコンピュータによって読み取り可能な命令を格納しており、当該命令をプロセッサが実行することによって、処理部110の機能が処理として実現される。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットの命令でもよいし、プロセッサのハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。
【0028】
処理部110は、患者情報取得部111、スタッフ情報取得部112、判定処理部113、表示処理部114、報知処理部115を含んでもよい。
【0029】
患者情報取得部111は、患者情報を取得する。患者情報は、予め登録される情報と、センサ等を用いて計測される情報を含んでもよい。登録される情報は例えば患者宅や施設を表す位置情報や、氏名・年齢等の属性情報であり、計測される情報は例えば生体情報や環境情報である。なお位置情報は、患者用装置200(例えば患者端末装置210)によって計測されてもよい。これらの情報の具体例については後述する。
【0030】
例えば患者情報取得部111は、外部機器で登録された患者情報を取得する処理を行ってもよい。登録は、患者端末装置210、スタッフ端末装置310、管理端末装置400のいずれを用いて実行されてもよい。また患者情報取得部111は、患者用装置200を用いて計測された生体情報や環境情報を取得する処理を行う。例えば、患者情報取得部111は、通信部130を介した患者用装置200との通信制御を実行する。
【0031】
スタッフ情報取得部112は、スタッフ情報を取得する。スタッフ情報も、患者情報と同様に、予め登録される情報と、センサ等を用いて計測される情報を含んでもよい。登録される情報はスタッフの職種を表す職種情報等であり、計測される情報は位置情報等である。例えば、スタッフ情報取得部112は、通信部130を介したスタッフ用装置300等との通信制御を実行する。
【0032】
判定処理部113は、患者情報取得部111及びスタッフ情報取得部112が取得した情報に基づく判定処理を実行する。判定処理部113は、対象場所(患者宅、施設)への訪問を優先すべき度合いを表す優先度(優先スコア)、スタッフが対象場所へ訪問する際に推奨される訪問ルート等を判定する。また判定処理部113は、作業時間の予測や、予測結果に基づくスタッフ評価等、種々の処理を実行できる。具体的な処理については後述する。
【0033】
表示処理部114は、患者情報等を含む表示画面の表示処理を実行する。ここでの表示画面は、例えば管理端末装置400の表示部440に表示されてもよい。この場合、サーバシステム100の表示処理部114は、管理端末装置400に表示画面を表示させるために、表示画面そのものや、表示画面を生成するための情報の送信処理等を実行する。
【0034】
報知処理部115は、患者情報等に基づいて何らかの異常が検出された場合に、当該異常を報知する処理を実行する。ここでの報知は、例えば管理端末装置400において実行されることが想定されるが、患者端末装置210やスタッフ端末装置310において実行されてもよい。例えば報知処理部115は、対象機器に対して所定の態様による報知を指示する処理を実行する。ここでの報知は、表示部での表示、発光部(例えばLED)の発光、スピーカからの音の出力、モータ等の振動部の振動等、種々の態様により実現が可能である。また表示部を用いた報知を行う場合、報知処理部115が表示処理部114に具体的な表示内容を指示する処理を行ってもよい。
【0035】
記憶部120は、処理部110のワーク領域であって、種々の情報を記憶する。記憶部120は、種々のメモリによって実現が可能であり、メモリは、SRAM、DRAM、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリであってもよいし、レジスタであってもよいし、磁気記憶装置であってもよいし、光学式記憶装置であってもよい。
【0036】
通信部130は、ネットワークを介した通信を行うためのインターフェイスであり、サーバシステム100が無線通信を行う場合、例えばアンテナ、RF(radio frequency)回路、及びベースバンド回路を含む。ただしサーバシステム100は有線通信を行ってもよく、その場合の通信部130は、イーサネットコネクタ等の通信インターフェイス及び、当該通信インターフェイスの制御回路等を含んでもよい。通信部130は、処理部110による制御に従って動作してもよいし、処理部110とは異なる通信制御用のプロセッサを含んでもよい。通信部130は、例えばIEEE802.11やIEEE802.3に規定された方式に従った通信を行ってもよい。ただし具体的な通信方式は種々の変形実施が可能である。
【0037】
図4は、管理端末装置400の詳細な構成例を示すブロック図である。管理端末装置400は、例えば処理部410と、記憶部420と、通信部430と、表示部440と、操作部450を含んでもよい。ただし管理端末装置400の構成は図4に限定されず、一部の構成を省略する、他の構成を追加する等の変形実施が可能である。
【0038】
処理部410は、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むハードウェアによって構成される。また処理部410は、プロセッサによって実現されてもよい。プロセッサは、CPU、GPU、DSP等、各種のプロセッサを用いることが可能である。管理端末装置400のメモリに格納された命令をプロセッサが実行することによって、処理部410の機能が処理として実現される。
【0039】
記憶部420は、処理部410のワーク領域であって、SRAM、DRAM、ROM等の種々のメモリによって実現される。
【0040】
通信部430は、ネットワークを介した通信を行うためのインターフェイスであり、例えばアンテナ、RF回路、及びベースバンド回路を含む。通信部430は、例えばネットワークを介して、サーバシステム100との通信を行う。通信部430は、例えばIEEE802.11の規格に準拠した無線通信をサーバシステム100との間で実行してもよい。
【0041】
表示部440は、種々の情報を表示するインターフェイスであり、液晶ディスプレイであってもよいし、有機ELディスプレイであってもよいし、他の方式のディスプレイであってもよい。表示部440は、例えば図13等を用いて後述する各種画面を表示する。操作部450は、ユーザ操作を受け付けるインターフェイスである。操作部450は、マウスやキーボードであってもよいし、他の操作インターフェイスであってもよい。また表示部440と操作部450は、一体として構成されるタッチパネルであってもよい。
【0042】
図5は、本実施形態に係る情報処理システム1の具体例、及び、各装置を使用するユーザの関係を示す図である。図5では、患者として在宅患者である患者A,患者Bと、施設患者である患者C及び患者Dが例示されている。患者Aと患者Bは、それぞれが自宅でケアを受ける。患者C及び患者Dは同じ施設である高齢者集合住宅に入居している。
【0043】
また図5ではスタッフとして、訪問介護または訪問医療を行うスタッフA及びスタッフBが例示されている。スタッフA及びスタッフBは、例えば自動車等の移動手段により患者宅、施設、派遣ステーション等の間を移動する。また管理者は、派遣ステーション等の管理施設において管理業務を実行する。なお上述したように、管理者は管理端末装置400を携帯した状態で移動可能であってもよい。従って、管理者が管理業務を実行する場所は、管理者の移動に伴って変更されてもよい。
【0044】
図5に示すように、患者A~患者Dのそれぞれに対応付けて、検出装置220や温度計230等の患者用装置200が設けられる。これらの患者用装置200は、定期的に生体情報や環境情報を計測するとともに、データ(計測結果)をサーバシステム100に送信する。サーバシステム100は、例えば計測結果である数値と正常範囲との比較処理を行うことで、生体情報や環境情報に異常がないか否かの判定処理を含む見守りを実行する。
【0045】
またスタッフA及びスタッフBは、それぞれがスタッフ端末装置310を携帯している。スタッフ端末装置310は、定期的に位置情報を検出し、検出結果をサーバシステム100に送信する。また各スタッフは、何らかの業務を行った場合、当該業務に関する情報(以下、業務情報とも表記する)をスタッフ端末装置310を用いて入力してもよい。スタッフ端末装置310は、スタッフにより入力された業務情報をサーバシステム100に送信する。
【0046】
サーバシステム100は、患者A~患者D、スタッフA、スタッフBからの情報に基づいて管理者向けのデータを管理端末装置400に送信する。例えば図13を用いて後述するように、サーバシステム100は、患者情報及びスタッフ情報を、各患者及びスタッフの位置情報に対応付けて地図上に表示するための画面情報を管理端末装置400に送信してもよい。
【0047】
管理端末装置400を用いて当該画面を閲覧した管理者は、患者の見守り及びスタッフの管理を実行する。例えば管理者は、患者に異常が発生しておりスタッフによる作業が必要であると判断した場合、スタッフA及びスタッフBに業務指示を行ってもよい。具体的には、管理端末装置400は、スタッフ端末装置310に管理者の指示内容を表す情報を送信する。
【0048】
業務指示を受けたスタッフは、訪問サービスを実行する。図5では、スタッフAが患者Aの患者宅を訪問し、スタッフBが患者C及び患者Dの入居する施設を訪問する例を示している。ただし後述するように、本実施形態の手法ではどのスタッフをどの場所に派遣するかに関する判断をサポートする画面が表示されるため、管理者は派遣先を柔軟に設定することが可能である。なお、スタッフは、スタッフ端末装置310を用いてサーバシステム100にアクセスすることによって、患者情報を閲覧可能であってもよい。このようにすれば、訪問時のケア内容を事前に検討する等、適切な対応をスタッフに促すことが可能になる。例えば、管理者やスタッフは、便もれが検出された場合にはケア内容がオムツ交換であると推定し、呼吸や心拍などの身体の異常が検出された場合は、ケア内容がバイタルの計測、人工呼吸器の調整、医師への連絡、救急車対応等であると推定できる。また本実施形態に係るシステム(例えばサーバシステム100)が、ケア内容を推定、提示してもよい。
【0049】
また、本実施形態の患者情報計測システム10が行う処理の一部又は全部は、プログラムによって実現されてもよい。患者情報計測システム10が行う処理とは、狭義にはサーバシステム100の処理部110が行う処理であるが、管理者端末装置400の処理部410が実行する処理であってもよい。また患者情報計測システム10が行う処理は、患者用装置200やスタッフ用装置300に含まれるプロセッサが実行する処理を含んでもよい。
【0050】
本実施形態に係るプログラムは、例えばコンピュータによって読み取り可能な媒体である非一時的な情報記憶媒体(情報記憶装置)に格納できる。情報記憶媒体は、例えば光ディスク、メモリーカード、HDD、或いは半導体メモリなどによって実現できる。半導体メモリは例えばROMである。処理部110等は、情報記憶媒体に格納されるプログラムに基づいて本実施形態の種々の処理を行う。即ち情報記憶媒体は、処理部110等としてコンピュータを機能させるためのプログラムを記憶する。コンピュータは、入力装置、処理部、記憶部、出力部を備える装置である。具体的には本実施形態に係るプログラムは、図12等を用いて後述する各ステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0051】
また本実施形態の手法は、以下の各ステップを含む患者情報計測方法に適用できる。患者情報計測方法は、地域包括ケアにおける在宅患者、及び施設に入居する複数の施設患者を含む患者の位置情報を含む患者情報を取得するステップと、在宅患者の位置情報に基づいて、地図上に在宅患者の患者情報を表示するステップと、複数の施設患者の位置情報に基づいて、当該地図上に複数の施設患者の患者情報に関する統計情報を表示するステップと、を含む。
【0052】
2.患者情報及びスタッフ情報の例
次に患者情報及びスタッフ情報の具体例について説明する。
【0053】
2.1 患者情報
図6は、患者用装置200のうち、患者に関する情報を計測するための装置の具体例を示す図である。図6に示すように、患者用装置200は、生体情報を計測する装置である検出装置220を含む。
【0054】
検出装置220は、例えば図6に示すように、ベッド610のボトムとマットレス620の間に設けられるシート状またはプレート状のデバイスである。検出装置220は、患者の睡眠に関する情報をセンシングするデバイスである。検出装置220は、圧力値を出力する圧力センサ(例えば空圧センサ)を含む。
【0055】
検出装置220は、ユーザが就床すると、マットレス620を介してユーザの体振動(体動、振動)を検知する。検出装置220は、検知した体振動に基づいて、呼吸数、心拍数、活動量、姿勢、覚醒/睡眠、離床/在床に関する情報を求める。なお、検出装置220は体振動を表すセンサデータを出力し、サーバシステム100等の他の装置が当該センサデータに基づいて呼吸数等の情報を求める処理を実行してもよい。以下では、検出装置220が呼吸数等の情報を出力する例について説明する。
【0056】
例えば検出装置200は、体動の周期性を分析し、ピーク周波数から呼吸数、心拍数を算出してもよい。周期性の分析は、例えばフーリエ変換等である。呼吸数は、単位時間あたりの呼吸の回数である。心拍数は、単位時間あたりの心拍の回数である。単位時間は、例えば1分である。また検出装置220は、サンプリング単位時間当たりに体振動を検出し、検出された体振動の回数を活動量として出力されてもよい。またユーザの離床時には、在床時に比べて検出される圧力値が減少するため、検出装置220は、圧力値やその時系列的な変化に基づいて離床/在床の判定を行ってもよい。ただし、離床/在床の判定手法はこれに限定されず、振動を検知する等の種々の変形実施が可能である。検出装置220は、ノンレム睡眠とレム睡眠の判定や、睡眠の深さの判定を行ってもよい。睡眠に関する判定は、呼吸数や心拍数に基づいて実行されてもよいし、体動の量(例えば活動量)に基づいて実行されてもよいし、この両方を用いて実行されてもよい。
【0057】
また検出装置220は、患者の動き出しに関する判定を行ってもよい。例えば検出装置220は、患者が在床状態から離床状態に移行した場合に、動き出しがあったと判定する。またより早い段階で動き出しの兆候を検出するという観点から、検出装置220は、患者が睡眠状態から覚醒状態に移行した場合に、動き出しがあったと判定してもよい。検出装置220は、動き出しの検出結果を生体情報としてサーバシステム100に出力してもよい。
【0058】
また患者の生体情報を検出するための患者用装置200は検出装置220に限定されない。例えば患者用装置200は、体温計、心電図、脈拍計(心拍計)、パルスオキシメータ、体組成計、聴診器を含んでもよい。この場合、患者用装置200は、体温、心電図、脈拍数(心拍数)、血中酸素飽和度、身長、体重、体脂肪、筋肉量、呼吸音等の情報を生体情報としてサーバシステム100に送信する。
【0059】
また生体情報を検出するための患者用装置200は、患者の排泄状態を検出する装置を含んでもよい。例えば患者用装置200は、オムツや衣類の内部に装着され、尿や便の有無を検出するセンサを含んでもよい。ここでのセンサは、例えば尿の有無による静電容量の変化を検出するセンサであってもよいし、尿や便の匂いを検出する臭気センサであってもよいし、他のセンサであってもよい。この場合、患者用装置200は、患者の排泄状態を表す排泄情報を生体情報としてサーバシステム100に送信する。また排泄状態を検出する装置は、オムツ等の内部に装着されるものに限定されず、トイレ内に配置される装置であってもよい。
【0060】
また図6に示すように、患者用装置200は、環境情報を計測する装置として温度計230、湿度計240を含む。温度計230は、患者の周辺の温度を検出する。湿度計240は、患者の周辺の湿度を検出する。温度計230及び湿度計240は、温度及び湿度を環境情報としてサーバシステム100に送信する。
【0061】
また患者の環境情報を検出するための患者用装置200は温度計230及び湿度計240に限定されない。例えば患者用装置200は、CO2測定装置、照度計等を含んでもよい。この場合、患者用装置200は、二酸化炭素濃度や照度等の情報を環境情報としてサーバシステム100に送信する。
【0062】
また患者の周辺にはスマートフォン等の患者端末装置210が設けられてもよい。患者端末装置210は、患者自身が使用してもよいし、患者の家族やスタッフが使用してもよい。
【0063】
図7は、患者端末装置210の構成例を示す図である。患者端末装置210は、処理部211、記憶部212、通信部213、表示部214、操作部215、撮像部216を含む。
【0064】
処理部211は、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むハードウェアによって構成される。また処理部211は、プロセッサによって実現されてもよい。記憶部212は、処理部211のワーク領域であって、SRAM、DRAM、ROM等の種々のメモリによって実現される。通信部213は、ネットワークを介した通信を行うためのインターフェイスである。表示部214は、種々の情報を表示するインターフェイスである。操作部215は、ユーザ操作を受け付けるインターフェイスである。
【0065】
撮像部216は、所定の撮像範囲を撮像することによって画像情報を出力するイメージセンサを有する。ここでの画像情報は、静止画像であってもよいし、動画像であってもよい。また画像情報は、カラーであってもよいし、モノクロであってもよい。
【0066】
本実施形態の患者情報は、患者端末装置210によって取得される情報を含んでもよい。例えば患者情報に含まれる位置情報は、患者端末装置210によって計測されてもよい。また患者情報は、対象の患者を撮像した画像情報(撮像画像)や、患者の発言やいびき等を録音した音声データ等を含んでもよい。
【0067】
図8A及び図8Bは患者情報のデータ構成を示す図である。図8Aは、在宅患者の患者情報の例である。図8Aに示すように、患者情報は、位置情報、体動情報、環境情報、排泄情報、総異常値数を含んでもよい。
【0068】
位置情報は、患者の位置を表す情報である。在宅患者の場合、患者宅の位置を表す位置情報が用いられる。位置情報は、例えば緯度や経度を用いて表される情報であってもよいし、住所や郵便番号等を用いて表される情報であってもよい。また位置情報は、特定の基準点からの距離及び方向を用いて表される情報であってもよい。例えば位置情報は、本実施形態のシステムに患者が追加された場合に、管理者またはスタッフによって登録される情報であってもよい。
【0069】
またここでの位置情報は、当該位置に対応する場所の属性を表す情報を含んでもよい。例えば、在宅患者の位置情報は、患者の位置を表す情報に加えて、当該位置が患者の自宅であることを表す情報を含んでもよい。また図8Bを用いて後述する施設患者の位置情報は、患者の位置を表す情報に加えて、当該位置が複数の施設患者を収容する施設であることを表す情報を含んでもよい。また自宅/施設を特定する情報は、位置情報とは異なる情報として管理されてもよい。
【0070】
また図8Aでは省略しているが、患者情報は位置情報以外に登録される種々の情報を含んでもよい。予め登録される情報としては、患者の氏名、性別、既往歴、服薬履歴等の情報が考えられる。また体組成計による自動計測が行われない場合、身長や体重等の情報が手動で設定されてもよい。また患者情報は、電子カルテの情報を含んでもよい。例えば患者情報は、電子カルテに含まれる血圧、血糖、SpO2、体温、心電図等の診断値や診断結果を含んでもよい。これらの情報は、管理者やスタッフが電子カルテに基づいて登録してもよいし、サーバシステム100等の機器が電子カルテを取得することによって自動的に登録してもよい。例えばサーバシステム100が電子カルテを取り扱うシステムと連携する場合、患者情報取得部111は電子カルテに基づいて患者情報を取得する。
【0071】
また以上では位置情報が予め登録される情報であるものとしたがこれには限定されない。例えば図7に示した患者端末装置210はGPS等のセンサ、Wi-Fi基地局との通信状態、5G等の移動通信の基地局との通信状態等に基づいて位置情報を検出してもよい。そして患者情報取得部111は、患者端末装置210が検出した位置情報を取得してもよい。また患者端末装置210以外の患者用装置200が位置情報を検出可能であってもよく、患者情報取得部111は、当該患者用装置200が検出した位置情報を取得してもよい。
【0072】
体動情報は、上述した検出装置220によって検出される情報であり、体動を表すセンサ出力そのものであってもよいし、呼吸数、心拍数、活動量、姿勢、覚醒/睡眠、離床/在床に関する情報であってもよいし、その両方であってもよい。また排泄情報は、上述したように患者の排泄状態を表す情報である。
【0073】
また図8Aには不図示であるが、患者情報は、上述した体温、心電図、脈拍数(心拍数)、血中酸素飽和度、身長、体重、体脂肪、筋肉量、呼吸音等の生体情報を含んでもよい。これらの情報は、上記の通り、電子カルテの情報に基づいて登録されてもよいし、患者用装置200によって計測されてもよい。
【0074】
環境情報は、患者の周辺環境の状態を表す情報である。環境情報は、上述したように温度、湿度、二酸化炭素濃度、照度等の情報を含む。
【0075】
総異常値数とは、患者情報に含まれる生体情報及び環境情報のうち、異常な値が取得された項目数を表す情報である。総異常値数は、例えば判定処理部113によって求められる。判定処理部113の処理の詳細については後述する。
【0076】
図8Bは、施設患者の患者情報のデータ構成を示す図である。図8Bに示すように、施設患者の患者情報は、位置情報、体動情報、環境情報、排泄情報、総異常値数を含んでもよい。
【0077】
図8A図8Bの比較から分かるように、施設患者を対象とする場合であっても、患者情報は在宅患者と同様のデータ形式を利用できる。ただし、施設患者の位置情報は、当該施設患者が入居する施設の位置を表す情報であり、同じ施設に入居する複数の施設患者で共通の情報となる。
【0078】
また図8Bに示したように、複数の施設患者のそれぞれについて取得される患者情報に基づいて、施設全体での特徴を表す統計情報が求められてもよい。ここでの統計情報は、例えば総異常値数(施設)、総異常者数、総患者数を含む。
【0079】
総異常値数(施設)とは、対象施設に入居する複数の施設患者のそれぞれについて求められた総異常値数(個人)の合計である。総異常値数(施設)は、施設全体として異常な生体情報や環境情報がどれだけ取得されているかを表す。総異常値数(施設)は、例えば判定処理部113によって求められる。
【0080】
総異常者数とは、生体情報や環境情報の項目のうち、一定数以上に異常が生じている患者の数を表す情報である。狭義には、生体情報や環境情報の項目のうち1つでも異常値が計測された患者の数が異常者数としてカウントされる。総異常者数は、例えば総異常値数と同様に判定処理部113によって求められる。
【0081】
総患者数は、現在対象の施設に入居している施設患者の数を表す情報である。総患者数は、例えば位置情報等と同様に予め登録される情報であってもよい。
【0082】
以上で説明したように、患者情報は、患者の体動に基づいて取得された睡眠状態情報、呼吸情報、心拍情報及び排泄情報の少なくとも1つを含む。睡眠状態情報は、睡眠/覚醒の何れかを表す情報であってもよいし、睡眠の深さを表す情報であってもよい。呼吸情報は、例えば上記の通り呼吸数である。ただし、呼吸情報は、呼吸数を求めるための波形情報(体動を表す波形)であってもよいし、呼吸数の変化量を表す情報であってもよい。心拍情報についても同様に、心拍数に限定されず、心拍数を求めるための情報、あるいは心拍数から求められる情報を含んでもよい。
【0083】
本実施形態の手法によれば、患者の状態(特に生体活動の状態)を表す情報が患者情報として収集、表示されるため、例えば地域包括ケアシステムにおいて各患者の容態を適切に見守ることや、スタッフに適切な対応を行わせることが可能になる。例えば、異常が検出された項目(異常を検出したセンサ)が明示されるため、管理者等にケア内容を推定させることが可能である。また、便もれよりも呼吸や心拍などの身体の異常がある場合の方が生命の危険性があり、早急に対応する必要があるといった緊急性に関する判断を管理者等に行わせることも可能である。結果として、例えば管理者は、身体の異常がある場合には対応に専門的な知識を有するスタッフが必要となる、といった適切なスタッフ選択等の判定を実行できる。なお、呼吸や心拍のみでは、計測の直前に運動していた等の対応の必要性が低い場合等でもセンサがアラートを発し、専門的な知識を有するスタッフを派遣してしまう場合が想定できる。そこで本実施形態では、患者が意識があるか意識がないかなど、事前にカメラで患者の状況を把握することにより、訪問する必要のないアラートでわざわざスタッフを派遣してしまうことなどが抑制されてもよい。必要性の低い訪問を抑制する手法については、図33図35を用いて後述する。
【0084】
また以上で説明したように、患者情報は、患者の周辺に配置された環境センサに基づいて取得された温度情報、湿度情報、暑さ指数、照度情報、二酸化炭素情報の少なくとも1つを含んでもよい。温度情報は、温度そのものであってもよいし、温度に基づく他の情報であってもよい。湿度情報についても同様である。暑さ指数は、例えば温度、湿度、周辺環境(日射や輻射熱等)に基づいて求められるWBGT(Wet Bulb Globe Temperature)であるが、他の指数が用いられてもよい。WBGTは、例えば熱中症の危険度合いの判定に有効である。照度情報は、例えばルクスを単位とする値であるが、他の情報であってもよい。二酸化炭素情報は、例えば患者の居室内の二酸化炭素濃度であるが、二酸化炭素に関連する他の情報であってもよい。
【0085】
本実施形態の手法によれば、患者の周辺環境を表す情報が患者情報として収集、表示されるため、例えば地域包括ケアシステムにおいて各患者の環境が適切に維持されているかを見守ることや、環境に問題が生じている場合にスタッフに適切な対応を行わせることが可能になる。
【0086】
2.2 スタッフ情報
スタッフ用装置300は、例えばスマートフォン等のスタッフ端末装置310を含む。ただしスタッフ用装置300は、ヘッドセット、ARグラスやウォッチ型デバイス等のウェアラブルデバイス等、他のデバイスを含んでもよい。
【0087】
図9は、スタッフ端末装置310の構成例を示す図である。スタッフ端末装置310は、処理部311、記憶部312、通信部313、表示部314、操作部315、撮像部316を含む。これらの構成は、例えば図7を用いて上述した患者端末装置210と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0088】
またスタッフ端末装置310は、位置情報を検出するセンサを含んでもよい。例えばスタッフ端末装置310は、GPS(Global Positioning System)等のGNSS(Global Navigation Satellite System)を用いて位置情報を取得してもよい。あるいはスタッフ端末装置310は、Wi-Fi基地局や、5G等の移動通信用の基地局との通信結果に基づく測位を行うことによって位置情報を検出してもよい。
【0089】
図10は、スタッフ情報のデータ構成例である。スタッフ情報は、位置情報、業務情報、異常患者までの距離、優先ルート等を含む。位置情報は、上記の通りスタッフ端末装置310によって計測され、サーバシステム100に送信される。
【0090】
業務情報は、スタッフが実行する業務内容を表す情報であり、業務開始時刻、業務終了時刻、対象患者、作業内容等の情報を含む。業務情報は、例えば図19等を用いて後述するように、過去に実行された業務履歴を表す情報であってもよい。また業務情報は、スタッフが実行予定の業務、実行中の業務に関する情報を含んでもよい。
【0091】
異常患者までの距離は、患者に異常が発生した場合に、スタッフの現在位置から当該患者の位置までの距離を表す情報である。異常患者までの距離は、例えば患者情報とスタッフ情報に基づいて判定処理部113が算出する。
【0092】
優先ルートは、対象のスタッフに優先される移動ルートを表す情報である。優先ルートは、スタッフと異常患者までの距離等に基づいて判定処理部113が算出する。優先ルートを求める処理の詳細については後述する。
【0093】
3.処理の詳細
図11は、本実施形態の処理を説明するシーケンス図である。なお図11では、在宅患者(例えば図5の患者A)、及び2人の施設患者(例えば図5の患者C、患者D)に対応する患者用装置200を図示しているが、患者の人数はこれに限定されない。また図11では1つのスタッフ用装置300を図示しているが、スタッフ数もこれに限定されない。
【0094】
この処理が開始されると、患者用装置200及びスタッフ用装置300からの情報がサーバシステムに送信される。具体的には、ステップS101において、在宅患者の患者用装置200は生体情報及び環境情報を計測する。ステップS102において、在宅患者の患者用装置200は計測結果を患者情報の一部として送信する。
【0095】
同様に、ステップS103において、施設患者の患者用装置200は生体情報及び環境情報を計測する。ステップS104において、施設患者の患者用装置200は計測結果を患者情報の一部として送信する。ステップS105-S106についても同様である。
【0096】
ステップS107において、スタッフ端末装置310は、スタッフ情報を取得する。ここでのスタッフ情報は、位置情報であってもよいし、業務情報であってもよい。ステップS108において、スタッフ端末装置310は、スタッフ情報をサーバシステム100に送信する。
【0097】
なおステップS101-S108に示した処理はこの順序で実行されるものには限定されない。例えば、患者用装置200ごとに、情報の計測タイミングや情報の送信タイミングがスケジューリングされており、患者用装置200はスケジュールに従ったタイミングで計測処理や送信処理を実行してもよい。また計測周期と送信周期は同じである必要はなく、一定期間に行われた複数回の計測結果がまとめて送信されてもよい。また計測対象となる情報に応じて、異なる計測周期が設定されてもよい。例えば検出装置220、温度計230及び湿度計240は、それぞれの機器ごとに設定されたタイミングで計測結果をサーバシステム100に送信する。また各機器の情報が患者端末装置210に送信され、患者端末装置210が所定のスケジュールに従って計測結果をサーバシステム100に送信してもよい。
【0098】
スタッフ情報についても取得、送信タイミングは種々の変形実施が可能である。例えば位置情報は、所定周期で取得、送信されてもよい。また業務情報は、スタッフが任意のタイミング(例えば業務終了直後や派遣ステーションに戻ったタイミング)で手動入力し、当該入力をトリガーとしてサーバシステム100への送信処理が実行されてもよい。
【0099】
ステップS109において、サーバシステム100(判定処理部113)は、収集した患者情報及びスタッフ情報に基づく処理を実行する。
【0100】
図12は、ステップS109におけるサーバシステム100の処理を説明するフローチャートである。まずステップS201において、判定処理部113は、患者情報に異常値が含まれるか否かを判定する。
【0101】
判定処理部113は、取得された在宅患者の患者情報、及び複数の施設患者に対応する施設の患者情報を対象として、患者情報として取得された生体情報や環境情報の数値と、正常範囲を比較する。例えばサーバシステム100の記憶部120は、生体情報や環境情報の項目毎に、正常な状態に対応する数値範囲を正常範囲として記憶してもよい。判定処理部113は、生体情報や環境情報の数値が正常範囲から外れる場合に、異常値であると判定する。
【0102】
患者情報において異常値が検出されなかった場合(ステップS201:No)、ステップS202以降の処理は省略され、図12に示す処理が終了する。
【0103】
少なくとも1つの異常値が検出された場合(ステップS201:Yes)、ステップS202において、判定処理部113は異常値が検出された患者(以下、異常患者)が在宅患者であるか否かを判定する。例えば判定処理部113は、患者情報の位置情報を読み込み、当該位置情報に含まれる自宅/施設を表す情報を参照することによってステップS202の判定処理を行ってもよい。
【0104】
異常患者が施設患者である場合(ステップS202:No)、ステップS203において、判定処理部113は、対象の施設に何人の異常患者がいるかを判定することによって総異常者数を求める。例えば判定処理部113は、処理対象としている施設に入居する複数の施設患者のそれぞれについて、生体情報又は環境情報に異常値が含まれるかに基づいて、異常患者か否かを判定する。そして判定処理部113は、処理対象施設において異常患者と判定された施設患者をカウントすることによって総異常値数を求める。
【0105】
また図12には不図示であるが、判定処理部113は、施設に入居している施設患者の総数である総患者数を求めてもよい。判定処理部113は、対象の施設から何人分の患者情報が取得されているかをカウントすることによって総患者数を求めることが可能である。あるいは、患者の入居及び退去が登録されることを考慮すれば、総患者数は都度求められるものではなく、登録内容に変更があったタイミングで算出、登録されてもよい。
【0106】
異常患者が在宅患者である場合(ステップS202:Yes)、ステップS204において、判定処理部113は、総異常者数を1に設定する。在宅患者を対象とする場合、患者宅には他の患者は存在しないと考えられるためである。なお上述したように、本実施形態における在宅患者は独居患者であり、患者宅に夫婦等の複数の患者が存在する場合、当該複数の患者は施設患者と判定される。
【0107】
ステップS205において、判定処理部113は、総異常値数を算出する。例えば判定処理部113は、患者毎に異常と判定された項目数をカウントすることによって、患者毎の総異常値数を求める。これは図8Aに示した総異常値数、または、図8Bに示した総異常値数(個人)に対応する。在宅患者については、これにより総異常値数を求める処理が終了する。一方、施設患者を対象とする場合、図8Bに示したように施設全体としての異常値数を求める。例えば判定処理部113は、対象施設に入居する全ての施設患者を対象として、総異常値数(個人)を合算することによって総異常値数(施設)を求める。
【0108】
以上の処理によって、判定処理部113は、異常の有無や、異常がある場合の異常値の数、異常患者の数等を求められる。これらの情報を管理端末装置400の表示部440で表示することによって、管理者に有用な情報を表示することが可能である。
【0109】
ただし、管理者の判断をサポートするという観点から、判定処理部113は更なる情報を求めてもよい。例えば判定処理部113は、在宅患者の患者情報と、複数の施設患者の患者情報に基づいて、在宅患者及び施設の優先度を判定する。このようにすれば、管理者による個人宅や施設毎の優先度の判定をサポートできる。例えば、管理者によるスタッフの派遣順序等の判断を適切に行わせることが可能になる。
【0110】
ステップS206において、判定処理部113は、優先度を判定する。なお以下では優先度として数値データである優先スコアを求める例を説明するが、優先度は(大、中、小)、(有り、無し)等の段階的な情報であってもよい。
【0111】
例えば判定処理部113は、患者情報のうち異常が発生している項目数を表す異常数(総異常値数)、及び、異常が発生している人数である異常人数(総異常者数)の少なくとも一方に基づいて、在宅患者の優先度及び施設の優先度を判定してもよい。複数の施設患者に異常が発生している場合、対象としている施設では総異常値数や総異常者数の値が大きくなるため、優先度が高くなりやすい。従って本実施形態の手法によれば、自宅と施設における患者数の違いを考慮した優先度設定が可能になる。
【0112】
例えばステップS206において、判定処理部113は、在宅患者に関して、異常が発生している項目数を表す異常数(総異常値数)に基づいて優先度を判定してもよい。このようにすれば、異常の有無を項目毎にカウントすることによって、容易に優先度を求めることが可能になる。例えば、優先スコアとは、総異常値数そのものであってもよいし、値が取得された全項目数に対する総異常値数の割合であってもよいし、総異常値数を用いた他の情報であってもよい。
【0113】
また判定処理部113は、在宅患者に関して、異常が発生している患者数を表す総異常者数に基づいて優先度を判定してもよい。在宅患者を対象とする場合、ステップS203に示したように総異常者数は最大でも1に設定されるため、総異常者数を用いた優先度は極端に高い値にはなりにくい。
【0114】
また、判定処理部113は、在宅患者の重症度に基づいて、当該在宅患者の優先度を求めてもよい。ここでの重症度とは、例えば生体情報や環境情報の数値の正常範囲からの外れ度合いに基づいて求められてもよい。あるいは、項目毎に重要度が設定されており、判定処理部113は、重要度が高い項目で異常値が検出された場合、重要度が低い項目で異常値が検出される場合に比べて重症度が高いと判定してもよい。あるいは判定処理部113は、患者の既往歴や服薬履歴に基づいて重症度を判定してもよい。また判定処理部113は、総異常値数、総異常者数、及び重症度のうちの2以上に基づいて在宅患者の優先度を判定してもよい。
【0115】
また判定処理部113は、施設を対象とする場合にも、総異常値数に基づいて優先度を判定してもよい。この場合の総異常値数は、図8における総異常値数(施設)に対応する。また判定処理部113は、総異常者数に基づいて優先度を判定してもよい。施設を対象とする場合、総異常者数の上限は総患者数となるため、在宅患者を対象とする場合に比べて優先度の上限値が大きくなる。従って、施設を対象とする場合、患者宅(独居患者宅)に比べて優先度が高くなりやすい。
【0116】
例えば判定処理部113は、下式(1)に基づいて優先スコアを求めてもよい。以下のa、b、cは所与の定数である。ただし上述したように、優先スコアの算出においては、患者の属性(年齢、既往歴、要介護度)、異常値が検出された項目あるいはセンサの種類、異常値の正常範囲からの外れ度合い等に基づく重み付けが行われてもよい。
優先スコア=a×総異常者数+b×総異常値数+c ・・・(1)
【0117】
ステップS207において、判定処理部113は、在宅患者の優先度、施設の優先度、及びスタッフの位置情報に基づいて、スタッフに推奨される訪問ルートを判定する。このようにすれば、在宅患者及び施設の患者情報を考慮した優先度だけでなく、スタッフが訪問しやすいかという観点も考慮した管理が可能になる。
【0118】
例えば判定処理部113は、対象場所(患者宅、施設)の優先スコアが高いほど、またスタッフからの距離が近いほど、当該対象場所へスタッフを訪問させるべきであると判定する。例えば判定処理部113は、下式(2)に基づいて、訪問優先度を判定してもよい。なお本実施形態における優先度は、優先スコアであってもよいし、訪問優先度であってもよいし、この両方であってもよい。
訪問優先度=(優先スコア/訪問先とスタッフの距離) ・・・(2)
【0119】
例えば、患者宅Aの優先スコアが1であり、施設Aの優先スコアが5であった場合を考える。さらにあるスタッフが、患者宅Aまで3.5km、施設Aまで5kmの距離におり、いずれかの場所へ訪問が可能な状態にあるとする。この場合、距離として近いのは患者宅Aであるが、優先スコアが高いのは施設Aであるため、管理者が派遣順序に迷う可能性がある。
【0120】
その点、本実施形態の手法であれば、患者宅Aの訪問優先度は1/3.5=0.29であり、施設Aの訪問優先度は5/5=1である。従って、判定処理部113は、訪問優先度の高い施設Aを患者宅Aよりも優先して訪問する訪問ルートを出力することによって、スタッフの効率的な派遣をサポートすることが可能になる。
【0121】
また判定処理部113は、複数のスタッフがいる場合に、訪問先とスタッフの距離だけでなく、当該スタッフに関する情報に基づいて優先度を決定してもよい。例えば判定処理部113は、(1)スタッフの職種、(2)スタッフの評価、(3)スタッフが所持する物品の何れか1つまたは2以上の組み合わせに基づいて優先度を判定する。例えば、判定処理部113は、職種、評価、物品の各条件を満たすスタッフの優先度が、条件を満たさないスタッフの優先度に比べて高くなるように、優先度を求めてもよい。あるいは判定処理部113は、職種、評価、物品の条件を満たすスタッフを対象として優先度を求め、且つ、条件を満たさないスタッフを優先度の算出対象から除外してもよい。その他、上記(1)~(3)の条件を用いた処理の具体例については種々の変形実施が可能である。
【0122】
ここでスタッフの職種は、介護士、看護師、医師等の公的な資格に基づく種別であってもよいし、訪問サービスを行う事業者の内部資格等に基づく種別であってもよい。例えば介護士、看護師、及び医師は、それぞれが実行可能な対応が異なるため、訪問先とスタッフの距離が近くとも、当該スタッフが患者の対応を行うことが好ましくない状況も考えられる。その点、判定処理部113がスタッフの職種を考慮して優先度を求めることによって、適切な職種のスタッフの派遣を管理者の促すことが可能になる。なお職種の詳細について図29図30を用いて後述する。
【0123】
またスタッフの評価とは、スタッフが訪問サービスを適切に実行できるか否かの尺度である。例えばスタッフ評価は、図27を用いて後述するように、予測対応時間に基づいて判定処理部113が算出してもよい。あるいは、スタッフ評価は管理者が行ってもよいし、患者やその家族が行ってもよい。例えば訪問先とスタッフの距離が近くとも、当該スタッフの評価が低い場合に優先度を低く算出することによって、適切なスキルを有したスタッフの派遣を管理者に促すことが可能になる。なおここでのスタッフ評価は、対応内容に応じて算出されてもよい。例えばあるスタッフについて、温度異常への対応評価は高いが、血圧異常への対応評価が低いといった評価結果が取得されてもよい。この場合、発生した異常と、当該異常に関するスタッフ評価を考慮して優先度を求めることによって、より適切なスタッフの派遣を管理者に促すことが可能になる。
【0124】
またスタッフが所持する物品とは、スタッフが携帯している計測用の機器(血圧計等)であってもよいし、治療用の機器(人工呼吸器等)であってもよいし、消耗品(オムツ、水、吸引用酸素等)であってもよい。患者の異常内容によっては、これらの物品を所持していなければ異常に対応することができない可能性がある。従って判定処理部113は、発生した異常から推定される必要な物品と、スタッフが所持している物品とを考慮して優先度を求めることによって、適切な物品を所持しているスタッフの派遣を管理者に促すことが可能になる。なお物品の具体例や管理端末装置400の表示部440に表示される画面例については、図22を用いて後述する。
【0125】
図11に戻って説明を続ける。図12を用いて説明したステップS109の処理に基づいて、ステップS110において、表示処理部114は、管理者に閲覧させる表示画面を生成し、当該表示画面の表示を管理端末装置400に指示する。ステップS111において、管理端末装置400の表示部440は、表示処理部114の指示に基づいて表示画面を表示する。
【0126】
図13は、管理端末装置400の表示部440に表示される画面の例である。図13に示すように、本実施形態の表示画面は、地図情報の上に、在宅患者の患者情報に対応するオブジェクトOB1と、複数の施設患者が入居する施設に対応するオブジェクトOB2を同時に表示する。なお、オブジェクトOB1及びOB2に対応する破線の枠は、各オブジェクトの範囲を示す便宜上のものであり、実際の表示画面で当該枠が表示される必要は無い。この点は後述するオブジェクトOB3及びOB4についても同様であるし、図16等の他の図においても同様である。
【0127】
表示処理部114は、オブジェクトOB1を、在宅患者の患者情報に含まれる位置情報によって表される地図上の位置に表示する処理を行う。例えばオブジェクトOB1は、ピン形状のオブジェクトを含み、当該オブジェクトの根元の位置が、在宅患者の位置情報に対応する位置に設定される。なお図5の例では、オブジェクトOB1は、ピンの示す位置が、「独居高齢者 Aさん宅」に対応することを表すテキストを含む。
【0128】
さらにオブジェクトOB1は、在宅患者の患者情報として、異常検知数(総異常値数)を示すオブジェクトを表示する。図5の例ではオブジェクトOB1は、在宅患者であるAさんの生体情報や環境情報から、1件の異常値が検出された(総異常値数=1)ことを示す情報を含む。
【0129】
これにより、在宅患者の状態を、当該在宅患者の位置と合わせて分かりやすく提示することが可能になる。在宅患者の患者宅には他の患者がいないことが想定されるため、オブジェクトOB1に含まれる情報は、対象の在宅患者のみの情報となる。
【0130】
また表示処理部114は、オブジェクトOB2を、複数の施設患者の患者情報に含まれる位置情報によって表される地図上の位置に表示する処理を行う。例えばオブジェクトOB2は、建物を表すオブジェクトを含み、当該オブジェクトが、複数の施設患者の位置情報に対応する位置に設定される。複数の施設患者の位置情報とは、当該複数の施設患者が入居する施設の位置を表す情報であり、図8Bにおける「施設の位置情報」に対応する。なお図5の例では、オブジェクトOB2は、対象施設が「施設A」であることを表すテキストを含む。
【0131】
さらにオブジェクトOB2は、複数の施設患者の患者情報に基づく統計情報として、異常人数の合計値(総異常者数)を示すオブジェクトを表示する。図5の例ではオブジェクトOB2は、対象の施設において5人の患者に異常が検出されたことを示す情報を含む。またオブジェクトOB2は、統計情報として、検出された異常値の施設全体での合計値である総異常値数(施設)を含んでもよい。図5の例ではオブジェクトOB2は、対象の施設において8件の異常値が検出されたことを示す情報を含む。
【0132】
またオブジェクトOB2は、対象の施設に入居している患者の総数(総患者数)を含んでもよい。図5の例ではオブジェクトOB2は、対象の施設に5人の患者が入居していることを示す情報を含む。
【0133】
図13に示すように、施設を対象とする場合、在宅患者とは異なる情報を表示することによって、対象場所にいる患者数が異なることが想定される場合であっても、各対象場所に適した表示を位置情報に対応付けて実行することが可能になる。従って、地図上のどこに、どのような患者がいるかという情報を管理者等にわかりやすく提示することが可能になる。
【0134】
また図13に示すように、表示処理部114は、スタッフの位置情報に基づいて、地図上にスタッフ情報を表示させる処理を行う。このようにすれば、患者の位置及び状態を表す情報に加えて、当該患者に関する作業を行うスタッフの情報も同じ地図上に表示することが可能になる。患者とスタッフの位置関係を分かりやすく表示できるため、スタッフ派遣等に関する管理者の判断を適切にサポートすることが可能になる。
【0135】
図13の例では、表示処理部114は、スタッフAに対応するオブジェクトOB3と、スタッフBに対応するオブジェクトOB4を地図情報上に表示する処理を行う。
【0136】
表示処理部114は、オブジェクトOB3を、スタッフAのスタッフ情報に含まれる位置情報によって表される地図上の位置に表示させる処理を行う。例えばオブジェクトOB3は、スタッフAの移動手段である自動車を表すオブジェクトを含み、当該オブジェクトの位置が、スタッフAの位置情報に対応する位置に設定される。位置情報は、スタッフAが携帯するスタッフ端末装置310のGPS等を用いて逐次更新される。従って表示処理部114は、位置情報の更新に基づいて、オブジェクトOB3の画面上での位置を更新する処理を行ってもよい。また時系列の位置情報に基づいてスタッフが移動していると判定された場合、表示処理部114は移動方向を表示させる処理を行ってもよい。
【0137】
また図13に示すように、オブジェクトOB3は、スタッフAの業務情報を含んでもよい。ここでの業務情報は、スタッフAの業務予定を表す情報である予定ルートである。図13の例では、スタッフAは、オブジェクトOB1に対応する患者Aに関する作業を行う予定である。従って表示処理部114は、当該業務を表す「予定ルート:Aさん自宅(距離3.5km)」というテキストを含むオブジェクトOB3を表示する。なおここでの「距離3.5km」は、スタッフの位置情報と、Aさんの位置情報から求められる距離情報であり、直線距離を表してもよいし、移動経路に沿った距離を表してもよい。移動経路に沿った距離を用いる場合、例えば判定処理部113は、道路の情報を含む地図情報に基づいて距離情報を求める処理を行う。
【0138】
また上式(1)や(2)を用いて上述したように優先スコア及び訪問優先度が求められる場合、表示処理部114は、スタッフ情報として優先ルートを表示する処理を行ってもよい。ここでの優先ルートとは、訪問優先度の高いルートを表す。例えば上述の例では、距離として近いのは患者宅Aであるが、訪問優先度が高いのは総異常値数(施設)や総異常者数の値が大きい施設Aである。従って、表示処理部114は、オブジェクトOB3において、「おすすめルート:施設A(距離5.0km)」というテキストを優先ルートとして表示させる処理を行う。
【0139】
また表示処理部114は、オブジェクトOB4を、スタッフBのスタッフ情報に含まれる位置情報によって表される地図上の位置に表示させる処理を行う。例えばオブジェクトOB4は、スタッフBの移動手段である自動車を表すオブジェクトを含み、当該オブジェクトの位置が、スタッフBの位置情報に対応する位置に設定される。
【0140】
図13の例では、スタッフBのスタッフ情報に含まれる業務情報として、スタッフBが業務の目的地に到達しており、当該目的地において作業中であるとの情報が取得されている。ここでの目的地とは、例えば患者宅や施設であり、図13においてオブジェクトOB4の近傍に表示されているピン形状のオブジェクトで表される位置であってもよい。この場合、表示処理部114は、「業務対応中」というテキストを業務情報として表示する。また目的地に到達していることを表すために、表示処理部114は、チェッカーフラッグを含むオブジェクトOB4を表示させてもよい。
【0141】
なお上述したように、図13に示した画面では、施設に関する情報(オブジェクトOB2)として、複数の施設患者に関する統計情報が表示される。統計情報を用いることによって情報量が抑制されるため、一覧性の高い画面表示が可能である。一方で、管理者やスタッフは、施設に入居する個別の患者の情報を知りたいと考える場合もある。従って表示処理部114は、ユーザ操作に基づいて、施設に入居する複数の施設患者のそれぞれに関する情報を個別に表示する処理を行ってもよい。
【0142】
図14は、複数の施設患者の情報を表示する施設詳細画面の例である。例えば表示処理部114は、図13に示す画面においてオブジェクトOB2の選択操作が行われたことをトリガーとして、図14に示す施設詳細画面に遷移する処理を行う。
【0143】
図14に示すように、施設詳細画面は、対象の施設に入居している複数の施設患者のそれぞれについての患者情報を含む。図14の例では、それぞれAAAさん、BBBさん、CCCさん、DDDさんという氏名の4人の施設患者の患者情報が表示されている。各患者情報は、例えば睡眠状態情報(OB5)、心拍情報(OB6)、呼吸情報(OB7)、温度情報(OB8)、湿度情報(OB9)、異常の有無(OB10)を表すオブジェクトOB5~OB10を含む。
【0144】
例えば、オブジェクトOB5は、対象患者が睡眠状態の場合に枠形状が円形となり、覚醒状態の場合に枠形状が略矩形となるオブジェクトである。オブジェクトOB6は、ハート形状のオブジェクト、及び1分あたりの心拍数を表す数値を含む。オブジェクトOB7は、肺形状のオブジェクト、及び1分あたりの呼吸数を表す数値を含む。オブジェクトOB8は、温度計を表すオブジェクト、及び温度を表す数値を含む。オブジェクトOB9は、湿度計を表すオブジェクト、及び湿度を表す数値を含む。
【0145】
また図14の例では、AAAさんは温度及び湿度が正常範囲よりも高い。またCCCさんは、心拍数、呼吸数が正常範囲よりも高い。従って、AAAさん及びCCCさんの患者情報には異常値が含まれている。この場合、表示処理部114は、異常値が検出された患者であるAAAさん及びCCCさんのオブジェクトOB10を第1態様で表示し、異常値が検出されていない患者であるBBBさん及びDDDさんのオブジェクトOB10を第1態様とは異なる第2態様で表示する。第1態様と第2態様は、色、大きさ、明滅のいずれかが異なってもよいし、これらの2以上の組み合わせが異なってもよいし、他の要素が異なってもよい。また表示処理部114は、異常値の有無に加えて、患者に応じて表示態様を変更してもよい。例えば表示処理部114は、特定の患者に対しては、異常値が検出された場合であっても、オブジェクトOB10を第2態様で表示する(アラート通知を行わない)処理を行ってもよい。ここでの特定の患者は、管理者等が決定してもよいし、属性(既往歴等)に基づいて自動的に決定されてもよい。その他、施設詳細画面の具体的な表示態様は種々の変形実施が可能である。
【0146】
施設詳細画面を表示することによって、図13に示す地図を用いた表示画面では省略される複数の施設患者のそれぞれに関する患者情報を適切に提示することが可能になる。
【0147】
4.変形例
以下、いくつかの変形例について説明する。
【0148】
4.1 アラート報知
地域包括ケアシステムにおいては、患者が自宅、施設、病院等を不定期に移動することが考えられる。
【0149】
図15は、本実施形態に係る情報処理システム1の具体的な例を示す図である。図5との相違点は、それまでは自宅でケアを受けていた患者Bが、患者C及び患者Dの入居する施設である高齢者集合住宅に移動している点である。この場合、患者Bは、在宅患者から施設患者に変更される。
【0150】
例えばサーバシステム100は、患者Bが自宅から高齢者集合住宅へ移動したことを表す変更操作を受け付ける。当該変更操作は、例えば管理端末装置400において実行されるが、患者端末装置210やスタッフ端末装置310において実行されてもよい。また変更操作は、例えばテキスト情報である患者情報の位置情報を書き換える操作であってもよい。例えば管理者やスタッフは、患者Aの位置情報が「日本、東京都aa区bb」という住所と「自宅」という属性を含む情報であった場合に、当該位置情報を「日本、東京都cc区dd」という住所と「施設」という属性に書き換える操作を行う。このようにすれば、患者の位置情報の更新、及び在宅患者から施設患者への変更が行われる。
【0151】
あるいはこの操作は地図情報を用いて行われてもよい。図16は、患者の移動に関する操作インターフェイスの他の例を説明するための表示画面例である。図16に示す画面では、図13の例と同様に、患者Aに関するオブジェクトOB1、施設に関するオブジェクトOB2が表示されている。なお説明の都合上、図13に含まれていた一部の情報が省略されている。
【0152】
ここで、患者AがオブジェクトOB2に対応する施設へ移動する場合を考える。例えば変更操作を行うユーザ(狭義には管理者)は、ポインタPTを用いて患者Aに関するオブジェクトOB1を、移動先を表すオブジェクトOB2にドラッグ・アンド・ドロップする操作を行ってもよい。管理端末装置400の処理部410は、当該操作に基づいて操作対象オブジェクトに対応する患者が、ドロップ操作の実行位置に移動したと判定する。図16の例であれば、処理部410は、オブジェクトOB1に対応する患者Aが、オブジェクトOB2に対応する施設に移動したと判定する。処理部410は、受け付けた操作に基づいて、患者情報の更新依頼をサーバシステム100に送信する。なお、オブジェクトOB1と患者の対応付け、及びオブジェクトOB2と位置(住所等)、属性(自宅/施設)との対応付けは既存の患者情報から可能である。これにより、画面を用いた直感的な操作により、患者の移動を実現できる。上述したように、地域包括ケアシステムでは患者の移動の管理が煩雑になる可能性があるところ、変更操作を直感的にすることで管理者等のユーザ負担を軽減できる。
【0153】
なお本実施形態では患者用装置200と患者とが対応付けて管理されてもよい。例えばサーバシステム100の記憶部120は、患者と、患者の生体情報及び環境情報を出力するセンサ(センサが搭載されるデバイスを含む)を関連付けた情報である患者センサ情報を記憶する。例えば患者センサ情報は、例えば患者を特定する患者ID、検出装置220を特定する検出装置ID、温度計230を特定する温度計ID、湿度計240を特定する湿度計IDを対応付けたテーブルデータであってもよい。ここでの検出装置IDは、例えば対象機器の製造番号であるが、検出装置220を一意に特定可能な他の情報が用いられてもよい。温度計ID、湿度計IDについても同様である。また上述したように、患者用装置200は種々の装置を含むことが可能であり、患者センサ情報は、それらの各機器を特定するIDを含んでもよい。このようにすれば、どの機器がどの患者に使用されるかを適切に管理することが可能になる。
【0154】
この場合、患者の移動に伴って、当該患者が使用していた患者用装置200も移動されることになる。図16の例であれば、患者Aが自宅で使用していた患者用装置200が、移動先である高齢者集合住宅に移動される。これにより、移動先でも患者Aの患者情報を適切に計測することが可能になる。
【0155】
しかし患者用装置200の移動はスタッフ等が行うため、センサ(デバイス)を回収し忘れる可能性もある。回収忘れが発生すると、検出装置220等が患者から離れた場所に位置するため、適切な患者情報を計測できなくなってしまう。
【0156】
そこでサーバシステム100は、センサの位置を表すセンサ位置情報と、患者情報に含まれる位置情報との比較処理を行い、センサ位置情報と位置情報が所定以上異なる場合にアラート情報を出力してもよい。このようにすれば、患者用装置200の回収忘れの可能性を管理者等に通知できるため、回収を促すことが可能になる。
【0157】
例えば患者用装置200に含まれる各機器は、当該機器の位置を表すセンサ位置情報を計測する。例えば患者用装置200に含まれる各機器は、GPSを搭載してもよい。あるいは、患者用装置200に含まれる各機器はWi-Fiの基地局や移動通信の基地局と通信することによってセンサ位置情報を計測してもよい。また患者用装置200の全てがセンサ位置情報を検出するのではなく、一部の機器でセンサ位置情報が検出されてもよい。この場合、センサ位置情報を計測する機器を対象として、アラート情報の出力判定が行われる。
【0158】
図17は、アラート情報の出力処理を説明するフローチャートである。まずステップS301において、報知処理部115は、患者の移動があったか否かを判定する。ステップS301の処理は、例えば図16を用いて上述したユーザ操作を管理端末装置400等において受け付けたか否かの判定処理であってもよい。より具体的には、報知処理部115は、前回の処理の実行後に、患者情報中の位置情報に変更があったか否かを判定する。患者の移動がない場合(ステップS301:No)、図17に示す処理は終了する。
【0159】
患者の移動があった場合(ステップS301:Yes)、ステップS302において、報知処理部115は、対象の患者と対応付けられた患者用装置200のそれぞれについてセンサ位置情報を取得する。
【0160】
ステップS303において、報知処理部115は、センサ位置情報が適切であるか否かを判定する。具体的には、報知処理部115は、移動があった患者の移動後の位置情報を取得し、当該位置情報とセンサ位置情報との間の距離が所定閾値以下であるかを判定する。報知処理部115は、距離が所定閾値以下である場合に、センサ位置情報が適切であると判定する。
【0161】
センサ位置情報が適切でない場合(ステップS303:No)、センサ(患者用装置200)の回収忘れの可能性がある。従ってステップS304において、報知処理部115は、回収を促すアラート情報を出力する。ここでのアラートは、管理端末装置400で出力されてもよいし、対象の患者の移動を担当したスタッフのスタッフ端末装置310で出力されてもよい。報知は、テキストや画像の表示であってもよいし、光、音、振動等を用いたものであってもよい。
【0162】
センサ位置情報が適切である場合(ステップS303:Yes)、アラート情報の報知は行われずに図17に示す処理が終了する。
【0163】
なお以上では位置情報がユーザ操作に基づいて変更される例を説明したが、本実施形態の処理はこれに限定されない。例えば上述したように、患者情報に含まれる位置情報は患者端末装置210によって検出されてもよい。例えば報知処理部115は、患者端末装置210によって検出された位置情報を基準として、他の患者用装置200のそれぞれのセンサ位置情報が近い位置にあるか否かを判定する。この場合、患者端末装置210が回収されていれば、他の患者用装置200の回収忘れを判定することが可能になる。
【0164】
また患者情報に含まれる位置情報は患者端末装置210以外の患者用装置200によって検出されてもよい。この場合、当該患者用装置200が適切に回収されていれば、それ以外の患者用装置200の回収忘れを判定することが可能になる。
【0165】
4.2 作業時間
判定処理部113は、在宅患者の患者情報とスタッフの位置情報に基づいて、スタッフが在宅患者の対応を行った場合の作業時間(作業、対応に要する時間)である第1作業時間を求める処理を行ってもよい。また判定処理部113は、複数の施設患者の患者情報とスタッフの位置情報に基づいて、スタッフが集合施設の対応を行った場合の作業時間である第2作業時間を求める処理を行ってもよい。また判定処理部113は、第1作業時間と第2作業時間の両方を求める処理を行ってもよい。
【0166】
本実施形態の手法によれば、作業(移動を含む)に要する時間を見積もることが可能になる。例えば、実際の作業前に作業時間を予測することによって、その後のスタッフの業務が予測できるため、効率的なスタッフ管理を管理者に促すこと等が可能になる。またサーバシステム100が、作業時間に基づいて、複数の候補地からスタッフが訪問すべき場所を選択する処理、あるいは複数のスタッフから訪問を依頼するスタッフを選択する処理を行ってもよい。このようにすれば、管理者の判断を適切にサポートすることが可能になる。
【0167】
あるいは、実際に作業が行われた後に、実際の作業時間と、当該作業に必要であった標準的な作業時間の見積もり結果を比較する処理が行われてもよい。このようにすれば、作業に対する対価(スタッフの賃金、患者等に請求する料金)に関する判定や、スタッフの評価等を実行できる。以下、作業時間に関する処理の具体例を説明する。
【0168】
<作業時間の予測>
まず作業時間を予測する例について説明する。図18は、作業時間の予測処理を説明するフローチャートである。
【0169】
ステップS401において、判定処理部113は、患者情報に基づいて必要な作業の内容を推定する。例えば、判定処理部113は、異常値が検出された項目(センサ)に基づいて、作業内容を特定してもよい。具体的には、在宅患者である患者Cの呼吸数や血中酸素飽和度が正常範囲から外れているという患者情報が取得された場合、判定処理部113は、作業内容が「Cさんの呼吸異常対応」と判定する。
【0170】
ステップS402において、判定処理部113は、過去の履歴に基づく作業の統計量を取得する。図19は、過去に実行された作業の履歴を表す情報であり、複数のスタッフのタイムテーブルである。図19の例では、例えばスタッフA~スタッフCは、それぞれが患者Cの呼吸異常に対応した経験がある。図19に示す情報により、各スタッフが患者C宅までの移動した際の移動距離、移動時間と、患者C宅に到着した後の呼吸異常対応に要した時間が求められる。
【0171】
図20は、図19のうち、患者Cの呼吸異常対応に関する情報を抽出した図である。スタッフAは、患者C宅までの40.5kmの移動に1.5時間を要しているため、移動速度は27km/hである。またスタッフBは、患者C宅までの35.0kmの移動に1.25時間を要しているため、移動速度は28km/hである。スタッフCは、患者C宅までの30.5kmの移動に1.25時間を要しているため、移動速度は24.4km/hである。判定処理部113は、これらの情報に基づいて移動速度の統計量を求める。移動速度の統計量として、例えば図20に示すように平均値として約26km/h、標準偏差としてSD=1.86が求められる。
【0172】
またスタッフAは、患者C宅での呼吸異常対応の開始から完了までに1.5時間を要している。スタッフBは、患者C宅での呼吸異常対応の開始から完了までに1.25時間を要している。スタッフCは、患者C宅での呼吸異常対応の開始から完了までに1.75時間を要している。判定処理部113は、これらの情報に基づいて呼吸異常対応の統計量を求める。呼吸異常対応の統計量として、例えば図20に示すように平均値1.50時間、標準偏差SD=0.25が求められる。
【0173】
ステップS403において、判定処理部113は、作業内容と統計量に基づいて作業時間を推定する。ここでは、作業内容が患者Cの呼吸異常対応であり、統計量として患者C宅への移動速度の平均、標準偏差と、到着後に実行する呼吸異常対応に要する時間の平均、標準偏差が求められている。
【0174】
例えば、スタッフDが患者C宅から2.5kmの距離におり、当該スタッフDに患者Cの呼吸異常対応を依頼することを考える。この場合、過去の履歴に基づいて、当該スタッフDも時速26km/h程度の速度で患者C宅へ移動できると推定される。従って、判定処理部113は、移動時間が6分程度と推定する。
【0175】
また判定処理部113は、患者C宅到着後の呼吸異常対応については、例えば±1SD程度のばらつきを考慮した場合、1.5±0.25時間程度で作業が完了すると推定する。また時間がかかるケースを想定してもよく、例えば判定処理部113は、95%信頼区間を1.5±2×0.25によって求めることによって、作業時間が1時間~2時間であると推定してもよい。また判定処理部113は、95%信頼区間の上限値を用いて、移動時間を含めた作業時間が2時間6分以上となる可能性は十分低いとの判定を行ってもよい。
【0176】
図21は、推定された作業時間を表示する画面の例であり、例えば管理端末装置400の表示部440に表示される画面例である。図21では、患者Cに対応する患者情報を表すオブジェクトOB11、及びスタッフDに対応するスタッフ情報を表すオブジェクトOB12が表示される。オブジェクトOB11の表示内容については図13のオブジェクトOB1と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0177】
ここでスタッフDに関するオブジェクトOB12は、図21に示すように予測された作業時間の情報を含んでもよい。図21では、オブジェクトOB12は、上述した例のように予測移動時間が6分、予測対応時間が1.0~2.0時間(±2SDの例)であることを示すテキストを含む。このようにすれば、スタッフDに作業を依頼した場合に要する時間を予め提示できるため、管理者によるスタッフ管理をより適切に実行させることが可能になる。
【0178】
なおオブジェクトOB12は、予想費用を含んでもよい。例えば記憶部120は、作業内容と、単位時間(例えば1時間)あたりの作業で発生する費用を対応付ける情報を記憶してもよい。この例では、呼吸異常対応に対して、1時間あたりの発生費用が1800円であるという情報が対応付けられていた。この場合、判定処理部113は、予測対応時間と単位時間あたりの費用に基づいて、予測費用を算出する。このようにすれば、金銭的な情報を予め提示することが可能になる。
【0179】
図21の例では、オブジェクトOB12は、「対応依頼しますか?」というテキストと、Yes,Noの各ボタンを表示する。管理端末装置400は、管理者による何れかのボタンの入力操作を受け付ける。例えばYesボタンが選択された場合、管理端末装置400の通信部430は、スタッフDのスタッフ端末装置310に患者Cの呼吸異常対応を依頼する情報(例えばメッセージ)を送信する。Noボタンが選択された場合、管理者はスタッフDへ依頼を行う意思がないことになる。この場合、例えば表示処理部114は、スタッフD以外のスタッフに対応するスタッフ情報に、予測作業時間、予測費用、依頼を行うか否かを表すボタン等を表示させる処理を行う。
【0180】
図22は、予測作業時間を表示する画面の他の例である。なお図22において、患者A、施設A、スタッフA、スタッフBのそれぞれに関するオブジェクトOB1b~OB4bが表示される。オブジェクトOB1b~OB4bのうち、図13のオブジェクトOB1~OB4と同様の情報については詳細な説明を省略する。
【0181】
図13を用いて上述したように、この例では在宅患者である患者Aと、施設Aの施設患者の両方で異常値が検出されており、現在手が空いているスタッフAは、訪問優先度に基づいて施設Aへ向かうことが推奨されている。判定処理部113は、例えば施設Aで異常が生じているそれぞれの施設患者について予測作業時間を求め、当該予測作業時間を合計することによって、対象施設全体での予測作業時間を求めてもよい。表示処理部114は、スタッフAのスタッフ情報として、当該予測作業時間を表示する。図22の例では、オブジェクトOB3bは、オブジェクトOB3と同様の予定ルート及び優先ルートに加えて、当該優先ルートを採用した場合の作業時間(予測対応時間)である1.0時間という情報を含む。
【0182】
ここでスタッフBは、図13で上述した例と同様に、患者宅または施設に到着しており、何らかの作業(図22の例ではオムツ交換)を実行中である。この場合、すでに患者Aの異常が検出されていることから、管理者は、スタッフAを施設Aの作業終了後に患者A宅に向かわせるか、別の作業を行っているスタッフBを当該作業終了後に患者A宅に向かわせるかを計画しておくことが望ましい。
【0183】
そこで図22に示すように、表示処理部114は、スタッフBに関するオブジェクトOB4bにおいて、予測作業時間と実作業時間に基づく、終了予測時間を表示してもよい。例えばスタッフBの予測作業時間を1.0時間であると予測し、スタッフBが実際に作業(移動)を始めてから30分が経過している場合、判定処理部113は、終了予測時間を30分と推定する。表示処理部114は、推定された終了予測時間をスタッフBに関するオブジェクトOB4bに表示する。
【0184】
このようにすれば、スタッフBの作業がスタッフAの施設Aでの作業より早く終わることが分かるため、患者Aの自宅にはスタッフBを向かわせた方が効率がよい、と言った判断を管理者に行わせることが可能になる。また本実施形態の表示画面では、スタッフBの現在位置、スタッフAが施設Aの対応を完了した際の位置(施設Aの位置)等が表示されるため、前の作業完了後の移動時間等を考慮した判断を管理者に行わせることも可能である。
【0185】
また判定処理部113において、対象の作業の実行に適したスタッフを選択、レコメンドする処理を行ってもよい。例えば判定処理部113は、スタッフが、複数のスタッフを含む場合に、複数のスタッフのそれぞれについて、在宅患者の作業に要する第1作業時間及び施設患者の作業に要する第2作業時間の少なくとも一方を求めることによって、複数のスタッフから、患者の対応に適したスタッフを選択する処理を行う。例えば判定処理部113は、第1作業時間が最も短いスタッフに対象の在宅患者を担当させ、第2作業時間が最も短いスタッフに対象の施設を担当させるといった対応を管理者に促してもよい。図22の例では、表示処理部114は、スタッフAに施設Aの対応を行わせ、スタッフBに患者A宅の対応を行わせるとの推奨指示を画面右下の領域に表示する。
【0186】
また図22に示したように、表示処理部114は、患者情報として、作業に必要な用具、器具等の情報を表示してもよい。例えば判定処理部113は、過去の履歴に基づいて、作業に必要な物を推定する。
【0187】
図23は、過去に実行された業務履歴を表す情報であり、複数のスタッフのタイムテーブルである。例えば各スタッフは作業実行時や実行後に、当該作業に必要な物をスタッフ端末装置310を用いて入力してもよい。図23の例では、スタッフAの過去の作業により、患者Aの排泄処理にはSサイズのオムツが必要であること、患者Bの心拍異常対応には血圧計が必要であること等が入力され、その旨を表す情報がサーバシステム100の記憶部120に記憶されている。サーバシステム100の記憶部120は、ユーザ、作業内容、必要な物を対応付けた情報を記憶してもよい。またオムツについては患者の個人差が大きいが、呼吸異常対応や心拍異常対応では患者によらず必要な物を共通化できる場合もある。この場合、記憶部120は、作業内容と必要な物を対応付けた情報を記憶してもよい。
【0188】
判定処理部113は、異常患者が発生した場合に、対象患者を特定するとともに、患者情報から作業内容を特定する。そして判定処理部113は、過去の履歴、患者、作業内容に基づいて必要な物を特定する。
【0189】
表示処理部114は、在宅患者については対象患者に必要な物を、当該在宅患者の患者情報に関連付けて表示する。例えばオブジェクトOB1bは、必要な物として「オムツMサイズ1つ」との情報を含む。
【0190】
また表示処理部114は、施設患者については対象施設単位で必要な物を、当該施設に関連付けて表示する。図22の例では施設Aでは5人の異常患者が検出されているため、表示処理部114は、5人の異常患者それぞれについて求められた必要な物の合計を、施設Aに対応付けて表示する。例えばオブジェクトOB2bは、必要な物として「オムツLサイズ1つ、オムツSサイズ2つ、水ペットボトル3つ、血圧計1つ」という情報を含む。
【0191】
これにより、予め作業に必要なものが提示されるため、スタッフによる作業の効率化が可能になる。例えば、スタッフが施設等を訪問した際に、必要な物が足らずに派遣ステーション等に取りに帰ることを抑制できるため、作業時間の短縮が可能になる。また判定処理部113は、スタッフが派遣ステーションから外出している場合、当該スタッフが携帯している道具の情報と、必要な物の情報に基づいて、推奨指示を決定する処理を行ってもよい。例えば判定処理部113は、対象施設等に近い位置にスタッフがいたとしても、必要な物を携帯していない場合には当該スタッフの派遣を推奨しないとの判定を行ってもよい。また判定処理部113は、スタッフ間での道具の受け渡しを指示する情報を出力してもよい。
【0192】
<賃金、料金、評価>
また判定処理部113は、予測作業時間と実際の作業時間の比較処理を行うことによってスタッフの評価等を行ってもよい。例えば図19図21を用いて上述した処理によって、スタッフDが患者Cの呼吸異常対応を行う場合の移動時間が6分、作業時間が1.0-2.0時間と推定された例を考える。
【0193】
図24は、あるスタッフDが患者Cの呼吸異常対応を含む作業を行った場合の業務履歴の例である。図24の例では、スタッフDは患者C宅への移動に1時間以上を要しており、予測された移動時間である6分に比べて明らかに多い。移動速度で比較した場合、スタッフDは2.5kmの移動に1.25時間を要しているため、移動速度は2.0km/hである。これは図20を用いて上述した平均約26km/h、標準偏差1.86を考慮した場合、明らかに小さい数値である。例えば2.0km/hという数値は、95%信頼区間の下限値である(平均値-2SD)を大きく下回っている。またスタッフDは、患者C宅での呼吸異常対応に4時間以上を要しており、上述した95%信頼区間の上限値2.0時間を大きく超過している。この場合、スタッフDは正常な勤務を行っていない可能性がある。
【0194】
このような場合、スタッフDが図24に示す勤務(特に患者Cの呼吸異常対応)に対する賃金を要求したとしても、当該賃金を要求通りに支払うことは適切とは言えない。従って判定処理部113は、予測作業時間と実作業時間に基づいて、賃金請求の承認/却下の判定を行ってもよい。
【0195】
図25は、賃金承認処理を説明するフローチャートである。ステップS501において、判定処理部113は実際の賃金計算を行う。例えば判定処理部113は、図24等の勤務データに基づいて、作業時間に単価を乗ずることによって実際の賃金を計算する。
【0196】
ステップS502において、判定処理部113は、実際の賃金が予測賃金内かを判定する。例えば判定処理部113は、移動時間を含む作業時間の統計量に基づく予測時間範囲(例えば±2SDの範囲)を求め、当該予測時間範囲と単価から予測賃金範囲を求める。そして判定処理部113は、ステップS501で求めた賃金が、ステップS502で求めた予測賃金範囲内か否かを判定する。
【0197】
実際の賃金が予測賃金範囲内である場合(ステップS502:Yes)、S505において判定処理部S505は、ステップS501で求めた実際の賃金をスタッフの賃金として計算し、処理を終了する。つまり、対象の勤務データは適切であると判定される。
【0198】
実際の賃金が予測賃金範囲内でない場合(ステップS502:No)、判定処理部113は管理者に通知を出力する。例えば表示処理部114は、対象となるスタッフ名、勤務データ、実際の賃金、予測賃金範囲等の情報を含む画面を管理端末装置400の表示部440に表示させる処理を行う。
【0199】
ステップS504において、管理端末装置400は、表示画面に基づく管理者の承認/却下入力を受け付ける。例えば管理者は、対象のスタッフの属性、対象となる作業、患者等を考慮し、作業時間が正常範囲を超えたことに正当な理由があるか否かを判断する。例えば、スタッフが新入社員である場合、通常のスタッフよりも時間がかかることはやむを得ないことであり、申請された賃金を支払う妥当性があり得る。また患者宅へ向かう幹線道路で渋滞や通行止めが発生していた場合、移動時間が予測範囲を超過する可能性がある。また、呼吸異常対応の中でイレギュラーな事象が発生していた場合(呼吸異常の深刻度が高い、転倒転落等の他のインシデントが発生した場合等)には、呼吸異常対応に要する時間が長くなることは妥当である。このように、管理者は付随的な情報を考慮した上で承認/却下を判定できるため、ステップS503に示した管理者への通知は有用である。
【0200】
管理者が正当な理由があると判定して承認操作を行った場合(ステップS504:承認)、ステップS505において判定処理部S505は、ステップS501で求めた実際の賃金をスタッフの賃金として計算し、処理を終了する。管理者が正当な理由がないと判定して却下操作を行った場合(ステップS504:却下)、ステップS505の処理は行われずに処理が終了する。つまり、対象の勤務データは適切でないとして賃金の支払い対象から除外される。
【0201】
またスタッフの提供するサービスによっては、費用に保険等が適用されず、サービスを受ける側の自己負担となることも考えられる。また患者自身は身体的に費用を支払うことが難しい場合があるため、患者の家族が自己負担分の支払を行う場合も考えられる。
【0202】
例えば本実施形態の情報処理システム1は、サービス内容と、患者の保険加入状況(介護保険、医療保険、無保険等)に基づいて、家族に支払いを請求する処理を行ってもよい。
【0203】
図26は、この場合の情報処理システム1の構成例を示す図である。なおここでは患者A及び患者Aを担当するスタッフAのみを表示し、他の患者、スタッフは省略されている。また、患者、スタッフ、管理者の役割は図5と同様である。図26の例では、管理者は上述した勤務データ等に基づいて患者Aに対して実行された作業内容を把握し、当該作業内容と患者の保険加入状況に基づいて自己負担分の算出を行ってもよい。なお算出作業は管理者自身が行うものに限定されず、判定処理部113が自動的に実行してもよい。そして管理者が管理端末装置400において、自己負担分の家族への請求操作を行った場合、サーバシステム100にその旨が送信され、サーバシステム100は患者の家族が使用する家族端末装置500に費用請求の通知処理を行う。またサーバシステム100が決済機能を有する場合、請求した費用の決済処理を実行してもよい。また請求操作も自動化が可能であり、管理者の操作がなくても判定処理部113が自動的に家族端末装置500への通知処理を実行してもよい。
【0204】
このようにすれば、適切な対象に費用を請求することが可能になる。その際、上述したように各スタッフの作業が適切であるかを判定することによって、患者や家族に不適切な請求が行われることを抑制できる。
【0205】
また判定処理部113は、自己負担が所定以上となることが予測作業時間から予測された場合、スタッフによる作業開始前に家族に実行可否を問い合わせる処理を実行してもよい。このようにすれば、家族に対して事前の予告なしに高額な請求が行われてしまうことを抑制できる。
【0206】
また予測作業時間と実作業時間に基づく判定結果は、スタッフの評価に用いられてもよい。図27は、スタッフの評価処理を説明するフローチャートである。図27のステップS601-S607の処理は概ね図25のステップS501-S505と同様であり、実際の賃金計算(ステップS601)の後に承認フラグを表すaの値が0に設定される点(ステップS602)、実際の作業に基づく賃金が管理者によって却下された場合(ステップS605:No)に、承認フラグを表すaの値が1に設定される点(ステップS607)、のみが異なる。
【0207】
ステップS601-S607の処理により、賃金が承認された場合にa=0に維持され、賃金が却下された場合にa=1に設定される。ステップS608において、判定処理部113は承認フラグを表すaの値に基づいてスタッフ評価を行う。具体的には判定処理部113、a=1の場合、a=0の場合に比べてスタッフの評価を低くする処理を行う。上述したように、賃金が却下される場合とは作業時間が過剰に長い場合であって、そのことについて妥当な理由もない場合である。従って、この場合にはスタッフが適切な作業を行わなかったと考えられるため、評価を相対的に下げることによって、適切なスタッフ管理が可能になる。
【0208】
また判定処理部113は、求めたスタッフ評価に基づいて作業を依頼するスタッフを決定する処理を行ってもよい。図28は、スタッフ決定処理を説明するフローチャートである。
【0209】
ステップS701において、判定処理部113は、何れかの患者に異常が発生したことを検出する。ステップS702において、判定処理部113は、各在宅患者または施設の優先度を算出する。優先度は例えば上式(1)に示した優先スコアである。ステップS702の処理は、図12を用いて上述した通りである。また判定処理部113は、ステップS702において上式(2)に示した訪問優先度を算出してもよい。
【0210】
ステップS703において、判定処理部113は、異常患者への訪問を依頼するスタッフの候補である依頼スタッフ候補を決定する。例えば判定処理部113は、訪問優先度が最も大きいスタッフを依頼スタッフ候補として選択する。
【0211】
ステップS704において、依頼スタッフ候補に選択されたスタッフの評価が所定閾値以上であるかを判定する。ここでの評価は、例えば図27に示した処理によって増減する数値データである。
【0212】
依頼スタッフ候補の評価が閾値以上である場合(ステップS704:Yes)、ステップS705において、判定処理部113は、依頼スタッフ候補を作業を依頼するスタッフとして決定する。例えば判定処理部113は、決定したスタッフ及び依頼内容を管理端末装置400、及び対象のスタッフの使用するスタッフ端末装置310に送信する。このようにすれば、信頼できるスタッフについては自動的に作業が割り振られるため、管理者の負担軽減が可能である。
【0213】
一方、依頼スタッフ候補の評価が閾値未満である場合(ステップS704:No)、ステップS706において、判定処理部113は、管理者にスタッフ選択に関する通知を行う。具体的には、表示処理部114は異常発生患者、異常内容、依頼スタッフ候補、当該依頼スタッフ候補の評価値等の情報を含む画面を管理端末装置400の表示部440に表示する処理を行う。
【0214】
管理端末装置400は、表示画面に基づくスタッフ選択入力を受け付ける。例えば管理者は、依頼スタッフ候補の属性や作業履歴、対象となる作業、患者等を考慮し、依頼スタッフ候補が対象作業を実行した場合に問題が生じるか否か等を判定する。
【0215】
管理者が依頼スタッフ候補に依頼する旨の入力を行った場合(ステップS707:Yes)、管理端末装置400はその旨を表す情報をサーバシステム100に送信する。ステップS708において、判定処理部113は、依頼スタッフ候補に作業を依頼する処理を実行する。例えば判定処理部113は、対象のスタッフの使用するスタッフ端末装置310に業務依頼を送信する。
【0216】
一方、管理者が依頼スタッフ候補に依頼しない旨の入力を行った場合(ステップS707:Yes)、管理端末装置400はその旨を表す情報をサーバシステム100に送信する。ステップS709において、判定処理部113は、依頼スタッフ候補とは異なるスタッフに作業を依頼する処理を実行する。例えば管理者が代わりのスタッフを指定する入力を行った場合、判定処理部113は、当該スタッフの使用するスタッフ端末装置310に業務依頼を送信する。あるいは、判定処理部113が自動的に新たな依頼スタッフ候補を決定してもよい。この場合、判定処理部113は、ステップS703の処理に戻り、再度評価判定(ステップS704)、及び必要に応じて管理者への通知等(ステップS706)を行ってもよい。
【0217】
図28に示す処理では、評価が低いスタッフに依頼する場合、管理者の承認が必要になるため、不適切なスタッフに作業が割り振られることを抑制できる。
【0218】
4.3 スタッフの職種
上述したように、本実施形態のスタッフは、職種の異なる複数のスタッフを含んでもよい。例えば本実施形態のスタッフは、訪問介護を行う介護スタッフ(介護士、ケアマネージャー等)と、訪問医療を行う医療スタッフ(看護師、医師)を含む。この場合、スタッフの職種に応じて実行する作業が異なる可能性がある。
【0219】
図29は、介護スタッフが実行する作業の範囲である業務範囲を表す図である。図29に示すように、介護スタッフの業務範囲は排泄介助、体位補助、食事介助、入浴介助、更衣介助、医療従事者への問合せを含む。排泄介助は、トイレへの誘導、オムツ交換、シーツ交換等の作業に細分化されてもよい。体位補助等の他の項目についても同様である。
【0220】
また介護スタッフの業務範囲には、異常値が検出された場合に要因を確認する作業も含まれる。例えば図29の「問題なしと判断」との箇所に記載されているように、心拍情報、呼吸情報、体動等の異常値が検出された際に、特別な対応が不要であると判断することが介護スタッフの業務に含まれてもよい。
【0221】
図30は、医療スタッフの業務範囲を表す図である。図30では看護師の業務範囲と、医師の業務範囲に分けて具体例を示している。看護師の業務範囲は「疼痛コントロール」、「睡眠薬の投与」等を含む。また「血圧、脈拍、酸素飽和度、呼吸音の測定」については、訪問で行われてもよいし、遠隔で行われてもよい。また「救急車対応」とは、例えば心房細動等の緊急性の高い状況に対応する。また「がん末期や終末期のターミンナルケア」では、例えば徐々に呼吸が浅く、回数が少なくなることから他の対応との切り分けが可能である。
【0222】
また医師の業務範囲としては、「患者に薬を処方する」、「レントゲン撮影の提案」等が考えられる。ここでの薬は睡眠薬や鎮静剤等、種々の薬を含む。また「レントゲン撮影の提案」は、例えば体動等への影響が骨折の痛みに起因する可能性がある場合に実行されてもよい。また「訪問看護師への指示」とは、看護師を患者宅に訪問させるとともに、医師が遠隔で指示を与えることを表す。また「遠隔での呼吸音の聴取」は、体動への影響が、呼吸器疾患や嚥下障害に起因する可能性がある場合に実行されてもよい。同様に「遠隔での心電図検査」は、体動への影響が、心疾患に起因する可能性がある場合に実行されてもよい。また医師の業務範囲には「死亡診断書の作成」が含まれてもよい。本実施形態の手法では、死亡診断時刻前のセンサの情報(例えば呼吸や心拍の計測値)が収集されるため、医師による死因の判断をサポートすることや、死亡直前の呼吸等の傾向をデータベース化すること等が可能になる。データベース化された情報は、例えば看取り期における死亡予測に利用可能と考えられる。
【0223】
例えば図30に示した医療スタッフによる作業は、対応する資格がなければ実行できない可能性がある。具体的には、介護士やケアマネージャー等の介護スタッフは、図30に示された各作業を実行できない。従って、これらの作業が必要となった場合、管理者は対応する資格を有した医療スタッフに作業を依頼する必要がある。
【0224】
一方、図29に示した介護スタッフによる作業は、看護師や医師等の医療スタッフであれば実行可能であると考えられる。しかし医療スタッフは、上記の通り医療スタッフのみしか実行できない作業があり、当該作業を優先して実行する必要がある。医療スタッフに図29に示す作業を実行させることは非効率的である可能性があるため、これらの作業が必要となった場合、管理者は介護スタッフに優先的に作業を依頼する必要がある。
【0225】
以上のように、患者の状態、スタッフの位置に加えて、必要な作業内容とスタッフの職種を考慮することによってスタッフの効率的な管理が可能になる。そこで判定処理部113は、患者情報に基づいて、作業の内容である作業内容を求めてもよい。そして判定処理部113は、作業内容と、複数のスタッフのそれぞれの職種を表す職種情報と、職種ごとに実行可能な作業(業務範囲)とに基づいて、複数のスタッフから、患者の作業に適したスタッフを選択する処理を行う。このようにすれば、作業内容とスタッフの職種を考慮したレコメンド表示を行うことが可能になるため、管理者の負担を増やすことなく、より効率的なスタッフの管理を実現すること等が可能になる。
【0226】
ここで判定処理部113は、過去の履歴に基づいて、患者に必要な作業内容を推定してもよい。図31は、過去の業務履歴を表す情報であり、複数のスタッフのタイムテーブルである。図31の例では、スタッフとして看護師である看護スタッフA及び看護スタッフB、及び介護士である介護スタッフCを示している。
【0227】
例えば看護スタッフAは、患者Aの血圧計の異常値検出に対して、血圧測定という作業を実行した履歴がある。同様に看護スタッフAは、患者Bの体動センサ(圧力センサ)の異常値検出に対して、心拍異常対応という作業を実行した履歴がある。看護スタッフAのこれ以降の履歴、及び介護スタッフC、看護スタッフBの履歴についても同様である。
【0228】
例えばサーバシステム100の記憶部120は、患者ID、生体情報や環境情報のうち異常値検出が検出された項目、実行された作業内容を対応付けたテーブルデータを記憶してもよい。例えば判定処理部113は、ある患者について異常値が検出された場合に、当該患者を特定する患者ID、及び異常値が検出された項目を検索キーとしてテーブルデータから検索処理を行うことによって、当該検索キーに対応付けられた作業内容を必要な作業内容と判定する。
【0229】
ただし、判定処理部113が必要な作業内容を判定する処理はこれに限定されない。例えば判定処理部113は、患者及び異常値が検出された項目に加えて、異常値が正常範囲から外れる度合いや、正常範囲から外れる前後の値の時系列的な変化等を用いた処理を行ってもよい。また、患者IDは必須ではなく、必要な作業内容の判定処理が複数の患者に共通の処理として実現されてもよい。また患者IDや異常値が検出された項目等を入力データとし、作業内容を出力データとする学習済モデルが、機械学習によって取得されてもよい。判定処理部113は、ある患者について異常値が検出された場合に、当該患者に関して取得された入力データを当該学習済モデルに入力することによって、必要な作業内容を判定する。
【0230】
次に判定処理部113は、必要な作業内容と職種毎の業務範囲に基づいて、当該作業内容を実行すべき職種を特定する処理を行う。例えば判定処理部113は、作業内容と図29及び図30に示すデータの比較処理によって、介護スタッフ、看護師、医師のいずれが作業を実行すべきかを判定する。
【0231】
次に判定処理部113は、派遣候補となるスタッフのうち、対応する職種で登録されているスタッフを優先して派遣するように、派遣を依頼するスタッフを選択する処理を行う。
【0232】
図32は、職種を考慮した処理結果を表示する画面の例である。図32では管理端末装置400の表示部440は、患者A、施設Aのそれぞれに関するオブジェクトOB1c、OB1cを表示する。ここで患者または施設に関するオブジェクトは、図22に示した情報に加えて、必要な作業内容及び作業を実行すべき職種に関する情報を含んでもよい。
【0233】
例えばオブジェクトOB1cは、必要な作業がオムツ交換であり、当該作業は介護職員(介護スタッフ)によって実行すべき旨を含む。なお判定処理部113は、作業を実行すべきスタッフの職種に加えて必要な人数を判定してもよい。例えば判定処理部113は、複数のスタッフが共同でなければ実行できない作業(例えば大柄な患者の移動介助等)がある場合や、作業数が多く1人では全ての作業を完了するまでに所定以上の時間がかかってしまう場合に、スタッフの人数を2人以上に設定してもよい。図32の例では、オブジェクトOB1cは、必要な介護スタッフの人数が1人である旨を含む。
【0234】
同様に複数の施設患者が入居する施設Aに対応するオブジェクトOB2cは、必要な作業がオムツ交換、エアコンON、血圧測定であり、当該作業のうちオムツ交換及びエアコンONは介護職員が実行すべきであり、血圧測定は看護職員(医療スタッフの内の看護師)が実行すべきである旨を含む。なおここでのオムツ交換は、複数人分のオムツを交換する作業を含んでもよい。また、オブジェクトOB2cは、必要な介護スタッフの人数が1人であり、医療スタッフの人数が1人である旨を含む。
【0235】
また図32では、表示部440は、看護師である医療スタッフ(看護スタッフA)と、介護スタッフBのそれぞれに関するオブジェクトOB13、OB14を表示する。ここでスタッフに関する表示オブジェクトは、必要と推定された作業内容の情報を業務情報として含んでもよい。例えば看護スタッフAに対応するオブジェクトOB13は、施設Aにおいて予測される作業内容が血圧計測である旨を含む。またスタッフに関する表示オブジェクトは、予測される作業内容の実行に必要な物の情報を含んでもよい。例えばオブジェクトOB13は、血圧計測を行うために血圧計が必要である旨を含む。
【0236】
またスタッフに関する表示オブジェクトは、当該スタッフの職種に関する情報を含んでもよい。例えばオブジェクトOB14は、看護スタッフというテキスト、及び、看護師を表すアイコンを含む。またオブジェクトOB14は、介護スタッフというテキスト、及び、介護士を表すアイコンを含む。これにより、管理者は各スタッフの職種を容易に判断できるため、必要な作業内容や職種が表示された場合に(オブジェクトOB1c、OB2c)、派遣すべきスタッフを図32に示す画面から容易に選択することが可能になる。なお職種を表す情報は図32に示したアイコンに限定されず、種々の変形実施が可能である。また画面右下に示したように、表示処理部114は、各スタッフが実行することが望ましい業務内容を示す推奨指示を表示する処理を行ってもよい。
【0237】
また以上では各スタッフが自動車で移動することを想定し、スタッフに対応するオブジェクト(例えばOB13、OB14)が自動車のアイコンを含む例を説明した。ただし、スタッフの移動手段は自動車に限定されず、自転車、徒歩等、種々の変形実施が可能である。この場合、移動手段に応じて対象場所までの移動時間が異なる。よって表示処理部114は、地図上にスタッフ情報を表示する際に、移動手段によって異なる情報を表示してもよい。例えばスタッフ情報を含むオブジェクトは、自動車を表す第1アイコン、自転車を表す第2アイコン、徒歩を表す第3アイコンの何れかを含んでもよい。このようにすれば、管理者は各スタッフの移動手段を考慮した管理が可能になる。
【0238】
また判定処理部113は、スタッフが対象場所までの移動する移動時間を推定する際に、移動手段を用いた処理を行ってもよい。例えば図19及び図20を用いて上述したように、過去の履歴情報に基づいて移動時間の統計値(平均値、標準偏差)を求める場合、判定処理部113は移動手段毎に統計値を求めてもよい。また判定処理部113は、移動時間を推定する際に、対象のスタッフの移動手段に応じた統計値を読み出し、当該統計値に基づいて移動時間を推定する。このようにすれば、スタッフに応じて移動手段が異なる場合であっても適切な移動時間の推定が可能になる。結果として、管理者が適切にスタッフの管理を行うことが可能になる。
【0239】
4.4 不必要な訪問の抑制
訪問サービスでは移動時間(例えばスタッフの待機拠点から患者宅や施設までの移動時間)があるため、必要性の低い訪問を減らすことによってスタッフの業務時間を減らすことが可能である。これにより、スタッフの業務管理を適切に行うことが可能になる。訪問の必要性が低い状況としては、例えば、温湿度などの環境情報が異常値を示していても、部屋に患者がいない場合が考えられる。また呼吸心拍に異常があっても、患者が何かしら運動をした直後だったなどの場合にも訪問する必要性が低い。
【0240】
そこで本実施形態では、訪問の要否を判定するための処理が実行されてもよい。例えば患者用装置200は、患者を撮像するための撮像装置を含む。ここでの撮像装置は、患者端末装置210に含まれるカメラであってもよいし、患者端末装置210とは異なる装置であってもよい。撮像装置によって撮像された画像は、管理端末装置400に送信され、管理者による閲覧が可能である。例えば撮像装置は、撮像画像をサーバシステム100に送信し、サーバシステム100が当該撮像画像を管理端末装置400に送信してもよい。これにより、管理者は撮像画像を用いて入居者の状態を確認できる。
【0241】
図33は、サーバシステム100の処理を説明するフローチャートである。まずステップS801において、判定処理部113はセンサの異常値を判定することによって、アラート通知を行う。異常値の判定処理は、例えば図12のステップS201-S205に示した処理と同様であってもよい。
【0242】
図34は、アラート通知が行われる画面例であり、例えば管理端末装置400の表示部440に表示される画面である。図34に示す画面の左側は、例えば図13と同様であるため、詳細な説明は省略する。表示処理部114は、例えば図34に示す画面の右側において、アラート通知を行う。
【0243】
図34に示すように、ここでのアラート通知は、施設名、部屋番号、患者氏名、異常内容、異常が発生したタイミングの情報を含む。これにより、異常患者に関する情報を管理者に通知することが可能になる。さらにアラート通知は、患者状態確認アイコンと、訪問の要否を入力するためのオブジェクトを含んでもよい。患者状態確認アイコンは、例えば図34に示すカメラを表すアイコンであるが、他のアイコンが用いられてもよい。また訪問の要否を入力するためのオブジェクトとは、例えば必要ありボタンと必要なしボタンであるが、他の態様のオブジェクトが用いられてもよい。
【0244】
判定処理部113は、図33のステップS802において、異常が発生した患者の全てに対して、訪問の要否を表す訪問フラグvの値を1に設定する。v=1は訪問が必要なことを表し、v=0は訪問が不要なことを表す。次にステップS803において、撮像画像が出力される。具体的には、まず表示処理部114は図34に示すアラート通知を含む画面を表示させ、当該画面において患者状態確認アイコンの選択操作が実行された場合に、対象の患者を撮像した撮像画像を管理端末装置400の表示部440に表示させる処理を行う。例えばサーバシステム100は、患者状態確認アイコンの選択操作が実行された場合に、対象患者の周辺に配置された撮像装置をオンにする処理を行った後、当該撮像装置から患者を撮像した画像を取得してもよい。あるいは、撮像装置は常時オンであり、サーバシステム100は、患者状態確認アイコンの選択操作が実行された場合に、当該撮像装置からの画像取得を開始してもよい。
【0245】
管理者は、撮像された画像を閲覧することによって、訪問の要否を判定し、判定結果の入力を行う。例えば上記のように、温度や湿度等の環境に関する異常が検出された場合であっても、患者がセンサの設置箇所(寝室等)にいないことが画像から確認されれば、訪問の必要性は低い。あるいは、心拍等に異常が検出された場合であっても、患者が運動中の場合や、興奮を催すようなテレビ番組を閲覧中の場合であることが画像から確認されれば、訪問の必要性は低い。また運動等がすでに終わっている場合であっても、患者が元気な様子であること(例えば意識がはっきりしていること)が画像から確認されれば、訪問の必要性は低い。また管理者は、撮像装置を用いて患者とビデオ通話を行ってもよい。この場合、管理者は、画像だけでなく患者との会話の内容に基づいて、訪問の要否を判定可能である。管理端末装置400は、図34の画面において必要ありボタンと必要なしボタンの何れかの選択操作を受け付け、当該選択操作の結果をサーバシステム100に送信する。
【0246】
ステップS804において、判定処理部113は、対象患者の訪問要否を判定する。具体的には、判定処理部113は、管理者が必要ありボタンを選択した場合には訪問が必要と判定し、必要なしボタンを選択した場合には訪問が不用と判定する。訪問が必要である場合、ステップS805において、判定処理部113は、訪問フラグを表すvの値を1に維持する。訪問が不要である場合、ステップS806において、判定処理部113は、訪問フラグを表すvの値を0に変更する。
【0247】
ステップS807において、判定処理部113は、患者の訪問フラグを判定する。訪問フラグを表すvの値が1である場合(ステップS807:Yes)、判定処理部113は、対象患者を優先度(優先スコア、訪問優先度)の算出対象として選択する。具体的には、ステップS808において、判定処理部113は、対象患者の情報を用いて図12のS206-S207と同様の処理を実行する。一方、訪問フラグを表すvの値が0である場合(ステップS807:No)、判定処理部113は、対象患者を優先度(優先スコア)の算出対象から除外する。このようにすれば、図12のステップS206-S207に示した処理の対象から、訪問の必要性が低い患者を除外できる。
【0248】
以上のように、画像を用いて管理者に訪問要否の入力操作を促すことによって、患者のセンサ異常があった場合に、すぐに異常があった患者の状態を確認させること、及び、確認結果をシステムに反映させることが可能になる。結果として、スタッフの無駄な訪問を減らすことが可能となる。
【0249】
なお以上では、画像の閲覧及び訪問の要否判定を管理者が行う例を説明したが、これには限定されない。例えば、患者を撮像した画像はスタッフ端末装置310の表示部314に表示され、訪問の要否をスタッフが判定してもよい。
【0250】
またアラート通知に関する表示画面は図34に限定されず、例えば複数の患者に関する情報がリスト表示されてもよい。図35は、リストを用いてアラート通知を行う場合の表示例である。図35に示すように、表示処理部114は、患者氏名、所属(自宅または施設種別等)、睡眠/覚醒または在床/離床に関する状態、心拍数、呼吸数、温度等の情報を含むリストを表示させる処理を行う。また表示処理部114は、異常値が検出された項目について「!」を含むオブジェクトを表示させることによって、アラート通知を行ってもよい。このようにすれば、異常が検出された具体的な項目をわかりやすく提示できる。
【0251】
また表示処理部114は、図35に示すように、各患者に対応付けて患者状態確認アイコンを表示させる処理を行ってもよい。患者状態確認アイコンの選択操作が行われた場合に、対応する患者を撮像した撮像画像を表示させる処理が行われる点は、図34を用いて上述した例と同様である。この場合にも、管理者等による訪問要否の判定を適切にサポートすることが可能になる。なお図35では表示を省略しているが、図35に示すリストは、対応(訪問)要否の判定結果を表す情報を表示する列を含んでもよい。
【0252】
また表示処理部114は、優先度(優先スコアまたは訪問優先度)に基づくリスト表示を行ってもよい。例えば表示処理部114は、スタッフ端末装置310の表示部314に、優先度の高い順にソートされたリストを含むアラート通知を表示させる処理を行う。換言すれば、表示処理部114は、優先度をもとにスタッフが訪問するべき訪問先を一覧で表示してもよい。一覧表示があることで、スタッフが何らかの事情で訪問するこができない場合、次に優先度が高い訪問先に訪問するなど、柔軟な対応をスタッフに促すことが可能になる。
【0253】
例えば表示処理部114は、患者A、患者B、患者C、患者Dの順にソートされたリストを表示させることによって、訪問優先度がこの順に高いことをわかりやすく提示できる。なおアラート通知は患者単位で行われてもよいし、施設または患者宅単位で行われてもよい。優先度を用いたアラート通知を行うことによって、スタッフは優先度順に患者状況を確認できるため、業務の効率化が可能になる。例えば表示処理部114は、スタッフAが訪問担当者として選択された患者を、訪問優先度の順にソートしたリストを作成し、当該リストをスタッフAのスタッフ端末装置310に表示させる。ただし表示処理部114は、訪問担当者が未定である患者や、他のスタッフBが訪問担当者として選択された患者を含むリストを、スタッフAのスタッフ端末装置310に表示させてもよい。これらの患者も、業務状況によってはスタッフAが担当する可能性があるためである。
【0254】
またここでのリストは、上述したように特定のスタッフ向けにどの患者を訪問すべきかの一覧(例えばスタッフAが優先的に訪問すべき患者を一覧表示する情報)であってもよいがこれには限定されない。例えばリストは、管理者に向けてどの患者に注意すべきかの一覧表示であってもよい。例えば表示処理部114は、訪問が必要である全患者を、訪問優先度の順にソートしたリストを作成し、当該リストを管理端末装置400の表示部440に表示させてもよい。このようにすれば、訪問優先度の高い患者を優先的に処理する(例えば訪問スタッフを割り当てる)ことを管理者に促すことが可能になる。
【0255】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。またサーバシステム、患者用装置、スタッフ用装置、管理端末装置等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0256】
1…情報処理システム、10…患者情報計測システム、11…患者情報取得部、12…表示処理部、100…サーバシステム、110…処理部、111…患者情報取得部、112…スタッフ情報取得部、113…判定処理部、114…表示処理部、115…報知処理部、120…記憶部、130…通信部、200…患者用装置、210…患者端末装置、211…処理部、212…記憶部、213…通信部、214…表示部、215…操作部、216…撮像部、220…検出装置、230…温度計、240…湿度計、300…スタッフ用装置、310…スタッフ端末装置、311…処理部、312…記憶部、313…通信部、314…表示部、315…操作部、316…撮像部、400…管理端末装置、410…処理部、420…記憶部、430…通信部、440…表示部、450…操作部、500…家族端末装置、610…ベッド、620…マットレス、OB1-OB14,OB1b-OB4b,OB1c-OB2c…オブジェクト
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