(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168578
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】車両用ガラスモジュール
(51)【国際特許分類】
B60J 1/10 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B60J1/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085385
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】藤原 一弘
(57)【要約】
【課題】樹脂インサート成形に不向きな装飾部材を簡易に固定可能な車両用ガラスモジュールを提供する。
【解決手段】車両用ガラスモジュール10は、車外側の第1面14と車内側の第2面15とを有するガラス板1と、非磁性体によって形成され、ガラス板1の第1面14の外縁の少なくとも一部に沿って配置される第一装飾部材31と、ガラス板1の端面側に配置され、第一装飾部材31を支持する支持部材22と、ガラス板1及び支持部材22を接合する接合部21と、第一装飾部材31を支持部材22に固定する第一固定部材41と、を備えている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外側の第1面と車内側の第2面とを有するガラス板と、
非磁性体によって形成され、前記ガラス板の前記第1面の外縁の少なくとも一部に沿って配置される第一装飾部材と、
前記ガラス板の端面側に配置され、前記第一装飾部材を支持する支持部材と、
前記ガラス板及び前記支持部材を接合する接合部と、
前記第一装飾部材を前記支持部材に固定する第一固定部材と、を備えた車両用ガラスモジュール。
【請求項2】
前記第一固定部材は、前記第一装飾部材の外面に露出しない締結具である請求項1に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項3】
前記締結具は、前記第一装飾部材の長手方向における両端部の間の中間領域に配置されたリベットである請求項2に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項4】
前記第一装飾部材は、断面U字状の隙間を有しており、
前記リベットは、前記支持部材、前記接合部及び前記第一装飾部材に亘って設けられており、前記隙間に押し潰された係止部が配置されている請求項3に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項5】
前記第一固定部材とは異なる固定機構により前記第一装飾部材を前記支持部材に固定する第二固定部材を更に備えた請求項1に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項6】
前記第二固定部材が前記第一装飾部材の長手方向における両端部に配置され、
前記第一固定部材が前記第一装飾部材の前記両端部の間の中間領域に配置されている請求項5に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項7】
前記第一固定部材と前記第二固定部材とは前記支持部材に対して異なる向きに装着されている請求項5又は6に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項8】
前記接合部には、前記第一装飾部材の先端に密着する突起が形成されている請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項9】
前記ガラス板の前記第1面の外縁の少なくとも一部に沿い、且つ前記第一装飾部材とは離間する位置に配置された第二装飾部材を更に有する請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項10】
前記第二装飾部材は、磁性体によって構成されており、インサート成形樹脂によって前記ガラス板と一体化されている請求項9に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項11】
前記第二装飾部材は、天面部と、前記天面部の外縁から前記第2面側に向けて延設される側壁部とを有する中空形状であって、
前記側壁部の先端領域は、前記ガラス板の前記外縁に沿って先細となる形状であり、前記第二装飾部材の中空部に連通する孔部が先端面に形成されている請求項10に記載の車両用ガラスモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ガラスモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高級車等において、車両用窓ガラスの枠体に金属光沢等を有する装飾部材を取付けることがある。特許文献1には、装飾部材(文献では、「装飾モール」)を車両用窓ガラスに取付ける装飾部材付き車両用窓ガラスの製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の装飾部材付き車両用窓ガラスの製造方法では、下型と上型とを有する金型のうち、下型に長尺な装飾部材を装着し、装飾部材の上にガラス板を装着して上型を閉じて型締めし、金型内に樹脂材料を注入することでガラス板の周辺部に装飾部材とともに樹脂枠体を一体成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
装飾部材は、その素材やデザイン上の問題で、樹脂インサート成形によるガラス板への取付けができないことがある。具体的には、装飾部材が非磁性体(樹脂、非磁性金属等)で構成される場合、装飾部材を金属製の金型に磁力を用いて固定できないため、金型で装飾部材を押圧する必要があり、装飾部材が傷つくおそれがある。このため、金型で装飾部材を押圧せずに樹脂インサート成形を行った場合、ガラス板に対して装飾部材を適正な位置に固定できない。
【0006】
そこで、樹脂インサート成形に不向きな装飾部材を簡易に固定可能な車両用ガラスモジュールが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用ガラスモジュールの特徴構成は、車外側の第1面と車内側の第2面とを有するガラス板と、非磁性体によって形成され、前記ガラス板の前記第1面の外縁の少なくとも一部に沿って配置される第一装飾部材と、前記ガラス板の端面側に配置され、前記第一装飾部材を支持する支持部材と、前記ガラス板及び前記支持部材を接合する接合部と、前記第一装飾部材を前記支持部材に固定する第一固定部材と、を備えた点にある。
【0008】
本構成では、車両用ガラスモジュールは、非磁性体によって形成された第一装飾部材がガラス板の車外側の第1面の外縁の少なくとも一部に沿って配置され、第一装飾部材を支持する支持部材が接合部によってガラス板に接合され、第一装飾部材を支持部材に固定する第一固定部材が備えられている。したがって、車両用ガラスモジュールは、ガラス板の外縁に沿って配置される非磁性体の第一装飾部材について、樹脂インサート成形をすることなく、第一固定部材のみで支持部材に固定できる。このように、樹脂インサート成形に不向きな第一装飾部材を簡易に固定可能な車両用ガラスモジュールとなっている。
【0009】
他の特徴構成は、前記第一固定部材は、前記第一装飾部材の外面に露出しない締結具である点にある。
【0010】
本構成のように、第一固定部材を第一装飾部材の外面に露出しない締結具とすれば、車両用ガラスモジュールにおいて第一装飾部材の外観を向上させることができる。
【0011】
他の特徴構成は、前記締結具は、前記第一装飾部材の長手方向における両端部の間の中間領域に配置されたリベットである点にある。
【0012】
車両用ガラスモジュールにおいて、第一装飾部材をガラス板の外縁に沿って固定する場合、第一装飾部材の長手方向における両端部の間の領域は、ガラス板の外縁に沿って配置される。その場合、ガラス板の外縁に沿う部位において第一装飾部材及び支持部材の配置領域は、ピラーから離れたガラス板占有領域になるため幅狭である。本構成のように第一固定部材(締結具)が、第一装飾部材の長手方向における両端部の間の中間領域に配置されたリベットであれば、仮に第一固定部材による第一装飾部材の係り幅が小さくても、支持部材に第一装飾部材を固定可能となる。したがって、本構成であれば、第一固定部材によって樹脂インサート成形に不向きな第一装飾部材を支持部材に確実に固定できる。
【0013】
他の特徴構成は、前記第一装飾部材は、断面U字状の隙間を有しており、前記リベットは、前記支持部材、前記接合部及び前記第一装飾部材に亘って設けられており、前記隙間に押し潰された係止部が配置されている点にある。
【0014】
本構成のように、第一装飾部材は、断面U字状の隙間を有しており、リベットは、支持部材、接合部及び第一装飾部材に亘って設けられており、隙間に押し潰された係止部が配置されれば、車両用ガラスモジュールは第一装飾部材の表面に第一固定部材を露出させることなく、係止部が断面U字状の隙間に収容される。これにより、車両用ガラスモジュールは、第一固定部材による装飾性の低下が容易に回避され、第一装飾部材の表面を有効に利用して高級感を高めることができる。
【0015】
他の特徴構成は、前記第一固定部材とは異なる固定機構により前記第一装飾部材を前記支持部材に固定する第二固定部材を更に備えた点にある。
【0016】
本構成のように、第一固定部材とは異なる固定機構を有し、第一装飾部材を支持部材に固定する第二固定部材を更に備えることで、複数の固定部材を適宜選択して第一装飾部材を確実に固定できる。
【0017】
他の特徴構成は、前記第二固定部材が前記第一装飾部材の長手方向における両端部に配置され、前記第一固定部材が前記第一装飾部材の前記両端部の間の中間領域に配置されている点にある。
【0018】
車両用ガラスモジュールにおいて、第一装飾部材をガラス板の外縁に沿って固定する場合、例えば支持部材をガラス板の外縁からガラス板の板面に沿う方向に延設させて構成することで、第一装飾部材の長手方向の両端部は、幅広である。一方、第一装飾部材の長手方向の両端部の間の領域は、ピラーから離れたガラス板占有領域になるため幅狭である。そこで、本構成では、第二固定部材が第一装飾部材の長手方向における両端部に配置され、第一固定部材が第一装飾部材の両端部の間の領域に配置されている。このように、第一装飾部材の長手方向における両端部と両端部の間の領域とで、異なる固定部材を用いて支持部材に第一装飾部材を固定することで、固定位置に応じて固定部材を適正に選択できる。
【0019】
他の特徴構成は、前記第一固定部材と前記第二固定部材とは前記支持部材に対して異なる向きに装着されている点にある。
【0020】
本構成のように、第一固定部材と第二固定部材とは支持部材に対して異なる向きに装着されていれば、例えば第一固定部材をガラス板の板面に沿う向きに装着し、第二固定部材をガラス板の板面に垂直な方向に装着することができる。これにより、車両用ガラスモジュールにおいて、支持部材に第一装飾部材を固定する上で、支持部材と第一装飾部材との位置関係に応じて第一固定部材及び第二固定部材を適正に組み合わせることができる。
【0021】
他の特徴構成は、前記接合部には、前記第一装飾部材の先端に密着する突起が形成されている点にある。
【0022】
本構成の車両用ガラスモジュールのように、接合部に第一装飾部材の先端に密着する突起が形成されていれば、第一装飾部材は接合部の突起を利用して車両用ガラスモジュールにおける位置決めを容易に行うことができる。しかも、接合部と第一装飾部材とを接触させることにより、一般的に支持部材よりも柔軟性の高い接合部により第一装飾部材の損傷を防止できる。
【0023】
他の特徴構成は、前記ガラス板の前記第1面の外縁の少なくとも一部に沿い、且つ前記第一装飾部材とは離間する位置に配置された第二装飾部材を更に有する点にある。
【0024】
本構成のように、ガラス板の外縁に、第一装飾部材に加え、第一装飾部材から離間する位置に第二装飾部材が備えられることで、車両用ガラスモジュールの高級感を向上させることができる。
【0025】
他の特徴構成は、前記第二装飾部材は、磁性体によって構成されており、インサート成形樹脂によって前記ガラス板と一体化されている点にある。
【0026】
本構成のように、第二装飾部材が磁性体であり、第二装飾部材がインサート成形樹脂によってガラス板に一体成形されれば、車両用ガラスモジュールはガラス板の外縁に第二装飾部材を確実に固定できる。
【0027】
他の特徴構成は、前記第二装飾部材は、天面部と、前記天面部の外縁から前記第2面側に向けて延設される側壁部とを有する中空形状であって、前記側壁部の先端領域は、前記ガラス板の前記外縁に沿って先細となる形状であり、前記第二装飾部材の中空部に連通する孔部が先端面に形成されている点にある。
【0028】
車両用ガラスモジュールにおいて、天面部及び側壁部を有する第二装飾部材をガラス板の外縁に沿って配置し、第二装飾部材をインサート成形樹脂によってガラス板に一体化する場合、成形時に第二装飾部材の先端側に溶融樹脂が滞留して第二装飾部材の先端側がインサート成形樹脂によって広く覆われることがある。そうなると、車両用ガラスモジュールは第二装飾部材によって装飾される領域が小さくなる。これに対し、本構成のように、先端領域が長手方向に沿って先細となる形状であり、先端領域に第二装飾部材の中空部に連通する孔部が長手方向に沿って形成されていれば、インサート成形時に溶融樹脂が第二装飾部材の先領領域に設けられた孔部を介して流通する。これにより、インサート成形時に第二装飾部材の先端領域に滞留する溶融樹脂を減少させることができるので、車両用ガラスモジュールにおいて第二装飾部材の装飾領域を大きく確保できる。また、インサート成形時において、溶融樹脂の合流地点で発生し易い溶融樹脂のウェルドライン(融合不良現象)についても、滞留する溶融樹脂が減少することで効果的に抑制することができる。その結果、車両用ガラスモジュールは、第二装飾部材による高級感を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】車両用ガラスモジュールが取り付けられる車両の前部付近の図である。
【
図2】車両用ガラスモジュールの車外側平面図である。
【
図3】車両用ガラスモジュールの車内側及び下面を示す部分斜視図である。
【
図4】車両用ガラスモジュールの部分分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明に係る車両用ガラスモジュールの実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、車両用ガラスモジュールの一例として、車両前部の固定窓に適用したガラスモジュールとして説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0031】
以下、車両用ガラスモジュール10を車両前部の固定窓に適用した実施形態について説明する。
【0032】
〔第1実施形態〕
本発明に係る車両用ガラスモジュール10の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る車両用ガラスモジュール10が取り付けられる車両の前部付近の図、
図2は車両用ガラスモジュール10を車外から見た平面図、
図3は車両用ガラスモジュール10の車内側及び下面を示す部分斜視図、
図4は車両用ガラスモジュール10の車体前後方向における中間領域の部分分解斜視図である。
【0033】
図1に示されるように、車両用ガラスモジュール10(以下、「ガラスモジュール10」と称する。)は、例えば車体側面の前部ドア5の窓ガラス6に隣接する固定窓を構成している。より詳細に説明すると、前部ドア5の窓ガラス6は矩形状に形成されており、窓ガラス6の前辺6aはガラスモジュール10に隣接している。
【0034】
車体の側部には、三角形状のガラスモジュール10が取り付けられる取付凹部(不図示)が形成されている。取付凹部は、ガラスモジュール10の形状に合わせて三角形状に形成されており、取付凹部の一辺が窓ガラス6の前辺6aに隣接し、他辺が車体に隣接し、斜辺がАピラーに隣接している。
【0035】
図2及び
図3に示されるように、ガラスモジュール10は、ガラス板1と、ガラス板1の周縁1aに沿って取り付けられたウィンドウアセンブリー2と、ガラスモジュール10を取付凹部に仮止めするためのクリップ4(仮止め部材)と、を備えている。
【0036】
ガラスモジュール10は、上辺11、後辺12、及び下辺13を輪郭とする三角形状に形成されている。上辺11は、前方に向かうにつれて湾曲しつつ下方に傾斜するように形成されている。後辺12は、上述した前部ドア5の窓ガラス6の前辺6aと対向しており、車両前方に向けて傾斜する直線状に形成されている。下辺13は、車両の前後方向に沿ってほぼ水平に形成されている。ガラス板1は、車外側の第1面14と車内側の第2面15とを有する(
図6、
図7参照)。
【0037】
ガラス板1としては、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することもでき、2枚以上のガラスを中間膜(樹脂膜)で貼り合わせた合わせガラスであってもよい。
【0038】
本実施形態に係るガラス板1の厚みは特には限定されないが、2.0~7.0mmとすることが好ましく、2.3~5.0mmとすることがさらに好ましい。
【0039】
ガラス板1の周縁1aには、黒などの濃色のセラミックで形成されたマスク層16が積層されている。マスク層16は、車内又は車外からの視野を遮蔽するものであり、ガラス板1の内面の3辺に沿って積層されている。マスク層16は、セラミックなどの種々の材料で形成することができる。マスク層16は、セラミックを積層するほか、濃色の樹脂製の遮蔽フィルムを貼り付けることで形成することもできる。
【0040】
ウィンドウアセンブリー2は、ガラス板1と車体との隙間を埋めるものであり、
図3に示されるように、ガラス板1の周縁1aに沿って形成される接合部21と接合部21の外面側に配置される支持部材22(
図5参照)とを有している。上述したように、ガラス板1の周縁1aにはマスク層16が積層されているが、ウィンドウアセンブリー2は、マスク層16の幅(ガラス板1の端縁から内側へ向かう長さ)よりも小さい幅で、ガラス板1の周縁1aに取り付けられている。具体的には、
図6及び
図7に示されるように、ウィンドウアセンブリー2の接合部21は、ガラス板1の周縁1aを挟むように、断面において、ガラス板1の内面に沿う帯状の内側部位23、ガラス板1の外面に沿う帯状の外側部位25、及びこれら内側部位23及び外側部位25を連結するように、ガラス板1の端面に沿って延びる連結部位24を有し、全体としてU字型の断面形状を有している。なお、内側部位23は、マスク層16上に配置されている。なお、
図6及び
図7では、マスク層16が省略されている。
【0041】
接合部21の厚さ、つまり、ガラス板1の厚み方向の厚さは、1mm~10mmとすることが好ましく、1mm~5mmであることがさらに好ましい。
【0042】
ガラスモジュール10が車体に取り付けられたとき、ガラス板1の周縁1aが取付凹部の開口に対して接着剤等により固定され、開口をガラス板1で覆うようになっている。
【0043】
接合部21を構成する材料は特には限定されないが、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)やウレタンにより、射出成形などの公知の方法で形成することができる。その他、例えば、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)やEPDM(エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム)等によって形成することもできる。接合部21は、例えばガラス板1の上辺11、後辺12、及び下辺13の外周すべてに亘ってインサート成形によって連続して形成されている。
【0044】
図5~
図7に示されるように、接合部21は、車外方向に向けて延出される第一延出部26と、第一延出部26に連続して斜め下方に向けて延出される第二延出部27とを有する。また、接合部21の内側部位23及び連結部位24を含む下側部位(第一延出部26)の外面に、後述の第一装飾部材31を支持する支持部材22が一体成形されている。すなわち、接合部21及び支持部材22は、インサート成形によって構成されている。支持部材22は、例えばインサート成形に不向きな材料で構成される場合には、インサート成形に代えて接合部21に締結してもよい。
【0045】
図2及び
図4~
図7に示されるように、ガラスモジュール10には、車外側面において、下辺13に沿って第一装飾部材31が取り付けられている。第一装飾部材31を構成する材料は特には限定されないが、例えば樹脂材料等の非磁性体で形成することができる。第一装飾部材31は、後述の固定部材40(第一固定部材41及び第二固定部材42)により接合部21及び支持部材22に取り付けられる。
【0046】
図2及び
図4に示されるように、第一装飾部材31は、棒状であって車両外側に露出する部分として上面部33及び側面部34を有して車両前後方向Xに延出している。第一装飾部材31は、X1側の前端部31aと、X2側の後端部31cと、前端部31aと後端部31cとの間の中間領域31bとを有する。第一装飾部材31は、前端部31a及び後端部31cがガラス板1の周縁1aよりも外側に配置され、中間領域31bがガラス板1の周縁1aに沿うように配置されている。
【0047】
図5に示されるように、第一装飾部材31において側面部34の内面側のうち、車両前後方向Xの前端側(X1側)には、車内側に突出する第一筒状部35が設けられ、
図7に示されるように、車両前後方向Xの後端側(X2側)には、車内側に突出する第二筒状部36が設けられている。本実施形態では、第一筒状部35が前端部31aの内面側に2つ設けられ、第二筒状部36は後端部31cの内面側に1つ設けられている。
【0048】
第一装飾部材31において側面部34の内面側のうち、車両前後方向Xの両端部31a,31cを除く部分(中間領域31b)には、複数の張出部37が車両前後方向Xに沿って分散して設けられている。張出部37は板状であって上面部33に沿って設けられており、貫通孔38が形成されている。接合部21及び支持部材22には、貫通孔38に対応する位置に孔部21a,22aが夫々設けられている。
【0049】
図3及び
図5に示されるように、第一装飾部材31のX1側の前端部31aは、接合部21及び支持部材22の内面側から第一筒状部35に第二固定部材42が取付けられる。本実施形態では、第二固定部材42がねじ部材であり、第一装飾部材31は、前端部31aがねじ部材によって支持部材22に固定される。
【0050】
図3及び
図6に示されるように、第一装飾部材31の中間領域31bでは、接合部21及び支持部材22の下面側から第一装飾部材31の張出部37に第一固定部材41が取付けられる。本実施形態では、第一固定部材41が、第一装飾部材31の長手方向(車両前後方向X)における両端部31a,31cの間の中間領域31bに配置されたリベットである。リベット(第一固定部材41、締結具の一例)は、支持部材22から第一装飾部材31に亘って設けられている。これにより、第一装飾部材31は、中間領域31bがリベット(第一固定部材41)によって支持部材22に固定される。リベットの装着方法は様々な形態が考えられるが、リベットの中空領域に治具を取付け、この治具を外側に引くことによって先端を押し潰して係止部41aを形成する方法が挙げられる。
【0051】
本実施形態では、ガラスモジュール10は、非磁性体によって形成された第一装飾部材31がガラス板1の車外側の第1面14の外縁の少なくとも一部に沿って配置され、第一装飾部材31を支持する支持部材22が接合部21によってガラス板1に接合され、第一装飾部材31を支持部材22に固定する第一固定部材41が備えられている。したがって、ガラスモジュール10は、ガラス板1の外縁に沿って配置される非磁性体の第一装飾部材31について、インサート成形樹脂によって固定することなく、第一固定部材41のみで支持部材22に固定できる。このように、本実施形態は、樹脂インサート成形に不向きな第一装飾部材31を簡易に固定可能なガラスモジュール10となっている。
【0052】
また、第一固定部材41が第一装飾部材31の外面に露出しない締結具である。これにより、ガラスモジュール10において第一装飾部材31の外観を向上させることができる。
【0053】
また、ガラスモジュール10において、第一装飾部材31をガラス板1の外縁に沿って固定する場合、第一装飾部材31の長手方向における両端部31a,31cの間の中間領域31bは、ガラス板1の外縁に沿って配置される。その場合、ガラス板1の外縁に沿う部位において第一装飾部材31及び支持部材22の配置領域は、ピラーから離れたガラス板占有領域になるため幅狭である。本実施形態のように第一固定部材41が、第一装飾部材31の中間領域31bに配置されたリベットであれば、仮に第一固定部材41による第一装飾部材31の係り幅が小さくても、支持部材22に第一装飾部材31を固定できる。したがって、本実施形態であれば、第一固定部材41のリベットによって樹脂インサート成形に不向きな第一装飾部材31を支持部材22に確実に固定できる。
【0054】
第一装飾部材31は、上面部33、側面部34、及び張出部37によって、断面U字状の隙間Gを有している。リベット(第一固定部材41)は、支持部材22、接合部21及び第一装飾部材31の張出部37に亘って設けられており、隙間Gに押し潰された係止部41aが配置されている。これにより、ガラスモジュール10は、第一装飾部材31の表面に第一固定部材41を露出させることなく第一装飾部材31を第一固定部材41によって固定できる。その結果、ガラスモジュール10は、第一固定部材41による装飾性の低下が容易に回避され、第一装飾部材31の表面を有効に利用して高級感を高めることができる。
【0055】
図3及び
図7に示されるように、車両前後方向XのX2側の後端部31cでは、接合部21及び支持部材22の内面側から第一装飾部材31の第二筒状部36にねじ部材(第二固定部材42)が取付けられる。本実施形態では、第一装飾部材31の後端部31cについても、前端部31aと同じく、ねじ部材(第二固定部材42)によって支持部材22に固定される。
【0056】
このように、ガラスモジュール10は、リベット(第一固定部材41)と、リベット(第一固定部材41)とは異なる固定機構により第一装飾部材31を支持部材22に固定するねじ部材(第二固定部材42)を備えている。これにより、ガラスモジュール10は、複数の固定部材を適宜選択して第一装飾部材31を固定できる。
【0057】
ガラスモジュール10は、支持部材22をガラス板1の外縁からガラス板の板面に沿う方向に延設させ、第一装飾部材31の長手方向の両端部31a,31cを支持部材22の当該延設部分にねじ部材(第二固定部材42)によって固定している。一方、第一装飾部材31の長手方向の両端部31a,31cの間の中間領域31bは、ガラス板1の外縁に沿って配置される支持部材22に固定する必要があり、ガラス板1の外縁に沿う支持部材22は幅狭である。そこで、本実施形態では、リベットから成る第一固定部材41が第一装飾部材31の中間領域31bに配置されている。このように、第一装飾部材31の長手方向における両端部31a,31cと中間領域31bとで、異なる固定部材を用いて支持部材22に第一装飾部材31を固定することで、第一装飾部材31は固定位置に応じて固定部材を適正に選択できる。
【0058】
リベット(第一固定部材41)は、支持部材22に対して車両上下方向に装着されている。一方、ねじ部材(第二固定部材42)は、支持部材22に対して車両左右方向に装着されている。すなわち、第一固定部材41と第二固定部材42とは支持部材22に対して異なる向きに装着されている。このように、第一固定部材41と第二固定部材42とは支持部材22に対して互いに異なる向きに装着されていれば、ガラスモジュール10において、支持部材22に第一装飾部材31を固定する上で、支持部材22と第一装飾部材31との位置関係に応じて第一固定部材41及び第二固定部材42を適正に組み合わせることができる。
【0059】
図6及び
図7に示されるように、接合部21には、第一装飾部材31の先端に密着する突起28が形成されている。具体的には、接合部21には、第一装飾部材31の上面部33の端部33a(第一装飾部材31の先端の一例)に対向する上方位置に突起28が設けられている。これにより、第一装飾部材31が接合部21及び支持部材22に固定された際に、第一装飾部材31の端部33aに接合部21の突起28が密着する。このように、接合部21に第一装飾部材31の先端に密着する突起28が形成されていれば、第一装飾部材31は接合部21の突起28を利用してガラスモジュール10における位置決めを容易に行うことができる。しかも、接合部21と第一装飾部材31とを接触させることにより、支持部材22よりも柔軟性の高い接合部21により第一装飾部材31の損傷を防止できる。
【0060】
図2に示されるように、ガラスモジュール10には、車外側面において、上辺11の上部に沿って第二装飾部材51が接合部21に取り付けられている。第二装飾部材51を構成する材料は特には限定されないが、例えば金属等の磁性材料で形成することができる。第二装飾部材51は、例えばインサート成形により接合部21に取り付けられる。
【0061】
第二装飾部材51は、ガラス板1の第1面14の外縁の少なくとも一部に沿い、且つ第一装飾部材31とは離間する位置に配置されている。第二装飾部材51は、磁性体によって構成されており、インサート成形樹脂である接合部21によってガラス板1と一体化されている。
【0062】
ガラス板1の外縁に、第一装飾部材31に加え、第一装飾部材31から離間する位置に第二装飾部材51が備えられることで、ガラスモジュール10の高級感をより向上させることができる。また、第二装飾部材51が磁性体であり、金型に第二装飾部材51を吸着させた状態で第二装飾部材51がインサート成形樹脂によってガラス板1に一体成形されれば、ガラスモジュール10はガラス板1の外縁に第二装飾部材51を容易に固定できる。
【0063】
図2及び
図8に示されるように、第二装飾部材51は、天面部52と、天面部52の外縁から第2面15の側に向けて延設される側壁部53とを有する中空形状に形成されている。すなわち、第二装飾部材51は、天面部52と側壁部53とによって囲われた中空部54を有する。側壁部53の先端領域55は、ガラス板1の外縁に沿って先細となる形状であり、先端領域55の先端面には第二装飾部材51の中空部54に連通する孔部56が形成されている。
【0064】
従来の車両用ガラスモジュールでは、天面部及び側壁部を有する装飾部材をガラス板の外縁に沿って配置し、この装飾部材をインサート成形樹脂によってガラス板に一体化する場合、成形時に装飾部材の先端側に溶融樹脂が滞留して装飾部材の先端側がインサート成形樹脂によって広く覆われることがある。そうなると、車両用ガラスモジュールは装飾部材によって装飾される領域が小さくなる。これに対し、本実施形態のように、第二装飾部材51の先端領域55が長手方向に沿って先細となる形状であり、先端領域55に第二装飾部材51の中空部54に連通する孔部56が長手方向に沿って形成されていれば、インサート成形時に溶融樹脂が第二装飾部材51の先端領域55に設けられた孔部56を介して流通する。これにより、インサート成形時に第二装飾部材51の先端領域55に滞留する溶融樹脂を減少させることが可能となるので、ガラスモジュール10において第二装飾部材51の装飾領域を大きく確保できる。また、インサート成形時において、溶融樹脂の合流地点で発生し易い溶融樹脂のウェルドライン(融合不良現象)についても、滞留する溶融樹脂が減少することで効果的に抑制することができる。その結果、ガラスモジュール10は第二装飾部材51による高級感を一層向上させることができる。
【0065】
[その他の実施形態]
(1)上記の実施形態では、ガラス板1が三角形状である例を示したが、ガラス板1の形状は、三角形状以外でもよく、他の多角形状や円形等、種々の形状にすることができる。
(2)上記の実施形態では、ガラスモジュール10が第一装飾部材31及び第二装飾部材51を備える例を示したが、ガラスモジュール10は第一装飾部材31及び第二装飾部材51の一方のみを備えて構成してもよい。また、ガラスモジュール10における第一装飾部材31及び第二装飾部材51の位置は、上記の実施形態に特定されず適宜変更してもよい。
(3)上述した第一固定部材41及び第二固定部材42は一例にすぎず、第一固定部材41をリベット以外の締結具で構成してもよいし、第二固定部材42をねじ部材以外の締結具で構成してもよい。
(4)上記の実施形態では、ガラスモジュール10を前部ドア5の窓ガラス6の前方に配置する例を示したが、ガラスモジュール10の位置は後部ドアの窓ガラスの後方等、他の位置でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、車両用ガラスモジュールに広く利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 :ガラス板
1a :周縁
10 :ガラスモジュール(車両用ガラスモジュール)
14 :第1面
15 :第2面
21 :接合部
22 :支持部材
28 :突起
31 :第一装飾部材
31a :前端部
31b :中間領域
31c :後端部
40 :固定部材
41 :リベット(第一固定部材)
41a :係止部
42 :ねじ部材(第二固定部材)
51 :第二装飾部材
52 :天面部
53 :側壁部
54 :中空部
55 :先端領域
56 :孔部
G :隙間
X :車両前後方向