(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168580
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】磁気シールド構造、磁気センサ、およびエンコーダ
(51)【国際特許分類】
G12B 17/02 20060101AFI20241128BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20241128BHJP
G01D 5/12 20060101ALI20241128BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20241128BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G12B17/02
G01R33/02 W
G01D5/12 Z
H05K9/00 H
G01D5/245 110X
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085391
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】東山 慎吾
【テーマコード(参考)】
2F077
2F078
2G017
5E321
【Fターム(参考)】
2F077AA21
2F077JJ07
2F077PP11
2F077UU26
2F078HA11
2G017AA02
2G017AB01
2G017AC01
2G017AC09
2G017AD29
5E321AA01
5E321GG07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】磁気センサなど外部からの磁場に対する保護が必要な物、すなわち磁気シールド対象物に対して、最低限必要な性能は担保しつつ、より低コスト化可能な磁気シールド技術を提供すること。
【解決手段】磁気シールド構造10は、磁気シールド対象物MSに対して磁気シールドによる保護を要する要保護部位X、X’に対する磁気シールド保護を行う構成として、磁気検知方向に面する検知方向側方部Fx、Fx’を遮蔽する側面シールド部2、3と、底面方向部Fbを遮蔽する底面シールド部5と、からなり、かつ、磁気検知方向に面しない非検知方向側方部Fy等にはシールドを設けない。
【選択図】
図1-2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気検知方向に面する検知方向側方部、前記磁気検知方向に面しない非検知方向側方部、ならびに全側面に交わる方向に設けられている底面方向部を備えてなる磁気シールド対象物における磁気シールド構造であって、
該検知方向側方部を遮蔽する側面シールド部と、
該底面方向部を遮蔽する底面シールド部とからなり、
該非検知方向側方部にはシールドが設けられていない
ことを特徴とする、磁気シールド構造。
【請求項2】
磁気検知方向に面する二の検知方向側方部、前記磁気検知方向に面しない二の非検知方向側方部、ならびに全側面に交わる方向に設けられている二の底面方向部を備えてなる磁気センサにおける磁気シールド構造であって、
二の該検知方向側方部を遮蔽する側面シールド部と、
少なくとも一の該底面方向部を遮蔽する底面シールド部とからなり、
該非検知方向側方部にはシールドが設けられていない
ことを特徴とする、磁気シールド構造。
【請求項3】
前記底面シールド部は、前記磁気センサの設置対象への設置には用いられない底面方向部、すなわち非設置底面方向部の遮蔽用として設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の磁気シールド構造。
【請求項4】
二の前記底面シールド部を有することを特徴とする、請求項2に記載の磁気シールド構造。
【請求項5】
前記側面シールド部および底面シールド部は一体をなしていることを特徴とする、請求項1、2、3、4のいずれかに記載の磁気シールド構造。
【請求項6】
エンコーダに搭載される磁気センサ用であることを特徴とする、請求項1、2、3、4のいずれかに記載の磁気シールド構造。
【請求項7】
請求項1、2、3、4のいずれかに記載の磁気シールド構造を備えていることを特徴とする、磁気センサ。
【請求項8】
請求項7に記載の磁気センサを備えていることを特徴とする、エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気シールド構造、磁気センサ、およびエンコーダに係り、特に、エンコーダ等における磁気シールド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、エンコーダに搭載された磁気センサに対する従来の磁気シールド方式を示す斜視の説明図である。また
図7は、
図6に示したエンコーダ等の内部を示す切断状態の斜視説明図である。これらに示すようにエンコーダECに搭載されている磁気センサMSにおける外部磁場からの保護、すなわち要保護部位X、X’の保護は、鉄等の磁性体で形成された袋状のシールド610でエンコーダEC全体を被覆することによって行うことが、従来一般的である。この方式は、外部からの磁場に対する保護としては理想的である。
【0003】
エンコーダのシールド技術については従来、特許出願等も多くなされている。たとえば後掲特許文献1には、安価で検出性能の高い回転速度センサ具備軸受として、シールリップに透磁率の高い磁性粉末を混入したシール体をエンコーダの外方に配置し、シール体取り付け用カバーは磁性材で形成するという構成が開示されている。そしてこの構成は、エンコーダを外部の強磁場から保護する磁気シールドとして機能し、回転速度センサの検出精度を向上できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-23597号公報「回転速度センサを備えた軸受」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、磁気センサを外部磁場から保護するためには、エンコーダ全体を被覆するような、磁性体製の袋状のシールドを用いることが一般的、かつ理想的である。しかし、かかる袋状のシールドでは、加工上高価になることが多い。シールドとしての最低限必要な性能は担保しつつ、より低コスト化できることが望ましい。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の欠点を踏まえ、磁気センサなど外部からの磁場に対する保護が必要な物、すなわち磁気シールド対象物に対して、最低限必要な性能は担保しつつ、より低コスト化、安価化可能な磁気シールド技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は上記課題について検討を行い、磁気センサの要保護部位など、外部磁場からの保護が必要な部位に限定して磁気シールドの形状を形成することに想到した。その結果、磁場に対する保護として必要最小限の性能は少なくとも得ることができること、その上、従来よりも安価となり、製造コスト低減に寄与できることを確認した。そして、以上の成果に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0008】
〔1〕 磁気検知方向に面する検知方向側方部、前記磁気検知方向に面しない非検知方向側方部、ならびに全側面に交わる方向に設けられている底面方向部を備えてなる磁気シールド対象物における磁気シールド構造であって、該検知方向側方部を遮蔽する側面シールド部と、該底面方向部を遮蔽する底面シールド部とからなり、該非検知方向側方部にはシールドが設けられていないことを特徴とする、磁気シールド構造。
〔2〕 磁気検知方向に面する二の検知方向側方部、前記磁気検知方向に面しない二の非検知方向側方部、ならびに全側面に交わる方向に設けられている二の底面方向部を備えてなる磁気センサにおける磁気シールド構造であって、二の該検知方向側方部を遮蔽する側面シールド部と、少なくとも一の該底面方向部を遮蔽する底面シールド部とからなり、該非検知方向側方部にはシールドが設けられていないことを特徴とする、磁気シールド構造。
〔3〕 前記底面シールド部は、前記磁気センサの設置対象への設置には用いられない底面方向部、すなわち非設置底面方向部の遮蔽用として設けられていることを特徴とする、〔2〕に記載の磁気シールド構造。
【0009】
〔4〕 二の前記底面シールド部を有することを特徴とする、〔2〕に記載の磁気シールド構造。
〔5〕 前記側面シールド部および底面シールド部は一体をなしていることを特徴とする〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕のいずれかに記載の磁気シールド構造。
〔6〕 エンコーダに搭載される磁気センサ用であることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕のいずれかに記載の磁気シールド構造。
〔7〕 〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕のいずれかに記載の磁気シールド構造を備えていることを特徴とする、磁気センサ。
〔8〕 〔7〕に記載の磁気センサを備えていることを特徴とする、エンコーダ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の磁気シールド構造、磁気センサ、およびエンコーダは上述のように構成されるため、これらによれば、磁気センサなど外部からの磁場に対する保護が必要な物、すなわち磁気シールド対象物に対して、最低限必要な磁気シールド性能を担保しつつ、より低コスト化、安価化することができる。本発明磁気シールド構造によれば、シールドその物のコストだけでなく、磁気センサ、エンコーダなど、磁気シールド構造が用いられる製品等全体において、製造コストや、使用に際しての初期費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明磁気シールド構造を用いる磁気シールド対象物の構成を模式的に示す斜視の説明図である。
【
図1-2】本発明磁気シールド構造を、
図1に示す磁気シールド対象物に用いている状態を示す斜視の説明図である。
【
図1-3】異なる構成の本発明磁気シールド構造を、
図1に示す磁気シールド対象物に用いている状態を示す斜視の説明図である。
【
図2】一体型の構成の本発明磁気シールド構造を模式的に示す斜視の説明図である。
【
図2-2】
図2に示す本発明磁気シールド構造を、
図1に示す磁気シールド対象物に用いている状態を示す斜視の説明図である。
【
図3】本発明磁気シールド構造適用対象の磁気センサ搭載エンコーダの例を示す側断面図である。
【
図4】
図3に示した磁気センサに本発明の一体型磁気シールド構造実施例を使用した状態を示す斜視図である。
【
図5】
図4に示した一体型磁気シールド構造実施例の正六面図および斜視図である。
【
図6】エンコーダに搭載された磁気センサに対する従来の磁気シールド方式を示す斜視の説明図である。
【
図7】
図6に示したエンコーダ等の内部を示す切断状態の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。なお
図1~3は模式的な図であり、本発明が図示された形態に限定されるものではない。
図1は、本発明磁気シールド構造を用いる磁気シールド対象物の構成を模式的に示す斜視の説明図である。また、
図1-2は、本発明磁気シールド構造を、
図1に示す磁気シールド対象物に用いている状態を示す斜視の説明図である。
図1に示すように本磁気シールド構造10の適用対象である磁気シールド対象物MSは、磁気検知方向に面する検知方向側方部Fx等、磁気検知方向に面しない非検知方向側方部Fy等’、ならびに全側面に交わる方向に設けられている底面方向部Fb等を備えているものとして把握される。また、要保護部位X等は、磁気シールド対象物MS中において磁気シールドによる保護を要する部位を示す。
【0013】
図では、検知方向側方部はFx、Fx’、要保護部位はX、X’、とそれぞれ二個が示されているが、本発明はかかる個数的な制約には限定されない。つまり、たとえば、検知方向側方部や要保護部位が一個であっても、また他の個数であっても、本発明からは除外されない。したがって、かかる個数的な制約に限定されないことを示す意味合いを含め、「検知方向側方部Fx等」、「要保護部位X等」、「側面シールド部2等」などの表現がなされる。
【0014】
図1-2に示すように本磁気シールド構造10は、上記構成を有する磁気シールド対象物MSに対して磁気シールド保護を行う構成として、その検知方向側方部Fx等を遮蔽する側面シールド部2等と、底面方向部Fbを遮蔽する底面シールド部5とからなる構成をとり、さらには、非検知方向側方部Fy等にはシールドが設けられていないことを特徴的な構成とする。
【0015】
かかる構成の本磁気シールド構造10によれば、磁気シールド対象物MSの検知方向側方部Fx等は、それぞれ側面シールド部2等によって遮蔽され、また底面方向部Fbは底面シールド部5によって遮蔽される。ここで、検知方向側方部Fx等に位置する要保護部位X等に対して特に、側面シールド部2等による磁気シールド作用がなされるが、図示するように、その作用は必要最小限なされれば十分とするのが、本発明磁気シールド構造10の根本思想である。
【0016】
本磁気シールド構造10は、磁気検知方向に面しない非検知方向側方部Fy、Fy’には、シールドが設けられていない構成である。すなわち、磁気シールドによる保護の必要のない方向には、敢えてシールドを設けないのが、本発明の根本思想である。このように本発明では、保護する対象に対して必要最小限の保護能力を備えていることで十分とし、敢えて保護不要な箇所における磁気シールドを設けないため、従来のように磁気シールド対象物のほぼ全体を被覆する形状とは異なり、必要部材がより少なくて済む形状となる。したがって、加工コストを低減でき、安価化することができる。
【0017】
なお、磁気シールド対象物MSの底面方向部Fb等には特段、要保護部位が設けられているわけではない。しかし、側面シールド部2等による必要最小限的な磁気シールド作用を補助し、要保護部位X等に対する磁気シールド作用・効果をより高度なものとするために、本発明では底面シールド部5が設けられる。底面シールド部5の面積および形状は、磁気シールド対象物MSの底面方向部をカバーできる仕様であればよい。
【0018】
本発明磁気シールド構造10において側面シールド部2等は、保護対象である要保護部位X等の要被覆面の面積以上の面積を有し、かつ、要保護部位X等の要被覆面の形状と同一かまたはそれを包含する形状を有しているものとする。より望ましくは、要保護部位X等の要被覆面の面積を超える面積を有し、かつ、要保護部位X等の要被覆面の形状を十分に包含する形状を有しているものとする。すなわち、必要最小限の磁気シールド作用を担保するのに十分な最低限の形態であればよい。それが、本発明の目的である低コスト化、安価化をより高度に実現する上で有効である。
【0019】
図1-3は、異なる構成の本発明磁気シールド構造を、
図1に示す磁気シールド対象物に用いている状態を示す斜視の説明図である。図示するように本磁気シールド構造110は、二の底面シールド部15、16を有する構成としてもよい。底面シールド部は、側面シールド部12等による必要最小限的な磁気シールド作用を補助し、要保護部位X等に対する磁気シールド作用・効果をより高度なものとするために設けられるが、必要な場合、あるいはより望ましい場合には、このように両底面方向部Fb、Fb’に面してそれぞれ底面シールド部15、16を設けることができる。
【0020】
図2は、一体型の構成の本発明磁気シールド構造を模式的に示す斜視の説明図である。また、
図2-2は、
図2に示す本発明磁気シールド構造を、
図1に示す磁気シールド対象物に用いている状態を示す斜視の説明図である。これらに示すように本磁気シールド構造210は、その側面シールド部22、23、および底面シールド部25が一体をなしている構成とすることができる。図では、別部材である側面シールド部22等と底面シールド部25とが接合されて事後的に一体をなしているもののように示されているが、たとえば樹脂成形のように初めから一体であってもよい。
【0021】
かかる構成により本一体型の磁気シールド構造210は、磁気シールド対象物MSに対して、これを一部被覆するように配置して用い、上述した磁気シールド作用を得ることができる。本磁気シールド構造210は一体物であるため、取扱い性がよく、磁気シールド対象物MSへの適用が便利である。
【0022】
以下の説明では、
図1-2に示す磁気シールド対象物MSが磁気センサである場合に即し、改めて説明する。
図1に示すように本磁気シールド構造10は、磁気検知方向に面する二の検知方向側方部Fx、Fx’、磁気検知方向に面しない二の非検知方向側方部Fy、Fy’、ならびに全側面に交わる方向に設けられている二の底面方向部Fb、Fb’を備えてなる磁気センサにおける磁気シールド構造である。
【0023】
すなわち磁気シールド構造10は、磁気センサMSの二の検知方向側方部Fx、Fx’をそれぞれ遮蔽する側面シールド部2、3と、少なくとも一の底面方向部FbまたはFb’を遮蔽する底面シールド部5とからなり、非検知方向側方部Fy、Fy’にはシールドが設けられていないことを、特徴的な構成とする。
【0024】
かかる構成の本磁気シールド構造10によれば、磁気センサMSの検知方向側方部Fx、Fx’は、それぞれ側面シールド部2、3によって遮蔽され、また底面方向部Fbは底面シールド部5によって遮蔽される。ここで、検知方向側方部Fx、Fx’にそれぞれ位置する要保護部位X、X’に対して特に、側面シールド部2、3による磁気シールド作用がなされるが、図示するように、その作用は必要最小限なされれば十分とする。
【0025】
本磁気シールド構造10は、磁気検知方向に面しない非検知方向側方部Fy、Fy’にはシールドが設けられていない。すなわち、磁気シールドによる保護の必要のない方向には、敢えてシールドを設けない。これらの根本思想、構成および作用効果については、磁気シールド対象物を磁気センサに限定しない本発明について上述した説明と同様である。またこのことは、底面シールド部5、側面シールド部2、3の形態、
図1-3で示した二の底面シールド部15、16を有する構成、および
図2、2-2で示した一体型構成の磁気シールド構造210についても同様であるが、さらに説明を加える。
【0026】
磁気センサMSには二の底面方向部Fb、Fb’があるが、
図1-2を用いた説明で示したように、このうちの一の底面方向部Fbに底面シールド部5を設ける構成とすることができる。この構成は特に、底面方向部Fbが、磁気センサMSの設置対象への設置には用いられない底面方向部、すなわち非設置底面方向部である場合に、外部磁場の遮蔽用として作用することができる。
【0027】
磁気センサMSは通常、エンコーダ等の磁気センサ設置対象に設置して用いられる。設置対象は通常ある程度の厚さを有し、磁気センサMSの設置対象への設置に用いられる設置底面と、外部磁場発生源との間の距離は十分に確保されるため、磁気シールドは敢えて不要であることが多い。一方、非設置底面方向部は外方に開放されているため、外部磁場発生源に対する磁気シールドを要する。底面シールド部5は、かかる外部磁場に対するシールドとして機能することができる。
【0028】
なお、非設置底面方向部と外乱(外部磁界)との距離が、外部磁界の強さも考慮した上で十分に取られている場合であれば、敢えてシールドは不要である。しかし設置対象たる製品としては、外乱からの距離を大きくするほど全体のサイズが大きくなり、それにより付加価値が下がるため、現実的には十分な距離の確保は容易ではない。したがって、非設置底面方向部には底面シールド部5を設けることが推奨される。
【0029】
また、上述の通り、設置底面には磁気シールドは敢えて不要であることが多いが、設置底面の対向方向、すなわち設置対象たる製品の中心側にも、磁気センサMSにとっては外乱となる物が存在する場合がある。あるいはまた、設置対象たる製品が薄く、外乱が届くような場合も考えられる。これらの場合には、
図1-3に示したように、非設置底面方向部、設置底面方向部の両方に、底面シールド部15、16が必要である。
【0030】
図3は、本発明磁気シールド構造適用対象の磁気センサ搭載エンコーダの例を示す側断面図である。また、
図4は、
図3に示した磁気センサに本発明の一体型磁気シールド構造実施例を使用した状態を示す斜視図である。ここまで述べたように本発明磁気シールド構造は、外部磁場からの磁界を遮蔽すべき保護対象に適用され、特に磁気センサが搭載される機器において外乱となる磁気のシールド用として好適である。各図は、図示するようにエンコーダECに搭載される磁気センサMS用の磁気シールド構造310として用いる例である。
【0031】
磁気センサMSの要保護部位X、X‘は磁気発電素子、詳しくはウィーガントワイヤを用いた磁気発電素子であり、磁石が内蔵されている。この磁石以外の磁界、つまり外部磁場発生源D2等による外部磁場(外乱)Df2等の影響を抑えるために、磁石付近に側面シールド部32、33が機能する。一方、非設置底面方向部の外方に存在する外部磁場発生源D1による外部磁場(外乱)Df1の影響は、底面シールド部35によって抑えることができる。
【0032】
なお、
図5は、
図4に示した一体型磁気シールド構造実施例の正六面図および斜視図である。図中、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、および(f)はそれぞれ、底面シールド部35を正面としての正面図、左側面図、右側面図、背面図、平面図、および底面図である。また(g)は斜視図である。各図から看取されるように本磁気シールド構造310は、板状の磁性体を加工することによって容易に形成できる構造であり、必要最小限の保護と安価なコストを実現することができる。
【0033】
以上説明した本発明磁気シールド構造10等を備えている磁気センサMS、また、かかる磁気センサMSを備えているエンコーダECも、本発明の範囲内である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の磁気シールド構造、磁気センサ、およびエンコーダによれば、磁気センサなど外部からの磁場に対する保護が必要な物、すなわち磁気シールド対象物に対して、最低限必要な磁気シールド性能を担保しつつ、より低コスト化、安価化することができる。したがって、磁気センサやエンコーダの製造・使用分野、その他磁気シールドによる保護を必要とする全ての磁気シールド対象物の製造・使用分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。本発明磁気シールド構造はとりわけ、エンコーダにおける外部からの磁場に対する保護を安価に行える構造であることから、バッテリレスエンコーダを搭載したサーボモータの製造・使用分野において産業上利用性が高い。
【符号の説明】
【0035】
2、3、12、13、22、23、32、33…側面シールド部
5、15、16、25、35…底面シールド部
10、110、210、310…磁気シールド構造
D1、D2…外部磁場発生源
Df1、Df2…外部磁場
EC…エンコーダ
Fx、Fx’…検知方向側方部
Fy、Fy…非検知方向側方部
Fb、Fb’…底面方向部
MS…磁気シールド対象物(または、磁気センサ)
X、X…要保護部位
610…シールド