IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダックエンジニアリング株式会社の特許一覧

特開2024-168583印刷品質検査方法及び印刷品質検査装置
<>
  • 特開-印刷品質検査方法及び印刷品質検査装置 図1
  • 特開-印刷品質検査方法及び印刷品質検査装置 図2
  • 特開-印刷品質検査方法及び印刷品質検査装置 図3
  • 特開-印刷品質検査方法及び印刷品質検査装置 図4
  • 特開-印刷品質検査方法及び印刷品質検査装置 図5
  • 特開-印刷品質検査方法及び印刷品質検査装置 図6
  • 特開-印刷品質検査方法及び印刷品質検査装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168583
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】印刷品質検査方法及び印刷品質検査装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B41F33/00 280
B41F33/00 290
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085394
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000109200
【氏名又は名称】ダックエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 克哉
(72)【発明者】
【氏名】笠野 裕太
(72)【発明者】
【氏名】中塩屋 裕三
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 啓太
(72)【発明者】
【氏名】岡本 宏巳
(72)【発明者】
【氏名】氷上 好孝
【テーマコード(参考)】
2C250
【Fターム(参考)】
2C250EB23
2C250EB26
2C250EB29
(57)【要約】
【課題】インキに関するドットゲインを含む印刷品質の良否を、高効率且つ詳細に判断できる印刷品質検査技術を提供せんとする。
【解決手段】シートに印刷された単一のインキ色と背景とで構成される所定領域を含む領域を撮像手段2で撮像し、撮像した前記所定領域の画像につき、当該画像を構成する一つ又は複数画素ごとの色濃度を分析することにより、前記画像を構成するインキ色および背景色の二色を中心とする二つの山を有する色濃度分布5を求め、該色濃度分布5に基づき、インキ色のインキに関するドットゲインを含む印刷品質の良否を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに印刷された単一のインキ色と背景とで構成される所定領域を含む領域を撮像し、
撮像した前記所定領域の画像につき、当該画像を構成する一つ又は複数画素ごとの色濃度を分析することにより、前記画像を構成するインキ色および背景色の二色を中心とする二つの山を有する色濃度分布を求め、
該色濃度分布に基づき、前記インキ色のインキに関するドットゲインを含む印刷品質の良否を判定することを特徴とする、印刷品質検査方法。
【請求項2】
前記色濃度分布から求まる前記二つの山の各ピーク値または各山から所定の計算式で算出される面積値に基づき、前記印刷品質の良否を判定する、請求項1記載の印刷品質検査方法。
【請求項3】
前記所定領域の画像について、あらかじめ基準となる色濃度分布を設定し、
当該基準となる色濃度分布との比較により、前記印刷品質の良否を判定する、請求項1記載の印刷品質検査方法。
【請求項4】
前記所定領域が、単一のインキ色で印刷され、一定の色濃度分布となるように一定形状に決められた検査用マークからなる領域である、請求項1記載の印刷品質検査方法。
【請求項5】
前記検査用マークが見当マークを兼ねており、前記印刷品質の良否とともに、前記検査用マークの位置情報に基づき見当ズレの有無も判定する、請求項4記載の印刷品質検査方法。
【請求項6】
シートに印刷された単一のインキ色と背景とで構成される所定領域を含む領域を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された前記所定領域の画像につき、当該画像を構成する一つ又は複数画素ごとの色濃度を分析することにより、前記画像を構成するインキ色および背景色の二色を中心とする二つの山を有する色濃度分布を求める色濃度分析手段と、
前記色濃度分析手段により求められた前記色濃度分布に基づき、前記インキ色のインキに関するドットゲインを含む印刷品質の良否を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする、印刷品質検査装置。
【請求項7】
前記判定手段が、前記色濃度分布から求まる前記二つの山の各ピーク値または各山から所定の計算式で算出される面積値に基づき、前記印刷品質の良否を判定する、請求項6記載の印刷品質検査装置。
【請求項8】
前記所定領域の画像について、あらかじめ基準となる色濃度分布を記憶する記憶手段を備え、
前記判定手段が、当該基準となる色濃度分布との比較により、前記印刷品質の良否を判定する、請求項6記載の印刷品質検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物のドットゲインを含む印刷品質を検査する印刷品質検査方法及び印刷品質検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷品質の一つとして、印刷物の網点が太り、印刷物の色が本来のインキ色よりも濃く見えるドットゲインという現象が知られている。このドットゲインが判定できる印刷品質検査方法としては、従来、印刷物に対して三原色の光を当て、その反射光に基づき印刷濃度、色彩値を求め、これをドットゲイン値に変換して品質判定するものが提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の検査方法では、具体的にどのようにしてドットゲイン現象である旨を判断するのか、網点一つ毎に検査して判断するのか、その方法の詳細が分からない。網点毎に判断するのは効率的でない。また、全体としてドットゲインの可能性が仮に判定できたとしても、どのような原因でドットゲインになったのか、インキの調整不良か、転写圧の不良か等、より詳細な判断ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-349739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、インキに関するドットゲインを含む印刷品質の良否を、高効率且つ詳細に判断できる印刷品質検査技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者はかかる現況に鑑み、鋭意検討した結果、単一のインキ色と背景とで構成される領域の画像について画素ごとに色濃度を分析し、インキ色および背景色の二色を中心とする二つの山を有する色濃度分布を求め、これを解析することによりドットゲインを含む印刷品質についての判断を詳細かつ高効率に行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
(1) シートに印刷された単一のインキ色と背景とで構成される所定領域を含む領域を撮像し、撮像した前記所定領域の画像につき、当該画像を構成する一つ又は複数画素ごとの色濃度を分析することにより、前記画像を構成するインキ色および背景色の二色を中心とする二つの山を有する色濃度分布を求め、該色濃度分布に基づき、前記インキ色のインキに関するドットゲインを含む印刷品質の良否を判定することを特徴とする、印刷品質検査方法。
【0008】
(2) 前記色濃度分布から求まる前記二つの山の各ピーク値または各山から所定の計算式で算出される面積値に基づき、前記印刷品質の良否を判定する、(1)記載の印刷品質検査方法。
【0009】
(3) 前記所定領域の画像について、あらかじめ基準となる色濃度分布を設定し、当該基準となる色濃度分布との比較により、前記印刷品質の良否を判定する、(1)記載の印刷品質検査方法。
【0010】
(4) 前記所定領域が、単一のインキ色で印刷され、一定の色濃度分布となるように一定形状に決められた検査用マークからなる領域である、(1)記載の印刷品質検査方法。
【0011】
(5) 前記検査用マークが見当マークを兼ねており、前記印刷品質の良否とともに、前記検査用マークの位置情報に基づき見当ズレの有無も判定する、(4)記載の印刷品質検査方法。
【0012】
(6) シートに印刷された単一のインキ色と背景とで構成される所定領域を含む領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された前記所定領域の画像につき、当該画像を構成する一つ又は複数画素ごとの色濃度を分析することにより、前記画像を構成するインキ色および背景色の二色を中心とする二つの山を有する色濃度分布を求める色濃度分析手段と、前記色濃度分析手段により求められた前記色濃度分布に基づき、前記インキ色のインキに関するドットゲインを含む印刷品質の良否を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする、印刷品質検査装置。
【0013】
(7) 前記判定手段が、前記色濃度分布から求まる前記二つの山の各ピーク値または各山から所定の計算式で算出される面積値に基づき、前記印刷品質の良否を判定する、(6)記載の印刷品質検査装置。
【0014】
(8) 前記所定領域の画像について、あらかじめ基準となる色濃度分布を記憶する記憶手段を備え、前記判定手段が、当該基準となる色濃度分布との比較により、前記印刷品質の良否を判定する、請求項6記載の印刷品質検査装置。
【発明の効果】
【0015】
以上にしてなる本願発明に係る印刷品質検査方法、及び印刷品質検査装置は、インキに関するドットゲインを含む印刷品質の良否を、詳細かつ高効率に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る印刷品質検査装置を組み込んだ印刷ラインを示す説明図。
図2】(a)は印刷物の隅部に検査用のマークが印刷されている様子を示す説明図、(b)はそのマークが印刷されている領域の拡大図。
図3】本発明に係る印刷品質検査装置の構成を示すブロック図。
図4】上記マークの拡大説明図。
図5】(a)、(c)は、検査用マークの印刷が網点異常を起こしている場合の色濃度分布を示す図、(b)は正常な場合の色濃度分布を示す図。
図6】上記マークを利用した見当あわせを説明する説明図。
図7】同じく見当あわせの変形例を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
本発明の印刷品質検査装置1は、図1に示すように、搬送中の印刷物Wの印刷面9を撮像する撮像手段2と、撮像手段2による撮像面を照明する照明手段3と、撮像手段2で得られる画像情報に基づき、印刷面9の印刷品質の良否を判定する判定手段41cとを備えている。図1中の符号11A,11B,11C,11Dは、それぞれ異なる色のインキを印刷する印刷装置を示している。印刷装置の数は限定されない。印刷装置11A,11B,11C,11Dは、たとえばオフセット印刷機であり、その他、フレキソ印刷機、グラビア印刷機など、種々の印刷装置に適用できる。
【0019】
本発明の検査対象である印刷物Wは、図では裁断されたシートを例示しているが、裁断されたシートではなく帯状の連続したシートでも同様に本発明を適用できる。また、印刷物Wの素材は紙のほか、合成樹脂フィルムやアルミニウム箔など種々のものが対象に入る。印刷物Wの印刷面には、少なくとも、シートに印刷された単一のインキ色と背景とで構成される網点印刷からなる所定領域を含む。この領域を撮像手段2により撮像することになる。
【0020】
撮像手段2が撮像する上記所定領域は、用紙の端部等に単一のインキ色で印刷され、一定の色濃度分布となるように一定形状に決められた検査用マークからなる領域であることが好ましい。検査用マークは、たとえば図2(a),(b)に示すように、絵柄P1以外の端部の領域にインキ色ごと(たとえばY/M/C/Kの各インキ色ごと)に印刷される4つのマークM1、M2、M3、M4が該当する。本例では、図4の拡大図に示すように、各々「田」の字型のマークとされ、これらマークは見当マークを兼ねている。より具体的には、中央に当該マークの色のインキでベタ印刷された第1領域r1と、その周囲の領域で当該色のインキで網点印刷された第2領域r2と、背景の白色領域r3とより構成されている。このように中央部にベタ印刷された第1領域r1を設けることで、後述する色濃度検査を高効率且つ高精度に行うことができる。
【0021】
すなわち、これら各インキ毎に印刷されたマーク(M1~M4)を分析することで、ドットゲインや色濃度などの印刷品質の良否とともに、検査用マークの位置情報に基づき見当ズレの有無も判定することができる。たとえば、図6に示すように見当ズレを生じている場合、同じ色(例えばK(黒))のマークM1の中心同士を結ぶ線を基準線とし、これに対する各マークM2~M4のズレ量を計測することで見当ズレを検出することができる。
【0022】
マークの形は、本例のような「田」の字型に限定されず、他の形でもよい。また、このような検査マークは必須ではない。検査マークの印刷を省略し、絵柄P1中の一色のみの特定領域を上記所定領域として検査することも勿論できる。マークの寸法、網点の密度等は、各マークを含む上記所定領域の当該マークのインキの色濃度の画素数のピーク値と背景色の色濃度の画素数のピーク値が略同じになるように、あるいは分布の山の面積値が略同じになるようにすれば、後述の色濃度分布の比較による良否判定が効率化できる点で好ましい。
【0023】
撮像手段2は、従来からの印刷物の検査装置に用いる公知の撮像装置を広く適用でき、たとえばCCDやCMOS等の撮像素子を搬送方向に直交する横方向に複数並設したラインセンサより構成されるラインセンサカメラが設けられている。照明手段3も、従来から印刷物の検査装置に用いられている公知の照明装置を広く適用できる。
【0024】
判定手段41cは、コンピュータを構成する処理装置41に設けられている。符号42は処理装置41に接続された記憶手段である。処理装置41は、マイクロプロセッサなどのCPUを主体に構成され、入出力部、バスラインを通じて撮像手段2、照明手段3、記憶手段42との間でそれぞれ各種情報を送受信する。
【0025】
記憶手段42は、処理装置41内外のRAM、ROMなどの記憶メモリやハードディスク等より構成され、処理装置41における各種処理動作の手順を規定するプログラムや処理データが記憶される。図3は、本実施形態の処理装置41および記憶手段42の構成を示している。
【0026】
処理装置41は、図3に示すように、機能的には、撮像手段により撮像された前記所定領域の画像を記憶手段42の領域画像記憶部42aに記憶する領域画像取得処理部41aと、前記所定領域の画像の色濃度を分析し、色濃度分布として記憶手段42の濃度分布記憶部42bに記憶する色濃度分析処理部41bと、得られた前記色濃度分布に基づき、インキ色のインキに関するドットゲインを含む印刷品質の良否を判定する判定手段41cとしての判定処理部とを少なくとも備えている。これら機能は上記プログラムにより実現される。
【0027】
領域画像取得処理部41aは、撮像手段2によって、所定領域として、たとえば図2(b)に示す検査用マークM1、M2、M3、M4をそれぞれ含む領域R01~R04の各領域の画像を取得し、これを領域画像記憶部42aに記憶する。具体的には撮像手段2で得られる印刷面全体又は一部の画像から上記各領域の画像を切り抜いて記憶することができる。
【0028】
色濃度分析処理部41bは、色濃度分析手段を構成する処理部であり、上記所定領域の画像について、それぞれ該画像を構成する一つ又は複数画素ごとの色濃度を分析し、分析結果に基づき前記画像を構成するインキ色および背景色の二色を中心とする二つの山を有する色濃度分布を作成し、これを濃度分布記憶部42bに記憶する。たとえば上記した図2(b)の各領域R01~R04の画像ごとに、R/G/Bそれぞれの色濃度を画素ごとに分析して色濃度分布を作成する。
【0029】
図5(b)は、色(例えばK(黒))のマークM1の領域R01の画像のR/G/Bのうちの「R」の色濃度分布の例である。縦軸nは上記一つ又は複数画素の単位の数、横軸は色濃度の数値である。インキ色(本例ではK(黒))の濃度と背景色(印刷用紙の色(本例では白色))の濃度の2箇所に画素数のピークを有する二つの山が形成されている。
【0030】
このように色濃度分布を求めることにより、マーク全体の平均としての判断ではなく、一つ又は複数画素ごとの色濃度の総和で精度よく判断することが可能となる。このような色濃度分布は、各領域について、R/G/Bすべてについてそれぞれ作成すること以外に、たとえばインキ色に適したR/G/Bいずれかの色濃度分布を作成してもよい。
【0031】
判定処理部(判定手段41c)は、色濃度分布から求まる二つの山の各ピーク値または各山から所定の計算式で算出される面積値に基づき、印刷品質の良否を判定する。計算式は、たとえば公知のピーク面積を求める計算式(山のベースラインの設定(増加率、減少率の計算等)、ピークスタートからピークエンドまでの積分)など、適宜決められた計算式とすればよい。また、記憶手段42には、あらかじめ基準となるピーク値や面積値を記憶するマスター情報記憶部42cが設けられ、これら基準の値と上記ピーク値または計算式で計算した面積値とを比較することで良否を判定できる。基準となるピーク値や面積値は、正常な範囲内と判定される最小値、最大値として記憶される。
【0032】
たとえば図5(a)の分布では、インク(黒)の山のピーク値が基準値(上記最小値)よりも小さくなり、背景色(白)の山のピーク値が基準値(上記最大値)よりも大きい。このような場合、インク(黒)の網点が掠れ、本来のインキ色よりも薄く見える異常を起こしていると判定する。面積値で判定する場合は、インク(黒)の山の面積値が上記基準となる最小値よりも小さく、背景色(白)の山の面積値が基準となる最大値よりも大きい。このような場合、同様にインク(黒)の網点が掠れ、本来のインキ色よりも薄く見える異常を起こしていると判定する。
【0033】
また、図5(c)の分布は、インク(黒)の山のピーク値が大きく、背景色(白)の山のピーク値が小さい。このような場合、網点が太り、本来のインキ色よりも濃く見えるドットゲインを起こしていると判定する。ピーク値と面積値の双方の結果から総合的に判定することも好ましい。面積値で判定する場合は、インク(黒)の山の面積値が上記基準となる最大値よりも大きく、背景色(白)の山の面積値が基準となる最小値よりも小さい。このような場合、同様にドットゲインを起こしていると判定する。
【0034】
ここで、上述のとおり、正常な状態におけるインクの山のピーク値と背景色の山のピークが図5(b)に示すように略同じになるように、あるいインクの山の面積値と背景色の山の面積値が略同じになるように、当該マークの寸法、網点の密度等を設定すれば、インクの山の値と背景色の山の値を互いに比較することで、上記掠れやドットゲインを判定することも可能である。
【0035】
また、上記ピーク値や面積値の比較の代わりに、または上記ピーク値や面積値の比較とともに、上記所定領域の画像についてあらかじめ正常な場合のものとして基準となる二つの山の各ピークを有する色濃度分布の形状をマスター情報として記憶しておき、これら基準となる分布形状と比較することで、良否を判定することも好ましい。さらに、判定処理部は機械学習機構を有し、異常の場合の分布形状も含め、各種場合の分布形状を教師データとして記憶し、該機械学習機構による学習結果を参照して判定することも好ましい例である。機械学習機構の学習方法は、ニューラルネットワークによるディープラーニングなどの任意の手法を用いることができる。
【0036】
判定処理部(判定手段41c)は、さらに各インキの水分量や調整量を判定することも好ましい。たとえば上記した図5(a)、(c)のような異常な状態においては、その異常の程度、すなわち上記したピーク値や面積値の正常値からのズレの量に基づき、そのインキの水分量、必要な水分その他の調整量を判定するようにすることも好ましい。図5(a)のような掠れの場合、水分量が多く過乳化の状態にあり、図5(c)のようなインキ色よりも濃く見えるドットゲインの場合、水分量が少なくなっており、それぞれ必要な調整量がわかれば、インキの水分等(たとえば水分以外に温度、インキ粘度等)の自動調整制御も可能となる。ここでも機械学習機構による学習結果を参照して、水分等の調整量を決定することも好ましい例である。
【0037】
処理装置41には、さらに見当ズレ検査部41d、色濃度検査部41e、及び出力処理部41fを備えている。見当ズレ検査部41dは、撮像手段2で撮像された上記各検査用マークの位置関係から、見当ズレ量を算出し、あらかじめ設定した閾値を超えた場合に見当ズレが生じていると判定する。たとえば図6に示すように、マークM1を基準に、他のマークM2~M4がそれぞれ縦横にどれだけズレているか(図中のx1~x3、y1~y3)、算出することで見当ズレの有無を判定することができる。
【0038】
なお、x1~x3の基準のラインL1、y1~y3の基準のラインL2は、基準となるマークM1を両端部にそれぞれ設け、その間にM2~M4が各マークが一列に整列するように印刷することで、両端のM1の中心を結ぶ線を上記基準ラインL1とすることができ、L2は、一方のM1の中心を通り且つL1に直交する線を基準ラインL2とすることができる。
【0039】
他の見当ズレの検出方法としては、図7に示すように、印刷物に対する領域R01~R04の位置をあらかじめ決めておき、取得される領域内の各マークM1~M4の画像について画素単位の色濃度を分析し、領域の中心から縦横にインキ色と背景色がどのように偏っているか、画素単位の位置情報に基づき分析して見当ズレの程度を判定することも可能である。
【0040】
色濃度検査部41eは、上記した領域R01~R04のマークのベタ印刷された第1領域r1の色濃度を分析し、あらかじめ設定した正常な基準となる色濃度レベルと比較し、その異常の有無を判定する。ここで、色濃度分析処理部41bが分析した各画像の色濃度分布のピーク値の色濃度レベルを前記基準の色濃度レベルと比較することでもよい。
【0041】
出力処理部41fは、上述の判定処理部(41c)や見当ズレ検査部41d、色濃度検査部41eによる判定結果(網点の掠れ、ドットゲインの発生、インキの水分等の必要な調整量、見当ズレ、色濃度異常などの結果)を出力情報として生成し、音や表示による注意や警告の告知とともに、これをディスプレイに表示したり、オペレータ端末に送信したりする。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
W 印刷物
1 印刷品質検査装置
2 撮像手段
3 照明手段
5 色濃度分布
9 印刷面
11A,11B,11C,11D 印刷装置
41 処理装置
41a 領域画像取得処理部
41b 色濃度分析処理部
41c 判定手段
41d 見当ズレ検査部
41e 色濃度検査部
41f 出力処理部
42 記憶手段
42a 領域画像記憶部
42b 濃度分布記憶部
42c マスター情報記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7