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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168587
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4911 20200101AFI20241128BHJP
【FI】
G01S7/4911
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085401
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】繁田 和之
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AB01
5J084AC02
5J084BA04
5J084BA05
5J084BA40
5J084CA07
5J084EA04
(57)【要約】
【課題】測距装置における光源の消費電力の増加を抑えつつ、測距対象物の距離情報の精度を高める。
【解決手段】本開示に係る測距装置は、光を発する光源部と、前記光源部の発光設定を行う設定部と、前記光源部から発せられた前記光が物体で反射した反射光を受光する受光部と、前記受光部によって受光された前記反射光を用いて距離画像を生成する生成部と、を有し、前記距離画像は複数のサブフレームの距離画像からなり、前記複数のサブフレームの距離画像を生成する過程において、前記設定部は、第1の距離範囲の測距の際に第1の発光設定を行い、第2の距離範囲の測距の際に第2の発光設定を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発する光源部と、
前記光源部の発光設定を行う設定部と、
前記光源部から発せられた前記光が物体で反射した反射光を受光する受光部と、
前記受光部によって受光された前記反射光を用いて距離画像を生成する生成部と、
を有し、
前記距離画像は複数のサブフレームの距離画像からなり、
前記複数のサブフレームの距離画像を生成する過程において、前記設定部は、第1の距離範囲の測距の際に第1の発光設定を行い、第2の距離範囲の測距の際に第2の発光設定を行う
ことを特徴とする測距装置。
【請求項2】
前記第1の発光設定および前記第2の発光設定は、前記光源部が発する前記光の光量密度に関する設定を含むことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記第1の発光設定および前記第2の発光設定は、前記光源部が発する前記光の照射領域の設定を含むことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項4】
前記第1の発光設定および前記第2の発光設定は、前記光源部が発する前記光の波長に関する設定を含むことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項5】
前記設定部は、
前記生成部が、前記第1の発光設定によって前記光源部から発せられた前記光による前記反射光を用いて、前記複数のサブフレームの第1のサブフレームの距離画像を生成し、
前記生成部が、前記第2の発光設定によって前記光源部から発せられた前記光による前記反射光を用いて、前記複数のサブフレームの第2のサブフレームの距離画像を生成する
ように前記第1の発光設定と前記第2の発光設定とを切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項6】
前記受光部は、受光量が所定の光量を超えていることを検出する受光素子を有し、
前記生成部は、前記受光素子の検出結果を用いて前記距離画像を生成する
ことを特徴する請求項1に記載の測距装置。
【請求項7】
前記受光素子は、前記第1の距離範囲と前記第2の距離範囲の少なくとも一方の測距の際に、一定の時間間隔で前記反射光の受光を繰り返し行うことを特徴とする請求項6に記載の測距装置。
【請求項8】
前記測距装置の外部環境に関する環境情報を取得する環境情報取得部をさらに有し、
前記設定部は、前記環境情報取得部が取得した前記環境情報に基づいて、前記第1の発光設定と前記第2の発光設定とを切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項9】
前記測距装置の移動に関する移動情報を取得する移動情報取得部をさらに有し、
前記設定部は、前記移動情報取得部が取得した前記移動情報に基づいて、前記第1の発光設定と前記第2の発光設定とを切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項10】
前記光源部は、偏光および変調の少なくとも一方を用いて前記光を照射する距離範囲を切り替えることを特徴する請求項1に記載の測距装置。
【請求項11】
前記光源部は、少なくともシリコンフォトニクスデバイス、化合物半導体、光フェーズドアレイのいずれかを用いて、前記光を照射する距離範囲を切り替えることを特徴する請求項10に記載の測距装置。
【請求項12】
前記光源部は、前記光源部の発光領域を変更することで、前記光を照射する距離範囲を切り替えることを特徴する請求項1に記載の測距装置。
【請求項13】
前記光源部は、複数のレーザー点群からなる面発光レーザーを用いて、前記光を照射する距離範囲を切り替えることを特徴する請求項12に記載の測距装置。
【請求項14】
前記光源部が発する前記光を偏向させる、少なくとも液晶部材、電気光学偏向素子、音響光学偏向素子のいずれかをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項15】
前記光源部による前記光の照射角度と照射範囲の少なくとも一方を変更する、少なくともMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス、ガルバノミラーのいずれかをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項16】
前記光源部は、前記光を発するたびに、前記光の照射方向を変更することを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項17】
前記受光部は、前記光源部が前記光を発するたびに、前記反射光の受光角を変更することを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項18】
前記光源部は、前記光を発するたびに、前記光の発光周期を変更することを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項19】
前記受光部は、焦点距離を変更可能な光学部材を有し、
前記受光部は、前記光が照射される距離範囲に合わせて前記光学部材の前記焦点距離を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項20】
前記受光部は、前記反射光を受光する複数の受光素子を有し、
前記複数の受光素子の各受光素子は、それぞれ異なる距離範囲における前記反射光を受光する
ことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測距対象領域に変調光を照射して測距対象物からの反射光を受光し、測距対象領域の奥行き方向における距離区分ごとに露光を繰り返し、奥行き方向の複数の距離情報を取得する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表第2021-513087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、測距対象領域の奥行き方向における距離区分に応じて、照射する光のサイクル数を変えることが提案されている。これによって、測距対象領域が遠方になるほど、測距対象物からの反射光が弱くなることに対して、得られる距離画像の質を向上する効果がきたいできる。しかし、照射する光のサイクル数を増加させることは、光源の消費電力の増加につながるという課題がある。
【0005】
本開示の技術は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、測距装置における光源の消費電力の増加を抑えつつ、測距対象物の距離情報の精度を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示に係る測距装置は、光を発する光源部と、前記光源部の発光設定を行う設定部と、前記光源部から発せられた前記光が物体で反射した反射光を受光する受光部と、前記受光部によって受光された前記反射光を用いて距離画像を生成する生成部と、を有し、前記距離画像は複数のサブフレームの距離画像からなり、前記複数のサブフレームの距離画像を生成する過程において、前記設定部は、第1の距離範囲の測距の際に第1の発光設定を行い、第2の距離範囲の測距の際に第2の発光設定を行うことを特徴とする測距装置を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、測距装置における光源の消費電力の増加を抑えつつ、測距対象物の距離情報の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る測距装置による測距を説明するための模式図
図2】一実施形態に係る測距装置の概略構成を示す図
図3】測距装置の発光および受光のタイミング制御を模式的に示すグラフ
図4】測距装置により測距対象物の距離情報を取得する方法を模式的に示す図
図5図3A図3Cに示すそれぞれの信号の変化の一部を拡大したグラフ
図6】測距装置において距離情報を取得する処理の一例を示す模式図
図7図6に示すサブフレームを対象に取得される距離情報を模式的に示す図
図8】測距装置における変調信号とゲート信号と設定信号の関係を示すグラフ
図9】測距装置を車載用の測距装置として適用した場合の一例を示す模式図
図10】測距装置による撮像領域を模式的に示す図
図11】一変形例における各種信号の関係を示すグラフ
図12】第3実施形態に係る測距装置の概略構成を示す図
図13】第4実施形態に係る測距装置の概略構成を示す図
図14】第5実施形態に係る測距装置の概略構成を示す図
図15】第6実施形態に係る測距装置の構成の一部と発光と受光を示す模式図
図16】第7実施形態における変調信号とゲート信号の関係を示すグラフ
図17】第8実施形態に係る測距装置の発光と受光を模式的に示す図
図18】第9実施形態に係る測距装置の受光部の構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する説明各実施形態の構成要素は、別の実施形態に付加したり、別の実施形態の構成要素と置換したりすることができる。また、各図面が示す部材の大きさや位置関係は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0010】
(第1実施形態)
以下、図1から図10を参照しながら、第1実施形態に係る測距装置について説明する。以下の実施形態は、以下の説明において、同じ機能を有するものは同一の符号を付し、その説明を省略、または簡潔にすることがある。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る測距装置による測距を模式的に示す図である。図1に示すように、測距装置100は、測距対象領域99内にある物体としての測距対象物91、92に照射光201を照射し、測距対象物91、92から反射される反射光202を受光する。そして、測距装置100は受光した反射光202を用いて測距対象物91、92の測距を行い、測距結果を用いて距離画像を生成する。
【0012】
図2は、本実施形態に係る測距装置100の概略構成を示す図である。図2に示すように、測距装置100は、測距対象物に照射光を発する光源部101と、測距対象物からの反射光を受光する受光部102を有する。また、測距装置100は、タイミング制御部301、ゲート信号生成部302、記憶部303、設定部304、フレーム画像生成部305、画像合成部306を有する。
【0013】
タイミング制御部301は、ゲート信号生成部302によるゲート信号の生成を制御する制御信号をゲート信号生成部302に送信する。また、タイミング制御部301は、光源部101の変調タイミングを制御する制御信号を光源部101に送信し、光の照射領域を切り替えるタイミング信号を設定部304に送信する。ゲート信号生成部302は、受光部102の受光タイミングの制御信号(ゲート信号)を生成し、受光部102に送信する。
【0014】
記憶部303は、測距領域のうち第1の測距範囲の測距に使用される光源部101の第1の発光設定に関する情報と、測距領域のうち第2の測距範囲の測距に使用される光源部101の第2の発光設定に関する情報が記憶されている。設定部304は、タイミング制御部301から送信されるタイミング信号に従って、記憶部303から第1の発光設定に関する情報または第2の発光設定に関する情報を取得し、取得した情報に基づく設定信号を光源部101に送信する。光源部101は、設定部304から受信した設定信号に基づいて発光設定を切り替える。これにより、測距装置100は、光源部101による光の照射範囲を変更することができる。
【0015】
受光部102によって受光された反射光は、信号に変換されて、フレーム画像生成部305によりサブフレーム単位で距離区分ごとの画像情報が生成される。また、画像合成部
306は、フレーム画像生成部305によって生成された距離区分ごとのサブフレーム画像を合成して距離画像を生成する。
【0016】
本実施形態において、光源部101は、光を照射する距離範囲を変更する機能を有し、タイミング制御部301から受信する変調タイミングを制御する制御信号に従って発光する。また、光源部101は、設定部304から受信する設定信号に従って、第1の発光設定と第2の発光設定との間で発光設定を切り替える。
【0017】
測距装置100は、光源部101からの照射光201を所定の奥行きを有する測距対象領域99に照射して、測距対象領域99内の測距対象物91、92から反射された反射光202を受光部102で受光する。これにより、測距装置100は、測距対象領域99の奥行き方向の距離情報を取得する。
【0018】
光源部101は、所定の時間周期で発光し、測距対象領域99に対して一様な照射光を照射する。光源部101としては、LED(Light Emitting Diode)など光源自体を高速に変調できる光源であれば任意の光源を採用でき、光源自体を変調するものだけでなく、光源の外部にチョッパなどで照射光を制御する構成を有してもよい。
【0019】
さらに、光源部101が有する、光を照射する距離範囲を変更する構成としては、例えばシリコンフォトニクスデバイス、化合物半導体、光フェーズドアレイなど偏光や変調を利用するものが挙げられる。あるいは、光源部101が有する、光を照射する距離範囲を変更する構成としては、複数のレーザー点群からなる面発光レーザーにより発光領域を切り替えるものなどが挙げられる。あるいは、光源部101は、レーザー発光ダイオード群を複数有する光源ユニットであってもよく、例えばタイミング制御部301からの制御信号に従って発光するレーザーダイオード群を切り替えることで、光を照射する距離範囲を変更してもよい。
【0020】
また、図2には図示していないが、光源部101は、測距対象領域99に対して一様な光量の光を照射するための回折光学素子(DOE)やガラス拡散板などの光学素子を備えてもよい。
【0021】
受光部102は、1つ以上の受光素子により構成されている。この受光素子は、所定の期間のみ受光可能状態(Ron)となる機能を有している。また、受光素子は、受光可能状態である期間に受光した光量のみを検出するように構成されている。これにより、反射光202を常時モニタする構成を採用する場合と比較して、受光部102による受光情報の取り出しが容易で装置構成を簡易にできる。さらに、受光部102には、高速な常時サンプリングが不要となるため、測距装置100における消費電力が低減され、簡素なシステム構成でより精度の高い距離画像を生成することが可能となる。
【0022】
図3A図3Cは、本実施形態に係る測距装置100での発光および受光のタイミング制御を模式的に示すグラフである。図3A図3Cのグラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は信号のレベルを表す。図3Aのグラフは、光源部101の変調タイミングの制御信号である変調信号を表しており、光源部101は、ON状態になっている期間に光を発光し、OFF状態になっている期間には光を発光しない。ここで、光源部101のON状態の期間は、一定の時間間隔Tで周期的に繰り返されている。そして、照射光201が測距対象領域99の奥行き方向の最も奥の位置(図1において、測距装置100からLmax離れた位置)で反射して、受光部102に戻ってくるまでの最大の遅延時間Tmaxより長くなるように時間間隔Tが設定されている。
【0023】
図3Bのグラフは、上記の受光部102の受光素子を受光可能状態(Ron)とする制
御信号を示す。ここでは、ゲート信号生成部302によって生成される図3Bに示す制御信号を、ゲート信号と呼ぶ。ゲート信号がONの期間のみ、受光部102の受光素子が、受光可能状態(Ron)となる。また、図3Aおよび図3Bに示すように、光源部101の発光を制御する制御信号のONと受光部102の受光を制御するゲート信号のONとがペアになるように繰り返される。
【0024】
図3Cは、図3Bに示すゲート信号に従って動作する受光部102が動作タイミングを示す。ゲート信号がONの期間の間だけ、受光部102の受光素子が受光可能状態となり、受光素子はゲート信号がONの期間の間に照射された光量を検出し、受光部102は検出した光量に応じた検出信号を検出結果として出力する。受光部102の受光素子としては、ゲート信号に従って受光可能期間のみ受光状態となり、その受光期間の露光量を検出信号として出力できるものであれば、任意の素子が採用できる。
【0025】
ここで、図4を参照しながら、測距装置100において測距対象物の距離情報を取得する方法について説明する。図に示すように、光源部101から所定の奥行きを有する測距対象領域99に照射光201を照射して、測距対象物からの反射光202を受光部102で受光することにより、測距対象領域99の奥行き方向の距離情報を取得する。具体的には、測距対象領域99を奥行き方向において複数の距離範囲に分割し、測距装置100は、分割された距離範囲ごとに光源部101による光の照射と受光部102による反射光の受光を行って距離情報の取得を繰り返す。そして、測距装置100は、測距対象領域99の奥行き方向における、複数の距離範囲の距離情報を取得する。
【0026】
図4では、光源部101が、1つの距離範囲に対応する距離情報を取得するために1回発光したときに、奥行き方向に距離分割した距離範囲Xの距離情報を取得する動作を説明する。光源部101が照射光201を発してから分割された距離範囲X内の測距対象物で反射して受光部102に戻ってくるまでの時間は、距離範囲Xまでの距離Lと、距離範囲Xの奥行き方向の距離LXと、光速cとから算出することができる。ゲート信号生成部302は、距離範囲X内の測距対象物からの反射光202が受光部102に到達する期間だけ受光部102が受光可能状態となるように、ゲート信号を生成して受光部102に送信する。
【0027】
図5を用いて、受光素子を受光可能状態(Ron)とするためのゲート信号について説明する。図5は、図3A図3Cに示すそれぞれの信号の変化の一部を拡大したグラフである。上記の通り、光源部101の変調タイミングを制御する変調信号のON/OFFと受光部102の受光を制御するゲート信号のON/OFFとはペアになっている。図5に示すように、光源部101の変調タイミングを制御する変調信号がONになってから(時間t1)、ゲート信号がONになるまで(時間t2)の遅延時間をTDとする。また、ゲート信号がONになっている時間幅をTWとする。ここで、光源部101が距離範囲Xの測距対象物に光を発してから、測距対象物から反射される反射光202のうち最先の反射光202が受光部102に到達するまでの時間が、遅延時間TDに対応する。また、距離範囲Xから、最先の反射光202、すなわち測距装置100(受光部102)に最も近い測距対象物から戻ってくる反射光202が受光部102に到達する。そして、最後の反射光202、すなわち測距装置100(受光部102)に最も遠い測距対象物から戻ってくる反射光202が受光部102に到達する。この最先の反射光202が受光部102に到達してから最後の反射光202が受光部102に到達するまでの時間間隔が時間幅TWとなる。
【0028】
また、図5には、図3Cに示す受光部102の受光素子が受光可能状態になる期間の一例であるグラフも示す。グラフに示すように、光源部101が光を発してから(時間t1)遅延時間TDが経過するまで(時間t2)は、受光部102の受光素子は反射光202
を受光しない状態である。そして、時間t1から遅延時間TDが経過すると、受光部102の受光素子は反射光202を受光可能な状態になる。受光素子が受光可能状態になってから時間幅TWの間、受光素子の受光可能状態が継続する。そして、受光素子は受光可能状態となってから時間幅TWが経過すると、受光素子は非受光状態に戻る。受光素子は、非受光状態に戻ると(時間t3)、受光可能状態の間に受光した光量に応じた検出信号を検出結果として出力する。受光部102は、光源部101が時間t1から時間t4の間に1回発光するのに対応して、1回検出信号を出力する。
【0029】
図6は、測距装置100において、複数の距離範囲から距離情報を取得する処理について説明する模式図である。本実施形態では、測距装置100は、ゲート信号を用いて受光素子の受光可能状態のON/OFFを制御することで、測距対象領域99の奥行き方向に分割した距離範囲それぞれに対応する距離情報を取得する。以下の説明において、測距対象領域99の奥行き方向に分割した距離範囲のうち1つの距離範囲を対象として得られる距離情報を、サブフレームと呼ぶ。
【0030】
さらに、測距装置100は、各距離範囲に応じてゲート信号により受光部102の動作を制御して、各サブフレームの距離情報を取得することにより、測距対象領域99から複数の距離情報を取得することができる。例えば、測距対象領域99の奥行き方向における距離範囲の分割数をYとすると、Y個の距離情報を1組の距離情報群とする。図6の例はY=7である場合に相当し、測距装置100から近い順に測距対象領域99がサブフレームAからサブフレームGまでの7個のサブフレームに分割され、7個のサブフレームが1フレームを構成する。図では、サブフレームEが上記の距離範囲Xに対応している。
【0031】
次に、図7に、図6に示すサブフレームを対象に取得される距離情報を模式的に示す。図7に示す例では、受光部102が、アレイ状の複数の受光素子510で構成されていると想定する。測距対象領域99の奥行き方向におけるすべてのサブフレームを1組とする距離情報群が1フレームであり、測距装置100において1フレームの距離情報の取得にかかる時間をフレームレートと呼ぶ。ここでのフレームレートは、(光源部101の変調タイミングの間隔T(図5の時間t1からt4までの期間))×(奥行き方向の測距対象領域の分割数Y)で算出することができる。
【0032】
なお、図6に示す例では、測距対象領域99を奥行き方向に分割した7つのサブフレームA~Gごとに受光量に対応した距離情報を取得するが、距離情報の取得方法はこれに限られない。例えば、同じ距離範囲(サブフレーム)で、距離情報を複数回繰り返して取得して、取得した距離情報を平均化などすることでノイズなどの影響を低減することができる。なお、距離範囲ごとの距離情報の取得の繰り返し回数は、フレームレートと距離情報の精度とのトレードオフとなるので、実用上必要な条件を満たすように適宜設定することができる。
【0033】
本実施形態では、測距装置100は、取得した距離情報を基に距離画像を生成する1フレーム期間の途中で、光源部101が光を照射する距離範囲を切り替える。測距装置100は、測距対象領域99の奥行き方向に分割された距離範囲ごとに得られる距離情報を基にサブフレームの距離画像を生成し、生成したサブフレームの距離画像を合成して1フレームの距離画像を生成する。そして、測距装置100は、サブフレームの距離画像を生成する過程において、光源部101の光の照射領域を変更する。これにより、測距対象領域99の奥行き方向に光の照射領域を変更せずに距離範囲ごとの画像を生成する構成に比べると、光源部の消費電力の増加を抑えつつ、測距対象領域99の奥行き方向の距離情報の取得効率を向上させることができる。
【0034】
次に、図8から図10を参照しながら、測距装置100において、1フレームの距離画
像を生成するシーケンス中に照射光の照射領域を切り替える例について説明する。図8では、図1の測距装置100からの距離Lmaxに相当する距離範囲における距離画像を生成するため、1フレーム期間(TLmax)において、複数のサブフレームの距離画像を生成する。また、測距装置100は、1フレーム期間中の任意のタイミングで光源部101が発する光の照射領域を切り替える。なお、ここでは、測距装置100からの距離L1に相当する距離画像の生成が完了したタイミングで、光源部101による光の照射領域を切り替えるものとする。
【0035】
図8に示すように、この例では、光源部101の発光を制御する変調信号と、受光部102の受光を制御するゲート信号、設定部304が光源部101に送信する発光設定の設定信号の関係を示す。ここで、第1の発光設定は、測距対象領域の第1の距離範囲に光を照射する発光設定であり、第2の発光設定は、測距対象領域の第2の距離範囲に光を照射する発光設定である。図8のグラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は信号レベルを表す。図に示すように、1フレーム期間TLmaxにおいて、サブフレーム(n+2)の距離画像を生成するまで期間TL1では、光源部101は第1の距離範囲を対象に光を照射する。また、次のサブフレーム(n+3)からサブフレーム(n+5)の距離画像を生成する期間TL2では、光源部101は第2の距離範囲を対象に光を照射する。なお、サブフレームn~n+2が第1のサブフレームの一例であり、サブフレームn+3~n+5が第2のサブフレームの一例である。
【0036】
図9に、第1実施形態における測距装置100を車載用の測距装置として適用した場合の一例を示す模式図である。図9には、測距装置100を搭載していない自動車901と測距装置100を搭載している自動車906とを示す。ここでは、自動車901、906の前方を他の自動車902、903、904が走行している場合を想定する。
【0037】
自動車901の場合は、測距のための照射光が距離Lmaxまで前方に広がりながら進行している。この場合、自動車901から距離が離れるほど、照射光は広がり、照射光は弱まっていく。
【0038】
一方、本実施形態に係る測距装置100が搭載された自動車906では、自動車906から距離L1までの距離範囲における距離画像を生成する場合は、光源部101は第1の発光設定により光を照射する。これにより、測距装置100では、第1の発光設定により光源部101から発せされる光によって自動車902の距離画像が生成される。また、自動車906では、残りの距離L2に相当する距離範囲、すなわち距離L1からLmaxまでの距離範囲における距離画像を生成する場合は、光源部101は第2の発光設定により光を照射する。これにより、測距装置100では、第2の発光設定により光源部101から発せされる光によって自動車903、904の距離画像が生成される。
【0039】
図10Aおよび図10Bは、図9における自動車906に搭載された測距装置100による撮像領域908を模式的に示す。なお、図10Aは、測距装置100の光源部101が第1の発光設定により光を照射する場合の光の照射範囲909を示す。また、図10Bは、測距装置100の光源部101が第2の発光設定により光を照射する場合の光の照射範囲910を示す。また、図中、各自動車が走行する道路の車線907を模式的に示す。
【0040】
自動車906から距離Lmaxまでの測距対象領域のうち、自動車906から距離L1までの距離範囲は、自動車906から見てより近い距離範囲である。したがって、自動車906から見た場合に、この距離範囲内にある自動車902は、距離L1より遠い距離範囲にある自動車903、904に比べて大きい。したがって、図10Aに示すように、第1の発光設定は、光源部101から発せられる光の照射範囲909が撮像領域908全体を包含する発光設定である。なお、光の照射範囲909は、撮像領域908において、自
動車906から距離L1までの距離範囲内の自動車を包含する範囲であれば、撮像領域908よりも狭い範囲であってもよい。
【0041】
一方、測距対象領域99において自動車906から距離L1より遠い残りの距離L2の距離範囲は、自動車906から見てより遠い距離範囲である。したがって、図10Bに示すように、第2の発光設定は、撮像領域908において、光源部101から発せられる光の照射範囲910が自動車903、904を包含する発光設定である。このように、測距装置100では、測距対象領域全体の距離画像を生成するシーケンスにおいて、撮像領域908内の遠方に相当する領域の距離画像を生成する場合は、光源部101の光の照射領域が狭くなるような発光設定(第2の発光設定)が用いられる。このように第1の発光設定と第2の発光設定とで光源部101の発する光の光量密度が異なる発光設定が用いられる。これにより、測距装置100は、照射領域を狭めた分消費電力を低減でき、消費電力の低減に応じて光源部101の照射光量を増加することで、より効率的に距離画像を生成することができる。
【0042】
また、上記の変形例として、第1の発光設定と第2の発光設定によって、光が照射される距離範囲に応じて光の照射領域および/または光の光量密度を変更することの代わりにあるいはこれに加えて、光源部101が発する光の波長を変更してもよい。例えば、上記の実施形態において光源部101が発する光が赤外光である場合、第1の発光設定と第2の発光設定が、光源部101の発する光の波長を950nmから1400nmの間でそれぞれ異なる波長に変更する発光設定とする。また、受光部102としては、GaAs系の化合物半導体やGeを含む半導体を用いたセンサが採用できる。このように、発光設定が、光源部が発する光の波長に関する設定を含むことで、測距装置100により、光が照射される距離範囲ごとに適切な波長の測距光を照射することで、より精度の高い距離画像の生成が期待できる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る測距装置について説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。第2実施形態に係る測距装置200は、受光部102の受光素子の構成が、第1実施形態の受光部102と異なる。
【0044】
本実施形態において、受光部102の受光素子は、ゲート信号がONとなる期間に、受光量が所定の光量を超えている場合に検出信号が出力される受光素子である。この受光素子は、所定の光量が受光されているか否かのみを検出し、受光量の階調は検出しない。したがって、本実施形態における受光部102の受光素子は、第1実施形態に比べて検出精度がより高く、検出信号を取り出す回路構成もより簡易となり、より高速に検出信号を出力することができる。なお、この受光素子としては、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)検出器などのアバランシェフォトダイオードを用いることができる。本実施形
態では、高感度な受光素子とゲート信号の制御とを組み合わせて各距離範囲の距離画像を生成することで、より簡易的な構成の測距装置200を実現することができる。
【0045】
ここで、図11A~11Dを参照しながら、本実施形態の変形例について説明する。図11Aは、光源部101の発光を制御する変調信号を示し、図11Bは、受光部102の受光を制御するゲート信号を示す。図11Cは、受光部102からフレーム画像生成部305に送信される検出信号を示し、図11Dは、設定部304が光源部101に送信する発光設定の設定信号を示す。図11A図11Dのグラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は信号レベルを表す。
【0046】
以下に説明する変形例では、測距対象領域を分割した距離範囲(サブフレーム)ごとの
距離画像を生成する際に、1サブフレーム内で、光源部101は複数回(N回。Nは任意の整数)発光する。同様に、当該サブフレーム内で、受光部102はN回受信素子からの検出信号を積算して、1サブフレーム分の検出信号を得る。本実施形態における受光部102を構成するSPAD検出器などの受光素子は、所定の光量が受光されているか否かのみを検出するため、距離画像を生成する処理負荷を軽減することができ、受光量に対して高い感度を実現することができる。
【0047】
本実施形態の受光部102では、受光量の階調などの情報は取得しない。ただし、測距対象領域の認識対象物からの反射光202は、対象物の表面で乱反射するため、受光部102の受光素子に到達する光は、乱反射した光の一部である。このため、受光部102による反射光202の検出は確率的なものとなる可能性がある。したがって、測距対象領域を同一距離で複数の距離範囲に分割しても、各距離範囲において認識対象物からの反射光を受光素子で検出できる保証はない。また、光源部101による発光と受光部102による受光を繰り返すことで、受光部102における認識対象物からの反射光の検出確率を把握することができる。
【0048】
そこで、本変形例では、光源部101の発光と受光部102の受光の繰り返しにより反射光の検出回数を積算し、積算して得られる検出回数を検出信号として出力することで、距離範囲(サブフレーム)ごと受光量の階調に関する情報を取得する。したがって、本実施形態に係る測距装置200によれば、より簡易な装置構成で、受光量の諧調情報まで含む情報を取得して距離画像を生成することができる。
【0049】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る測距装置について説明する。なお、以下の説明において、上記の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図12は、第3実施形態に係る測距装置300の概略構成を示す。図12に示すように、本実施形態に係る測距装置300は、光源部101の後段に、光源部101が発する光の照射領域を変更する照射領域変更部104を有する。また、タイミング制御部301が、フレーム画像生成部305および画像合成部306にそれぞれ制御信号を送信する。また、設定部304は、タイミング制御部301から送信される制御信号に基づいて照射領域変更部104の動作を制御する。
【0050】
照射領域変更部104は、例えば液晶部材、電気光学偏向素子、音響光学偏向素子などのレーザー光を偏向させる部材で構成され、設定部304から送信される制御信号に応じて光源部101が発する光の照射を制御する。あるいは、照射領域変更部104は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスやガルバノミラーなどの機械的な部材で構成されてもよい。これにより、照射領域変更部104は、レーザー光の照射角度と照射範囲の少なくとも一方を変更することで、光源部101が発する光の照射を制御する。
【0051】
また、タイミング制御部301は、フレーム画像生成部305および画像合成部306に制御信号を送信して距離画像の生成処理を制御する。具体的には、タイミング制御部301は、1フレームの期間中における光源部101による照射光量の変更に応じて、サブフレーム画像の生成およびサブフレーム画像の合成の処理を変更する。例えば、1フレームの期間中のうち、光源部101が第1の発光設定により測距対象領域のうち測距装置300により近い距離範囲を対象に光を照射する期間では、サブフレーム画像の合成枚数を少なくする。一方、1フレームの期間中のうち、光源部101が第2の発光設定により測距対象領域のうち測距装置300からより遠い距離範囲を対象に光を照射する期間では、サブフレーム画像の合成枚数を多くする。
【0052】
タイミング制御部301は、フレーム画像生成部305および画像合成部306を制御して、このようにサブフレーム画像の合成処理を切り替える。これにより、測距装置300によれば、光の照射対象である距離範囲がより遠方に移動したときの照射光量の減少に起因する距離画像の画質低下が軽減される。なお、測距装置300において、光源部101の発光設定を第1の発光設定から第2の発光設定に切り替える前後に合成される距離画像に対して補間などの処理を実行してもよい。
【0053】
したがって、本実施形態の測距装置300によれば、1フレーム分の距離画像を生成する期間において、測距装置300の近傍と遠方での測距対象物に照射される光量差を小さくすることができる。この結果、測距装置300の消費電力を増加させることなく、効率的で画質のよい距離画像を生成することができる。
【0054】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る測距装置について説明する。なお、以下の説明において、上記の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図13は、第4実施形態に係る測距装置400の概略構成を示す。図13に示すように、測距装置400は、測距装置400の外部環境に関する情報を取得する外部環境情報取得部307を有する。外部環境情報取得部307は、例えば測距装置400の使用環境における昼夜の違いや、晴天や雨天、霧などの天候の違いなどの情報を取得する。タイミング制御部301は、外部環境情報取得部307が取得した情報を基に、外部環境の違い応じて設定部304を介して光源部101の発光設定を切り替える。
【0055】
具体例としては、日中の晴天で測距装置400を使用する場合、外光の強い状況下では可視カメラからの画像から得られる情報も多い。そこで、タイミング制御部301は、外部環境情報取得部307が取得した情報が日中の晴天であることを示す場合、測距装置400により近い距離範囲のサブフレーム画像の生成段階で光源部101の発光設定を第1の発光設定から第2の発光設定に切り替える。これにより、光源部101が第1の発光設定により発光する期間をより短くすることで光源部101の発光に伴う消費電力を低減することができる。
【0056】
一方、夜間に測距装置400を使用する場合、可視カメラからの画像における見通しは悪い。そこで、タイミング制御部301は、外部環境情報取得部307が取得した情報が夜間であることを示す場合、測距装置400の遠方の距離範囲のサブフレーム画像の生成段階で光源部101の発光設定を第1の発光設定から第2の発光設定に切り替える。これにより、第1実施形態と同様に、測距装置400は、照射領域を狭めた分消費電力を低減でき、消費電力の低減に応じて光源部101の照射光量を増加することで、より精度の高い距離画像を生成することができる。
【0057】
別の例として、タイミング制御部301は、外部環境情報取得部307が取得した情報が雨天や霧などの悪天候を示す場合に、光源部101の発光設定の切り替えを変更する。具体的には、タイミング制御部301は、晴天時に測距装置400を使用する場合よりも測距装置400により近い距離範囲のサブフレーム画像の生成段階で光源部101の発光設定を第1の発光設定から第2の発光設定に切り替える。これにより、測距装置400は、光源部101の発光設定を第2の発光設定に切り替えることで照射領域を狭めた分消費電力を低減でき、消費電力の低減に応じて光源部101の照射光量を増加する。この結果、測距装置400は、悪天候においても、より精度の高い距離画像を生成することができる。
【0058】
したがって、本実施形態の測距装置400によれば、1フレームの距離画像を精製するシーケンスにおいて、光源部101の光の照射領域を切り替えるタイミングを、取得した
外部環境を示す情報に応じて変更する。これにより、測距装置400は、天候や一日での外光変化に応じて好適な距離画像を生成することができる。
【0059】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る測距装置について説明する。なお、以下の説明において、上記の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0060】
図14は、第5実施形態に係る測距装置500の概略構成を示す。図14に示すように、測距装置500は、測距装置500の移動に関する情報を取得する移動情報取得部308を有する。一例として、測距装置500が移動体である自動車に搭載されている場合に、移動情報取得部308は、自動車が現在高速を走行しているか、あるいは一般道を走行しているかなどの走行情報を移動情報として取得する。そして、タイミング制御部301は、移動情報取得部308が取得した移動情報を基に、測距装置500の移動状況の違い応じて設定部304を介して光源部101の発光設定を切り替える。
【0061】
具体的な例としては、測距装置500が搭載された自動車が高速道路を走行しているときは、光源部101が第2の発光設定により発光する際に、光の照射範囲をさらに狭くするなどの発光制御を行う。これにより、測距装置500では、光源部101による光の照射範囲を、自動車が一般道路を走行している場合の光の照射範囲よりも狭めて消費電力を低減しつつ、照射光量を強めることで、より精度のよい距離画像を生成することができる。
【0062】
また、別の例として、移動情報取得部308が、測距装置500が搭載された自動車のブレーキの頻度などの情報を取得し、タイミング制御部301が取得した情報を基に自動車が渋滞の道路を走行しているか否かを判定することもできる。この場合、タイミング制御部301は、自動車が現在渋滞の道路を走行中であると判定した場合は、光源部101による光の照射範囲を一般道路を走行している場合の光の照射範囲よりも狭めて照射光量を増加する制御を行う。さらに、タイミング制御部301は、サブフレーム画像を生成する距離範囲を、測距装置500の近傍の距離範囲のみとし、測距装置500の遠方の距離範囲を除外してもよい。これにより、測距装置500では、合成するサブフレーム画像数を減らすことで距離画像を合成する1フレーム期間を短縮することができる。この結果、測距装置500が搭載された自動車が渋滞が発生している道路を走行する際に、測距装置500によれば、渋滞での車間距離の判定時間を短縮することができる。
【0063】
したがって、本実施形態によれば、測距装置500が搭載された自動車の走行情報などを用いて、1フレームの距離画像を生成するシーケンスにおいて、光源部101の光の照射範囲を切り替えるタイミングや、照射範囲、照射光量などを制御することができる。これにより、測距装置500は、測距装置500の使用状況に応じて好適な距離画像を生成することができる。
【0064】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係る測距装置について説明する。なお、以下の説明において、上記の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0065】
図15は、第6実施形態に係る測距装置600の構成の一部と、測距装置600による光の発光と受光とを模式的に示す図である。測距装置600が有する図15に示さない構成要素は、第1実施形態の測距装置100と同じである。図15に示すように、本実施形態の測距装置600は、測距対象領域99に対する光源部101の光の照射角度を、光源部101の発光の度に、微少な角度で変更して、各距離範囲の距離画像を生成する。
【0066】
認識対象物の一部が光沢面で構成されていたり、特殊な形状を有する面で構成されていたりすると、認識対象物への光の入射角度によっては、受光部102に到達する反射光の光量が不自然に増加する、いわゆるピーキーとなる可能性がある。本実施形態の測距装置600は、タイミング制御部301によって光源部101の光の照射角度を変更しながら距離画像を生成する。これにより、光源部101は、光を発するたびに、光の照射方向を変更する。この結果、測距装置600では、認識対象物の形状や表面の構成に起因して受光部102における反射光の受光量が異常となることで不正確な距離画像が生成される現象を低減することができる。
【0067】
具体例として、タイミング制御部301が、1つのサブフレーム画像を生成するシーケンスにおいて、光源部101の発光の度に光源部101の光の照射角度を少しずつ変更し、受光部102による反射光の受光を繰り返し取得する。そして、フレーム画像生成部305が、受光部102によって受光された反射光から得られる情報を平均化することで、認識対象物の表面の特性に起因するノイズを低減してサブフレーム画像を生成することができる。
【0068】
なお、本実施形態では、光源部101が光の照射方向を変更するように可動する構成について説明したが、光源部101の代わりにあるいは光源部101に加えて受光部102を可動させる構成としてもよい。この場合、受光部102は、光源部が光を発するたびに、反射光の受光角を変更する。測距装置600は、このような構成を採用しても上記と同様に認識対象物の表面の特性に起因するノイズを低減してサブフレーム画像を生成することができる。
【0069】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態に係る測距装置について説明する。なお、以下の説明において、上記の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。第7実施形態に係る測距装置700の構成は、第1実施形態に係る測距装置100と同じである。ただし、以下に説明するように、光源部101の変調タイミングが第1実施形態の光源部101とは異なる。
【0070】
図16Aは、本実施形態に係る測距装置700における光源部101の変調タイミングの制御信号である変調信号の一例を示す。図16Aにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は信号レベルを表す。図16Aのグラフにおいて、横軸は時間で、縦軸は信号のレベルである。図に示すように、測距装置700では、タイミング制御部301が、光源部101を変調させる期間を、発光タイミングごとに期間T、T’、T’’、T’’’、T’’’’とそれぞれ異なる期間となるように変化させる。このように、光源部101は、光を発するたびに、光の発光周期を変更する。
【0071】
光源部101が同じ周期の発光タイミング(例えば期間T)で変調を繰り返す場合、期間Tは、フレームレートを最大にするために、できるだけ短くなるように設定されることが多い。そのため、測距対象領域より遠方の領域から照射した光が反射する現象が生じた場合、当該反射光は、光の照射対象である距離範囲内の認識対象物からの反射光と重なりノイズとなる可能性がある。具体的には、1回目の光源部101の発光によって測距対象領域より遠方の領域から反射された光が、2回目の光源部101の発光によって光の照射対象である距離範囲内の認識対象物から反射された光の迷光ノイズとなる。この結果、生成されるサブフレーム画像の正確性が低下する可能性がある。
【0072】
本実施形態では、光源部101を変調させる期間が発光タイミングごとに変化するため、次回の光源部101の発光のタイミングと、不要な反射光が迷光となるタイミングをずらすことができる。これにより、1つの距離範囲において異なる発光タイミングで照射さ
れた認識対象物からの反射光を、受光部102によって繰り返し取得する。そして、フレーム画像生成部305は、受光部102によって受光された反射光から得られる情報を平均化することで、迷光に起因するノイズを低減してサブフレーム画像を生成することができる。
【0073】
図16Bに、本実施形態の変形例としての光源部101の発光タイミングを制御する変調信号と受光部102の受光タイミングを制御するゲート信号の一例を示す。図16Bにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は信号レベルを表す。図16Bに示すように、本変形例に係る測距装置700では、タイミング制御部301は、距離画像の生成期間(図中「距離情報群取得期間」)の前に、迷光ノイズの補正情報を取得する期間を設けるように光源部101および受光部102の動作を制御する。
【0074】
図に示すように、迷光ノイズの補正をするための情報を取得する期間(図中「迷光ノイズ補正情報取得期間」)では、変調信号がONになる期間が、距離画像を生成する際に用いられる期間Tよりも2倍の長さである期間2Tとなっている。さらに、図に示すように、迷光ノイズの補正をするための情報を取得する期間では、ゲート信号がONになるタイミングが、変調信号がONになってから時間T以上経過してから次に変調信号がONになるまでの間に設定される。
【0075】
このように、タイミング制御部301が、光源部101の発光タイミングを制御する変調信号と受光部102の受光タイミングを制御するゲート信号を制御することで、測距装置700は、距離画像の生成前に迷光ノイズを補正する情報を取得することができる。これにより、測距装置700は、取得した情報を基に迷光ノイズを取り除いて距離画像を生成することができる。
【0076】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態に係る測距装置について説明する。なお、以下の説明において、上記の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。第8実施形態に係る測距装置800の構成は、第1実施形態に係る測距装置100と同じである。ただし、以下に説明するように、受光部102の制御が第1実施形態とは異なる。
【0077】
図17Aおよび図17Bを参照しながら、本実施形態に係る測距装置800について説明する。図17Aおよび図17Bは、測距装置800において、光源部101による発光と受光部102による受光を模式的に示す図である。測距装置800では、受光部102に、認識対象物に対して光を成形する光学部材として、Fno(F値;Fナンバー)が小さく、焦点深度が比較的狭いレンズ103が設けられている。受光部102は、レンズ103の焦点距離を変更可能に構成されている。そして、受光部102は、ゲート信号生成部302による制御を基に、レンズ103の焦点距離を、光の照射対象となる距離範囲(図中、距離範囲Xと距離範囲X’)に重なるように変化させる。これにより、受光部102は、当該距離範囲内の認識対象物からの反射光を光学的により効率的に受光することで、測距装置800は、より正確な距離画像を生成することができる。
【0078】
(第9実施形態)
次に、第9実施形態に係る測距装置について説明する。なお、以下の説明において、上記の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。第9実施形態に係る測距装置900の構成は、第1実施形態に係る測距装置100と同じである。測距装置900には、受光部102を構成する複数の受光素子ごとに、ゲート信号を制御する機構が設けられている。
【0079】
図18は、本実施形態に係る測距装置900の受光部102が有する受光素子510と
、タイミング制御部301と、ゲート信号生成部302の構成を模式的に示す。図に示すように、測距装置900の受光部102は複数の受光素子510を有し、各受光素子510は、それぞれゲート信号生成部302と接続されている。これにより、タイミング制御部301は、各ゲート信号生成部302を制御することで、受光素子510ごとにゲート信号の時間幅TWの値を設定することができる。なお、タイミング制御部301は、必要に応じて、受光素子510ごとにゲート信号の遅延時間TDの値を設定してもよい。
【0080】
測距装置900では、受光素子510ごとにゲート信号がONになるタイミングを制御することで、受光素子510ごとに反射光の受光対象となる距離範囲を設定することができる。これにより、受光素子510ごとにゲート信号の時間幅および/または遅延時間を変更して、受光素子510ごとに測距対象領域の奥行き方向の距離範囲を変更することができる。この結果、測距装置900は、測距対象領域の奥行き方向に見た場合に、平面の距離画像だけでなく、曲面の距離画像を生成することができる。なお、生成される距離画像の曲面の曲率は、測距装置900の使用環境に応じてタイミング制御部301による各受光素子510の制御を変更することで適宜変更することができる。
【0081】
したがって、本実施形態に係る測距装置900によれば、受光部102を構成する各受光素子510に送信されるゲート信号を制御することで、受光素子510の受光対象となる距離範囲をより詳細に最適化することができる。この結果、測距装置900は、認識対象物に関するより有益な情報が含まれる距離画像を生成することができる。
【0082】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
光を発する光源部と、
前記光源部の発光設定を行う設定部と、
前記光源部から発せられた前記光が物体で反射した反射光を受光する受光部と、
前記受光部によって受光された前記反射光を用いて距離画像を生成する生成部と、
を有し、
前記距離画像は複数のサブフレームの距離画像からなり、
前記複数のサブフレームの距離画像を生成する過程において、前記設定部は、第1の距離範囲の測距の際に第1の発光設定を行い、第2の距離範囲の測距の際に第2の発光設定を行う
ことを特徴とする測距装置。
(構成2)
前記第1の発光設定および前記第2の発光設定は、前記光源部が発する前記光の光量密度に関する設定を含むことを特徴とする構成1に記載の測距装置。
(構成3)
前記第1の発光設定および前記第2の発光設定は、前記光源部が発する前記光の照射領域の設定を含むことを特徴とする構成1または2に記載の測距装置。
(構成4)
前記第1の発光設定および前記第2の発光設定は、前記光源部が発する前記光の波長に関する設定を含むことを特徴とする構成1から3のいずれかに記載の測距装置。
(構成5)
前記設定部は、
前記生成部が、前記第1の発光設定によって前記光源部から発せられた前記光による前記反射光を用いて、前記複数のサブフレームの第1のサブフレームの距離画像を生成し、
前記生成部が、前記第2の発光設定によって前記光源部から発せられた前記光による前記反射光を用いて、前記複数のサブフレームの第2のサブフレームの距離画像を生成する
ように前記第1の発光設定と前記第2の発光設定とを切り替える
ことを特徴とする構成1から4のいずれかに記載の測距装置。
(構成6)
前記受光部は、受光量が所定の光量を超えていることを検出する受光素子を有し、
前記生成部は、前記受光素子の検出結果を用いて前記距離画像を生成する
ことを特徴する構成1から5のいずれかに記載の測距装置。
(構成7)
前記受光素子は、前記第1の距離範囲と前記第2の距離範囲の少なくとも一方の測距の際に、一定の時間間隔で前記反射光の受光を繰り返し行うことを特徴とする構成6に記載の測距装置。
(構成8)
前記測距装置の外部環境に関する環境情報を取得する環境情報取得部をさらに有し、
前記設定部は、前記環境情報取得部が取得した前記環境情報に基づいて、前記第1の発光設定と前記第2の発光設定とを切り替える
ことを特徴とする構成1から7のいずれかに記載の測距装置。
(構成9)
前記測距装置の移動に関する移動情報を取得する移動情報取得部をさらに有し、
前記設定部は、前記移動情報取得部が取得した前記移動情報に基づいて、前記第1の発光設定と前記第2の発光設定とを切り替える
ことを特徴とする構成1から8のいずれかに記載の測距装置。
(構成10)
前記光源部は、偏光および変調の少なくとも一方を用いて前記光を照射する距離範囲を切り替えることを特徴する構成1から9のいずれかに記載の測距装置。
(構成11)
前記光源部は、少なくともシリコンフォトニクスデバイス、化合物半導体、光フェーズドアレイのいずれかを用いて、前記光を照射する距離範囲を切り替えることを特徴する構成10に記載の測距装置。
(構成12)
前記光源部は、前記光源部の発光領域を変更することで、前記光を照射する距離範囲を切り替えることを特徴する構成1から9のいずれかに記載の測距装置。
(構成13)
前記光源部は、複数のレーザー点群からなる面発光レーザーを用いて、前記光を照射する距離範囲を切り替えることを特徴する構成12に記載の測距装置。
(構成14)
前記光源部が発する前記光を偏向させる、少なくとも液晶部材、電気光学偏向素子、音響光学偏向素子のいずれかをさらに有することを特徴とする構成1から13のいずれかに記載の測距装置。
(構成15)
前記光源部による前記光の照射角度と照射範囲の少なくとも一方を変更する、少なくともMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス、ガルバノミラーのいずれかをさらに有することを特徴とする構成1から14のいずれかに記載の測距装置。
(構成16)
前記光源部は、前記光を発するたびに、前記光の照射方向を変更することを特徴とする構成1から15のいずれかに記載の測距装置。
(構成17)
前記受光部は、前記光源部が前記光を発するたびに、前記反射光の受光角を変更することを特徴とする構成1から16のいずれかに記載の測距装置。
(構成18)
前記光源部は、前記光を発するたびに、前記光の発光周期を変更することを特徴とする構成1から17のいずれかに記載の測距装置。
(構成19)
前記受光部は、焦点距離を変更可能な光学部材を有し、
前記受光部は、前記光が照射される距離範囲に合わせて前記光学部材の前記焦点距離を変更する
ことを特徴とする構成1から18のいずれかに記載の測距装置。
(構成20)
前記受光部は、前記反射光を受光する複数の受光素子を有し、
前記複数の受光素子の各受光素子は、それぞれ異なる距離範囲における前記反射光を受光する
ことを特徴とする構成1から19のいずれかに記載の測距装置。
【符号の説明】
【0083】
100 測距装置、101 光源部、102 受光部、304 設定部、305 フレーム画像生成部
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