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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168596
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】糸巻取機
(51)【国際特許分類】
   B65H 67/08 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B65H67/08 Z
B65H67/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085417
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】上田 健一
(72)【発明者】
【氏名】川幡 平幸
【テーマコード(参考)】
3F112
【Fターム(参考)】
3F112AA06
3F112BA03
3F112EA04
3F112JA08
3F112SB01
3F112SB04
(57)【要約】
【課題】仕掛け替えに要する時間を短縮する。
【解決手段】自動ワインダ1は、糸巻取ユニット2と、玉揚装置3とを備える。糸巻取ユニット2は、糸貯留装置30と、糸継装置22とを有する。糸貯留装置30は、糸走行方向において給糸部10と巻取部40との間に設けられ、糸Yを一時的に貯留する。糸継装置22は、糸走行方向において給糸部10と糸貯留装置30との間に設けられている。玉揚装置3は、仕掛け替え処理の際に、種糸Ysを種糸ボビンBsから供給可能に構成された種糸供給部55を有する。種糸供給部55は、糸貯留装置30を介して種糸Ysを種糸ボビンBsから糸継装置22まで案内可能に構成されている。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸部から引き出された糸を巻取管に巻き取ってパッケージを形成する巻取部を有する糸巻取ユニットと、前記糸巻取ユニットに対する1種類以上の所定処理を実行可能に構成されたサービスユニットと、を備える糸巻取機であって、
前記糸巻取ユニットは、
糸が走行する糸走行方向において、前記給糸部と前記巻取部との間に設けられ、糸を一時的に貯留する糸貯留装置と、
前記糸走行方向において、前記給糸部と前記糸貯留装置との間に設けられ、前記給糸部側の糸と、前記糸貯留装置側の糸との糸継ぎを行う糸継装置と、
を有し、
前記1種類以上の所定処理は、前記巻取部によって巻き取られる糸の種類を変更する仕掛け替え処理を含み、
前記サービスユニットは、
前記仕掛け替え処理の際に、前記給糸部から引き出された糸と糸継ぎされる種糸を種糸ボビンから供給可能に構成された種糸供給部を有し、
前記種糸供給部は、前記糸貯留装置を介して前記種糸を前記種糸ボビンから前記糸継装置まで案内可能に構成されていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
前記サービスユニットは、
前記糸走行方向において前記パッケージと前記糸貯留装置との間で糸が分断される巻取糸切断が生じた場合に、前記糸貯留装置に貯留されている糸を除去し、さらに、前記パッケージに巻かれた糸を引き出して前記糸貯留装置を介して前記糸継装置へ案内する巻取糸切断対応処理を前記1種類以上の所定処理の1つとして実行可能に構成された巻取糸切断対応部を有することを特徴とする請求項1に記載の糸巻取機。
【請求項3】
前記糸貯留装置は、
糸が一時的に巻き付けられる外周面を含み、前記外周面に巻き付けられた糸を貯留可能に構成された糸貯留ローラを有し、
前記巻取糸切断対応部は、
前記外周面に巻き付けられた糸を含む糸層を、前記糸貯留ローラの周方向と直交する所定の直交方向に切断して除去することが可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の糸巻取機。
【請求項4】
前記外周面には、前記直交方向に沿って延びた溝が形成され、
前記巻取糸切断対応部は、前記溝の内部に少なくとも部分的に進入しつつ前記糸層を切断することが可能に構成された切断部を有することを特徴とする請求項3に記載の糸巻取機。
【請求項5】
前記切断部は、
本体と、
前記本体に固定されており前記直交方向に並べて配置されることが可能に構成された複数の固定刃と、
前記直交方向に並べて配置されることが可能に構成され、前記複数の固定刃に対して前記直交方向に往復移動可能に構成された複数の可動刃と、を有することを特徴とする請求項4に記載の糸巻取機。
【請求項6】
前記糸層を検知可能に構成された検知部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検知部による検知結果に基づき、前記直交方向において前記糸層が検知された領域内でのみ前記巻取糸切断対応部に前記糸層の切断の動作を行わせることを特徴とする請求項3~5のいずれかに記載の糸巻取機。
【請求項7】
前記糸貯留装置は、
前記外周面を囲うように配置され、前記糸貯留ローラから解舒される糸にテンションを付与可能に構成されたテンションリングを有し、
前記巻取糸切断対応部は、前記テンションリングの少なくとも一部を前記外周面から離隔させることが可能に構成された離隔部を有することを特徴とする請求項3~6のいずれかに記載の糸巻取機。
【請求項8】
前記糸巻取ユニットは、
前記巻取管を回転自在に保持可能に構成されたクレードルと、
糸が前記糸走行方向において前記パッケージと前記糸貯留装置との間で分断されている場合に、前記糸走行方向において前記糸貯留装置を隔てて前記給糸部と反対側の糸を前記糸貯留装置に通してから前記糸継装置に導く誘導機構と、を有し、
前記サービスユニットは、
前記種糸ボビンから引き出された前記種糸を前記誘導機構へ案内可能に構成された第1案内部と、
前記糸継装置によって糸継ぎされた糸を前記クレードルに向かって案内可能に構成された第2案内部と、を有することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の糸巻取機。
【請求項9】
前記サービスユニットは、
前記種糸ボビンから前記種糸が引き出されることを許可する許可状態と、前記種糸ボビンから前記種糸が引き出されることを禁止する禁止状態との間で状態を切換可能に構成されたストッパー部と、
前記給糸部から供給されている糸と前記種糸とが糸継ぎされた状態で、前記糸継装置と前記ストッパー部との間の糸道の長さを、第1長さから、前記第1長さよりも長い第2長さに変更可能に構成された糸道変更部と、を有し、
前記第2案内部は、前記長さが前記第1長さから前記第2長さに変更された前記糸道の糸の途中部を切断可能、且つ、切断した糸のうち前記糸継装置側の糸を保持可能に構成されていることを特徴とする請求項8に記載の糸巻取機。
【請求項10】
制御部を備え、
前記制御部は、
前記仕掛け替え処理の際に、
前記第1案内部を制御して、前記種糸を前記誘導機構へ案内する第1案内処理と、
前記第1案内処理の後に、前記ストッパー部の状態を前記禁止状態にする禁止処理と、
前記ストッパー部の状態が前記禁止状態であるときに、前記糸道変更部を制御して、前記糸道の前記長さを前記第1長さから前記第2長さに変更する糸道変更処理と、
前記糸道変更処理の後に、前記第2案内部を制御して、前記糸継装置側の糸を保持して前記クレードルへ案内する第2案内処理と、を実行することを特徴とする請求項9に記載の糸巻取機。
【請求項11】
前記巻取部は、前記巻取管を回転自在に保持可能に構成されたクレードルを有し、
前記サービスユニットは、前記クレードルに新たに保持される前記巻取管への糸掛けが行われる際に、前記糸走行方向における前記給糸部側の糸を前記巻取部へ案内可能に構成された糸案内部を有し、
前記クレードルの状態を、前記巻取管の両端を把持する把持状態と、前記巻取管の把持を解除する解除状態との間で切り換えることが可能に構成された切替部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記糸掛けの実行の際に、
前記クレードルが前記解除状態になって前記パッケージが前記クレードルから取り外された後、前記巻取管が前記クレードルに装着される前に、前記糸案内部を制御して、前記巻取管と前記クレードルとの隙間が形成される隙間位置に糸を案内させ、
前記巻取管が前記クレードルに装着された後、前記切替部を制御して、前記クレードルを前記解除状態から前記把持状態に戻すことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の糸巻取機。
【請求項12】
前記サービスユニットは、前記糸巻取ユニットにおいて形成され終わった前記パッケージを空の前記巻取管と交換する玉揚処理を前記1種類以上の所定処理の1つとして実行可能に構成された玉揚装置であることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の糸巻取機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の糸巻取ユニットと、玉揚装置(以下、サービスユニット)とを備える自動ワインダ(以下、糸巻取機)が開示されている。複数の糸巻取ユニットの各々は、給糸ボビンから供給された糸を巻取ボビンに巻き取ってパッケージを形成する。各糸巻取ユニットは、糸貯留装置と糸継装置とを有する。糸貯留装置は、巻取ボビン側へ走行する糸を一時的に貯留する。糸継装置は、糸走行方向において給糸ボビンと糸貯留装置との間で分断された糸を糸継ぎする。サービスユニットは、各糸巻取ユニットに対する補助的な処理を実行可能に構成されている。補助的な処理の1つとして、糸巻取ユニットにおいて巻き取られる糸の種類を変更する仕掛け替え処理が挙げられる。より具体的には、サービスユニットは、種糸ボビンから種糸を引き出して新しい巻取ボビンへの糸掛けを行う。次に、糸巻取ユニットによって、種糸が新しい巻取ボビンに少しだけ巻き取られることによりスターターパッケージが形成される。さらに、サービスユニットがスターターパッケージから種糸を引き出して、種糸を糸継装置へ誘導可能な位置まで種糸を移動させる。その後、新しい給糸ボビンから引き出される糸と、糸継装置へ誘導された種糸との糸継ぎが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-65659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、糸巻取機の生産効率をさらに高めることが求められている。上述したようにスターターパッケージが形成される場合、仕掛け替え処理に時間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、仕掛け替え処理に要する時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の糸巻取機は、給糸部から引き出された糸を巻取管に巻き取ってパッケージを形成する巻取部を有する糸巻取ユニットと、前記糸巻取ユニットに対する1種類以上の所定処理を実行可能に構成されたサービスユニットと、を備える糸巻取機であって、前記糸巻取ユニットは、糸が走行する糸走行方向において、前記給糸部と前記巻取部との間に設けられ、糸を一時的に貯留する糸貯留装置と、前記糸走行方向において、前記給糸部と前記糸貯留装置との間に設けられ、前記給糸部側の糸と、前記糸貯留装置側の糸との糸継ぎを行う糸継装置と、を有し、前記1種類以上の所定処理は、前記巻取部によって巻き取られる糸の種類を変更する仕掛け替え処理を含み、前記サービスユニットは、前記仕掛け替え処理の際に、前記給糸部から引き出された糸と糸継ぎされる種糸を種糸ボビンから供給可能に構成された種糸供給部を有し、前記種糸供給部は、前記糸貯留装置を介して前記種糸を前記種糸ボビンから前記糸継装置まで案内可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、スターターパッケージを形成する代わりに、種糸を糸継装置へ直接案内できる。したがって、仕掛け替え処理に要する時間を短縮できる。
【0008】
第2の発明の糸巻取機は、前記第1の発明において、前記サービスユニットは、前記糸走行方向において前記パッケージと前記糸貯留装置との間で糸が分断される巻取糸切断が生じた場合に、前記糸貯留装置に貯留されている糸を除去し、さらに、前記パッケージに巻かれた糸を引き出して前記糸貯留装置を介して前記糸継装置へ案内する巻取糸切断対応処理を前記1種類以上の所定処理の1つとして実行可能に構成された巻取糸切断対応部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明において、糸走行方向においてパッケージと糸貯留装置との間で糸が分断されることは、何らかのトラブルにより糸が意図せず分断されることを意味する。本発明では、サービスユニットによって、仕掛け替え処理及び巻取糸切断対応処理を1種類以上の所定処理(複数の種類の所定処理)の各々として行うことができる。これにより、糸貯留装置を有する糸巻取ユニットにおける様々な状況に対応できるため、糸巻取機の自動化をさらに推進できる。
【0010】
第3の発明の糸巻取機は、前記第2の発明において、前記糸貯留装置は、糸が一時的に巻き付けられる外周面を含み、前記外周面に巻き付けられた糸を貯留可能に構成された糸貯留ローラを有し、前記巻取糸切断対応部は、前記外周面に巻き付けられた糸を含む糸層を、前記糸貯留ローラの周方向と直交する所定の直交方向に切断して除去することが可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明では、糸層を切断及び除去することにより、糸貯留ローラに残った糸を容易に除去できる。
【0012】
第4の発明の糸巻取機は、前記第3の発明において、前記外周面には、前記直交方向に沿って延びた溝が形成され、前記巻取糸切断対応部は、前記溝の内部に少なくとも部分的に進入しつつ前記糸層を切断することが可能に構成された切断部を有することを特徴とする。
【0013】
本発明では、糸層のうち糸貯留ローラの周方向における一部が、当該周方向において溝と同じ位置に配置される。したがって、切断部を溝の内部に進入させることにより、糸層の前記一部を切断部によって確実且つ容易に切断できる。また、切断部が糸貯留ローラの外周面に接触することを回避できるため、外周面の損傷を確実に防止できる。
【0014】
第5の発明の糸巻取機は、前記第4の発明において、前記切断部は、本体と、前記本体に固定されており前記直交方向に並べて配置されることが可能に構成された複数の固定刃と、前記直交方向に並べて配置されることが可能に構成され、前記複数の固定刃に対して前記直交方向に往復移動可能に構成された複数の可動刃と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明では、毛髪を切断するためのバリカンと同様の原理で、糸層を確実且つ容易に切断できる。
【0016】
第6の発明の糸巻取機は、前記第3~第5のいずれかの発明において、前記糸層を検知可能に構成された検知部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記検知部による検知結果に基づき、前記直交方向において前記糸層が検知された領域内でのみ前記巻取糸切断対応部に前記糸層の切断の動作を行わせることを特徴とする。
【0017】
本発明では、必要最小限の領域内で糸層の切断の動作を実行できる。したがって、直交方向において糸層が形成されうる全域に亘って糸層の切断の動作が行われる場合と比べて、切断の動作の所要時間を短縮できる。
【0018】
第7の発明の糸巻取機は、前記第3~第6のいずれかの発明において、前記糸貯留装置は、前記外周面を囲うように配置され、前記糸貯留ローラから解舒される糸にテンションを付与可能に構成されたテンションリングを有し、前記巻取糸切断対応部は、前記テンションリングの少なくとも一部を前記外周面から離隔させることが可能に構成された離隔部を有することを特徴とする。
【0019】
本発明では、テンションリングと外周面との間に把持されていた糸を容易に除去することができる。また、糸貯留ローラに巻かれた糸を切断除去する際に、巻取糸切断対応部がテンションリングに誤って触れることを回避できる。したがって、巻取糸切断対応部によってテンションリングが破損することを防止できる。
【0020】
第8の発明の糸巻取機は、前記第1~第7のいずれかの発明において、前記糸巻取ユニットは、前記巻取管を回転自在に保持可能に構成されたクレードルと、糸が前記糸走行方向において前記パッケージと前記糸貯留装置との間で分断されている場合に、前記糸走行方向において前記糸貯留装置を隔てて前記給糸部と反対側の糸を前記糸貯留装置に通してから前記糸継装置に導く誘導機構と、を有し、前記サービスユニットは、前記種糸ボビンから引き出された前記種糸を前記誘導機構へ案内可能に構成された第1案内部と、前記糸継装置によって糸継ぎされた糸を前記クレードルに向かって案内可能に構成された第2案内部と、を有することを特徴とする。
【0021】
本発明では、仕掛け替え処理の際に、第1案内部及び誘導機構によって、種糸を糸継装置へ直接案内できる。その後、第2案内部によって、糸を巻取管の近傍まで案内できる。
【0022】
第9の発明の糸巻取機は、前記第8の発明において、前記サービスユニットは、前記種糸ボビンから前記種糸が引き出されることを許可する許可状態と、前記種糸ボビンから前記種糸が引き出されることを禁止する禁止状態との間で状態を切換可能に構成されたストッパー部と、前記給糸部から供給されている糸と前記種糸とが糸継ぎされた状態で、前記糸継装置と前記ストッパー部との間の糸道の長さを、第1長さから、前記第1長さよりも長い第2長さに変更可能に構成された糸道変更部と、を有し、前記第2案内部は、前記長さが前記第1長さから前記第2長さに変更された前記糸道の糸の途中部を切断可能、且つ、切断した糸のうち前記糸継装置側の糸を保持可能に構成されていることを特徴とする。
【0023】
仕掛け替え処理の際、種糸の種類が、給糸部から新たに供給される糸の種類と異なる場合、種糸がパッケージに混入するとパッケージのグレードが低下しうる。本発明では、給糸部から供給される糸と種糸とが糸継ぎされた状態で、種糸ボビンから種糸が引き出されることをストッパー部によって禁止しつつ、糸継装置とストッパー部との間の糸道の長さを変更できる。これにより、給糸部から供給された糸が含まれた、糸継装置側の糸を引き出すことができる。糸継装置側の糸を十分に引き出すことで、第2案内部によって、給糸部から供給された糸のみを切断保持できる。結果として、給糸部から供給された糸のみを新しい巻取管に糸掛けできる。このため、種糸がパッケージに混入することを防止できる。したがって、種糸の種類が給糸部から新たに供給される糸の種類と異なっている場合でも、パッケージのグレードが低下することを回避できる。
【0024】
第10の発明の糸巻取機は、前記第9の発明において、制御部を備え、前記制御部は、前記仕掛け替え処理の際に、前記第1案内部を制御して、前記種糸を前記誘導機構へ案内する第1案内処理と、前記第1案内処理の後に、前記ストッパー部の状態を前記禁止状態にする禁止処理と、前記ストッパー部の状態が前記禁止状態であるときに、前記糸道変更部を制御して、前記糸道の前記長さを前記第1長さから前記第2長さに変更する糸道変更処理と、前記糸道変更処理の後に、前記第2案内部を制御して、前記糸継装置側の糸を保持して前記クレードルへ案内する第2案内処理と、を実行することを特徴とする。
【0025】
本発明では、制御部によって仕掛け替え処理を自動的に実行できる。
【0026】
第11の発明の糸巻取機は、前記第1~第10のいずれかの発明において、前記巻取部は、前記巻取管を回転自在に保持可能に構成されたクレードルを有し、前記サービスユニットは、前記クレードルに新たに保持される前記巻取管への糸掛けが行われる際に、前記糸走行方向における前記給糸部側の糸を前記巻取部へ案内可能に構成された糸案内部を有し、前記クレードルの状態を、前記巻取管の両端を把持する把持状態と、前記巻取管の把持を解除する解除状態との間で切り換えることが可能に構成された切替部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記糸掛けの実行の際に、前記クレードルが前記解除状態になって前記パッケージが前記クレードルから取り外された後、前記巻取管が前記クレードルに装着される前に、前記糸案内部を制御して、前記巻取管と前記クレードルとの隙間が形成される隙間位置に糸を案内させ、前記巻取管が前記クレードルに装着された後、前記切替部を制御して、前記クレードルを前記解除状態から前記把持状態に戻すことを特徴とする。
【0027】
本発明では、新しい巻取管とクレードルとの間に糸が挟まれることにより、糸が巻取管に固定される(すなわち、糸掛けが行われる)。ここで、新しい巻取管がクレードルに装着された後で狭い隙間位置に糸を案内する制御が行われる場合、糸を隙間に入れることに失敗する可能性がある。本発明では、新しい巻取管がクレードルに装着される前の広い空間を通って、糸が隙間位置に案内される。したがって、糸掛けの成功率を高めることができる。
【0028】
第12の発明の糸巻取機は、前記第1~第11のいずれかの発明において、前記サービスユニットは、前記糸巻取ユニットにおいて形成され終わった前記パッケージを空の前記巻取管と交換する玉揚処理を前記1種類以上の所定処理の1つとして実行可能に構成された玉揚装置であることを特徴とする。
【0029】
本発明では、玉揚装置によって、玉揚処理を1種類以上の所定処理の1つとしてさらに実行できる。したがって、糸巻取機の自動化をさらに推進できる。また、玉揚装置によって様々な処理を実行できるため、玉揚装置とは別に所定処理を実行するための装置が設けられている構成と比べて、糸巻取機における装置の増加を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施形態に係る自動ワインダの正面図である。
図2】糸巻取ユニットの概略的な側面図である。
図3】糸巻取ユニットの巻取部の正面図である。
図4】自動ワインダの電気的構成を示すブロック図である。
図5】玉揚装置を前後方向において糸巻取ユニット側から見た図である。
図6】(a)、(b)は、多機能アームのより詳細を示す説明図である。
図7】(a)、(b)は、種糸供給部のより詳細を示す説明図である。
図8】(a)~(c)は、貯留糸除去部のより詳細を示す説明図である。
図9】玉揚処理の手順を示すフローチャートである。
図10】(a)~(c)は、多機能アームの動作を模式的に示す説明図である。
図11】(a)~(c)は、巻取管に糸を固定する動作を模式的に示す説明図である。
図12】仕掛け替え処理の手順を示すフローチャートである。
図13】下糸引出処理の手順を示すフローチャートである。
図14】(a)~(f)は、仕掛け替え部の動作を模式的に示す説明図である。
図15】(a)~(f)は、仕掛け替え部の動作を模式的に示す説明図である。
図16】貯留糸除去処理の手順を示すフローチャートである。
図17】(a)~(f)は、貯留糸除去部の動作を模式的に示す説明図である。
図18】(a)~(e)は、貯留糸除去部の動作を模式的に示す説明図である。
図19】上糸案内処理の手順を示すフローチャートである。
図20】(a)~(f)は、上糸案内処理を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態について説明する。説明の便宜上、図1に示すように、後述する複数の糸巻取ユニット2が配列された方向を左右方向とする。重力が作用する方向を上下方向とする。左右方向及び上下方向の両方と直交する方向を前後方向とする。後述の糸Yが走行する方向を糸走行方向とする。
【0032】
[自動ワインダ]
本実施形態に係る自動ワインダ1(本発明の糸巻取機)の概略構成について、図1を参照しつつ説明する。図1は、自動ワインダ1の正面図である。図1に示すように、自動ワインダ1は、複数の糸巻取ユニット2と、玉揚装置3(本発明のサービスユニット)と、ボビン供給装置4と、機台制御装置5とを備える。
【0033】
複数の糸巻取ユニット2の各々は、給糸ボビンBから引き出された糸Yを巻取管Q(図2参照)に巻き取ってパッケージPを形成するように構成されている。複数の糸巻取ユニット2は、左右方向に配列されている。
【0034】
玉揚装置3は、複数の糸巻取ユニット2の上方に配置されている。玉揚装置3は、左右方向に移動可能に構成されている。玉揚装置3は、複数の糸巻取ユニット2の各々に対して様々な処理を行うように構成されている。玉揚装置3のより詳細については後述する。
【0035】
ボビン供給装置4は、複数の給糸ボビンBを複数の糸巻取ユニット2に供給可能に構成されている。ボビン供給装置4は、給糸ボビンBが支持された搬送トレイTを各糸巻取ユニット2の下部に供給する。
【0036】
機台制御装置5は、例えば複数の糸巻取ユニット2の左側に配置されている。機台制御装置5は、糸巻取ユニット2のユニット制御部2a及び玉揚装置3の玉揚制御部3aと電気的に接続され(図4参照)、これらの制御部との通信を行う。
【0037】
[糸巻取ユニット]
次に、糸巻取ユニット2の構成について図2及び図3を参照しつつ説明する。図2は、糸巻取ユニット2の概略的な側面図である。図2において、紙面右側が前後方向における前側に相当し、紙面左側が前後方向における後側に相当する。図3は、後述する巻取部40の正面図である。
【0038】
図2に示すように、糸巻取ユニット2は、給糸部10と、糸処理部20と、糸貯留装置30と、巻取部40とを備える。給糸部10は、給糸ボビンBに巻かれた糸Yを供給可能に構成されている。糸処理部20は、給糸部10から供給された糸Yに様々な処理を実行可能に構成されている。糸貯留装置30は、糸処理部20による処理が施された糸Yを一時的に貯留可能に構成されている。巻取部40は、糸貯留装置30から糸Yを引き出して巻取管Qに巻き取り、パッケージPを形成することが可能に構成されている。給糸部10、糸処理部20、糸貯留装置30及び巻取部40は、この順に下から上へ並んで配置されている。
【0039】
(給糸部)
図2に示すように、給糸部10は、糸解舒補助装置11を有する。糸解舒補助装置11は、給糸ボビンBからの糸Yの解舒を補助するように構成されている。より具体的には、糸解舒補助装置11は、給糸ボビンBから糸Yが解舒される際の膨らみであるバルーンを、規制筒12によって規制する。規制筒12は、給糸ボビンBに巻かれている糸Yの量が減るにつれて下方へ移動し、上記膨らみの大きさを一定の大きさに保つように構成されている。
【0040】
(糸処理部)
図2に示すように、糸処理部20は、上糸捕捉部21と、糸継装置22と、下糸捕捉部23と、テンション付与装置24と、糸監視装置25とを有する。上糸捕捉部21、糸継装置22、下糸捕捉部23、テンション付与装置24及び糸監視装置25は、この順に糸走行方向における上流側から下流側に並んで配置されている。以下、糸走行方向における上流側を単に上流側とも呼ぶ。糸走行方向における下流側を単に下流側とも呼ぶ。また、給糸部10と巻取部40との間で糸Yが分断されているとき、分断されている糸Yのうち給糸部10側(下側、すなわち上流側)の部分を下糸とも呼ぶ。また、分断されている糸Yのうち巻取部40側(上側、すなわち下流側)の部分を上糸とも呼ぶ。
【0041】
上糸捕捉部21は、上糸(ここでは、糸継装置22よりも上側且つ糸貯留装置30よりも下側の糸Y)を捕捉して糸継装置22へ案内するように構成されている。上糸捕捉部21は、例えば糸継装置22のすぐ下側に配置されている。上糸捕捉部21は、不図示の負圧源に接続されている。上糸捕捉部21は、上糸と下糸とが糸継ぎされる際に、上糸を吸引捕捉して糸継装置22へ案内する。
【0042】
糸継装置22は、分断された糸Yの糸継ぎを行うように構成されている。より具体的には、糸継装置22は、給糸部10と糸貯留装置30との間で糸Yが分断されたときに、上糸(糸貯留装置30側の糸Y)と下糸(給糸部10側の糸Y)とを糸継ぎ可能に構成されている。給糸部10と糸貯留装置30との間で糸Yが分断されたときとは、例えば、糸監視装置25が糸欠陥を検出して糸Yを切断した糸切断時、給糸ボビンBとパッケージPとの間で糸Yが切れた糸切れ時、及び給糸ボビンBの交換時である。糸継装置22は、糸Yが走行する糸道の後方に配置されている。糸継装置22は、上糸捕捉部21及び下糸捕捉部23によって糸継装置22に案内された糸端同士をつなぐように構成されている。糸継装置22として、圧縮空気等の流体を用いるスプライサ、又は機械式のノッター等が適用される。
【0043】
下糸捕捉部23は、下糸(ここでは、糸継装置22よりも下側の糸Y)を捕捉して糸継装置22へ案内するように構成されている。下糸捕捉部23は、先端部に開口が形成された筒状の部材である。下糸捕捉部23は、不図示の負圧源に接続されている。下糸捕捉部23は、駆動部23aによって、先端部の開口を規制筒12の下流側(上側)の位置(図2の実線参照)と、糸継装置22の下流側(上側)の位置(図2の二点鎖線参照)との間で旋回移動可能に構成されている。先端部には前記開口に蓋をするクランプ蓋が設けられている。このクランプ蓋が閉じることにより、吸引を遮断すると同時に吸引した糸をクランプすることができる。下糸捕捉部23は、先端部が規制筒12の下流側に配置されている状態において、後述する補助吹き送り部13によって給糸ボビンBから送られてくる下糸の糸端を吸引捕捉する。下糸捕捉部23は、下糸の糸端を捕捉した状態で、先端部を糸継装置22の下流側に移動させることにより、当該糸端を糸継装置22に案内できる。
【0044】
給糸ボビンBを支持する搬送トレイTの真下には、補助吹き送り部13が設けられている。補助吹き送り部13は、糸Yが巻かれた新しい給糸ボビンBが給糸部10に供給された際、給糸ボビンBから糸Y(下糸)の糸端を引き出すためのものである。より具体的には、搬送トレイT及び給糸ボビンBは、中空状に形成されている。補助吹き送り部13は、搬送トレイT及び給糸ボビンBの内部空間へ圧縮空気を噴出可能に構成されている。噴出された圧縮空気により、下糸の糸端を上側へ(下糸捕捉部23側へ)吹き送ることができる。上側へ吹き送られた下糸の糸端は、下糸捕捉部23の先端部が規制筒12の下流側に位置しているときに、下糸捕捉部23によって捕捉される。
【0045】
テンション付与装置24は、走行する糸Yに所定のテンションを付与可能に構成されている。テンション付与装置24は、位置が固定された固定櫛歯(不図示)と、固定櫛歯に対して移動可能な可動櫛歯(不図示)とを有する、いわゆるゲート式の装置であっても良い。或いは、テンション付与装置24は、摩擦による抵抗力を糸Yに付与するディスク(不図示)を有する、いわゆるディスク式の装置であっても良い。
【0046】
糸監視装置25は、糸Yに含まれる欠陥(糸欠陥)を検出して糸Yを切断することが可能に構成されている。糸監視装置25は、監視部25aとカッタ25bとを有する。監視部25aは、糸Yの太さ等をセンサで監視可能に構成されている。カッタ25bは、糸道上の糸Yを切断可能に構成されている。糸監視装置25は、監視部25aが糸欠陥を検出したときに、カッタ25bによって直ちに糸Yを切断する。
【0047】
糸処理部20は、例えば上糸吹き送り部27と、糸案内部材28とをさらに有する。上糸吹き送り部27は、略筒状の部材である。上糸吹き送り部27は、糸貯留装置30のすぐ上流側に配置されている。上糸吹き送り部27は、圧縮空気を噴出することにより、上糸(糸貯留装置30側の糸Y)の糸端を上糸捕捉部21に向けて吹き飛ばすように構成されている。
【0048】
糸案内部材28は、概ね上下方向に延びた、糸Yを通すためのパイプ状の部材である。糸案内部材28の上端部に入口部が形成され、下端部に出口部が形成されている。当該入口部及び当該出口部は、少なくとも前後方向に延びている。糸案内部材28の途中部は、入口部及び出口部よりも前側に突出し、上下方向に延びている。これにより、糸案内部材28は、糸監視装置25、テンション付与装置24、糸継装置22等を迂回するように配置されている。糸案内部材28の長手方向における両端には、それぞれ開口が形成されている。上側の開口は、上糸吹き送り部27の吹出口と対向している。下側の開口は、上糸捕捉部21と対向している。糸案内部材28の後側部分には、長手方向における全長に亘って延びたスリット(不図示)が形成されている。糸案内部材28の内部を長手方向に通り抜けた糸は、スリットを通って糸案内部材28から抜け出ることができる。
【0049】
上糸吹き送り部27は、上糸の糸端を捕捉して糸案内部材28の内部へ吹き飛ばす。糸案内部材28を長手方向に通り抜けた糸は、上糸捕捉部21に吸引捕捉される。このとき、吸引捕捉された上糸は後方へ引っ張られ、糸案内部材28のスリットを抜け出る。これにより、上糸は糸継装置22へ案内される。
【0050】
(糸貯留装置)
図2に示すように、糸貯留装置30は、糸走行方向において糸処理部20と巻取部40との間に配置されている。糸貯留装置30は、給糸部10から糸Yを引き出し、引き出した糸Yを一時的に貯留可能に構成されている。糸貯留装置30は、貯留している糸Yを巻取部40側へ供給可能に構成されている。糸貯留装置30により、給糸ボビンBから解舒された糸Yのテンションの変動が巻取部40側に伝播することが抑制される。これにより、巻取部40に供給される糸Yのテンションの変動を抑制できる。したがって、品質の良好なパッケージPを形成できる。また、糸貯留装置30によって一時的に糸Yが貯留されるため、糸継ぎが行われているときにも、巻取部40による糸Yの巻取りを継続できる。
【0051】
糸貯留装置30は、糸貯留ローラ31と、ローラ駆動モータ32とを有する。糸貯留ローラ31は、例えば、概ね円筒状の部材である。糸貯留ローラ31の軸方向、径方向及び周方向は、互いに略直交する。糸貯留ローラ31は、糸Yが巻き付けられることが可能な外周面31aを有する。糸Yは、外周面31aに巻き付けられることにより一時的に貯留される。糸貯留ローラ31に巻き付けられた糸Yは、例えば引出しガイド35を介して下流側へ引き出される。ローラ駆動モータ32は、糸貯留ローラ31を回転駆動可能に構成されている。ローラ駆動モータ32は、糸Yを糸貯留ローラ31に巻き取る向きに糸貯留ローラ31を回転させる(すなわち、正転させる)ことが可能である。また、ローラ駆動モータ32は、糸Yを糸貯留ローラ31に巻き取る向きとは逆向きに糸貯留ローラ31を回転させる(すなわち、逆転させる)ことも可能である。
【0052】
糸貯留ローラ31は、糸Yが巻き付けられた状態で正転することにより、糸貯留装置30よりも上流側の糸Yにテンションを付与する。これにより、給糸ボビンBから糸Yが解舒され、外周面31aに巻き付けられる。以下では、糸貯留ローラ31において、ローラ駆動モータ32に近い側を基端側と呼び、その反対側を先端側と呼ぶ。
【0053】
糸貯留ローラ31の外周面31aの先端側の端部には、テンションリング33が取り付けられている。テンションリング33は、例えば弾性を有する部材(例えばゴム)により円環状に形成されている。テンションリング33は、糸貯留ローラ31の周方向において外周面31aを囲うように配置されている。テンションリング33は、糸貯留ローラ31の径方向(以下、単に径方向)において内側に締め付ける弾性力(付勢力)により外周面31aに押し当てられている。糸Yは、径方向においてテンションリング33の内側を通っている。糸Yとテンションリング33との間に作用する摩擦力によって、糸貯留ローラ31から引き出される糸Yに対する抵抗力が付与される。これによって、糸Yに適度なテンションが与えられ、糸貯留ローラ31から糸Yが安定的に解舒される。
【0054】
糸貯留ローラ31の外周面31aには、溝31bが形成されている。溝31bは、糸貯留ローラ31の軸方向(以下、単に軸方向)に沿って延びている。溝31bは、軸方向においてテンションリング33の取付位置を跨ぐように形成されている。溝31bのうちテンションリング33と交差する部分には、付勢部材36が収容されている。付勢部材36は、不図示のばねによって径方向における外側へ付勢されている。付勢部材36は、後述の糸通しノズル34によって径方向における内側へ押し込まれることが可能な位置に配置されている。付勢部材36が径方向における内側へ押し込まれると、テンションリング33と付勢部材36との間に隙間が生じる。糸Yは、この隙間を通って、径方向においてテンションリング33の内側をくぐり抜けることが可能である。
【0055】
図2に示すように、糸貯留装置30は、誘導機構6をさらに有する。誘導機構6は、パッケージPと糸貯留装置30との間で糸Yが分断されている場合に、給糸部10と反対側の糸Yを糸貯留装置30に通してから糸継装置22に導く機構である。「給糸部10と反対側」とは、パッケージP側又は後述する種糸ボビンBs側を意味する。誘導機構6は、糸通しノズル34と、上糸吹き送り部27(上述)と、糸案内部材28(上述)と、上糸捕捉部21(上述)とを有する。
【0056】
糸通しノズル34は、例えば略U字溝状の部材である。糸通しノズル34は、糸貯留ローラ31の近傍に配置されている。糸通しノズル34の一端部は、糸貯留ローラ31の外周面31aの先端側の端部と対向している。糸通しノズル34は、他端部から一端部に向かってU字溝の内部に圧縮空気を流すことができるように構成されている。これにより、糸通しノズル34の他端部(糸貯留ローラ31の反対側の端部)に向かう空気流が形成され、糸通しノズル34に吸引される。糸通しノズル34の一端部(糸貯留ローラ31側の端部)からは、吸引された糸Yが吹き出される。糸通しノズル34は、例えばエアシリンダ又はモータを有するリニアアクチュエータ(不図示)によって、糸貯留ローラ31の外周面31aに対して進退可能に構成されている。糸通しノズル34を経て糸貯留ローラ31に通された糸Yは、U字状溝の開口側から抜け出ることができる。これにより、糸Yは糸通しノズル34から抜け出ることができる。
【0057】
誘導機構6の動作について説明する。糸通しノズル34の一端部が付勢部材36と対向している状態で、糸通しノズル34が外周面31aに向かって移動すると、付勢部材36が糸通しノズル34によって径方向における内側へ押し込まれる。これにより、テンションリング33と付勢部材36との間に隙間ができる。この状態で、糸通しノズル34の他端部の近傍に糸Yが配置され、糸通しノズル34の他端部から一端部に向けて圧縮空気が流れると、糸Yは上記隙間を通る。上記隙間を通った糸Yは、溝31b内の先端側(巻取部40側)から基端側(給糸部10側)に向かって形成される空気流によって誘導され、糸貯留ローラ31に通される。糸貯留ローラ31の先端側から基端側に通された糸Yの糸端は、さらに、上糸吹き送り部27によって吸引され、さらに糸案内部材28に向けて吹き飛ばされ、上糸捕捉部21によって捕捉される。これにより、糸Yが糸継装置22へ導かれる。
【0058】
(巻取部)
図2及び図3に示すように、巻取部40は、クレードル41と、綾振ドラム42と、トラバースガイド43とを有する。巻取部40は、クレードル41に装着された巻取管Qを綾振ドラム42によって回転させながら、綾振ドラム42及びトラバースガイド43によって糸Yを綾振りする。これにより、巻取部40は、巻取管Qに糸Yを巻き取ってパッケージPを形成する。
【0059】
クレードル41は、巻取管Qを回転自在に支持する。クレードル41は、パッケージPの外周面を綾振ドラム42の外周面に接触させることが可能に構成されている。クレードル41は、一対のアーム41aと、一対のホルダ41bとを有する(図3参照)。一対のアーム41aは、左右方向において互いに離隔して配置されている。一対のアーム41aは、例えば左右方向を揺動軸方向として揺動可能に構成されている。一対のホルダ41bは、巻取管Qの左右方向における両端部を把持可能に構成されている。一対のホルダ41bは、一対のアーム41aの左右方向における内側にそれぞれ回転可能に取り付けられている。例えば右側のホルダ41bは、巻取管Qの回転軸方向に移動可能である。右側のホルダ41bは、巻取管Qを把持可能な把持位置と、巻取管Qから離隔している離隔位置との間で移動可能である。これにより、クレードル41は、巻取管Qの両端を把持可能な把持状態と、巻取管Qの把持を解除する解除状態との間で状態を変更可能である。
【0060】
綾振ドラム42は、パッケージP(又は巻取管Q)の外周面に接触した状態で回転することにより、パッケージP(又は巻取管Q)を従動回転させる。綾振ドラム42は、例えば不図示のモータによって回転駆動される。綾振ドラム42は、糸Yを巻取管Qに巻き取るように回転する(すなわち、正転する)ことが可能である。また、綾振ドラム42は、パッケージPから糸Yが引き出されるように回転する(すなわち、逆転する)ことも可能である。綾振ドラム42の外周面には綾振溝42aが形成されている。綾振溝42aによって、糸Yを所定のトラバース領域内で左右方向に綾振りすることが可能である(図3に示す糸Yを参照)。
【0061】
トラバースガイド43は、綾振ドラム42によって綾振りされている糸Yを左右方向にガイドするとともに、糸Yが前側へ浮き上がることを防止するように構成されている。トラバースガイド43は、綾振ドラム42の前側に配置されている。トラバースガイド43のさらなる詳細については、例えば特開2018-65659号公報を参照されたい。
【0062】
例えばトラバースガイド43の左端部には、糸Yを検出可能に構成された糸検出センサ44が取り付けられている。糸検出センサ44は、例えば発光素子と受光素子とを有する反射型の光学式センサである。糸Yが例えば所定の周期で糸検出センサ44によって検出されているとき、綾振りが正常に行われていると判断できる。
【0063】
(ユニット制御部)
図4に示すように、各糸巻取ユニット2は、ユニット制御部2aを備える。ユニット制御部2aは、例えばCPU、ROM、RAM等を有する。ユニット制御部2aは、給糸部10、糸処理部20、糸貯留装置30及び巻取部40の各部の動作を制御する。各ユニット制御部2aは、機台制御装置5と通信可能に構成されている。
【0064】
[玉揚装置]
玉揚装置3の構成について図4図8(c)を参照しつつ説明する。図4は、自動ワインダ1の電気的構成を示すブロック図である。図5は、玉揚装置3を前後方向において糸巻取ユニット2側から(すなわち、後側から)見た図である。図5における左右方向は、紙面左右方向とは逆であることに留意されたい。他の図面の説明については後述する。
【0065】
玉揚装置3は、糸巻取ユニット2と連携して動作することにより、糸巻取ユニット2に対する複数の種類の処理(所定処理)を実行可能に構成されている。複数の種類の所定処理は、玉揚処理と、仕掛け替え処理と、巻取糸切断対応処理とを含む。玉揚処理、仕掛け替え処理及び巻取糸切断対応処理の各々は、本発明の1種類以上の所定処理の1つに相当する。玉揚処理とは、いずれかの糸巻取ユニット2において形成され終わったパッケージPを新しい空の巻取管Qと交換する処理である。仕掛け替え処理とは、巻取部40によって巻き取られる糸Yの種類を変更する処理である。巻取糸切断対応処理とは、糸走行方向においてパッケージPと糸貯留装置30との間で糸Yが分断される巻取糸切断(上糸切れとも呼ばれる)が発生した場合に、糸貯留装置30に貯留されている糸Yを除去し、さらに、パッケージPに巻かれた糸Y(上糸)を糸継装置22へ案内する処理である。各処理の詳細については後述する。
【0066】
図5に示すように、玉揚装置3は、玉揚処理を実行可能な玉揚部7と、仕掛け替え処理を実行可能な仕掛け替え部8と、巻取糸切断対応処理を実行可能な巻取糸切断対応部9とを有する。玉揚部7、仕掛け替え部8及び巻取糸切断対応部9は、例えば一部の構成要素を共有している。玉揚装置3は、仕掛け替え処理に要する時間を従来よりも短縮するために、例えば以下のように構成されている。
【0067】
図5に示すように、玉揚装置3は、例えば筐体50と、多機能アーム51と、チャッカー52と、クレードルオープナー53と、サクションマウス54と、種糸供給部55と、縦ガイドレバー56と、糸飛ばしレバー57と、貯留糸除去部58とを有する。玉揚部7は、多機能アーム51と、チャッカー52と、クレードルオープナー53とを有する。クレードルオープナー53は、本発明の切替部に相当する。仕掛け替え部8は、多機能アーム51と、チャッカー52と、クレードルオープナー53と、種糸供給部55と、縦ガイドレバー56と、糸飛ばしレバー57とを有する。縦ガイドレバー56と糸飛ばしレバー57とを合わせたものが、本発明の第1案内部に相当する。多機能アーム51が、本発明の糸案内部及び第2案内部に相当する。巻取糸切断対応部9は、サクションマウス54と、縦ガイドレバー56と、糸飛ばしレバー57と、貯留糸除去部58とを有する。
【0068】
筐体50は、例えば上下方向に長く延びた箱状の部材である。筐体50の後面は開口している。筐体50には、多機能アーム51~貯留糸除去部58が収容され又は取り付けられている。
【0069】
(多機能アーム)
多機能アーム51について図5図6(b)を参照しつつ説明する。図6(a)及び図6(b)は、多機能アーム51のより詳細を示す説明図である。図6(a)は、多機能アーム51を後方から見た図である。図6(b)は、多機能アーム51を上方から見た図である。多機能アーム51は、玉揚処理及び仕掛け替え処理において用いられる。多機能アーム51は、例えばアーム部61と、ガイド部62と、クランプカッタ部63とを有する。多機能アーム51は、アーム部61に取り付けられたガイド部62及びクランプカッタ部63を動作させることにより、様々な状況において糸Yの案内及び/又は切断保持を実行可能に構成されている。
【0070】
図5図6(b)に示すように、アーム部61は、例えば第1アーム部材64と、第2アーム部材65とを有する。第1アーム部材64は、例えば少なくとも上下方向に延びている。例えば第1アーム部材64の上端部は、左右方向に延びた揺動軸64aを介して筐体50の右端部に支持されている。第1アーム部材64は、例えば不図示のモータを有する第1アーム駆動部101(図4参照)によって、揺動軸64aを軸中心に揺動駆動される。第2アーム部材65は、例えば少なくとも左右方向に延びている。第2アーム部材65の右端部は、例えば少なくとも上下方向に延びる揺動軸65aを介して第1アーム部材64に取り付けられている。第2アーム部材65は、例えば不図示のモータを有する第2アーム駆動部102(図4参照)によって、揺動軸65aを軸中心に揺動駆動される。例えば第2アーム部材65の左端部(先端部)には、ガイド部62及びクランプカッタ部63が取り付けられている。
【0071】
ガイド部62は、糸Yを案内可能に構成されている。ガイド部62は、ベース部材66(図6(b)参照)と、ガイド部材67とを有する。ベース部材66は、例えば、少なくとも上下方向に延びた揺動軸66aを介して第2アーム部材65に取り付けられている。ベース部材66は、例えば不図示のモータを有するガイド駆動部103(図4参照)によって、揺動軸66aを軸中心に揺動駆動される。ガイド部材67は、掛けられた糸Yを屈曲させることにより、糸Yを所定の糸道に沿って案内するように構成されている。ガイド部材67は、例えばベース部材66の先端部に固定されている。図6(a)及び図6(b)に示すように、ガイド部材67は、例えば、第1引掛部67aと、第2引掛部67bとを有する。第1引掛部67aは、例えば後述するクランプカッタ69の下側に配置されている。第2引掛部67bは、例えばクランプカッタ69の上側に配置されている。
【0072】
クランプカッタ部63は、例えばリンク機構68と、クランプカッタ69とを有する。リンク機構68は、例えばベース部材66に取り付けられている。リンク機構68は、例えば不図示のエアシリンダを有する揺動駆動部104(図4参照)に含まれる。揺動駆動部104は、クランプカッタ69を少なくとも前後方向に揺動させるように構成されている。クランプカッタ69は、糸Yを切断保持可能に構成されている。クランプカッタ69は、糸Yを切断する不図示のカッタと、糸Yを保持する不図示のクランプとを有する。クランプカッタ69は、例えばリンク機構68によって少なくとも前後方向に揺動可能に構成されている。クランプカッタ69は、例えば不図示のエアシリンダを有するクランプカッタ駆動部105(図4参照)によって、糸Yの切断の動作と、切断された糸Yの糸端の保持動作とを略同時に行うように構成されている(より詳細には、糸Yを保持した後に糸Yを切断する)。
【0073】
以上の構成を有する多機能アーム51において、ガイド部62及びクランプカッタ部63は、ある程度広い領域内で移動可能である。ガイド部62及びクランプカッタ部63は、第1アーム駆動部101及び第2アーム駆動部によって一体的に移動可能である。また、ガイド部62及びクランプカッタ部63は、ガイド駆動部103及び揺動駆動部104によって互いに独立して移動することも可能である。ガイド部材67は、ガイド駆動部103によって移動させられることで、糸道のクランプカッタ69に対する相対位置を変更できる。これにより、第1引掛部67a及び第2引掛部67bに引っ掛けられた糸Yを、例えばクランプカッタ69によって切断保持されることが可能な位置に配置し、又はそのような位置から退避させることができる。また、クランプカッタ部63は、揺動駆動部104によってガイド部材67に近接し又はガイド部材67から離隔することが可能である。
【0074】
(チャッカー)
チャッカー52(図5参照)は、玉揚処理及び仕掛け替え処理の際に用いられる。チャッカー52は、例えば筐体50内の左右方向における中央部に配置されている。チャッカー52は、例えば左右方向に延びる軸52aを軸中心として、不図示のモータを有するチャッカー駆動部106(図4参照)によって旋回駆動される。チャッカー52の先端部には、巻取管Qを把持可能に構成されたチャック部52bが設けられている。チャッカー52は、例えば自動ワインダ1の上端部に位置する不図示のストッカーから空の巻取管Qを取り出してチャック部52bで把持し、下方に旋回する。これにより、一対のアーム41aの間に空の巻取管Qが配置される。
【0075】
(クレードルオープナー)
クレードルオープナー53(図5参照)は、玉揚処理及び仕掛け替え処理の際に用いられる。クレードルオープナー53は、例えば筐体50の右端部近傍に設けられている。クレードルオープナー53は、エアシリンダ又はモータ等の適宜の駆動源を有するオープナー駆動部107(図4参照)によって駆動される。クレードルオープナー53は、揺動及び回動などの様々な動作を行い、クレードル41に設けられた不図示のクレードルレバーを操作する。クレードルレバーが操作されたとき、例えば、クレードル41が有する右側のアーム41a及びホルダ41bが開閉される。これにより、パッケージPがクレードル41から取り外されることが可能、且つ、空の巻取管Qがクレードル41に装着されることが可能になる。
【0076】
(サクションマウス)
サクションマウス54(図5参照)は、巻取糸切断対応処理の際に、パッケージPに巻かれた糸Y(上糸)の糸端を吸引保持するように構成されている。サクションマウス54は、上下方向においてパッケージPと概ね同じ位置に設けられている。サクションマウス54の後端には、左右方向に延びる吸引口54aが設けられている。サクションマウス54は、待機位置と、待機位置よりも前後方向において糸巻取ユニット2に近接した近接位置との間で移動可能に構成されている。サクションマウス54は、マウス駆動部108(図4参照)によって待機位置と近接位置との間で移動駆動される。サクションマウス54は、不図示の負圧源と接続されている。サクションマウス54は、負圧源によって吸引口54aに発生する負圧によって糸Yを吸引保持できる。また、例えばサクションマウス54の右端部の近傍(すぐ下方)には、糸Yを切断可能に構成されたマウスカッタ54bが設けられている。マウスカッタ54bは、例えば不図示のエアシリンダを有するマウスカッタ駆動部109(図4参照)によって駆動される。また、サクションマウス54の先端には、接触センサ(不図示)が設けられている。接触センサの検知により、マウス駆動部108は、パッケージPに巻かれた糸Y(上糸)の糸端を吸引保持するのに最適な近接位置で停止するように調整される。前記接触センサの代わりに、非接触で2つの物体間の距離を検出できる距離センサが設けられていても良い。また、前記接触センサによる接近位置の検出は初回の調整時のみとし、それ以後の接近位置は、パッケージPに巻き取られた糸Yの長さから算出されるパッケージ径を基に求められても良い。
【0077】
(種糸供給部)
種糸供給部55について、図5図7(a)及び図7(b)を参照しつつ説明する。図7(a)及び図7(b)は、種糸供給部55のより詳細を示す説明図である。図7(a)は、図5に示す種糸供給部55の拡大図である。図7(b)は、種糸供給部55を左方から見た図である。種糸供給部55は、仕掛け替え処理の際に、新しい種類の糸Y(以下、種糸Ys)を供給可能に構成されている。種糸Ysの種類は、例えば、新しい給糸ボビンBに巻かれた糸Yの種類と同一であることが好ましい。しかしながら、本実施形態では、種糸Ysの種類が、新しい給糸ボビンBに巻かれた糸Yの種類と異なっていても良い。種糸供給部55は、種糸ボビン支持部71と、種糸吹き流しノズル72と、種糸案内パイプ73と、種糸サクション74と、種糸クランプカッタ75と、ストッパー部76(図7(b)参照)とを有する。
【0078】
種糸ボビン支持部71は、例えば筐体50の右端部近傍に設けられている。種糸ボビン支持部71は、種糸Ysが巻かれたボビン(以下、種糸ボビンBs)を例えば略水平に支持する。種糸ボビンBsは、筐体50内で左右方向に延びるように配置される。
【0079】
種糸吹き流しノズル72は、種糸Ysを例えば上側に吹き流す(誘導する)ように構成されている。種糸吹き流しノズル72は、例えば筐体50の左端部近傍に設けられている。種糸吹き流しノズル72は、圧縮空気を例えば上向きに噴出するための噴出口(不図示)を有する。噴出口は、種糸案内パイプ73の入口(後述)と対向するように配置されている。
【0080】
種糸案内パイプ73は、種糸吹き流しノズル72によって吹き流された種糸Ysの先端部を種糸サクション74に向けて案内するように構成されている。種糸案内パイプ73は、屈曲したパイプ状の部材である。種糸案内パイプ73の長手方向における両端には、それぞれ開口が形成されている。種糸Ysが入る側の開口(入口)は、種糸吹き流しノズル72の噴出口と対向するように配置されている。種糸案内パイプ73は、例えば入口から概ね斜め上後方に向かって延びている。種糸Ysが出る側の開口(出口)は、例えば下側を向いている。出口の近傍には、吹き流された種糸Ysを例えば斜め下前方へ案内するように湾曲した湾曲面73a(図7(b)参照)が形成されている。
【0081】
種糸サクション74は、種糸Ysの糸端を吸引捕捉可能に構成されている。種糸サクション74は、例えば後側が開口した吸引口を有する。吸引口は、例えば種糸案内パイプ73の出口の斜め下前側に配置されている。吸引口は、不図示の負圧源と接続されている。種糸サクション74は、種糸案内パイプ73の出口から飛び出た種糸Ysを負圧によって吸引捕捉する(図7(a)参照)。種糸サクション74によって吸引捕捉された種糸Ysは、その後、例えば種糸クランプカッタ75によって切断保持される(図7(b)参照)。
【0082】
種糸クランプカッタ75は、種糸Ysを切断保持可能に構成されている。種糸クランプカッタ75は、種糸案内パイプ73の出口と種糸サクション74の吸引口との間に形成された糸道の途中に設けられている。種糸クランプカッタ75は、糸Yを切断する不図示のカッタと、糸Yを保持する不図示のクランプとを有する。種糸クランプカッタ75は、例えば不図示のエアシリンダを有するクランプカッタ駆動部110(図4参照)によって駆動される。種糸クランプカッタ75は、種糸Ysの切断の動作と、切断された種糸Ysの糸端の保持動作とを略同時に行う。切断された種糸Ysの種糸ボビンBs側の糸端が、種糸クランプカッタ75によって保持される(図7(b)参照)。切断された種糸Ysのうち種糸ボビンBsと反対側の部分は、種糸サクション74によって吸引除去される。
【0083】
ストッパー部76(図7(b)参照)は、種糸Ysが種糸ボビンBsから引き出されることを許可及び禁止可能に構成されている。ストッパー部76は、例えば種糸吹き流しノズル72の噴出口と種糸案内パイプ73の入口との間の種糸Ysを挟持可能に設けられている。ストッパー部76は、例えば固定部材76aと、可動部材76bと、エアシリンダ76cとを有する。固定部材76aは、例えば種糸吹き流しノズル72の噴出口及び種糸案内パイプ73の入口の前側に設けられている。可動部材76bは、例えば前後方向において固定部材76aと対向するように設けられている。エアシリンダ76cは、例えば可動部材76bを前後方向に移動させるように構成されている。可動部材76bは、例えばエアシリンダ76cを含むストッパー駆動部111(図4参照)によって、離隔位置(図7(b)の実線参照)と挟持位置(図7(b)の破線参照)との間で移動可能である。離隔位置とは、可動部材76bが固定部材76aから離隔している位置である。可動部材76bが離隔位置に位置しているとき、種糸Ysは種糸ボビンBsから引き出されることが可能である。挟持位置とは、可動部材76bが固定部材76aと接触しており、固定部材76aとの間に種糸Ysを挟持している位置である。可動部材76bが離隔位置に位置しているとき、種糸ボビンBsとストッパー部76との間の種糸Ysは種糸ボビンBsから引き出されることができない。このように、ストッパー部76は、種糸ボビンBsから種糸Ysが引き出されることを許可する許可状態と、種糸ボビンBsから種糸Ysが引き出されることを禁止する禁止状態との間で状態を切換可能に構成されている。
【0084】
(縦ガイドレバー)
縦ガイドレバー56は、仕掛け替え処理及び巻取糸切断対応処理の際に用いられる。縦ガイドレバー56は、主に、糸Yを下方へ引っ張るために用いられる。縦ガイドレバー56は、場面に応じて様々な機能を発揮するように構成されている(詳細については後述する)。縦ガイドレバー56は、例えば、図5に示すように、サクションマウス54及び種糸供給部55の近傍に配置されている。縦ガイドレバー56は、例えば、筐体50のすぐ後側に配置されている。縦ガイドレバー56は、少なくとも前後方向に延びた回転軸56aを中心軸として、回転可能に構成されている。回転軸56aは、上下方向において、糸飛ばしレバー57の近傍に配置されている。縦ガイドレバー56は、例えば不図示のモータを有する縦ガイドレバー駆動部112(図4参照)によって回転駆動される。縦ガイドレバー駆動部112は、後方から見たときに縦ガイドレバー56を時計回り及び反時計回りのいずれにも回転駆動させることが可能である。縦ガイドレバー56の先端部には、第1引掛部56b及び第2引掛部56cが設けられている。第1引掛部56bは、縦ガイドレバー56が後方から見て反時計回りに回転しているときに、糸Yが引っ掛けられることが可能である。第2引掛部56cは、縦ガイドレバー56が後方から見て時計回りに回転しているときに、糸Yが引っ掛けられることが可能である。
【0085】
(糸飛ばしレバー)
糸飛ばしレバー57は、仕掛け替え処理及び巻取糸切断対応処理の際に用いられる。糸飛ばしレバー57は、例えば左右方向に延びた揺動軸57aを軸中心として揺動可能に構成されている。揺動軸57aは、例えば、図5に示すように、玉揚装置3の下端部に設けられている。糸飛ばしレバー57は、例えば不図示のモータを有する糸飛ばしレバー駆動部113(図4参照)によって揺動駆動される。糸飛ばしレバー57の先端部には、糸Yを拾うための糸拾い部57bが設けられている。糸飛ばしレバー57は、縦ガイドレバー56によって下方へ引っ張られた糸Yを糸拾い部57bで拾い、糸貯留装置30の糸通しノズル34の他端部に導く。糸拾い部57bは、糸Yを拾うための待機位置と、待機位置よりも後側の導入位置との間で移動可能である。導入位置は、糸拾い部57bによって拾われた糸Yを糸通しノズル34の他端部に導くための位置である。
【0086】
(貯留糸除去部)
貯留糸除去部58について、図5及び図8(a)~図8(c)を参照しつつ説明する。図8(a)~図8(c)は、貯留糸除去部58のより詳細を示す説明図である。図8(a)は、上下方向と直交する所定の方向から貯留糸除去部58を見た図である。図8(b)は、貯留糸除去部58を図8(a)とは異なる角度から見た図である。図8(c)は、後述のフッカー部82(本発明の離隔部)を示す説明図である。貯留糸除去部58は、巻取糸切断対応処理の際に用いられる。貯留糸除去部58は、糸走行方向において糸貯留装置30と巻取部40との間で糸Yが意図せず分断されたときに、糸貯留装置30に巻き付いている糸Y(以下、貯留糸)を除去可能に構成されている。貯留糸除去部58は、貯留糸サクション81と、フッカー部82と、切断部83とを有する。
【0087】
貯留糸サクション81は、糸貯留ローラ31に巻き付いている貯留糸を吸引捕捉可能に構成されている。また、貯留糸サクション81は、切断された貯留糸を吸引除去可能に構成されている。貯留糸サクション81は、吸引口81a(図8(b)参照)とカッタ81bとを有する。吸引口81a及びカッタ81bは、貯留糸サクション81の先端部に配置されている。貯留糸サクション81は、例えば変形可能な可撓ホース81cを介して、不図示の負圧源と接続されている。貯留糸サクション81は、負圧源によって吸引口81aに発生する負圧により、貯留糸を吸引可能に構成されている。カッタ81bは、吸引口81aの近傍に配置されている。カッタ81bは、吸引口81aに吸引捕捉されている貯留糸を切断可能に構成されている。
【0088】
貯留糸サクション81は、例えば貯留糸除去駆動部114(図4参照)及びサクション駆動部115(図4参照)によって、前後左右上下方向にある程度自由に移動駆動される。貯留糸除去駆動部114は、貯留糸サクション81、フッカー部82及び切断部83を一体的に移動させるように構成されている。サクション駆動部115は、貯留糸サクション81をフッカー部82及び切断部83とは独立的に移動させるように構成されている。
【0089】
フッカー部82は、テンションリング33の一部を糸貯留ローラ31の外周面31aから離隔させるように構成されている。フッカー部82は、貯留糸除去駆動部114(図4参照)によって貯留糸サクション81と一体的に移動可能である。図8(c)に示すように、フッカー部82は、例えば回転板82aとフック82bとを有する。回転板82aは、例えば回転板82aの厚み方向と略平行な回転軸82cを軸中心として回転可能に構成されている。フック82bは、テンションリング33を引っ掛けるための部材である。フック82bは、回転板82aに固定され、回転板82aと一体回転可能に構成されている。フッカー部82は、待機位置(図8(c)の実線参照)と、引張位置(図8(c)の二点鎖線参照)との間で回転移動可能である。フッカー部82は、不図示のモータを有するフッカー駆動部116(図4参照)によって回転駆動される。
【0090】
切断部83(図8(a)及び図8(b)参照)は、糸貯留ローラ31の外周面31aに巻き付いている貯留糸を含む糸層(後述の糸層Yr)を切断可能に構成されている。切断部83は、貯留糸除去駆動部114(図4参照)によって貯留糸サクション81と一体的に移動可能である。切断部83は、例えば本体83aと、複数の固定刃83bと、複数の可動刃83c(図8(b)参照)と、貯留糸センサ83d(図8(a)参照。本発明の検知部)とを有する。本体83aは、複数の固定刃83b、複数の可動刃83c及び貯留糸センサ83dを支持する部材である。本体83aは、例えば不図示のモータを有する切断駆動部117(図4参照)によって、糸貯留ローラ31(図2参照)の軸方向と略平行な方向(以下、直交方向。ここでは図示省略)に移動駆動されることが可能である。切断駆動部117は、本体83aを直交方向に移動させながら糸貯留ローラ31の径方向にも往復移動させることが可能に構成されていると好ましい。このような切断駆動部117は、例えば適宜のカム機構(不図示)によって、1つの駆動源(不図示)を用いて実現されても良い。或いは、本体83aをこのように移動させるために、複数の駆動源(不図示)が設けられていても良い。
【0091】
複数の固定刃83bは、例えば本体83aに固定された刃である。複数の固定刃83bの各々は、本体83aに対して所定の延在方向に延びている。複数の固定刃83bは、延在方向と直交する方向(以下、配列方向。図8(b)参照)に並べて配置されている。複数の固定刃83bは、直交方向に並べて配置されることが可能に構成されている。言い換えると、配列方向は、直交方向と略平行になりうる。
【0092】
複数の可動刃83cは、複数の固定刃83bと同様に、配列方向に並べて配置されている。複数の可動刃83cの各々は、複数の固定刃83bの延在方向と略平行な方向に延びている。複数の可動刃83cは、延在方向及び配列方向の両方と直交する方向(図8(b)の紙面左右方向)において、複数の固定刃83bと隣接するように配置されている。言い換えれば、複数の可動刃83cは、糸貯留ローラ31の周方向において複数の固定刃83bと隣接配置されることが可能である。複数の可動刃83cは、例えば切断駆動部117によって、直交方向に往復移動可能に構成されている。これにより、毛髪を切断するためのバリカンと同様の原理で、複数の固定刃83bと複数の可動刃83cとの間に挟まれた貯留糸が効率的に切断される。複数の固定刃83b及び複数の可動刃83cは、糸貯留ローラ31(図2参照)の径方向において、糸貯留ローラ31の溝31bの内部に少なくとも部分的に進入可能に構成されている。
【0093】
貯留糸センサ83dは、糸層を検知可能に構成されている。貯留糸センサ83dは、例えば公知の反射型の光学センサである。貯留糸センサ83dは、例えば本体83aに固定されていても良い。
【0094】
(玉揚制御部)
図4に示すように、玉揚装置3は、玉揚制御部3a(本発明の制御部)を有する。玉揚制御部3aは、例えばCPUと、ROMと、RAMとを有する。玉揚制御部3aは、機台制御装置5と通信可能に構成されている。玉揚制御部3aは、機台制御装置5からの指令に従って、玉揚装置3の各部を制御する。
【0095】
[自動ワインダによる各処理]
以上のように構成された自動ワインダ1では、糸巻取ユニット2と玉揚装置3とが連携して動作することによって、玉揚処理、仕掛け替え処理及び巻取糸切断対応処理が人手を介さず自動で行われる。以下、これらの処理の各々について説明する。
【0096】
(玉揚処理)
玉揚処理について、図9図11(c)を参照しつつ説明する。図9は、玉揚処理の手順を示すフローチャートである。図10(a)~図10(c)は、多機能アーム51及びその近傍の側面図であり、多機能アーム51の動作を模式的に示す説明図である。図11(a)~図11(c)は、クレードル41及びその近傍の正面図であり、巻取管Qに糸Yを固定する動作を模式的に示す説明図である。
【0097】
例えば、ある糸巻取ユニット2において巻取管Qに所定量の糸Yが巻かれたとき、当該糸巻取ユニット2のユニット制御部2aは、パッケージPの形成が完了したと判断する。このとき、ユニット制御部2aは、綾振ドラム42及び糸貯留ローラ31の回転を停止させる。より具体的には、ユニット制御部2aは、糸検出センサ44によって糸Yが検知されたか否か判断しながら、綾振ドラム42を減速させる。ユニット制御部2aは、例えば糸Yがトラバース領域(図3参照)の右端に到達するタイミングで綾振ドラム42の回転を停止させる。これによりパッケージPの回転も停止する。このとき、糸Yは、依然としてパッケージPと糸貯留装置30との間でつながっている。
【0098】
また、パッケージPの形成が完了する際、ユニット制御部2aは、玉揚処理を要求する信号を出力する。機台制御装置5は、当該信号を玉揚制御部3aへ転送する。このように、ユニット制御部2aと玉揚制御部3aは、例えば機台制御装置5を介して連携する。玉揚制御部3aは、当該信号に応じて、玉揚装置3を上記糸巻取ユニット2の正面に移動させ、以下の玉揚処理を開始する。
【0099】
玉揚制御部3aは、例えば第1アーム駆動部101及び第2アーム駆動部102(図4参照)等を適宜制御して、多機能アーム51を所定の待機位置から移動させる。より具体的には、玉揚制御部3aは、糸Yを切断保持するための切断保持位置までガイド部材67及びクランプカッタ69を移動させる(図10(a)参照)。切断保持位置とは、例えば左右方向におけるトラバースガイド43の右端部の近傍、且つトラバースガイド43のすぐ上方の位置である。
【0100】
次に、玉揚制御部3aは、クランプカッタ駆動部105(図4参照)を制御して、クランプカッタ69によって糸Yを切断及び保持させる(ステップS101。図10(b)参照)。糸Yのうち糸貯留装置30側の糸Y(下糸)が、クランプカッタ69によって保持される。その後、ユニット制御部2aが綾振ドラム42を正転させることにより、切断された糸Yのうち巻取部40側の糸Y(上糸)がパッケージPに巻き取られる。
【0101】
玉揚制御部3aは、上糸がパッケージPに巻き取られた後に、パッケージPをクレードル41から取り外すための動作を玉揚装置に実行させる(ステップS102)。より具体的には、玉揚制御部3aは、オープナー駆動部107(図4参照)を制御して、クレードルオープナー53にクレードル41のクレードルレバーを操作させる。これにより、一対のアーム41aが左右方向に開き(上述した解除状態)、さらに、例えば斜め上後方(前後方向において玉揚装置3から遠ざかる側)へ揺動させられる。パッケージPは、一対のホルダ41bから解放され、例えば自重でクレードル41から外れる(すなわち、取り外される)。その後、クレードル41から外れたパッケージPは、不図示の払出しポートへ払い出される。一対のアーム41aは、解除状態を維持しつつ斜め下前方(綾振ドラム42の直上)に戻される。
【0102】
玉揚制御部3aは、例えば一対のアーム41aが綾振ドラム42の直上に移動した後に、新しい巻取管Q(すなわち、クレードル41に新たに保持される巻取管Q)への糸掛けを行う。糸掛けの際、まず、玉揚制御部3aは、クランプカッタ69をクレードル41の近傍に移動させる(ステップS103)。より具体的には、玉揚制御部3aは、揺動駆動部104を制御して、クランプカッタ69をガイド部材67に対して斜め上後方へ揺動させる(図10(c)参照)。これにより、新しい巻取管Qがクレードル41に装着される前に、クランプカッタ69によって、新しい巻取管Qとクレードル41との隙間が形成される隙間位置(図11(a)参照)に糸Yが案内される。すなわち、ガイド部材67とクランプカッタ69との間に延びている糸Yが、巻取管Qと右側のホルダ41bとの間に挟まれることが可能な位置に配置される。
【0103】
次に、玉揚制御部3aは、チャッカー駆動部106を制御して、チャッカー52を動作させる。チャッカー52は、不図示のストッカーから空の巻取管Qをチャック部52bで取り出し、当該巻取管Qをクレードル41に装着する(ステップS104)。
【0104】
次に、玉揚制御部3aは、クランプカッタ69に保持されている糸Yを巻取管Qに固定し、さらに、バンチ巻きを形成する(ステップS105)。バンチ巻きとは、トラバース領域から外れた位置において巻取管Qに形成される糸層である。バンチ巻きは、後工程において、複数のパッケージPの糸Yを連続して解舒する際などに利用される。ステップS105の具体的な手順について説明する。玉揚制御部3aは、クレードルオープナー53に再度クレードルレバーを操作させ、クレードル41の状態を解除状態から把持状態に切り換える。これにより、右側のアーム41a及びホルダ41bが左方に移動して閉じられる(図11(b)参照)。その結果、巻取管Qとホルダ41bとによって糸Yが挟まれ、巻取管Qに糸Yが固定される。その後、玉揚制御部3aは、チャッカー52から巻取管Qを解放させる。また、玉揚制御部3aは、クランプカッタ69から糸Yを解放させる。次に、玉揚制御部3aは、第1アーム駆動部101~ガイド駆動部103(図4参照)を適宜制御して、ガイド部材67を少し左方へ移動させる。この状態で、ユニット制御部2aが綾振ドラム42を正転させることにより、バンチ巻きA(図11(c)参照)が形成される。このようなステップS103~S105により、糸掛けが行われる。
【0105】
最後に、玉揚制御部3aが多機能アーム51を待機位置まで戻し、ユニット制御部2aが綾振ドラム42及び糸貯留ローラ31を正転させる。これにより、糸Yの巻取りが再開される(ステップS106)。
【0106】
(仕掛け替え処理)
仕掛け替え処理について、図12図15(f)を参照しつつ説明する。図12は、仕掛け替え処理の手順を示すフローチャートである。図13は、仕掛け替え処理に含まれるステップである下糸引出処理(後述)の手順を示すフローチャートである。図14(a)~図15(f)は、仕掛け替え部8の動作を模式的に示す説明図である。図14(a)、図14(c)、図14(e)、図14(f)、図15(a)、図15(c)及び図15(e)は、種糸供給部55及び/又はその近傍を左方から見た図である。図14(b)、図14(d)、図15(b)、図15(d)及び図15(f)は、種糸供給部55及び/又はその近傍を後方から見た図である。以下、縦ガイドレバー56の回転の向き(時計回り又は反時計回り)は、縦ガイドレバー56を後方から見たときの回転の向きであることに留意されたい。
【0107】
初期状態として、クレードル41からパッケージPが取り外されている。しかしながら、クレードル41からパッケージPが取り外されるタイミングは初期状態には限られず、後述する巻取管Qへの糸掛けの直前であっても良い。種糸供給部55において、種糸ボビンBsから引き出された種糸Ysが、種糸案内パイプ73を通って種糸クランプカッタ75まで案内され、種糸クランプカッタ75に保持されている(図7(b)参照)。縦ガイドレバー56が、少なくとも上方へ延びている。給糸ボビンBから供給された新しい種類の糸Y(下糸)は、下糸捕捉部23に予め捕捉されていても良い。或いは、下糸は、仕掛け替え処理と並行して下糸捕捉部23に捕捉されても良い。また、ストッパー部76の状態は、許可状態である。この状態において、種糸Ysが引っ張られたとき、種糸ボビンBsから種糸Ysがさらに引き出される。
【0108】
まず、玉揚制御部3aは、多機能アーム51によって種糸Ysを引き出す(図12に示すステップS201)。より具体的には、玉揚制御部3aは、第1アーム駆動部101~ガイド駆動部103(図4参照)を適宜制御して、ガイド部材67に種糸Ysを引っ掛けて種糸Ysを後方へ引き出す(図14(a)及び図14(b)参照)。これにより、ガイド部材67と種糸クランプカッタ75との間の種糸Ysの糸道が、縦ガイドレバー56の第1引掛部56bの軌道と交わる。
【0109】
次に、玉揚制御部3aは、縦ガイドレバー56によって、種糸Ysを下方へ移動させる(ステップS202)。より具体的には、玉揚制御部3aは、縦ガイドレバー駆動部112(図4参照)を制御して、縦ガイドレバー56を反時計回りに約半回転させる(図14(c)及び図14(d)参照)。これにより、種糸Ysが下方へ引っ張られる。種糸Ysは、縦ガイドレバー56によって下方へ引っ張られているときに、例えば待機位置に位置している糸拾い部57b(図14(e)の二点鎖線参照)によって拾われる。
【0110】
次に、玉揚制御部3aは、糸飛ばしレバー57によって、種糸Ysを糸通しノズル34の近傍に移動させる(ステップS203)。より具体的には、玉揚制御部3aは、糸飛ばしレバー駆動部113(図4参照)を制御して、糸拾い部57bを待機位置(図14(e)の二点鎖線参照)から導入位置(図14(e)の実線参照)に移動させる。これにより、種糸Ysが糸通しノズル34の他端部の近傍に導かれる。言い換えると、仕掛け替え処理の際に、縦ガイドレバー56及び糸飛ばしレバー57によって、種糸Ysが誘導機構6へ案内される(本発明の第1案内処理)。
【0111】
次に、玉揚制御部3aは、クランプカッタ駆動部110(図4参照)を制御して、種糸クランプカッタ75から種糸Ysを解放する(ステップS204。図14(f)参照)。解放された種糸Ysは、糸通しノズル34を含む誘導機構6を通って上糸捕捉部21に捕捉され、糸継装置22に導かれ、糸継ぎ準備状態となる(ステップS205)。このように、玉揚装置3は、仕掛け替え処理の際に、種糸Ysを糸継装置22へ案内可能である。この状態で仮に糸継ぎが行われた場合、種糸Ysと下糸との継目(以下、単に継目)が糸継装置22の近傍に位置することとなる。
【0112】
次に、玉揚制御部3aは、ストッパー駆動部111を制御して、ストッパー部76(図7(b)参照)を禁止状態にする。これにより、種糸Ysが種糸ボビンBsから引き出されることが禁止される(ステップS206。本発明の禁止処理)。この状態で、玉揚制御部3aは、下糸引出処理を実行する(ステップS207)。下糸引出処理は、簡単に言えば、継目を下流側に引き出す処理であり、下糸とつながれた種糸Ysを除去するための処理である。これにより、給糸ボビンBから供給された新しい種類の糸Yのみを新しい巻取管Qに巻き取ることができ、種糸Ysが新しいパッケージPに混入することを防止できる。このような処理は、例えば種糸Ysの種類が下糸の種類と異なっている場合に特に有効である。
【0113】
下糸引出処理について、図13及び図15(a)~図15(f)を参照しつつ具体的に説明する。まず、玉揚制御部3aは、縦ガイドレバー56を準備位置に移動させる(図13に示すステップS301)。より具体的には、玉揚制御部3aは、縦ガイドレバー駆動部112(図4参照)を制御して、縦ガイドレバー56を例えば時計回りに約半回転させる(図15(a)及び図15(b)参照)。これにより、縦ガイドレバー56が上方へ延びる位置(準備位置)に移動する。ステップS301が実行される際、種糸Ysの糸道は縦ガイドレバー56の軌道から離れている(図15(a)参照)。このため、縦ガイドレバー56は種糸Ysに干渉しない。
【0114】
なお、本実施形態では、玉揚制御部3aは、例としてステップS206の後にステップS301を実行する。しかしながら、ステップS301が実行されるタイミングはこれに限られない。ステップS301は、例えば、上述したステップS204の後、且つステップS206よりも前に実行されても良い。また、ステップS301において、縦ガイドレバー56は反時計回りに回転させられても良い。
【0115】
次に、玉揚制御部3aは、多機能アーム51のガイド部材67を所定の引出可能位置に移動させる(ステップS302)。より具体的には、玉揚制御部3aは、第1アーム駆動部101~ガイド駆動部103(図4参照)を適宜制御して、種糸Ysの糸道が縦ガイドレバー56の第2引掛部56cの軌道と交わるようにガイド部材67を移動させる(図15(c)及び図15(d)参照)。その後、ユニット制御部2aが糸継装置22を制御して、種糸と下糸を糸継ぎさせる(S303)。この段階で、給糸部10から供給されている糸Yと種糸Ysとがつながれており、糸継装置22とストッパー部76との間の糸道の長さは所定の第1長さである。
【0116】
次に、玉揚制御部3aは、縦ガイドレバー56を回転させて下糸を引き出す(ステップS304)。より具体的には、玉揚制御部3aは、縦ガイドレバー駆動部112(図4参照)を制御して、縦ガイドレバー56を時計回りに約半回転させる(図15(e)及び図15(f)参照)。これにより、第2引掛部56cに糸Yが引っ掛けられて引っ張られる。このとき、種糸Ysが種糸ボビンBsから引き出されることはストッパー部76によって禁止されている。一方、糸Y(下糸)が給糸ボビンBから引き出されることは禁止されていない。このため、下糸が上方へ引き出される(図15(e)及び図15(f)の上向き矢印を参照)。言い換えると、糸継装置22とストッパー部76との間の糸道の長さが、第1長さよりも長い第2長さに変更されることにより、下糸が引き出される。このように、給糸部10から供給されている糸Yと種糸Ysとが糸継ぎされた状態で、縦ガイドレバー56によって、当該糸道の長さが第1長さから第2長さに変更される(本発明の糸道変更処理)。縦ガイドレバー56は、本発明の糸道変更部に相当する。
【0117】
次に、玉揚制御部3aは、下糸をさらに引き出すか否か判断する(ステップS305)。下糸をさらに引き出すか否かを判断する基準は、例えば、1回又は複数回のステップS303によって、下糸とつながれた種糸Ysが新しい巻取管Qに巻き取られることが確実に防止されるか否かである。より具体的な基準として、所定回数の糸道変更処理が行われたか否かが判断基準であっても良い。或いは、引き出されるべき下糸の長さと、下糸が実際に引き出されたと推定される長さ(例えば第2長さから第1長さを引いた値に、糸道変更処理の実行回数を掛けることにより得られる値)との差が判断基準にされても良い。種糸Ysが新しい巻取管Qに巻き取られる可能性がまだ残っている場合、玉揚制御部3aは、下糸をさらに引き出すと判断する(S305:Yes)。このような判断をした場合、玉揚制御部3aは、縦ガイドレバー56を反時計回りに少し回転させて、種糸Ysを緩める(ステップS306)。好ましくは、玉揚制御部3aは、第2引掛部56cを種糸サクション74の近傍に位置させるように縦ガイドレバー56を回転させる。玉揚制御部3aが種糸サクション74を作動させることによって、緩められた種糸Ysが種糸サクション74に吸引される(ステップS307)。すなわち、種糸サクション74は、種糸供給部55において種糸Ysを準備するためだけでなく、下糸引出処理において不要な種糸Ysを除去するためにも用いられる。種糸サクション74の吸引力によって、糸Yが再び張った状態になる。その後、種糸クランプカッタ75を閉じた状態で、縦ガイドレバー56を回転させることにより、下糸をさらに引き出すことができる。玉揚制御部3aは、ステップS305の判断を再び行う。下糸を必要な回数引き出すことにより、例えば継目を種糸サクション74に吸い込ませることができる。すなわち、種糸Ysのうち下糸とつながれた部分を完全に除去できる。玉揚制御部3aは、下糸の引出しを必要な回数実行した後に、下糸の引出しを終了させる(S305:No)。これにより、下糸引出処理の次のステップに進むことが可能になる。
【0118】
下糸引出処理の後、玉揚制御部3aは、新しい巻取管Qへの糸掛けを行う(図12に示すステップS208)。より具体的には、まず、玉揚制御部3aは、クランプカッタ69に糸Yを切断保持させる。これにより、クランプカッタ69は、糸Yの途中部を切断し、且つ、切断した糸Yのうち糸継装置22側の糸Yを保持する。この糸Yは、給糸ボビンBから供給される糸Yのみを含む。切断された糸Yのうち種糸ボビンBs側の糸Yは、種糸サクション74によって吸引除去される。その後、玉揚制御部3aは、上述したステップS103~S106(図9参照)と同じステップを実行する。つまり、糸道変更処理の後に、多機能アーム51によって糸継装置22側の糸Yがクレードル41へ案内され(本発明の第2案内処理)、巻取管Qへの糸掛けが行われる。以上の動作により、仕掛け替えが完了する。
【0119】
(巻取糸切断対応処理)
巻取糸切断対応処理について、図16図20(f)を参照しつつ説明する。巻取糸切断とは、糸走行方向において、糸貯留装置30とパッケージPとの間で、何らかのトラブルにより糸Yが分断されることである。巻取糸切断対応処理は、大きく2つの処理(貯留糸除去処理及び上糸案内処理)に分けられる。貯留糸除去処理は、糸貯留装置30に貯留されている糸Y(貯留糸)を除去する処理である。上糸案内処理は、パッケージPから糸Y(上糸)を引き出して糸継装置22に案内する処理である。巻取糸切断対応処理の際、例えばまず貯留糸除去処理が行われ、その後に上糸案内処理が行われる。図16は、貯留糸除去処理の手順を示すフローチャートである。図17(a)~図18(e)は、貯留糸除去部58の動作を模式的に示す説明図である。図17(a)~図18(e)は、糸貯留ローラ31及びその近傍を左方から見た図である。図19は、上糸案内処理の手順を示すフローチャートである。図20(a)~図20(f)は、上糸案内処理を模式的に示す説明図である。図20(a)、図20(c)、図20(e)及び図20(f)は、パッケージPから引き出された糸Y(上糸)及びその近傍を左方から見た図である。図20(b)及び図20(d)は、上糸及びその近傍を後方から見た図である。
【0120】
(貯留糸除去処理)
貯留糸除去処理について説明する。初期状態として、糸走行方向において糸貯留装置30とパッケージPとの間で糸Yが分断されている。糸貯留装置30及び巻取部40の動作は停止している。巻取糸切断が生じたとき、糸貯留装置30に貯留されていた糸Y(以下、貯留糸)の下流側の端部は、弛んでいる可能性がある。弛んでいる貯留糸の糸端をパッケージP側の糸端と再びつなげることは非常に困難である。また、仮にこのような糸継ぎに成功しても、弛んだ糸Yが例えば糸貯留装置30に絡まって、糸巻取ユニット2が正常に動作しないおそれがある。したがって、巻取糸切断が生じた際に貯留糸除去処理が必要になる。なお、玉揚処理の際には、糸貯留装置30に貯留されている糸Yが弛まないように多機能アーム51が動作するため、貯留糸除去処理を行う必要はない。
【0121】
まず、玉揚制御部3aは、貯留糸除去駆動部114(図4参照)を制御して、貯留糸除去部58全体を糸貯留ローラ31に近づける(図16に示すステップS401)。より具体的には、玉揚制御部3aは、貯留糸サクション81を例えばテンションリング33の近傍に移動させる(図17(a)参照)。
【0122】
次に、玉揚制御部3aは、貯留糸サクション81に貯留糸を吸引させる。それとともに、ユニット制御部2aが糸貯留ローラ31を逆転させる(ステップS402。図17(b)参照)。より具体的には、テンションリング33の近傍で弛んでいる、貯留糸の糸端に近い部分が、貯留糸サクション81によって吸引される。その上で糸貯留ローラ31が逆転すると、弛んだ糸Yが、ある程度張った状態で再び糸貯留ローラ31に巻き付けられる(図17(b)参照)。その後、さらに糸貯留ローラ31が逆転すると、糸端が貯留糸サクション81から離れる(図17(c)参照)。このとき、糸貯留ローラ31には、巻取糸切断が生じる前の状態と概ね同じ状態で貯留糸が巻き付けられている。また、溝31bは、貯留糸除去部58の次の動作のために、例えば糸貯留ローラ31の下端部に位置させられている。
【0123】
次に、玉揚制御部3aは、フッカー部82にテンションリング33を引っ張らせる(ステップS403。図17(d)参照)。より具体的には、玉揚制御部3aは、フッカー駆動部116によって回転板82a及びフック82bを例えば略90度回転させることにより、フッカー部82を待機位置から引張位置に移動させる。このとき、フック82bは、例えば溝31bに一時的に進入することにより、テンションリング33の径方向における内側にスムーズに入り込むことができる。フッカー部82のこのような動作により、テンションリング33がフック82bに引っ掛けられ、糸貯留ローラ31の径方向における外側へ部分的に引っ張られる。言い換えると、テンションリング33が糸貯留ローラ31の外周面31aから部分的に浮かされる。これにより、糸貯留ローラ31の周方向において、テンションリング33のうち貯留糸を外周面31aに押さえつける力のない部分が形成される。この状態で、後述するように糸貯留ローラ31が正転させられたとき、貯留糸を貯留糸サクション81にスムーズに追随させることができる。
【0124】
フッカー部82が引張位置に位置している状態で、玉揚制御部3aは、貯留糸サクション81に貯留糸の糸端を吸引捕捉させる。その後、ユニット制御部2aが糸貯留ローラ31を正転させる(ステップS404。図17(e)参照)。これにより、テンションリング33よりも下流側で弛んでいる糸端を貯留糸サクション81に吸い込ませることができる。糸貯留ローラ31がある程度正転した後、玉揚制御部3aは、テンションリング33の近傍の糸Yをカッタ81bに切断させる(ステップS405。図17(f)参照)。これにより、貯留糸のうちテンションリング33よりも下流側の部分のほとんどを吸引除去できる。
【0125】
次に、玉揚制御部3aは、貯留糸サクション81及び切断部83を移動させ、切断部83に貯留糸の層(糸層Yr。図18(a)等参照)を切断させる(ステップS406)。より具体的には、玉揚制御部3aは、例えば切断駆動部117を制御して貯留糸サクション81及び切断部83を移動させながら、切断駆動部117を制御して切断部83を動作させる(図18(a)~図18(c)参照)。これにより、切断部83は、糸貯留ローラ31の軸方向において基端側へ移動しながら、糸貯留ローラ31の径方向における往復移動(つまり、溝31bへの部分的な進入及び退出)を繰り返す。また、複数の可動刃83cが、複数の固定刃83bに対して直交方向(図18(a)参照)に往復移動する。切断部83のこのような動作によって、貯留されている全ての糸層Yrが糸貯留ローラ31の軸方向(直交方向)に切断される。切断された糸層Yrは、貯留糸サクション81によって吸引除去される。玉揚制御部3aは、例えば貯留糸センサ83dによる検知結果に基づき、直交方向において糸層Yrが検知された領域内でのみ貯留糸サクション81及び切断部83を作動させると好ましい。その後、玉揚制御部3aは、貯留糸サクション81及び切断部83を糸貯留ローラ31の軸方向における先端側へ戻す(図18(d)参照)。
【0126】
次に、玉揚制御部3aは、例えばフッカー部82を適宜制御して、テンションリング33を糸貯留ローラ31の径方向における外側へさらに引っ張る(ステップS407)。また、玉揚制御部3aは、貯留糸サクション81を再びテンションリング33の近傍に移動させる(図18(d)参照)。この状態で、ユニット制御部2aが糸貯留ローラ31を正転又は逆転させる(図18(e)参照)。これにより、テンションリング33の近傍に糸屑がわずかに残っている場合でも、当該糸屑が吸引除去される(ステップS408)。以上のようにして、貯留糸除去処理が完了する。
【0127】
(上糸案内処理)
上糸案内処理について説明する。まず、玉揚制御部3aは、例えばマウス駆動部108を制御して、サクションマウス54を近接位置に移動させる(図19のステップS501。図20(a)の二点鎖線参照)。次に、玉揚制御部3aは、ユニット制御部2aと連携して、綾振ドラム42を逆転させつつサクションマウス54で上糸を吸引して引き出す(ステップS502)。さらに、玉揚制御部3aは、サクションマウス54を待機位置に移動させる(ステップS503。図20(a)の実線及び図20(b)参照)。これにより、パッケージPとサクションマウス54との間に延びる上糸の糸道が、縦ガイドレバー56の第1引掛部56bの軌道と交わる。
【0128】
次に、玉揚制御部3aは、縦ガイドレバー56を例えば反時計回りに回転させて、上糸を第1引掛部56bに引っ掛けて下方へ移動させる(ステップS504。図20(c)及び図20(d)参照)。これにより、上糸がパッケージPからさらに引き出され、下方へ引っ張られる。上糸は、縦ガイドレバー56によって引っ張られているときに、マウスカッタ54bによって切断されることが可能な位置に案内される(図20(d)参照)。また、上糸は、例えば縦ガイドレバー56によって下方へ引っ張られているときに、待機位置に位置している糸拾い部57b(図20(e)の二点鎖線参照)によって拾われる。
【0129】
次に、玉揚制御部3aは、糸飛ばしレバー57によって、上糸を糸通しノズル34の近傍に移動させる(ステップS505。図20(e)の実線参照)。これにより、上糸が糸通しノズル34の他端部の近傍に導かれる。次に、玉揚制御部3aは、マウスカッタ駆動部109(図4参照)を制御して、マウスカッタ54bに上糸を切断させる(ステップS506)。これにより、上糸は、誘導機構6を通って糸継装置22に導かれる(図20(f)参照)。その後、ユニット制御部2aが糸継装置22を制御して上糸と下糸とを糸継ぎさせる(ステップS507)。最後に、ユニット制御部2aが綾振ドラム42及び糸貯留ローラ31を正転させる。これにより、糸Yの巻取りが再開される(ステップS508)。以上のようにして、上糸案内処理が完了し、巻取糸切断対応処理が完了する。
【0130】
以上のように、仕掛け替え処理の際に、種糸Ysを糸継装置22へ直接案内できる。したがって、スターターパッケージを形成する必要がある場合と比べて、仕掛け替え処理に要する時間を短縮できる。
【0131】
また、玉揚装置3によって、仕掛け替え処理及び巻取糸切断対応処理を複数の種類の所定処理の各々として行うことができる。これにより、糸貯留装置30を有する糸巻取ユニット2における様々な状況に対応できるため、自動ワインダ1の自動化をさらに推進できる。
【0132】
また、巻取糸切断対応部9は、巻取糸切断対応処理の際に、糸層Yrを直交方向に切断して除去することが可能である。糸層Yrを切断することにより、糸貯留ローラ31に残った糸Yを容易に除去できる。
【0133】
また、糸貯留ローラ31の外周面31aには溝31bが形成されている。このため、糸層Yrのうち糸貯留ローラ31の周方向における一部が、当該周方向において溝31bと同じ位置に配置される。また、切断部83は、溝31bの内部に少なくとも部分的に進入可能に構成されている。これにより、糸層Yrの当該一部を切断部83によって確実且つ容易に切断できる。また、切断部83が糸貯留ローラ31の外周面31aに接触することを回避できるため、外周面31aの損傷を確実に防止できる。
【0134】
また、切断部83は、複数の固定刃83bと複数の可動刃83cとを有する。これにより、毛髪を切断するためのバリカンと同様の原理で、糸層Yrを確実且つ容易に切断できる。
【0135】
また、玉揚制御部3aは、貯留糸センサ83dによる検知結果に基づき、糸層Yrが検知された領域内で貯留糸除去部58を作動させる。これにより、必要最小限の領域で糸層Yrの切断の動作を実行できる。したがって、直交方向において糸層Yrが形成されうる全域に亘って糸層Yrの切断の動作が行われる場合と比べて、切断の動作の所要時間を短縮できる。
【0136】
また、巻取糸切断対応部9の貯留糸除去部58は、テンションリング33の少なくとも一部を外周面31aから離隔させるフッカー部82を有する。これにより、テンションリング33と外周面31aの間に把持されていた糸Yを容易に除去することができる。また、糸貯留ローラ31に巻かれた貯留糸を切断除去する際に、貯留糸除去部58がテンションリング33に誤って触れることを回避できる。したがって、貯留糸除去部58によってテンションリングが破損することを防止できる。
【0137】
また、糸巻取ユニット2は誘導機構6を有する。玉揚装置3は、縦ガイドレバー56と、糸飛ばしレバー57と、多機能アーム51とを有する。仕掛け替え処理の際に、縦ガイドレバー56、糸飛ばしレバー57及び誘導機構6によって、種糸Ysを糸継装置22へ直接案内できる。その後、多機能アーム51によって、糸Yを巻取管Qの近傍まで案内できる。
【0138】
また、給糸部10から供給される糸Yと種糸Ysとが糸継ぎされた状態で、種糸供給部55から種糸Ysが引き出されることをストッパー部76によって禁止しつつ、縦ガイドレバー56を利用して糸継装置22とストッパー部76との間の糸道の長さを変更できる。これにより、給糸部10から供給された糸Yが含まれた、糸継装置22側の糸Yを引き出すことができる。糸継装置22側の糸Yを十分に引き出すことで、多機能アーム51によって、給糸部10から供給された糸Yのみを切断保持できる。その結果、給糸部10から供給された糸Yのみを新しい巻取管Qに糸掛けできる。このため、種糸YsがパッケージPに混入することを防止できる。したがって、種糸Ysの種類が給糸部10から供給された糸Yの種類と異なっている場合でも、パッケージPのグレードが低下することを回避できる。
【0139】
また、玉揚制御部3aは、第1案内処理と、禁止処理と、糸道変更処理と、第2案内処理とを実行する。このようにして、仕掛け替え処理を自動的に実行できる。
【0140】
また、パッケージPがクレードル41から取り外された後、新しい巻取管Qがクレードル41に装着される前に、多機能アーム51によって、新しい巻取管Qとクレードル41との隙間が形成される隙間位置に糸Yが案内される。さらに、新しい巻取管Qがクレードル41に装着された後、クレードル41が解除状態から把持状態に戻される。これにより、新しい巻取管Qがクレードル41に装着される前の広い空間を通って、糸Yが隙間位置に案内される。したがって、糸掛けの成功率を高めることができる。
【0141】
また、玉揚装置3によって、玉揚処理を複数の種類の所定処理の1つとしてさらに実行できる。したがって、自動ワインダ1の自動化をさらに推進できる。また、玉揚装置3によって様々な処理を実行できるため、玉揚装置3とは別に所定処理を実行するための装置が設けられている構成と比べて、自動ワインダ1における装置の増加を回避できる。
【0142】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0143】
(1)前記までの実施形態において、縦ガイドレバー56が糸道変更処理を実行可能に構成されているものとした。しかしながら、これには限られない。縦ガイドレバー56の代わりに糸道変更処理を実行可能な糸道変更部(不図示)が設けられていても良い。
【0144】
(2)前記までの実施形態において、仕掛け替え処理の際に、糸道変更処理が複数回行われうるものとした。しかしながら、これには限られない。玉揚制御部3aは、仕掛け替え処理において糸道変更処理を1回のみ実行するように構成されていても良い。或いは、玉揚制御部3aは、糸道変更処理を実行するように構成されていなくても良い。この場合、種糸供給部55がストッパー部76を有していなくても良い。
【0145】
(3)前記までの実施形態において、玉揚制御部3aは、玉揚処理を実行する際、及び仕掛け替え処理を実行する際に、新しい巻取管Qがクレードル41に装着される前に、多機能アーム51によって隙間位置に糸Yを案内するものとした。しかしながら、これには限られない。玉揚制御部3aは、玉揚処理及び仕掛け替え処理のいずれか一方を行う際にのみ、新しい巻取管Qがクレードル41に装着される前に隙間位置に糸Yを案内するように多機能アーム51を制御しても良い。或いは、玉揚制御部3aは、新しい巻取管Qがクレードル41に装着された後に、隙間位置に糸Yを案内するように多機能アーム51を制御しても良い。つまり、前記までの実施形態において、玉揚制御部3aは、新しい巻取管Qへの糸掛けが行われる際に、新しい巻取管Qがクレードル41に装着される前に隙間位置に糸Yを案内するものとしたが、これには限られない。
【0146】
(4)前記までの実施形態において、玉揚装置3はクレードルオープナー53を有するものとした。しかしながら、これには限られない。クレードルオープナー53に相当する機構が、例えば糸巻取ユニット2に設けられていても良い。
【0147】
(5)前記までの実施形態において、仕掛け替え処理を行うために玉揚装置3が有する具体的な構成を説明した。しかしながら、他の構成によって仕掛け替え処理が行われても良い。一例として、縦ガイドレバー56及び糸飛ばしレバー57の代わりに、種糸Ysを誘導機構6へ直線的に案内する機構(公知のリニアスライダ又はラックアンドピニオン機構など)が設けられていても良い。
【0148】
(6)前記までの実施形態において、貯留糸除去部58がフッカー部82を有するものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、糸貯留装置30がテンションリング33を有していなくても良い。この場合、フッカー部82は設けられていなくても良い。また、この場合、貯留糸除去処理においてステップS402~S405及びS408(図16参照)は行われなくても良い。
【0149】
(7)前記までの実施形態において、切断部83が貯留糸センサ83dを有するものとした。その代わりに、例えば貯留糸サクション81に貯留糸センサ83dが取り付けられていても良い。或いは、貯留糸除去部58は貯留糸センサ83dを有していなくても良い。この場合、例えば、直交方向において糸層Yrが形成されうる全域に亘って糸層Yrの切断の動作が行われても良い。
【0150】
(8)前記までの実施形態において、切断部83は、複数の固定刃83bと複数の可動刃83cとを有するものとした。しかしながら、これには限られない。切断部83は、例えば公知のハサミ又はカッタを有していても良い。
【0151】
(9)前記までの実施形態において、切断部83は、溝31bの内部に少なくとも部分的に進入可能であるものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、溝31bとは別に、切断部83が少なくとも部分的に進入可能な溝(不図示)が設けられていても良い。或いは、糸貯留ローラ31には、このような溝が設けられていなくても良い。この場合、溝の代わりに、例えば糸貯留ローラ31の径方向における外側へ突出した凸部(不図示)が設けられていても良い。これにより、外周面31aと糸層Yrとの間に隙間が形成されても良い。このような構成において、当該隙間の近傍を目標位置として切断部83を移動させることで、切断部83が外周面31aに誤って接触することを極力回避できる。
【0152】
(10)前記までの実施形態において、切断部83は、糸層Yrを直交方向に切断するものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、切断部83が直交方向に対して傾いた方向に糸層Yrを切断できるように、糸巻取ユニット2及び玉揚装置3が構成されていても良い。
【0153】
(11)前記までの実施形態において、巻取糸切断対応処理の全部が人手を介さず行われるものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、貯留糸除去処理が作業者によって行われても良い。この場合、玉揚装置3は貯留糸除去部58を有していなくても良い。
【0154】
(12)前記までの実施形態において、玉揚装置3は多機能アーム51を有するものとした。しかしながら、これには限られない。多機能アーム51の代わりに、例えば特開2018-65659号公報に開示された機構を用いて糸Yが切断保持されても良い。
【0155】
(13)前記までの実施形態において、玉揚制御部3aが玉揚装置3を制御するものとした。しかしながら、これには限られない。例えば機台制御装置5が玉揚装置3を直接制御しても良い。この場合、機台制御装置5が本発明の制御部に相当する。
【0156】
(14)前記までの実施形態において、仕掛け替え部8が種糸Ysを糸継装置22へ直接案内するものとした。しかしながら、これには限られない。仕掛け替え部8を用いて、特開2018-65659号公報に開示されたスターターパッケージが形成されても良い。或いは、玉揚装置3は、当該スターターパッケージのみを形成可能な仕掛け替え部(不図示)を有していても良い。この場合、巻取糸切断対応部9が貯留糸除去部58を有していると好ましい。巻取糸切断対応部9によって巻取糸切断対応処理の全部を自動的に行うことにより、巻取糸切断対応処理にかかる手間を軽減できる。
【0157】
(15)前記までの実施形態において、玉揚装置3は、玉揚処理、仕掛け替え処理及び巻取糸切断対応処理を複数の種類の所定処理として実行可能であるものとした。しかしながら、これには限られない。玉揚装置3は、例えば、玉揚処理及び仕掛け替え処理のみを実行可能に構成されていても良い。或いは、玉揚装置3は、玉揚処理及び巻取糸切断対応処理のみを実行可能に構成されていても良い。或いは、玉揚処理を実行する玉揚装置3とは別に、仕掛け替え処理及び巻取糸切断対応処理のうち1種類以上の処理を実行可能なサービスユニット(不図示)が設けられていても良い。このようなサービスユニットが設けられている構成において、自動ワインダ1が玉揚装置3を備えていなくても良い。
【0158】
(16)前記までの実施形態において、切断部83の動作によって、貯留されている全ての糸層Yrが糸貯留ローラ31の軸方向(直交方向)に切断されるものとした。しかしながら、貯留されている全ての糸層Yrの下端部分にのみ不具合が生じている場合は、糸層Yrの下端部分のみを切断して、貯留糸サクション81によって吸引除去できる。この場合、切断除去された糸層Yrの下端部分とともに、糸Yのうち不具合が生じた部分も除去されている。よって、切断除去されずに残った糸層Yrに含まれる糸Yの下端を、上糸吹き送り部27により捕捉して糸案内部材28の内部へ吹き飛ばし、上糸捕捉部21に吸引捕捉させても良い。このように、残った糸層Yrに含まれる糸Yを上糸として糸継装置22へ案内し、給糸部10側の糸Y(下糸)との糸継ぎを行うことにより、糸Yの巻取りを継続させることもできる。
【0159】
(17)本発明は、自動ワインダ1の他にも、糸Yを一時的に貯留する糸貯留装置(不図示)を有する糸巻取ユニット(不図示)を備える様々な糸巻取機に適用可能である。
【符号の説明】
【0160】
1 自動ワインダ(糸巻取機)
2 糸巻取ユニット
3 玉揚装置(サービスユニット)
3a 玉揚制御部(制御部)
6 誘導機構
9 巻取糸切断対応部
10 給糸部
22 糸継装置
30 糸貯留装置
31 糸貯留ローラ
31a 外周面
31b 溝
33 テンションリング
40 巻取部
41 クレードル
51 多機能アーム(糸案内部、第2案内部)
53 クレードルオープナー(切替部)
55 種糸供給部
56 縦ガイドレバー(第1案内部、糸道変更部)
57 糸飛ばしレバー(第1案内部)
76 ストッパー部
82 フッカー部(離隔部)
83 切断部
83b 固定刃
83c 可動刃
83d 貯留糸センサ(検知部)
Bs 種糸ボビン
P パッケージ
Q 巻取管
Y 糸
Yr 糸層
Ys 種糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20